(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】リン含有電解質
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20230616BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20230616BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20230616BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20230616BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230616BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230616BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20230616BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230616BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230616BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20230616BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230616BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20230616BHJP
H01M 6/16 20060101ALI20230616BHJP
H01M 12/06 20060101ALI20230616BHJP
H01M 14/00 20060101ALI20230616BHJP
H01G 11/64 20130101ALI20230616BHJP
H01G 11/60 20130101ALI20230616BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20230616BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20230616BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20230616BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20230616BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20230616BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20230616BHJP
H01M 50/429 20210101ALI20230616BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M4/58
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/48
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/485
H01M10/052
H01M10/054
H01M6/16 A
H01M12/06 G
H01M14/00 P
H01G11/64
H01G11/60
H01G11/52
H01M50/414
H01M50/417
H01M50/42
H01M50/423
H01M50/426
H01M50/429
(21)【出願番号】P 2019570086
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 US2018042543
(87)【国際公開番号】W WO2019018432
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-23
(32)【優先日】2017-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518343040
【氏名又は名称】ノームズ テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モガンティー、シュリヤ、エス.
(72)【発明者】
【氏名】トーレス、ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】シニクロピ、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】アッバッテ、ルイジ
(72)【発明者】
【氏名】ラグーナタン、アディトヤ
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ユエ
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/126068(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/107786(WO,A1)
【文献】特開2005-228683(JP,A)
【文献】国際公開第2009/142251(WO,A1)
【文献】特開2014-170689(JP,A)
【文献】特開2016-219419(JP,A)
【文献】特開2014-194930(JP,A)
【文献】特開平09-223516(JP,A)
【文献】国際公開第2013/129346(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0157413(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0853615(KR,B1)
【文献】欧州特許出願公開第03131152(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0566-10/0569
H01M 4/38-4/60
H01M 10/054
H01M 6/16
H01M 12/06-12/08
H01M 14/00
H01M 50/409-50/429
H01G 11/52-11/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)非プロトン性有機溶媒システム;
b)アルカリ金属塩;及び
c)少なくとも1つの下記のホスフェート(phosphate)系化合物:
【化1】
を含む電気エネルギー貯蔵装置電解質であって、ここで:
Aは、
酸素;
Phは、フェニル環;
Lは、
酸素;
x及びyは、1又は2のいずれかであるが、合計は3に等しくなければならない;
Rは、
フッ素で置換されている環上に少なくとも1つの水素原子を持つフェニル環であ
り、
非プロトン性有機溶媒が、開鎖の又は環状のカルボネート、カルボン酸エステル、ナイトライト(nitrite)、エーテル、スルホン、ケトン、ラクトン、ジオキソラン、グリム、クラウンエーテル、シロキサン、リン酸エステル、ホスファイト(phosphite)、モノホスファゼン又はポリホスファゼン、又は、それらの混合物を含み、
アルカリ金属塩のカチオンが、リチウム、ナトリウム、アルミニウム、又は、マグネシウムを含む、電気エネルギー貯蔵装置電解質。
【請求項2】
非プロトン性有機溶媒が、エチレンカルボネート又はエチルメチルカルボネートである、請求項1の電解質。
【請求項3】
アルカリ金属塩が、LiPF
6
である、請求項1の電解質。
【請求項4】
添加剤を更に含む、請求項1の電解質。
【請求項5】
添加剤が、硫黄含有化合物、リン含有化合物、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、フッ素含有化合物、窒素含有化合物、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含有する化合物、カルボン酸無水物、又は、それらの混合物を含む、請求項4の電解質。
【請求項6】
添加剤が、電解質中に
0.01wt.%~5wt.%の濃度を含む、請求項1の電解質。
【請求項7】
イオン液体を更に含む、請求項1の電解質。
【請求項8】
イオン液体が、N-アルキル-N-アルキル-ピロリジニウム、N-アルキル-N-アルキル-ピリジニウム、N-アルキル-N-アルキル-スルホニウム、N-アルキル-N-アルキル-アンモニウム、又はN-アルキル-N-アルキル-ピペリジニウムを含む有機カチオンを含む、請求項7の電解質。
【請求項9】
イオン液体が、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、又はトリフルオロアセテートを含むアニオンを含む、請求項7の電解質。
【請求項10】
カソード;
アノード;及び
請求項1に記載の電解質:
を含む、電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項11】
カソードが、リチウム金属酸化物、スピネル、カンラン石、炭素被覆カンラン石
、酸化バナジウム、過酸化リチウム、硫黄、ポリスルフィド、一フッ化リチウム炭素、又は、それらのいかなる2つ以上の混合物を含
む、
請求項10の装置。
【請求項12】
カソードが、LiFePO
4、LiCoO
2、LiNiO
2、LiNi
1xCo
yMet
zO
2、LiMn
0.5Ni
0.5O
2、LiMn
0.3Co
0.3Ni
0.3O
2、LiMn
2O
4、LiFeO
2、Li
1+x’Ni
αMn
βCo
γMet’
δO
2-z’F
z’、A
n’B
2(XO
4)
3(NASICON)、又は、それらのいかなる2つ以上の混合物
を含み、ここで、
Metは、Al、Mg、Ti、B、Ga、Si、Mn又はCoであり;
Met’は、Mg、Zn、Al、Ga、B、Zr又はTiであり;
Aは、Li、Ag、Cu、Na、Mn、Fe、Co、Ni、Cu又はZnであり;
Bは、Ti、V、Cr、Fe又はZrであり;
Xは、P、S、Si、W又はMoであり;及び
0≦x≦0.3、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦x’≦0.4、0≦α≦1、0≦β≦1、0≦γ≦1、0≦δ≦0.4、0≦z’≦0.4及び0≦n’≦3である、
請求項
10の装置。
【請求項13】
アノードが、リチウム金属、黒鉛材料、アモルファスカーボン、Li
4Ti
5O
12、スズ合金、ケイ素合金、金属間化合物、又は、それらの混合物を含む、請求項10の装置。
【請求項14】
装置が、リチウム電池、リチウムイオン電池、リチウム-硫黄電池、リチウム-空気電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウム電池、電気化学セル、キャパシター、リチウム/MnO
2電池、Li/ポリ(一フッ化炭素)電池、又は太陽電池を含む、請求項10の装置。
【請求項15】
アノード及びカソードをお互いから分離する多孔質セパレータを更に含む、請求項10の装置。
【請求項16】
多孔質セパレータが、ナイロン、セルロース、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、又はコポリマー、又は、いかなる2つ以上のそのようなポリマーのブレンドを含む、微多孔性ポリマーフィルム又は電子ビーム処理された微多孔性ポリオレフィンセパレータを含む、請求項
15の装置。
【請求項17】
非プロトン性有機溶媒が、開鎖の又は環状のカルボネート、カルボン酸エステル、ナイトライト、エーテル、スルホン、ケトン、ラクトン、ジオキソラン、グリム、クラウンエーテル、シロキサン、リン酸エステル、ホスファイト、モノホスファゼン又はポリホスファゼン、又は、それらの混合物を含む、請求項10の装置。
【請求項18】
アルカリ金属塩のカチオンが、リチウム、ナトリウム、アルミニウム、又は、マグネシウムを含む、請求項10の装置。
【請求項19】
電解質が添加剤を更に含む、請求項10の装置。
【請求項20】
添加剤が、硫黄含有化合物、リン含有化合物、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、フッ素含有化合物、窒素含有化合物、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含有する化合物、カルボン酸無水物、又は、それらの混合物を含む、請求項
19の装置。
【請求項21】
電解質がイオン液体を更に含む、請求項10の装置。
【請求項22】
イオン液体が、N-アルキル-N-アルキル-ピロリジニウム、N-アルキル-N-アルキル-ピリジニウム、N-アルキル-N-アルキル-スルホニウム、N-アルキル-N-アルキル-アンモニウム、又はN-アルキル-N-アルキル-ピペリジニウムを含む有機カチオンを含む、請求項
21の装置。
【請求項23】
イオン液体が、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、又はトリフルオロアセテートを含むアニオンを含む、請求項
21の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
クロスレファレンス
この出願は、2017年7月17日に提出された米国仮特許出願第62/533277の出願日の利益を主張する。その全体は、参照によりここに組み込まれる。
【0002】
分野
この開示は、リン系の熱暴走抑制(TRI)材料、当該材料を含有する電解質、及び、当該電解質を含有する電気エネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
携帯用電子機器に使用されるリチウムイオン電池(PTC、CID、シャットダウンセパレータなど)、化学シャトル、カソード添加剤などの安全性の最近の進歩及び改善にもかかわらず、電気自動車用及び民生用途の高エネルギー密度大型電池に関連する安全性への懸念が、依然として存在する。電池による機械的、電気的又は熱的乱用における熱暴走の始まりを妨げるために又は遅らせるために、難燃剤添加剤が、電解質に添加される。
【0004】
しかし、乱用条件下であるいは正常な条件下でさえ、リチウムイオン電池の可燃性などの安全性への挑戦が、依然として存在する。米国特許第5,830,600(to Narang et al.)及び米国特許第8,795,903(to Smart et al.)は、選択されたホスフェート系非水溶媒を含有する難燃剤電解質組成物の使用を教示する。それ故に、高エネルギーリチウムイオン電池及びリチウム金属アノード電池の安全性を改善するために、新規の多機能TRI添加剤を組み込む必要性が、存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
この開示は、リン系の熱暴走抑制(TRI)材料、当該材料を含有する電解質、及び、当該電解質を含有する電気化学セルに関する。
【0006】
本開示の一側面によれば、提供されるものは、電気的貯蔵装置で使用するための電解質であり、当該電解質は、非プロトン性有機溶媒、アルカリ金属塩、添加剤、及び、少なくとも1つリン部位を含有するTRI化合物、を含む。
【0007】
本開示の他の側面によれば、提供されるものは、電気エネルギー貯蔵装置における電解質であり、当該電解質は、非プロトン性有機溶媒、アルカリ金属塩、添加剤、及び、少なくとも1つリン部位を含有するTRI化合物、を含む。ここで、当該有機溶媒は、開鎖の又は環状のカルボネート、カルボン酸エステル、ナイトライト(nitrites)、エーテル、スルホン、スルホキシド、ケトン、ラクトン、ジオキソラン、グリム、クラウンエーテル、シロキサン、リン酸エステル、ホスフェート(phosphates)、ホスファイト(phosphites)、モノホスファゼン又はポリホスファゼン、又は、それらの混合物である。
【0008】
本開示の他の側面によれば、提供されるものは、電気エネルギー貯蔵装置における電解質であり、当該電解質は、非プロトン性有機溶媒、アルカリ金属塩、添加剤、及び、少なくとも1つリン部位を含有するTRI化合物、を含む。ここで、当該アルカリ金属塩のカチオンは、リチウム、ナトリウム、アルミニウム又はマグネシウムである。
【0009】
本開示の他の側面によれば、提供されるものは、電気エネルギー貯蔵装置における電解質であり、当該電解質は、非プロトン性有機溶媒、アルカリ金属塩、添加剤、及び、少なくとも1つリン部位を含有するTRI化合物、を含む。ここで、当該添加剤は、硫黄含有化合物、リン含有化合物、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含有する化合物、カルボン酸無水物、又は、それらの混合物、を含有する。
【0010】
本開示のこれらの側面及び他の側面は、下記の詳細な記述及び添付の特許請求の範囲の再検討により、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な記述
【
図1】
図1は、リン系の熱暴走抑制(TRI)材料を含有する電解質2と、比較例0の電解質との間の、室温サイクル寿命比較のグラフである;
【0012】
【
図2】
図2は、ネイルペネトレーション(釘刺)セットアップの写真である;そして
【0013】
【
図3】
図3は、NMC532ポーチセルを含有する例11の電解質を含有する穴のあいたセル、及び、比較例01の市販の電解質(EC:EMC 3:7 1M LiPF
6)を含有する穴のあいたセル、の一対の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な記述
この開示は、リン系の熱暴走抑制(TRI)材料、当該材料を含有する電解質、及び、当該電解質を含有する電気化学セルに関する。
【0015】
一形態では、電気エネルギー貯蔵装置電解質は、a)非プロトン性有機溶媒システム;b)アルカリ金属塩;及びc)リン系TRI材料を、含む。
【0016】
一形態では、電気エネルギー貯蔵装置電解質は、a)非プロトン性有機溶媒システム;b)アルカリ金属塩;c)添加剤;及びc)リン系TRI材料を、含む。
【0017】
一形態では、リン系TRI材料の分子構造は、下記に表現される:
【化1】
ここで:
Aは、酸素又は硫黄;
Phは、フェニル基;
Lは、酸素又は硫黄;
x及びyは、1又は2のいずれかであるが、合計は3に等しくなければならない;
Rは、ハロゲン、メチル、メトキシ、シリル、アミド、過フッ素化アルキル、シラン、スルホキシド、アゾ、エーテル、又はチオエーテル基、又は、それらの組合せ、で置換されている環上に少なくとも1つの水素原子を持つフェニル環である。
【0018】
一形態では、リン含有TRI材料は、約0.01wt.%~約60wt.%の量で存在する。
【0019】
一形態では、電解質は、TRIリン化合物、リチウムなどのアルカリ金属、添加剤、及び、電気化学セルで使用するための非プロトン性溶媒、を含む。イオン液体は、有機カチオン及び無機/有機アニオンを含有する。適切な有機カチオンは、N-アルキル-N-アルキル-ピロリジニウム、N-アルキル-N-アルキル-ピリジニウム、N-アルキル-N-アルキル-スルホニウム、N-アルキル-N-アルキル-アンモニウム、N-アルキル-N-アルキル-ピペリジニウムなどを含む。適切なアニオンは、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、トリフルオロアセテートなどを含む。電解質中のポリマーは、ポリ(エチレングリコール)誘導体を含み、約150g/モル~約10,000,000g/モルの範囲の分子量で変化する。適切な非プロトン性溶媒は、カルボネート、エーテル、アセトアミド、アセトニトリル、対称性スルホン、1,3-ジオキソラン、ジメトキシエタン、グリム、シロキサン及びそれらのブレンドを含む。アルカリ金属塩は、LiBF4、LiNO3、LiPF6、LiAsF6、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロアセテート、又は同様の化合物であることができる。
【0020】
一形態では、電解質は、イオン液体に加えて、リチウム塩を含む。様々なリチウム塩が、使用でき、例えば、下記のものを含む:Li[CF3CO2];Li[C2F5CO2];Li[ClO4];Li[BF4];Li[AsF6];Li[PF6];Li[PF2(C2O4)2];Li[PF4C2O4];Li[CF3SO3];Li[N(CP3SO2)2];Li[C(CF3SO2)3];Li[N(SO2C2F5)2];リチウムアルキルフルオロホスフェート;Li[B(C2O4)2];Li[BF2C2O4];Li2[B12Z12-jHj];Li2[B10X10-j’Hj’];又は、それらのいかなる2つ以上の混合物。ここで、Zは、各々の存在で独立してハロゲンであり、jは、0~12の整数であり、j’は、1~10の整数である。
【0021】
リチウムイオン電池用の配合物などの、本発明の電解質の一形態では、粘度を減少させるために、及び、電解質の伝導性を増加させるために、非プロトン性溶媒は、当該イオン液体と組み合わせる。最も適切な非プロトン性溶媒は、交換可能なプロトンを欠き、下記のものを含む:環状の炭酸エステル、線状の炭酸エステル、リン酸エステル、オリゴエーテル置換シロキサン/シラン、環状のエーテル、鎖状のエーテル、ラクトン化合物、鎖状のエステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン化合物、シロキサン、リン酸エステル、ホスフェート、ホスファイト、モノホスファゼン又はポリホスファゼンなど。これらの溶媒は、単独で、又は、それらの少なくとも2つの混合物で、使用できる。電解質システムを形成するための非プロトン性溶媒又はキャリヤーの例は、下記のものを含むが、それらに限定されない:ジメチルカルボネート、エチルメチルカルボネート、ジエチルカルボネート、メチルプロピルカルボネート、エチルプロピルカルボネート、ジプロピルカルボネート、ビス(トリフルオロエチル)カルボネート、ビス(ペンタフルオロプロピル)カルボネート、トリフルオロエチルメチルカルボネート、ペンタフルオロエチルメチルカルボネート、ヘプタフルオロプロピルメチルカルボネート、ペルフルオロブチルメチルカルボネート、トリフルオロエチルエチルカルボネート、ペンタフルオロエチルエチルカルボネート、ヘプタフルオロプロピルエチルカルボネート、ペルフルオロブチルエチルカルボネート、など、フッ素化オリゴマー、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ジメトキシエタン、トリグリム、ジメチルビニレンカルボネート、テトラエチレングリコール、ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール、トリフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ヘキサフルオロシクロトリホスファゼン、2-エトキシ-2,4,4,6,6-ペンタフルオロ-1,3,5,2-5,4-5,6-5トリアザトリホスフィニン、トリフェニルホスファイト、スルホラン、ジメチルスルホキシド、エチルメチルスルホン、エチルビニルスルホン、アリルメチルスルホン、ジビニルスルホン、フルオロフェニルメチルスルホン及びガンマ-ブチロラクトン。
【0022】
いくつかの形態では、電極を劣化から保護するために、電解質は、添加剤を更に含む。こうして、本発明の技術の電解質は、負極の表面上にパッシベーション膜を形成するために、負極の表面上で還元されるか又はポリマー化される添加剤を含むことができる。同様に、電解質は、正極の表面上にパッシベーション膜を形成するために、正極の表面上で酸化されるか又はポリマー化される添加剤を含むことができる。いくつかの形態では、本発明の技術の電解質は、2つのタイプの添加剤の混合物を更に含む。
【0023】
いくつかの形態では、添加剤は、少なくとも1つのアリール、アルケニル又はアルキニル基及び少なくとも1つ酸素原子を含む置換されているか又は置換されていない線状の、分岐の又は環状の炭化水素である。そのような添加剤から形成される保護膜は、置換されているアリール化合物又は置換されているか又は置換されていないヘテロアリール化合物からも形成されることができ、そこでは、添加剤は、少なくとも1つの酸素原子を含む。
【0024】
代表的な添加剤は、下記のものを含む:グリオキサールビス(ジアリルアセタール)、テトラ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6-トリアリルオキシ-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、1,2-ジビニルフロエート(furoate)、1,3-ブタジエンカルボネート、1-ビニルアゼチジン-2-オン、1-ビニルアジリジン-2-オン、1-ビニルピペリジン-2-オン、1-ビニルピロリジン-2-オン、2,4-ジビニル-1,3-ジオキサン、2-アミノ-3-ビニルシクロヘキサノン、2-アミノ-3-ビニルシクロプロパノン、2-アミノ-4-ビニルシクロブタノン、2-アミノ-5-ビニルシクロペンタノン、2-アリールオキシ-シクロプロパノン、2-ビニル-[1,2]オキサゼチジン、2-ビニルアミノシクロヘキサノール、2-ビニルアミノシクロプロパノン、2-ビニルオキセタン、2-ビニルオキシ-シクロプロパノン、3-(N-ビニルアミノ)シクロヘキサノン、3,5-ジビニルフロエート、3-ビニルアゼチジン-2-オン、3-ビニルアジリジン-2-オン、3-ビニルシクロブタノン、3-ビニルシクロペンタノン、3-ビニルオキサジリジン、3-ビニルオキセタン、3-ビニルピロリジン-2-オン、2-ビニル-1,3-ジオキソラン、アクロレインジエチルアセタール、アクロレインジメチルアセタール、4,4-ジビニル-3-ジオキソラン-2-オン、4-ビニルテトラヒドロピラン、5-ビニルピペリジン-3-オン、アリルグリシジルエーテル、ブタジエンモノオキシド、ブチル-ビニル-エーテル、ジヒドロピラン-3-オン、ジビニルブチルカルボネート、ジビニルカルボネート、ジビニルクロトネート(crotonate)、ジビニルエーテル、ジビニルエチレンカルボネート、ジビニルエチレンシリケート、ジビニルエチレンサルフェート、ジビニルエチレンサルファイト、ジビニルメトキシピラジン、ジビニルメチルホスフェート、ジビニルプロピレンカルボネート、エチルホスフェート、メトキシ-o-テルフェニル、メチルホスフェート、オキセタン-2-イル-ビニルアミン、オキシラニルビニルアミン、ビニルカルボネート、ビニルクロトネート、ビニルシクロペンタノン、ビニルエチル-2-フロエート、ビニルエチレンカルボネート、ビニルエチレンシリケート、ビニルエチレンサルフェート、ビニルエチレンサルファイト、ビニルメタクリレート、ビニルホスフェート、ビニル-2-フロエート、ビニルシクロプロパノン、ビニルエチレンオキシド、β-ビニル-γ-ブチロラクトン、又は、それらのいかなる2つ以上の混合物。いくつかの形態では、添加剤は、F、アルキルオキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、メトキシ、アリルオキシ基又はそれらの組合せで置換されているシクロトリホスファゼンであることができる。例えば、添加剤は、下記のものであることができる:(ジビニル)-(メトキシ)(トリフルオロ)シクロトリホスファゼン、(トリビニル)(ジフルオロ)(メトキシ)シクロトリホスファゼン、(ビニル)(メトキシ)(テトラフルオロ)シクロトリホスファゼン、(アリールオキシ)(テトラフルオロ)(メトキシ)シクロトリホスファゼン又は(ジアリールオキシ)(トリフルオロ)(メトキシ)シクロトリホスファゼン化合物、又は、2つ以上のそのような化合物の混合物。いくつかの形態では、添加剤は、ビニルエチレンカルボネート、ビニルカルボネート、又は1,2-ジフェニルエーテル、又は、いかなる2つ以上のそのような化合物の混合物である。
【0025】
他の代表的な添加剤は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ピロリル、オキサゾリル、フラニル、インドリル、カルバゾリル、イミダゾリル、チオフェニル、フッ素化カルボネート、スルトン、スルフィド、無水物、シラン、シロキシ、ホスフェート又はホスファイト基を持つ化合物を、含む。例えば、添加剤は、下記のものであることができる:フェニルトリフルオロメチルスルフィド、フルオロエチレンカルボネート、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド、1-プロペン1,3-スルトン、1,3-プロパンスルトン、1,3-ジオキソラン-2-オン、4-[(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メチル]、1,3-ジオキソラン-2-オン、4-[[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エトキシ]メチル]-、メチル2,2,2-トリフルオロエチルカルボネート、ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン、オクタメチルトリシロキサン、メチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、トリス(1H.1H-ヘプタフルオロブチル)ホスフェート、3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(3,3,3-トリフルオロプロピルジメチルシロキシ)シラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、トリプロピルホスフェート、ビス(トリメチルシリルメチル)ベンジルアミン、フェニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、1,3-ビス(トリフルオロプロピル)テトラメチルジシロキサン、トリフェニルホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリス(1H.1H,5H-オクタフルオロペンチル)ホスフェート、トリフェニルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリ-p-トリルホスファイト、トリス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)ホスフェート、無水コハク酸、1,5,2,4-ジオキサジチアン2,2,4,4-テトラオキシド、トリプロピルトリチオホスフェート、アリールオキシピロール、アリールオキシエチレンサルフェート、アリールオキシピラジン、アリールオキシ-カルバゾールトリビニルホスフェート、アリールオキシ-エチル-2-フロエート、アリールオキシ-o-テルフェニル、アリールオキシ-ピリダジン、ブチル-アリールオキシ-エーテル、ジビニルジフェニルエーテル、(テトラヒドロフラン-2-イル)-ビニルアミン、ジビニルメトキシビピリジン、メトキシ-4-ビニルビフェニル、ビニルメトキシカルバゾール、ビニルメトキシピペリジン、ビニルメトキシピラジン、ビニルメチルカルボネート-アリルアニソール、ビニルピリダジン、1-ジビニルイミダゾール、3-ビニルテトラヒドロフラン、ジビニルフラン、ジビニルメトキシフラン、ジビニルピラジン、ビニルメトキシイミダゾール、ビニルメトキシピロール、ビニル-テトラヒドロフラン、2,4-ジビニルイソオキサゾール、3,4ジビニル-1-メチルピロール、アリールオキシオキセタン、アリールオキシ-フェニルカルボネート、アリールオキシ-ピペリジン、アリールオキシ-テトラヒドロフラン、2-アリール-シクロプロパノン、2-ジアリールオキシ-フロエート、4-アリルアニソール、アリールオキシ-カルバゾール、アリールオキシ-2-フロエート、アリールオキシ-クロトネート、アリールオキシ-シクロブタン、アリールオキシ-シクロペンタノン、アリールオキシ-シクロプロパノン、アリールオキシ-シクロホスファゼン、アリールオキシ-エチレンシリケート、アリールオキシ-エチレンサルフェート、アリールオキシ-エチレンサルファイト、アリールオキシ-イミダゾール、アリールオキシ-メタクリレート、アリールオキシ-ホスフェート、アリールオキシ-ピロール、アリールオキシキノリン、ジアリールオキシシクロトリホスファゼン、ジアリールオキシエチレンカルボネート、ジアリールオキシフラン、ジアリールオキシメチルホスフェート、ジアリールオキシ-ブチルカルボネート、ジアリールオキシ-クロトネート、ジアリールオキシ-ジフェニルエーテル、ジアリールオキシ-エチルシリケート、ジアリールオキシ-エチレンシリケート、ジアリールオキシ-エチレンサルフェート、ジアリールオキシエチレンサルファイト、ジアリールオキシ-フェニルカルボネート、ジアリールオキシ-プロピレンカルボネート、ジフェニルカルボネート、ジフェニルジアリールオキシシリケート、ジフェニルジビニルシリケート、ジフェニルエーテル、ジフェニルシリケート、ジビニルメトキシジフェニルエーテル、ジビニルフェニルカルボネート、メトキシカルバゾール、又は2,4-ジメチル6-ヒドロキシピリミジン、ビニルメトキシキノリン、ピリダジン、ビニルピリダジン、キノリン、ビニルキノリン、ピリジン、ビニルピリジン、インドール、ビニルインドール、トリエタノールアミン、1,3-ジメチルブタジエン、ブタジエン、ビニルエチレンカルボネート、ビニルカルボネート、イミダゾール、ビニルイミダゾール、ピペリジン、ビニルピペリジン、ピリミジン、ビニルピリミジン、ピラジン、ビニルピラジン、イソキノリン、ビニルイソキノリン、キノキサリン、ビニルキノキサリン、ビフェニル、1,2-ジフェニルエーテル、1,2-ジフェニルエタン、oテルフェニル、N-メチルピロール、ナフタレン、又は、いかなる2つ以上のそのような化合物の混合物。
【0026】
一形態では、本発明の技術の電解質は、非プロトン性ゲルポリマーキャリヤー/溶媒を含む。適切なゲルポリマーキャリヤー/溶媒は、下記のものを含む:ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリイミド、ポリホスファジン、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリエーテルグラフトポリシロキサン、前記のものの誘導体、前記のもののコポリマー、前記のものの架橋及び網目構造、前記のもののブレンドなど。それらに、適切なイオン電解質塩が添加される。他のゲルポリマーキャリヤー/溶媒は、ポリプロピレンオキシド、ポリシロキサン、スルホン化ポリイミド、過フッ素化膜(Nafion樹脂)、ジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール-ビス-(アクリル酸メチル)、ポリエチレングリコール-ビス(メチルメタクリレート)、前記のものの誘導体、前記のもののコポリマー及び前記のものの架橋及び網目構造、から誘導されるポリマーマトリックスから調製されるものを含む。
【0027】
リン系TRI材料は、有機溶媒中での高い溶解性を有する。これらのリンTRI材料を含有する電解液は、高いイオン伝導性を有し、電気化学装置用電解液としての使用に適切である。電気化学装置の例は、電気二重層コンデンサー、二次電池、色素増感剤タイプの太陽電池、エレクトロクロミック素子及びコンデンサーであり、このリストは限定的ではない。特に適切な電気化学装置は、電気二重層コンデンサー及び二次電池、リチウムイオン電池などである。
【0028】
一形態では、カソード、アノード、及び、ここに記載されるようなイオン液体を含む電解質を含む電気化学装置が、提供される。一形態では、電気化学装置は、リチウム二次電池である。いくつかの形態では、当該二次電池は、リチウム電池、リチウムイオン電池、リチウム-硫黄電池、リチウム-空気電池、ナトリウムイオン電池又はマグネシウム電池である。いくつかの形態では、電気化学装置は、キャパシター(コンデンサー)などの電気化学セル(電気化学的電池)である。いくつかの形態では、キャパシターは、対称性キャパシター又はスーパーキャパシターである。いくつかの形態では、電気化学セルは、一次電池である。いくつかの形態では、一次電池は、リチウム/MnO2電池又はLi/ポリ(一フッ化炭素)電池である。いくつかの形態では、電気化学セルは、太陽電池である。
【0029】
適切なカソードは、下記のものなどを含むが、それらに限定されない:リチウム金属酸化物、スピネル、カンラン石、炭素被覆カンラン石、LiFePO4、LiCoO2、LiNiO2、LiNi1xCoyMetzO2、LiMn0.5Ni0.5O2、LiMn0.3Co0.3Ni0.3O2、LiMn2O4、LiFeO2、Li1+x’NiαMnβCoγMet’δO2-z’Fz’、An’B2(XO4)3(NASICON)、酸化バナジウム、過酸化リチウム、硫黄、ポリスルフィド、一フッ化リチウム炭素(LiCFxとして公知でもある)、又は、それらのいかなる2つ以上の混合物。ここで、Metは、Al、Mg、Ti、B、Ga、Si、Mn又はCoであり;Met’は、Mg、Zn、Al、Ga、B、Zr又はTiであり;Aは、Li、Ag、Cu、Na、Mn、Fe、Co、Ni、Cu又はZnであり;Bは、Ti、V、Cr、Fe又はZrであり;Xは、P、S、Si、W又はMoであり;及び、0≦x≦0.3、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦x’≦0.4、0≦α≦1、0≦β≦1、0≦γ≦1、0≦δ≦0.4、0≦z’≦0.4、及び0≦h’≦3である。いくつかの形態によれば、スピネルは、Li1+xMn2-zMet’’’yO4-mX’nの式を有するスピネル酸化マンガンであり、ここで、Met’’’は、Al、Mg、Ti、B、Ga、Si、Ni又はCoであり;X’は、S又はFであり;及び、0≦x≦0.3、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦m≦0.5、及び0≦n≦0.5である。他の形態では、カンラン石は、Li1+xFe1zMet’’yPO4-mX’nの式を有する。ここで、Met’’は、Al、Mg、Ti、B、Ga、Si、Ni、Mn又はCoであり;X’は、S又はFであり;及び、0≦x≦0.3、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦m≦0.5、及び0≦n≦0.5である。
【0030】
適切なアノードは、リチウム金属、黒鉛材料、アモルファスカーボン、Li4Ti5O12、スズ合金、ケイ素合金、金属間化合物、又は、いかなる2つ以上のそのような材料の混合物などのものを含む。適切な黒鉛材料は、いかなるアモルファスカーボン材料と同様に、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)及び黒鉛繊維を含む。いくつかの形態では、アノード及びカソードは、多孔質セパレータによって、お互いから分離される。
【0031】
リチウム電池用のセパレータは、しばしば、微多孔性ポリマーフィルムである。フィルムを形成するためのポリマーの例は、ナイロン、セルロース、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、又はコポリマー、又は、いかなる2つ以上のそのようなポリマーのブレンドを含む。ある場合に、セパレータは、電子ビーム処理された微多孔性ポリオレフィンセパレータである。当該電子処理は、セパレータの変形温度を改善することができ、そして、その結果、セパレータの高温性能を高めることができる。追加で又は代わりに、セパレータは、シャットダウンセパレータであることができる。シャットダウンセパレータは、電気化学セルが約130℃までの温度で作動することを可能にするように、約130℃よりも高いトリガー温度を有することができる。
【0032】
開示は、下記の特定の例に関して更に例証されるであろう。これらの例は、例証の目的で提示されるのであって、開示又は添付の特許請求の範囲を限定するようには意味されないことが、理解される。
【0033】
例A
【0034】
全ての電解質成分をガラスびん中に組み合わせることによって、及び、塩の完全な溶解を確保するために24時間撹拌することによって、乾燥アルゴンを充填したグローブボックス中で、電解質配合物が調製された。その中に溶解する1Mリチウムヘキサフルオロホスフェート“LiPF6”を含む、エチレンカルボネート“EC”及びエチルメチルカルボネート“EMC”の3:7の重量の混合物を含むベース電解質配合物に、共溶媒として、リン系TRI材料が添加される。調製された電解質配合物が、表Aに要約される。
【0035】
【0036】
例B
【0037】
調製された電解質配合物は、アノード活物質として黒鉛及びリチウムコバルトオキシドカソード活物質を含む9つの5Ah Li-イオンポリマーポーチセル中で、電解質として使用される。各々の電解質は、3つのセル中に充填される。各々のセル中に、14.3gの電解質配合物が添加されて、そして、真空シール及び試験より前にセル中に1時間浸す。セルは、その後、4.2Vに充電されて、そして、C/15速度で3.0Vに放電された。結果平均が、表Bに要約される。
【0038】
【0039】
表B. 5Ahセル初期放電結果。3つの平均。
【0040】
初期容量損失“iCL”は、アノード表面上の固体電解質界面“SEI”の形成及び初期充電-放電サイクルの間にリチウムがどのくらい消費されるのかを測定する、メートル法のセル性能である。セル及び電解質設計の目的は、iCLを最小限にすることである。この例では、電解質2中のフッ素化ホスフェートエステルの添加は、iCLを改善する。電解質3は、ホスフェートエステル上の追加のフッ素化を含み、iCLの更なる改善を提供する。セルの定格容量に到達するか又はそれよりもより高くなる放電容量の測定によって、電極及びセパレータの良好な濡れが例証される。
【0041】
例C
【0042】
調製された電解質配合物は、アノード活物質として黒鉛及びリチウムNMC622カソード活物質を含む9つの200mAh 403520Li-イオンポリマーポーチセル中で、電解質として使用される。各々の電解質は、3つのセル中に充填される。各々のセル中に、1.1gの電解質配合物が添加されて、そして、真空シール及び試験より前にセル中に1時間浸す。セルは、その後、4.35Vに充電されて、そして、C/15速度で3.0Vに放電された。結果平均が、表Cに要約される。
【0043】
【0044】
表C. 5Ahセル初期放電結果。3つの平均。
【0045】
この例では、電解質2中のフッ素化ホスフェートエステルの添加は、iCLを改善する。電解質3は、ホスフェートエステル上の追加のフッ素化を含み、iCLの更なる改善を提供する。セルの定格容量に到達するか又はそれよりもより高くなる放電容量の測定によって、電極及びセパレータの良好な濡れが例証される。Li-イオン電解質配合物中への変性ホスフェートの組み込みに関して同じパターンが、セル化学とは独立して観察される。
【0046】
例D
【0047】
調製された電解質配合物は、アノード活物質として黒鉛及びリチウムNMC622カソード活物質を含む2つの40Ah Li-イオンポリマーポーチセル中で、電解質として使用される。各々のセル中に、170gの電解質配合物が添加される。セルは、濡れ手続きに付され、そこでは、圧力の増加及び減少が、70分の過程で繰り返される。セルは、その後、真空シールされて、10時間の待ち時間後の電気化学試験をする状態になる。セルは、その後、4.2Vに充電されて、そして、形成のためにC/15速度で3.0Vに放電され、その後、室温で500サイクル、C/2で放電及び充電される。このサイクル試験の結果が、
図1に要約される。
【0048】
電解質2が、大型セル中でさえも、比較例の電解質に匹敵する性能を例証することが、
図1に示される。
【0049】
例E
【0050】
全ての電解質成分をガラスびん中に組み合わせることによって、及び、塩の完全な溶解を確保するために24時間撹拌することによって、乾燥アルゴンを充填したグローブボックス中で、電解質配合物が調製された。その中に溶解する1Mリチウムヘキサフルオロホスフェート“LiPF6”を含む、エチレンカルボネート“EC”及びエチルメチルカルボネート“EMC”の3:7の重量の混合物を含むベース電解質配合物に、共溶媒として、リン系TRI材料が添加される。調製された電解質配合物が、表Eに要約される。
【0051】
【0052】
例F
【0053】
a PolyScience Circulating Bathに取り付けられたa Brookfield Ametek DV2T粘度計を用いて、25.0℃で、電解質配合物の粘度が測定された。この実験装置は、正確な温度で粘度を測定することを可能にする。粘度結果が、表Fに要約される。
【0054】
【0055】
粘度は、電気化学性能に影響を与える電解質配合物の輸送特性の重要な測定である。2つの代わりに単一のフルオロフェニル基でホスフェートエステルを変性することによって、より低い粘度の電解質配合物が実現されることが、表Eに例証される。追加で、1つに比べて2つのフッ素を持つフェニル基を使用することによって、電解質配合物中の更により低い全体粘度を実現する。
【0056】
例G-4-フルオロフェニル-ジフェニルホスフェートの合成
【化2】
【0057】
メカニカルスターラー、水冷コンデンサー、熱電対、N2入口及び滴下漏斗を備えている2Lの三つ口フラスコに、DCM(200mL)中に4-フルオロフェノール(TCI)を溶解させた。注意:溶媒の計算量の3分の1のみが、この反応に使用され、そして、ほんの少量の溶媒が、反応混合物中への残余の試薬をすすぐために、使用された。
【0058】
トリエチルアミンが少しずつ添加され、混合物が20分間、撹拌された。39℃への発熱が観察された。
【0059】
RTで撹拌しながら、ジフェニルクロロホスフェート(AK Science)が、2hにわたって滴下漏斗によってゆっくりと添加されて、そして、36-55℃の温度範囲で、発熱が観察された。反応が進行するにつれて、青白い混合物が、形成された白色固体ppt(トリエチルアミンHCl)として無色にゆっくりと変わり、そして、添加が完全になされた。混合物がRTにゆっくりと戻り、そして、6h撹拌された。
【0060】
DI水(2×300mL)が添加されて、そして、混合物が分液漏斗中に注ぎ込まれた。有機相が、DCM中に抽出され、分離され、MgSO4上で乾燥され、濾過されて、そして、ロータリーエバポレーションによって溶媒がストリップされた。収量:青白い油、615.1g、(>99%)。
【0061】
当該未加工の油(>615g)が、DCM(400mL)及び普通のシリカゲル(100g)中で、2h、スラリー化された。当該油が吸引濾過によって収集された。シリカゲルが、DCM(4×100mL)で洗浄されて、そして、溶媒が、高真空下で2h、ロータリーエバポレーションによってストリップされてポンプ輸送された。収量:青白い油、603.0g、(98%)。
【0062】
FTIR: 948, 1176, 1487 cm-1;カール・フィッシャー:11.8ppm;密度=1.4245g/mL。
【0063】
H NMR: (CDCl3) δ ppm 7.36-7.20(m, 12H), 7.02(t, 2H). F NMR: (CDCl3) δ ppm -116.92(s). P NMR: (CDCl3) δ ppm -17.47(s).
【0064】
例H-ネイルペネトレーション試験(釘刺試験)
【0065】
ネイルペネトレーション試験が、100%SOCで、5 Ah NMC 532-Graphite and LCO-Graphiteポリマーポーチセル上で実施された。表H1は、電解質組成物、TRI材料分子構造、及び、ベース電解質(EC:EMC3:7w/w%)溶媒中の対応する重量パーセンテージを、要約する。
【0066】
図2は、ネイルペネトレーションセットアップを表現し、そして、
図3は、穴のあいたセルの写真を表現する。当該試験は、8mm/sの変位速度で、3mmの鋭い釘を使用して、USCAR仕様に従って、実施された。セルは、一貫したスタック圧力を維持するために、試験の間、クランプされた。セル表面温度及び電圧が記録された。ネイルペネトレーション試験の間に測定されたピーク温度が、表H2に比較される。ピーク温度結果によれば、リン系TRI材料を含む電解質配合物が、比較例によって例示されるように、現在の電解質配合物によって提示される熱暴走挑戦を克服することが、例証される。
【0067】
【0068】
【0069】
種々の形態が、ここで、詳細に表現されて記載されたが、開示の本質から逸脱することなく種々の修正、添加、置換などをすることができること、及び、これらが、それ故に、添付の特許請求の範囲で定義されるような開示の範囲内にあるように考慮されること、が当業者には明らかであろう。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
a)非プロトン性有機溶媒システム;
b)アルカリ金属塩;及び
c)少なくとも1つの下記のホスフェート(phosphate)系化合物:
【化1】
を含む電気エネルギー貯蔵装置電解質であって、ここで:
Aは、酸素又は硫黄;
Phは、フェニル環;
Lは、酸素又は硫黄;
x及びyは、1又は2のいずれかであるが、合計は3に等しくなければならない;
Rは、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、シリル、スルホキシド、過フッ素化アルキル、シラン、スルホキシド、アゾ、アミド、エーテル、又はチオエーテル基、又は、それらの組合せ、で置換されている環上に少なくとも1つの水素原子を持つフェニル環である、電気エネルギー貯蔵装置電解質。
[2]
非プロトン性有機溶媒が、開鎖の又は環状のカルボネート、カルボン酸エステル、ナイトライト(nitrite)、エーテル、スルホン、ケトン、ラクトン、ジオキソラン、グリム、クラウンエーテル、シロキサン、リン酸エステル、ホスファイト(phosphite)、モノホスファゼン又はポリホスファゼン、又は、それらの混合物を含む、[1]の電解質。
[3]
アルカリ金属塩のカチオンが、リチウム、ナトリウム、アルミニウム、又は、マグネシウムを含む、[1]の電解質。
[4]
添加剤を更に含む、[1]の電解質。
[5]
添加剤が、硫黄含有化合物、リン含有化合物、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、フッ素含有化合物、窒素含有化合物、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含有する化合物、カルボン酸無水物、又は、それらの混合物を含む、[4]の電解質。
[6]
添加剤が、電解質中に約0.01wt.%~約5wt.%の濃度を含む、[1]の電解質。
[7]
イオン液体を更に含む、[1]の電解質。
[8]
イオン液体が、N-アルキル-N-アルキル-ピロリジニウム、N-アルキル-N-アルキル-ピリジニウム、N-アルキル-N-アルキル-スルホニウム、N-アルキル-N-アルキル-アンモニウム、又はN-アルキル-N-アルキル-ピペリジニウムを含む有機カチオンを含む、[7]の電解質。
[9]
イオン液体が、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、又はトリフルオロアセテートを含むアニオンを含む、[7]の電解質。
[10]
カソード;
アノード;及び
[1]に記載の電解質:
を含む、電気エネルギー貯蔵装置。
[11]
カソードが、リチウム金属酸化物、スピネル、カンラン石、炭素被覆カンラン石、LiFePO
4
、LiCoO
2
、LiNiO
2
、LiNi
1x
Co
y
Met
z
O
2
、LiMn
0.5
Ni
0.5
O
2
、LiMn
0.3
Co
0.3
Ni
0.3
O
2
、LiMn
2
O
4
、LiFeO
2
、Li
1+x’
Ni
α
Mn
β
Co
γ
Met’
δ
O
2-z’
F
z’
、A
n’
B
2
(XO
4
)
3
(NASICON)、酸化バナジウム、過酸化リチウム、硫黄、ポリスルフィド、一フッ化リチウム炭素、又は、それらのいかなる2つ以上の混合物を含み、ここで、
Metは、Al、Mg、Ti、B、Ga、Si、Mn又はCoであり;
Met’は、Mg、Zn、Al、Ga、B、Zr又はTiであり;
Aは、Li、Ag、Cu、Na、Mn、Fe、Co、Ni、Cu又はZnであり;
Bは、Ti、V、Cr、Fe又はZrであり;
Xは、P、S、Si、W又はMoであり;及び
0≦x≦0.3、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦x’≦0.4、0≦α≦1、0≦β≦1、0≦γ≦1、0≦δ≦0.4、0≦z’≦0.4及び0≦n’≦3である、
[10]の装置。
[12]
アノードが、リチウム金属、黒鉛材料、アモルファスカーボン、Li
4
Ti
5
O
12
、スズ合金、ケイ素合金、金属間化合物、又は、それらの混合物を含む、[10]の装置。
[13]
装置が、リチウム電池、リチウムイオン電池、リチウム-硫黄電池、リチウム-空気電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウム電池、電気化学セル、キャパシター、リチウム/MnO
2
電池、Li/ポリ(一フッ化炭素)電池、又は太陽電池を含む、[10]の装置。
[14]
アノード及びカソードをお互いから分離する多孔質セパレータを更に含む、[10]の装置。
[15]
多孔質セパレータが、ナイロン、セルロース、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、又はコポリマー、又は、いかなる2つ以上のそのようなポリマーのブレンドを含む、微多孔性ポリマーフィルム又は電子ビーム処理された微多孔性ポリオレフィンセパレータを含む、[14]の装置。
[16]
非プロトン性有機溶媒が、開鎖の又は環状のカルボネート、カルボン酸エステル、ナイトライト、エーテル、スルホン、ケトン、ラクトン、ジオキソラン、グリム、クラウンエーテル、シロキサン、リン酸エステル、ホスファイト、モノホスファゼン又はポリホスファゼン、又は、それらの混合物を含む、[10]の装置。
[17]
アルカリ金属塩のカチオンが、リチウム、ナトリウム、アルミニウム、又は、マグネシウムを含む、[10]の装置。
[18]
電解質が添加剤を更に含む、[10]の装置。
[19]
添加剤が、硫黄含有化合物、リン含有化合物、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、フッ素含有化合物、窒素含有化合物、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含有する化合物、カルボン酸無水物、又は、それらの混合物を含む、[18]の装置。
[20]
イオン液体を更に含む、[10]の装置。
[21]
イオン液体が、N-アルキル-N-アルキル-ピロリジニウム、N-アルキル-N-アルキル-ピリジニウム、N-アルキル-N-アルキル-スルホニウム、N-アルキル-N-アルキル-アンモニウム、又はN-アルキル-N-アルキル-ピペリジニウムを含む有機カチオンを含む、[20]の装置。
[22]
イオン液体が、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、又はトリフルオロアセテートを含むアニオンを含む、[20]の装置。