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特許7296888地域エネルギー分配システム、ならびに機械的仕事を提供し、かつ地域熱エネルギー回路の熱伝達流体を加熱する方法
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  • 特許-地域エネルギー分配システム、ならびに機械的仕事を提供し、かつ地域熱エネルギー回路の熱伝達流体を加熱する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】地域エネルギー分配システム、ならびに機械的仕事を提供し、かつ地域熱エネルギー回路の熱伝達流体を加熱する方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20230616BHJP
   F24D 10/00 20220101ALI20230616BHJP
   F24D 3/00 20220101ALI20230616BHJP
   F24T 50/00 20180101ALI20230616BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20230616BHJP
   F24F 3/00 20060101ALI20230616BHJP
   F01K 27/02 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
F28D20/00 A
F24D10/00
F24D3/00 B
F24T50/00
F24F5/00 101A
F24F3/00 B
F01K27/02 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019558585
(86)(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2018060685
(87)【国際公開番号】W WO2018202528
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】17169074.6
(32)【優先日】2017-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500377871
【氏名又は名称】エー.オン、スベリゲ、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】E.ON Sverige Aktiebolag
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】ペール、ローゼン
(72)【発明者】
【氏名】フレドリク、ローゼンクビスト
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-046939(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098192(WO,A1)
【文献】米国特許第03986362(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00
F24D 10/00
F24D 3/00
F24T 50/00
F24F 5/00
F24F 3/00
F01K 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地域エネルギー分配システムであって、
地熱発電所(50)を含み、前記地熱発電所(50)は、
第1の回路を含み、前記第1の回路は、
地熱熱源(10)から地熱で加熱された水の流入流のための供給導管(11)と、
地熱で加熱された水の前記流入流から熱を交換して前記地熱発電所(50)の第2の回路の作動媒体を過熱するように構成された熱交換器(52a、52b、52c)を含むボイラー(51)と、
前記ボイラー(51)から前記地熱熱源(10)への冷却水の戻り流のための戻り導管(12)と、を含み、
前記第2の回路は、
前記第2の回路の前記作動媒体を過熱するように構成された前記ボイラー(51)と、
前記ボイラー(51)に接続され、前記過熱された作動媒体を膨張させ、前記膨張を機械的仕事に変換するように構成された膨張器(53)と、
前記膨張した作動媒体を液相に変換し、地域熱エネルギー回路(20)の熱伝達流体を加熱するように構成された凝縮器(55)と、
を含み、
前記地域熱エネルギー回路(20)は、
地域供給導管(22)と、
地域戻り導管(23)と、
各々が前記地域供給導管(22)に接続された入口(25)と前記地域戻り導管(23)に接続された出口(26)とを有する複数の局所加熱システム(200;250)であって、各々が建物(40)に温水および/または快適暖房を提供するように構成された局所加熱システム(200;250)と、
を含み、
前記地域供給導管(22)は、第1の温度の熱伝達流体が流れることができるように構成され、前記地域戻り導管(23)は、第2の温度の熱伝達流体が流れることができるように構成され、前記第2の温度は前記第1の温度よりも低く、前記第1の温度は5~30℃の範囲にあり、
前記局所加熱システム(200;250)の各々は、
熱エネルギー消費熱交換器(251)であって、前記地域供給導管(22)からの熱伝達流体が熱エネルギー消費熱交換器(251)に流入することを可能にするための熱エネルギー消費バルブ(252)を介して前記地域供給導管(22)に選択的に接続され、熱伝達流体を前記地域供給導管(22)から前記熱エネルギー消費熱交換器(251)に送出するための熱エネルギー消費ポンプ(253)を介して前記地域供給導管(22)に選択的に接続され、前記熱エネルギー消費熱交換器(251)から前記地域戻り導管(23)への熱伝達流体の戻りを可能にするために前記地域戻り導管(23)に接続され、前記地域戻り導管(23)に戻された熱伝達流体が前記第1の温度よりも低い温度を有するように、熱伝達流体から熱エネルギーを前記熱エネルギー消費熱交換器(251)の周囲に伝達するように構成された、前記熱エネルギー消費熱交換器(251)と、
前記地域供給導管(22)と前記地域戻り導管(23)との間の局所圧力差Δp1を決定するように構成された圧力差決定装置(254)と、
前記局所圧力差に基づいて、前記熱エネルギー消費バルブ(252)または前記熱エネルギー消費ポンプ(253)のいずれかの使用を選択的に制御するように構成されたコントローラ(255)と、
を含み、
前記凝縮器(55)が、前記地域供給導管(22)の熱伝達流体を5~30℃に加熱するように構成された、地域エネルギー分配システム。
【請求項2】
前記地熱熱源(10)は、深部地熱熱源である、請求項1に記載の地域エネルギー分配システム。
【請求項3】
前記膨張器(53)はガスタービンである、請求項1または2に記載の地域エネルギー分配システム。
【請求項4】
前記膨張器(53)は、前記過熱された作動媒体を膨張させて10~40℃の流出温度を受け取るように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の地域エネルギー分配システム。
【請求項5】
前記ボイラー(51)は、前記凝縮器(55)からの前記液化された作動媒体を過熱するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の地域エネルギー分配システム。
【請求項6】
前記地熱発電所(50)は、前記機械的仕事を電力に変換するように構成された発電機(54)をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の地域エネルギー分配システム。
【請求項7】
前記地熱熱源(10)は、前記戻り導管(12)を介して戻された前記冷却水を100~250℃の温度に地熱で加熱するように構成される、請求項1から6のいずれか1項に記載の地域エネルギー分配システム。
【請求項8】
前記第1の回路は、前記地熱熱源(10)から前記供給導管(11)に地熱で加熱された水を引き込み、前記供給導管(11)内で液相になるように前記地熱で加熱された水を加圧するように構成された吸引ポンプ(13)をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の地域エネルギー分配システム。
【請求項9】
前記ボイラー(51)は、前記戻り導管(12)内の前記冷却水が10~40°Cの温度を有するように、地熱で加熱された水の前記流入流から熱を交換するように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の地域エネルギー分配システム。
【請求項10】
前記地域供給導管(22)は、前記地域戻り導管(23)と共に、地面に平行に配置された場合に2.5W/(mK)より大きい熱伝達係数を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の地域エネルギー分配システム。
【請求項11】
前記局所圧力差が、前記地域供給導管(22)の前記熱伝達流体の局所圧力が前記地域戻り導管(23)の前記熱伝達流体の局所圧力よりも大きいことを示す場合に、前記コントローラ(255)は、前記熱エネルギー消費バルブ(252)を選択的に使用するように構成され、
前記局所圧力差が、前記地域供給導管(22)の前記熱伝達流体の前記局所圧力が前記地域戻り導管(23)の前記熱伝達流体の前記局所圧力以下であることを示す場合に、前記コントローラ(255)は、前記熱エネルギー消費ポンプ(253)を選択的に使用するように構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載の地域エネルギー分配システム。
【請求項12】
前記複数の局所加熱システム(200;250)の各々は、前記入口(25)を介して前記局所加熱システム(200;250)に入る熱伝達流体から熱を抽出し、その後冷却された前記熱伝達流体を、前記出口(26)を介して前記地域戻り導管(23)に戻すように構成され、前記複数の局所加熱システム(200;250)の各々は、-5~15℃の範囲の温度を有する熱伝達流体を戻すように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載の地域エネルギー分配システム。
【請求項13】
前記地域供給導管(22)および前記地域戻り導管(23)は、0.6MPa、1MPa、または1.6MPaまでの圧力に対して寸法決めされている、請求項1から12のいずれか一項に記載の地域エネルギー分配システム。
【請求項14】
前記地域戻り導管(23)に戻された熱伝達流体が、前記第2の温度に等しい温度を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の地域エネルギー分配システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地域エネルギー分配システム、ならびに機械的仕事を提供し、かつ地域熱エネルギー回路の熱伝達流体を加熱する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界のほぼすべての発達した都市では、インフラストラクチャに少なくとも2種類のエネルギーグリッドが組み込まれており、それは電気エネルギーを提供するための1つのグリッドと、暖房および温水道水の準備を提供するための1つのグリッドである。暖房と温水道水の準備に使用される一般的なグリッドは、通常、化石燃料ガスである可燃性ガスを供給するガスグリッドである。ガスグリッドによって提供されるガスは、暖房と温水道水を供給するために局所的に燃焼される。暖房と温水道水を準備するためのガスグリッドの代替は、地域暖房グリッドである。また、電気エネルギーグリッドの電気エネルギーは、暖房と温水道水の準備に使用することができる。また、電気エネルギーグリッドの電気エネルギーは、冷房に使用することができる。電気エネルギーグリッドの電気エネルギーはさらに冷蔵庫および冷凍庫を駆動するために使用される。
【0003】
したがって、伝統的な建物の冷暖房システムは、電気および化石燃料などの一次高品位エネルギー源、あるいは産業廃熱の形態のエネルギー源を使用して、暖房および/または冷房を提供し、建物で使用される水を加熱または冷却する。さらに、都市では冷房のために地域冷却グリッドを設置することもますます一般的になっている。建物の空間と水を加熱または冷却するプロセスは、この高品位エネルギーを高エントロピーの低品位廃熱に変換し、これが建物を離れて環境に戻される。
【0004】
地球で利用可能な熱エネルギーを用いる地熱熱源システムを使用して、例えば電気的または機械的仕事を生成することは、よく知られている。しかしながら、これらの種類のシステムは大量の熱エネルギーを放出し、それは例えば冷却塔によって環境に放出される。
【0005】
したがって、利用可能な廃熱をより有効に使用するための改善された費用対効果の高いシステムが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述の問題の少なくともいくつかを解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、地域エネルギー分配システムが提供される。地域エネルギー分配システムは、
地熱発電所を含み、地熱発電所は、第1の回路を含み、第1の回路は、地熱熱源から地熱で加熱された水の流入流のための供給導管と、
地熱で加熱された水の流入流から熱を交換して地熱発電所の第2の回路の作動媒体を過熱するように構成された熱交換器を含むボイラーと、ボイラーから地熱熱源への冷却水の戻り流のための戻り導管と、を含み、第2の回路は、第2の回路の作動媒体を過熱するように構成されたボイラーと、ボイラーに接続され、過熱された作動媒体を膨張させ、膨張を機械的仕事に変換するように構成された膨張器と、膨張した作動媒体を液相に変換し、地域熱エネルギー回路の熱伝達流体を加熱するように構成された凝縮器と、を含み、地域熱エネルギー回路は、地域供給導管と、地域戻り導管と、各々が地域供給導管に接続された入口と地域戻り導管に接続された出口とを有する複数の局所加熱システムであって、各々が建物に温水および/または快適暖房を提供するように構成された局所加熱システムと、地域供給導管の熱伝達流体を5~30℃の温度に加熱するように構成された凝縮器と、を含む。
【0008】
地域エネルギー分配システムは、地熱熱源システムと地域エネルギー分配システムおよび地熱発電所を組み合わせるように構成されている。したがって、地熱で加熱された水から抽出されたエネルギーは、複数の局所加熱システムに供給することができ、局所加熱システムは、建物に温水および/または快適な暖房を提供するために使用することができる。地域エネルギー分配システムは、中央熱交換器によってエネルギーを地熱熱源に戻すためにも使用することができる。さらに、地熱で加熱された水から抽出されるエネルギーは、機械的仕事を生成するために使用することができ、機械的仕事は、例えば電力を生成するために使用することができる。
【0009】
地熱エネルギーは、用途の文脈では、地球で生成および保存される熱エネルギーとして理解される。地熱エネルギーは、費用対効果が高く、信頼性が高く、持続可能で、環境にやさしいが、歴史的には構造プレート境界付近の地域に限定されてきた。しかし、最近の技術の進歩により、特に家庭用暖房などの用途向けに、実行可能なリソースの範囲とサイズが劇的に拡大し、広範な開発の可能性が開かれている。掘削の開発により、最大5km以上の深さで地熱熱源システムを設計することができる。そのような深さへのアクセスを提供するシステムは、多くの場合、深部地熱熱源システムと呼ばれる。岩盤への入口と出口の穴は、通常、互いに大きく離れて配置されている。さらに、入口穴と出口穴の間の領域の岩盤は分断されており、このように形成された隙間に水を貯めることができる。岩盤自体は乾燥している可能性があり、それにより、水は、加熱された岩盤に入口穴を介して積極的に供給される。そのような形成された地下貯蔵所は、以下では地熱熱源と呼ばれる。
【0010】
提供された地域エネルギー分配システムにより、多くの利点が可能になる。
【0011】
熱負荷が低い夏の温度が高く、熱負荷が高い冬の温度が低いという点で、地域エネルギー分配システムの温度が変動し、その結果、システムの一部を形成する発電所は、冬の間、つまり高熱負荷の期間中により多くの電力(電力対熱比の増加)を生成できるようになる。これは、地域エネルギーシステムに勝る利点を提供し、高負荷の状況では常に熱流体のより高い供給温度が続き、その後凝縮器の圧力が上昇するため、冬の間の電力対熱比が低くなる。
【0012】
凝縮器は、従来の地域エネルギー分配システムに適用される一般的な温度間隔45~120°Cの代わりに、0~30°Cの温度間隔で動作するため、潜在的な熱出力は大幅に(2倍程度)増加する。実際には、代わりに、例えば冷却塔を用いてすべての余剰熱を廃熱として除去しなければならない状況と比較して、より多くの電力が生成される可能性がある。
【0013】
地域供給導管内の熱伝達流体の流出流の温度を5~30°Cの温度に制御するように構成された、提供される地域エネルギー分配システムは、通常、45~120℃の範囲で動作する典型的な地域エネルギー分配システムとの違いとして、低温システムとみなされてもよい。それにより、多くの利点が可能になる。例として、従来の地域エネルギー分配システムと比較して、分配と消費に関する低温要求の結果として温度差が大きくなる場合に、同じ地熱システムからかなり高い効率と熱量(最大3倍)を得ることができる。
【0014】
また、通常の地熱技術では、使用済みの岩盤の熱が消費されるまでに約20~30年の寿命がある。通常、熱は、岩盤内の供給温度が地域暖房システムに受け入れられると考えられる最低供給温度に達したときに消費されるとみなされる。記録のために、許容可能な最低供給温度は、通常の地域暖房システムでは通常80~120℃である。現在の地域エネルギー分配システムにより、冬と夏の間の固有の温度変動、すなわち高熱負荷と低熱負荷の期間との組み合わせにより、地熱エネルギーシステムは大規模な地熱貯蔵として使用することができる。より正確には、熱負荷が低い期間である夏の間に、熱を地熱熱源に移送することができる。同様に、高熱負荷の期間である冬の間に熱を抽出することができる。これにより、地熱源の一部を形成する岩盤は、温水の供給温度が15~30°Cより低い場合でも、季節の貯蔵として使用し続けることができる。したがって、提供された地域エネルギー分配システムにより、地熱源の本来の制限された稼働寿命はもはや適用されない。
【0015】
地熱熱源は、深部地熱熱源であってもよい。
【0016】
膨張器はガスタービンであってもよい。非限定的な例として、ガスタービンは蒸気タービンであってもよい。
【0017】
膨張器は、過熱された作動媒体が膨張して10~40°Cの流出温度を受け取るように構成することができる。
【0018】
ボイラーは、凝縮器からの液化作動媒体を過熱するように構成することができる。
【0019】
地熱発電所は、機械的仕事を電力に変換するように構成された発電機をさらに備えてもよい。
【0020】
地熱熱源は、戻り導管を介して戻された冷却水を地熱で100~250℃の温度に加熱するように構成することができる。
【0021】
第1の回路は、地熱熱源から供給導管に地熱で加熱された水を引き込み、供給導管内で液相になるように地熱で加熱された水を加圧するように構成された吸引ポンプをさらに含んでもよい。
【0022】
ボイラーは、戻り導管内の冷却水が10~40°Cの温度を有するように、地熱で加熱された水の流入流から熱を交換するように構成することができる。
【0023】
地域供給導管は、地域戻り導管と共に、地面に平行に配置された場合に2.5W/(mK)より大きい熱伝達係数を有することができる。熱伝達係数のこの値は、局所供給導管および局所戻り導管が、年間平均気温が8°Cである地面に互いに1メートル以内に平行に配置されている場合に推定され、局所供給導管と局所戻り導管の算術平均温度は8~10°Cである。これにより、周囲からの熱は、局所供給導管および/または局所戻り導管によって拾われる可能性がある。さらに、安価な非断熱プラスチックパイプを局所供給導管および/または局所戻り導管に使用することができる。さらに、周囲の熱エネルギーは、局所戻り導管を流れる局所熱伝達流体によって容易に吸収され得る。
【0024】
地域供給導管は、第1の温度の熱伝達流体が流れることができるように構成することができ、地域戻り導管は、第2の温度の熱伝達流体が流れることができるように構成することができ、第2の温度は第1の温度よりも低く、局所加熱システムは、熱エネルギー消費熱交換器であって、地域供給導管からの熱伝達流体が熱エネルギー消費熱交換器に流入することを可能にするための熱エネルギー消費バルブを介して地域供給導管に選択的に接続され、熱伝達流体を高温導管から熱エネルギー消費熱交換器に送出するための熱エネルギー消費ポンプを介して地域供給導管に選択的に接続され、熱エネルギー消費熱交換器から地域戻り導管への熱伝達流体の戻りを可能にするために地域戻り導管に接続され、低温導管に戻された熱伝達流体が第1の温度よりも低い温度、好ましくは第2の温度に等しい温度を有するように、熱伝達流体から熱エネルギーを熱エネルギー消費熱交換器の周囲に伝達するように構成することができる、熱エネルギー消費熱交換器と、地域供給導管と地域戻り導管との間の局所圧力差Δp1を決定するように構成された圧力差決定装置と、局所圧力差に基づいて、熱エネルギー消費バルブまたは熱エネルギー消費ポンプのいずれかの使用を選択的に制御するように構成されたコントローラと、を含むことができる。
【0025】
「選択的に接続されている」という表現は、関連する熱交換器が、ある時点で、ポンプまたはバルブを介してそれぞれの導管に流体接続されていると解釈されるべきである。したがって、関連する熱交換器がポンプまたはバルブを介してそれぞれの導管と流体接続する場合に選択することができる。
【0026】
「バルブ」という言葉は、制御された方法で、バルブが開いた状態のときに熱伝達流体がバルブを通って流れるように構成された装置として解釈されるべきである。さらに、バルブは、バルブを通る熱伝達流体の流量が制御され得るように構成されてもよい。したがって、バルブは、そこを通る熱伝達流体の流れを調整するために構成された調整バルブであってもよい。
【0027】
「ポンプ」という文言は、ポンプがアクティブなポンピング状態にあるときに、制御された方法で、熱伝達流体がポンプを通してポンピングされるように構成された装置として解釈されるべきである。さらに、ポンプは、ポンプを通る熱伝達流体の流量が制御され得るように構成されてもよい。
【0028】
ポンプとバルブは、一緒になって、ポンプまたはバルブとして選択的に機能する流量調整器とみなすことができる。「選択的にポンプまたはバルブとして機能する」という言葉は、流量コントローラがある時点でポンプとして機能し、別の時点でバルブとして機能するものと解釈されるべきである。そのような流量調整器は、欧州特許出願EP16205021.5に記載されている。
【0029】
地域熱エネルギー分配システムにより、地域供給導管と地域戻り導管の熱伝達流体、すなわち、高温導管および低温導管の局所圧力差を熱エネルギー回路に沿って変化させることができる。特に、地域供給導管と地域戻り導管の熱伝達流体間の局所圧力差は、導管のうちの1つから見て正から負の圧力差まで変化し得る。地域熱エネルギー分配システムはさらに、システム内のすべてのポンピングを地域の熱エネルギー消費/発電機アセンブリで行うことを可能にする。必要な流量と圧力が制限されているため、小さな周波数で制御された循環ポンプを使用することができる。したがって、地域熱エネルギー分配システムを容易に構築することが提供される。さらに、制御が容易な地域熱エネルギー分配システムが提供される。
【0030】
地域熱エネルギー分配システムの基本的な考え方は、現代の都市がそれ自体で自己の熱エネルギーを提供し、都市内で再利用できるという発明者による洞察に基づいている。再利用された熱エネルギーは、地域熱エネルギー分配システムによって収集され、例えば暖房または温水道水の準備に用いられ得る。さらに、冷房の需要の増加も、地域熱エネルギー分配システム内で処理される。地域熱エネルギー分配システム内では、都市内の建物は相互に接続されており、容易かつ簡素な方法で、様々な地域の需要に合わせて低温の廃棄エネルギーを再分配することができる。特に地域熱エネルギー分配システムは以下を提供する。
【0031】
・都市内のエネルギーフローの最適な再利用により、一次エネルギーの使用を最小限に抑える。
【0032】
・ガスやその他の燃料を局所的に燃やす必要性が減るので、都市内の煙突または燃焼場所の必要性を制限する。
【0033】
・冷却装置によって生成された過剰な熱は、地域熱エネルギー分配システム内で運び去られ、再利用され得るため、都市内の冷却塔または冷却対流の必要性を制限する。
【0034】
したがって、地熱エネルギーを使用する地域熱エネルギー分配システムは、都市内での熱エネルギーのスマートな決闘使用を提供する。都市に統合されると、地域熱エネルギー分配システムは、都市内の冷暖房用途の両方で低レベルの熱エネルギー廃棄物を利用する。これにより、都市におけるガスグリッドまたは地域暖房グリッドおよび冷房グリッドの必要性が排除され、都市の一次エネルギー消費量が削減される。
【0035】
局所圧力差が、地域供給導管の熱伝達流体の局所圧力が地域戻り導管の熱伝達流体の局所圧力よりも大きいことを示す場合に、コントローラは、熱エネルギー消費バルブを選択的に使用するように構成することができ、第1の局所圧力差が、地域供給導管の熱伝達流体の第1の局所圧力が地域戻り導管の熱伝達流体の第1の局所圧力以下であることを示す場合に、コントローラは、熱エネルギー消費ポンプを選択的に使用するように構成することができる。
【0036】
複数の局所加熱システムの各々は、入口を介して局所加熱システムに入る熱伝達流体から熱を抽出し、その後冷却された熱伝達流体を、出口を介して地域戻り導管に戻すように構成することができ、複数の局所加熱システムの各々は、-5~15℃の範囲の温度を有する局所熱伝達流体を戻すように構成することができる。この温度範囲内の温度を有する局所熱伝達流体を伝導することにより、周囲への熱損失を減らすことができる。さらに、周囲の熱エネルギーは、局所戻り導管を流れる局所熱伝達流体によって吸収されることさえあり得る。地域戻り導管と地域供給導管は、通常、大部分の経路に沿って地面に配置されているため、地域戻り導管の周囲は通常地面である。
【0037】
地域供給導管と地域戻り導管は、0.6MPa、1MPa、または1.6MPaまでの圧力に合わせて寸法決めされていてもよい。
【0038】
ボイラーは、第1および第2の回路に直列に接続された複数の熱交換器を備えてもよい。第1の回路の流れ方向に見られるように、ボイラーは過熱器、ボイラーおよびエコノマイザを備えてもよい。第1の回路と第2の回路の流れは、2つの対向流としてボイラーを通過する。
【0039】
供給導管は、第1の温度の熱伝達流体がそこを流れることを可能にするように構成することができ、戻り導管は、第2の温度の熱伝達流体がそこを流れることができるように構成することができ、第2の温度は第1の温度より低くてもよい。
【0040】
第1および第2の局所圧力差は、選択した寸法圧力に応じて、最大で±0.2MPa、±0.3MPa、または±0.6MPaに設定することができる。
【0041】
地域供給導管と地域戻り導管の温度の温度差は、5~16℃の範囲、好ましくは7~12℃の範囲、より好ましくは8~10℃であってよい。
【0042】
別の態様によれば、機械的仕事を提供し、かつ地域熱エネルギー回路の熱伝達流体を加熱する方法が提供される。本方法は、地熱熱源に接続されたボイラーに、地熱熱源からの地熱で加熱された水の流れを供給するステップと、作動媒体を過熱するために、ボイラーの熱交換器により、地熱で加熱された水の流入流から熱を交換するステップと、膨張器内で、機械的仕事を提供する過熱された作動媒体を膨張させるステップと、凝縮器において、地域熱エネルギー回路の地域供給導管の熱伝達流体を5~30℃の温度に加熱することにより、膨張した作動媒体を液相に変換するステップと、を含む。
【0043】
本発明の適用可能性のさらなる範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、例示のみのために与えられていることを理解されたい。それは、本発明の範囲内の様々な変更および修正は、この詳細な説明から当業者に明らかになるからである。
【0044】
したがって、本発明は、記載された装置の特定の構成部品に限定されず、または記載された方法のステップは、そのような装置および方法として変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。明細書および添付の特許請求の範囲で使用される冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、文脈がそうでないことを明確に示している場合を除き、1つまたは複数の要素があることを意味することに留意されたい。したがって、例えば、「ユニット(a unit)」または「ユニット(the unit)」への言及は、いくつかの装置などを含んでもよい。さらに、「備える」、「含む」、「収容する」などの語は、他の要素またはステップを除外するものではない。
【0045】
次に、本発明の実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明のこれらおよび他の態様をより詳細に説明する。図面は、本発明の実施形態の一般的な構造を示すために提供される。全体を通して同様の符号は同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】エネルギー分配システムの概略図である。
図2】局所加熱システムの概略図である。
図3】加熱と冷却を組み合わせたシステムの概略図である。
図4】熱エネルギー回路に接続された局所熱エネルギー消費アセンブリおよび局所熱エネルギー生成アセンブリの概略図である。
図5】機械的仕事を提供し、かつ地域熱エネルギー回路の熱伝達流体を加熱する方法のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の現在好ましい実施形態が示されている添付図面を参照して、本発明について以下でより完全に説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、徹底性および完全性のために、ならびに本発明の範囲を当業者に完全に伝えるために提供されている。
【0048】
図1に関連して、エネルギー分配システムについて説明する。エネルギー分配システムは、ボイラー51を介して相互接続された第1および第2の回路を有する地熱エネルギープラント50を含む。第1および第2の回路の流れは、ボイラー51を通過する2つの対向流として配置される。第1の回路は地熱熱源システム5に接続され、第2の回路は地域熱エネルギー回路20に接続されている。
【0049】
地熱熱源システム5から始まり、これは地熱熱源10を含む。地熱熱源10は、供給導管11および戻り導管12を介して地熱エネルギープラント50の第1の回路と連通している。循環流を促進するために、供給導管11は、岩盤から第1の回路に加熱された水を吸引する吸引ポンプ13を含む。吸引ポンプ13は、地熱で加熱された水を地熱熱源10から供給導管11に引き込み、供給導管11内で液相となるように地熱で加熱された水を加圧するように構成される。
【0050】
戻り導管12は、冷却水を第1の回路から地熱熱源10に強制的に戻すポンプ14を含む。地熱熱源10は、戻り導管12を介して戻された冷却水を地熱で100~250℃の温度に加熱するように構成することができる。
【0051】
地熱熱源システム5は、深部地熱熱源システムであってもよい。深部地熱熱源システムは、3km以上、好ましくは5km以上の深さへのアクセスを提供するシステムとして理解される。
【0052】
上述のように、地熱エネルギープラント50は、ボイラー51によって相互接続された第1および第2の回路を含む。第1の回路から始めて、これは、地熱熱源10からボイラー51への地熱で加熱された水の流入流のための供給導管11を含む。ボイラー51は、図1に示す実施形態では、直列に接続された3つのユニット、すなわち過熱器52a、ボイラー52b、エコノマイザ52cに分割された熱交換器を形成する。ボイラー51は、戻り導管12を介してボイラー51から地熱熱源10に戻される冷却水が10~40°Cの温度を有するように、第1の回路内の地熱で加熱された水の流入流から熱を交換するように構成される。図1に示す実施形態では、ボイラーは3つの異なる熱交換器ユニット52a、52b、52cを含むが、ボイラー52の特定の構成に合わせて任意の数の熱交換器ユニットを使用することができることが理解される。
【0053】
次に、地熱エネルギープラント50の第2の回路に目を向けると、第2の回路は、ボイラー51、ボイラー51に接続された膨張器53、および凝縮器55を含む。
【0054】
交換ユニット52a、52b、52cを備えたボイラー51は、第1の回路内の地熱で加熱された水の流入流から熱を交換し、それにより地熱エネルギープラント50の第2の回路の作動媒体を過熱するように構成される。第2の回路の作動媒体は、例として、水、アンモニア、オイルまたはプロパンであってもよい。
【0055】
ボイラー51に接続された膨張器53は、過熱された作動媒体を膨張させ、膨張を機械的仕事に変換するように構成される。膨張器53は、ガスタービンなどのタービンであってもよい。あるいは、膨張器53はスターリングモータであってもよい。膨張器53は、過熱された作動媒体が膨張して10~40°Cの流出温度を受け取るように構成することができる。
【0056】
膨張器53は、発電機54に接続されてもよく、それにより、膨張器53によって提供される機械的仕事を電力に変換することができる。電力は、電力グリッド(図示せず)に供給することができ、それ自体は当技術分野で周知である。
【0057】
凝縮器55は、第2の回路の膨張した作動媒体を液相に変換するように構成される。凝縮器55はまた、地域熱エネルギー回路20の熱伝達流体を加熱するように構成される。
【0058】
上記で示したように、第1および第2の回路の流れは、ボイラー51を通過する2つの対向流として配置される。第1の回路では、供給導管11からの温水の流れは、熱交換器ユニット、例えばボイラー51の過熱器52a、ボイラー52bおよびエコノマイザ52cを通過することによりボイラー51を通過してから、戻り導管12を介して冷却水として地熱熱源システム5に戻される。同様に、第2の回路では、凝縮器55から送出される冷却された液化作動媒体の流れは、熱交換器ユニット、例えばボイラー51のエコノマイザ52c、ボイラー52b、それから過熱器52aを介して、ボイラー51を通過して膨張器53に向かうように構成される。したがって、ボイラー51は熱交換器とみなすことができる。
【0059】
地熱エネルギープラント50の第2の回路は、凝縮器55を介して地域熱エネルギー回路20に接続されている。
【0060】
地域熱エネルギー回路20は、地域供給導管22および地域戻り導管23を含む。地域供給導管22は凝縮器55の出口に接続され、地域戻り導管23は凝縮器55の出口に接続されている。地域熱エネルギー回路20は、建物40に配置された局所加熱システム200、250および/または局所冷却システム300、350に熱伝達流体を供給するように構成される。建物は住宅であってもよいが、暖房および/または冷房を必要とするオフィスビル、事業所、工場など、他のタイプの建物40であってもよい。地域熱エネルギー回路は、複数の局所加熱システム200、250および/または局所冷却システム300、350を含んでもよいことを理解されたい。
【0061】
凝縮器55は、地域供給回路22を介して、地域供給導管22内の熱伝達流体の流入流から熱伝達流体の流出流に熱を交換するように構成される。凝縮器55は、熱伝達流体の流出流が5~30℃の温度を有するように熱を交換するように構成される。さらに、凝縮器55は、地域戻り導管23に戻される地域熱伝達流体が5~10℃の温度を有するように熱を交換するように構成されてもよい。この低温の熱伝達流体を戻すことにより、凝縮器55で行われる冷却は、(地域供給導管22を通って流入する熱伝達流体の温度に応じて)約100°Cにもなり得る。凝縮器55で実行されるこの高度の冷却は、地域暖房グリッドの熱損失を低減する。さらに、地域暖房グリッドで必要とされるポンプの等級を低減する。
【0062】
地域熱エネルギー回路20内の地域供給導管22および地域戻り導管23に使用される配管は、通常、プラスチック製の非断熱配管である。これに関連して、非断熱とは、配管の周りに断熱材の余分な層が巻かれていないことと解釈される。配管は通常、最大圧力が0.6~1MPaになるように設計されている。配管は通常、最高温度が約50°Cになるようにさらに設計されている。さらに、地域熱エネルギー回路20内の地域供給導管22および地域戻り導管23は、地面に平行に配置された場合に、併せて2.5W/(mK)より大きい熱伝達係数を有することができる。上述したように、熱伝達係数のこの値は、年間平均気温が8°Cで、局所供給導管と局所戻り導管の算術平均温度は8~10°Cである地表で、地域供給導管22と地域戻り導管23が互いに1メートルの距離内に平行に配置されている場合に推定される。
【0063】
熱伝達流体、したがってエネルギーキャリアは、通常は水であるが、他の流体または流体の混合物を使用してもよいことを理解されたい。いくつかの非限定的な例は、アンモニア、不凍液(グリコールなど)、オイル、アルコールである。混合物の非限定的な例は、グリコールなどの凍結防止剤が添加された水である。好ましい実施形態によれば、熱伝達流体は、水とグリコールなどの凍結防止剤との混合物である。これにより、熱伝達流体の温度が0°C未満になってもよい。0°C未満、好ましくは-5°C未満の凝固点を持つ熱伝達流体を提供することにより、周囲の温度が0°Cに近い場合であっても、例えば地域戻り導管23を囲む地面などの周囲から熱を吸収することができる地域戻り導管23に熱伝達流体を伝導することが可能になる。
【0064】
次に、図2を参照して、局所加熱システム200についてより詳細に説明する。地域熱エネルギー回路20は、このタイプの1つまたは複数の局所加熱システム200を備えてもよい。
【0065】
局所加熱システム200は、ヒートポンプ201と熱放出器202を備えている。熱放出器202は、ヒートポンプ201を介して局所エネルギー分配グリッド20aに接続されている。局所加熱システム200は、熱放出器202および局所ヒートポンプ201を介して、それぞれの建物40に温水道水および/または快適暖房を提供するように構成される。局所ヒートポンプ201は、地域供給導管22に接続された入口25と、地域戻り導管23に接続された出口26と、を有する。この文脈において、「ヒートポンプの入口」という用語は、ヒートポンプに地域熱エネルギー回路20からの局所熱伝達流体が供給される入口として解釈されるべきである。同様に、「ヒートポンプの出口」という用語は、ヒートポンプが局所熱伝達流体を地域熱エネルギー回路20に戻す出口として解釈されるべきである。
【0066】
このようなヒートポンプは、当技術分野で周知であり、基本的に、ブラインが第1の熱交換器と第2の熱交換器との間で循環される閉回路を含む。第1の熱交換器は、入口および出口を有し、この場合は、局所ヒートポンプ201の入口25および出口26を有し、これを介して、局所ヒートポンプ201は、第1の流体を、この場合は地域熱エネルギー回路20の熱伝達流体の流れを循環させる第1の回路に接続される。同様に、第2の熱交換器は、第2の流体、この場合は熱放出器202の加熱流体の流れを循環させる第2の回路に局所ヒートポンプ201が接続される入口および出口を有する。熱放出器202の加熱流体は通常は水であるが、他の流体または流体の混合物を使用してもよいことを理解されたい。いくつかの非限定的な例は、アンモニア、不凍液(グリコールなど)、オイル、アルコールである。混合物の非限定的な例は、グリコールなどの凍結防止剤が添加された水である。
【0067】
地域供給導管22内の熱伝達流体の流れは5~30℃の温度を有するので、局所ヒートポンプ201への入力温度は同じ温度範囲にある。局所加熱システム200は、入口25を介して局所ヒートポンプ201に入る熱伝達流体から熱を抽出し、出口26を介して熱伝達流体を地域戻り導管23に戻すように構成される。局所加熱システム200は、温度が-5~15℃の範囲にある局所熱伝達流体を戻すように構成される。
【0068】
局所加熱システム200は、局所循環ポンプ203をさらに備えてもよい。図2に示す実施形態では、局所循環ポンプ203は、局所ヒートポンプ24の出口26に配置されている。しかしながら、局所循環ポンプ28は、代替的に、局所ヒートポンプ201の入口25に配置されてもよい。したがって、局所循環ポンプ203は、局所加熱システム200の入口25と出口26との間に接続されている。局所循環ポンプ203は、地域供給導管22および地域戻り導管23内で熱伝達流体を循環させるように構成される。局所循環ポンプ203は、地域戻り導管23と地域供給導管22との間の圧力差を克服するように構成される。局所循環ポンプ203は、局所ヒートポンプ201を通って流れる熱伝達流体の流れを調整するようにさらに構成される。局所ヒートポンプ201を通る冷却流体の流れを調整し、同時に局所ヒートポンプ201の動作を任意に制御することにより、局所ヒートポンプ201から出力される局所熱伝達流体の温度を制御することができる。
【0069】
したがって、地域熱エネルギー回路20の複数の局所加熱システム200の一部またはすべては、地域供給導管22および地域戻り導管23内で熱伝達流体を循環させるための局所循環ポンプ203を備えてもよい。さらに、または複数の局所循環ポンプ203と組み合わせて、地域熱エネルギー回路20は、地域供給導管22および地域戻り導管23内の流体を循環させるように構成された中央循環ポンプ27を備えてもよい。中央循環ポンプ27は、図1に最もよく示されている。
【0070】
局所ヒートポンプ201は、コントローラ204によって制御されてもよい。コントローラ204は、熱放出器202の加熱要求に関するデータおよび/または局所ヒートポンプ201の出口26内の熱伝達流体の温度に関するデータに基づいて局所ヒートポンプ201を制御することができる。熱放出器202の加熱要求に関するデータは、熱放出器202に接続された熱要求センサ205によって決定することができる。ヒートポンプ201の出口26内の局所熱伝達流体の温度に関するデータは、出口26に接続された温度センサT1によって決定することができる。
【0071】
次に、図3を参照して、局所冷却システム300についてより詳細に説明する。地域熱エネルギー回路20は、1つまたは複数の局所加熱システム300を備えてもよい。
【0072】
局所冷却システム300は、局所加熱システム200に関連して配置されることに留意されたい。局所加熱システム200は、図2を参照して上述したタイプの局所加熱システムである。局所加熱システム200に関して過度の繰り返しを避けるために、上記を参照する。
【0073】
各局所冷却システム300は、冷却器301および冷却熱交換器302を含む。冷却器301は、それ自体、当該技術分野で周知であり、例えば、冷却が必要なオフィスビル、事業所、住宅、工場などの建物の快適冷房のために使用することができる。冷却器301は、冷却熱交換器302を介して地域熱エネルギー回路20に接続されている。局所冷却システム300は、冷却器301および冷却熱交換器302を介して、それぞれの建物40に快適冷房を提供するように構成される。したがって、局所冷却システム300は、建物40から熱を抽出するように構成される。
【0074】
冷却熱交換器302は、複数の局所加熱システム200のうちの1つの出口26に接続された入口303を有する。冷却熱交換器302は、地域熱エネルギー回路20の地域戻り導管23に接続された出口304をさらに有する。この文脈において、「熱交換器の入口」という用語は、熱交換器に地域熱エネルギー回路20からの局所熱伝達流体が供給される入口として解釈されるべきである。同様に、「熱交換器の出口」という用語は、熱交換器が局所熱伝達流体を地域熱エネルギー回路20に戻す出口として解釈されるべきである。
【0075】
上述したように、冷却器301は、冷却熱交換器302を介して地域熱エネルギー回路20に接続されている。上記に関して、熱交換器自体は当技術分野で周知であり、基本的に、第1の温度を有する第1の流体を循環させる第1の閉回路と、第2の温度を有する第2の流体を循環させる第2の閉回路の構成を含むものとして説明することができる。互いに密接に隣接する延長部に沿った2つの回路により、2つの流体間で熱伝達が行われる。局所冷却システム300では、第1の回路は建物40内に局所的に配置され、第2の回路は地域熱エネルギー回路20の一部を形成する。建物の局所冷却システムに使用される冷却器は通常、換気用のダクト内に配置されるか、建物の個々の空間にあるファン駆動のエアコイルコレクタまたは天井に取り付けられた冷却バッテリを通じて分配される。
【0076】
局所冷却システム300は、フローバルブ305をさらに備えてもよい。フローバルブ305は、冷却熱交換器302を通って流れる局所熱伝達流体の流れを調整するように構成される。冷却熱交換器302を通る熱伝達流体の流れを調整し、同時に冷却熱交換器302の動作を任意に制御することにより、冷却熱交換器302から出力される局所熱伝達流体の温度を制御することができる。フローバルブ305は、第2のコントローラ306によって制御されてもよい。第2のコントローラ306は、冷却器301の冷却要求に関するデータ、および/または局所加熱システム200の出口26内の局所熱伝達流体の温度に関するデータ、および/または局所冷却システム300の出口304内の局所熱伝達流体の温度に関するデータに基づいてフローバルブ305を制御することができる。冷却器301の冷却要求に関するデータは、冷却器301に接続された冷却要求センサ307によって決定することができる。局所加熱システム200の出口304内の熱伝達流体の温度に関するデータは、上述の温度センサT1により決定することができる。局所冷却システム300の出口304内の局所熱伝達流体の温度に関するデータは、出口304に接続された温度センサT2によって決定することができる。
【0077】
ここで改めて図1に戻ると、地域熱エネルギー回路20は、局所加熱システム250および/または局所冷却システム350をさらに備えてもよい。
【0078】
地域熱エネルギー回路20は、1つまたは複数の局所加熱システム250および/または1つまたは複数の局所冷却システム350を備えてもよい。局所加熱システム250は、建物40に配置されてもよい。局所冷却システム350は、建物40に配置されてもよい。局所加熱システム250は、入口25を介して地域供給導管22に接続され、出口26を介して地域供給導管23に接続されている。局所冷却システム350は、入口25を介して地域戻り導管23に接続され、出口26を介して地域供給導管22に接続されている。
【0079】
次に図4を参照して、局所加熱システム250について説明する。局所加熱システム250は、熱エネルギー消費アセンブリとして見ることができる。地域熱エネルギー回路20は、1つまたは複数の熱エネルギー消費アセンブリを備えてもよい。
【0080】
局所加熱システム250は、熱エネルギー消費熱交換器251、熱エネルギー消費バルブ252、熱エネルギー消費ポンプ253、第1の圧力差決定装置254、および第1のコントローラ255を含む。
【0081】
熱エネルギー消費熱交換器251は、熱エネルギー消費バルブ252および熱エネルギー消費ポンプ253を介して、高温導管である地域供給導管22に選択的に接続される。熱エネルギー消費熱交換器251の地域供給導管22への接続が熱エネルギー消費バルブ252を介して選択されると、地域供給導管22からの熱伝達流体が熱エネルギー消費熱交換器251に流入することが可能になる。熱エネルギー消費熱交換器251の地域供給導管22への接続が熱エネルギー消費ポンプ253を介して選択されると、地域供給導管22からの熱伝達流体が熱エネルギー消費熱交換器251に送出される。以下でより詳細に説明するように、地域供給導管22からの熱伝達流体を熱エネルギー消費熱交換器251に流入させるか、あるいは熱伝達流体を地域供給導管22から熱エネルギー消費熱交換器に送出させるかの選択251は、地域供給導管22と地域戻り導管23との間の局所圧力差に基づいて行われる。
【0082】
熱エネルギー消費バルブ252および熱エネルギー消費ポンプ253は、別個の装置として配置されてもよい。熱エネルギー消費バルブ252および熱エネルギー消費ポンプ253は、概要セクションでは流量調整器と呼ばれる、単一の装置として配置されてもよい。図4に示すように、熱エネルギー消費バルブ252および熱エネルギー消費ポンプ253は、並列に配置されてもよい。熱エネルギー消費バルブ252および熱エネルギー消費ポンプ253は、直列に配置されてもよい。熱エネルギー消費バルブ252および熱エネルギー消費ポンプ253が直列に配置されるこの最後の実施形態では、ポンプは、そこを通る熱伝達流体の流れを可能にする非活性状態に設定されるように構成される。
【0083】
熱エネルギー消費熱交換器251は、熱エネルギー消費熱交換器251から地域戻り導管23への熱伝達流体の戻りを可能にするために、低温導管である地域戻り導管23にさらに接続される。
【0084】
第1の圧力差決定装置254は、地域熱エネルギー回路20の第1の局所圧力差Δpを決定するように適合されている。第1の局所圧力差は、好ましくは、熱エネルギー消費熱交換器251が地域熱エネルギー回路20に接続される場所の近くで測定される。第1の圧力差決定装置254は、第1の高温導管圧力決定装置254aおよび第1の低温導管圧力決定装置254bを備えてもよい。第1の高温導管圧力決定装置は、地域供給導管22の熱伝達流体の第1の局所圧力を測定するために地域供給導管22に接続されるように構成される。第1の低温導管圧力決定装置は、地域戻り導管23の熱伝達流体の第1の局所圧力を測定するために地域戻り導管23に接続されるように配置される。第1の圧力差決定装置254は、第1の局所圧力差を、地域供給導管22の熱伝達流体の第1の局所圧力と地域戻り導管23の熱伝達流体の第1の局所圧力との間の圧力差として決定するように構成される。したがって、第1の局所圧力差は、地域供給導管22の熱伝達流体の第1の局所圧力と地域戻り導管23の熱伝達流体の第1の局所圧力との間の局所圧力差として定義することができる。好ましくは、地域供給導管22の熱伝達流体の第1の局所圧力は、熱エネルギー消費熱交換器251が地域供給導管22に接続されている場所の近くで測定される。好ましくは、地域戻り導管23の熱伝達流体の第1の局所圧力は、熱エネルギー消費熱交換器251が地域戻り導管23に接続されている場所の近くで測定される。
【0085】
第1の圧力差決定装置254は、ハードウェア装置、ソフトウェア装置、またはそれらの組み合わせとして実施されてもよい。第1の圧力差決定装置254は、第1の局所圧力差Δpを第1のコントローラ255に伝達するように構成される。
【0086】
第1のコントローラ255は、ハードウェアコントローラ、ソフトウェアコントローラ、またはそれらの組み合わせとして実施されてもよい。第1のコントローラ255は、熱エネルギー消費バルブ252または熱エネルギー消費ポンプ253のいずれかの使用を選択的に制御するように構成される。第1のコントローラ255は、第1の圧力差決定装置254によって提供される第1の局所圧力差に基づいて選択的制御を実行するように構成される。第1のコントローラ255は、熱エネルギー消費バルブ252および熱エネルギー消費ポンプ253と通信するように配置され、熱エネルギー消費バルブ252および熱エネルギー消費ポンプ253を制御する。第1の局所圧力差が、地域供給導管22の熱伝達流体の第1の局所圧力が地域戻り導管23の熱伝達流体の第1の局所圧力よりも大きいことを示す場合に、第1のコントローラ255は、熱エネルギー消費バルブ252の使用を選択的に制御するように構成される。第1の局所圧力差が、地域供給導管22の熱伝達流体の第1の局所圧力が地域戻り導管23の熱伝達流体の第1の局所圧力以下であることを示す場合に、第1のコントローラ255は、熱エネルギー消費ポンプ253の使用を選択的に制御するように構成される。
【0087】
熱エネルギー消費熱交換器251は、熱エネルギーを熱伝達流体から熱エネルギー消費熱交換器251の周囲に伝達するように構成される。地域戻り導管23に戻される熱伝達流体は、第1の温度よりも低い温度を有する。好ましくは、熱エネルギー消費熱交換器251は、地域戻り導管23に戻される熱伝達流体の温度が第2の温度に等しくなるように制御される。
【0088】
再び図4に戻って、局所冷却システム350について説明する。局所冷却システム350は、熱エネルギー生成アセンブリとして見ることができる。地域熱エネルギー回路20は、1つまたは複数の熱エネルギー生成アセンブリを備えてもよい。
【0089】
局所冷却システム350は、熱エネルギー生成熱交換器351、熱エネルギー生成バルブ352、熱エネルギー生成ポンプ353、第2の圧力差決定装置354、および第2のコントローラ355を含む。
【0090】
熱エネルギー生成熱交換器351は、熱エネルギー生成バルブ352および熱エネルギー生成ポンプ353を介して地域戻り導管23に選択的に接続される。熱エネルギー生成熱交換器351の地域戻り導管23への接続が熱エネルギー生成バルブ352を介して選択されると、地域戻り導管23からの熱伝達流体が熱エネルギー生成熱交換器351に流入することが可能になる。熱エネルギー生成熱交換器351の地域戻り導管23への接続が熱エネルギー生成ポンプ353を介して選択されると、地域戻り導管23からの熱伝達流体が熱エネルギー生成熱交換器351に送出される。以下により詳細に説明するように、地域戻り導管23からの熱伝達流体を熱エネルギー生成熱交換器351に流入させるか、あるいは地域戻り導管23から熱エネルギー生成熱交換器に熱伝達流体を送出させるかの選択351は、地域供給導管22と地域戻り導管23との間の局所圧力差に基づいて行われる。
【0091】
熱エネルギー生成バルブ352および熱エネルギー生成ポンプ353は、別個の装置として配置されてもよい。熱エネルギー生成バルブ352および熱エネルギー生成ポンプ353は、概要セクションでは流量調整器と呼ばれる、単一の装置として配置されてもよい。図4に示すように、熱エネルギー生成バルブ352および熱エネルギー生成ポンプ353は、並列に配置されてもよい。熱エネルギー生成バルブ352および熱エネルギー生成ポンプ353は、直列に配置されてもよい。熱エネルギー生成バルブ352および熱エネルギー生成ポンプ353が直列に配置されるこの最後の実施形態では、ポンプは、そこを通る熱伝達流体の流れを可能にする非活性状態に設定されるように構成される。
【0092】
熱エネルギー生成熱交換器351は、熱エネルギー生成熱交換器351から地域供給導管22への熱伝達流体の戻りを可能にするために、地域供給導管22にさらに接続される。
【0093】
第2の圧力差決定装置354は、地域熱エネルギー回路20の第2の局所圧力差Δpを決定するように適合されている。第2の局所圧力差は、好ましくは、熱エネルギー生成熱交換器351が地域熱エネルギー回路20に接続される場所の近くで測定される。第2の圧力差決定装置354は、第2の高温導管圧力決定装置354aおよび第2の低温導管圧力決定装置354bを備えてもよい。第2の高温導管圧力決定装置は、地域供給導管22の熱伝達流体の第2の局所圧力を測定するために地域供給導管22に接続されるように構成される。第2の低温導管圧力決定装置354bは、地域戻り導管23の熱伝達流体の第2の局所圧力を測定するために地域戻り導管23に接続されるように構成される。第2の圧力差決定装置354は、第2の局所圧力差を、地域供給導管22の熱伝達流体の第2の局所圧力と地域戻り導管23の熱伝達流体の第2の局所圧力との間の圧力差として決定するように構成される。したがって、第2の局所圧力差は、地域供給導管22の熱伝達流体の第2の局所圧力と地域戻り導管23の熱伝達流体の第2の局所圧力との間の局所圧力差として定義することができる。好ましくは、地域供給導管22の熱伝達流体の第2の局所圧力は、熱エネルギー生成熱交換器351が地域供給導管22に接続されている場所の近くで測定される。好ましくは、地域戻り導管23の熱伝達流体の第2の局所圧力は、熱エネルギー生成熱交換器351が地域戻り導管23に接続されている場所の近くで測定される。
【0094】
第2の圧力差決定装置354は、ハードウェア装置、ソフトウェア装置、またはそれらの組み合わせとして実施されてもよい。第2の圧力差決定装置354は、第2の局所圧力差Δpを第2のコントローラ355に伝達するように構成される。
【0095】
第2のコントローラ355は、ハードウェアコントローラ、ソフトウェアコントローラ、またはそれらの組み合わせとして実施されてもよい。第2のコントローラ355は、熱エネルギー生成バルブ352または熱エネルギー生成ポンプ353の使用を選択的に制御するように構成される。第2のコントローラ355は、第2の圧力差決定装置354によって提供される第2の局所圧力差に基づいて選択的制御を実行するように構成される。第2のコントローラ355は、熱エネルギー生成バルブ352および熱エネルギー生成ポンプ353を制御するために、熱エネルギー生成バルブ352および熱エネルギー生成ポンプ353と通信するように構成される。第2の局所圧力差が、地域戻り導管23の熱伝達流体の第2の局所圧力が地域供給導管22の熱伝達流体の第2の局所圧力よりも大きいことを示す場合に、第2のコントローラ355は、熱エネルギー生成バルブ352の使用を選択的に制御するように構成される。第2の局所圧力差が、地域戻り導管23の熱伝達流体の第2の局所圧力が地域供給導管22の熱伝達流体の第2の局所圧力以下であることを示す場合に、第2のコントローラ355は、熱エネルギー生成ポンプ353の使用を選択的に制御するように構成される。
【0096】
熱エネルギー生成熱交換器351は、周囲から熱エネルギーを熱伝達流体に伝達するように配置されている。地域供給導管22に戻される熱伝達流体は、第2の温度よりも高い温度を有する。好ましくは、熱エネルギー生成熱交換器351は、地域供給導管22に戻される熱伝達流体の温度が第1の温度に等しくなるように制御される。
【0097】
図4に示す実施形態では、第1および第2の圧力差決定装置254;354は、物理的に異なる2つの圧力差決定装置である。しかしながら、別の実施形態によれば、1つの特定の局所熱エネルギー消費アセンブリ250および1つの特定の局所熱エネルギー生成アセンブリ350は、同じ圧力差決定装置を共有してもよい。したがって、第1および第2の圧力差決定装置254;354は、物理的に同じ圧力差決定装置であってもよい。さらなる実施形態によれば、2つの特定の局所熱エネルギー消費アセンブリ250は、同じ圧力差決定装置を共有してもよい。さらに別の実施形態によれば、2つの特定の局所熱エネルギー生成アセンブリ350は、同じ圧力差決定装置を共有してもよい。
【0098】
図4に示す実施形態では、第1および第2のコントローラ255;355は、物理的に異なる2つのコントローラである。しかし、別の実施形態によれば、1つの特定の局所熱エネルギー消費アセンブリ250と1つの特定の局所熱エネルギー生成アセンブリ350は、同じコントローラを共有してもよい。したがって、第1および第2のコントローラ255;355は物理的に同じコントローラであってもよい。さらなる実施形態によれば、2つの特定の局所熱エネルギー消費アセンブリ250は、同じコントローラを共有してもよい。さらに別の実施形態によれば、2つの特定の局所熱エネルギー生成アセンブリ350は、同じコントローラを共有してもよい。
【0099】
好ましくは、熱エネルギー消費熱交換器251および熱エネルギー生成熱交換器351を使用して熱を吸い込むまたは吐き出すという要求は、規定された温度差で行われる。8~10℃の温度差は、熱エネルギー消費熱交換器251および熱エネルギー生成熱交換器351を通る最適な流れに対応する。
【0100】
地域供給導管22と地域戻り導管23との間の局所圧力差は、地域熱エネルギー回路20に沿って変化し得る。特に、地域供給導管22と地域戻り導管23との間の局所圧力差は、地域供給導管22または戻り導管23の一方から見て正から負の圧力差まで変化し得る。したがって、時には、特定の局所熱エネルギー消費/生成アセンブリ250、350は、対応する熱エネルギー消費/生成熱交換器251、351を通して熱伝達流体を送出させる必要がある場合があり、また時には、特定の局所熱エネルギー消費/生成アセンブリ250、350は、熱伝達流体を対応する熱エネルギー消費/生成熱交換器251、351に流す必要がある場合がある。したがって、システム内のすべての送出を局所熱エネルギー消費/生成アセンブリ250、350で行うことが可能になる。必要な流量と圧力が制限されているため、小さな周波数で制御された循環ポンプを使用することができる。
【0101】
熱エネルギー消費ポンプ253および/または熱エネルギー生成ポンプ353は、例えば、周波数制御循環ポンプであってもよい。
【0102】
熱エネルギー消費バルブ252および/または熱エネルギー生成バルブ352は、調整バルブであってもよい。
【0103】
図5を参照すると、機械的仕事を提供し、かつ地域熱エネルギー回路20の熱伝達流体を加熱する方法が開示されている。この方法は、以下の動作のうちの1つまたは複数を含む。この動作は、適切な任意の順序で実行することができる。
【0104】
地熱熱源10から地熱熱源10に接続されたボイラー51へ地熱で加熱された水の流れを供給するステップS500。
【0105】
作動媒体を過熱するために、地熱で加熱された水の流入流から熱を交換するステップS502。熱は、ボイラー51の熱交換器52a、52b、52cによって地熱で加熱された水の流入流から交換される。
【0106】
過熱した作動媒体を膨張器で膨張させて、それにより機械的仕事を提供するステップS504。機械的仕事を発電機に移送して、機械的仕事を電力に変換することができる。電力は、例として、電気グリッドに供給されてもよい。
【0107】
凝縮器55において、地域熱エネルギー回路20の地域供給導管22の熱伝達流体を5~30℃の温度に加熱することにより、膨張した作動媒体を液相に変換するステップS506。
【0108】
局所熱伝達流体の流れは、地域供給導管22を介して地域熱エネルギー分配システム20内で、建物40に配置された局所加熱または冷却システム200、250、300、350に循環され、それから地域戻り導管23を介して凝縮器55に戻る。循環動作は、好ましくは、複数の局所循環ポンプ28を使用して、または中央循環ポンプ27によって実行される。
【0109】
複数の建物40の各々の局所加熱システム200、250で局所供給導管22内を流れる局所熱伝達流体から熱を抽出することができる。抽出された熱は、それぞれの建物40に温水道水および/または快適暖房を提供するために使用することができる。また、熱は、冷却システム300、350で複数の建物40のうちの1つから抽出されてもよい。
【0110】
当業者は、本発明が上記の好ましい実施形態に決して限定されないことを理解する。それどころか、添付の特許請求の範囲内で多くの修正および変更が可能である。
【0111】
例えば、図3に示す実施形態では、フローバルブ305は冷却熱交換器302の出口304に配置されている。しかしながら、代わりに、フローバルブ305は、冷却熱交換器302の入口303に配置されてもよい。
【0112】
図3に示す実施形態では、第1および第2のコントローラ204、306は別個のコントローラとして示されている。しかしながら、代替として、第1および第2のコントローラ204、306は、単一のコントローラに組み合わされてもよい。
【0113】
図1に示す実施形態では、中央循環ポンプ27は、凝縮器55への入口に位置するように示されている。しかしながら、中央循環ポンプ27は、地域熱エネルギー回路20内の任意の位置に配置され得ることが理解される。
【0114】
図3に示す実施形態では、冷却熱交換器302の出口304を介して局所冷却システム300から出る局所熱伝達流体は、地域戻り導管23に供給される。しかしながら、代替的にまたは組み合わせて、出口304を介して局所冷却システム300から出る熱伝達流体は地域供給導管22に供給されてもよい。出口304を介して局所冷却システム300から出る熱伝達流体の供給は、第2のコントローラ306によって制御されてもよい。局所冷却システム300から出口304を介して地域供給および/または戻り導管22、23へ出る熱伝達流体の供給の制御は、第2のセンサT2によって監視される温度に基づいてもよい。
【0115】
さらに、冷暖房システムは、それぞれ1つの、および2つの温度センサT1およびT1~T2で例示されている。温度センサの数とその位置は変化してもよいことを理解されたい。また、第1および第2のコントローラ204、306への所望の入力および所望の複雑さに応じて、追加のセンサをシステムに導入できることも理解されたい。特に、第1および第2のコントローラ204、306は、建物40に局所的に配置された熱放出器202および/または冷却器301と通信して、局所的な設定を考慮に入れるように構成されてもよい。
【0116】
加えて、開示された実施形態の変形は、図面、開示、および添付の特許請求の範囲の研究から、請求された発明を実施する当業者によって理解され達成され得る。
図1
図2
図3
図4
図5