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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】細胞観察システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
C12M1/34 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019526406
(86)(22)【出願日】2017-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2017023388
(87)【国際公開番号】W WO2019003271
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2020-06-11
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】三由 貴史
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 真一
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 靖展
(72)【発明者】
【氏名】高橋 晋太郎
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】松本 淳
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-196867(JP,A)
【文献】国際公開第2015/107667(WO,A1)
【文献】特開2015-231343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M1/00-1/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPlus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキュベータ内に配置され、培養容器内の細胞の第1画像を取得する第1撮像部を備える第1撮像装置と、
前記インキュベータ外に配置され、前記インキュベータから取り出された前記培養容器内の第2画像を取得する第2撮像部と、該第2撮像部と前記培養容器とを相対移動可能に支持する支持部と、前記第2画像を取得したときの前記培養容器と前記第2撮像部との相対位置を計測する位置計測部とを備える第2撮像装置と、
前記第1撮像装置および前記第2撮像装置に接続された処理装置と、
表示装置とを備え、
前記処理装置が、前記第1撮像装置により取得された前記第1画像において複数の対象細胞を抽出し、抽出された前記複数の対象細胞が存在するそれぞれの位置を算出して記憶し、前記位置計測部により計測された相対位置に基づいて、前記培養容器を示す表示に前記複数の対象細胞が存在するそれぞれの位置を示すマークと現在取得されている前記第2画像の位置を示すマークとを重畳して前記表示装置に表示する細胞観察システム。
【請求項2】
前記位置計測部が、前記培養容器の基準位置を基準とした水平2方向の前記培養容器と前記第2撮像部との相対位置を計測するエンコーダである請求項1に記載の細胞観察システム。
【請求項3】
インキュベータ内に配置され、培養容器内の細胞の第1画像を取得する第1撮像部を備える第1撮像装置と、
前記インキュベータ外に配置され、前記インキュベータから取り出された前記培養容器内の第2画像を取得する第2撮像部と、該第2撮像部と前記培養容器とを相対移動可能に支持する支持部とを備える第2撮像装置と、
前記第1撮像装置および前記第2撮像装置に接続された処理装置と、
表示装置とを備え、
前記処理装置が、前記第1撮像装置により取得された前記第1画像において複数の対象細胞を抽出し、抽出された前記複数の対象細胞が存在するそれぞれの位置を算出して記憶し、前記第1画像内において前記第2画像を画像マッチングにより検索して、前記培養容器と前記第2撮像部との相対位置を算出し、算出された相対位置に基づいて、前記培養容器を示す表示に前記複数の対象細胞が存在するそれぞれの位置を示すマークと現在取得されている前記第2画像の位置を示すマークとを重畳して前記表示装置に表示する細胞観察システム。
【請求項4】
前記第1撮像部が、前記第1画像を構成する複数枚の部分画像を取得し、
前記第1撮像装置が、前記第1撮像部と前記培養容器とを相対移動させる駆動部を備え、各前記部分画像と、該部分画像を取得したときの前記培養容器と前記第1撮像部との相対位置とを対応づけて前記処理装置に送信する請求項1から請求項3のいずれかに記載の細胞観察システム。
【請求項5】
前記処理装置が、前記培養容器を示す容器寸法画像を生成して表示するとともに、該容器寸法画像に前記第2画像の位置を重畳して表示する請求項1から請求項4のいずれかに記載の細胞観察システム。
【請求項6】
前記処理装置が、前記容器寸法画像に、前記第1画像を重畳して前記表示装置に表示する請求項5に記載の細胞観察システム。
【請求項7】
前記処理装置が、前記第1画像内において、抽出された前記対象細胞を強調表示する請求項1から請求項6のいずれかに記載の細胞観察システム。
【請求項8】
前記処理装置が、前記第1画像内の各前記細胞の形状的特徴を算出し、前記形状的特徴に基づいて前記複数の対象細胞を抽出し、抽出された前記複数の対象細胞が存在するそれぞれの位置を算出して記憶する請求項1から請求項7のいずれかに記載の細胞観察システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞観察システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリーンベンチのような作業空間において観察装置を用いて培養容器内部の観察を行いながら、培養容器から対象細胞を採取したり除去したりする技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-106305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、作業者が観察装置を用いて目視しながら対象細胞を探すため対象細胞であるかを判断するための時間がかかり、さらに、培養容器内の対象細胞を網羅的に発見することが困難であるという不都合がある。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、クリーンベンチ等の作業空間において対象細胞を網羅的かつ効果的に発見することができる細胞観察システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、インキュベータ内に配置され、培養容器内の細胞の第1画像を取得する第1撮像部を備える第1撮像装置と、前記インキュベータ外に配置され、前記インキュベータから取り出された前記培養容器内の第2画像を取得する第2撮像部と、該第2撮像部と前記培養容器とを相対移動可能に支持する支持部と、前記第2画像を取得したときの前記培養容器と前記第2撮像部との相対位置を計測する位置計測部とを備える第2撮像装置と、前記第1撮像装置および前記第2撮像装置に接続された処理装置と、表示装置とを備え、前記処理装置が、前記第1撮像装置により取得された前記第1画像において複数の対象細胞を抽出し、抽出された前記複数の対象細胞が存在するそれぞれの位置を算出して記憶し、前記位置計測部により計測された相対位置に基づいて、前記培養容器を示す表示に前記複数の対象細胞が存在するそれぞれの位置を示すマークと現在取得されている前記第2画像の位置を示すマークとを重畳して前記表示装置に表示する細胞観察システムである。
【0006】
本態様によれば、インキュベータ内に配置された第1撮像装置に、細胞を播種した培養容器を収容し、第1撮像部によって培養容器内の細胞の第1画像を取得すると、取得された第1画像が処理装置に送られて、第1画像内における対象細胞が抽出され、対象細胞が存在する位置が算出されて記憶される。
【0007】
インキュベータ内から培養容器を取り出して、インキュベータ外に配置された第2撮像装置の支持部に支持させて、培養容器と第2撮像部とを相対移動させると、第2撮像部により第2画像が取得されるとともに、位置計測部により相対位置が計測される。
処理装置は、第1画像から抽出された対象細胞の位置と、現在取得されている第2画像の位置との対応関係を表示装置に表示する。
【0008】
ユーザは、表示装置に表示された対応関係を見ながら、培養容器と第2撮像部とを相対移動させて、第2撮像部の視野を対象細胞が存在する位置に一致させて、対象細胞を含む第2画像を表示装置に表示させることができる。そして、これにより、クリーンベンチ等の作業空間において対象細胞を網羅的かつ効果的に発見することができる。
【0009】
上記態様においては、前記位置計測部が、前記培養容器の基準位置を基準とした水平2方向の前記培養容器と前記第2撮像部との相対位置を計測するエンコーダであってもよい。
このようにすることで、ユーザが、インキュベータから取り出した培養容器を支持部に設置し、培養容器と第2撮像部とを相対移動させると、培養容器の基準位置を基準とした両者の相対位置がエンコーダによって計測される。
【0010】
また、本発明の他の態様は、インキュベータ内に配置され、培養容器内の細胞の第1画像を取得する第1撮像部を備える第1撮像装置と、前記インキュベータ外に配置され、前記インキュベータから取り出された前記培養容器内の第2画像を取得する第2撮像部と、該第2撮像部と前記培養容器とを相対移動可能に支持する支持部とを備える第2撮像装置と、前記第1撮像装置および前記第2撮像装置に接続された処理装置と、表示装置とを備え、前記処理装置が、前記第1撮像装置により取得された前記第1画像において複数の対象細胞を抽出し、抽出された前記複数の対象細胞が存在するそれぞれの位置を算出して記憶し、前記第1画像内において前記第2画像を画像マッチングにより検索して、前記培養容器と前記第2撮像部との相対位置を算出し、算出された相対位置に基づいて、前記培養容器を示す表示に前記複数の対象細胞が存在するそれぞれの位置を示すマークと現在取得されている前記第2画像の位置を示すマークとを重畳して前記表示装置に表示する細胞観察システムである。
【0011】
本態様によれば、インキュベータ内に配置された第1撮像装置に、細胞を播種した培養容器を収容し、第1撮像部によって培養容器内の細胞の第1画像を取得すると、取得された第1画像が処理装置に送られて、第1画像内における対象細胞が抽出され、対象細胞が存在する位置が算出されて記憶される。
【0012】
インキュベータ内から培養容器を取り出して、インキュベータ外に配置された第2撮像装置の支持部に支持させて、培養容器と第2撮像部とを相対移動させると、第2撮像部により取得された第2画像が、処理装置によって第1画像内から画像マッチングにより検索され、培養容器と第2撮像部との相対位置が算出される。
処理装置は、第1画像から抽出された対象細胞の位置と、現在取得されている第2画像の位置との対応関係を表示装置に表示する。
【0013】
ユーザは表示装置に表示された対応関係を見ながら、培養容器と第2撮像部とを相対移動させて、第2撮像部の視野を対象細胞が存在する位置に一致させて、対象細胞を含む第2画像を表示装置に表示させることができる。そして、これにより、クリーンベンチ等の作業空間において対象細胞を網羅的かつ効果的に発見することができる。
【0014】
また、上記態様においては、前記第1撮像部が、前記第1画像を構成する複数枚の部分画像を取得し、前記第1撮像装置が、前記第1撮像部と前記培養容器とを相対移動させる駆動部を備え、各前記部分画像と、該部分画像を取得したときの前記培養容器と前記第1撮像部との相対位置とを対応づけて前記処理装置に送信してもよい。
このようにすることで、第1撮像部により培養容器内の細胞の複数枚の部分画像が取得され、各部分画像を取得したときの培養容器と第1撮像部との相対位置が対応づけられて処理装置に送信される。これにより、処理装置において第1撮像部の視野より大きな第1画像を生成することができる。
【0015】
また、上記態様においては、前記処理装置が、前記培養容器を示す容器寸法画像を生成して表示するとともに、該容器寸法画像に前記第2画像の位置を重畳して表示してもよい。
このようにすることで、表示装置に表示された容器寸法画像を見ながら、重畳して表示されている対象細胞が存在する位置を選択することができる。
【0016】
また、上記態様においては、前記処理装置が、前記容器寸法画像に、前記第1画像を重畳して前記表示装置に表示してもよい。
このようにすることで、表示装置に表示された第1画像を見ながら、重畳して表示されている対象細胞が存在する位置を選択することができる。
【0017】
また、上記態様においては、前記処理装置が、前記第1画像内において抽出された前記対象細胞を強調表示してもよい。
このようにすることで、対象細胞が含まれる第1画像が表示されたときに、対象細胞が強調表示されていることにより、対象細胞の位置を容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る細胞観察システムを示すブロック図である。
図2図1の細胞観察システムに備えられる第1撮像装置を示す平面図である。
図3図1の細胞観察システムに備えられる第2撮像装置を示す平面図である。
図4図1の細胞観察システムの表示装置に表示されるウェルガイドの一例を示す図である。
図5図1の細胞観察システムの表示装置における表示例を示す図である。
図6図1の細胞観察システムの変形例により生成した第1画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る細胞観察システム1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る細胞観察システム1は、図1に示されるように、細胞(図5参照。)Xを培養するインキュベータ2内に配置され、細胞Xを播種した培養容器3を搭載して、該培養容器3内の細胞Xの第1画像を取得する第1撮像装置4と、インキュベータ2外に配置され、インキュベータ2から取り出した培養容器3を搭載して、該培養容器3内の細胞Xの第2画像を取得する第2撮像装置5と、第1撮像装置4および第2撮像装置5に接続された処理装置6と、該処理装置6に接続された表示装置7とを備えている。
【0020】
第1撮像装置4は、図2に示されるように、少なくとも底面が光学的に透明な材質からなる培養容器3を搭載する、少なくとも部分的に透明な窓部8を有するステージ9と、該ステージ9の下方において、ステージ9に搭載された培養容器3内の細胞Xを撮影する第1撮像部10と、該第1撮像部10をステージ9に対して水平2方向に移動させる駆動部11とを備えている。
【0021】
培養容器3は、例えば、外形が直方体状の2行3列の6つのウェルを有するマルチウェルプレートである。
ステージ9は、搭載した培養容器3の隣接する2側面を突き当てる2つの突当て面9aを備え、2つの突当て面9aに培養容器3の2側面をそれぞれ突き当てることにより、培養容器3を位置決め状態に搭載することができるようになっている。
【0022】
第1撮像部10は、集光レンズ等の必要な光学系を備えるカメラであり、培養容器3の底面よりも十分に小さい視野を備えている。
駆動部11は、図示しないが、例えば、モータと、第1撮像部10を搭載するスライダと、モータの動力をスライダの水平2方向の動作に変換する2つの直動機構とを備えている。モータにはエンコーダが備えられ、2つの突当て面9aの交点に対して、第1撮像部10の光軸が所定の位置に配置された状態を原点位置とし、駆動部11を作動させたときの第1撮像部10の水平方向位置(相対位置)を検出することができるようになっている。
【0023】
これにより第1撮像装置4は、駆動部11を駆動させて第1撮像部10を所定の位置に移動させ、第1撮像部10により取得した画像(部分画像)と、そのときにエンコーダにより検出した第1撮像部10の位置とを対応づけて処理装置6に送るようになっている。
【0024】
第2撮像装置5は、図3に示されるように、少なくとも部分的に透明な窓部12を有するスライドステージ13と、該スライドステージ13の下方に配置され、スライドステージ13に搭載された培養容器3内の細胞Xを撮影する第2撮像部14と、スライドステージ13を水平2方向に移動可能に支持する支持部15とを備えている。
第2撮像部14は、集光レンズ等の必要な光学系を備えるカメラであり、第1撮像部10の倍率よりも低い、あるいは同等の倍率を備えている。また、詳細確認用に高い倍率に切り替えるよう構成されていてもよい。
【0025】
スライドステージ13は、搭載した培養容器3の隣接する2側面を突き当てる2つの突当て面13aと、これら突当て面13aとの間に培養容器3を挟むことにより、スライドステージ13に培養容器3を位置決め状態に固定する容器固定補助具16とを備えている。容器固定補助具16は、図示しないバネにより2つの突当て面13aとの距離を近接させる方向に付勢されている。
【0026】
支持部15は、直交する2方向にスライドステージ13を案内するガイドレール17,18と、各ガイドレール17,18に沿ってスライドステージ13を移動させたときに、スライドステージ13の移動量を検出する図示しないエンコーダ(位置計測部)とを備えている。エンコーダは、リニアスケールでもよいし、スライドステージ13の直線移動量を回転角度に変換して回転角度を検出する回転式のものでもよい。
【0027】
第2撮像装置5においては、第2撮像部14を原点位置に配置したときの第2撮像部14の光軸とスライドステージ13の2つの突当て面13aの交点との相対位置関係が、第1撮像装置4において、第1撮像部10を原点位置に配置したときの第1撮像部10の光軸とスライドステージ13の2つの突当て面13aの交点との相対位置関係と等しくなるように設定されている。
【0028】
これにより第2撮像装置5は、培養容器3をスライドステージ13に固定して、スライドステージ13を移動させることにより、第2撮像部14により取得した画像と、そのときにエンコーダにより検出したスライドステージ13の位置とを対応づけて処理装置6に送るようになっている。
【0029】
処理装置6は、図示しないプロセッサとメモリとを備えている。処理装置6は、プロセッサにより、第1撮像装置4から送られて来た複数枚の画像と、各画像を取得したときの第1撮像部10の位置とを受け取って、複数枚の画像を組み合わせた、より大きな第1画像を生成するとともに、生成した第1画像を処理して、対象細胞を抽出するようになっている。
対象細胞は、例えば、細胞Xの形状的特徴を算出することにより、他の細胞Xとは異なる細胞であるとして抽出することができる。処理装置6は、例えば、抽出された対象細胞の重心位置を対象細胞の位置としてメモリに記憶するようになっている。
【0030】
そして、処理装置6は、図4に示されるように、第1画像内の全ての領域における対象細胞の抽出が終了した後に、対象細胞が存在する位置を示すマークYを、培養容器3を表す容器寸法画像に重畳したウェルガイドに生成するようになっている。
また、処理装置6は、第2撮像装置5から送られて来た第2画像の位置に基づいて、図4に示されるように、ウェルガイド内に、第2画像の位置を示す矩形のフレームZを生成するようになっている。
【0031】
さらに、処理装置6は、図5に示されるように、第2画像を示すフレームZが重畳されたウェルガイドと、第2画像そのものと、当該第2画像と同じ位置の同じ大きさの第1画像の一部分とを並べて表示装置7に表示させるようになっている。図中、第1画像における斜線部は、対象細胞を示している。
ユーザが第2撮像装置5において、培養容器3を水平方向に移動させると、第2撮像部14により撮影している培養容器3内の位置が変化するので、ウェルガイド内でフレームZが移動するとともに、第2画像および第1画像の一部分の画像とがリアルタイムに変化するようになっている。
【0032】
このように構成された本実施形態に係る細胞観察システム1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る細胞観察システム1を用いて細胞Xの観察を行うには、細胞Xおよび培地を収容した培養容器3をインキュベータ2内の第1撮像装置4のステージ9に搭載し、ステージ9に設けられた2つの突当て面9aに培養容器3の2つの隣接する側面を突き当てる。これにより、培養容器3がステージ9に位置決め状態に載置される。
【0033】
この状態で、インキュベータ2内を所定の温度および湿度に管理しつつ、培養容器3底面に接着して成長する細胞Xを培養する。そして、例えば、細胞Xを継代する時期になった時点で、第1撮像装置4を作動させ、培養容器3の底面に接着している細胞Xの複数の部分画像を取得するとともに、各部分画像の取得時におけるステージ9の基準位置に対する第1撮像部10の光軸位置を対応づけて部分画像に対応づけて処理装置6に送る。
【0034】
処理装置6は、送られてきた複数枚の部分画像を合成してより広い画角を有する第1画像を生成し、生成された第1画像内において、対象細胞を抽出する処理を行う。対象細胞としては、例えば、細胞Xのコロニー状態を判別した結果、ピペットやアスピレータで分取あるいは廃棄すべきであると判定された細胞Xを挙げることができる。
処理装置6は、図4に示されるように、培養容器3の形状を表すウェルガイドを生成するとともに、対象細胞として抽出された位置に、例えば、円形のマークYを重畳する。
【0035】
ユーザはインキュベータ2から培養容器3を取り出して、インキュベータ2外のクリーンベンチに配置された第2撮像装置5のスライドステージ13上に培養容器3を搭載する。そして、スライドステージ13に設けられている2つの突当て面13aに培養容器3の2つの側面を突き当てるとともに、容器固定補助具16によって培養容器3をスライドステージ13上に固定する。
【0036】
第2撮像部14に対するスライドステージ13の相対位置はエンコーダによって計測されているので、処理装置6が、ウェルガイド内に、第2画像の位置を示すフレームZを重畳して生成する。
処理装置6により生成されたウェルガイド、第1撮像部10により取得された第1画像および第2撮像部14により取得された第2画像が表示装置7により表示される。
【0037】
ユーザが、ウェルガイドを見ながら、第2撮像装置5のスライドステージ13を操作して、第2撮像部14に対して培養容器3を水平方向に移動させると、培養容器3の移動に同期してウェルガイド上においてフレームZが移動するので、抽出された対象細胞の位置を示す円形のマークYに、第2撮像部14の位置を示すフレームZを一致させるように培養容器3を動かすことができる。
【0038】
そして、表示装置7には、ウェルガイドと並列してフレームZに対応する位置の第1画像および第2画像が表示されているので、インキュベータ2内で取得された第1画像と、インキュベータ2外で現在取得されている第2画像とを比較して観察することができる。
フレームZがいずれかの円形のマークYに一致したときには、対象細胞を含む第1画像および第2画像が表示されるので、ユーザは、ピペット等によって対象細胞を分取することができ、分取前の第1画像と分取後の第2画像とを対比観察することができる。
【0039】
このように、本実施形態に係る細胞観察システム1によれば、インキュベータ2内において取得された第1画像を処理して対象細胞を抽出し、抽出された対象細胞の位置をインキュベータ2外において表示するので、ユーザは、表示された位置に第2撮像部14を一致させて対象細胞を容易に確認することができ、分取等の処置を迅速に行うことができる。
したがって、ユーザが対象細胞を探す手間を省いて、培養容器3内の対象細胞を網羅的に発見することができるという利点がある。
【0040】
その結果、インキュベータ2から取り出して対象細胞を探す必要がないので、培養環境が整っていない状況に細胞Xを長時間にわたって晒さずに済み、細胞Xを健全な状態に維持することができる。
【0041】
なお、本実施形態においては、培養容器3を示すウェルガイドに対象細胞を示す円形のマークYを重畳することとしたが、これに加えて、第1撮像装置4により取得された第1画像を重畳表示することにしてもよい。これにより、ユーザは第1画像全体を見ながら対象細胞の位置を確認することができ、より直感的に対象細胞を確認することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、処理装置6が、第1画像を表示装置7に表示する際に、抽出された対象細胞を強調表示することにしてもよい。強調表示としては、例えば、他の部分と異なる色を付することなどを挙げることができる。すなわち、スライドステージ13を操作して第2撮像部14の視野内に対象細胞が入ってきたときに、第1画像に表示される対象細胞が強調表示されていることで、対象細胞をより容易に確認することができる。
【0043】
また、本実施形態においては、ウェルガイド内に第2画像の位置を示すフレームZを重畳して表示することとしたが、これに加えて、第2撮像部14を表すフレームZを重畳して表示してもよい。培養容器3を表すウェルガイドに対して第2撮像部14を表すフレームZを重畳することで、第2撮像装置5における培養容器3と第2撮像部14との関係をより現実に近い形で表示でき、ユーザがスライドステージ13をより直感的に操作することができる。
【0044】
また、本実施形態においては、第2撮像装置5にスライドステージ13と第2撮像部14との相対位置を計測するエンコーダを備えることとしたが、これに代えて、エンコーダのような位置計測部を備えることなく、画像処理により、スライドステージ13と第2撮像部14との相対位置を推定することにしてもよい。すなわち、第2撮像部14により取得された第2画像を第1画像内において、画像マッチングを行うことによって探索してもよい。これにより、培養容器3に対する第2撮像部14の光軸位置を第1画像内において特定することができ、同様にしてウェルガイド内に第2撮像部14の位置を重畳して表示することができる。
【0045】
また、第1画像として複数の部分画像を取得して、処理装置6によって組み合わせることにより第1画像を生成することとしたが、これに代えて、低倍率の第1撮像部10によって1枚の第1画像を一度に撮影することにしてもよい。また、第1の画像の生成は、図6に示されるように、細胞Xの存在する培養容器3の細胞Xの格納された領域、例えば、ウェル底面部のみの部分画像で構成され、ウェル間の部材部分や、培養容器3の底面以外の部分は空白のある画像でもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 細胞観察システム
2 インキュベータ
3 培養容器
4 第1撮像装置
5 第2撮像装置
6 処理装置
7 表示装置
10 第1撮像部
11 駆動部
14 第2撮像部
15 支持部
X 細胞
図1
図2
図3
図4
図5
図6