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特許7296999IL-15およびIL-15RαSUSHIドメインに基づいた免疫サイトカイン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】IL-15およびIL-15RαSUSHIドメインに基づいた免疫サイトカイン
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20230616BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20230616BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20230616BHJP
   C07K 14/715 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230616BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230616BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230616BHJP
   C12N 15/24 20060101ALN20230616BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230616BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K16/30 ZNA
C07K14/54
C07K14/715
A61K39/395 T
A61K38/20
A61K38/17
A61P35/00
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/24
C12N15/12
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021018481
(22)【出願日】2021-02-08
(62)【分割の表示】P 2018228640の分割
【原出願日】2012-06-22
(65)【公開番号】P2021098698
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】11358005.4
(32)【優先日】2011-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513322899
【氏名又は名称】サイチューン ファーマ
(73)【特許権者】
【識別番号】507042442
【氏名又は名称】インサーム (インスティテュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ ルシェルシェ メディカル)
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】モリソー セバスチャン ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】テッパ ジェラルディーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ジャック ヤニク ローラン ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ロベール ブリュノ ジルベール マルク
(72)【発明者】
【氏名】ド マルティノフ ギー ルーク ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ベシャール ダヴィド
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-512433(JP,A)
【文献】VANESSA KERMER,ANTIBODY FUSION PROTEINS FOR CANCER IMMUNOTHERAPY MIMICKING IL-15 TRANS PRESENTATION AT THE TUMOR SITE,CIMT CANCER IMMUNOTHERAPY 8TH ANNUAL MEETING ABSTRACTBOOK 2010 [ONLINE],2010年05月26日,P1-35,163,170-171,http://meeting.cimt.eu/cimt-meeting/files/dl/CIMT_Abstractbook_2010.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00-7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)コンジュゲート、および
b)腫瘍抗原に対する抗体
を含む被験体における癌を治療するための免疫サイトカインであって、
前記コンジュゲートは、
(i)配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも92.5%の同一性のパーセンテージを有するインターロイキン15またはその誘導体のアミノ酸配列を含み、kit225細胞株の増殖誘導においてヒトインターロイキン15の活性の少なくとも10%を有するポリペプチド、および
(ii)インターロイキン15受容体α(IL-15Rα)のsushiドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチド
を含み、
a)前記コンジュゲートのポリペプチド(i)及び(ii)は融合タンパク質中で共有結合され、
b)前記コンジュゲート及び前記抗体は融合タンパク質中で共有結合され、
インターロイキン15又はその誘導体のアミノ酸配列及びIL-15Rαのsushiドメインのアミノ酸配列が、第1のリンカーアミノ酸配列により分離され、
前記コンジュゲートが、IL-15Rαのsushiドメインのアミノ酸配列に対するC末端位置においてインターロイキン15又はその誘導体のアミノ酸配列を含み、
前記コンジュゲートのアミノ酸配列が抗体のアミノ酸配列に対してC末端位置にある、免疫サイトカイン。
【請求項2】
前記腫瘍抗原が、CD-20、CEA、EGFR、GD2、EPCAM、MUCl、PSMA、CD-19、GD3、GM1、CAIX、GD2-O-アセチル化、HER2及びErbB受容体よりなる群から選択される、請求項1に記載の免疫サイトカイン。
【請求項3】
前記コンジュゲートのアミノ酸配列および前記抗体のアミノ酸配列はリンカーアミノ酸配列により分離されない、請求項1又は2に記載の免疫サイトカイン。
【請求項4】
前記コンジュゲートのアミノ酸配列および前記抗体のアミノ酸配列は第2のリンカーアミノ酸配列により分離される、請求項1又は2に記載の免疫サイトカイン。
【請求項5】
前記インターロイキン15が配列番号3のアミノ酸配列を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫サイトカイン。
【請求項6】
IL-15Rαのsushiドメインが配列番号9のアミノ酸配列を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の免疫サイトカイン。
【請求項7】
IL-15Rαのsushiドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチド(ii)が配列番号12のアミノ酸配列を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫サイトカイン。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の免疫サイトカイン及び薬学的に許容可能な担体を含む癌を治療するための医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物が、被験体の体重1kg当たり2.5mg以下の用量にて注射により投与される、請求項8に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本国際特許出願は、2011年6月24日に出願された欧州特許出願11358005.4号の優先権を主張し、その出願は本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、新規免疫サイトカインおよび特に癌の治療のための医薬としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
医学における免疫療法とは、予防的および/または治療的目標を達成するために免疫系を調節する概念に基づいた治療戦略の配置を指す。
【0004】
過去数年において、免疫療法が、いくつかの病理、特に癌の治療または予防のために使用されている。モノクローナル抗体を産生するための細胞融合技術の開発以来、膨大な数のモノクローナル抗体が研究者により産生されている。その後、ヒトモノクローナル抗体を産生するためにB細胞ハイブリドーマ技術およびEBVハイブリドーマ技術を含む、他の技術がモノクローナル抗体を生成するために開発されている。
【0005】
モノクローナル抗体(Mab)はほとんどの任意のエピトープを標的にするために開発され得る。特定の細胞/分子に対する特異的認識および結合の性質は、種々の疾患状態についての診断および治療試薬としてのMabの開発を促す。組換えDNA技術が、ヒトへのそれらの投与に適合するようにキメラまたはヒト化抗体を生成するために使用されている。現在、リツキサン(RITUXAN)(登録商標)、ハーセプチン(HERCEPTIN)(登録商標)、アバスチン(AVASTIN)(登録商標)などのいくつかのモノクローナル抗体が商品化されており、癌、感染症、免疫疾患などの治療に利用可能である。
【0006】
モノクローナル抗体は標的分子であり、腫瘍組織などの特定の領域(細胞、組織など)内に局在化できる。この特性はまた、腫瘍抗原と呼ばれる腫瘍部位内の特異的分子を標的しようとして種々の物質(ペイロード)にコンジュゲートしたMabの開発を導いた。このような物質(ペイロード)は、毒素、薬物、放射性核種、プロドラッグ化合物などであってもよい。これらの結合の多くは、抗体の所与の調製物との反応部分(ペイロード)の化学的コンジュゲーションを含み、そのプロセスは煩雑で、変化を受ける場合がある(特許文献1)。
【0007】
これらの新たな分子の中で、免疫サイトカインが特に注目されている。前記免疫サイトカインは抗体およびサイトカインを含む融合タンパク質に対応する。これらのタンパク質は抗原結合能力およびサイトカイン活性の両方を保有する。
【0008】
サイトカインは、ホルモンおよび神経伝達物質のようなシグナル伝達タンパク質および糖タンパク質の分類であり、細胞連絡に広範に使用されている。ホルモンは特定の器官により血液中に分泌されるが、神経伝達物質は神経作用に関連し、サイトカインは起源および目的に関して化合物のより多様化したクラスである。それらは広範囲の造血細胞および非造血細胞種類により産生され、近くの細胞または器官全体の両方に作用でき、時々、他の化学物質の存在に強く依存する。サイトカインファミリーは主に8~30kDaの質量を有する小さな水溶性のタンパク質および糖タンパク質からなる。サイトカインは、固有および適応免疫反応の両方の機能に不可欠である。それらは多くの場合、十分な免疫細胞を活性化させ、動員し、病原体に対する系の反応を増加させる目的で病原体と遭遇した免疫細胞により分泌される。しかしながら、免疫系の発達および機能におけるそれらの役割以外に、サイトカインはまた、胚形成の間のいくつかの発達プロセスに関与する。
【0009】
サイトカインの中で、インターロイキン15(IL-15)は、ウイルス(複数も含む)による感染、または非自己として認識されるか、もしくは弱体化される細胞による間接刺激後に単核食細胞(および一部の他の細胞)により分泌されるIL-2と構造的に類似したサイトカインである。このサイトカインはナチュラルキラー細胞;自然免疫系の細胞増殖を誘導し、その主な役割はウイルス感染した細胞を殺傷することである。この遺伝子によりコードされるタンパク質は、Tおよびナチュラルキラー細胞活性化および増殖を調節するサイトカインである。
【0010】
したがって、IL-15に基づいた免疫サイトカインの構築が、腫瘍特異的抗体の腫瘍標的性質とインターロイキン15の免疫調節作用との組み合わせのために特に注目される。特にインターロイキン-2(IL-2)を使用したいくつかの免疫サイトカインが既に得られており、第2相腫瘍臨床試験において非常に興味があり、有望な結果が実証されている。これらの融合タンパク質のいくつかの例はいくつかの特許出願(特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6)に記載されている。
【0011】
したがって、インターロイキン15に基づいた免疫サイトカインはHEK-293細胞内で産生されており、特許文献7および非特許文献1に記載されている。
【0012】
それにも関わらず、本発明者らは、このようなインターロイキン15に基づいた免疫サイトカインが非常に制限されたインターロイキン15活性を有すること、およびそれらの産生が特に低い収率で多くのタンパク質汚染物質を有するCHO細胞内で非常に困難であることを実証した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第4,671,958号明細書
【文献】米国特許第5,645,835号明細書
【文献】欧州特許第0,305,967号明細書
【文献】国際公開第86/01533号パンフレット
【文献】欧州特許第0,439,095号明細書
【文献】国際公開第85/00974号パンフレット
【文献】国際公開第2007/128563号パンフレット
【非特許文献】
【0014】
【文献】KASPARら、Cancer Research、第67巻(10)、4940-4948ページ、2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、免疫療法において使用され得るインターロイキン15に基づいた免疫サイトカインについての必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、
A)コンジュゲート、および
B)前記コンジュゲートに共有原子価により直接または間接的に結合された抗体またはその断片を含む、免疫サイトカインであって、
前記コンジュゲートが、
(i)インターロイキン15またはその誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
(ii)IL-15Rαまたはその誘導体のsushiドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチド、
を含む、免疫サイトカインに関する。
【0017】
第2の態様において、本発明は上記の免疫サイトカインをコードする核酸に関する。
【0018】
第3の態様において、本発明は上記の核酸を含むベクターを提供する。
【0019】
第4の態様において、本発明は、上記のポリヌクレオチドまたはベクターを用いて遺伝子操作された宿主細胞に関する。本発明はまた、本発明に係る免疫サイトカインを発現する遺伝子操作された宿主細胞を産生する方法であって、前記方法は、(i)インビトロまたはエキソビボで上記の核酸またはベクターを宿主細胞内に組み込む工程と、(ii)得られた遺伝子操作された組換え宿主細胞をインビトロまたはエキソビボで培養する工程と、(iii)必要に応じて、前記免疫サイトカインを発現および/または分泌する細胞を選択する工程と、を含む方法に関する。
【0020】
好ましい実施形態において、遺伝子操作された前記宿主細胞は動物細胞、好ましくはCHO細胞である。
【0021】
第5の態様において、本発明は、最終的に薬学的に許容可能な担体と結合する、上記の免疫サイトカイン、それをコードする核酸、または前記核酸を含む核酸ベクターを含む医薬組成物を提供する。
【0022】
好ましい実施形態において、前記組成物は、好ましくは抗癌剤である、さらなる治療剤を含む。
【0023】
第6の態様において、本発明は、被験体における癌を治療するための上記の医薬組成物に関する。
【0024】
第7の態様において、本発明は、被験体における癌を治療するための同時、別々または連続使用のための組み合わされた調製物として、
(i)上記の免疫サイトカイン、それをコードする核酸配列、またはそのような核酸配列を含むベクターと、
(ii)治療剤、好ましくは抗癌剤と
を含むプロドラッグに関する。
【0025】
第8の態様において、本発明は、上記の医薬組成物を被験体に投与する工程を含む、被験体における癌を治療するための方法に関する。
【0026】
最後の態様において、本発明は、治療有効量の
(i)上記の免疫サイトカイン、それをコードする核酸配列、またはそのような核酸配列を含むベクター、および
(ii)治療剤、好ましくは抗癌剤を、それを必要とする被験体に同時、別々または連続して投与する工程を含む、癌を治療する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、IL15と比較したIL15抗CD20免疫サイトカインの活性を示す。
図2図2は、IL15と比較したIL15抗GD20-O-アセチル化免疫サイトカインの活性を示す。
図3図3は、IL15抗CD20、抗GD2-O-アセチル化および抗HER2IL-15免疫サイトカインのそれぞれのCD20、GD2-Oアセチル化およびHER-2結合活性を示す。
図4図4は、抗CD20抗体(リツキシマブ)と比較したIL15抗CD20免疫サイトカインのIL-15Rα結合活性を示す。
図5図5は、IL15抗CD20、抗GD2-O-アセチル化および抗HER2RLI免疫サイトカインのそれぞれのCD20、GD2-Oアセチル化およびHER-2結合活性を示す。
図6図6は、RLI抗CD20およびIL15抗GD2-O-アセチル化免疫サイトカインのIL15Rα結合活性を示す。
図7図7は、IL15と比較したRLI抗CD20免疫サイトカインの活性を示す。
図8図8は、IL15と比較したRLI抗GD2-O-アセチル化免疫サイトカインの活性を示す。
図9図9は、抗GD2-Oアセチル化抗体と比較した抗GD2-Oアセチル化免疫サイトカインの抗転移活性を示す。
図10図10は、Rajiモデルにおける抗CD20免疫サイトカインの抗腫瘍活性を示す。
図11図11は、IL15と比較したIL-15抗HER2免疫サイトカインの活性を示す。
図12図12は、IL15と比較したRLI抗HER2免疫サイトカインの活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、インターロイキン15を含む免疫サイトカインの産生はインターロイキン15活性の90%超の損失を導き、RLIに基づいた免疫サイトカインの産生は、IL-15に基づいた免疫サイトカインより非常に優れたαβγおよびβγ免疫細胞において強力な生物活性を示す革新的なIL15免疫サイトカインを導くという本発明者らによる発見に基づく。
【0029】
驚くべきことに、完全なIgGモノクローナル抗体を有するRLIに基づいた免疫サイトカインは、RLI単独またはscFv断片抗体と比較してβγ免疫細胞において向上した生物学的効率を示す。βγ免疫細胞におけるこの活性の驚くべき増加は、免疫抑制環境におけるNK細胞およびTリンパ球の活性化/再活性化に関して重要であり得る。
【0030】
さらに驚くべきことに、インターロイキン15免疫サイトカインは、活性であるように免疫グロブリンとインターロイキン15部分との間のリンカーの存在を必要とするが、本発明の免疫サイトカインは、そのそれぞれの免疫グロブリンとサイトカイン部分との間に任意のリンカーを有してまたは有さずに同様のインターロイキン15活性を示す。リンカー領域のこの不必要な存在は、新規抗原エピトープおよび免疫原性を生成するヒンジ領域を制限する融合タンパク質免疫原性に関して、ならびに制限された切断型を用いた生産収率に関して強い議論を示し得る。
【0031】
さらに驚くべきことに、本発明の免疫サイトカインは、RLI単独と比較して高い活性(すなわち10~100倍)を示すIL-15スーパーアゴニストである。
【0032】
さらに、本発明者らは、CHO細胞内で本発明の免疫サイトカインの生産の良好な収率を得、それは90%より高い収率を有する。これは、CHO細胞内のインターロイキン15免疫サイトカインの同じ細胞内の生産は非常に困難であるため、驚くべきことである。
【0033】
免疫サイトカインは、従来、限定された血清半減期を有し、免疫サイトカインに関連する腫瘍局在率は、強力な抗腫瘍効果を生成するのに重要な問題であるので、非常に低い濃度で免疫細胞を活性化することを可能にするRLIに基づいた免疫サイトカインの特異的生物活性は、この分野において重要な革新的工程を示し、癌患者におけるこのような生体化合物の効果を改善できる。
【0034】
最後に、本発明の免疫サイトカインの強い活性は、2.5~1mg/被験体のkg以下の用量、さらに0.1mg/kg以下の用量で注射により投与される、この免疫サイトカインについての実際的な治療的使用を予測できる。実際に、国際特許出願WO2007/128563号に開示されているものなどのインターロイキン15免疫サイトカインの低い活性は実際の治療的使用を可能にしていない(すなわち、治療的効果を得るのに、マウス腫瘍モデルにおいて1日に4回の注射で20μg超の免疫サイトカインの用量を必要としたことは、いくらかの治療的効果を得るために5mg/kg超の免疫サイトカインの用量の必要性を示唆している)。
【0035】
したがって、一態様において、本発明は、
A)コンジュゲート、および
B)前記コンジュゲートに共有原子価により直接または間接的に結合された抗体またはその断片
を含む、免疫サイトカインであって、
前記コンジュゲートは、
(i)インターロイキン15またはその誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチド、および
(ii)IL-15Rαまたはその誘導体のsushiドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチド
を含む、免疫サイトカインに関する。
【0036】
「免疫サイトカイン」という用語は、サイトカインまたはその誘導体に共有原子価により直接または間接的に結合された抗体またはその断片を含む分子を指す。前記抗体および前記サイトカインはリンカーペプチドにより連結され得る。
【0037】
本発明の免疫サイトカインのコンジュゲート
「インターロイキン15」という用語は、当該技術分野のその一般的な意味において、IL-2と構造的に類似するサイトカインを指す(GRABSTEINら、Science、vol.264(5161)、p:965-968、1994)。このサイトカインはIL-15、IL15またはMGC9721としても知られている。このサイトカインおよびIL-2は多くの生物活性を共有し、それらは共通のヘマトポイエチン受容体サブユニットに結合することが見出された。したがって、それらは同じ受容体を競合し得、互いの活性を負に調節する。IL-15がTおよびナチュラルキラー細胞の活性化および増殖を調節すること、ならびにCD8+メモリ細胞の数がこのサイトカインとIL2との間の平衡により制御されることが示されていることは確立されている。IL-15活性は、実施例に開示されているように、kit225細胞株でのその増殖誘導を定量することにより測定され得る(HORIら、Blood、vol.70(4)、p:1069-72、1987)。
【0038】
前記IL-15またはその誘導体は、kit225細胞株の増殖誘導においてヒトインターロイキン15の活性の少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%およびより好ましくは少なくとも50%を有する。
【0039】
前記インターロイキン15は、哺乳動物インターロイキン15、好ましくは霊長類インターロイキン15、より好ましくはヒトインターロイキン15である。
【0040】
哺乳動物インターロイキン15は当業者により簡単に識別され得る。一例として、イノシシ(Sus scrofa)(受入番号ABF82250)から、ドブネズミ(Rattus norvegicus)(受入番号NP_037261)から、ハツカネズミ(Mus musculus)(受入番号NP_032383)から、ウシ(Bos Taurus)(受入番号NP_776515)から、イエウサギ(Oryctolagus cuniculus)(受入番号NP_001075685)から、ヒツジ(Ovies aries)(受入番号NP_001009734)から、ネコ(Felis catus)(受入番号NP_001009207)から、カニクイザル(Macaca fascicularis)(受入番号BAA19149)から、ヒト(Homo sapiens)(受入番号NP_000576)から、アカゲザル(Macaca Mulatta)(受入番号NP_001038196)から、モルモット(Cavia porcellus)(受入番号NP_001166300)から、またはミドリザル(Chlorocebus sabaeus)(受入番号ACI289)からのインターロイキン15を挙げることができる。
【0041】
本明細書で使用する場合、「哺乳動物インターロイキン15」という用語は、コンセンサス配列の配列番号1を指す。
【0042】
霊長類インターロイキン15は当業者により簡単に識別され得る。一例として、イノシシ(Sus scrofa)(受入番号ABF82250)から、イエウサギ(Oryctolagus cuniculus)(受入番号NP_001075685)から、カニクイザル(Macaca fascicularis)(受入番号BAA19149)から、ヒト(Homo sapiens)(受入番号NP_000576)から、アカゲザル(Macaca Mulatta)(受入番号NP_001038196)から、またはミドリザル(Chlorocebus sabaeus)(受入番号ACI289)からのインターロイキン15を挙げることができる。
【0043】
本明細書で使用する場合、「霊長類インターロイキン15」という用語は、コンセンサス配列の配列番号2を指す。
【0044】
ヒトインターロイキン15は当業者により簡単に識別でき、アミノ酸配列の配列番号3を指す。
【0045】
本明細書に使用する場合、「インターロイキン15誘導体」という用語は、配列番号1、配列番号2および配列番号3からなる群において選択されるアミノ酸配列と少なくとも92.5%(すなわち約10アミノ酸置換に対応する)、好ましくは少なくとも96%(すなわち約5アミノ酸置換に対応する)、より好ましくは少なくとも98.5%(すなわち約2アミノ酸置換に対応する)または少なくとも99%(すなわち約1アミノ酸置換に対応する)の同一性のパーセンテージを有するアミノ酸配列を指す。このような誘導体は、その個人的知識および本特許出願の教示を考慮して当業者により簡単に識別され得る。このような誘導体の一例として、国際特許出願PCTWO2009/135031に記載されているものを挙げることができる。また、天然アミノ酸が化学修飾アミノ酸に置換されてもよいことが理解される。典型的に、このような化学修飾アミノ酸はポリペプチド半減期を増加させる。
【0046】
本明細書に使用する場合、2つのアミノ酸配列間の「同一性のパーセンテージ」とは、前記配列の最高のアラインメントを用いて得た、比較される2つの配列間の同一アミノ酸のパーセンテージを意味し、このパーセンテージは純粋に統計的であり、これらの2つの配列の間の相違はアミノ酸配列にわたってランダムに広がる。本明細書に使用する場合、「最高のアラインメント」または「最適なアラインメント」とは、決定された同一性のパーセンテージ(以下を参照)が最高であるアラインメントを意味する。2つのアミノ酸配列間の配列比較は、通常、最高のアラインメントに従って以前に整列されたこれらの配列を比較することにより実施され、この比較は、類似性の局所領域を識別し、比較するために比較のセグメントで実施される。比較を実施するのに最適な配列アラインメントは、手動の方法による以外に、SMITHおよびWATERMAN(Ad.App.Math.vol.2、p:482、1981)により開発された全体的相同性アルゴリズムを使用することにより、NEDDLEMANおよびWUNSCH(J.Mol.Biol.、vol.48、p:443、1970)により開発された局地的相同性アルゴリズムを使用することにより、PEARSONおよびLIPMAN(Proc.Natl.Acd.Sci.USA、vol.85、p:2444、1988)により開発された類似性の方法を使用することにより、このようなアルゴリズムを使用したコンピュータソフトウェア(Wisconsin GeneticsソフトウェアパッケージにおけるGAP、BESTFIT、BLAST P、BLAST N、FASTA、TFASTA、Genetics Computer Group、575Science Dr.、Madison、WI USA)を使用することにより、MUSCLE多重アラインメントアルゴリズム(Edgar、Robert C.、Nucleic Acids Research、vol.32、p:1792、2004)を使用することにより実施され得る。最適な局地的アラインメントを得るために、好ましくは、BLOSUM62マトリクスを用いたBLASTソフトウェアを使用できる。アミノ酸の2つの配列の間の同一性パーセンテージは、最適に整列されたこれらの2つの配列を比較することにより決定され、アミノ酸配列は、それらの2つの配列の間で最適なアラインメントを得るために基準配列に対して付加または欠失を含むことができる。同一性のパーセンテージは、それらの2つの配列の間の同一の位置の数を決定し、この数を比較位置の総数で割り、得た結果に100を掛けることにより計算されて、これらの2つの配列の間の同一性のパーセンテージを得る。
【0047】
好ましくは、インターロイキン15誘導体はIL-15アゴニストまたはスーパーアゴニストである。当業者はIL-15アゴニストまたはスーパーアゴニストを簡単に識別できる。IL-15アゴニストまたはスーパーアゴニストの一例として、国際特許出願WO2005/085282またはZHUら(J.Immunol.、vol.183(6)、p:3598-607、2009)に開示されているものを挙げることができる。
【0048】
さらに好ましくは、前記IL-15アゴニストまたはスーパーアゴニストは、(ヒトIL-15、配列番号3の配列に関して)L45D、L45E、S51D、L52D、N72D、N72E、N72A、N72S、N72YおよびN72Pを含む/からなる群において選択される。
【0049】
本明細書に使用する場合、「IL-15Rαのsushiドメイン」は、当該技術分野におけるその一般的な意味において、IL-15Rαのシグナルペプチド後の第1のシステイン残基(C1)で開始し、前記シグナルペプチド後の第4のシステイン残基(C4)で終了するドメインを指す。IL-15Rαの細胞外領域の一部に対応する前記sushiドメインはIL-15に対するその結合に必要である(WEIら、J.Immunol.、vol.167(1)、p:277-282、2001)。
【0050】
IL-15Rαまたはその誘導体の前記sushiドメインは、ヒトインターロイキン15に対するヒトIL-15Rαのsushiドメインの結合活性の少なくとも15%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%を有する。前記結合活性はWEIら(上述、2002)に開示される方法により簡単に決定され得る。
【0051】
IL-15Rαの前記sushiドメインは、哺乳動物IL-15αのsushiドメイン、好ましくは霊長類IL-15Rαのsushiドメイン、より好ましくはヒトIL-15Rαのsushiドメインである。
【0052】
哺乳動物IL-15Rαのsushiドメインは当業者により簡単に識別され得る。一例として、ドブネズミ(Rattus norvegicus)(受入番号XP_002728555)から、ハツカネズミ(Mus musculus)(受入番号EDL08026)から、ウシ(Bos Taurus)(受入番号XP_002692113)から、イエウサギ(Oryctolagus cuniculus)(受入番号XP_002723298)から、カニクイザル(Macaca fascicularis)(受入番号ACI42785)から、ブタオザル(Macaca nemestrina)(受入番号ACI42783)から、ヒト(Homo sapiens)(受入番号CAI41081)から、アカゲザル(Macaca Mulatta)(受入番号NP_001166315)から、スマトラオランウータン(Pongo abelii)(受入番号XP_002820541)から、シロエリマンガベイ(Cercocebus torquatus)(受入番号ACI42784)から、コモンマーモセット(Callithrix jacchus)(受入番号XP_002750073)から、またはモルモット(Cavia porcellus)(受入番号NP_001166314)からのIL-15Rαのsushiドメインを挙げることができる。
【0053】
本明細書に使用する場合、「哺乳動物IL-15Rαのsushiドメイン」という用語はコンセンサス配列の配列番号4を指す。
【0054】
好ましくは、哺乳動物IL-15Rαのsushiドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチドは、コンセンサス配列の配列番号5を指す。
【0055】
霊長類IL-15Rαのsushiドメインは当業者により簡単に識別され得る。一例として、イエウサギ(Oryctolagus cuniculus)から、カニクイザル(Macaca fascicularis)から、ブタオザル(Macaca nemestrina)から、ヒト(Homo sapiens)から、アカゲザル(Macaca Mulatta)から、スマトラオランウータン(Pongo abelii)から、シロエリマンガベイ(Cercocebus torquatus)から、またはコモンマーモセット(Callithrix jacchus)からのIL-15Rαのsushiドメインを挙げることができる。
【0056】
本明細書に使用する場合、「霊長類IL-15Rαのsushiドメイン」という用語はコンセンサス配列の配列番号6を指す。
【0057】
好ましくは、霊長類IL-15Rαのsushiドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチドとは、コンセンサス配列の配列番号7を指す。
【0058】
ヒトIL-15Rαのsushiドメインは当業者により簡単に識別でき、アミノ酸配列の配列番号8を指す。
【0059】
好ましくは、ヒトIL-15Rαのsushiドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチドは配列番号9を指す。
【0060】
本明細書に使用する場合、「IL-15Rαのsushiドメインの誘導体」という用語は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群において選択されるアミノ酸配列と少なくとも92%(すなわち約5アミノ酸置換に対応する)、好ましくは少なくとも96%(すなわち約2アミノ酸置換に対応する)、より好ましくは少なくとも98%(すなわち約1アミノ酸置換に対応する)の同一性のパーセンテージを有するアミノ酸配列を指す。このような誘導体は、IL-15Rαのsushiドメインの4つのシステイン残基を含み、彼/彼女の一般知識および本特許出願の教示を考慮して当業者により簡単に識別できる。また、天然アミノ酸が化学修飾アミノ酸により置換されてもよいことも理解される。典型的に、このような化学修飾アミノ酸はポリペプチド半減期を増加できる。
【0061】
好ましい実施形態によれば、コンジュゲートは、(ii)IL-15Rαまたはその誘導体のsushiおよびヒンジドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0062】
IL-15Rαヒンジドメインは、sushiドメイン後の最初のアミノ酸残基で開始し、グリコシル化の最初の潜在的部位の前の最後のアミノ酸残基で終了するアミノ酸配列と定義される。ヒトIL-15Rαにおいて、ヒンジ領域のアミノ酸配列は、前記sushiドメインに対するC末端位置において、このIL-15Rαのsushiドメイン後に位置する14のアミノ酸配列からなる。すなわち、前記IL-15Rαヒンジ領域は、前記(C4)システイン残基後の最初のアミノ酸で開始し、14アミノ酸で終了する(標準的な「N末端からC末端」方向で数える)。
【0063】
IL-15Rαの前記sushiおよびヒンジドメインは、哺乳動物IL-15Rαのsushiおよびヒンジドメイン、好ましくは霊長類IL-15Rαのsushiおよびヒンジドメイン、より好ましくはヒトIL-15Rαのsushiおよびヒンジドメインである。
【0064】
哺乳動物IL-15Rαのsushiおよびヒンジドメインのアミノ酸配列は当業者により簡単に識別され得る。本明細書に使用する場合、「哺乳動物IL-15Rαのsushiおよびヒンジドメイン」という用語は、コンセンサス配列の配列番号10を指す。
【0065】
霊長類IL-15Rαのsushiおよびヒンジドメインのアミノ酸配列は当業者により簡単に識別され得る。本明細書に使用する場合、「霊長類IL-15Rαのsushiおよびヒンジドメイン」という用語は、コンセンサス配列の配列番号11を指す。
【0066】
ヒトIL-15Rαのsushiおよびヒンジドメインのアミノ酸配列は当業者により簡単に識別され得る。本明細書に使用する場合、「ヒトIL-15Rαのsushiおよびヒンジドメイン」という用語は、コンセンサス配列の配列番号2を指す。
【0067】
本明細書に使用する場合、「IL-15Rαのsushiおよびヒンジドメインの誘導体」という用語は、配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群において選択されるアミノ酸配列と少なくとも93%(すなわち約5アミノ酸置換に対応する)、好ましくは少なくとも97%(すなわち約2アミノ酸置換に対応する)、より好ましくは少なくとも98%(すなわち約1アミノ酸置換に対応する)の同一性のパーセンテージを有するアミノ酸配列を指す。このような誘導体はIL-15Rαのsushiドメインの4つのシステイン残基を含み、その一般知識および本特許出願の教示を考慮して当業者により簡単に識別され得る。また、天然アミノ酸が化学修飾アミノ酸により置換されてもよいことも理解されるであろう。典型的に、このような化学修飾アミノ酸はポリペプチド半減期を増加できる。
【0068】
コンジュゲートの両方のポリペプチドi)およびii)は、米国特許第8,124,084(B2)号に開示されている複合体におけるように非共有結合されてもよい。前記コンジュゲートまたは複合体は、適切な量のポリペプチドi)を提供すること、適切な量のポリペプチドii)を提供すること、複合体(すなわちコンジュゲート)形成を可能にするのに十分な時間の間、適切なpHおよびイオン条件下で両方のポリペプチドを混合すること、および任意に前記複合体を濃縮または精製することにより、簡単に得ることができる。複合体(すなわちコンジュゲート)のポリペプチドは、例えば、標準的な方法に係るペプチドシンセサイザーを使用して;細胞または細胞抽出物中で別々に各ポリペプチドを発現すること、次いでそのポリペプチドを単離および精製することにより、形成され得る。任意に、本発明の治療的ポリペプチド複合体は、同じ細胞または細胞抽出物中で両方のポリペプチドi)およびii)を発現すること、次いで例えば、リンホカインタンパク質、リンホカイン受容体部分、または複合体に対する抗体を用いたアフィニティクロマトグラフィーなどのクロマトグラフ技術を使用して複合体を単離および精製することにより形成されてもよい。
【0069】
コンジュゲートの両方のポリペプチドi)およびii)はまた、二官能性タンパク質カップリング剤を使用してまたは融合タンパク質中で共有結合されてもよい。
【0070】
二官能性タンパク質カップリング剤は当業者に周知であり、それらを使用した方法として、例えば、N-スクシンイミジル(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHCLなど)、活性エステル(スベリン酸ジサクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン(tolyene)2,6-ジイソシアネートなど)、およびビス-活性フッ化化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)が挙げられる。
【0071】
「融合タンパク質」という用語は、元は別個のタンパク質をコードする2つ以上の遺伝子の結合により作製されるタンパク質を指す。それはキメラタンパク質としても知られている。この融合遺伝子の翻訳の結果、元のタンパク質の各々に由来する官能特性を有する単一ポリペプチドが生じる。組換え融合タンパク質は、生物学的研究または治療に使用するための組換えDNA技術により人工的に作製される。組換え融合タンパク質は融合遺伝子の遺伝子操作により作製されるタンパク質である。これは典型的に、第1のタンパク質をコードするcDNA配列から停止コドンを除去すること、次いでライゲーションまたはオーバーラップエクステンションPCRによりフレーム内に第2のタンパク質のcDNA配列を付加することを含む。次いでそのDNA配列は単一タンパク質として細胞により発現される。そのタンパク質は、両方の元のタンパク質、またはいずれかの一部のみの全配列を含むように操作されてもよい。
【0072】
好ましい実施形態において、コンジュゲートは融合タンパク質である。
【0073】
インターロイキン15またはその誘導体のアミノ酸配列は、IL-15Rαまたはその誘導体のsushiドメインのアミノ酸配列に対してC末端またはN末端位置に存在する。好ましくは、インターロイキン15またはその誘導体のアミノ酸配列は、IL-15Rαまたはその誘導体のsushiドメインのアミノ酸配列に対してC末端位置に存在してもよい。
【0074】
インターロイキン15またはその誘導体のアミノ酸配列およびIL-15Rαまたはその誘導体のsushiドメインのアミノ酸配列は第1の「リンカー」アミノ酸配列により分離されてもよい。前記第1の「リンカー」アミノ酸配列は、融合タンパク質が適切な二次および三次構造を形成することを確実にするのに十分な長さであってもよい。
【0075】
第1のリンカーアミノ酸配列の長さは融合タンパク質の生物活性に顕著に影響を与えずに変化してもよい。典型的に、第1のリンカーアミノ酸配列は、少なくとも1つであるが、30アミノ酸未満、例えば2~30アミノ酸、好ましくは10~30アミノ酸、より好ましくは15~30アミノ酸、さらにより好ましくは15~25アミノ酸、最も好ましくは18~22アミノ酸のリンカーを含む。
【0076】
好ましいリンカーアミノ酸配列はコンジュゲートに適切な構造(すなわちIL-15Rβ/γシグナル伝達経路を介する適切なシグナル伝達活性を可能にする構造)を適合できるものである。
【0077】
最も適切な第1のリンカーアミノ酸配列は、(1)フレキシブルな伸長構造を適合し、(2)融合タンパク質の機能ドメインと相互作用できる秩序的な二次構造を発生する性質を示さず、(3)機能タンパク質ドメインとの相互作用を促進できる最小の疎水性または荷電特性を有する。
【0078】
好ましくは、第1のリンカーアミノ酸配列は、Gly(G)、Asn(N)、Ser(S)、Thr(T)、Ala(A)、Leu(L)、およびGln(Q)を含む群において、最も好ましくはGly(G)、Asn(N)、およびSer(S)を含む群において選択されるほぼ天然アミノ酸を含む。
【0079】
リンカー配列の例は米国特許第5,073,627号および同第5,108,910号に記載されている。
【0080】
より特に本発明に適している例示的なフレキシブルなリンカーとしては、配列番号13(SGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ)、配列番号14(SGGSGGGGSGGGSGGGGSGG)または配列番号15(SGGGSGGGGSGGGGSGGGSLQ)の配列によりコードされるものが挙げられる。
【0081】
本発明の免疫サイトカインの抗体
「抗体」という用語は、ジスルフィド結合により相互連結される、4つのポリペプチド鎖、2つの同一の重(H)鎖(完全長の場合、約50~70kDa)および2つの同一の軽(L)鎖(完全長の場合、約25kDa)を含む四量体に対応する免疫グロブリン分子を指す。軽鎖はκおよびλと分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、またはεと分類され、抗体のアイソタイプをIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEとそれぞれ定義する。各重鎖はN末端重鎖可変領域(本明細書中でHCVRと略する)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、IgG、IgD、およびIgAについて3つのドメイン(CH1、CH2、およびCH3);ならびにIgMおよびIgEについて4つのドメイン(CH1、CH2、CH3、およびCH4)からなる。各軽鎖は、N末端軽鎖可変領域(本明細書中でLCVRと略する)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLからなる。HCVRおよびLCVR領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存される領域が散在している、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域にさらに細分されてもよい。各HCVRおよびLCVRは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端に整列される、3つのCDRおよび4つのFRからなる。各ドメインに対するアミノ酸の割り当ては周知の慣用法に従う。特定の抗原に結合する抗体の機能的能力は、各軽/重鎖対の可変領域に依存し、主にCDRにより決定される。
【0082】
本明細書に使用する場合、「抗体」という用語はモノクローナル抗体自体を指す。モノクローナル抗体は、ヒト抗体、キメラ抗体および/またはヒト化抗体であってもよい。
【0083】
有益には、抗体という用語は、IgG1、IgG2(IgG2aまたはIgG2b)、IgG3およびIgG4などのIgGを指す。好ましくは、抗体という用語は、IgG1またはIgG2、より好ましくはIgG2aを指す。
【0084】
「キメラ抗体」とは、マウス免疫グロブリン由来の可変領域およびヒト免疫グロブリンの定常領域からなる抗体を意味する。この変化は、マウス定常領域を有するヒト抗体の定常領域を単に置換することからなり、それにより、医薬用途に許容可能であるように十分に低い免疫原性を有することができるヒト/マウスキメラを生じる。このようなキメラ抗体を産生するための多くの方法が既に報告されており、それ故、当業者の一般知識の一部を形成している(例えば、米国特許第5,225,539号を参照のこと)。
【0085】
「ヒト化抗体」とは、非ヒト相補性決定領域(CDR)を有する抗体の配列を変化させることによるヒト抗体生殖細胞系列由来の部分的または完全にアミノ酸配列からなる抗体を意味する。抗体および最終的にCDRの可変領域のこのヒト化は、当該技術分野において現在周知による技術により作製される。一例として、英国特許第2188638A号および米国特許第5,585,089号は、置換される抗体の一部のみが相補性決定領域、すなわち「CDR」である、組換え抗体が産生されるプロセスを開示している。CDR移植技術は、マウスCDR、ならびにヒト可変領域フレームワークおよび定常領域からなる抗体を生成するために使用されている(例えば、RIECHMANNら、Nature、vol.332、p:323-327、1988を参照のこと)。これらの抗体は、Fc依存性エフェクター機能に必要であるが、抗体に対する免疫反応を非常に引き起こしにくいヒト定常領域を保有する。一例として、可変領域のフレームワーク領域は、非ヒトCDRを実質的にインタクトなままにする、対応するヒトフレームワーク領域により置換されるか、またはさらに、ヒトゲノムに由来する配列でCDRを置き換える(例えば、米国特許出願公開第2006/25885号を参照のこと)。完全なヒト抗体は遺伝子組換えマウスにおいて産生され、その免疫系はヒト免疫系に対応するように変化される。上述のように、それは、一本鎖形態を表す断片を含む、抗体の免疫学的に特異的な断片を利用するために本発明の方法に使用するのに十分である。
【0086】
ヒト化抗体は再び、ヒトフレームワーク、非ヒト抗体由来の少なくとも1つのCDRを含む抗体を指し、任意の定常領域の存在は、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち少なくとも約85または90%、好ましくは少なくとも95%同一である。それ故、場合によりCDRを除いてヒト化抗体の全ての部分は、1つ以上の天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。例えば、ヒト化免疫グロブリンは典型的に、キメラマウス可変領域/ヒト定常領域抗体を包含しない。一例として、ヒト化免疫グロブリンの設計は以下のように実施されてもよい:アミノ酸が以下のカテゴリー下に入る場合、使用されるヒト免疫グロブリン(アクセプター免疫グロブリン)のフレームワークアミノ酸は、CDR提供非ヒト免疫グロブリン(ドナー免疫グロブリン)由来のフレームワークアミノ酸により置換される:(a)アクセプター免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域内のアミノ酸は、その位置におけるヒト免疫グロブリンにとって稀であるのに対して、ドナー免疫グロブリン内の対応するアミノ酸は、その位置におけるヒト免疫グロブリンにとって典型的である;(b)アミノ酸の位置はCDRの位置とすぐに隣接する;または(c)フレームワークアミノ酸の任意の側鎖原子は、3次元免疫グロブリンモデルにおけるCDRアミノ酸の任意の原子の約5~6Å(中心間)内である(QUEENら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、vol.88、p2869、1991)。アクセプター免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域およびドナー免疫グロブリン内の対応するアミノ酸内のアミノ酸の各々がその位置におけるヒト免疫グロブリンにとって稀である場合、そのようなアミノ酸は、その位置におけるヒト免疫グロブリンにとって典型的であるアミノ酸に置換される。
【0087】
本明細書に使用する場合、「抗体断片」という用語は、その抗体対部分より同じ抗原と反応できる抗体断片を指す。そのような断片は当業者により簡単に識別でき、一例として、Fab断片(例えばパパイン消化による)、Fab’断片(例えばペプシン消化および部分的還元による)、F(ab’)断片(例えばペプシン消化による)、Facb(例えばプラスミン消化による)、F(例えばペプシン消化、部分的還元および再凝集による)を含み、また、scF(一本鎖Fv;例えば分子生物技術による)断片も本発明に包含される。
【0088】
このような断片は、当該技術分野において公知および/または本明細書に記載されている酵素的切断、合成または組換え技術により産生され得る。抗体はまた、1つ以上の停止コドンが天然の停止部位の上流に組み込まれる抗体遺伝子を使用して種々の切断型で産生されてもよい。例えば、F(ab’)重鎖部分をコードする組み合わせ遺伝子は、重鎖のCHドメインおよび/またはヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計されてもよい。抗体の種々の部分は従来技術により化学的に一緒に結合され得るか、または遺伝子操作技術を使用して隣接タンパク質として調製され得る。
【0089】
好ましくは、前記抗体断片はscFv断片である。
【0090】
好ましい実施形態において、前記抗体またはその断片は、腫瘍新血管形成または腫瘍細胞外マトリクスに関連する抗原に対して、あるいは腫瘍抗原に対して誘導される。
【0091】
本明細書に使用する場合、「腫瘍新血管形成に関連する抗原」とは、腫瘍に存在する新たに合成される血管により発現される抗原を指す。
【0092】
このような抗原の一例として、フィブロネクチンのEDAおよびEDBドメイン、Endosalin/TEM1、Endoglin/105、PSMAまたはB7-H4を挙げることができる。
【0093】
本明細書に使用する場合、「腫瘍細胞外マトリクスに関連する抗原」とは、腫瘍内に存在する細胞外マトリクス内に発現される抗原を指す。
【0094】
このような抗原の一例として、ラミニン-332のG45断片を挙げることができる(ROUSSELLEら、Cancer Research、vol.68(8)、p:2885-94、2008)。
【0095】
本明細書に使用する場合、「腫瘍抗原」とは腫瘍細胞内に産生される抗原物質を指す。多くの腫瘍抗原は当業者に周知であり、非限定的な例として、CD-20、CEA、EGFR、GD2、EPCAM、MUCl、PSMA、CD-19、GD3、GM1、CAIX、GD2-O-アセチル化またはHER2を挙げることができる。
【0096】
CD-20は、早期プレB細胞発生の間に発現される非グリコシル化リンタンパク質であり、形質細胞分化まで保持する。特に、CD20分子は細胞周期開始および分化に必要な活性化プロセスにおける工程を調節でき、通常、腫瘍性(「腫瘍」)B細胞において非常に高いレベルで発現される。定義により、CD20は、「正常」B細胞および「悪性」B細胞の両方に存在する。したがって、CD20表面抗原はB細胞リンパ腫の「標的化」のための候補として機能する可能性を有する。
【0097】
CD-20に対して誘導される抗体に関して、リツキシマブ(「RITUXAN(登録商標)」)(米国特許第5,736,137号);「Y2B8」または「イブリツモマブチウキセタン」ZEVALIN(登録商標)と指定されたイットリウム-[90]-標識化2B8マウス抗体(米国特許第5,736,137号);「131I-BI」抗体(ヨウ素131トシツモマブ、BEXXAR(登録商標))を生成するために必要に応じて131Iで標識された「トシツモマブ」とも呼ばれるマウスIgG2a「BI」(米国特許第5,595,721号);およびヒト化2H7;オファツムマブ、CD20huMax-CD20上の新規エピトープに対する完全なヒト化IgG1(国際公開第2004/035607号)を挙げることができる。それらの中で、リツキシマブ、イブリツモマブ、チウキセタン、およびトシツモマブは、特定のリンパ腫の治療のために承認された市場で手に入れることができ、オファツムマブは、特定の白血病の治療のために承認された市場で手に入れることができる。
【0098】
CEA(癌胎児性抗原)糖タンパク質は細胞接着に関連する腫瘍マーカーである。
【0099】
CEAに対して誘導される抗体に関して、アルシツモマブ(IMMUNOMEDICS)を挙げることができる。
【0100】
ErbB受容体は、上皮、間葉およびニューロン起源の種々の組織内に発現される。正常な条件下で、ErbB受容体の活性化は、成長因子のEGFファミリーのメンバーである、それらのリガンドの空間的および一時的発現により制御される。ErbB受容体に結合するリガンドは、受容体ホモ-およびヘテロ二量体の形成ならびに内在キナーゼドメインの活性化を誘導し、細胞質尾部内の特異的チロシンキナーゼ残基上でのリン酸化を生じる。これらのリン酸化残基は、種々のタンパク質のためのドッキング部位として機能し、その動員により、細胞内シグナル伝達経路の活性化を導く。ErbB受容体のうち、EGFRおよびHER2は細胞増殖および分化を調節するのに重要な役割を果たすことが知られている。それらは、細胞外成長因子結合時にホモ-および/またはヘテロ二量体内の他のHER受容体と集合する強い傾向を有し、その結果、種々の形態のシグナル変換経路活性化を生じ、アポトーシス、生存、または細胞増殖のいずれかを導く。
【0101】
EGFRに対して誘導される抗体に関して、マツズマブ(hMAb425、米国特許第5,558,864号;欧州特許第0531472号)としても指定される、ヒト化モノクローナル抗体425、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標);米国特許第7,060,808号)としても指定される、キメラモノクローナル抗体225(cMab225)および完全ヒト抗EGFR抗体パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標);米国特許第6,235,883号)を挙げることができる。それらの中で、セツキシマブおよびパニツムマブはインビボにおいてヒト大腸腫瘍を阻害することが実証され、その両方は承認された市場で手に入れることができる。
【0102】
Her2に対して誘導される抗体に関して、huMAb4D5-8、rhuMAb HER2、トラスツズマブ、またはHERCEPTIN(登録商標)(米国特許第5,821,337号)と指定されたマウス抗体4D5(米国特許第5,677,171号)の組換えヒト化型を挙げることができる。この抗体は、腫瘍がErbB2タンパク質を過剰発現する転移性乳癌を患っている患者を治療するために1998年に承認された市場で手に入れることができる。
【0103】
GD2は、神経芽細胞腫および黒色腫を含む、神経外胚葉起源の腫瘍上で発現されるジシアロガングリオシドである。
【0104】
GD2に対して誘導される抗体に関して、神経芽細胞腫の治療に使用されている、マウスIgG3モノクローナル抗体3F8、またはGD2のO-アセチル化形態に特異的である、マウスIgG3モノクローナル抗体8B6を挙げることができる(国際特許出願PCTWO2008/043777)。
【0105】
好ましくは、抗体は、CD-20(例えば、米国特許第5,736,137号に開示されるリツキシマブ)、GD2-O-アセチル化(例えば、国際特許出願PCTWO2008/043777に開示されているもの)またはHER2(例えば、米国特許第5,821,337号に開示されているトラスツズマブまたはHERCEPTIN(登録商標))に対して誘導される。
【0106】
コンジュゲートおよび抗体またはその断片の両方は、二官能性タンパク質カップリング剤を使用してまたは融合タンパク質中で共有結合されてもよい。
【0107】
二官能性タンパク質カップリング剤の方法は当業者により周知であり、以前に開示されている。一例として、当業者は、TILLら(Proc.Natl.Acad.U.S.A.、vol.86(6)、p:1987-91、1989)に開示されている方法を使用できる。
【0108】
好ましい実施形態において、免疫サイトカインは融合タンパク質である。
【0109】
別の好ましい実施形態において、免疫サイトカインは複合体、好ましくはポリペプチドi)とii)との間にコンジュゲートを含む複合体であり、ポリペプチドi)またはii)は抗体またはその断片に融合される。
【0110】
ポリペプチドi)、ポリペプチドii)、またはコンジュゲートは、抗体またはその断片のアミノ酸配列に対してC末端またはN末端位置に存在してもよい。
【0111】
好ましくは、コンジュゲートは融合タンパク質であり、コンジュゲートのアミノ酸配列は、抗体またはその断片のアミノ酸配列に対してC末端位置に存在し、最も好ましくは抗体もしくはその断片の重鎖定常領域の少なくとも1つのアミノ酸配列に対してC末端位置に存在する。
【0112】
コンジュゲートのアミノ酸配列および抗体またはその断片のアミノ酸配列は、第2の「リンカー」アミノ酸配列により分離されてもよく、またはされなくてもよい。
【0113】
特定の実施形態において、本発明の免疫サイトカインは、コンジュゲートおよび抗体またはその断片が任意のリンカーにより分離されない融合タンパク質である。
【0114】
実際に、本発明者らは驚くべきことに、本発明の免疫サイトカインが、活性であるように免疫グロブリンとサイトカイン部分との間に任意のリンカーを必要としないことを確立した。
【0115】
第1のリンカーアミノ酸配列に関して、前記第2の「リンカー」アミノ酸配列は、融合タンパク質が適切な二次および三次構造を形成することを確実にするのに十分な長さであってもよい。
【0116】
第1のリンカーアミノ酸配列の長さは融合タンパク質の生物活性に顕著に影響を与えずに変化してもよい。典型的に、第1のリンカーアミノ酸配列は、少なくとも1つであるが、30アミノ酸未満、例えば2~30アミノ酸、好ましくは10~30アミノ酸、より好ましくは15~30アミノ酸、最も好ましくは15~25アミノ酸のリンカーを含む。
【0117】
第1のリンカーアミノ酸配列に関して、最も適切な第2のリンカーアミノ酸配列は、(1)フレキシブルな伸長構造を適合し、(2)融合タンパク質の機能ドメインと相互作用できる秩序的な二次構造を発生する性質を示さず、(3)機能タンパク質ドメインとの相互作用を促進できる最小の疎水性または荷電特性を有する。
【0118】
好ましくは、第2のリンカーアミノ酸配列は、Gly(G)、Asn(N)、Ser(S)、Thr(T)、Ala(A)、Leu(L)、およびGln(Q)を含む群において、最も好ましくはGly(G)、Asn(N)、およびSer(S)を含む群において選択されるほぼ天然のアミノ酸を含む。
【0119】
本発明に適した第2のリンカーアミノ酸配列の一例として、配列番号16(SGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSG)または配列番号17(AAGGGSGGGSGGGGSGGGGSAA)の配列を挙げることができる。
【0120】
核酸、ベクターおよび組換え宿主細胞
第2の態様において、本発明は、上記の免疫サイトカイン、好ましくは融合タンパク質に対応する免疫サイトカインをコードする核酸に関する。
【0121】
前記核酸はRNAまたはDNA、好ましくはDNAに対応する。
【0122】
好ましい実施形態によれば、本発明の免疫サイトカインをコードする核酸は、原核細胞または真核細胞、好ましくは真核細胞内で核酸の発現を導く遺伝子発現配列に作動可能に連結される。「遺伝子発現配列」は、作動可能に連結される免疫サイトカイン核酸の効率的な転写および翻訳を促進する、プロモーター配列またはプロモーター-エンハンサーの組み合わせなどの任意の調節ヌクレオチド配列である。遺伝子発現配列は、例えば、構成的または誘導的プロモーターなどの哺乳動物またはウイルスプロモーターであってもよい。
【0123】
構成的哺乳動物プロモーターとしては、限定されないが、以下の遺伝子についてのプロモーター:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPTR)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ベータ-アクチンプロモーター、筋肉クレアチンキナーゼプロモーター、ヒト伸長因子プロモーターおよび他の構成的プロモーターが挙げられる。真核細胞中で構成的に機能する例示的なウイルスプロモーターとしては、例えば、シミアンウイルス(例えばSV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、Moloney白血病ウイルスおよび他のレトロウイルスの長い末端反復(LTR)、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーター由来のプロモーターが挙げられる。他の構成的プロモーターは当業者に公知である。
【0124】
本発明の遺伝子発現配列として有用なプロモーターにはまた、誘導性プロモーターが含まれる。誘導性プロモーターは誘導剤の存在下で発現される。例えば、プロモーター内のメタロチオンは特定の金属イオンの存在下で転写および翻訳を促進するために誘導される。他の誘導性プロモーターは当業者に公知である。
【0125】
一般に、遺伝子発現配列には、必要な場合、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などのそれぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写および5’非翻訳配列が含まれる。特に、このような5’非転写配列は、作動可能に連結された核酸の転写調節のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。遺伝子発現配列は必要に応じて、エンハンサー配列または所望の場合、上流の活性化因子配列を含む。本明細書に使用する場合、本発明の免疫サイトカインを発現する核酸配列および遺伝子発現配列は、それらが、遺伝子発現配列の影響または制御下で配列をコードする本発明の免疫サイトカインの発現もしくは転写および/または翻訳を認識するように共有結合する場合、「作動可能に連結される」前記のものである。
【0126】
5’遺伝子発現配列におけるプロモーターの誘導が本発明の免疫サイトカインの転写を生じる場合、および2つのDNA配列間の結合の性質が、(1)フレームシフト変異の導入を生じず、(2)本発明の免疫サイトカインの転写を導くプロモーター領域の能力を干渉せず、または(3)タンパク質に翻訳される対応するRNA転写の能力を干渉しない場合、2つのDNA配列は、作動可能に連結される前記のものである。したがって、遺伝子発現配列が核酸配列の転写に影響を与えることができ、得られる転写が所望のポリペプチドに翻訳される場合、遺伝子発現配列は本発明の免疫サイトカインをコードする核酸配列に作動可能に連結される。
【0127】
有益には、mRNA分子は多くの場合、組換え分子の産生収率を向上させることが実証されているので、前記核酸配列はイントロンを含む。イントロンの任意の配列が使用されてもよく、一例として、ZAGOら(Biotechnol.Appl.Biochem.、vol.52(Pt3)、p:191-8、2009)およびCAMPOS-DA-PAZら(Mol.Biotechnol.、vol.39(2)、p:155-8、2008)に開示されている性質のものが挙げられる。
【0128】
本発明の免疫サイトカインをコードする核酸は、インビボで単独で、またはベクターと結合して送達されてもよい。
【0129】
第3の態様において、本発明は上記の核酸を含むベクターに関する。
【0130】
その広範な意味において、「ベクター」は、本発明の免疫サイトカインをコードする核酸の細胞への転写を促進できる任意のビヒクルである。好ましくは、ベクターは、ベクターの非存在下で生じる分解の程度より低い分解である細胞に核酸を輸送する。一般に、本発明に有用なベクターとしては、限定されないが、プラスミド、コスミド、ファージミド、エピソーム、人工染色体、ウイルス、免疫サイトカイン核酸配列の挿入または組み込みにより操作されるウイルスまたは細菌源に由来する他のビヒクルが挙げられる。
【0131】
プラスミドベクターは、好ましい種類のベクターであり、当該技術分野において広範に記載されており、当業者に周知である。例えば、SANBROOKら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989を参照のこと。プラスミドの非限定的な例としては、pBR322、pUC18、pUC19、pRC/CMV、SV40、およびpBlueScriptが挙げられ、他のプラスミドは当業者に周知である。さらに、プラスミドはDNAの特定の断片を除去および付加するために制限酵素およびライゲーション反応を使用してカスタム設計されてもよい。
【0132】
好ましくは、核酸ベクターは細菌および哺乳動物細胞の両方において活性である選択可能なマーカーを含んでもよい。
【0133】
第4の態様において、本発明は核酸または上記のベクターで遺伝子操作された宿主細胞に関する。
【0134】
本明細書に使用する場合、「遺伝子操作された宿主細胞」という用語は、核酸または上記のベクターで形質導入、形質変換またはトランスフェクトされた宿主細胞に関する。
【0135】
適切な宿主細胞の代表的な例として、大腸菌(E.coli)などの細菌細胞、酵母などの真菌細胞、Sf9などの昆虫細胞、CHOまたはCOSなどの動物細胞、植物細胞などが挙げられる。適切な宿主の選択は本明細書の教示から当業者の範囲内であるとみなされる。
【0136】
好ましくは、遺伝子操作された宿主細胞は動物細胞であり、最も好ましくはCHO-S細胞(INVITROGEN、カタログ番号11619-012)である。
【0137】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、組換えタンパク質、抗体、ペプチドボディ、およびレセプターリガンドなどの生物製剤を製造するための生物薬剤産業において頻繁に使用されている。CHO細胞がしばしば使用される理由の1つは、それらの細胞が生物学的生産のための広範囲の安全な実績を有するからである。これは十分に特徴付けられた細胞株とみなされ、その結果、必要とされる安全試験は、他の細胞種類に必要とされるものより、一部の事項(例えばレトロウイルス安全性)においてそれ程厳格でなくてもよい。それにも関わらず、インターロイキン15の産生は特にこの細胞において非常に困難である。
【0138】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明の免疫サイトカインがこの細胞において十分に産生し、得られた免疫サイトカインがさらに非常に良好な純度および活性を有することを確立した。
【0139】
宿主細胞内への上記の核酸またはベクターの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、またはエレクトロポレーションなどの当業者に周知の方法により行われ得る。
【0140】
本発明はまた、本発明に係る免疫サイトカインを発現する遺伝子操作された宿主細胞を産生する方法であって、前記方法は、(i)上記の核酸またはベクターをインビトロまたはエキソビボで宿主細胞内に導入する工程、(ii)得られた遺伝子操作された組換え宿主細胞をインビトロまたはエキソビボで培養する工程、ならびに(iii)必要に応じて、前記免疫サイトカインを発現および/または分泌する細胞を選択する工程を含む、方法に関する。このような組換え宿主細胞は本発明の免疫サイトカインを産生するために使用されてもよい。
【0141】
本発明の免疫サイトカインを含む医薬組成物
本発明のさらなる目的は、最終的に薬学的に許容可能な担体と結合される、上記の免疫サイトカイン、それをコードする核酸、または前記核酸を含むベクターを含む医薬組成物に関する。
【0142】
「薬学的に許容可能な」という用語は、生理学的に耐性があり、典型的に、ヒトに投与される場合、異常亢進、目眩などのアレルギーまたは同様の望ましくない反応を生じない、分子実体および組成物を指す。好ましくは、本明細書に使用する場合、「薬学的に許容可能な」という用語は、連邦政府の監督官庁により承認されていること、または動物、より特にヒトに使用するために米国薬局方もしくは他の一般に認識されている薬局方に記載されているものを意味する。
【0143】
「担体」という用語は、化合物と共に投与される溶媒、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。このような医薬担体は、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物または合成起源のものを含む、水および油などの滅菌液であってもよい。
【0144】
医薬組成物は、「有効量」の本発明の免疫サイトカインを含み、その有効量は癌細胞の増殖を阻害するのに十分な量、好ましくは腫瘍増殖の退行を誘導するのに十分な量である。投与のために使用される用量は、関連する病理、または所望の治療期間の種々のパラメータに応じて、特に使用される投与様式に応じて適合されてもよい。当然、医薬組成物の形態、投与様式、投薬およびレジメンは当然に、被験体の治療される病態、病気の重症度、年齢、体重、および性別などに依存する。以下に提供される有効量の範囲は、本発明を限定することを意図するものではなく、好ましい用量範囲を表す。しかしながら、好ましい用量は、過度の実験を必要とせずに当業者に理解され、決定できるように、個々の被験体に合わせられ得る。
【0145】
本発明の免疫サイトカインの注目すべき効果を考慮して、当業者は被験体を治療するために非常に低い用量を使用するように計画できる。非限定的な例として、本発明の免疫サイトカインは、2.5mg/被験体のkgまたは1mg/被験体のkgまたはそれ以下の用量、好ましくは0.5mg/kg以下または0.25mg/kg以下の用量、最も好ましくは0.1mg/kg以下の用量で注射により投与されてもよい。
【0146】
一例として、本発明の医薬組成物は、局所的、経口、鼻腔内、眼球内、静脈内、筋肉内または皮下投与用などに製剤化されてもよい。好ましくは、医薬組成物は、注射されることを目的とする製剤のために薬学的に許容可能であるビヒクルを含有する。それらは特に等張、滅菌、生理食塩水溶液(モノナトリウム塩酸塩もしくはリン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムなどまたはそのような塩の混合物)または状況に応じて、滅菌水もしくは生理学的食塩水の添加時に、注射溶液の構成を可能にする、乾燥、特に凍結乾燥組成物中に存在してもよい。適切な医薬担体は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0147】
本発明の免疫サイトカイン、それをコードする核酸または核酸ベクターは、緩衝液または水中に溶解されてもよいか、あるいはエマルション、マイクロエマルション、ヒドロゲル(例えばPLGA-PEG-PLGAトリブロックコポリマーベースのヒドロゲル)中、ミクロスフェア中、ナノスフェア中、微粒子中、ナノ粒子(例えば乳酸グリコール酸共重合体)中、微粒子(例えばポリ乳酸(PLA);乳酸グリコール酸共重合体(PLGA);ポリグルタミン酸塩ミクロスフェア、ナノスフェア、微粒子またはナノ粒子)中、リポソーム中、または他のガレニック(galenic)製剤中に組み込まれてもよい。全ての場合、製剤は滅菌され、注射できるように許容可能な程度まで流動されなければならない。それは製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。
【0148】
遊離塩基または薬理学的に許容可能な塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合される水中で調製されてもよい。
【0149】
分散系もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、それらの混合物および油中で調製されてもよい。通常の貯蔵および使用条件下で、これらの調製物は微生物の増殖を防ぐために防腐剤を含有する。
【0150】
本発明に係る免疫サイトカインは中性または塩形態で組成物に製剤化されてもよい。薬学的に許容可能な塩には、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と共に形成される酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と共に形成される)が含まれる。遊離カルボキシル基と共に形成される塩もまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導されてもよい。
【0151】
担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であってもよい。本発明の免疫サイトカインはまた、そのバイオディスポニビリティ(biodisponibility)を増加させるように、例えばペグ化により修飾されてもよい。本発明の免疫サイトカインが核酸形態を有する場合、担体はまた、ウイルスなど(例えばMVA、rAAV、レンチウイルスなど)のベクターであってもよい。
【0152】
適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散系の場合の必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により維持されてもよい。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0153】
注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収遅延剤の組成物、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、ポリオール、半減期増強共有結合および非共有結合製剤の使用によりもたらされ得る。
【0154】
加水分解および変性を含む、ペプチド不安定性または分解の多くの原因が存在する。疎水性相互作用は分子のクランピング(すなわち凝集)を一緒に引き起こし得る。安定剤がこのような問題を減少または防止するために加えられてもよい。
【0155】
安定剤としては、シクロデキストリンおよびその誘導体が挙げられる(米国特許第5,730,969号を参照のこと)。スクロース、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、デキストリンおよびグリセリンなどの適切な防腐剤もまた、最終製剤を安定化するために加えられてもよい。イオン性および非イオン性界面活性剤、D-グルコース、D-ガラクトース、D-キシロース、D-ガラクツロン酸、トレハロース、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、およびそれらの混合物から選択される安定剤が製剤に加えられてもよい。アルカリ金属塩または塩化マグネシウムの添加はペプチドを安定化できる。ペプチドはまた、それを、デキストラン、コンドロイチン硫酸、デンプン、グリコーゲン、デキストリンおよびアルギン酸塩からなる群から選択されるサッカリドと接触させることにより安定化されてもよい。添加され得る他の糖としては、単糖、二糖、糖アルコール、およびそれらの混合物(例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、マンニトール、キシリトール)が挙げられる。ポリオールはペプチドを安定化でき、水混和性または水溶性である。適切なポリオールは、ポリヒドロキシアルコール、マンニトール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチルグリコール、ビニルピロリドン、グルコース、フルクトース、アラビノース、マンノース、マルトース、スクロース、およびそれらのポリマーを含む単糖および二糖であってもよい。血清アルブミン、アミノ酸、ヘパリン、脂肪酸およびリン脂質、界面活性剤、金属、ポリオール、還元剤、金属キレート剤、ポリビニルピロリドン、加水分解ゼラチン、および硫酸アンモニウムを含む、種々の賦形剤もまた、ペプチドを安定化できる。
【0156】
サイトカイン療法の有望性は、実際にこれらの新規サイトカインの同定から誘導されるものであるが、さらにより根本的には、その分野は、サイトカインと相補的免疫刺激能力とのいくつかの組み合わせの使用により達成され得る、相乗効果および/または新規生物効果が納得のいくように実証されている今までに膨らんだ量の前臨床データから非常に利点を受ける。RLIに基づいた免疫サイトカインとの潜在的な治療活性剤の組み合わせとしては、例えば、化学療法剤、血管新生阻害剤、または免疫調節剤が挙げられる。
【0157】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、化学療法剤、血管新生阻害剤、または免疫調節剤などのさらなる治療活性剤を含んでもよい。
【0158】
化学療法剤に関して、それらの治療効果は、免疫応答に対する間接的作用により、免疫原性細胞死を誘導すること、免疫抑制環境を平衡化すること、主要な大きな腫瘍を減量すること、次いで免疫攻撃を促進すること、または一時的なリンパ球減少後の恒常的なリンパ球増殖の誘導により、部分的に媒介され得ることが実証されている。それらの多くは当業者に周知であり、本発明の免疫サイトカインと組み合わされ得る化学療法剤の例として、フルダラビン、ゲムシタビン、カペシタビン、メトトレキサート、タキソール、タキソテール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシウレア、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンなどの白金錯体、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルビジン、エトポシド、テニポシド、カンパテシン(campathecin)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、L-アスパラギナーゼ、ドキソルビシン、エピムビシン(epimbicm)、5-フルオロウラシル、ドセタキセルおよびパクリタキセルなどのタキサン、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エストラムスチン、エトポシド、ナイトロジェンマスタード、BCNU、カルムスチンおよびロムスチンなどのニトロソウレア、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビンなどのビンカアルカロイド、イマチニブメシラート(imatimb mesylate)、ヘキサメチレンアミン(hexamethyhnelamine)、トポテカン、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、ATPase阻害剤、チロホスチン、プロテアーゼ阻害剤、阻害剤ハービマイシンA、ゲニステイン、エルブスタチンおよびラベンダスチンAを挙げることができる。
【0159】
血管新生阻害剤に関して、それらは、免疫系に対して標的外(off-target)の効果を有し、そして腫瘍免疫反応を促進できることが実証されている。本発明の免疫サイトカインと組み合わされ得る血管新生阻害剤の例としては、ソラフェニブ、スニチニブ、およびパゾパニブなどのそのチロシンキナーゼを介して血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を標的とする薬物、またはテムシロリムス(temsirolimus)およびエベロリムスなどのラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)を挙げることができる。
【0160】
本発明の免疫サイトカインと組み合わせることができる免疫調節剤に関して、サイトカイン(IL-2、IL-7、IL-15、IL-12、IL-18、IL-21、GM-CSF、G-CSF、IFNα、...)、ケモカイン/抗血管形成サイトカイン(IP10、Mig、SDF-1、RANTES、...)、TLRアゴニスト、および免疫調節抗体(抗CTLA4、抗PD1、抗TGFb、アゴニスト抗CD40、...)を挙げることができる。
【0161】
治療方法および使用
さらなる態様において、本発明は、被験体における癌を治療するための上記の医薬組成物、好ましくは上記の免疫サイトカインを含む医薬組成物に関する。
【0162】
本明細書に使用する場合、「被験体」という用語は、齧歯動物、ネコ科、イヌ科または霊長類などの哺乳動物、最も好ましくはヒトを示す。
【0163】
別の態様において、本発明は、
被験体における癌を治療するための同時、別々、または連続使用のための組み合わせた調製物として、
(i)上記の免疫サイトカイン、それをコードする核酸配列、またはそのような核酸配列を含むベクター、および
(ii)治療剤、好ましくは抗癌剤
を含有する製剤に関する。
【0164】
さらに別の態様において、本発明は、上記の医薬組成物を被験体に投与する工程を含む、前記被験体における癌を治療するための方法に関する。
【0165】
最後の態様において、本発明は、治療有効量の
(i)上記の免疫サイトカイン、それをコードする核酸配列、またはそのような核酸配列を含むベクター、および
(ii)治療剤、好ましくは抗癌剤
を、それを必要とする被験体に同時、別々、または連続して投与する工程を含む、癌を治療するための方法に関する。
【0166】
本発明の文脈において、本明細書に使用する場合、「治療する」または「治療」という用語は、このような用語が適用される疾患もしくは病態、またはこのような疾患もしくは病態の1種以上の症状の進行を反転、軽減、阻害、または予防することを意味する。本明細書に使用する場合、「癌を治療する」という用語は、癌細胞の増殖の阻害を意味する。好ましくは、このような治療はまた、腫瘍増殖の退行、すなわち測定可能な腫瘍のサイズの減少を導く。最も好ましくは、このような治療は腫瘍の完全な退行を導く。
【0167】
以下において、本発明をアミノ酸配列、核酸配列および実施例を参照してより詳細に記載する。しかしながら、本発明は実施例の詳細に限定されることを意図するわけではない。むしろ、本発明は、本明細書の実施例に明確に記載していないが、当業者が過度の試みを必要とせずに理解する詳細を含む任意の実施形態に関する。
【実施例
【0168】
1)インターロイキン15に基づいた免疫サイトカインの構築
抗CD20(リツキシマブ)および抗GD2-O-アセチル化免疫サイトカインの構築
抗CD20キメラIgG軽鎖および抗GD2-O-アセチル化キメラIgG軽鎖をコードする発現プラスミドは、親切にも、Dr WATIER(Universite Francois-Rabelais de Tours、フランス)およびDr BIRKLE(INSERM、Universite de Nantes、U892、フランス)によりそれぞれ提供された。各抗体のキメラIgG重鎖配列は、IL15(配列番号3、93位におけるアミノ酸はKである)に対して22アミノ酸(配列番号16)のリンカーを有するまたは有さない3’末端において融合するように設計した。これらのヌクレオチド配列を合成し、GENEARTによりpcDNA3.1プラスミド内でクローニングした。抗GD2-O-アセチル化抗体(8B6)の軽鎖および重鎖の完全配列は、特許出願EP2,076,542A1およびCERATOら(Hybridoma、vol.16(4)、p:307-16、1997)に開示されている。抗CD20抗体(2B8)の軽鎖および重鎖の完全な配列は、米国特許第5,736,137号(ANDERSONら、「C2B8」と呼ばれる抗体として)およびREFFら(Blood、vol.83(2)、p:435-45、1994)に開示されている。
【0169】
プラスミドDNA調製およびトランスフェクション試薬
40kDaの線形PEIはPOLYSCIENCEから得た。1mg/mLのストック溶液を、加熱しながら水中でPEIを溶解し、NaOHにより中和し、0.22μmのフィルタを通す濾過により滅菌することにより調製した。溶液ストックをアリコートし、-20℃に保存した。
【0170】
トランスフェクション用のプラスミドDNAを、製造業者のプロトコル(MACHEREY-NAGEL)に従ってプラスミド精製キットを使用し、0.22μmのフィルタを通す濾過により滅菌して精製した。
【0171】
免疫サイトカインの産生および精製
1-懸濁液中の一過性トランスフェクション:
通常のように維持したCHO-S(INVITROGEN)細胞を、PowerCHO2培地(LONZA)中で1×10細胞/mLの密度で播種し、5%COを含む振盪インキュベータ(100rpm)において37℃にて一晩培養した。トランスフェクションのために、次いで細胞をCD-CHO培地(INVITROGEN)中で2×10細胞/mLに希釈した。トランスフェクション複合体を、NaCl150mMを使用して10%の培養体積中で調製した。発現構築物DNA(2.5mg/Lの培養体積、1:2比の重鎖をコードするプラスミド対軽鎖をコードするプラスミドを使用した)を、NaCl(10mg/mLの最終培養体積)中に希釈したPEIと混合し、培地に加える前に室温にて10分間インキュベートした。細胞を、37℃にて5時間、振盪インキュベータ(130rpm)中で培養し、その後、PowerCHO2培地で培養体積を2倍にした。トランスフェクションの5日後に上清を回収した。
【0172】
2-接着細胞における安定なトランスフェクション
CHO-K1細胞(ATCCnCCL-61)を、l-グルタミン、10%FCSおよびペニシリン(100単位/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)を補足したDMEM中で増殖させ、製造業者により推奨されるようにリポフェクタミン2000試薬(INVITROGEN)を使用して各ベクターでトランスフェクトした。抗GD2O-アセチル化ICKおよび抗CD20ICKについてそれぞれ、ジェネティシンおよびハイグロマイシン(0.5mg/ml)またはブラスチシンおよびハイグロマイシン(5μg/mLおよび100μg/mL)を含有する培地での限界希釈によりクローンを選択した。各クローンの培養上清を、ELISAにより二官能性タンパク質産生についてアッセイした。ICKの産生に関して、選択されたクローンを25%のDMEM培地および75%のAIM培地(INVITROGEN)中で増幅させた。次いで細胞を100%のAIM中に維持し、上清を回収し、10日間、2日毎に入れ替えた。
【0173】
3-上清精製:
回収した上清を、4℃にて20分間、3000rpmにて遠心分離し、NaOHでpH7.8に平衡化し、0.22μmのフィルタを通して濾過した。馴化培地を、製造業者の指示書に従ってプロテインAカラム(GE)を使用してアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。精製したタンパク質を50kDaのAMICON単位(MILLIPORE)で濃縮した。この工程の間、溶出緩衝液をPBSと置き換えた。精製したタンパク質をELISAにより最後にアッセイし、280nmにて吸光度を測定した。純度を電気泳動により評価した。
【0174】
4-ELISAによる免疫グロブリン部分の検出
Maxisorp平底マイクロタイタープレート(NUNC)を、4℃にて1.5μg/mLにPBS中で希釈した100μLのヤギ抗ヒト抗体(UP892370、INTERCHIM)でコーティングした。次いでプレートを37℃にて1時間、200μLの遮断緩衝液(PBS中の1%BSA+0.1%TWEEN20)で遮断した。次いでプレートを洗浄緩衝液(PBS中の0.1%TWEEN20)で3回洗浄し、遮断緩衝液中で希釈した試料を加え、37℃で30分インキュベートした(100μL)。3回の洗浄後、1:10000に希釈したペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG1(109-036-003、JACKSON)を加え、37℃にて30分間インキュベートした。TMB基質(INTERCHIM)を使用してタンパク質レベルを決定し、プレートを450nmにて読み取った。精製したリツキシマブ(ROCHE)を使用してプレート上での標準曲線を生成した。
【0175】
5-ELISAによるサイトカイン部分の検出
Maxisorp平底マイクロタイタープレート(NUNC)を、4℃にて16時間、2μg/mLに炭酸塩緩衝液中で希釈した100μLの抗IL15B-E29(DIACLONE)でコーティングした。次いでプレートを37℃にて1時間、200μLの遮断緩衝液(PBS中の1%BSA)で遮断した。次いでプレートを洗浄緩衝液(PBS中の0.05%Tween20)で3回洗浄した。TBS+0.05%BSA中で希釈した試料を加え、37℃にて1時間30分インキュベートした(100μL)。3回の洗浄後、200ng/mLに希釈したビオチン化抗IL15抗体BAM247(R&D SYSTEM)を加え、37℃にて1時間30分間、インキュベートした。プレートを3回洗浄し、ペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジンを1:1000希釈して加えた。TMB基質(INTERCHIM)を使用してタンパク質レベルを決定し、プレートを450nmにて読み取った。IL-15(PEPROTECH)を使用してプレート上での標準曲線を生成した。
【0176】
その結果により、免疫サイトカインの得られた調製物が多くのタンパク質汚染物質(すなわち25%以上)を含むことが示された。これらのタンパク質汚染物質を減少させるために、2つの抗GD2-O-アセチル化/インターロイキン15免疫サイトカインを別のラウンドのプロテインAセファロース精製に供した。
【0177】
この2回目のラウンドのプロテインAセファロース精製後、ICKc8B6-l22-IL15およびc8B6-IL15の純度はそれぞれ70および90%であった。
【0178】
免疫サイトカインの増殖活性
得られた免疫サイトカインのインターロイキン-15増殖活性を試験した。ICKに対するKit225および32Dβ細胞の増殖反応を、[H]チミジン組み込みにより測定した。細胞を3日間培地中に維持し、2回洗浄し、Kit225および32Dβについてそれぞれ24時間または4時間、サイトカインを含まない培地中で飢餓させた。次いでそれらを、100μl中の10細胞/ウェルにてマルチウェルプレート中に播種し、増加させた濃度の試料を補足した培地中で48時間培養した。ヒトrIL-15およびRLIを校正物として使用した。0.5μCi/ウェルの[H]チミジンを用いて16時間、細胞をパルスし、ガラス繊維フィルタ上で収集し、細胞結合放射線物質を測定した。
【0179】
図1は、増加させた濃度のrIL-15(■)、c8B6-IL15(△)、およびc8B6-l22-IL15(○)と共に培養したKit225および32Dβ細胞による[H]チミジン組み込みを示す。
【0180】
図2は、増加させた濃度のrIL-15およびc2B8-l22-IL15(○)と共に培養したKit225および32Dβ細胞による[H]チミジン組み込みを示す。
【0181】
その結果により、IL-15の生物活性は免疫サイトカインに関して劇的に減少したことが示され、モノクローナル抗体とのIL-15のコンジュゲーションが活性の損失を誘導することを意味する。さらに、この損失は2つの部分の間のリンカーの非存在下で、より重要である。この活性の損失はβγ状態において、より顕著であることが示される。
【0182】
免疫サイトカインの結合活性
抗CD20および抗GD2O-アセチル化ICKの特異的結合を、それぞれ腫瘍細胞RajiおよびIMR32でフローサイトメトリーにより評価した。エフェクター細胞においてIL-15受容体に結合するICKの能力をKit225で試験した。標的細胞でコーティングしたICKは、PEコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG mAb(PN IM0550、BECKMAN COULTER)、またはPE-ストレプトアビジン(SIGMA-ALDRICH)に結合したビオチン化マウス抗IL15抗体(BAM247、R&D SYSTEM)と共に表した。標的細胞(1×10)を、4℃にて1時間、各ICKと共にインキュベートし、洗浄し、次いで4℃にて1時間、PEコンジュゲートと共にインキュベートした。洗浄した細胞を最後にFACSCALIBUR(BECTON DICKINSON)で分析した。
【0183】
図3は、CD20を発現するRaji細胞およびGD2O-アセチル化を発現するIMR32細胞におけるICK抗CD20(c2B8-l22-IL15)および抗GD2O-アセチル化(c8B6-IL15およびc8B6-l22-IL15)のフローサイトメトリーの評価を示す。最初に細胞をICKとインキュベートし、次いで抗CD-20についてPEコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG mAbと、または抗CD20および抗GD2についてビオチン化抗IL15+PEコンジュゲートストレプトアビジンとそれぞれインキュベートした。最後に、試料をFACSCALIBURで分析した。ICKは抗CD20Mabリツキシマブ(MABTHERA、ROCHE)とRaji細胞において比較した。
【0184】
図4は、IL15Rを発現するKit225細胞におけるICK抗CD20(c2B8-l22-IL15)および抗GD2Oアセチル化(c8B6-IL15およびc8B6-l22-IL15)のフローサイトメトリーの評価を示す。最初に細胞をICKとインキュベートし、次いでPEコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG mAbとインキュベートした。最後に試料をFACSCALIBURで分析した。ICKを抗CD20 Mabリツキシマブ(MABTHERA、ROCHE)と比較した。
【0185】
その結果は、異なる免疫サイトカインがIL-15受容体およびまた、それらのそれぞれの腫瘍抗原標的に結合することを示す。
【0186】
したがって、これらの免疫サイトカインにおけるインターロイキン15活性の損失は、その特異的受容体におけるインターロイキン15の結合の損失の結果ではない。それにも関わらず、この存在する結合は、正常な細胞増殖を誘導することを可能にしないように見える。
【0187】
RLIに基づいた免疫サイトカインの構築
抗CD20および抗GD2-O-アセチル化RLI免疫サイトカインの構築
抗CD20および抗GD2-O-アセチル化免疫サイトカインを、IL15ホモサピエンス(Homo sapiens)配列をRLI2配列(配列番号17)に置き換えたことを除いて以前のように構築した。
【0188】
免疫サイトカインの産生および精製
免疫サイトカインの産生および精製は、1ラウンドのプロテインAセファロース精製の後にのみ、これらの免疫サイトカインを、良好な収率および良好な純度(すなわち90%超)で得たことを除いて以前のように実施した。
【0189】
免疫サイトカインの結合活性
抗CD20および抗GD2O-アセチル化ICK RLIの特異的結合を、腫瘍細胞Raji、WM266.4およびIMR32においてフローサイトメトリーにより評価した。エフェクター細胞においてIL-15受容体に結合するICK RLIの能力をKit225で試験した。標的細胞でコーティングしたICK RLIは、PEコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG mAb(PNIM0550 BECKMAN COULTER)、またはPE-ストレプトアビジン(SIGMA-ALDRICH)に結合したビオチン化マウス抗IL-15抗体(BAM247、R&D SYSTEM)を有する細胞を表した。標的細胞(1×10)を、4℃にて1時間、各ICKとインキュベートし、洗浄し、次いで4℃にて1時間、PEコンジュゲートとインキュベートした。洗浄した細胞を最後にFACSCALIBUR(BECTON DICKINSON)で分析した。
【0190】
図5は、CD20を発現するRaji細胞ならびにGD2O-アセチル化を発現するWM266.4およびIMR32細胞におけるICK c2B8-RLI、c8B6-RLIおよびc8B6-l22-RLIのフローサイトメトリーの評価を示す。細胞を最初にICK RLIとインキュベートし、次いで抗CD20についてPEコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG mAbと、または抗CD20および抗GD2O-アセチル化についてビオチン化抗IL15+PEコンジュゲートストレプトアビジンとそれぞれインキュベートした。最後にFACSCALIBURで試料を分析した。ICK RLIを、抗CD20Mabリツキシマブ(MABTHERA、ROCHE)とRaji細胞において比較した。
【0191】
図6は、IL15Rαを発現するKit225細胞におけるICK RLI抗CD20(c2B8-RLI)および抗GD2O-アセチル化(c8B6-RLIおよびc8B6-l22-RLI)のフローサイトメトリーの評価を示す。細胞を最初にICK RLIとインキュベートし、次いでPEコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG mAbとインキュベートした。最後に、試料をFACSCALIBURで分析した。
【0192】
その結果は、本発明の免疫サイトカインがIL-15受容体、およびまた、それらのそれぞれの腫瘍抗原標的に結合することを示す。
【0193】
免疫サイトカインの増殖活性
新たに得られた免疫サイトカインのインターロイキン-15増殖活性を試験した。
【0194】
図7は、増加させた濃度のRLI(■)、rIL-15(◆)、c8B6-RLI(△)、およびc8B6-l22-RLI(○)と培養したKit225および32Dβ細胞による[H]チミジン組み込みを示す。
【0195】
図8は、増加させた濃度のRLI(■)、rIL-15(◆)およびc2B8-RLI(△)と培養した32Dβ細胞による[H]チミジン組み込みを示す。
【0196】
その結果は、IL-15の生物活性が、IL15免疫サイトカインにも関わらず、RLI由来の免疫サイトカインに関して保存されることを示し、このことは、モノクローナル抗体とのRLIのコンジュゲーションが驚くべきことにこのIL-15活性の保存を可能にすることを意味する。さらに、この興味のある効果はRLIとモノクローナル抗体との間の任意の第2のリンカーを必要としない。驚くべきことに、RLI由来の免疫サイトカインが、βγ状態の遊離IL-15と比較して生物活性の顕著な増加(約10~100倍の増加)を示すことは留意されるべきである。
【0197】
抗GD2-O-アセチル化免疫サイトカインの抗腫瘍能力
マウスNXS2神経芽腫細胞株を、標準的な組織培養条件(37℃、5%CO2)下でDMEM(10%FCS)中で増殖させた。GD2-O-Acを発現するNXS2 NB細胞株を発生させ、LODEら(J.Natl.Cancer Inst.、vol.89(21)、p:1586-94、1997)により特徴付けた。
【0198】
8週齢のA/JOlaHsdマウスはHARLAN研究所から購入した。マウスを、フランスの実験動物管理公認協会(French Association for Accreditation of Animal Care Laboratories)により承認されている、Inserm U892の動物施設に収容し、Inserm Instituteおよびフランス農務省(French Department of Agriculture)の規制および基準に従って維持する。
【0199】
実験用の肝転移は200μlのDMEM(pH7.4)中の1×10個のNXS2NB腫瘍細胞の尾静脈注射により誘導した。腫瘍細胞接種の1日後に処置を開始し、1、4、7および11日目に80pmolのc8B6-RLI2またはc8B6の4回のi.p.注射を実施した。移植の25日後にマウスを屠殺し、負荷された肝臓腫瘍を湿潤肝臓の重量により評価した。
【0200】
図9はNXS2肝転移に対するc8B6-RLI2の効果を示す。c8B6(12μg)またはc8B6-RLI(16μg)を、1、4、7および11日目にi.p.投与した。左:グラフは各群(n=5)の平均;バーはSEMを表す。右:肝臓の写真を表し、矢印はいくつかの転移を示す。
【0201】
その結果は、ICKを与えたマウスが肝転移を有さないことを示す。したがって、およびc8B6と対照的に、ICKはNXS2肝転移の発生を根絶することができ、このことは、モノクローナル抗体に対するRLIコンジュゲーションがその抗腫瘍能力を劇的に増加させることを意味する。
【0202】
Rajiモデルにおける抗CD20-RLI2の抗腫瘍能力
ヒトRajiB細胞を、10%ウシ胎仔血清、2mMのl-グルタミンを補足したRPMII640培地中で培養した。
【0203】
8週齢のSCID CB-17マウスは、CHARLES RIVER Breeding研究所から購入した。マウスは、マイクロアイソレータ装置のオートクレーブ処理したケージを使用して別の施設における特定の病原体を含まない条件下に維持し、放射線照射した固形食物および滅菌水を与えた。
【0204】
接種のために、Raji細胞をそれらの対数期で収集し、洗浄し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の2.5×10個の細胞/0.1mlにて再懸濁し、その後、マウスに静脈内注射し、続いて、移植後3週間の間、(5日目に開始して)1週間に3回、免疫サイトカインによりip処置した。半分の用量を与えた「免疫サイトカイン」および「リツキシマブ+RLI」の群を除いて、マウスを等モル量で処置した。後肢まひの存在についてマウスを毎日モニターし、その場合、マウスを屠殺し、死として記録した。
【0205】
図10は、Raji細胞をiv注射し、PBS(■);RLI(▲;2μg);リツキシマブ(◆;12μg);リツキシマブ+RLI(●;6μg+1μg)、抗CD20-RLI(▼;8μg)を用いてJ5-J7-J9;J12-J14-J16;J19-J21-J23で処置したCB17SCIDマウス(n=5)のKaplan-Meier生存分析を示す。
【0206】
その結果は、RLIまたはリツキシマブで処置したRajiマウスで得られた生存率が類似しており、PBS対照と比べて、20~27日、および28日のそれぞれに腫瘍を保有しているマウスの生存率が50%に拡大したことを示す。
【0207】
その結果はさらに、「リツキシマブ+RLI」群について腫瘍を保有しているマウスの生存率の半分の増加を示し、この増加はRLI群において得られたものと顕著に異なる(P<0.01またはそれ未満)。
【0208】
最後に、および驚くべきことに、その結果は、抗CD20免疫サイトカインによる処置により、実験の終わり(50日)までマウスが死なず、腫瘍発生を全体的に無効にすることを示す。
【0209】
3)さらなる免疫サイトカインの構築
抗HER2Neu(完全IgGおよびScFv)RLIおよびIL15免疫サイトカインの構築
抗HER2マウス4D5IgG軽鎖、抗HER2マウスIgG4D5重鎖および抗HER2scFvをコードする配列は親切にも、Dr DONDA(Biochemistry Institute Lausanne、スイス)により提供された。抗HER2Neu IL15-およびRLI-免疫サイトカインは、抗HER2Neu抗体の抗HER2Neu軽鎖(配列番号18)および重鎖(配列番号19)に基づいて以前のように構築した。これらの構築物に関して、キメラIgG重鎖配列をコードする配列を有するフレーム内のベータ2ミクログロブリンのリーダー配列をコードする配列は、IL15(配列番号20および21のそれぞれ)およびRLI(配列番号22および23のそれぞれ)に対して22アミノ酸(配列番号16)のリンカーを有するまたは有さない3’末端において融合するように設計した。
【0210】
IL15(配列番号24および25のそれぞれ)およびRLI(配列番号26および27のそれぞれ)に対して22アミノ酸のリンカーを有するまたは有さない3’末端において融合された抗HER2Neu ScFv断片をコードする配列を有するフレーム内にベータ2ミクログロブリンのリーダー配列をコードする配列に対応する構築物をさらに設計し、生成した。これらのヌクレオチド配列をGENEARTにより合成し、pCR3(INVITROGEN)プラスミド内にサブクローニングした。
【0211】
これらの化合物の生物および結合活性を試験する。
【0212】
インターロイキン15に基づいた免疫サイトカインの構築
プラスミドDNA調製およびトランスフェクション試薬
40kDaの線形PEIはPOLYSCIENCEから得た。1mg/mLのストック溶液を、加熱しながら水中にPEIを溶解し、NaOHにより中和し、0.22μmフィルタを通す濾過により滅菌することにより調製した。溶液ストックをアリコートし、-20℃に保存した。
【0213】
トランスフェクションのためのプラスミドDNAを、製造業者のプロトコル(MACHEREY-NAGEL)に従ってプラスミド精製キットを使用し、0.22μmフィルタを通す濾過により滅菌して精製した。
【0214】
免疫サイトカインの産生および精製
1-一過的トランスフェクション:
親切にもDr.SCHNEIDER(Biochemistry Institute Lausanne、スイス)により提供されたHEK293T細胞を、37℃および5%COにてT175cm2フラスコ中のDMEM-Glutamax10%SVF中に播種した。トランスフェクションの日に、DNAプラスミドおよびPEIの複合体を滅菌NaCl150mM中に調製した。NaCl(1.25mg/Lの培養体積)中で希釈したプラスミドDNAを、NaCl(12.5mg/Lの培養体積)中で希釈したPEIと混合し、室温にて10分間インキュベートし、その後、細胞培養物に加えた。抗HER2IgG-RLIまたは-IL15免疫サイトカインについて、1:2の比のDNAプラスミド(重鎖:軽鎖)を使用した。次いで細胞を37℃にて4時間培養した。この時間の後、培地を除去し、SVFを含まない新たなDMENを加えた。トランスフェクションの5日後に上清を回収した。
【0215】
2-上清精製:
回収した上清を、最初に1000rpmにて5分間、次に4℃にて15分間3000rpmで遠心分離し、製造業者により推奨されているように20mMのリン酸ナトリウムpH8~9に調整し、0.22μmフィルタを通して濾過した。馴化培地を、製造業者の指示書に従ってプロテインAカラム(GE)を使用してアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。精製したタンパク質を、IgG-ICKについて50kDaまたはscFv-ICKについて10kDaのAMICONユニット(MILLIPORE)で濃縮した。この工程の間、溶出緩衝液をPBSに置き換えた。タンパク質を最後にELISAによりアッセイし、吸光度を280nmで測定した。純度を電気泳動により評価した。
【0216】
免疫サイトカインの結合活性
抗HER2IgG-ICKまたはscFv-ICKの特異的結合を、抗IL15抗体を使用してHER2陽性細胞SK-BR-3においてフローサイトメトリーにより評価した。エフェクター細胞においてIL-15受容体に結合するICKの能力をKit225で試験した。標的細胞でコーティングしたICKは、FITCコンジュゲートヤギ抗マウスIgG mAb(SIGMA-ANDRICH)またはFITCコンジュゲートマウス抗IL15抗体(R&D SYSTEM)と共に表した。標的細胞(1×10)を4℃にて1時間、各ICKとインキュベートし、洗浄し、次いで4℃にて1時間、FITCコンジュゲートとインキュベートした。洗浄した細胞を最後にFACSCALIBUR(BECTON DICKINSON)で分析した。
【0217】
図3は、HER2を発現するSKBR3細胞において抗HER2(トラスツズマブ-IL15およびトラスツズマブ-l22-IL15)のフローサイトメトリーの評価を示す。
【0218】
図5は、HER2を発現するSKBR3細胞におけるICKトラスツズマブ-RLIのフローサイトメトリーの評価を示す。抗HER2 ICKを、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標)、Genentech)とSKBR3細胞において比較した。
【0219】
その結果は関連TAAを発現する腫瘍細胞株をコーティングするICKトラスツズマブ-RLIの能力を示した。
【0220】
免疫サイトカインの増殖活性
IL-15およびトラスツズマブまたは抗HER2 scFv断片の融合物のインターロイキン-15増殖活性を、以前に記載された方法に従って[H]チミジン組み込みを測定することによってKit225および32Dβ細胞において試験した。
【0221】
図11は、増加させた濃度のトラスツズマブ-l22-IL-15(○)、トラスツズマブ-IL-15(△)、およびrIL-15(■)と培養したKit225および32Dβ細胞による[H]チミジン組み込みを示す。
【0222】
図12は、増加させた濃度のトラスツズマブ-RLI(△)、RLI(■)、およびrIL-15(◆)と培養したKit225および32Dβ細胞による[H]チミジン組み込みを示す。
【0223】
その結果は、IL-15の生物活性が、免疫サイトカインに関してαβγ細胞において劇的に減少したことを示し、このことは、モノクローナル抗体とのIL-15のコンジュゲーションが活性の損失を誘導することを意味する。さらに、この損失は、2つの部分の間のリンカーの非存在下において、より重要である。βγ細胞において、コンジュゲーションはリンカーを有するまたは有さないIL-15の生物活性を完全に無効にする。
【0224】
IL15免疫サイトカインに関わらず、RLI由来の免疫サイトカインに関して、その結果はIL-15の生物活性が保存されることを示し、モノクローナル抗体とのRLIのコンジュゲーションが驚くべきことにこのIL-15活性の保存を可能にすることを意味する。さらに、この興味のある効果はRLIとモノクローナル抗体との間の任意の第2のリンカーを必要としない。
【0225】
さらに驚くべきことに、その結果は、RLI由来のトラスツズマブ免疫サイトカインが、βγ状態における遊離IL-15と比較して生物活性の顕著な増加(約10~100倍の増加)を提示することを示す。
【0226】
その結果はさらに、IL15免疫サイトカインに関わらず、RLI由来のscFv免疫サイトカインに関して、IL-15の生物活性もまた、保存されることを示し、このことは、scFv断片とのRLIのコンジュゲーションが驚くべきことにこのIL-15活性の保存を可能にすることを意味する(データは示さず)。再び、この興味のある効果はRLIとscFv断片との間の任意の第2のリンカーを必要としない(データは示さず)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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