(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】回転割出し装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 16/02 20060101AFI20230616BHJP
B23Q 1/52 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
B23Q16/02 Z
B23Q1/52
(21)【出願番号】P 2019217856
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桐木 正雄
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-18678(JP,A)
【文献】特開2010-125559(JP,A)
【文献】特開平11-48063(JP,A)
【文献】実開平5-70838(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 16/02
B23Q 1/52
B23Q 1/00、 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームの収容孔内に回転可能に収容される主軸と、前記フレーム内に固定的に配置されたディストリビュータ及び該ディストリビュータに嵌装されると共に前記主軸に取り付けられたシャフトから成るロータリジョイントと、前記主軸により回転駆動される治具プレートであって内部に流路が形成された治具プレート及び前記流路の流出口に接続されるように前記治具プレート上に設置された治具を備えた治具ユニットとを含む回転割出し装置において、
前記シャフトは、前記ディストリビュータに嵌装される胴部と該胴部の一端側で前記胴部に対し拡径されたフランジ部とから成ると共に、前記ディストリビュータに連通された供給路の流出口が前記フランジ部の下面に開口するように構成されており、
前記治具プレートは、前記シャフトにおける前記フランジ部の外径より大きい内径の貫通孔であって前記フランジ部が配置される貫通孔を有すると共に前記主軸に対し直接的に取り付けられており、前記流路は、流入口が前記治具プレートの下面に開口するように形成されており、
前記シャフトの前記胴部が挿通される挿通孔を有する共に前記挿通孔に前記胴部が挿通された状態で前記フランジ部の下面及び前記治具プレートの下面に当接するように配置されるアダプタであって、前記シャフトにおける前記供給路の流出口と前記治具プレートにおける前記流路の流入口とを連通させる連通路を有するアダプタを備える
ことを特徴とする回転割出し装置。
【請求項2】
前記アダプタは、前記フランジ部の半径方向における前記治具プレートの存在範囲では、前記主軸にのみ固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の回転割出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレームの収容孔内に回転可能に収容される主軸と、フレーム内に固定的に配置されたディストリビュータ及び該ディストリビュータに嵌装されると共に主軸に取り付けられたシャフトから成るロータリジョイントと、主軸により回転駆動される治具プレートであって内部に流路が形成された治具プレート及び流路の流出口に接続されるように治具プレート上に設置された治具を備えた治具ユニットとを含む回転割出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械に用いられる回転割出し装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。その回転割出し装置は、フレームの収容孔内に収容されると共に一端側に面盤としてのテーブル(円テーブル)が取り付けられた支持部材(主軸)及びその主軸を回転駆動する駆動機構を備え、円テーブル及び主軸が回転駆動されることにより、その角度位置が割り出されるように構成されている。そして、そのような回転割出し装置においては、円テーブル上にワークが設置され、前記のように角度位置が割り出された状態で、そのワークに対する加工が行われる。
【0003】
なお、特許文献1には開示されていないが、回転割出し装置において前記のようにワークを円テーブル上に設置するにあたっては、クランプ装置等の複数の治具が用いられる。但し、そのような複数の治具を個別に円テーブル上に設置するのは作業性の面で効率が悪いため、一般的には、治具を設置するための治具プレートが用いられる。より詳しくは、ワークに合せた配置で複数の治具が予め治具プレート上に設置された治具ユニットとして準備され、その治具ユニットが円テーブル上に設置される。
【0004】
そして、そのように円テーブル上に設置された治具プレート上の各治具に対し圧力流体が供給されることで、治具プレート(円テーブル)上でワークが保持された状態とされる。また、その圧力流体の供給について、一般的な回転割出し装置における円テーブル(面盤)には流路は形成されていないため、前記のような治具ユニットが用いられる場合には、治具プレートの内部に各治具に対応する複数の流路が設けられ、その流路を介して各治具に対し圧力流体が供給される。
【0005】
その上で、特許文献1にも開示されているように、回転割出し装置には、フレームの内部にロータリジョイントが備えられる。そのロータリジョイントは、円テーブル上の装置に圧力流体を供給するために設けられている。そして、前記のように治具ユニットが円テーブル上に設置される場合には、そのロータリジョイントを介して治具ユニットに圧力流体が供給される。
【0006】
そのロータリジョイントは、フレーム内に固定的に配置されたディストリビュータと、ディストリビュータに嵌装されたシャフトとで構成されている。また、シャフトは、円テーブルに対し取り付けられ、円テーブル(主軸)の回転に伴ってディストリビュータに対し相対回転するように設けられている。そして、そのロータリジョイントにおけるディストリビュータ及びシャフトには、複数の治具に対し圧力流体を供給するため複数の流路が内部に形成されている。さらに、そのロータリジョイントにおいては、ディストリビュータとシャフトとの間で前記の複数の流路間での圧力流体の漏出を防止するために、シャフトの内周面に挿着されるかたちでOリング等の回転シール(シール部材)が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、そのシャフトに装着されたシール部材は、摩耗や経年劣化などにより、定期的に交換する必要がある。そして、そのシール部材を交換する作業を行うにあたっては、シャフトを回転割出し装置から取り外す作業が行なわれる。そこで、特許文献1の回転割出し装置は、テーブルを主軸から取り外すことなく、シャフトを回転割出し装置から取り外すことができるように構成されている。
【0009】
しかし、前記のように回転割出し装置の円テーブル上には治具プレートを含む治具ユニットが設置されるため、シャフトを取り外すにあたっては、治具ユニットを取り外す作業が必要となる。また、当然ながら、シール部材を交換してシャフトを回転割出し装置に戻した後に、治具ユニットを再び円テーブルに取り付ける必要があるが、その取り付けにあたっては、治具ユニットの調整作業が必要となる。このように、従来の回転割出し装置におけるロータリジョイントのシール部材の交換作業は、そのような治具ユニットの脱着作業を伴うため、多大な労力と時間を要するという問題を有している。
【0010】
そこで、本発明は、治具ユニットを用いてワークを設置する回転割出し装置において、ロータリジョイントにおけるシール部材を交換するための回転割出し装置からのシャフトの取り外しを行う上で、前記のような問題を生じる治具ユニットの脱着作業を必要としない構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、フレームの収容孔内に回転可能に収容される主軸と、フレーム内に固定的に配置されたディストリビュータ及びそのディストリビュータに嵌装されると共に主軸に取り付けられたシャフトから成るロータリジョイントと、主軸により回転駆動される治具プレートであって内部に流路が形成された治具プレート及び流路の流出口に接続されるように治具プレート上に設置された治具を備えた治具ユニットとを含む回転割出し装置を前提とする。
【0012】
そして、前記の目的を達成すべく、本発明は、前記のような回転割出し装置において、シャフトを、ディストリビュータに嵌装される胴部と該胴部の一端側で胴部に対し拡径されたフランジ部とから成ると共にディストリビュータに連通された供給路の流出口がフランジ部の下面に開口するように構成し、且つ、治具プレートを、シャフトにおけるフランジ部の外径より大きい内径の貫通孔であってフランジ部が配置される貫通孔を有すると共に主軸に対し直接的に取り付けられるものとする。さらに、その治具プレートにおける流路は、その流入口が前記治具プレートの下面に開口するように形成されているものとする。その上で、本発明の回転割出し装置は、シャフトの胴部が挿通される挿通孔を有する共に挿通孔に胴部が挿通された状態でフランジ部の下面及び治具プレートの下面に当接するように配置されるアダプタであって、シャフトにおける供給路の流出口と治具プレートにおける流路の流入口とを連通させる連通路を有するアダプタを備えることを特徴とする。
【0013】
また、そのような本発明による回転割出し装置において、アダプタは、フランジ部の半径方向における治具プレートの存在範囲では、主軸にのみ固定されているものとしても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明による回転割出し装置によれば、治具プレートは、その取り付け状態において、主軸に対し直接的に取り付けられている。すなわち、本発明による回転割出し装置は、従来の回転割出し装置のように円テーブルが主軸に対し取り付けられていてその円テーブル上に治具プレートが設置されるのではなく、治具プレートが主軸に対し直接的に取り付けられていて円テーブルが省略された構成となっている。その上で、その治具プレートは、シャフトにおけるフランジ部の外径部より大きい内径の貫通孔であって、シャフトにおける最も大径の部分であるフランジ部がその内側に配置される貫通孔を有するように形成されている。したがって、その回転割出し装置においては、治具プレートが主軸に取り付けられた状態でも、シャフトのフランジ部が外部に露出された状態となっている。
【0015】
それにより、回転割出し装置からシャフトを取り外す作業を、治具プレート(治具ユニット)が主軸に取り付けられたままの状態で行うことができる。したがって、ロータリジョイントにおけるシール部材を交換するために回転割出し装置からシャフトを取り外す作業を行う場合でも、従来の回転割出し装置のように治具ユニットを取り外すことなく、その作業が行えるため、治具ユニットの着脱に伴う前記のような問題(作業者に対する負担)が生じることがない。
【0016】
また、本発明による回転割出し装置においては、シャフトにおける圧力流体供給用の供給路は、流出口がフランジ部の下面に開口するように形成されており、また、治具プレートにおける流路は、流入口が下面に開口するように形成されている。その上で、本発明による回転割出し装置は、そのシャフトの供給路における流出口と治具プレートの流路における流入口とが、フランジ部の下面及び治具プレートの下面に当接させて設けられたアダプタの連通路によって連通される構成となっている。そして、その構成によれば、回転割出し装置が大型化することや、圧力流体を治具に供給するための流路構成が複雑になるといったことを防ぐことができる。詳しくは、以下の通りである。
【0017】
例えば、特許文献1の回転割出し装置において、円テーブルが前記した治具プレートと同様に機能するように円テーブルをその内部に流路が形成された構成とすることを考えた場合、特許文献1に開示された構成からすると、ロータリジョイントのシャフトにおけるフランジ部の外周面に、その供給路の流出口を開口させることとなる。しかし、その構成の場合、前述のようにシャフトには複数の供給路が形成されており、また、流路間での圧力流体の漏出を防ぐためのシール部材がフランジ部の外周を亘るように設けられるため、その複数の流出口は、フランジ部の外周面において、シャフトの軸線方向に並べて開口するように形成されることとなる。そのため、その軸線方向におけるフランジ部の寸法が大きくなり、結果として、回転割出し装置が大型化してしまう。
【0018】
また、そのような大型化を避けるべく、流出口を胴部の外周面に開口させ、ホース等の管体でロータリジョイント(シャフト)と円テーブルの内部に形成された流路とを連通させるといった構成も考えられる。しかし、その構成の場合、フレームの内部に複数本の管体が配管されるという構成となるため、その流路構成が複雑なものとなってしまう。さらに、その構成の場合、その管体はシャフト及び円テーブルに接続されていてそれらと共に回転するため、配管だけでなく、その回転を許容する空間がフレーム内に必要となる。したがって、その構成の場合も、回転割出し装置が大型化してしまう。
【0019】
それに対し、本発明による回転割出し装置によれば、シャフトにおける供給路及び治具プレートにおける流路を前記のように形成すると共に、アダプタを用いてそれらを連通させる流路構成が採用されているため、供給路における各流出口及び流路における各流入口は、シャフトのフランジ部及び治具プレートのそれぞれにおいて、円周方向に並べられるかたちで形成されることとなる。したがって、シャフトにおけるフランジ部の前記軸線方向における寸法や治具プレートの厚さ寸法を大きくする必要がなく、また、前記のような管体をフレームの内部に配管する必要も無い。それにより、回転割出し装置が大型化することや、流路構成が複雑化することを防ぐことができる。
【0020】
また、前記のようなアダプタを用いた流路構成の場合、そのアダプタは、前記半径方向に関し、シャフトのフランジ部及び治具プレートと重複して配置される。その上で、アダプタは、シャフト及び治具プレートに対し相対回転不能となるように取り付けられるが、その治具プレート側の取り付けを、治具プレートに対し固定するのではなく、治具プレートが取り付けられる主軸に対し固定するかたちで行うことで、治具ユニットの交換作業が容易に行うことができる。
【0021】
より詳しくは、回転割出し装置は、シャフトの供給路と治具プレートの流路とを連通させるべくアダプタが前記のように配置される構成となっており、そのような構成の場合、
通常では、アダプタは、その連通させる供給路、流路が形成されたシャフトのフランジ部及び治具プレートに対し直接的に固定される。また、一般的には、その固定は、ネジ部材を用いて行われる。
【0022】
ところで、回転割出し装置においては、治具ユニットは、加工するワークに応じたものが用いられる。したがって、加工するワークを変更する場合には、治具ユニットを変更後のワークに応じた別の治具ユニットに交換する交換作業を行う必要がある。なお、本発明では前述のように治具プレートが主軸に対し直接的に取り付けられているため、その交換作業にあたっては、少なくとも治具プレートと主軸との固定状態を解除する(治具プレートを主軸に対し固定しているネジ部材を取り外す)必要がある。また、アダプタは、ロータリジョイント側では、シャフトに対し固定されている。その上で、前記のように治具プレート側でアダプタが治具プレートに対し固定されていると、前記の交換作業にあたっては、作業者は、治具プレートとアダプタとを固定しているネジ部材を取り外す作業も行わなければならない。
【0023】
それに対し、前記のようにアダプタの治具プレート側の取り付けが主軸に対し固定するかたちで行われる構成とすることにより、前記の交換作業において、治具プレートと主軸とを固定しているネジ部材を取り外すのみで、治具ユニットを取り外すことが可能となる。それにより、ワークの変更に伴って治具ユニットを変更するための交換作業が容易に行われるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による回転割出し装置の一実施形態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下では、
図1に基づき、本発明による回転割出し装置の一実施形態(実施例)について説明する。
【0026】
回転割出し装置1は、その構成要素として、工作機械等に設置されるフレーム10と、治具ユニット40が取り付けられる主軸20と、その主軸20を回転駆動する駆動機構30とを備えている。それらのうち、フレーム10は、主軸20、駆動機構30における駆動伝達部等が配置される収容孔10aをその内部に有している。そして、主軸20は、その収容孔10a内において軸受12を介してフレーム10に支持されるかたちで、フレーム10に対し回転可能に支持されている。
【0027】
なお、収容孔10aは、その内部に配置される主軸20の軸線方向に貫通する貫通孔として形成されている。但し、フレーム10は、工作機械等に載置される部分であるベース部10bを有しており、収容孔10aは、そのベース部10bの部分において径が小さくなるように形成されている。そして、主軸20は、その軸線方向における一端側の端面をフレーム10に対し露出すると共に、他端側がフレーム10(収容孔10a)内に位置するように設けられている。
【0028】
駆動機構30は、本実施例ではウォームギア機構を用いたものであって、駆動モータ(図示略)と、前記した駆動伝達部としてのウォームスピンドル32及びウォームホイール34とで構成されている。そのウォームホイール34は、フレーム10の収容孔10a内において主軸20の他端側の部分に対し相対回転不能に固定されている。また、ウォームスピンドル32は、駆動モータの出力軸に連結されると共に、ウォームホイール34と噛合するように設けられている。したがって、ウォームスピンドル32が駆動モータによって回転駆動されることで、ウォームホイール34を介して主軸20が回転駆動される。
【0029】
そして、本発明による回転割出し装置1では、主軸20に対し直接的に取り付けられるかたちで、治具ユニット40が備えられている。その治具ユニット40は、主軸20に対し直接的に取り付けられる治具プレート42と、その治具プレート42上に配置される治具44とで構成されている。
【0030】
その治具ユニット40について、より詳しくは、治具プレート42は、円盤状の部材であり、その厚さ方向における両端面の一方を主軸20における前記一端側の端面に当接させた状態で、主軸20に対し相対回転不能に固定されている。なお、その固定は、治具プレート42に対しその厚さ方向に挿入された複数のネジ部材を主軸20に対し螺挿するかたちで行われている。また、その固定された状態では、平面視において、治具プレート42の中心と主軸20の軸心とが一致している。そして、治具プレート42が主軸20に対しそのように取り付けられることで、治具プレート42における主軸20側とは反対側の端面が、治具44等を設置されると共にワークが載置される設置面42aとなる。
【0031】
また、治具44は、加工されるワークを保持するためのものであって、例えば、クランプ装置等がその治具44として用いられる。その治具44は、ワークの形状等に合せた数(種類)及び配置で治具プレート42の設置面42a上に載置され、適当な固定手段(図示略)より治具プレート42に対し固定されている。なお、クランプ装置等の治具44は、圧力流体70で作動する。そこで、治具プレート42には、そのような治具44に対し圧力流体70を供給するための流路42cが、その内部に形成されている。その流路42cは、治具44の設置位置に応じた位置において、流出口42fが設置面42aに開口するように形成されている。そして、治具44は、その圧力流体70の供給口を治具プレート42における流路42cの流出口42fに連通させた状態で、治具プレート42上に設置される。
【0032】
その上で、回転割出し装置1は、治具プレート42の流路42cを介して治具44に圧力流体70を供給するためのロータリジョイント50を備えている。そのロータリジョイント50は、フレーム10に対し固定される円柱状のディストリビュータ52と、そのディストリビュータ52に対し相対回転可能に嵌装されると共に主軸20と共に回転する円筒状のシャフト54とで構成されている。そして、そのロータリジョイント50は、その軸線を主軸20の軸線に一致させた配置で、その軸線方向においてフレーム10のベース部10bから治具プレート42に亘って存在するように設けられている。したがって、主軸20は、そのようなロータリジョイント50の配置を許容する(ロータリジョイント50が挿通される)挿通孔20aを有している。また、治具ユニット40における治具プレート42にも、ロータリジョイント50の配置を許容する孔が形成されている(詳細は後述)。
【0033】
そのロータリジョイント50について、より詳しくは、ディストリビュータ52は、シャフト54が嵌装される軸部52aを主体として構成されており、その軸部52aの一端側に、軸部52aよりも大径のフランジ部52bを有している。そして、ディストリビュータ52は、そのフランジ部52bにおいてフレーム10におけるベース部10bに対し固定される。そこで、フレーム10における収容孔10aのベース部10bを貫通する部分(貫通部)は、外側の部分がディストリビュータ52のフランジ部52bの外径に応じた内径であり、それ以外の部分がその外側の部分より小さい内径であるように形成されている。すなわち、収容孔10aにおける貫通部は、その貫通方向において途中で内径が変わるように形成されている。したがって、ベース部10bには、その貫通部の中に外側を向く面が存在しており、その面がディストリビュータ52をフレーム10に対し取り付けるための取付面10cとなる。
【0034】
その上で、ディストリビュータ52は、その軸部52aがフレーム10の収容孔10a側に位置する向きで、フランジ部52bにおける一方の端面をベース部10bにおける前記した取付面10cに当接させた状態で、フレーム10に対し固定されている。なお、その固定方法は、フランジ部52bに対しその厚さ方向に挿入された複数のネジ部材をフレーム10に対し螺挿するかたちで行われる。また、ディストリビュータ52の軸部52aは、ディストリビュータ52がフレーム10に対しそのように固定された状態で、その軸線方向に関し、その端面が治具プレート42に形成された前記孔内に位置するような長さ寸法を有している。言い換えれば、ディストリビュータ52がフレーム10に対し固定された状態で、その軸部52aの端面は、治具プレート42に形成された前記孔内に位置している。
【0035】
また、シャフト54は、一端側が閉塞された円筒状の胴部54aであってディストリビュータ52の軸部52aに嵌装される胴部54aと、胴部54aの外径よりも大径のフランジ部54bであって胴部54aの前記一端側に形成されたフランジ部54bとを有している。そして、ロータリジョイント50においては、そのシャフト54がディストリビュータ52の軸部52aに対し相対回転可能に嵌装される。また、シャフト54は、フレーム10に固定されたディストリビュータ52に嵌装された状態で、その軸線方向に関し、端面の位置が治具プレート42における設置面42aの位置と略一致するような寸法を有している。したがって、シャフト54のフランジ部54bは、シャフト54がディストリビュータ52に嵌装された状態で、前記した治具プレート42に形成された孔内に位置している(配置されている)。
【0036】
なお、その治具プレート42に形成された孔について、その孔は、前記のようにフランジ部54bが配置されて治具プレート42が固定される主軸20に対しフランジ部54b(シャフト54)を取り付けるための取付孔42bであって本発明の貫通孔としての取付孔42bである。また、その取付孔42bは、治具プレート42の厚さ方向に関し、略中間部において内径が変わるように形成されており、設置面42a側の部分の内径に対し主軸20側の部分の内径が大きい孔として形成されている。したがって、治具プレート42においては、その内周側の部分(内側部)の厚さ寸法がそれ以外(外周側)の部分よりも小さくなっている。
【0037】
その上で、シャフト54のフランジ部54bは、その外径が前記した取付孔42bにおける設置面42a側の部分の内径と略同じであるように形成されている。また、フランジ部54bは、その厚さ寸法が治具プレート42における前記した内側部の厚さ寸法と略一致するように形成されている。それにより、シャフト54がディストリビュータ52に嵌装された状態では、フランジ部54bは、端面が治具プレート42の設置面42aと略面一となった状態で、その外周面が治具プレート42における内側部の内周面(取付孔42bの設置面42a側の部分)と当接した状態となる。
【0038】
そのように構成されたロータリジョイント50は、前記のように治具ユニット40に対し圧力流体70を供給するためのものである。したがって、圧力流体70の供給対象である治具44の数に応じた流路を有している。より詳しくは、ディストリビュータ52には、その外周面に複数の溝52cが軸線方向に等間隔に形成されると共に、円周方向に位置をずらして設けられた複数の流路52dがそれぞれ異なる前記溝52cに連通する(開口する)ように形成されている。なお、そのディストリビュータ52に形成された各流路52dには、フレーム10に形成された流路を介して圧力流体70が供給される。
【0039】
また、シャフト54には、治具ユニット40に圧力流体70を供給するための複数の供給路54cが、円周方向に位置をずらして形成されている。その各供給路54cは、その流入口54eが胴部54aの内周面に開口し、それぞれが異なる前記溝52cに連通するように形成されている。また、各供給路54cは、シャフト54の前記一端側においては、フランジ部54bに向けて半径方向に延びるように形成されている。なお、シャフト54における胴部54aの内周面には、シャフト54がディストリビュータ52に嵌装された状態で軸線方向における前記溝52cの両側の位置に、圧力流体70の漏出を防止するシール部材56が挿着されている。
【0040】
以上のように構成された回転割出し装置1において、本発明では、前記のようにシャフト54に形成された各供給路54cは、その流出口54fが(シャフト54(フランジ部54b)の周面では無く)フランジ部54bの下面に開口するように形成されている。したがって、フランジ部54bにおいては、各供給路54cの流出口54f側の部分が前記のように半径方向に延びる部分から下面側に向けて延びるように形成されると共に、その各流出口54fが下面において円周方向に位置をずらして開口している。
【0041】
また、治具プレート42には、前記のように治具44に対し圧力流体70を供給するための流路42cが各治具44に対応させるかたちで内部に複数形成されている。そして、その各流路42cは、流入口42eが治具プレート42の下面に開口するように形成されている。より詳しくは、治具プレート42は、前記のように厚さ寸法がそれ以外の部分よりも小さい内周部を内周側に有している。そして、各流路42cは、その流入口42eがその治具プレート42における内周部の下面(厚さ方向における設置面42aとは反対側の面)に開口するように形成されている。なお、その各流路42cの流入口42eも、治具プレート42(内周部)の下面において、円周方向に位置をずらして形成されている。
【0042】
その上で、本発明による回転割出し装置1は、シャフト54における供給路54cの流出口54fと治具プレート42における流路42cの流入口42eとを連通させる連通路60bを有するアダプタ60を備えている。そのアダプタ60について、より詳しくは、以下の通りである。
【0043】
アダプタ60は、円盤状の部材であって、その中心に孔(中心孔60a)が形成された部材である。なお、その中心孔60aは、その内側にシャフト54の胴部54aを配置できるように、その内径がシャフト54の胴部54aの外径と略同じであるように形成されている。また、アダプタ60は、その外径が前記した治具プレート42(内周部)における取付孔42bの前記した主軸20側の部分の内径と略同じであると共に、その厚さ寸法が治具プレート42における内周部の下面から治具レートの下面との間の寸法と略同じであるように形成されている。
【0044】
なお、本実施例の回転割出し装置1において、シャフト54のフランジ部54bが内側に配置される治具プレート42の取付孔42bは、前記のように治具プレート42における内周部と外周部との厚さ寸法が異なることで、中間部よりも主軸20側の部分の内径が設置面42a側の部分よりも大きくなっている。そして、治具プレート42における内周部の厚さ寸法とフランジ部54bの厚さ寸法が一致していることで、治具プレート42とシャフト54との間には、フランジ部54b及び内周部の下面と胴部54aの外周面及び取付孔42bの内周面とで囲まれた空間が存在している。
【0045】
そして、アダプタ60は、前記した治具プレート42とシャフト54とで囲まれた空間に配置される。具体的には、アダプタ60は、回転割出し装置1内において、その前記中心孔60aにシャフト54の胴部54aが挿通された状態で、その厚さ方向における一端側の端面がフランジ部54bの下面及び前記した治具プレート42における内周部の下面に当接すると共に、外周面が治具プレート42における取付孔42bの前記した主軸20側の部分の内周面と当接した状態で、前記空間に配置されている。そして、アダプタ60は、シャフト54及び治具プレート42に対し、固定的に設けられて相対回転不能となっている。
【0046】
その固定について、シャフト54とアダプタ60との間の固定については、シャフト54におけるフランジ部54bに対し円周方向に位置をずらして厚さ方向に挿入された複数のネジ部材がアダプタ60に対し螺挿されるかたちで行われる。
【0047】
また、アダプタ60と治具プレート42との間の固定について、前述のように、治具プレート42は、主軸20における前記一端側の端面に当接させた状態で主軸20に対し取り付けられている。また、主軸20における挿通孔20aの内径は、アダプタ60における前記中心孔60aと同じく、シャフト54の胴部54aの外径と略同じとなっている。さらに、アダプタ60の厚さ寸法は、前述のように、治具プレート42における内周部の下面から治具レートの下面との間の寸法と略同じとなっている。したがって、前記空間に配置された状態では、アダプタ60は、主軸20における前記一端側の端面に当接している。
【0048】
その上で、アダプタ60は、そのアダプタ60に対し円周方向に位置をずらして厚さ方向に挿入された複数のネジ部材が主軸20に対し螺挿されるかたちで主軸20に固定されている。そして、前記のように治具プレート42が主軸20に相対回転不能に固定されていることから、アダプタ60は、その主軸20を介して治具プレート42に対し相対回転不能に固定配置された状態となっている。このように、本実施例では、アダプタ60は、治具プレート42に対し固定的に設けられるが、その固定状態は主軸20を介した間接的なものであり、半径方向における治具プレート42の存在範囲では、主軸20に対してのみ直接的に固定されている。
【0049】
また、アダプタ60には、治具ユニット40に圧力流体70を供給するための複数の連通路60bが、円周方向に位置をずらし、内周部から外周部に向けて半径方向に延びるように形成されている。但し、その各連通路60bは、前記のように形成されたシャフト54における供給路54cの流出口54f及び治具プレート42における流路42cの流入口42eに連通するように、その流入口60e及び流出口60fが前記一端側の端面(シャフト54のフランジ部54b及び治具プレート42に当接する端面)に開口するように形成されている。したがって、各連通路60bは、流入口60e側及び流出口60f側の部分が前記のように半径方向に延びる部分から前記一端側の端面に向けてアダプタ60の厚さ方向に延びるように形成されている。
【0050】
以上のように構成された回転割出し装置1では、先ずは主軸20に対しアダプタ60が前記のようにして固定されて組み付けられ、それに次いで、アダプタ60の中心孔60a及び主軸20の挿通孔20aに挿通されるかたちで、ロータリジョイント50のシャフト54がフレーム10の収容孔10a内へ挿入される。そして、その状態において前記のようにしてアダプタ60とシャフト54とが固定されることで、シャフト54が回転割出し装置1において組み付けられた状態となる。その上で、治具プレート42がその取付孔42bにおいてシャフト54のフランジ部54b及びアダプタ60に対し嵌め合わされるかたちで組み合わされ、その状態で前記のようにして治具プレート42と主軸20とが固定されることで、治具ユニット40が回転割出し装置1において組み付けられた状態となる。
【0051】
本実施例の回転割出し装置1は、このようにしてアダプタ60、ロータリジョイント50のシャフト54、治具ユニット40が組み付けられたかたちで構成されている。なお、前述のようにシャフト54のフランジ部54bの外径と治具プレート42の取付孔42bにおける設置面42a側の部分の内径とは略同じであることから、シャフト54及び治具プレート42が前記のように組み付けられた状態では、平面視においてシャフト54のフランジ部54bは治具プレート42の取付孔42b内に配置されており、両者は半径方向において重複していない。したがって、そのように構成された回転割出し装置1によれば、アダプタ60とシャフト54とを固定しているネジ部材を取り外すだけで、治具ユニット40を主軸20から取り外すことなく、シャフト54を取り外すことができる。
【0052】
さらに、前述のようにアダプタ60は、その半径方向における治具プレート42の存在範囲では、すなわち、半径方向においてアダプタ60と治具プレート42とが重複する範囲では、主軸20に対してのみ直接的に固定されている。言い換えれば、その構成においては、アダプタ60と治具プレート42とは直接的に固定されておらず、その固定のためのネジ部材等も存在していない。したがって、その構成によれば、治具プレート42と主軸20とを固定しているネジ部材を取り外すのみで、治具ユニット40を取り外すことができる。
【0053】
以上では、本発明が適用された回転割出し装置の一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)について説明した。しかし、本発明は、前記実施例において説明したものに限定されるものではなく、以下のような別の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0054】
(1)前記実施例では、治具プレート42とシャフト54とで前記空間が形成され、その空間にアダプタ60が配置されている。そして、その空間は、治具プレート42における取付孔42bを前述のように形成すると共に、シャフト54におけるフランジ部54bの厚さ寸法を治具プレート42における前記内周部の厚さ寸法と略一致させることにより形成されている。しかし、本発明において、シャフトのフランジ部及び治具プレートは、前記実施例のように形成されたものに限らない。
【0055】
例えば、治具プレートにおける前記内周部の厚さ寸法とシャフトにおけるフランジ部の厚さ寸法とが異なるようにそれぞれが形成されていても良い。なお、その場合、前記空間の主軸と対向する面を形成するフランジ部及び治具プレートの下面は、軸線方向において異なる位置に存在することとなる。そこで、その場合には、アダプタは、その一端側の端面がフランジ部及び治具プレートの下面と当接可能となるような段部を有する形状であるように形成される。
【0056】
また、治具プレートにおける取付孔は、前記実施例のように、略中間部において径が変わるような孔として形成されたものに限らず、板厚方向に亘って同じ径の孔として形成されていても良い。その場合において、シャフトのフランジ部は、その厚さ寸法が治具プレートの厚さ寸法と略一致するものであっても良いし、異なるものであっても良い。なお、前者の場合、アダプタは、形状としては前記実施例と同じで良いが、治具プレートに対する配置については、治具プレートの板厚方向に関し治具プレートと重複しない位置で治具プレートと当接する配置となる。また、後者の場合、アダプタは、治具プレートに対する配置については前記の前者の場合と同じであり、形状については、前述した例と同様に一端側の端面が段部を有する形状となる。
【0057】
(2)治具プレート42に対するアダプタ60の固定状態を実現するための構成について、前記実施例では、アダプタ60は、治具プレート42が固定された主軸20に対しネジ部材によって(直接的に)固定されるかたちで設けられており、治具プレート42に対しては間接的に固定されるかたちとなっている。しかし、本発明においては、治具プレートに対しアダプタを固定状態とする上で、その構成は、前記実施例のようなものに限らず、アダプタを主軸ではなく治具プレートに対し直接的に固定するようにしたものであっても良い。
【0058】
また、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 回転割出し装置
10 フレーム
10a 収容孔
10b ベース部
10c 取付面
12 軸受
20 主軸
20a 挿通孔
30 駆動機構
32 ウォームスピンドル
34 ウォームホイール
40 治具ユニット
42 治具プレート
42a 設置面
42b 取付孔
42c 流路
42e 流入口
42f 流出口
44 治具
50 ロータリジョイント
52 ディストリビュータ
52a 軸部
52b フランジ部
52c 溝
52d 流路
54 シャフト
54a 胴部
54b フランジ部
54c 供給路
54e 流入口
54f 流出口
56 シール部材
60 アダプタ
60a 中心孔
60b 連通路
60e 流入口
60f 流出口
70 圧力流体