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特許7297090PDL1及びTGFβに対する二機能性融合タンパク質並びにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】PDL1及びTGFβに対する二機能性融合タンパク質並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230616BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230616BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230616BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230616BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230616BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230616BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230616BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230616BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230616BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230616BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230616BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/62 Z
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K38/17
A61K47/68
A61K47/64
A61K48/00
A61K35/12
C12P21/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021560523
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 CN2020094855
(87)【国際公開番号】W WO2020248926
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】201910497064.X
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910497723.X
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521442039
【氏名又は名称】山東博安生物技術股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG BOAN BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.39, Keji Avenue, High-Tech Zone, Yantai, Shandong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宋徳勇
(72)【発明者】
【氏名】徐洪光
(72)【発明者】
【氏名】韓鎮
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-511959(JP,A)
【文献】国際公開第2018/205985(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/218215(WO,A1)
【文献】特表2018-531219(JP,A)
【文献】特表2015-519375(JP,A)
【文献】特表2017-536099(JP,A)
【文献】特表2019-503687(JP,A)
【文献】特表2008-544755(JP,A)
【文献】特表2018-527949(JP,A)
【文献】特表2017-506217(JP,A)
【文献】特表2015-500207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PDL1に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、3つの重鎖相補性決定領域を含み、HCDR1アミノ酸配列は、配列番号8により表され、HCDR2アミノ酸配列は、配列番号9により表され、HCDR3アミノ酸配列は、配列番号10により表され、
3つの軽鎖相補性決定領域をさらに含み、LCDR1アミノ酸配列は、配列番号5により表され、LCDR2アミノ酸配列は、配列番号6により表され、LCDR3アミノ酸配列は、配列番号7により表される抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号2により表される重鎖可変領域及び配列番号1により表される軽鎖可変領域を含む、PDL1に結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記その抗原結合断片が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、scFv断片、又はdsFv断片を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片及びTGFβRIIの細胞外ドメインを含む二機能性融合タンパク質であって、前記抗体又はその抗原結合断片及びTGFβRIIの細胞外ドメインは、リンカーにより結合している二機能性融合タンパク質。
【請求項5】
求項1~のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項に記載の二機能性融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項4に記載の二機能性融合タンパク質を発現する細胞。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項に記載の二機能性融合タンパク質、又は請求項に記載の核酸、又は請求項6に記載の細胞を含む医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項に記載の二機能性融合タンパク質、又は請求項に記載の核酸、又は請求項6に記載の細胞を含むキット。
【請求項9】
の処置、予防、検出又は診断のための薬剤であって、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項に記載の二機能性融合タンパク質、又は請求項に記載の核酸、又は請求項6に記載の細胞を含む、薬剤
【請求項10】
前記癌は、胃癌、食道癌、頭頸部癌、膀胱癌、子宮頸癌、肉腫、細胞腫、肺癌、結腸癌、卵巣癌、腎臓癌、結腸直腸癌、膵臓癌、肝臓癌、黒色腫、乳癌、骨髄腫、神経膠腫、白血病及びリンパ腫のうちの一又は複数を含む、請求項9に記載の薬剤。
【請求項11】
癌の処置、予防、検出又は診断のための薬剤の製造における、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項4に記載の二機能性融合タンパク質、又は請求項5に記載の核酸、又は請求項6に記載の細胞の使用。
【請求項12】
前記癌は、胃癌、食道癌、頭頸部癌、膀胱癌、子宮頸癌、肉腫、細胞腫、肺癌、結腸癌、卵巣癌、腎臓癌、結腸直腸癌、膵臓癌、肝臓癌、黒色腫、乳癌、骨髄腫、神経膠腫、白血病及びリンパ腫のうちの一又は複数を含む、請求項11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬又はバイオ医薬品の技術分野に関する。具体的には、本発明は、抗PDL1抗体、PDL1及びTGFβに対する二機能性融合タンパク質、及びそのバリアント及び抗原結合断片、並びにその調製方法及び癌を処置するための方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
PD1(プログラム細胞死-1)及びPDL1(プログラム細胞死-1リガンド1)は重要な種類の免疫チェックポイントタンパク質であり、PD1は活性化T細胞及びNK細胞の表面上で発現され、腫瘍細胞は、PDL1を大量に発現させることによりPD1への結合後にT細胞及びNK細胞の突然変異及び増殖を阻害し、次いで免疫監視から逃れる(Iwai et al.,PNAS 99:12293-7,2002)(Ohigashi et al.,Clin Cancer Res 11:2947-53,2005)。したがって、PD1及びPDL1間の相互作用を遮断することにより、T細胞を再活性化させることができ、腫瘍細胞を特定し、殺滅して患者に利益を与えることができる。
【0003】
TGFβは早期腫瘍の成長を阻害し得るが、腫瘍が進行し続けるにつれ、腫瘍細胞はもはやTGFβに感受性でなくなり、その時点でTGFβは上皮-間質移行を順次促進し、免疫系を抑制することにより腫瘍成長を促進する(Bierie et al.,Nat Rev Cancer.2006;6:506-20)。
【0004】
TGFβRIIの細胞外ドメインは136アミノ酸残基長にすぎず、TGFβRIIはTGFβ1に結合し得る(Lin et al.,J Biol Chem.1995;270:2747-54)。可溶性TGFβRII-Fcは抗癌剤として試験されており、それはネズミモデルにおいて悪性中皮腫の成長を阻害し得ることが示されている(Suzuki et al.,Clin Cancer Res.2004;10:5907-18)(Suzuki et al.,Clin Cancer Res.2004;10:5907-18)。
【0005】
Merck社からのM7824二機能性融合タンパク質(中国特許出願第201580007865.3号明細書)は、(GS)GによりTGFβRIIに結合している抗PDL1抗体アベルマブであり、いくつかの第I相及び第II相臨床試験が完了しており、それは種々の固形腫瘍において十分に機能した(MSB0011359C)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、疾患処置についての患者の医薬的要求、特に抗体薬物についての要求に直面し、より高い結合活性及びより良好な効力を有する抗PDL1抗体又はPDL1及びTGFβに対する二機能性融合タンパク質を提供することが依然として緊急に臨床的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の全文において、VL(軽鎖可変領域)、VH(重鎖可変領域)、LCDR(軽鎖相補性決定領域)、HCDR(重鎖相補性決定領域)、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2及びHCDR3に関する種々の実施形態を、個々に又は任意の組み合わせで実施することができる。
【0008】
本発明は、抗体若しくはその抗原結合断片、又は二機能性融合タンパク質並びにその調製方法及び使用に関する。
【0009】
本発明の一態様において、本発明は、3つの重鎖相補性決定領域を含み、HCDR1アミノ酸配列は、配列番号8により表され、HCDR2アミノ酸配列は、配列番号9により表され、HCDR3アミノ酸配列は、配列番号10により表される抗体又はその抗原結合断片に関する。さらに、抗体又はその抗原結合断片は、3つの軽鎖相補性決定領域も含み、LCDR1アミノ酸配列は、配列番号5により表され、LCDR2アミノ酸配列は、配列番号6により表され、LCDR3アミノ酸配列は、配列番号7により表される。
【0010】
本発明の一態様において、本発明において提供される抗体又はその抗原結合断片は、配列番号2により表される重鎖可変領域を含み;好ましくは、配列番号1により表される軽鎖可変領域をさらに含む。
【0011】
本発明の一態様において、本発明は、3つの軽鎖相補性決定領域を含み、LCDR1アミノ酸配列は、配列番号11により表され、LCDR2アミノ酸配列は、配列番号6により表され、LCDR3アミノ酸配列は、配列番号12により表され;及び/又は3つの重鎖相補性決定領域を含み、HCDR1アミノ酸配列は、配列番号13により表され、HCDR2アミノ酸配列は、配列番号14により表され、HCDR3アミノ酸配列は、配列番号15により表される抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0012】
別の態様において、本発明は、配列番号3により表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域、及び/又は配列番号4により表されるアミノ酸配列の重鎖可変領域を含む抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0013】
別の態様において、上記態様のいずれか1つの抗体又はその抗原結合断片の軽鎖定常領域の配列は、配列番号16である。
【0014】
別の態様において、上記態様のいずれか1つの抗体又はその抗原結合断片の重鎖定常領域の配列は、配列番号17である。
【0015】
具体的には、本発明において提供される抗体又はその抗原結合断片は、好ましくは、配列番号1により表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域、配列番号2により表されるアミノ酸配列の重鎖可変領域、配列番号16により表されるアミノ酸配列の軽鎖定常領域及び配列番号17により表されるアミノ酸配列の重鎖定常領域を含む。或いは、本発明において提供される抗体又はその抗原結合断片は、好ましくは、配列番号3により表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域、配列番号4により表されるアミノ酸配列の重鎖可変領域、配列番号16により表されるアミノ酸配列の軽鎖定常領域及び配列番号17により表されるアミノ酸配列の重鎖定常領域を含む。
【0016】
別の態様において、本発明は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、scFv断片、dsFv断片などを含む、上記態様のいずれか1つの抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0017】
別の態様において、上記抗体又はその抗原結合断片のいずれか1つは、PDL1に結合する。
【0018】
別の態様において、本発明は、上記態様のいずれか1つの抗体又はその抗原結合断片及びTGFβRII断片を含む二機能性融合タンパク質に関し、好ましくは、TGFβRII断片は、TGFβRII細胞外ドメインを含む。
【0019】
別の態様において、二機能性融合タンパク質において、上記態様のいずれか1つの抗体又はその抗原結合断片は、リンカーによりTGFβRII断片に結合しており、好ましくは、TGFβRII断片は、好ましくは、(GS)G(すなわち、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSG)リンカーにより抗体又はその抗原結合断片の重鎖定常領域のC末端に結合しており、好ましくは、二機能性融合タンパク質の重鎖定常領域の配列は、配列番号22であり、好ましくは、二機能性融合タンパク質のTGFβRII断片の配列は、配列番号23であり;具体的には、二機能性融合タンパク質の構造は、抗体又はその抗原結合断片-(GS)G-TGFβRII断片である。
【0020】
別の態様において、二機能性融合タンパク質において、抗体又はその抗原結合断片の軽鎖可変領域の配列は、配列番号1であり、重鎖可変領域の配列は、配列番号2であり、好ましくは、二機能性融合タンパク質において、軽鎖定常領域の配列は、配列番号16であり、重鎖定常領域の配列は、配列番号22であり、TGFβRII断片の配列は、配列番号23であり;具体的には、(GS)Gにより結合している重鎖定常領域及びTGFβRII断片の配列は、配列番号18である。
【0021】
別の態様において、二機能性融合タンパク質において、抗体又はその抗原結合断片の軽鎖可変領域の配列は、配列番号3であり、重鎖可変領域の配列は、配列番号4であり、好ましくは、二機能性融合タンパク質において、軽鎖定常領域の配列は、配列番号16であり、重鎖定常領域の配列は、配列番号22であり、TGFβRII断片の配列は、配列番号23であり;具体的には、(GS)Gにより結合している重鎖定常領域及びTGFβRII断片の配列は、配列番号18である。
【0022】
別の態様において、上記二機能性融合タンパク質のいずれか1つは、PDL1及びTGFβに結合する。
【0023】
別の態様において、本発明は、上記態様のいずれか1つの抗体若しくはその抗原結合断片又は二機能性融合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0024】
別の態様において、本発明は、上記態様の核酸を含むベクターに関し、又はベクターは、上記態様のいずれか1つの抗体若しくはその抗原結合断片若しくは二機能性融合タンパク質を発現し得る。好ましくは、ベクターは、ウイルスベクターであり得;好ましくは、ウイルスベクターとしては、限定されるものではないが、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが挙げられ;好ましくは、ベクターは、非ウイルスベクターであり得;好ましくは、ベクターは、哺乳類細胞発現ベクターであり得;好ましくは、発現ベクターは、細菌発現ベクターであり得;好ましくは、発現ベクターは、真菌発現ベクターであり得る。
【0025】
別の態様において、本発明は、上記態様のいずれか1つの抗体若しくはその抗原結合断片又は二機能性融合タンパク質の細胞を発現し得る細胞に関する。好ましくは、細胞は、細菌細胞であり;好ましくは、細菌細胞は、大腸菌(E.coli)細胞などであり;好ましくは、細胞は、真菌細胞であり;好ましくは、真菌細胞は、酵母細胞であり;好ましくは、酵母細胞は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などであり;好ましくは、細胞は、哺乳類細胞であり;好ましくは、哺乳類細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ヒト胚性腎細胞(293)、B細胞、T細胞、DC細胞、NK細胞などである。
【0026】
別の態様において、本発明は、上記態様のいずれか1つの抗体若しくはその抗原結合断片、二機能性融合タンパク質、核酸、ベクター又は細胞を含む医薬組成物に関し、好ましくは、医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含み、好ましくは、薬学的に許容可能な賦形剤としては、以下の1つ以上:薬学的に許容可能な溶媒、分散剤、添加剤、可塑剤などが挙げられる。
【0027】
別の態様において、医薬組成物は、他の治療剤をさらに含み得る。一部の実施形態において、他の治療剤としては、化学療法剤、免疫療法剤、又はホルモン療法剤が挙げられる。抗体又は抗原結合断片及び他の治療剤の併用投与は、治療効果を向上させ得る。
【0028】
別の態様において、「治療効果を向上させる」は、他の治療剤又は治療の治療効果を向上させることを指す。本発明において提供される抗体又は抗原結合断片は、個々に又は他の治療剤若しくは治療と併用して投与することができる。一部の実施形態において、他の治療剤又は治療としては、化学療法剤、免疫療法剤、ホルモン療法剤、放射線療法及び手術が挙げられる。
【0029】
別の態様において、本発明の抗体若しくはその抗原結合断片を含むキット、又は二機能性融合タンパク質を含むキット、又は抗体若しくはその抗原結合断片若しくは二機能性融合タンパク質をコードする核酸を含むキットが提供される。
【0030】
別の態様において、本発明は、疾患の処置又は予防のための医薬品の調製における、上記態様のいずれか1つの抗体若しくはその抗原結合断片、二機能性融合タンパク質、核酸、ベクター又は細胞の用途に関する。
【0031】
別の態様において、本発明は、診断又は検出キットの調製における、上記態様のいずれか1つの抗体若しくはその抗原結合断片、二機能性融合タンパク質又は核酸の用途に関する。
【0032】
別の態様において、上記態様のいずれか1つの抗体若しくはその抗原結合断片、二機能性融合タンパク質、核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物を、必要とされる対象に投与することを含む、疾患を処置し、又は予防する方法が提供される。
【0033】
別の態様において、上記態様のいずれか1つの抗体若しくはその抗原結合断片、二機能性融合タンパク質、核酸又はキットを、必要とされる対象又はサンプルに投与することを含む、診断又は検出の方法が提供される。好ましくは、方法は、疾患を診断し、又は検出する方法である。
【0034】
別の態様において、本発明は、疾患の処置又は予防のための、上記態様のいずれか1つの抗体若しくはその抗原結合断片、二機能性融合タンパク質、核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物の使用に関する。
【0035】
別の態様において、本発明は、検出又は診断のための、上記態様のいずれか1つの抗体若しくはその抗原結合断片、二機能性融合タンパク質、核酸、又はキットの使用に関する。好ましくは、使用は、疾患を診断し、又は検出するためのものである。
【0036】
別の態様において、疾患は、癌である。
【0037】
別の態様において、癌としては、胃癌、食道癌、頭頸部癌、膀胱癌、子宮頸癌、肉腫、細胞腫、肺癌、結腸癌、卵巣癌、腎臓癌、結腸直腸癌、膵臓癌、肝臓癌、黒色腫、乳癌、骨髄腫、神経膠腫、白血病、リンパ腫などが挙げられる。
【0038】
別の態様において、本発明は、細胞を上記ベクターにより形質移入し、形質移入細胞により抗体若しくはその抗原結合断片、若しくは二機能性融合タンパク質を発現させることを含み;又は上記細胞を用いて抗体若しくはその抗原結合断片、若しくは二機能性融合タンパク質を発現させることを含む、上記態様のいずれか1つの抗体若しくはその抗原結合断片、又は二機能性融合タンパク質を調製する方法に関する。
【0039】
本発明において提供される抗体若しくはその抗原結合断片又は二機能性融合タンパク質は、以下の利点の1つ以上:TGFβ1結合活性の向上、PDL1親和性の向上、PD1へのPDL1の結合を遮断する能力の向上、TGFβ1機能の遮断活性の向上、T細胞のIFN-γの分泌を促進する能力の向上、より良好な免疫調節効果及びより良好な腫瘍抑制効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】5回の免疫化後のBoAn-hMab1マウスの血清力価(2500倍希釈)を示す。
図2】TGFβ1タンパク質への二機能性融合タンパク質の結合を示す。
図3】二機能性融合タンパク質がCD4+TによるIFN-γの分泌を促進することを示す。
図4】TGFβ1機能に対する二機能性融合タンパク質の遮断効果を示す。
図5A-C】図5Aは、MC38-hPD-L1腫瘍モデルマウスの体重を示し;図5Bは、MC38-hPD-L1腫瘍モデルマウスの腫瘍容積を示し;図5Cは、MC38-hPD-L1腫瘍モデルマウスの腫瘍重量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、具体的な実施形態との関連で以下にさらに記載される。記載される実施形態は本発明の実施形態の一部であるが、実施形態の全てではない。以下の実施例は、本発明の方法及び組成物をどのように使用するかの一般的開示及び記載を、本発明が属する分野の当業者に提供するために挙げられ、本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されるべきである。本発明の実施形態に基づき、発明の着想を用いずに当業者により得られる全ての他の実施形態は、本発明の範囲内である。
【0042】
材料及び試薬:PDL1タンパク質(Sinobiological,カタログ番号:10084-H08H);PD1タンパク質(Sinobiological,カタログ番号:10377-H08H);TGFβ1(Sinobiological,カタログ番号:10804-HNAC);NaHCO(Sinopharm,10018960);TMB(Beijing Makewonder,カタログ番号:1001);STREP/HRP(R&D,カタログ番号:890803);HBS-EP+1×緩衝液(GE,カタログ番号:BR-1008-26);酵素標識プレート(Suzhou Beaver,カタログ番号:40301);バイオセンサーチップ(GE,カタログ番号:BR100530);96ウェル丸底プレート(Corning,カタログ番号:3799);抗ヒトIgG Fcアミノカップリングキット(GE,カタログ#BR-1008-39);
【実施例
【0043】
実施例1 PDL1及びTGFβに対する二機能性融合タンパク質の調製
1.1 PDL1タンパク質の免疫化
PDL1タンパク質を完全フロイントアジュバント(Sigma,カタログ番号:F5881-10ML)、不完全フロイントアジュバント(Sigma,カタログ番号:F5506-10ML)又はゴールドアジュバント(Sigma,カタログ番号:T2684-1mL)により乳化してBoan bioの完全ヒト抗体トランスジェニックマウスBoAn-hMab1(中国特許第103571872B号明細書に記載の方法に従って調製)を免疫化する。6匹の雄及び5匹の雌を含む合計11匹のマウスをこのとき免疫化し、マウスの月齢は6~12か月であり、合計5回の免疫化を実施し、より高い血清力価を有する6匹のマウスを上記PDL1タンパク質によるブースター免疫化のために選択した。ELISAにより検出された血清力価(2500倍希釈)を図1に示す。ここで、PL1Q15、PL1Q16、PL1Q18、PL1Q19及びPL1Q21マウスはフロイントアジュバントにより免疫化されたマウスであり、PL1Q24マウスはゴールドアジュバントにより免疫化されたマウスであった。
【0044】
1.2 ファージライブラリーの確立
1.1におけるより高い血清力価を有する6匹のマウスを犠死させ、脾臓を摘出し、脾臓をシリンジゴム栓により粉砕し、破壊し、フィルター(FALCON,カタログ番号:352350)により濾過し、濾過された脾臓を後の使用のために冷凍した。RNA抽出後、逆転写を実施してcDNAを得、ファージライブラリーを確立するためのステップは、Carlos F.Barbas III,Phage display:A laboratory manualに記載の方法を指し、重鎖及び軽鎖の可変領域をPCRによりcDNAから得、次いで重鎖及び軽鎖の可変領域の重複伸長PCRにより単鎖Fv(scFv)を得、scFvをSfiI酵素(NEB,カタログ番号:#R0123L)により消化し、次いでプラスミドpCOMB3x(BIOVECTOR,Chinese Center,Plasmid Vector Strain Cell Line Gene Collection.,510837)をT4 DNAリガーゼ(Sino Biological)によりライゲートし、ライゲーション生成物を大腸菌(E.coli)TG1コンピテント細胞(Lucigen,カタログ番号:A96595-2)中に電気的形質移入し、形質移入TG1を37℃、220rpmのシェーカー中でインキュベートした後、ファージを添加して感染させ、培養物の上清を回収し、濃縮し、精製してファージライブラリーを得た。
【0045】
1.3 ファージライブラリーのスクリーニング
プレートスクリーニング:CBS緩衝液の調製:1.59gのNaCO(Sinopharm,10019260)及び2.93gのNaHCOを秤量し、蒸留水を1Lまで添加してCBS緩衝液を調製した。PDL1タンパク質をCBS緩衝液により10μg/mLに希釈し、次いでスクリーニングプレート(Costar,42592)に100μg/ウェルにおいて添加し、8つのウェルをそれぞれのライブラリーに使用し、スクリーニングプレートを4℃において一晩放置し;ウェルプレート中のタンパク質溶液を翌日廃棄し、プレートを2%のBSA(Solarbio,A8010)により1時間シールし、ファージライブラリー(2×1012個/ウェル)サンプルを添加して37℃において2時間インキュベートし、PBST(PBS+0.05%のTween20)により4~10回洗浄した後、PDL1特異的結合ファージを溶出緩衝液(4.2mlの濃塩酸(Comeo)を500mlの超純水に添加し、グリシン粉末(Biotopped,BG0617-500)によりpHを2.2に調整する)により溶出させた。
【0046】
マグネティックビーズスクリーニング:PDL1-mFcタンパク質(Acrobiosystems,カタログ番号:PD1-H52A3)のビオチン化(タンパク質とビオチンとのモル比は1:2である):PDL1-mFcタンパク質を0.1MのpH8.0のNaHCOに変化させ、適切な量のビオチン(Thermo,21335)を精密天秤により秤量し、次いで超純水により溶解させ、適切な量の溶解ビオチンをPDL1-mFcタンパク質溶液に直ちに添加し、ロータリーミキサー上で暗所で40分間インキュベートし、次いで標識後にPDL1-mFcタンパク質溶液をPBSに変化させた。ビオチン化PDL1-mFcタンパク質(3μg/ライブラリー)をマグネティックビーズ(Invitrogen Dynabeads M-280ストレプトアビジン,カタログ番号:00355871)(10μL/ライブラリー)に室温において1時間結合させ、次いで2%のBSAによりシールした後、ファージライブラリーと室温において2時間インキュベートし、4~10回洗浄した後にPDL1特異的結合ファージを溶出緩衝液(pH2.2)により溶出させた。
【0047】
ファージクローンは大腸菌(E.coli)を介してscFvを発現し、次いでELISAを介してscFvによるPDL1/PD1結合の遮断を検出し、活性を遮断するクローンを後続の分子の構築のために保持する。
【0048】
scFvによるPDL1/PD1結合の遮断のELISA検出:PDL1タンパク質をpH9.6のCBSにより0.5μg/mLに希釈し、酵素標識プレートにより100μL/ウェルでコーティングし、4℃において一晩インキュベートし;プレートを洗浄した後、3%の脱脂粉乳を37℃において1時間シーリングに使用した。プレートを洗浄後した後、50μLのscFvペリプラズムをそれぞれのウェルに添加した。次いで、ビオチン標識PDL1-Fcタンパク質(最終濃度は0.2μg/mLであった)を50μL/ウェルで添加し、37℃において1時間インキュベートし;プレートを洗浄した後、PBSTにより希釈されたSTREP/HRPを100μL/ウェルで添加し、37℃において1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、100μLのTMBを発色のためにそれぞれのウェルに添加し、10分後、50μLの2MのHSOをそれぞれのウェルに添加して発色を停止させ、OD450をマイクロプレートリーダーにより読み取った。
【0049】
1.4 二機能性融合タンパク質の構築及び産生
マグネティックビーズスクリーニングされたクローンBA533、BA603、BA613、BA623、BA649、BA669、BA446及びプレートスクリーニングされたクローンBA705を、シーケンシングのためにInvitrogen Biotechnology Ltdに送付した。それぞれのクローンの軽鎖可変領域及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を以下の表1に提示する。
【0050】
【0051】
可変領域遺伝子増幅(2Phanta Max Master Mix,製造業者:Vazyme,カタログ番号:P515-AA)、シグナルペプチド及び可変領域重複伸長、相同組換え(ClonExpress II One Step Cloning Kit,製造業者:Vazyme,カタログ番号:C112-01)及び他の方法を介して、VHをコードするヌクレオチド配列断片を、配列番号18をコードするヌクレオチド配列を有するベクターpCDNA3.4(Life Technology)中に最終的に挿入し、配列番号18は、(GS)Gにより結合しているIgG1抗体の重鎖定常領域の配列及びTGFβRII配列を含有し、VLをコードするヌクレオチド配列断片を、抗体の軽鎖定常領域アミノ酸配列(配列番号16)をコードするヌクレオチド配列を有するベクターpCDNA3.4(Life Technology)中に挿入し、次いでHEK293細胞を形質移入し、37℃\8%のCO\125rpmのシェーカー中で6から7日間インキュベートし、最後に培養物上清をプロテインAフィラーにより精製して後続の検出のために表2の二機能性融合タンパク質のクローンを得た。
【0052】
【0053】
対照二機能性融合タンパク質の産生:Merck社のM7824二機能性融合タンパク質は、(GS)GによりTGFβRIIに結合している抗PDL1抗体アベルマブであり、いくつかの第I相及び第II相臨床試験は完了しており、それは種々の固形腫瘍において十分機能した。Merck社のアベルマブの可変領域のアミノ酸配列(重鎖可変領域の配列は配列番号19であり、軽鎖可変領域の配列は配列番号20である)をIMGTデータベースにより決定し、完全遺伝子を合成し、次いでHEK293細胞中での発現のためにベクターpCDNA3.4中に挿入し、精製された二機能性融合タンパク質をPLTGB-M7824-IgG1と命名する(重鎖可変領域の配列は配列番号19であり、軽鎖可変領域の配列は配列番号20であり、軽鎖定常領域の配列は配列番号21であり、重鎖定常領域及びTGFβRIIの配列は配列番号18である)。
【0054】
1.5 二機能性融合タンパク質によるPDL1-PD1結合の遮断のELISA検出
PD1タンパク質をpH9.6におけるCBSにより0.5μg/mLに希釈し、次いで酵素標識プレートにより100μL/ウェルでコーティングし、4℃において一晩インキュベートし;プレートを洗浄した後、3%の脱脂粉乳を37℃において1時間のシーリングに使用し;プレートを洗浄した後、PBST(PBS+0.05%のTween20)を添加して二機能性融合タンパク質を異なる濃度(0.5μg/mL、0.25μg/mL、0.125μg/mL、0.0625μg/mL、0.03125μg/mL、0.015625μg/mL)に50μL/ウェルで希釈し、次いでビオチン標識PDL1-Fcタンパク質(最終濃度は0.2μg/mLである)を50μL/ウェルで添加し、37℃において1時間インキュベートし;PBSTにより希釈されたSTREP/HRPを100μL/ウェルで添加し、37℃において1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、TMBを発色のために添加し、10分後に50μLの2MのHSOをそれぞれのウェルに添加して発色を停止させ、OD450をマイクロプレートリーダー上で読み取った。結果は、本発明の候補二機能性融合タンパク質(PLTGBQ16-BA466-IgG1、PLTGBQ19-BA533-IgG1、PLTGBQ24-BA603-IgG1、PLTGBQ21-BA623-IgG1、PLTGBQ21-BA649-IgG1、PLTGBQ21-BA669-IgG1、PLTGBQ24-BA705-IgG1、PLTGBH03-BT613-IgG1)がPDL1へのPD1の結合を有効に遮断し得ることを示す。
【0055】
1.6 TGFβ1タンパク質への二機能性融合タンパク質の結合のELISA検出
TGFβ1をpH9.6のCBSにより異なる濃度(0.2μg/mL、0.05μg/mL、0.0125μg/mL)に希釈し、次いで酵素標識プレートにより100μL/ウェルでそれぞれコーティングし、4℃において一晩インキュベートし;プレートを洗浄した後、3%の脱脂粉乳を37℃において1時間のシーリングに使用し;プレートを洗浄した後、100μLのPBST(PBS+0.05%のTween20)希釈された候補二機能性融合タンパク質(1μg/mL)をそれぞれのウェルに添加し、37℃において1時間インキュベートし;次いでヤギ抗ヒトIgG/HRPを添加し、37℃において1時間インキュベートし;プレートを洗浄した後、TMBを発色のために添加し、10分後に50μLの2MのHSOをそれぞれのウェルに添加して発色を停止させ、OD450をマイクロプレートリーダー上で読み取った。結果を表3及び図2に示す。
【0056】
候補二機能性融合タンパク質PLTGBQ19-BA533-IgG1及びPLTGBQ21-BA669-IgG1は、対照群PLTGB-M7824-IgG1よりも種々の濃度において高いOD値を有し、候補二機能性融合タンパク質がTGFβ1に対するより良好な結合能を有することを示す。
【0057】
さらに、候補二機能性融合タンパク質PLTGBQ19-BA533-IgG1及びPLTGBQ21-BA669-IgG1は、対照群PLTGB-M7824-IgG1よりも良好にTGF経路を遮断し得、臨床においてより良好な免疫調節及び抗腫瘍特性を有することが予測される。
【0058】
【0059】
実施例2 二機能性融合タンパク質の特徴付け
2.1 二機能性融合タンパク質の産生
ExpiCHO(Thermo,カタログ番号:A29129)発現系を使用して形質移入し、二機能性融合タンパク質を発現させ、プロテインA(GE,Mabselect SuRe)カラムを使用して上清を精製し:細胞培養液を4500gにおいて遠心分離し、0.45μmフィルターにより濾過し、ローディング及び平衡化後に標的二機能性融合タンパク質を0.1MのpH3.2のグリシン緩衝液により溶出させ、pH8.0の1Mのトリスにより中和した。サイズ排除クロマトグラフィー(Shanghai Bestchrom,カタログ番号:AG319109)を使用して精製し:カラムを1.5CVの緩衝液により平衡化し、サンプルをロードし、サンプル容量は3%のCV以下であり、緩衝液によりリンスし続け、ピークが出現した後に標的二機能性融合タンパク質を回収する。
【0060】
2.2 二機能性融合タンパク質活性の混合リンパ球反応/MLR検出
RPMI1640(Gibco,カタログ番号:11875-093)、FBS(Gibco,カタログ番号:10091-148)、HEPES(Solarbio,カタログ番号:H1090)を90:10:1に従って混合して完全培地を調製し、DC細胞(ALLCELLS,カタログ番号:PB-DC001F-0.3M)及びCD4+T細胞(ALLCELLS,カタログ番号:PB009-2F-C-3M)を完全培地によりそれぞれ再懸濁させ、次いで1:10の細胞比に従って96ウェル丸底プレートに添加し、最終容量は150μL/ウェルである。二機能性融合タンパク質を完全培地により2つの濃度:4μg/mL及び0.4μg/mLに希釈し、細胞ウェルに50μL/ウェルでそれぞれ添加し、最終容量は200μLである。5日間培養した後、培養物上清をIFN-γキット(cisbio,カタログ番号:62HIFNGPEG)により検出した。検出結果を表4及び図3に示す。
【0061】
候補二機能性融合タンパク質PLTGBQ19-BA533-IgG1及びPLTGBQ21-BA669-IgG1は、対照群PLTGB-M7824-IgG1よりも同じ濃度において高いIFN-γ分泌値を有する。
【0062】
さらに、候補二機能性融合タンパク質PLTGBQ19-BA533-IgG1及びPLTGBQ21-BA669-IgG1は、対照群PLTGB-M7824-IgG1よりも良好な免疫調節及び抗腫瘍特性を有し得ることが予測される。
【0063】
【0064】
2.3 二機能性融合タンパク質及びPDL1タンパク質の親和性のSPR検出
抗体結合カイネティクスは、検出のためにBIAcore8K装置を採用する。抗ヒトIgG抗体を、抗ヒトIgG FcアミノカップリングキットによりCM5バイオセンサーチップにカップリングしておよそ1000RU(応答単位)を得た。PDL1をHBS-EP+1×緩衝液により50nMに希釈し、次いで合計5つの濃度(50nM、25nM、12.5nM、6.25nM、3.125nM)に2倍希釈し、ブランク対照を設定した。測定ステップ及び条件は以下のとおりであった:二機能性融合タンパク質サンプルインジェクション2μg/mL、サンプルインジェクション時間70秒、流量5μl/分、安定時間5秒;PDL1タンパク質結合及び解離:結合60秒、流量30μl/分、解離450秒;再生:再生を3MのMgCl緩衝液により30秒間実施し、3回に分けて開始した。会合定数(ka)及び解離定数(kd)を、1対1ラングミュアモデル(BIAcore Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して計算し、平衡解離定数KDをkd/kaから計算する。それぞれの二機能性融合タンパク質の親和性データを表5に示す。
【0065】
結果は、本発明の候補二機能性融合タンパク質PLTGBQ19-BA533-IgG1及びPLTGBQ21-BA669-IgG1が、対照群PLTGB-M7824-IgG1と実質的に等価のPDL1親和性を有することを示す。ここで、PLTGBQ19-BA533-IgG1は対照群よりも良好なPDL1親和性を有する。
【0066】
【0067】
2.4 MV-1-Lu細胞によるTGFβ1機能に対する二機能性融合タンパク質の遮断効果の検出
EMEM(ATCC,カタログ番号:30-2003)、FBS(Gibco,カタログ番号:10099-141)及びHEPES(Solarbio,カタログ番号:H1090)を90:10:1に従って混合して完全培地を調製し、MV-1-Lu細胞を完全培地により再懸濁させ、白色96ウェルプレート(Corning,カタログ番号:3917)に50μL/ウェル、2000個の細胞/ウェルで添加した。二機能性融合タンパク質を完全培地により333.3ng/mLに希釈し、次いで連続して合計6つの濃度に3回希釈し、細胞ウェル中に25μL/ウェルで添加した。TGFβ1を完全培地により2ng/mlに希釈し、細胞ウェル中に25μL/ウェルで添加した。二機能性融合タンパク質の最終濃度:83.3ng/mL、27.8ng/mL、9.26ng/mL、3.09ng/mL、1.03ng/mL及び0.34ng/mL。4日間培養した後、96ウェルプレートの蛍光値(蛍光値は細胞数を表し得る)をCellTiter-Gloキット(Promega,カタログ番号:G7571)により検出し、検出結果を図4に示す。
【0068】
候補二機能性融合タンパク質PLTGBQ19-BA533-IgG1及びPLTGBQ21-BA669-IgG1は、TGFβ1機能の遮断において対照群PLTGB-M7824-IgG1よりも良好な活性を有することを確認することができる。
【0069】
さらに、候補二機能性融合タンパク質PLTGBQ19-BA533-IgG1及びPLTGBQ21-BA669-IgG1は、対照群PLTGB-M7824-IgG1よりも良好にTGF経路を遮断し得、より良好な免疫調節及び抗腫瘍特性を有することが予測される。
【0070】
実施例3 マウスMC38-hPDL1結腸癌モデルにおける抗PD-L1モノクローナル抗体の効力試験
二機能性融合タンパク質に対応するIgG1モノクローナル抗体を構築し、PLTGBQ19-BA533-IgG1に対応するモノクローナル抗体はBA533-IgG1(重鎖可変領域の配列は配列番号2であり、軽鎖可変領域の配列は配列番号1であり、軽鎖定常領域の配列は配列番号16であり、重鎖定常領域の配列は配列番号17である)であり;PLTGBQ21-BA669-IgG1に対応するモノクローナル抗体はBA669-IgG1(重鎖可変領域の配列は配列番号4であり、軽鎖可変領域の配列は配列番号3であり、軽鎖定常領域の配列は配列番号16であり、重鎖定常領域の配列は配列番号17である)であり;PLTGB-M7824-IgGに対応するモノクローナル抗体はアベルマブ(重鎖可変領域の配列は配列番号19であり、軽鎖可変領域の配列は配列番号20であり、軽鎖定常領域の配列は配列番号21であり、重鎖定常領域の配列は配列番号17である)である。
【0071】
マウス結腸癌MC38-hPD-L1細胞を、Beijing Biocytogen Co.,Ltd.から購入した。培養条件は、10%のFBS(Gibco,カタログ番号:10099-141C)及び1%のP/S(Gibco,カタログ番号:15070-063)をDMEM(Gibco,カタログ番号:11965-092)培地中で添加し、5%のCOで37℃においてインキュベーター中で培養することである。継代培養を週2~3回実施する。B-hPD-L1ヒト化マウス、雌、6~8週齢をJiangsu Biocytogen Co.,Ltd.から購入した。
【0072】
良好な状態のMC38-hPD-L1細胞を回収し、PBS中で再懸濁させ、混合し、細胞濃度を5×10個/mlに調整し、0.1mlの細胞懸濁液をそれぞれのマウスの背側肢(dorsal limb)上で皮下接種した。平均腫瘍容積が87mmに達したとき、無作為化を開始した。それぞれ6匹のマウスの7つの群が存在し、投与を群分けの日に開始し、抗PD-L1モノクローナル抗体をPBSにより希釈し、それぞれの抗体は、2日ごとに1回腹腔内注射により投与される2つの用量:3mg/kg及び10mg/kgを有し、同じ容量のPBSを溶媒対照群において対照として与えた。マウスを秤量し、腫瘍容積を週2~3回測定し、腫瘍容積(mm)=0.5×長径×短径とした。対照群の腫瘍容積が2000mmに達したとき、マウスを安楽死させ、腫瘍を取り出し、秤量した。結果を図5A図5B図5C並びに表6及び7に示す。
【0073】
図5Aに示されるとおり、マウスの体重はいかなる有害反応もなく安定的に増加する。
【0074】
図5B及び図7Cに示されるとおり、BA533-IgG1、BA669-IgG1、及びアベルマブを10mg/kgの用量において投与した場合、それらはマウスMC38-hPD-L1の腫瘍の成長を有意に阻害し得、相対腫瘍抑制率TGI(%)≧80%、であり、それら3つの間で統計差は存在しない。BA533-IgG1、BA669-IgG1、及びアベルマブを3mg/kgの用量において投与した場合、BA533-IgG1及びBA669-IgG1の腫瘍抑制率はアベルマブよりも優れていた。
【0075】
上記結果は、低用量において、候補抗体は対照抗体よりも良好な腫瘍抑制効果を有し、高用量において、それらはまた同等の腫瘍抑制効果を有することを示す。
【0076】
【0077】
図1
図2
図3
図4
図5A-5B】
図5C
【配列表】
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