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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】組合せ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5025 20060101AFI20230616BHJP
   A61K 31/498 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
A61K31/5025 ZMD
A61K31/498
A61K31/4985
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020040157
(22)【出願日】2020-03-09
(62)【分割の表示】P 2016558662の分割
【原出願日】2015-03-26
(65)【公開番号】P2020114825
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2020-04-08
(31)【優先権主張番号】14161835.5
(32)【優先日】2014-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504162110
【氏名又は名称】アステックス、セラピューティックス、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ASTEX THERAPEUTICS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】エレオノーラ、ジョブシュバ
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー、ピエトロ、シュレン、ペレラ
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-528580(JP,A)
【文献】国際公開第2013/061080(WO,A1)
【文献】特表2010-532322(JP,A)
【文献】特表2009-525263(JP,A)
【文献】特表2013-544853(JP,A)
【文献】特許第6752715(JP,B2)
【文献】Singleton KR et al.,A receptor tyrosine kinase network composed of fibroblast growth factor receptors, epidermal growth factor receptor, v-erb-b2 erythroblastic leukemia viral oncogene homolog 2, and hepatocyte growth factor receptor drives growth and survival of head and neck squamous carcinoma cell lines,Molecular Pharmacology,2013年04月,Vol.83, No.4,p.882-893
【文献】布施 望 ほか,c-Met阻害剤開発状況,がん分子標的治療,2009年,第7巻, 第2号,p.111-116
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 45/00-45/08
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、およびN-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物から選択される第1の化合物と、
6-{ジフルオロ[6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル]メチル}キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、および6-[ジフルオロ(6-ピリジン-4-イル[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル)メチル]キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物から選択される第2の化合物との、
第1の化合物に対する癌の耐性の出現の遅延のために第2の化合物を使用する癌治療用の、組合せ物。
【請求項2】
第1の化合物がN-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物である、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項3】
第1の化合物がN-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミン塩基である、請求項2に記載の組合せ物。
【請求項4】
第1の化合物がN-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物である、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項5】
第1の化合物がN-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミン塩基である、請求項4に記載の組合せ物。
【請求項6】
第2の化合物が6-{ジフルオロ[6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル]メチル}キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項7】
第2の化合物が6-{ジフルオロ[6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル]メチル}キノリン塩基である、請求項に記載の組合せ物。
【請求項8】
第2の化合物が6-[ジフルオロ(6-ピリジン-4-イル[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル)メチル]キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項9】
第2の化合物が6-[ジフルオロ(6-ピリジン-4-イル[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル)メチル]キノリン塩基である、請求項に記載の組合せ物。
【請求項10】
癌が、肺癌、膀胱癌、乳癌、胃癌または肝細胞癌である、請求項1~のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項11】
FGFR阻害剤に対する腫瘍または癌の耐性の出現の遅延のために使用するためのcMet阻害剤であって、
GFR阻害剤が、N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、およびN-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物から選択され、
cMet阻害剤が、6-{ジフルオロ[6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル]メチル}キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、および6-[ジフルオロ(6-ピリジン-4-イル[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル)メチル]キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物から選択される、cMet阻害剤
【請求項12】
FGFR阻害剤が、N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物である、請求項11に記載のcMet阻害剤。
【請求項13】
FGFR阻害剤が、N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミン塩基である、請求項12に記載のcMet阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、およびN-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物から選択される第1の化合物と、cMet阻害剤である第2の化合物の組合せに関する。
【0002】
前記組合せは、増殖性障害の処置、特に、癌の処置において使用するためのものである。
【0003】
FGFR阻害剤(N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、およびN-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物)とcMet阻害剤は同時、個別または逐次に投与することができる。
【0004】
本発明はさらに、薬学的に許容可能な担体と本発明による組合せとを含んでなる医薬組成物に関する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミン(化合物A)またはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、およびN-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミン(化合物B)またはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和から選択される物第1の化合物と、cMet阻害剤である第2の化合物の組合せに関する。
【背景技術】
【0006】
N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミン(化合物A)は下式:
【化1】
により表される。
【0007】
N-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミン(化合物B)は下式:
【化2】
により表される。
【0008】
化合物N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミン(化合物A)またはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、およびN-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミン(化合物B)またはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、ならびにそれらの化学合成は、引用することにより本明細書の一部とされるWO2011/135376およびWO2013/061080に記載されている。それらは特定のタンパク質チロシンキナーゼ、特に、FGFRの活性の阻害剤または調節剤として記載され、従って、これらの化合物は、チロシンキナーゼ、特に、FGFRにより媒介される疾患状態または病態の治療または予防、特に、治療において有用である。これらの化合物は、癌の治療または予防、特に、処置において有用である。
【0009】
WO2011/135376では、本化合物Aは、塩酸塩としても例示されている。WO2013/061080では、本化合物Bは、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、乳酸塩、フマル酸塩としても例示されている。
【0010】
FGFR
タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)受容体の線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーは、有糸分裂誘発、創傷治癒、細胞分化、および血管新生を含む多様な一連の生理学的機能、ならびに発育を調節する。正常細胞および悪性細胞の両方の成長ならびに増殖は、オートクリンならびにパラクリン因子として作用する細胞外シグナル伝達分子であるFGFの局部的濃度の変化によって影響を受ける。オートクリンFGFシグナル伝達は、ステロイドホルモン依存性癌のホルモン非依存性状態への進行において特に重要であり得る。FGFおよびそれらの受容体はいくつかの組織および細胞株において高レベルで発現され、過剰発現が悪性表現型に寄与していると考えられている。さらに、いくつかの癌遺伝子は、増殖因子受容体をコードする遺伝子のホモログであり、ヒト膵臓癌においてFGF依存性シグナル伝達を異常に活性化する可能性がある(Knights et al., Pharmacology and Therapeutics 2010 125:1 (105-117); Korc M. et al Current Cancer Drug Targets 2009 9:5 (639-651))。
【0011】
2つの原型メンバーは、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGFまたはFGF1)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGFまたはFGF2)であり、これまでのところ、少なくとも20の異なるFGFファミリーメンバーが同定されている。FGFに対する細胞応答は、1~4(FGFR1~FGFR4)の番号が付けられた4種類の高親和性トランスメンブランタンパク質チロシンキナーゼ線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)を介して伝達される。
【0012】
FGFR1経路の破壊は、腫瘍細胞の増殖に影響を与えるはずであり、これはこのキナーゼが内皮細胞を増殖させることに加えて多くの腫瘍種において活性化されるからである。腫瘍関連血管構造におけるFGFR1の過剰発現および活性化は、腫瘍血管新生におけるこれらの分子の役割を示唆している。
【0013】
最近の研究から、古典的小葉癌(Classic Lobular Carcinomas)(CLC)におけるFGFR1発現と腫瘍原性との間の関連が示されている。CLCは、全乳癌の10~15%を占め、一般に、p53およびHer2の発現が欠損しているが、エストロゲン受容体の発現は保持している。8p12-p11.2の遺伝子増幅がCLC症例の約50%で示され、これはFGFR1の発現増強と関連していることが示された。FGFR1に対して向けられたsiRNAまたは前記受容体の小分子阻害剤を用いた予備研究から、この増幅を有する細胞株がこのシグナル伝達経路の阻害に特に感受性を持つことが示された。最も一般的な小児軟部組織肉腫である横紋筋肉腫(RMS)は、骨格筋形成の過程での異常な増殖および分化に起因している可能性がある。FGFR1は、原発性横紋筋肉腫の腫瘍で過剰発現され、5’CpG島の低メチル化、ならびにAKT1、NOG、およびBMP4遺伝子の異常発現に関連している。FGFR1はまた、扁平上皮肺癌、結腸直腸癌、膠芽腫、星状細胞腫、前立腺癌、小細胞肺癌、黒色腫、頭頚部癌、甲状腺癌、子宮癌とも関連づけられている。
【0014】
線維芽細胞増殖因子受容体2は、酸性および/または塩基性線維芽細胞増殖因子、ならびにケラチノサイト増殖因子リガンドに高い親和性を有する。線維芽細胞増殖因子受容体2はまた、骨芽細胞の成長および分化の際にFGFの強力な造骨作用を伝達する。複雑な機能的変化をもたらす線維芽細胞増殖因子受容体2における突然変異は、異常な頭蓋縫合骨化(頭蓋骨癒合症)を誘発することが示されており、膜内骨形成におけるFGFRシグナル伝達の主要な役割を暗示している。例えば、早期頭蓋縫合骨化を特徴とするアペール(AP)症候群では、ほとんどの場合が、機能獲得を生じる線維芽細胞増殖因子受容体2における点突然変異に関連している。さらに、症候性頭蓋癒合患者における突然変異スクリーニングでは、いくつかの反復FGFR2突然変異が重症型のプファイファー症候群を説明することが示されている。FGFR2の特定の突然変異としては、FGFR2のW290C、D321A、Y340C、C342R、C342S、C342W、N549H、K641Rが含まれる。
【0015】
アペール症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン-ワイス症候群、ベーレ-スチーブンソン脳回状頭皮症候群、およびプファイファー症候群を含む、ヒト骨格発達におけるいくつかの重篤な異常が、線維芽細胞増殖因子受容体2における突然変異の発生に関連している。総てではなくともほとんどの場合、プファイファー症候群(PS)の症例は線維芽細胞増殖因子受容体2遺伝子のde novo突然変異によっても起こり、最近、線維芽細胞増殖因子受容体2における突然変異が、リガンド特異性を支配する基本規則のうちの1つを破ることが示された。すなわち、線維芽細胞増殖因子受容体の2つの突然変異スプライス型FGFR2cおよびFGFR2bは、非定型FGFリガンドと結合し、それにより活性化される能力を獲得していた。このリガンド特異性の欠損は異常なシグナル伝達をもたらし、これらの疾病症候群の重篤な表現型が異所性リガンドに依存する、線維芽細胞増殖因子受容体2の活性化によるものであることを示唆する。
【0016】
FGFR3受容体チロシンキナーゼの、染色体転座または点突然変異などの遺伝子異常は、異所発現されるかまたは調節解除された構成的に活性なFGFR3受容体をもたらす。このような異常は多発性骨髄腫の一部および膀胱癌、肝細胞癌、口腔扁平上皮癌および子宮頚癌に関連している。従って、FGFR3阻害剤は多発性骨髄腫、膀胱癌および子宮頚癌の治療に有用となる。FGFR3はまた、膀胱癌、特に、浸潤性膀胱癌においても過剰発現される。FGFR3は、尿路上皮癌(UC)における突然変異により頻繁に活性化される。発現の増強は突然変異に関連していた(突然変異腫瘍の85%が高レベルの発現を示した)が、多くの筋肉浸潤性腫瘍を含め、検出可能な突然変異を持っていない、腫瘍の42%も過剰発現を示した。FGFR3はまた、子宮内膜癌および甲状腺癌にも関連している。
【0017】
FGFR4の過剰発現は、前立腺癌および甲状腺癌の両方において予後の悪さと関連付けられている。さらに、生殖細胞系多型(Gly388Arg)が、肺癌、乳癌、結腸癌、肝臓癌(HCC)および前立腺癌の高い罹患率と関連している。また、末端切断型FGFR4(キナーゼドメインを含む)が、下垂体腫瘍の40%に存在するが、正常組織には存在しないことが判明している。FGFR4過剰発現は、肝臓、結腸および肺の腫瘍で見出されている。FGFR4は、結腸直腸癌および肝臓癌に関連が見出されており、このような癌ではリガンドFGF19の発現が高まっている場合が多い。FGFR4はまた、星状細胞腫、横紋筋肉腫にも関連している。
【0018】
線維症の病態は、線維組織の異常または過剰な沈着に起因する大きな医学的問題である。これは、肝硬変、糸球体腎炎、肺線維症、全身性線維症、関節リウマチを含む多くの疾患、ならびに創傷治癒の自然プロセスにおいて発生する。病的線維化機序は完全には理解されていないが、線維芽細胞の成長および細胞外マトリックスタンパク質(コラーゲンおよびフィブロネクチンを含む)の沈着に関与する様々なサイトカイン(腫瘍壊死因子(TNF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、および形質転換増殖因子β(TGFβ)を含む)の作用に起因していると考えられる。これは組織構造および機能の変化、ならびにそれに続く病変をもたらす。
【0019】
いくつかの前臨床研究では、肺線維症の前臨床モデルにおいて線維芽細胞増殖因子のアップレギュレーションが示されている。TGFβ1およびPDGFは、線維形成プロセスに関与していることが報告され、さらに公開された研究から、FGFの上昇、およびその結果としての線維芽細胞の成長の増大は、TGFβ1の上昇に応答したものであり得ることが示唆されている。特発性肺線維症(IPF)などの病態においてこの線維化機序を標的とすることの治療的利益の可能性が、報告されている抗線維症薬ピルフェニドンの臨床効果によって示唆されている。特発性肺線維症(原因不明線維性肺胞炎とも呼ばれる)は、肺の瘢痕化を伴う進行性の病態である。肺の気嚢が徐々に線維組織によって置き換えられ、それが厚みを増し、酸素を血流へ運搬する組織の能力の不可逆的喪失が引き起こされる。この病態の症状としては、息切れ、慢性乾性咳、疲労、胸痛、および急な体重減少をもたらす食欲不振が挙げられる。この病態は極めて重篤であり、5年後死亡率がおよそ50%である。
【0020】
従って、FGFRを阻害する化合物は、特に血管新生を阻害することにより腫瘍の成長を妨げ、アポトーシスを誘発する手段を提供するのに有用となる。よって、これらの化合物は、癌などの増殖性障害を治療または予防するのに有用であることが分かるであろう。
特に、受容体チロシンキナーゼの活性化突然変異または受容体チロシンキナーゼのアップレギュレーションを伴う腫瘍は、これらの阻害剤に特に感受性を持つ可能性がある。本明細書に述べられている特定のRTK(受容体チロシンキナーゼ)のアイソフォームのいずれかの活性化突然変異を伴う患者でも、RTK阻害剤による治療が特に有益であることが分かるであろう。
【0021】
本明細書に記載のFGFRキナーゼ阻害剤は、その疾患がFGFRの脱調節により駆動される患者サブグループにおいてこれらの標的薬剤を使用する新しい機会を与える差別的な選択的プロフィールを有する。本明細書に記載のFGFRキナーゼ阻害剤は、さらなるキナーゼ、特に、VEGFR、より特には、VEGFR2、およびPDGFR、特に、PDGFR-βに対して阻害作用の低減を示し、差別的副作用または毒性プロフィールを有する機会を与え、従って、これらの適応のより有効な治療を可能とする。VEGFR2およびPDGFR-βの阻害剤は、それぞれ高血圧症または浮腫などの毒性に関連する。VEGFR2阻害剤の場合、この昇圧作用は多くの場合、用量制限的であり、特定の患者集団では禁忌であり得、臨床管理を要する。
【0022】
血管内皮増殖因子 受容体(VEGFR)
ポリペプチドである血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、in vitroでは内皮細胞に対する有糸分裂促進性であり、in vivoでは血管新生応答を刺激する。VEGFは、不適切な血管新生とも関連付けられている。VEGFRは、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)である。PTKは、細胞機能に関与するタンパク質内の特定のチロシン残基のリン酸化を触媒し、それによって細胞の成長、生存、および分化を制御する。
【0023】
VEGFに対する3つのPTK受容体、すなわち、VEGFR-1(Flt-1)、VEGFR-2(Flk-1またはKDR)、およびVEGFR-3(Flt-4)が同定されている。これらの受容体は、血管新生に関与し、シグナル伝達に関わっている。特に注目されるのはVEGFR-2であり、これは、主として内皮細胞で発現されるトランスメンブラン受容体PTKである。VEGFによるVEGFR-2の活性化は、腫瘍血管新生を開始するシグナル伝達経路において極めて重要な段階である。VEGF発現は、腫瘍細胞では構成的である場合もあるし、特定の刺激に応答してアップレギュレーションされる場合もある。このような刺激の1つは低酸素であり、この場合、VEGF発現は、腫瘍および関連する宿主組織の両方でアップレギュレーションされる。VEGFリガンドは、その細胞外VEGF結合部位と結合することにより、VEGFR-2を活性化する。これは、VEGFRの受容体二量体化、およびVEGFR-2の細胞内キナーゼドメインにおけるチロシン残基の自己リン酸化をもたらす。キナーゼドメインは、ATPからチロシン残基へリン酸を転移する働きをし、このようにしてVEGFR-2の下流にシグナル伝達タンパク質のための結合部位を提供し、最終的には血管新生を開始させる。
【0024】
PDGFR
悪性腫瘍は、制御を欠いた細胞増殖の産物である。細胞成長は、成長促進因子と成長阻害因子との間の微妙なバランスにより制御されている。正常組織では、これらの因子の産生および活性は、臓器の正常な完全性および機能性を維持する制御および調節された様式で成長する分化細胞をもたらす。悪性細胞はこの制御を回避しており、自然バランスが(様々な機構を介して)乱され、調節を欠いた異常な細胞成長が起こる。腫瘍発生において重要な増殖因子は、細胞表面チロシンキナーゼ受容体(PDGFR)を介してシグナルを伝達し、成長、増殖および分化を含む様々な細胞機能を刺激するペプチド増殖因子のファミリーを含んでなる血小板由来増殖因子(PDGF)である。
【0025】
cMet
肝細胞増殖因子(HGF)(分散因子としても知られる)受容体c-Met(Met)は、細胞増殖、形態形成、および運動を調節する受容体チロシンキナーゼである。c-Met遺伝子は、140kDのβ膜貫通サブユニットと50kDのグリコシル化細胞外αサブユニットから構成される細胞表面受容体へとプロセシングされる170kDのタンパク質に翻訳される。
【0026】
c-Metの突然変異、c-Metおよび/またはHGF/SF(分散因子)の過剰発現、同じ細胞によるc-MetおよびHGF/SFの発現、ならびに過剰発現および/または異常なc-Metシグナル伝達が種々のヒト固形腫瘍に存在し、血管新生、腫瘍発生、浸潤、および転移に関与すると考えられている。c-Metの活性化が制御されない細胞株は、例えば、浸潤性および転移性ともに高い。正常細胞とc-Met受容体を発現する転換細胞の間の顕著な違いは、腫瘍細胞におけるチロシンキナーゼドメインのリン酸化がリガンドの存在に依存しないことが多いということである。
【0027】
C-Metの突然変異/変更は、例えば、遺伝性および散発性乳頭状腎臓癌、乳癌、場合により肝臓転移を伴う結腸直腸癌、胃癌、神経膠腫、卵巣癌、肝細胞癌、頭頸部扁平上皮癌、精巣癌、基底細胞癌、肝臓癌、肉腫、悪性胸腔中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、骨肉腫、膵臓癌、前立腺癌、滑膜肉腫、甲状腺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)および小細胞肺癌、膀胱の移行上皮癌、精巣癌、基底細胞癌、肝臓癌などの腫瘍および癌、ならびに例えば、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性好中球性白血(CNL)、急性未分化白血病(AUL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、前リンパ球性白血病(PML)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、成人性T細胞ALL、3血球性骨髄異形成を伴うAML(AML/TMDS)、混合型白血病(MLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性障害(MPD)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄性肉腫、非ホジキンリンパ腫およびホジキン病(ホジキンリンパ腫とも呼ばれる)などの白血病、リンパ腫、および骨髄腫を含む、いくつかのヒト疾患で同定されている。
【0028】
c-Metの過剰発現は、例えば、乳癌、小細胞肺癌、膵内分泌新生物、前立腺癌、食道腺癌、結腸直腸癌、唾液腺癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫および子宮内膜癌などの特定の疾患の予後のための潜在的に有用な予測因子であると考えられる。
【0029】
種々のヒト癌の病因における異常なHGF/SF-Metシグナル伝達の役割のために、c-Met受容体チロシンキナーゼの阻害剤は、c-Metが過剰発現されない、またはそうでなければ変更されないものを含め、Met活性が浸潤性/転移性の表現型に寄与する癌の治療に広い適用を有する。c-Metの阻害剤はまた血管新生も阻害し、従って、関節リウマチおよび網膜症などの心血管系の形成に関連する疾患の治療に有用性を有すると考えられる。
【0030】
引用することにより本明細書の一部とされるWO2007/075567およびWO2008/155378は、6-{ジフルオロ[6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル]メチル}キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、および6-[ジフルオロ(6-ピリジン-4-イル[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル)メチル]キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物などのcMet阻害剤、ならびにそれらの化学合成、およびその多形体を記載している。これらのcMet阻害剤は、タンパク質チロシンキナーゼ調節剤、特に、c-Metの阻害剤、および細胞または被験体におけるc-Metのキナーゼ活性を低減または阻害する、および細胞または被験体においてc-Met発現を調節するためのこのような化合物の使用、ならびに被験体において細胞増殖性障害および/またはc-Metに関連する障害、特に、癌を予防または治療するためのこのような化合物の使用として記載されている。
【0031】
6-{ジフルオロ[6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル]メチル}キノリン(化合物C)は下記構造により表される。
【化3】
6-[ジフルオロ(6-ピリジン-4-イル[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル)メチル]キノリン(化合物D)は下式により表される。
【化4】
【0032】
WO2008/155378では、化合物Cの結晶形および水和物、特に、本化合物CのI型、II型、III型、および水和物型も例示される。
【0033】
WO2008/155378では、本化合物Cはまた、HBr塩、HCl塩、メタンスルホン酸(メシル酸)塩、エタンスルホン酸(エシル酸)塩およびp-トルエンスルホン酸(トシル酸)塩としても例示される。
【0034】
化合物Cまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、および化合物Dまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物は、選択的cMet阻害剤である。
【0035】
WO2013/151913は、チロシンキナーゼ阻害剤組合せおよびそれらの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1:(-)または(+)Met阻害剤を伴わずにまたは伴って300nMの化合物Cで30分間処理した親細胞および耐性NCI-H1581細胞に由来するタンパク質溶解液のウエスタンブロット。
図2図2:単剤(化合物A[1μM]または化合物D[1μM])または化合物A[1μM]と化合物D[1μM]の両方の組合せ、およびビヒクル対照としてのDMSOで処理したNCI-H1581細胞の増殖を表すIncucyteグラフ(経時的集密度%)。
図3図3 耐性NCI-H1581異種移植における単剤薬剤、化合物A、および化合物Aと化合物Dの組合せの有効性。
図4図4 化合物A[0.1μM]または化合物A[0.1μM]と化合物D[1μM]の組合せ、およびビヒクル対照としてのDMSOで処理したNCI-H1581細胞およびNCI-H1581Met(+)細胞の増殖を表すIncucyteグラフ(経時的集密度%)。
【発明の具体的説明】
【0037】
本発明は、N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミン(化合物A)またはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、およびN-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミン(化合物B)またはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物から選択される第1の化合物と、cMet阻害剤、特に、本明細書に記載のcMet阻害剤である第2の化合物の組合せに関する。
【0038】
一つの実施態様では、本発明は、N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミン(化合物A)またはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物と、cMet阻害剤、特に、本明細書に記載のcMet阻害剤の組合せに関する。
【0039】
一つの実施態様では、本発明は、N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミン(化合物A)またはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物と、6-{ジフルオロ[6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル]メチル}キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物の組合せに関する。
【0040】
一つの実施態様では、本発明は、N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミン(化合物A)またはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物と、6-[ジフルオロ(6-ピリジン-4-イル[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル)メチル]キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物の組合せに関する。
【0041】
一つの実施態様では、本発明は、N-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミン(化合物B)またはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物と、cMet阻害剤、特に、本明細書に記載のcMet阻害剤の組合せに関する。
【0042】
一つの実施態様では、本発明は、N-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミン(化合物B)またはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物と、6-{ジフルオロ[6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル]メチル}キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物の組合せに関する。
【0043】
一つの実施態様では、本発明は、N-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミン(化合物B)またはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物と、6-[ジフルオロ(6-ピリジン-4-イル[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル)メチル]キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物の組合せに関する。
【0044】
一つの実施態様では、本発明の組合せのFGFR阻害剤(化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、または化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物)およびcMet阻害剤、特に、本明細書に記載のcMet阻害剤、より特には、化合物Cまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、または化合物Dまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物は、同時に(例えば、個別のまたは単一の組成物で)、ほぼ同時にいずれかの順序で逐次に投与される。この場合、これら2種類の化合物は、有利な作用または相乗作用が達成されることを保証するのに十分な量および様式で投与される。
【0045】
一つの実施態様では、本発明の組合せのFGFR阻害剤(化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、または化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物)およびcMet阻害剤、特に、本明細書に記載のcMet阻害剤、より特には、化合物Cまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、または化合物Dまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物は、別の投与計画で、いずれかの順序で逐次に投与される。この場合、これらの2種類の化合物は、有利な作用または相乗作用が達成されることを保証するのに十分な期間および量および様式で投与される。
【0046】
本組合せの各成分の好ましい投与方法および順序ならびに各投与量および計画は、投与される特定の化学療法薬、それらの投与経路、処置される特定の腫瘍および処置される特定の宿主によって決まるということが認識されるであろう。
【0047】
最適な投与方法および順序ならびに投与量および計画は、当業者により、従来の方法を用い、本明細書に示される情報を考慮して、容易に決定することができる。
【0048】
本発明の組合せにおいて、FGFR阻害剤およびcMet阻害剤は別個の医薬投与形で処方されてよく、互いに独立に、しなしながらそれらの併用に関する指示または説明を添えて販売することができる。前記指示または説明は、患者向けリーフレットなどの形態、または例えば、書面もしくは口頭などの任意の情報伝達の形態であり得る。
【0049】
本発明の組合せにおいて、FGFR阻害剤およびcMet阻害剤は、同じ投与経路により投与することもできるし、または異なる投与経路によって投与することもできる。
【0050】
一つの実施態様では、本発明の組合せのFGFR阻害剤およびcMet阻害剤は、同じ投与経路、特に、経口経路により投与される。
【0051】
本発明はまた、本発明の組合せを、特に、FGFRチロシンキナーゼ活性により媒介される疾患、特に癌の治療における同時、個別または逐次使用に関する説明書とともに含んでなる医薬製剤または市販パッケージに関する。
【0052】
一つの実施態様では、本発明の組合せにおいて、FGFR阻害剤およびcMet阻害剤
は同時に投与される。
【0053】
一つの実施態様では、本発明の組合せにおいて、FGFR阻害剤およびcMet阻害剤は、個別に、特に、併用の効果がFGFR阻害剤またはcMet阻害剤を単独で投与する場合に得られる効果よりも大きいように選択された時間間隔で投与される。
【0054】
FGFR阻害剤として化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物を含んでなる本発明の組合せの場合、化合物Aはリソソーム指向性と長期の標的遮断を示すので、前記化合物はcMet阻害剤よりも低頻度であることが有利であり得る。
【0055】
本発明の組合せのFGFR阻害剤およびcMet阻害剤はまた、単一の処方物中に共に調剤してもよい。
【0056】
一つの実施態様では、本発明は、薬学的に許容可能な担体と、第1の有効成分としてのN-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、およびN-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物から選択される化合物と、第2の有効成分としてのcMet阻害剤、特に、本明細書に記載のcMet阻害剤、より特には、6-{ジフルオロ[6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル]メチル}キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、および6-[ジフルオロ(6-ピリジン-4-イル[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル)メチル]キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物から選択される化合物とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0057】
一つの実施態様では、本発明は、薬学的に許容可能な担体と、第1の有効成分としての-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物と、第2の有効成分としてのcMet阻害剤、特に、本明細書に記載のcMet阻害剤とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0058】
一つの実施態様では、本発明は、薬学的に許容可能な担体と、第1の有効成分としてのN-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物と、第2の有効成分としての6-{ジフルオロ[6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル]メチル}キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0059】
一つの実施態様では、本発明は、薬学的に許容可能な担体と、第1の有効成分としてのN-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物と、第2の有効成分としての6-[ジフルオロ(6-ピリジン-4-イル[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]-ピリダジン-3-イル)メチル]キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0060】
一つの実施態様では、本発明は、薬学的に許容可能な担体と、第1の有効成分としてのN-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物と、第2の有効成分としてのcMet阻害剤、特に、本明細書に記載のcMet阻害剤とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0061】
一つの実施態様では、本発明は、薬学的に許容可能な担体と、第1の有効成分としてのN-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物と、第2の有効成分としての6-{ジフルオロ[6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル]メチル}キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0062】
一つの実施態様では、本発明は、薬学的に許容可能な担体と、第1の有効成分としてのN-(2-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)-N-(1H-イミダゾール-2-イルメチル)-3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリド[2,3-b]ピラジン-6-アミンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物と、第2の有効成分としての6-[ジフルオロ(6-ピリジン-4-イル[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-3-イル)メチル]キノリンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0063】
一つの実施態様では、本発明の組合せまたは医薬組成物は経口投与される。
【0064】
一つの実施態様では、本発明の組合せまたは医薬組成物は、本発明の実施態様のいずれに記載されているものも含め、単一有効成分としてFGFR阻害剤およびcMet阻害剤を含んでなる。
【0065】
本発明では、一つの実施態様において、本発明の組合せまたは医薬組成物のcMet阻害剤はまた、
(E)-2-(1-(3-((7-フルオロキノリン-6-イル)メチル)イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-6-イル)エチリデン)ヒドラジンカルボキサミド(WO2011/018454の実施例1);2-フルオロ-N-メチル-4-[(7-キノリン-6-イル-メチル)-イミダゾ[1,2-b]トリアジン-2-イル]ベンズアミド(WO2008/064157の実施例7);クリゾチニブ;カボザンチニブ;チバチニブ(tivatinib);フォレチニブ;MGCD-265;AMG-208;AMG-337;MK-8033;E-7050;EMD-1204831;EMD-1214063;amuvatinib;BMS-817378;DP-3590;ASP-08001;HM-5016504;PF-4217903;SGX523;抗体または関連の分子、例えば、フィクラツズマブ、オナルツズマブ、リロツズマブ、Tak-701、LA-480;またはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物
の群から選択され得る。
【0066】
一つの実施態様では、本発明の組合せまたは本発明の医薬組成物は、特に、薬剤として使用するための、より具体的には、癌または関連疾患の治療において使用するための、少なくとも1つのさらなる治療薬、特に、少なくとも1つのさらなる抗癌剤またはアジュバントを含んでなる。
【0067】
抗癌剤またはアジュバント(療法における補助薬剤)の例としては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる:
・白金錯体化合物、例えば、シスプラチン(場合によりアミフォスチン、カルボプラチンまたはオキサリプラチンと組み合わせてもよい);
・タキサン化合物、例えば、パクリタキセル、パクリタキセルタンパク質結合粒子(アブラキサン(商標))またはドセタキセル;
・トポイソメラーゼI阻害剤、例えば、カンプトテシン化合物、例えば、イリノテカン、SN-38、トポテカン、トポテカンhcl;
・トポイソメラーゼII阻害剤、例えば、抗腫瘍エピポドフィロトキシンまたはポドフィロトキシン誘導体、例えば、エトポシド、リン酸エトポシドまたはテニポシド;
・抗腫瘍ビンカアルカロイド、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチンまたはビノレルビン;
・抗腫瘍ヌクレオシド誘導体、例えば、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、ゲムシタビン、ゲムシタビンhcl、カペシタビン、クラドリビン、フルダラビン、ネララビン;・アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタードまたはニトロソ尿素、例えば、シクロホスファミド、クロラムブシル、カルムスチン、チオテパ、メファラン(メルファラン)、ロムスチン、アルトレタミン、ブスルファン、ダカルバジン、エストラムスチン、イフォスファミド(場合によりメスナと組み合わせてもよい)、ピポブロマン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、テロゾロミド、ウラシル;
・抗腫瘍アントラサイクリン誘導体、例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン(場合によりデクスラゾキサンと組み合わせてもよい)、ドキシル、イダルビシン、ミトキサントロン、エピルビシン、エピルビシンhcl、バルルビシン;
・テトラカルシン(tetracarcin)誘導体、例えば、テトラカルシン(tetracarcin)A;
・グルココルチコイド、例えば、プレドニゾン;
・抗体、例えば、トラスツズマブ(HER2抗体)、リツキシマブ(CD20抗体)、ゲムツズマブ、ゲムツズマブ・オゾガマイシン、セツキシマブ、ペルツズマブ、ベバシズマブ、アレムツズマブ、エクリズマブ、イブリツモマブ・チウキセタン、ノフェツモマブ、パニツムマブ、トシツモマブ、CNTO328;
・エストロゲン受容体拮抗薬または選択的エストロゲン受容体調節薬またはエストロゲン合成阻害剤、例えば、タモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ドロロキシフェン、ファスロデックス、ラロキシフェンまたはレトロゾール;
・アロマターゼ阻害剤、例えば、エキセメスタン、アナストロゾール、レトラゾール、テストラクトンおよびボロゾール;
・分化剤、例えば、レチノイド、ビタミンDまたはレチノイン酸およびレチノイン酸代謝遮断剤(RAMBA)、例えば、アキュテイン;
・DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、アザシチジンまたはデシタビン;
・葉酸拮抗剤、例えば、プレメトレキセド(premetrexed)二ナトリウム;
・抗生物質、例えば、アンチノマイシン(antinomycin)D、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ダクチノマイシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、レバミゾール、プリカマイシン、ミトラマイシン;
・代謝拮抗物質、例えば、クロファラビン、アミノプテリン、シトシンアラビノシドまたはメトトレキサート、アザシチジン、シタラビン、フロクスウリジン、ペントスタチン、チオグアニン;
・アポトーシス誘発剤および抗血管新生剤、例えば、Bcl-2阻害剤、例えば、YC 137、BH 312、ABT 737、ゴシポール、HA 14-1、TW 37またはデカン酸;
・チューブリン結合剤、例えば、コンブレスタチン、コルヒチンまたはノコダゾール;
・キナーゼ阻害剤(例えば、EGFR(上皮増殖因子受容体)阻害剤、MTKI(マルチターゲットキナーゼ阻害剤)、mTOR阻害剤)、例えば、フラボペリドール(flavoperidol)、メシル酸イマチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ダサチニブ、ラパチニブ、二トシル酸ラパチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、マレイン酸スニチニブ、テムシロリムス;
・ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、チピファルニブ;
・ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、例えば、酪酸ナトリウム、ヒドロキサミン酸サブエロイルアニリド(SAHA)、デプシペプチド(FR 901228)、NVP-LAQ824、R306465、JNJ-26481585、トリコスタチンA、ボリノスタット;
・ユビキチン-プロテアソーム経路阻害剤、例えば、PS-341、MLN.41またはボルテゾミブ;
・ヨンデリス;
・テロメラーゼ阻害剤、例えば、テロメスタチン;
・マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、例えば、バチマスタット、マリマスタット、プリノスタットまたはメタスタット;
・組換えインターロイキン、例えば、アルデスロイキン、デニロイキンディフチトクス、インターフェロンα2a、インターフェロンα2b、ペグインターフェロンα2b;
・MAPK阻害剤;
・レチノイド、例えば、アリトレチノイン、ベキサロテン、トレチノイン;
・三酸化ヒ素;
・アスパラギナーゼ;
・ステロイド、例えば、プロピオン酸ドロモスタノロン、酢酸メゲストロール、ナンドロロン(デカン酸、フェンプロピオン酸)、デキサメタゾン;
・ゴナドトロピン放出ホルモン拮抗薬または作用薬、例えば、アバレリクス、酢酸ゴセレリン、酢酸ヒストレリン、酢酸ロイプロリド;
・サリドマイド、レナリドマイド;
・メルカプトプリン、ミトタン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペグアスパラガーゼ、ラスブリカーゼ;
・BH3模倣薬、例えば、ABT-737;
・MEK阻害剤、例えば、PD98059、AZD6244、CI-1040;
・コロニー刺激因子類似体、例えば、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、サルグラモスチム;エリスロポエチンまたはその類似体(例えば、ダルベポエチンα);インターロイキン11;オプレルベキン;ゾレドロネート、ゾレンドロン酸;フェンタニル;ビスホスホネート;パリフェルミン;
・ステロイド系シトクロムP450 17α-ヒドロキシラーゼ-17,20-リアーゼ阻害剤(CYP17)、例えば、アビラテロン、酢酸アビラテロン。
【0068】
本発明の組合せまたは医薬組成物はまた、腫瘍細胞を放射線療法および化学療法に増感させる上での治療適用も持つ。
【0069】
従って、本発明の組合せまたは医薬組成物は、「放射線増感剤」および/もしくは「化学療法増感剤」として使用可能であるか、または別の「放射線増感剤」化合物および/もしくは「化学療法増感剤」化合物と組み合わせて投与することもできる。
【0070】
本明細書において用語「放射線増感剤」または「放射線増感剤」化合物は、治療上有効な量で動物に投与される場合に、電磁放射線に対する細胞の感受性を高める、かつ/または電磁放射線で治療可能な疾患の治療を促進する、本発明の組合せもしくは医薬製剤、または分子、好ましくは、低分子量分子と定義される。
【0071】
本明細書において用語「化学療法増感剤」または「化学療法増感剤」化合物は、治療上有効な量で動物に投与される場合に、化学療法に対する細胞の感受性を高める、かつ/または化学療法で治療可能な疾患の治療を促進する、本発明の組合せもしくは医薬製剤、または分子、好ましくは、低分子量分子と定義される。
【0072】
放射線増感剤の作用様式についていくつかの機構が文献で提案されており、これには下記のものが含まれる:低酸素細胞放射線増感剤(例えば、2-ニトロイミダゾール化合物、およびベンゾトリアジンジオキシド化合物)は、酸素を模倣するか、あるいはまた低酸素症下で生物還元剤のように振る舞う;非低酸素細胞放射線増感剤(例えば、ハロゲン化ピリミジン)は、DNA塩基の類似体であり得、癌細胞のDNAに優先的に組み込まれ、それにより、放射線により誘発されるDNA分子の破断を促進し、かつ/または正常なDNA修復機構を妨げる;疾患の治療における放射線増感剤に関して、他の種々の可能性のある作用機構が仮定されている。
【0073】
現行の多くの癌治療プロトコールが、X線照射とともに放射線増感剤を使用している。
X線活性化放射線増感剤の例としては、限定されるものではないが、以下のもの:メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、マイトマイシンC、RSU 1069、SR 4233、EO9、RB 6145、ニコチンアミド、5-ブロモデオキシウリジン(BUdR)、5-ヨードデオキシウリジン(IUdR)、ブロモデオキシシチジン、フルオロデオキシウリジン(FudR)、ヒドロキシ尿素、シスプラチン、ならびにその治療上有効な類似体および誘導体が挙げられる。
【0074】
癌の光線力学療法(PDT)では、増感剤の放射線活性化因子として可視光を用いる。
光力学的放射線増感剤の例としては、限定されるものではないが以下のもの:ヘマトポルフィリン誘導体、フォトフリン、ベンゾポルフィリン誘導体、スズエチオポルフィリン、フェオボルビド-a、バクテリアクロロフィル-a、ナフタロシアニン、フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、ならびにその治療上有効な類似体および誘導体が挙げられる。
【0075】
放射線増感剤は、限定されるものではないが、標的細胞への放射線増感剤の組み込みを促進する化合物;標的細胞への治療薬、栄養素および/または酸素の流入を制御する化合物;さらなる放射線を伴って、または伴わずに腫瘍で働く化学療法薬;または癌もしくは他の疾患を治療するための他の治療上有効な化合物を含む、治療上有効な量の他の1以上の化合物とともに投与することができる。
【0076】
化学療法増感剤は、限定されるものではないが、標的細胞への化学療法増感剤の組み込みを促進する化合物;標的細胞への治療薬、栄養素および/または酸素の流入を制御する化合物;腫瘍で働く化学療法薬;または癌もしくは他の疾患を治療するための他の治療上有効な化合物を含む、治療上有効な量の他の1以上の化合物とともに投与することができる。カルシウム拮抗薬、例えば、ベラパミルは、受け取られた化学療法薬に対して耐性のある腫瘍細胞において化学療法感受性を確立するため、また、薬物感受性悪性腫瘍においてこのような化合物の有効性を増強するために、抗悪性腫瘍薬と組み合わせると有用であることが分かっている。
【0077】
本発明はまた、FGFRにより媒介される障害、特に、癌の治療を目的とする薬剤の製造のための本発明の組合せの使用に関する。
【0078】
本発明はまた、FGFRにより媒介される障害、特に、癌の治療を目的とする薬剤の製造のための本発明の医薬組成物の使用に関する。
【0079】
本発明はまた、本組合せのFGFR阻害剤に対する腫瘍もしくは癌の耐性の防止、または本組合せのFGFR阻害剤に対する腫瘍もしくは癌の耐性の遅延を目的とする薬剤の製造のため本発明の組合せの使用に関する。
【0080】
本発明はまた、本医薬組成物のFGFR阻害剤に対する腫瘍もしくは癌の耐性の防止、または本医薬組成物のFGFR阻害剤に対する腫瘍もしくは癌の耐性の遅延を目的とする薬剤の製造のため本発明の医薬組成物の使用に関する。
【0081】
本発明はまた、本組合せのFGFR阻害剤に対する腫瘍もしくは癌の耐性の出現の防止、または本組合せのFGFR阻害剤に対する腫瘍もしくは癌の耐性の出現の遅延を目的とする薬剤の製造のため本発明の組合せの使用に関する。
【0082】
本発明はまた、本医薬組成物のFGFR阻害剤に対する腫瘍もしくは癌の耐性の出現の防止、または本医薬組成物のFGFR阻害剤に対する腫瘍もしくは癌の耐性の出現の遅延を目的とする薬剤の製造のため本発明の医薬組成物の使用に関する。
【0083】
本発明はまたMetシグナル伝達経路の活性化がFGFR阻害剤に対する腫瘍または癌の耐性の機構である腫瘍または癌の予防または治療、特に、治療を目的とする薬剤の製造のための本発明の組合せの使用に関する。
【0084】
本発明はまたMetシグナル伝達経路の活性化がFGFR阻害剤に対する腫瘍または癌の耐性の機構である腫瘍または癌の予防または治療、特に、治療を目的とする薬剤の製造のための本発明の医薬組成物の使用に関する。
【0085】
本発明はまた、FGFR阻害剤、特に、本明細書に記載のFGFR阻害剤に対する腫瘍または癌の耐性の防止、耐性の遅延、耐性の出現の防止または耐性の出願の遅延のための、cMet阻害剤、特に、本明細書に記載のcMet阻害剤、より特には、化合物Cまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、および化合物Dまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物の使用に関する。
【0086】
本発明はまた、FGFRキナーゼに媒介され、かつ、高Met発現を有する腫瘍または癌の予防または治療、特に、治療を目的とする薬剤の製造のための本発明の組合せの使用に関する。
【0087】
本発明はまた、FGFRキナーゼに媒介され、かつ、高Met発現を有する腫瘍または癌の予防または治療、特に、治療を目的とする薬剤の製造のための本発明の医薬組成物の使用に関する。
【0088】
本発明の組合せまたは医薬組成物の化合物の塩形態は一般に薬学的に許容可能な塩であり、薬学的に許容可能な塩の例はBerge et al. (1977) "Pharmaceutically Acceptable Salts," J.Pharm. Sci., Vol. 66, 1-19頁に記載されている。しかしながら、薬学的に許容可能なものではない塩が中間体形態として製造されてもよく、これらの中間体形態はその後、薬学的に許容可能な塩に変換することができる。例えば、本発明の化合物の精製または分離に有用であり得るこのような薬学的に許容可能なものではない塩形態も、本発明の一部をなす。
【0089】
本発明の塩は、Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, P. Heinrich Stahl (編), Camille G. Wermuth (編), ISBN: 3-90639-026-8, Hardcover, 388頁, 2002年8月に記載されている方法などの通常の化学法により、塩基性部分または酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸型または遊離塩基型を、水中または有機溶媒中、または両者の混合物中で適当な塩基または酸と反応させることにより製造することができ、一般には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が用いられる。本発明の化合物は、塩が形成される酸のpKaに応じて一塩または二塩として存在し得る。
【0090】
酸付加塩は、無機および有機双方の多様な酸で形成できる。酸付加塩の例としては、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、酪酸、(+)樟脳酸、カンファー-スルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-二スルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D-グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L-グルタミン酸)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、イセチオン酸、乳酸(例えば、(+)-L-乳酸、(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸(例えば、ナフタレン-2-スルホン酸)、ナフタレン-1,5-二スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、L-ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、トルエンスルホン酸(例えば、p-トルエンスルホン酸)、ウンデシレン酸および吉草酸からなる群から選択される酸、ならびにアシル化アミノ酸および陽イオン交換樹脂により形成される塩が挙げられる。
【0091】
塩の1つの特定の群は、酢酸、塩酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、イセチオン酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸(メシル酸)、エタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、吉草酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、マロン酸、グルクロン酸およびラクトビオン酸から形成される塩からなる。酸付加塩の別の群としては、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、クエン酸、DL-乳酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、馬尿酸、塩酸、グルタミン酸、DL-リンゴ酸、メタンスルホン酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸および酒石酸から形成される塩を含む。
【0092】
化合物が陰イオン性であるか、または陰イオン性となり得る官能基を有する場合には、塩は、適切な陽イオンを伴って形成できる。適切な無機陽イオンの例としては、限定されるものではないが、NaおよびKなどのアルカリ金属イオン、Ca2+およびMg2+などのアルカリ土類金属陽イオン、ならびにAl3+などの他の陽イオンが挙げられる。適切な有機陽イオンの例としては、限定されるものではないが、アンモニウムイオン(すなわち、NH )および置換アンモニウムイオン(例えば、NH、NH 、NHR 、NR )が挙げられる。
【0093】
いくつかの適切な置換アンモニウムイオンの例としては、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミンおよびトロメタミン、ならびにリジンおよびアルギニンなどのアミノ酸に由来するものが挙げられる。一般的な第四級アンモニウムイオンの一例として、N(CH が挙げられる。
【0094】
一つの実施態様では、本発明の組合せまたは医薬組成物のFGFR阻害剤またはcMet阻害剤の薬学的に許容可能な塩は酸付加塩である。
【0095】
一つの実施態様では、本発明の組合せまたは医薬組成物は、以上の発明の背景の節に記載される化合物A、化合物Bまたは化合物Cの塩を含んでなる。
【0096】
一つの実施態様では、本発明の組合せまたは医薬組成物は、FGFR阻害剤を遊離塩形態で含んでなる。
【0097】
一つの実施態様では、本発明の組合せまたは医薬組成物は、cMet阻害剤を遊離塩形態で含んでなる。
【0098】
一つの実施態様では、本発明の組合せまたは医薬組成物は、FGFR阻害剤およびcMet阻害剤を遊離塩形態で含んでなる。
【0099】
本発明の化合物は、例えば水との溶媒和物(すなわち、水和物)または一般的な有機溶媒との溶媒和物を形成し得る。本明細書において、用語「溶媒和物」は、本発明の化合物と1以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合は、様々な程度のイオン結合および共有結合(水素結合を含む)を含む。ある特定の例では、溶媒和物は、例えば1以上の溶媒分子が結晶固体の結晶格子に組み込まれた場合に単離可能となる。用語「溶媒和物」には、液相および単離可能な溶媒和物の両方を包含するものとする。適切な溶媒和物の限定されない例としては、本発明の化合物と水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸またはエタノールアミンなどの組合せが挙げられる。本発明の化合物は、溶液中にある場合にそれらの生物学的効果を示し得る。本発明の組合せまたは医薬組成物の化合物の薬学的に許容可能な塩の溶媒和物もまた、「溶媒和物」という用語に包含される。
【0100】
溶媒和物は製薬化学において周知である。溶媒和物は物質の製造方法(例えば、それらの精製、その物質の貯蔵(例えば、その安定性)およびその物質の取り扱いの容易さ)にとって重要となり得、化学合成の単離または精製工程の一部として形成される場合が多い。当業者ならば、ある化合物を製造するために使用される単離条件または精製条件によって水和物が形成されたか他の溶媒和物が形成されたかを、標準的かつ長く使用されている技術によって決定することができる。このような技術の例としては、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)、X線結晶学(例えば、単結晶X線結晶学またはX線粉末回折)および固体NMR(SS-NMR、Magic Angle Spinning
NMRまたはMAS-NMRとしても知られる)が挙げられる。このような技術は、NMR、IR、HPLCおよびMSと同様に、熟練の化学者の標準点分析ツールキットの一部となっている。あるいは、当業者ならば、特定の溶媒和物に必要とされる溶媒の量を含む結晶化条件を用いて、溶媒和物を計画的に形成することができる。その後、上記の標準的方法を用いて、どの溶媒和物が形成されたか確認することができる。本明細書に記載の化合物にはまた、これらの化合物の任意の錯体(例えば、シクロデキストリンなどの化合物との包接錯体もしくは包接体、または金属との錯体)が包含される。
【0101】
さらに、本発明の組合せまたは医薬組成物の化合物は、1以上の多型(結晶性)または非晶質形態を持つ場合があり、それら自体、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0102】
一つの実施態様では、本発明の組合せまたは医薬組成物は、以上の発明の背景の節に記載される化合物Cの多形体または溶媒和物を含んでなる。
【0103】
本明細書において、キナーゼの活性に適用される用語「調節」は、タンパク質キナーゼの生物活性のレベルにおける変化を定義することを意図している。従って、調節には、関連するタンパク質キナーゼ活性の増強または低下を果たす生理学的変化が包含される。後者の場合、調節は、「阻害」と記載することができる。調節は、直接的に起こっても間接的に起こってもよく、任意の機構により、例えば、遺伝子発現のレベル(例えば、転写、翻訳および/または翻訳後修飾を含む)、キナーゼ活性のレベルで直接的または間接的に作用する調節エレメントをコードする遺伝子の発現レベルを含む、任意の生理学的レベルで媒介されてよい。従って、調節は、遺伝子増幅(すなわち、複数の遺伝子コピー)を含むキナーゼの発現の上昇/抑制、または過剰発現もしくは過少発現、および/または転写作用による発現の増強または低下、ならびに突然変異によるタンパク質キナーゼの過剰(もしくは過少)活性および(非)活性化((非)活性化を含む)を意味する場合がある。
用語「調節された」、「調節している」、および「調節する」も、相応に解釈されるべきである。
【0104】
本明細書において、例えば本明細書に記載されるキナーゼと組み合わせて用いられる(および、例えば様々な生理学的プロセス、疾患、状態、病態、療法、治療または介入に適用される)、用語「媒介される」とは、この用語が適用される様々なプロセス、疾患、状態、病態、治療および介入が、キナーゼが生物学的役割を果たすものである場合に限定して用いられることを意図している。この用語が、疾患、状態または病態に適用される場合、キナーゼが果たす生物学的役割は、直接的であってもまたは間接的であってもよく、その疾患、状態または病態の症状の顕在化(またはその病因もしくは進行)に必要および/または十分なものであり得る。従って、キナーゼ活性(特に、異常なレベルのキナーゼ活性、例えばキナーゼ過剰発現)は必ずしも疾患、状態または病態の基本的な原因である必要はなく、むしろ、キナーゼにより媒介される疾患、状態または病態には、問題のキナーゼが部分的に関与するだけである多因子性の病因および複雑な進行を有するものを含むことが意図される。この用語が、治療、予防または介入に適用される場合、キナーゼが果たす役割は、直接的であってもまたは間接的であってもよく、治療、予防の実施、または介入の転帰に必要および/または十分なものであり得る。従って、キナーゼにより媒介される疾患状態または病態には、任意の特定の抗癌剤または治療に対する耐性の発達を含む。
【0105】
従って、例えば、本発明の化合物は、癌の緩和またはその罹患率の軽減に有用であり得る。
【0106】
本組合せおよび医薬組成物のFGFR阻害剤は、FGFR1、FGFR2、FGFR3、および/またはFGFR4に対して、特に、FGFR1、FGFR2、FGFR3およびFGFR4に対して活性を有する。
【0107】
FGFRを調節または阻害するその活性の結果として、本発明の組合せまたは医薬組成物は、特に血管新生を阻害することによって、新生物の成長を妨げるかまたはアポトーシスを誘発する手段を提供する上で有用となる。従って、本発明の組合せまたは医薬組成物は、癌などの増殖性障害の治療または予防に有用となると考えられる。さらに、本発明の組合せまたは医薬組成物は、増殖、アポトーシスまたは分化の障害がある疾患の治療に有用となり得る。
【0108】
本発明の組合せまたは医薬組成物により治療(または阻害)され得る癌の例としては、限定されるものではないが、癌腫、例えば、膀胱癌、乳癌、結腸癌(例えば、結腸腺癌および結腸腺腫などの結腸直腸癌)、腎臓癌、尿路上皮癌、子宮癌、表皮癌、肝臓癌、肺癌、(例えば、腺癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、扁平上皮肺癌)、食道癌、頭頚部癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、膵外分泌癌)、胃癌、消化管癌(胃癌(gastric)としても知られる)(例えば、消化管間質腫瘍)、子宮頚癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、前立腺癌、または皮膚癌(例えば、扁平上皮癌または隆起性皮膚線維肉腫);下垂体癌;リンパ細胞系列の造血系腫瘍、例えば、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫(例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫、またはバーキットリンパ腫;骨髄細胞系列の造血系腫瘍、例えば、白血病、急性および慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、骨髄増殖性障害、骨髄増殖性症候群、骨髄異形成症候群、または前骨髄球性白血病;多発性骨髄腫;甲状腺濾胞癌;間葉系由来腫瘍(例えば、ユーイング肉腫)、例えば、線維肉腫または横紋筋肉腫;中枢または末梢神経系腫瘍、例えば、星状細胞腫、神経芽腫、神経膠腫(例えば、多形性膠芽腫)またはシュワン腫;黒色腫;精上皮腫;奇形癌;骨肉腫;色素性乾皮症;角化棘細胞腫;甲状腺濾胞癌;またはカポジ肉腫が挙げられる。特に、扁平上皮肺癌、乳癌、結腸直腸癌、膠芽腫、星状細胞腫、前立腺癌、小細胞肺癌、黒色腫、頭頚部癌、甲状腺癌、子宮癌、胃癌、肝細胞癌、子宮頚癌、多発性骨髄腫、膀胱癌、子宮内膜癌、尿路上皮癌、結腸癌、横紋筋肉腫、下垂体癌。
【0109】
治療(または阻害)され得る癌の例としては、限定されるものではないが、膀胱癌、尿路上皮癌、転移性尿路上皮癌、外科摘出不能尿路上皮癌、乳癌、膠芽腫、肺癌、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌、肺の腺癌、肺腺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、軟組織肉腫、頭頸部扁平上皮癌、胃癌、食道癌、食道の扁平上皮癌、食道の腺癌、胆管癌、肝細胞癌が挙げられる。
【0110】
特定の癌は、特定の薬物による治療に対して耐性を有する。これは、腫瘍の種類に起因する場合もあり、または化合物による治療に起因して生じる場合もある。この点において、多発性骨髄腫という場合には、ボルテゾミブ感受性多発性骨髄腫または不応性多発性骨髄腫が含まれる。同様に、慢性骨髄性白血病という場合には、イミタニブ(imitanib)感受性慢性骨髄性白血病および不応性慢性骨髄性白血病が含まれる。慢性骨髄性白血病は、慢性骨髄球性白血病、慢性顆粒球性白血病、またはCMLとしても知られる。同様に、急性骨髄性白血病は、急性骨髄芽球性白血病、急性顆粒球性白血病、急性非リンパ球性白血病、またはAMLとも称される。
【0111】
本発明の組合せまたは医薬組成物はまた、骨髄増殖性疾患など、前悪性であっても安定型であっても、異常細胞増殖の造血系疾患の治療にも用いることができる。骨髄増殖性疾患(「MPD」)とは、細胞が過剰に産生される骨髄の疾患群である。それらは、骨髄異形成症候群と関連しており、それへ進行する場合がある。骨髄増殖性疾患としては、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、および原発性骨髄線維症が挙げられる。さらなる血液性障害としては、好酸球増加症候群がある。T細胞リンパ増殖性疾患としては、ナチュラルキラー細胞に由来するものが含まれる。
【0112】
加えて、本発明の組合せまたは医薬組成物は、消化管癌(胃癌としても知られる)、例えば、消化管間質腫瘍を治療するために使用することもできる。消化管癌は、食道、胃、肝臓、胆管系、膵臓、腸、および肛門を含む消化管の悪性病態を意味する。
【0113】
従って、異常な細胞成長を含む疾患または病態を治療するための本発明の組合せ、医薬組成物、使用、または方法において、一つの実施態様では、異常な細胞成長を含む疾患または病態は癌である。
【0114】
癌の特定のサブセットには、多発性骨髄腫、膀胱癌、子宮頚癌、前立腺癌、および甲状腺癌、肺癌、乳癌、および結腸癌が含まれる。
【0115】
癌のさらなるサブセットには、多発性骨髄腫、膀胱癌、肝細胞癌、口腔扁平上皮癌、および子宮頚癌が含まれる。
【0116】
癌のさらなるサブセットには、膀胱癌、肺癌、乳癌、胃癌、肝細胞癌、結腸癌、造血系悪性腫瘍、卵巣癌、膠芽腫が含まれる。
【0117】
癌のさらなるサブセットには、膀胱癌、肺癌、乳癌、胃癌および肝細胞癌が含まれる。
【0118】
FGFR1などのFGFR阻害活性を有する本発明の組合せまたは医薬組成物は、乳癌、特に古典的小葉癌(CLC)の治療または予防に特に有用であり得る。
【0119】
本発明の組合せまたは医薬組成物はFGFR4活性を有するので、それらは前立腺癌または下垂体癌の治療にも有用であり、それらは乳癌、肺癌、前立腺癌、肝臓癌(HCC)または肺癌の治療に有用である。
【0120】
特に、FGFR阻害剤を含んでなる本発明の組合せまたは医薬組成物は、多発性骨髄腫、骨髄増殖性障害、子宮内膜癌、前立腺癌、膀胱癌、肺癌、卵巣癌、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、および口腔扁平上皮癌の治療に有用である。
【0121】
癌のさらなるサブセットは、多発性骨髄腫、子宮内膜癌、膀胱癌、子宮頚癌、前立腺癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、および甲状腺癌である。
【0122】
特に、本発明の組合せまたは医薬組成物は、多発性骨髄腫(特に、t(4;14)転座を有するかまたはFGFR3を過剰発現する多発性骨髄腫)、前立腺癌(ホルモン不応性前立腺癌)、子宮内膜癌(特に、FGFR2における活性化突然変異を有する子宮内膜腫瘍)、および乳癌(特に、小葉乳癌)の治療に有用である。
【0123】
特に、本発明の組合せまたは医薬組成物は、CLC(古典的小葉癌)などの小葉癌の治療に有用である。
【0124】
本発明の組合せまたは医薬組成物はFGFR3に対して活性を有するので、それらは、多発性骨髄腫および膀胱癌の治療に有用である。
【0125】
特に、本化合物は、FGFR3-TACC3転座を有する腫瘍、特に、FGFR3-TACC3転座を有する膀胱または脳腫瘍に対して活性を有する。
【0126】
特に、本発明の組合せまたは医薬組成物は、t(4;14)転座陽性多発性骨髄腫の治療に有用である。
【0127】
一つの実施態様では、本発明の組合せまたは医薬組成物は、肉腫の治療に有用であり得る。一つの実施態様では、本発明の組合せまたは医薬組成物は、肺癌、例えば、扁平上皮癌の治療に有用であり得る。
【0128】
本発明の組合せまたは医薬組成物は、FGFR2に対して活性を有するので、それらは、子宮内膜癌、卵巣癌、胃癌、肝細胞癌、子宮癌、子宮頚癌および結腸直腸癌の治療に有用である。FGFR2はまた、上皮卵巣癌でも過剰発現されるので、本発明の組合せまたは医薬組成物は、上皮卵巣癌などの卵巣癌の治療に特に有用であり得る。
【0129】
一つの実施態様では、本発明の組合せまたは医薬組成物は、肺癌、特に、NSCLC(非小細胞肺癌)、扁平上皮癌、肝臓癌、腎臓癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、前立腺癌の治療に有用であり得る。
【0130】
本発明の組合せまたは医薬組成物はまた、VEGFR2阻害剤またはVEGFR2抗体(例えば、アバスチン)で前処置された腫瘍の治療にも有用であり得る。
【0131】
特に、本発明の組合せまたは医薬組成物は、VEGFR2耐性腫瘍の治療に有用であり得る。VEGFR2阻害剤および抗体は、甲状腺癌および腎細胞癌の治療に用いられ、従って、本発明の組合せまたは医薬組成物は、VEGFR2耐性甲状腺癌および腎細胞癌の治療に有用であり得る。
【0132】
癌は、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4から選択されるいずれか1以上のFGFR、例えば、FGFR1、FGFR2またはFGFR3から選択される1以上のFGFRの阻害に感受性のある癌であり得る。
【0133】
特定の癌がFGFRシグナル伝達の阻害に感受性があるものかどうかは、下記で示す細胞成長アッセイによって、または「診断方法」の表題の節で示す方法によって判断することができる。
【0134】
本発明の化合物、および特にFGFRまたは阻害活性を有する化合物は、高レベルのFGFRの存在と関連するか、またはそれを特徴とするタイプの癌、例えば、この意味において本出願の導入の節に挙げた癌、の治療または予防に特に有用であり得る。
【0135】
本発明の組合せまたは医薬組成物は成人集団の治療に有用であり得る。本発明の組合せまたは医薬組成物は、小児集団の治療にも有用であり得る。
【0136】
本発明の組合せまたは医薬組成物は、II型または非インスリン依存性真性糖尿病、自己免疫疾患、頭部外傷、脳卒中、癲癇、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、運動ニューロン疾患、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症およびピック病)、例えば、自己免疫疾患および神経変性疾患などの増殖の障害に起因するその他の病態の治療に有用であり得る。
【0137】
本発明の組合せまたは医薬組成物が有用であり得る疾患状態および病態の1つのサブグループは、炎症性疾患、心血管疾患および創傷治癒からなる。
【0138】
FGFRはまた、アポトーシス、血管新生、増殖、分化、および転写において役割を果たしていることも知られており、従って、本発明の化合物、組合せ、医薬組成物はまた、癌以外の下記疾患:慢性炎症性疾患、例えば、全身性紅斑性狼瘡、自己免疫介在性糸球体腎炎、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患、自己免疫性真性糖尿病、湿疹性過敏反応、喘息、COPD、鼻炎、および上気道疾患;心血管疾患、例えば、心肥大、再狭窄、アテローム性動脈硬化症;神経変性障害、例えば、アルツハイマー病、エイズ関連認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎、脊髄性筋萎縮症、および小脳変性症;糸球体腎炎;骨髄異形成症候群、虚血傷害関連心筋梗塞、脳卒中、および再潅流傷害、不整脈、アテローム性動脈硬化症、毒素誘発性またはアルコール関連肝疾患、血液疾患、例えば、慢性貧血および再生不良性貧血;筋骨格系の変性疾患、例えば、骨粗鬆症および関節炎;アスピリン感受性副鼻腔炎、嚢胞性線維症、多発性硬化症、腎臓疾患、ならびに癌性疼痛の治療にも有用であり得る。
【0139】
加えて、FGFR2の突然変異は、ヒト骨格発達におけるいくつかの重度な異常と関連しており、従って、本発明の化合物は、異常な頭蓋縫合骨化(頭蓋骨癒合症)、アぺール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン-ワイス症候群、ベーレ-スチーブンソン脳回状頭皮症候群、およびプファイファー症候群を含む、ヒト骨格発達における異常の治療に有用であり得る。
【0140】
FGFR2またはFGFR3などのFGFR阻害活性を有する本発明の組合せまたは医薬組成物は、骨格疾患の治療または予防に特に有用であり得る。特定の骨格疾患としては、軟骨形成不全または致死性小人症(致死性骨異形成症としても知られる)がある。
【0141】
FGFR1、FGFR2、またはFGFR3などのFGFR阻害活性を有する本発明の組合せまたは医薬組成物は、進行性線維症が症状である病態における治療または予防に特に有用であり得る。本発明の化合物が治療に有用であり得る線維症の病態としては、線維組織の異常なまたは過剰な沈着を示す疾患、例えば、肝硬変、糸球体腎炎、肺線維症、全身性線維症、関節リウマチ、ならびに創傷治癒の自然プロセスが挙げられる。特に、本発明の化合物、組合せ、医薬組成物は、肺線維症、特に、特発性肺線維症の治療にも有用であり得る。
【0142】
腫瘍関連血管構造におけるFGFRの過剰発現および活性化はまた、腫瘍血管新生の開始を予防および妨害する上での本発明の組合せまたは医薬組成物の役割も示唆している。
特に、本発明の組合せまたは医薬組成物は、癌、転移、CLLなどの白血病、加齢性黄斑変性、特に、滲出型の加齢性黄斑変性などの眼疾患、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症などの虚血性増殖性網膜症、関節リウマチ、ならびに血管腫の治療に有用であり得る。
【0143】
一つの実施態様では、治療に使用される、薬剤として使用される本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物が提供される。さらなる実施態様では、FGFRキナーゼにより媒介される疾患状態または病態の予防または治療、特に治療、に使用される本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物が提供される。
【0144】
従って、例えば、本発明の組合せまたは医薬組成物は、癌の緩和またはその罹患率の軽減に有用であり得る。従って、さらなる実施態様では、癌の予防または治療、特に治療に使用される本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物が提供される。一つの実施態様では、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物は、FGFR非依存性癌の予防または治療において使用するためのものである。一つの実施態様では、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物は、FGFRキナーゼにより媒介される癌予防または治療において使用するためのものである。
【0145】
従って、本発明は、とりわけ、下記のものを提供する。
・FGFRキナーゼにより媒介される疾患状態または病態の予防または治療のための方法であって、それを必要とする被験体に、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【0146】
・本明細書に記載される疾患状態または病態の予防または治療のための方法であって、それを必要とする被験体に、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【0147】
・癌の予防または治療のための方法であって、それを必要とする被験体に、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【0148】
・FGFRキナーゼにより媒介される疾患状態または病態を緩和する、またはその罹患率を軽減するための方法であって、それを必要とする被験体に、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【0149】
・FGFRキナーゼを阻害する方法であって、該キナーゼを本明細書に定義されるキナーゼ阻害組合せまたは医薬組成物の化合物と接触させることを含んでなる方法。
【0150】
・本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物を用いてFGFRキナーゼの活性を阻害することにより細胞プロセス(例えば、細胞分裂)を調節する方法。
【0151】
・FGFRキナーゼの活性を阻害することにより、細胞プロセス(例えば、細胞分裂)のモジュレーターとして使用するための本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物の化合物。
【0152】
・癌の予防または治療、特に、癌の治療において使用するための、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物。
【0153】
・FGFRのモジュレーター(例えば、阻害剤)として使用するための、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物。
【0154】
・FGFRキナーゼにより媒介される疾患状態または病態の予防または治療を目的とする薬剤の製造のための、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物の使用。
【0155】
・本明細書に記載される疾患状態または病態の予防または治療を目的とする薬剤の製造のための、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物の使用。
【0156】
・癌の予防または治療、特に、治療を目的とする薬剤の製造のための、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物の使用。
【0157】
・FGFRの活性を調節する(例えば、阻害する)ことを目的とする薬剤の製造のための、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物の使用。
【0158】
・FGFRキナーゼの活性を阻害することにより、細胞プロセス(例えば、細胞分裂)を調節するための薬剤の製造における、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物の使用。
【0159】
・FGFRキナーゼ(例えば、FGFR1またはFGFR2またはFGFR3またはFGFR4)のアップレギュレーションを特徴とする疾患または病態の予防または治療を目的とする薬剤の製造のための、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物の使用。
【0160】
・癌の予防または治療を目的とする薬剤の製造のための、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物の使用(該癌はFGFRキナーゼ(例えば、FGFR1またはFGFR2またはFGFR3またはFGFR4)のアップレギュレーションを特徴とするものである)。
【0161】
・FGFR3キナーゼの遺伝子異常を有する部分集団から選択される患者における癌の予防または治療を目的とする薬剤の製造のための、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物の使用。
【0162】
・FGFR3キナーゼの遺伝子異常、特に、FGFR3-TACC3転座を有する部分集団の一部を形成すると診断された患者における癌、より特には、FGFR3-TACC3転座を有する膀胱癌の予防または治療を目的とする薬剤の製造のための、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物の使用。
【0163】
・FGFRキナーゼ(例えば、FGFR1またはFGFR2またはFGFR3またはFGFR4)のアップレギュレーションを特徴とする疾患または病態の予防または治療のための方法であって、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【0164】
・FGFRキナーゼ(例えば、FGFR1またはFGFR2またはFGFR3またはFGFR4)のアップレギュレーションを特徴とする疾患または病態を緩和する、またはその罹患率を軽減するための方法であって、本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【0165】
・癌に罹患している、または罹患が疑われる患者における癌の予防または治療(またはその緩和もしくはその罹患率の軽減)のための方法であって、(i)患者に対して、その患者がFGFR3遺伝子の遺伝子異常、特に、FGFR3-TACC3転座、より特には、FGFR3-TACC3転座を有する膀胱癌を有するかどうかを判定するための診断試験を行うこと;および(ii)前記患者が前記変異体を有する場合に、その後、前記患者に、FGFR3キナーゼ阻害活性を有する本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【0166】
・FGFRキナーゼ(例えば、FGFR1またはFGFR2またはFGFR3またはFGFR4)のアップレギュレーションを特徴とする疾患状態または病態の予防または治療(またはその緩和もしくはその罹患率の軽減)のための方法であって、(i)患者に対して、FGFRキナーゼ(例えば、FGFR1またはFGFR2またはFGFR3またはFGFR4)のアップレギュレーションに特徴的なマーカーを検出するための診断試験を行うこと、および(ii)前記診断試験がFGFRキナーゼのアップレギュレーションを示す場合に、その後、前記患者に、FGFRキナーゼ阻害活性を有する本明細書に定義される組合せまたは医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【0167】
一つの実施態様では、FGFRキナーゼにより媒介される疾患は、腫瘍学関連疾患(例えば、癌)である。一つの実施態様では、FGFRキナーゼにより媒介される疾患は、非腫瘍学関連疾患(例えば、癌以外の本明細書で開示されるいずれかの疾患)である。一つの実施態様では、FGFRキナーゼにより媒介される疾患は、本明細書に記載される病態である。一つの実施態様では、FGFRキナーゼにより媒介される疾患は、本明細書に記載される骨格の病態である。ヒトの骨格発達における特定の異常としては、異常な頭蓋縫合骨化(頭蓋骨癒合症)、アぺール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン-ワイス症候群、ベーレ-スチーブンソン脳回状頭皮症候群、およびプファイファー症候群、軟骨形成不全および致死性小人症(致死性骨異形成症としても知られる)が挙げられる。
【0168】
変異型キナーゼ
薬剤耐性キナーゼ突然変異が、キナーゼ阻害剤で治療された患者集団で発生する場合がある。これらは、一部、療法で用いられた特定の阻害剤と結合または相互作用するタンパク質の領域で発生する。このような突然変異は、問題のキナーゼと結合し、これを阻害する阻害剤の能力を低下または増大させる。これは、阻害剤と相互作用するか、または標的への前記阻害剤の結合を補助するのに重要なアミノ酸残基のいずれにおいても発生し得る。変異型アミノ酸残基との相互作用を必要とせずに標的キナーゼと結合する阻害剤は、突然変異によって影響を受けない可能性が高く、その酵素の効果的な阻害剤のままで維持されることになる。
【0169】
胃癌患者のサンプルの研究によれば、FGFR2に2つの突然変異、すなわち、エキソンIIIaにおけるSer167ProおよびエキソンIIIcにおけるスプライス部位変異940-2A-Gが存在することが示された。これらの突然変異は、頭蓋骨癒合症候群を引き起こす生殖細胞系列活性化突然変異と同一であり、供試原発性胃癌組織の13%で観察された。さらに、FGFR3における活性化突然変異は、供試患者サンプルの5%で観察され、FGFRの過剰発現は、この患者群における予後不良との相関が見られた。
【0170】
さらに、機能獲得型、過剰発現型、または構成的に活性な生物学的状態を生じる、FGFRで観察された染色体転座または点突然変異が存在する。
【0171】
従って、本発明の化合物、組合せまたは医薬組成物は、FGFRなどの変異型分子標的を発現する癌に関して適用が見出せる。このような突然変異を有する腫瘍の診断は、RTPCRおよびFISHなどの当業者に公知であり、本明細書に記載される技術を用いて実施することができる。
【0172】
FGFRのATP結合部位における、保存されているスレオニン残基の突然変異は、阻害剤耐性をもたらすことが示唆されている。FGFR1において、アミノ酸バリン561はメチオニンに変異しているが、これは、選択的阻害剤に対する耐性を付与することが示されているAbl(T315)およびEGFR(T766)で見られる、これまでに報告された突然変異に相当する。FGFR1 V561Mに関するアッセイデータによれば、この突然変異が、野生型の場合と比較してチロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性を付与したことが示された。
【0173】
診断方法
本明細書に記載の組合せまたは医薬組成物の投与前に、患者が罹患している、または罹患している可能性のある疾患または病態が、FGFRに対して活性を有する化合物での治療に感受性があるものかどうかを判定するために患者をスクリーニングすることができる。
【0174】
例えば、患者から採取した生体サンプルを分析し、その患者が罹患している、または罹患している可能性のある癌などの病態または疾患が、FGFRのレベルまたは活性のアップレギュレーション、あるいは正常なFGFR活性へ向かう経路の増感、あるいは増殖因子リガンドレベルまたは増殖因子リガンド活性などの、これらの増殖因子シグナル伝達経路のアップレギュレーション、あるいはFGFR活性化の下流の生化学経路のアップレギュレーションをもたらす、遺伝子異常または異常なタンパク質発現を特徴とするものかどうかを判定することができる。
【0175】
FGFRシグナルの活性化または増感をもたらすこのような異常の例としては、アポトーシス経路の欠損もしくは阻害、受容体もしくはリガンドのアップレギュレーション、または受容体もしくはリガンドの突然変異体、例えば、PTK変異体の存在が挙げられる。
FGFR1、FGFR2もしくはFGFR3もしくはFGFR4の突然変異体、またはFGFR1のアップレギュレーション、特に、過剰発現、またはFGFR2もしくはFGFR3の機能獲得型突然変異体を有する腫瘍は、FGFR阻害剤に対して特に感受性があり得る。
【0176】
例えば、機能獲得を生じるFGFR2における点突然変異がいくつかの病態で同定されている。特に、FGFR2における活性化突然変異は、子宮内膜腫瘍の10%で同定されている。
【0177】
さらに、異所発現されるかまたは調節解除された構成的に活性なFGFR3受容体をもたらす染色体転座または点突然変異などのFGFR3受容体チロシンキナーゼの遺伝子異常が同定され、多発性骨髄腫、膀胱癌および子宮頚癌のサブセットに関連づけられている。PDGF受容体の特定の突然変異T674Iが、イマチニブ処置患者で同定されている。さらに、8p12-p11.2の遺伝子増幅が小葉乳癌(CLC)症例の約50%で示され、これはFGFR1の発現の増強と関連していることが示された。FGFR1に対して向けられたsiRNAまたは前記受容体の小分子阻害剤を用いた予備研究から、この増幅を有する細胞株がこのシグナル伝達経路の阻害に特に感受性を持つことが示された。
【0178】
あるいは、患者から採取した生体サンプルを、FGFRの負のレギュレーターまたはサプレッサーが欠損しているかどうか分析してもよい。これに関して、用語「欠損」とは、レギュレーターまたはサプレッサーをコードする遺伝子の欠失、その遺伝子の末端切断(例えば、突然変異による)、その遺伝子の転写産物の末端切断、またはその転写産物の不活性化(例えば、点突然変異による)または別の遺伝子産物による隔離を包含する。
【0179】
用語アップレギュレーションには、発現増強または過剰発現(遺伝子増幅(すなわち、多重遺伝子コピー)および転写効果による発現増強を含む)、ならびに活性亢進および活性化(突然変異による活性化を含む)が含まれる。よって、患者に、FGFRのアップレギュレーションに特徴的なマーカーを検出するための診断試験を行ってもよい。診断という用語にはスクリーニングを含む。マーカーには、例えば、DNA組成の評価を含め、FGFRの突然変異を同定するための遺伝子マーカーを含めるものとする。マーカーという用語にはまた、酵素活性、酵素レベル、酵素状態(例えば、リン酸化されているかいないか)および前述のタンパク質のmRNAレベルを含め、FGFRのアップレギュレーションに特徴的なマーカーも含む。
【0180】
診断試験およびスクリーニングは一般に、例えば、腫瘍生検サンプル、血液サンプル(解離させた腫瘍細胞の単離および富化)、糞便生検、痰、染色体分析、胸膜液、腹腔液、頬側スミア(buccal spear)、生検または尿から選択される生体サンプルに対して行う。
【0181】
タンパク質の突然変異およびアップレギュレーションに関する同定および分析方法は当業者に公知である。スクリーニング方法としては、限定されるものではないが、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、または蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)のようなin-situハイブリダイゼーションなどの標準的方法が挙げられる。
【0182】
FGFRに突然変異を有する個体が特定されるということは、その患者がFGFR阻害剤による治療に特に好適であることを意味し得る。優先的には、腫瘍を、治療前にFGFR変異体の存在に関してスクリーニングすることができる。このスクリーニング方法は一般に、直接配列決定、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ分析、または変異体特異的抗体を含む。さらに、このような突然変異を有する腫瘍の診断は、RT-PCRおよびFISHなど、当業者に公知であり、本明細書に記載される技術を用いて行うことができる。
【0183】
さらに、例えば、FGFRの変異型は、PCRおよび上述のようにPCR産物の直接的配列決定を行う方法を用いた、例えば腫瘍生検の直接配列決定により同定することもできる。当業者ならば、上述のタンパク質の過剰発現、活性化または突然変異の検出のための、このような周知の技術が総て本場合に適用可能であることが認識できるであろう。
【0184】
RT-PCRによるスクリーニングでは、腫瘍におけるmRNAのレベルは、そのmRNAのcDNAコピーを作出した後、そのcDNAをPCRにより増幅することにより評価する。PCR増幅の方法、プライマーの選択、および増幅条件は当業者に公知である。
核酸の操作およびPCRは、例えば、Ausubel, F. M. et al.編(2004) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc.、またはInnis, M. A. et al.編(1990) PCR Protocols: a guide to methods and applications, Academic Press, San Diegoに記載のような標準的な方法により行う。核酸技術を含む反応および操作はまた、Sambrook et al.,(2001),第3版, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。あるいは、RT-PCR用の市販キット(例えば、Roche Molecular biochemicals)、または米国特許第4,666,828号明細書;同第4,683,202号明細書;同第4,801,531号明細書;同第5,192,659号明細書;同第5,272,057号明細書;同第5,882,864号明細書および同第6,218,529号明細書に示されている方法が使用でき、これらは引用することにより本明細書の一部とされる。mRNAの発現を評価するためのin situハイブリダイゼーション技術の一例は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)(Angerer (1987) Meth. Enzymol., 152: 649)であろう。
【0185】
一般に、in situハイブリダイゼーションは以下の主要工程を含む:(1)分析する組織の固定;(2)標的核酸の接近性を高めるため、また、非特異的結合を軽減するためのサンプルのプレハイブリダイゼーション処理;(3)その核酸混合物と生体構造または組織中の核酸とのハイブリダイゼーション;(4)ハイブリダイゼーションで結合しなかった核酸断片を除去するためのハイブリダイゼーション後洗浄;および(5)ハイブリダイズした核酸断片の検出。このような適用で用いるプローブは一般に、例えば放射性同位体または蛍光リポーターで標識される。好ましいプローブは、ストリンジェント条件下で標的核酸と特異的ハイブリダイゼーションが可能となるように十分な長さ、例えば、約50、100、または200ヌクレオチド~約1000またはそれを超えるヌクレオチドである。FISHを行うための標準的な方法は、Ausubel, F. M. et al.編(2004) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc and Fluorescence In Situ Hybridization: Technical Overview by John M. S. Bartlett in Molecular Diagnosis of Cancer, Methods and Protocols, 第2版; ISBN: 1-59259-760-2; March 2004, pps. 077-088; Series :Methods in Molecular Medicineに記載されている。
【0186】
遺伝子発現プロファイリング法は、DePrimo et al.(2003), BMC Cancer, 3:3に記載されている。簡単に述べると、このプロトコールは次の通りである:第一鎖cDNA合成を誘導するための(dT)24オリゴマーを用い、全RNAから二本鎖cDNAを合成した後、ランダムヘキサマープライマーを用い、第二鎖cDNAを合成する。この二本鎖cDNAを、ビオチン化リボヌクレオチドを用いるcRNAのin vitro転写の鋳型として用いる。Affymetrix(Santa Clara,CA,USA)が記載しているプロトコールに従い、cRNAを化学的にフラグメント化した後、ヒトゲノムアレイに一晩ハイブリダイズさせる。
【0187】
あるいは、これらのmRNAから発現されたタンパク質産物を、腫瘍サンプルの免疫組織化学、マイクロタイタープレートを用いる固相イムノアッセイ、ウエスタンブロット法、二次元SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、ELISA、フローサイトメトリーおよび特定のタンパク質を検出するための当技術分野で公知の他の方法によりアッセイしてもよい。検出方法には、部位特異的抗体の使用が含まれる。当業者ならば、FGFRのアップレギュレーションの検出、またはFGFR変異体もしくは突然変異体の検出のための、このような周知の技術が総て本場合に適用可能であることが認識できるであろう。
【0188】
FGFRなどのタンパク質の異常なレベルは、標準的な酵素アッセイ、例えば、本明細書に記載されるアッセイを用いて測定することができる。また、活性化または過剰発現は、組織サンプル、例えば腫瘍組織において、Chemicon Internationalから入手できるものなどのアッセイを用いてチロシンキナーゼ活性を測定することによって検出することもできる。目的のチロシンキナーゼをサンプル溶解液から免疫沈降させ、その活性を測定する。
【0189】
そのアイソフォームを含めてFGFRの過剰発現または活性化を測定するための別法としては、微細血管密度の測定を含む。これは例えば、Orre and Rogers (Int J Cancer (1999), 84(2) 101-8)が記載している方法を用いて測定することができる。
【0190】
よって、これらの技術は総て、本発明の化合物による治療に特に適切な腫瘍を同定するためにも使用可能である。
【0191】
本発明の組合せまたは医薬組成物は、変異型FGFRを有する患者の治療に特に有用である。FGFR3におけるG697C突然変異は、口腔扁平上皮癌の62%に見られ、このキナーゼ活性の構成的活性化を引き起こす。FGFR3の活性化突然変異は膀胱癌の場合にも同定されている。これらの突然変異は、R248C、S249C、G372C、S373C、Y375C、K652Qという、様々な存在度の6種類であった。さらに、FGFR4におけるGly388Arg多型が、前立腺癌、結腸癌、肺癌、肝臓癌(HCC)および乳癌の罹患率の上昇および急速進行性と関連していることも判明している。
【0192】
よって、さらなる側面において、本発明は、スクリーニングを受け、かつ、FGFRに対して活性を有する化合物による治療に感受性があると考えられる疾患または病態に罹患している、または罹患のリスクがあると判定された患者における、疾患状態または病態の治療または予防を目的とする薬剤の製造のための、本発明による組合せまたは医薬組成物の使用を含む。
【0193】
患者がスクリーニングされる特定の突然変異としては、FGFR3におけるG697C、R248C、S249C、G372C、S373C、Y375C、K652Q突然変異、ならびにFGFR4におけるGly388Arg多型を含む。
【0194】
別の側面では、本発明は、FGFR遺伝子の変異体(例えば、FGFR3におけるG697C突然変異、およびFGFR4におけるGly388Arg多型)を有する部分集団から選択される患者における癌の予防または治療において使用するための本発明の化合物、組合せまたは医薬組成物を含む。
【0195】
FGFR阻害剤およびcMet阻害剤は、それらの有用な薬理特性を考慮して、投与目的の種々の医薬形に処方することができる。
【0196】
一つの実施態様では、医薬組成物(例えば、処方物)は、本発明の少なくとも1つのFGFR阻害剤、または少なくとも1つのcMet阻害剤または少なくとも1つのFGFR阻害剤および1つのcMet阻害剤を、1以上の薬学的に許容可能な担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、増量剤、バッファー、安定剤、保存剤、滑沢剤、または当業者に周知の他の材料、および場合により他の治療薬または予防薬とともに含んでなる。
【0197】
本発明の医薬組成物を調製するためには、有効成分としての有効量の本発明の化合物を、薬学的に許容可能な担体と緊密に混合して組み合わせるが、担体は投与に望ましい製剤の形態に応じて多様な形態をとってよい。本医薬組成物は、経口投与、非経口投与、局所投与、鼻腔内投与、眼内投与、耳内投与、直腸投与、膣内投与、または経皮投与に適切な任意の形態であり得る。これらの医薬組成物は、好ましくは経口投与、直腸投与、経皮投与、または非経口注射に適切な単位投与形であることが望ましい。例えば、本組成物を経口投与形で調製する場合、懸濁液、シロップ剤、エリキシル剤および溶液などの経口液体製の場合には、例えば、水、グリコール、油、アルコールなど;または散剤、丸剤、カプセル剤および錠剤の場合には、デンプン、糖類、カオリン、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などの固体担体といった、通常の製薬媒体のいずれを用いてもよい。
【0198】
投与が容易なために、錠剤およびカプセル剤が最も有利な経口投与単位となるが、この場合には、明らかに固体製薬担体が使用される。非経口組成物の場合、例えば溶解性を助けるために他の成分を含んでもよいが、担体は通常、少なくとも大部分が無菌水を含んでなる。例えば、注射溶液を調製してもよく、この場合には、担体は生理食塩水、グルコース溶液または生理食塩水とグルコース溶液の混合物を含んでなる。注射懸濁液も調製可能であり、この場合には、適当な液体担体、沈殿防止剤などを使用してよい。経皮投与に適切な組成物では、担体は場合により、浸透促進剤および/または適切な湿潤剤を、場合により、微量の適切な任意の天然添加物(このような添加物は皮膚に著しく有害な作用を及ぼさない)とともに含んでもよい。前記の添加物は皮膚への投与を助長し、かつ/または所望の組成物の調製を助け得る。これらの組成物は、例えば、経皮パッチとして、滴下剤として、軟膏としてなど、種々の方法で投与することができる。上述の医薬組成物は、投与の容易さと用量の均一性のために単位投与形で処方することが特に有利である。本明細書で使用され、ここで特許請求される単位投与形は、各単位が所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の有効成分を必要とされる製薬担体とともに含有する、単位用量として適切な物理的に別個の単位を意味する。このような単位投与形の例は、錠剤(割線入り錠剤またはコーティング錠剤)、カプセル剤、丸剤、パウダーパケット、ウエハース、注射溶液または懸濁液、ティースプーン1さじ、テーブルスプーン1さじなど、およびそれらの別個の複数物である。
【0199】
上述の医薬組成物は、投与の容易さと用量の均一性のために単位投与形で処方することが特に有利である。本明細書で使用され、ここで特許請求される単位投与形は、各単位が所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の有効成分を必要とされる製薬担体とともに含有する、単位用量として適切な物理的に別個の単位を意味する。このような単位投与形の例は、錠剤(割線入り錠剤またはコーティング錠剤)、カプセル剤、丸剤、パウダーパケット、ウエハース、注射溶液または懸濁液、ティースプーン1さじ、テーブルスプーン1さじなど、およびそれらの別個の複数物である。
【0200】
本発明の組合せまたは医薬組成物は、その抗腫瘍活性を発揮するに十分な量で投与される。
【0201】
当業者ならば、本明細書に記載のFGFR阻害剤およびcMet阻害剤の有効量を容易に決定することができる。一般に、治療上有効な量は0.005mg/kg~100mg/kg体重、特に、0.005mg/kg~10mg/kg体重であると考えられる。必要な用量を1回、または1日のうちに適当な間隔をおいて2回、3回、4回またはそれを超える分割用量で投与することが適当であり得る。前記の分割用量は、例えば、単位投与形当たりに0.5~500mg、特に1mg~500mg、さらに特には10mg~500mgの有効成分を含有する単位投与形として処方することができる。
【0202】
投与様式に応じて、本医薬組成物は、好ましくは0.05~99重量%、より好ましくは0.1~70重量%、いっそうより好ましくは0.1~50重量%の本明細書に記載のFGFR阻害剤、cMet阻害剤、またはFGFR阻害剤とcMet阻害剤の組合せと、1~99.95重量%、より好ましくは30~99.9重量%、いっそうより好ましくは50~99.9重量%の薬学的に許容可能な担体とを含んでなる(パーセンテージは総て、組成物の総重量に基づくものである)。
【0203】
上記病態の治療のため、本発明の組合せまたは医薬組成物は、上記に示されるように、1以上の他の医薬剤、より詳しくは、他の抗癌剤または癌治療におけるアジュバントと組み合わせて使用することが有利であり得る。
【0204】
よって、本発明はまた、1以上の他の医薬剤と本発明による組合せを医薬担体とともに含んでなる医薬組成物に関する。
【0205】
本発明はさらに、腫瘍細胞の成長を阻害するための医薬組成物の製造における本発明による組合せの使用に関する。
【0206】
本発明はさらに、第1の有効成分としての本発明によるFGFR阻害剤、第2の有効成分としてのcMet阻害剤、特に、本明細書で定義されるcMet阻害剤、より特には、化合物Cまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物または化合物Dまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはその溶媒和物、ならびにさらなる有効成分としての1以上の抗癌剤を含有する、癌に罹患している患者の治療における同時、個別または逐次使用のための組合せ製剤としての製品に関する。
【0207】
本発明による1以上の他の医薬剤および組合せは、同時に(例えば、個別のまたは単一の組成物で)またはいずれかの順序で逐次に投与され得る。後者の場合、3つ以上の化合物が、有利な作用または相乗作用が達成されることを保証するのに十分な期間および量および様式で投与される。本組合せの各成分の好ましい投与方法および順序ならびに各投与量および計画は、投与される本発明の組合せの特定の他の医薬剤および化合物、それらの投与経路、処置される特定の腫瘍および処置される特定の宿主によって決まるということが認識されるであろう。最適な投与方法および順序ならびに投与量および計画は、当業者により、従来の方法を用い、本明細書に示される情報を考慮して、容易に決定することができる。
【0208】
組合せとして与えられる場合、本発明による組合せの化合物と1以上の他の抗癌剤の重量比は、当業者により決定可能である。前記の比および正確な投与量および頻度は、当業者に周知のように、本発明による組合せの特定の化合物、および使用する他の抗癌剤、処置される特定の病態、処置される病態の重篤度、特定の患者の年齢、体重、性別、食餌、投与時間および健康状態、投与様式ならびにその個体が服用している可能性のある他の薬剤によって決まる。さらに、有効一日量は、処置される被験体の応答に応じて、および/または本発明の組合せを指示する医師の評価に応じて減量または増量され得ることが明らかである。FGFR阻害剤、cMet阻害剤および他の抗癌剤の各組合せの特定の重量比は、1/10~10/1、より特には1/5~5/1、いっそうより特には1/3~3/1の範囲であり得る。
【0209】
白金錯体化合物は有利には、1治療クールにつき、1~500mg/平方メートル(mg/m)体表面積、例えば、50~400mg/mの用量、特に、シスプラチンでは約75mg/m、カルボプラチンでは約300mg/mの用量で投与する。
【0210】
タキサン化合物は有利には、1治療クールにつき、50~400mg/平方メートル(mg/m)体表面積、例えば、75~250mg/mの用量、特に、パクリタキセルでは約175~250mg/m、ドセタキセルでは約75~150mg/mの用量で投与する。
【0211】
カンプトテシン化合物は有利には、1治療クールにつき、0.1~400mg/平方メートル(mg/m)体表面積、例えば、1~300mg/mの用量、特にイリノテカンでは約100~350mg/m、トポテカンでは約1~2mg/mの用量で投与する。
【0212】
抗腫瘍ポドフィロトキシン誘導体は有利には、1治療クールにつき、30~300mg/平方メートル(mg/m)体表面積、例えば、50~250mg/mの用量で、特に、エトポシドでは約35~100mg/m、テニポシドでは約50~250mg/mの用量で投与する。
【0213】
抗腫瘍ビンカアルカロイドは有利には、1治療クールにつき、2~30mg/平方メートル(mg/m)体表面積の用量で、特に、ビンブラスチンでは約3~12mg/mの用量、ビンクリスチンでは約1~2mg/mの用量、ビノレルビンでは約10~30mg/mの用量で投与する。
【0214】
抗腫瘍ヌクレオシド誘導体は有利には、1治療クールにつき、200~2500mg/平方メートル(mg/m)体表面積、例えば、700~1500mg/mの用量で、特に、5-FUでは200~500mg/mの用量、ゲムシタビンでは約800~1200mg/mの用量、カペシタビンでは約1000~2500mg/mの用量で投与する。
【0215】
ナイトロジェンマスタードまたはニトロソ尿素などのアルキル化剤は有利には、1治療クールにつき、100~500mg/平方メートル(mg/m)体表面積、例えば、120~200mg/mの用量で、特に、シクロホスファミドでは約100~500mg/mの用量、クロラムブシルでは約0.1~0.2mg/kgの用量、カルムスチンでは約150~200mg/mの用量、ロムスチンでは約100~150mg/mの用量で投与する。
【0216】
抗腫瘍アントラサイクリン誘導体は有利には、1治療クールにつき、10~75mg/平方メートル(mg/m)体表面積、例えば、15~60mg/mの用量で、特に、ドキソルビシンでは約40~75mg/mの用量、ダウノルビシンでは約25~45mg/mの用量、イダルビシンでは約10~15mg/mの用量で投与する。
【0217】
抗エストロゲン作用薬は有利には、特定の薬剤および治療する病態に応じて1日約1~100mgの用量で投与する。タモキシフェンは有利には、1日2回、5~50mg、好ましくは10~20mgの用量で経口投与し、治療効果を達成および維持するのに十分な期間治療を継続する。トレミフェンは有利には、1日1回、約60mgの用量で経口投与し、治療効果を達成および維持するのに十分な期間治療を継続する。アナストロゾールは有利には、1日1回、約1mgの用量で経口投与する。ドロロキシフェンは有利には、1日1回、約20~100mgの用量で経口投与する。ラロキシフェンは有利には、1日1回、約60mgの用量で経口投与する。エキセメスタンは有利には、1日1回、約25mgの用量で経口投与する。
【0218】
抗体は有利には、約1~5mg/平方メートル(mg/m)体表面積の用量で、異なる場合には当技術分野で公知のように投与する。トラスツズマブは有利には、1治療クールにつき、1~5mg/平方メートル(mg/m)体表面積、特に、2~4mg/mの用量で投与する。
【0219】
これらの用量は1治療クールにつき、例えば、1回、2回またはそれを超える回数投与してもよく、これを例えば7日、14日、21日または28日ごとに繰り返すことができる。
【0220】
本発明の組合せまたは医薬組成物は、標識化合物と他の分子、ペプチド、タンパク質、酵素または受容体との間の複合体の形成を検出または同定するために使用可能であるという点で、有用な診断特性を持ち得る。
【0221】
これらの検出または同定方法は、放射性同位体、酵素、蛍光物質、発光物質などの標識剤で標識された化合物を使用することができる。放射性同位体の例としては、125I、131I、Hおよび14Cが挙げられる。酵素は通常、適当な基質とコンジュゲートし、これにより検出可能な反応を触媒することで検出可能となる。その例としては、例えば、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、ペルオキシダーゼおよびリンゴ酸デヒドロゲナーゼ、好ましくは、セイヨウワサビペルオキシダーゼが挙げられる。発光基質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、エクオリンおよびルシフェラーゼが挙げられる。
【0222】
生体サンプルは身体組織または体液と定義することができる。体液の例は、脳脊髄液、血液、血漿、血清、尿、痰、唾液などである。
【実施例
【0223】
実験の部
FGFR阻害剤としての上記化合物AおよびBの評価の際、細胞に基づく増殖アッセイ(アラマーブルーアッセイ、本明細書の下記を参照)で化合物を試験したところ、最も感受性の高い細胞株(IC50<10nM)でさえも、前記化合物に感受性のない細胞の部分集団を有することが判明した。これは例えば、増殖曲線においてDMSO対照の10%前後(DMSOに関するアッセイで見られた値を100%とし、化合物によるその用量の処理に関して見られた値を100%DMSOの%として計算する)のプラトーにより認められた。例えば、FGFR1増幅を有する大細胞肺癌細胞株であるNCI-H1581細胞を、N-(3,5-ジメトキシフェニル)-N’-(1-メチルエチル)-N-[3-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)キノキサリン-6-イル]エタン-1,2-ジアミンを用いた増殖アッセイで処理したところ、曲線はDMSO対照の約10%のところにプラトーを示し、前記化合物により処理に感受性のない細胞が約10%存在することを示唆した。
【0224】
非感受性細胞を単離し、それらの生存および/または増殖の駆動因子として働く活性なシグナル伝達経路を決定する目的でプロファイリングを行った。よって、NCI-H1581細胞を10cmのコラーゲンIコーティングプレートに播種し、37℃、5%COのインキュベーターに入れた。これらの細胞を、DMSO対照を含むまたは含まない親細胞については増殖培地(下記参照)で、耐性細胞に関しては高用量の化合物A(培地中の化合物Aの終濃度は1μM、化合物AはDMSO中の保存溶液から希釈したサンプルとして加えた)を添加した増殖培地で長期間増殖させた。化合物非感受性細胞が増殖している間、化合物A[1μM]を添加した培地を1週間に2回交換した。DMSO対照を含むまたは含まない親細胞の場合、細胞が100%に近い集密度に達した際に、それらをトリプシンで処理し、プレートに再び播種した。化合物処理プレートでは、耐性クローンの増殖が見られた。最初の処理から約3週間後、トリプシン処理によりプレートから細胞を採取し、さらなる拡大培養のために新しいプレートに継代培養した。耐性細胞も、親細胞と同様に週2回継代培養したが、耐性細胞の培地には常に化合物A[1μM]を添加した(試験1)。
【0225】
増殖培地
RPMI-1640(Gibco、31870-025) 500ml;10%FCS(Hyclone、SV30160.03) 57ml;1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco、11360) 5.7ml;2mM L-グルタミン(Gibco、25030) 5.7ml;50μg/mlゲンタマイシン(Gibco、15750) 5.7ml。
【0226】
耐性細胞に対し、マイクロアレイ技術を用い、親細胞に比べて差次的に発現される遺伝子に関してプロファイリングを行った。2種類のマイクロアレイ試験と行った。第1の試験では、親細胞および耐性細胞に対して、2集団間で異なる遺伝子および経路を定義するため、および化合物Aに対する耐性を駆動する経路を理解するためにプロファイリングを行った。第2のマイクロアレイ試験では、化合物Aによる処理後の遺伝子発現の経時的変化をプロファイリングした。そのため、NCI-H1581細胞を、1日、1週間および2週間の時間経過中、DSMOまたは1μMの化合物Aで処理するか、または未処理のままとした。
【0227】
両マイクロアレイ分析で、Met癌遺伝子が耐性細胞において時間依存的にアップレギュレートされることが確認された。
【0228】
この試験を化合物Bでも行ったところ、化合物BでもMet癌遺伝子が耐性細胞において時間依存的にアップレギュレートされることが確認された。
【0229】
Met遺伝子がアップレギュレートされたという所見は、Met受容体がタンパク質レベルでアップレギュレートされ、活性化されるかどうか、また、Metにより駆動されるシグナル伝達経路が耐性の駆動因子として働くかどうかを確認するための試験を促した。
よって、ホスホRTK(受容体チロシンキナーゼ)アレイで、また、Met総タンパク質発現およびリン酸化に関して親細胞および耐性細胞のプロファイリングを行った。アラマーブルー増殖アッセイで選択されたMet阻害剤(化合物CおよびD)に対する細胞の感受性も試験した。耐性細胞でのみ、Metタンパク質発現がアップレギュレートされ、Metタンパク質がリン酸化され、親細胞ではそうではなく、Metシグナル伝達経路が耐性細胞で活性化されていることが示唆された。この所見に加え、強力かつ選択的なMet阻害剤である化合物Cによる耐性細胞の処理はMetのリン酸化を有意にダウンレギュレートした。親NCI-H1581細胞は、極めて低い検出可能レベルのMetタンパク質を有し、Metタンパク質のリン酸化のシグナルは無かった(図1)。さらに、Met阻害剤である化合物CおよびDで処理した親細胞および耐性細胞のアラマーブルー増殖アッセイでは、Met阻害剤は耐性NCI-H1581細胞の増殖を強く阻害し、親NCI-H1581細胞の増殖は阻害しなかった(下表参照、反復試験の結果を示す)。
【0230】
【表1】
【0231】
これらのデータから、供試したFGFR阻害剤に対して耐性のあるNCI-H1581細胞は活性化されたMet受容体を有し、それらの増殖および生存をMetシグナル伝達経路に依存していると結論づけることができる。
【0232】
NCI-H1581において供試したFGFR阻害剤に対する耐性の駆動因子としてMetシグナル伝達の活性化が見出されたことは、NCI-H1581細胞におけるFGFR阻害剤耐性の出現を克服するためのFGFRとMet阻害剤両方による組合せ処理を裏づける。2種類の薬剤(FGFR阻害剤:1μM 化合物AとMet阻害剤:1μM 化合物D)を最初から組み合わせた試験を行った。単剤(1μM 化合物Aまたは1μM 化合物D)またはDMSOによる細胞の処理も行った。細胞の増殖を、細胞の集密度を経時的に測定するIncucyt装置を用いて追跡した。試験1に関して上記したものと同様にして行ったこの件では、Met阻害剤である化合物D処理、ならびにDMSO処理はNCI-H1581細胞の増殖に影響を及ぼさなかったことが認められた。FGFR阻害剤(1μM 化合物A)による細胞の処理は、最初は増殖を遮断したが、約3週間後に、化合物非感受性細胞の増殖の出現が見られ、これは、化合物AによるFGFR経路の継続的阻害の3週間後に、NCI-H1581細胞の非感受性耐性細胞部分集団が増殖能を獲得したという、上記に示した所見と合致する。重要なこととして、FGFR阻害剤(化合物A 1μM)とMet阻害剤(化合物D 1μM)の併用処理は耐性の出現を完全に防いだ。図2参照。
【0233】
in vivo試験
無胸腺ヌードマウスに耐性NCI-H1581細胞を接種した(マウスの鼠径部に、マトリゲルを1:1で含む10e細胞/200μl)。
【0234】
総てのマウス(84)を群(4)に分け、細胞注射の当日から処置した。
【0235】
マウスを通常用量(250μl/25g)で1日1回、37日間(QD×37)経口(po)処置した。腫瘍体積の測定を0、5、12、15、20、23、27、30、33、37日目に行った。
【0236】
37日目に、総ての動物を犠牲にした。
【0237】
下表に研究計画を示す。
【表2】
【0238】
このin vivo試験の結果を図3に示す。
【0239】
総ての試験薬剤に本試験を通して十分な忍容性があった。しかしながら、組合せ群では、体重低下の増大が見られた。
【0240】
本試験では、これらの細胞はこの処理に対して元々耐性を示していたので、化合物Aによる処理は腫瘍増殖に影響しなかったことが認められた。興味深いことに、両組合せ処置は、腫瘍の増殖に影響を示した。さらに、これら2つの薬剤を同時に投与した場合に、最も強い抗増殖効果が見られた。このモデルが両標的化薬剤の組合せには感受性があり、化合物A処理単独には非感受性であったという事実は、両経路がこれらの腫瘍の増殖に有意な役割を果たしていることを示唆する。
【0241】
アラマーブルーアッセイ
細胞を、透明な平底の黒色96ウェルプレートにて、180μlの培地中、最適細胞密度で播種した。外側のウェルを180μlの培地で満たした。細胞を37℃、5%COで24時間インキュベートした。
【0242】
翌日、丸底の96ウェルプレート(Corning #3365)に化合物希釈液を調製した。化合物の50倍希釈液を、96ウェルプレート(Corning #3585)にて、培地にて、196μlの培地中4μlの化合物保存液として調製した。化合物/培地プレートを10分間シェーカー上に置き、次いで、培地中20μlの化合物(10倍希釈液)を細胞に加えた。細胞を、アラマーブルー(登録商標)の読み取りまで、37℃、5%COで4日間インキュベートした。
【0243】
アラマーブルー(登録商標)の調製:
材料
レサズリン錠(100錠)(PROLABO)
フェロシアン化カリウム(Sigma)
フェリシアン化カリウム(Sigma)
KHPO(Sigma)
HPO(Sigma)
【0244】
リン酸カリウムバッファー(PPB)1リットル
20mM KHPO 2.72g
80mM KHPO 13.86g
pH7,4(KOH 5M数滴で)
MilliQで500mlとする
【0245】
溶液をpH7.4とし、最終容量1リットルに調整する。
【0246】
PPB-A試薬
PPB1ml当たり1錠のレサズリン剤(1錠+800μl PPB)
【0247】
PPB-B試薬 PPB中30mMフェリシアン化カリウム
0.987gフェリシアン化カリウム+100ml PPB
0.22μmフィルターで濾過除菌し、4℃で保存
【0248】
PPB-C試薬 PPB中30mMフェロシアン化カリウム
1.266gフェロシアン化カリウム+100ml PPB
0.22μmフィルターで濾過除菌し、4℃で保存
【0249】
調製済みアラマーブルー混合物
1ml PPB-A+1ml PPB-B+1ml PPB-C選択
57ml PPBを添加
0.22μmフィルターで濾過除菌し、4℃で保存
【0250】
化合物とともに4日間インキュベートした後、40μlの調製済みアラマーブルー(登録商標)を各ウェルに混合使用するために加える。プレートを37℃、5%COでインキュベートする。インキュベーション4または6時間後(細胞株に依存)にプレートを測定する。プレートを振盪し、RFUを励起:544nmおよび発光:590nmで測定する。
【0251】
アラマーブルー(登録商標)アッセイには、代謝活性の検出に基づく蛍光測定/比色定量増殖指示薬が組み込まれている。具体的には、このシステムには、細胞増殖により起こる増殖培地の化学的還元に応答して蛍光生成と変色の両方を行う酸化還元(REDOX)指示薬が組み込まれている。
【0252】
FGFR阻害剤とMET阻害剤の組合せによるH1581MET(+)細胞の増殖阻害
選別していない親H1581細胞と、高Met発現を有するH1581細胞の部分集団である選別したH1581Met(+)細胞を、24ウェルプレートに75000細胞/ウェルで播種した。1日後、細胞を化合物A(0.1mM)、または化合物A(0.1mM)と化合物D(1mM)の組合せ、またはビヒクルとしてのDMSOで処理し、4日にわたってIncucyteライブセルイメージングを用いて細胞の集密度を測定することにより細胞増殖を評価した。2時間毎に画像を取得した。細胞増殖を平均集密度パーセンテージ±SD(n=2)として表した。
【0253】
H1581細胞の増殖は、化合物Aまたは化合物Aと化合物Dの組合せによる処理によって等しく阻害され、H1581細胞の増殖の阻害がFGFR阻害剤により駆動されていたことが示唆された。H1581MET(+)は化合物Aに対して低感受性を示し、それらの増殖は化合物Aと化合物Dの組合せにより強く阻害され、この細胞集団でMETキナーゼが成長および増殖において有意な役割を果たしていることを示す。これらの所見は、H1581MET(+)部分集団がH1581細胞におけるFGFR阻害剤に対する内因的耐性を媒介していることを示唆する。
図1
図2
図3
図4