(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】車両用サブフレーム
(51)【国際特許分類】
B62D 21/00 20060101AFI20230616BHJP
B62D 21/15 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
B62D21/00 A
B62D21/15 B
(21)【出願番号】P 2019163137
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】592037790
【氏名又は名称】株式会社エフテック
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100182028
【氏名又は名称】多原 伸宜
(72)【発明者】
【氏名】印南 昌光
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩之
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-107925(JP,A)
【文献】特開2016-037171(JP,A)
【文献】特開2012-046070(JP,A)
【文献】特開2017-081446(JP,A)
【文献】特開2013-010419(JP,A)
【文献】特開2016-060311(JP,A)
【文献】特開2018-176866(JP,A)
【文献】米国特許第08851520(US,B2)
【文献】特開2014-118093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00,21/11,21/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前後方向における前方側で前記車体の幅方向において互いに対向して設定された一対の前車体取付部と、前記前後方向における後方側で前記幅方向において互いに対向して設定された一対の後車体取付部と、前記前後方向における前記前車体取付部及び前記後車体取付部の中間で前記幅方向において互いに対向して設定された一対の中車体取付部と、を介して前記車体に装着される車両用サブフレームであって、
前記前後方向に延在しながら前記幅方向で互いに対向して配設されると共に、前記一対の前車体取付部及び前記一対の後車体取付部が対応して設けられた板部材から成る一対のサイドメンバと、
前記幅方向に延在しながら前記一対のサイドメンバを連結する板部材から成るクロスメンバと、
前記幅方向における外方側に向かって各々延在しながら前記車体の上下方向における上方側に向かって突出して前記一対の中車体取付部が対応して設けられると共に、前記幅方向で互いに対向して配設された一対の取付部材と、
を備え、
前記一対のサイドメンバは、各々、上サイドメンバ及び前記上サイドメンバに対して前記上下方向の下方側で対向して延在しながら前記後方側に伸び出た下サイドメンバを有し、
前記一対の取付部材は、前記一対のサイドメンバの各々の前記下サイドメンバに対応して接合され
、
前記クロスメンバは、上クロスメンバと、前記上クロスメンバに対して前記下方側に配設されて前記上クロスメンバと接合された下クロスメンバと、を有し、
前記一対のサイドメンバの各々の前記上サイドメンバは、前記幅方向における前記上クロスメンバの両外前端部に接合されて前記両外前端部から前記前方側に向かって延在し、
前記一対のサイドメンバの各々の前記下サイドメンバは、前記上サイドメンバ、前記上クロスメンバ及び前記下クロスメンバに接合され、
前記一対のサイドメンバの各々の前記上サイドメンバには、前記一対の前車体取付部が対応して設けられると共に、前記一対のサイドメンバの各々の前記下サイドメンバには、前記一対の前車体取付部及び前記一対の後車体取付部が対応して設けられ、
前記一対のサイドメンバの各々は、前記一対の中車体取付部に対して前記前方側で、前記後方側に向かう撃力に対して変形自在な脆弱部を有し、
前記一対のサイドメンバの各々の前記下サイドメンバは、前記前後方向において前記一対の中車体取付部及び前記一対の後車体取付部の間を対応して連続して繋ぐと共に、前記上下方向及び前記幅方向が規定する平面に平行な平面で切った断面で、前記上方向側又は前記下方側に凸の形状を呈する補強部を有する車両用サブフレーム。
【請求項2】
前記一対の取付部材の各々には、前記幅方向に対向して設置された一対のサスペンションアームを対応して支持する一対のアーム支持部の一部が設けられる請求項1に記載の車両用サブフレーム。
【請求項3】
前記幅方向における前記下クロスメンバの両端部は、前記一対のサイドメンバの各々の前記下サイドメンバの前記補強部に沿いながら前記前後方向に延在すると共に、前記上方側に向かって各々起立する一対のバルクヘッド部を構成し、
前記上下方向における前記一対のバルクヘッド部の上端部は、前記上クロスメンバに各々接合された請求項
1又は2に記載の車両用サブフレーム。
【請求項4】
前記上下方向及び前記幅方向が規定する平面に平行な平面で切った断面で、前記上クロ
スメンバ、前記下クロスメンバ及び前記一対のバルクヘッド部が協働した閉断面、前記上クロスメンバ、前記一対のサイドメンバの一方の前記下サイドメンバ及び前記一対のバルクヘッド部の一方が協働した閉断面、並びに前記上クロスメンバ、前記一対のサイドメンバの他方の前記下サイドメンバ及び前記一対のバルクヘッド部の他方が協働した閉断面を各々呈する請求項
3に記載の車両用サブフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サブフレームに関し、特に、サスペンションアーム等を支持して自動車等の車両に装着される車両用サブフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両に装着されるサブフレームにおいては、サスペンションアームやスタビライザ等のサスペンション関連部品、ステアリングギヤボックス等のステアリング関連部品及びエンジン・トランスミッション系のマウント関連部品といった種々の外力印加部品が装着されるようになっている。
【0003】
そのため、かかるサブフレームに対しては、その生産性等を向上させながら、その強度や剛性をより増大させた態様で車両の車体に装着されることが求められている。
【0004】
また、かかるサブフレームに対しては、それが装着される車両の典型的には前面衝突時において、その衝突時に車両が受ける運動エネルギの一部を吸収するためにそれが所望の変形モードで変形すること、つまり所要の衝突性能を発揮することが求められている。
【0005】
かかる状況下で、特許文献1は、車両前後方向に延びると共に、前端部及び後端部が車体フレームに連結されるサイドメンバ11と、サイドメンバ11に対して重ねられ、サイドメンバ11を連結して車両幅方向に延びるリヤクロスメンバ12と、サイドメンバ11及びリヤクロスメンバ12の重ね合わせ部Tから車両前方に延びると共に、リヤクロスメンバ12と一体に成形された延伸部13と、重ね合わせ部Tの後端部に設けられた車体フレームへの取付ステイ15と、を備えたサブフレーム構造1を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1の構成においては、下側サイドメンバ11a及び上側サイドメンバ11bには、アルミニウム合金等のプレス成形品を使用し、リヤクロスメンバ12と延伸部13との一体成形物及び取付ステイ15には、アルミニウム合金等の鋳造品を使用することを前提としたものであるため、プレス成形品と鋳造品とが混在して構成が煩雑であり、それらを溶接する溶接の種類も多種のものとなるし、衝突性能の設計作業も複雑化する傾向が考えられ、改良の余地がある。
【0008】
また、特許文献1は、サブフレームの主構成材をプレス成形品に統一した場合に、その構成と同等以上の高い強度及び剛性を呈するとともに、所要の衝突性能を発揮する具体的な構成について、何等開示や示唆するものではない。
【0009】
本発明は、以上の検討を経てなされたもので、主構成材にプレス成形品を統一して適用しながら、強度及び剛性を高めることができると共に、所要の衝突性能を発揮することができる車両用サブフレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の目的を達成すべく、本発明の第1の局面は、車体の前後方向における前方側で前記車体の幅方向において互いに対向して設定された一対の前車体取付部と、前記前後方向における後方側で前記幅方向において互いに対向して設定された一対の後車体取付部と、前記前後方向における前記前車体取付部及び前記後車体取付部の中間で前記幅方向において互いに対向して設定された一対の中車体取付部と、を介して前記車体に装着される車両用サブフレームであって、前記前後方向に延在しながら前記幅方向で互いに対向して配設されると共に、前記一対の前車体取付部及び前記一対の後車体取付部が対応して設けられた板部材から成る一対のサイドメンバと、前記幅方向に延在しながら前記一対のサイドメンバを連結する板部材から成るクロスメンバと、前記幅方向における外方側に向かって各々延在しながら前記車体の上下方向における上方側に向かって突出して前記一対の中車体取付部が対応して設けられると共に、前記幅方向で互いに対向して配設された一対の取付部材と、を備え、前記一対のサイドメンバは、各々、上サイドメンバ及び前記上サイドメンバに対して前記上下方向の下方側で対向して延在しながら前記後方側に伸び出た下サイドメンバを有し、前記一対の取付部材は、前記一対のサイドメンバの各々の前記下サイドメンバに対応して接合され、前記クロスメンバは、上クロスメンバと、前記上クロスメンバに対して前記下方側に配設されて前記上クロスメンバと接合された下クロスメンバと、を有し、前記一対のサイドメンバの各々の前記上サイドメンバは、前記幅方向における前記上クロスメンバの両外前端部に接合されて前記両外前端部から前記前方側に向かって延在し、前記一対のサイドメンバの各々の前記下サイドメンバは、前記上サイドメンバ、前記上クロスメンバ及び前記下クロスメンバに接合され、前記一対のサイドメンバの各々の前記上サイドメンバには、前記一対の前車体取付部が対応して設けられると共に、前記一対のサイドメンバの各々の前記下サイドメンバには、前記一対の前車体取付部及び前記一対の後車体取付部が対応して設けられ、前記一対のサイドメンバの各々は、前記一対の中車体取付部に対して前記前方側で、前記後方側に向かう撃力に対して変形自在な脆弱部を有し、前記一対のサイドメンバの各々の前記下サイドメンバは、前記前後方向において前記一対の中車体取付部及び前記一対の後車体取付部の間を対応して連続して繋ぐと共に、前記上下方向及び前記幅方向が規定する平面に平行な平面で切った断面で、前記上方向側又は前記下方側に凸の形状を呈する補強部を有する車両用サブフレームである。
【0011】
また、本発明は、かかる第1の局面に加え、前記一対の取付部材の各々には、前記幅方向に対向して設置された一対のサスペンションアームを対応して支持する一対のアーム支持部の一部が設けられることを第2の局面とする。
【0013】
また、本発明は、かかる第1又は第2の局面に加え、前記幅方向における前記下クロスメンバの両端部は、前記一対のサイドメンバの各々の前記下サイドメンバの前記補強部に沿いながら前記前後方向に延在すると共に、前記上方側に向かって各々起立する一対のバルクヘッド部を構成し、前記上下方向における前記一対のバルクヘッド部の上端部は、前記上クロスメンバに各々接合された構成を有することを第3の局面とする。
【0014】
また、本発明は、かかる第3の局面に加え、前記上下方向及び前記幅方向が規定する平面に平行な平面で切った断面で、前記上クロスメンバ、前記下クロスメンバ及び前記一対のバルクヘッド部が協働した閉断面、前記上クロスメンバ、前記一対のサイドメンバの一方の前記下サイドメンバ及び前記一対のバルクヘッド部の一方が協働した閉断面、並びに
前記上クロスメンバ、前記一対のサイドメンバの他方の前記下サイドメンバ及び前記一対のバルクヘッド部の他方が協働した閉断面を各々呈することを第4の局面とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の局面における構成によれば、一対のサイドメンバが、各々、上サイドメンバ及び上サイドメンバに対して下方側で対向して延在しながら後方側に伸び出た下サイドメンバを有し、一対の取付部材が、一対のサイドメンバの各々の下サイドメンバに接合されることにより、車両用サブフレームの強度及び剛性を増大することができると共に、典型的には車両の前面衝突時に印加された撃力をクロスメンバや一対の車体取付部材を介して車体に確実に分散して伝達させることができ、車両用サブフレームに不要な変形や圧壊が発生することを抑制して所要の衝突性能を発揮することができる。また、一対のサイドメンバの各々が、一対の中車体取付部に対して前方側で、後方側に向かう撃力に対して変形自在な脆弱部を有し、一対のサイドメンバの各々の下サイドメンバが、前後方向において一対の中車体取付部及び一対の後車体取付部の間を対応して連続して繋ぐと共に、上下方向及び幅方向が規定する平面に平行な平面で切った断面で、上方向側又は下方側に凸の形状を呈する補強部を有することにより、車両用サブフレームの強度及び剛性を増大することができると共に、典型的には車両の前面衝突時に印加された撃力によって一対のサイドメンバの脆弱部が変形する一方で補強部は変形しないため、かかる撃力を脆弱部で吸収すると共に、その残余の撃力をクロスメンバ、一対の車体取付部材及びそれらよりも後方側にある一対のサイドメンバの部分を介して車体に確実に分散して伝達させることができ、車両用サブフレームに不要な変形や圧壊が発生することを抑制して所要の衝突性能を発揮することができる。
【0016】
また、本発明の第2の局面における構成によれば、一対の取付部材の各々には、幅方向に対向して設置された一対のサスペンションアームを対応して支持する一対のアーム支持部の一部が設けられることにより、所要の衝突性能を実現しながら、各々のサスペンションアームから印加される幅方向の荷重入力をクロスメンバに加えて一対の取付部材を介しても受けることにより、サスペンションアームの支持強度や支持剛性を増大することができる。
【0018】
また、本発明の第3の局面における構成によれば、幅方向における下クロスメンバの両端部が、一対のサイドメンバの各々の下サイドメンバの補強部に沿いながら前後方向に延在すると共に、上方側に向かって各々起立する一対のバルクヘッド部を構成し、上下方向における一対のバルクヘッド部の上端部が、上クロスメンバに各々接合された構成を有するものであるため、一対のサイドメンバの脆弱部よりも後方側の車両用サブフレームの強度及び剛性を増大することができ、典型的には車両の前面衝突時に印加された撃力をより確実に分散して車体に伝達させることができる。
【0019】
また、本発明の第4の局面における構成によれば、上下方向及び幅方向が規定する平面に平行な平面で切った断面で、上クロスメンバ、下クロスメンバ及び一対のバルクヘッド部が協働した閉断面、上クロスメンバ、一対のサイドメンバの一方の下サイドメンバ及び一対のバルクヘッド部の一方が協働した閉断面、並びに上クロスメンバ、一対のサイドメンバの他方の下サイドメンバ及び一対のバルクヘッド部の他方が協働した閉断面を各々呈するものであるため、一対のサイドメンバの脆弱部よりも後方側の車両用サブフレームの強度及び剛性をより増大することができ、典型的には車両の前面衝突時に印加された撃力を更に確実に分散して車体に伝達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態における車両用サブフレームの構成を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における車両用サブフレームの構成を示す底面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における車両用サブフレームの構成を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1から
図7を適宜参照して、本発明の実施形態における車両用サブフレームにつき詳細に説明する。なお、図中、x軸、y軸及びz軸は、3軸直交座標系を成す。また、x軸の正方向が車体の右方向であり、y軸の正方向が車体の前方向であり、かつ、z軸の正方向が車体の上方向である。また、x軸の方向を幅方向又は横方向、y軸の方向を前後方向、及びz軸の方向を上下方向と呼ぶことがある。
【0022】
図1から
図3は、各々、本実施形態における車両用サブフレームの構成を示す平面図、底面図及び左側面図である。
図4及び
図7は、
図1のA-A断面図及びD-D断面図であり、いずれもy軸及びz軸が成すy-z平面に平行な平面で切った縦断面図である。
図5は、
図3のB-B断面図であり、x軸及びy軸が成すx-y平面に平行な平面で切った横断面図である。また、
図6は、
図1のC-C断面図であり、x軸及びz軸が成すx-z平面に平行な平面で切った縦断面図である。なお、
図3から
図6では、説明の便宜上、車両用サブフレームの右側の構成要素の一部を括弧書きの符号で必要に応じて左側の構成要素の符号に併せて示している。
【0023】
図1から
図7に示すように、サブフレーム1は、いずれも図示を省略するが、自動車等の車両のフロントエンジンベイを画成するフロントサイドフレーム等の車体に装着されながら、サスペンションアーム等を支持するものである。かかるサブフレーム1は、典型的には、y-z平面と平行な平面であって車体の幅方向の中央を前後方向に走る中央線を通る平面に対して、左右対称(面対称)な形状を有する。
【0024】
サブフレーム1においては、いずれも詳細は後述するが、車体に装着される部位として、第1車体取付部A1、第2車体取付部A2、第3車体取付部A3、第4車体取付部A4、第5車体取付部A5及び第6車体取付部A6の6カ所が設定され、サスペンションアームを支持する部位として、第1支持部S1、第2支持部S2、第3支持部S3及び第4支持部S4の4カ所が設定されている。
【0025】
また、サブフレーム1においては、各種の外力印加部品の装着用の取付部が設定されており、かかる各種の取付部としては、いずれも詳細は後述するが、ステアリングギヤボックス左取付部A7、ステアリングギヤボックス右取付部A8、トルクロッド取付部A9、スタビライザ左取付部A10及びスタビライザ右取付部A11が挙げられる。
【0026】
具体的には、サブフレーム1は、主として、幅方向に延在して配設されるクロスメンバ10と、クロスメンバ10に連結されてその左端部の側に配設される左取付部材60と、クロスメンバ10に連結されてその右端部の側に配設される右取付部材80と、クロスメンバ10並びに左取付部材60及び右取付部材80に連結されると共に、前後方向に延在しながら幅方向で互いに対向して配設される一対のサイドメンバである左サイドメンバ110及び右サイドメンバ130と、を主として備える。これらの部材は、各々、典型的には鋼板等の一枚の平板部材をプレス成形して得られるものであり、互いの重ね合わされた部分や突き合わされた部分が対応して当接された状態でアーク溶接やプラグ溶接等で溶接され接合されて一体化されることにより、サブフレーム1は、基本的には閉断面形状を呈している。
【0027】
クロスメンバ10は、幅方向に延在する上部材12と、上部材12の下方向の側でそれに対向しながら幅方向に延在して配設されると共に、上部材12と典型的にはアーク溶接やプラグ溶接等で溶接されることにより一体化された下部材32と、上部材12の後方向の側であって、かつ、下部材32の上方向の側でそれに対向して配設されると共に、上部材12及び下部材32と典型的にはアーク溶接やプラグ溶接等で溶接されることにより一体化された後上部材150と、を備え、上部材12及び後上部材150が上クロスメンバに相当し、下部材32が下クロスメンバに相当する。また、クロスメンバ10は、互いに一体化された上部材12及び下部材32により、y-z平面に平行な平面で切った断面で閉断面(縦閉断面)を幅方向に連続して画成すると共に、上部材12及び下部材32に一体化された後上部材150により、x-z平面に平行な平面で切った断面で閉断面(縦閉断面)を前後方向に連続して画成する。ここで、クロスメンバ10では、上部材12の強度や剛性を確保する観点から、上部材12の板厚が、下部材32及び後上部材150の各々の板厚よりも厚く設定されることが好ましい。なお、成形性は煩雑になるが、必要に応じて、上部材12、下部材32及び後上部材150は、各々別体の鋼板等の板部材ではなく、これらの全体を単一化した1枚の鋼板等の板部材又はこれらを適宜組み合わせて単一化した複数枚の鋼板等の板部材から成形されるものであってもよい。
【0028】
上部材12は、基本的に上方向に凸の形状を呈した板部材であり、上方向の側に配置された上壁部14、上壁部14の前端部から垂下する前壁部16、及び上壁部14の後端部から垂下すると共に前壁部16の後方向の側で前壁部16に対向する後壁部18を有する。上壁部14及び前壁部16は、実質的に、幅方向における上部材12の全長にわたって設けられているが、後壁部18は、幅方向における上部材12の中間部からその左端部及び右端部である両外端部に至る途中で実質消失している。幅方向における前壁部16の両外端部、つまり前壁部16における左端部及び右端部には、それらを対応して貫通する貫通孔21、23が形成されている。また、前壁部16の前端部には、前方向に向かって突出する平板状のフランジ部17が設けられ、後壁部18の後端部には、後方向に向かって突出する平板状のフランジ部19が設けられている。
【0029】
下部材32は、基本的に下方向に凸の形状を呈した板部材であり、下方向の側に配置された底壁部34、底壁部34の後端部から起立する後壁部35、並びに底壁部34における左端部及び右端部から対応して起立する縦壁部であるバルクヘッド部36及び38を有する。底壁部34及び後壁部35は、幅方向における下部材32の全長にわたって設けられている。バルクヘッド部36の上端部には、その上端部から左方向に向かって突出する平板状のフランジ部37が設けられ、バルクヘッド部38の上端部には、その上端部から右方向に向かって突出する平板状のフランジ部39が設けられている。
【0030】
前後方向における底壁部34の中央部よりも前側の部分には、それを貫通する溶接孔40が形成されている。溶接孔40は、溶接孔40を囲む底壁部34の部分に上部材12のフランジ部19が当接された状態で、溶接孔40の孔周縁と上部材12のフランジ部19とがアーク溶接等で溶接されるための幅方向に伸長された長孔部であり、このように孔周縁が溶接され、かつ、下部材32の底壁部34と、上部材12のフランジ部17と、がアーク溶接等で溶接されることにより、下部材32は、上部材12と一体化されている。かかる溶接孔40は、上部材12及び下部材32を複数箇所で分散して溶接され得るように複数個設けられていることが好ましい。また、底壁部34では、複数個の溶接孔40の隣接するもの同士の間に、底壁部34が下方向に凸の形状を呈する補強部であるリブ部42が設けられてもよく、かかる場合には、板部材の成形性等を考慮すると溶接孔40の周囲の底壁部34が上方向に凸の形状を呈する凸部44となることが好ましい。ここで、上部材12及び下部材32が溶接されて一体化されることにより画成される閉断面は、具体的には、上部材12の上壁部14、前壁部16及び後壁部18と、下部材32の底壁部34と、によって幅方向に連続して画成されている。なお、リブ部42は、上方向に凸の形状を呈するものであってもよいし、上部材12のフランジ部19と溶接孔40とが重複する部分以外の上部材12に設けられていてもよい。また、溶接孔40は、その孔周縁のみならずその全体が塞がれるようにプラグ溶接されていてもよいし、その孔周縁の一部のみを溶接するものであってもよい。
【0031】
また、底壁部34の溶接孔40の後方向の側には、それを各々貫通する貫通孔45、46及び47が形成されており、幅方向において、貫通孔45を挟んで、貫通孔45の左側に貫通孔46が配置されると共に、貫通孔45の右側に貫通孔47が配置されている。
【0032】
クロスメンバ10の左端部の側には、図示を省略する左側サスペンション部材を装着するための左開口端部51が設けられ、クロスメンバ10の右端部の側には、図示を省略する右側サスペンション部材を装着するための右開口端部52が設けられる。つまり、左開口端部51及び右開口端部52は、幅方向におけるクロスメンバ10の両外端部の側に設定されている。
【0033】
また、幅方向におけるクロスメンバ10の左右の両外端部の側には、左開口端部51及び右開口端部52に対応した態様で、サブフレーム1を車体に取り付けるための一対の取付部材である左取付部材60及び右取付部材80が対応して配設されている。
【0034】
左取付部材60は、幅方向の両側、後方向の側及び上方向の側を主として囲む周壁部63、並びにそれに接続して下方向の側を塞ぐ底壁部71を有すると共に、基本的に左方向かつ上方向に向かって突出しながらクロスメンバ10の左端部の側に配設される左後部材62と、左後部材62に対して整合して接合される形状を有しながら、幅方向の両側、前方向の側及び上方向の側以外を主として囲む周壁部65、並びにそれに接続して下方向の側を塞ぐ底壁部72を有すると共に、左後部材62に対して前方向の側に対応して配設される左前部材64と、左後部材62及び左前部材64の左端部に配設される左ブラケット74と、左ブラケット74を介して左後部材62及び左前部材64に固定される左固定部材76と、を備える。これらの部材は、各々、典型的には鋼板等の一枚の平板部材をプレス成形して得られるものである。なお、必要に応じて、これらの部材は、各々、鋼板等の板部材ではなく、これらの全体を単一化した鋳造品やダイカスト品であってもよい。
【0035】
左後部材62、左前部材64及び左ブラケット74は、周壁部63及び65同士及び底壁部71及び72同士が典型的にはアーク溶接等で対応して溶接されて一体化されることにより、左取付部材60の内部に閉じた空間が画成されており、左取付部材60では、x-z平面と平行な平面で切った縦断面において、幅方向に連続する閉断面が画成され、y-z平面と平行な平面で切った縦断面において、前後方向に連続する閉断面が画成され、かつ、x-y平面と平行な平面で切った横断面において、上下方向に連続する閉断面が画成されているといえる。左固定部材76は、左ブラケット74を介して左後部材62及び左前部材64に、ボルト77を用いて締結されて固定されると共に、左固定部材76には、適宜図示を省略するが、左固定部材76を貫通した貫通孔に車体取付用ボルトを挿通するための典型的には金属製の筒状部材であるカラー部材78が固設されている。なお、成形性は煩雑になるが、必要に応じて、左後部材62及び左前部材64は、各々別体の鋼板等の板部材ではなく、これらの全体を単一化した1枚の鋼板等の板部材から成形されるものであってもよい。なお、左取付部材60の内部の空間が閉じられているとは、左取付部材60の内部の空間が完全な密閉状態にあるということではなく、板部材の合わせ部の隙間や、塗装時の塗装穴及び空気抜き穴等の孔部の存在を許容するが、それら以外の部分では左取付部材60の内部の空間が閉じられていることを意味している。
【0036】
また、左前部材64の底壁部72は、クロスメンバ10の下部材32の底壁部34の上方向の側で、それに対して重なった部分が当接してアーク溶接等で溶接されている。左前部材64の周壁部65の内で前方向にその平面部を向けた前壁部66には、それを貫通する貫通孔67が形成されると共に、貫通孔67に対しては、前壁部66から後方向を向いて起立するナット68が固設されている。このようにサスペンションアームを支持する左前の第1支持部S1として、クロスメンバ10の上部材12と左取付部材60の閉断面の一部を成す左前部材64とを有する左開口端部51を適用することにより、サスペンションアームの支持強度や支持剛性を増大することが可能である。
【0037】
クロスメンバ10の右端部の側に配設される右取付部材80に関連する構成は、左取付部材60に関連する構成に対して、y-z平面と平行な平面であって車体の幅方向の中央を前後方向に走る中央線を通る平面に対して、左右対称なものであるため、その詳細な説明は省略するが、右取付部材80は、左取付部材60における左後部材62、周壁部63、左前部材64、周壁部65、前壁部66、貫通孔67、ナット68、底壁部71及び72、左ブラケット74、左固定部材76、ボルト77、並びにカラー部材78に対応して、右後部材82、周壁部83、右前部材84、周壁部85、前壁部86、貫通孔87、ナット88、底壁部91及び92、右ブラケット94、右固定部材96、ボルト97、並びにカラー部材98を有する。
【0038】
ここで、クロスメンバ10の左端部では、上部材12における後壁部18がクロスメンバ10の中央部から左端部に至る途中で左取付部材60の左前部材64に当接した態様でアーク溶接等で溶接されると共に実質消失しているため、上部材12の上壁部14及び前壁部16と、下部材32の底壁部34と、左取付部材60の前壁部66と、で囲われた矩形状の開口端部として、クロスメンバ10の左端部での側で左開口端部51が画成されることになる。左開口端部51において、上部材12の前壁部16及び左取付部材60の前壁部66は共に平板部であって互いに対向している。つまり、このように対向する一方の前壁部16に、それを貫通する貫通孔21が形成されている一方で、前壁部16に対向する左取付部材60の前壁部66には、それを貫通する貫通孔67が前壁部16の貫通孔21に対応して形成されると共に、貫通孔67に対しては、前壁部66から後方向を向いてナット68が起立するように固設されていることになる。
【0039】
クロスメンバ10の右端部の側に画成される右開口端部52に関連する構成は、左開口端部51に関連する構成に対して、y-z平面と平行な平面であって車体の幅方向の中央を前後方向に走る中央線を通る平面に対して、左右対称なものであるため、その詳細な説明は省略するが、右開口端部52は、上部材12の上壁部14及び前壁部16と、下部材32の底壁部34と、右取付部材80の前壁部86と、で囲われ、左開口端部51における貫通孔21、貫通孔67、及びナット68に対応して貫通孔23、貫通孔87、及びナット88を有する矩形状の開口端部である。
【0040】
後上部材150は、基本的に上方向に凸の形状を呈した板部材であり、上方向の側に配置された上壁部151、上壁部151の左端部から垂下する左側壁部152、上壁部151の右端部から垂下する右側壁部153、及び上壁部151の後端部から垂下する後壁部156を有する。後上部材150では、上壁部151の前端部の中間部がクロスメンバ10の上部材12の上壁部14の後端部にその上方向の側から重なり、その左前端部が左取付部材60の左後部材62の周壁部63にその上方向の側から重なり、その右前端部が右取付部材80の右後部材82の周壁部83にその上方向の側から重なり、前後方向に各々延在する左側壁部152及び右側壁部153が左サイドメンバ110の左下部材117の左側の側壁部128及び右サイドメンバ130の右下部材137の右側の側壁部148に対応して重なっている。このように後上部材150の重なる部分が典型的にはアーク溶接等で対応して溶接されることにより、後上部材150は、上部材12、左取付部材60、右取付部材80、左サイドメンバ110及び右サイドメンバ130と一体化されている。なお、後上部材150の幅方向に延在する後壁部156の左右の両端部と、左サイドメンバ110の左下部材117の後壁部127及び右サイドメンバ130の右下部材137の後壁部147と、は、アーク溶接等で対応して溶接されていてもよい。
【0041】
後上部材150では、上壁部151を各々貫通して、左取付部材60の右斜め後方向の側で前後方向に並んだ一対の貫通孔157及び157、並びに右取付部材80の左斜め後方向の側で前後方向に並んだ一対の貫通孔159及び159が形成されており、かかる一対の貫通孔157及び157、並びに一対の貫通孔159及び159に対応して、上壁部151の一部を下方向に陥設しながら幅方向に延在して形成されると共に、図示を省略するスタビライザバーを幅方向に挿通自在な凹部162及び164が設けられている。後上部材150では、上壁部151を各々貫通して、一対の貫通孔157及び157の左斜め後方向の側に左下部材117の貫通孔123に上方向で対向する貫通孔165、貫通孔165の右斜め後方向の側に左下部材117の貫通孔124に上方向で対向する貫通孔166、一対の貫通孔159及び159の右斜め後方向の側に左下部材117の貫通孔143に上方向で対向する貫通孔167、並びに貫通孔167の左斜め後方向の側に右下部材137の貫通孔144に上方向で対向する貫通孔168が形成されている。貫通孔166及び貫通孔124、並びに貫通孔168及び貫通孔144に各々対応して、クロスメンバ10の内部に、典型的には金属製の筒状部材であって図示を省略するカラー部材が固設されていてもよい。また、後上部材150では、上壁部151を各々貫通して、一対の貫通孔157及び157の右斜め後方向の側に配置されて下部材32の貫通孔46に上方向で対向する貫通孔171、及び一対の貫通孔159及び159の左斜め後方向の側に配置されて下部材32の貫通孔47に上方向で対向する貫通孔172が形成されている。貫通孔171及び46、並びに貫通孔172及び47に各々対応して、クロスメンバ10の内部に、典型的には金属製の筒状部材であって図示を省略するカラー部材が固設されていてもよい。また、後上部材150では、幅方向において貫通孔171及び172の中間の上壁部151に、下部材32の貫通孔45に上方向で対向すると共に、上壁部151を貫通した図示を省略する貫通孔に対応してナット170が固設されている。ナット170の前方向の側では、上壁部151と、上部材12の上壁部14及びフランジ部19並びに下部材32の底壁部34と、の間に開口部が設けられ、クロスメンバ10の内部空間が外方に開いた装着用開口部Iが画成されており、図示を省略するエンジン・トランスミッション系のマウント部材のブラケットは、装着用開口部Iを介し、上部材12の上壁部14、前壁部16及び後壁部18と、下部材32の底壁部34と、によって幅方向に連続して画成される閉断面の上方向の側を通過して、かかるマウント部材のインシュレータブッシュを下部材32の貫通孔45及び上壁部151のナット170の位置まで到達させることが可能となっている。
【0042】
ここで、後上部材150では、上壁部151を各々貫通して、貫通孔165の右方向の側を後方向に向かって右側に斜行しながら前後方向に伸張された長孔部である溶接孔173、及び貫通孔167の左方向の側を後方向に向かって左側に斜行しながら前後方向に伸張された長孔部である溶接孔174が形成されている。溶接孔173を囲う上壁部151の部分には下部材32のバルクヘッド部36のフランジ部37が当接され、かかる状態で溶接孔173の孔周縁と下部材32のバルクヘッド部36のフランジ部37とがアーク溶接等で溶接されると共に、溶接孔174を囲う上壁部151の部分には下部材32のバルクヘッド部38のフランジ部39が当接され、かかる状態で溶接孔173の孔周縁と下部材32のバルクヘッド部38のフランジ部39とがアーク溶接等で溶接されている。併せて、後上部材150では、幅方向に延在する後壁部156の中間部が下部材32の後壁部35に典型的にはアーク溶接等で溶接されている。このように後上部材150が溶接されることにより、後上部材150は、下部材32と一体化されると共に、x-z平面と平行な平面で切った縦断面において、上壁部151、下部材32の底壁部34、並びに下部材32のバルクヘッド部36及び38によって閉断面が画成されている。なお、溶接孔173及び174は、各々、それらの孔周縁のみならずそれらの全体が塞がれるようにプラグ溶接されていてもよいし、その孔周縁の一部のみを溶接するものであってもよい。
【0043】
左サイドメンバ110は、上壁部112及びその左右の両端部から垂下する一対の側壁部115を有して、基本的に上方向に凸の凸形状を呈しながら左方向の側を前後方向に延在する板部材である左上部材111と、左上部材111の下方向の側でそれに対向して配設されると共に、底壁部118及びその左右の両端部から起立する一対の側壁部128を有して、基本的に下方向に凸の凸形状を呈して前後方向に延在する板部材である左下部材117と、を備え、左上部材111が左上サイドメンバに相当し、左下部材117が左下サイドメンバに相当する。左上部材111及び左下部材117は、互いに対応する側壁部115及び128等の壁部同士が典型的にはアーク溶接等で溶接されて一体化されている。左下部材117では、クロスメンバ10、左取付部材60及び右取付部材80に対して上下方向で重なる部分において、一対の側壁部128の内で右側の側壁部128が実質消失している。なお、左サイドメンバ110においては、左上部材111及び左下部材117、特に前後方向で長尺である左下部材117は、板部材の歩留まりを考慮して前後で分割されたものであってもよいし、成形性は煩雑になるが、必要に応じて、左上部材111及び左下部材117は、各々別体の鋼板等の板部材ではなく、これらの全体を単一化した1枚の鋼板等の板部材や筒部材から成形されるものであってもよい。
【0044】
左上部材111は、上壁部112の前端部でそれを貫通した図示を省略する貫通孔に対応して典型的には金属製の筒状部材であるカラー部材113を固設すると共に、その後端部に接続部114を有する。接続部114がクロスメンバ10の上部材12の前壁部16に対して前方向の側から典型的にはアーク溶接等で対応して溶接されることにより、左上部材111は、クロスメンバ10と一体化されている。左上部材111は、接続部114に隣接する前方向の側で、x-z平面に平行な平面で切った縦断面における断面積が上下方向に減じられた部分を有し、かかる部分は、脆弱部116の一部に相当する。また、一対の側壁部128の内の左方向の側の側壁部128には、左開口端部51における貫通孔21、並びに貫通孔67及びナット68にボルトを挿通して締結ができるように、左サイドメンバ110の内部空間が外方に開いた締結用開口部Iが画成されている。
【0045】
左下部材117は、左上部材111の前端部に下方向の側で対向する前端部、及び後上部材150の後端部の後壁部156に下方向の側で対向する後端部である後壁部127を有し、クロスメンバ10の下部材32の底壁部34に対してその下方向の側で底壁部118がそれに接しながら、前後方向に延在している。左下部材117は、その前端部で底壁部118を貫通した貫通孔119を有すると共に、貫通孔119から後方向に向かって順に、各々底壁部118を貫通した溶接孔121及び122、並びに貫通孔123及び124を有する。
【0046】
貫通孔119は、左上部材111のカラー部材113の下方向の側で対向しており、カラー部材113及び貫通孔119に対応して、左サイドメンバ110の内部に、典型的には金属製の筒状部材であって図示を省略するカラー部材が固設されていてもよい。溶接孔121は、溶接孔121を囲む底壁部118の部分にはクロスメンバ10の下部材32の底壁部34が当接された状態で、溶接孔121の孔周縁とクロスメンバ10の下部材32の底壁部34とがアーク溶接等で溶接されるための前方向の側の幅よりも後方向の側の幅が拡張された孔部であり、このように孔周縁が溶接されると共に、底壁部118の右端部がクロスメンバ10の下部材32の左端部に溶接されることにより、左下部材117とクロスメンバ10の下部材32とは、一体化されている。この際、底壁部118とクロスメンバ10の後上部材150の上壁部151とは、クロスメンバ10の下部材32のバルクヘッド部36で仕切られるものであるため、x-z平面と平行な平面で切った縦断面において、底壁部118、側壁部128、クロスメンバ10の後上部材150の上壁部151及び左側壁部152、並びにクロスメンバ10の下部材32のバルクヘッド部36によって閉断面が画成されている。溶接孔122は、溶接孔122を囲む底壁部118の部分に左取付部材60の左後部材62の底壁部71及び左取付部材60の左前部材64の底壁部72が当接された状態で、溶接孔122の孔周縁と左取付部材60の左後部材62の底壁部71及び左取付部材60の左前部材64の底壁部72とがアーク溶接等で溶接されるための孔部であり、このように孔周縁が溶接されることにより、左下部材117と左取付部材60とは、一体化されている。かかる一体化や閉断面を成す構成により、サブフレーム1の強度及び剛性を増大することができると共に、左下部材117と左取付部材60とが一体化された構成を成しているため、典型的には車両の前面衝突時に印加された撃力をクロスメンバ10及び一対の車体取付部材60、80を介して車体に確実に分散して伝達させることが可能である。なお、溶接孔121では、クロスメンバ10の下部材32の底壁部34に加えて、クロスメンバ10の上部材12が溶接されていてもよく、溶接孔122では、左取付部材60の左後部材62の底壁部71及び左取付部材60の左前部材64の底壁部72に加えて、クロスメンバ10の下部材32が溶接されてもよい。また、溶接孔121及び122は、各々、それらの孔周縁のみならずそれらの全体が塞がれるようにプラグ溶接されていてもよいし、その孔周縁の一部のみを溶接するものであってもよい。
【0047】
溶接孔122と貫通孔124との間には、左下部材117の底壁部118を上方向に突設して凸形状とした補強部126が、前後方向において、溶接孔122と貫通孔124とを連続的に繋いで延在して設けられている。ここで、前後方向において、溶接孔122の位置は、左取付部材60のカラー部材78の位置、つまり第3車体取付部A3の位置に相当し、貫通孔124の位置は、第5車体取付部A5の位置に相当するため、補強部126は、前後方向において、第3車体取付部A3と第5車体取付部A5とを連続的に繋いで延在していることになる。また、クロスメンバ10の下部材32のバルクヘッド部36は、補強部126の右方向の側に隣接して並置されて、補強部126に沿いながら前後方向に延在するものであるため、補強部126に加えてバルクヘッド部36により、左下部材117の強度がより増大されている。なお、補強部126は、左下部材117の底壁部118を下方向に突設した凸形状を呈するものであってもよい。
【0048】
また、左上部材111の脆弱部116の一部に下方向の側で対向する左下部材117の部分は、x-z平面に平行な平面で切った縦断面における断面積が上下方向に減じられた脆弱部116の一部に相当し、このような左上部材111及び左下部材117の各々の部分が協働して、第3車体取付部A3及び第4車体取付部A4に対する前方向の側で脆弱部116の全体を構成している。典型的には車両の前面衝突時に左サイドメンバ110に印加される撃力により、かかる脆弱部116が前後方向で圧壊されながら下方向に向かって折れ曲がるような所要の変形モードで変形自在である。かかる前面衝突時に印加された撃力によって脆弱部116が変形する一方で、脆弱部116の後方側にはいずれも強度が増大されて変形に対する耐力が増大されたクロスメンバ10、左取付部材60や補強部126が配置されるため、かかる撃力を脆弱部で吸収すると共に、その残余の撃力をクロスメンバ10、左取付部材60、及び補強部126介して右サイドメンバ130や車体に確実に分散して伝達させることが可能である。なお、左下部材117は、1枚の鋼板等の板部材で構成しているが、必要に応じて、前後方向の途中で分割した複数の鋼板等の板部材を連結して構成してもよい。また、かかる複数の板部材は、それらの板厚を異ならせてもよい。
【0049】
左サイドメンバ110の右側でそれと幅方向で対向して配設される右サイドメンバ130に関連する構成は、左サイドメンバ110に関連する構成に対して、y-z平面と平行な平面であって車体の幅方向の中央を前後方向に走る中央線を通る平面に対して、左右対称なものであるため、その詳細な説明は省略するが、左サイドメンバ110の左上部材111、上壁部112、カラー部材113、接続部114、側壁部115、脆弱部116、左下部材117、底壁部118、貫通孔119、溶接孔121及び122、貫通孔123及び124、補強部126、後壁部127、並びに側壁部128に対応して、右上部材131、上壁部132、カラー部材133、接続部134、側壁部135、脆弱部136、右下部材137、底壁部138、貫通孔139、溶接孔141及び142、貫通孔143及び144、補強部146、後壁部147、並びに側壁部148を有する。
【0050】
以上の構成において、サブフレーム1が車体に装着される各種部位の内、左前の第1車体取付部A1としては、左サイドメンバ110の左上部材111に設けられたカラー部材113、左サイドメンバ110の左下部材117に設けられた貫通孔119及びこれらに対応して設けられて図示を省略するカラー部材が相当し、右前の第2車体取付部A2としては、右サイドメンバ130の右上部材131に設けられたカラー部材133、右サイドメンバ130の右下部材137に設けられた貫通孔139及びこれらに対応して設けられて図示を省略するカラー部材が相当し、左中の第3車体取付部A3としては、左取付部材60の左固定部材76に設けられたカラー部材78が相当し、右中の第4車体取付部A4としては、右取付部材80の右固定部材96に設けられたカラー部材98が相当し、左後ろの第5車体取付部A5としては、左サイドメンバ110の左下部材117に設けられた貫通孔124、後上部材150に設けられた貫通孔166及びこれらに対応して設けられたカラー部材が相当し、並びに右後ろの第6車体取付部A6としては、右サイドメンバ130の右下部材137に設けられた貫通孔144、後上部材150に設けられた貫通孔168及びこれらに対応して設けられたカラー部材が相当する。なお、これらの部位は、いずれも典型的にはボルト等の締結部材を用いる締結用の部位である。また、これらの部位としては、サブフレームマウント部材を介在させないリジット構造を採用した例を想定しているが、サブフレームマウント部材を介在させたフローティング構造を採用するものであってもかまわない。
【0051】
また、サブフレーム1がサスペンションアームの内側ピボット部を各々支持する各種部位の内、左前の第1支持部S1としては、クロスメンバ10の上部材12の貫通孔21、左取付部材60の左前部材64の貫通孔67及びナット68を有する左開口端部51が相当し、右前の第2支持部S2としては、クロスメンバ10の上部材12の貫通孔23、右取付部材80の右前部材84の貫通孔87及びナット88を有する右開口端部52が相当し、左後ろの第3支持部S3としては、左サイドメンバ110の左下部材117に設けられた貫通孔123及び後上部材150に設けられた貫通孔165が相当し、並びに右後ろの第4支持部S4としては、右サイドメンバ130の右下部材137に設けられた貫通孔143及び後上部材150に設けられた貫通孔167が相当する。なお、これらの部位は、いずれも典型的にはボルト等の締結部材を用いる締結用の部位である。また、これらの部位に適用されるサスペンションアームとして、L型ロアアームを採用する例を想定しているが、A型ロアアームや2本のI型ロアアームを採用するものであってもかまわない。また、左前の第1支持部S1、右前の第2支持部S2、左後ろの第3支持部S3及び右後ろの第4支持部S4では、図示を省略するインシュレータブッシュ部材の内筒が各々締結される例を想定している。
【0052】
また、サブフレーム1が各種の外力印加部品を装着する各種取付部の内、ステアリングギヤボックス左取付部A7としては、クロスメンバ10の後上部材150に設けられた貫通孔171、クロスメンバ10の下部材32に設けられた貫通孔46及びこれらに対応して設けられたカラー部材が相当し、ステアリングギヤボックス右取付部A8としては、後上部材150に設けられた貫通孔172、下部材32に設けられた貫通孔47及びこれらに対応して設けられたカラー部材が相当し、トルクロッド取付部A9としては、クロスメンバ10の上部材12に設けられたナット170及び下部材32に設けられた貫通孔45が相当し、スタビライザ左取付部A10としては、後上部材150に設けられた貫通孔157及び157が相当し、スタビライザ右取付部A11としては、後上部材150に設けられた貫通孔158及び158が相当する。なお、これらの部位は、いずれも典型的にはボルト等の締結部材を用いる締結用の部位である。また、ステアリングギヤボックス左取付部A7及びステアリングギヤボックス右取付部A8では、ステアリングギヤボックス本体の左右の取付座が対応して締結される例を想定し、トルクロッド取付部A9では、エンジン・トランスミッション系のマウント部材の内筒が締結される例を想定し、並びにスタビライザ左取付部A10及びスタビライザ右取付部A11では、いずれも図示を省略するが、ブラケットが各々締結されて、かかるブラケットにブッシュ部材を介してスタビライザバーが装着される例を想定している。
【0053】
以上の本実施形態におけるサブフレーム1においては、一対のサイドメンバ110、130が、各々、上サイドメンバ111、131及び上サイドメンバ111、131に対して下方側で対向して延在しながら後方側に伸び出た下サイドメンバ117、137を有し、一対の取付部材60、80が、一対のサイドメンバ110、130の各々の下サイドメンバ111、131に接合されることにより、車両用サブフレーム1の強度及び剛性を増大することができると共に、典型的には車両の前面衝突時に印加された撃力をクロスメンバ10及び一対の車体取付部材60、80を介して車体に確実に分散して伝達させることができ、車両用サブフレーム1に不要な変形や圧壊が発生することを抑制して所要の衝突性能を発揮することができる。
【0054】
また、本実施形態におけるサブフレーム1においては、一対の取付部材60、80の各々には、幅方向に対向して設置された一対のサスペンションアームを対応して支持する一対のアーム支持部S1、S2の一部が設けられることにより、所要の衝突性能を実現しながら、各々のサスペンションアームから印加される幅方向の荷重入力を一対の車体取付部材60、80を介しても受けることにより、サスペンションアームの支持強度や支持剛性を増大することができる。
【0055】
また、本実施形態におけるサブフレーム1においては、一対のサイドメンバ110、130の各々が、一対の中車体取付部A3、A4に対して前方側で、後方側に向かう撃力に対して変形自在な脆弱部116、136を有し、一対のサイドメンバ110、130の各々の下サイドメンバ117、137が、前後方向において一対の中車体取付部A3、A4及び一対の後車体取付部A5、A6の間を対応して連続して繋ぐと共に、上下方向及び幅方向が規定する平面に平行な平面で切った断面で、上方向側又は下方側に凸の形状を呈する補強部126、146を有することにより、サブフレーム1の強度及び剛性を増大することができると共に、典型的には車両の前面衝突時に印加された撃力によって一対のサイドメンバ110、130の脆弱部116、136が変形する一方で補強部126、146は変形しないため、かかる撃力を脆弱部116、136で吸収すると共に、その残余の撃力をクロスメンバ10、一対の車体取付部材60、80及びそれらよりも後方側にある一対のサイドメンバ110、130の部分を介して車体に確実に分散して伝達させることができ、サブフレーム1に不要な変形や圧壊が発生することを抑制して所要の衝突性能を発揮することができる。
【0056】
また、本実施形態におけるサブフレーム1においては、幅方向における下クロスメンバ32の両端部が、一対のサイドメンバ110、130の各々の下サイドメンバ117、137の補強部126、146に沿いながら前後方向に延在すると共に、上方側に向かって各々起立する一対のバルクヘッド部36、38を構成し、上下方向における一対のバルクヘッド部36、38の上端部が、上クロスメンバ150に各々接合された構成を有するものであるため、一対のサイドメンバ110、130の脆弱部116、136よりも後方側のサブフレーム1の強度及び剛性を増大することができ、典型的には車両の前面衝突時に印加された撃力をより確実に分散して車体に伝達させることができる。
【0057】
また、本実施形態におけるサブフレーム1においては、上下方向及び幅方向が規定する平面に平行な平面で切った断面で、上クロスメンバ150、下クロスメンバ32及び一対のバルクヘッド部36、38が協働した閉断面、上クロスメンバ150、一対のサイドメンバ110、130の一方の下サイドメンバ117、137及び一対のバルクヘッド部36、38の一方が協働した閉断面、並びに上クロスメンバ150、一対のサイドメンバ110、130の他方の下サイドメンバ137、117及び一対のバルクヘッド部36、38の他方が協働した閉断面を各々呈するものであるため、一対のサイドメンバ110、130の脆弱部116、136よりも後方側のサブフレーム1の強度及び剛性をより増大することができ、典型的には車両の前面衝突時に印加された撃力を更に確実に分散して車体に伝達させることができる。
【0058】
なお、本発明は、部材の種類、形状、配置、個数などは前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明においては、主構成材にプレス成形品を統一して適用しながら、強度及び剛性を高めることができると共に、所要の衝突性能を発揮することができる車両用サブフレームを提供することができるものであるため、その汎用普遍的な性格から広範に車両等の移動体のサブフレームの分野に適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0060】
1…サブフレーム
10…クロスメンバ
12…上部材
14…上壁部
15、17…フランジ部
16…前壁部
18…後壁部
21、23…貫通孔
32…下部材
34…底壁部
35…後壁部
36、38…バルクヘッド部
37、39…フランジ部
40…溶接孔
42…リブ部
44…凸部
45、46、47…貫通孔
51…左開口端部
52…右開口端部
60…左取付部材
62…左後部材
63…周壁部
64…左前部材
65…周壁部
66…前壁部
67…貫通孔
68…ナット
71、72…底壁部
74…左ブラケット
76…左固定部材
77…ボルト
78…カラー部材
80…右取付部材
82…右後部材
83…周壁部
84…右前部材
85…周壁部
86…前壁部
87…貫通孔
88…ナット
91、92…底壁部
94…右ブラケット
96…右固定部材
97…ボルト
98…カラー部材
110…左サイドメンバ
111…左上部材
112…上壁部
113…カラー部材
114…接続部
115…側壁部
116…脆弱部
117…左下部材
118…底壁部
119…貫通孔
121、122…溶接孔
123、124…貫通孔
126…補強部
127…後壁部
128…側壁部
130…右サイドメンバ
131…右上部材
132…上壁部
133…カラー部材
134…接続部
135…側壁部
136…脆弱部
137…右下部材
138…底壁部
139…貫通孔
141、142…溶接孔
143、144…貫通孔
146…補強部
147…後壁部
148…側壁部
150…後上部材
151…上壁部
152…左側壁部
154…右側壁部
156…後壁部
157、159…貫通孔
162、164…凹部
165、166、167、168、171、172…貫通孔
170…ナット
173、174…溶接孔
A1…第1車体取付部
A2…第2車体取付部
A3…第3車体取付部
A4…第4車体取付部
A5…第5車体取付部
A6…第6車体取付部
A7…ステアリングギヤボックス左取付部
A8…ステアリングギヤボックス右取付部
A9…トルクロッド取付部
A10…スタビライザ左取付部
A11…スタビライザ右取付部
S1…第1支持部
S2…第2支持部
S3…第3支持部
S4…第4支持部
T…締結用開口部
I…装着用開口部