(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】ワイヤレスアクセスポイントの熱管理
(51)【国際特許分類】
H04B 17/18 20150101AFI20230616BHJP
H04W 24/02 20090101ALI20230616BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20230616BHJP
H04B 17/29 20150101ALI20230616BHJP
H04B 1/38 20150101ALI20230616BHJP
【FI】
H04B17/18
H04W24/02
H04W84/12
H04B17/29 300
H04B1/38
(21)【出願番号】P 2020531129
(86)(22)【出願日】2018-11-30
(86)【国際出願番号】 US2018063233
(87)【国際公開番号】W WO2019199358
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-11-17
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518329826
【氏名又は名称】プリューム デザイン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PLUME DESIGN, INC.
【住所又は居所原語表記】325 Lytton Ave, Palo Alto, CA 94301 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120684
【氏名又は名称】宮城 三次
(72)【発明者】
【氏名】マクファーランド,ウイリアム
(72)【発明者】
【氏名】マルキン,ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ハンリー,パトリック
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-524210(JP,A)
【文献】国際公開第2006/070465(WO,A1)
【文献】特開2007-265393(JP,A)
【文献】HALPERIN D. et al.,Demystifying 802.11n power consumption,Proceedings of the 2010 international conference on Power aware computing and systems,2010年10月,pages 1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/60
H04B 3/46-3/493
H04B 17/00-17/40
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
H04B 1/38-1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウドベースで行われるアクセスポイントの熱制御の方法であって、1つのサーバによりクラウドにおいて実行され、前記サーバがいずれかの前記アクセスポイントに接続されており、
マルチノードWi-Fiネットワークの一部であるアクセスポイントにおいて、その中で動作する複数の無線チップを含む前記アクセスポイントと関連する温度を決定することと、
前記サーバによって、前記アクセスポイントから前記温度を定期的に取得することと、
前記サーバによって、
前記マルチノードWi-Fiネットワークの動作条件及びパフォーマンスメトリックに基づいて1つ又は複数の熱低減技法を決定することと、
第1の閾値を超える前記温度に応答して、前記サーバによって、前記複数の無線チップのうちの1つ以上の無線チップの動作条件を変更するために1つ又は複数の熱低減技法を実行させることと、
前記温度が第2の閾値よりも低いことに応答して、前記サーバによって、前記対応するアクセスポイントに、前記1つ又は複数の熱低減技法を復旧させることを含む方法。
【請求項2】
前記1つ又は複数の熱低減技法は、前記複数の無線チップ上の多重入力多重出力(MIMO)ディメンションを低減することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記MIMOディメンションは、送信時のみに低減され、受信時には低減されない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ又は複数の熱低減技法は、前記複数の無線チップのいずれかをオフにすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ又は複数の熱低減技法は、前記複数の無線チップに関連する送信機の電力を低減することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ又は複数の熱低減技法は、前記複数の無線チップに関連する送信機のデューティサイクルを制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記デューティサイクルが、オフチャネルスキャンによって制御される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記デューティサイクルが、ソフトウェア及び低レベルハードウェアメカニズムによって制御される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記デューティサイクルが、前記決定に基づいて、前記デューティサイクルを継続的に調整するフィードバックループにおいて、100%から0%の間で制御される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ又は複数の熱低減技法は、連続的な態様で動作する制御ループを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の閾値は、前記熱制御における安定性を維持するヒステリシスバンドのため、前記第1の閾値と異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記温度は、前記アクセスポイント内の複数のポイントで決定され、前記1つ又は複数の熱低減技法は、どの温度が前記第1の閾値を超えるかに基づいて選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数の熱低減技法は、クライアントデバイスを、1つの無線機から複数の無線機のうちの異なる無線機に移動させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ又は複数の熱低減技法は、前記アクセスポイントをシャットダウンさせること、及びリブートすることのいずれかを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
複数の温度閾値が存在し、複数の熱低減技法の一つは、どの閾値を超えたかに応じてトリガーされる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記温度は、デューティサイクルを観察することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
含まれている種々のノードにおいて熱制御を実行するように構成されているマルチノードWi-Fiネットワークであって、
互いに接続されて無線ネットワーク接続を提供する前記マルチノードWi-Fiネットワークを形成する複数のアクセスポイントを備え、
前記複数のアクセスポイントは、それぞれ、
その中で動作する複数の無線機に関する温度を決定し、
前記複数のアクセスポイントに接続されている1つのサーバは、
前記アクセスポイントから定期的に前記温度を取得し、
前記マルチノードWi-Fiネットワークのネットワーク動作条件と、パフォーマンスメトリックとに基づいて1つ又は複数の熱低減技法を決定し、
前記温度が第1の閾値を超えることに応答して、前記複数の無線機の動作条件を変更するために前記対応するアクセスポイントに1つ又は複数の熱低減技法を実行させ、
前記温度が第2の閾値より低いことに応答して、前記対応するアクセスポイントに前記1つ又は複数の熱低減技法を復旧させるように構成されている、
マルチノードWi-Fiネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、無線ネットワーキングのシステム及び方法に関する。より具体的には、本開示は、ローカルの熱管理、クラウドベースの熱管理、及び分散型Wi-Fiネットワークでの最適化と動作に基づく熱管理を含む無線アクセスポイントの熱管理に関する。
【背景技術】
【0002】
Wi-Fiネットワークなどでは、魅力的な美的デザインを備えた小型のフォームファクタデバイスが採用される傾向がある。上記は、ロケーション全体に多数のアクセスポイントを配置する必要があるメッシュ及び分散型Wi-Fiシステムでは特に重要である。短所として、強力なアクセスポイント、ワイヤレスルータなどのコンパクトなデザインで、それぞれに多数の無線周波数(RF)チェーンを備えた複数の無線機が含まれていると、ワイヤレスルータからすばやく除去するよりも多くの熱を放散する可能性がある。今日の典型的な解決策は、デバイスに組み込まれた無線チェーン(radio chain)の数、又は各無線チェーンが提供できる出力電力を制限することである。ただし、これらの解決策はどちらも、ワイヤレスルータの最大パフォーマンスを低下させる。また、一部のワイヤレスルータは表面積が大きくなるように設計されて、ヒートシンク、通気孔、ファン、及びその他の追加機能が含まれて、製品のサイズ、複雑さ、及びコストが増加する。この問題は、分散型Wi-Fiシステムでは悪化する。そのようなシステムは、ある場所に分散された複数のAPを使用する。消費者は、そのようなアクセスポイントが小さく魅力的であることを優先する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
小型、外付けヒートシンクなし、通気穴なし、ファンなしの静かな操作などは全て製品の魅力を高めるが、製品の冷却が難しくなる。その結果、APが過熱して、パフォーマンスと製品寿命とが低下する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態では、アクセスポイントの熱制御の方法であって、前記方法は、その中で動作する1つ又は複数の無線チップを含むアクセスポイントと関連する温度を決定して、第1の閾値を超える温度に応答して、前記1つ又は複数の無線チップの動作条件を変更するために1つ又は複数の熱低減技法を実行して、前記温度が第2の閾値よりも低いことに応答して、前記1つ又は複数の熱低減技法を復旧させることを含む。1つ又は複数の熱低減技法は、1つ又は複数の無線チップの多重入力多重出力(MIMO)ディメンションを低減することを含み得る。MIMOディメンションは、送信時のみに低減され、受信時には低減されない。1つ又は複数の熱低減技法は、1つ又は複数の無線チップのいずれかをオフにすることを含み得る。1つ又は複数の熱低減技法は、1つ又は複数の無線チップに関連する送信機の電力を低減することを含み得る。1つ又は複数の熱低減技法は、1つ又は複数の無線チップに関連する送信機のデューティサイクルを制御することを含み得る。デューティサイクルは、オフチャネルスキャンによって制御できる。デューティサイクルは、ソフトウェア及び低レベルのハードウェアメカニズムのいずれかを介して制御できる。デューティサイクルは、決定に基づいてデューティサイクルを継続的に調整するフィードバックループで100%から0%の間で制御できる。1つ又は複数の熱低減技法は、連続的に動作する制御ループを含み得る。
【0005】
熱制御でヒステリシスバンドの安定性を維持するために、第2の閾値は第1の閾値とは異なる場合がある。温度はアクセスポイント内の複数のポイントで決定でき、1つ又は複数の熱低減技法は、どの温度が第1の閾値を超えるかに基づいて選択される。アクセスポイントは1つ又は複数の無線機を含むことができ、1つ又は複数の熱低減技法は、クライアントデバイスを1つの無線機から1つ又は複数の無線機のうちの異なる無線機に移動することを含むことができる。1つ又は複数の熱低減技法には、アクセスポイントのシャットダウンとリブートとのいずれかが含まれ得る。複数の温度閾値が存在する可能性があり、どの閾値を超えたかに応じて、複数の熱低減技法の1つがトリガーされ得る。温度の決定は、デューティサイクルの観察に基づくことができる。
【0006】
別の実施形態では、ローカル熱制御のために構成されたアクセスポイントであって、前記アクセスポイントは、1つ又は複数の無線機と、1つ又は複数の無線機に通信可能に結合されたプロセッサであって、前記プロセッサは、その中で動作する1つ又は複数の無線機に関連する温度を決定して、第1の閾値を超える温度に応答して、1つ又は複数の無線機の動作条件を変更するために1つ又は複数の熱低減技法を実行して、温度が第2の閾値よりも低いことに応答して、1つ又は複数の熱低減技法を復旧させるように構成されているプロセッサとを備える。温度は、アクセスポイントの複数のポイントで決定でき、1つ又は複数の熱低減技法は、どの温度が第1の閾値を超えているかに基づいて選択できる。複数の温度閾値が存在する可能性があり、どの閾値を超えたかに応じて、複数の熱低減技法の1つをトリガーできる。
【0007】
さらなる実施形態では、その中の様々なノードでローカル熱制御を実施するように構成された分散型Wi-Fiネットワークは、分散型Wi-Fiネットワークを形成する互いに接続された複数のアクセスポイントを含み、複数のアクセスポイントのそれぞれは、その中で動作する1つ又は複数の無線機に関連する温度を決定するように構成されて、第1の閾値を超える温度に応答して、1つ又は複数の無線機の動作条件を変更するために1つ又は複数の熱低減技法を実行して、温度が第2の閾値よりも低いことに応答して、1つ又は複数の熱低減技法を復旧させるように構成されている。
【0008】
一実施形態では、クラウドベースのコントローラによって実行されるアクセスポイントのクラウドベースの熱制御の方法は、その中で動作する1つ以上の無線チップを含むアクセスポイントから定期的に温度測定値を取得することを含み、第1の閾値を超える温度に応答して、1つ又は複数の熱低減技法に1つ又は複数の無線チップの動作条件を変更させて、温度が第2の閾値よりも低いことに応答して、1つ以上の熱低減技法を復旧させる。1つ又は複数の熱低減技法は、1つ又は複数の無線チップのうちの1つ又は複数の無線チップの多重入力多重出力(MIMO)ディメンションを低減すること、1つ又は複数の無線チップの1つをオフにすること、1つ以上の無線チップのうちの1つに関連する送信機の電力を低減すること、1つ又は複数の無線チップの1つ又は複数に関連する送信機のデューティサイクルを制御することを含むことができる。
アクセスポイントはマルチノードWi-Fiネットワークの一部にすることができ、1つ又は複数の熱低減技法には、アクセスポイントの動作条件を調整するためにマルチノードWi-Fiネットワークのトポロジを変更することが含まれる。トポロジは、アクセスポイントに接続されているチャイルドの数が1つ以上少なくなる、トラフィック負荷が低いチャイルド、アクセスポイントからの距離が短いチャイルドになるように選択できる。アクセスポイントは、マルチノードWi-Fiネットワークの一部であることができ、1つ以上の熱低減技法は、アクセスポイントに関連付けられたクライアントのステアリングを含み、アクセスポイントの動作条件を調整することができる。アクセスポイントはマルチノードWi-Fiネットワークの一部にすることができ、1つ又は複数の熱低減技法には、1つ又は複数の無線機間のアクセスポイントに関連付けられたクライアントのバンドステアリングを含むことができる。
【0009】
アクセスポイントはマルチノードWi-Fiネットワークの一部にすることができ、方法は更に、マルチノードWi-Fiネットワークのネットワーク動作条件とパフォーマンスメトリックとに基づいて1つ又は複数の熱低減技法を決定することを更に含むことができる。パフォーマンスメトリックには、スループットの最大化を含めることができ、スループットは、全てのクライアントへの全体的なスループット、最も遅いクライアントへのスループット、及び全てのクライアント間の重み付けされたスループットの1つ以上を考慮する。パフォーマンスメトリックは、マルチノードWi-Fiネットワーク全体のスループットの一貫性、遅延の最小化、ジッタの最小化のうち1つ以上を含む品質をベースにすることができる。
【0010】
この方法は、温度測定値を記録すること、第1の閾値及び第2の閾値の1つ又は複数の識別値の履歴温度測定値を分析すること、アクセスポイントの製品寿命を決定すること、新しいアクセスポイントの設計を通知すること、及び製造上の欠陥を特定すること、を更に含むことができる。アクセスポイントはマルチノードWi-Fiネットワークの一部であることができ、方法は更に、1つ以上の熱低減技法にそれを補償させることの後にマルチノードWi-Fiネットワークの最適化を実行することを含むことができる。温度の決定は、デューティサイクルの観察に基づくことができる。
【0011】
別の実施形態では、アクセスポイントの熱制御を実行するように構成されたクラウドベースのコントローラは、アクセスポイントに通信可能に結合されたネットワークインターフェースと、ネットワークインターフェースに通信可能に結合された1つ又は複数のプロセッサと、実行時に、1つ又は複数のプロセッサに、その中で動作する1つ又は複数の無線チップを含むアクセスポイントから定期的に温度測定値を取得させて、第1の閾値を超える温度に応答して、1つ又は複数の熱低減技法に1つ又は複数の無線チップの動作条件を変更させて、温度が第2の閾値よりも低いことに応答して、1つ又は複数の熱低減技法を復旧させる命令を記憶するメモリと、を含む。1つ又は複数の熱低減技法は、1つ又は複数の無線チップのうちの1つ又は複数の多重入力多重出力(MIMO)ディメンションを低減すること、1つ又は複数の無線チップの1つをオフにすること、1つ又は複数の無線チップのうちの1つに関連する送信機の電力を低減させること、1つ以上の無線チップのうちの1つ又は複数に関連する送信機のデューティサイクルを制御することのいずれかを含むことができる。
【0012】
アクセスポイントをマルチノードWi-Fiネットワークの一部にすることができ、1つ又は複数の熱低減技法には、アクセスポイントの動作条件を調整するためにマルチノードWi-Fiネットワークのトポロジを変更することが含むことができる。アクセスポイントはマルチノードWi-Fiネットワークの一部であることができ、1つ又は複数の熱低減技法は、アクセスポイントに関連付けられたクライアントのステアリングを含み、アクセスポイントの動作条件を調整することができる。アクセスポイントは、マルチノードWi-Fiネットワークの一部であることができ、1つ以上の熱低減技法は、複数の無線機の間のアクセスポイントに関連付けられたクライアントのバンドステアリングを含むことができる。アクセスポイントはマルチノードWi-Fiネットワークの一部にすることができ、メモリは、実行時に、1つ又は複数のプロセッサにマルチノードWi-Fiネットワークのネットワーク動作条件とパフォーマンスメトリックに基づいて1つ又は複数の熱低減技法を決定させることができる命令を格納する。アクセスポイントはマルチノードWi-Fiネットワークの一部にすることができ、メモリは、実行時に1つ以上の熱低減技法の後それを補償するため、1つ又は複数のプロセッサにマルチノードWi-Fiネットワークの最適化を実行させることができる命令を格納する。
【0013】
さらなる実施形態では、クラウドベースのコントローラによって制御されるWi-Fiネットワークは、1つ又は複数の無線機をそれぞれ含む1つ又は複数のアクセスポイントを含み、クラウドベースのコントローラは、1つ又は複数のアクセスポイントから定期的に温度測定値を取得して、1つ又は複数のアクセスポイントのアクセスポイント内の第1の閾値を超える温度に応答して、アクセスポイント内の1つ又は複数の無線機の動作条件を1つ又は複数の熱低減技法に変更させて、温度が第2の閾値よりも低いことに応答して、1つ又は複数の熱低減技法を復旧させるように構成される。
【0014】
一実施形態では、分散型Wi-Fiネットワークにおける複数のアクセスポイントの熱管理を考慮して分散型Wi-Fiネットワークを最適化する方法は、複数のアクセスポイントから定期的に温度測定値を取得することと、温度測定値を最適化で使用される熱入力として分散型Wi-Fiネットワークを構成するために最適化を実行することを含み、最適化は、分散型Wi-Fiネットワークのトポロジ、トポロジ内の各ホップのバンド及びチャネルの1つ以上を含む構成パラメータ、及びどのクライアントをどのバンドのどのアクセスポイントに関連付けるかを決定して、分散型Wi-Fiネットワークに構成パラメータを提供して、それを実施することを含む。構成パラメータには、熱制約に基づく熱低減のための1つ又は複数の無線チップの調整を含むことができ、この調整には、1つ又は複数の無線チップの多重入力多重出力(MIMO)ディメンションの削減、1つ又は複数の無線チップをオフにすること、1つ又は複数の無線チップに関連する送信機の電力を低減すること、1つ又は複数の無線チップに関連する送信機のデューティサイクルを制御することのいずれかを含むことができる。
【0015】
最適化では、分散型Wi-Fiネットワークのトポロジ関連パラメータを調整して、熱低減のための構成パラメータの調整を補償できる。最適化は、スループット及び/又は品質を有する複数のアクセスポイントのそれぞれの熱的制約を要素分解する目的関数を利用することができる。最適化には、各クライアントの入力負荷と、熱制約に基づくクライアントの割り当てを含む構成パラメータの出力とがある。各クライアントの入力負荷は、履歴測定値に基づいて予測できる。最適化により、高温で動作するアクセスポイントの負荷が軽減されるように、熱的制約に基づいてトポロジを変更する構成パラメータを決定できる。負荷の軽減は、数が少ないチャイルド、トラフィック負荷の低いチャイルド、及びアクセスポイントに近い距離にあるチャイルドのうちの一以上になる。
【0016】
最適化により、高温で動作するアクセスポイントの負荷が軽減されるように、温度制約に基づいてクライアントをアクセスポイントにステアするための構成パラメータを決定できる。負荷の軽減は、数が少ないチャイルド、トラフィックの負荷が小さいチャイルド、アクセスポイントに近い距離にあるチャイルドうちの一以上になる。最適化では、ネットワーク動作条件とパフォーマンスメトリックに基づいて構成パラメータを決定でき、パフォーマンスメトリックには、全てのクライアントへの全体的なスループット、最も遅いクライアントへのスループット、及び全てのクライアント間の重み付きスループットの1つ以上を含むことができる。最適化では、ネットワーク動作条件とパフォーマンスメトリックとに基づいて設定パラメータを決定でき、パフォーマンスメトリックには、スループットの一貫性、遅延の最小化、及びジッタの最小化の1つ以上を含むことができる。最適化では、各無線機に固有の熱制約を利用して、各無線機に熱低減技法を実装できる。最適化では、熱制約が閾値を超えるまで各アクセスポイントの熱制約を無視でき、その後、熱制約は、そのアクセスポイントの最適化における主要な要素として扱われる。温度測定は、1つ以上の無線機の送信デューティサイクルに基づいて決定できる。
【0017】
別の実施形態では、複数のアクセスポイントでWi-Fiネットワークを制御するように構成されたクラウドベースのコントローラは、Wi-Fiネットワークに通信可能に結合されたネットワークインターフェースと、ネットワークインターフェースに通信可能に結合された1つ又は複数のプロセッサと、実行時に、1つ又は複数のプロセッサに複数のアクセスポイントから定期的に温度測定値を取得させて、温度測定値を最適化で使用される熱入力として分散型Wi-Fiネットワークを構成するために、最適化を実施させる命令を格納するメモリと、を含み、最適化は、分散型Wi-Fiネットワークのトポロジ、トポロジ内の各ホップのバンド及びチャネル、及びどのクライアントがどのバンドのどのアクセスポイントに関連付けられているかの1つ以上を含む構成パラメータを決定して、分散型Wi-Fiネットワークに構成パラメータを提供して、その実装を行う。
【0018】
構成パラメータは、熱制約に基づく熱低減の調整を含むことができ、その調整は、1つ又は複数の無線チップの多重入力多重出力(MIMO)ディメンションを低減すること、1つ又は複数の無線チップをオフにすること、1つ又は複数の無線チップに関連する送信機の電力を低減すること、及び1つ以上の無線チップに関連する送信機のデューティサイクルを制御することのいずれかを含むことができる。最適化では、分散型Wi-Fiネットワークのトポロジ関連パラメータを調整して、熱低減のための構成パラメータの調整を補償できる。最適化により、高温で動作するアクセスポイントの負荷が軽減されるように、熱的制約に基づいてトポロジを変更する構成パラメータを決定できる。
【0019】
更なる実施形態では、クラウドベースのコントローラによって制御されるWi-Fiネットワークは、それぞれが1つ又は複数の無線機を含む1つ又は複数のアクセスポイントを含み、クラウドベースのコントローラは、複数のアクセスポイントから定期的に温度測定値を取得するように構成されて、温度測定を最適化で使用される熱入力として分散型Wi-Fiネットワークを構成するための最適化を実行して、この最適化は、分散型Wi-Fiネットワークのトポロジ、トポロジ内の各ホップのバンド及びチャネル、及びどのクライアントがどのバンドのどのアクセスポイントに関連付けられているかの1つ以上を含む構成パラメータを決定して、分散型Wi-Fiネットワークに構成パラメータを提供して、その実装を行う。
【0020】
本開示は、様々な図面を参照して本明細書で例示及び説明され、同様の参照番号は、適宜同様のシステムコンポーネント/方法工程を示すために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、クラウドベースの制御を備えた分散型Wi-Fiシステムのネットワーク図である。
【0022】
【
図2】
図2は、従来の単一アクセスポイントシステム、Wi-Fiメッシュネットワーク、及びWi-Fiリピータシステムに対する
図1の分散型Wi-Fiシステムの動作の違いのネットワーク図である。
【0023】
【
図3】
図3は、
図1の分散型Wi-Fiシステムにおけるアクセスポイントの機能コンポーネントのブロック図である。
【0024】
【
図4】
図4は、
図1の分散型Wi-Fiシステムと共に使用され得る、サーバ、Wi-Fiクライアントデバイス、又はユーザデバイスの機能コンポーネントのブロック図である。
【0025】
【
図5】
図5は、
図1の分散型Wi-Fiシステムの構成及び最適化プロセスのフローチャートである。
【0026】
【
図6】
図6は、
図5の構成及び最適化プロセスの一部としての最適化への入力及び出力のブロック図である。
【0027】
【
図7】
図7は、熱管理処理のフローチャートである。
【0028】
【
図8】
図8は、アクセスポイントのローカル熱制御のためのプロセスのフローチャートである。
【0029】
【
図9】
図9は、アクセスポイントのクラウドベースの熱制御のためのプロセスのフローチャートである。
【0030】
【
図10】
図10は、分散型Wi-Fiネットワークにおける複数のアクセスポイントの熱管理を考慮した分散型Wi-Fiネットワークを最適化するためのプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
様々な実施形態において、本開示は、ローカルの熱管理、クラウドベースの熱管理、及び分散型Wi-Fiネットワークにおける最適化及び動作に基づく熱管理を含む、無線アクセスポイントの熱管理に関する。本開示の目的は、小型のフォームファクタと美的設計とを可能にし、過熱を防止し、パフォーマンスの低下やハードウェアの削減を必要としない、アクセスポイントの熱管理である。一般的に、システムと方法とは、アクセスポイントが過熱状態に近づいていることを検出し、動作を変更して、電力消費を削減しながらネットワークのパフォーマンスの低下を最小限に抑える。
【0032】
<分散型Wi-Fiシステム>
図1は、クラウドベース12の制御を備えた分散型Wi-Fiシステム10のネットワーク図を示している。分散型Wi-Fiシステム10は、IEEE802.11プロトコル及びそのバリエーションに従って動作することができる。分散型Wi-Fiシステム10は、住居、オフィス等のロケーション全体に分散させることができる複数のアクセスポイント14(アクセスポイント14A~14Hとラベル付けされている)を含む。即ち、分散型Wi-Fiシステム10は、単一のアクセスポイント、リピータ、又はメッシュシステムでサービスすることが非効率的又は非実用的である任意の物理的なロケーションでの動作を企図している。本明細書で説明するように、分散型Wi-Fiシステム10は、ネットワーク、システム、Wi-Fiネットワーク、Wi-Fiシステム、クラウドベースのシステム等と呼ぶことができる。アクセスポイント14は、ノード、アクセスポイント、Wi-Fiノード、Wi-Fiアクセスポイント等と呼ぶことができる。アクセスポイント14の目的は、Wi-Fiクライアントデバイス16(Wi-Fiクライアントデバイス16A~16Eとラベル付けされている)にネットワーク接続性を提供することである。Wi-Fiクライアントデバイス16は、クライアントデバイス、ユーザデバイス、クライアント、Wi-Fiクライアント、Wi-Fiデバイス等と呼ぶことができる。
【0033】
典型的な住宅での配備では、分散型Wi-Fiシステム10は、家庭内に3~12個以上のアクセスポイントを含むことができる。多数のアクセスポイント14(分散型Wi-Fiシステム10のノードとも呼ぶことができる)は、Wi-Fiサービスを必要とするWi-Fiクライアントデバイス16までの距離と同様に、任意のアクセスポイント14間の距離が常に小さいことを保証する。即ち、分散型Wi-Fiシステム10の目的は、アクセスポイント14間の距離が、Wi-Fiクライアントデバイス16と、関連するアクセスポイント14との間の距離と同様のサイズとなることである。このように距離が短いため、消費者の家の隅々まで、Wi-Fi信号で十分にカバーできることが保証される。また、分散型Wi-Fiシステム10内の任意のホップが短く、壁をほとんど通過しないことも保証される。これにより、分散型Wi-Fiシステム10の各ホップで非常に強力な信号強度が得られ、高いデータレートの使用が可能になり、堅牢な動作が提供される。当業者は、Wi-Fiクライアントデバイス16が、モバイルデバイス、タブレット、コンピュータ、家庭用電化製品、ホームエンターテインメントデバイス、テレビ、又は任意のネットワーク対応デバイスであり得ることを認識することに留意されたい。外部ネットワーク接続性の場合、1つ以上のアクセスポイント14をモデム/ルータ18に接続でき、これはケーブルモデム、デジタル加入者線(DSL)モデム、又は分散型Wi-Fiシステム10に関連付けられた物理的なロケーションへの外部ネットワーク接続性を提供する任意のデバイスであり得る。
【0034】
優れたカバレッジを提供する一方で、多数のアクセスポイント14(ノード)には調整の問題がある。全てのアクセスポイント14を正しく構成して効率的に通信するには、集中管理が必要である。この制御は、好ましくは、インターネット(クラウド12)を介して到達でき、ユーザデバイス22上で実行されるアプリケーション(「アプリ」)等を介してリモートでアクセスできるサーバ20上で行われる。従って、分散型Wi-Fiシステム10の実行は、一般に「クラウドサービス」と呼ばれるものになる。サーバ20は、測定データを受信し、測定データを分析し、それに基づいて分散型Wi-Fiシステム10内のアクセスポイント14を、クラウド12を介して構成するように構成されるクラウドベースのコントローラでも良い。サーバ20はまた、Wi-Fiクライアントデバイス16のそれぞれが接続(関連付け)するアクセスポイント14を決定するように構成することができる。即ち、一態様では、分散型Wi-Fiシステム10は、アクセスポイント14及びWi-Fiクライアントデバイス16の動作を最適化、構成、及び監視するための(クラウドベースのコントローラ又はクラウドサービスを用いた)クラウドベースの制御を含む。このクラウドベースの制御は、アクセスポイントにローカルでログインする等のローカル構成に依存する従来の動作とは対照的である。分散型Wi-Fiシステム10において、制御と最適化に必要なのは、アクセスポイント14へのローカルログインではなく、例えば異種ネットワーク(分散型Wi-Fiシステム10とは異なるネットワーク)(LTEや別のWi-Fiネットワーク等)を経由してクラウド12内のサーバ20と通信するユーザデバイス22(又はローカルWi-Fiクライアントデバイス16)である。
【0035】
アクセスポイント14は、接続性のために無線リンクと有線リンクの両方を含むことができる。
図1の例では、アクセスポイント14Aは、モデム/ルータ18へのギガビットイーサネット(登録商標)(GbE)有線接続を有することができる。オプションとして、アクセスポイント14Bは、冗長性やロードバランシング等のために、モデム/ルータ18への有線接続も有する。また、アクセスポイント14A、14Bは、モデム/ルータ18への無線接続を有することができる。アクセスポイント14は、クライアント接続性(クライアントリンクと呼ばれる)及びバックホール(バックホールリンクと呼ばれる)のための無線リンクを有することができる。分散型Wi-Fiシステム10は、クライアントリンクとバックホールリンクとが必ずしも同じWi-Fiチャネルを共有せず、それにより干渉を減らすという点で、従来のWi-Fiメッシュネットワークとは異なる。即ち、アクセスポイント14は、少なくとも2つのWi-Fi無線チャネルをサポートすることができ、クライアントリンク又はバックホールリンクのいずれかを提供するために柔軟に使用でき、モデム/ルータ18への接続性用又は他のデバイスへの接続用に少なくとも1つの有線ポートを有してよい。分散型Wi-Fiシステム10において、アクセスポイント14の小さなサブセットのみが、モデム/ルータ18への直接接続性を必要とし、接続されていないアクセスポイント14は、接続されているアクセスポイント14へのバックホールリンクを通じてモデム/ルータ18と通信する。
【0036】
<従来のWi-Fiシステムと比較した分散型Wi-Fiシステム>
図2は、従来の単一アクセスポイントシステム30、Wi-Fiメッシュネットワーク32、及びWi-Fiリピータネットワーク33に対する分散型Wi-Fiシステム10の動作の違いを示しているネットワーク図である。単一アクセスポイントシステム30は、あるロケーション(例えば、家)内の全てのWi-Fiクライアントデバイス16にサービスを提供するために中央に配置され得る単一の強力なアクセスポイント34に依存する。再び、本明細書で説明するように、典型的な住居では、単一アクセスポイントシステム30は、アクセスポイント34とWi-Fiクライアントデバイス16との間にいくつかの壁や床等を有することができる。加えて、単一アクセスポイントシステム30は単一のチャネルで動作するため、隣接するシステムから干渉を受ける虞がある。Wi-Fiメッシュネットワーク32は、Wi-Fiカバレッジを分配する複数のメッシュノード36を有することにより、単一アクセスポイントシステム30に関するいくつかの問題を解決する。具体的には、Wi-Fiメッシュネットワーク32は、互いに完全に相互接続されているメッシュノード36に基づいて動作し、各メッシュノード36とWi-Fiクライアントデバイス16との間でチャネルX等のチャネルを共有する。即ち、Wi-Fiメッシュネットワーク32は、完全に相互接続されたグリッドであり、同じチャネルを共有し、メッシュノード36とWi-Fiクライアントデバイス16との間の複数の異なる経路を可能にする。しかしながら、Wi-Fiメッシュネットワーク32は同じバックホールチャネルを使用するため、ソースポイント間の全てのホップは、データを配信するために取られるホップの数によってネットワーク容量を分割する。例えば、ビデオをWi-Fiクライアントデバイス16にストリーミングするために3ホップを要する場合、Wi-Fiメッシュネットワーク32は、容量の1/3しか残されない。Wi-Fiリピータネットワーク33は、Wi-Fiリピータ38に無線機で接続されたアクセスポイント34を含む。Wi-Fiリピータネットワーク33は、アクセスポイント14とWi-Fiクライアントデバイス16との間に高々1つのWi-Fiリピータ38が存在するスタートポロジである。チャネルの観点から、アクセスポイント34は、第1チャネルCh.XでWi-Fiリピータ38と通信でき、Wi-Fiリピータ38は、第2チャネルCh.YでWi-Fiクライアントデバイス16と通信できる。
【0037】
分散型Wi-Fiシステム10は、様々なホップに異なるチャネル又はバンドを使用して(一部のホップは同じチャネル/バンドを使用する場合があるが、必須ではない)Wi-Fi速度の低下を防ぐことにより、全ての接続に同じチャネルを必要とするというWi-Fiメッシュネットワーク32の問題を解決する。例えば、分散型Wi-Fiシステム10は、アクセスポイント14間及びWi-Fiクライアントデバイス16間(例えば、Ch.X、Y、Z、A)の間で異なるチャネル/バンドを使用することができ、また、分散型Wi-Fiシステム10は、クラウド12による構成及び最適化に基づいて、必ずしも全てのアクセスポイント14を使用するわけではない。分散型Wi-Fiシステム10は、複数のアクセスポイント14を提供することにより、単一アクセスポイントシステム30の問題を解決する。分散型Wi-Fiシステム10は、Wi-Fiクライアントデバイス16とゲートウェイとの間の最大で2つの無線ホップを可能にするWi-Fiリピータネットワーク33におけるようなスタートポロジに制約されない。また、分散型Wi-Fiシステム10は、Wi-Fiクライアントデバイス16とゲートウェイとの間に1つの経路があるが、Wi-Fiリピータネットワーク33とは異なり複数の無線ホップを可能にするツリートポロジを形成する。
【0038】
Wi-Fiは共有された単信方式プロトコルであり、これは、ネットワーク内で同時に発生できるのは、2つのデバイス間における会話1つだけであり、1つのデバイスがトーク中の場合、他のデバイスはリスニングする必要がある、ということを意味する。異なるWi-Fiチャネルを使用することにより、分散型Wi-Fiシステム10で同時に複数の会話を行うことができる。アクセスポイント14間で異なるWi-Fiチャネルを選択することにより、干渉と輻輳が回避される。クラウド12を介したサーバ20は、最適化されたチャネルホップソリューションにおいてアクセスポイント14を自動的に構成する。分散型Wi-Fiシステム10は、消費者とそのWi-Fiクライアントデバイス16の絶えず変化するニーズをサポートするルートとチャネルを選択できる。分散型Wi-Fiシステム10のアプローチは、バックホール接続性又はクライアント接続性のいずれの場合でも、Wi-Fi信号が遠くまで移動する必要がないようにすることである。従って、Wi-Fi信号は強いままであり、Wi-Fiメッシュネットワーク32と同じチャネル上で通信することによって、又はWi-Fiリピータと通信することによって、干渉を回避する。一態様では、クラウド12内のサーバ20は、最良のユーザ体験のためにチャネル選択を最適化するように構成される。
【0039】
注目すべきは、熱管理に関連して本明細書で説明するシステム及び方法は、分散型Wi-Fiシステム10、シングルアクセスポイントシステム30、Wi-Fiメッシュネットワーク32、及びWi-Fiリピータネットワーク33のいずれかによる動作を企図している。システムと方法との特定の態様では、分散型Wi-Fiシステム10、Wi-Fiメッシュネットワーク32、Wi-Fiリピータネットワークなど、複数のデバイスWi-Fiネットワークを必要とすることがある。
【0040】
<アクセスポイント>
図3は、分散型Wi-Fiシステム10内のアクセスポイント14(ワイヤレスルータとも呼ばれる)の機能コンポーネントのブロック図である。アクセスポイント14は、プロセッサ102、1つ又は複数の無線機104、ローカルインターフェース106、データストア108、ネットワークインターフェース110、及び電力112を含む物理的フォームファクタ100を含む。当業者は、
図3は過度に簡略化されてアクセスポイント14を示し、実際の実施形態は本明細書に記載の機能又は本明細書に詳細に記載されていない既知又は従来の動作機能をサポートする追加のコンポーネント及び適切に構成された処理ロジックを含み得ることを理解される。一実施形態では、フォームファクタ100は、アクセスポイント14が電気ソケットに直接差し込まれ、電気ソケットに接続された電気プラグによって物理的に支持されるコンパクトな物理的実装である。このコンパクトな物理的実装は、住宅全体に分散された多数のアクセスポイント14に最適である。注目すべきことに、フォームファクタ100は、大型のヒートシンクやファンを設置する余地がほとんどないほどコンパクトである。本明細書で記載されるシステム及び方法は、アクセスポイント14の熱管理のための技術を提供する。
【0041】
プロセッサ102は、ソフトウェア命令を実行するためのハードウェアデバイスである。プロセッサ102は、任意の特注又は市販のプロセッサ、中央処理装置(CPU)、モバイルデバイス300に関連するいくつかのプロセッサのうちの補助プロセッサ、(マイクロチップ又はチップセットの形態の)半導体ベースのマイクロプロセッサ、又は一般的にソフトウェア命令を実行するための任意のデバイスであり得る。アクセスポイント14が動作しているとき、プロセッサ102は、メモリ又はデータストア108内に格納されたソフトウェアを実行し、メモリ又はデータストア108との間でデータを通信し、ソフトウェアの指示に従って一般的にアクセスポイント14の動作を制御するように構成される。一実施形態では、プロセッサ102は、電力消費及びモバイルアプリケーション用に最適化されたものなどのモバイル最適化プロセッサを含み得る。
【0042】
無線機104は、分散型Wi-Fiシステム10における無線通信を可能にする。無線機104は、IEEE802.11規格に従って動作することができる。無線機104は、分散型Wi-Fiシステム10での適切な通信を可能にするためのアドレス、制御、及び/又はデータ接続を含む。本明細書で説明されるように、アクセスポイント14は、異なるリンク、即ち、バックホールリンク及びクライアントリンク、をサポートするための1つ又は複数の無線機を含む。最適化70は、帯域幅、チャネル、トポロジなどの無線機104の構成を決定する。一実施形態では、アクセスポイント14は、2.4GHz(2.4G)及び5GHz(5G)の2x2マルチ入力、マルチ出力(MIMO)802.1lb/g/n/ac無線機を同時に動作させるデュアルバンド動作をサポートし、2.4GHzの場合は20/40MHz、5GHzの場合は20/40/80MHzの動作帯域幅を有する。例えば、アクセスポイント14は、IEEE802.11AC1200ギガビットWi-Fi(300+867Mbps)をサポートできる。
【0043】
ローカルインターフェース106は、アクセスポイント14へのローカル通信のために構成され、有線接続又はブルートゥース(登録商標)などの無線接続のいずれかであり得る。アクセスポイント14はクラウド12を介して構成されているため、新しくオンにしたアクセスポイント14の接続を最初に確立するには、オンボーディングプロセスが必要である。一実施形態では、アクセスポイント14はまた、ユーザデバイス22上のアプリなどを介して分散型Wi-Fiシステム10にオンボーディングするためにユーザデバイス22(又はWi-Fiクライアントデバイス16)への接続を可能にするローカルインターフェース106を含むことができる。データストア108は、データを格納するために使用される。データストア108は、揮発性メモリ要素(例えば、ランダムアクセスメモリ(DRAM、SRAM、SDRAMなどのRAM))、不揮発性メモリ要素(例えば、ROM、ハードドライブ、テープ、CDROM等)のいずれか、及びそれらの組み合わせを含み得る。更に、データストア108は、電子的、磁気的、光学的、及び/又は他のタイプの記憶媒体を組み込むことができる。
【0044】
ネットワークインターフェース110は、アクセスポイント14への有線接続を提供する。ネットワークインターフェース104を使用して、アクセスポイント14がモデム/ルータ18と通信できるようにすることができる。また、ネットワークインターフェース104は、Wi-Fiクライアントデバイス16又はユーザデバイス22へのローカル接続を提供するために使用され得る。例えば、デバイス内のアクセスポイント14への配線は、Wi-Fiをサポートしないデバイスへのネットワークアクセスを提供することができる。一実施形態では、分散型Wi-Fiシステム10内の全てのアクセスポイント14は、ネットワークインターフェース110を含む。別の実施形態では、モデム/ルータ18に接続するか、又はローカル有線接続を必要とする選択アクセスポイント14は、ネットワークインターフェース110を有する。ネットワークインターフェース110は、例えば、イーサネットカード又はアダプタ(例えば、10BaseT、ファストイーサネット、ギガビットイーサネット、10GbE)を含み得る。ネットワークインターフェース110は、ネットワーク上の適切な通信を可能にするために、アドレス、制御、及び/又はデータ接続を含み得る。
【0045】
プロセッサ102及びデータストア108は、アクセスポイント14の動作を制御、データ収集及び測定制御、データ管理、メモリ管理、ならびにクラウドを介したサーバ20との通信及びインターフェース制御をするソフトウェア及び/又はファームウェアを含むことができる。プロセッサ102及びデータストア108は、本明細書で説明される様々なプロセス、アルゴリズム、方法、技術などを実装するように構成され得る。
【0046】
<クラウドサーバとユーザデバイス>
図4は、分散型Wi-Fiシステム10と共に使用され得る、サーバ20、Wi-Fiクライアントデバイス16、又はユーザデバイス22の機能コンポーネントのブロック図である。
図4は、Wi-Fiクライアントデバイス16、サーバ20、ユーザデバイス22、又は任意の一般的な処理デバイスのいずれかを形成することができる機能コンポーネントを示している。サーバ20は、ハードウェアアーキテクチャに関して、一般にプロセッサ202、入力/出力(I/O)インターフェース204、ネットワークインターフェース206、データ記憶部208、及びメモリ210を含むデジタルコンピュータであってよい。
図4は、サーバ20を過度に簡略化して示しており、実際の実施形態は、本明細書に記載されている又は本明細書で詳細に説明されていない既知又は従来の動作機能をサポートする追加のコンポーネント及び適切に構成された処理ロジックを含んでもよいことを、当業者は理解されたい。
【0047】
コンポーネント(202、204、206、208、及び210)は、ローカルインターフェース212を介して通信可能に接続される。ローカルインターフェース212は、例えば、当技術分野で知られているように、1つ以上のバス若しくは他の有線又は無線接続であってよいが、これらに限定されない。ローカルインターフェース212は、通信を可能にするために、数ある中でも、コントローラ、バッファ(キャッシュ)、ドライバ、リピータ、及びレシーバ等の、簡略化のために省略される追加の要素を有してもよい。更に、ローカルインターフェース212は、前述のコンポーネント間の適切な通信を可能にするために、アドレス、制御、及び/又はデータ接続を含み得る。
【0048】
プロセッサ202は、ソフトウェア命令を実行するためのハードウェアデバイスである。プロセッサ202は、任意の特注又は市販のプロセッサ、中央処理装置(CPU)、サーバ20に関連付けられたいくつかのプロセッサの中の補助プロセッサ、(マイクロチップ又はチップセットの形態の)半導体ベースのマイクロプロセッサ、又は一般にソフトウェア命令を実行するための任意のデバイスであってよい。サーバ20が動作しているとき、プロセッサ202は、メモリ210内に格納されたソフトウェアを実行し、メモリ210との間でデータを通信し、ソフトウェア命令に従ってサーバ20の動作を一般的に制御するように構成される。I/Oインターフェース204は、1つ以上のデバイス又はコンポーネントからユーザ入力を受けるため、及び/又はシステム出力を提供するために使用してよい。ユーザ入力は、例えば、キーボード、タッチパッド、及び/又はマウスを介して提供されてもよい。システム出力は、ディスプレイデバイス及びプリンタ(図示せず)を介して提供されてもよい。I/Oインターフェース204は、例えば、シリアルポート、パラレルポート、スモールコンピュータシステムインターフェース(SCSI)、シリアルATA(SATA)、PCI Expressインターフェース(PCI-x)、赤外線(IR)インターフェース、無線周波数(RF)インターフェース、及び/又はユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェースを含んでよい。
【0049】
ネットワークインターフェース206は、サーバ20がクラウド12等のネットワーク上で通信することを可能にするために使用してよい。ネットワークインターフェース206は、例えば、イーサネットのカード又はアダプタ(例えば、10BaseT、ファストイーサネット、ギガビットイーサネット、10GbE)、若しくはワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)のカード又はアダプタ(例えば、802.11a/b/g/n/ac)を含み得る。ネットワークインターフェース206は、ネットワーク上の適切な通信を可能にするために、アドレス、制御、及び/又はデータ接続を含み得る。データ記憶部208は、データを格納するために使用してよい。データ記憶部208は、揮発性メモリ要素(例えば、ランダムアクセスメモリ(DRAM、SRAM、SDRAM等のRAM))、不揮発性メモリ要素(例えば、ROM、ハードドライブ、テープ、CD ROM等)、及びそれらの組み合わせのいずれかを含み得る。更に、データ記憶部208は、電子的、磁気的、光学的、及び/又は他のタイプの記憶媒体を組み込んでよい。一例では、データ記憶部208は、例えば、サーバ20のローカルインターフェース212に接続された内部ハードドライブ等、サーバ20の内部に配置され得る。更に、別の実施形態では、データ記憶部208は、例えば、I/Oインターフェース204(例えば、SCSI又はUSB接続)に接続された外部ハードドライブ等、サーバ20の外部に配置されてもよい。更なる実施形態では、データ記憶部208は、例えば、ネットワーク接続ファイルサーバ等のネットワークを介してサーバ20に接続されてもよい。
【0050】
メモリ210は、揮発性メモリ要素(例えば、ランダムアクセスメモリ(DRAM、SRAM、SDRAM等のRAM))、不揮発性メモリ要素(例えば、ROM、ハードドライブ、テープ、CD ROM等)、及びそれらの組み合わせのいずれかを含み得る。更に、メモリ210は、電子的、磁気的、光学的、及び/又は他のタイプの記憶媒体を組み込んでよい。メモリ210は分散型アーキテクチャを有してよく、様々なコンポーネントが互いに離れて位置するが、プロセッサ202によってアクセスできることに留意されたい。メモリ210内のソフトウェアは、1つ以上のソフトウェアプログラムを含んでよく、そのそれぞれは、論理機能を実装するための実行可能な命令の順序付きリストを含む。メモリ210内のソフトウェアは、適切なオペレーティングシステム(O/S)214及び1つ以上のプログラム216を含む。オペレーティングシステム214は、1つ以上のプログラム216といった他のコンピュータプログラムの実行を実質的に制御し、スケジューリング、入出力制御、ファイル及びデータ管理、メモリ管理、ならびに通信制御及び関連サービスを提供する。1つ以上のプログラム216は、最適化70に関連するような、本明細書で説明される様々なプロセス、アルゴリズム、方法、手法等を実装するように構成され得る。
【0051】
<分散型Wi-Fiシステムの構成と最適化プロセス>
図5は、分散型Wi-Fiシステム10の構成及び最適化プロセス250のフローチャートである。具体的には、構成及び最適化プロセス250は、分散型Wi-Fiシステム10の効率的な動作を可能にするための様々なステップ251~258を含む。これらのステップ251~258は、異なる順序で実行されてもよく、継続的に繰り返されてもよく、分散型Wi-Fiシステム10が変化する条件に適応することを可能にする。第1に、各アクセスポイント14がプラグインされ、オンボードされる(ステップ251)。分散型Wi-Fiシステム10では、アクセスポイント14のサブセットのみがモデム/ルータ18に有線接続され(又はオプションでモデム/ルータ18へのワイヤレス接続を使用して)、有線接続のないアクセスポイント14はクラウド12に接続するためにオンボードされる必要がある。オンボーディングステップ251は、新しくインストールされたアクセスポイント14が分散型Wi-Fiシステム10に接続することを保証し、アクセスポイントがコマンドを受信し、データをサーバ20に提供することができる。オンボーディングステップ251には、正しいサービスセット識別子(SSID)(ネットワークID)及び関連するセキュリティキーを使用してアクセスポイントを構成することが含まれ得る。一実施形態では、オンボーディングステップ251は、アクセスポイント14とユーザデバイス22との間のブルートゥース又は同等の接続を用いて実行され、ユーザがSSID、セキュリティキーなどを提供することを可能にする。オンボーディングされると、アクセスポイント14は、構成のために分散型Wi-Fiシステム10を介してサーバ20への通信を開始できる。
【0052】
第2に、アクセスポイント14は、測定値を取得して情報を収集し、ネットワーキング設定の最適化を可能にする(ステップ252)。収集される情報には、全てのノード間だけでなく、全てのノードと全てのWi-Fiクライアントデバイス16間の信号強度とサポート可能なデータレートを含めることができる。具体的には、測定ステップ252は、データを収集するために各アクセスポイント14によって実行される。干渉の量、分散型Wi-Fiシステム10で動作するさまざまなアプリケーションに必要な負荷(スループット)の測定など、さまざまな追加測定を実行できる。第3に、測定ステップ252からの測定及び収集された情報は、クラウド12内のサーバ20に提供される(ステップ253)。ステップ251~253は、分散型Wi-Fiシステム10の場所で実行することができる。
【0053】
ステップ252、253でのこれらの測定には、各クライアントが必要とするトラフィック負荷、各ノード間及び各ノードから各クライアントまで維持できるデータレート、ノード間及びノードとクライアントとの間などのリンクのパケットエラー率が含まれる。更に、ノードはネットワークに影響を与える干渉レベルを測定する。これには、他のクラウド制御分散型Wi-Fiシステムからの干渉(「ネットワーク内干渉」)、及び制御可能なネットワークの一部ではないデバイスからの干渉(「ネットワーク外干渉」)が含まれる。これらの干渉のタイプを区別することが重要である。ネットワーク内の干渉はクラウドシステムで制御できるため、全てのネットワーク内システムの大規模な最適化に含めることができる。ネットワーク外の干渉はクラウドから制御できないため、干渉を別のチャネルに移動したり、変更したりすることはできません。システムはそれらを変更するのではなく、それらに適応する必要がある。これらのネットワーク外の干渉には、クラウド制御されていないWi-Fiネットワークや、ブルートゥースデバイス、ベビーモニター、コードレス電話などのWi-Fiが使用する周波数で送信する非Wi-Fiデバイスが含まれる。
【0054】
もう1つの重要な入力は、ネットワークを通過するパケットの遅延である。これらの遅延は、直接測定、パケットがゲートウェイのWi-Fiネットワークに到着したときのタイムスタンプ、及び最終ノードでの出発時の経過時間の測定から導出できる。ただし、このような測定では、ノード間のある程度の時間同期が必要になる。別のアプローチは、各ノードを通過する遅延の統計を個別に測定することである。次に、ネットワーク全体の平均合計遅延と、いくつかの仮定をして遅延の分布を、各ノードの遅延統計に基づいて個別に計算できる。遅延は、最適化で最小化されるパラメータになる可能性がある。各ノードが送信と受信とに費やす時間を知ることは、最適化にも役立つ。これは、送受信される情報量とともに、さまざまなリンクが維持している平均データレートを決定するために使用できる。
【0055】
第4に、クラウド12内のサーバ20は、測定値を使用して、分散型Wi-Fiシステム10の最適化アルゴリズムを実行する(ステップ254)。最適化アルゴリズムは、ネットワーク操作に最適なパラメータを出力する。これらには、クライアントリンク及びバックホールリンクに対して各ノードが動作する必要があるチャネルの選択、ノードが使用すべきこれらの各チャネルの帯域幅、ノード間の接続のトポロジ、及びネットワーク内の任意の送信元から任意の宛先へそのトポロジを通るパケットのルート、各クライアントが接続する適切なノード、各クライアントが接続する必要がある帯域などが含まれる。
【0056】
具体的には、最適化はノードからの測定値を、最大化される目的関数への入力として使用する。各リンクの容量は、移動されたデータの量(負荷)、及び干渉のためにメディアがビジー状態である時間を調べることによって導き出すことができる。これは、送信キューがビジーだった時間の割合に対する、リンクを介して移動されたデータの比率を取得することによっても導出できる。この容量は、リンクが飽和状態までロードされ、可能な限り多くのデータを移動している場合に達成できる仮想スループットを表している。
【0057】
第5に、最適化の出力は、分散型Wi-Fiシステム10を構成するために使用される(ステップ255)。ノードとクライアントデバイスとは、最適化の出力に基づいてクラウドから構成する必要がある。特定の手法を使用して構成を高速化し、すでに動作しているネットワークの中断を最小限に抑える。最適化の出力は、分散型Wi-Fiシステム10の操作パラメータである。これには、各ノードが動作している周波数チャネルと、使用するチャネルの帯域幅が含まれる。802.1lac規格では、20、40、80、及びl60MHzのチャネル帯域幅が可能である。使用する帯域幅の選択は、より高いデータレート(広いチャネル帯域幅)のサポートと、分散型Wi-Fiシステム10で使用するさまざまな非干渉チャネルの数を増やすこととのトレードオフである。最適化では、さまざまなユーザのアプリケーションに必要な負荷をサポートするリンクごとに、可能な限り低いチャネル帯域幅を使用しようとする。最も狭い十分なスループットのチャネルを使用することにより、非干渉チャネルの最大数が分散型Wi-Fiシステム10内の他のリンクのために残される。
【0058】
最適化は、目的関数を最大化することにより、上記のように入力から出力を生成する。多くの異なる可能な目的関数がある。1つの目的は、全てのクライアントに提供される全体的なスループットを最大化することである。この目標には、すでに十分に機能しているクライアントのパフォーマンスを向上させるために、一部のクライアントを完全に枯渇させることによって最大の全体的なスループットを達成される場合があるという不利益がある。別の目的は、最悪の状況でネットワーク内のクライアントのパフォーマンスを可能な限り向上させることである(クライアントへの最小スループットを最大化する)。この目標は、公平性を促進するのに役立つが、最悪なクライアントの段階的な改善のために非常に大量の総容量を犠牲にする可能性がある。推奨されるアプローチでは、ネットワーク内の各クライアントが必要とする負荷を考慮し、その負荷比率に対して過剰な容量を最大化する。最適化により、容量が改善されるだけでなく、2つのAP間で容量がシフトされる。望ましい最適化は、負荷の比率の方向で過剰容量を最大化する最適化である。これは、分散型Wi-Fiシステム10に所望の負荷を運ぶための最大のマージンを与えることを表し、パフォーマンスをより堅牢にし、遅延を減らし、ジッタを低くする。この厳密な最適化は、割り当ての容量をさまざまなスケールで比較検討するより柔軟な最適化機能を提供することにより、更に強化できる。高いユーティリティ値は、必要な負荷よりもスループットを高くすることに置かれる。必要な負荷を超えてクライアント又はノードにスループットを提供することは、依然として利点と見なされるが、全てのクライアント/ノードに必要な負荷をかけるよりも、重み付けははるかに軽くなる。このようなソフト加重最適化機能により、デバイス間の過剰なパフォーマンスのより有益なトレードオフが可能になる。
【0059】
最適化出力の別のセットは、分散型Wi-Fiシステム10のトポロジ、つまり、どのノードが他のどのノードに接続するかを定義する。2つのクライアント又はクライアントとインターネットゲートウェイ(モデム/ルータ18)との間の分散型Wi-Fiシステム10を通る実際のルートも、最適化の出力である。再び、最適化はルート内で最良のトレードオフを選択しようとする。一般に、より多くのホップをトラバースすると、各ホップの範囲が短くなり、データレートが高くなり、より堅牢になる。ただし、ホップ数が増えると、レイテンシーとジッタが増加し、チャネル周波数の割り当てによっては、システムの他の部分からより多くの容量を奪う。
【0060】
第6に、傾向及びパターンを決定するために学習アルゴリズムをクラウドに保存されたデータに適用することができる(ステップ256)。サーバ20は、ノードからの測定値、最適化からの結果、及び関連する最適化後の後続の測定値を格納できることに留意されたい。このデータを使用して、傾向とパターンを特定し、さまざまな目的で分析できる。ネットワークの再構成には時間がかかり、アクティブな通信が常に少なくとも部分的に中断されるため、ピーク負荷が到達する前に、ピーク負荷用にネットワークを構成することは有益である。すでに取得されている履歴データから学習することで、将来発生する使用や干渉を予測することができる。キャプチャされたデータを学習する他の用途には、バグの識別とクライアントデバイスの動作のバグの発見が含まれる。クライアントデバイスの動作に関するバグが発見されたら、ネットワークのインフラストラクチャ側からツールやコマンドを使用して、それらのバグを回避できる可能性がある。
【0061】
第7に、ネットワークの性能を評価し、ユーザ又はサービスがWi-Fiを介して実行されているサービスプロバイダに報告することができる(ステップ257)。第8に、アプリケーション(ユーザデバイス22上で動作するモバイルアプリなど)は、ネットワーク動作への可視性をユーザに提供することができる(ステップ258)。これには、ネットワークアクティビティとパフォーマンスメトリックとの表示が含まれる。モバイルアプリを使用して、ユーザに情報を伝え、測定を行い、ユーザがWi-Fiネットワーク操作の特定の側面を制御できるようにすることができる。また、モバイルアプリは、セルラーシステムを介してインターネットと通信して、ノードが最初にセットアップされるときにノードのオンボーディングを支援する。セルラーシステムを利用する携帯電話アプリは、ユーザの通常のインターネット接続が機能していないときにWi-Fiネットワークがインターネット及びクラウドと通信する方法も提供する。この携帯電話ベースの接続は、ステータスの通知、サービスプロバイダ及び他のユーザへの通知に使用でき、また、ユーザの通常のインターネット接続が機能していないときに自宅からインターネットにデータを送信するために使用することもできる。
【0062】
構成及び最適化プロセス520は、実施形態としての分散型Wi-Fiシステム10を参照して本明細書に記載される。当業者は、構成及び最適化プロセス250が、Wi-Fiメッシュネットワーク32、Wi-Fiリピータネットワーク33などを含む任意のタイプの複数ノードWi-Fiシステム(即ち、分散型Wi-Fiネットワーク又はWi-Fiシステム)で動作できることを認識するであろう。例えば、クラウドベースの制御は、Wi-Fiメッシュネットワーク32、Wi-Fiリピータネットワーク33などにも実装でき、ここに記載する様々なシステム及び方法は、クラウドベースの制御及び最適化のためにここでも動作できる。また、「分散型Wi-Fiネットワーク」又は「Wi-Fiシステム」という用語は、Wi-Fiメッシュネットワーク32、Wi-Fiリピータネットワーク33などにも適用できるが、分散型Wi-Fiシステム10は、分散型Wi-Fiネットワークの特定の実施形態のことである。つまり、分散型Wi-Fiシステム10は、Wi-Fiメッシュネットワーク32、Wi-Fiリピータネットワーク33などに類似しているのは複数のノードをサポートするという点であるが、それぞれに関連する制限を克服するためには前述の違いがある。
【0063】
<最適化>
図6は、最適化270への入力260及び出力262のブロック図である。入力260は、例えば、各クライアントによって必要とされるトラフィック負荷、ノード間及びアクセスポイント14(ノード)とWi-fiクライアントデバイス16との間の信号強度、ネットワーク内の可能な各リンクのデータレート、各リンクのパケットエラーレート、ネットワーク内干渉の強度と負荷と、及びネットワーク外干渉の強度と負荷とを含むことができる。ここでも、これらの入力は、複数のアクセスポイント14によって収集され、クラウド12内のサーバ20に通信される測定値とデータとに基づいている。サーバ20は、最適化70を実施するように構成される。最適化270の出力には、例えば、チャネル及び帯域幅(BW)の選択、ルート及びトポロジ、送信要求/送信クリア(RTS/CTS)設定、送信機(TX)電力、チャネル評価閾値のクリア、クライアントの関連付けステアリング、バンドステアリングが含まれる。
【0064】
更に、最適化270の1つの態様は、過熱ノードから離れるようなクライアント関連付けステアリングなどの熱管理も含み、そのようなノードが電力及び負荷を低減することを可能にする。
【0065】
<熱管理プロセス>
再び、様々な実施形態において、本開示は、アクセスポイント14、アクセスポイント34、メッシュノード36、リピータ38など(本明細書ではまとめてアクセスポイント14と呼ぶ)の熱管理に関する。アクセスポイント14で消費されるピーク電力の大部分は、RF電力増幅器から来る。無線機104のいずれか又は全てが、送信に高い割合の時間を費やすと、過熱が発生する可能性がある。これは、アクセスポイント14内の(ネットワークインターフェース110内の)イーサネットチップもアクティブに電力を消費している場合に悪化する可能性がある。
【0066】
図7は、熱管理プロセス300のフローチャートである。熱管理プロセス300は、アクセスポイント14によってローカルに、クラウド12を介してリモートで、及び/又はクラウド12を介して最適化270の一部として実行できることに留意されたい。熱管理プロセス300は、アクセスポイント14内の電力消費を低減するためにアクセスポイント14の動作条件を変更することを含む。熱管理プロセス300は、アクセスポイント14の温度をチェックすることを含む(ステップ301)。例えば、熱管理プロセス300は、アクセスポイント14、ネットワークインターフェース110などの5GHzと2.4GHzの両方の無線チップの温度をチェックすることを含むことができる。一般に、アクセスポイント14にある任意の温度センサーを確認し、温度低減機能を有効にする決定に含めることができる。温度がプログラム可能な閾値を超える場合(ステップ302)、低減が開始され得る(ステップ303)。温度は、各無線チップ、ネットワークインターフェース110などに基づくことができ、又はアクセスポイント14内の全体的な温度であることが可能であることに留意されたい。
【0067】
低減プロセスは、2.4G及び5Gバンドの一方又は両方の送信を単一のストリームにドロップすることであり得る(1xTX構成)。しかしながら、本明細書に記載されているように様々なメカニズムを使用することができる。フォールバックとして、過度の温度を防止するのに使用可能な低減プロセスが十分でない場合は、アクセスポイント14の完全なシャットダウンを使用できる。このようなシャットダウンは、分散型Wi-Fiシステム10の最適化270のコンテキストで行うことができる。これにより、シャットダウンを補正できる。両方のチップの温度が特定の温度閾値を下回ると、スロットルがリセット(オフ)される。温度に関連する全てのアクション(オン、オフなどの調整)をクラウド12に記録できる。更に、ステップ252において、温度の定期的な測定をクラウド12に送ることができる。
【0068】
<熱低減技法>
熱低減技法の例には、無線機をオフにする、2.4G無線機や5G無線機のMIMO送信ディメンションを削減する、送信電力を削減する、ソフトウェアベースの送信デューティサイクル、デューティサイクル制御用のクワイエットタイマー(quiet timer)、ネットワークトポロジの変更などの一つ以上を含む。
【0069】
無線機104をオフにすることは、この状態にあるときアクセスポイント14が過熱しないように、電力消費を大幅に低減するという利点を有する。例えば、分散型Wi-Fiシステム10では、過熱する可能性が最も高いアクセスポイント14は、ゲートウェイ又は「マスター」ノードであり、イーサネットを使用してモデム/ルータ18に接続しているため、2.4G及び5G無線機の両方でほぼ100%Txデューティサイクルであることがある。他の全てのノードではイーサネットが実行されている可能性は低く、転送するデータの受信に少なくとも数パーセントの時間を費やす必要があるため、両方の無線機104をほぼ100%Txで動作させることはできない。Wi-Fiクライアントデバイス16と2.4Gで接続されたアクセスポイント14とが5Gで再接続できるか、又は別のアクセスポイント14に2.4Gで接続できるので、マスターノード(例えば、アクセスポイント14A)を5Gのみにドロップすることは許容される。そして、ほとんどの場合マスターノードは5Gを使用して分散型Wi-Fiシステム10にバックホールする。非常にまれな出来事のネットと、ノードで2.4Gを遮断する「存続可能性」により、このアプローチが実行可能になる。ただし、ネットワークトポロジと相互作用するため、モードのオン/オフは複雑であり、トポロジの最適化に関してクラウド12で対処する必要がある。更に、このモードの切り替えは破壊的であり、最小限に抑える必要があるため、注意深いヒステリシス/負荷検出システムを考案する必要がある。
【0070】
MIMO送信のディメンションを削減することに関しては、これは無線機をオフにするよりも優雅な適応である。ただし、2つの無線機のうち1つだけを2x2から1x1にドロップしても、過熱が発生しないことを保証するには不十分な場合がある。5G無線機を1x1に落とすと、2G無線機を完全にオフにするよりも容量の損失が大きくなるため、このアプローチはWi-Fiネットワークの容量を維持するためには最適ではない(マスター/ゲートウェイノードで特に悪い)。また、このアプローチでは、ドライバに単一ストリームデータレートでパケットをキューイングさせ、単一ストリームTxチェーンマスクを強制する(両方のチェーンから単一ストリームを出力する巡回遅延多様性(CDD)タイプの送信を無効にする)ためのソフトウェアがいくつか必要である。シングルチェーン受信及びシングルチェーン送信に切り替えると、受信モードのときに電力が削減されるため、更に多くの電力を節約できる。ただし、シングルチェーンレセプションにドロップすると、更に複雑になる。アクセスポイント14がそのMIMO受信ディメンションを縮小すると、アクセスポイント14がドロップしたものよりも大きいMIMOディメンションでWi-Fiクライアントデバイス16からパケットを受信できなくなる。アクセスポイント14が処理できるMIMOディメンションは、Wi-Fiクライアントデバイス16がアクセスポイント14に関連付けるときにWi-Fiクライアントデバイス16に提供される。従って、この値が動的に変更された場合、Wi-Fiクライアントデバイス16は、アクセスポイント14がフルディメンションのMIMOパケットを受信できなくなったことを認識しない。従って、そのMIMOディメンションを変更するアクセスポイント14は、Wi-Fiクライアントデバイス16にスイッチを通知する必要がある。別のアプローチは、デュアルストリームパケットが成功しない場合にWi-Fiクライアントデバイス16を適切に適応させることである。ほとんどのWi-Fiクライアントデバイス16には、完全なMIMOディメンションが機能していないことをクライアントが認識するレート適応アルゴリズムがあり(クライアントは、チャネルが不十分であると想定する)、自動的に低いMIMOディメンションにドロップする。
【0071】
送信機の電力を削減することに関しては、両方の帯域の送信機の電力を十分に減らして、デバイスが過熱しないことを保証することは効果的である場合があるが、両方の帯域のスループットを大幅に低下させ(再び5Gの容量の問題)、おそらくWi-Fiクライアントデバイス16とアクセスポイント14とが接続できなくなるまで範囲を短くしてしまう可能性がある。更に、大幅な省電力を実現するには、要求される送信機の電力が変化するときに、電力増幅器のバイアス電流を変更する必要がある場合がある。これには、ドライバの変更が必要であり、電圧、温度、チップ間などの特定の出力電力レベルに必要なバイアスレベルの重要な測定と特性評価とが必要になる。
【0072】
ソフトウェアベースの送信デューティサイクルに関しては、送信中にのみ使用される電力増幅器から電力がほとんど供給されるため、送信のデューティサイクル(時間の割合)が制限されている場合、アクセスポイント14の温度を減少させることができる。送信デューティサイクルは、ネットワークスタックで比較的高いレベルに制限することも、パケットを送信するハードウェアに送信しているときに非常に低いレベルに制限することもできる。高レベルのソフトウェアベースのデューティサイクル制限の実装はそれほど複雑ではないが、ソフトウェアシステムの設計によっては、デューティサイクルの制御に効果的でない場合がある。ドライバ内のソフトウェアキューが非常に深く、データレートが不明な場合、無線機のデューティサイクルを確実に制御することはできない。更に、この手法を適用すると、TCP(Transmission Control Protocol)のパフォーマンスが急速に低下する。別のオプションは、オフチャネルスキャンメカニズムを使用して送信機を効果的にゲートすることである。スキャンのために無線機がオフチャネルになると、無線機は送信しないため、送信デューティサイクルが減少する。ただし、オフチャネルスキャンでは、送信と受信との両方でドライバがチャネルから離れるので、このアプローチはネットワークパフォーマンスに深刻な悪影響を与える可能性がある。
【0073】
デューティサイクル制御用のクワイエットタイマーに関して、このアプローチは、IEEE802.11hクワイエットタイムメカニズムなどのハードウェアを使用して、先頭のキューを有利に制御する。これにより、データレート又はキューの深さに関係なく、Txデューティサイクルを確実に制御できる。このアプローチには多くの利点がある。このアプローチは、比較的細かい方法で実装でき(複数のデューティサイクルの範囲をサポートできる)、スループットと温度とのトレードオフを微調整してパフォーマンスを最適化できる。このアプローチでは接続が切断されることはないため、トポロジの変更は必要なく、クラウド12でソフトウェアを大幅に変更する必要もない。範囲や帯域の可用性に影響を与えず、スループットが低下するだけであるから、Wi-Fiクライアントデバイス16を範囲外にしたり、アクセスポイント14の接続機能を完全に壊したりする心配はない。モードの切り替えは迅速で、ローカライズされたスループット効果のみを使用できるため、このアプローチはモード間を迅速に移動でき、ヒステリシスをアクセスポイントの温度のみに基づいて行うことができ、それより複雑であってはならない。ただし、多くのチップセットでは、完全な送信デューティサイクル制御を実現するためのクワイエットタイムメカニズムを十分に制御できない。最後に、クワイエットタイムに入ると、肯定応答(ACK)の送信がゲートされる。これにより、アップリンクトラフィック又はWi-Fiクライアントデバイス16から返されるTCP ACKに問題が発生する可能性がある。クリアトゥセンド(CTS)トゥセルフが必要であり、これを防ぐには、クワイエット期間を短く(<30ms)する必要がある。この時点で、クワイエットタイムの間隔を短くして、デューティサイクルを大幅に削減する必要がある。
【0074】
ネットワークトポロジに関して、分散型Wi-Fiシステム10又はWi-Fiメッシュネットワーク32において、トポロジは、どのアクセスポイント14が他のどのアクセスポイント14に接続するかを決定する。一部のアクセスポイント14は、特定のトポロジのより中心に位置しているため、より高い負荷のトラフィックを伝送する必要がある。特に、アクセスポイント14は、それぞれがWi-Fiクライアントデバイス16のセットを有するいくつかの他のアクセスポイント14にトラフィックを転送する「中央」の役割に置かれることがある。このタイプの中央アクセスポイント14は、特に一部のダウンストリームアクセスポイント14までの範囲が大きい場合、送信デューティサイクルが高く、距離をカバーするために低いデータレートを使用させることがある。低いデータレートで同じ量のトラフィックを移動すると、本質的に送信デューティサイクルが高くなる。従って、クラウド12は、温度を最適化のためのパラメータとして見なすことができ、例えば、より高い温度のデバイスを中心的な役割から外して移動させる。例えば、より高温のアクセスポイント14は、トラフィックを送信しなければならない子を少なくし、トラフィック負荷の低い子を持ち、遠距離にいる子を少なくするように最適化することができる。
【0075】
また、クラウド12は、クライアントのステアリングを実行して、どのWi-Fiクライアントデバイス16が分散型Wi-Fiシステム10内のアクセスポイント14に関連付けるかを決定することができる。一実施形態では、Wi-Fiクライアントデバイス16は、熱低減を必要とするアクセスポイント14がより少ないWi-Fiクライアントデバイス16を有し、より低い負荷を有するWi-Fiクライアントデバイス16を有し、距離が近いWi-Fiクライアントデバイス16を有するなどのようにステアリングされ得る。また、クラウド12はバンドステアリングを実行でき(2.4G vs. 5G)、Wi-Fiクライアントデバイス16が接続する帯域を決定する。クラウド12は、アクセスポイント14内で過熱している無線機104から過熱していない無線機104へのWi-Fiクライアントデバイス16のバンドステアリングを実行して、過熱している無線機14へのWi-Fiクライアントデバイス16の接続数を減らし、より低い負荷が接続されたWi-Fiクライアントデバイス16があり、接続されたアクセスポイント14により近いWi-Fiクライアントデバイス16があるようなどにできる。
【0076】
もちろん、シャットダウン又はリブートは、他のアプローチでは温度を制限するのに不十分であることが判明した場合、温度を下げるためのフォールバック方法になり得る。
【0077】
<過熱の検出>
アクセスポイント14によってさまざまな測定が行われ、熱低減が必要か否かが判断される。ステップ301は、アクセスポイント14内の温度の測定を含む。温度は、アクセスポイント14内の周囲温度、アクセスポイント14のケースの温度、アクセスポイント14内の無線機104などのコンポーネントのダイ温度などであり得る。例えば、複数のコンポーネントに複数の測定を実行し、どのコンポーネントの温度が過剰であるかに応じて、特定の低減策を講じることができる。
【0078】
アクセスポイント14が過熱していることを検出するために、プロセスを実施して、熱A/Dコンバータ(ADC)の読み取り値を温度にマッピングできる。例えば、各無線チップとイーサネットチップとには温度ダイオードがあり、その電圧は温度ADCによって取得される。ADCの出力は、キャリブレーションデータに基づいて絶対温度に変換する必要がある。これは、ADC出力を絶対温度にマップするルックアップテーブル(LUT)を介して実行できる。アクセスポイント14のチップごとに異なるルックアップテーブルが必要になる場合がある。温度測定が実行されるときはいつでも、ドライバは温度ADCをサンプリングし、ルックアップテーブルの値から実際の温度をルックアップ/補間する。
【0079】
一実施形態では、電力消費を低減するためのアクションについて3つの閾値を定義することができる。いずれかのチップ(2.4G及び5Gチップ)の温度測定値が指定された閾値を超えると、アクションを実行できる。全ての閾値はプログラム可能である。3つの閾値とそのアクションは次のとおりである。
【0080】
3つの例示的な閾値が上記で説明されているが、より多くの閾値を使用して、熱低減の様々な程度又はプロセスを誘発することができる。一部の熱低減プロセスは、滑らかな連続体で制御できる。例えば、送信デューティサイクルは、100%から0%のあたりのデューティサイクルに制限できる。このような熱低減プロセスは、フィードバックループによって継続的に制御できる。例えば、許容可能な温度を維持しながら最大限のパフォーマンスを可能にするために、デューティサイクルを細かいステップで連続的に調整することにより、最大許容温度を長期間維持できる。
【0081】
熱管理プロセス300は、複数の温度閾値を使用して、熱低減を変更又は追加するか、又は熱管理の量(例えば、デューティサイクルが制限されるもの)を変更することができる。熱低減は、低減技法のために連続的で滑らかな方法で変化する制御ループに実装できる。例えば、制御ループは、アクセスポイント14内の最大許容温度を維持するために連続的に変化する送信機のデューティサイクルを含むことができる。
【0082】
熱管理プロセス300は、例えば、温度が「低」閾値などの閾値を下回ったときに、アクセスポイント内の温度の測定に基づいて停止することができる。また、停止のための閾値は、熱管理制御においてヒステリシスを作成するために、熱管理プロセス300を開始するための閾値よりも低い。熱管理プロセス300は、アクセスポイント14のデューティサイクルの測定によってトリガーされることができ、熱管理プロセス300は、アクセスポイント14のデューティサイクルの測定に基づいて停止され得る。デューティサイクル自体に基づく制御は、温度センサーの必要性を軽減するが、デバイスのデューティサイクルと温度の変化のアプリオリな知識又はキャリブレーションを必要とする。
【0083】
<熱的過熱への対応>
好ましくは、温度が「高」温度閾値を超える場合、送信は、1つの送信電力増幅器及び送信Txチェーンのみがアクセスポイント14に対して使用可能になるように行われなければならない。これは、2.4Gバンドと5Gバンドとの両方で行う必要がある。この間、データパケットは、単一ストリームのデータレートのみを指定してキューに入れる必要がある。更に、CDD(2つの電力増幅器からの単一ストリームの送信)を使用禁止にする必要がある。
【0084】
サーマルスロットリング中は、レシーバを2チェーン受信モードのままにしておくことが推奨される。Rxで単一のチェーンにドロップする利点は大きくない。過熱状態は、送信デューティサイクルが高い場合にのみ発生するため、受信にかかる時間はごくわずかである。受信時の消費電力は、2つのストリームであっても、送信時の消費電力をはるかに下回っている。そのため、1つの受信ストリームへのドロップによる節約はわずかである。許容可能なストリーム数の変更をWi-Fiクライアントデバイス16に通知するには、追加の作業が必要であり、Wi-Fiクライアントデバイス16を再度関連付ける必要がある場合がある。通知されない場合、データレートに関係なく、レート適応アルゴリズムが2つのストリームパケット全てが失敗することに十分に同意しないWi-Fiクライアントデバイス16が存在する可能性がある。しかし、全てのWi-Fiクライアントデバイス16は、2つのストリームを処理するには不十分なチャネルダイバーシティを備えたチャネルを処理できなければならないため、これは依然として機能する。デバイスがその状況をどのように適切に処理するかの問題である。
【0085】
本明細書に記載する熱低減プロセスのいずれも、デバイスの過熱に対応するときに使用できる。更に多くの熱低減が必要な場合は、一度に複数のプロセスを適用できる。閾値を超えたときの対応は、量子化されたステップ反応であるか、又は熱管理プロセス300の閉ループ連続細粒度制御である可能性がある。
【0086】
<熱低減モードの終了>
3つ目の温度閾値(「低」)を用いて、シングルチェーン送信のスロットリングをクリアするのに十分に温度が低下していることを確認できる。「低」温度閾値と「高」温度閾値との違いにより、ヒステリシスバンドが設定され、サーマルスロットリングがより安定した状態に保たれることを支援する。ただし、サーマルスロットリングは迅速に追加又は削除でき、ネットワークの容量/スループットの変化のみを引き起こすため、ネットワークが異なるサーマルスロットリング設定間で変動しても、大きな問題にはならない。一般的に、低閾値は、シングルチェーン送信をアクティブにするだけでは到達しないように十分低く設定する必要がある。両方のシングルチェーン送信がアクティブになっていて、2チェーン送信を再度有効にした場合アクセスポイント14が過熱しないように要求された送信デューティサイクルが十分に低下している場合にのみ、低閾値は超えられるべきである。
【0087】
<熱管理のクラウドベース制御>
熱管理プロセス300は、各アクセスポイント14でローカルに実行することができ、即ち、過熱を低減するために使用されるプロセスの検出と選択との両方を完全にローカルで決定することができる。中間的なアプローチは、各家のアクセスポイント14の1つ内で動作する中央コントローラを持つことである。これにより、ある程度の調整が可能になり、その家との熱制御プロセスが最適化される可能性がある。それはまだかなり合理的であり、ネットワークが外部の世界に接続されているという要件を回避する。ただし、熱管理を適用するタイミングと適用するプロセスに関する意思決定プロセスとをクラウド12で行うと、多数の追加の利点を得ることができる。
【0088】
クラウド12は、複数のアクセスポイント14を含む、消費者の家のネットワーク全体を見ることができる。また更に広い視野、例えば、さまざまなアパートのWi-Fiネットワーク間の全てのやり取りを含むアパート全体、を見ることもできる。このシステム全体の知識により、トポロジの変更や、パフォーマンスを維持するというより優れた仕事を行うWi-Fiクライアントデバイス16が接続されている場所を含む、熱低減技法の選択が可能になる。パフォーマンスは、ネットシステムスループット、Wi-Fiクライアントデバイス16間のスループットの公平性、スループットの一貫性、遅延、又はネットワークのジッタによって判断できる。理想的には、これらの要素の重み付けされた組み合わせで選択が行われ、スループットと品質との両方を最適化するように熱低減プロセスを選択できるようになる。
【0089】
熱管理に関連してクラウド12で実行できる他の利点とプロセスとがある。クラウド12にプロセスがあると、フィールド内の全てのアクセスポイント14のファームウェアを更新する必要なく、アルゴリズムを簡単に変更できる。代わりに、クラウド12のソフトウェアを1回更新するだけで、フィールドに配備されている全ての(又は任意のサブセットの)アクセスポイント14の動作を変更できる。
【0090】
熱測定値がクラウド12に移動された場合、データ分析を実行して、どのアクションを実行すべきかを設定するように適切な閾値を抽出する。デバイスの寿命は、各温度サンプルに非線形の寿命重み係数を適用し、これらの値を経時的に積分することによって推定できる。将来のハードウェア設計では、フィールドから取得した温度データを利用して、これらの将来のデバイスにはるかに正確な熱要件を提供できる。ヒートシンク、ファン、通気、及び温度を制御するその他の設計要素の量は、前世代のハードウェアのフィールドでの測定に基づいて最適化できる。多くのデバイスの温度を調べて外れ値を探すことにより、特定の種類の欠陥があるデバイスを特定できる。そのようなデバイスは、デバイスが故障する前に、あるいは潜在的に危険な状況を引き起こす前に、リコールして交換することができる。
【0091】
2つの追加の熱関連データである熱スロットルイベントと定期的な温度測定値とがクラウド12のデータベースに記録されるべきである。熱スロットルイベントの場合、熱スロットルがアクティブ又は非アクティブになるたびに、これらのイベントは、無線機104の両方のチップからのタイムスタンプと温度の読み取り値とともに記録できる。通常の温度測定値の場合、温度測定値は10秒ごとに取得でき(構成可能)、1分ごとの最大値、最小値、平均値を決定できる。例えば、15分(15セットのデータ)は、15分ごとにクラウド12に通信することができる。
【0092】
電力消費、温度、デューティサイクル、及びその他の熱関連パラメータに関する測定値をクラウド12に移動することは、構成及び最適化プロセス250のステップ252-253の間など、比較的簡単である。まず、データをパケット化してシリアル化する必要がある。多い転送量が少ない方が、短い転送が多いことよりも効率的である。これに対する制限は、情報をクラウド12に取得する際の望ましいレイテンシーである。このデータをグループ化して送信するためのプロトコル、Protobufなど、周知のプロトコルが存在する。移送の準備が整ったら、さまざまなインターネットプロトコル(IP)ベースの通信プロトコルを使用してデータを転送できる。特に適切な手法は、センサーデータをクラウド12に転送するために構築された標準であるMessage Queue Telemetry Transport(MQTT)であり、温度及びデューティサイクルなどの測定値によく一致する。
【0093】
データがクラウド12に到着すると、データパイプライン内で、データが流入するときに両方を処理することが望ましい。Spark Streamingなどのシステムをこの目的に使用することができ、データが流入すると同時に高度な計算を行うことができる。そして処理された生データは、データベースに保存できる。任意の周知の業界標準のデータベースが、この目的に等しく役立つであろう。一旦データがクラウド12のデータベースに保存されると、データ分析を実行して、温度を制御するアルゴリズムに通知できる学習を抽出できる。多種多様なデータ分析手法がある。RやTableauなどのツールを使用して、データを視覚化し、人間が傾向及び行動を抽出できるようにする。機械学習は、相関を確立し、パターンを自動的に抽出するためにも適用される。特に、将来の温度又はデータトラフィックの予測は、あらゆるネットワークの最適化又は構成が翌日又はより長い期間有効であることを保証するのに役立ち、頻繁な中断を伴う最適化の必要性を減らす。適用できる多種多様な機械学習ツールがあり、調査対象の変数と抽出される値とに応じて適用される線形回帰及び非線形回帰、決定木法、AREMA、ベイズ法などがある。
【0094】
<ネットワーク最適化の一部としての熱管理>
クラウド12から制御される熱管理プロセス300を有することは極めて大きな利点を提供するが、熱管理がネットワークの最適化270に含まれる場合、更に大きな利益を得ることができる。例えば、分散型Wi-Fiシステム10のクラウドベースの最適化は、2017年3月20日出願の「OPTIMIZATION OF DISTRIBUTED WI-FI NETWORKS」と題する米国特許出願第15/463,154号に記載されて、その内容は参照により援用されている。最適化の要素として熱状況を含めることにより、最適化270は、アクセスポイント14の熱的制約を同時に満たすために多くの熱低減技法のいずれかを選択し、ネットワーク内のデバイスの可能な限り最高のスループットと品質とを達成できる。
【0095】
熱管理プロセス300が導入された後に最適化270を行うことと、熱管理ソリューションの選択を実際に最適化270の一部とすることとで、区別がなされるべきである。熱管理プロセス300を選択した後に最適化270を実行することはまったく最適化しないよりも優れているが、ネットワークの真の全体的な最適化を達成することにおいては同様に実行できない。また、トポロジの変更や他のアクセスポイント14へのクライアントの誘導などにより、過熱しているアクセスポイント14の負荷を軽減するなど、いくつかの熱低減ソリューションを適切に適用することもできない。これらの手法では、過熱するアクセスポイント14の負荷を十分に削減しながら、パフォーマンスを維持するために、これらのプロパティを変更する最善の方法を理解する必要がある。
【0096】
ネットワークを最適化する最良の方法は、トポロジ(アクセスポイント14の親子関係)、各ホップの周波数帯域及びチャネル選択、どこでWi-Fiクライアントデバイス16が接続しているか(どのアクセスポイント14及びどのバンド)、及び各アクセスポイント14で使用される任意の熱低減プロセスを含む、ネットワークの全ての側面を単一の最適化270で共同で検討することである。このような問題には、さまざまな最適化手法を適用できる。おそらく、最良のアプローチは、問題を混合整数線形計画(MILP)問題として定式化することである。温度制限は、最適化のハード制約として追加することも、より低い温度が望ましいが必要ではない場合は目的関数の目標として構成することもできる。最適化が最大化しようとしている目的関数には、合計システムスループット(システム容量)、おそらく必要な負荷又はサービス品質(QoS)のニーズによって考慮される個々のスループット、スループットの公平性を考慮したメトリック、ジョイント荷重が存在する場合の結合スループット、各アクセスポイント14の温度が含まれるべきである。温度要素分解では、非線形、おそらく非常に非線形である可能性がある。極端に非線形の温度要素分解では、オプティマイザが最大限界に達するまで温度をまったく考慮せず、最大となった時点で温度がはるかに支配的な要因になる。これには、最適化の制約としてハードリミットを設定するのと同じ効果がある。温度の要素分解は、デザイン内の各チップの温度に基づいて個別に行うことも、又はそれらをまとめて調べることによって行うこともできる。個々のチップの温度を調べると、過熱チップがアクセスポイント14内の複数の無線機のうち1つしか持たない可能性があるため、アクセスポイント14の無線機の1つだけに熱低減方法をインテリジェントに適用できる。
【0097】
MILPは、選択することができる様々な動作モード(例えば、1x1対2x2MIMO)及びアクセスポイント14が担っているトラフィック負荷を考慮してアクセスポイント14が到達する温度を計算する方程式を含む。最適化270は、Wi-Fiクライアントデバイス16のそれぞれに伝わると予想されるトラフィック負荷を入力として必要とする。このようにモデル化されたアクセスポイント14の温度と、目的関数で適切に考慮された温度とにより、MILPシステムのソリューションは、温度要件を満たしながら達成できる最高のパフォーマンスを当然もたらす。最適化270自体が熱低減スキームを選択し、ネットワークの残りの部分でのそのスキームの影響を考慮する。
【0098】
MILPと目的関数が定義されると、分岐法及び束縛法、低減及び線形化、部分空間検索、ヒューリスティック法を含む、いくつもの方法を使用してMILPを解くことができる。
【0099】
<熱低減の選択>
ステップ303は、閾値を超える1つ又は複数の温度に基づいて低減を実行することを含む。熱管理プロセス300は、特定の状況でどの熱低減技法を実行するかを決定するための様々なアプローチを含み得る。
【0100】
温度を下げるための特定の熱低減技法は、ネットワークの動作条件とパフォーマンスメトリックとに基づいて選択される。一実施形態では、性能メトリックは、スループット、例えば、全てのWi-Fiクライアントデバイス16への全体的なスループット、最も弱い(最も遅い)Wi-Fiクライアントデバイス16へのスループット、Wi-Fiクライアントデバイス16間の加重スループット、合負荷スループット等を最大化する。別の実施形態では、パフォーマンスメトリックは、スループットベースではなく、品質に関連する。例えば、パフォーマンスメトリックは、スループットの一貫性、レイテンシーの最小化、ジッタの最小化などを含み得る。
【0101】
一実施形態では、熱管理を実施する決定及び/又はどのタイプの熱低減を採用するかの決定は、ローカルで決定されたデータのみに基づいてアクセスポイント14でローカルに行われる。別の実施形態では、熱管理を実施する決定、及び/又はどのタイプの熱低減を採用するかは、中央コントローラで行われる。例えば、中央コントローラは、ローカルネットワーク内のアクセスポイント14のうちの1つの中又は上に配置することができる。
【0102】
また、中央コントローラは、クラウドベースのコントローラとしてのサーバ20などによって、クラウド12内に配置することができる。有利には、クラウドベースのコントローラは、アクセスポイント14にファームウェアを配備する必要なく、熱管理及び熱低減を実装することができる。アクセスポイント14によってローカルに取得された温度測定値はクラウド12に記録され、これらの測定値に対してデータ分析/学習が実行される。例えば、データ分析/学習を使用して、適切な閾値の決定、デバイスの寿命の予測、将来のデバイスの設計の通知、製造上の欠陥の特定などを行うことができる。更に、ローカルでトリガーされたイベント及び/又はローカルの軽減をクラウド12に記録することもできる。
【0103】
熱管理と熱低減は、最適化270で利用できる。一実施形態では、最適化270は、ネットワークを可能な限り最良の状態にするために、任意の熱低減の後に実行することができる。別の実施形態では、熱低減は最適化270の一部とすることができ、例えば、様々なアクセスポイント14の熱低減イベントを最適化270の一部として選択することができる。最適化270は、熱低減技法と、アクセスポイント14の親/子関係、使用される周波数チャネル、アクセスポイント14又はWi-Fiクライアントデバイス16接続の帯域を含むネットワークのトポロジの態様とを選択する。
【0104】
再び、最適化270は、アクセスポイント14における熱放散に対する制約を含むように定式化することができ、例えば、熱制約は、アクセスポイント14内の個々の無線機104に固有であり得る。制約及び最適化270は、予想される送信デューティサイクル、送信電力、及び動作帯域を因数分解する。最適化270は、Wi-Fiクライアントデバイス16の予想される負荷を入力として有する(反応熱管理ではなくプリエンプティブ熱管理)。最適化で使用される予想される負荷は、負荷の履歴測定値から導出される。最適化270は、デバイスの予想される温度を、スループット又は品質などの他の要素を含む最適化目的関数に要素分解することによって実行される。
【0105】
<ワイヤレスアクセスポイントのローカル熱制御>
図8は、アクセスポイントのローカル熱制御のためのプロセス400のフローチャートである。プロセス400は、アクセスポイント14、アクセスポイント34、メッシュノード36、リピータ38などのいずれかによって実施される。注目すべきことに、プロセス400は、各無線アクセスポイントでローカルに実装される。プロセス400は、その中で動作する1つ以上の無線チップを含むアクセスポイントに関連する温度を決定して(ステップ401)、第1の閾値を超える温度に応答して、1つ又は複数の無線チップの動作条件を変更するために1つ又は複数の熱低減技法を実行して(ステップ402)、温度が第2の閾値よりも低いことに応答して、1つ又は複数の熱低減技法を復旧させる(ステップ403)ことを含む。
【0106】
1つ以上の熱低減技法には、1つ以上の無線チップの多重入力多重出力(MIMO)ディメンションを削減する、1つ以上の無線チップの1つをオフにする、1つ以上の無線チップの1つに関連する送信機の電力を削減する、及び1つ以上の無線チップに関連する送信機のデューティサイクルを制御することが含まれ得る。デューティサイクルは、ソフトウェアとIEEE802.11のクワイエットタイムメカニズムとのいずれか一つを介して制御できる。デューティサイクルは、ローカルで決定することに基づいてデューティサイクルを継続的に調整するフィードバックループで100%から0%の間で制御できる。ローカルの熱制御の安定性を維持するために、ヒステリシスバンドの第2の閾値は第1の閾値とは異なる場合がある。温度は、アナログ/デジタルコンバーター(ADC)によって電圧が取得され、キャリブレーションデータに基づいて出力が変換される温度ダイオードの読み取りに基づいて、1つ以上の無線チップのそれぞれで決定できる。温度は、アクセスポイントの複数のポイントで決定でき、1つ又は複数の熱低減技法は、どの温度が第1の閾値を超えているかに基づいて選択される。
【0107】
別の実施形態では、ローカル熱制御のために構成されたアクセスポイントは、1つ以上の無線機104と、1つ又は複数の無線機104に通信可能に結合されるプロセッサ102とを含み、プロセッサ102はその中で動作する1つ又は複数の無線機に関連する温度を決定するように構成され、第1の閾値を超える温度に応答して、1つ又は複数の無線機の動作条件を変更するために1つ又は複数の熱低減技法を実行し、温度が第2の閾値よりも低いことに応答して、1つ又は複数の熱低減技法を復旧させる。
【0108】
さらなる実施形態では、その中の様々なノードでローカル熱制御を実施するように構成された分散型Wi-Fiネットワーク10は、分散型Wi-Fiネットワーク10を形成する互いに接続された複数のアクセスポイント14を含み、複数のアクセスポイント14のそれぞれは、その中で動作する1つ以上の無線機に関連する温度を決定するように構成され、第1の閾値を超える温度に応答して、1つ又は複数の無線機の動作条件を変更するために1つ又は複数の熱低減技法を実行して、温度が第2の閾値よりも低いことに応答して、1つ又は複数の熱低減技法を復旧させる。
【0109】
<ワイヤレスアクセスポイントのクラウドベースの熱制御>
図9は、アクセスポイントのクラウドベースの熱制御のためのプロセス500のフローチャートである。プロセス500は、アクセスポイント14、アクセスポイント34、メッシュノード36、リピータ38などのいずれかに接続されたサーバ20によってクラウド12に実装される。プロセス500は、その中で動作する1つ又は複数の無線チップを含むアクセスポイントから定期的に温度測定値を取得して(ステップ501)、第1の閾値を超える温度に応答して、1つ又は複数の熱低減技法に1つ又は複数の無線チップの動作条件を変更させて(ステップ502)、温度が第2の閾値よりも低いことに応答して、1つ又は複数の熱低減技法を元に戻す(ステップ503)ことを含む。
【0110】
1つ又は複数の熱低減技法は、1つ又は複数の無線チップ上の多入力多出力(MIMO)ディメンションを低減すること、1つ又は複数の無線チップの1つをオフにすること、1つ以上の無線チップのうちの1つに関連する送信機の電力を低減すること、1つ以上の無線チップに関連する送信機のデューティサイクルを制御することのいずれかを含むことができる。アクセスポイントはマルチノードWi-Fiネットワークの一部にすることができ、1つ以上の熱低減技法には、マルチノードWi-Fiネットワークのトポロジを変更してアクセスポイントの動作条件を調整し、アクセスポイントの動作条件を調整するためにアクセスポイントに関連付けられているクライアントをステアリングし、複数の無線機間のアクセスポイントに関連付けられたクライアントをバンドステアリングすることが含まれる。
【0111】
アクセスポイントはマルチノードWi-Fiネットワークの一部にすることができ、プロセスには、マルチノードWi-Fiネットワークのネットワーク動作条件とパフォーマンスメトリックとに基づいて一つ又は複数の熱低減技法を特定することを更に含み得る(ステップ504)。パフォーマンスメトリックは、スループットの最大化を含むことができ、スループットは、全てのクライアントへの全体的なスループット、最も遅いクライアントへのスループット、及び全てのクライアント間の加重スループットのうちの1つである。パフォーマンスメトリックは、マルチノードWi-Fiネットワーク全体のスループットの一貫性、レイテンシーの最小化、ジッタの最小化の一つを含み、品質に基づいたものにすることができる。
【0112】
プロセス500は、温度測定値を記録すること(ステップ505)、第1の閾値及び第2の閾値の1つ又は複数の識別値について、履歴温度測定値を分析すること(ステップ506)、アクセスポイントの製品寿命を決定すること、新しいアクセスポイントの設計を通知すること、及び製造上の欠陥を特定することを更に含み得る。アクセスポイントをマルチノードWi-Fiネットワークの一部にすることができ、プロセス40は、1つ又は複数の熱低減技法でそれを補償することに続いて、マルチノードWi-Fiネットワークの最適化を実行することを更に含むことができる(ステップ507)。
【0113】
別の実施形態では、アクセスポイントの熱制御を実行するように構成されたクラウドベースのコントローラは、アクセスポイントに通信可能に結合されたネットワークインターフェース206と、を含む。ネットワークインターフェース206に通信可能に結合された1つ又は複数のプロセッサ202と、メモリ210とを含み、メモリ210は命令を格納して、命令が実行されると、1つ又は複数のプロセッサ202に、その中で動作する1つ又は複数の無線チップを含むアクセスポイントから定期的に温度測定値を取得させ、第1の閾値を超える温度に応答して、1つ又は複数の熱低減技法に1つ又は複数の無線チップの動作条件を変更させて、温度が第2の閾値よりも低いことに応答して、1つ又は複数の熱低減技法を復旧させる。
【0114】
さらなる実施形態では、クラウドベースのコントローラによって制御されるWi-Fiネットワークは、それぞれが1つ又は複数の無線機104を含む1つ又は複数のアクセスポイント14を含み、クラウドベースのコントローラは、1つ又は複数のアクセスポイントから定期的に温度測定値を取得するように構成され、1つ又は複数のアクセスポイントのアクセスポイント内の第1の閾値を超える温度に応答して、1つ又は複数の熱低減技法に、アクセスポイント内の1つ又は複数の無線チップの動作条件を変更させて、温度が第2の閾値よりも低いことに応答して、1つ又は複数の熱低減技法を復旧させる。
【0115】
<分散型Wi-Fiネットワークでの最適化と運用とに基づくワイヤレスアクセスポイントの熱管理>
図10は、分散型Wi-Fiネットワーク10における複数のアクセスポイント14の熱管理を考慮して、分散型Wi-Fiネットワーク10を最適化するためのプロセス600のフローチャートである。プロセス600は、複数のアクセスポイントから定期的に温度測定値を取得することを含み、複数のアクセスポイントのそれぞれは、その中で動作する1つ又は複数の無線チップを含み(ステップ601)、最適化に使用される温度制約として温度測定を使用して分散型Wi-Fiネットワークを構成するために最適化270を実行して、最適化は、分散型Wi-Fiネットワークのトポロジ、トポロジの各ホップのバンド及びチャネルの一つ又は複数を含む構成パラメータを決定して、どのクライアントがどのアクセスポイントにどの帯域で関連付けられているかを決定して(ステップ602)、分散型Wi-Fiネットワークに構成パラメータを提供して、その実装を行う(ステップ603)。
【0116】
構成パラメータには、熱制約に基づく熱低減のための1つ以上の無線チップへの調整を含めることができ、この調整には、1つ以上の無線チップの多重入力多重出力(MIMO)ディメンションの削減、1つ以上の無線チップをオフにする、1つ以上の無線チップに関連する送信機の電力を削減する、1つ以上の無線チップに関連する送信機のデューティサイクルを制御することのいずれかを含めることができる。最適化270は、熱低減のための調整を補償するように構成パラメータを調整する。
【0117】
最適化270は、その中の複数のアクセスポイントのそれぞれの予想温度をスループット及び/又は品質で因数分解する目的関数を利用する。最適化270は、履歴測定値に基づく各クライアントの予想される負荷の入力260と、熱的制約に基づくクライアント割り当てを含む構成パラメータの出力262とを有する。最適化270は、高温で動作するアクセスポイントが負荷を低減するように、熱的制約に基づいてトポロジを変更するための構成パラメータを決定する。最適化270は、高温で動作するアクセスポイントがクライアント負荷を低減するように、熱的制約に基づいてステアリングクライアントをアクセスポイントに変更する構成パラメータを決定する。
【0118】
最適化270は、ネットワーク動作条件とパフォーマンスメトリックとに基づいて構成パラメータを決定し、パフォーマンスメトリックには、スループットの最大化の1つが含まれ、スループットは、全てのクライアントへの全体的なスループット、最も遅いクライアントへのスループット、及び全てのクライアント間の重み付けスループットの1つであり、分散型Wi-Fiネットワーク全体のスループットの一貫性、レイテンシーの最小化、ジッタの最小化のうちの一つを含む、品質を最大化する。最適化270は、各無線機に固有の熱制約を利用して、閾値を超える温度の各無線機に熱低減技法を実施し、構成パラメータを変更して熱低減技法を補償する。最適化270は、熱的制約が閾値を超えるまで各アクセスポイントの熱的制約を無視し、その後熱的制約はそのアクセスポイントの最適化における支配的な要素として扱われる。
【0119】
別の実施形態では、Wi-Fiネットワークを制御するように構成されたクラウドベースのコントローラは、複数のアクセスポイントを含み、Wi-Fiネットワークに通信可能に結合されたネットワークインターフェース206を含み、ネットワークインターフェース206に通信可能に結合された1つ又は複数のプロセッサ202、実行時に、1つ又は複数のプロセッサ202に複数のアクセスポイントから定期的に温度測定値を取得させる命令を格納しているメモリ210とを含み、複数のアクセスポイントのそれぞれは、その中で動作する1つ又は複数の無線チップを含み、最適化を実行して、温度測定値を最適化で使用される熱制約として分散型Wi-Fiネットワークを構成して、最適化は、分散型Wi-Fiネットワークのトポロジ、トポロジの各ホップのバンド及びチャネル、及びどの帯域上のどのアクセスポイントに関連付けられているどのクライアントかの1つ以上を含む構成パラメータを決定して、分散型Wi-Fiネットワークに構成パラメータを提供して、その実装を行う。
【0120】
さらなる実施形態では、クラウドベースのコントローラによって制御されるWi-Fiネットワークは、それぞれが1つ又は複数の無線機104を含む1つ又は複数のアクセスポイント14を含み、クラウドベースのコントローラは、複数のアクセスポイントから定期的に温度測定値を取得するように構成され、複数のアクセスポイントのそれぞれは、その中で動作する1つ又は複数の無線チップを含み、最適化を実行して、温度測定値を最適化で使用される熱制約として分散型Wi-Fiネットワークを構成して、最適化は、分散型Wi-Fiネットワークのトポロジ、トポロジ内の各ホップのバンド及びチャネル、及びどの帯域上のどのアクセスポイントに関連付けられているどのクライアントの1つ以上を含む構成パラメータを決定して、分散型Wi-Fiネットワークに構成パラメータを提供して、その実装を行う。
【0121】
本明細書で説明されるいくつかの実施形態は、特定の非プロセッサ回路と組み合わせて本明細書に記載の方法及び/又はシステムの機能の一部、ほとんど、又は全てを実装するために制御するための特有の格納プログラム命令(ソフトウェアとファームウェアの両方を含む)と共に、マイクロプロセッサ、中央処理装置(CPU)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサ(NP)又はネットワークプロセッシングユニット(NPU)、グラフィックプロセッシングユニット(GPU)といったカスタマイズされたプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の1つ以上の汎用又は専用プロセッサ(「1つ以上のプロセッサ」)を含むことができることが理解されよう。或いは、一部又は全ての機能は、プログラム命令が保存されていない状態マシンによって、又は1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)で実装でき、各機能又は特定の機能のいくつかの組み合わせは、カスタムロジック又は回路として実装される。勿論、前述のアプローチの組み合わせが使用されてもよい。本明細書で説明するいくつかの実施形態では、ハードウェア内の対応するデバイス、並びにオプションでソフトウェア、ファームウェア、及びそれらの組み合わせは、様々な実施形態について本明細書で説明しているように、デジタル信号及び/又はアナログ信号に対して一連の動作、工程、方法、プロセス、アルゴリズム、機能、手法等を実行する「ように構成又は適合された回路」や「ように構成又は適合されたロジック」等と呼ばれる。
【0122】
更に、いくつかの実施形態は、コンピュータ、サーバ、電化製品、デバイス、プロセッサ、回路等をプログラミングするためのコンピュータ可読コードが格納された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含み、それぞれが、本明細書で説明及び請求される機能を実行するプロセッサを含むことができる。そのようなコンピュータ可読記憶媒体の例としては、ハードディスク、光学記憶装置、磁気記憶装置、ROM(読み取り専用メモリ)、PROM(プログラム可能な読み取り専用メモリ)、EPROM(消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ)、EEPROM(電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ)、フラッシュメモリ等が挙げられるが、これらには限定されない。非一時的なコンピュータ可読媒体に格納される場合、ソフトウェアは、様々な実施形態について本明細書で説明しているように、そのような実行に応答してプロセッサ又はデバイスに一連の動作、工程、方法、プロセス、アルゴリズム、機能、手法等を実行させる、プロセッサ又はデバイス(例えば、任意のタイプのプログラム可能な回路又はロジック)によって実行可能な命令を含むことができる。
【0123】
本開示は、好ましい実施形態及びその特定の例を参照して本明細書で例示及び説明されてきたが、他の実施形態及び例が同様の機能を実行し、及び/又は同様の結果を達成できることは当業者には容易に明らかであろう。そのような同等の実施形態及び例は全て、本開示の精神及び範囲内にあり、それによって企図され、以下の特許請求によって網羅されることが意図されている。