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特許7296868側溝配置推定装置、及び側溝配置推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】側溝配置推定装置、及び側溝配置推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20230616BHJP
   G01C 7/02 20060101ALI20230616BHJP
   E03F 5/04 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
G01B11/00 A
G01C7/02
E03F5/04 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019221909
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021092410
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 元気
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-155694(JP,A)
【文献】特開2015-005143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
G01C 7/02
E03F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー計測により得られた計測点の集合である計測点群を用いて、水抜き用切欠き穴を有する蓋が掛けられた側溝の配置を推定する装置であって、
レーザー計測における同一の走査線上にある近接した計測点の座標から、水平座標の差である1回水平差分及び/又は鉛直座標の差である1回鉛直差分を算出するとともに、隣接する該1回水平差分どうしの差である2回水平差分及び/又は隣接する該1回鉛直差分どうしの差である2回鉛直差分を算出する差分算出手段と、
前記差分算出手段によって算出された差分に基づいて、前記水抜き用切欠き穴の近傍と推定される計測点を側溝候補点として抽出する側溝候補点抽出手段と、を備え、
前記側溝候補点抽出手段は、前記2回水平差分があらかじめ定めた2回水平差分閾値を上回り、及び/又は前記2回鉛直差分があらかじめ定めた2回鉛直差分閾値を上回るとき、該2回水平差分及び/又は該2回鉛直差分を構成する計測点を前記側溝候補点として抽出し、
前記側溝候補点抽出手段によって抽出された前記側溝候補点に基づいて、前記水抜き用切欠き穴の位置を推定し、前記側溝の配置を推定する、
ことを特徴とする側溝配置推定装置。
【請求項2】
レーザー計測により得られた計測点の集合である計測点群を用いて、水抜き用切欠き穴を有する蓋が掛けられた側溝の配置を推定する装置であって、
レーザー計測における同一の走査線上にある近接した計測点の座標から、鉛直座標の差である1回鉛直差分を算出する差分算出手段と、
前記差分算出手段によって算出された前記1回鉛直差分に基づいて、前記水抜き用切欠き穴の近傍と推定される計測点を側溝候補点として抽出する側溝候補点抽出手段と、を備え、
前記側溝候補点抽出手段は、前記1回鉛直差分があらかじめ定めた1回鉛直差分閾値を上回るとき、該1回鉛直差分を構成する計測点を前記側溝候補点として抽出し、
前記側溝候補点抽出手段によって抽出された前記側溝候補点に基づいて、前記水抜き用切欠き穴の位置を推定し、前記側溝の配置を推定する、
ことを特徴とする側溝配置推定装置。
【請求項3】
前記差分算出手段は、照射順が2以上離れた計測点の座標から、前記1回鉛直差分を算出する、
ことを特徴とする請求項2記載の側溝配置推定装置。
【請求項4】
前記側溝候補点抽出手段は、同一の走査線上に連続して2以上の前記側溝候補点が抽出されたときは、2以上の該側溝候補点に基づいて代表する1の該側溝候補点を設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の側溝配置推定装置。
【請求項5】
あらかじめ設定された基準線上に、それぞれの前記側溝候補点に対応する基準線上側溝候補点を設定する基準線上側溝候補点設定手段と、
隣接する2つの前記基準線上側溝候補点間の距離である点間距離を求めるとともに、隣接する2つの該基準線上側溝候補点のうち前方又は後方の該基準線上側溝候補点又は該基準線上側溝候補点に対応する前記側溝候補点に該点間距離を付与する点間距離算出手段と、
前記点間距離に基づいて、前記側溝候補点を分類する分類手段と、をさらに備え、
前記基準線は、複数配置された前記側溝の中心線、又は該中心線の平行線であり、
前記分類手段は、前記点間距離とあらかじめ定めた側溝長の自然数倍との相違が許容範囲内であるとき、該点間距離が付与された前記側溝候補点を「側溝確定点」に分類し、
前記側溝確定点に基づいて、前記水抜き用切欠き穴の位置を推定し、前記側溝の配置を推定する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の側溝配置推定装置。
【請求項6】
前記分類手段は、前記点間距離があらかじめ定めた接近閾値を下回るとき、該点間距離が付与された前記側溝候補点を「同一側溝候補点」に分類し、
また前記分類手段は、前記側溝確定点と前記同一側溝候補点のいずれにも分類されない前記側溝候補点を「ノイズ候補点」に分類し、
累計点間距離を算出する累計点間距離算出手段と、
前記分類手段によって分類された前記同一側溝候補点と前記ノイズ候補点を、前記側溝確定点に分類する2次分類手段と、をさらに備え、
前記累計点間距離算出手段は、1の前記ノイズ候補点に対応する前記基準線上側溝候補点を接続開始点として選出し、該接続開始点の前後に隣接する前記基準線上側溝候補点のいずれかを接続点として選出するとともに、選出された該接続点と前記接続開始点によって構成される拡張区間を設定し、さらに該拡張区間を構成する該接続開始点及び該接続点に付与された前記点間距離の合計値を前記累計点間距離として算出し、
また前記累計点間距離算出手段は、前記ノイズ候補点又は前記同一側溝候補点を対象として下記に示す条件1~条件3に基づいて前記接続点を選出し、
(条件1) 前後とも同条件であれば、あらかじめ設定した方向を優先
(条件2) 前記ノイズ候補点と前記同一側溝候補点は、前記ノイズ候補点を優先
(条件3) 前後とも前記同一側溝候補点であれば、前方又は後方に連続する前記同一側溝候補点が多い方を優先
前記2次分類手段は、前記累計点間距離と前記側溝長の自然数倍との相違が許容範囲内であるとき、該累計点間距離となる前記拡張区間を構成する前記接続点に対応する前記側溝候補点を前記側溝確定点に分類する、
ことを特徴とする請求項5記載の側溝配置推定装置。
【請求項7】
前記累計点間距離算出手段は、前記拡張区間の前記累計点間距離と前記側溝長の自然数倍との相違が許容範囲外であるとき、該拡張区間の前後に隣接する前記基準線上側溝候補点のいずれかを前記接続点として選出するとともに、選出された該接続点と該拡張区間によって新たな拡張区間を設定するとともに、選出された該接続点に付与された前記点間距離を加算して新たな累計点間距離を算出する、
ことを特徴とする請求項6記載の側溝配置推定装置。
【請求項8】
前記2次分類手段は、隣接する2つの前記基準線上側溝候補点のうち前方の前記基準線上側溝候補点又は該基準線上側溝候補点に対応する前記側溝候補点に前記点間距離が付与されたときは、前記拡張区間の最後方の前記基準線上側溝候補点に対応する前記側溝候補点を前記側溝確定点に分類し、
また前記2次分類手段は、隣接する2つの前記基準線上側溝候補点のうち後方の前記基準線上側溝候補点又は該基準線上側溝候補に対応する前記側溝候補点に前記点間距離が付与されたときは、前記拡張区間の最前方の前記基準線上側溝候補点に対応する前記側溝候補点を前記側溝確定点に分類する、
ことを特徴とする請求項6又は請求項7記載の側溝配置推定装置。
【請求項9】
水抜き用切欠き穴を有する蓋が掛けられた側溝の配置を推定する方法であって、
前記側溝を含む範囲を対象としてレーザー計測を行い、計測点の集合である計測点群を取得する計測工程と、
レーザー計測における同一の走査線上にある近接した計測点の座標から、水平座標の差である1回水平差分及び/又は鉛直座標の差である1回鉛直差分を算出するとともに、隣接する該1回水平差分どうしの差である2回水平差分及び/又は隣接する該1回鉛直差分どうしの差である2回鉛直差分を算出する差分算出工程と、
前記差分算出工程で算出された差分に基づいて、前記水抜き用切欠き穴の近傍と推定される計測点を側溝候補点として抽出する側溝候補点抽出工程と、を備え、
前記側溝候補点抽出工程では、前記2回水平差分があらかじめ定めた2回水平差分閾値を上回り、及び/又は前記2回鉛直差分があらかじめ定めた2回鉛直差分閾値を上回るとき、該2回水平差分及び/又は該2回鉛直差分を構成する計測点を前記側溝候補点として抽出し、
前記側溝候補点抽出工程で抽出された前記側溝候補点に基づいて、前記水抜き用切欠き穴の位置を推定し、前記側溝の配置を推定する、
ことを特徴とする側溝配置推定方法。
【請求項10】
水抜き用切欠き穴を有する蓋が掛けられた側溝の配置を推定する方法であって、
前記側溝を含む範囲を対象としてレーザー計測を行い、計測点の集合である計測点群を取得する計測工程と、
レーザー計測における同一の走査線上にある近接した計測点の座標から、鉛直座標の差である1回鉛直差分を算出する差分算出工程と、
前記差分算出工程で算出された前記1回鉛直差分に基づいて、前記水抜き用切欠き穴の近傍と推定される計測点を側溝候補点として抽出する側溝候補点抽出工程と、を備え、
前記側溝候補点抽出工程では、前記1回鉛直差分があらかじめ定めた1回鉛直差分閾値を上回るとき、該1回鉛直差分を構成する計測点を前記側溝候補点として抽出し、
前記側溝候補点抽出工程で抽出された前記側溝候補点に基づいて、前記水抜き用切欠き穴の位置を推定し、前記側溝の配置を推定する、
ことを特徴とする側溝配置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、レーザー計測の結果を処理する技術に関するものであり、より具体的には、水抜き用切欠き穴を有する蓋が掛けられた側溝の配置を推定することができる側溝配置推定装置、及び側溝配置推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、計測技術の進歩とともに地形情報(空間情報)の需要が高まっており、道路上や沿道に設置された施設をより高度に管理することを目的として、その形状や設置位置といった施設の空間情報を要望する管理者が増加している。また現在、官民一体となって推進しているSociety5.0の実現にとっても、社会インフラストラクチャー(以下、単に「社会インフラ」という。)の高度な維持管理は重要な課題とされている。
【0003】
側溝は、路面排水施設のひとつであり、例えば横断勾配を利用して車道端部に集めた雨水等を道路縦断方向に排水する機能を有するもので、管理すべき重要な社会インフラの1つである。側溝はその形状によっていくつかの種類に分類され、中でも図18(a)に示すU字溝(U型側溝)や、図18(b)に示すL字溝(L型側溝)が多用されている。U字溝GUは、図18(a)に示すようにその断面形状が文字どおり「U字」形状であって、道路面よりも低い位置で排水する暗渠構造であり、そのため通常はU字溝GUの上面に蓋が掛けられる。一方、L字溝GLは、図18(b)に示すようにその断面形状が文字どおり「L字」形状であって、その排水面が道路面と一連に形成される開渠構造である。
【0004】
また、U字溝GUやL字溝GLといった側溝は、一般的に車道端部に設置され、いわゆる道路縁(道路境界線)を形成するケースも少なくない。そのため、道路を含む地図を作成する場合、側溝の位置は極めて重要な情報となり、特に自動運転技術の実用化が進むなか側溝位置の需要は増大している。
【0005】
側溝の位置を把握するにあたっては、作業者による現地調査が考えられる。作業者が直接現地に赴き、目視した情報を図面に記録し、あるいは必要に応じて測量を行いながら側溝の位置を把握していくわけである。しかしながら、側溝は道路と同程度の延長で設置されていることから、現地調査にかかる作業量は膨大であり、その労力や作業時間を考えると現実的とはいえない。しかも車道付近における歩行調査を伴うため、作業者の安全性という点でも問題がある。一方、広範囲の対象物を計測する場合、衛星写真や航空写真が利用されることもあるが、側溝のような小構造物を判読することは容易ではなく、また画像を用いる手法は夜間に計測できないという短所もある。
【0006】
そこで、道路周辺の計測として現在広く採用されるMMS(Mobile Mapping System)を利用した手法が考えられる。このMMSは、レーザースキャナやカメラ、自己位置を取得するための衛星測位システム(GNSS:GlobalNavigationSatelliteSystem)、IMU(InertialMeasurementUnit)、オドメトリなどのセンサを移動車両に搭載したものであり、すなわち車道上を移動しながらレーザースキャナによって大量の計測点(以下、「計測点群」という。)を得ることができる。
【0007】
レーザースキャナによる計測(以下、単に「レーザー計測」という。)は、計測したい対象にレーザーパルスを照射し、その反射信号を受けて計測する手法である。より詳しくは、照射時刻と受信時刻の時間差を計測することで照射位置から計測点(レーザーパルスが反射した地点)までの距離を求め、さらにGNSSといった測位手段によってレーザーパルスの照射位置(x,y,z)を取得するとともに、IMUといった慣性計測手段によって照射姿勢(ω,φ,κ)を取得することで、計測点の3次元座標を得ることができる。
【0008】
特に、MMSによるレーザー計測では、レーザースキャナのレーザー発射部が内部で回転しながらレーザーを照射する機構とされ、その結果、車両の走行に伴って車道軸に対して斜方向にレーザーが照射される。このようにレーザー計測では、レーザーの照射によって多数の計測点が取得され、しかもレーザーの照射点跡(フットプリント)はレーザーの走査(スキャン)方向に連続した概ね直線形状となる。便宜上ここでは、この概ね直線形状となるいわばスキャンラインのことを「走査線」ということとする。
【0009】
ところで、従来、MMSによるレーザー計測で取得された結果(データ)から特定の地物を抽出する場合、オペレータがCAD( Computer-Aided Design)ソフトなどを使用しながらで手動で図化するのが一般的であった。そのため、図化に要するコストが増大し、オペレータによる誤判断(ヒューマンエラー)が避けられないといった問題があった。
【0010】
大量のレーザー計測データの中から目的の地物を自動的に抽出できれば、オペレータによる作業は著しく軽減され、ヒューマンエラーも排除できる。そこで特許文献1では、レーザー計測で得られた大量の計測データから、標識の種別や、表示板の位置と向き(姿勢)を自動抽出することができる発明を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2019-196961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1が開示する技術は、レーザー計測により得られる走査線(スキャンライン)の性質を利用することによって、標識のうち特に表示板を抽出することができ、しかもその位置と姿勢を取得することができる技術であり、標識を自動抽出するには極めて有効な発明である。しかしながら特許文献1の発明では、大量のレーザー計測データの中から側溝を自動抽出することは難しい。そもそも、特にU字溝GUを自動抽出する技術に関しては、これまであまり取り組まれていなかった。なぜなら、側溝のうちL字溝GLであれば道路面上に「L字」という特長が現れるため目視等でも把握することはできるが、これに対してU字溝GUには蓋が掛けられていることから目視で確認できる特徴がなく、その存在を把握することが難しいからである。
【0013】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち大量のレーザー計測データの中から自動的に側溝を抽出することができる側溝配置推定装置、及び側溝配置推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は、照射順に連続する複数の計測点の関係に基づいて、側溝に掛けられた蓋のうち水抜き用切欠き穴の位置を推定する、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0015】
本願発明の側溝配置推定装置は、計測点群(レーザー計測により得られた計測点の集合)を用いて水抜き用切欠き穴を有する蓋が掛けられた側溝の配置を推定する装置であって、差分算出手段と側溝候補点抽出手段を備えたものである。このうち差分算出手段は、レーザー計測における同一の走査線上にある近接した計測点の座標から、1回水平差分(水平座標の差)や1回鉛直差分(鉛直座標の差)を算出するとともに、2回水平差分(隣接する1回水平差分どうしの差)や2回鉛直差分(隣接する1回鉛直差分どうしの差)を算出する手段である。また側溝候補点抽出手段は、差分算出手段によって算出された差分に基づいて、水抜き用切欠き穴の近傍と推定される計測点を「側溝候補点」として抽出する手段である。なお側溝候補点抽出手段は、2回水平差分があらかじめ定めた2回水平差分閾値を上回り、及び/又は2回鉛直差分があらかじめ定めた2回鉛直差分閾値を上回るとき、その2回水平差分や2回鉛直差分を構成する計測点を側溝候補点として抽出する。そして側溝候補点抽出手段によって抽出された側溝候補点に基づいて、水抜き用切欠き穴の位置を推定するとともに、水抜き用切欠き穴の位置に基づいて側溝の配置を推定する。
【0016】
本願発明の側溝配置推定装置は、差分算出手段が1回鉛直差分を算出するものとすることもできる。この場合、側溝候補点抽出手段は、1回鉛直差分があらかじめ定めた1回鉛直差分閾値を上回るとき、その1回鉛直差分を構成する計測点を側溝候補点として抽出する。なお差分算出手段が、照射順が2以上離れた計測点の座標から1回鉛直差分を算出するものとするともできる。
【0017】
本願発明の側溝配置推定装置は、同一の走査線上に連続して2以上の側溝候補点が抽出されたとき、これら2以上の側溝候補点に基づいて代表する1の側溝候補点を設定するものとすることもできる。
【0018】
本願発明の側溝配置推定装置は、基準線上側溝候補点設定手段と点間距離算出手段、分類手段をさらに備えたものとすることもできる。このうち基準線上側溝候補点設定手段は、あらかじめ設定された基準線上に、それぞれの側溝候補点に対応する「基準線上側溝候補点」を設定する手段である。なおここでいう基準線とは、複数配置された側溝の中心線(あるいは、この中心線の平行線)である。また点間距離算出手段は、隣接する2つの基準線上側溝候補点間の距離である「点間距離」を求めるとともに、隣接する2つの基準線上側溝候補点のうち前方(あるいは後方)の基準線上側溝候補点に対応する側溝候補点(あるいは基準線上側溝候補点そのもの)に点間距離を付与する手段であり、分類手段は、点間距離に基づいて側溝候補点を分類する手段である。なお分類手段は、点間距離とあらかじめ定めた側溝長の自然数倍との相違が許容範囲内であるとき、その点間距離が付与された側溝候補点を「側溝確定点」に分類する。そして側溝確定点に基づいて、水抜き用切欠き穴の位置を推定するとともに、水抜き用切欠き穴の位置に基づいて側溝の配置を推定する。
【0019】
本願発明の側溝配置推定装置は、累計点間距離算出手段と2次分類手段をさらに備えたものとすることもできる。この場合、分類手段は、点間距離があらかじめ定めた接近閾値を下回るとき、その点間距離が付与された側溝候補点を「同一側溝候補点」に分類し、側溝確定点と同一側溝候補点のいずれにも分類されない側溝候補点を「ノイズ候補点」に分類する。累計点間距離算出手段は、「累計点間距離」を算出する手段であり、2次分類手段は、分類手段によって分類された同一側溝候補点やノイズ候補点を「側溝確定点」に分類する手段である。なお累計点間距離算出手段は、1のノイズ候補点に対応する基準線上側溝候補点を「接続開始点」として選出し、接続開始点の前後に隣接する基準線上側溝候補点のいずれかを「接続点」として選出するとともに、選出された接続点と接続開始点によって構成される「拡張区間」を設定し、さらに拡張区間を構成する接続開始点と接続点に付与された点間距離の合計値を累計点間距離として算出する。また累計点間距離算出手段は、ノイズ候補点又は同一側溝候補点を対象として下記に示す条件1~条件3に基づいて接続点を選出する。
(条件1) 前後とも同条件であれば、あらかじめ設定した方向を優先
(条件2) ノイズ候補点と同一側溝候補点は、ノイズ候補点を優先
(条件3) 前後とも同一側溝候補点であれば、前方又は後方に連続する同一側溝候補点が多い方を優先
そして2次分類手段は、累計点間距離と側溝長の自然数倍との相違が許容範囲内であるとき、その累計点間距離となる拡張区間を構成する接続点に対応する同一側溝候補点やノイズ候補点を側溝確定点に分類する。
【0020】
本願発明の側溝配置推定装置は、拡張区間の累計点間距離と側溝長の自然数倍との相違が許容範囲外であるとき、さらに拡張区間の前後に隣接する基準線上側溝候補点のいずれかを接続点として選出するものとすることもできる。この場合、累計点間距離算出手段は、選出された接続点と拡張区間によって新たな拡張区間を設定するとともに、選出された接続点に付与された点間距離を加算して新たな累計点間距離を算出する。
【0021】
本願発明の側溝配置推定装置は、点間距離が前方の側溝候補点(あるいは基準線上側溝候補点)に付与されたときは拡張区間の最後方の基準線上側溝候補点に対応する側溝候補点を側溝確定点に分類し、点間距離が後方の側溝候補点(あるいは基準線上側溝候補点)に付与されたときは拡張区間の最前方の基準線上側溝候補点に対応する側溝候補点を側溝確定点に分類するものとすることもできる。
【0022】
本願発明の側溝配置推定方法は、水抜き用切欠き穴を有する蓋が掛けられた側溝の配置を推定する方法であって、計測工程と差分算出工程、側溝候補点抽出工程を備えた方法である。このうち計測工程では、側溝を含む範囲を対象としてレーザー計測を行って計測点群を取得し、差分算出工程では、1回水平差分や1回鉛直差分を算出するとともに2回水平差分や2回鉛直差分を算出する。また側溝候補点抽出工程では、差分算出工程で算出された差分に基づいて、水抜き用切欠き穴の近傍と推定される計測点を側溝候補点として抽出する。なお側溝候補点抽出工程では、2回水平差分が2回水平差分閾値を上回り、及び/又は2回鉛直差分が2回鉛直差分閾値を上回るとき、その2回水平差分や2回鉛直差分を構成する計測点を側溝候補点として抽出する。そして側溝候補点抽出工程で抽出された側溝候補点に基づいて、水抜き用切欠き穴の位置を推定するとともに、水抜き用切欠き穴の位置に基づいて側溝の配置を推定する。
【0023】
本願発明の側溝配置推定方法は、差分算出工程で1回鉛直差分を算出する方法とすることもできる。この場合、側溝候補点抽出工程では、1回鉛直差分が1回鉛直差分閾値を上回るとき、その1回鉛直差分を構成する計測点を側溝候補点として抽出する。
【発明の効果】
【0024】
本願発明の側溝配置推定装置、及び側溝配置推定方法には、次のような効果がある。
(1)相当距離で連続する大量の側溝の配置を効率的かつ正確に抽出することができる。これにより、自動運転用の地図を効率的かつ高精度で整備することができる。
(2)また、大量の側溝を効率的かつ正確に抽出することができるため、道路台帳や道路施設台帳、道路標識台帳といった管理台帳類も効率的かつ高精度で整備することができる。
(3)オペレータの判断を要することなく側溝の配置を抽出することができるため、オペレータによる作業が軽減されてそのコストも軽減され、ヒューマンエラーも排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a)は片側2箇所に水抜き用切欠き穴を具備する蓋を示す平面図、(b)は片側1箇所に水抜き用切欠き穴を具備する蓋を示す平面図、(c)は片側2箇所に水抜き用切欠き穴を具備する蓋を複数並べたときの側溝の配置を示す平面図、(d)は片側1箇所に水抜き用切欠き穴を具備する蓋を複数並べたときの側溝の配置を示す平面図。
図2】(a)は実際のレーザー計測で得られた多数の走査線を示す平面図、(b)は3本の走査線とその走査線上にある計測点を模式的に示すモデル。
図3】(a)は第1のパターンにおける計測点を模式的に示す斜視図、(b)は実際のレーザー計測で得られた第1のパターンの走査線を示す側面図。
図4】(a)は第2のパターンにおける計測点を模式的に示す斜視図、(b)は実際のレーザー計測で得られた第2のパターンの走査線を示す側面図。
図5】本願発明の側溝配置推定装置の主な構成を示すブロック図。
図6】本願発明の側溝配置推定装置の主な処理の流れを示すフロー図。
図7】(a)は「水平差分」を説明するため同一走査線上にある計測点を模式的に示した平面図、(b)は「鉛直差分」を説明するため同一走査線上にある計測点を模式的に示した側面図。
図8】複数の特異点に基づいて設定された側溝候補点を模式的に示すモデル図。
図9】側溝候補点から側溝確定点を分類する主な処理の流れを示すフロー図。
図10】(a)は「基準線」を説明するためのモデル図、(b)は側溝候補点に対応する基準線上の点である「基準線上側溝候補点」を示すモデル図、(c)は点間距離を構成する2つの基準線上側溝候補点のうち後方の基準線上側溝候補点に対応する側溝候補点に点間距離が付与される「前方距離方式」の例を示すモデル図、(d)は点間距離を構成する2つの基準線上側溝候補点のうち前方の基準線上側溝候補点そのものに点間距離が付与される「後方距離方式」の例を示すモデル図。
図11】分類手段が側溝候補点の種別を分類する主な処理の流れを示すフロー図。
図12】同一側溝候補点とノイズ溝候補点を対象として、側溝確定点を分類する主な処理の流れを示すフロー図。
図13】(a)は接続点を選出する主な処理の流れを示すフロー図、(b)は接続点を選出する条件1を説明するモデル図、(c)は接続点を選出する条件2を説明するモデル図、(d)は接続点を選出する条件3を説明するモデル図。。
図14】(a)は前方の基準線上側溝候補点が接続点として選出された場合に算出される新たな累計点間距離を模式的に示すモデル図、(b)は後方の基準線上側溝候補点が接続点として選出された場合に算出される新たな累計点間距離を模式的に示すモデル図。
図15】(a)は前方距離方式を採用した場合における拡張区間の判定対象点を模式的に示すモデル図、(b)は後方距離方式を採用した場合における拡張区間の判定対象点を模式的に示すモデル図。
図16】2次分類の手順について具体的に説明するためのモデル図。
図17】本願発明の側溝配置推定方法の主な工程の流れを示すフロー図。
図18】(a)はU字溝を示す斜視図、(b)はL字溝を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本願発明の側溝配置推定装置、及び側溝配置推定方法の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
【0027】
1.全体概要
本願発明は、例えばMMSによるレーザー計測の結果に基づいて側溝を自動抽出する技術であり、側溝に掛けられた蓋の水抜き用切欠き穴を利用して側溝の位置を推定することを1つの特徴としている。多くの場合、U字溝GUには蓋が掛けられ、しかも図1(a)や図1(b)に示すようにその蓋には水抜き用切欠き穴GPが設けられるのが一般的である。なお図1(a)は、片側2箇所(両側4箇所)に水抜き用切欠き穴GPを具備する蓋(以下、便宜上「2箇所蓋LW」という。)を示す平面図であり、図1(b)は片側1箇所(両側2箇所)に水抜き用切欠き穴GPを具備する蓋(以下、便宜上「1箇所蓋LS」という。)を示す平面図である。そして、複数の2箇所蓋LWを並べると図1(c)に示すような配置となり、また複数の1箇所蓋LSを並べると図1(d)に示すような配置となることから、水抜き用切欠き穴GPの位置を特定することによって、側溝の配置を推定することができるわけである。
【0028】
既述したとおりレーザー計測は、計測対象にレーザーパルスを照射し、照射されたレーザーパルスが反射した点(計測点)の座標を取得する計測手法である。そして、道路面などの平坦面とは異なり、水抜き用切欠き穴GP近傍では連続する計測点に顕著な変化が見られる。すなわち、平坦面では連続する計測点の座標の差分が概ね一定であるのに対し、水抜き用切欠き穴GP近傍では計測点の座標の差分が平坦面に比べ大きくなる傾向にある。ここで「連続する計測点」とは、レーザーパルスの照射時刻(計測時刻)順に並べたときに前後する計測点のことであり、すなわち同一の走査線(スキャンライン)上で隣り合う計測点のことである。
【0029】
MMSによるレーザー計測の場合、図2(a)に示すように多数の走査線Lが描かれるようにレーザーパルスが照射され、この走査線L上では図2(b)に示すように複数の計測点が得られる。例えば図2(b)では、走査線L1と走査線L2、走査線L3を示しており、それぞれ走査線L1上では計測点P11~P13が、走査線L2上では計測点P21~P24が、走査線L3上では計測点P31~P33が得られている。この場合、計測点P11と計測点P12や、計測点P23と計測点P24、計測点P32と計測点P33などが、「連続する計測点」となるわけである。
【0030】
ところで、水抜き用切欠き穴GP近傍における連続する計測点の変化には、大きく2つのパターンに分けることができる。1つは、図3に示すようにレーザーパルスが水抜き用切欠き穴GPを通過して側溝の底面や側溝の側面に反射するパターン(以下、「第1のパターン」という。)であり、他の1つは、図4に示すようにレーザーパルスが水抜き用切欠き穴GPの側面に反射して側溝の底面に届かないパターン(以下、「第2のパターン」という。)である。なお図3(a)は、第1のパターンにおける計測点を模式的に示す斜視図であり、図3(b)は、実際のレーザー計測で得られた第1のパターンの走査線を示す側面図である。同様に、図4(a)は、第2のパターンにおける計測点を模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、実際のレーザー計測で得られた第2のパターンの走査線を示す側面図である。
【0031】
2.側溝配置推定装置
次に、本願発明の側溝配置推定装置について詳しく説明する。なお本願発明の側溝配置推定方法は、本願発明の側溝配置推定装置を用いて側溝の配置を推定する方法であり、したがってまずは本願発明の側溝配置推定装置について説明し、その後に本願発明の側溝配置推定方法について説明することとする。
【0032】
図5は、本願発明の側溝配置推定装置100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように側溝配置推定装置100は、差分算出手段101と側溝候補点抽出手段102を含んで構成され、さらに基準線上側溝候補点設定手段103や点間距離算出手段104、分類手段105、累計点間距離算出手段106、2次分類手段107、計測点群記憶手段108、ディスプレイ等の表示手段を含んで構成することもできる。
【0033】
側溝配置推定装置100を構成する差分算出手段101と側溝候補点抽出手段102、基準線上側溝候補点設定手段103、点間距離算出手段104、分類手段105、累計点間距離算出手段106、2次分類手段107は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。このコンピュータ装置は、パーソナルコンピュータ(PC)や、iPad(登録商標)といったタブレット型PC、スマートフォンを含む携帯端末などによって構成することができる。コンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリを具備しており、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを含むものもある。
【0034】
また計測点群記憶手段108は、汎用的コンピュータの記憶装置を利用することもできるし、そのほかデータベースサーバに構築することもできる。データベースサーバに構築する場合、ローカルなネットワーク(LAN:LocalAreaNetwork)に置くこともできるし、インターネット経由(つまり無線通信)で保存するクラウドサーバとすることもできる。
【0035】
以下、図6を参照しながら本願発明の側溝配置推定装置100の主な処理について詳しく説明する。図6は、本願発明の側溝配置推定装置100の主な処理の流れを示すフロー図である。なおこのフロー図では、中央の列に実施する処理を示し、左列にはその処理に必要なものを、右列にはその処理から生ずるものを示している。
【0036】
まず、レーザー計測によって得られた計測点群(計測点の集合)の中から側溝配置の推定に直接利用できそうな点群(以下、「対象点群」という。)を抽出する(図6のStep100)。通常、MMSによるレーザー計測では、建物や樹木など様々な地物の計測点を取得する。これら取得したすべての計測点に対して一連の処理を実行してもよいが、ある程度計測点を絞ったうえで処理を行う方が、全体の処理コストが軽減されて好適である。
【0037】
計測点群から対象点群を抽出するにあたっては、まず「路面点(道路上のものと思われる計測点)」を抽出するとよい。例えば、周辺の計測点に基づいて当該計測点の法線ベクトルを求め、この法線ベクトルが略鉛直(鉛直含む)方向となる計測点を路面点とする。さらに、あらかじめ道路面の概ねの高さを把握している場合は、法線ベクトルが略鉛直方向であって、しかも道路面高さに近い計測点を路面点とすることもできる。
【0038】
ところで、路面点は原則として道路面上の点であり、水抜き用切欠き穴GP近傍における計測点ではないと考えられる。そこで、同一の走査線Lに沿って見たときに、路面点と路面点に挟まれた計測点を「予備候補点」として抽出する。そして、抽出された路面点と予備候補点を合わせたものを対象点群とし、以下一連の処理を実行する。なお、あらかじめ側溝の概ねの平面配置を把握している場合は平面範囲をある程度絞ったうえで対象点群を抽出することもできるし、事前に対象点群が用意されている場合は当然ながら当該処理(Step100)を省略することもできる。ここで抽出された対象点群は、計測点群記憶手段108(図5)に記憶される。
【0039】
対象点群が抽出されると、差分算出手段101(図5)が計測点群記憶手段108(図5)からこの対象点群を読み出すとともに、対象点群に含まれる計測点ごとに差分を算出する(図6のStep200)。既述したとおり、水抜き用切欠き穴GP近傍では「連続する計測点(同一の走査線L上で隣り合う計測点)」に顕著な変化が見られ、しかも側溝の底面や側面に反射する「第1のパターン」と、水抜き用切欠き穴GPの側面に反射する「第2のパターン」に大別される。そこで、近接する計測点の差分を求め、その差分に特徴を示すものを水抜き用切欠き穴GP近傍の計測点として抽出するわけである。
【0040】
図7は、計測点の差分を説明する図であり、(a)は「水平差分」を説明するため同一走査線L上にある計測点を模式的に示した平面図、(b)は「鉛直差分」を説明するため同一走査線L上にある計測点を模式的に示した側面図である。ここで「水平差分」とは、2つの計測点の平面座標(X,Y)に基づく差分であり、例えば計測点を水平面に投影したときの2点間の水平距離を水平差分とすることができる。一方、「鉛直差分」とは、2つの計測点の鉛直座標(Z)に基づく差分であり、すなわち2点間の高さ(標高など)の差である。
【0041】
また、計測点の座標に基づく差分のことを便宜上ここでは「1回差分」ということとし、この1回差分に基づく差分のことを便宜上ここでは「2回差分」ということとする。例えば図7(a)の場合、計測点Pと計測点Pi+1の水平差分、計測点Pi-2と計測点Pi-1の水平差分が「1回水平差分」であり、図7(b)の場合、計測点Pと計測点Pi+1の鉛直差分、計測点Pi+1と計測点Pi+2の鉛直差分が「1回鉛直差分」である。そして、図7(a)に示す計測点Pi―1と計測点Pによる1回水平差分と、計測点Pと計測点Pi+1による1回水平差分との差分が、「2回水平差分」となり、同様に、図7(b)に示す計測点Pi―1と計測点Pによる1回鉛直差分と、計測点Pと計測点Pi+1による1回鉛直差分との差分が、「2回鉛直差分」となる。すなわち、1回水平差分dHは次式(1)によって、1回鉛直差分dVは次式(2)によって、2回水平差分ddHは次式(3)によって、2回鉛直差分ddVは次式(4)によって求められる。
dH=|Pi+1(X,Y)-P(X,Y)| (1)
dV=Pi+1(Z)-P(Z) (2)
ddH=dHi+1-dH (3)
ddV=dVi+1-dV (4)
【0042】
ここで、水抜き用切欠き穴GP近傍では連続する計測点に顕著な変化が見られることから、基本的には連続する計測点によって差分(水平差分dHや鉛直差分dV)を求めるとよい。ただし、連続する計測点どうしが極めて接近していることもあり、この場合、顕著な変化を示さないことも考えられる。そこで現地の状況によっては、照射順が2以上離れた計測点に基づいて差分を求めるとよい。特に、「第2のパターン」に該当するときは、2以上離れた計測点に基づく1回鉛直差分dVを用いた方が、水抜き用切欠き穴GP近傍の計測点を抽出しやすいことを発明者は究明している。例えば、図7(b)に示す計測点Pと計測点Pi+2によって1回鉛直差分dVを求めたり、計測点Pi-2と計測点Pi+1によって1回鉛直差分dVを求めたり、計測点Pi-2と計測点Pi+2によって1回鉛直差分dVを求めるわけである。
【0043】
差分算出手段101(図5)は、計測点ごとに1回水平差分dHと1回鉛直差分dV、2回水平差分ddHと2回鉛直差分ddVをそれぞれ求め、そしてこれら差分を計測点に付与する。この場合、前方(照射順が後)の計測点との差分を当該計測点(つまり後方の計測点)に付与する仕様としてもよいし、後方(照射順が先)の計測点との差分を当該計測点(つまり前方の計測点)に付与する仕様としてもよい。
【0044】
各計測点の差分が算出されると、側溝候補点抽出手段102(図5)によって「側溝候補点」が抽出される(図6のStep300)。ここで「側溝候補点」とは、水抜き用切欠き穴GP近傍にあると考えられる計測点のことであり、いわば水抜き用切欠き穴GPの位置を示す計測点の候補である。なお発明者は、「第1のパターン」では2回水平差分ddHや2回鉛直差分ddVを用いると側溝候補点を抽出しやすく、また「第2のパターン」では1回鉛直差分dVを用いると側溝候補点を抽出しやすいことを究明している。
【0045】
そこで差分算出手段101(図5)は、2回水平差分ddHや2回鉛直差分ddVに基づいて第1のパターンによる側溝候補点を抽出し、1回鉛直差分dVに基づいて第2のパターンによる側溝候補点を抽出するとよい。具体的には、第1のパターンの場合、2回水平差分ddHとあらかじめ定めた閾値(以下、「2回水平差分閾値」という。)を照らし合わせるとともに、2回鉛直差分ddVとあらかじめ定めた閾値(以下、「2回鉛直差分閾値」という。)を照らし合わせ、2回水平差分ddHが2回水平差分閾値を上回り、かつ2回鉛直差分ddVが2回鉛直差分閾値を上回るときに、これら差分が付与された計測点を側溝候補点として抽出する。あるいは、2回水平差分ddHと2回鉛直差分ddVのうちいずれか一方が閾値(2回水平差分閾値、2回鉛直差分閾値)を上回るときに、この差分が付与された計測点を側溝候補点として抽出することもできる。なおこの場合、1回水平差分dHを上式(1)の絶対値として求め、また1回鉛直差分dVを上式(2)の絶対値として求めるとともに、2回水平差分ddHを上式(3)の絶対値として求め、さらに2回鉛直差分ddVを上式(4)の絶対値として求めたうえで、それぞれ2回水平差分閾値や2回鉛直差分閾値と照らし合わせるとよい。
【0046】
一方、第2のパターンの場合は、1回鉛直差分dVとあらかじめ定めた閾値(以下、「1回鉛直差分閾値」という。)を照らし合わせ、1回鉛直差分dVが1回鉛直差分閾値を上回るときに、この差分が付与された計測点を側溝候補点として抽出する。この場合、1回鉛直差分dVは上式(2)の絶対値として求めたうえで、1回鉛直差分閾値と照らし合わせることもできるし、正負両方(あるいは一方)の1回鉛直差分閾値を用意したうえで、上式(2)による(つまり絶対値ではない)1回鉛直差分dVと1回鉛直差分閾値を照らし合わせることもできる。なお上記したとおり、第2のパターンにおける側溝候補点を抽出するにあたっては、照射順が2以上離れた計測点に基づく1回鉛直差分dVを用いるとよい。
【0047】
このように差分算出手段101(図5)によって抽出された側溝候補点が、後続の処理に用いられる。ここで、閾値を上回る計測点(以下、ここでは「特異点」という。)すべてを側溝候補点として抽出する仕様とすることもできるし、複数の特異点から求められる代表点を側溝候補点として設定する仕様とすることもできる。図8は、複数の特異点Pcに基づいて設定された側溝候補点PcOを模式的に示すモデル図である。この図では、同一の走査線L上に特異点PcAから特異点PcBまで5つの特異点Pcが連続しており、その前後には2つずつの路面点Prが取得されており、特異点PcAと特異点PcBは道路面付近の高さを有している。この場合、特異点PcAと特異点PcBの中点を求め、その平面座標を側溝候補点PcOとして設定するとよい。このように、同一の走査線L上に連続して2以上の特異点Pcが連続しているときは、これらの特異点Pcに基づいて代表する1の側溝候補点PcOを設定するとよい。特に、任意の特異点Pcからスタートして同一の走査線Lの前後方向に路面点Prを探索し、路面点Pr高さに近い両端の特異点PcAと特異点PcBを特定したうえで、これら特異点PcAと特異点PcBの中点を側溝候補点PcOとして設定するとよい。
【0048】
側溝候補点抽出手段102(図5)によって側溝候補点Pcが抽出されると、この側溝候補点Pcが水抜き用切欠き穴GPの位置を示す計測点と考え、図1(c)や図1(d)に示すように一連の側溝配置を推定することができる(図6のStep600)。しかしながらこの側溝候補点Pcの中には、水抜き用切欠き穴GPの位置を示すものではない、いわゆる「ノイズ」が含まれていることも考えられる。そこで、側溝候補点抽出手段102によって抽出された側溝候補点Pcから、水抜き用切欠き穴GPの位置を示す計測点としてより信頼できる「側溝確定点」を分類した(図6のStep400)うえで、側溝配置を推定するとよい。なお後述するように、側溝確定点とされなかった側溝候補点の中から改めて側溝確定点を分類する(図6のStep500)こともできる。便宜上ここでは、側溝候補点Pcから側溝確定点を分類する処理(図6のStep400)のことを「1次分類」、側溝確定点とされなかった側溝候補点Pcの中から側溝確定点を分類する処理(図6のStep500)のことを「2次分類」ということとする。
【0049】
図9は、1次分類の主な処理の流れを示すフロー図である。以下この図を参照しながら、「側溝確定点」を分類する手順について説明する。まず、あらかじめ「基準線」を設定する(図9のStep410)。この基準線SLは、図10(a)に示すように複数配置された側溝GUの中心線に対して平行に設定される線であり、側溝GUの中心線が直線となる区間では基準線SLも直線となり、側溝GUの中心線が曲線となる区間では基準線SLもやはり曲線となる。また基準線SLは、側溝GUの中心線そのものとして設定することもできる。なお基準線SLは、方向をもって設定されるベクトルであり、例えば道路の起終点に合わせてその方向を設定することができる。便宜上ここでは、基準線SLの一方(例えば道路の起点側)のことを「後方(図10では左側)」、基準線SLの他方(例えば道路の終点側)のことを「前方(図10では右側)」ということとする。
【0050】
基準線SLが設定されると、基準線上側溝候補点設定手段103(図5)によって「基準線上側溝候補点」が設定される(図9のStep420)。この基準線上側溝候補点は、側溝候補点に対応する基準線SL上の点である。例えば図10(b)に示すように、側溝候補点Pcから基準線SLに対して垂線を描き、この垂線と基準線SLが交差する点を基準線上側溝候補点Qcとして設定することができる。なおこの図では、側溝候補点Pc1~Pc6に対応する6つの基準線上側溝候補点Qc1~Qc6がそれぞれ設定されている。
【0051】
基準線上側溝候補点Qcが設定されると、点間距離算出手段104(図5)によって「点間距離」が算出される(図9のStep430)。この点間距離は、基準線SL上で隣接する2つの基準線上側溝候補点Qc間の距離である。例えば、図10(b)に示す点間距離SD2は基準線上側溝候補点Qc2と基準線上側溝候補点Qc3との距離であり、点間距離SD5は基準線上側溝候補点Qc5と基準線上側溝候補点Qc6との距離である。そして、算出された点間距離SDは、点間距離が側溝候補点Pc(あるいは基準線上側溝候補点Qcそのもの)に付与される。なお点間距離SD5は、その点間距離SDを構成する2つの基準線上側溝候補点Qcのうち後方の基準線上側溝候補点Qcに対応する側溝候補点Pc(あるいは基準線上側溝候補点Qcそのもの)に付与する仕様とすることもできるし(以下、便宜上「前方距離方式」という。)、点間距離SDを構成する2つの基準線上側溝候補点Qcのうち前方の基準線上側溝候補点Qcに対応する側溝候補点Pc(あるいは基準線上側溝候補点Qcそのもの)に付与する仕様とすることもできる(以下、便宜上「後方距離方式」という。)。図10(c)では、後方の基準線上側溝候補点Qc4に対応する側溝候補点Pc4に点間距離SD4が付与される「前方距離方式」の例を示しており、図10(d)では、前方の基準線上側溝候補点Qc5そのものに点間距離SD4が付与される「後方距離方式」の例を示している。
【0052】
点間距離SDが算出され、この点間距離SDが側溝候補点Pc(あるいは基準線上側溝候補点Qcそのもの)に付与されると、分類手段105(図5)によって点間距離SDが判定され(図9のStep440)、その判定結果に応じてその点間距離SDが付与された側溝候補点Pcの種別が分類される。このとき分類手段105は、図9に示す(フロー中の「繰り返し」)ようにそれぞれの点間距離SDに対して判定を行うとともに、それぞれの側溝候補点Pcに対して種別の分類を行う。
【0053】
図11は、分類手段105が側溝候補点Pcの種別を分類する主な処理の流れを示すフロー図である。この図に示すように、側溝候補点Pcが指定されると、その側溝候補点Pcに係る点間距離SDが「側溝長」のn(nは自然数)倍に近いか否かを判定する(図11のStep441)。ここで側溝長とは、側溝1個当たりの長さであり、JIS規格や製品カタログなどを参考にしてあらかじめ設定される値である。一般的な側溝は、いわゆる2次製品(プレキャスト製品)であり、その長さ(つまり側溝長)は定型化されており、例えば最も多用されているU字溝GUの側溝長は60cmとされている。
【0054】
点間距離SDが側溝長に近い(例えば点間距離SDが60cm前後である)場合、この点間距離SDを形成する側溝候補点Pcは水抜き用切欠き穴GP近傍の計測点である可能性が高い。そこで、点間距離SDが側溝長のn倍に近いとき(図11のStep441のYes)は、その点間距離SDに係る側溝候補点Pcを「側溝確定点」に分類することとした。例えば、次式(5)を満たすときに「点間距離SDが側溝長のn倍に近い」と判定するとよい。なお次式(5)のうち、SDは点間距離であり、Lgは側溝長、δはあらかじめ定められた許容誤差である。
n×Lg+δ≧S≧Dn×Lg-δ (5)
【0055】
ここで「側溝長のn倍」とした理由について説明する。実際の水抜き用切欠き穴GPは、土砂などによって塞がれていることもあり、この場合は水抜き用切欠き穴GP近傍の計測点を取得することができない。つまり、途中の水抜き用切欠き穴GPを飛ばして2個先の側溝の水抜き用切欠き穴GP近傍の計測点を取得することもあるわけである。したがって、点間距離SDと1個分の側溝長(例えば60cm)のみを照らし合わせるのではなく、2個分や3個分などn個分の側溝長(例えば120cmや180cmなど)と点間距離SDを照らし合わせることとした。そのため、nは自然数(1以上の整数)とした。ただし、nの値を無限に許すと判断に誤りが生ずることもあり、その値には上限(例えばnmax=6など)を設定するとよい。
【0056】
一方、点間距離SDが側溝長に近い値とならないとき(図11のStep441のNo)は、指定された側溝候補点Pcに係る点間距離SDと「近接閾値」を照らし合わせる(図11のStep442)。この近接閾値は、短い距離(例えば、1cmや2cmなど)で設定される閾値であり、すなわちこの処理(Step442)では点間距離SDを構成する2つの基準線上側溝候補点Qcが接近しているか否かを判定するわけである。そして点間距離SDが近接閾値を下回るとき(図11のStep442のYes)は、その点間距離SDに係る側溝候補点Pcを「同一側溝候補点」に分類する。なお同一側溝候補点とは、同一の水抜き用切欠き穴GP近傍にある複数の計測点のうちの一方であると考えられる計測点のことである。なお、点間距離SDが側溝長に近い値とならず、しかも点間距離SDが近接閾値を上回るとき(図11のStep442のNo)、つまり「側溝確定点」にも「同一側溝候補点」にも分類されないときは、その点間距離SDに係る側溝候補点Pcは「ノイズ候補点」に分類される。
【0057】
分類手段105(図5)によって側溝確定点が抽出されると、この側溝確定点が水抜き用切欠き穴GPの位置を示す計測点と考え、図1(c)や図1(d)に示すように一連の側溝配置を推定することができる(図6のStep600)。ところで、同一側溝候補点やノイズ候補点に分類された側溝候補点Pcの中にも、水抜き用切欠き穴GP近傍の計測点(つまり側溝確定点)が含まれていることも考えられる。そこで、同一側溝候補点とノイズ候補点を対象として「2次分類」を行い、さらに側溝確定点を抽出することも有効である。
【0058】
図12は、2次分類の主な処理の流れを示すフロー図である。以下この図を参照しながら、同一側溝候補点とノイズ候補点に分類された側溝候補点Pcの中から「側溝確定点」を分類する手順について説明する。はじめに、ノイズ候補点の中から1つのノイズ候補点を選出し、これに対応する(つまりノイズ候補点由来の)基準線上側溝候補点Qcを「接続開始点」として指定する。そして、基準線SLでこの接続開始点の前後にある基準線上側溝候補点Qcを対象として「接続点」を探索する(図12のStep510)。ここで接続点とは、接続開始点と接続することによって、後述する「拡張区間」を設定するための端点であり、特有の条件を満たすものである。
【0059】
以下、図13を参照しながら「接続点」を選出する手順について説明する。図13(a)は、接続点を選出する主な処理の流れを示すフロー図である。まずは、基準線SLでこの接続開始点の前後にある基準線上側溝候補点Qcを抽出する(図13のStep511)。抽出された前後の基準線上側溝候補点Qcに対応する側溝候補点Pcが、両者とも既に「側溝確定点」として分類されているとき(図13のStep512のYes)は、他の接続開始点を新たに指定したうえで前後の基準線上側溝候補点Qcを抽出する(図13のStep511)。一方、抽出された前後の基準線上側溝候補点Qcに係る側溝候補点Pcのうち少なくとも一方が、「側溝確定点」として分類されていないとき(図13のStep512のNo)は、下記の条件(1)~(3)に基づいて接続点を選出する(図13のStep513)。
(条件1)
前後とも同条件であれば、あらかじめ設定した方向を優先して接続点とする。なお、あらかじめ設定する方向とは、図10(a)に示すように基準線SLに与えられた方向のことであり、前方として設定することも、後方として設定することもできる。例えば図13(b)では、接続開始点の前後の同条件(例えば両方ともノイズ候補点由来)の基準線上側溝候補点Qcが配置されており、しかも事前に「前方優先」として設定されていることから、前方の基準線上側溝候補点Qcが接続点として選定される。
(条件2)
前後がノイズ候補点由来の基準線上側溝候補点Qcと同一側溝候補点由来の基準線上側溝候補点Qcであれば、ノイズ候補点の方を優先して接続点とする。もちろん既に側溝確定点として分類されている側溝候補点Pcに係る基準線上側溝候補点Qcは、接続点として選出されない。例えば図13(c)では、事前に「前方優先」として設定されているが、前方に同一側溝候補点由来の基準線上側溝候補点Qc、後方にノイズ候補点由来の基準線上側溝候補点Qcが配置されていることから、後方のノイズ候補点由来の基準線上側溝候補点Qcが接続点として選定される。
(条件3)
前後とも同一側溝候補点由来の基準線上側溝候補点Qcであれば、連続する同一側溝候補点が多い方を優先して接続点を選出する。例えば図13(d)では、事前に「前方優先」として設定されているが、前方に2つの同一側溝候補点由来の基準線上側溝候補点Qcが連続しているのに対して、後方には3つの同一側溝候補点由来の基準線上側溝候補点Qcが連続していることから、後方の同一側溝候補点由来の基準線上側溝候補点Qcが接続点として選定される。
【0060】
接続点が選出されると、接続開始点と接続点を接続することによって「拡張区間」を設定する(図12のStep520)。そして累計点間距離算出手段106(図5)が、接続開始点に係る側溝候補点Pcに付与された点間距離と、選出された接続点に係る側溝候補点Pcに付与された点間距離との合計値を「累計点間距離」として算出する(図12のStep530)。
【0061】
累計点間距離が算出されると、2次分類手段107(図5)によってこの累計点間距離が判定される((図12のStep540)。より詳しくは、累計点間距離が側溝長のn倍に近いとき(図12のStep540のYes)は、その累計点間距離に係る側溝候補点Pc(同一側溝候補点やノイズ候補点)を「側溝確定点」に変更する((図12のStep550)。例えば、上記した式(5)を満たすときに「累計点間距離が側溝長のn倍に近い」と判定するとよい。
【0062】
一方、累計点間距離が側溝長に近い値とならないとき(図12のStep540のNo)は、さらに新たな接続点を選出する(図12のStep510)。ただしこの場合、既に「拡張区間」が設定されていることから、接続開始点ではなく、拡張区間を基準として接続点を探索する。すなわち、基準線SLで拡張区間のその外側の前後にある基準線上側溝候補点Qcを対象として接続点を探索するわけである。拡張区間を基準として接続点を探索する場合も、接続開始点を基準とする場合と同様、その手順は図13(a)に示すとおりであり、その条件は例えば図13(b)~(d)に示すとおりである。
【0063】
拡張区間を基準として接続点を探索する場合も、接続点が選出されると、やはり「拡張区間」を設定する(図12のStep520)が、この場合、拡張区間と接続点を接続することによって新たな拡張区間を設定する。そして累計点間距離算出手段106(図5)が、この拡張区間の累計点間距離と、選出された接続点に係る側溝候補点Pcに付与された点間距離との合計値を「累計点間距離」として算出する(図12のStep530)。例えば図14(a)に示すように前方の基準線上側溝候補点Qcが接続点として選出された場合は、前方の基準線上側溝候補点Qcに係る点間距離と、元の拡張区間が具備する累計点間距離とを足し合わせて新たな累計点間距離を算出する。また図14(b)に示すように後方の基準線上側溝候補点Qcが接続点として選出された場合は、後方の基準線上側溝候補点Qcに係る点間距離と、元の拡張区間が具備する累計点間距離とを足し合わせて新たな累計点間距離を算出する。なお図14では、前方距離方式として点間距離SDを後方の側溝候補点Pcに付与している。
【0064】
拡張区間を基に新たな拡張区間を設定した場合も、新たに累計点間距離が算出されると、やはり2次分類手段107(図5)によってこの新たな累計点間距離が判定される((図12のStep540)。そして、累計点間距離が側溝長のn倍に近いとき(図12のStep540のYes)は、その累計点間距離に係る側溝候補点Pc(同一側溝候補点やノイズ候補点)を「側溝確定点」に変更する((図12のStep550)。このとき、図15(a)に示すように前方距離方式を採用した場合は、拡張区間の最後方にある基準線上側溝候補点Qcを「判定対象点」とし、これに対応する側溝候補点Pcを側溝確定点に変更するとよい。また図15(b)に示すように後方距離方式を採用した場合は、拡張区間の最前方にある基準線上側溝候補点Qcを「判定対象点」とし、これに対応する側溝候補点Pcを側溝確定点に変更するとよい。2次分類手段107によって新たに側溝確定点が抽出されると、ここまでに抽出された側溝確定点が水抜き用切欠き穴GPの位置を示す計測点と考え、図1(c)や図1(d)に示すように一連の側溝配置を推定することができる(図6のStep600)。
【0065】
一方、累計点間距離が側溝長に近い値とならないとき(図12のStep540のNo)は、さらに拡張区間の前後に新たな接続点を選出し(図12のStep510)、拡張区間をいわば拡張したうえで(図12のStep520~530)、その累計点間距離が判定される(図12のStep540)。このように、累計点間距離が側溝長のn倍に近いと判定されるまで図12に示す処理を繰り返し実行していく。なお、累計点間距離が側溝長のn倍に近いと判定され、1の側溝候補点Pc(同一側溝候補点やノイズ候補点)が側溝確定点に分類されると、その拡張区間を構成する他の同一側溝候補点やノイズ候補点は「ノイズ確定点」とし、後続の1次分類や2次分類の対象から除外するとよい。
【0066】
側溝候補点Pc(同一側溝候補点やノイズ候補点)が側溝確定点に分類される(図12のStep550)と、新たにノイズ候補点の中から別のノイズ候補点を選出したうえで、図12に示す処理が実行される。なお、新たに別のノイズ候補点を選出する場合、上記した「ノイズ確定点」を除外して選出するとよい。
【0067】
ここで図16を参照しながら、具体的に2次分類の手順について説明する。この図では、基準線SL上に9つの基準線上側溝候補点Qc1~Qc9が配置されており、基準線上側溝候補点Qc5が接続開始点として選出されたケースを示している。なお、表中の「点番号」は基準線上側溝候補点Qcの番号(Qc1~Qc9)であり、「距離程」は基準線SLの起点からの距離である。また「暫定区分」は、基準線上側溝候補点Qcに対応する側溝候補点Pcの種別であり、Aは「側溝確定点」、bは「同一側溝候補点」、cは「ノイズ候補点」を表している。
【0068】
まず、接続開始点である基準線上側溝候補点Qc5を基準として接続点を選出する(図12のStep510)。図16を見ると、基準線上側溝候補点Qc5の前方にはノイズ候補点由来の基準線上側溝候補点Qc6が配置され、その後方にはやはりノイズ候補点由来の基準線上側溝候補点Qc4が配置されている。この場合は(条件1)が適用され、すなわちあらかじめ設定した方向である「前方(このケースでは前方としている)」の基準線上側溝候補点Qc6が接続点として選出される。そして基準線上側溝候補点Qc5と基準線上側溝候補点Qc6を接続することによって拡張区間CD1を設定し(図12のStep520)、累計点間距離を算出する(図12のStep530)。このケースでは、基準線上側溝候補点Qc5には17cmの点間距離SDが付与され、基準線上側溝候補点Qc6には35cmの点間距離SDが付与されていることから、拡張区間CD1の累計点間距離は42cmとして算出される。次に、2次分類手段107(図5)によって「累計点間距離CD1=42cm」が判定される((図12のStep540)。側溝長を60cm、式(5)の許容誤差δを2cmとすると、この場合は、累計点間距離が側溝長に近い値とならない(図12のStep540のNo)ため、今度は拡張区間CD1を基準として新たに接続点を選出する(図12のStep510)。
【0069】
図16を見ると、拡張区間CD1の前方には同一側溝候補点由来の基準線上側溝候補点Qc7が配置され、その後方にはノイズ候補点由来の基準線上側溝候補点Qc4が配置されている。この場合は(条件2)が適用され、すなわちノイズ候補点由来である基準線上側溝候補点Qc4が接続点として選定される。そして拡張区間CD1と基準線上側溝候補点Qc4によって拡張区間CD2を設定し(図12のStep520)、累計点間距離を算出する(図12のStep530)。拡張区間CD1には42cmの点間距離SDが付与され、基準線上側溝候補点Qc4には23cmの点間距離SDが付与されていることから、拡張区間CD2の累計点間距離は65cmとして算出される。次に、2次分類手段107(図5)によって「累計点間距離CD2=65cm」が判定される(図12のStep540)が、この場合も、累計点間距離が側溝長に近い値とならない(図12のStep540のNo)ため、今度は拡張区間CD2を基準として新たに接続点を選出する(図12のStep510)。
【0070】
このように拡張区間を拡張しながら、累計点間距離が側溝長のn倍に近いと判定されるまで図12に示す処理を繰り返し実行していく。その結果、基準線上側溝候補点Qc3~Qc8によって構成される拡張区間CD5の累計点間距離が118cmとして算出される。この「累計点間距離CD5=118cm」は、側溝長の2倍(120cm)に近い値であるから、この拡張区間CD5に係る側溝候補点Pcを「側溝確定点」に変更する((図12のStep550)。なおこのケースでは図15(a)に示すように前方距離方式を採用していることから、拡張区間CD5の最後方にある基準線上側溝候補点Qc3が「判定対象点」とされ、基準線上側溝候補点Qc3に対応する側溝候補点Pc3を側溝確定点に変更する。一方、拡張区間CD5を構成する他の基準線上側溝候補点Qc4~Qc8は、「ノイズ確定点」とする。
【0071】
このように側溝候補点Pc3を側溝確定点に変更すると、基準線上側溝候補点Qc4~Qc6を除いたノイズ候補点の中から別のノイズ候補点を選出したうえで、図12に示す処理を実行する。
【0072】
3.側溝配置推定方法
次に、本願発明の側溝配置推定方法について図17を参照しながら説明する。なお、本願発明の側溝配置推定方法は、ここまで説明した本願発明の側溝配置推定装置100を用いて側溝の配置を推定する方法であり、したがって側溝配置推定装置100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の側溝配置推定方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.側溝配置推定装置」で説明したものと同様である。
【0073】
図17は、本願発明の側溝配置推定方法の主な工程の流れを示すフロー図である。この図に示すように、まずは計画範囲を対象として例えばMMSによるレーザー計測を行う(Step10)。レーザー計測を行うと、計測点群から側溝配置の推定に必要な対象点群を抽出し、対象点群に含まれる計測点ごとに1回水平差分dH、1回鉛直差分dV、2回水平差分ddH、2回鉛直差分ddVを算出する(Step20)。計測点ごとに差分が算出されると、この差分に基づいて側溝候補点Pcを抽出し(Step30)、この側溝候補点Pcを対象として1次分類を行い、側溝確定点、同一側溝候補点、ノイズ候補点に分類する(Step40)。さらに1次分類で同一側溝候補点とノイズ候補点に分類された側溝候補点Pcを対象として2次分類を行い、側溝確定点、ノイズ確定点に分類する(Step50)。ここまでに抽出された側溝確定点を水抜き用切欠き穴GPの位置を示す計測点と考え、図1(c)や図1(d)に示すように一連の側溝配置を推定する(Step60)。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本願発明の側溝配置推定装置、及び側溝配置推定方法は、U字溝に限らず水抜き用切欠き穴を有する蓋が掛けられた種々の側溝にも利用することができる。また、道路縁である側溝の配置を効率的かつ正確に抽出しデータ化することができるため、自動運転用の情報としても効果的に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
100 本願発明の側溝配置推定装置
101 (側溝配置推定装置の)差分算出手段
102 (側溝配置推定装置の)側溝候補点抽出手段
103 (側溝配置推定装置の)基準線上側溝候補点設定手段
104 (側溝配置推定装置の)点間距離算出手段
105 (側溝配置推定装置の)分類手段
106 (側溝配置推定装置の)累計点間距離算出手段
107 (側溝配置推定装置の)2次分類手段
108 (側溝配置推定装置の)計測点群記憶手段
GL L字溝
GP 水抜き用切欠き穴
GU U字溝
L 走査線
LS 1箇所蓋
LW 2箇所蓋
Pc 側溝候補点
Pr 路面点
Qc 基準線上側溝候補点
SD 点間距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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