(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】長いクリーム時間と速硬化性を有するポリイソシアヌレート含有フォーム
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20230616BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20230616BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20230616BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20230616BHJP
【FI】
C08G18/00 H
C08G18/65 011
C08G18/76
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2020538652
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 EP2018077085
(87)【国際公開番号】W WO2019141389
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-04-08
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500030150
【氏名又は名称】ハンツマン・インターナショナル・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】ジョンシェレイ,トーマス・ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】バーナーディニ,ヤコポ
(72)【発明者】
【氏名】ゲウメッツ,ジル・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデンブルーク,ジャン
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-132520(JP,A)
【文献】特表2002-510730(JP,A)
【文献】特開平09-295364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
75~300kg/m
3の範囲の密度を有するポリイソシアヌレート(PIR)含有フォームを製造するための反応混合物であって、
少なくとも200のイソシアネートインデックスを有し、少なくとも
■1種以上のポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート組成物;
■少なくとも三量化触媒化合物を、触媒組成物中の全触媒化合物の総重量を基準として少なくとも50重量%の量にて含む触媒組成物;
■200g/モル未満の分子量を有する少なくとも低分子量(MW)ポリオールを、イソシアネート反応性組成物の総重量を基準として2~20重量%の量にて含むイソシアネート反応性組成物;
■全発泡剤の総モル量を基準として少なくとも50モル%の水を含む1種以上の発泡剤;及び
■必要に応じて、1種以上の界面活性剤、1種以上の難燃剤、1種以上の酸化防止剤、又はこれらの組み合わせ;
を含み、ここで、三量化触媒化合物の重量%が、[三量化触媒化合物+ポリイソシアネート組成物]の総重量を基準として0.35重量%未満であ
り、低分子量ポリオールがグリセロール及び/又はエチレングリコールから選ばれる、上記反応混合物。
【請求項2】
三量化触媒化合物が、有機塩から選ばれる、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項3】
低分子量(MW)ポリオールが、150g/モル未満の分子量を有する、請求項1~2のいずれかに記載の反応混合物。
【請求項4】
低分子量(MW)ポリオールが
グリセロールから選ばれる、請求項1~3のいずれかに記載の反応混合物。
【請求項5】
三量化触媒化合物の量が、触媒組成物中の全触媒化合物の重量を基準として75重量%以上である、請求項1~4のいずれかに記載の反応混合物。
【請求項6】
ポリイソシアネート化合物が、トルエンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物、又はこのようなポリイソシアネートの混合物から選ばれる、請求項1~5のいずれかに記載の反応混合物。
【請求項7】
1種以上のイソシアネート反応性化合物が、1~8の平均公称ヒドロキシ官能価と200~8000g/モルの範囲の数平均分子量を有するモノオール及び/又はポリオールあるいはそれらの混合物を含む、請求項1~6のいずれかに記載の反応混合物。
【請求項8】
発泡剤が、水のほかに、イソブテン、ジメチルエーテル、塩化メチレン、アセトン、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロ(クロロ)フルオロオレフィン(HFO/HCFO)及び/又は炭化水素をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の反応混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアヌレート含有気泡材料を製造するための反応混合物に関し、さらに詳細には、ハニカム構造物等の複合材料に使用するためのポリイソシアヌレート含有硬質フォームに関する。
【0002】
本発明はさらに、長いクリーム時間と速硬化性を達成する前記ポリイソシアヌレート含有材料の製造方法に関する。
【0003】
本発明はさらに、複合材料の製造に適したポリイソシアヌレート含有フォームに関する。
【背景技術】
【0004】
しかしながら、複合ハニカム構造物を製造するのに適したポリイソシアヌレート含有フォームを製造するための現在の技術は、クリーム時間が短すぎる及び/又は硬化時間が長すぎる、等の幾つかのプロセス上の問題を有している。
【0005】
本発明の1つの目的は、ポリイソシアヌレート含有複合物を製造するよう意図され、そして特にクリーム時間と速硬化性に関してより良好なプロセス融通性を有するポリイソシアヌレート含有複合物の製造を可能にする反応混合物を提供することである。
【0006】
米国特許第6,602,927号は、ポリイソシアヌレートフォーム成分を製造するためのポリイソシアヌレート系を提供している。この反応系は、三量化触媒、ポリオール、及びカルボン酸(そして必要に応じて、補助発泡剤としての水)を含むポリイソシアネート反応性成分とポリイソシアネートとを含む。この反応系をカルボン酸だけで発泡させて、短縮された金型保持時間で脱型できるSRIM(構造反応射出成形)物品を製造することができる。しかしながら米国特許第6,602,927号は、主として水発泡(使用する全発泡剤の総モル量を基準として少なくとも50モル%の水を使用)のポリイソシアヌレート系のために、特にクリーム時間と速硬化性に関して充分なプロセス融通性をもたらさない。
【0007】
米国特許第5,109,031号は、ポリエステルポリオールの総重量を基準として約7重量%未満の遊離グリコール含量を有するポリエステルポリオールを含むポリオール成分と有機ポリイソシアネートとを発泡剤の存在下にて反応させることによって製造される気泡剛性低密度ポリマー(rigid cellular low density polymers)を扱っている。米国特許第5,109,031号の目的は断熱性を向上させることである。しかしながら米国特許第5,109,031号は、主として水発泡(使用する全発泡剤の総モル量を基準として少なくとも50モル%の水を使用)の高密度ポリイソシアヌレート気泡系のために、特にクリーム時間と速硬化性に関して充分なプロセス融通性をもたらさない。
【0008】
米国特許第6,207,725号はさらに、ポリエステルポリオールを含むイソシアネート反応性組成物と有機ポリイソシアネート組成物とをアミン触媒の存在下で反応させることによって製造される硬質ポリウレタンフォームや硬質ウレタン変性ポリイソシアヌレートフォームの製造方法を扱っている。
【0009】
米国特許第6,207,725号の目的は、速やかなフォームライズを達成することである。従って米国特許第6,207,725号は、主として水発泡(使用する全発泡剤の総モル量を基準として少なくとも50モル%の水を使用)のために、長いクリーム時間と速硬化性を達成するようないかなるプロセスディテール(processing details)ももたらさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第6,602,927号
【文献】米国特許第5,109,031号
【文献】米国特許第6,207,725号
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、ハニカム構造物等の複合材料に使用するのに適したポリイソシアヌレート発泡材料を製造するためのプロセシングを改良することである。本発明の目的は、少なくとも35秒という長いクリーム時間と速硬化性を達成しつつポリイソシアヌレート含有フォームの製造を達成することである。速硬化性によってより効率的な硬化がもたらされるためサイクル時間が短縮され、その一方で長いクリーム時間により、ハンドリング時間での融通性が得られるようになる(例えば、反応混合物を噴霧するための、及び/又は、硬化前に金型を充填するための十分な時間が得られる)。
【0012】
驚くべきことに、長いクリーム時間と速硬化性につながる、ポリイソシアヌレート含有フォームを製造するための反応混合物を本発明者らは見出した。
【0013】
本発明の反応混合物はクリーム時間の増大と速硬化性をもたらし、このため貼り合わせ機に対するプロセシングがより容易になり、また最新技術の反応混合物の発泡動力学による制約のために、最新技術の反応混合物を使用して現在ではできていないPIRフォームの成形が可能になると考えられる。
【0014】
発明の概要
第1の態様によれば、50~500kg/m3の範囲の密度を有するポリイソシアヌレート(PIR)含有フォームを製造するための反応混合物が開示され、前記反応混合物は、少なくとも200のイソシアネートインデックスを有し、少なくとも
■1種以上のポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート組成物;
■少なくとも三量化触媒化合物を、触媒組成物中の全触媒化合物の総重量を基準として少なくとも50重量%の量にて含む触媒組成物;
■200g/モル未満の分子量を有する少なくとも低分子量(MW)ポリオールを、イソシアネート反応性組成物の総重量を基準として0.1~30重量%の量にて含むイソシアネート反応性組成物;
■発泡剤の総モル量を基準として少なくとも50モル%の水を含む1種以上の発泡剤;及び
■必要に応じて、1種以上の界面活性剤、1種以上の難燃剤、1種以上の酸化防止剤、又はこれらの組み合わせ;
を含み、ここで三量化触媒化合物の重量%が、[三量化触媒化合物+ポリイソシアネート組成物]の総重量を基準として0.5重量%未満である。
【0015】
幾つかの実施態様によれば、三量化触媒化合物の重量%が、[触媒組成物+ポリイソシアネート組成物]の総重量を基準として0.5重量%未満、好ましくは0.45重量%未満、さらに好ましくは0.4重量%未満、最も好ましくは0.35重量%未満である。
【0016】
幾つかの実施態様によれば、三量化触媒化合物の重量%が、[触媒組成物+ポリイソシアネート組成物]の総重量を基準として0.3重量%未満である。
【0017】
幾つかの実施態様によれば、三量化触媒化合物は有機塩から選ばれ、好ましくはアルカリ金属有機塩、アルカリ土類金属有機塩、及び/又は第四アンモニウム有機塩(例えば酢酸カリウム、ヘキサン酸カリウム、エチルヘキサン酸カリウム、オクタン酸カリウム、乳酸カリウム、オクタン酸N-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、ギ酸N-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、及びこれらの混合物等)から選ばれる。
【0018】
幾つかの実施態様によれば、低分子量(MW)ポリオールは、150g/モル未満の、好ましくは100g/モル未満の分子量を有する。
【0019】
幾つかの実施態様によれば、低分子量(MW)ポリオールはグリセロール及び/又はエチレングリコールから選ばれる。
【0020】
幾つかの実施態様によれば、低分子量(MW)ポリオールの量は、イソシアネート反応性組成物の総重量を基準として1~25重量%の範囲、さらに好ましくは2~20重量%の範囲である。
【0021】
幾つかの実施態様によれば、三量化触媒化合物の量は、触媒組成物中の全触媒化合物の総重量を基準として少なくとも75重量%であり、好ましくは少なくとも90重量%である。
【0022】
幾つかの実施態様によれば、ポリイソシアネート化合物は、トルエンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネートを含有するポリイソシアネート組成物、又はこのようなポリイソシアネートの混合物から選ばれる。
【0023】
幾つかの実施態様によれば、反応混合物中の1種以上のイソシアネート反応性化合物はさらに、1~8の平均公称ヒドロキシ官能価と200~8000g/モルの範囲の数平均分子量を有するモノオール及び/又はポリオール、ならびに前記モノオール及び/又はポリオール(例えばポリエーテルポリオール)と、ポリエステルポリオール、メルカプタン、多塩基酸等のカルボン酸、アミン、又はポリアミンとの混合物を含む。
【0024】
幾つかの実施態様によれば、発泡剤は、水、イソブテン、ジメチルエーテル、塩化メチレン、アセトン、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、及び/又は炭化水素から選ばれ、1種以上のイソシアネート反応性化合物100重量部当たり0.1~80重量部(pbw)の量にて、好ましくは0.2~60pbwの量にて存在する。
【0025】
第2の態様によれば、50~500kg/m3の範囲の密度を有するポリイソシアヌレート含有硬質フォームの製造方法が開示され、前記製造方法は、35秒超のクリーム時間と速硬化性を有し、本発明の第1の態様に従った反応混合物の成分を少なくとも200のイソシアネートインデックスにて合わせてミキシングしてフォームを得ることを含む。
【0026】
幾つかの実施態様によれば、クリーム時間は45秒超、さらに好ましくは55秒超であり、速硬化性は110秒未満、好ましくは90秒未満、さらに好ましくは70秒未満である。
【0027】
幾つかの実施態様によれば、イソシアネートインデックスは220超であり、好ましくは250超である。
【0028】
第3の態様によれば、第2の態様に従った製造方法によって得られるポリイソシアヌレート含有材料が開示される。
【0029】
幾つかの実施態様によれば、本発明によるポリイソシアヌレート含有材料は、50kg/m3~500kg/m3の範囲の、好ましくは75kg/m3~300kg/m3の範囲の、さらに好ましくは100kg/m3~200kg/m3の範囲のフリーライズ密度(ISO845に従って測定)を有する。
【0030】
第4の態様によれば、本発明によるポリイソシアヌレート含有材料を複合ハニカム構造物に使用することが開示される。
【0031】
独立クレームと従属クレームに、本発明の特定の特徴と好ましい特徴が明確に記載されている。従属クレームからの特徴は、必要に応じて、独立クレーム又は他の従属クレームの特徴と組み合わせることができる。
【0032】
本発明の上記の特性、特徴、及び利点、ならびに他の特性、特徴、及び利点は、下記の詳細な説明から明らかとなろう。下記の説明は単に例を挙げるためのものであって、これによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0033】
用語とその意味
本発明の文脈において、以下の用語は下記の意味を有する。
【0034】
(1) 「イソシアネートインデックス」(NCOインデックス又はインデックス)
配合物中に存在するイソシアネート反応性水素原子に対するNCO基の比率であり、[NCO]×100/[反応性水素原子]として、パーセント値で表示される。
【0035】
つまり、NCOインデックスは、配合物中の使用されるイソシアネート反応性水素の量と反応させるために理論的に必要とされるイソシアネートの量に対する、配合物中の実際に使用されるイソシアネートのパーセント値を表す。
【0036】
注意しておかねばならないことは、ここで使用しているイソシアネートインデックスは、イソシアネート成分とイソシアネート反応性成分を含む物質を製造する実際の重合プロセスという観点から考えられている、という点である。変性ポリイソシアネート(当業界においてプレポリマーと呼ばれるようなイソシアネート誘導体を含む)を製造するための予備段階において消費されるイソシアネート基、あるいは予備段階(例えば、イソシアネートと反応させて変性ポリオールや変性ポリアミンを製造する)において消費される活性水素は、イソシアネートインデックスの算出において考慮されていない。遊離イソシアネート基と遊離イソシアネート反応性水素(水が使用される場合は、水の水素原子を含める)だけが考慮されている。
【0037】
(2) 「イソシアネート反応性化合物」及び「イソシアネート反応性水素原子」
この用語は、イソシアネートインデックスを算出するために本明細書で使用されており、イソシアネート反応性化合物中に存在するヒドロキシル基とアミン基における活性水素原子の総和を表す。このことは、実際の重合プロセスでのイソシアネートインデックスを算出するために、1つのヒドロキシル基が1つの反応性水素を含むように見なされ、1つの第一アミン基が1つの反応性水素を含むように見なされ、そして1つの水分子が2つの活性水素を含むように見なされる、ということを意味する。
【0038】
(3) 「反応系」
ポリイソシアネートが、イソシアネート反応性成分とは別個の1つ以上の容器中に保持されているという形態の、化合物の組み合わせ。
【0039】
(4) 「平均公称ヒドロキシル官能価」(要するに「官能価」)
この用語は、本明細書では、これが、製造において使用される開始剤の数平均官能価(1分子当たりの全活性水素の数)であると仮定して、ポリオールもしくはポリオール組成物の数平均官能価(1分子当たりのヒドロキシル基の数)を示すように使用される。しかしながら実際には、幾らかの末端不飽和のためにやや低めであることが多い。
【0040】
(5) 「平均」
特に明記しない限り数平均を表す。
【0041】
(6) 「三量化触媒」
本明細書で使用されているように、ポリイソシアネートからのイソシアヌレート基の生成に触媒作用を及ぼす(促進する)ことができる触媒を表す。このことは、イソシアネートが他のイソシアネートと反応して、イソシアヌレート構造を持つ高分子(ポリイソシアヌレート=PIR)を生成することがある、ということを意味している。イソシアネート-ポリオール間の反応とイソシアネート-イソシアネート間の反応は、同時に起こることも、あるいは相次いで起こることもあり、ウレタン構造とイソシアヌレート構造を含む高分子(PIR-PUR)が形成される。
【0042】
(7) 「ポリイソシアヌレート含有材料」(フォーム)
200以上のイソシアネートインデックスで、さらに好ましくは220超のイソシアネートインデックスで製造される、ウレタン構造とイソシアヌレート構造を含む材料組成物(PIR-PUR)を表す。
【0043】
(8) 「フリーライズ密度」
大気条件下にて(発泡剤の存在下で)製造されるフォームサンプルに対して、ISO845に従って測定した密度を表す。
【0044】
(9) 「クリーム時間」
反応混合物が液体状態からクリーム状態に変わって、引き続き発泡(膨張)し始めるのに必要とされる時間を表す。
【0045】
(10) 「速硬化性」(snap cure behaviour)又は「急速硬化」(rapid cure)
タックフリー時間とクリーム時間との間の差が少ないか又はごくわずかであることを表す。硬化時間は、しばしば脱型時間とも呼ばれる。タックフリー時間(TFT)は、硬化開始からフォームの外側スキンが粘着性を失う時点までの時間である。タックフリー時間は、表面にポリエチレンフィルムを押し当て、フィルムを取り除くときに粘着性物質があるかどうかをチェックすることによって決定することができる。
【0046】
詳細な説明
本発明を特定の実施態様に関して説明する。留意しておかねばならないことは、特許請求の範囲において使用されている「含む」(comprising)という用語は、その後に記載の手段に限定されると解釈すべきではなく、他の要素又は工程を除外してはいない、という点である。従って、記載した特徴、工程、又は成分の存在を明示していると解釈すべきであるが、1つ以上の他の特徴、工程、成分、又はこれらの群の存在もしくは付加を除外してはいない。従って「手段AとBを含む装置」という表現の範囲は、成分Aと成分Bだけからなる装置に限定されるべきではない。本発明に関して装置の最適の関連成分がAとBである、ということを意味している。
【0047】
本明細書全体にわたって「一実施態様」又は「ある実施態様」という表現がなされている。こうした表現は、当該実施態様に関連して記載のある特定の特徴が、本発明の少なくとも1つの実施態様中に含まれている、ということを示している。従って、本明細書全体にわたる種々の個所において「一実施態様では」又は「ある実施態様では」というフレーズが出てきても、必ずしも全て同じ実施態様に言及しているわけではない(同じ実施態様に言及していることもあるが)。さらに、当業者には明らかなことであるが、特定の特徴又は特性を、1つ以上の実施態様において任意の適切な仕方で組み合わせることができる。
【0048】
理解しておかねばならないことは、本発明に従った実施態様を提供するために好ましい実施態様及び/又は材料が説明されているけれども、本発明の要旨を逸脱することなく種々の改良や変更を行うことができる、という点である。
【0049】
本発明は、長いクリーム時間(35秒超)と急速硬化(速硬化性)の両方が達成されるような反応系に関する。本発明はさらに、ポリイソシアヌレート含有フォームの製造方法に関し、より詳細には、本発明の反応系を使用して、複合材料(ハニカム構造物等)に使用するためのポリイソシアヌレート含有硬質フォームを製造する方法に関する。
[1] 50~500kg/m3の範囲の密度を有するポリイソシアヌレート(PIR)含有フォームを製造するための反応混合物であって、少なくとも200のイソシアネートインデックスを有し、少なくとも
■1種以上のポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート組成物;
■少なくとも三量化触媒化合物を、触媒組成物中の全触媒化合物の総重量を基準として少なくとも50重量%の量にて含む触媒組成物;
■200g/モル未満の分子量を有する少なくとも低分子量(MW)ポリオールを、イソシアネート反応性組成物の総重量を基準として0.1~30重量%の量にて含むイソシアネート反応性組成物;
■全発泡剤の総モル量を基準として少なくとも50モル%の水を含む1種以上の発泡剤;及び
■必要に応じて、1種以上の界面活性剤、1種以上の難燃剤、1種以上の酸化防止剤、又はこれらの組み合わせ;
を含み、ここで三量化触媒化合物の重量%が、[三量化触媒化合物+ポリイソシアネート組成物]の総重量を基準として0.5重量%未満である前記反応混合物。
[2] 三量化触媒化合物が、有機塩から、好ましくは、酢酸カリウム、ヘキサン酸カリウム、エチルヘキサン酸カリウム、オクタン酸カリウム、乳酸カリウム、オクタン酸N-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、ギ酸N-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、及びこれらの混合物等の、アルカリ金属有機塩、アルカリ土類金属有機塩、及び/又は第四アンモニウム有機塩から選ばれる、[1]に記載の反応混合物。
[3] 低分子量(MW)ポリオールが、150g/モル未満の、好ましくは100g/モル未満の分子量を有する、[1]~[2]のいずれかに記載の反応混合物。
[4] 低分子量(MW)ポリオールが、グリセロール及び/又はエチレングリコールから選ばれる、[1]~[3]のいずれかに記載の反応混合物。
[5] 低分子量(MW)ポリオールの量が、イソシアネート反応性組成物の総重量を基準として1~25重量%の範囲、さらに好ましくは2~20重量%の範囲である、[1]~[4]のいずれかに記載の反応混合物。
[6] 三量化触媒化合物の量が、触媒組成物中の全触媒化合物の重量を基準として少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも90重量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の反応混合物。
[7] ポリイソシアネート化合物が、トルエンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物、又はこのようなポリイソシアネートの混合物から選ばれる、[1]~[6]のいずれかに記載の反応混合物。
[8] 1種以上のイソシアネート反応性化合物が、1~8の平均公称ヒドロキシ官能価と200~8000g/モルの範囲の数平均分子量を有するモノオール及び/又はポリオール、ならびに前記モノオール及び/又はポリエーテルポリオール等のポリオールと、ポリエステルポリオール、メルカプタン、多塩基酸等のカルボン酸、アミン、又はポリアミンとの混合物をさらに含む、[1]~[7]のいずれかに記載の反応混合物。
[9] 発泡剤が、水のほかに、イソブテン、ジメチルエーテル、塩化メチレン、アセトン、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロ(クロロ)フルオロオレフィン(HFO/HCFO)、及び/又は炭化水素をさらに含む、[1]~[8]のいずれかに記載の反応混合物。
[10] 50~500kg/m3の範囲の密度を有するポリイソシアヌレート含有硬質フォームの製造方法であって、クリーム時間が35秒未満で速硬化性を有し、[1]~[9]のいずれかに記載の反応混合物の成分を、少なくとも200のイソシアネートインデックスにて合わせてミキシングしてフォームを得る、上記方法。
[11] クリーム時間が45秒超、さらに好ましくは55秒超であって、タックフリー時間とクリーム時間との差として定義される速硬化性が110秒未満、好ましくは90秒未満、さらに好ましくは70秒未満である、[10]に記載の製造方法。
[12] イソシアネートインデックスが220超、好ましくは250超である、[10]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13] 三量化触媒化合物の重量%が、三量化触媒化合物とポリイソシアネート組成物の総重量を基準として好ましくは0.45重量%未満であり、さらに好ましくは0.40重量%未満であり、最も好ましくは0.35重量%未満である、[10]~[12]のいずれかに記載の製造方法。
[14] 三量化触媒化合物の重量%が、三量化触媒化合物とポリイソシアネート組成物の総重量を基準として0.30重量%未満である、[10]~[13]のいずれかに記載の製造方法。
[15] [10]~[14]のいずれかに記載の製造方法によって得られるポリイソシアヌレート含有材料。
[16] 75kg/m3~300kg/m3の範囲の、さらに好ましくは100kg/m3~200kg/m3の範囲の、ISO845に従って測定されるフリーライズ密度を有する、[15]に記載のポリイソシアヌレート含有材料。
[17] [16]に記載のポリイソシアヌレート含有材料の、複合ハニカム構造物における使用。
[18] [15]~[16]のいずれかに記載のポリイソシアヌレート含有材料を含んだコア層を有する複合ハニカム構造物を有する複合材料。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明の第1の態様によれば、50~500kg/m3の範囲のフリーライズ密度(ISO845に従って測定)を有するポリイソシアヌレート含有フォームを製造するための反応系が開示される。前記反応系は、少なくとも
■1種以上のポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート組成物;
■少なくとも三量化触媒化合物を、触媒組成物中の全触媒化合物の総重量を基準として少なくとも50重量%の量にて含む触媒組成物;
■200g/モル未満の分子量を有する少なくとも低分子量(MW)ポリオールを、イソシアネート反応性組成物の総重量を基準として0.1~30重量%の量にて含むイソシアネート反応性組成物;
■発泡剤の総重量を基準として少なくとも50モル%の水を含む1種以上の発泡剤;及び
■必要に応じて、1種以上の界面活性剤、1種以上の難燃剤、1種以上の酸化防止剤、又はこれらの組み合わせ;
を含み、ここで三量化触媒化合物の重量%が、[三量化触媒化合物+ポリイソシアネート組成物]の総重量を基準として0.5重量%未満である。
【0051】
幾つかの実施態様によれば、三量化触媒化合物の重量%は、[触媒組成物+ポリイソシアネート組成物]の総重量を基準として0.5重量%未満、好ましくは0.45重量%未満、さらに好ましくは0.4重量%未満、最も好ましくは0.35重量%未満である。
【0052】
幾つかの実施態様によれば、三量化触媒化合物の重量%は、[触媒組成物+ポリイソシアネート組成物]の総重量を基準として0.3重量%未満である。
【0053】
幾つかの実施態様によれば、低分子量(MW)ポリオールは、200g/モル未満の、好ましくは150g/モル未満の、さらに好ましくは100g/モル未満の分子量を有する。
【0054】
本発明の反応混合物の利点は、ポリイソシアヌレート(PIR)の生成を伴いつつ長いクリーム時間と短い硬化時間の両方を達成するのに使用できる、という点である。こうした複合効果は、例えば複合材料向け用途において製造サイクル時間の短縮につながる。
【0055】
幾つかの実施態様によれば、触媒組成物は、少なくとも三量化触媒化合物を、触媒組成物中の全触媒化合物の総重量を基準として少なくとも75重量%の量にて、さらに好ましくは少なくとも90重量%の量にて含む。
【0056】
本発明の第1の態様の好ましい実施態様によれば、三量化触媒化合物は有機塩から選ばれ、好ましくはアルカリ金属有機塩、アルカリ土類金属有機塩、及び/又は第四アンモニウム有機塩から選ばれる。さらに好ましくは、前記有機塩は、カルボキシレートやアルコキシド及びこれらの混合物、1~12個の炭素原子を有するカルボキシレート/アルコキシド群、ならびにこれらの混合物から選ばれる。好ましい例は、カリウムカルボキシレート、ナトリウムカルボキシレート、カリウムアルコキシド、及びナトリウムアルコキシドである。さらに、環構造を有するカルボキシレート/アルコキシド(例えば、安息香酸ナトリウムや安息香酸カリウム)も適切な三量化触媒である。最も好ましい例は、酢酸カリウム、ヘキサン酸カリウム、エチルヘキサン酸カリウム、オクタン酸カリウム、乳酸カリウム、オクタン酸N-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、ギ酸N-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、及びこれらの混合物である。適切な触媒が市販されており、例えば、ハンツマン社(Huntsman)から市販のキャタリスト(Catalyst)LB、エアプロダクツ社(Air Products)から市販のダブコ(Dabco)(登録商標)K2097(酢酸カリウム含有)、及びダブコK15(オクタン酸カリウム含有)がある。
【0057】
幾つかの実施態様によれば、200g/モル未満の分子量を有する低分子量(MW)ポリオールは、反応混合物中に、イソシアネート反応性組成物の総重量を基準として0.1~30重量%の、好ましくは1~25重量%の、さらに好ましくは2~20重量%の量にて存在する。
【0058】
幾つかの実施態様によれば、低分子量の1種以上のイシアネート反応性化合物は、モノオール及び/又はポリオール(例えばグリコール)から選ばれる。適切な例は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、フェノール、シクロヘキサノール、及び最大で200g/モルの数平均分子量を有する炭化水素モノオール(脂肪族モノオールやポリエーテルモノオール等)から選ばれるモノオール、及び/又は、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、グリセロール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ならびに200g/モル未満の、好ましくは150g/モル未満の、さらに好ましくは100g/モル未満の分子量を有する芳香族及び/又は脂肪族ポリオールから選ばれるポリオールである。
【0059】
幾つかの実施態様によれば、イソシアネート反応性組成物は、低分子量ポリオールのほかに、好ましくは200~8000の数平均分子量と好ましくは1~8の平均公称官能価を有する高分子量ポリオールをさらに含む。前記高分子量ポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、メルカプタン、カルボン酸(例えば多塩基酸)、アミン、1~8の平均公称ヒドロキシ官能価と最大で8000の数平均分子量を有するポリアミン、及びこれらの混合物から選ぶことができる。適切なポリオールの例は、フーポール(Hoopol)(登録商標)F-1390〔シンセシア社(Synthesia)から市販のポリエステルポリオール〕及びダルトラック(Daltolac)(登録商標)R-166〔ハンツマン社(Huntsman)から市販のポリエーテルポリオール〕である。
【0060】
本発明の第2の態様によれば、本発明の反応混合物を使用してポリイソシアヌネート含有フォームを製造する方法が開示される。従って前記製造方法は、反応混合物の成分を少なくとも200超のイソシアネートインデックスで、好ましくは220以上のイソシアネートインデックスで合わせてミキシングすることを含む。
【0061】
幾つかの実施態様によれば、本発明のポリイソシアヌネート含有フォームの製造方法は、35秒超の、好ましくは45秒超の、さらに好ましくは55秒超のクリーム時間と、110秒未満の、好ましくは90秒未満の、さらに好ましくは70秒未満の速硬化性をもたらす。
【0062】
本発明のポリイソシアヌレート含有フォームを製造するのに必要な化合物を接触させる又は合わせる上で多くの異なった順序がある。当業者には明らかなことであるが、これらの化合物を加える順序を変えることも本発明の範囲内である。
【0063】
幾つかの実施態様によれば、本発明のPIR含有フォームを製造するための反応混合物中に使用されるポリイソシアネート化合物は、脂肪族イソシアネート(例えばヘキサメチレンジイソシアネート)、より好ましくは芳香族イソシアネート(例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、ジフェニレン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネート-3,3’-ジメチルジフェニル、3-メチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、及びジフェニルエーテルジイソシアネート)、脂環式ジイソシアネート〔例えば、シクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、シクロヘキサン-2,3-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキシル-2,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキシル-2,6-ジイソシアネート、及び前記ジイソシアネートとビス-(イソシアナートシクロヘキシル)-メタンとの混合物〕、ならびにトリイソシアネート(例えば、2,4,6-トリイソシアナートトルエンや2,4,4’-トリイソシアナートジフェニルエーテル)を含めた複数のイソシアネート基を有する有機イソシアネートから選ばれる。
【0064】
幾つかの実施態様によれば、ポリイソシアネート組成物はポリイソシアネート類の混合物を含む。例えば、トリレンジイソシアネート異性体の混合物(例えば、2,4-異性体と2,6-異性体の市販混合物)、及びジイソシアネートとアニリン/ホルムアルデヒド縮合物のホスゲン化によって得られる高次ポリイソシアネートとの混合物。このような混合物は当業界によく知られており、ホスゲン化の副生物と一緒になったジイソシアネート、トリイソシアネート、及びより高次のポリイソシアネートを含めて、メチレン架橋ポリフェニルポリイソシアネートの混合物を含有する粗製ホスゲン化生成物を含む。
【0065】
本発明の好ましいポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネートが、芳香族ジイソシアネートであるか、あるいはより高い官能価のポリイソシアネート(特に、ジイソシアネート、トリイソシアネート、及びより高い官能価のポリイソシアネートを含有するメチレン架橋ポリフェニルポリイソシアネートの粗製混合物)である場合のポリイソシアネート組成物である。メチレン架橋ポリフェニルポリイソシアネート(例えば、メチレンジフェニルジイソシアネート、MDIと略記される)は当業界によく知られており、一般式I(式中、nは1以上であり、粗製混合物の場合は、1より大きい平均値を表す)を有する。メチレン架橋ポリフェニルポリイソシアネートの粗製混合物は、アニリンとホルムアルデヒドの縮合反応によって得られるポリアミンの対応する混合物のホスゲン化によって製造される
【0066】
【化1】
他の適切なポリイソシアネート組成物は、過剰のジイソシアネートもしくはより高い官能価のポリイソシアネートと、ヒドロキシル末端ポリエステルもしくはヒドロキシル末端ポリエーテルとの反応によって製造されるイソシアネート末端プレポリマー、及び過剰のジイソシアネートもしくはより高い官能価のポリイソシアネートと、ポリオールモノマーもしくはポリオールモノマー(例えば、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、又はブタンジオール等)の混合物との反応によって得られる生成物を含んでよい。イソシアネート末端プレポリマーの1つの好ましい種類は、ジイソシアネート、トリイソシアネート、及びより高い官能価のポリイソシアネートを含有するメチレン架橋ポリフェニルポリイソシアネートの粗製混合物から得られるイソシアネート末端プレポリマーである。
【0067】
幾つかの実施態様によれば、ポリイソシアネート組成物中のポリイソシアネート化合物は、トルエンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物、又はこのようなポリイソシアネートの混合物から選ばれる。
【0068】
幾つかの実施態様によれば、イソシアネートインデックスは200超であり、好ましくは220超であり、さらに好ましくは250超である。イソシアネートインデックスは、例えば200~1000、200~600、又は200~400の範囲であってよい。
【0069】
200超のイソシアネートインデックスを有する反応混合物(イソシアヌレートの生成につながる)を、例えば複合ハニカム用途に使用すると、約100のイソシアネートインデックスを有する反応混合物(ポリウレタンの生成につながる)を凌ぐ幾つかの利点がもたらされる。例えば、一般には放出される発熱量がより多く、従って樹脂の硬化を達成するのに必要な金型温度がより低くて済み(すなわち省エネルギー)、200超のイソシアネートインデックスを有する反応混合物の芳香族含量が高いことから、最終複合物により優れた火炎特性が付与され、また架橋密度が高くなることから、機械的強度が増大する(より高いTg)。
【0070】
幾つかの実施態様によれば、発泡剤は、好ましくは水であり、単独で使用されるか、あるいは別の発泡剤と組み合わせて使用される。別の発泡剤は、イソブテン、ジメチルエーテル、塩化メチレン、アセトン、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、及びペンタン等の炭化水素から選ぶことができる。発泡剤の使用量は、例えば、フォーム製品の意図する用途、及び所望するフォーム剛性やフォーム密度に基づいて変わってよい。発泡剤は、触媒組成物の重量分を含めてイソシアネート反応性化合物(ポリオール)100重量部当たり0.1~80重量部(pbw)の量にて、さらに好ましくは0.2~60pbwの量にて存在してよい。
【0071】
幾つかの実施態様によれば、必要に応じて1種以上のウレタン触媒化合物を反応混合物に加えることができるが、三量化触媒化合物は、使用される全触媒化合物の総重量を基準として50重量%超の量にて存在しなければならない。ここで使用するのに適したウレタン触媒としては、金属塩触媒(例えば有機スズ化合物)、アミン化合物〔例えば、トリエチレンジアミン(TEDA)、N-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、トリエチルアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,3,5-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-メチルジシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノ)-エチル-ピペラジン、トリブチルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ヘプタメチルテトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジプロピレン-トリアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリス(3-ジメチルアミノ)プロピルアミン、もしくはその酸ブロック誘導体等〕、及びこれらの任意の混合物などがあるが、これらに限定されない。
【0072】
本発明はさらに、本発明の製造方法を使用して、そして本発明に開示の反応混合物を利用して製造されるポリイソシアヌレート含有フォーム、及び前記フォームを例えば複合材料〔例えば、サイクルの速い自動車用途(パーセルシェルフ、ロードフロア、ヘッドライナー、トレー、セミストラクチュラルコンポーネント等)向けの繊維強化ハニカム複合構造物〕に使用することに関する。
【0073】
幾つかの実施態様によれば、本発明のポリイソシアヌレート含有材料は、50kg/m3~500kg/m3の範囲の、好ましくは75kg/m3~300kg/m3の範囲の、さらに好ましくは100kg/m3~200kg/m3の範囲のフリーライズ密度(ISO845に従って測定)を有する。
【0074】
好ましい実施態様によれば、本発明に従って製造されたポリイソシアヌレート含有材料を含むコア層を含んだ複合ハニカム構造物を有する複合材料が開示される。
【0075】
幾つかの実施態様によれば、本発明の反応混合物は、出口箇所にて必要な成分と混合した後に噴霧ノズルから例えばハニカム構造物上へ、あるいは金型中に噴霧することによって塗布することができる。
【0076】
幾つかの実施態様によれば、本発明のポリイソシアヌレート含有フォームは、例えばハニカム構造物中に使用することができる。本発明のポリイソシアヌレート含有フォームは、反応混合物が基材(例えば、ガラス繊維やハニカム集成体等)上に均一に噴霧されるに足る充分な時間を、及び/又は加熱された圧縮成形用金型中に反応混合物を挿入する〔次いで硬化が行われる(サイクル時間ができるだけ短くなるよう速硬化性であることが好ましい)〕に足る充分な時間をもたらすことを可能にする全ての要件を満たす。
【実施例】
【0077】
使用した薬品
■フーポール(Hoopol)(登録商標)F-1390: シンセシア(Synthesia)社から市販のポリエステルポリオール(OH価:240mgKOH/g)
■ダルトラック(Daltolac)(登録商標)R-166: ハンツマン社(Huntsman)から市販のポリエーテルポリオール(OH価:165mgKOH/g)
■テゴスタブ(Tegostab)(登録商標)B8490: エボニック社(Evonik)から市販のシリコーン界面活性剤(OH価:0mgKOH/g)
■LBキャタリスト(LB Catalyst): ハンツマン社から市販の酢酸カリウムPIR触媒(OH価:865mgKOH/g;酢酸カリウム48.2重量%,MEG48.2重量%,水3.6重量%)
■DETDA: ロンザ社(Lonza)から市販のジエチルトルエンジアミン(OH価:630mgKOH/g),連鎖延長剤として使用
■ダブコ(DABCO)(登録商標)33LV: エアプロダクツ社(Air Products)から市販のゲル化触媒(OH価:560mgKOH/g,ジプロピレングリコール中33重量%TEDA(トリエチレンジアミン))
■ジェフキャット(Jeffcat)(登録商標)PMDETA: ペンタメチルジエチレントリアミン、ハンツマン社から市販の発泡触媒(OH価:0mgKOH/g)
■グリセロール: ハンツマン社から市販(OH価:1826mgKOH/g)
■MEG: シグマ-アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)から市販のモノエチレングリコール(OH価:1808mgKOH/g)
■ブラックレピタン(Black Repitan)(登録商標)90655: REPIから市販のポリエーテル中カーボンブラック分散液(OH価:30mgKOH/g)
■IMR VP063235: KVS Eckert & Woelkから市販の内部離型剤
■S2085: ハンツマン社から市販のスプラセク(Suprasec)(登録商標)2085(ポリメリックMDI,NCO価:30.5)
■S5025: ハンツマン社から市販のスプラセク5025(ポリメリックMDI,NCO価:31.0)
実施例1~7と比較例1~2
フォームは全て、ポリオールブレンド(あらかじめ調製しておく)とイソシアネートを、カップスケール(約120g)でフリーライズ条件下にて、高剪断ハイドルフミキサー(約4000rpm)を使用して10秒ミキシングすることにより製造した。フォーム密度は、標準試験法ISO845に従って測定した。
【0078】
本発明のフォーム(実施例1~7)を作製するのに使用される成分の量と、比較用フォーム(比較例1~2)を作製するのに使用される成分の量をpbw(重量部)表示にて表1に示す。
【0079】
比較例1(低分子量ポリオールなし)と比べて、実施例1と2は、グリセロールの量が増えると、クリーム時間が長くなり(55秒→65秒→70秒)、且つΔtの減少でわかるように速硬化性が向上する、ということを明示している。言い換えると、グリセロールが存在下すると、速硬化性が向上すると同時にクリーム時間が減少しない(すなわち、長いクリーム時間を保持する)。
【0080】
比較例2と実施例4、5、6、及び7(MEGの量が増大)を見ると、同様の傾向が観察される(CT:47秒→67秒→82秒→87秒→112秒;Δt:103秒→83秒→58秒→28秒→28秒)。MEGが存在すると、速硬化性が改良されると同時にクリーム時間が減少しない。
【0081】
実施例3と比較例1を比較すると、PIR触媒と低分子量ポリオール(この特定のケースではグリセロール)の量を増やすと、一定のクリーム時間を保持しつつ(この特定のケースでは55秒、すなわち減少しない)、速硬化性を著しく向上させることができる、ということがわかる。
【0082】
従ってこれらすべての例から、PIR触媒と低分子量ポリオールが存在すると、長いクリーム時間を保持することができ(35秒超)、且つ速硬化性を改良することができる(Δtの減少)、ということがわかる。
【0083】
【表1】
実施例8~14と比較例3~4
実施例1~7及び比較例1~2の場合と同様のフォーム製造法を使用した。
【0084】
本発明のフォーム(実施例8~14)を作製するのに使用される成分の量と、比較用フォーム(比較例3~4)を作製するのに使用される成分の量をpbw(重量部)表示にて表1に示す。
【0085】
比較例3と4から、PIR触媒の量を増やすと、速硬化性が改良される(Δtが365秒から166秒に減少)けれども、低分子量ポリオールが存在しない場合は、クリーム時間(CT)も55秒から32秒へ大幅に減少する(これは望ましくない)、ということがわかる。実施例11においては、グリセロールの存在とより多くの量のPIR触媒により、比較例3(55秒)と同等のCT(58秒)を達成できると同時に、はるかに速い硬化を達成することができる(Δtが57秒対365秒)。
【0086】
比較例4(低分子量ポリオールが存在しない)と比べて、実施例8、9、10、11、及び12は、グリセロールの量が増えると、クリーム時間が長くなり(32秒→38秒→42秒→48秒→58秒→65秒)、且つΔtの減少でわかるように速硬化性が向上する、ということを明示している。言い換えると、グリセロールが存在下すると、速硬化性が向上すると同時にクリーム時間が減少しない(すなわち、長いクリーム時間を保持する)。
【0087】
比較例4と実施例13及び14(MEGの量が増大)を見ると、同様の傾向が観察される(クリーム時間:32秒→40秒→45秒;Δt:166秒→40秒→20秒)。MEGが存在すると、速硬化性が改良されると同時にクリーム時間が減少しない。
【0088】
従ってこれらすべての例から、PIR触媒と低分子量ポリオールが存在すると、長いクリーム時間を保持することができる(35秒超)と共に、速硬化性を改良することが可能になる(Δtの減少)、ということがわかる。
【0089】
ポリエステル(例えばフーポールF-1390)やポリエーテル(例えばダルトラックR166)を使用しても、PIR触媒及び/又は低分子量ポリオールが発泡動力学と速硬化性に及ぼす効果の傾向に影響しない。
【0090】
【表2】
実施例10と比較例5~10
実施例1~7及び比較例1~2の場合と同様のフォーム製造法を使用した。
【0091】
本発明のフォーム(実施例10)を作製するのに使用される成分の量と、比較用フォーム(比較例5~10)を作製するのに使用される成分の量をpbw(重量部)表示にて表3に示す。
【0092】
実施例10は、表2に示したのと同じ例である。
【0093】
実施例10と比べて、比較例5、6、7、8、9、10は、ポリウレタンゲル化触媒と発泡触媒が多量に存在すると、クリーム時間が35秒未満に大幅に減少すると同時に、速硬化性がさらに悪化する(比較例6、7、9、及び10)、ということを示している。
【0094】
【表3】
実施例3と比較例11~13
実施例1~7及び比較例1~2の場合と同様のフォーム製造法を使用した。
【0095】
本発明のフォーム(実施例3)を作製するのに使用される成分の量と、比較用フォーム(比較例11、12、及び13)を作製するのに使用される成分の量をpbw(重量部)表示にて表4に示す。
【0096】
実施例3は、表1に示したのと同じ例である。
【0097】
実施例3と比べて、比較例11、12、及び13は、PIR触媒の量が多すぎると(すなわち0.5重量%超)、グリセロールが存在するにもかかわらず、クリーム時間が35秒未満の値に大幅に減少する、ということを示している。
【0098】