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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】生医学用発泡体
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/00 20060101AFI20230616BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230616BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 31/722 20060101ALI20230616BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20230616BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20230616BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
A61K9/00
A61K47/34
A61K31/56
A61K31/722
A61L15/26 100
A61L15/42 100
A61L15/44 100
A61K45/00
A61P29/00
A61P7/04
A61P11/02
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020533643
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 IB2018060463
(87)【国際公開番号】W WO2019123389
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】62/608,256
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514318275
【氏名又は名称】ストライカー・ユーロピアン・ホールディングス・I,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブズ,ジョハネス・ジャコバス
(72)【発明者】
【氏名】スタンリー,コリン
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0083779(KR,A)
【文献】特開平06-218059(JP,A)
【文献】特表2015-504867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61L
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための鼻腔内発泡被覆材であって、
第1のポリウレタンおよび止血剤を含む発泡コア部分であって、非晶性セグメントおよび結晶性セグメントを含む発泡コア部分と、
前記発泡コア部分が発泡シェル部分の中に少なくとも部分的に配置されるように調整された発泡シェル部分であって、前記発泡シェル部分が80%を超える空孔率を有し、第2のポリウレタンを含み、前記発泡シェル部分が非晶性セグメントおよび結晶性セグメントを含み、前記第1および第2のポリウレタンが同一または異なっている、発泡シェル部分と、
前記発泡シェル部分の中に配置された薬物と
を含み、
前記鼻腔内被覆材が第1の端部から第2の端部まで延在する細長い形状を有し、前記鼻腔内被覆材が前記第1の端部に隣接する第1の半体および前記第2の端部に隣接する第2の半体を有し、前記鼻腔内発泡被覆材の前記第1の半体の中の前記薬物の重量が前記鼻腔内発泡被覆材の前記第2の半体の中の前記薬物の重量より大きい、鼻腔内発泡被覆
【請求項2】
前記薬物がステロイドを含み、前記発泡シェル部分が前記ステロイドを含み、前記発泡コア部分が実質的に前記ステロイドを含まない、請求項1に記載の鼻腔内発泡被覆材。
【請求項3】
前記ステロイドが窒素、酸素、またはフッ素原子と結合する少なくとも1つの水素原子を含み、前記原子が前記発泡シェル部分の前記結晶性セグメントと水素結合を形成するために利用可能である、請求項2に記載の鼻腔内発泡被覆材。
【請求項4】
前記発泡シェル部分と前記発泡コア部分が水素結合を介して相互に結合しており、その間に実質的に共有結合がない、請求項1から3のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
【請求項5】
前記第1および/または前記第2のポリウレタンの中の前記結晶性セグメントが1,4-ブタンジオールと1,4-ジイソシアナートブタンの反応生成物を含み、および/または
前記第1および/または第2のポリウレタン発泡体の中の分子が、前記結晶性セグメントと前記非晶性セグメントが交互の構成で積み重なって、積み重なった結晶性セグメントの間の水素結合を介して強化された三次元多孔質構造を提供するように調整されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
【請求項6】
前記発泡コア部分が第1の濃度で前記薬物を含み、前記発泡シェル部分が第2の濃度で前記薬物と同一またはこれと異なる第2の薬物を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
【請求項7】
前記第2の端部に発泡ベース部分をさらに含み、前記発泡シェル部分および前記発泡コア部分が前記発泡ベース部分から前記第1の端部に向かって延在している、請求項1からのいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
【請求項8】
前記発泡ベース部分と前記発泡シェル部分が協同して前記発泡コア部分をカプセル化して前記鼻腔内被覆材の外表面を画定する、請求項1からのいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
【請求項9】
前記発泡コア部分および/または前記発泡シェル部分が止血剤を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
【請求項10】
前記止血剤が窒素原子に結合した少なくとも1つの水素原子、および酸素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を含み、前記水素原子が前記第1および/または第2のポリウレタン発泡体の前記結晶性セグメントと水素結合を形成するために利用可能である、請求項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
【請求項11】
前記止血剤の分子と前記第2のポリウレタン発泡体の分子とが水素結合を介して相互に結合しており、その間に実質的に共有結合がない、請求項10に記載の鼻腔内発泡被覆材。
【請求項12】
前記止血剤が前記第1および/または第2のポリウレタン発泡体に不溶であり、前記薬物が前記第1および/または第2のポリウレタン発泡体に不溶なステロイドである、請求項9から11のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
【請求項13】
前記発泡シェル部分の体積が前記鼻腔内発泡被覆材の全体積の約20~約40%であり、および/または前記発泡コア部分が80%を超える空孔率を有する、請求項1から12のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
【請求項14】
前記発泡コア部分が前記発泡シェル部分の中に完全に配置されており、
前記発泡コア部分が円筒状に成形されており、および/または
前記発泡シェル部分の断面が正方形または長方形の形状を有し、前記発泡ベース部分の断面と同一の形状である、請求項1から13のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
【請求項15】
薬物を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための鼻腔内発泡被覆材を形成する方法であって、
鋳型を準備するステップと、
スペーサーを前記鋳型に入れるステップと、
第1のポリウレタンおよび薬物を含む第1の液体を前記鋳型に入れ、前記第1の液体および前記スペーサーを前記鋳型に接触させるステップと、
前記第1の液体を冷却して前記第1の液体を凍結させるステップと、
前記凍結した第1の液体から前記スペーサーを取り出して前記凍結した第1の液体の中の空腔を露出するステップと、
前記凍結した第1の液体の前記空腔の中に第2のポリウレタンおよび止血剤を含む第2の液体を入れるステップと、
前記第2の液体を冷却して前記第2の液体を凍結させるステップと、
前記第1および第2の凍結した液体を乾燥して前記鼻腔内発泡被覆材を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項16】
前記凍結した第1の液体の前記空腔の中に前記第2の液体を入れるステップが、前記凍結した第1の液体の前記空腔を前記第2の液体で溢れさせるステップとしてさらに定義される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記凍結した第2の液体を乾燥するステップが発泡コア部分および発泡ベース部分を形成し、それにより前記発泡コア部分および前記発泡シェル部分が前記発泡ベース部分から延在する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記発泡ベース部分と前記発泡シェル部分が協同して前記発泡コア部分をカプセル化して前記鼻腔内発泡被覆材の外表面を画定する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
薬物を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための細長い鼻腔内発泡被覆材であって、
80%を超える空孔率を有し、前記鼻腔内発泡被覆材の第1の端部における発泡ベース部分および前記発泡ベース部分から前記鼻腔内発泡被覆材の第2の端部に向かって延在する発泡コア部分を含む第1の発泡体であって、前記発泡コア部分が第1の相分離ポリマーを含み、前記第1の相分離ポリマーが非晶性セグメントと結晶性セグメントを含む、第1の発泡体と、
少なくとも80%の空孔率を有し、前記発泡ベース部分から前記第2の端部まで延在する発泡シェル部分を含む第2の発泡体であって、前記発泡シェル部分が第2の相分離ポリマーおよび薬物を含み、前記第2の相分離ポリマーが非晶性セグメントと結晶性セグメントを含む、第2の発泡体と
を含み、
前記発泡ベース部分と前記発泡シェル部分が協同して前記発泡コア部分をカプセル化して前記鼻腔内被覆材の外表面を画定し、
前記第1および第2の相分離ポリマーが同一または異なり、
前記鼻腔内発泡被覆材が前記第2の端部を画定する体積の中に前記薬物を含み、前記第1の端部を画定する体積の中に前記薬物を含まない、細長い鼻腔内発泡被覆材。
【請求項20】
薬物を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための細長い鼻腔内発泡被覆材であって、
80%を超える空孔率を有し、前記鼻腔内被覆材の第1の端部における発泡ベース部分および前記発泡ベース部分から前記鼻腔内被覆材の第2の端部に向かって延在する発泡コア部分を含む第1の発泡体であって、前記発泡コア部分が第1の相分離ポリマーおよびキトサン止血剤を含む、第1の発泡体と、
少なくとも80%の空孔率を有し、前記発泡ベース部分から前記第2の端部まで延在する発泡シェル部分を含む第2の発泡体であって、前記発泡シェル部分が第2の相分離ポリマーおよび薬物を含む、第2の発泡体と
を含み、
前記発泡ベース部分と前記発泡シェル部分が協同して前記発泡コア部分をカプセル化して前記鼻腔内被覆材の外表面を画定し、
前記第1および第2の相分離ポリマーが同一または異なり、
前記鼻腔内発泡被覆材が前記第2の端部を画定する体積の中に前記薬物を含み、前記第1の端部を画定する体積の中に前記薬物を含まず、
前記鼻腔内発泡被覆材が前記第1の端部を画定する体積の中に前記キトサン止血剤を含み、前記第2の端部を画定する体積の中に前記キトサン止血剤を含まない、細長い鼻腔内発泡被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願はその全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする2017年12月20日に出願した米国仮特許出願第62/608256号の利益を主張する。
【0002】
主題の開示は生医学用発泡物品(たとえば鼻腔内発泡被覆材)および生医学用発泡物品を形成する方法に関する。
【発明の概要】
【0003】
薬物を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための例示的な鼻腔内発泡被覆材が提供される。鼻腔内発泡被覆材は発泡コア部分、および発泡コア部分が発泡シェル部分の中に少なくとも部分的に配置されるように調整された発泡シェル部分を含む。発泡コア部分は第1のポリウレタンを含み、非晶性セグメントおよび結晶性セグメント、ならびに止血剤を含む。発泡シェル部分は80%を超える空孔率を有し、第2のポリウレタンを含み、非晶性セグメントおよび結晶性セグメント、ならびに薬物を含む。この例では、第1および第2のポリウレタンは同一でも異なっていてもよい。鼻腔内被覆材は第1の端部から第2の端部まで延在する細長い形状を有している。第1の半体は第1の端部に隣接し、第2の半体は第2の端部に隣接しており、鼻腔内発泡被覆材の第1の半体の中の薬物の重量は鼻腔内発泡被覆材の第2の半体の中の薬物の重量より大きい。
【0004】
別の例では、薬物を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための鼻腔内発泡被覆材は細長く、第1の発泡体および第2の発泡体を含む。第1の発泡体は80%を超える空孔率を有し、鼻腔内発泡被覆材の第1の端部の発泡ベース部分および発泡ベース部分から鼻腔内発泡被覆材の第2の端部に向かって延在する発泡コア部分を含む。発泡コア部分は非晶性セグメントと結晶性セグメントを含む第1の相分離ポリマーを含む。第2の発泡体は少なくとも80%の空孔率を有し、発泡ベース部分から第2の端部まで延在する発泡シェル部分を含む。発泡シェル部分は非晶性セグメントと結晶性セグメントを含む第2の相分離ポリマーを含む。この例では、第1および第2の相分離ポリマーは同一または異なっている。発泡ベース部分と発泡シェル部分は協同して発泡コア部分をカプセル化し、鼻腔内被覆材の外表面を画定している。この例の鼻腔内発泡被覆材は第2の端部を画定する体積の中に薬物を含み、第1の端部を画定する体積の中に薬物を含まない。
【0005】
さらに別の例では、薬物を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための鼻腔内発泡被覆材は第1の発泡体および第2の発泡体を含む。第1の発泡体は80%を超える空孔率を有し、鼻腔内被覆材の第1の端部の発泡ベース部分および発泡ベース部分から鼻腔内被覆材の第2の端部に向かって延在する発泡コア部分を含む。発泡コア部分は第1の相分離ポリマーおよびキトサン止血剤を含む。第2の発泡体は少なくとも80%の空孔率を有し、発泡ベース部分から第2の端部まで延在する発泡シェル部分を含む。発泡シェル部分は第2の相分離ポリマーおよび薬物を含む。この例では、第1および第2の相分離ポリマーは同一または異なっている。発泡ベース部分と発泡シェル部分は協同して発泡コア部分をカプセル化し、鼻腔内被覆材の外表面を画定している。鼻腔内発泡被覆材は第2の端部を画定する体積の中に薬物を含み、第1の端部を画定する体積の中に薬物を含まない。さらに、鼻腔内発泡被覆材は第1の端部を画定する体積の中にキトサン止血剤を含み、第2の端部を画定する体積の中にキトサン止血剤を含まない。
【0006】
薬物を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための鼻腔内発泡被覆材を形成する方法も提供される。本方法は鋳型を準備するステップを含む。本方法は、スペーサーおよび第1の液体を鋳型に入れ、それにより第1の液体およびスペーサーを鋳型に接触させるステップをも含む。第1の液体は第1のポリウレタンおよび薬物を含む。本方法は、第1の液体を冷却して第1の液体を凍結させ、凍結した第1の液体からスペーサーを取り出して凍結した第1の液体の中の空腔を露出するステップをさらに含む。本方法は、凍結した第1の液体の空腔の中に第2の液体を入れるステップをさらに含む。第2の液体は第1のポリウレタンと同一または異なる第2のポリウレタンを含む。本方法は、第2の液体を冷却して第2の液体を凍結させるステップをさらに含む。本方法は、第1および第2の凍結した液体を乾燥して、発泡シェル部分の中に少なくとも部分的に配置された発泡コア部分を含む鼻腔内発泡被覆材を形成するステップをさらに含む。
【0007】
鼻腔内発泡被覆材を用いて炎症を治療すると同時に洞腔からの流体分泌物を吸収する方法も開示される。本方法は、鼻腔内発泡被覆材を準備するステップ、発泡被覆材が挿入に適した形態(挿入形態)になるように鼻腔内発泡被覆材を圧縮するステップ、および鼻腔内発泡被覆材が挿入形態にある間に鼻腔内発泡被覆材の第2の端部が第1の端部よりも使用者から遠くなるように鼻腔内発泡被覆材を鼻腔内に位置決めするステップを含む。
【0008】
付属する図面に関連して考慮して以下の詳細な説明を参照することによって、本開示の利点がよりよく理解されるとともに容易に認識される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】鼻腔内発泡被覆材の例の斜視図である。
図1B】発泡シェル部分を断面で示す線BCに沿った図1Aの例の斜視図である。
図1C】線BCに沿った図1Aおよび図1Bの例の断面図である。
図2】発泡シェル部分を断面で示す鼻腔内発泡被覆材の例の上左の斜視図である。
図3】鼻腔内発泡被覆材の別の例の断面図である。
図4】鼻腔内発泡被覆材の別の例の断面図である。
図5】鼻腔内発泡被覆材の別の例の断面図である。
図6】鼻腔内発泡被覆材の別の例の断面図である。
図7】鋳型およびスペーサーの斜視図である。
図8図7の鋳型およびスペーサーの断面図である。
図9】凍結した第1の液体を含む図8の鋳型の断面図である。
図10】凍結した第2の液体をさらに含む図9の鋳型の断面図である。
図11】鼻腔内発泡被覆材を用いて炎症を治療すると同時に洞腔からの流体分泌物を吸収する方法に含まれるステップを説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1つの例では、生医学用発泡体は活性薬剤を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための鼻腔内発泡被覆材である。図1図6に示すように、鼻腔内発泡被覆材10は発泡コア部分12および発泡シェル部分14を含む。発泡シェル部分14は、発泡コア部分12が少なくとも部分的に発泡シェル部分14の中に配置されるように調整されている。
【0011】
本開示の文脈の中では、「少なくとも部分的に~の中に配置され」は、発泡コア部分12のいくらかの体積が発泡シェル部分14の空腔の中に配置されていることを必要とする。ある例では、発泡コア部分12の全体積の10~100%、20~100%、30~100%、40~100%、50~100%、60~100%、70~100%、80~100%、または90~100%が発泡シェル部分14の中に配置されている。ある例では、発泡シェル部分14および発泡コア部分12は単なる隣接する薄層ではない。さらに別の例では、発泡コア部分12の表面積の少なくとも50、60、70、80、または90%は発泡シェル部分14によって覆われている。
【0012】
もちろん、発泡コア部分12は発泡シェル部分14の空腔の中に完全に配置されていてもよい。即ち、発泡コア部分12の全体積の100%が発泡シェル部分14の中に配置されている。
【0013】
多くの例では、鼻腔内発泡被覆材10は管腔を何ら有しない。即ち、鼻腔内発泡被覆材10は(鼻腔内発泡被覆材10を形成する発泡体の比較的微細な空孔/セル構造を別として)実質的に大きな空孔を有しない。
【0014】
ここで図1図6の例を参照して、この例の鼻腔内発泡被覆材10は、遠位または第1の端部16から近位または第2の端部18まで延在する細長い形状を有している。さらに、鼻腔内発泡被覆材10は第1の端部16に隣接する第1の半体および第2の端部18に隣接する第2の半体を有している。図1図6に示すように、第1の端部16は術者から最も遠く、第2の端部18は術者に最も近い。換言すれば、鼻腔内発泡被覆材10を鼻腔に挿入する際には、第1の端部16は鼻腔に進入する最初の端部であり、第2の端部18は比較的術者に近い。ある例では、図1A図1C図5、および図6に最もよく示されるように、鼻腔内発泡被覆材10は第2の端部18に発泡ベース部分20を含み、発泡シェル部分14および発泡コア部分12は発泡ベース部分20から第1の端部16に向かって延在している。このように調整すれば、発泡ベース部分20と発泡シェル部分14は協同して発泡コア部分12をカプセル化し、鼻腔内発泡被覆材10の外表面を画定し得る。発泡シェル部分14と発泡ベース部分20が協同して発泡コア部分12をカプセル化すれば、発泡コア部分12は発泡シェル部分14の中に部分的に配置される。図1A図1C図5、および図6に示すようなある例では、発泡コア部分12は発泡シェル部分14の中に全体が配置され、発泡シェル部分14と発泡ベース部分20との協同によってカプセル化される。即ち、発泡コア部分12は発泡シェル部分14と発泡ベース部分20とで形成される空腔の中に完全に配置され得る。即ち、発泡コア部分12の全体積の100%が発泡シェル部分14の中に配置される。
【0015】
発泡シェル部分14の参照に戻って、発泡シェル部分14は80%を超える空孔率を有する発泡体である。あるいは、発泡シェル部分14は80~99%、80~96%、80~93%、80~90%、80~87%、80~84%、83~99%、85~99%、89~99%、92~99%、95~99%、83~96%、86~93%、92~98%、95~98%、または90%の空孔率を有する。本明細書で言及する空孔率は発泡体中の空孔の(即ち、「空の」)スペースの尺度を意味し、0と1の間、即ち0%と100%の間の百分率としての全体積に対する孔/空孔の体積分率である。
【0016】
発泡シェル部分14は第1の相分離ポリマーおよび活性薬剤を含む。第1の相分離ポリマーおよび活性薬剤は以下に詳細に記載している。ある例では、鼻腔内発泡被覆材10の発泡シェル部分14は活性薬剤を含む鼻腔内発泡被覆材10の唯一の部分である。発泡シェル部分14の幾何学的構成は特に限定されない。ある例では、中点で取った発泡シェル部分14の断面(即ち、鼻腔内発泡被覆材10の第1の端部16と第2の端部18の間の距離の半分)は、中空の内部を有する一般に正方形または長方形の形状であってよい。これらの例では、中空の内部は発泡コア部分12の幾何学的構成に一致するように成形される。さらに、発泡シェル部分14の外部は、立方体または直方体として成形され得る。他の例では、発泡シェル部分14の外部は一般に円筒形の形状を有し、それにより鼻腔内発泡被覆材10の中点で取った断面が中空の内部を有する一般に円形または楕円形の形状を有するようにしてもよい。さらに、図1図6を通して示すように、発泡シェル部分14は、鼻腔内発泡被覆材10の患者の鼻腔への挿入を容易にするために、鼻腔内発泡被覆材10の第1の端部16の周囲に丸くした隅を含んでもよい。あるいは、発泡シェル部分14は挿入を容易にするために鼻腔内発泡被覆材10の第1の端部16の周囲に一般に半球形の形状を有してもよい。
【0017】
図1A図1Cに最もよく示されるように、発泡シェル部分14の幾何学的形状は鼻腔内発泡被覆材10の患者の鼻腔への設置に伴う失敗を低減する。これは、活性薬剤を含む表面が最初に創傷に接触するように発泡被覆材を鼻腔内に設置すべきだからである。図1A図1Cの鼻腔内発泡被覆材10が主な外部表面として発泡シェル部分14を含むので、術者が実際の創傷を見ることが困難な場合であっても、術者は鼻腔内発泡被覆材10を鼻腔内に容易に設置し、発泡シェル部分14(即ち活性薬剤を含む部分)が最初に創傷に接触することを確信することができる。特に、発泡シェル部分14は、これが鼻腔内発泡被覆材10の全外部表面の60、70、80、または90%を超えて画定する場合には、主な外部表面である。これらの例では、発泡ベース部分20が典型的には残りの表面積を画定する。したがって、発泡コア部分12の比較的大きな量が発泡シェル部分14の中に配置される場合には、失敗の相対量が低減される。発泡ベース部分20が鼻腔内発泡被覆材10の中に含まれている場合でもこれは正しい。それは、鼻腔内発泡被覆材10の第1の端部16が最初に鼻腔に挿入され、発泡ベース部分20は第1の端部16には位置していないからである。その代わりに、発泡ベース部分20は第2の端部18に位置しており、これは術者に最も近く、創傷に接触する可能性が少ない端部である。
【0018】
図1A図1C図5、および図6に示すようなある例では、発泡コア部分12の100%が発泡シェル部分14の中に配置されている場合には、発泡シェル部分14は鼻腔内発泡被覆材10の主な(たとえば80%を超える)外部表面であり、発泡シェル部分14が最初に創傷に接触することなしに術者が鼻腔内発泡被覆材10を鼻腔内に配向させることはほぼ不可能である。
【0019】
もちろん、図2および図3に示すように、発泡コア部分12の100%未満を発泡シェル部分14の中に配置する場合には、術者の失敗を低減させることも可能である。図2では、発泡シェル部分14を断面に示す鼻腔内発泡被覆材10の1つの例の斜視図が説明されている。図2の例の鼻腔内発泡被覆材10では、発泡コア部分12は発泡シェル部分14の中に部分的に配置されている。図3では、発泡コア部分12が発泡シェル部分14の中に部分的に配置された鼻腔内発泡被覆材10の別の例の断面図が説明されている。
【0020】
発泡シェル部分14の相対的体積は鼻腔内発泡被覆材10の特定の用途に応じて変動し得るが、ある例では、発泡シェル部分14の体積は鼻腔内発泡被覆材10の全体積に対して20~40%である。あるいは、発泡シェル部分14の体積は鼻腔内発泡被覆材10の全体積に対して0.5~70%、1~60%、5~50%、10~50%、または15~45%である。
【0021】
ここで発泡コア部分12を参照して、発泡コア部分12は第2の相分離ポリマーを含み、これは第1の相分離ポリマーと同一または異なっている。必要ではないが、発泡コア部分12は活性薬剤を含まなくてもよい(即ち、活性薬剤を含まない)。換言すれば、ある例では、発泡コア部分12は活性薬剤を含まない。発泡コア部分12が活性薬剤を含む例では、活性薬剤は発泡シェル部分14に含まれる活性薬剤と同一でも異なっていてもよい。
【0022】
発泡コア部分12は、発泡シェル部分14の空孔率と同様の空孔率を有してもよい。たとえば、ある例では、発泡コア部分12は80%を超える空孔率を有する発泡体である。あるいは、発泡コア部分12は80~99%、80~96%、80~93%、80~90%、80~87%、80~84%、83~99%、85~99%、89~99%、92~99%、95~99%、83~96%、86~93%、92~98%、95~98%、または90%の空孔率を有してよい。
【0023】
発泡コア部分12が活性薬剤を含まない例では、発泡シェル部分14は活性薬剤を含む鼻腔内発泡被覆材10の唯一の部分であってよい。この特定の設計では患者の創傷に最初に接触する鼻腔内発泡被覆材10の部分(即ち、発泡シェル部分14)に活性薬剤が位置するので有利であり得る。さらに、この設計によって、創傷に最初に接触しない部分に活性薬剤を含ませることが避けられるので、鼻腔内発泡被覆材10の全体のコストを低減させられる。最後に、上で論じたように鼻腔内発泡被覆材10に対する発泡シェル部分14の体積を最適化することによって、鼻腔内発泡被覆材10は、優れた流体吸収特性および機械的特性と費用効果的かつ有効な薬物送達性を有するように設計することができる。たとえば、鼻腔内発泡被覆材10は、発泡シェル部分14の中に少なくとも部分的に配置された活性薬剤を含まない発泡コア部分12と、鼻腔内発泡被覆材10の全体積の20~40%である発泡シェル部分14とを含んでよい。したがって、この例は鼻腔内発泡被覆材10の創傷に対する設置に付随する失敗を低減するだけでなく、活性薬剤の送達の費用効果を最適化する。
【0024】
発泡コア部分12の幾何学的構成は特に限定されない。図1図6に示すようなある例では、発泡コア部分12は円筒状に成形されている。他の例では、鼻腔内発泡被覆材10の中点で取った発泡コア部分12の断面は、一般に正方形または長方形の形状を有している。さらに、発泡シェル部分14と同様に、発泡コア部分12も鼻腔内発泡被覆材10の第1の端部16の周囲に丸くした隅を含むか、半球形の形状を有してよい。
【0025】
ここで発泡ベース部分20を参照して、もし含まれるならば、発泡ベース部分20は典型的には発泡シェル部分14および発泡コア部分12と同様の空孔率を有している。たとえば、発泡ベース部分20は典型的には80%を超える空孔率を有する。あるいは、発泡ベース部分20は80~99%、80~96%、80~93%、80~90%、80~87%、80~84%、83~99%、85~99%、89~99%、92~99%、95~99%、83~96%、86~93%、92~98%、95~98%、または90%の空孔率を有してよい。
【0026】
発泡ベース部分20は第3の相分離ポリマーを含んでよく、第3の相分離ポリマーは第1または第2の相分離ポリマーと同一または異なっている。発泡ベース部分20はまた活性薬剤を含んでもよく、活性薬剤を含まなくてもよい。図1Cに示すようなある例では、発泡ベース部分20と発泡コア部分12は一体であり、それにより発泡ベース部分20の化学的組成は発泡コア部分12と同一である。図6に示すような他の例では、発泡ベース部分20の化学的組成は発泡シェル部分14の化学的組成と同一である。図5に示すようなさらなる例では、発泡ベース部分20の化学的組成は発泡コア部分12および発泡シェル部分14の両方と異なっている。
【0027】
発泡ベース部分20の幾何学的構成は特に限定されない。ある例では、発泡ベース部分20の断面は、発泡ベース部分20の断面が中空の内部を含まないことを除いて、上記の発泡シェル部分14の断面と同一である。たとえば、ある例では、発泡ベース部分20および発泡シェル部分14の断面の両方は一般に正方形または長方形に成形されている。これらの例では、発泡コア部分12は典型的には円筒状に成形されており、発泡ベース部分20と一体であり、それにより発泡コア部分12と発泡ベース部分20は同一の発泡体である。たとえば、図1Cに最もよく示されているように、発泡ベース部分20と発泡コア部分12は一体であり、同一の化学的組成および空孔率を有している。
【0028】
発泡ベース部分20が薬物を含まない例では、鼻腔内発泡被覆材10における活性薬剤の負荷は、鼻腔内発泡被覆材10を通して一定ではない。特に、鼻腔内発泡被覆材10を体積に基づいて半分に分割すれば、上半分(即ち、第1の端部16を含む半体)における活性薬剤の重量は下半分(即ち、第2の端部18を含む半体)における活性薬剤の重量より大きい。他の例では、鼻腔内発泡被覆材10を体積に基づいて4分の1に分割すれば、上の4分の1における活性薬剤の重量(即ち、第1の端部16を含む4分の1における活性薬剤の重量)は、他のいずれの4分の1よりも大きくなる。さらに、下の4分の1(即ち、第2の端部18を含む4分の1)における活性薬剤の重量は、他のいずれの4分の1よりも小さくなる。
【0029】
発泡シェル部分14、発泡コア部分12、および/または発泡ベース部分20は、それぞれ個別に0.01~1.0g/cmの発泡密度を有し得る。あるいは、発泡密度は0.01~0.5、0.01~0.3、0.01~0.1、0.01~0.09、0.01~0.08、0.01~0.07、0.01~0.06、0.01~0.05、0.01~0.04、0.01~0.03、0.02~0.08、0.04~0.08、0.05~0.08、0.06~0.08、0.02~0.08、または0.03~0.07g/cmであってよい。ある例では、発泡シェル部分14、発泡コア部分12、および/または発泡ベース部分20は、それぞれ85~99%の空孔率および0.03~0.07g/cmの発泡密度を有している。本開示を通して用いる用語「発泡密度」は、特定の発泡部分の体積単位あたりの相分離ポリマーの量として計算される発泡体の密度を意味することを認識されたい。したがって、特定の発泡部分(たとえば発泡シェル部分14ならびに任意選択的に発泡コア部分12および発泡ベース部分20)が活性薬剤を含む場合には、特定の発泡部分の中に存在する活性薬剤の量は、発泡密度の計算では無視される。
【0030】
ここで第1、第2、および第3の相分離ポリマーを参照して、本明細書で用いる用語「相分離ポリマー」は、ソフト(非晶性)セグメントならびにハード(結晶性)セグメントを含むポリマーを意味し、ハードセグメントは少なくとも哺乳類の体温(ヒトについては一般に37℃)の相転移温度を有し、そのようなポリマーから調製された発泡体を十分な時間、ヒトまたは動物の身体に適用した際には、相分離形態が明瞭である。また、ヒトまたは動物の身体と同等の温度条件に置かれたポリマーは、相分離形態を呈する。相分離ポリマーは、通常の環境条件下で異なる形態を有する少なくとも2つの混和不可能なまたは部分的に混和可能な相が存在するという特徴がある。1つの材料の中で、ゴム状相および結晶相が(非晶性相のガラス転移温度より上、かつ結晶相の融解温度より下の温度で)存在し、またはガラス状相および結晶相が(非晶性相のガラス転移温度より下の温度で)存在し得る。また、2つの相転移の間の温度で少なくとも2つの非晶性相、たとえば1つのガラス状相および1つのゴム状相が存在し得る。融解温度またはガラス転移温度のいずれかである最も高い相転移温度より高い温度で、それぞれ液体相およびゴム状相、または2つのゴム状相が相混合形態を形成することができ、またはこれらはまだ非混和性であることができる。非混和性の液体相および/またはゴム状相は、通常の環境条件下で初期の望ましい機械的特性を有しない相分離形態を有するポリマーをもたらすことが多い。
【0031】
第1、第2、および第3の相分離ポリマーは、それぞれ独立してポリエステル、ポリエーテル、ポリヒドロキシ酸、ポリラクトン、ポリエーテルエステル、ポリカーボネート、ポリジオキサン、ポリ無水物、ポリウレタン、ポリエステル(エーテル)ウレタン、ポリウレタンウレア、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリオルソエステル、ポリアミノ酸、ポリホスホネート、ポリホスファゼン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択してよい。そのようなポリマーは、参照によりその全体が組み込まれる国際公開第A99/64491号に記載されている。
【0032】
特定の理論に何ら縛られるものではないが、発泡シェル部分14の第1の相分離ポリマーは、発泡コア部分12の第2の相分離ポリマーと相互作用し得ると考えられる。特に、第1の相分離ポリマーの(参照によりその全体が組み込まれる国際公開第2004/062704号に記載されている)結晶性(ハード)セグメントは、第2の相分離ポリマーの結晶性(ハード)セグメントと水素結合を形成し得ると考えられる。
【0033】
ある例では、少なくとも発泡シェル部分14または発泡コア部分12は吸収材でもある。典型的には、発泡シェル部分14および発泡コア部分12の両方は吸収材である。国際公開第A2004/062704号に記載されているように、親水性セグメントの存在によって特定の発泡体部分の吸収容量が増大し、生分解の速度が影響され得る。
【0034】
本明細書で用いる用語「生分解性」は、一般に生細胞、生命体、またはこれらの系の一部によって生化学的に加水分解を含む作用を受け、分解および崩壊して化学的または生化学的な生成物になるポリマーの能力を意味する。
【0035】
本明細書で用いる用語「生体吸収性」は、ヒトまたは動物の身体によって完全に代謝される能力を意味する。
【0036】
本明細書で用いる用語「非晶性」は、発泡体が充填されるヒトまたは動物の身体の空腔の温度よりも低い少なくとも1つのガラス転移温度を有する相分離ポリマーに存在するセグメントを意味し、ヒトまたは動物の身体に充填されたときに完全に非晶性である非晶性セグメントと結晶性セグメントとの組み合わせも意味し得る。たとえば、プレポリマー中のPEGは純粋な形態では結晶性であり得るが、式(I)のポリウレタンのRセグメントに含まれる場合には非晶性であり得る。より長いPEGセグメントも式(I)のポリウレタンのRセグメントに含まれる場合には部分的に結晶性であり得るが、水と接触して置かれる場合には非晶性になる(「溶解する」)。したがって、そのような長いPEGセグメントは式(I)の相分離ポリマーのソフトセグメントの一部である一方、ハードセグメントは本来結晶性のままであり、少なくともある期間、湿潤され充填された状態で特定の発泡部分を十分に支持する。
【0037】
本明細書で用いる用語「結晶」は、相分離ポリマー中に存在し、ヒトまたは動物の身体に充填されたときに結晶性である、即ち鼻腔内発泡被覆材10がその中に充填されるヒトまたは動物の体腔の温度よりも高い融解温度を有するセグメントを意味する。
【0038】
本明細書で用いる「親水性セグメント」は、たとえばC-O-C、即ちエーテル結合によって提供され得るような少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つの親水性基を含むセグメントを意味する。したがって親水性セグメントはポリエーテルセグメントによって提供され得る。親水性セグメントはポリペプチド、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、またはポリ(ヒドロキシメチルメタクリレート)によっても提供され得る。親水性セグメントは、好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコールから誘導される。好ましい親水性セグメントはポリエチレングリコール(PEG)セグメントである。
【0039】
本明細書で用いる用語「セグメント」は、任意の長さのポリマー構造を意味する。ポリマー技術の分野においては、長いポリマー構造はブロックと称されることが多く、短いポリマー構造はセグメントと称されることが多い。これらの従来の意味の両方とも、本明細書で用いる用語「セグメント」に含まれると理解される。
【0040】
本出願の1つの特定の例では、ポリマーは式
-[R-Q1[-R’-Z1-[R”-Z2-R’-Z3]p-R”-Z4]q-R’-Q2]n- (I)
のものであり、式中Rは1つまたは複数の脂肪族ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリエーテル、ポリ無水物、および/またはポリカーボネートから選択され、任意選択的に少なくとも1つのRは親水性セグメントを含み、R’およびR”は独立して、任意選択的にC1-C10アルキルまたはハライドもしくは保護されたS、N、P、もしくはO部分で置換されたC1-C10アルキルで置換され、および/またはアルキレン鎖の中にS、N、P、もしくはOを含むC2-C8アルキレンであり、Z1~Z4は独立してアミド、尿素、またはウレタンであり、Q1およびQ2は独立して尿素、ウレタン、アミド、カーボネート、エステル、または無水物であり、nは5~500の整数であり、pおよびqは独立して0または1であり、ただしqが0の場合には、Rは任意選択的に少なくとも1つの結晶性のポリエーテル、ポリエステル、ポリエーテルエステル、またはポリ無水物のセグメントを有する少なくとも1つの非晶性の脂肪族ポリエステル、ポリエーテル、ポリ無水物、および/またはポリカーボネートセグメントである。
【0041】
式Iで表される相分離ポリマーの最も簡単な形態は式-R-Q1-R’-Q2-、即ちq=0の場合である。
【0042】
式(I)によるポリマーの-R-部分には非晶性セグメントが含まれる。q=1の場合には、式(I)によるポリマーのQ1[-R’-Z1-[R”-Z2-R’-Z3]p-R”-Z4]q-R’-Q2部分は結晶性セグメントを表す。この特定の場合には、非晶性および結晶性のセグメントは交互であり、したがって均一なブロック長を有するハードセグメントが提供される。
【0043】
上記のように、Rは2つ以上の異なる型の脂肪族ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリエーテル、ポリ無水物、および/またはポリカーボネートの混合物を表すことができ、この混合物は非晶性および結晶性の型の両方を含み、それによりこれらの両方が特定の発泡部分に含まれる。非晶性および結晶性の型のRセグメントの混合物が式(I)によるポリマーに提供される場合には、任意選択的に少なくとも1つの親水性セグメントが少なくとも1つの非晶性Rセグメントの中に提供される。
【0044】
Rは特に、環状モノマーであるラクチド(L、D、またはLD)、グリコリド、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,5-ジオキセパン-2-オン、パラ-ジオキサノン、およびそれらの組合せ、ならびに任意選択的にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、およびそれらの組合せから誘導してよい。ある例では、Rはラクチドおよびε-カプロラクトンからのみ誘導される分子量1000~4000の非晶性ポリエステルである。1つの例では、Rは約25wt%のラクチド、約25wt%のε-カプロラクトン、および約50wt%のポリエチレングリコールである。
【0045】
式(I)による相分離ポリマーにおいて、Q1およびQ2はアミド、尿素、ウレタンエステル、カーボネート、または無水物基から選択してよく、Z1~Z4はアミド、尿素、またはウレタン基から選び、それにより少なくとも4つの水素結合形成基が結晶性セグメントの中に直列に存在するようにすべきである。-Z2-R’-Z3-の中のR’基は、-Q1-R’-Z1-または-Z4-R’-Q2-の中のR’と異なっていても同様であってもよい。
【0046】
上述のように、Rは任意選択的に親水性セグメントを含み、そのような親水性セグメントは極めて好適に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリブチレングリコールのようなポリエーテル化合物から誘導され得るポリエーテルセグメント等のエーテルセグメントであり得る。また、Rに含まれる親水性セグメントはポリペプチド、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、またはポリ(ヒドロキシメチルメタクリレート)から誘導され得る。親水性セグメントは、好ましくはポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、またはポリ(ブチレン)グリコール等のポリエーテルである。
【0047】
ある例では、非晶性セグメントは親水性セグメントを含む。親水性セグメントは親水性セグメントの全重量に基づいて1~80wt%、より好ましくは5~60wt%、さらにより好ましくは20~50wt%、最も好ましくは50wt%の量でポリエチレングリコールを含んでよい。
【0048】
ある例では、相分離ポリマーは式Iによるポリマーであり、式中R’は(CH、R”は(CH、またはR’とR”の両方は(CHである。たとえばZ1~Z4はウレタンであってよい。
【0049】
本明細書に記載した発泡体は複数のポリマー鎖を含んでおり、ポリマー鎖のそれぞれは相分離ポリマー、たとえばポリウレタンを含んでいることを認識されたい。多くの例では、発泡体は、発泡体中に含まれるポリマー鎖の間の共有結合架橋を実質的に含まない。本開示の文脈において、用語「共有結合架橋を実質的に含まない」は、1つのポリマー鎖が発泡体中に含まれる他のポリマー鎖と20個未満、10個未満、6個未満、4個未満、または2個未満の共有結合を有することを意味する。いくつかの例では、発泡体は、発泡体中に含まれるポリマー鎖の間の共有結合架橋を何ら含まない。換言すれば、それぞれのポリマー鎖は発泡体中に含まれる他のポリマー鎖と共有結合架橋していない。
【0050】
いくつかの好ましい例では、相分離ポリマーは非晶性セグメントと結晶性セグメントを含むポリウレタン発泡体であり、結晶性セグメントは水素結合を介して形成されている。そのような例では、結晶性セグメントは1,4-ブタンジオールと1,4-ジイソシアナートブタンの反応生成物を含んでよく、ポリウレタン発泡体中の非晶性セグメントはポリアルキレングリコール、たとえばポリ(エチレングリコール)、ポリエステル、たとえばポリグリコリド、またはこの2つの組合せを含んでよい。
【0051】
本明細書で用いる用語「水素結合」は、窒素(N)、酸素(O)、またはフッ素(F)等の電気陰性度が比較的高い原子または基に結合した水素(H)原子(水素結合ドナー)と、孤立電子対を有する別の隣接原子(水素結合アクセプター)との間の部分的静電的求引力を意味する。ポリウレタンにおいては、カルボニル基とN-H基との間の水素結合は、相分離の主な駆動力の1つである。水素結合は分子間(個別の分子の間で起こる)でもよく、または分子内(同じ分子の部分の間で起こる)でもよい。
【0052】
そのような例では、本明細書に記載した発泡体は、ハード/結晶性のセグメントとソフト/非晶性のセグメントとを含む。ハードセグメントはそれぞれのポリマー鎖のウレタンセグメントの間の水素結合を介して形成されている。1つの特定の理論に縛られることは望まないが、それぞれのポリマー鎖のウレタンセグメントは隣接するポリマー鎖の中の他のウレタンセグメントとの水素結合を特に受けやすいと考えられる。したがって、発泡体の形成の間、それぞれのポリマー鎖のウレタンセグメントは、発泡体中に含まれる他のポリマー鎖のウレタンセグメントと水素結合し、それにより、これと整列する。それぞれのポリマー鎖のウレタンセグメントが他のポリマー鎖のウレタンセグメントと整列するので、それぞれのポリマー鎖のポリエーテルエステルセグメントは必然的に発泡体中に含まれる他のポリマー鎖のポリエーテルエステルセグメントと整列する。これらのポリエーテルエステルセグメントの整列により、発泡体のソフトセグメントが形成される。したがって、それぞれのポリマー鎖のウレタンセグメントの間の水素結合により、発泡体はハードセグメントとソフトセグメントとの高度に組織化された三次元ネットワーク構造を呈する。
【0053】
したがって、この好ましい例のポリウレタン発泡体は、水素結合を介して形成された結晶性セグメントを含む。さらに、1,4-ブタンジオールと1,4-ジイソシアナートブタンの反応生成物を含む結晶性セグメントと、ポリ(エチレングリコール)を含む非晶性セグメントとは、交互の構成で「積み重なって」三次元多孔質構造を提供する結晶性セグメントと非晶性セグメントを形成し、この構造が積み重なった結晶性セグメントの間の水素結合を介して強化されると考えられる。
【0054】
さらに、この好ましい例のポリウレタン発泡体は、1,4-ブタンジオールと1,4-ジイソシアナートブタンの反応生成物を含む結晶性セグメントと、ポリ(エチレングリコール)を含む非晶性セグメントとを含んでいるので、他のポリマー(または部分)と容易に相互作用して水素結合する。
【0055】
多くの例では、種々の部分12、14、および20は非晶性セグメントと結晶性セグメントとを含むポリウレタン発泡体を含む相分離ポリマーを含んでよく、結晶性セグメントは水素結合を介して形成される。そのような例では、結晶性セグメントは1,4-ブタンジオールと1,4-ジイソシアナートブタンの反応生成物を含んでよく、ポリウレタン発泡体中の非晶性セグメントはポリアルキレングリコール、たとえばポリ(エチレングリコール)を含む。そのような例では、発泡シェル部分14、発泡コア部分12、および(含まれる場合には)発泡ベース部分20は水素結合を介して相互に結合しており、その間には実質的に共有結合がない。そのような例では、鼻腔内発泡被覆材10は乾燥条件下、ならびに水分の存在下でも優れた構造的特徴を呈する。
【0056】
多孔性、孔径、および発泡密度に加えて、それぞれの特定の発泡部分における特定の相分離ポリマーの組合せによって、特定の発泡部分の物理的特性が確立される。特に、良好な圧縮性を達成することが可能である。これは、血液等の液体を吸収し、または液体で飽和されたときに発泡体がその構造(特にその圧縮強度)を保つことを意味する。発泡体の機械的、構造的、および化学的な特性は、主として発泡体中に存在するポリマーによって決まる。好適な相分離ポリマーを選択することによって機械的、構造的、および化学的な特性を制御し調節する手段が提供されるので、これは有利である。
【0057】
発泡シェル部分14、発泡コア部分12、および/または発泡ベース部分20はそれぞれ、薬物を含むか、実質的に薬物を含まないか、または薬物を含まなくてよい。本明細書に記載した活性薬剤または薬物のいずれに関しても用いられる用語「実質的に含まない」は、特定の部分の全重量または鼻腔内発泡被覆材10の全重量に基づいて5、4、3、2、1、0,5、0.1、0.05、または0.01wt%未満として定義され得る。「実質的に含まない」を意図する開示は、「含まない」をも包含する。したがって、部分および/または鼻腔内発泡被覆材10がある物、たとえば薬物を「実質的に含まない」と記載されていれば、この記述言語は「含まない」に狭めることができる。
【0058】
1つの例では、発泡コア部分12は第1の濃度で第1の薬物を含み、発泡シェル部分14は第2の濃度で、前記薬物と同一またはこれと異なる第2の薬物を含む。たとえば、発泡コア部分12は第1の濃度でキトサンまたはその誘導体を含んでよく、発泡シェル部分14は第2の異なる濃度でモメタゾンフロエート等のステロイドを含んでよい。
【0059】
鼻腔内発泡被覆材10のそれぞれの特定の発泡体部分に含まれる薬物は実質的に発泡体のセルの壁に位置している。これは、薬物を主として発泡体の空孔の中に含む発泡体と対照的である。理論に縛られることを望むものではないが、薬物が実質的に空孔の中に位置している場合には、薬物は制御されずほぼ即時に放出されると考えられる。対照的に、薬物が孔のセルの壁の中に位置している場合には、特定の薬物を含む発泡部分の多孔性が、活性薬剤の放出速度に影響する。多孔性が高くなれば放出速度が大きくなり、逆もそうである。理論に縛られることを望むものではないが、多孔性が高くなれば特定の発泡部分の分解速度が大きくなり、それにより放出速度が大きくなると考えられる。換言すれば、添加剤よりむしろ特定の発泡部分の分解(たとえば発泡シェル部分14)が放出を制御する。
【0060】
活性薬剤を含む鼻腔内発泡被覆材10の特定の発泡部分からの活性薬剤の放出速度は、ある量の薬物をある時間で放出するために必要な時間として表すことができる。典型的には、活性薬剤の50%を発泡シェル部分14から放出するためには8時間~1.5日が必要である。特定の例では、活性薬剤の50%がより長い時間、たとえば1日~5日で放出されることが好ましいことがある。活性薬剤の約100%(たとえば95%を超える)を放出するためには、一般的に4日~14日の時間が好ましい。
【0061】
典型的には、活性薬剤は薬物(即ち任意の薬学的に活性な化合物)、抗生剤、抗炎症剤、コルチコステロイド、止血剤、抗アレルゲン、抗コリン剤、抗ヒスタミン、抗感染、抗血小板、抗凝血剤、抗トロンビン剤、抗瘢痕剤、抗増殖剤、化学療法剤、抗新生物剤、治癒促進剤、充血除去剤、ビタミン、高浸透圧剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、またはそれらの組合せである。1つの例では、活性薬剤はステロイド抗炎症剤である。発泡シェル部分14からの活性薬剤の比較的遅い放出がコルチコステロイド等のステロイド抗炎症剤に特に好適であることが見出された。
【0062】
いくつかの例では、活性薬剤は窒素、酸素、またはフッ素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を含む分子である。この構造により、活性薬剤と相分離ポリマー、たとえば1,4-ブタンジオールと1,4-ジイソシアナートブタンの反応生成物を含む結晶性セグメントとポリ(エチレングリコール)を含む非晶性セグメントとを含むポリウレタン発泡体との間の水素結合が容易になる。換言すれば、活性薬剤は有利には相分離ポリマー、たとえばポリウレタンの結晶性セグメントと水素結合を形成するために利用可能な水素原子を含んでよい。活性薬剤と相分離ポリマーとの間の水素結合は、活性薬剤の放出を制御して遅くすることを助けることができる。
【0063】
1つの例では、活性薬剤はステロイド抗炎症剤である。相分離ポリマーからの活性薬剤の比較的遅い放出がコルチコステロイド等のステロイド抗炎症剤に特に好適であることが見出された。いくつかの例では、発泡シェル部分14はステロイドを含み、発泡コア部分12は実質的にステロイドを含まない。そのような例では、ステロイドは窒素、酸素、またはフッ素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を含んでよく、たとえば原子は発泡シェル部分14の結晶性セグメントと水素結合を形成するために利用可能である。
【0064】
別の例では、活性薬剤は止血剤である。もちろん、鼻腔内発泡被覆材10は抗炎症剤、たとえばステロイドと止血剤の両方を含んでよい。種々の例では、止血剤は窒素原子に結合した少なくとも1つの水素原子、および/または酸素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を含み、水素原子は第1および/または第2のポリウレタン発泡体の結晶性セグメントと水素結合を形成するために利用可能である。そのような例では、止血剤の分子と相分離ポリマーの分子は水素結合を介して互いに結合しており、その間に実質的に共有結合はない。
【0065】
ある例では、活性薬剤が止血剤である場合には、鼻腔内発泡被覆材10の中の相分離ポリマーと止血剤との間の相互作用によって、特に相分離ポリマーとキトサン止血剤を用いる場合に、止血活性に関して相乗効果が生じると考えられる。相分離ポリマーとの相乗効果を含む止血剤は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2015/0320901号に記載されている。
【0066】
ある例では、止血剤はキトサン止血剤である。本明細書で用いる用語「キトサン止血剤」は、キトサンまたはその塩もしくは誘導体を意味する。キトサンまたは酢酸キトサンを用いることによって良好な結果が得られている。
【0067】
キトサンはD-グルコサミン単位(脱アセチル化単位)とN-アセチル-D-グルコサミン単位(アセチル化単位)を含む多糖である。キトサンはキチン(ポリ-N-アセチル-D-グルコサミン)のN-アセチル-D-グルコサミンの少なくとも一部を加水分解によって脱アセチル化することによってキチンから調製することができる。キトサン中のD-グルコサミン単位とN-アセチル-D-グルコサミン単位との比は、典型的には脱アセチル化度として表される。脱アセチル化度はキトサン中のアセチル化されていないグルコサミン単位の百分率として定義される。したがってこの百分率はキトサン中に存在する脱アセチル化単位のモル百分率に対応する。理論に縛られるものではないが、脱アセチル化度が高ければ止血特性が改善されると考えられる。キトサンは1~100モル%、25~100モル%、50~100モル%、75~100モル%、85~100モル%、90~100モル%、5~50モル%、10~35モル%、または10~25モル%の脱アセチル化度を有し得る。上記の値はキトサン塩中に存在するキトサン、ならびにキトサン誘導体(これはキトサン自体と同様にアセチル化単位および脱アセチル化単位を有する)にも適用される。さらなる非限定的な例では、上述の範囲の端点の中および端点を含む全ての値および値の範囲が、本明細書で明示的に意図されている。理論に縛られるものではないが、脱アセチル化度が高ければキトサンの止血特性が改善されると考えられる。
【0068】
好適なキトサン塩は、正味の正電荷を有するキトサンイオンを含む塩である。したがって、好適なキトサン塩はキトサンカチオンと対アニオンからなる塩であってよい。たとえば、キトサン止血剤はキトサンと有機酸、特にコハク酸、乳酸、またはグルタミン酸等のカルボン酸との塩であってよい。キトサン塩は、たとえばキトサンの硝酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、および塩酸塩からなる群から選択してよい。
【0069】
一般に、キトサン誘導体はキトサン中に存在するヒドロキシル基および/またはアミン基の1つまたは複数が置換されたキトサン分子である。たとえば、1つまたは複数のヒドロキシル基が置換されてエーテルまたはエステルが得られる。アミン基が置換されてアミノ基が得られるが、これは一般に止血活性の低下をもたらす。したがって、キトサンのアミン基は典型的には置換されない。
【0070】
キトサン止血剤は動物、植物、または甲殻類起源のキトサンを含み、またはこれから誘導され得る。これらの供給源は上記の止血効果に関しては同様の良好な結果をもたらす。さらに、合成キトサンを用いてもよい。
【0071】
好適なキトサン塩のさらなる例は、グルタミン酸、コハク酸、フタル酸、または乳酸のキトサンエステルであり、キトサン誘導体は1つまたは複数のカルボキシメチルセルロース基、カルボキシメチルキトサンを含む。キトサン誘導体のその他の好適な例は、四級基(N-トリメチレンクロリド、N-トリメチレンアンモニウム等)を含むキトサンである。カルシトニンまたは5-メチルピロリジノン等の生理活性賦形剤も用いることができる。
【0072】
キトサン止血剤は約1~1000kDaの範囲の分子量を有し得る。
【0073】
種々の例では、キトサン止血剤は約1~1000kDa、1~500kDa、1~250kDa、1~100kDa、10~1000kDa、10~500kDa、10~250kDa、10~100kDa、30~80kDa、50~1000kDa、50~500kDa、50~350kDa、50~250 kDa、100~1000kDa、100~750kDa、100~500kDa、100~250kDa、150~500kDa、200~1000kDa、200~750kDa、200~500kDa、225~275kDa、200~300kDa、210~390kDa、90~1000kDa、190~1000kDa、290~1000kDa、または390~1000kDaの範囲の分子量を有し得る。さらなる非限定的な例では、上述の範囲の端点の中および端点を含む全ての値および値の範囲が、本明細書で明示的に意図されている。
【0074】
1つの例では、図1A図1Cに最もよく示されているように、活性薬剤を局所的に鼻腔に投与するためおよび流体分泌物を吸収するための鼻腔内発泡被覆材10は、80%を超える空孔率を有する第1の発泡体を含む。第1の発泡体は鼻腔内発泡被覆材10の第2の端部18における発泡ベース部分20および発泡ベース部分20から鼻腔内発泡被覆材10の第1の端部16に向かって延在する発泡コア部分12を含む。第2の端部18は術者に最も近く、第1の端部16は術者から最も遠い。鼻腔内発泡被覆材10は少なくとも80%の空孔率を有する第2の発泡体をさらに含む。第2の発泡体は発泡ベース部分20から第1の端部16まで延在する発泡シェル部分14を含む。発泡シェル部分14は第1の相分離ポリマーと活性薬剤(たとえばコルチコステロイド)を含む。発泡ベース部分20と発泡シェル部分14は協同して発泡コア部分12をカプセル化し、鼻腔内被覆材10の外表面を画定する。発泡シェル部分14は第1の相分離ポリマーと同一または異なる第2の相分離ポリマーを含む。鼻腔内発泡被覆材10は第1の端部16に活性薬剤(たとえばステロイド)を含み、活性薬剤を第2の端部18に含まない。必要ではないが、第1の発泡体はキトサン止血剤を含んでもよい。第1の発泡体にキトサン止血剤が含まれる場合には、鼻腔内発泡被覆材10は第2の端部18にキトサン止血剤を含み、第1の端部16にキトサン止血剤を含まなくてもよい。いくつかの例では、キトサン止血剤は発泡コア部分12の中に均一に分布しており、薬物、たとえばステロイドは発泡シェル部分14の中に均一に分布している。
【0075】
ある例では、発泡コア部分12および発泡ベース部分20は一体であり(即ち発泡ベース部分20と発泡シェル部分14は同じ化学組成、空孔率、その他を有する一体の発泡体である)、活性薬剤としてキトサン止血剤を含む。これらの例では、発泡シェル部分14は異なる活性薬剤を含んでもよい。さらに、発泡シェル部分14と発泡ベース部分20は協同して発泡コア部分12をカプセル化してよい。発泡シェル部分14が異なる活性薬剤を含む場合、活性薬剤は典型的にはコルチコステロイドである。これらの例では、キトサン止血剤は鼻腔内発泡被覆材10の第2の端部18に存在するが、第1の端部16には存在しない。逆に、コルチコステロイドは鼻腔内発泡被覆材10の第1の端部16に存在し、第2の端部18には存在しない。
【0076】
ある例では、活性薬剤が止血剤である場合には、止血剤を含む発泡部分(即ち発泡シェル部分14および/または発泡コア部分20)は、85~99%の空孔率および0.03~0.07g/cmの発泡密度を有する。そのような空孔率および密度の値は止血活性の増強に寄与し、良好な液体(たとえば水または血液)吸収特性を発泡体に提供する。あるいは、発泡部分は0.03~0.07g/cmの発泡密度および92~98%または95~98%の空孔率を有する。
【0077】
止血剤の量は、止血剤を含む発泡部分の総重量の少なくとも0.1wt%、好ましくは少なくとも2wt%、より好ましくは少なくとも5wt%であってよい。注目すべきことに、この比較的少量の止血剤であっても鼻腔内発泡被覆材10に望ましい止血特性を提供するために十分である。さらに、止血剤の量は一般に、発泡体部分の総重量の99wt%未満、50wt%未満、または35wt%未満である。鼻腔内発泡被覆材10の止血活性はほとんど止血剤によらないので、一般に高濃度は必要でなく、好ましくもない。
【0078】
止血剤は好ましくは発泡体の中に粒子、特にポリマー粒子の形態で存在する。好適な粒子の例は、非晶性、結晶性、およびゲル様粒子である。止血剤は特に高粘度の場合には液体でもよい。止血性粒子の場合には、粒子は1~1000μmの寸法を有してよい。好ましくは、粒子は150μmより小さい。特に、良好な結果は5~90μmの粒子を用いて得られている。小さな粒子はいくつかの利点を有する。第1に、発泡体の構造は大きな粒子よりは小さな粒子の存在による影響を受けにくい。第2に、小さな止血性粒子は大きな粒子よりも凝集する傾向が小さい。さらに、小さな粒子を用いることによって良好な分散を得ることができる。最後に、発泡体を調製する際に小さな粒子は沈降せず、したがって所望であれば発泡体の中の均一な分布が達成され得る。
【0079】
止血性粒子は任意の好適な形状であってよいが、好ましくはほぼ球状である。粒子は好ましくは中実である。用いられる好適な中実粒子は一般に不溶性かつ親水性である。
【0080】
いくつかの例では、キトサン止血剤は発泡コア部分12の中で均一に分布しており、薬物、たとえばステロイドは、シェル14の部分の中に均一に分布している。他の例では、止血剤は第1の分離したポリマー(たとえば第1のポリウレタン発泡体)に不溶であり、薬物(たとえばステロイド)は第2の相分離ポリマー(たとえば第2のポリウレタン発泡体)に不溶である。
【0081】
第1の非限定的な実施例では、活性薬剤を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための鼻腔内発泡被覆材10は、発泡コア部分12および発泡シェル部分14を含む。発泡シェル部分14は、発泡コア部分12が少なくとも部分的に発泡シェル部分14の中に配置されるように調整されている。さらに、発泡シェル部分14は80%を超える空孔率を有し、第1の相分離ポリマーと活性薬剤を含む。発泡コア部分12は第2の相分離ポリマーを含む。この例では、第1の相分離ポリマーと第2の相分離ポリマーは同一または異なっている。
【0082】
第2の非限定的な実施例では、薬物を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための鼻腔内発泡被覆材10は、発泡コア部分12および発泡シェル部分14を含む。発泡コア部分12は非晶性セグメントと結晶性セグメントを含む第1のポリウレタンを含み、結晶性セグメントは水素結合を介して形成される。発泡コア部分12も止血剤を含む。発泡シェル部分14は、発泡コア部分12が少なくとも部分的に発泡シェル部分14の中に配置されるように調整されている。発泡シェル部分14は80%を超える空孔率を有し、非晶性セグメントおよび結晶性セグメントを含む第2のポリウレタンを含み、結晶性セグメントは水素結合を介して形成される。この例では、第1および第2のポリウレタンは同一または異なっている。この例では、活性薬剤または薬物、たとえばステロイドは、発泡シェル部分14の中に配置されている。さらにこの例では、鼻腔内発泡被覆材10は第1の端部16から第2の端部18まで延在する細長い形状を有する。鼻腔内発泡被覆材10は第1の端部16に隣接する第1の半体および第2の端部18に隣接する第2の半体を有し、鼻腔内発泡被覆材10の第1の半体の中の薬物の重量は鼻腔内発泡被覆材10の第2の半体の中の薬物の重量より大きい。
【0083】
第3の非限定的な実施例では、薬物を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための鼻腔内発泡被覆材10は細長い。この例では、鼻腔内発泡被覆材10は80%を超える空孔率を有する第1の発泡体を含む。第1の発泡体は発泡ベース部分20を含む(または形成する)。第1の発泡体は鼻腔内発泡被覆材10の第1の端部16にあり、発泡コア部分12は発泡ベース部分20から鼻腔内発泡被覆材10の第2の端部18に向かって延在している。発泡コア部分12は第1の相分離ポリマーを含む。第1の相分離ポリマーは非晶性セグメントおよび結晶性セグメントを含む。この例の鼻腔内発泡被覆材10は少なくとも80%の空孔率を有する第2の発泡体を含む。第2の発泡体は発泡シェル部分14を含み(または形成し)、発泡シェル部分14は発泡ベース部分20から第2の端部18まで延在する。発泡シェル部分14は第2の相分離ポリマーおよび薬物、たとえばステロイドを含む。第2の相分離ポリマーは非晶性セグメントと結晶性セグメントを含む。この例では、発泡ベース部分20と発泡シェル部分14は協同して発泡コア部分12をカプセル化し、鼻腔内発泡被覆材10の外表面を画定する。この例では、第1および第2の相分離ポリマーは同一または異なっている。さらに、鼻腔内発泡被覆材10は第2の端部を画定する体積の中に薬物を含み、第1の端部を画定する体積の中に薬物を含まない。
【0084】
第4の非限定的な実施例では、薬物を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための鼻腔内発泡被覆材10は細長い。この例では、鼻腔内発泡被覆材10は80%を超える空孔率を有する第1の発泡体を含む。第1の発泡体は発泡ベース部分20を含む(または形成する)。第1の発泡体は鼻腔内発泡被覆材10の第1の端部16にあり、発泡コア部分12は発泡ベース部分20から鼻腔内発泡被覆材10の第2の端部18に向かって延在している。発泡コア部分12は第1の相分離ポリマーを含む。第1の相分離ポリマーは非晶性セグメントおよび結晶性セグメントを含む。この例の鼻腔内発泡被覆材10は少なくとも80%の空孔率を有する第2の発泡体を含む。第2の発泡体は発泡シェル部分14を含み(または形成し)、発泡シェル部分14は発泡ベース部分20から第2の端部18まで延在する。発泡シェル部分14は第2の相分離ポリマーおよび薬物を含む。第2の相分離ポリマーは非晶性セグメントと結晶性セグメントを含む。この例では、発泡ベース部分20と発泡シェル部分14は協同して発泡コア部分12をカプセル化し、鼻腔内発泡被覆材10の外表面を画定する。この例では、第1および第2の相分離ポリマーは同一または異なっており、典型的には異なっている。この例では、鼻腔内発泡被覆材10は第1の端部16を画定する体積の中に薬物を含んでよく、第2の端部18を画定する体積の中に薬物を含まず、鼻腔内発泡被覆材10は第2の端部を画定する体積の中にキトサン止血剤を含み、第1の端部を画定する体積の中にキトサン止血剤を含まない。
【0085】
本開示の最も広い範囲から逸脱することなく、鼻腔内発泡被覆材10に関して上述した生医学用発泡体は、耳用被覆材のためまたは心房を充填するための発泡体等の他の生医学用の発泡体の用途にも用いられ得ることを認識されたい。生医学用発泡体が耳用発泡被覆材または心房充填材である場合には、発泡体は上記のように発泡シェル部分14、発泡コア部分12、および任意選択的に発泡ベース部分20’を含む。同様に、発泡体は鼻腔内発泡被覆材10を形成するための方法を用いて形成される。換言すれば、本開示のそれぞれおよび全ての実施例は、耳用発泡被覆材および/または心房充填材に適用可能である。
【0086】
本開示は鼻腔内発泡被覆材10を形成する方法も提供する。図7および図8に示すように、本方法は鋳型22を準備するステップを含む。鋳型22は任意の好適な形状および/または寸法の空腔24を有してよい。図示した例では、空腔22は円筒状に成形されている。
【0087】
図7および図8にも示すように、本方法はスペーサー26を鋳型22に設置するステップをさらに含む。スペーサー26の形状に特に制限はないが、その形状はスペーサー26が鋳型22の空腔24の底に達することを防止する必要がある。たとえば図7および図8に図示するように、スペーサー26はリップ28および突出部30を含んでよい。典型的には、リップ28は鋳型22の外部表面に当接し、スペーサー26が鋳型22の空腔24の底に接触することを防止することになる。換言すれば、リップ28は鋳型22の外部表面と協同して突出部30を鋳型22の空腔24の中に懸垂してもよい。これらの例では、突出部30の長さ(L)は鋳型22の深さ(D)よりも短い。
【0088】
本方法は、第1の相分離ポリマーと活性薬剤を含む第1の液体を鋳型22に入れるステップをさらに含む。第1の液体は溶媒をさらに含んでもよい。第1の液体が溶媒を含む場合には、第1の液体は典型的には第1の相分離ポリマーと活性薬剤を溶媒に溶解することによって形成される。もちろん、スペーサー26および第1の液体は任意の順序で鋳型22に入れてよい。鋳型22の中では、第1の液体とスペーサー26は接触している。換言すれば、スペーサー26は鋳型22の中で第1の液体の体積の少なくとも一部を置き換えている。
【0089】
本方法は第1の液体を冷却して第1の液体を凍結させるステップをさらに含む。第1の液体の冷却は、第1の液体を凍結させることができる任意の好適な温度で行なってよい。
【0090】
本方法は、凍結した第1の液体からスペーサー26を取り出して凍結した第1の液体の中の空腔32を露出するステップをさらに含む。たとえば図9に示すように、凍結した第1の液体の空腔32はスペーサー26の突出部30と相補的に成形されている。凍結した第1の液体は凍結したシェル部分14’とも称されることを認識されたい。凍結した第1の液体からスペーサー26を取り出すことを容易にするために、スペーサー26は典型的にはPTFEから形成され、一般には円筒状に成形されている。PTFEはそれに固有の低い摩擦特性を有しているので有利である。さらに、一般に円筒状に成形されたスペーサー26を用いることによって、スペーサー26を凍結した第1の液体から取り出す間に、凍結した第1の液体の物理的形状を破壊することなくスペーサー26を緩めて「回転」させることができる。鋳型22の空孔体積は一般に正方形の断面形状を有してもよく、これは凍結した第1の液体がスペーサー26と同時に回転することを防止するために有利である。もちろん、スペーサー26と鋳型22は任意の好適な材料から形成され、任意の好適な幾何学的構成を有してよい。
【0091】
本方法は、凍結した第1の液体の空腔32の中に第2の液体を入れるステップをさらに含む。第2の液体は第1の相分離ポリマーと同一または異なる第2の相分離ポリマーを含む。第2の液体は任意選択的に活性薬剤(たとえば止血剤)および溶媒を含んでもよい。
【0092】
本方法は第2の液体を冷却して第2の液体を凍結させるステップをさらに含む。第2の液体の冷却は、第2の液体を凍結させることができる任意の好適な温度で行なってよい。図10に最もよく示されているように、第2の液体を冷却するステップは凍結したコア部分12’および凍結したベース部分20’を生成し、凍結したコア部分12’は凍結したシェル部分14’の中に全体が露出していてよい。さらに、凍結したシェル部分14’および凍結したベース部分20’は協同して凍結したコア部分12’をカプセル化し得る。
【0093】
本方法は、第1および第2の凍結した液体を乾燥して、発泡シェル部分14’の中に少なくとも部分的に配置された発泡コア部分12’を含む鼻腔内発泡被覆材10を形成するステップをさらに含む。換言すれば、凍結した第1の液体を乾燥するステップは発泡シェル部分14’を形成し、凍結した第2の液体を乾燥するステップは発泡コア部分12’を形成する。第1および第2の液体を形成し、冷却し、および乾燥する好適な方法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2015/0320901号に記載されている。
【0094】
ある例では、乾燥するステップは、圧力を低下し、温度を上昇させて、それにより第1および第2の凍結した液体の中に存在するいかなる溶媒も相分離ポリマーから昇華させることによって実施される。いくつかの例では、温度の上昇は部分的に溶媒分子の昇華の潜熱により、90%、95%、または100%までの溶媒の昇華がもたらされ得る。凍結乾燥の全体のプロセスは約1時間~24時間、またはそれ以上、続き得る。典型的には、凍結乾燥の全体は約15時間、実施される。
【0095】
ある例では、凍結した第1の液体の空腔32の中に第2の液体を入れるステップは、凍結した第1の液体の空腔32を第2の液体で溢れさせるステップとしてさらに定義される。このようにして空腔32が満たされる場合には、本方法が完了した後で、「溢れ」は発泡ベース部分20’を形成し得る。したがってこれらの例では、発泡コア部分12’と発泡ベース部分20’は同じ化学組成、空孔率、発泡密度を有し、一体である。さらに、発泡コア部分12’と発泡シェル部分14’は発泡ベース部分20’から延在している。
【0096】
ある例では、第1および第2の液体の冷却後であるが第1および第2の凍結した液体の乾燥前に、第3の液体を鋳型22の中に入れるステップをさらに含む。これらの例では、第3の液体は第3の相分離ポリマーを含み、任意選択的に溶媒および活性薬剤を含む。これらの例では、第3の液体は凍結され、続いて第1および第2の凍結した液体とともに乾燥されて、発泡ベース部分20’を含む鼻腔内発泡被覆材10を形成する。
【0097】
第1、第2、および/または第3の液体に溶媒が含まれる場合には、好適な溶媒には約0~50℃の範囲に凍結点を有する極性溶媒が含まれる。そのような溶媒は乾燥によって除去することができる。そのような好適な溶媒には、酢酸、ベンゼン、シクロヘキサン、ギ酸、ニトロベンゼン、フェノール、1,4-ジオキサン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびそれらの組合せが含まれる。1つの例では、用いられる溶媒は1,4-ジオキサンである。
【0098】
ある例では、活性薬剤が相分離ポリマーまたは溶媒に溶解しない場合には、本方法は、特定の発泡部分の中への活性薬剤の均一な組込みを確実にするための追加的なステップを含む。活性薬剤が相分離ポリマーおよび/または溶媒に溶解しない場合には、活性薬剤は典型的には粒子である。これらの追加的なステップは、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第9,422,389号に記載されている。
【0099】
1つの例では、均一な組込みは、第1および/または第2の液体の温度が速い速度で、典型的には10秒以内に、液体の凍結点(結晶化温度)未満に低下するように冷却ステップを実施することによって達成される。
【0100】
これらの冷却速度は、用いる溶媒(単数または複数)の種類、および乾燥プロセスを用いて溶媒(単数又は複数)を発泡体から昇華させることが可能な速度によることになる。ポリマー/粒子混合物の温度が溶媒(単数または複数)の凍結点(結晶化点)より低い場合には、溶媒は結晶化する。溶媒(単数または複数)の昇華は、粒子の均一な分布を含む発泡体をもたらす。
【0101】
特定の例では、第1および/または第2の液体は60秒以内に凍結し、続いて1つまたは複数の溶媒が昇華して粒子の均一な分布を含む発泡体が形成される。
【0102】
別の代替例では、発泡体への粒子の均一な組込みは、第1および/または第2の液体を冷却して第1および/または第2の液体を凍結させ、続いて少なくとも一度、1つまたは複数の溶媒の凍結点よりも高い温度に昇温して、部分的に凍結した相分離ポリマー/粒子混合物を融解させ、温度を低下させて相分離ポリマー/粒子混合物を再凍結させ、続いて1つまたは複数の溶媒の昇華によって凍結した第1および第2の液体を乾燥させて粒子の均一な分布を含む発泡体を形成させることによっても達成し得る。
【0103】
用いる粒子の寸法も、発泡体中のそれらの分布に影響する。プロセス中で極微細粒子を用いることにより、発泡体を通して良好な粒子の分布がもたらされ、粒子の凝集が最小化される。しかし、発泡体中の粒子の凝固または凝塊が生じる可能性の増大がもたらされ得るので、より大きな粒子の使用はあまり望ましくない。発泡体中の粒子の凝固によって発泡体がもろくなり、そのためにこれが使用に適さなくなる可能性がある。
【0104】
粒子は好ましくは中実である。用いられる好適な中実粒子は不溶性かつ親水性であり、有機、無機、または両方の混合物であってよい。粒径は典型的には1~1000μm、好ましくは1~150μm、さらにより好ましくは15~120μmである。粒子は任意の好適な形状であってよいが、好ましくはほぼ球状である。
【0105】
粒子は抗血栓剤、抗細菌剤、抗真菌剤、防腐剤、またはその他の好適な薬物であってよい。好ましくは、粒子は寸法が約20~30μmの平滑な粒子、または寸法が約60~115μmの粗い粒子であってよい。
【0106】
特定の発泡部分の中に均一な分布の不溶性薬物を形成することに加えて、特定の発泡部分の中に不溶性薬物の層を形成することも可能である。これらの例では、第1または第2の液体を、その中に含まれている1つまたは複数の溶媒の凍結点まで60秒~600秒以内に冷却するステップ、および続いて1つまたは複数の溶媒の昇華によってポリマー/粒子混合物を乾燥して粒子の1つまたは複数の層を含む発泡体を形成するステップ。これらの例では、粒子は典型的には溶媒(単数または複数)より軽く、予想されるように上面まで上がらず、その代わりに粒子は発泡体の下に層を形成する。
【0107】
第1の非限定的な実施例では、鼻腔内発泡被覆材10を形成する方法が提供される。本方法は鋳型22を準備するステップを含む。本方法は、スペーサー26および第1の液体を鋳型22に入れ、それにより第1の液体およびスペーサー26を鋳型22に接触させるステップをも含む。第1の液体は第1の相分離ポリマー、たとえば第1のポリウレタン、および活性薬剤、たとえばステロイドを含む。本方法は、第1の液体を冷却して第1の液体を凍結させ、凍結した第1の液体からスペーサー26を取り出して凍結した第1の液体の中の空腔32を露出するステップをさらに含む。本方法は、凍結した第1の液体の空腔32の中に第2の液体を入れるステップをさらに含む。第2の液体は第1の相分離ポリマーと同一または異なる第2の相分離ポリマー、たとえば第2のポリウレタン(および任意選択的にキトサン止血剤)を含む。本方法は、第2の液体を冷却して第2の液体を凍結させるステップをさらに含む。本方法は、第1および第2の凍結した液体を乾燥して、発泡シェル部分14の中に少なくとも部分的に配置された発泡コア部分12を含む鼻腔内発泡被覆材10を形成するステップをさらに含む。
【0108】
ここで図11を参照して、鼻腔内発泡被覆材10を用いて炎症を治療すると同時に洞腔からの流体分泌物を吸収する方法も開示される。本方法は、鼻腔内発泡被覆材10を準備するステップ、発泡被覆材が挿入形態になるように鼻腔内発泡被覆材10を圧縮するステップ、および鼻腔内発泡被覆材10が挿入形態にある間に鼻腔内発泡被覆材10の第2の端部18が第1の端部16よりも使用者から遠くなるように鼻腔内発泡被覆材10を鼻腔内に位置決めするステップを含む。本方法では、鼻腔内発泡被覆材10はちょうど上記のものである。
【0109】
発泡被覆材が挿入形態になるように鼻腔内発泡被覆材10を圧縮するステップ、および鼻腔内発泡被覆材10が挿入形態にある間に鼻腔内発泡被覆材10の第2の端部18が第1の端部16よりも使用者から遠くなるように鼻腔内発泡被覆材10を鼻腔内に位置決めするステップは、手を介して、当業者には公知の種々の型の鉗子を用いて、または当技術で公知の、もしくは鼻腔内発泡被覆材10のために特別に開発された他の装置を用いて、遂行することができる。
【0110】
鼻腔内発泡被覆材10を用いて炎症を治療すると同時に洞腔からの流体分泌物を吸収する方法は、発泡コア部分12および発泡コア部分12が発泡シェル部分14の中に少なくとも部分的に配置されるように調整された発泡シェル部分14を含む鼻腔内発泡被覆材10を利用することができる。発泡コア部分12は非晶性セグメントと結晶性セグメントを含む第1のポリウレタンを含んでよく、結晶性セグメントは水素結合を介して形成される。発泡コア部分12はその中に配置された止血剤、たとえばキトサンを有する。止血剤は窒素原子に結合した少なくとも1つの水素原子、および酸素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を含んでよく、水素原子は第1のポリウレタン発泡体の結晶性セグメントと水素結合を形成するために利用可能である。発泡シェル部分14は80%を超える空孔率を有してよく、非晶性セグメントと結晶性セグメントを含む第2のポリウレタンを含み、結晶性セグメントは水素結合を介して形成される。この例では、第1および第2のポリウレタンは同一または異なっている。この例では、止血剤は発泡コア部分12および/または発泡シェル部分14の中に配置されていてよく、ステロイドは発泡コア部分12および/または発泡シェル部分14の中に配置されていてよい。既に述べたように、この例の鼻腔内発泡被覆材10は第1の端部16から第2の端部18まで延在する細長い形状を有してよく、第1の半体は第1の端部16に隣接し、第2の半体は第2の端部18に隣接している。多くの例で、鼻腔内発泡被覆材10の第1の半体の中の薬物の重量は鼻腔内発泡被覆材10の第2の半体の中の薬物の重量より大きい。
【0111】
上記の値の1つまたは複数は、変動が本開示の範囲の中に留まる限り、±5%、±10%、±15%、±20%、±25%等だけ変動してもよい。それぞれの構成要素は個別におよび/または組み合わされて依拠され、添付した特許請求の範囲の中の特定の実施例について適切な支持を提供する。独立請求項ならびに単一従属および多重従属の従属請求項の全ての組合せの主題が本明細書で明示的に意図されている。本開示は限定的というよりは記述の単語を含めて説明的である。上記の教示に照らして本開示の多くの改変および変更が可能であり、本開示は本明細書で具体的に記載された以外にも実施可能である。
【0112】
本開示の全体にわたる上述の実施例の全ての組合せは、そのような開示が上記の単一のパラグラフまたはセクションの中で逐語的に記載されていないとしても、本明細書において1つまたは複数の非限定的な実施例の中で明示的に意図されている。換言すれば、明示的に意図された実施例は、本開示のいずれかの部分からも選択され組み合わされた上記のいずれの1つまたは複数の要素をも含み得る。
【0113】
本開示の種々の例を記載するにあたって独立におよび集合的に依拠されるいずれの範囲および部分的範囲も、添付した特許請求の範囲に含まれることも理解されたい。またその中の全体の値および/または部分的な値が本明細書で明示的に記載されていなくても、これらの値を含む全ての範囲が記述され意図されていると理解されたい。当業者であれば、列挙した範囲および部分的範囲が本開示の種々の実施例を十分に記述し可能にしていること、ならびにこれらの範囲および部分的範囲が関連する半分、3分の1、4分の1、5分の1、等々にさらに線引きすることができることが容易に認識できる。ちょうど1つの例として、「0.1~0.9の」範囲は、下の3分の1、即ち0.1~0.3、中間の3分の1、即ち0.4~0.6、および上の3分の1、即ち0.7~0.9にさらに線引きでき、これらは個別におよび集合的に添付した特許請求の範囲に含まれ、個別におよび/または集合的に依拠され、添付した特許請求の範囲の中の特定の実施例について適切な支持を提供し得る。さらに、範囲を定義しまたは改変する、たとえば「少なくとも」、「~より大きい」、「~未満」、「~を超えない」等の言語に関しては、これらの言語が部分的範囲および/または上限もしくは下限を含むことを理解されたい。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、本質的に少なくとも10~35の部分的範囲、少なくとも10~25の部分的範囲、25~35の部分的範囲、等々を含み、それぞれの部分的範囲は個別におよび/または集合的に依拠され、添付した特許請求の範囲の中の特定の実施例について適切な支持を提供し得る。最後に、開示した範囲の中の個別の数は依拠され、添付した特許請求の範囲の中の特定の実施例について適切な支持を提供し得る。たとえば、「1~9の」範囲は、種々の個別の整数、たとえば3、ならびに小数点(または分数)、たとえば4.1を含み、これらは依拠され、添付した特許請求の範囲の中の特定の実施例について適切な支持を提供し得る。
【0114】
上記の説明の中でいくつかの実施例を論じてきた。しかし、本明細書で論じた実施例は網羅的または本開示を何らかの特定の形態に限定することを意図していない。用いた用語は限定的というよりは記述の単語の性質を持っていることを意図している。上記の教示に照らして多くの改変および変更が可能であり、本開示は具体的に記載された以外にも実施可能である。
国際出願時の特許請求の範囲は以下の通り。

[請求項1]
薬物を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための鼻腔内発泡被覆材であって、
第1のポリウレタンおよび止血剤を含む発泡コア部分であって、非晶性セグメントおよび結晶性セグメントを含む発泡コア部分と、
前記発泡コア部分が発泡シェル部分の中に少なくとも部分的に配置されるように調整された発泡シェル部分であって、前記発泡シェル部分が80%を超える空孔率を有し、第2のポリウレタンを含み、前記発泡シェル部分が非晶性セグメントおよび結晶性セグメントを含み、前記第1および第2のポリウレタンが同一または異なっている、発泡シェル部分と、
前記発泡シェル部分の中に配置された薬物と、
第1の端部から第2の端部まで延在する細長い形状を有する前記鼻腔内被覆材であって、前記鼻腔内被覆材が前記第1の端部に隣接する第1の半体および前記第2の端部に隣接する第2の半体を有し、前記鼻腔内発泡被覆材の前記第1の半体の中の前記薬物の重量が前記鼻腔内発泡被覆材の前記第2の半体の中の前記薬物の重量より大きい、鼻腔内発泡被覆材と
を含む、鼻腔内発泡被覆材。
[請求項2]
前記薬物がステロイドを含み、前記発泡シェル部分が前記ステロイドを含み、前記発泡コア部分が実質的に前記ステロイドを含まない、請求項1に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項3]
前記ステロイドが窒素、酸素、またはフッ素原子と結合する少なくとも1つの水素原子を含み、前記原子が前記発泡シェル部分の前記結晶性セグメントと水素結合を形成するために利用可能である、請求項2に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項4]
前記発泡シェル部分と前記発泡コア部分が水素結合を介して相互に結合しており、その間に実質的に共有結合がない、請求項1から3のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項5]
前記第1および/または前記第2のポリウレタンの中の前記結晶性セグメントが1,4-ブタンジオールと1,4-ジイソシアナートブタンの反応生成物を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項6]
前記第1および/または第2のポリウレタン発泡体の中の分子が、前記結晶性セグメントと前記非晶性セグメントが交互の構成で積み重なって、積み重なった結晶性セグメントの間の水素結合を介して強化された三次元多孔質構造を提供するように調整されている、請求項1に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項7]
前記発泡コア部分が第1の濃度で前記薬物を含み、前記発泡シェル部分が第2の濃度で前記薬物と同一またはこれと異なる第2の薬物を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項8]
前記第2の端部に発泡ベース部分をさらに含み、前記発泡シェル部分および前記発泡コア部分が前記発泡ベース部分から前記第1の端部に向かって延在している、請求項1から7のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項9]
前記発泡ベース部分と前記発泡シェル部分が協同して前記発泡コア部分をカプセル化して前記鼻腔内被覆材の外表面を画定する、請求項1から8のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項10]
前記第1の半体が前記第1の端部および前記鼻腔内発泡被覆材の体積の50%を含み、前記第2の半体が前記第2の端部および前記鼻腔内発泡被覆材の体積の残り50%を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項11]
前記発泡ベース部分および前記発泡コア部分が一体である、請求項8から10のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項12]
前記発泡コア部分および/または前記発泡シェル部分が止血剤を含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項13]
前記止血剤が窒素原子に結合した少なくとも1つの水素原子、および酸素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を含み、前記水素原子が前記第1および/または第2のポリウレタン発泡体の前記結晶性セグメントと水素結合を形成するために利用可能である、請求項12に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項14]
前記止血剤の分子と前記第2のポリウレタン発泡体の分子とが水素結合を介して相互に結合しており、その間に実質的に共有結合がない、請求項13に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項15]
前記止血剤が前記第1および/または第2のポリウレタン発泡体に不溶であり、前記薬物が前記第1および/または第2のポリウレタン発泡体に不溶なステロイドである、請求項12から14のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項16]
管腔を有しない、請求項1から15のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項17]
前記第1および/または第2のポリウレタン発泡体が生体吸収性である、請求項1から16のいずれか1項に記載の鼻腔内被覆材。
[請求項18]
前記発泡シェル部分の体積が前記鼻腔内発泡被覆材の全体積の約20~約40%である、請求項1から17のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項19]
前記発泡コア部分が前記発泡シェル部分の中に完全に配置されている、請求項1から18のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項20]
前記発泡コア部分が円筒状に成形されている、請求項1から19のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項21]
前記発泡シェル部分の断面が正方形または長方形の形状を有し、前記発泡ベース部分の断面と同一の形状である、請求項1から20のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項22]
前記発泡コア部分が80%を超える空孔率を有する、請求項1から21のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項23]
薬物を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための鼻腔内発泡被覆材を形成する方法であって、
鋳型を準備するステップと、
スペーサーを前記鋳型に入れるステップと、
第1のポリウレタンおよび薬物を含む第1の液体を前記鋳型に入れ、前記第1の液体および前記スペーサーを前記鋳型に接触させるステップと、
前記第1の液体を冷却して前記第1の液体を凍結させるステップと、
前記凍結した第1の液体から前記スペーサーを取り出して前記凍結した第1の液体の中の空腔を露出するステップと、
前記凍結した第1の液体の前記空腔の中に第2のポリウレタンおよび止血剤を含む第2の液体を入れるステップと、
前記第2の液体を冷却して前記第2の液体を凍結させるステップと、
前記第1および第2の凍結した液体を乾燥して前記鼻腔内発泡被覆材を形成するステップと
を含む、方法。
[請求項24]
前記凍結した第1の液体の前記空腔の中に前記第2の液体を入れるステップが、前記凍結した第1の液体の前記空腔を前記第2の液体で溢れさせるステップとしてさらに定義される、請求項23に記載の方法。
[請求項25]
前記凍結した第2の液体を乾燥するステップが発泡コア部分および発泡ベース部分を形成し、それにより前記発泡コア部分および前記発泡シェル部分が前記発泡ベース部分から延在する、請求項24に記載の方法。
[請求項26]
前記発泡ベース部分と前記発泡シェル部分が協同して前記発泡コア部分をカプセル化して前記鼻腔内発泡被覆材の外表面を画定する、請求項25に記載の方法。
[請求項27]
前記発泡コア部分が円筒状に成形され、前記発泡シェル部分の断面が正方形または長方形の形状を有する、請求項23から26のいずれか1項に記載の方法。
[請求項28]
前記発泡シェル部分が前記薬物を含む前記鼻腔内発泡被覆材の唯一の部分である、請求項23から27のいずれか1項に記載の方法。
[請求項29]
鼻腔内発泡被覆材を用いて炎症を治療すると同時に洞腔からの流体分泌物を吸収する方法であって、
第1の相分離ポリマーおよび止血剤を含む発泡コア部分と、
前記発泡コア部分が発泡シェル部分の中に少なくとも部分的に配置されるように調整され、80%を超える空孔率を有し、第2の相分離ポリマーを含む発泡シェル部分であって、前記第1および第2の相分離ポリマーが同一または異なる、発泡シェル部分と
を含む、鼻腔内発泡被覆材であって、
前記鼻腔内被覆材が第1の端部から第2の端部まで延在する細長い形状を有し、前記鼻腔内被覆材が前記第1の端部に隣接する第1の半体および前記第2の端部に隣接する第2の半体を有し、前記鼻腔内発泡被覆材の前記第1の半体の中の前記薬物の重量が前記鼻腔内発泡被覆材の前記第2の半体の中の前記薬物の重量より大きい、鼻腔内発泡被覆材を準備するステップと、
前記発泡被覆材が挿入形態になるように前記鼻腔内発泡被覆材を圧縮するステップと、
前記鼻腔内発泡被覆材が前記挿入形態にある間に前記鼻腔内発泡被覆材の前記第2の端部が前記第1の端部よりも使用者から遠くなるように前記鼻腔内発泡被覆材を鼻腔内に位置決めするステップと
を含む、方法。
[請求項30]
薬物を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための細長い鼻腔内発泡被覆材であって、
80%を超える空孔率を有し、前記鼻腔内発泡被覆材の第1の端部における発泡ベース部分および前記発泡ベース部分から前記鼻腔内発泡被覆材の第2の端部に向かって延在する発泡コア部分を含む第1の発泡体であって、前記発泡コア部分が第1の相分離ポリマー
を含み、前記第1の相分離ポリマーが非晶性セグメントと結晶性セグメントを含む、第1の発泡体と、
少なくとも80%の空孔率を有し、前記発泡ベース部分から前記第2の端部まで延在する発泡シェル部分を含む第2の発泡体であって、前記発泡シェル部分が第2の相分離ポリマーおよび薬物を含み、前記第2の相分離ポリマーが非晶性セグメントと結晶性セグメントを含む、第2の発泡体と
を含み、
前記発泡ベース部分と前記発泡シェル部分が協同して前記発泡コア部分をカプセル化して前記鼻腔内被覆材の外表面を画定し、
前記第1および第2の相分離ポリマーが同一または異なり、
前記鼻腔内発泡被覆材が前記第2の端部を画定する体積の中に前記薬物を含み、前記第1の端部を画定する体積の中に前記薬物を含まない、細長い鼻腔内発泡被覆材。
[請求項31]
前記第1および第2の相分離ポリマーのそれぞれが独立して式
-[R-Q1[-R’-Z1-[R”-Z2-R’-Z3]p-R”-Z4]q-R’-Q2]n- (I)
のものであり、
式中、Rは1つまたは複数の脂肪族ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリエーテル、ポリ無水物、および/またはポリカーボネートから選択され、任意選択的に少なくとも1つのRは親水性セグメントを含み、R’およびR”は独立して、任意選択的にC1-C10アルキルまたはハライドもしくは保護されたS、N、P、もしくはO部分で置換されたC1-C10アルキルで置換され、および/またはアルキレン鎖の中にS、N、P、もしくはOを含むC2-C8アルキレンであり、Z1~Z4は独立してアミド、尿素、またはウレタンであり、Q1およびQ2は独立して尿素、ウレタン、アミド、カーボネート、エステル、または無水物であり、nは5~500の整数であり、pおよびqは独立して0または1であり、ただしqが0の場合にはRは任意選択的に少なくとも1つの結晶性のポリエーテル、ポリエステル、ポリエーテルエステル、またはポリ無水物のセグメントを有する少なくとも1つの非晶性の脂肪族ポリエステル、ポリエーテル、ポリ無水物、および/またはポリカーボネートセグメントである、請求項30に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項32]
前記発泡シェル部分および前記発泡コア部分が水素結合を介して相互に結合しており、その間には実質的に共有結合がない、請求項30または31に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項33]
前記第1および/または前記第2の相分離ポリマーが、1,4-ブタンジオールと1,4-ジイソシアナートブタンの反応生成物を含む結晶性セグメントを含む、請求項30から32のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項34]
前記発泡コア部分および/または前記発泡シェル部分が止血剤を含む、請求項30から33のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項35]
前記止血剤が窒素原子に結合した少なくとも1つの水素原子、および酸素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を含み、前記水素原子が前記第1および/または第2の相分離ポリマーと水素結合を形成するために利用可能である、請求項34に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項36]
前記止血剤の分子と前記第1および/または第2の相分離ポリマーの分子が水素結合を介して互いに結合しており、その間に実質的に共有結合がない、請求項35に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項37]
前記薬物がステロイドであり、前記発泡コア部分が実質的に前記ステロイドを含まない
、請求項30から35のいずれか1項に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項38]
前記ステロイドが窒素、酸素、またはフッ素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を含み、前記原子が前記発泡シェル部分の前記結晶性セグメントと水素結合を形成するために利用可能である、請求項37に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項39]
前記鼻腔内被覆材の第1の端部に配置された前記発泡ベース部分および前記発泡ベース部分から前記鼻腔内被覆材の第2の端部に向かって延在する前記発泡コア部分と、
前記発泡シェル部分に配置されたステロイドと、
前記発泡コア部分に配置されたキトサンと
を含み、
前記鼻腔内発泡被覆材が前記第2の端部を画定する体積の中に前記ステロイドを含み、前記第1の端部を画定する体積の中に前記ステロイドを含まず、
前記鼻腔内発泡被覆材が前記第1の端部を画定する体積の中に前記キトサンを含み、前記第2の端部を画定する体積の中に前記止血剤を含まない、請求項37に記載の鼻腔内発泡被覆材。
[請求項40]
薬物を鼻腔に局所投与するためおよび流体分泌物を吸収するための細長い鼻腔内発泡被覆材であって、
80%を超える空孔率を有し、前記鼻腔内被覆材の第1の端部における発泡ベース部分および前記発泡ベース部分から前記鼻腔内被覆材の第2の端部に向かって延在する発泡コア部分を含む第1の発泡体であって、前記発泡コア部分が第1の相分離ポリマーおよびキトサン止血剤を含む、第1の発泡体と、
少なくとも80%の空孔率を有し、前記発泡ベース部分から前記第2の端部まで延在する発泡シェル部分を含む第2の発泡体であって、前記発泡シェル部分が第2の相分離ポリマーおよび薬物を含む、第2の発泡体と
を含み、
前記発泡ベース部分と前記発泡シェル部分が協同して前記発泡コア部分をカプセル化して前記鼻腔内被覆材の外表面を画定し、
前記第1および第2の相分離ポリマーが同一または異なり、
前記鼻腔内発泡被覆材が前記第2の端部を画定する体積の中に前記薬物を含み、前記第1の端部を画定する体積の中に前記薬物を含まず、
前記鼻腔内発泡被覆材が前記第1の端部を画定する体積の中に前記キトサン止血剤を含み、前記第2の端部を画定する体積の中に前記キトサン止血剤を含まない、細長い鼻腔内発泡被覆材。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11