(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20230616BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H01M10/44 P
(21)【出願番号】P 2020011373
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直久
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-161145(JP,A)
【文献】特開2014-189945(JP,A)
【文献】特表2012-526341(JP,A)
【文献】特表2013-546119(JP,A)
【文献】国際公開第2017/029715(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/081846(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/119352(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内の下方空間に複数の階層をなすように配置された複数の蓄電池と、
前記筐体内の上方空間に配置された、前記複数の蓄電池を充放電させる充放電回路と、
前記下方空間に配置された、前記複数の蓄電池と前記充放電回路との接続状態を変化させるスイッチ回路と、
前記下方空間に配置された、最下層にある蓄電池の浸水を検知可能な浸水検知部と、
商用電力系統に停電が発生しているか否かを検知する停電検知部と、
前記筐体内に配置され
た前記浸水検知部
および前記停電検知部の検知結果に基づいて前記充放電回路および前記スイッチ回路を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記浸水検知部が浸水を検知すると、前記スイッチ回路を制御して前記最下層にある蓄電池を前記充放電回路から切り離させるよう構成されて
おり、
また、前記制御部は、前記浸水検知部が浸水を検知しているときに前記停電検知部が前記停電を検知していなければ、前記充放電回路を制御して、前記商用電力系統の電力で前記最下層以外の層にある蓄電池の少なくとも1つを充電させるよう構成されている
ことを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記浸水検知部が浸水を検知しているときに前記停電検知部が前記停電を検知していなければ、前記充放電回路を制御して、前記商用電力系統の電力で前記最下層以外の層にある蓄電池の少なくとも1つを予め設定された上限充電率を上回るように充電させるよう構成されている
ことを特徴とする請求項
1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
筐体と、
前記筐体内の下方空間に複数の階層をなすように配置された複数の蓄電池と、
前記筐体内の上方空間に配置された、前記複数の蓄電池を充放電させる充放電回路と、
前記下方空間に配置された、前記複数の蓄電池と前記充放電回路との接続状態を変化させるスイッチ回路と、
前記下方空間に配置された、最下層にある蓄電池の浸水を検知可能な浸水検知部と、
商用電力系統に停電が発生しているか否かを検知する停電検知部と、
前記筐体内に配置され
た前記浸水検知部
および前記停電検知部の検知結果に基づいて前記充放電回路および前記スイッチ回路を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記浸水検知部が浸水を検知すると、前記スイッチ回路を制御して前記最下層にある蓄電池を前記充放電回路から切り離させるよう構成されて
おり、
また、前記制御部は、前記浸水検知部が浸水を検知しているときに前記停電検知部が前記停電を検知していれば、前記充放電回路を制御して、前記最下層以外の層にある蓄電池の少なくとも1つを放電させるとともに該放電による電力を外部に向けて出力させるよう構成されている
ことを特徴とする蓄電システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記浸水検知部が浸水を検知しているときに前記停電検知部が前記停電を検知していれば、前記充放電回路を制御して、前記最下層以外の層にある蓄電池の少なくとも1つを予め設定された下限充電率を下回るように放電させるとともに該放電による電力を外部に向けて出力させるよう構成されている
ことを特徴とする請求項
3に記載の蓄電システム。
【請求項5】
筐体と、
前記筐体内の下方空間に3つ以上の階層をなすように配置された複数の蓄電池と、
前記筐体内の上方空間に配置された、前記複数の蓄電池を充放電させる充放電回路と、
前記下方空間に配置された、前記複数の蓄電池と前記充放電回路との接続状態を変化させるスイッチ回路と、
前記下方空間に配置された、最下層にある蓄電池の浸水を検知可能な第1浸水検知部と、
前記下方空間に配置された、中層にある蓄電池の浸水を検知可能な第2浸水検知部と、
商用電力系統に停電が発生しているか否かを検知する停電検知部と、
前記筐体内に配置され
た前記第1浸水検知部
、前記第2浸水検知部
および前記停電検知部の検知結果に基づいて前記充放電回路および前記スイッチ回路を制御する制御部と、
を備え、
前記充放電回路は、建屋の1階に設置された負荷に接続され得る第1出力部と、前記建屋の2階に設置された負荷に接続され得る第2出力部とを有し、
前記制御部は、前記第1浸水検知部が浸水を検知すると、前記スイッチ回路を制御して前記最下層にある蓄電池を前記充放電回路から切り離させ、前記第2浸水検知部が浸水を検知すると、前記スイッチ回路を制御して前記中層にある蓄電池を前記充放電回路から切り離させるよう構成されて
おり、
また、前記制御部は、前記第1浸水検知部のみが浸水を検知しているときに前記停電検知部が前記停電を検知していれば、前記充放電回路を制御して、最上層および前記中層にある蓄電池を放電させるとともに該放電による電力を前記第1出力部および前記第2出力部から出力させ、前記第2浸水検知部が浸水を検知しているときに前記停電検知部が前記停電を検知していれば、前記充放電回路を制御して、前記最上層にある蓄電池を放電させるとともに該放電による電力を前記第2出力部のみから出力させるよう構成されている
ことを特徴とする蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め蓄電池に蓄えておいた電力を停電時に建屋内の各種負荷に供給する蓄電システムに関し、特に、建屋外に設置して使用される蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模な自然災害に備えて、蓄電池に予め蓄えておいた電力(特に、比較的安価な夜間電力)を供給することにより、停電時に冷蔵庫等の重要負荷を継続的に稼働させることができる蓄電システムの普及が進められている。
【0003】
図7に示すように、蓄電システム100は、通常、建屋Hの近傍に設けられたコンクリート製の基礎Bの上にボルト等を用いて設置される。また、蓄電システム100は、通常、箱型の筐体101と、筐体101内の下方空間102に配置された複数の蓄電池103と、筐体101内の上方空間104に配置された充放電回路105とを備えている。
【0004】
筐体101内における蓄電池103および充放電回路105の配置がこのようになっているのは、重量物である蓄電池103を発熱源となる充放電回路105の上方に配置すると、蓄電システム100の重心位置が高くなって転倒しやすくなるとともに、蓄電池103が熱の影響を受けやすくなるからである。また、基礎Bの上面が建屋Hの1階床面よりも低くなっているのは、地震により蓄電システム100が転倒したときの衝撃を比較的小さなものとするためである。
【0005】
蓄電システム100は、建屋外で使用されるものなので、風雨に耐え得るように筐体101が設計されている。しかしながら、河川の決壊等により建屋Hが浸水するような状況では、筐体101に設けられた通気口からの水の進入が避けられず、その結果、蓄電池103が水に浸かってしまうことがある。そして、このような場合にシステムを安全に停止させるために、複数の浸水センサを備えることが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
浸水を検知してシステム全体を停止させることは安全の観点から好ましいことではあるが、浸水の程度によってはシステムを部分的に停止させるだけにして重要負荷への電力供給を継続させる方が好ましい場合がある。しかしながら、特許文献1に記載のものを含む従来の蓄電システムは、そのような動作を行えるように構成されていない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、浸水の程度に応じて段階的に動作を停止させることが可能な蓄電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る第1の蓄電システムは、筐体と、筐体内の下方空間に複数の階層をなすように配置された複数の蓄電池と、筐体内の上方空間に配置された、複数の蓄電池を充放電させる充放電回路と、下方空間に配置された、複数の蓄電池と充放電回路との接続状態を変化させるスイッチ回路と、下方空間に配置された、最下層にある蓄電池の浸水を検知可能な浸水検知部と、筐体内に配置された、浸水検知部の検知結果に基づいて充放電回路およびスイッチ回路を制御する制御部とを備え、制御部は、浸水検知部が浸水を検知すると、スイッチ回路を制御して最下層にある蓄電池を充放電回路から切り離させるよう構成されている、との構成を有している。
【0010】
この構成では、浸水検知部が最下層にある蓄電池の浸水を検知すると、最下層にある蓄電池だけが充放電回路から切り離される。言い換えると、この構成では、浸水検知部が最下層にある蓄電池の浸水を検知しても、最下層以外の層にある蓄電池は充放電回路から切り離されない。したがって、この構成によれば、浸水および停電の両方が発生したときに、充放電回路に接続されたままの蓄電池に蓄えられた電力を用いて、建屋内の各種負荷を稼働させることができる。
【0011】
なお、「最下層にある蓄電池の浸水を検知可能な浸水検知部」には、最下層にある蓄電池が現に浸水しているか否かを検知し得るように構成/配置された浸水検知部、および最下層にある蓄電池の浸水が間近に迫っているか否かを検知し得るように構成/配置された浸水検知部の両方が含まれるものとする。
【0012】
上記第1の蓄電システムは、商用電力系統に停電が発生しているか否かを検知する停電検知部をさらに備えるとともに、制御部が、浸水検知部が浸水を検知しているときに停電検知部が停電を検知していなければ、充放電回路を制御して、商用電力系統の電力で最下層以外の層にある蓄電池の少なくとも1つを充電させるよう構成されている、ことが好ましい。
【0013】
この場合、上記制御部は、最下層以外の層にある蓄電池の少なくとも1つを予め設定された上限充電率を上回るように充電させることがさらに好ましい。
【0014】
この構成によれば、浸水に続いて停電が発生した場合に、建屋内の各種負荷を長時間にわたって稼働させることができる。
【0015】
上記第1の蓄電システムは、商用電力系統に停電が発生しているか否かを検知する停電検知部をさらに備えるとともに、制御部が、浸水検知部が浸水を検知しているときに停電検知部が停電を検知していれば、充放電回路を制御して、最下層以外の層にある蓄電池の少なくとも1つを放電させるとともに該放電による電力を外部に向けて出力させるよう構成されている、との構成を有していてもよい。
【0016】
この場合、上記制御部は、最下層以外の層にある蓄電池の少なくとも1つを予め設定された下限充電率を下回るように放電させるとともに該放電による電力を外部に向けて出力させることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、停電時に建屋内の各種負荷を長時間にわたって稼働させることができる。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明に係る第2の蓄電システムは、筐体と、筐体内の下方空間に3つ以上の階層をなすように配置された複数の蓄電池と、筐体内の上方空間に配置された、複数の蓄電池を充放電させる充放電回路と、下方空間に配置された、複数の蓄電池と充放電回路との接続状態を変化させるスイッチ回路と、下方空間に配置された、最下層にある蓄電池の浸水を検知可能な第1浸水検知部と、下方空間に配置された、中層にある蓄電池の浸水を検知可能な第2浸水検知部と、筐体内に配置された、第1浸水検知部および第2浸水検知部の検知結果に基づいて充放電回路およびスイッチ回路を制御する制御部とを備え、制御部は、第1浸水検知部が浸水を検知すると、スイッチ回路を制御して最下層にある蓄電池を充放電回路から切り離させ、第2浸水検知部が浸水を検知すると、スイッチ回路を制御して中層にある蓄電池を充放電回路から切り離させるよう構成されている、との構成を有している。
【0019】
この構成では、第1浸水検知部が最下層にある蓄電池の浸水を検知すると、最下層にある蓄電池が充放電回路から切り離され、第2浸水検知部が中層にある蓄電池の浸水を検知すると、中層にある蓄電池が充放電回路から切り離される。言い換えると、この構成では、第1浸水検知部が最下層にある蓄電池の浸水を検知しても、中層および最上層にある蓄電池は充放電回路から切り離されず、第2浸水検知部が中層にある蓄電池の浸水を検知しても、最上層にある蓄電池は充放電回路から切り離されない。したがって、この構成によれば、浸水および停電の両方が発生したときに、充放電回路に接続されたままの蓄電池に蓄えられた電力を用いて、建屋内の各種負荷を稼働させることができる。
【0020】
なお、「最下層にある蓄電池の浸水を検知可能な第1浸水検知部」には、最下層にある蓄電池が現に浸水しているか否かを検知し得るように構成/配置された浸水検知部、および最下層にある蓄電池の浸水が間近に迫っているか否かを検知し得るように構成/配置された浸水検知部の両方が含まれるものとする。「中層にある蓄電池の浸水を検知可能な第2浸水検知部」についても同様である。
【0021】
また、「中層」は、最上層と最下層とを除く全ての層を指すものとする。例えば、階層が4つある場合は、下から2つ目の層および下から3つ目の層が中層となる。
【0022】
上記第2の蓄電システムは、商用電力系統に停電が発生しているか否かを検知する停電検知部をさらに備えるとともに、充放電回路が、建屋の1階に設置された負荷に接続され得る第1出力部と、建屋の2階に設置された負荷に接続され得る第2出力部とを有し、制御部が、第1浸水検知部のみが浸水を検知しているときに停電検知部が停電を検知していれば、充放電回路を制御して、最上層および中層にある蓄電池を放電させるとともに該放電による電力を第1出力部および第2出力部から出力させ、第2浸水検知部が浸水を検知しているときに停電検知部が停電を検知していれば、充放電回路を制御して、最上層にある蓄電池を放電させるとともに該放電による電力を第2出力部のみから出力させるよう構成されている、ことが好ましい。
【0023】
この構成では、第2浸水検知部が浸水を検知しているとき、すなわち、浸水がかなり進行しているときに、第1出力部を介した建屋の1階への電力供給が停止される。したがって、この構成によれば、建屋の1階の水に浸かった負荷、配電盤等に電力を供給してしまうことにより生じる漏電を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、浸水の程度に応じて段階的に動作を停止させることが可能な蓄電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施例に係る蓄電システムの概略的な構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施例における充放電の範囲を示す図である。
【
図3】第2実施例に係る蓄電システムの概略的な構成を示すブロック図である。
【
図4】第2実施例における充放電の範囲を示す図である。
【
図5】第3実施例に係る蓄電システムの概略的な構成を示すブロック図である。
【
図6】変形例における蓄電池の配置を示す図である。
【
図7】従来の蓄電システムの概略的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の第1~第3実施例に係る蓄電システムについて説明する。
【0027】
[第1実施例]
図1に、本発明の第1実施例に係る蓄電システム10Aを示す。同図に示すように、蓄電システム10Aは、建屋Hの近傍に設けられたコンクリート製の基礎Bの上にボルト等を用いて設置されている。また、同図に示すように、蓄電システム10Aは、脚12付きの箱型の筐体11と、筐体11内の下方空間14に配置された4つの蓄電池20a,20b,20c,20d、3つのリレーSa,Sb,Scからなるスイッチ回路、および浸水検知部21と、筐体11内の上方空間13に配置された充放電回路30A、制御部31A、および停電検知部32とを備えている。
【0028】
蓄電池20a,20b,20c,20dは、リチウムイオン電池、鉛蓄電池またはニッケル水素蓄電池等からなっている。蓄電池20a,20b,20c,20dの容量は、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0029】
蓄電池20a,20b,20c,20dは、2つの階層をなすように配置されている。すなわち、4つのうちの2つ(蓄電池20a,20b)は下方空間14の最下層に配置され、残りの2つ(蓄電池20c,20d)は下方空間14の最上層に配置されている。
【0030】
スイッチ回路を構成するリレーSa,Sb,Scは、制御部31Aの制御下でON状態(閉状態)またはOFF状態(開状態)をとるように構成されている。表1に示すように、スイッチ回路は、リレーSa,SbがON状態とされ、かつリレーScがOFF状態とされた第1状態と、リレーSa,SbがOFF状態とされ、かつリレーScがON状態とされた第2状態とをとることができる。
【表1】
【0031】
スイッチ回路が第1状態をとると、4つの蓄電池20a,20b,20c,20dの全部を直列に接続したものが充放電回路30Aに接続される。一方、スイッチ回路が第2状態をとると、最上層にある2つの蓄電池20c,20dだけを直列に接続したものが充放電回路30Aに接続される。つまり、スイッチ回路が第2状態をとると、最下層にある2つの蓄電池20a,20bが充放電回路30Aから切り離される。
【0032】
浸水検知部21は、最下層にある蓄電池20a,20bのやや下方に配置されている。これにより、浸水検知部21は、蓄電池20a,20bの浸水が間近に迫っているか否かを検知することができる。浸水検知部21は、検知結果に関する信号を制御部31Aに向けて出力する。
【0033】
充放電回路30Aは、双方向のDC/ACインバータ等から構成されている。充放電回路30Aは、停電検知部32を介して入力される商用電力系統Gの電力を直流化し、蓄電池20a,20b,20c,20dを充電することができる。また、充放電回路30Aは、蓄電池20a,20b,20c,20dに蓄えられた電力を交流化し、商用電力系統Gへの逆潮流が生じないように建屋Hに設置された負荷(一般負荷Laおよび重要負荷Lb)に供給することもできる(通常時放電モード)。このとき、蓄電池20a,20b,20c,20dからの放電電力が負荷に供給する電力(負荷電力)に対して不足する場合は、商用電力系統Gから不足分の電力が補われる。また、充放電回路30Aは、蓄電池20a,20b,20c,20dに蓄えられた電力を交流化し、重要負荷Lbにのみ供給することもできる(停電時放電モード)。さらに、充放電回路30Aは、蓄電池20a,20b,20c,20dを充電しながら一般負荷Laおよび/または重要負荷Lbに電力を供給することもできる(通常時充電モード)。充放電回路30Aは、制御部31Aの制御下でこれらの動作を行う。
【0034】
停電検知部32は、商用電力系統Gの電圧に基づいて、商用電力系統Gに停電が発生しているか否かを検知する。停電検知部32は、検知結果に関する信号を制御部31Aに向けて出力する。
【0035】
制御部31Aは、マイクロプロセッサ(MPU,Micro Processing Unit)等から構成されている。制御部31Aは、浸水検知部21および停電検知部32の検知結果に基づいて、充放電回路30Aおよびスイッチ回路(リレーSa,Sb,Sc)を制御する。以下、制御部31Aによる制御について具体的に説明する。
【0036】
浸水検知部21が浸水を検知しておらず、かつ停電検知部32が停電を検知していない場合、制御部31Aは、スイッチ回路を第1状態とする。また、この場合、制御部31Aは、充放電回路30Aを制御して、比較的安価な夜間電力により蓄電池20a,20b,20c,20dを充電させたり、比較的高価な昼間電力の購入量を減らすために、昼間に蓄電池20a,20b,20c,20dを放電させたりする。このとき、制御部31Aは、蓄電池20a,20b,20c,20dの寿命が縮むのを防ぐために、予め設定された通常使用範囲(10%~80%)内で蓄電池20a,20b,20c,20dを充放電させる(
図2参照)。
【0037】
浸水検知部21が浸水を検知しておらず、かつ停電検知部32が停電を検知している場合、制御部31Aは、スイッチ回路を第1状態とする。また、この場合、制御部31Aは、建屋Hに設置された重要負荷Lbの稼働停止を防ぐために、充放電回路30Aを制御して、蓄電池20a,20b,20c,20dを通常使用範囲の下限である下限充電率(10%)まで放電させる。
【0038】
浸水検知部21が浸水を検知しており、かつ停電検知部32が停電を検知していない場合、制御部31Aは、スイッチ回路を第2状態とする。また、この場合、制御部31Aは、昼間であるか夜間であるかにかかわらず、充放電回路30Aを制御して、蓄電池20c,20dを通常使用範囲の上限である上限充電率(80%)まで充電させる。
【0039】
スイッチ回路を第2状態として最下層にある2つの蓄電池20a,20bを充放電回路30Aから切り離すのは、稼働中の蓄電池が浸水すると、漏電が発生するとともに充放電回路30Aに設けられた異常検出回路が該漏電を検知し、蓄電システム10Aが緊急停止してしまうからである。また、昼間であるか夜間であるかにかかわらず蓄電池20c,20dを充電するのは、浸水の後に停電が発生することが多いからである。浸水を検知したときに直ちに充電を開始させることにより、停電時に建屋Hに設置された重要負荷Lbを長時間にわたって稼働させることができる。
【0040】
浸水検知部21が浸水を検知しており、かつ停電検知部32が停電を検知している場合、制御部31Aは、スイッチ回路を第2状態とする。また、この場合、制御部31Aは、昼間であるか夜間であるかにかかわらず、充放電回路30Aを制御して、蓄電池20c,20dを下限充電率(10%)まで放電させる。これにより、建屋Hに設置された重要負荷Lbの稼働停止が防がれる。
【0041】
[第2実施例]
図3に、本発明の第2実施例に係る蓄電システム10Bを示す。同図に示すように、蓄電システム10Bは、制御部31Aの代わりに制御部31Bを備えている点において蓄電システム10Aと相違しているが、その他の点においては蓄電システム10Aと共通している。
【0042】
本実施例においても、浸水検知部21が浸水を検知すると、制御部31Bが充放電回路30Aを制御して、蓄電池20c,20dを充放電させる。このとき、制御部31Bは、
図4に示した拡張使用範囲(0%~100%)内で蓄電池20c,20dを充放電させる。これにより、より長時間にわたって建屋Hに設置された重要負荷Lbを稼働させることができる。浸水が発生することは稀なので、蓄電池20c,20dを通常の下限充電率である10%を下回るように放電させたり、蓄電池20c,20dを通常の上限充電率である80%を上回るように充電させたりしても、蓄電池20c,20dの寿命への影響はほとんどない。
【0043】
なお、浸水検知部21が浸水を検知していない場合、制御部31Bは、予め設定された通常使用範囲内で蓄電池20a,20b,20c,20dを充放電させる。
【0044】
[第3実施例]
図5に、本発明の第3実施例に係る蓄電システム10Cを示す。同図に示すように、蓄電システム10Cは、蓄電池20a,20b,20c,20dに加えて蓄電池20e,20fを備えている点と、浸水検知部21(第1浸水検知部)に加えて浸水検知部22(第2浸水検知部)を備えている点と、スイッチ回路がリレーSd,Se,Sfをさらに含んでいる点と、充放電回路30Aの代わりに充放電回路30Cを備えている点と、制御部31Aの代わりに制御部31Cを備えている点とにおいて蓄電システム10Aと相違しているが、その他の点においては蓄電システム10Aと共通している。
【0045】
蓄電池20e,20fは、蓄電池20a,20b,20c,20dと同様、リチウムイオン電池、鉛蓄電池またはニッケル水素蓄電池等からなっている。6つの蓄電池20a,20b,20c,20d,20e,20fの容量は、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0046】
蓄電池20a,20b,20c,20d,20e,20fは、3つの階層をなすように配置されている。すなわち、6つのうちの2つ(蓄電池20a,20b)は下方空間14の最下層に配置され、別の2つ(蓄電池20c,20d)は下方空間14の中層に配置され、残りの2つ(蓄電池20e,20f)は下方空間14の最上層に配置されている。
【0047】
リレーSd,Se,Sfは、リレーSa,Sb,Scと同様、制御部31Cの制御下でON状態またはOFF状態をとるように構成されている。表2に示すように、スイッチ回路は、リレーSa,Sb,Sd,SeがON状態とされ、かつリレーSc,SfがOFF状態とされた第1状態と、リレーSa,Sb,SfがOFF状態とされ、かつリレーSc,Sd,SeがON状態とされた第2状態と、リレーSd,SeがOFF状態とされ、かつリレーSfがON状態とされた第3状態とをとることができる。
【表2】
なお、第3状態において、リレーSa,Sb,Scは任意の状態をとることができる。
【0048】
スイッチ回路が第1状態をとると、6つの蓄電池20a,20b,20c,20d,20e,20fの全部を直列に接続したものが充放電回路30Cに接続される。スイッチ回路が第2状態をとると、最上層および中層にある4つの蓄電池20c,20d,20e,20fを直列に接続したものが充放電回路30Cに接続される。また、スイッチ回路が第3状態をとると、最上層にある2つの蓄電池20e,20fを直列に接続したものが充放電回路30Cに接続される。つまり、スイッチ回路が第2状態をとると、最下層にある2つの蓄電池20a,20bが充放電回路30Cから切り離され、スイッチ回路が第3状態をとると、中層および最下層にある4つの蓄電池20a,20b,20c,20dが充放電回路30Cから切り離される。
【0049】
浸水検知部22は、中層にある蓄電池20c,20dのやや下方、かつ建屋Hの1階床面よりも高い位置に配置されている。これにより、浸水検知部22は、蓄電池20c,20dの浸水が間近に迫っているか否かと、建屋Hの床上浸水が発生しているか否かとを検知することができる。浸水検知部22は、検知結果に関する信号を制御部31Cに向けて出力する。
【0050】
充放電回路30Cは、充放電回路30Aと同様、双方向のDC/ACインバータ等から構成されている。充放電回路30Cは、建屋Hの1階の負荷(重要負荷Lb)に接続される第1出力部と、建屋Hの2階の負荷(重要負荷Lc)に接続される第2出力部とを有している。充放電回路30Cは、停電検知部32を介して入力される商用電力系統Gの電力を直流化し、蓄電池20a,20b,20c,20d,20e,20fを充電することができる。また、充放電回路30Cは、蓄電池20a,20b,20c,20d,20e,20fに蓄えられた電力を交流化し、商用電力系統Gへの逆潮流が生じないように一般負荷Laおよび重要負荷Lb,Lcに供給することもできる(通常時放電モード)。このとき、蓄電池20a,20b,20c,20d,20e,20fからの放電電力が負荷に供給する電力(負荷電力)に対して不足する場合は、商用電力系統Gから不足分の電力が補われる。また、充放電回路30Cは、蓄電池20a,20b,20c,20d,20e,20fに蓄えられた電力を交流化し、重要負荷Lb,Lcの両方に供給したり、重要負荷Lcにのみ供給したりすることもできる(停電時放電モード)。さらに、充放電回路30Cは、蓄電池20a,20b,20c,20d,20e,20fを充電しながら一般負荷Laおよび/または重要負荷Lb,Lcに電力を供給することもできる(通常時充電モード)。充放電回路30Cは、制御部31Cの制御下でこれらの動作を行う。
【0051】
制御部31Cは、制御部31Aと同様、マイクロプロセッサ等から構成されている。制御部31Cは、浸水検知部21,22および停電検知部32の検知結果に基づいて、充放電回路30Cおよびスイッチ回路(リレーSa,Sb,Sc,Sd,Se,Sf)を制御する。以下、制御部31Cによる制御について具体的に説明する。
【0052】
浸水検知部21,22が浸水を検知しておらず、かつ停電検知部32が停電を検知していない場合、制御部31Cは、スイッチ回路を第1状態とする。また、この場合、制御部31Cは、充放電回路30Cを制御して、比較的安価な夜間電力により蓄電池20a,20b,20c,20d,20e,20fを充電させたり、比較的高価な昼間電力の購入量を減らすために、昼間に蓄電池20a,20b,20c,20d,20e,20fを放電させたりする。放電による電力は、第1出力部を介して建屋Hの1階の重要負荷Lbに供給されるとともに、第2出力部を介して建屋Hの2階の重要負荷Lcに供給される。また、放電による電力は、一般負荷Laにも供給される。
【0053】
浸水検知部21,22が浸水を検知しておらず、かつ停電検知部32が停電を検知している場合、制御部31Cは、スイッチ回路を第1状態とする。また、この場合、制御部31Cは、建屋Hに設置された重要負荷Lb,Lcの稼働停止を防ぐために、充放電回路30Cを制御して、蓄電池20a,20b,20c,20d,20e,20fを放電させる。放電による電力は、第1出力部を介して建屋Hの1階の重要負荷Lbに供給されるとともに、第2出力部を介して建屋Hの2階の重要負荷Lcに供給される。
【0054】
浸水検知部21のみが浸水を検知しており、かつ停電検知部32が停電を検知していない場合、制御部31Cは、スイッチ回路を第2状態とする。また、この場合、制御部31Cは、昼間であるか夜間であるかにかかわらず、充放電回路30Cを制御して、最上層および中層にある蓄電池20c,20d,20e,20fを80%または100%まで充電させる。
【0055】
浸水検知部21のみが浸水を検知しており、かつ停電検知部32が停電を検知している場合、制御部31Cは、スイッチ回路を第2状態とする。また、この場合、制御部31Cは、昼間であるか夜間であるかにかかわらず、充放電回路30Cを制御して、最上層および中層にある蓄電池20c,20d,20e,20fを10%または0%まで放電させ、放電による電力を第1出力部を介して建屋Hの1階の重要負荷Lbに供給させるとともに、該電力を第2出力部を介して建屋Hの2階の重要負荷Lcに供給させる。
【0056】
浸水検知部21,22の両方が浸水を検知しており、かつ停電検知部32が停電を検知していない場合、制御部31Cは、スイッチ回路を第3状態とする。また、この場合、制御部31Cは、昼間であるか夜間であるかにかかわらず、充放電回路30Cを制御して、最上層にある蓄電池20e,20fを80%または100%まで充電させる。
【0057】
浸水検知部21,22の両方が浸水を検知しており、かつ停電検知部32が停電を検知している場合、制御部31Cは、スイッチ回路を第3状態とする。また、この場合、制御部31Cは、昼間であるか夜間であるかにかかわらず、充放電回路30Cを制御して、最上層にある蓄電池20e,20fを10%または0%まで放電させ、放電による電力を第2出力部を介して建屋Hの2階の重要負荷Lcに供給させる。放電による電力を建屋Hの1階の重要負荷Lbに供給しないのは、床上浸水が発生しているときに1階に向けて電力を供給すると、前述の漏電保護が作動して蓄電システム10Cが緊急停止するおそれがあるからである。
【0058】
以上、本発明の第1~第3実施例に係る蓄電システムについて説明してきたが、本発明の構成はこれらに限定されるものではない。
【0059】
[第1変形例]
例えば、本発明に係る蓄電システムは、
図6(A)に示す蓄電池20a,20bおよびスイッチ回路(リレーSa,Sb)が下方空間に配置されていてもよい。この場合は、蓄電池20aが最下層に配置され、蓄電池20bが最上層に配置されているといえる。
【0060】
リレーSa,Sbは、制御部の制御下でON状態またはOFF状態をとるように構成されている。表3に示すように、スイッチ回路は、リレーSaがON状態とされ、かつリレーSbがOFF状態とされた第1状態と、リレーSaがOFF状態とされ、かつリレーSbがON状態とされた第2状態とをとることができる。制御部は、浸水検知部によって検知された浸水の程度に応じてスイッチ回路の状態を切り替える。
【表3】
【0061】
スイッチ回路が第1状態をとると、2つの蓄電池20a,20bを直列に接続したものが充放電回路に接続される。一方、スイッチ回路が第2状態をとると、最上層にある蓄電池20bだけが充放電回路に接続される。つまり、スイッチ回路が第2状態をとると、最下層にある蓄電池20aが充放電回路から切り離される。
【0062】
[第2変形例]
また、本発明に係る蓄電システムは、
図6(B)に示す蓄電池20a,20b,20c,20d,20e,20f,20g,20hおよびスイッチ回路(リレーSa,Sb,Sc,Sd,Se,Sf,Sg,Sh)が下方空間に配置されていてもよい。この場合は、蓄電池20a,20b,20cが最下層に配置され、蓄電池20hが最上層に配置され、残りの蓄電池20d,20e,20f,20gが中層に配置されているといえる。
【0063】
リレーSa,Sb,Sc,Sd,Se,Sf,Sg,Shは、制御部の制御下でON状態またはOFF状態をとるように構成されている。表4に示すように、スイッチ回路は、リレーSa,Sb,Sd,Se,SgがON状態とされ、かつリレーSc,Sf,ShがOFF状態とされた第1状態と、リレーSa,Sb,Sf,ShがOFF状態とされ、かつリレーSc,Sd,Se,SgがON状態とされた第2状態と、リレーSd,Se,ShがOFF状態とされ、かつリレーSf,SgがON状態とされた第3状態と、リレーSgがOFF状態とされ、かつリレーShがON状態とされた第4状態とをとることができる。制御部は、3つの浸水検知部によって検知された浸水の程度に応じてスイッチ回路の状態を切り替える。
【表4】
なお、第3状態および第4状態において、リレーSa,Sb,Scは任意の状態をとることができる。また、第4状態において、リレーSd,Se,Sfは任意の状態をとることができる。
【0064】
スイッチ回路が第1状態をとると、8つの蓄電池20a,20b,20c,20d,20e,20f,20g,20hを直列に接続したものが充放電回路に接続される。スイッチ回路が第2状態をとると、5つの蓄電池20d,20e,20f,20g,20hを直列に接続したものが充放電回路に接続される。スイッチ回路が第3状態をとると、3つの蓄電池20f,20g,20hを直列に接続したものが充放電回路に接続される。また、スイッチ回路が第4状態をとると、蓄電池20hだけが充放電回路に接続される。つまり、スイッチ回路が第2状態をとると、蓄電池20a,20b,20cが充放電回路から切り離され、スイッチ回路が第3状態をとると、さらに蓄電池20d,20eが充放電回路から切り離され、スイッチ回路が第4状態をとると、さらに蓄電池20f,20gが充放電回路から切り離される。
【0065】
[その他の変形例]
また、本発明に係る蓄電システムは、停電検知部を備えていなくてもよい。この場合、制御部は、外部から提供される停電の有無に関する信号に基づいて、上記の制御を行うことができる。
【0066】
また、浸水検知部21は、最下層にある蓄電池の下端と同じ高さに配置されていてもよい。この場合、浸水検知部21は、最下層にある蓄電池が現に浸水しているか否かを検知することができる。浸水検知部22についても同様である。
【0067】
また、建屋Hの2階にも一般負荷がある場合、第3実施例に係る蓄電システム10Cは、商用電力系統Gへの逆潮流が生じないように2階の一般負荷に電力を供給してもよい。また、建屋Hはn階建て(ただし、nは3以上の整数)であってもよく、n階に重要負荷(および一般負荷)がある場合にも本発明を適用することができる。
【0068】
さらに、本発明に係る蓄電システムは、充放電回路からの蓄電池の切り離しと同時に、当該蓄電池を放電回路に接続し、当該蓄電池に蓄えられた電力を放電させるように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10A,10B,10C 蓄電システム
11 筐体
12 脚
13 上方空間
14 下方空間
20a,20b,20c,20d,20e,20f,20g,20h 蓄電池
21 浸水検知部(第1浸水検知部)
22 浸水検知部(第2浸水検知部)
30A,30C 充放電回路
31A,31B,31C 制御部
32 停電検知部
B 基礎
G 商用電力系統
H 建屋
Sa,Sb,Sc,Sd,Se,Sf,Sg,Sh リレー