(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】治療用ツールとしての精密なグリココンジュゲート
(51)【国際特許分類】
A61K 47/64 20170101AFI20230616BHJP
A61K 39/385 20060101ALI20230616BHJP
A61K 39/08 20060101ALI20230616BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20230616BHJP
A61K 39/09 20060101ALI20230616BHJP
A61K 39/095 20060101ALI20230616BHJP
A61K 39/102 20060101ALI20230616BHJP
A61K 39/05 20060101ALI20230616BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20230616BHJP
A61K 38/38 20060101ALI20230616BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230616BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230616BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230616BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230616BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
A61K47/64
A61K39/385 ZNA
A61K39/08
A61K39/12
A61K39/09
A61K39/095
A61K39/102
A61K39/05
A61K38/19
A61K38/38
A61P37/04
A61K39/39
A61P35/00
A61K39/00 H
A61P31/00
(21)【出願番号】P 2021500322
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 CA2019050353
(87)【国際公開番号】W WO2019178699
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-18
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520363915
【氏名又は名称】コラネックス・キャピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ツェ・ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,ルネ
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-524839(JP,A)
【文献】特表2017-531662(JP,A)
【文献】特表2001-508774(JP,A)
【文献】Expert Opinion on Drug Discovery,2011年,Vol. 6, No. 10,pp. 1045-1066
【文献】Chem. Eur. J.,2009年,Vol. 15,pp. 11444-11449
【文献】Chem. Soc. Rev.,2012年,Vol. 41,pp. 573-586
【文献】Trends in Glycoscience and Glycotechnology,2016年,Vol. 28, No. 164,pp. J99-J106
【文献】高分子論文集,2016年,Vol. 73, No. 5,pp. 389-400
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
A61K 39/00-39/44
A61K 38/00-38/58
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)末端アルケ
ンに共有結合で連結された水溶性炭水化物抗原を提供する工程
、ここで、該末端アルケンは、チオール-エン反応を介してチオール基に直接コンジュゲート可能であり、該炭水化物抗原
は未保護で水溶性である;
(b)1個またはそれより多くの遊離チオール基を有する担体タンパク質を提供する工程;および
(c)光触媒性チオール-エン反応を実行して、1個またはそれより多くの遊離チオール基において、該炭水化物抗原を該担体タンパク質に直接コンジュゲートすることによって、グリココンジュゲート免疫原を生産する工程;
を含む、グリココンジュゲート免疫原を生産する方法であって、
ここで、光触媒性チオール-エン反応は、以下の(1)~(3):
(1)6~8のpH;
(2)担体タンパク質の変性を回避す
る反応条件下、ならびに/または、担体タンパク質の活性、抗原性および/あるいは構造を保持す
る反応条件下;および
(3)担体タンパク質の変性を回避するのに十分に低い濃度での有機溶媒の存在下、または、有機溶媒の非存在下;
にて実行され、
炭水化物抗原は、B細胞エピトープを含み、対象において体液性免疫応答を誘導するものであり、該担体タンパク質は、対象に投与される場合、免疫原性であり、該炭水化物抗原の該担体タンパク質へのコンジュゲーションは、コンジュゲートしていない炭水化物抗原の投与と比較した場合、該対象に投与されるときの該炭水化物抗原の免疫原性を増加させる、上記方法。
【請求項2】
光触媒性チオール-エン反応が6.5~7.5のpHで実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光触媒性チオール-エン反応が、水溶性触媒の存在下で実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
水溶性触媒が、水溶性のフリーラジカルを生成するアゾ化合物;2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(Vazo 44またはVA-044);2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(AAPH);光開始剤活性を有する金属もしくは金属イオン;過酸化物;tert-ブチルヒドロペルオキシド;過酸化ベンゾイル;過硫酸アンモニウム;もしくは光開始剤活性を有するそれらのあらゆる誘導体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
光触媒性チオール-エン反応が、水に不溶性の触媒の存在下で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
水不溶性触媒が、水不溶性のフリーラジカルを生成するアゾ化合物、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)(ACVA)、1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)(ACHN)、ジアゼンジカルボン酸ビス(N,N-ジメチルアミド)(TMAD);アゾジカルボン酸ジピペリジド(ADD)、もしくは光開始剤活性を有するそれらのあらゆる誘導体である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記光触媒性チオール-エン反応が、紫外光下での放射線照射を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記光触媒性チオール-エン反応が、前記担体タンパク質の遊離チオール基1つ当たり1~200モル当量の
前記炭水化物抗原を反応させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記炭水化物抗原が、前記担体タンパク質へのコンジュゲーションの後、前記対象の内因性酵素によって前記担体タンパク質から切断可能ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記炭水化物抗原が、前記末端アルケンに共有結合で連結されているか、および/または前記炭水化物抗原が、O-グリコシド結合、S-グリコシド結合、N-グリコシド結合、もしくはC-グリコシド結合、または、アリルアミンと還元糖との間での還元的アミノ化により得られた結合を介して、前記担体タンパク質にコンジュゲートされている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記炭水化物抗原が、腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)、ウイルス多糖抗原または細菌莢膜多糖体(CPS)であるか、腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)、ウイルス多糖抗原または細菌莢膜多糖体(CPS)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記TACAが、Tn、S-Tn、トムゼン-フリーデンライヒ(TF)、(2,3)-S-TF、(2,6)-S-TF、グロボH、GD2、GD3、GM2、GM3、N-グリコリル-GM3、Lea、sLea、Lex、sLex、またはそれらのあらゆる組合せであるか、それ由来である
、および/または、
CPSが、肺炎球菌および/または連鎖球菌多糖体の血清型、髄膜炎菌CPSまたはインフルエンザCPSであるか、それ由来であ
る、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記光触媒性チオール-エン反応によって、1つより多くのタイプの炭水化物抗原を、前記担体タンパク質にコンジュゲートさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
(a)における前記炭水化物抗原が、リンカーを介して、前記末端アルケンに連結されている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
工程(b)で提供される担体タンパク質が、
(1) 1個またはそれより多くの遊離チオール基を有する1個またはそれより多くのシステイン残基を含む担体タンパク質、
(2) 担体タンパク質の溶媒接近可能な位置に、1個またはそれより多くのさらなるシステイン残基が付加されるように操作されている担体タンパク質、
(3) チオール化剤で処理された担体タンパク質、
(4) 還元剤で処理された担体タンパク質
、または、
(5) 上記(1)~(4)のあらゆる組み合わせ、
である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記担体タンパク質が、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、交差反応性物質197(CRM197)、髄膜炎菌外膜タンパク質複合体(OMPC)、インフルエンザ菌のプロテインD(HiD)、サイトカイン、免疫原性ペプチド、破傷風毒素831-844(配列番号1または2)、アルブミン、またはそれらの免疫原性フラグメントであるか、それ由来であ
る、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
グリココンジュゲートワクチンまたは適応免疫応答を引き起こす組成物を生産するための方法であって、請求項1に記載の方法によって調製されたグリココンジュゲート免疫原を、医薬的に許容される賦形剤、および/またはアジュバントを用いて製剤化することを含む、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の記載は、治療用ツールであるグリココンジュゲートに関する。より具体的には、本発明の記載は、免疫原性および抗原性の担体であるペプチドおよびタンパク質の遊離チオール基に非ランダムにカップリングされた炭水化物抗原、および例えば、光触媒性チオール-エン「クリックケミストリー」反応を使用して、それを生産する改善された方法に関する。抗原、免疫原、ワクチンとしての、および診断における適用も記載される。
【0002】
本発明の記載は、多数の文書を参照し、それらの内容は、参照によりそれら全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
免疫療法の最終的な目的は、感染または腫瘍の進行中に生じる方法と類似した方法で免疫系の自然応答と適応応答を引き起こすことである。自然応答と適応免疫応答との間の主要な境界は、抗原提示細胞(APC)、特定には、樹状細胞(DC)である。APCは、Toll様受容体(TLR)などのパターン認識受容体(PRR)を介して微生物を認識することができる。微生物表面の決定基または異常な天然にはない抗原を認識するとき、APCは、成熟および活性化を経て、細胞内区画から細胞表面へのMHC分子の再分配、サイトカインおよびケモカインの分泌を引き起こす。微生物または腫瘍およびそれらに関連する抗原性マーカーは、エンドサイトーシス経路を介してAPCにより取り込まれる可能性があり、通常そこで分解される。タンパク質のプロセシングによって放出されたペプチドおよび共有結合で連結された抗原は次いで、MHCクラスII分子上に提示され、CD4+T細胞によって認識され、それに続いて、APCから共刺激シグナルを受け取ると、異なるサブセット、例えばTh1またはTh2細胞への機能的な成熟を経る。Th1細胞は、IFN-γおよびTNF-αの分泌と共に主として炎症促進性の応答を引き起こし、それに対してTh2細胞は、典型的なサイトカインを分泌する。Th1細胞は主として細胞媒介性の応答に関連するが、Th細胞の両方のタイプは、B細胞による抗体の生産を支持し、順に抗体のアイソタイプおよび機能に影響を与える。例えば、IL-12およびTNF-αは、Th1細胞の分化および1型IgGサブクラスの生産に関連し、それに対してIL-6および他のTh2サイトカインは、2型IgGサブクラス(IgG1)生産に寄与する。したがって、ワクチンで誘導された免疫性を適切な応答に適合させて、目的の病原体または腫瘍抗原を処理できることが望ましい。
【0004】
炭水化物は、タンパク質およびペプチドとは対照的に、Th細胞の参加を引き起こす能力を適切に備えていないT細胞と無関係の抗原であるため、免疫細胞の増殖、抗体クラススイッチ、および親和性/特異性成熟を誘導することができない。炭水化物ベースのワクチンが初期に遭遇する主要な初期の進歩は、タンパク質担体に適切にコンジュゲートされる場合、T細胞依存性エピトープとしての機能を果たし、細菌莢膜多糖体が、オプソニン作用性の抗体を生産する必須の免疫化学能力を獲得することが可能になるという発見によって支持されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、炭水化物抗原を担体タンパク質にコンジュゲートするための戦略は、リシン残基のε-アミノ基上におけるアルデヒド由来の糖の還元的アミノ化、または単なるアミドカップリング反応のいずれかに頼っている。いずれの場合においても、一般的に、部分的およびランダムな炭水化物抗原コンジュゲーションが起こる。さらに、炭水化物コンジュゲーションのために全てのアミドパートナー(グルタミン酸/アスパラギン酸からのリシンまたは酸からのアミン)が使用される場合、あまりにも多くの炭水化物抗原が、担体タンパク質に結合するようになるため、結果として、免疫原性の本来の減損/消滅を伴う必須のT細胞ペプチドエピトープのマスキングを引き起こす可能性がある。したがって、現状におけるグリココンジュゲートワクチンを調製するための戦略は不十分であり、調製物は、その炭水化物分布および再現性に関して必要な均一性が欠如しているため(すなわち、タンパク質上への糖の結合点がランダムに分布しており、バッチ間で様々な密度で存在する)、重大な規制および/または商業上の障害に直面している。したがって、より大きい炭水化物抗原均一性、より正確に特徴付け可能な構造、およびバッチ間の再現性を有するグリココンジュゲートワクチンが、極めて望ましいと予想される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記載は、正確な(非ランダムな)位置で免疫原性担体タンパク質に直接カップリングされた炭水化物抗原を含むグリココンジュゲート免疫原に関する。より特定には、担体タンパク質は、1個またはそれより多くの遊離チオール基(例えば、システイン残基の側鎖に対応する)を含み、炭水化物抗原は、これらの遊離チオール基の1つまたはそれより多くにおいて、担体タンパク質にコンジュゲートされている。本発明の記載はまた、例えば「クリックケミストリー」アプローチ(例えば、光触媒性チオール-エン反応)を使用して、炭水化物抗原を担体タンパク質の遊離チオール基に直接コンジュゲートすることを含む、グリココンジュゲート免疫原/ワクチンを合成するための改善された方法にも関する。本明細書に記載される改善されたコンジュゲーション方法は、コンジュゲーションの特異性に影響を及ぼさずに、担体タンパク質の活性、抗原性、および/または構造を破壊すること(例えば、天然のジスルフィド架橋の切断および/または変性)を回避するために、十分に穏やかな条件下(例えば、水溶性試薬のみの使用、有機溶媒の非存在、または担体タンパク質の変性を回避するのに十分に低い濃度(例えば、<5%)および/または相対的に中性のpHでの有機溶媒の使用)で実行することができる。さらに、本明細書に記載される光触媒性チオール-エン反応は、紫外光下(例えば、355nmまたは365nm)、触媒の存在下で実行してもよいし、または短波紫外光下(例えば、254nm)、プロセスをさらに簡易化するために触媒の非存在下で実行してもよい。
【0007】
一部の形態において、本発明の記載は、グリココンジュゲート免疫原を生産するための方法であって、(a)末端アルケン(アルケニル炭水化物抗原)に共有結合で連結された炭水化物抗原を提供する工程であって、末端アルケンは、チオール-エン反応を介してチオール基に直接コンジュゲート可能である、工程;(b)1個またはそれより多くの遊離チオール基を有する担体タンパク質を提供する工程;および(c)光触媒性チオール-エン反応を実行して、1個またはそれより多くの遊離チオール基において、炭水化物抗原を担体タンパク質に直接コンジュゲートすることによって、グリココンジュゲート免疫原を生産する工程を含み、担体タンパク質は、対象に投与される場合、免疫原性であり、炭水化物抗原の担体タンパク質へのコンジュゲーションは、コンジュゲートしていない炭水化物抗原の投与と比較した場合、対象に投与されるときの炭水化物抗原の免疫原性を増加させる、上記方法に関する。
【0008】
一部の実施態様において、光触媒性チオール-エン反応は、担体タンパク質の変性を回避する反応条件下で実行される。実施態様において、アルケニル炭水化物抗原は、水溶性であり、光触媒性チオール-エン反応は、担体タンパク質の活性、抗原性、および/または構造を保持する反応条件下で(例えば、いずれの有機溶媒の非存在下で、または担体タンパク質の変性を回避するのに十分に低い濃度(例えば、<5%)での有機溶媒の存在下で)実行される。光触媒性チオール-エン反応は、触媒(例えば、水溶性または水不溶性触媒)の存在下で、短波(例えば、254nm)および/または長波(例えば、355または365nm)紫外光での放射線照射下において実行してもよい。
【0009】
一部の実施態様において、光触媒性チオール-エン反応は、担体タンパク質の遊離チオール基1つ当たり1~200モル当量のアルケニル炭水化物抗原を反応させることを含み;および/または光触媒性チオール-エン反応は、約3~10、3.5~9.5、4~9、4.5~8.5、5~8、5.5~8、6~8、または6.5~7.5のpHで実行される。
【0010】
一部の実施態様において、炭水化物抗原は、担体タンパク質へのコンジュゲーションの後、対象の内因性酵素によって担体タンパク質から切断可能ではない。一部の実施態様において、アルケニル炭水化物抗原は、末端アルケンに共有結合で連結されているか、および/または炭水化物抗原が、グリコシド結合を介して、例えば、O-グリコシド結合、S-グリコシド結合、N-グリコシド結合、もしくはC-グリコシド結合、または還元的アミノ化により得られた結合を介して、例えばアリルアミンと還元糖(細菌CPSを含む)との間で、担体タンパク質にコンジュゲートされている。一部の実施態様において、炭水化物抗原は、B細胞エピトープを含むか、および/または対象において体液性免疫応答を誘導する。一部の実施態様において、炭水化物抗原は、T細胞エピトープを含むか、および/または対象において細胞媒介性免疫応答を誘導する。一部の実施態様において、炭水化物抗原は、B細胞エピトープおよびT細胞エピトープの両方を含む、および/または対象において体液性および細胞媒介性免疫応答の両方を誘導する。一部の実施態様において、炭水化物抗原は、腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)、例えばTn、S-Tn、トムゼン-フリーデンライヒ(Thomsen-Friedenreich:TF)、(2,3)-S-TF、(2,6)-S-TF、グロボH(Globo H)、GD2、GD3、GM2、GM3、N-グリコリル-GM3、Lea、sLea、Lex、sLex、またはそれらのあらゆる組合せであるか、もしくはそれを含む。一部の実施態様において、光触媒性チオール-エン反応は、同じ炭水化物抗原の少なくとも2つ、または1つより多くのタイプの炭水化物抗原を、担体タンパク質にコンジュゲートさせることによって、多価グリココンジュゲート免疫原(例えば、担体タンパク質にコンジュゲートした、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個、またはそれより多くの同一または異なるタイプの炭水化物抗原を含む)を生産する。一部の実施態様において、炭水化物抗原は、ウイルス多糖抗原、または細菌莢膜多糖体(CPS)(例えば、肺炎球菌および/または連鎖球菌多糖体の血清型、髄膜炎菌CPS;インフルエンザ(例えばインフルエンザa型またはb型)CPS)であるか、またはそれを含む。
【0011】
一部の実施態様において、アルケニル炭水化物抗原は、リンカー(例えば、本明細書に記載されるリンカー)を介して、末端アルケンに連結されている。
【0012】
一部の実施態様において、担体タンパク質は、1個またはそれより多くの遊離チオール基を有する1個またはそれより多くのシステイン残基を含む。一部の実施態様において、担体タンパク質は、T細胞エピトープを含むか、および/または対象において細胞媒介性免疫応答を誘導する。
【0013】
一部の実施態様において、担体タンパク質は、B細胞エピトープを含むか、および/または対象において体液性免疫応答を誘導する。一部の実施態様において、担体タンパク質は、B細胞エピトープおよびT細胞エピトープの両方を含む、および/または対象において体液性および細胞媒介性免疫応答の両方を誘導する。一部の実施態様において、担体タンパク質は、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、交差反応性物質197(CRM197)、髄膜炎菌外膜タンパク質複合体(OMPC)、インフルエンザ菌(H. influenzae)のプロテインD(HiD)、ウイルス様粒子(VLP)、サイトカイン、免疫原性ペプチド、例えば破傷風毒素831-844(配列番号1または2)、アルブミン(例えばウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミン)、またはそれらの免疫原性フラグメントであるか、それ由来であるか、もしくはそれを含む。一部の実施態様において、担体タンパク質は、1つまたはそれより多くのジスルフィド架橋を有するタンパク質であり、(i)1つまたはそれより多くのジスルフィド架橋は、前記光触媒性チオール-エン反応の後、影響を受けないままであり;または(ii)担体タンパク質を還元剤で前処理して、炭水化物抗原へのコンジュゲーションのために、1つまたはそれより多くの追加の遊離チオール基を露出させる。
【0014】
一部の実施態様において、グリココンジュゲート免疫原に含まれる炭水化物抗原の総数は、コンジュゲーション前の担体タンパク質上の利用可能な遊離チオール基の数に等しい。一部の実施態様において、グリココンジュゲート免疫原は、対象に投与されると、炭水化物抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘導する。
【0015】
一部の実施態様において、本明細書に記載される方法は、(d)グリココンジュゲート免疫原を精製する工程をさらに含む。
【0016】
一部の形態において、本発明の記載は、グリココンジュゲートワクチンを生産するための方法であって、本明細書に記載される方法によって調製されたグリココンジュゲート免疫原を、医薬的に許容される賦形剤、および/またはアジュバント(例えば、無機化合物、鉱油、微生物誘導体、植物誘導体、サイトカイン、スクアレン、アラム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化リン酸カルシウム(calcium phosphate hydroxide)、toll様受容体アゴニスト、免疫刺激ポリヌクレオチド(例えば、CPG)、免疫刺激脂質、フロイントアジュバント、RIBIアジュバント、QS-21、ムラミルジペプチド、またはそれらのあらゆる組合せ)を用いて製剤化することを含む、上記方法に関する。
【0017】
一部の形態において、本発明の記載は、1つまたはそれより多くの炭水化物抗原および1つまたはそれより多くの溶媒接近可能なシステイン残基を有する免疫原性担体タンパク質を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、1つまたはそれより多くの炭水化物抗原は、1つまたはそれより多くの溶媒接近可能なシステイン残基において、免疫原性担体タンパク質に連結されており、1つまたはそれより多くの炭水化物抗原の免疫原性担体タンパク質へのコンジュゲーションは、対象に投与されると、コンジュゲートしていない炭水化物抗原の投与と比較した場合、1つまたはそれより多くの炭水化物抗原の免疫原性を増加させる、上記合成グリココンジュゲート免疫原に関する。一部の実施態様において、1つまたはそれより多くの炭水化物抗原は、本明細書に記載されるリンカーを介して、1つまたはそれより多くの溶媒接近可能なシステイン残基に連結されており、1つまたはそれより多くの炭水化物抗原は、本明細書に記載される通りである。一部の実施態様において、合成グリココンジュゲート免疫原は、本明細書に記載される多価グリココンジュゲート免疫原であり、本明細書に記載される担体タンパク質を使用する。一部の実施態様において、グリココンジュゲート免疫原に含まれる炭水化物抗原の総数は、担体タンパク質における溶媒接近可能なシステイン残基の数に等しい。一部の実施態様において、合成グリココンジュゲート免疫原は、対象に投与されると、炭水化物抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘導する。一部の実施態様において、合成グリココンジュゲート免疫原は、本明細書に記載される方法によって調製される。
【0018】
一部の形態において、本発明の記載は、本明細書に記載される方法によって生産されたグリココンジュゲートワクチン、および/または本明細書に記載される合成グリココンジュゲート免疫原を含むグリココンジュゲートワクチン、ならびに医薬的に許容される賦形剤、および/またはアジュバントに関する。一部の実施態様において、グリココンジュゲートワクチンは、予防ワクチンまたは治療ワクチンである。
【0019】
一部の形態において、本発明の記載は、対象を免疫化する、対象にワクチン接種する、または対象を処置する方法であって、本明細書に記載される方法によって生産されたグリココンジュゲート免疫原、本明細書に記載される方法によって生産されたグリココンジュゲートワクチン、本明細書に記載される合成グリココンジュゲート免疫原、または本明細書に記載されるグリココンジュゲートワクチンを対象に投与することを含む、上記方法に関する。一部の実施態様において、本発明の記載は、疾患を有する対象を免疫化すること、対象にワクチン接種をすること、もしくは対象を処置することにおいて使用するための、またはグリココンジュゲートに特異的に結合する抗体の存在を検出するための、もしくは前記免疫化、ワクチン接種、または処置を検出するための(例えば、対象からの生物学的サンプルにおける)、本明細書に記載される合成グリココンジュゲート免疫原またはグリココンジュゲートワクチンに関する。
【0020】
一部の形態において、本発明の記載は、担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、構造:
【0021】
【化1】
(式中、
- yは、少なくとも1であり;
- SAは、糖抗原またはその免疫原性部位からなる群から選択され、yが1より大きい場合、SAは、同一であるか、または異なり;
- [S]
z-PCは、1個またはそれより多くの遊離チオール基に由来する1個またはそれより多くの硫黄原子を有する担体タンパク質であり;
- zは、少なくとも1であり、少なくともyに等しく;
- Lは、構造:
【0022】
【化2】
を有するリンカーからなる群から選択されるリンカーであり、式中、
- Xは、O、S、NR
1、またはCH
2であり;
- R
1は、-H、-COH、-COCH
3、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
yが1より大きい場合、Lは、同一であるか、または異なる)
を有するか、またはその立体異性体である、上記合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0023】
一部の形態において、本発明の記載は、担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、構造:
【0024】
【化3】
(式中、
- yは、少なくとも1であり;
- SAは、糖抗原またはその免疫原性部位からなる群から選択され、yが1より大きい場合、SAは、同一であるか、または異なり;
- [S]
z-PCは、1個またはそれより多くの遊離チオール基に由来する1個またはそれより多くの硫黄原子を有する担体タンパク質であり;
- zは、少なくとも1であり、少なくともyに等しく;
- Lは、構造:
【0025】
【化4】
を有するリンカーからなる群から選択されるリンカーであり、式中、
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- R
3およびR
4はそれぞれ、水素原子であり、mは、1、2、3、4もしくは5であるか、またはR
3およびR
4は、一緒になって、窒素原子に連結されたカルボニルと、ラジカル-CO-CH
2-またはラジカル-CO-CH
2-CH
2-を形成し、mは、1であり;
yが1より大きい場合、Lは、同一であるか、または異なる)
を有するか、またはその立体異性体である、上記合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0026】
一部の形態において、本発明の記載は、担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、構造:
【0027】
【化5】
(式中、
- yは、少なくとも1であり;
- SAは、糖抗原またはその免疫原性部位からなる群から選択され、yが1より大きい場合、SAは、同一であるか、または異なり;
- [S]
z-PCは、1個またはそれより多くの遊離チオール基に由来する1個またはそれより多くの硫黄原子を有する担体タンパク質であり;
- zは、少なくとも1であり、少なくともyに等しく;
- Lは、構造:
【0028】
【化6】
を有するリンカーからなる群から選択されるリンカーであり、式中、
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- rは、1、2、3、4または5であり;
- R
5は、S-PC、共有結合、または構造:
【0029】
【化7】
のラジカルであり、ここでR
3およびR
4はそれぞれ、水素原子であり、mは、1、2、3、4もしくは5であるか、またはR
3およびR
4は、一緒になって、窒素原子に連結されたカルボニルと、ラジカル-CO-CH
2-またはラジカル-CO-CH
2-CH
2-を形成し、mは、1であり;
yが1より大きい場合、Lは、同一であるか、または異なる)
を有するか、またはその立体異性体である、上記合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0030】
一部の実施態様において、本発明の記載は、リンカーが、構造:
【0031】
【化8】
(式中、
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- rは、1、2、3、4または5である)
を有する、上記で定義された合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0032】
一部の実施態様において、本発明の記載は、リンカーが、構造:
【0033】
【化9】
(式中、
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- rは、1または2である)
を有する、上記で定義された合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0034】
一部の実施態様において、本発明の記載は、リンカーが、構造:
【0035】
【化10】
(式中、
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- rは、1または2である)
を有する、上記で定義された合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0036】
一部の実施態様において、本発明の記載は、yが、1から50、1から40、1から30、1から20、1から10、1から5、または1から3の範囲の整数である、上記で設計された合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0037】
一部の形態において、本発明の記載は、担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、各リンカーは、構造:
【0038】
【化11】
(式中、SAは、糖抗原またはその一部であり;S-PCは、担体タンパク質であり;Xは、O、S、NR
1、またはCH
2であり;R
1は、-H、-COH、-COCH
3、または-COEtであり;nは、1、2、3、4、または5であり;R
2は、HまたはMeである)
を有するか、またはその立体異性体である、上記合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0039】
一部の形態において、本発明の記載は、担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、各リンカーは、構造:
【0040】
【化12】
(式中、SAは、糖抗原またはその一部であり;S-PCは、担体タンパク質であり;Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;nは、1、2、3、4、または5であり;R
2は、HまたはMeであり;qは、1、2、3、4、または5であり;R
3およびR
4はそれぞれ、水素原子であり、mは、1、2、3、4もしくは5であるか、またはR
3およびR
4は、一緒になって、窒素原子に連結されたカルボニルと、ラジカル-CO-CH
2-またはラジカル-CO-CH
2-CH
2-を形成し、mは、1である)
を有するか、またはその立体異性体である、上記合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0041】
一部の実施態様において、糖抗原は、本明細書に記載される炭水化物抗原であり、担体タンパク質は、本明細書に記載される通りであり、合成グリココンジュゲート免疫原は、本明細書に記載される多価グリココンジュゲート免疫原である。
【0042】
一部の形態において、本発明の記載は、本明細書に記載される合成グリココンジュゲート免疫原、ならびに本明細書に記載される医薬的に許容される賦形剤および/またはアジュバントを含むワクチンに関する。
【0043】
一部の形態において、本発明の記載は、ワクチンの製造のための、本明細書に記載される方法によって調製されたグリココンジュゲート免疫原、または本明細書に記載される合成グリココンジュゲート免疫原の使用に関する。
【0044】
一部の形態において、本発明の記載は、前記1つまたはそれより多くの炭水化物または糖抗原の発現の増加に関連する疾患を有する対象を処置するための、本明細書に記載される方法によって調製されたグリココンジュゲート免疫原、本明細書に記載される方法によって生産されたグリココンジュゲートワクチン、本明細書に記載される合成グリココンジュゲート免疫原、または本明細書に記載されるワクチンの使用に関する。
【0045】
一般的な定義
見出し、および他の識別子、例えば、(a)、(b)、(i)、(ii)などは、単に明細書と特許請求の範囲を読みやすくするために提示される。明細書または特許請求の範囲における見出しまたは他の識別子の使用は、工程または要素が、アルファベットまたは数の順で、またはそれらが提示された順で実行されることを必ずしも必要としない。
【0046】
言葉「1つの」(aまたはan)の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において用語「含む」と共に使用される場合、「1つの」を意味する場合があるが、「1つまたはそれより多くの」、「少なくとも1つの」および「1つまたは1つより多くの」の意味とも一致する。
【0047】
用語「約」は、値が、値を決定するために採用されるデバイスまたは方法の誤差の標準偏差を含むことを示すのに使用される。一般的に、用語「約」は、10%までの起こり得る変動を表すことを意味する。それゆえに、値の1、2、3、4、5、6、7、8、9および10%の変動が、用語「約」に含まれる。別段の指定がない限り、範囲の前での用語「約」の使用は、その範囲の両端の値に適用される。
【0048】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、言葉「含む」(および含む(comprising)のあらゆる形態、例えば「含む(comprise)」および「含む(comprises)」)、「有する」(および有する(having)のあらゆる形態、例えば「有する(have)」および「有する(has)」)、「包含する」(および包含する(including)のあらゆる形態、例えば「包含する(includes)」および「包含する(include)」)または「含有する」(および含有する(containing)のあらゆる形態、例えば「含有する(contains)」および「含有する(contain)」)は、包括的であるか、または非限定的であり、追加の、記載されていないエレメントまたは方法の工程を排除しない。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「タンパク質」(例えば、表現「担体タンパク質」における)は、あらゆるペプチド結合したアミノ酸の鎖を意味し、これは、修飾が本明細書に記載されるグリココンジュゲート免疫原およびグリココンジュゲートワクチンの免疫原性を破壊しない限り、あらゆるタイプの修飾(例えば、化学的または翻訳後修飾、例えばアセチル化、リン酸化、グリコシル化、硫酸化、SUMO化(sumoylation)、プレニル化、ユビキチン化など)を含んでいてもよいし、または含んでいなくてもよい。さらに明確にするために言えば、用語「タンパク質」および「担体タンパク質」は、本明細書で使用される場合、ペプチドとポリペプチドの両方を包含する。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「投与」は、投与経路が対象において免疫応答の発生を引き起こしさえすれば、非経口(例えば、皮下、皮内、筋肉内、または静脈内)、経口、経皮、鼻腔内などの投与経路を含み得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、「対象」は、一般的に、霊長類を含む哺乳動物を指し、特定にはヒトを指す。
【0052】
本発明の記載の他の目的、利点および特徴は、添付の図面を参照しながら、単なる例として例示された以下に示すそれらの具体的な実施態様の非制限的な記載を読むことで、より明らかになると予想される。
【0053】
添付の図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1は、ヒト糖タンパク質(MUC)からの主要な腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)の典型的な化学構造の例を示す。
【
図2】
図2は、免疫原性担体タンパク質(例えば、T細胞エピトープ、例えば破傷風トキソイド)の利用可能なチオール基に炭水化物抗原(B細胞エピトープ)を直接コンジュゲートするための、提唱されている「クリックケミストリー」アプローチを示す。
【
図3】
図3は、光触媒性チオール-エン反応によって、担体タンパク質である破傷風トキソイド上の6つの天然の「遊離」システイン残基にTnまたはTF抗原をコンジュゲートすることにより調製された「精密なグリココンジュゲート」の例を示す。
【
図4】
図4は、チオール特異的なヨードアセトアミドまたはマレイミド基に連結されたTnまたはTF抗原を使用して、これらを次いで、8未満のpHでの反応(ヨードアセトアミドまたはマレイミド基)またはチオール-エン反応(マレイミド基)により、担体タンパク質上の「遊離」システイン残基にコンジュゲートさせることによって調製される「精密なグリココンジュゲート」の例を示す。
【
図5】
図5は、実施例2~6に記載されるように、担体タンパク質へのコンジュゲーションの準備が整っているアリルTn抗原およびアリルTF抗原の合成のための反応スキームを示す。
【
図6A】
図6A~6Dは、アリル2-アセトアミド-3,6-ジ-O-ピバロイル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(化合物2)に関する
1H-NMR(
図6A)および
13C-NMR(
図6B)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図6Cおよび6D)を示す。
【
図6B】
図6A~6Dは、アリル2-アセトアミド-3,6-ジ-O-ピバロイル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(化合物2)に関する
1H-NMR(
図6A)および
13C-NMR(
図6B)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図6Cおよび6D)を示す。
【
図6C】
図6A~6Dは、アリル2-アセトアミド-3,6-ジ-O-ピバロイル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(化合物2)に関する
1H-NMR(
図6A)および
13C-NMR(
図6B)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図6Cおよび6D)を示す。
【
図6D】
図6A~6Dは、アリル2-アセトアミド-3,6-ジ-O-ピバロイル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(化合物2)に関する
1H-NMR(
図6A)および
13C-NMR(
図6B)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図6Cおよび6D)を示す。
【
図7A】
図7A~7Dは、アリル2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTn)に関する
1H-NMR(
図7A)および
13C-NMR(
図7B)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図7Cおよび7D)を示す。
【
図7B】
図7A~7Dは、アリル2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTn)に関する
1H-NMR(
図7A)および
13C-NMR(
図7B)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図7Cおよび7D)を示す。
【
図7C】
図7A~7Dは、アリル2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTn)に関する
1H-NMR(
図7A)および
13C-NMR(
図7B)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図7Cおよび7D)を示す。
【
図7D】
図7A~7Dは、アリル2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTn)に関する
1H-NMR(
図7A)および
13C-NMR(
図7B)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図7Cおよび7D)を示す。
【
図8A】
図8A~8Cは、アリル2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物4)に関する
1H-NMR(
図8A)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図8Bおよび8C)を示す。
【
図8B】
図8A~8Cは、アリル2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物4)に関する
1H-NMR(
図8A)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図8Bおよび8C)を示す。
【
図8C】
図8A~8Cは、アリル2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物4)に関する
1H-NMR(
図8A)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図8Bおよび8C)を示す。
【
図9A】
図9A~9Dは、アリル(2,3,4,6-テトラ-O-ベンゾイル-β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物6)に関する
1H-NMR(
図9A)および
13C-NMR(
図9B)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図9Cおよび9D)を示す。
【
図9B】
図9A~9Dは、アリル(2,3,4,6-テトラ-O-ベンゾイル-β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物6)に関する
1H-NMR(
図9A)および
13C-NMR(
図9B)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図9Cおよび9D)を示す。
【
図9C】
図9A~9Dは、アリル(2,3,4,6-テトラ-O-ベンゾイル-β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物6)に関する
1H-NMR(
図9A)および
13C-NMR(
図9B)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図9Cおよび9D)を示す。
【
図9D】
図9A~9Dは、アリル(2,3,4,6-テトラ-O-ベンゾイル-β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物6)に関する
1H-NMR(
図9A)および
13C-NMR(
図9B)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図9Cおよび9D)を示す。
【
図11A】
図11A~11Dは、アリル(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTF)に関する
1H-NMR(
図11A)および
13C-NMR(
図11B)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図11Cおよび11D)を示す。
【
図11B】
図11A~11Dは、アリル(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTF)に関する
1H-NMR(
図11A)および
13C-NMR(
図11B)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図11Cおよび11D)を示す。
【
図11C】
図11A~11Dは、アリル(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTF)に関する
1H-NMR(
図11A)および
13C-NMR(
図11B)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図11Cおよび11D)を示す。
【
図11D】
図11A~11Dは、アリル(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTF)に関する
1H-NMR(
図11A)および
13C-NMR(
図11B)スペクトル、ならびに質量分析の結果(
図11Cおよび11D)を示す。
【
図12】
図12は、TF-TTグリココンジュゲート単独(左上のパネル)、ピーナッツレクチン単独(右上のパネル)、または両方の組合せ(下のパネル)の動的光散乱(DLS)分析の結果を示す。
【
図13】
図13は、O-アリル-TnおよびO-アリル-TFとの光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応における時間に対するペプチドdTT831-840のチオール濃度を示す。
【
図14】
図14は、ペプチドのシステイン位置およびAAPHまたはDMPAの存在に対するO-アリル-Tnとの光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応におけるペプチドdTT831-840のチオールの低減倍率を示す。
【
図15】
図15は、ペプチドのシステインの位置およびAAPHまたはDMPAの存在に対する、O-アリル-Tnとの光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応によってレクチンのTnにコンジュゲートしたペプチドdTT831-840への反応性を示す。
【
図16】
図16は、AAPHまたはDMPAの存在下での、異なる波長における、O-アリル-Tnとの光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応におけるペプチドdTT831-840のチオール濃度の速度論を示す。
【
図17】
図17は、AAPHまたはDMPAの存在下での、異なる波長における、O-アリル-Tnとの光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応によってTnにコンジュゲートしたペプチドdTT831-840へのナヨクサフジ(Vicia Villosa)レクチンの反応性を示す。
【
図18】
図18は、C-アリルおよびO-アリル糖との光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応におけるペプチドdTT831-840のチオール濃度の速度論を示す。
【
図19】
図19は、O-アリル-Tnとの光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応によってコンジュゲートしたペプチドdTT831-840に対するレクチンおよび抗TF抗体の反応性を示す。
【
図20】
図20は、還元dTTまたはO-アリル-TFとの光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応によってコンジュゲートした還元dTTに対する抗TF抗体の反応性を示す。
【
図21】
図21は、光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応の様々な工程における、およびコンジュゲートしたdTTの還元後の、dTTのチオールのモル比を示す。
【
図22】
図22は、O-アリル-Tnへの光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応によってコンジュゲートしたdTTの、レクチンおよび抗TFmAbへの反応性を示す。
【
図23】
図23は、少量または大量のAAPHの存在下におけるO-アリル-Tnとの光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応によってコンジュゲートした、またはコンジュゲートされていない、化学的にチオール化したdTTのチオールのモル比を示す。
【
図24】
図24は、2つの異なる時間での、少量または大量のAAPHの存在下でのO-アリル-Tnとの光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応によってコンジュゲートした化学的にチオール化したdTTに対するナヨクサフジレクチンの反応性を示す。
【
図25】
図25は、O-アリル-Tnとの光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応によってコンジュゲートした還元BSAに対するレクチンおよび抗TF抗体の反応性を示す。
【
図26】
図26は、還元条件と還元BSAのチオールのモル比との関係を示す。
【
図27】
図27は、様々な遊離チオールのモル比を有し、様々な量のO-アリル-Tnとの光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応によってコンジュゲートしたBSAに対する、Tn特異的ナヨクサフジレクチンおよび抗TF抗体の反応性を示す。
【
図28】
図28は、還元条件、還元BSAのチオールのモル比、およびO-アリル-TFとの光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応によってコンジュゲートした還元BSAのTF反応性の関係を示す。
【
図29】
図29は、AAPHおよびO-アリル-Tnの存在または非存在下における化学的チオール化単独または同時の光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応を伴うチオール化による、時間に対するBSAにおけるチオール付加物のモル比を示す。
【
図30】
図30は、チオール化されたBSAとの、またはAAPHおよびO-アリル-Tnの存在または非存在下において、光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応によって同時にチオール化およびコンジュゲートされたBSAとのTn特異的ナヨクサフジレクチンの反応性を示す。
【
図31】
図31は、時間に対する、チオールのモル比と、O-アリル-Tnとの光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応によってコンジュゲートしたBSAのTn特異的ナヨクサフジレクチンの反応性との関係を示す。
【
図32】
図32は、天然のBSA、または少量または大量のAAPHの存在下、および2種の波長におけるO-アリル-Tnとの光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応によってコンジュゲートしたチオール化BSAに対する、Tn特異的ナヨクサフジレクチンの反応性を示す。
【
図33】
図33は、ガラクトースのモル比と、チオール化および少量または大量のAAPHにおけるO-アリル-Tnとの光触媒性チオール-エンコンジュゲーション反応の異なる工程における、BSAに対する抗TFmAbの反応性との関係を示す。
【
図34】
図34は、dTT831-844-Cys-βAlaおよびCおよびN末端にシステイン残基を有するCys-dTT831-844-βAlaの化学構造を、それぞれそれらの表形式のLC-MSデータと共に示す。
【
図35】
図35は、ペプチドdTT831-844-Cys-βAlaの詳細なLC-MSデータを示す。
【
図36】
図36は、ペプチドCys-dTT831-844-βAlaの詳細なLC-MSデータを示す。
【
図37】
図37は、C末端ペプチドdTT831-844-Cys-βAlaにおけるO-アリルTnの光分解性のAAPHによって触媒されたチオール-エン反応を示す。
【
図38】
図38は、C末端ペプチドにおけるO-アリルTnのLC-MSプロファイルを示す。
【
図39】
図39は、N末端ペプチドCys-dTT831-844-βAlaにおけるO-アリルTnの光分解性のAAPHによって触媒されたチオール-エン反応を示す。
【
図40】
図40は、N末端ペプチドにおけるO-アリルTnのLC-MSプロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
配列表
本出願は、約4KBのサイズを有する2019年3月19日に作成されたコンピューター可読の形態の配列表を含有する。コンピューター可読の形態は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0056】
詳細な説明
本発明の記載は、グリココンジュゲート免疫原(例えば、ワクチンとして使用するための、診断における、または特異的な抗グリココンジュゲート抗体などの診断または治療用ツールを生成するための)に関する。本明細書に記載されるグリココンジュゲート免疫原は、一般的に、免疫原性担体タンパク質にカップリングされた炭水化物抗原を含む。より特定には、担体タンパク質は、1個またはそれより多くの遊離チオール基(例えば、システイン残基の側鎖に対応する)を含み、炭水化物抗原は、これらの遊離チオール基の1つまたはそれより多くにおいて、担体タンパク質にコンジュゲートされている。本発明の記載はまた、例えば「クリックケミストリー」アプローチ(例えば、光触媒性チオール-エン反応)を使用して、炭水化物抗原を担体タンパク質の遊離チオール基に直接コンジュゲートすることを含む、グリココンジュゲート免疫原/ワクチンを合成するための改善された方法にも関する。本明細書に記載される改善されたコンジュゲーション方法は、コンジュゲーションの特異性に影響を及ぼさずに、担体タンパク質の活性、抗原性、および/または構造を破壊すること(例えば、天然のジスルフィド架橋の切断および/または変性)を回避するために、十分に穏やかな条件下(例えば、水溶性試薬のみの使用、有機溶媒の非存在、担体タンパク質の変性を回避するのに十分に低い濃度(例えば、<5%)および/または相対的に中性のpHでの有機溶媒の使用)で実行することができる。さらに、本明細書に記載される光触媒性チオール-エン反応は、紫外光下(例えば、355nmまたは365nm)、触媒の存在下で実行してもよいし、または短波紫外光下(例えば、254nmで)、プロセスをさらに簡易化するために触媒の非存在下で実行してもよい。
【0057】
本明細書に記載されるコンジュゲーション方法によって提供される精密さがより大きいために、本明細書に記載されるグリココンジュゲート免疫原/ワクチンは、より大きい均一性(その炭水化物分布に関して)、再現性を有することができ、さらに、他のアミノ酸側鎖(例えば、リシンからのアミン、またはグルタミン酸/アスパラギン酸残基からの酸)へのランダムカップリングを頼るグリココンジュゲートと比較してより簡単に特徴付けすることができる。このような特徴は、グリココンジュゲートワクチンの規制当局の承認および/または商業化を容易にする可能性があり、これらはどちらも、従来のアプローチに基づいた場合では難しいことが歴史的に証明されている。
【0058】
一部の形態において、本発明の記載は、グリココンジュゲート免疫原を生産するための方法(例えば、対象への投与のための)に関する。用語「対象」は、本明細書で使用される場合、一般的に、好ましくはグリココンジュゲート免疫原に特異的に結合する抗体の生産を引き起こす、本明細書に記載されるようなグリココンジュゲート免疫原に対する免疫応答を起こすことができる生物(例えば、動物またはヒト)を指す。一部の実施態様において、本明細書に記載される対象は、治療的に処置しようとする患者(例えば、本明細書に記載されるグリココンジュゲート免疫原でのワクチン接種を介して)であってもよいし、または調査、診断、および/または治療目的のためのツール(例えば、抗体)を生成するための手段として採用される場合もある。グリココンジュゲート免疫原を生産するための方法は、一般的に、チオール特異的な官能基を有する(例えば、それを含むように化学修飾された)炭水化物抗原を提供する工程;1個またはそれより多くの遊離チオール基(例えば、1つまたはそれより多くの溶媒接近可能なシステイン残基、および/またはジスルフィド架橋に関与しないシステイン)を有する担体タンパク質を提供する工程;および炭水化物抗原を担体タンパク質と反応させ、それによって、担体タンパク質の遊離チオール基の位置に対応する1つまたはそれより多くの予測可能な(非ランダム)結合点で炭水化物抗原を担体タンパク質にカップリングする工程を含む。一部の実施態様において、本方法は、グリココンジュゲート免疫原を精製または単離する工程をさらに含んでいてもよく、次いでグリココンジュゲート免疫原は、ワクチン(例えば、アジュバントを含む)として製剤化してもよい。
【0059】
用語「グリココンジュゲート」は、本明細書で使用される場合、目的の対象における炭水化物抗原の免疫原性を強化するために担体タンパク質にカップリングされた炭水化物抗原(例えば、抗原性の単糖、二糖、オリゴ糖、または多糖)を指す。表現「炭水化物抗原」および「糖抗原」は、本明細書で使用される場合、同じ意味を有する。用語「免疫原」は、免疫系の成分(例えば、抗体および/またはリンパ球)によって特異的に結合し、目的の対象において体液性および/または細胞媒介性免疫応答を生じさせることが可能な物質を指す。「グリココンジュゲート免疫原」などの表現における用語「免疫原」は、本明細書で使用される場合、特定の使用(例えば、対象において免疫応答を生じさせるための免疫原としての使用)に対する、グリココンジュゲートそれ自体に限らないグリココンジュゲートの能力(すなわち、物理的な特徴または特性)を指す。例えば、一部の実施態様において、本明細書に記載されるグリココンジュゲート免疫原は、生物学的サンプル(例えば、対象からの)におけるグリココンジュゲート免疫原に結合する抗体の存在または非存在を検出するための診断アッセイまたは方法(例えば、インビトロの方法)において採用することができる。一部の実施態様において、本明細書に記載されるグリココンジュゲート免疫原は、グリココンジュゲート免疫原に特異的に結合する抗体(例えば、診断的または治療的に適用可能なモノクローナル抗体)をスクリーニングする、同定する、または評価するのに使用することができる。
【0060】
一部の形態において、本発明の記載は、炭水化物抗原を担体タンパク質の遊離チオール基に直接コンジュゲートするための「クリックケミストリー型」のアプローチの使用に関する。より具体的には、
図2で示されるように、光触媒性チオール-エン反応は、炭水化物抗原(R
2)が、光触媒性チオール反応を使用する担体タンパク質のシステインチオール基(-SH)(R
1)への直接の共有結合に好適な末端アルケン官能基(アルケニル炭水化物抗原)を含有するように改変されている反応であることが好ましい。
図3を参照すれば、B細胞エピトープを含む炭水化物抗原(例えば腫瘍関連炭水化物抗原TnおよびTF)は、チオール-エン反応を介して、破傷風トキソイド(TT)などの免疫原性担体タンパク質に光化学的にコンジュゲートさせることができ、破傷風トキソイドは、その6個の利用可能なシステイン残基(ただしジスルフィド架橋に関与する4つのシステイン残基は除く)のために6個の遊離チオール基を有することがわかっている。本明細書に記載されるコンジュゲーション方法は、
図3に示される破傷風トキソイド担体タンパク質の場合、好ましくは、予測可能な(非ランダムな)結合点でコンジュゲートされた正確に6個の炭水化物抗原をもたらす。本明細書に記載される方法は、末端をアルケン基(末端アルケン)にすることができる、天然または合成のあらゆる単糖、オリゴ糖、および多糖に適用可能である。
【0061】
一部の実施態様において、本明細書に記載される炭水化物抗原は、末端アルケンに連結されるように(直接的に、またはリンカーまたはスペーサーを介して間接的に)(例えば、グリコシド結合を介して、または例えばアリルアミンと還元糖との間での、好ましくはNaBH4および/またはNaBH3CNを使用した還元的アミノ化により得られた結合を介して)化学修飾されていてもよく、この場合、アルケニル炭水化物抗原の末端アルケン基は、チオール-エン反応(例えば、光触媒性チオール-エン反応)を介して、担体タンパク質の遊離チオール(例えば、1つまたはそれより多くの溶媒接近可能なシステイン残基、および/またはジスルフィド架橋に関与しないシステイン)にコンジュゲート可能である。アルケニル炭水化物抗原の末端アルケン基は、一置換されたアルケン、ビニル基、またはアリル基であり得る。好ましい実施態様において、アルケニル炭水化物抗原は、水溶性であることから、本明細書に記載される水性ベースのチオール-エン反応におけるその使用を可能にする。
【0062】
「グリコシド結合」は、本明細書で使用される場合、S-グリコシド結合、N-グリコシド結合、O-グリコシド結合、もしくはC-グリコシド結合、または還元糖の還元的アミノ化(例えば、NaBH4または好ましくはNaBH3CNを使用)により得られた結合の1つまたはそれより多くを含んでいてもよい。一部の実施態様において、グリコシド結合は、投与される対象の内因性酵素(例えば、グリコヒドロラーゼ)によって切断可能ではないグリコシド結合であり得る。このような切断不可能なグリコシド結合は、対象への投与後により長い半減期を有するグリココンジュゲート免疫原をもたらすことができ、これが順に、治療目的および/または抗体生成目的にとってより好都合な免疫応答を生じさせることができる。一部の実施態様において、グリコシド結合は、S-グリコシド結合、N-グリコシド結合、もしくはC-グリコシド結合、または例えばアリルアミンと還元糖との間での還元的アミノ化により得られた結合であり得る。
【0063】
一部の実施態様において、「リンカー」または「スペーサー」の使用が好ましく、このような用語は、本明細書において、炭水化物抗原を対象の免疫系によって認識させることを可能にする(例えば、担体タンパク質によってマスクされるのとは対照的に)、炭水化物抗原と、それがコンジュゲートされている担体タンパク質との十分な物理的な分離を提供する化学的な連結を指すものとして使用される。一部の実施態様において、リンカーは、C、S、N、およびOから選択される、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の連続する残基の鎖を含んでいてもよい。
【0064】
用語「コンジュゲート可能な」は、本明細書で使用される場合、実際に分子が互いに共有結合で結合しているかどうかに関係なく、少なくとも2つの分子(例えば、炭水化物抗原および担体タンパク質)が化学反応を介して互いに共有結合で結合する能力または可能性を指す。対照的に、用語「コンジュゲートした」は、少なくとも2つの分子(例えば、炭水化物抗原および担体タンパク質)が互いに共有結合で結合していることを指す。
【0065】
一部の実施態様において、様々なタイプの炭水化物抗原の末端を、チオール-エン反応を介してチオール基に直接コンジュゲート可能な末端アルケン基にすることができる。例えば、末端アルケン基を有する炭水化物抗原は、アリルTnおよびアリルTF反応物の合成に関する本明細書の実施例2~7に記載されるアプローチを適合させることによって合成することができる。
【0066】
一部の実施態様において、末端アルケン基を有する炭水化物抗原は、光触媒性チオール-エン反応を使用して、例えば、Tn-TTおよびTF-TTコンジュゲートの合成に関する本明細書の実施例8および9に記載されるアプローチを適合させることによって、担体タンパク質の遊離チオール基にコンジュゲートさせることができる。例えば、水性溶媒(例えば、PBSなどの緩衝液)中に溶解させた1種またはそれより多くのアルケニル炭水化物抗原を、紫外光照射に好適な容器(例えば、石英セル)中で、同様に水性溶媒(例えば、PBSなどの緩衝液)中に溶解させた担体タンパク質と混合する。次いで混合物を、触媒(例えば、光開始剤または活性化剤)の存在または非存在下において、短波、中波または長波紫外光(例えば、約254nm、約355nm、または約365nmにピーク波長を有する)下で放射線照射する。本明細書においてチオール-エン反応の文脈で使用される場合、用語「触媒」、「光開始剤」、および「活性化剤」は、光触媒性チオール-エン反応を介した、1個またはそれより多くの遊離チオール基における、炭水化物抗原の担体タンパク質へのコンジュゲーションを促進する物質を指すのに同義的に使用することができる。
【0067】
一部の実施態様において、触媒は、水溶性光開始剤、例えば水溶性のフリーラジカルを生成するアゾ化合物;2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(Vazo 44またはVA-044);2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(AAPH);本明細書に記載される光触媒性チオール-エン反応において光開始剤活性を有する金属もしくは金属イオン;または光開始剤活性を有するそれらのあらゆる誘導体であり得る。一部の実施態様において、触媒は、水溶性光開始剤、例えば水溶性過酸化物、例えばtert-ブチルヒドロペルオキシドもしくは過酸化ベンゾイル、もしくは過硫酸アンモニウム、または他の好適な触媒であり得る。
【0068】
一部の実施態様において、触媒は、水不溶性光開始剤、例えば水不溶性のフリーラジカルを生成するアゾ化合物;2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)(ACVA)、1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)(ACHN)、ジアゼンジカルボン酸ビス(N,N-ジメチルアミド)(TMAD);アゾジカルボン酸ジピペリジド(ADD)、または本明細書に記載される光触媒性チオール-エン反応において光開始剤活性を有するそれらのあらゆる誘導体であり得る。
【0069】
一部の実施態様において、本明細書に記載される光触媒性チオール-エン反応は、例えば糖の重合を低減する、最小化する、または回避するために、担体タンパク質の遊離チオール基1つ当たりのアルケニル炭水化物抗原(すなわち、末端アルケンを含む炭水化物抗原)のモル当量の比率を制御することを含んでいてもよい。一部の実施態様において、本明細書に記載される光触媒性チオール-エン反応は、担体タンパク質の遊離チオール基1つ当たり、1~300、1~250、1~200、1~100、または1~10、1~5、または1~2モル当量の炭水化物抗原を反応させることを含んでいてもよい。
【0070】
一部の実施態様において、本明細書に記載される光触媒性チオール-エン反応は、担体タンパク質中の総遊離チオール濃度の、少なくとも2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50分の1の低減を達成するのに十分な時間実行される(例えば、エルマン試験によって決定した場合)。一部の実施態様において、本明細書に記載される光触媒性チオール-エン反応は、10~300、10~270、10~240、10~210、10~180、10~150、10~120、10~90、10~60、または10~30分間実行される。
【0071】
一部の実施態様において、本明細書に記載される光触媒性チオール-エン反応は、約3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、または4.0から、約4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、または10までの間のpHで実行されてもよい。一部の実施態様において、本明細書に記載される光触媒性チオール-エン反応は、担体タンパク質の変性を回避するpHで実行されてもよい。一部の実施態様において、本明細書に記載される光触媒性チオール-エン反応は、4~5のpHで、好ましくはpH4.4で(例えば、酢酸緩衝液中で)実行されてもよい。
【0072】
一部の実施態様において、水溶性光開始剤の使用(有機溶媒を必要とする光開始剤に優先して)は、本明細書に記載されるチオール-エンコンジュゲーション反応を、水性試薬および水性溶媒のみを使用して実行できるため有利である可能性があり、これは、有機溶媒は、Dondoniら、2009およびDondoniら、2012に記載されたように、担体タンパク質の変性、加えて、遊離ではないシステイン残基(例えば、分子内および/または分子間のジスルフィド結合に関与するシステイン)への望ましくない/予測不可能なコンジュゲーションに寄与する可能性があるためである。
【0073】
代替の実施態様において、水不溶性光開始剤は、必要に応じて、その溶解のために有機溶媒と共に採用してもよい。好ましくは、有機溶媒の存在または濃度は、担体タンパク質の変性、加えて遊離ではないシステイン残基(例えば、分子内および/または分子間のジスルフィド結合に関与するシステイン)への望ましくない/予測不可能なコンジュゲーションに寄与しないものとする。例えば、このような光開始剤は、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)などであり得る。
【0074】
本明細書に記載されるチオール-エンアプローチの代替の実施態様において、本明細書に記載される炭水化物抗原は、1つまたはそれより多くのチオール特異的な官能基、例えばヨードアセトアミド、マレイミド、ハロゲン化ベンジル、またはブロモメチルケトンを有するように修飾することができ、これらの官能基は、チオールのS-アルキル化によって反応して安定なチオエーテル生成物を生成する(例えばこれは、リシン残基への不要な、ランダムな炭水化物抗原コンジュゲーションを回避することができる、相対的に低いpH、例えば9、8、7.5、または7未満、および5、5.5、または6を超えるpHで行われる)。
図4に、チオール特異的な官能基(例えば、ヨードアセトアミドおよびマレイミド基)を含むように修飾された炭水化物抗原の例を示す。一部の実施態様において、マレイミド基は、チオール-エン反応を介して担体タンパク質のチオール基にコンジュゲート可能な末端アルケンとして適格である。
【0075】
一部の実施態様において、本明細書に記載される炭水化物抗原は、1つまたはそれより多くのB細胞エピトープを含んでいてもよいし、および/もしくは体液性免疫応答を誘導することができ、および/またはT細胞エピトープを含んでいてもよいし、および/または投与のときに対象において細胞媒介性免疫応答を誘導することができる。一部の実施態様において、本明細書に記載されるグリココンジュゲート免疫原は、対象に投与されると、少なくとも、炭水化物抗原に対する細胞媒介性免疫応答(例えば、体液性応答に加えて)を誘導することができる。
【0076】
一部の実施態様において、本明細書に記載される炭水化物抗原は、例えば、腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)であってもよいし、またはそれを含んでいてもよい。がん細胞の外側の細胞膜の糖タンパク質および糖脂質は、特定のO-グリカンを過剰発現する。これらの糖タンパク質は、ムチン(MUC)として公知のタンパク質ファミリーを集合的に構成し、なかでもMUC1が最も広く調査されているものの一つである。正常細胞上のMUCは、複雑なグリコシル化パターンを生じさせる活性なグリコシルトランスフェラーゼのために、高度にO-グリコシル化されている。がん細胞において、主要なグリコシルトランスフェラーゼの下方調節は、それより短いグリカンの蓄積を引き起こし、ムチン上でより一層限定的なO-グリコシル化を引き起こす。これらの変更された、正常細胞とがん性細胞との間のグリコシル化パターンの結果は、TACAの過剰累積であり、これは、他の状況では、正常な組織における複雑なグリコシル化によって隠される(マスクされる)。最も一般的なTACAとしては、Tn抗原(構造N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を有する単糖)、TF抗原(トムゼン-フリーデンライヒ抗原、構造Galβ1-3GalNAcα1を有する二糖)、およびそれらそれぞれの同源のシアル化類似体が挙げられる。数種のタイプの腫瘍細胞の細胞表面上におけるTn抗原とTF抗原両方の過剰発現は、がん細胞接着およびレクチン受容体を含有する部位(肺、肝臓、リンパ節など)への重篤な転移に寄与する。したがって、一部の実施態様において、本明細書に記載されるTACAは、Tn抗原、STn抗原、トムゼン-フリーデンライヒ(TF)抗原、(2,3)-S-TF、(2,6)-S-TF、グロボH、GD2、GD3、GM2、GM3、N-グリコリル-GM3、Lea、sLea、Lex、sLex、またはそれらのあらゆる組合せであるか、それ由来であるか、もしくはそれを含む。
図1に、一部の共通のTACAの構造を示す。本明細書で使用される場合、表現「由来(~から)」は、炭水化物抗原に関して使用される場合、公知の炭水化物抗原から誘導された炭水化物バリアントを指し、この場合、バリアントは、少なくとも公知の炭水化物抗原の抗原性を保持する。当業者にとって、アルケニル末端を有するTACAの合成は、Danishefskyら、2015に記載されたように、化学的なプロセスに加えて化学酵素的なプロセスの両方によって実行することができる。
【0077】
一部の実施態様において、本明細書に記載される炭水化物抗原は、これらに限定されないが、細菌および/もしくはウイルスなどの感染因子に関連する炭水化物抗原、またはこれらに限定されないが、細菌感染および/もしくはウイルス感染などの感染に関連する炭水化物抗原であってもよいし、またはそれを含んでいてもよい。一部の実施態様において、本明細書に記載される炭水化物抗原は、例えば、ウイルス多糖抗原、または細菌莢膜多糖体(CPS)であってもよいし、またはそれを含んでいてもよい。一部の実施態様において、細菌CPSは、肺炎球菌および/または連鎖球菌多糖体の血清型、髄膜炎菌CPS、またはインフルエンザ(例えばインフルエンザa型およびb型)CPSであるか、それ由来であるか、またはそれを含む。
【0078】
一部の実施態様において、本明細書に記載されるコンジュゲーション方法は、同じまたは1つより多くのタイプの炭水化物抗原を担体タンパク質にコンジュゲートでき、それによって、多価グリココンジュゲート免疫原を生産することができる。一部の実施態様において、本明細書に記載される多価グリココンジュゲート免疫原は、担体タンパク質にコンジュゲートした、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個、またはそれより多くの同一または異なるタイプの炭水化物抗原を含んでいてもよい。一部の実施態様において、本明細書に記載される多価グリココンジュゲート免疫原は、担体タンパク質上の単一の遊離チオール基にコンジュゲートされている(例えば、分岐状リンカーを介して)1種より多くの炭水化物抗原を含んでいてもよい。一部の実施態様において、本明細書に記載される多価グリココンジュゲート免疫原は、デンドリマーとして(例えば、多数の分岐を有するリンカーを介して)、担体タンパク質上の単一の遊離チオール基にコンジュゲートされている複数の(例えば、少なくとも3、4、5、6、78、9、10、11、12、13、14、15個、またはそれより多くの)炭水化物抗原を含んでいてもよい。一部の実施態様において、本明細書に記載される担体タンパク質は、1個またはそれより多くの遊離チオール基を含む。「遊離チオール」または「遊離チオール基」は、本明細書で使用される場合、化学修飾および/またはコンジュゲーション(例えば、本明細書に記載される炭水化物抗原に対する)に利用可能な1つまたはそれより多くのスルフヒドリル基を有する担体タンパク質を指す。一部の実施態様において、所与の担体タンパク質の遊離チオール濃度は、例えば、本発明の実施例に記載されたようにシステイン標準曲線を使用するエルマン試験を使用して測定することができる。所与の担体タンパク質の遊離チオール濃度は、遊離チオール濃度の低減倍率として表す場合がある。一部の実施態様において、本明細書に記載されるグリココンジュゲートは、本明細書に記載されるコンジュゲーション方法の後、遊離チオール濃度の少なくとも50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、4、3、または2分の1に減少し得る(例えば、エルマン試験によって測定される場合)。
【0079】
一部の実施態様において、本明細書に記載される担体タンパク質は、例えば、担体タンパク質のアミノ末端、カルボキシ末端、またはそれらの間のあらゆる溶媒接近可能な位置に、1個またはそれより多くのさらなるシステイン残基が付加されるように操作されていてもよい(溶媒接近可能ではないか、またはタンパク質担体の3次元構造内に「埋め込まれた」位置とは対照的に)。一部の実施態様において、本明細書に記載されるタンパク質担体の遊離チオール基は、反応が、担体タンパク質の免疫原性、構造、または活性を破壊しない程度に穏やかな条件下で実行される場合、光触媒性チオール-エン反応によってアルケニル炭水化物抗原に容易にコンジュゲート可能なシステインと定義することもできる。一部の実施態様において、用語「活性」は、本明細書において担体タンパク質に関して使用される場合、炭水化物抗原の免疫原性(例えば、炭水化物抗原に特異的に結合することがわかっている抗体に対する)を保存する担体タンパク質の能力を指す。
【0080】
一部の実施態様において、遊離チオール基は、担体タンパク質の1つまたはそれより多くの溶媒接近可能なシステイン残基、および/またはジスルフィド架橋に関与しないシステインを指す場合もあり、これらは、一部の場合において、担体タンパク質の構造を維持するために重要な場合もある。一部の実施態様において、担体タンパク質は、1つまたはそれより多くのジスルフィド架橋を有するタンパク質であってもよく、その場合、1つまたはそれより多くのジスルフィド架橋は、炭水化物抗原へのコンジュゲーションの後、影響を受けないままである(すなわち、無傷である)。一部の実施態様において、本明細書に記載される担体タンパク質は、それらのNおよび/またはC末端に遊離チオール基を含まない。代替として、一部の実施態様において、本明細書に記載される担体タンパク質は、そのNおよび/またはC末端に、遊離チオール基を含んでいてもよいし、またはそれを含むように操作されていてもよい。一部の実施態様において、担体タンパク質は、1つまたはそれより多くのジスルフィド架橋を有するタンパク質であってもよく、担体タンパク質を、還元剤(例えば、ジチオスレイトール(DTT)、2-メルカプトエタノール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、または2-メルカプトエチルアミン-HCl)で前処理して、炭水化物抗原へのコンジュゲーションのために、1つまたはそれより多くの追加の遊離チオール基を露出させる。このような前処理は、例えば、変性した(還元された)担体タンパク質が、対象において、天然の(還元されていない)担体タンパク質より高い免疫原性を有する場合有用であり得る。
【0081】
一部の実施態様において、担体タンパク質は、光触媒性チオール-エン反応を実行する前に、または実行と共に、還元剤(例えば、本明細書に記載される)で前処理されてもよい。この前処理は、コンジュゲーションに利用可能な追加の遊離チオール基を露出させることができる。一部の実施態様において、担体タンパク質は、光触媒性チオール-エン反応を実行する前に、または実行と共に、チオール化剤(例えば、2-イミノチオラン(imminothiolane)、N-ヒドロキシスクシンイミドジチオプロピオネート(DPS))で前処理されてもよい。この前処理は、コンジュゲーションに利用可能な遊離チオール基の数を増加させるのに採用することができる。一部の実施態様において、担体タンパク質は、光触媒性チオール-エン反応を実行する前に、または実行と共に、チオール化剤で前処理され、その後、還元剤で前処理されてもよい。
【0082】
一部の実施態様において、担体タンパク質上の隣接する位置にコンジュゲートした複数の炭水化物抗原が多くなりすぎないようにすることが有利な場合がある。一部の実施態様において、担体タンパク質は、好ましくは、システインリッチドメイン(例えば、少なくとも50%のシステイン残基を含む、少なくとも4、5、6、7、8、9、または10個の連続したアミノ酸のセグメント)を欠如していてもよい。
【0083】
一部の実施態様において、担体タンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の総システイン残基を含んでいてもよい。一部の実施態様において、担体タンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の総遊離システイン残基を含んでいてもよい。
【0084】
一部の実施態様において、本明細書に記載されるグリココンジュゲート免疫原に含まれる炭水化物抗原の総数は、コンジュゲーション前の担体タンパク質上の利用可能な遊離チオール基の数に等しい。一部の実施態様において、本明細書に記載されるグリココンジュゲート免疫原は、担体タンパク質1個当たり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の炭水化物抗原を含んでいてもよい。一部の実施態様において、本発明の記載は、炭水化物コンジュゲーション種に関して、約または少なくとも、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の均一性を有する(例えば、組成物中のグリココンジュゲート免疫原種/分子の少なくとも90%が、同じ数の、担体タンパク質にコンジュゲートした炭水化物抗原を有する)、グリココンジュゲート免疫原を含む組成物に関する。
【0085】
一部の実施態様において、本明細書に記載される担体タンパク質は、好ましくは、グリココンジュゲート免疫原が投与されることになる対象に対して免疫原性であるタンパク質(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)である。好ましくは、炭水化物抗原の担体タンパク質へのコンジュゲーションは、コンジュゲートしていない炭水化物抗原の投与(すなわち、対象に単独で投与される炭水化物抗原)と比較した場合、対象に投与されるときの炭水化物抗原の免疫原性を増加させる。
【0086】
一部の実施態様において、担体タンパク質は、T細胞エピトープを含んでいてもよいし、および/または投与のときに対象において細胞媒介性免疫応答を誘導することができる。
【0087】
一部の実施態様において、担体タンパク質は、投与されることになる対象にとって外因性であるタンパク質であり、好ましくは、対象において(近接した)オーソログがない上記タンパク質である。ヒトワクチン生産の状況において、本明細書に記載される担体タンパク質は、「ヒトでの使用に好適な担体タンパク質」または単に「好適な担体タンパク質」を指し、これは、担体タンパク質がヒトにおいて「自己抗原」と認識されないように、ヒトタンパク質とは抗原的に異なる担体タンパク質を意味する。対応するヒトタンパク質に抗原的に類似しすぎている担体タンパク質の使用は、担体タンパク質が「自己抗原」と認識されることを引き起こす可能性があり、これは、ヒトワクチンにおいて理想的ではない場合がある。これまでに、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)のリシン残基のε-アミノ基にランダムにコンジュゲートしたTF抗原からなるグリココンジュゲート免疫原が記載され、特徴付けられている(例えば、Demianら、2014;Rittenhouse-Diakunら、1998;Heimburgら、2006;Tatiら、2017)。しかしながら、BSAの59個のリシン残基における炭水化物のレベルがランダムで非効率的であるだけでなく(BSA分子1個当たり4~6個以下のTF抗原がコンジュゲートされた)、BSAは、ヒトアルブミンに抗原的に類似しすぎているため、ヒトワクチンにおける担体タンパク質として好適ではないと予想される。一部の実施態様において、担体タンパク質は、アルブミン(例えば、ウシ血清アルブミン)ではない。
【0088】
好ましくは、本明細書に記載される担体タンパク質は、すでにヒト対象への投与(例えば、承認されたワクチン)に関して規制当局(例えば、FDA)の承認を受けたタンパク質であり得る。一部の実施態様において、担体タンパク質は、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、交差反応性物質197(CRM197)、髄膜炎菌外膜タンパク質複合体(OMPC)、インフルエンザ菌のプロテインD(HiD)、サイトカイン、またはそれらの免疫原性フラグメント(またはバリアント)であるか、それ由来であるか、もしくはそれを含む。
【0089】
一部の実施態様において、担体タンパク質は、10個のシステイン残基を含有するTTであってもよく、これらのシステイン残基のうち4個はジスルフィド架橋に組み込まれ、6個のコンジュゲートした炭水化物抗原を有するグリココンジュゲート免疫原を生じさせる。一部の実施態様において、担体タンパク質は、4個のシステイン残基を含有するCRM197であってもよく、4個のコンジュゲートした炭水化物抗原を有するグリココンジュゲート免疫原を生じさせる。
【0090】
一部の実施態様において、担体タンパク質は、炭水化物抗原へのコンジュゲーションのために追加の遊離チオール基を導入するために、追加のシステイン残基が導入されるように操作することができる。一部の実施態様において、システイン残基は、担体タンパク質の溶媒に露出した部分において操作することができる。
【0091】
一部の形態において、本発明の記載は、グリココンジュゲートワクチンまたは免疫応答を引き起こす組成物を生産するための方法に関する。本方法は、本明細書に記載されるグリココンジュゲート免疫原を、医薬的に許容される賦形剤、および/またはアジュバントを用いて製剤化することを含んでいてもよい。一部の実施態様において、アジュバントは、無機化合物、鉱油、微生物誘導体、植物誘導体、サイトカイン、スクアレン、アラム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化リン酸カルシウム、toll様受容体アゴニスト、免疫刺激ポリヌクレオチド(例えば、CPG)、免疫刺激脂質、フロイントアジュバント、RIBIアジュバント、QS-21、ムラミルジペプチド、TiterMax(商標)、Steviune(商標)、Stimune(商標)、もしくはそれらのあらゆる組合せであるか、またはそれを含む。
【0092】
一部の形態において、本発明の記載は、1つまたはそれより多くの炭水化物抗原および1つまたはそれより多くの溶媒接近可能なシステイン残基を有する免疫原性担体タンパク質を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、1つまたはそれより多くの炭水化物抗原は、1つまたはそれより多くの溶媒接近可能なシステイン残基において、免疫原性担体タンパク質に連結されている、上記合成グリココンジュゲート免疫原に関する。1つまたはそれより多くの炭水化物抗原の免疫原性担体タンパク質へのコンジュゲーションは、対象に投与されると、コンジュゲートしていない炭水化物抗原の投与と比較した場合、1つまたはそれより多くの炭水化物抗原の免疫原性を増加させる。用語「合成」は、本明細書において使用される場合、ヒトの介入によって生産される、天然産物ではない化合物を指す。
【0093】
一部の実施態様において、本明細書に記載されるグリココンジュゲート免疫原は、同じ担体タンパク質にコンジュゲートした、1つより多くの種の炭水化物抗原(例えば、1つより多くのタイプのTACA)を含んでいてもよい。例えば、本明細書に記載されるグリココンジュゲート免疫原は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれより多くのタイプまたは種の炭水化物抗原(例えば、TACA)を含んでいてもよい。一部の実施態様において、本明細書に記載されるグリココンジュゲート免疫原は、Tn、S-Tn、トムゼン-フリーデンライヒ(TF)、(2,3)-S-TF、(2,6)-S-TF、グロボH、GD2、GD3、GM2、GM3、N-グリコリル-GM3、Lea、sLea、Lex、およびsLexから選択されるTACAのあらゆる組合せを含んでいてもよい。一部の実施態様において、各TACAの組合せにおける比率は、標的化される腫瘍に応じて様々であってもよく、1~20のモル比を含んでいてもよい。このようにして、本明細書に記載されるグリココンジュゲート免疫原は、例えば、複数のTACAの特定の組合せの発現の増加に関連するがんの具体的な形態に、適合させることができる。
【0094】
一部の形態において、本発明の記載は、本明細書に記載される方法によって生産されるグリココンジュゲートワクチン、および/または本明細書に記載される合成グリココンジュゲート免疫原を含み、さらに、医薬的に許容される賦形剤、および/またはアジュバントを含むグリココンジュゲートワクチンに関する。用語「ワクチン」は、本明細書で使用される場合、対象に治療上の利益を提供するために対象に投与される、本明細書に記載されるグリココンジュゲート免疫原を含む組成物を指す。一部の実施態様において、本明細書に記載されるグリココンジュゲートワクチンは、予防ワクチンまたは治療ワクチンであり得る。
【0095】
ワクチン組成物は、レシピエント動物の年齢、性別、体重、種および状態、ならびに投与経路のような要因を考慮して、医療または獣医学分野における当業者に周知の投薬量および技術によって投与することができる。投与経路は、経皮で、粘膜投与(例えば、口腔、鼻、眼)を介して、または非経口経路(例えば、皮内、筋肉内、皮下)を介してなされ得る。ワクチン組成物は、単独で投与してもよいし、または他の処置または療法と共投与もしくは逐次的に投与してもよい。投与の形態としては、非経口、皮下、皮内または筋肉内投与(例えば、注射投与)のための懸濁液および調製物、例えば滅菌懸濁液またはエマルジョンを挙げることができる。ワクチンは、スプレーとして投与してもよいし、または食物および/または水中に混合されてもよいし、または好適な担体、希釈剤、または賦形剤、例えば滅菌水、生理的食塩水、グルコースなどと混和して送達してもよい。組成物は、望ましい投与経路および調製物に応じて、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、アジュバント、ゲル化または粘度を強化する添加剤、保存剤、矯味矯臭剤、色素などの補助剤を含有していてもよい。余計な実験を行わずに好適な調製物を調製するために、標準的な製薬に関する教本、例えば「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、1990を参照することができる。
【0096】
一部の形態において、本発明の記載は、対象を免疫化する、対象にワクチン接種する、または対象を処置する方法であって、本明細書に記載されるグリココンジュゲート免疫原またはグリココンジュゲートワクチンを対象に投与することを含む、上記方法に関する。
【0097】
一部の形態において、本発明の記載は、スルフヒドリル特異的な(チオール特異的な)官能基に連結されるように化学修飾された炭水化物抗原に関する。一部の実施態様において、炭水化物抗原は、末端アルケンに連結されるように(例えば、グリコシド結合を介して)化学修飾されており、この場合、末端アルケン基は、チオール-エン反応を介して担体タンパク質の遊離チオールにコンジュゲート可能である。一部の実施態様において、炭水化物抗原および末端アルケン基は、本明細書に記載されるリンカーを介して連結されている。一部の実施態様において、末端アルケン基は、ビニル基またはアリル基であり得る。
【0098】
一部の形態において、本発明の記載は、担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、各リンカーは、構造:
【0099】
【化13】
(式中、SAは、糖抗原またはその一部であり;S-PCは、担体タンパク質であり;Xは、O、S、NR
1、またはCH
2であり;R
1は、-H、-COH、-COCH
3、または-COEtであり;nは、1、2、3、4、または5であり;R
2は、HまたはMeである)を有するか、またはその立体異性体(例えば、ジアステレオマー)である、上記合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0100】
一部の形態において、本発明の記載は、担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、各リンカーは、構造:
【0101】
【化14】
(式中、SAは、糖抗原またはその一部であり;S-PCは、担体タンパク質であり;Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;nは、1、2、3、4、または5であり;R
2は、HまたはMeであり;qは、1、2、3、4、または5であり;R
3およびR
4はそれぞれ、水素原子であり、mは、1、2、3、4もしくは5であるか、またはR
3およびR
4は、一緒になって、窒素原子に連結されたカルボニルと、ラジカル-CO-CH
2-またはラジカル-CO-CH
2-CH
2-を形成し、mは、1である)を有するか、またはその立体異性体(例えば、ジアステレオマー)である、上記合成グリココンジュゲート免疫原に関する。一部の実施態様において、XがOである場合、糖抗原は、TnまたはSTnを含まない。
【0102】
一部の形態において、本発明の記載は、担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、構造:
【0103】
【化15】
(式中、
- yは、少なくとも1であり;
- SAは、糖抗原またはその免疫原性部位からなる群から選択され、yが1より大きい場合、SAは、同一であるか、または異なり;
- [S]
z-PCは、1個またはそれより多くの遊離チオール基に由来する1個またはそれより多くの硫黄原子を有する担体タンパク質であり;
- zは、少なくとも1であり、少なくともyに等しく;
- Lは、構造:
【0104】
【化16】
を有するリンカーからなる群から選択されるリンカーであり、式中、
- Xは、O、S、NR
1、またはCH
2であり;
- R
1は、-H、-COH、-COCH
3、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
yが1より大きい場合、Lは、同一であるか、または異なる)
を有するか、またはその立体異性体である、上記合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0105】
一部の形態において、本発明の記載は、担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、構造:
【0106】
【化17】
(式中、
- yは、少なくとも1であり;
- SAは、糖抗原またはその免疫原性部位からなる群から選択され、yが1より大きい場合、SAは、同一であるか、または異なり;
- [S]
z-PCは、1個またはそれより多くの遊離チオール基に由来する1個またはそれより多くの硫黄原子を有する担体タンパク質であり;
- zは、少なくとも1であり、少なくともyに等しく;
- Lは、構造:
【0107】
【化18】
を有するリンカーからなる群から選択されるリンカーであり、式中、
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- R
3およびR
4はそれぞれ、水素原子であり、mは、1、2、3、4もしくは5であるか、またはR
3およびR
4は、一緒になって、窒素原子に連結されたカルボニルと、ラジカル-CO-CH
2-またはラジカル-CO-CH
2-CH
2-を形成し、mは、1であり;
yが1より大きい場合、Lは、同一であるか、または異なる)
を有するか、またはその立体異性体である、上記合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0108】
一部の形態において、本発明の記載は、担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、構造:
【0109】
【化19】
(式中、
- yは、少なくとも1であり;
- SAは、糖抗原またはその免疫原性部位からなる群から選択され、yが1より大きい場合、SAは、同一であるか、または異なり;
- [S]
z-PCは、1個またはそれより多くの遊離チオール基に由来する1個またはそれより多くの硫黄原子を有する担体タンパク質であり;
- zは、少なくとも1であり、少なくともyに等しく;
- Lは、構造:
【0110】
【化20】
を有するリンカーからなる群から選択されるリンカーであり、式中、
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- rは、1、2、3、4または5であり;
- R
5は、S-PC、共有結合または構造:
【0111】
【化21】
のラジカルであり、
式中、R
3およびR
4はそれぞれ、水素原子であり、mは、1、2、3、4もしくは5であるか、またはR
3およびR
4は、一緒になって、窒素原子に連結されたカルボニルと、ラジカル-CO-CH
2-またはラジカル-CO-CH
2-CH
2-を形成し、mは、1であり;
yが1より大きい場合、Lは、同一であるか、または異なる)
を有するか、またはその立体異性体である、上記合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0112】
一部の実施態様において、本発明の記載は、リンカーが、構造:
【0113】
【化22】
(式中、
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- rは、1、2、3、4または5である)
を有する、上記で定義された合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0114】
一部の実施態様において、本発明の記載は、リンカーが、構造:
【0115】
【化23】
(式中、
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- rは、1または2である)
を有する、上記で定義された合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0116】
一部の実施態様において、本発明の記載は、リンカーが、構造:
【0117】
【化24】
(式中、
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- rは、1または2である)
を有する、上記で定義された合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0118】
一部の実施態様において、本発明の記載は、yが、1から50、1から40、1から30、1から20、または1から10、1から5、または1から2の範囲の整数である、上述した合成グリココンジュゲート免疫原に関する。
【0119】
一部の実施態様において、糖抗原は、本明細書に記載される炭水化物抗原であってもよく、および/または担体タンパク質は、本明細書に記載される担体タンパク質であってもよい。一部の実施態様において、合成グリココンジュゲート免疫原は、多価グリココンジュゲート免疫原であってもよく、例えば、担体タンパク質にコンジュゲートした、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個、またはそれより多くの同一または異なるタイプの炭水化物抗原を含む、多価グリココンジュゲート免疫原であってもよい。一部の実施態様において、グリココンジュゲート免疫原は、対象に投与されると、炭水化物抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘導することができる。
【0120】
一部の形態において、本発明の記載は、本明細書に記載される合成グリココンジュゲート免疫原、ならびに医薬的に許容される賦形剤および/またはアジュバント(例えば、本明細書に記載されるようなアジュバント)を含むワクチンに関する。
【0121】
一部の形態において、本発明の記載は、ワクチンの製造のための、本明細書に記載される方法によって調製されたグリココンジュゲート免疫原、または本明細書に記載される合成グリココンジュゲート免疫原の使用に関する。
【0122】
一部の形態において、本発明の記載は、前記1つまたはそれより多くの炭水化物または糖抗原の発現の増加に関連する疾患を有する対象を処置するための、本明細書に記載される方法によって調製されたグリココンジュゲート免疫原、本明細書に記載される方法によって生産されたグリココンジュゲートワクチン、本明細書に記載される合成グリココンジュゲート免疫原、または本明細書に記載されるワクチンの使用に関する。
【0123】
一部の形態において、本発明の記載は、グリココンジュゲート免疫原に特異的に結合する抗体を生産するための、本明細書に記載される方法によって調製されたグリココンジュゲート免疫原、本明細書に記載される方法によって生産されたグリココンジュゲートワクチン、本明細書に記載される合成グリココンジュゲート免疫原、または本明細書に記載されるワクチンの使用に関する。
【0124】
一部の形態において、本発明の記載は、グリココンジュゲート免疫原に特異的に結合する抗体を検出するための、本明細書に記載される方法によって調製されたグリココンジュゲート免疫原、本明細書に記載される方法によって生産されたグリココンジュゲートワクチン、本明細書に記載される合成グリココンジュゲート免疫原、または本明細書に記載されるワクチンの使用に関する。
【0125】
一部の形態において、本発明の記載は、グリココンジュゲートを生産するための方法であって、(a)末端アルケン(アルケニル炭水化物抗原)に共有結合で連結された炭水化物抗原を提供する工程であって、末端アルケンは、チオール-エン反応を介してチオール基に直接コンジュゲート可能である、工程;(b)本明細書に記載されるチオール-エン反応を介した炭水化物抗原へのコンジュゲーションに好適なコンジュゲート材料を提供する工程であって、前記コンジュゲート材料は、1個またはそれより多くの遊離チオール基を有する、工程;および(c)光触媒性チオール-エン反応を実行して、炭水化物抗原を、1個またはそれより多くの遊離チオール基においてコンジュゲート材料に直接コンジュゲートすることによって、グリココンジュゲートを生産する工程を含む、上記方法に関する。一部の実施態様において、コンジュゲート材料は、ポリマー、ポリペプチド、本明細書において定義される担体タンパク質、固体支持体、粒子、または本明細書に記載されるチオール-エン反応を介して炭水化物抗原へのコンジュゲーションに好適な遊離チオール基を有する他のあらゆる材料であるか、またはそれを含む。
【0126】
一部の形態において、本発明の記載は、炭水化物抗原または炭水化物抗原を含む腫瘍循環細胞に特異的に結合する抗体の存在を検出またはスクリーニングするための、または炭水化物抗原での免疫化またはワクチン接種の結果生じる抗体の存在を検出するための、本明細書に記載される方法によって生産されたグリココンジュゲートの使用に関する。一部の実施態様において、検出またはスクリーニングは、あらゆる好適な検出方法、例えば免疫吸着測定法、ELISA、マイクロアレイ、または免疫ブロット分析を介して実行されてもよい。
【0127】
一部の形態において、本発明の記載は、対象を処置する方法であって、本明細書において定義された、または本明細書に記載される方法によって生産されたグリココンジュゲートまたはグリココンジュゲート免疫原を投与して、炭水化物抗原に対する前記対象における免疫応答を生じさせること、および前記対象からの生物学的サンプルを、炭水化物抗原に特異的に結合する抗体の存在に関してスクリーニングすることを含む、上記方法に関する。
【0128】
本発明の記載の他の目的、利点および特徴は、添付の図面を参照しながら、単なる例として例示された以下に示すそれらの具体的な実施態様の非制限的な記載を読むことでより明らかになると予想される。
【0129】
項目
1.対象への投与のためのグリココンジュゲート免疫原を生産するための方法であって、(a)末端アルケン(アルケニル炭水化物抗原)に共有結合で連結された炭水化物抗原を提供する工程であって、末端アルケンは、チオール-エン反応を介してチオール基に直接コンジュゲート可能である、工程;(b)1個またはそれより多くの遊離チオール基を有する担体タンパク質を提供する工程;および(c)光触媒性チオール-エン反応を実行して、1個またはそれより多くの遊離チオール基において、炭水化物抗原を担体タンパク質に直接コンジュゲートすることによって、グリココンジュゲート免疫原を生産する工程を含み、担体タンパク質は、対象に対して免疫原性であり、炭水化物抗原の担体タンパク質へのコンジュゲーションは、コンジュゲートしていない炭水化物抗原の投与と比較した場合、対象に投与されるときの炭水化物抗原の免疫原性を増加させる、上記方法。
【0130】
2.アルケニル炭水化物抗原が、水溶性である、項目1に記載の方法。
【0131】
3.前記光触媒性チオール-エン反応が、担体タンパク質の活性、抗原性、および/または構造を保持する反応条件下で実行される、項目1または2に記載の方法。
【0132】
4.前記光触媒性チオール-エン反応が、いずれの有機溶媒の非存在下で実行される、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0133】
5.前記光触媒性チオール-エン反応が、触媒の存在下で実行される、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0134】
6.触媒が、水溶性触媒である、項目5に記載の方法。
【0135】
7.前記光触媒性チオール-エン反応が、短波紫外光下での放射線照射を含む、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0136】
8.前記光触媒性チオール-エン反応が、約254nmでの放射線照射を含む、項目7に記載の方法。
【0137】
9.前記光触媒性チオール-エン反応が、長波紫外光下での放射線照射を含む、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0138】
10.前記光触媒性チオール-エン反応が、約365nmでの放射線照射を含む、項目9に記載の方法。
【0139】
11.前記光触媒性チオール-エン反応が、担体タンパク質の遊離チオール基1つ当たり1~10モル当量のアルケニル炭水化物抗原を反応させることを含む、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0140】
12.前記光触媒性チオール-エン反応が、約3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、または4.0から、約4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、または10までの間のpHで実行される、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0141】
13.前記炭水化物抗原が、担体タンパク質へのコンジュゲーションの後、対象の内因性酵素によって担体タンパク質から切断可能ではない、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0142】
14.前記アルケニル炭水化物抗原が、末端アルケンに共有結合で連結されているか、および/または炭水化物抗原が、グリコシド結合を介して、例えば、O-グリコシド結合、S-グリコシド結合、N-グリコシド結合、もしくはC-グリコシド結合、または例えばアリルアミンと還元糖との間での還元的アミノ化により得られた結合を介して、担体タンパク質にコンジュゲートされている、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0143】
15.炭水化物抗原が、B細胞エピトープを含むか、および/または対象において体液性免疫応答を誘導する、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0144】
16.炭水化物抗原が、腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)であるか、またはそれを含む、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
【0145】
17.TACAが、Tn、S-Tn、トムゼン-フリーデンライヒ(TF)、(2,3)-S-TF、(2,6)-S-TF、グロボH、GD2、GD3、GM2、GM3、またはそれらのあらゆる組合せであるか、それ由来であるか、もしくはそれを含む、項目16に記載の方法。
【0146】
18.前記光触媒性チオール-エン反応が、1つより多くのタイプの炭水化物抗原を、担体タンパク質にコンジュゲートさせることによって、多価グリココンジュゲート免疫原を生産する、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
【0147】
19.前記多価グリココンジュゲート免疫原が、担体タンパク質にコンジュゲートした、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれより多くの異なるタイプの炭水化物抗原を含む、項目18に記載の方法。
【0148】
20.炭水化物抗原が、ウイルス多糖抗原、または細菌莢膜多糖体(CPS)であるか、またはそれを含む、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
【0149】
21.細菌CPSが、肺炎球菌および/または連鎖球菌多糖体の血清型であるか、それ由来であるか、またはそれを含む、項目20に記載の方法。
【0150】
22.(a)における炭水化物抗原が、リンカーを介して、末端アルケンに連結されている、項目1~21のいずれか一項に記載の方法。
【0151】
23.担体タンパク質が、1個またはそれより多くの遊離チオール基を有する1個またはそれより多くのシステイン残基を含む、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
【0152】
24.担体タンパク質が、ヒトT細胞エピトープを含むか、および/または対象において細胞媒介性免疫応答を誘導する、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
【0153】
25.担体タンパク質が、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、交差反応性物質197(CRM197)、髄膜炎菌外膜タンパク質複合体(OMPC)、インフルエンザ菌のプロテインD(HiD)、サイトカイン、またはそれらの免疫原性フラグメントであるか、それ由来であるか、もしくはそれを含む、項目1~24のいずれか一項に記載の方法。
【0154】
26.担体タンパク質が、1つまたはそれより多くのジスルフィド架橋を有するタンパク質であり、(i)1つまたはそれより多くのジスルフィド架橋が、前記光触媒性チオール-エン反応の後、影響を受けないままであり;または(ii)担体タンパク質を還元剤で前処理して、炭水化物抗原へのコンジュゲーションのために、1つまたはそれより多くの追加の遊離チオール基を露出させる、項目1~25のいずれか一項に記載の方法。
【0155】
27.グリココンジュゲート免疫原に含まれる炭水化物抗原の総数が、コンジュゲーション前の担体タンパク質上の利用可能な遊離チオール基の数に等しい、項目1~26のいずれか一項に記載の方法。
【0156】
28.グリココンジュゲート免疫原が、対象に投与されると、炭水化物抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘導する、項目1~27のいずれか一項に記載の方法。
【0157】
29.(d)グリココンジュゲート免疫原を精製する工程をさらに含む、項目1~28のいずれか一項に記載の方法。
【0158】
30.グリココンジュゲートワクチンを生産するための方法であって、項目1~29のいずれか一項に記載の方法によって調製されたグリココンジュゲート免疫原を、医薬的に許容される賦形剤、および/またはアジュバントを用いて製剤化することを含む、上記方法。
【0159】
31.アジュバントが、無機化合物、鉱油、微生物誘導体、植物誘導体、サイトカイン、スクアレン、アラム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化リン酸カルシウム、toll様受容体アゴニスト、免疫刺激ポリヌクレオチド、免疫刺激脂質、フロイントアジュバント、RIBIアジュバント、QS-21、ムラミルジペプチド、もしくはそれらのあらゆる組合せであるか、またはそれを含む、項目30に記載の方法。
【0160】
32.1つまたはそれより多くの炭水化物抗原および1つまたはそれより多くの溶媒接近可能なシステイン残基を有する免疫原性担体タンパク質を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、1つまたはそれより多くの炭水化物抗原は、1つまたはそれより多くの溶媒接近可能なシステイン残基において、免疫原性担体タンパク質に連結されており、1つまたはそれより多くの炭水化物抗原の免疫原性担体タンパク質へのコンジュゲーションは、対象に投与されると、コンジュゲートしていない炭水化物抗原の投与と比較した場合、1つまたはそれより多くの炭水化物抗原の免疫原性を増加させる、上記合成グリココンジュゲート免疫原。
【0161】
33.1つまたはそれより多くの炭水化物抗原が、リンカーを介して、1つまたはそれより多くの溶媒接近可能なシステイン残基に連結されている、項目32に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
【0162】
34.1つまたはそれより多くの炭水化物抗原が、項目13または14で定義された結合を介して、リンカーに連結されている、項目32に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
【0163】
35.1つまたはそれより多くの炭水化物抗原が、項目2、15、16、17、20、または21で定義された通りである、項目32~34のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
【0164】
36.項目18または19で定義された多価グリココンジュゲート免疫原である、項目32~35のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
【0165】
37.担体タンパク質が、項目23、24、25、または26で定義された通りである、項目32~36のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
【0166】
38.グリココンジュゲート免疫原に含まれる炭水化物抗原の総数が、担体タンパク質における溶媒接近可能なシステイン残基の数に等しい、項目32~37のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
【0167】
39.対象に投与されると、炭水化物抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘導する、項目32~38のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
【0168】
40.項目1~29のいずれか一項に記載の方法によって調製される、項目32~39のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
【0169】
41.項目30または31に記載の方法によって生産されたグリココンジュゲートワクチン、ならびに/または項目32~40のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原、ならびに医薬的に許容される賦形剤、および/またはアジュバントを含むグリココンジュゲートワクチン。
【0170】
42.予防ワクチンまたは治療ワクチンである、項目41に記載のグリココンジュゲートワクチン。
【0171】
43.対象を免疫化する、対象にワクチン接種する、または対象を処置する方法であって、項目1~29のいずれか一項に記載の方法によって生産されたグリココンジュゲート免疫原、項目30または31に記載の方法によって生産されたグリココンジュゲートワクチン、項目32~40のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原、または項目41または42に記載のグリココンジュゲートワクチンを対象に投与することを含む、上記方法。
【0172】
44.疾患を有する対象を免疫化すること、対象にワクチン接種をすること、または対象を処置することにおいて使用するための、項目32~40のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原、または項目41または42に記載のグリココンジュゲートワクチン。
【0173】
45.担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、各リンカーは、構造:
【0174】
【化25】
(式中、
- SAは、糖抗原またはその一部であり;
- PCは、担体タンパク質であり;
- Xは、O、S、NR
1、またはCH
2であり;
- R
1は、-H、-COH、-COCH
3、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeである)
を有するか、またはその立体異性体である、上記合成グリココンジュゲート免疫原。
【0175】
46.担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、各リンカーは、構造:
【0176】
【化26】
(式中、
- SAは、糖抗原またはその一部であり;
- PCは、担体タンパク質であり;
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- R
3およびR
4はそれぞれ、水素原子であり、mは、1、2、3、4もしくは5であるか、またはR
3およびR
4は、一緒になって、窒素原子に連結されたカルボニルと、ラジカル-CO-CH
2-またはラジカル-CO-CH
2-CH
2-を形成し、mは、1である)
を有するか、またはその立体異性体である、上記合成グリココンジュゲート免疫原。
【0177】
47.前記糖抗原が、項目15、16、17、20、または21で定義された炭水化物抗原である、項目45または46に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
【0178】
48.前記担体タンパク質が、項目23、24、または25で定義された担体タンパク質である、項目45~47のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
【0179】
49.多価グリココンジュゲート免疫原である、項目45~49のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
【0180】
50.前記多価グリココンジュゲート免疫原が、担体タンパク質にコンジュゲートした、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれより多くの異なるタイプの炭水化物抗原を含む、項目49に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
【0181】
51.グリココンジュゲート免疫原が、対象に投与されると、炭水化物抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘導する、項目45~50のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
【0182】
52.項目45~51のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原、ならびに医薬的に許容される賦形剤および/またはアジュバントを含むワクチン。
【0183】
53.アジュバントが、項目31で定義された通りである、項目52に記載のワクチン。
【0184】
54.ワクチンの製造のための、項目1~29のいずれか一項に記載の方法によって調製されたグリココンジュゲート免疫原、または項目32~40および45~51のいずれか1つで定義された合成グリココンジュゲート免疫原の使用。
【0185】
55.前記1つまたはそれより多くの炭水化物または糖抗原の発現の増加に関連する疾患を有する対象を処置するための、項目1~29のいずれか一項に記載の方法によって調製されたグリココンジュゲート免疫原、項目30または31に記載の方法によって生産されたグリココンジュゲートワクチン、項目32~40および45~51のいずれか1つで定義された合成グリココンジュゲート免疫原、または項目52または53に記載のワクチンの使用。
【実施例】
【0186】
実施例1:一般的な方法
反応を、商業的に入手可能なHPLCグレードを使用したアルゴン雰囲気下で行った。商業的に入手可能な試薬(シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich))をそれ以上精製せずに使用した。N-アセチル-D-ガラクトサミンおよびN-アセチルノイラミン酸は、ローズサイエンティフィック社(Rose Scientific Ltd.)、アルバータ州、カナダから提供された。Fmoc-β-Ala-Wang樹脂およびFmocアミノ酸は、ペプチドテクノロジー社(Peptide Technologies Ltd)、ピエールフォン、Qc、カナダから商業的に入手可能であった。反応の進行を、シリカゲル60F254でコーティングされたプレート(E.メルク(E. Merck))を使用した薄層クロマトグラフィーによってモニターした。クリックチオール-エン光化学反応によるコンジュゲーションを、2つの手持ち式のUV365nmランプ(UV-ACハンドランプ、デュアル254/365nm UV;115V~60Hz、0.16amp、VWRカナダ(VWR Canada)、カタログ番号89131-492)の間に設置した石英キュベット(10×10mmのパス長、フィッシャー・サイエンティフィック・カナダ(Fisher Scientific Canada)、カタログ番号14-958-130)中で行った。フラッシュクロマトグラフィーを、カナダのライフサイエンス(Life Science)からのZEOprep(商標)シリカゲル60(40~63μm)を使用して実行した。検出を、紫外線下で、または20%エタノールを含む硫酸またはモリブデン酸塩またはKMnO4溶液と共にスプレーし、続いて加熱することによって行った。NMRスペクトルを、ブルカー(Bruker)のULTRASHIELD(商標)300MHzおよびブルカーのAvance(商標)III HD 600MHz分光計で記録した。プロトンおよび炭素の化学シフト(d)は、7.26ppm(1H)および77.16ppm(13C)で設定された残留CHCl3の化学シフトに対するppmで報告される。結合定数(J)はヘルツ(Hz)で報告され、ピーク多重度に関しては以下の略語が使用される:一重項(s)、二重項(d)、二重項の二重項(dd)、等しい結合定数を有する二重項の二重項(tap)、三重項(t)、多重項(m)。分析および割り当てを、COSY(相関分光法)およびHSQC(異核単一量子干渉)実験を使用して行った。高分解能質量スペクトル(HRMS)を、アジレント・テクノロジーズ(Agilent technologies)からのLC-MS-TOF(高速液体クロマトグラフィー/飛行時間型質量分析)機器を用いて、UQAMの分析プラットフォームによってポジティブおよび/またはネガティブエレクトロスプレーモードで測定した。実験式の確認のために、プロトン化イオン(M+H)+またはナトリウム付加物(M+Na)+のいずれかを使用した。天然のTTおよびTT-コンジュゲートを、2000KDaのベンゾイル化透析チューブ(シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)(オンタリオ州、カナダ)を使用して透析した。天然の、およびコンジュゲートしたTTの両方のチオール含量を、412nmでのエルマン試験によって決定した(Ellman, G. L. Arch. Biochem. Biophys. 1959、82、70~77)。TT-コンジュゲートの全糖含量を、UV/VISウルトロスペック(Ultrospec)100プロット分光光度計(バイオクロム(Biochrom)、米国)を使用して492nmで測定された比色DuBois試験によって決定した(Dubois, M.; Gilles, K. A.;Hamilton, J. K.; Rebers, P. A.;Smith, F. Colorimetric Method for Determination of Sugars and Related Substances. Anal. Chem.、1956、28、350~356)。動的光散乱(DLS)、粒度分布を、マルバーン(Malvern)からのゼータサイザーナノ(Zetasizer Nano)S90を使用して、PBS中で測定した。マウスモノクローナルIgG3抗体JAA-F11を、これまでにRittenhouse-Diakunら、1998に記載されたようにして生産された。
【0187】
■一般的な固相ペプチド合成(SPPS)手順
固相ペプチド合成(SPPS)の手順は、文献の手順(Papadopoulosら、2012)に従い、Fmoc-β-Ala-Wang樹脂(650mg、0.34mmol、1.0当量;100~200メッシュ、ローディング=0.52mmol/g)から開始した。反応を、1.5×14cmのEcono-Pac使い捨てカラム(20mL)(バイオ-ラッド・ラボラトリーズ(Bio-Rad Laboratories)、オンタリオ州、カナダ)で回転によるかき混ぜによって実行した。1時間の間に、樹脂をCH2Cl2中で膨潤させ、次いでろ過し、1時間の間に、DMF中で再度調整した。商業的な樹脂またはアミノ酸のFmoc保護基を、DMF中の20%ピペリジンの溶液(5mL、2×5分、次いで1×10分)を用いて除去した。溶媒および試薬をろ過によって除去し、樹脂を、DMF、CH2Cl2およびMeOHで洗浄した(各溶媒で3回)。遊離アミノ基の存在を、カイザー試験またはTNBS試験によって検証した。樹脂上の遊離アミンを、DMF中の、予め活性化させたFmocアミノ酸:3当量のアミノ酸、3当量のHBTU(N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート)および触媒的な量のHOBt(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)の溶液で4℃で(10分)処理した。次いでこの混合物にDIPEA(ジイソプロピルアミン、9当量)を添加し、室温で1時間30分撹拌した。カップリングの完了は、カイザーまたはTNBS比色試験を使用して決定した。ろ過の後、樹脂を洗浄し、Fmoc除去手順を再度繰り返した。合成配列の末端に、最後の遊離アミンを、アセチル化(1:1:8のAc2O/DIPEA/DMF、1時間)によってキャッピングした。ろ過の後、溶液を切って、樹脂を真空中で乾燥させ、トリフルオロ酢酸/水/エタンジチオール/トリイソプロピルシラン(triisopropysilane)(94.0/2.5/2.5/1.0)を使用して切断を3時間行った。得られたペプチドをメチルtert-ブチルエーテルを用いて沈殿させ、遠心分離(20分、2000rpm、3×)によって樹脂ビーズから単離した。沈殿を空気噴流を用いて慎重に乾燥させた。未精製ペプチドをH2O中に溶解させて、樹脂から分離した。次いで溶液を凍結乾燥して、所望のペプチドを得た。
【0188】
■dTT831-844-Cys-βAla
Fmoc-β-Ala-Wang樹脂(650mg、0.34mmol、1.0当量;100~200メッシュ、ローディング=0.52mmol/g)から、所望のペプチドdTT831-844-Cys-βAlaを白色の粉末として単離した(62mg、0.034mmol、10%)。ESI+-LC-MS:[M+2H]+2 C83H135O24N19Sの計算値、906.9819;実測値、906.9849;CAN/H2O 5~95% 5.42分。
【0189】
■Cys-dTT831-844-βAla
Fmoc-β-Ala-Wang樹脂(650mg、0.34mmol、1.0当量;100~200メッシュ、ローディング=0.52mmol/g)から、所望のペプチドCys-dTT831-844-βAlaを白色の粉末として単離した(62mg、0.034mmol、10%)。ESI+-LC-MS:[M+2H]+2 C83H135O24N19Sの計算値、906.9819;実測値、906.9844;CAN/H2O 5~95% 5.32分。
【0190】
実施例2:アリル2-アセトアミド-3,6-ジ-O-ピバロイル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(化合物2)
【0191】
【化27】
図5を参照すれば、塩化アセチル(2.76mL、38.80mmol、3.43当量)を、アルゴン雰囲気下で、0℃で、アリルアルコール(20.8mL)に一滴ずつ添加した。室温で、N-アセチル-D-グルコサミン(化合物1)(2.50g、11.3mmol、1.00当量)を添加した。反応混合物を70℃で3時間撹拌し、次いでpH7まで固体NaHCO
3を添加することによってクエンチした。懸濁液をセライトのパッドに通過させてろ過し、MeOHで数回洗浄した。溶媒を減圧下で除去し、未精製のアリル2-アセトアミド-2-デオキシ-D-グルコサミンを、Et
2O/エタノールでの粉砕によって沈殿させた。次いで粉砕後、溶媒を減圧下で数回除去した。-15℃、窒素雰囲気下で、無水ジクロロメタン-ピリジン(45mL、v/v、1:2)の混合物中の、未精製のアリル2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド中間体の懸濁液に、塩化ピバロイル(3.90mL、31.64mmol、2.80当量)を一滴ずつ添加した。反応混合物を2時間撹拌し、室温に温め、望ましいα-アノマー(化合物2)(Rf=0.32)を一部のβ-アノマー(Rf=0.18)と共に得た;1:1のヘキサン/EtOAc)。次いで混合物をCH
2Cl
2で希釈し、有機相を連続的にHCl(1M)、KHSO
4の飽和水溶液、NaHCO
3の飽和溶液、およびブラインで数回洗浄した。有機相をNa
2SO
4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で蒸発させた。黄色がかった油をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(6:4~1:1のヘキサン-EtOAc)で精製し、望ましい化合物であるアリル2-アセトアミド-3,6-ジ-O-ピバロイル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(化合物2)を白色の固体として得た(4.85g、6.78mmol、60%)。Rf=0.32;1:1のヘキサン/EtOAc;
図6Aおよび6B:
1H NMR (CDCl
3, 600 MHz):δ 5.87 (dddd, 1H, J
H,H = 16.8, 10.5, 6.2, 5.3 Hz, OCH
2CH=CH
2), 5.77 (d, 1H, J
NH,H2 = 9.7 Hz, NH), 5.31-5.25 (m, 1H, OCH
2CH=CH
2), 5.22 (dd, 1H, J
H,H = 10.4, 1.3 Hz, OCH
2CH=CH
2), 5.09 (dd, 1H, J
3,4 = 10.7, J
2,3 = 9.3 Hz, H-3), 4.83 (d, 1H, J
1,2 = 3.7 Hz, H-1), 4.39 (m, 1H, H-6a), 4.35-4.25 (m, 2H, H-6bおよびH-2), 4.19 (m, 1H, OCH
2), 4.02-3.93 (m, 1H, OCH
2), 3.85 (m, 1H, H-5), 3.59-3.48 (m, 1H, H-4), 3.03 (d, 1H, J
4,OH = 5.1 Hz, OH-4), 1.93 (s, 3H, NHCOCH
3), 1.23 (s, 9H, tert-ブチル)および1.19 ppm (s, 9H, tert-ブチル) ;
13C NMR (CDCl
3, 150 MHz):δ 179.8, 179.1 (tert-BuCO), 169.7 (NHCO), 133.2 (OCH
2CH=CH
2), 118.1 (OCH
2CH=CH
2), 96.4 (C-1), 73.4 (C-3), 70.5 (C-5), 69.1 (C-4)。68.2 (OCH
2), 63.1 (C-6), 51.4 (C-2), 39.0、38.9 (2×C(CH
3)
3), 27.2、27.0 (2×C(CH
3)
3)および23.2 ppm (CH
3)。
図6Cおよび6D:ESI
+-HRMS:[M+H]
+ C
21H
36O
8Nの計算値、430.2435;実測値、430.2445。β-アノマーを白色の固体として単離した(971mg、2.26mmol、20%)。Rf=0.18;1:1のヘキサン/EtOAc;
1H NMR (CDCl
3、300 MHz):δ 6.00 (d, 1H, J
NH,H2 = 9.3 Hz, NH), 5.95-5.75 (m, 1H, OCH
2CH=CH
2), 5.35-5.03 (m, 3H, OCH
2CH=CH
2およびH-3), 4.55 (d, 1H, J
1,2 = 8.4 Hz, H-1), 4.47-425 (m, 3H, H-6a, 6bおよびOCH
2), 4.14-3.90 (m, 2H, OCH
2およびH-2), 3.65-3.43 (m, 2H, H-5およびH-4), 3.23 (sb, 1H, OH-4), 1.92 (s, 3H, NHCOCH
3), 1.23 (s, 9H, tert-ブチル)および1.20 ppm (s, 9H, tert-ブチル)。
【0192】
実施例3:アリル2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTn)
【0193】
【化28】
図5を参照すれば、無水ジクロロメタン-ピリジン(126mL、v/v、20:1)の混合物中のジ-O-ピバロイル化合物(化合物2)(5.50g、12.80mmol、1.0当量)をアルゴン雰囲気下で-35℃に冷却した。次いでトリフルオロメタンスルホン酸無水物(2.58mL、15.36mmol、1.2当量)を添加し、混合物をこの温度で撹拌した。温度を2時間かけて室温にした。次いでこの溶液に水(12mL)を添加した。混合物を加熱し、還流しながら(約50℃)一晩(12時間)撹拌した。室温に達した後、反応混合物をジクロロメタンで希釈し、1MのHCl水溶液で数回洗浄した。有機層を、H
2O、飽和NaHCO
3、およびブラインで洗浄した。有機層をNa
2SO
4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で蒸発させた。粗生成物を、ゼンプレン(Zemplen)条件(メタノール中の1Mナトリウムメトキシド溶液、40mL、pH9)下で処理した。この溶液を50℃で一晩撹拌した。室温に冷却した後、この溶液を、イオン交換樹脂(アンバーライト(Amberlite)(登録商標)IR120、H
+)に添加することによって中和し、ろ過し、MeOHで洗浄し、溶媒を減圧下で除去した。凍結乾燥後、MeOH/EtOAc/ヘキサン中での沈殿によってアリルT
Nを白色の固体として単離した(2.36g、9.10mmol、71%)。Rf=0.32;4:1のEtOAc/MeOH;
図7Aおよび7B:
1H NMR (CD
3OD, 600 MHz):δ 5.99-5.88 (m, 1H, OCH
2CH=CH
2), 5.31 (dd, 1H, J
trans= 17.3, J
gem = 1.3 Hz, OCH
2CH=CH
2), 5.17 (dd, 1H, J
cis = 10.5 Hz, OCH
2CH=CH
2), 4.86 (d, 1H, J
1,2 = 3.8 Hz, H-1), 4.27 (dd, 1H, J
2,3 = 11.0 Hz, H-2), 4.20 (m, 1H, OCH
2), 4.00 (m, 1H, OCH
2), 3.89 (dd, J
3,4= J
4,5 = 2.6 Hz, H-4), 3.85-3.77 (m, 2H, H-3およびH-5), 3.72 (m, 2H, H-6aおよびH-6b)および1.99 ppm (s, 3H, CH
3) ;
13C NMR (CD
3OD, 150 MHz):δ 172.5 (NHCO), 134.2 (OCH
2CH=CH
2), 116.1 (OCH
2CH=CH
2), 96.6 (C-1), 71.2 (C-3), 69.0 (C-4), 68.3 (C-5)。67.8 (OCH
2), 61.4 (C-6), 50.2 (C-2)および21.2 ppm (CH
3)。
図7Cおよび7D:ESI
+-HRMS:[M+H]
+ C
11H
20O
6Nの計算値、262.1285;実測値、262.1294。
【0194】
■手順B
アリル2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシドはまた、文献の手順(Fengら、2004)に従ってN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)から直接調製することもできる。アリルアルコール(8mL)中のN-アセチルガラクトサミン(442mg、2mmol、1.0当量)の溶液に、室温でBF3・Et2O(250μL、2mmol、1.0当量)を添加し、混合物を70℃で2時間撹拌した。この溶液を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去した。乾燥粗生成物を最小限のEtOH(5mL)中に溶解させた。所望のアリルTN生成物を、ジイソプロピルエーテル中で沈殿させ、白色の固体として単離した(417mg、1.60mmol、80%)。
【0195】
C-アリルGalNAc類似体(
図5)[1-(2’-アセトアミド-2’-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシル)-2-プロペン]を、文献の手順に従って調製した(Cipollaら、2000:3-(2-アセトアミド-3,4,6-トリ-O-アセチル-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシル)-1-プロペン(Cuiら、1998)(371mg、1.00mmol、1.0当量)を、ゼンプレン条件(メタノール中の1Mナトリウムメトキシド溶液、5mL、pH8~9)下で処理した。この溶液を室温で1時間撹拌した。反応混合物を、イオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)IR120、H
+)に添加することによって中和し、ろ過し、MeOHで洗浄し、溶媒を減圧下で除去した。C-アリルT
Nをシリカゲルでのクロマトグラフィー(9:1~4:1のEtOAc/MeOH)によって精製し、続いてEtOH中で白色の固体として結晶化させた(213mg、0.87mmol、87%)。Rf=0.28;EtOH 4:1;mp230℃(文献値215~217℃、EtOAc/EtOH);文献のNMRデータにより:
1H NMR (CD
3OD, 600 MHz):δ 5.81 (m, 1H,
1CH
2CH=CH
2), 5.08 (dd, 1H, J
trans= 17.2, J
gem = 1.7 Hz,
1CH
2CH=CH
2), 5.02 (dd, 1H, J
cis = 10.2 Hz,
1CH
2CH=CH
2), 4.22 (dd, 1H, J = 9.3、5.0 Hz, H-2’), 4.14 (dt, 1H, J = 10.0、5.0 Hz, H-1’), 3.91 (dd, 1H, J = 3.0 Hz, H-4’), 3.82-3.64 (m, 4H, H-3’, H-5’およびH-6’ab), 2.45 (m, 1H, H-1a), 3.17 (m, 1H, H-1b)および1.97 ppm (s, CH
3) ;
13C NMR (CD
3OD, 150 MHz):δ 173.6 (NHCO), 136.2 (
1CH
2CH=CH
2), 117.1 (
1CH
2CH=CH
2), 72.9 (C-1’), 69.7 (C-4’), 69.5 (C-3’およびC-5’), 61.8 (C-6’), 52.0 (C-2’), 32.4 (
1CH
2)および22.5 ppm (CH
3)。ESI
+-LCMS:[M+H]
+ C
11H
20O
5Nの計算値、246.1336;実測値、246.1332;CAN/H
2O 5~95% 1.4分。
【0196】
S-アリルGalNAc類似体(
図5)を文献:Knappら、2002に従って調製した。
【0197】
実施例4:アリル2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物4)
【0198】
【化29】
図5を参照すれば、無水DMF(20mL)中のアリルGalNAc(Tn)(2.35g、9.0mmol、1.0当量)およびベンズアルデヒドジメチルアセタール(6.75mL、45.0mmol、5.0当量)の溶液に、触媒的な量のp-トルエンスルホン酸一水和物を添加した。混合物を室温で撹拌した。5時間の後、混合物をCHCl
3で希釈し、NaHCO
3の飽和水溶液で洗浄した。有機層を分離し、水で洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濃縮して、白色の固体を得た。ベンジリデンアセタール(4)を、EtOAc/ヘキサン中での沈殿によって白色の固体として単離した(2.64g、7.56、84%)。Rf=0.21;9.0:0.5のDCM/MeOH;
図8A:
1H NMR (CDCl
3、300 MHz):δ 7.59-7.46 (m, 2H, H-ar), 7.43-7.31 (m, 3H, H-ar), 5.91 (m, 1H, OCH
2CH=CH
2), 5.75 (d, 1H, J
NH,H2 = 9.0 Hz, NH), 5.58 (s, 1H, PhCH), 5.34-5.17 (m, 2H, OCH
2CH=CH
2), 5.01 (d, 1H, J
1,2 = 3.5 Hz, H-1), 4.56-4.42 (ddd, 1H, J
2,3 = 10.9 Hz, J
2,OH = 9.1 Hz, H-2), 4.34 (dd, 1H, J
5,6a = 1.5 Hz, J
6a,6b = 12.5 Hz, H-6a), 4.19 (m, 2H, H-4およびOCH
2), 4.04 (m, 1H, dd, 1H, J
5,6b= 1.6 Hz, J
6a,6b = 12.5 Hz, H-6b), 4.01 (m, OCH
2), 3.86 (dd, 1H, J
3,4 = 10.9 Hz, H-3), 3.71 (sb, 1H, H-5), 2.80 (d, 1H, J
3,OH= 10.7 Hz, OH-3)および2.05 ppm (s, 3H, CH
3) ;
図8Bおよび8C:ESI
+-HRMS:[M+H]
+ C
18H
24O
6Nの計算値、350.1598;実測値、350.1608。
【0199】
実施例5:アリル(2,3,4,6-テトラ-O-ベンゾイル-β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-4,6-O-ベンジリデン-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(化合物6)
【0200】
【化30】
図5を参照すれば、化合物4(2.0g、5.72mmol、1.0当量)およびシアン化第二水銀(2.17g、8.60mmol、1.5当量)を、アルゴン雰囲気下で、4Åの分子篩を含有する無水ニトロメタン-トルエン(100mL、3:2、v/v)の混合物中に溶解させた。混合物を室温で30分撹拌した。混合物に、2,3,4,6-テトラ-O-ベンゾイル-α-D-ガラクトピラノシルブロミド(化合物5)(5.66g、8.58mmol、1.5当量)を添加した。この溶液を70℃で5時間撹拌し、次いで室温で一晩(8時間)撹拌し続けた。TLC(9.0:0.5のDCM/MeOH)によって示されるように出発材料(化合物4)が全部消費された後、溶媒を減圧下で除去した。残留物をEtOAc中に溶解させ、続いてセライトパッドを介してろ過した。ろ液を連続的に10%ヨウ化カリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および水で洗浄し、次いでNa
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させて、白色の発泡体を得た。粗生成物を、100%ヘキサンから1:2のヘキサン/EtOAcの勾配を使用したシリカゲルでのクロマトグラフィーによって精製して、望ましい二糖(化合物6)を白色の固体として得た(4.98、5.38mmol、94%)。mp:110~111℃、Rf=0.20;1:2のヘキサン/EtOAc;
図9Aおよび9B:
1H NMR (CDCl
3、600 MHz):δ 8.06-7.19 (m, 5H, H-ar), 5.98 (dd, 1H, J
3,4’ = 3.3 Hz, J
4,5’ = 1.0 Hz, H-4
II), 5.85-5.78 (m, 2H, OCH
2CH=CH
2およびH-2
II), 5.60 (dd, 1H, J
2,3’ = 10.2 Hz, J
3,4’ = 3.4 Hz, H-3
II), 5.48 (sb, 1H, NH), 5.23 (m, 3H, OCH
2CH=CH
2およびH-1), 4.68 (dd, 1H, J
5’,6a’ = 6.9 Hz, J
6a’,6b’ = 11.4 Hz, H-6a
I), 4.63-4.58 (m, 1H, H-2), 4.46-4.36 (m, 3H, H-4, H-5およびH-6b
II), 4.14-4.07 (m, 3H, H-6a, OCH
2およびH-3), 3.96 (m, 1H, OCH
2), 3.75 (m, 1H, H-6b), 3.51 (m, 1H, H-5)および1.40 ppm (s, 3H, CH
3) ;
13C NMR (CDC
13、150 MHz):δ 170.0 (NHCO), 166.0、165.5、165.4、165.2 (CO), 137.6-126.2 (multi, 30 C-arom), 133.2 (OCH
2CH=CH
2), 117.8 (OCH
2CH=CH
2), 102.0 (C-1
II), 100.9 (CPhCH), 97,3 (C-1
I), 76.1 (C-3), 75.4 (C-4), 71.7 (C-3
IIおよびC-5
II), 70.2 (C-2
II), 69.1 (C-6), 68.6 (OCH
2), 68.1 (C-4
II), 62.9 (C-5), 62.6 (C-6
I), 48.2 (C-2)および22.5 ppm (CH
3)。
図9Cおよび9D:ESI
+-HRMS:[M+H]
+ C
52H
50O
15Nの計算値、928.3175;実測値、928.3133。
【0201】
実施例6:アリル(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセトアミド-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシド(アリルTF)
【0202】
【化31】
図5を参照すれば、メタノール中の1Mナトリウムメトキシド(12mL、pH8~9)中の化合物6(1.12g、1.20mmol、1.0当量)の溶液を、出発材料が消費されるまで室温で撹拌した。1時間30分後、この溶液をイオン交換樹脂(アンバーライトIR120、H
+)の添加によって中和し、ろ過し、MeOHで洗浄し、この溶液にシリカゲルを懸濁し、ろ過し、溶媒を減圧下で除去した。シリカゲルを、100%EtOAcで数回洗浄し、続いて第2の溶液(1:1:0.1のEtOAc/MeOH/H
2O)で洗浄した。合わせたろ液を減圧下で蒸発させて、中間体(化合物7)を白色の固体として得た。Rf=0.20;11:6:1のCHCl
3/MeOH/H
2O;
図10Aおよび10B:
1H NMR (D
2O, 600 MHz):δ 7.47-7.39 (m, 2H, H-ar), 7.37-7.26 (m, 3H, H-ar), 5.82 (m, 1H, OCH
2CH=CH
2), 5.61 (s, 1H, PhCH), 5.20-5.09 (m, 2H, OCH
2CH=CH
2), 4.88 (d, 1H, J
1,2 = 3.4 Hz, H-1), 4.47 (dd, H-4), 4.37-4.25 (m, 2H, H-2およびH-1
II), 4.13-3.98 (m, 4H, H-3, H-6a, H-6b, OCH
2), 3.96-3.88 (m, 1H, H-5), 4.56-4.42 (ddd, 1H, J
2,3 = 10.9 Hz, J
2,OH = 9.1 Hz, H-2), 4.34 (dd, 1H, J
5,6a = 1.5 Hz, J
6a,6b = 12.5 Hz, H-6a), 4.19 (m, 2H, H-4およびOCH
2), 4.04 (m, 1H, dd, 1H, J
5,6b= 1.6 Hz, J
6a,6b = 12.5 Hz, H-6b), 4.01 (m, OCH
2), 3.86 (dd, 1H, J
3,4 = 10.9 Hz, H-3), 3.71 (sb, 1H, H-5), 2.80 (d, 1H, J
3,OH= 10.7 Hz, OH-3)および2.05 ppm (s, 3H, CH
3) ;3.83 (s, 1H, OCH
2), 3.72 (d, 1H, J
3’,4’ =
J
4’,5’ =
3.2 Hz, H-4
II), 3.65-3.55 (m, 2H, H-6a,b), 3.49, (m, 1H, H-5
II), 3.43 (dd, 1H, J
2’,3’ = 10.0 Hz, J
3’,4’ = 3.3 Hz, H-3
II), 3.33-3.24 (m, 1H, H-2
II)および1.86 ppm (s, 3H, CH
3) ;
13C NMR (D
2O, 150 MHz):δ 174.6 (NHCO), 136.8 (C-arom), 133.6 (OCH
2CH=CH
2), 129.9、128.7、126.5 (C-arom), 118.0 (OCH
2CH=CH
2), 104.9 (C-1
II), 101.3 (CHPh), 97.0 (C-1), 76.0 (C-4), 75.0 (C-3), 75.0 (C-5
II), 72.4 (C-3
II), 70.4 (C-2
II), 69.0 (C-6), 68.7 (OCH
2CH=CH
2), 68.6 (C-4
II), 63.0 (C-5), 61.0 (C-6
II), 48.6 (C-2)および22.0 ppm (CH
3)。Rf=0.38;7:3:0.1のEtOAc/MeOH/H
2O;Rf=0.46;7:2:1のACN/MeOH/H
2O。
図10Cおよび10D:ESI
+-HRMS:[M+H]
+ C
24H
34O
11Nの計算値、512.2126;実測値、512.2119。
【0203】
次いで白色の固体である中間体を、10mLの60%酢酸水溶液中に溶解させ、得られた溶液を60℃で1.5時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を凍結乾燥して、最終的なアリルTFを白色の固体として得た(427mg、1.0mmol、84%)。mp=230~232℃;Rf=0.53;11:6:1のCHCl
3/MeOH/H
2O;
図11Aおよび11B:
1H NMR (D
2O, 600 MHz):δ 5.80 (m, 1H, OCH
2CH=CH
2), 5.19 (dd, 1H, J
trans = 17.3 Hz, OCH
2CH=CH
2), 5.09 (dd, 1H, J
cis = 10.4 Hz, OCH
2CH=CH
2), 4.77 (d, 1H, J
1,2 = 3.7 Hz, H-1), 4.29 (d, 1H, J
1,2 = 3.7 Hz, H-1), 4.29 (d, 1H, J
1,2= 7.8 Hz, H-1
II), 4.16 (dd, 1H, J
2,3 = 11.2 Hz, J
1,2= 3.7 Hz, H-2), 4.08-4.01 (m, 2H, H-4およびOCH
2), 3.92-3.82 (m, 3H, H-3, H-5およびOCH
2), 3.73 (dd, 1H, H-4
II), 3.63-3.52 (m, 4H, H-6a,bおよびH-6’a,b), 3.47 (m, 2H, H-3
IIおよびH-5
II), 3.39 (dd, 1H, J
2’,3’= 10.0 Hz, J
1’,2’ = 7.7 Hz, H-2
II)および1.85 ppm (s, 3H, CH
3) ;
13C NMR (150 MHz, CDC
13):δ 174.6 (NHCO), 133.7 (OCH
2CH=CH
2), 117.9 (OCH
2CH=CH
2), 104.7 (C-1
II), 96.4 (C-1), 77.2 (C-3), 75.0 (C-5
II), 72.5 (C-3
II), 70.7 (C-5), 70.6 (C-2
II), 68.8 (C-4), 68.6 (C-4
II), 68.4 (OCH
2), 61.2 (C-6
II), 61.0 (C-6), 48.6 (C-2)および22.0 ppm (CH
3)。
図11Cおよび11D:ESI
+-HRMS:[M+Na]
+ C
17H
29O
11NNaの計算値、446.1633;実測値、446.1613。
【0204】
実施例7:破傷風トキソイド単量体の精製
破傷風トキソイド(TT)単量体を、コンジュゲーション前に、ゲルろ過クロマトグラフィーによって得た。1ミリリットルの4.5mg/mlタンパク質を含有する液体調製物(改変されたローリータンパク質アッセイによって決定した場合)を、PBS(20mMのNaHPO4[pH7.2]、150mMのNaCl)中で平衡化したスーパーデックス(Superdex)(登録商標)200Prepグレード(GEヘルスケア・ライフサイエンス(GE Healthcare Life Sciences)、ウプサラ、スウェーデン)を充填したXK16-100カラム上にローディングし、同じ緩衝液で溶出した。2つのピークでカラムから溶出したタンパク質:先に溶出したピークは、オリゴマー化されたトキソイドを含有し、後に溶出したピークは、TT単量体を含有する150,000のMrに対応する。後の(単量体)ピークに対応する画分をプールし、脱イオン水に対して脱塩し、セントリコン(Centricon)(登録商標)プラス-70遠心フィルターデバイス(30K ウルトラセルPL(Ultracel PL)膜;ミリポア(Millipore)、マサチューセッツ州ビレリカ)を使用して濃縮し、次いで凍結乾燥した。
【0205】
実施例8:Tn-破傷風トキソイドコンジュゲート(Tn-TTコンジュゲート)
【0206】
【化32】
■手順A
石英セル中で、500μLのPBS中のアリルTn(0.15mg、0.56μmol、18.0当量)の溶液に、4.7mg(0.03μmol)の破傷風トキソイドを含有する1.5mLのPBSを添加した。この溶液を、アルゴン雰囲気下で脱気した後、254nmで7時間放射線照射した。この溶液を、二重に蒸留した水でのいくつかの洗浄液に対して24時間透析し、凍結乾燥して、Tn-TT-Aコンジュゲートを白色の固体として得た(2.0mg、43%)。手順B:同じチオール-エンクリック反応下で、アセトニトリル(100μL)中の触媒的な量のDMPAを、PBS中の破傷風トキソイド(2mL、4.5mg/mL、0.06μmol)を含有するアリルTn(3mg、10.8μmol、180.0当量)の溶液に添加した。この溶液を365nmで15分間放射線照射した。次いで溶液を24時間透析し、凍結乾燥して、Tn-TT-Bコンジュゲートを白色の固体として得た(5.4mg、61%)。
【0207】
実施例9:TF-破傷風トキソイドコンジュゲート(TF-TTコンジュゲート)
【0208】
【化33】
■手順A
石英セル中で、500μLのPBS中のアリルTF(0.24mg、0.56μmol、18.0当量)の溶液に、1.5mLの4.7mg(0.03μmol)の破傷風トキソイドを含有するPBSを添加した。この溶液を、アルゴン雰囲気下で脱気した後、254nmで7時間放射線照射した。次いで溶液を24時間透析し、凍結乾燥して、TF-TT-Aコンジュゲートを白色の固体として得た(2.1mg、45%)。手順B:同じチオール-エンクリック反応下で、アセトニトリル(100μL)中の触媒的な量のDMPAを、PBS(2mL、4.5mg/mL、0.06μmol)中の破傷風トキソイドを含むアリルTF(5mg、10.8μmol、180.0当量)の溶液に添加した。この溶液を365nmで15分間放射線照射した。次いで溶液を24時間透析し、凍結乾燥して、TF-TT-Bコンジュゲートを白色の固体として得た(5.3mg、60%)。
【0209】
実施例10:Tn-TTおよびTF-TTコンジュゲートの特徴付け
破傷風トキソイド(TT)単独およびワクチンコンジュゲート(Tn-TT-A;Tn-TT-B;TF-TT-A;およびTF-TT-B)を、SDSゲル電気泳動によって、糖含量の存在に関して比色分析(Dubois試験)によって、チオール含量に関してエルマン試験によって、動的光散乱(DLS)(
図12)によって分析し、さらに、公知のマウスモノクローナル抗体JAA-F11との反応性を、二重の放射免疫拡散を使用して分析した。SDSゲル電気泳動の結果から、炭水化物抗原(TnおよびTF)の存在に関して、コンジュゲートのモノマー形態も陽性染色されたことが明らかに示された。比色分析(Dubois試験)から、コンジュゲーションの後、炭水化物抗原の存在(10重量%)、および担体タンパク質上に残留した遊離チオール基がないことが確認された。二重の放射免疫拡散分析から、沈殿のバンドは明らかに、新しいTF-TTコンジュゲートの、抗TFモノクローナル抗体JAA-F11との交差反応性を示すことが解明され、したがって、TF-TTコンジュゲート上における免疫原性炭水化物抗原(TF)の存在が確認され、担体タンパク質(破傷風トキソイド)単独の沈殿バンドは観察されなかった。
【0210】
■コンジュゲートのHPLC分析
グリココンジュゲート調製物のHPLC分析を、サイズ排除クロマトグラフィーによって行った。クロマトグラフ分離は、SB-807Gガードカラム(昭和電工株式会社(Showa Denko))を先頭に有する、直列に接続した3つの8×300mmのShodex OHpakゲルろ過カラム(2つのSB-804および1つのSB-803)を用いて実行された。グリココンジュゲート免疫原を、示差屈折計(RI)検出器モデル2300および波長280nmでのUV検出器モデル2600を備えたナウアー(Knauer)のスマートライン(Smartline)システムを使用して、0.4mL/分の流速で、0.1MのNaNO3で溶出させた。コンジュゲート調製物(移動相中、8mg/mL溶液)を、50μΛ注入ループを使用して注入した。選択された実験において、空隙容量で溶出する画分は、コンジュゲート画分に対応し、これをプールし、スペクトラポア(Spectra/Por);分子量カットオフ(MWCO)、12,000~14,000[スペクトラムラボラトリーズ(Spectrum Laboratories)])で水に対して透析し、凍結乾燥した。これは、2:1の分画されたコンジュゲートに相当する。
【0211】
実施例11:ペプチドdTT831-844-Cys-βAlaの遊離チオールにおけるチオール-エン光化学反応によるO-アリル-糖のコンジュゲーションの作用
ペプチドdTT831-844-Cys-βAla(破傷風毒素(831-844);MW:1813、配列番号2)を、3.7×10
-3Mのペプチド濃度で水(500uL)に溶解させ、これを、キュベットから2~5cmの距離で、2つの手持ち式のUV365nmランプ(0.16amp、VWR)の間に設置した石英キュベット(10×10mmのパス長、フィッシャー)中で、(6uL、0.1M、3.0当量の)O-アリル-TnまたはO-アリル-TFおよび水溶性触媒AAPH(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル、23uL、0.025M、3.0当量と共に室温で撹拌した。AAPHを添加した直後に、UVをオンにした。この溶液を、0、45、90および135分でサンプリングし、遊離チオール濃度をシステイン標準曲線を使用したエルマン試験によって測定した。
図13は、遊離チオール濃度が、光チオール-エン反応の結果として、時間依存性の方式で低減されることを示す。
【0212】
実施例12:O-アリル-Tnのコンジュゲーションおよびチオール-エン光反応生成物の免疫反応性に対する、dTT831-844-Cys-βAlaにおけるシステインの位置決定/接近しやすさ、および採用される活性化剤のタイプの作用
N末端またはC末端にシステインを有するペプチドdTT831-844を合成し、2mM(1mL)の濃度で水に溶解させ、これを、キュベットから2~5cmの距離で、2つの手持ち式のUV365nmランプ(0.16amp、VWR)の間に設置した石英キュベット(10×10mmのパス長、フィッシャー)中で、200uL、0.1M、10当量のO-アリル-Tnおよび触媒的な量(0.2当量)の活性化剤AAPHと共に室温で撹拌した。活性化剤を添加した直後に、UVをオンにし、60分反応させた。0および60分の時間に、遊離チオール濃度を、システイン標準曲線を使用したエルマン試験によって測定した。遊離チオールにおける低減倍率は、t=0/t=60におけるチオール濃度に相当する。
【0213】
図14に示される結果は、チオール-エン光化学反応コンジュゲーションにおける、N末端(「SH-ペプチド」)またはC末端(「ペプチド-SH」)にシステインを有するdTT831-844ペプチドの、水溶性(AAPH)または水不溶性活性化剤(DMPA)のいずれかを使用した、遊離チオール濃度における低減倍率を提示する。
【0214】
チオール-エン光反応生成物の免疫反応性を酵素結合レクチンアッセイ(ELLA)によって測定した。100μLのpH7.4のPBS中の1μgのペプチドを、96-ウェルプレート(マキシソープ(Maxisorp)(商標)、ヌンク(Nunc))に、最低限でも室温で1時間または4℃で一晩吸着させた。次いでウェルをPBS-トゥイーン(Tween)(商標)0.05%(PBS-T)で2回洗浄し、次いでPBS-T+1%BSAブロッキング溶液を30分にわたり充填した。次いでウェルをPBS-Tで3回洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼにカップリングされたナヨクサフジレクチン(抗Tn VVA)またはピーナッツ凝集素(抗TF PNA)(VVA-hrp、PNA-hrp、EYラボ(EY LAbs))の100μLの1/100希釈物で充填した。穏やかに振盪しながらの室温で1時間または4℃で12時間のインキュベーションの後、ウェルをPBS-Tで4回洗浄し、100μLのhrp基質(ウルトラTMB-ELISA(Ultra TMB-ELISA)、サーモ・サイエンティフィック(Thermo Scientific))を各ウェルに添加した。反応を、100μLの0.5N硫酸の添加によって止め、プレートリーダー(バイオテック(Biotek)EL808)においてプレートをOD450nmで読んだ。
【0215】
図15に示される結果は、水溶性(AAPH)または水不溶性活性化剤(DMPA)のいずれかを使用した、異なるTn-ペプチド(すなわち、コンジュゲートしていない:「pep-Cys」および「Cys-pep」;Tn-コンジュゲートした:「Tn-pep」および「pep-Tn」;「unc」:コーティングされていないプレート)へのレクチン反応性を提示する。興味深いことに、C末端システインを有するTTペプチドは、抗TnレクチンVVAによって特異的に認識され、コンジュゲーション反応は、水溶性活性化剤AAPHを用いた場合に最も有効であった。Tnグリココンジュゲートはどれも、陰性対照として使用された抗TFレクチン(ピーナッツレクチン、PNA)によって認識されなかった。
【0216】
実施例13:O-アリル-TnへのペプチドdTT831-844-Cys-βAlaのチオール-エン光化学反応によるコンジュゲーションに対する波長の作用
ペプチドdTT831-844-Cys-βAla(MW:1813、配列番号2)を、キュベットから2~5cmの距離で、365nmまたは355nmのいずれか(0.16amp、VWR)の2つの手持ち式の紫外線ランプの間に設置した石英キュベット(10×10mmのパス長、フィッシャー)中で、1mLの水中の0.55mMのO-アリル-TnおよびAAPH(1.44mg、5.5nmol、10.0当量)またはDMPA(0.3mg、1.1nmol、2.0当量)と共に室温で撹拌した。AAPHを添加した直後に、UVをオンにし、60分後にオフにして反応を止めた。またペプチドを、活性化剤の非存在下で、UV254nmでも、O-アリル-Tnにコンジュゲートした。遊離チオール濃度を、システイン標準曲線を使用したエルマン試験によって測定した。
図16は、3つの異なるコンジュゲーション条件(「355nm+AAPH」;「365nm+DMPA」;および「254nm」)の経時的な(分)遊離チオールの減少を示す。
【0217】
チオール-エン光反応生成物の免疫反応性を酵素結合レクチンアッセイ(ELLA)によって測定した。100μLのpH7.4のPBS中の指定された量のペプチドを、96-ウェルプレート(マキシソープ、ヌンク)に、最低限でも室温で1時間または4℃で一晩吸着させた。次いでウェルをPBS-トゥイーン(商標)0.05%(PBS-T)で2回洗浄し、ウェルをブロッキング溶液で30分にわたり充填した。次いでウェルをPBS-Tで3回洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼにカップリングされたナヨクサフジレクチン(VVA-hrp、EYラボ)の100μLの1/100希釈物で充填した。穏やかに振盪しながらの室温で1時間または4℃で12時間のインキュベーションの後、ウェルをPBS-Tで4回洗浄し、100μLのhrp基質(ウルトラTMB-ELISA、サーモ・サイエンティフィック)を各ウェルに添加した。反応を、100μLの0.5N硫酸の添加によって止め、プレートリーダー(バイオテックEL808)においてプレートを450nmで読んだ。
【0218】
ELLAの結果は、
図17に提示され、AAPHまたはDMPAPの存在下における365nmでの、または活性化剤の非存在下における254nmでの、チオール-エン光化学反応によってコンジュゲートした様々な量のTn-ペプチドへのVVAレクチン反応性を示す。コンジュゲーション生成物は、レクチンによって検出されたが、コンジュゲートしていないペプチド(「ペプチド」)またはO-アリル-Tn単独(「Tn」)は非反応性であった。興味深いことに、
図17は、活性化剤の非存在下における254nmでのコンジュゲーションが、活性化剤の存在下における365nmまたは355nmによって生成したものより免疫反応性のグリココンジュゲート生成物を生成したことを示す。
【0219】
実施例14:チオール-エン光化学反応によるC-アリルおよびO-アリル糖のペプチドdTT831-844-Cys-βAlaへのコンジュゲーションおよび反応性
dTT831-844-Cys-βAlaペプチド(MW:1813)を、0.55mMの濃度で水に溶解させ、その1mLを、キュベットから2~5cmの距離で、365nm(0.16amp、VWR)の2つの手持ち式の紫外線ランプの間に設置した石英キュベット(10×10mmのパス長、フィッシャー)中で、O-アリル-Tn、O-アリル-TF、またはC-アリル-Tn(100uL、11mM、2.0当量)およびAAPH(1.44mg、5.5nmol、10.0当量)と共に室温で撹拌した。AAPHを添加した直後に、UVをオンにした。この溶液を、指定された時間でサンプリングし、遊離チオール濃度を、システイン標準曲線を使用して測定した。
図18は、試験された異なるアリル糖:O-アリル-Tn(「Tn」)、O-アリル-TF(「TF」)、またはC-アリル-Tn(「cTn」)の経時的な(分)遊離チオールの減少を示す。
【0220】
チオール-エン光反応生成物の免疫反応性を酵素結合レクチンアッセイおよび酵素結合免疫吸着測定法によって測定した。100μLのpH7.4のPBS中の指定された量のペプチドコンジュゲートを、96-ウェルプレート(マキシソープ、ヌンク)に、最低限でも室温で1時間または4℃で一晩吸着させた。次いでウェルをPBS-トゥイーン(商標)0.05%(PBS-T)で2回洗浄し、次いでPBS-T+1%BSAブロッキング溶液で30分にわたり充填した。次いでウェルをPBS-Tで3回洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼにカップリングされたナヨクサフジレクチンもしくはピーナッツ凝集素(VVA-hrp、PNA-hrp、EYラボ)の100μLの1/100希釈物、または0.1μg/mlのTF特異的な精製マウスモノクローナル抗体JAAF11で充填した。穏やかに振盪しながらの室温で1時間または4℃で12時間のインキュベーションの後、JAAF11を含有するウェルをPBS-Tで洗浄し、次いで二次抗体であるヤギ抗マウスIgG(H+L)-hrp(ジャクソン・イムノリサーチ(Jackson Immunoresearch))と共にさらに60分インキュベートした。次いでウェルをPBS-Tで4回洗浄し、100μLのhrp基質(ウルトラTMB-ELISA、サーモ・サイエンティフィック)を各ウェルに添加した。反応を、100μLの0.5N硫酸の添加によって止め、プレートリーダー(バイオテックEL808)においてプレートを450nmで読んだ。
【0221】
図19は、O-アリル-Tn(ただしC-アリル-Tnではなく)を用いて生成したペプチドコンジュゲートのみが抗TnレクチンVVAによって認識されたことを示す。これらの結果は、C-アリル-Tnは、ペプチドにコンジュゲートしていながらも、レクチンへの結合を可能にするコンフォメーションを有さないことを示唆する。
【0222】
実施例15:チオール-エン光化学反応による化学的に還元されたdTTへのO-アリル-TFのコンジュゲーション
弱毒化破傷風トキソイド(dTT)を、pH7.4のPBS中で透析し(MWCO2,000)、次いで、1000当量のDTTと共にインキュベートした。室温および回転下で2時間のインキュベーションの後、還元タンパク質溶液をpH7.4のPBS中で、遠心ろ過(MWCO10,000、アミコン(Amicon))によって洗浄した。次いで還元タンパク質(1mL、3.51mg/mL、0.02nmol)を、キュベットから2~5cmの距離で、365nm(0.16amp、VWR)の2つの手持ち式の紫外線ランプの間に設置した石英キュベット(10×10mmのパス長、フィッシャー)中で、1.0mLのPBSの最終容量で、O-アリル-TF(30.0当量)およびAAPH(2.0当量)と共に撹拌した。AAPHを添加した直後に、UVをオンにして反応を開始させ、次いで2時間後に止めた。
【0223】
天然のdTTと比較した、DTT処理によって生成した還元dTTの遊離チオール濃度を、緩衝液交換dTTサンプルで、システイン標準曲線を使用したエルマン試験によって測定し、タンパク質濃度を、BSA標準曲線を使用したブラッドフォードアッセイによって測定した。
【0224】
dTTサンプルの免疫反応性を測定するために、1μgのタンパク質サンプルを、100μLのpH7.4のPBSで希釈し、96-ウェルプレート(マキシソープ、ヌンク)のウェルに、最低限でも室温で1時間または4℃で一晩吸着させた。次いでウェルをPBS-トゥイーン(商標)0.05%(PBS-T)で2回洗浄し、次いでブロッキング溶液で30分にわたり充填した。次いでウェルをPBS-Tで3回洗浄し、100μLの0.1μg/mLのTF特異的な精製マウスモノクローナル抗体JAAF11で充填した。穏やかに振盪しながらの室温で1時間または4℃で12時間のインキュベーションの後、プレートをPBS-Tで洗浄し、次いで二次抗体であるヤギ抗マウスIgG(H+L)-hrp(ジャクソン・イムノリサーチ)の100μLの1/1000希釈物と共にさらに60分インキュベートした。次いでウェルをPBS-Tで4回洗浄し、100μLのhrp基質(ウルトラTMB-ELISA、サーモ・サイエンティフィック)を各ウェルに添加した。反応を、100μLの0.5N硫酸の添加によって止め、プレートリーダー(バイオテックEL808)においてプレートを450nmで読んだ。
【0225】
図20は、JAAF11(「dTT(DTT)-TF」)に対するdTT-TFの免疫反応性を示すが、還元dTT(「dTT(DTT)」)または天然のdTT(データは示されない)は非反応性であった。これは、O-アリル-TFが、実際に、免疫反応性のコンフォメーションでチオール-エン光反応によってdTTにコンジュゲートしたことを示す。
【0226】
実施例16:チオール-エン光化学反応による化学的に還元されたdTTへのO-アリル-Tnのコンジュゲーション
dTTを、pH7.4のPBS中で透析し(MWCO30,000)、次いで0.5mL(5.8mg/mL)を、50または500当量のDTTと共に、室温、回転下でインキュベートした。2時間後、還元タンパク質溶液をpH7.4のPBS中で、遠心ろ過(MWCO10,000、アミコン)によって洗浄した。次いで500当量のDTT(70uL、0.5mmol/mL)で還元されたタンパク質を、キュベットから2~5cmの距離で、365nm(0.16amp、VWR)の2つの手持ち式の紫外線ランプの間に設置した石英キュベット(10×10mmのパス長、フィッシャー)中で、0.1MのO-アリル-TF(60.0当量)および0.1MのAAPH(4.0当量)と共に撹拌した。AAPHを添加した直後に、UVをオンにして反応を開始させ、次いで45分後に止めた。還元dTTの遊離チオールが、コンジュゲーションの結果として還元耐性チオエーテル結合を形成したか、またはジスルフィド結合に再酸化したことを検証するために、コンジュゲートした生成物を、100当量のDTTで1時間処理し、次いで遠心ろ過によって洗浄し、次いで還元処理の前および後にチオール含量を測定した。遊離チオールの適用量を、システイン標準曲線を使用したエルマン試験によって測定した。タンパク質濃度を、BSA標準曲線を使用したブラッドフォードアッセイによって測定した。
【0227】
図21は、異なるコンジュゲーション条件後のdTTにおける遊離チオールのモル比を示す。結果から、dTTタンパク質が用量依存性の方式で還元され、500当量のDTTでの処理で、9個の遊離チオールに達した(dTTにおける10個のシステインの最大限の理論上の数から)ことが示される。チオール-エン光反応によるO-アリル-TnまたはO-アリル-TFのコンジュゲーションは、非還元dTTのレベルに、またはそれ未満に遊離チオールを低減した。還元に対するdTT-Tnコンジュゲートの耐性は、チオール-エン光反応によって形成された還元耐性チオエーテル結合の存在を確認した。
【0228】
dTTサンプルの免疫反応性を測定するために、1μgのタンパク質サンプルを、100μLのpH7.4のPBSで希釈し、96-ウェルプレート(マキシソープ、ヌンク)のウェルに、最低限でも室温で1時間または4℃で一晩吸着させた。次いでウェルをPBS-トゥイーン(商標)0.05%(PBS-T)で2回洗浄し、次いでブロッキング溶液で30分にわたり充填した。次いでウェルをPBS-Tで3回洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼにカップリングされたナヨクサフジレクチンもしくはピーナッツ凝集素(VVA-hrp、PNA-hrp、EYラボ)の100μLの1/100希釈物、または0.1μg/mLのTF特異的な精製マウスモノクローナル抗体JAAF11で充填した。穏やかに振盪しながらの室温で1時間または4℃で12時間のインキュベーションの後、JAAF11を含むウェルを、PBS-Tで洗浄し、次いで二次抗体であるヤギ抗マウスIgG(H+L)-hrp(ジャクソン・イムノリサーチ)の100μLの1/1000希釈物と共にさらに60分インキュベートした。穏やかに振盪しながらの室温で1時間または4℃で12時間のインキュベーションの後、プレートをPBS-Tで4回洗浄し、100μLのhrp基質(ウルトラTMB-ELISA、サーモ・サイエンティフィック)を各ウェルに添加した。反応を、100μLの0.5N硫酸の添加によって止め、プレートリーダー(バイオテックEL808)においてプレートを450nmで読んだ。
【0229】
図22は、コンジュゲートしていないdTTと比較した、dTT-TnコンジュゲートのレクチンVVAへの高い反応性を示す。
【0230】
天然のdTTおよびdTT-Tnコンジュゲートを、10%ポリアクリルアミドゲルでのSDS-PAGE電気泳動によって分析し、次いでクーマシーブルーで染色した。ゲル電気泳動の結果は、dTT-Tnコンジュゲートが、天然の非コンジュゲートdTTより高い分子量に移動したことを示した(データは示されない)。
【0231】
実施例17:チオール-エン光反応性によるO-アリル-Tnの化学的にチオール化したdTTへのコンジュゲーションに対するAAPH濃度の作用
dTTを、pH8のPBS(MWCO30,000)中で透析し、次いで100μL(0.8mg)を、キュベットから2~5cmの距離で、365nm(0.16amp、VWR)の2つの手持ち式の紫外線ランプの間に設置した石英キュベット(10×10mmのパス長、フィッシャー)中で、水中の0.1Mの2-イミノチオラン塩酸塩の200当量/タンパク質(シグマ(Sigma))、水中の200当量/タンパク質の0.1MのO-アリル-TF、および水中の0.8当量/タンパク質またはおよそ450当量/タンパク質のAAPHの溶液と共に、124μLの最終容量で撹拌した。AAPHを添加した直後に、UVをオンにして、反応を開始させた。光化学反応中、15分に、および45分での反応の完了時に、サンプルを回収した。セファデックス(Sephadex)(商標)G25が充填されたミニスピンカラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィーによって、コンジュゲーション生成物の緩衝液をpH7.4のPBSに交換した。遊離チオール濃度を、システイン標準曲線を使用したエルマンアッセイによって測定した。タンパク質濃度を、標準としてBSAを使用したブラッドフォードアッセイによって測定した。
【0232】
図23は、2-イミノチオランでの化学的チオール化およびO-アリル-Tnの非存在下におけるチオール-エン光化学反応の後のdTTサンプル中の遊離チオールの比率が、25~30に達するが、O-アリル-Tnの存在は、dTTのチオール比率を、AAPH濃度に対する用量依存性の方式でおよそ20および5に低減させることを示し、これは、チオエーテル結合がチオール-エン光反応によって形成されたことを示唆している。
【0233】
dTTサンプルの免疫反応性を測定するために、1μgのタンパク質サンプルを、100μLのpH7.4のPBSで希釈し、96-ウェルプレート(マキシソープ、ヌンク)のウェルに、最低限でも室温で1時間または4℃で一晩吸着させた。次いでウェルをPBS-トゥイーン(商標)0.05%(PBS-T)で2回洗浄し、次いでブロッキング溶液で30分にわたり充填した。次いでウェルをPBS-Tで3回洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼにカップリングされたナヨクサフジレクチン(VVA-hrp、EYラボ)の100μLの1/100希釈物で充填した。穏やかに振盪しながらの室温で1時間または4℃で12時間のインキュベーションの後、プレートをPBS-Tで4回洗浄し、100μLのhrp基質(ウルトラTMB-ELISA、サーモ・サイエンティフィック)を各ウェルに添加した。反応を、100μLの0.5N硫酸の添加によって止め、プレートリーダー(バイオテックEL808)においてプレートを450nmで読んだ。
【0234】
図24は、レクチンVVA-hrpに対するdTTサンプルの反応性を示す。天然のコンジュゲートしていないdTTと比較してTnコンジュゲートは、より高い反応性を有することが観察された。さらに、反応性は、光反応の持続時間および使用されるAAPH活性化剤の量と相関する。
【0235】
dTTコンジュゲート(5μg)を、10%ポリアクリルアミドゲルでのSDS-PAGE電気泳動によって分析し、クーマシーブルーでの染色、またはウェスタンブロット分析のための膜(イモビロン-P、メルク・ミリポア(Merck Millipore))への移行のいずれかを行った。膜をPBS-T+1%BSA中で1時間ブロッキングし、PBS-Tで洗浄し、次いで、PBS-T中のホースラディッシュペルオキシダーゼにカップリングされたナヨクサフジレクチン(VVA-hrp、EYラボ)の1/100希釈物と共に室温で1時間または4℃で一晩インキュベートした。次いで膜をPBS-Tで徹底して洗浄し、結合したVVA-hrpを、ホースラディッシュペルオキシダーゼ発色性基質である4-クロロ1-ナフトール(Naphtol)(0.03%過酸化水素を含有するPBS中、0.3mg/mL、シグマ)を用いて検出した。クーマシー染色されたSDS-PAGEと対応するVVA-hrpで染色したウェスタンブロットの両方からの結果から、dTT-Tnが、天然のdTTより高い分子量に移動したこと、およびVVAへの特異的な反応性を有することが解明され、これは、生成物が実際にTnにコンジュゲートしていることを示す(データは示されない)。
【0236】
実施例18:チオール-エン光化学反応によるO-アリル-TnおよびO-アリル-TFの化学的に還元されたBSAへのコンジュゲーション
BSA(1mLPBS、pH7.4中の7mg)を、600当量のDTTと共に2時間インキュベートし、次いでpH7.4のPBS中で、遠心ろ過(MWCO10,000、アミコン)によって洗浄した。次いで還元タンパク質を、チオール-エン光化学反応によってO-アリル-TnまたはO-アリル-TFにコンジュゲートした。還元BSA(600uL、5.3mg/mL、0.047nmol)を、キュベットから2~5cmの距離で、365nm(0.16amp、VWR)の2つの手持ち式の紫外線ランプの間に設置した石英キュベット(10×10mmのパス長、フィッシャー)中で、O-アリル-糖(60当量)およびAAPH(4.0当量)およびpH7.4のPBS(720uL)と共に撹拌した。AAPHを添加した直後に、UVをオンにして、反応を開始させた。45分後、生成物をpH7.4のPBSで遠心ろ過(MWCO10,000、アミコン)によって洗浄して、全ての未反応のO-アリルおよび試薬を除去した。還元BSAの遊離チオール濃度を、システイン標準曲線を使用したエルマンアッセイによって測定し、タンパク質濃度を、標準としてBSAを使用したブラッドフォードアッセイによって測定した。
【0237】
BSAサンプルの免疫反応性を測定するために、1μgのタンパク質サンプルを、100μLのpH7.4のPBSで希釈し、96-ウェルプレート(マキシソープ、ヌンク)のウェルに、最低限でも室温で1時間または4℃で一晩吸着させた。次いでウェルをPBS-トゥイーン(商標)0.05%(PBS-T)で2回洗浄し、次いでブロッキング溶液で30分にわたり充填した。次いでウェルをPBS-Tで3回洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼにカップリングされたナヨクサフジレクチンもしくはピーナッツ凝集素(VVA-hrp、PNA-hrp、EYラボ)の100μLの1/100希釈物、または0.1μg/mLのTF特異的な精製マウスモノクローナル抗体JAAF11で充填した。穏やかに振盪しながらの室温で1時間または4℃で12時間のインキュベーションの後、JAAF11を含有するウェルを、PBS-Tで洗浄し、次いで二次抗体であるヤギ抗マウスIgG(H+L)-hrp(ジャクソン・イムノリサーチ)と共にさらに60分インキュベートした。次いでウェルをPBS-Tで4回洗浄し、100μLのhrp基質(ウルトラTMB-ELISA、サーモ・サイエンティフィック)を各ウェルに添加した。反応を、100μLの0.5N硫酸の添加によって止め、プレートリーダー(バイオテックEL808)においてプレートを450nmで読んだ。
【0238】
図25は、これらの条件下で生成したBSA-TFおよびBSA-Tnが、抗TFJ AAF11モノクローナル抗体および抗TnレクチンVVAそれぞれに対して高度に反応性を有し、特異的であったことを示す。
【0239】
BSA-TnおよびBSA-TFコンジュゲート(5μg)を、クーマシーブルーで染色した10%ポリアクリルアミドゲルでのSDS-PAGE電気泳動によって分析した。使用された条件下でのBSAの還元は、エルマン試験によって測定したところ、19.29のチオールのモル比を生じた。いずれかのO-アリル-糖とのコンジュゲーションの後、エルマン試験は陰性であったことから、チオール-エン光化学反応によって遊離チオールがO-アリル糖に化学的にカップリングされたことが示唆される(データは示されない)。クーマシー染色されたSDS-PAGEゲルから、両方のBSA-コンジュゲートが、期待されるBSAの分子量に移動するか、それより高い分子量種に移動したことが示された(データは示されない)。
【0240】
実施例19:チオール-エン光化学反応によるO-アリル-Tnの化学的に還元されたBSAへのコンジュゲーション
BSA(500μL、7mg/mL)を、400、200または1000当量のDTT(0.5M)と共に、室温で1時間、回転させながらインキュベートした。次いで還元BSA溶液をpH7.4のPBS中で一晩透析した。次いで還元BSAの遊離チオール濃度を、システイン標準曲線を使用したエルマンアッセイによって測定し、タンパク質濃度を、標準としてBSAを使用したブラッドフォードアッセイによって測定し、それらから遊離チオール/BSAのモル比を計算した。
【0241】
図26は、生成した遊離チオールの量と還元剤であるDTTの量との相関を示し、それによれば、還元が、採用された条件下で1000当量のDTTを用いて実行された場合、約10のチオール/BSAに到達する。
【0242】
次いで還元タンパク質を、様々な比率のO-アリル-Tnにコンジュゲートした。還元BSA(5nmol)を、キュベットから2~5cmの距離で、365nm(0.16amp、VWR)の2つの手持ち式の紫外線ランプの間に設置した石英キュベット(10×10mmのパス長、フィッシャー)中で、AAPHと共に、pH7.4のPBS500μLの最終容量で、100当量のO-アリル-Tn/還元BSAまたは100当量のO-アリル-Tn/BSA-チオールと共に撹拌した。AAPHを添加した直後に、UVをオンにして、反応を開始させた。45分後、生成物を、pH7.4のPBSで遠心ろ過(MWCO10,000、アミコン)によって洗浄して、未反応のO-アリルおよび試薬を除去した。
【0243】
BSAサンプルの免疫反応性を測定するために、1μgのタンパク質サンプルを、100μLのpH7.4のPBSで希釈し、96-ウェルプレート(マキシソープ、ヌンク)のウェルに、最低限でも室温で1時間または4℃で一晩吸着させた。次いでウェルをPBS-トゥイーン(商標)0.05%(PBS-T)で2回洗浄し、次いでブロッキング溶液で30分にわたり充填した。次いでウェルをPBS-Tで3回洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼにカップリングされたナヨクサフジレクチン(VVA-hrp、EYラボ)の100μLの1/100希釈物または0.1μg/mLのTF特異的な精製マウスモノクローナル抗体JAAF11で充填した。穏やかに振盪しながらの室温で1時間または4℃で12時間のインキュベーションの後、JAAF11を含有するウェルを、PBS-Tで洗浄し、次いで二次抗体であるヤギ抗マウスIgG(H+L)-hrp(ジャクソン・イムノリサーチ)と共にさらに60分インキュベートした。穏やかに振盪しながらの室温で1時間または4℃で12時間のインキュベーションの後、プレートをPBS-Tで4回洗浄し、100ulのhrp基質(ウルトラTMB-ELISA、サーモ・サイエンティフィック)を各ウェルに添加した。反応を、100μLの0.5N硫酸の添加によって止め、プレートリーダー(バイオテックEL808)においてプレートを450nmで読んだ。
【0244】
図27は、レクチンVVAおよび抗TFモノクローナル抗体JAAF11(+ヤギ抗マウスIgG-hrpコンジュゲート)に対する様々なBSA-Tnコンジュゲートの反応性を示す。O-アリルの最大比率でコンジュゲートしたBSA-コンジュゲートのうち2つが、チオール-エン光化学反応の結果として、特異的にVVAへの高度な反応性を有することを見出した。
【0245】
BSA-Tnコンジュゲート(5μg)を、クーマシーブルーで染色した10%ポリアクリルアミドゲルでのSDS-PAGE電気泳動によって分析するか、または糖タンパク質に関して製造元(ピアース(Pierce))の説明書に従って分析した。結果から、高い分子量に移動したBSAコンジュゲートはグリカンに関して陽性染色されたが、天然のコンジュゲートしていないBSAはそうではなかったことが示された(データは示されない)。
【0246】
実施例19:チオール-エン光化学反応によるO-アリル-TFの化学的にチオール化BSAへのコンジュゲーション
BSA(1mL、0.088μmol、5.89mg/mL、pH8.0のPBS)を、5、10、または20当量の2-イミノチオラン(5、10、20μL、0.1mmol/mL)と共に1時間インキュベートした。次いでチオール化BSAを遠心ろ過(MWCO10,000、アミコン)によって洗浄して未反応の試薬を除去し、その後、チオール-エン光コンジュゲーションによってO-アリル-TFにコンジュゲートした。チオール化BSA(440;480;575μL、6.8;6.4;5.2mg/mL)を、キュベットから2~5cmの距離で、365nm(0.16amp、VWR)の2つの手持ち式の紫外線ランプの間に設置した石英キュベット(10×10mmのパス長、フィッシャー)中で、3当量/チオールのO-アリル-TnおよびAAPH(0.2当量/チオール)およびpH7.4のPBSと共に、1mLの最終容量で撹拌した。AAPHを添加した直後に、UVをオンにして、反応を開始させた。1時間後、生成物をpH7.4のPBSで遠心ろ過(MWCO10,000、アミコン)によって洗浄して、未反応のO-アリルおよび他の試薬を除去した。BSAサンプルの遊離チオール濃度を、システイン標準曲線を使用したエルマンアッセイによって測定し、タンパク質濃度を、標準としてBSAを使用したブラッドフォードアッセイによって測定した。
【0247】
BSAサンプルの免疫反応性を測定するために、1μgのタンパク質サンプルを、100μLのpH7.4のPBSで希釈し、96-ウェルプレート(マキシソープ、ヌンク)のウェルに、最低限でも室温で1時間または4℃で一晩吸着させた。次いでウェルをPBS-トゥイーン(商標)0.05%(PBS-T)で2回洗浄し、次いでブロッキング溶液で30分にわたり充填した。次いでウェルをPBS-Tで3回洗浄し、レクチン、ホースラディッシュペルオキシダーゼにカップリングされたピーナッツ凝集素(PNA-hrp、EYラボ)の100μLの1/100希釈物、または0.1μg/mLのTF特異的な精製マウスモノクローナル抗体JAAF11で充填した。穏やかに振盪しながらの室温で1時間または4℃で12時間のインキュベーションの後、JAAF11を含有するウェルを、PBS-Tで洗浄し、次いで二次抗体であるヤギ抗マウスIgG(H+L)-hrp(ジャクソン・イムノリサーチ)と共にさらに60分インキュベートした。次いでウェルをPBS-Tで4回洗浄し、100μLのhrp基質(ウルトラTMB-ELISA、サーモ・サイエンティフィック)を各ウェルに添加した。反応を、100μLの0.5N硫酸の添加によって止め、プレートリーダー(バイオテックEL808)においてプレートを450nmで読んだ。
【0248】
図28において、二軸グラフは、TFコンジュゲーション前に測定されたそれぞれのコンジュゲートのチオールの比率に対する、抗TFレクチンPNAまたはmAb JAAF11へのBSA-TFコンジュゲートの反応性を示す。これらの結果は、最もチオール化されたBSAでJAAF11反応性が検出されることを示す。
【0249】
実施例20:チオール-エン光化学反応によるO-アリル-Tnの化学的にチオール化BSAへのコンジュゲーション
BSA(250μL、4.3mg/mL)を、キュベットから2~5cmの距離で、365nm(0.16amp、VWR)の2つの手持ち式の紫外線ランプの間に設置した石英キュベット(10×10mmのパス長、フィッシャー)中で、200当量の0.1Mの2-イミノチオラン(シグマ)と共に、200当量の0.1MのO-アリル-Tnおよびおよそ450当量のAAPHおよびpH8のPBSの存在または非存在下で、316μLの最終容量でインキュベートした。AAPHを添加した直後に、UVをオンにして、反応を開始させた。サンプルを反応中の指定された時間に取った。反応を45分後に止め、その後、セファデックス(商標)G25ミニスピンカラムを使用したゲルろ過クロマトグラフィーによって生成物の緩衝液をpH7.4のPBSに交換した。BSAサンプルの遊離チオール濃度を、システイン標準曲線を使用したエルマンアッセイによって測定し、タンパク質濃度を、標準としてBSAを使用したブラッドフォードアッセイによって測定した。
【0250】
図29は、BSAを、2-イミノチオランと、単独で、または365nmの光の存在下で反応させたときの遊離チオール官能基の時間依存性の増加を示すが、光化学反応におけるO-アリル-Tnの存在または非存在下でのAAPHの添加は、検出可能な遊離チオールの形成を防ぐ。
【0251】
BSAサンプルの免疫反応性を測定するために、1μgのタンパク質サンプルを、100μLのpH7.4のPBSで希釈し、96-ウェルプレート(マキシソープ、ヌンク)のウェルに、最低限でも室温で1時間または4℃で一晩吸着させた。次いでウェルをPBS-トゥイーン(商標)0.05%(PBS-T)で2回洗浄し、次いでブロッキング溶液で30分にわたり充填した。次いでウェルをPBS-Tで3回洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼにカップリングされたナヨクサフジレクチン(VVA-hrp、EYラボ)の100μLの1/100希釈物で充填した。穏やかに振盪しながらの室温で1時間または4℃で12時間のインキュベーションの後、次いでウェルをPBS-Tで4回洗浄し、100μLのhrp基質(ウルトラTMB-ELISA、サーモ・サイエンティフィック)を各ウェルに添加した。反応を、100μLの0.5N硫酸の添加によって止め、プレートリーダー(バイオテックEL808)においてプレートを450nmで読んだ。
【0252】
図30において、レクチンVVAに対するBSAコンジュゲートの反応性は、ELLAにおいて、O-アリル-Tnの存在下におけるチオール-エン光化学反応によって生成したBSAのみがVVAによって検出されるが、O-アリル-Tnの非存在下で生成した生成物は、陰性であることを示す。これらの結果は、AAPHおよびUV365nm光が、O-アリル-糖の非存在下で遊離ジスルフィドのジスルフィドへの再酸化を触媒し、これは、O-アリル-Tnの存在下におけるチオエーテル結合の形成と競合することを示唆する。
【0253】
実施例21:チオール-エン光化学反応によるO-アリル-Tnの化学的にチオール化BSAへのコンジュゲーション
BSA(250μL、4.3mg/mL)を、石英キュベット(10×10mmのパス長、フィッシャー)中で、200当量の0.1Mの2-イミノチオラン(シグマ)、200当量の0.1MのO-アリル-Tn、および0.8当量のAAPHまたはおよそ450当量のAAPHのいずれか、ならびにpH8のPBSと共に、316μLの最終容量でインキュベートした。コンジュゲーションに対する抗酸化剤ビタミンC(およそ5mM)の作用を、大量のAAPHを含有する条件で試験した。キュベットから2~5cmの距離で、365nm(0.16amp、VWR)の2つの手持ち式の紫外線ランプの間に、キュベットを設置した。AAPHを添加した直後に、UVをオンにして、反応を開始させた。サンプルを反応中の指定された時間に取った。反応を45分後に止め、その後、セファデックス(商標)G25ミニスピンカラムを使用したゲルろ過クロマトグラフィーによって生成物の緩衝液をpH7.4のPBSに交換した。コンジュゲートしたBSAサンプルの遊離チオール濃度を、システイン標準曲線を使用したエルマンアッセイによって測定し、タンパク質濃度を、標準としてBSAを使用したブラッドフォードアッセイによって測定した。
【0254】
BSAサンプルの免疫反応性を測定するために、1μgのタンパク質サンプルを、100μLのpH7.4のPBSで希釈し、96-ウェルプレート(マキシソープ、ヌンク)のウェルに、最低限でも室温で1時間または4℃で一晩吸着させた。次いでウェルをPBS-トゥイーン(商標)0.05%(PBS-T)で2回洗浄し、次いでブロッキング溶液で30分にわたり充填した。次いでウェルをPBS-Tで3回洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼにカップリングされたナヨクサフジレクチン(VVA-hrp、EYラボ)の100μLの1/100希釈物で充填した。穏やかに振盪しながらの室温で1時間または4℃で12時間のインキュベーションの後、次いでウェルをPBS-Tで4回洗浄し、100μLのhrp基質(ウルトラTMB-ELISA、サーモ・サイエンティフィック)を各ウェルに添加した。反応を、100μLの0.5N硫酸の添加によって止め、プレートリーダー(バイオテックEL808)においてプレートを450nmで読んだ。
【0255】
図31は、2つのY軸を有し、O-アリル-TnのBSAへのチオール-エン光コンジュゲーションの結果としての、時間の関数としてのレクチンVVAに対するコンジュゲーション生成物の反応性の増加、および対応する遊離チオールの減少を示す。これらの結果は、反応が、より高い濃度のAAPHでより有効であったことを示唆する。ビタミンCの存在下で生成した生成物は、VVAレクチンに対して反応性を有していなかった(示されていない)。
【0256】
BSA-Tnコンジュゲート(5μg)を、クーマシーブルーで染色した10%ポリアクリルアミドゲルでのSDS-PAGE電気泳動によって分析した。結果から、より少ないAAPHでの反応と比べて、より多くのAAPHでの反応で高分子量種の量が多いことが示された。ビタミンCは、高分子量種の形成を防いだ(データは示されない)。
【0257】
実施例22:タンパク質のチオール化の機能におけるチオール-エン光化学反応によるO-アリル-TnのBSAへのコンジュゲーション
BSA(93μL、11.7mg/mL)を、石英キュベット(10×10mmのパス長、フィッシャー)中で、200当量の0.1Mの2-イミノチオラン(シグマ)、200当量の0.1MのO-アリル-Tnおよび0.08当量、0.8当量またはおよそ450当量のAAPHのいずれか、ならびにpH8のPBSと共に、316μLの最終容量でインキュベートした。一部のサンプルでは、2-イミノチオランおよび/またはAAPHを省き、pH8のPBSで置き換えた。キュベットから2~5cmの距離で、365nmまたは254nm(0.16amp、VWR)の2つの手持ち式の紫外線ランプの間にキュベットを設置した。AAPHを添加した直後に、UVをオンにして、反応を開始させた。反応を45分後に止め、その後、セファデックス(商標)G25ミニスピンカラムを使用したゲルろ過クロマトグラフィーによって生成物の緩衝液をpH7.4のPBSに交換した。タンパク質濃度を、標準としてBSAを使用したブラッドフォードアッセイによって測定した。
【0258】
BSAサンプルの免疫反応性を測定するために、1μgのタンパク質サンプルを、100μLのpH7.4のPBSで希釈し、96-ウェルプレート(マキシソープ、ヌンク)のウェルに、最低限でも室温で1時間または4℃で一晩吸着させた。次いでウェルをPBS-トゥイーン(商標)0.05%(PBS-T)で2回洗浄し、次いでブロッキング溶液で30分にわたり充填した。次いでウェルをPBS-Tで3回洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼにカップリングされたナヨクサフジレクチン(VVA-hrp、EYラボ)の100μLの1/100希釈物で充填した。穏やかに振盪しながらの室温で1時間または4℃で12時間のインキュベーションの後、次いでウェルをPBS-Tで4回洗浄し、100μLのhrp基質(ウルトラTMB-ELISA、サーモ・サイエンティフィック)を各ウェルに添加した。反応を、100μLの0.5N硫酸の添加によって止め、プレートリーダー(バイオテックEL808)においてプレートを450nmで読んだ。
【0259】
図32は、コンジュゲーションが、タンパク質のチオール化の非存在下で実行される場合、またはチオール化したタンパク質が、活性化剤であるAAPHの非存在下でコンジュゲートされる場合の、VVAに対する生成物の最小の反応性を示す。しかしながら、VVA反応性生成物は、タンパク質チオール化およびAAPHの非存在下で、UV254nmによって生成される。
【0260】
実施例23:高いコンジュゲーション比率におけるBSA-TF反応性の非存在
BSA(93μL、11.7mg/mL)を、室温のベンチ上で、またはキュベットから2~5cmの距離で、365nm(0.16amp、VWR)の2つの手持ち式の紫外線ランプの間に設置した石英キュベット(10×10mmのパス長、フィッシャー)中で、200当量の0.1Mの2-イミノチオラン(シグマ)、200当量の0.1MのO-アリル-TFおよび0.8当量またはおよそ450当量のAAPHおよびpH8のPBSの存在または非存在下で、316μLの最終容量でインキュベートした。AAPHを添加した直後に、UVをオンにして、反応を開始させた。反応を45分後に止め、その後、セファデックス(商標)G25ミニスピンカラムを使用したゲルろ過クロマトグラフィーによって生成物の緩衝液をpH7.4のPBSに交換した。タンパク質濃度を、標準としてBSAを使用したブラッドフォードアッセイによって測定した。TFエピトープのコンジュゲートしたガラクトースを、ガラクトース標準を使用したDuboisの方法によって測定した。
【0261】
BSAサンプルの免疫反応性を測定するために、1μgのタンパク質サンプルを、100μLのpH7.4のPBSで希釈し、96-ウェルプレート(マキシソープ、ヌンク)のウェルに、最低限でも室温で1時間または4℃で一晩吸着させた。次いでウェルをPBS-トゥイーン(商標)0.05%(PBS-T)で2回洗浄し、次いでブロッキング溶液で30分にわたり充填した。次いでウェルをPBS-Tで3回洗浄し、抗TFモノクローナル抗体JAAF11の100μLの0.1μg/mL希釈物で充填した。穏やかに振盪しながらの室温で1時間または4℃で12時間のインキュベーションの後、次いでウェルをPBS-Tで4回洗浄し、さらに、二次抗体であるヤギ抗マウスIgG(H+L)-hrp(ジャクソン・イムノリサーチ)の100μLの1/1000希釈物と共に60分インキュベートした。次いでウェルをPBS-Tで4回洗浄し、100μLのhrp基質(ウルトラTMB-ELISA、サーモ・サイエンティフィック)を各ウェルに添加した。反応を、100μLの0.5N硫酸の添加によって止め、プレートリーダー(バイオテックEL808)においてプレートを450nmで読んだ。
【0262】
図33は、2つのY軸を有し、より低いガラクトースコンジュゲートと比較して、BSA-TFのより低い免疫反応性と、高いガラクトース比率を示す。2つのコンジュゲートにおいてガラクトースが検出されたことによって、TFが、BSAにコンジュゲートされているが、コンジュゲートしたTFの免疫反応性は、高い比率で損なわれることを確認する。
【0263】
実施例24:チオール-エン光化学反応によるO-アリル-TnのペプチドdTT831-844-Cys-(Tn)-βAla BSAへのコンジュゲーション
図34は、dTT831-844-Cys-βAlaおよびCおよびN末端にシステイン残基を有するCys-dTT831-844-βAlaの化学構造を、それぞれそれらの表形式のLC-MSデータと共に示す。
【0264】
図35は、ペプチドdTT831-844-Cys-βAla(C末端)の詳細なLC-MSデータを示す。
【0265】
図36は、ペプチドCys-dTT831-844-βAla(N末端)の詳細なLC-MSデータを示す。
【0266】
■手順A
UVキュベット中で、水(1mL、2mM)中のペプチドの溶液に、H2O(200μL、0.1M、10当量)中のO-アリル-Tnの溶液および触媒的な量のAAPHを添加した。混合物を、365nmの放射線照射下で、室温で60分撹拌した。エルマン試験から、45分で反応が完成したことが示された。次いで溶液を凍結乾燥して、白色の粉末を得て、LC-MSから、望ましいTn-コンジュゲートペプチドの存在が示された;LC-MS:[M] C94H152O31N20Sの計算値、2089.0653;実測値、2089.0780;CAN/H2O 5~95% 5.08分。
【0267】
■手順B(有機溶媒中)
dTT831-844-Cys-(Tn)-βAla(
図34)。UVキュベット中で、MeOH(1mL、2mM)中のペプチドの溶液に、H
2O(200μL、0.1M、10当量)中のTnの溶液および触媒的な量のDMPAPを添加した。混合物を、365nmの放射線照射下で、室温で60分撹拌した。エルマン試験から、45分で反応が完成したことが示された。次いで溶液を凍結乾燥して、白色の粉末を得て、LC-MSから、望ましいペプチド-TNの存在が確認された。LC-MS:[M] C
94H
152O
31N
20Sの計算値、2089.0653;実測値、2089.0675;CAN/H
2O 5~95% 5.07分。
【0268】
図37は、C末端ペプチドdTT831-844-Cys-βAlaにおけるO-アリルTnの光分解性のAAPHによって触媒されたチオール-エン反応を示す。
【0269】
図38は、C末端ペプチドにおけるO-アリルTnのLC-MSプロファイルを示す。
【0270】
実施例25:チオール-エン光化学反応によるO-アリル-TnのペプチドCys-(Tn)-dTT831-844-βAlaへのコンジュゲーション
■手順A
UVキュベット中で、水(2mL、0.482mM)中のペプチドCys-(Tn)-dTT831-844-βAla(
図33)の溶液に、H
2O(100μL、0.1M、10当量)中のTnの溶液および触媒的な量のAAPHを添加した。混合物を、365nmの放射線照射下で、室温で60分撹拌した。エルマン試験から、45分で反応が完成したことが示された。次いで溶液を凍結乾燥して、白色の粉末を得て、LC-MSから、望ましいペプチド-Tnコンジュゲートの存在が示された。LC-MS:[M] C
94H
152O
31N
20Sの計算値、2089.0653;実測値、2089.0719;CAN/H
2O 5~95% 5.11分。
【0271】
■手順B
Cys-(Tn)-dTT831-844-βAla(
図33)。UVキュベット中で、メタノール(2mL、0.482mM)中のペプチドの溶液に、H
2O(100μL、0.1M、10当量)中のTnの溶液および触媒的な量のDMPAを添加した。混合物を、365nmの放射線照射下で、室温で60分撹拌した。エルマン試験から、45分で反応が完成したことが示された。次いで溶液を凍結乾燥して、白色の粉末を得て、LC-MSから、望ましいペプチド-Tnの存在が示された。LC-MS:[M] C
94H
152O
31N
20Sの計算値、2089.0653;実測値、2089.0817;CAN/H
2O 5~95% 5.10分。
【0272】
図39は、N末端ペプチドCys-dTT831-844-βAlaにおけるO-アリルTnの光分解性のAAPHによって触媒されたチオール-エン反応を示す。
【0273】
図40は、N末端ペプチドにおけるO-アリルTnの詳細なLC-MSプロファイルを示す。
【0274】
参考文献
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[1] グリココンジュゲート免疫原を生産するための方法であって、
(a)末端アルケン(アルケニル炭水化物抗原)に共有結合で連結された炭水化物抗原を提供する工程であって、該末端アルケンは、チオール-エン反応を介してチオール基に直接コンジュゲート可能である、工程;
(b)1個またはそれより多くの遊離チオール基を有する担体タンパク質を提供する工程;および
(c)光触媒性チオール-エン反応を実行して、1個またはそれより多くの遊離チオール基において、該炭水化物抗原を該担体タンパク質に直接コンジュゲートすることによって、グリココンジュゲート免疫原を生産する工程;
を含み、該担体タンパク質は、対象に投与される場合、免疫原性であり、該炭水化物抗原の該担体タンパク質へのコンジュゲーションは、コンジュゲートしていない炭水化物抗原の投与と比較した場合、該対象に投与されるときの該炭水化物抗原の免疫原性を増加させる、上記方法。
[2] 前記アルケニル炭水化物抗原が、水溶性である、[1]に記載の方法。
[3] 前記光触媒性チオール-エン反応が、担体タンパク質の変性を回避する、および/または担体タンパク質の活性、抗原性、および/または構造を保持する反応条件下で実行される、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記光触媒性チオール-エン反応が、いずれの有機溶媒の非存在下で実行されるか、または前記光触媒性チオール-エン反応が、担体タンパク質の変性を回避するのに十分に低い濃度での有機溶媒の存在下で実行される、[1]~[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5] 前記光触媒性チオール-エン反応が、触媒の存在下で実行される、[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6] 前記触媒が、
(a)水溶性触媒、例えば水溶性のフリーラジカルを生成するアゾ化合物;2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(Vazo 44またはVA-044);2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(AAPH);光開始剤活性を有する金属もしくは金属イオン;過酸化物;tert-ブチルヒドロペルオキシド;過酸化ベンゾイル;過硫酸アンモニウム;もしくは光開始剤活性を有するそれらのあらゆる誘導体;または
(b)水不溶性触媒、例えば水不溶性のフリーラジカルを生成するアゾ化合物、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)(ACVA)、1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)(ACHN)、ジアゼンジカルボン酸ビス(N,N-ジメチルアミド)(TMAD);アゾジカルボン酸ジピペリジド(ADD)、もしくは光開始剤活性を有するそれらのあらゆる誘導体である、[5]に記載の方法。
[7] 前記光触媒性チオール-エン反応が、短波紫外光下での放射線照射を含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8] 前記光触媒性チオール-エン反応が、約254nmでの放射線照射を含む、[7]に記載の方法。
[9] 前記光触媒性チオール-エン反応が、長波紫外光下での放射線照射を含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載の方法。
[10] 前記光触媒性チオール-エン反応が、約355nmまたは365nmでの放射線照射を含む、[9]に記載の方法。
[11] 前記光触媒性チオール-エン反応が、前記担体タンパク質の遊離チオール基1つ当たり1~200モル当量の前記アルケニル炭水化物抗原を反応させることを含み;および/または前記光触媒性チオール-エン反応が、10~300、10~270、10~240、10~210、10~180、10~150、10~120、10~90、10~60、または10~30分間実行されるか、および/または前記担体タンパク質中の総遊離チオール濃度の、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50分の1の低減を達成するのに十分な時間実行される、[1]~[10]のいずれか一項に記載の方法。
[12] 前記光触媒性チオール-エン反応が、約3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、または4.0から、約4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、または10までの間のpHで、および/または担体タンパク質の変性を回避するpHで実行される、[1]~[11]のいずれか一項に記載の方法。
[13] 前記炭水化物抗原が、前記担体タンパク質へのコンジュゲーションの後、前記対象の内因性酵素によって前記担体タンパク質から切断可能ではない、[1]~[12]のいずれか一項に記載の方法。
[14] 前記アルケニル炭水化物抗原が、前記末端アルケンに共有結合で連結されているか、および/または前記炭水化物抗原が、グリコシド結合を介して、例えば、O-グリコシド結合、S-グリコシド結合、N-グリコシド結合、もしくはC-グリコシド結合、または例えばアリルアミンと還元糖との間での還元的アミノ化により得られた結合を介して、前記担体タンパク質にコンジュゲートされている、[1]~[13]のいずれか一項に記載の方法。
[15] 前記炭水化物抗原が、B細胞エピトープを含むか、および/もしくは前記対象において体液性免疫応答を誘導し;ならびに/またはT細胞エピトープを含むか、および/もしくは前記対象において細胞媒介性免疫応答を誘導する、[1]~[14]のいずれか一項に記載の方法。
[16] 前記炭水化物抗原が、腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)であるか、またはそれを含む、[1]~[15]のいずれか一項に記載の方法。
[17] 前記TACAが、Tn、S-Tn、トムゼン-フリーデンライヒ(TF)、(2,3)-S-TF、(2,6)-S-TF、グロボH、GD2、GD3、GM2、GM3、N-グリコリル-GM3、Lea、sLea、Lex、sLex、またはそれらのあらゆる組合せであるか、それ由来であるか、もしくはそれを含む、[16]に記載の方法。
[18] 前記光触媒性チオール-エン反応が、同じ炭水化物抗原の少なくとも2つ、または1つより多くのタイプの炭水化物抗原を、前記担体タンパク質にコンジュゲートさせることによって、多価グリココンジュゲート免疫原を生産する、[1]~[17]のいずれか一項に記載の方法。
[19] 前記多価グリココンジュゲート免疫原が、前記担体タンパク質にコンジュゲートした、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個、またはそれより多くの同一または異なるタイプの炭水化物抗原を含む、[18]に記載の方法。
[20] 前記炭水化物抗原が、ウイルス多糖抗原、または細菌莢膜多糖体(CPS)であるか、またはそれを含む、[1]~[19]のいずれか一項に記載の方法。
[21] 前記細菌CPSが、肺炎球菌および/または連鎖球菌多糖体の血清型、髄膜炎菌CPS、またはインフルエンザ(例えばインフルエンザa型またはb型)CPSであるか、それ由来であるか、またはそれを含む、[20]に記載の方法。
[22] (a)における前記炭水化物抗原が、リンカーを介して、前記末端アルケンに連結されている、[1]~[21]のいずれか一項に記載の方法。
[23] 前記担体タンパク質が、前記1個またはそれより多くの遊離チオール基を有する1個またはそれより多くのシステイン残基を含むか、または任意選択で、例えば前記担体タンパク質のアミノ末端、カルボキシ末端、または溶媒接近可能な位置に、1個またはそれより多くのさらなるシステイン残基が付加されるように操作されている、[1]~[22]のいずれか一項に記載の方法。
[24] 前記担体タンパク質が、ヒトT細胞エピトープを含むか、および/または前記対象において細胞媒介性免疫応答を誘導する、[1]~[23]のいずれか一項に記載の方法。
[25] 前記担体タンパク質が、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、交差反応性物質197(CRM197)、髄膜炎菌外膜タンパク質複合体(OMPC)、インフルエンザ菌のプロテインD(HiD)、サイトカイン、免疫原性ペプチド、例えば破傷風毒素831-844(配列番号1または2)、アルブミン(例えばウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミン)、またはそれらの免疫原性フラグメントであるか、それ由来であるか、もしくはそれを含む、[1]~[24]のいずれか一項に記載の方法。
[26] (i)前記担体タンパク質が、前記光触媒性チオール-エン反応を実行する前に、または実行と共に、ジチオスレイトール(DTT)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、2-メルカプトエチルアミン-HCl、または2-メルカプトエタノールなどの還元剤で前処理されるか;
(ii)前記担体タンパク質が、前記光触媒性チオール-エン反応を実行する前に、または実行と共に、チオール化剤、例えば2-イミノチオランまたはN-ヒドロキシスクシンイミドジチオプロピオネート(DPS)で前処理されるか;
(iii)前記担体タンパク質が、前記光触媒性チオール-エン反応を実行する前に、または実行と共に、チオール化剤、例えば2-イミノチオランまたはN-ヒドロキシスクシンイミドジチオプロピオネート(DPS)で前処理され、その後、還元剤で前処理されるか;
(iv)前記担体タンパク質が、1つまたはそれより多くのジスルフィド架橋を有するタンパク質であり、該1つまたはそれより多くのジスルフィド架橋は、前記光触媒性チオール-エン反応の後、影響を受けないままであるか;
(v)前記担体タンパク質が、1つまたはそれより多くのジスルフィド架橋を有するタンパク質であり、前記担体タンパク質を還元剤で前処理して、前記炭水化物抗原へのコンジュゲーションのために、1つまたはそれより多くの追加の遊離チオール基を露出させるか;または
(iv)前記担体タンパク質が、1つまたはそれより多くのジスルフィド架橋を有するタンパク質であり、前記担体タンパク質を、チオール化剤(例えば2-イミノチオランまたはN-ヒドロキシスクシンイミドジチオプロピオネート(DPS))で前処理して、前記炭水化物抗原へのコンジュゲーションのために、1つまたはそれより多くの追加の遊離チオール基を露出させ、その後、還元剤で前処理する、[1]~[25]のいずれか一項に記載の方法。
[27] 前記グリココンジュゲート免疫原に含まれる炭水化物抗原の総数が、コンジュゲーション前の前記担体タンパク質上の利用可能な遊離チオール基の数に等しい、[1]~[26]のいずれか一項に記載の方法。
[28] 前記グリココンジュゲート免疫原が、前記対象に投与されると、前記炭水化物抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘導する、[1]~[27]のいずれか一項に記載の方法。
[29] (d)前記グリココンジュゲート免疫原を精製する工程をさらに含む、[1]~[28]のいずれか一項に記載の方法。
[30] グリココンジュゲートワクチンまたは適応免疫応答を引き起こす組成物を生産するための方法であって、[1]~[29]のいずれか一項に記載の方法によって調製されたグリココンジュゲート免疫原を、医薬的に許容される賦形剤、および/またはアジュバントを用いて製剤化することを含む、上記方法。
[31] 前記アジュバントが、無機化合物、鉱油、微生物誘導体、植物誘導体、サイトカイン、スクアレン、アラム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化リン酸カルシウム、toll様受容体アゴニスト、免疫刺激ポリヌクレオチド(例えばCPG)、免疫刺激脂質、フロイントアジュバント、RIBIアジュバント、QS-21、ムラミルジペプチド、TiterMax、Steviune、Stimune、またはそれらのあらゆる組合せであるか、またはそれを含む、[30]に記載の方法。
[32] 1つまたはそれより多くの炭水化物抗原および1つまたはそれより多くの溶媒接近可能なシステイン残基を有する免疫原性担体タンパク質を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、該1つまたはそれより多くの炭水化物抗原は、該1つまたはそれより多くの溶媒接近可能なシステイン残基において、該免疫原性担体タンパク質に連結されており、該1つまたはそれより多くの炭水化物抗原の該免疫原性担体タンパク質へのコンジュゲーションは、対象に投与されると、コンジュゲートしていない炭水化物抗原の投与と比較した場合、該1つまたはそれより多くの炭水化物抗原の免疫原性を増加させる、上記合成グリココンジュゲート免疫原。
[33] 前記1つまたはそれより多くの炭水化物抗原が、リンカーを介して、前記1つまたはそれより多くの溶媒接近可能なシステイン残基に連結されている、[32]に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[34] 前記1つまたはそれより多くの炭水化物抗原が、[13]または14]で定義された結合を介して、前記リンカーに連結されている、[32]に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[35] 前記1つまたはそれより多くの炭水化物抗原が、[2]、[15]、[16]、[17]、[20]または[21]で定義された通りである、[32]~[34]のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[36] [18]または[19]で定義された多価グリココンジュゲート免疫原である、[32]~[35]のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[37] 前記担体タンパク質が、[23]、[24]、[25]または[26]で定義された通りである、[32]~[36]のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[38] 前記グリココンジュゲート免疫原に含まれる炭水化物抗原の総数が、前記担体タンパク質における溶媒接近可能なシステイン残基の数に等しい、[32]~[37]のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[39] 前記対象に投与されると、前記炭水化物抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘導する、[32]~[38]のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[40] [1]~[29]のいずれか一項に記載の方法によって調製される、[32]~[39]のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[41] [30]または[31]に記載の方法によって生産された、および/もしくは[32]~[40]のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原、ならびに医薬的に許容される賦形剤、ならびに/またはアジュバントを含むグリココンジュゲートワクチン。
[42] 予防ワクチンまたは治療ワクチンである、[41]に記載のグリココンジュゲートワクチン。
[43] 対象を免疫化する、対象にワクチン接種する、または対象を処置する方法であって、[1]~[29]のいずれか一項に記載の方法によって生産されたグリココンジュゲート免疫原、[30]または[31]に記載の方法によって生産されたグリココンジュゲートワクチン、[32]~[40]のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原、または[41]または[42]に記載のグリココンジュゲートワクチンを該対象に投与することを含む、上記方法。
[44] 疾患を有する対象を免疫化すること、対象にワクチン接種をすること、もしくは対象を処置することにおいて使用するための、または前記グリココンジュゲートに特異的に結合する抗体の存在を検出するための、または前記免疫化、ワクチン接種、または処置(例えば、前記対象からの生物学的サンプルにおける)を検出するための、[32]~[40]のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原、または[41]または[42]に記載のグリココンジュゲートワクチン。
[45] 担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、各リンカーは、構造:
【化34-1】
(式中、
- SAは、糖抗原またはその一部であり;
- S-PCは、担体タンパク質であり;
- Xは、O、S、NR
1、またはCH
2であり;
- R
1は、-H、-COH、-COCH
3、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeである)
を有するか、またはその立体異性体である、上記合成グリココンジュゲート免疫原。
[46] 担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、各リンカーは、構造:
【化34-2】
(式中、
- SAは、糖抗原またはその一部であり;
- S-PCは、担体タンパク質であり;
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- R
3およびR
4はそれぞれ、水素原子であり、mは、1、2、3、4もしくは5であるか、またはR
3およびR
4は、一緒になって、窒素原子に連結されたカルボニルと、ラジカル-CO-CH
2-またはラジカル-CO-CH
2-CH
2-を形成し、mは、1である)
を有するか、またはその立体異性体である、上記合成グリココンジュゲート免疫原。
[47] 担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、構造:
【化34-3】
(式中、
- yは、少なくとも1であり;
- SAは、1つまたはそれより多くの糖抗原またはその免疫原性部位からなる群から選択され、yが1より大きい場合、SAは、同一であるか、または異なり;
- [S]
z-PCは、該1個またはそれより多くの遊離チオール基に由来する1個またはそれより多くの硫黄原子を有する担体タンパク質であり;
- zは、少なくとも1であり、少なくともyに等しく;
- Lは、構造:
【化34-4】
を有するリンカーからなる群から選択されるリンカーであり、式中、
- Xは、O、S、NR
1、またはCH
2であり;
- R
1は、-H、-COH、-COCH
3、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
yが1より大きい場合、Lは、同一であるか、または異なる)
を有するか、またはその立体異性体である、上記合成グリココンジュゲート免疫原。
[48] 担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、構造:
【化34-5】
(式中、
- yは、少なくとも1であり;
- SAは、糖抗原またはその免疫原性部位からなる群から選択され、yが1より大きい場合、SAは、同一であるか、または異なり;
- [S]
z-PCは、z個の遊離チオール基に由来する1個またはそれより多くの硫黄原子を有する担体タンパク質であり;
- zは、少なくともyに等しく;
- Lは、構造:
【化34-6】
を有するリンカーからなる群から選択されるリンカーであり、式中、
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- R
3およびR
4はそれぞれ、水素原子であり、mは、1、2、3、4もしくは5であるか、またはR
3およびR
4は、一緒になって、窒素原子に連結されたカルボニルと、ラジカル-CO-CH
2-またはラジカル-CO-CH
2-CH
2-を形成し、mは、1であり;
yが1より大きい場合、Lは、同一であるか、または異なる)
を有するか、またはその立体異性体である、上記合成グリココンジュゲート免疫原。
[49] 担体タンパク質の1個またはそれより多くの遊離チオール基にリンカーを介して共有結合で連結された1つまたはそれより多くの糖抗原を含む合成グリココンジュゲート免疫原であって、構造:
【化34-7】
(式中、
- yは、少なくとも1であり;
- SAは、糖抗原またはその免疫原性部位からなる群から選択され、yが1より大きい場合、SAは、同一であるか、または異なり;
- [S]
z-PCは、z個の遊離チオール基に由来する1個またはそれより多くの硫黄原子を有する担体タンパク質であり;
- zは、少なくともyに等しく;
- Lは、構造:
【化34-8】
を有するリンカーからなる群から選択されるリンカーであり、式中、
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- rは、1、2、3、4または5であり;
- R
5は、S-PC、共有結合、または構造:
【化34-9】
のラジカルであり、ここでR
3およびR
4はそれぞれ、水素原子であり、mは、1、2、3、4もしくは5であるか、またはR
3およびR
4は、一緒になって、窒素原子に連結されたカルボニルと、ラジカル-CO-CH
2-またはラジカル-CO-CH
2-CH
2-を形成し、mは、1であり;
yが1より大きい場合、Lは、同一であるか、または異なる)
を有するか、またはその立体異性体である、上記合成グリココンジュゲート免疫原。
[50] 前記リンカーが、構造:
【化34-10】
(式中、
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- rは、1、2、3、4または5である)
を有する、[49]に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[51] 前記リンカーが、構造:
【化34-11】
(式中、
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- rは、1または2である)
を有する、[49]に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[52] 前記リンカーが、構造:
【化34-12】
(式中、
- Xは、S、NR
1、CH
2またはOであり;
- R
1は、-H、-COH、-COMe、または-COEtであり;
- nは、1、2、3、4、または5であり;
- R
2は、HまたはMeであり;
- qは、1、2、3、4、または5であり;
- rは、1または2である)
を有する、[49]に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[53] yが、1から50、1から40、1から30、1から20、または1から10の範囲の整数である、[47]~[52]のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[54] 前記糖抗原が、[15]、[16]、[17]、[20]または、[21]で定義された炭水化物抗原である、[45]~[53]のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[55] 前記担体タンパク質が、[23]、[24]または[25]で定義された担体タンパク質である、[45]~[54]のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[56] 多価グリココンジュゲート免疫原である、[45]~[55]のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[57] 前記多価グリココンジュゲート免疫原が、前記担体タンパク質にコンジュゲートした、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個、またはそれより多くの同一または異なるタイプの炭水化物抗原を含む、[56]に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[58] 前記グリココンジュゲート免疫原が、対象に投与されると、前記炭水化物抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘導する、[45]~[57]のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原。
[59] [45]~[58]のいずれか一項に記載の合成グリココンジュゲート免疫原、ならびに医薬的に許容される賦形剤および/またはアジュバントを含むワクチン。
[60] 前記アジュバントが、[31]で定義された通りである、[59]に記載のワクチン。
[61] ワクチンの製造のための、[1]~[29]のいずれか一項に記載の方法によって調製されたグリココンジュゲート免疫原、または[32]~[40]および[45]~[58]のいずれか一項で定義された合成グリココンジュゲート免疫原の使用。
[62] 前記1つまたはそれより多くの炭水化物または糖抗原の発現の増加に関連する疾患を有する対象を処置するための、[1]~[29]のいずれか一項に記載の方法によって調製されたグリココンジュゲート免疫原、[30]または[31]に記載の方法によって生産されたグリココンジュゲートワクチン、[32]~[40]および[45]~[58]のいずれか一項で定義された合成グリココンジュゲート免疫原、または[59]または[60]に記載のワクチンの使用。
[63] グリココンジュゲート免疫原に特異的に結合する抗体を生産するための、[1]~[29]のいずれか一項に記載の方法によって調製されたグリココンジュゲート免疫原、[30]または[31]に記載の方法によって生産されたグリココンジュゲートワクチン、[32]~[40]および[45]~[58]のいずれか一項で定義された合成グリココンジュゲート免疫原、または[59]または[60]に記載のワクチンの使用。
[64] グリココンジュゲート免疫原に特異的に結合する抗体を検出するための、[1]~[29]のいずれか一項に記載の方法によって調製されたグリココンジュゲート免疫原、[30]または[31]に記載の方法によって生産されたグリココンジュゲートワクチン、[32]~[40]および[45]~[58]のいずれか一項で定義された合成グリココンジュゲート免疫原の使用。
[65] グリココンジュゲートを生産するための方法であって、
(a)末端アルケン(アルケニル炭水化物抗原)に共有結合で連結された炭水化物抗原を提供する工程であって、該末端アルケンは、チオール-エン反応を介してチオール基に直接コンジュゲート可能である、工程;
(b)本明細書に記載されるチオール-エン反応を介した前記炭水化物抗原へのコンジュゲーションに好適なコンジュゲート材料を提供する工程であって、前記コンジュゲート材料は、1個またはそれより多くの遊離チオール基を有する、工程;および
(c)光触媒性チオール-エン反応を実行して、該炭水化物抗原を、該1個またはそれより多くの遊離チオール基において前記コンジュゲート材料に直接コンジュゲートすることによって、グリココンジュゲートを生産する工程
を含む、上記方法。
[66] 前記コンジュゲート材料が、ポリマー、ポリペプチド、前記した項のいずれか一項で定義された担体タンパク質、固体支持体、粒子、または本明細書に記載されるチオール-エン反応を介して前記炭水化物抗原へのコンジュゲーションに好適な遊離チオール基を有する他のあらゆる材料であるか、またはそれを含む、[65]に記載の方法。
[67] [1]~[64]のいずれか一項で定義された1つまたはそれより多くの特徴をさらに含む、[65]または[66]に記載の方法。
[68] 炭水化物抗原または炭水化物抗原を含む腫瘍循環細胞に特異的に結合する抗体の存在を検出またはスクリーニングするための、または炭水化物抗原での免疫化またはワクチン接種の結果生じる抗体の存在を検出するための、[65]~[67]のいずれか一項に記載の方法によって生産されたグリココンジュゲートの使用。
[69] 前記検出またはスクリーニングが、あらゆる好適な検出方法、例えば免疫吸着測定法、ELISA、マイクロアレイ、または免疫ブロット分析を介して実行される、[68]に記載の使用。
[70] 対象を処置する方法であって、前記した項のいずれかで定義された、または前記した項のいずれかで定義された方法によって生産されたグリココンジュゲートまたはグリココンジュゲート免疫原を投与して、炭水化物抗原に対する前記対象における免疫応答を生じさせること、および前記対象からの生物学的サンプルを、該炭水化物抗原に特異的に結合する抗体の存在に関してスクリーニングすることを含む、上記方法。
[71] 前記した項に記載された1つまたはそれより多くの特徴をさらに含む、[70]に記載の方法。
【配列表】