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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】TIGITに対する抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230616BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230616BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230616BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230616BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230616BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230616BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230616BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230616BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
A61K39/395 U
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021564195
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 KR2020006705
(87)【国際公開番号】W WO2020251187
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0069931
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517095191
【氏名又は名称】グリーン クロス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Green Cross Corporation
(73)【特許権者】
【識別番号】515047781
【氏名又は名称】モガム インスティチュート フォー バイオメディカル リサーチ
【氏名又は名称原語表記】MOGAM Institute for Biomedical Research
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】パク ヘヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ウンジョン
(72)【発明者】
【氏名】イ ウンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヨム ヘイン
(72)【発明者】
【氏名】ナム ヘミ
(72)【発明者】
【氏名】キム ムンギョン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジウォン
(72)【発明者】
【氏名】シン ジュンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】ホ ミンギュ
(72)【発明者】
【氏名】イム ソジョン
(72)【発明者】
【氏名】イム オクチェ
(72)【発明者】
【氏名】イム ヤンミ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ジョンファ
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/204405(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/102536(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/160704(WO,A1)
【文献】特表2018-533371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TIGIT(T cell Immunoreceptor with Ig and Tyrosine-Based Inhibitory Motif Domains)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
配列番号3の重鎖CDR1;配列番号4の重鎖CDR2;配列番号5の重鎖CDR3、配列番号14の軽鎖CDR1;配列番号15の軽鎖CDR2;配列番号16の軽鎖CDR3;
配列番号6の重鎖CDR1;配列番号7の重鎖CDR2;配列番号8の重鎖CDR3、配列番号17の軽鎖CDR1;配列番号18の軽鎖CDR2;配列番号19の軽鎖CDR3;
配列番号9の重鎖CDR1;配列番号10の重鎖CDR2;配列番号11の重鎖CDR3、配列番号20の軽鎖CDR1;配列番号21の軽鎖CDR2;配列番号22の軽鎖CDR3;
配列番号9の重鎖CDR1;配列番号10の重鎖CDR2;配列番号11の重鎖CDR3、配列番号23の軽鎖CDR1;配列番号21の軽鎖CDR2;配列番号24の軽鎖CDR3;又は
配列番号12の重鎖CDR1;配列番号10の重鎖CDR2;配列番号13の重鎖CDR3、配列番号25の軽鎖CDR1;配列番号26の軽鎖CDR2;配列番号27の軽鎖CDR3、
を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号28~32からなる群から選ばれる一つ以上の重鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
配列番号34~38からなる群から選ばれる一つ以上の軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸。
【請求項5】
請求項に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項6】
請求項に記載の発現ベクターで形質転換された細胞。
【請求項7】
次の段階を含むTIGITに結合する抗体又はその抗原結合断片の製造方法:
(a)請求項に記載の細胞を培養する段階;及び
(b)前記培養された細胞から抗体又はその抗原結合断片を回収する段階。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含む癌の予防又は治療用組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む、他の抗癌治療と併用するための癌の予防又は治療用組成物。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む、免疫チェックポイント抑制剤と併用するための癌の予防又は治療用組成物。
【請求項11】
前記免疫チェックポイント抑制剤は、PD-1をターゲットとする薬物又は抗体であることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TIGIT(T cell Immunoreceptor with Ig and Tyrosine-Based Inhibitory Motif Domains)に対する抗体又はその抗原結合断片、これをコードする核酸、該核酸を含むベクター、該ベクターで形質転換された細胞、前記抗体又はその抗原結合断片の製造方法、これを含む癌の予防又は治療用組成物及び併用投与用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌組織は、免疫細胞が接近できない場合と、免疫細胞が癌組織中に浸透しているが、癌組織によって免疫反応が抑制されている場合がある。人体の免疫システムは、T細胞の過多増殖による過剰免疫反応を抑制するための免疫チェックポイントシステムを有するが、このような免疫チェックポイントに関与する免疫チェックポイントタンパク質(immune checkpoint protein)をターゲットとする免疫チェックポイント遮断剤(immune checkpoint blockade)は、癌細胞を直接に標的(targeting)する方式ではなく、癌組織の周辺にあるが、癌細胞が発現させる免疫抑制因子(CD80、TIGIT)によって活性の低下したTIL(tumor-infiltrating lymphocytes)、特に、CTL(Cytotoxic T cell)の活性を回復させることにより、CTLが癌細胞を除去するように誘導する。このとき、癌細胞表面の抑制因子とT細胞抑制受容体(inhibitory receptor)との結合を防ぐことにより、抑制信号伝達(inhibitory signaling)を遮断し、他の刺激信号伝達(stimulatory signaling)を有効に作用させ、結果的にCTLの活性を高める効果を奏する。
【0003】
既存の化学治療剤では、薬物の深刻な副作用から、薬物の投与を中断しなければならない場合が多いのに対し、免疫チェックポイント遮断剤は、全生存期間(overall survival)と無増悪生存期間(progression-free survival)などにおいて臨床的優位を示し、副作用も軽微な程度に止まり得る。また、既存の化学治療剤は、同一癌の再発時に、治療剤に対する抵抗性を獲得し、投与不可になってしまうのに対し、免疫チェックポイント遮断剤の投与による抗癌免疫反応は、同一癌腫の再発時にメモリー応答(memory response)を起こし、速かに癌細胞を退治することができる。
【0004】
免疫チェックポイント遮断剤と関連して、免疫チェックポイント受容体であるCTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte associated antigen-4)特異的な単クローン抗体であるイピリムマブ(ipilimumab)が、転移性悪性黒色腫においてその効果を示している。続いて、PD-1(programmed cell death-1)とPD-1に対するリガンドであるPD-L1(programmed death ligand-1)に特異的な単クローン抗体が開発されており、その代表として、ニボルマブ(nivolumab)、ペンブロリズマブ(pembrolizumab)、アベルマブ(avelumab)、アテゾリズマブ(atezolizumab)とデュルバルマブ(durvalumab)などがある。PD-1又はPD-L1抑制剤は、悪性黒色腫の他に種々の腫瘍でもその効果を示している。
【0005】
一方、TIGIT(=Vstm-3,WUCAM)は、PD-1と同様に、NK細胞とT細胞が活性化しながら発現が誘導される共抑制分子(co-inhibitory molecule)であり、癌細胞はTIGITに対するリガンドを過発現させることによってT細胞を抑制し、T細胞からの攻撃を回避できる。抗TIGIT抗体は、癌細胞のTIGITを用いた免疫活性抑制を遮断することによって癌患者の免疫機能を回復させ、癌の進行を防ぐと予想される。
【0006】
TIGITは、PD-1と類似に、CD8+CTLとCD4+ Tヘルパー細胞(helper cell)で誘導発現し、癌組織において免疫反応を抑制することを主導するFoxP3+ TregではPD-1と共に持続的に発現し、Treg活性化時に、より高いレベルで誘導発現する。
【0007】
現在まで数種類の抗TIGIT抗体が報告されたが(米国特許出願公開第2017-0088613号など)、具体的な機序に対する研究はまだ僅かな実情であり、しかも、実際に治療剤として使用可能なレベルの効力(efficacy)を有する抗体が開発されていない実情であり、依然として高レベルの効力を有するTIGIT特異的抗体に対する要求が切に望まれている状況である。
【0008】
このような技術的背景下で、本出願の発明者らは、TIGITに特異的に結合する抗体を開発するために努力した。その結果、本発明者らは、TIGITに高い親和力で結合する抗TIGIT抗体を開発し、このような抗TIGIT抗体が効率的な免疫抗癌治療剤として働き得ることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、TIGITに対する新規抗体又はその抗原結合断片を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、前記核酸を含むベクター、該ベクターで形質転換された細胞及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、前記抗体又はその抗原結合断片を含む癌の予防又は治療用組成物を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、前記抗体又はその抗原結合断片を他の薬物と共に投与して癌を予防又は治療するための併用投与用組成物を提供することにある。
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明は、TIGIT(T cell Immunoreceptor with Ig and Tyrosine-Based Inhibitory Motif Domains)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、配列番号3、6、9又は12の重鎖CDR1;配列番号4、7又は10の重鎖CDR2;配列番号5、8、11又は13の重鎖CDR3、配列番号14、17、20、23又は25の軽鎖CDR1;配列番号15、18、21又は26の軽鎖CDR2;配列番号16、19、22、24又は27の軽鎖CDR3を含む抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0015】
本発明は、また、前記抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を提供する。
【0016】
本発明は、また、前記核酸を含むベクターを提供する。
【0017】
本発明は、また、前記ベクターで形質転換された細胞を提供する。
【0018】
本発明は、また、次の段階を含む前記抗体又はその抗原結合断片の製造方法を提供する:(a)前記細胞を培養する段階;及び、(b)前記培養された細胞から抗体又はその抗原結合断片を回収する段階。
【0019】
本発明は、また、前記抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含む癌の予防又は治療用組成物を提供する。
【0020】
本発明は、また、前記抗体又はその抗原結合断片を他の抗癌治療と併用するための癌の予防又は治療用組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】scFv形態の抗TIGIT抗体の結合力を確認した結果である。
【0022】
図2】IgG形態の抗TIGIT抗体の結合力を確認した結果である。
【0023】
図3】11種の抗TIGIT抗体に対して行った、TIGITとそのリガンドであるPVR(poliovirus receptor)に対するブロッキングアッセイ(blocking assay)結果である。
【0024】
図4】オクテット(Octet)を用いて抗TIGIT抗体の親和度を測定した結果である。
【0025】
図5】BIACOREで抗TIGIT抗体の親和度を測定した結果である。
【0026】
図6】細胞表面に発現したTIGITとTIGIT候補抗体との結合力を測定した結果である。
【0027】
図7】TIGITのリガンドであるPVRに対するTIGIT候補抗体の競争力を確認した結果である。
【0028】
図8】TIGIT候補抗体のTIGITとPVRとの結合抑制効果によるT細胞活性化を分析した結果である。
【0029】
図9】TIGIT候補抗体のマウス、サル及びヒトのTIGITへの結合力があるどうかの交差反応を確認した結果である。
【0030】
図10】調節T細胞(Regulatory T cell)とCFSE標識されたレスポンダー(responder)細胞を共同培養して、TIGIT候補抗体によって調節T細胞の機能が抑制されることを確認した結果である。
【0031】
図11】TIGIT候補抗体の抗癌効果を確認した結果である。
【0032】
図12A-12B】樹状細胞と同種異系T細胞を用いた混合リンパ球反応において明示された抗体を処理した時、T細胞の増殖及びIFN-γ分泌量の変化を分析した結果である。
【0033】
図13】健康な供与者の調節性(regulatory)T細胞に明示の抗体を処理した時、各活性指標を発現する細胞の比率を分析した結果である。
【0034】
図14】多発性骨髄腫患者のCD8陽性T細胞と調節性T細胞において枯渇指標(exhaustion marker)を発現させる細胞の比率を分析した結果である。
【0035】
図15】多発性骨髄腫患者のPBMCに明示の抗体を処理した時、IFN-γ分泌量の変化を分析した結果である。
【0036】
図16】HT29細胞株においてPVRの発現を分析した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
特に断らない限り、本明細書で使われる技術的及び科学的用語はいずれも、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書における命名法は、本技術分野でよく知られており、通常用いられるものである。
【0038】
本発明は、一観点において、TIGIT(T cell Immunoreceptor with Ig and Tyrosine-Based Inhibitory Motif Domains)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、配列番号3、6、9又は12の重鎖CDR1;配列番号4、7又は10の重鎖CDR2;配列番号5、8、11又は13の重鎖CDR3、配列番号14、17、20、23又は25の軽鎖CDR1;配列番号15、18、21又は26の軽鎖CDR2;配列番号16、19、22、24又は27の軽鎖CDR3を含む抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0039】
前記TIGITは、配列番号1の配列を含む。
【0040】
本明細書で使われる用語“抗体(antibody)”は、TIGITに特異的に結合する抗TIGIT抗体を意味する。本発明の範囲には、TIGITに特異的に結合する完全な抗体形態の他に、前記抗体分子の抗原結合断片も含まれる。
【0041】
本発明の抗体は、単一クローン抗体、多特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖Fv(scFV)、一本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合Fv(sdFV)及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体、これらの抗体のエピトープ結合断片などを含むが、これに限定されるものではない。
【0042】
前記単一クローン抗体は、抗原上の単一決定因子に対する抗体を意味し、実質的に同質的な抗体集団から得た抗体、すなわち、集団を占めている個々の抗体が、微量で存在し得る可能な天然発生的突然変異の以外には同一であるものを指す。
【0043】
“エピトープ”は、抗体が特異的に結合可能なタンパク質決定部位(determinant)を意味する。エピトープは、一般に化学的に活性である表面分子群、例えば、アミノ酸又は糖側鎖で構成され、一般に、特定の3次元の構造的特徴の他に、特定の電荷特性も有する。立体的エピトープ及び非立体的エピトープは、変性溶媒の存在下で前者に対する結合は消失されるが、後者に対しては消失されないという点で区別される。
【0044】
完全な抗体は、2個の全長の軽鎖及び2個の全長の重鎖を有する構造であり、各軽鎖は重鎖とジスルフィド結合で連結されている。重鎖定常領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及びエプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとしてガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)及びアルファ2(α2)を有する。軽鎖の定常領域は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)タイプを有する。
【0045】
抗体の抗原結合断片又は抗体断片は、抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvなどを含む。抗体断片のうち、Fabは、軽鎖及び重鎖の可変領域、軽鎖の定常領域、及び重鎖の一番目の定常領域(CH1)を有する構造であり、1個の抗原結合部位を有する。Fab’は、重鎖CH1ドメインのC末端に一つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点でFabと異なる。F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合をなしながら生成される。Fvは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域だけを有する最小の抗体片である。二重鎖Fv(two-chain Fv)は、非共有結合で重鎖可変領域と軽鎖可変領域とが連結されており、一本鎖Fv(single-chain Fv,scFv)は一般に、ペプチドリンカーを介して重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とが共有結合で連結されたり又はC末端で直接連結されており、二重鎖Fvと同様にダイマーのような構造をなすことができる。このような抗体断片は、タンパク質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、全抗体をパパインで制限切断すればFabが得られ、ペプシンで切断すればF(ab’)2断片が得られる。)、又は遺伝子組換え技術で作製してもよい。
【0046】
“Fv”断片は、完全な抗体認識及び結合部位を含有する抗体断片である。このような領域は、1個の重鎖可変ドメインと1個の軽鎖可変ドメインが、例えば、scFvで強固に事実上共有して連合した二量体からなる。
【0047】
“Fab”断片は、軽鎖の可変及び定常ドメインと、重鎖の可変及び第1定常ドメイン(CH1)を含有する。F(ab’)2抗体断片は、一般に、それらの間にヒンジシステインによってそれらのカルボキシ末端の近くに共有して連結される一対のFab断片を含む。
【0048】
“一本鎖Fv”又は“scFv”抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含むが、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖内に存在する。Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合のために目的とする構造を形成できるようにするVHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含むことができる。
【0049】
一実施例において、本発明に係る抗体は、Fv形態(例えば、scFv)であるか、完全な抗体形態である。また、重鎖定常領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)又はエプシロン(ε)のいずれか一つのアイソタイプから選ばれてよい。例えば、定常領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ3(IgG3)又はガンマ4(IgG4)である。軽鎖定常領域は、カッパ又はラムダ型でよい。
【0050】
本明細書で使われる用語“重鎖”とは、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVHと3個の定常領域ドメインCH1、CH2及びCH3とを含む全長重鎖及びその断片を全て意味する。また、本明細書で使われる用語“軽鎖”とは、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVLと定常領域ドメインCLとを含む全長軽鎖及びその断片を全て意味する。
【0051】
重鎖及び/又は軽鎖の一部が特別な種から由来したり、又は特別な抗体部類又は亜部類に属する抗体内の相応する配列と同一であるか或いはそれと相同性であるのに対し、残りの鎖はさらに他の種から由来したり、又はさらに他の抗体部類又は亜部類に属する抗体内の相応する配列と同一であるか或いはそれと相同性である“キメラ”抗体(免疫グロブリン)の他、目的とする生物学的活性を示す前記抗体の断片も含まれる。
【0052】
本願に使われている“抗体可変ドメイン”は、相補性決定領域(CDR;すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)、及び骨格領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体分子の軽鎖及び重鎖部分のことを指す。VHは、重鎖の可変ドメインのことを指す。VLは、軽鎖の可変ドメインのことを指す。
【0053】
“相補性決定領域”(CDR;すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)は、抗原結合のために必要な存在である、抗体可変ドメインのアミノ酸残基のことを指す。各可変ドメインは典型的に、CDR1、CDR2及びCDR3として確認された3個のCDR領域を有する。本発明の一実施例において、配列番号3、6、9又は12の重鎖CDR1;配列番号4、7又は10の重鎖CDR2;配列番号5、8、11又は13の重鎖CDR3、配列番号14、17、20、23又は25の軽鎖CDR1;配列番号15、18、21又は26の軽鎖CDR2;配列番号16、19、22、24又は27の軽鎖CDR3を含む。
【0054】
本発明において、前記TIGITに結合する抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3の重鎖CDR1;配列番号4の重鎖CDR2;配列番号5の重鎖CDR3、配列番号14の軽鎖CDR1;配列番号15の軽鎖CDR2;配列番号16の軽鎖CDR3;
配列番号6の重鎖CDR1;配列番号7の重鎖CDR2;配列番号8の重鎖CDR3、配列番号17の軽鎖CDR1;配列番号18の軽鎖CDR2;配列番号19の軽鎖CDR3;
配列番号9の重鎖CDR1;配列番号10の重鎖CDR2;配列番号11の重鎖CDR3、配列番号20の軽鎖CDR1;配列番号21の軽鎖CDR2;配列番号22の軽鎖CDR3;
配列番号9の重鎖CDR1;配列番号10の重鎖CDR2;配列番号11の重鎖CDR3、配列番号23の軽鎖CDR1;配列番号21の軽鎖CDR2;配列番号24の軽鎖CDR3;又は
配列番号12の重鎖CDR1;配列番号10の重鎖CDR2;配列番号13の重鎖CDR3、配列番号25の軽鎖CDR1;配列番号26の軽鎖CDR2;配列番号27の軽鎖CDR3を含むことができる。
【0055】
“骨格領域”(FR)は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。各可変ドメインは典型的に、FR1、FR2、FR3及びFR4として確認された4個のFRを有する。
【0056】
TIGI抗体は1価又は2価であり、一本鎖又は二本鎖を含む。機能的に、TIGI抗体の結合親和性は、10-5M~10-12Mの範囲内にある。例えば、TIGI抗体の結合親和性は、10-6M~10-12M、10-7M~10-12M、10-8M~10-12M、10-9M~10-12M、10-5M~10-11M、10-6M~10-11M、10-7M~10-11M、10-8M~10-11M、10-9M~10-11M、10-10M~10-11M、10-5M~10-10M、10-6M~10-10M、10-7M~10-10M、10-8M~10-10M、10-9M~10-10M、10-5M~10-9M、10-6M~10-9M、10-7M~10-9M、10-8M~10-9M、10-5M~10-8M、10-6M~10-8M、10-7M~10-8M、10-5M~10-7M、10-6M~10-7M又は10-5M~10-6Mである。
【0057】
前記TIGITに結合する抗体又はその抗原結合断片は、配列番号28~32からなる群から選ばれる一つ以上の重鎖可変領域を含むことができる。また、前記TIGITに結合する抗体又はその抗原結合断片は、配列番号34~38からなる群から選ばれる一つ以上の軽鎖可変領域を含むことができる。
【0058】
本発明に係る具体的実施例において、配列番号28の重鎖可変領域及び配列番号34の軽鎖可変領域;配列番号29の重鎖可変領域及び配列番号35の軽鎖可変領域;配列番号30の重鎖可変領域及び配列番号36の軽鎖可変領域;配列番号31の重鎖可変領域及び配列番号37の軽鎖可変領域;又は、配列番号32の重鎖可変領域及び配列番号38の軽鎖可変領域を含むことができる。
【0059】
“ファージディスプレイ”は、変異体ポリペプチドを、ファージ、例えば繊維状ファージ粒子の表面上に、外皮タンパク質の少なくとも一部との融合タンパク質としてディスプレイする技術である。ファージディスプレイの有用性は、無作為化タンパク質変異体の大きいライブラリーを対象にして、標的抗原と高親和度で結合する配列を迅速ながらも効率的に分類できるということにある。ペプチド及びタンパク質ライブラリーをファージ上にディスプレイすることは、特異的結合特性を有するポリペプチドを見出すために、数百万個のポリペプチドをスクリーニングすることに用いられてきた。
【0060】
ファージディスプレイ技術は、特定リガンド(例えば、抗原)と結合する新規タンパク質を生成及び選別するための強力な道具を提供している。ファージディスプレイ技術を用いて、タンパク質変異体の大きいライブラリーを生成させ、標的抗原と高親和性で結合する配列を迅速に分類することができる。変異体ポリペプチドを暗号化する核酸をウイルス性外皮タンパク質、例えば、遺伝子IIIタンパク質又は遺伝子VIIIタンパク質を暗号化する核酸配列と融合させる。タンパク質又はポリペプチドを暗号化する核酸配列を、遺伝子IIIタンパク質の一部を暗号化する核酸配列と融合させた1価ファージディスプレイシステムが開発されている。1価ファージディスプレイシステムでは、遺伝子融合物が低レベルで発現し、野生型遺伝子IIIタンパク質も発現して粒子感染性が維持される。
【0061】
繊維状ファージの表面上におけるペプチドの発現とE.coliの周辺細胞質における機能性抗体断片の発現を立証することが、抗体ファージディスプレイライブラリーを開発する上で重要である。抗体又は抗原結合性ポリペプチドのライブラリーは、多数の方式、例えば、無作為DNA配列を挿入することによって単一遺伝子を変更させる方法、又は関連遺伝子系列をクローニングする方法で製造した。ライブラリーを対象にして、目的とする特徴を伴う抗体又は抗原結合性タンパク質の発現に関してスクリーニングすることができる。
【0062】
ファージディスプレイ技術は、目的とする特徴を有する抗体を製造するための通常のハイブリドーマ及び組換え方法に比べて、いくつかの利点を有する。このような技術は、動物を使用しなくとも短時間で様々な配列を持つ大きい抗体ライブラリーを生成可能にする。ハイブリドーマの製造又はヒト化抗体の製造は、数ヶ月の製造期間がかかり得る。また、免疫が一切要求されないため、ファージ抗体ライブラリーは、毒性であるか又は抗原性の低い抗原に対しても抗体を生成させることができる。また、ファージ抗体ライブラリーを用いて新規な治療的抗体を生成及び確認することができる。
【0063】
ファージディスプレイライブラリーを用いて免疫又は非免疫させたヒト、生殖細胞系配列、又は未感作(naive)B細胞Igレパートリー(repertory)からヒト抗体を生成させる技術を用いることができる。各種リンパ系組織を用いて、未感作又は非免疫抗原結合性ライブラリーを製造することができる。
【0064】
ファージディスプレイライブラリーから高親和性抗体を確認及び分離できる技術は、治療用新規抗体分離に重要である。ライブラリーから高親和性抗体を分離することは、ライブラリーのサイズ、細菌性細胞における生産効率及びライブラリーの多様性に左右され得る。ライブラリーのサイズは、抗体又は抗原結合性タンパク質の不適切なフォールディング及び停止コドンの存在による非効率的生産によって減少する。細菌性細胞での発現は、抗体又は抗原結合性ドメインが適切にフォールディングされない場合には抑制され得る。発現は、可変/定常界面の表面又は選別されたCDR残基における残基を交互に突然変異させることによって改善させることができる。骨格領域の配列は、細菌性細胞において抗体ファージライブラリーを生成させる場合に適切なフォールディングを提供するための一要素である。
【0065】
高親和性抗体分離において抗体又は抗原結合性タンパク質の様々なライブラリーを生成させることが重要である。CDR3領域は、それらがしばしば抗原結合に参加することが明らかにされた。重鎖上のCDR3領域は、サイズ、配列及び構造的立体形態面において非常に様々であり、これを用いて様々なライブラリーを製造することができる。
【0066】
また、各位置において20個アミノ酸を全て使用して可変重鎖及び軽鎖のCDR領域を無作為化することによって多様性を発生させることができる。20個の全てのアミノ酸を使用すれば、多様性の大きい変異体抗体配列が生成され、新規の抗体を確認する機会が増加し得る。
【0067】
本発明の抗体又は抗体断片は、TIGITを特異的に認識できる範囲内で、本明細書に記載された本発明の抗TIGIT抗体の配列だけでなく、その生物学的均等物も含むことができる。例えば、抗体の結合親和度及び/又はその他生物学的特性をより改善させるために、抗体のアミノ酸配列に更なる変化を与えることができる。このような変形は、例えば、抗体のアミノ酸配列残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む。このようなアミノ酸変異は、アミノ酸側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づいてなる。アミノ酸側鎖置換体のサイズ、形態及び種類に対する分析により、アルギニン、リジン(lysine)及びヒスチジンはいずれも陽電荷を帯びた残基であり;アラニン、グリシン及びセリンは、類似のサイズを有し;フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは類似の形態を有するということがわかる。したがって、このような考慮事項に基づき、アルギニン、リジン及びヒスチジン;アラニン、グリシン及びセリン;そしてフェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは生物学的に機能均等物といえる。
【0068】
上述した生物学的均等活性を有する変異を考慮すると、本発明の抗体又はこれをコードする核酸分子は、配列番号に記載された配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むものと解釈される。前記の実質的な同一性は、上記の本発明の配列と任意の他の配列を最大限に対応するようにアラインし、当業界における通常のアルゴリズムを用いてアラインされた配列を分析した場合に、少なくとも90%の相同性、最も好ましくは少なくとも95%の相同性、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の相同性を示す配列を意味する。配列比較のためのアラインメント方法は、当業界に公知されている。NCBI BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)は、NBCIなどから接近可能であり、インターネット上でblastp、blasm、blastx、tblastn及びtblastxのような配列分析プログラムと連動して用いることができる。BLSATは、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で接続可能である。このプログラムを用いた配列相同性比較方法は、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.htmlで確認できる。
【0069】
これに基づき、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、明細書に記載の明示された配列又は全体と比較して、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の相同性を有することができる。このような相同性は、当業界に公知の方法による配列比較及び/又は整列によって決定されてよい。例えば、配列比較アルゴリズム(すなわち、BLAST又はBLAST 2.0)、手動整列、肉眼検査を用いて本発明の核酸又はタンパク質のパーセント配列相同性を決定することができる。
【0070】
本発明は、他の観点において、前記抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸に関する。
【0071】
本発明の抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を分離して抗体又はその抗原結合断片を組み換えて生産することができる。核酸を分離し、これを複製可能なベクター内に挿入して、さらにクローニングしたり(DNAの増幅)又はさらに発現させる。これに基づき、本発明は、さらに他の観点において、前記核酸を含むベクターに関する。
【0072】
“核酸”は、DNA(gDNA及びcDNA)及びRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸において基本構成単位であるヌクレオチドは、自然のヌクレオチドの他に、糖又は塩基部位が変形された類似体(analogue)も含む。本発明の重鎖及び軽鎖可変領域をコードする核酸の配列は変形されてよい。前記変形は、ヌクレオチドの追加、欠失、又は非保存的置換又は保存的置換を含む。
【0073】
前記抗体を暗号化するDNAは、通常の過程を用いて(例えば、抗体の重鎖と軽鎖を暗号化するDNAと特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に分離又は合成する。多くのベクターが入手可能である。ベクター成分には一般に、次のいずれか一つ以上が含まれるが、それに制限されない:信号配列、複製起点、一つ以上のマーカー遺伝子、増強因子要素、プロモーター、及び転写終結配列。
【0074】
本明細書で使われる用語、“ベクター”は、宿主細胞で目的遺伝子を発現させるための手段であり、プラスミドベクター;コスミドベクター;バクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びアデノ関連ウイルスベクターのようなウイルスベクターなどを含む。前記ベクターにおいて抗体をコードする核酸はプロモーターと作動的に連結されている。
【0075】
“作動的に連結”とは、核酸発現調節配列(例えば、プロモーター、シグナル配列、又は転写調節因子結合位置のアレイ)と他の核酸配列間の機能的な結合を意味し、これによって、前記調節配列は前記他の核酸配列の転写及び/又は解読を調節する。
【0076】
原核細胞を宿主とする場合には、転写を進行させ得る強力なプロモーター(例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、lacUV5プロモーター、lppプロモーター、pLλプロモーター、pRλプロモーター、rac5プロモーター、ampプロモーター、recAプロモーター、SP6プロモーター、trpプロモーター及びT7プロモーターなど)、解読の開始のためのリボソーム結合座及び転写/解読終結配列を含むのが一般である。また、例えば、真核細胞を宿主とする場合には、哺乳動物細胞のゲノムから由来したプロモーター(例えば、メタロチオニンプロモーター、β-アクチンプロモーター、ヒトヘモグロビンプロモーター及びヒト筋肉クレアチンプロモーター)又は哺乳動物ウイルスから由来したプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーターエプスタインバールウイルス(EBV)のプロモーター及びラウス肉腫ウイルス(RSV)のプロモーター)が利用でき、転写終結配列としてポリアデニル化配列を一般に有する。
【0077】
場合によって、ベクターはそれから発現する抗体の精製を容易にするために、他の配列と融合されてもよい。融合される配列は、例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(Pharmacia,USA)、マルトース結合タンパク質(NEB,USA)、FLAG(IBI,USA)及び6x His(hexahistidine;Qiagen,USA)などがある。
【0078】
前記ベクターは、選択標識として当業界において通常用いられる抗生剤耐性遺伝子を含み、例えば、アンピシリン、ゲンタマイシン、カベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシン及びテトラサイクリンに対する耐性遺伝子がある。
【0079】
本発明は、さらに他の観点において、前記言及されたベクターで形質転換された細胞に関する。本発明の抗体を生成させるために用いられた細胞は、原核生物、酵母又は高等真核生物細胞でよいが、これに制限されるものではない。
【0080】
エシェリキアコリ(Escherichia coli)、バチルスサブチリス及びバチルスチューリンゲンシスのようなバチルス属菌株、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)(例えば、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida))、プロテウスミラビルス(Proteus mirabilis)及びスタフィロコカス(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコカスカルノサス(Staphylocus carnosus))のような原核宿主細胞を用いることができる。
【0081】
ただし、動物細胞に対する関心が最も大きく、有用な宿主細胞株の例は、COS-7、BHK、CHO、CHOK1、DXB-11、DG-44、CHO/-DHFR、CV1、COS-7、HEK293、BHK、TM4、VERO、HELA、MDCK、BRL3A、W138、Hep G2、SK-Hep、MMT、TRI、MRC5、FS4、3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6、SP2/0、NS-0、U20S、又はHT1080でよいが、これに制限されるものではない。
【0082】
本発明は、さらに他の観点において、(a)前記細胞を培養する段階;及び、(b)前記培養された細胞から抗体又はその抗原結合断片を回収する段階を含む前記抗体又はその抗原結合断片の製造方法に関する。
【0083】
前記細胞は、各種の培地で培養できる。市販用の培地はいずれも培養培地として使用可能である。当業者に公知のその他全ての必須補充物が適度の濃度で含まれてよい。培養条件、例えば、温度、pHなどが発現のために選別された宿主細胞と共に既に用いられており、これは当業者にとって明白であろう。
【0084】
前記抗体又はその抗原結合断片の回収は、例えば、遠心分離又は限外濾過によって不純物を除去し、その結果を、例えば、親和クロマトグラフィーなどを用いて精製することができる。追加のその他精製技術、例えば、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどを用いることができる。
【0085】
本発明は、さらに他の観点において、前記抗体を有効成分として含む癌又は腫瘍の予防又は治療用組成物に関する。
【0086】
本発明は、例えば、(a)本発明に係るTIGITに対する抗体又はその抗原結合断片の薬剤学的有効量;及び、(b)薬剤学的に許容される担体を含む癌又は腫瘍の予防又は治療用薬剤学的組成物であってよい。本発明は、また、患者に必要な有効量で本発明に係るTIGITに対する抗体又はその抗原結合断片を投与する段階を含む癌又は腫瘍の予防又は治療方法に関する。
【0087】
“癌”又は“腫瘍”は、典型的に調節されない細胞成長/増殖を特徴とする哺乳動物の生理学的状態のことを指したり意味する。
【0088】
前記組成物は、上述した本発明の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片を有効成分として用いるので、この両者に共通する内容は記載を省略する。
【0089】
下記の実施例から立証されるように、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、TIGITに高い親和度で結合し、抗腫瘍T細胞活性を回避する癌を治療するのに有用に用いることができる。
【0090】
本発明の組成物で治療可能な癌又は癌腫は、特に制限されず、固形癌及び血液癌のいずれをも含む。前記血液癌としては、例えば、リンパ腫、白血病又は多発性骨髄腫が含まれてよい。
【0091】
本発明に係る具体的な実施例において、多発性骨髄腫患者の調節T細胞においてTIGITの発現が高いことを確認し、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片を処理する場合に、多発性骨髄腫患者のPBMCに抗CD3/抗CD28刺激を与えた時のIFN-γ分泌量が有意に増加することが確認できる。
【0092】
癌は、例えば、黒色腫などの皮膚癌、肝癌、肝細胞癌(hepatocellular carcinoma)、胃癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、膵癌、膀胱癌、大腸癌、結腸癌、子宮頸癌、脳癌、前立腺癌、骨癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、腎臓癌、食道癌、胆道癌、精巣癌、直膓癌、頭頸部癌、頸椎癌、尿管癌、骨肉腫、神経芽細胞腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、星状細胞腫、神経芽細胞腫及び神経膠腫からなる群から選ばれてよいが、これに限定されるものではない。
【0093】
本発明に係る具体的な実施例において、ヒト大腸癌細胞異種移植モデルに本発明に係る抗体又はその抗原結合断片を処理する場合、優れた腫瘍成長抑制効果を示すことができることを確認した。
【0094】
本発明は、また、抗体又はその抗原結合断片を他の抗癌治療と併用し、他の薬物、例えば抗癌剤と共に投与して癌を予防又は治療するための併用投与用組成物に関する。
【0095】
本発明は、例えば、(a)本発明に係るTIGITに対する抗体又はその抗原結合断片の薬剤学的有効量;及び、(b)薬剤学的に許容される担体を含む、癌又は腫瘍を予防又は治療するための併用投与用組成物であってよい。本発明は、また、患者に、必要な有効量で本発明に係るTIGITに対する抗体又はその抗原結合断片を投与する段階を含む、癌又は腫瘍の予防又は治療のための併用投与方法に関する。
【0096】
前記組成物は、上述した本発明の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片を有効成分として用いるので、この両者に共通する内容は記載を省略する。
【0097】
前記抗体の他に別の抗癌治療剤を併用することにより、TIGITを過発現させる腫瘍細胞を効果的に標的化し、抗腫瘍T細胞活性を増加させ、よって、腫瘍細胞を標的化する免疫反応を増大させることができる。
【0098】
その他抗新生物剤又は免疫原性製剤[(例えば、弱化した癌細胞、腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチド及び炭水化物分子を含む。)、抗原伝達細胞、例えば、腫瘍由来抗原又は核酸でパルスされた樹状細胞、免疫刺激サイトカイン(例えば、IL-2、IFNα2、GM-CSF)、及び免疫刺激サイトカインを暗号化する遺伝子で形質感染された細胞(例えば、GM-CSFを含むが、これに制限されない。)];標準癌治療療法(例えば、化学治療法、放射線治療法又は手術);又は、その他抗体(前記TIGIT抗体以外の抗体、VEGF、EGFR、Her2/neu、VEGF受容体、その他成長因子受容体、CD20、CD40、CTLA-4、OX-40、4-IBB、及びICOSを含むが、これに制限されない。)と共に使用されてよい。
【0099】
前記薬物、例えば抗癌剤は、免疫チェックポイント抑制剤であることを特徴とするが、これに制限されない。
【0100】
本発明は、他の観点において、前記抗体又はその抗原結合断片を免疫チェックポイント抑制剤と併用するための癌の予防又は治療用組成物に関する。
【0101】
本発明において、前記免疫チェックポイント抑制剤は、抗原提示細胞(APC,antigen presenting cell)と免疫細胞、例えばT細胞とが会う部位にT細胞抑制信号を遮断し、T細胞活性化を誘導できる製剤を意味する。前記免疫チェックポイント抑制剤は、例えば、PD-1、PD-L1、又はCTLA-4などをターゲットとする薬物であり得るが、これに制限されない。
【0102】
前記免疫チェックポイント抑制剤は、具体的に、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体であることを特徴とし得るが、これに限定されず、具体的には、イピリムマブ(Ipilimumab)、ニボルマブ(Nivolumab)、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、アベルマブ(Avelumab)又はデュルバルマブ(Durvalumab)などが用いられてよいが、これに限定されるものではない。
【0103】
本発明の具体的な実施例によれば、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片と、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブ(Pembrolizumab)とを併用する場合、抗TIGIT抗体単独使用に比べてT細胞反応性が増加し、増加したT細胞増殖を観察したし、IFN-γ分泌量も増加し得ることを確認した。
【0104】
“併用”とは、抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片と、別の薬物、例えば抗癌剤を、それぞれ同時に、順次に、又は逆順に投与できることを意味し、通常の技術者による範囲内の適切な有効量の組合で投与されてよい。本発明の組成物は、個別治療剤として投与されたり、或いは他の治療剤と併用して投与されてよく、従来の治療剤とは順次に又は同時に投与されてよい。
【0105】
前記組成物に適用される疾患である癌は、典型的に免疫治療療法に反応する癌、及びいままで免疫療法に関連していない癌を含む。治療用に好適な癌の非制限的な例は、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫)、腎臓癌(例えば、透明細胞癌腫)、前立腺癌(例えば、ホルモン不応前立腺癌腫)、膵臓腺癌腫、乳癌、結腸癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、食道癌、頭頸部扁平細胞癌腫、肝癌、卵巣癌、子宮頸癌、甲状腺癌、膠芽細胞腫、神経膠腫、白血病、リンパ腫、又は多発性骨髄腫のような血液癌、及びその他新生物癌腫を含む。さらに、本発明は、本発明の抗体を用いて成長を抑制できる不応又は再発癌を含む。
【0106】
抗体又は抗体断片は、単独、又はワクチンと共に使用され、病原体、毒素、及び自己抗原に対する免疫反応を刺激させることができる。抗体又はその抗原-結合断片は、例えば、ヒト免疫欠乏ウイルス、肝炎ウイルス部類A、B及びC、エプスタインバールウイルス(Eppstein Barr virus)、ヒトサイトメガロウイルス(cytomegalovirus)、ヒトパピローマ(papilloma)ウイルス、ヘルペスウイルスを含むが、これに制限されず、ヒトを伝染させるウイルスに対する免疫反応を刺激させるために用いられてよい。抗体又はその抗原-結合断片は、細菌又は真菌寄生体、及びその他病原体の感染に対する免疫反応を刺激させるために用いられてよい。
【0107】
本発明の組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に一般に用いられるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロ-ス、ポリビニルピロリドン、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。本発明の組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むこともできる。
【0108】
本発明の薬剤学的組成物は、経口又は非経口で投与でき、非経口投与の場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与及び直腸内投与などで投与できる。
【0109】
経口投与のとき、タンパク質又はペプチドは消化してしまうため、経口用組成物は、活性薬剤をコートしたり、或いは胃での分解から保護されるように剤形化する必要がある。また、薬剤学的組成物は、活性物質が標的細胞に移動できる任意の装置によって投与されてよい。
【0110】
本発明に係る組成物の適切な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって様々であり、熟練した通常の医師は、所望の治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方できる。例えば、本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は0.0001~100mg/kgである。本明細書において用語“薬剤学的有効量”は、癌を予防又は治療するのに十分な量を意味する。
【0111】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することにより、単位容量の形態で製造されたり、又は多回容量容器内に内入して製造されてよい。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液形態であるか、エキス剤、散剤、坐剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。
【実施例
【0112】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0113】
実施例1.TIGIT抗体選別
ヒト合成ライブラリーファージ(Human synthetic library phage)を、ヒトTIGIT-His抗原のコートされたチューブで2時間反応させた。反応後に、洗浄バッファー(PBS+0.05% Tween20)で4回洗浄し、溶出バッファー(1% BSA/0.1Mグリシン、pH2.0)で常温で10分間反応させてファージを回収した。回収されたファージをXLI-Blueコンピテント細胞に感染(infection)させ、37℃で1時間培養した。その後、VCS M13ヘルパーファージ1mLを処理して1時間37℃で培養し、SB培地80ml、カナマイシン100μl、カルベニシリン100μlをさらに処理して37℃で20時間培養した。培養後に、上澄液を回収してPEG溶液(20% PEG、15% NaCl)でファージを沈殿させ、1% BSA/PBS 2mlで再懸濁(re-suspension)させて次の次数のパンニングに使用した。
【0114】
ヒトTIGIT特異的ヒト抗体を選別するために、ファージ表面にヒト抗体ライブラリーをディスプレイさせた後、次数の増加につれて、抗原であるTIGITの濃度を変化させ、合計3ラウンドのパンニングを行った。パンニングの次数が進行するにつれて、TIGITの濃度を100nMから1nMまでに減少させた。ファージのアウトプット力価(output titer)は、表1の通りである。
【0115】
【表1】
【0116】
実施例2.TIGITに対する結合力確認
2.1 ScFv形態の抗TIGIT抗体の結合力確認
ELISAプレートに抗原ヒトTIGIT-FCを3μg/ml濃度で50μlを入れた後、4℃で一晩培養した後、1% BSA含有PBSで常温2時間ブロッキングした。合計16種のscFv抗TIGIT抗体を80nMを開始濃度としてPBSに1/3連続希釈(serial dilution)した後、ヒトTIGIT-Fcプレートに50μlを入れ、常温2時間反応させた。PBST(0.05% Tween20含有PBS)で3回洗浄した後、抗His-HRPをPBSに1/1000に希釈して50μlを入れた後、常温1時間反応させた。PBST(0.05% Tween20含有PBS)で3回洗浄した後、TMB液50μlを入れた。常温で5分反応させた後、TMB停止溶液50μlを入れ、ELISA読み取り機により吸光度450nmで値を測定した。
【0117】
その結果を図1に示した。EC50値を基準に合計11種(1C3、1E4、1E12、1F2、1F10、1G8、WIN_1B6、WIN_1B11、WIN_1D2、1E8、1B11)のクローン(clone)を選別した。
【0118】
2.2 IgG形態の抗TIGIT抗体の結合力確認
scFv抗ヒトTIGIT抗体のうち、ヒトTIGITへの結合力が高かった11種の抗体に対して、IgG形態に転換した。ELISAプレートに抗原ヒトTIGIT-Fcを3μg/ml濃度で50μlを入れ、4℃で一晩培養した後、1% BSA含有PBSで常温2時間ブロッキングした。合計11種のIgG形態の抗ヒトTIGIT抗体を6.6nMを開始濃度としてPBSに1/2連続希釈した後、ヒトTIGIT-Fcプレートに50μlを入れた後、常温で2時間反応させた。PBST(0.05% Tween20含有PBS)で3回洗浄した後、抗His-HRPをPBSに1/1000に希釈して50μlを入れ、常温で1時間反応させた。PBST(0.05% Tween20含有PBS)で3回洗浄した後、TMB液50μlを入れた。常温5分反応させた後、TMB停止溶液50μlを入れ、ELISA読み取り機により吸光度450nmで値を測定した。その結果を表2及び図2に示した。
【0119】
【表2】
【0120】
1E4、1F2、1G8、WIN-1D2、1E8が、EC50 1nM程度の結合力を示すことが確認された。
【0121】
実施例3.TIGITのリガンドであるPVRに対するTIGIT候補抗体の競争力確認
3.1 ヒトPVR発現及び精製
GenBank AAH15542.1から提供されたヒトPVR配列のうち、ECD(Extracellular domain)Gly27-Asn343部分のアミノ酸(配列番号2)を合成した。
【0122】
合成されたヒトPVRを鋳型としてhPVR-F(5’-GGCCCAGGCGGCCGGCGA-3’)/hPVR-Rプライマー(5’-GGCCAGGCTGGCCGTTCC-3’)でPCRを行った後、Sfi I酵素を用いてpclw-huIgG4ベクターに挿入した。Expi293FTM 2.5×10cells/ml 30mlに軽鎖(light chain)と重鎖(heavy chain)DNAをそれぞれ1:1の割合で30μgを、ExpiFectamine 293試薬を用いて一過性発現(transient expression)させた後、10日培養した。細胞培養液(上澄液)を0.22μmボトルトップフィルターを用いて濾過した後、MabSelect Xtraビード200μlを入れ、バイオローテーターで2時間混ぜて反応させた。培養後に、ビードと抗体の混合物をプロテインAカラムに入れた。プロテインAカラムを結合バッファー2mlで2回洗浄した。プロテインAカラムに、200μlのプロテインA溶出バッファーを用いて合計5回の溶出分画(elution fraction)を集めた。溶出された抗体をZebaスピン脱塩カラム(Zeba spin desalting column)を用いて1,000rpmで5分遠心分離して脱塩した。
【0123】
3.2 競争力確認
ELISAプレートに抗原ヒトTIGIT-Fcを3μg/ml濃度で50μl入れ、4℃で一晩培養した後、1% BSA含有PBSで常温2時間ブロッキングした。リガンドであるビオチン化ヒトPVRと抗ヒトTIGIT抗体を1:0、1:0.1、1:1、1:10のモル比で混ぜた後、常温で10分反応させた。その後、50μlずつをヒトTIGITコートされたプレートに入れた後、常温で2時間培養させた。PBST(0.05% Tween20含有PBS)で3回洗浄した後、抗SA-HRPをPBSで1:3000希釈後に50μl入れた後、常温で1時間培養させた。PBST(0.05% Tween20含有PBS)で3回洗浄した後、TMB液50μlを入れた。常温5分反応させた後、TMB停止溶液50μlを入れ、ELISA読み取り機により吸光度450nmで値を測定した。
【0124】
その結果を図3に示した。TIGITとPVRに対するブロッキングアッセイを、11種の抗TIGIT抗体に対して行い、11種ともにリガンドブロッキングすることを確認した。
【0125】
実施例4.抗TIGIT抗体の親和度測定
4.1 オクテット(Octet)を用いた測定
ヒトTIGIT-HISを5μg/mlで1XKBバッファーに希釈して準備した。抗ヒトTIGIT抗体を、開始濃度100nMから始めて1XKBバッファーで1/2連続希釈して準備した。Penta-Hisセンサーを1XKBバッファーに10分反応させた後、オクテットを用いてヒトTIGIT-HISに対する抗体の親和力を測定した。その結果を、表3及び図4に示した。
【0126】
【表3】
【0127】
11種の抗TIGIT抗体に対する親和力をオクテットを用いて測定し、それらのうち、1B11、1E12、1F2、1E8は、解離(dissociation)が他のクローンに比べて劣っていることを確認した。
【0128】
4.2 抗TIGIT抗体のIgG4形態転換
最終5種の抗ヒトTIGIT抗体に対してそれぞれの重鎖可変領域(Heavy chain variable region)と軽鎖可変領域(Light chain variable region)を合成した。
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【0131】
4.3 Biacore実験
(1)イモビライゼーション(Immobilization)
抗プロテインAを10μg/mlの濃度となるようにアセテート4.0バッファーに希釈して準備した。100nM NHS、400mM EDCと1Mエタノールアミンを準備した。センサーチップはCM5を使用し、接触時間(contact time)300秒(5分)、流量(flow rate)5μg/ml、及びイモビライゼーションレベル(immobilization level)2500RUと指定した。システムコントロール窓でランニング(running)を進行後に、ターゲットRUに到達するか確認した。
【0132】
(2)KD測定
捕捉抗体1G8、WIN_1B6と参照抗体を1XHBS-EPバッファーに1μg/mlで希釈し、ターゲットレベルを300RUと指定した。光源TIGIT-HISを160nMから始めて1XHBS-EPで1/2連続希釈し、接触時間120秒、解離時間(Dissociation time)600秒と指定して反応させた。ランニングが完了すると、評価用ソフトウェア(evaluation software)を用いてフィット(fitting)してka、kd及びKD値を求めた。
【0133】
その結果を図5に示した。1G8、WIN_1B6と参照抗体に対してBIACOREで親和力を測定した。参照抗体と候補抗体1G8は、nM以上の親和力を示し、他の候補抗体であるWIN_1B6は、10nM以上の親和力を示した。
【0134】
実施例5.細胞表面に発現したTIGITとTIGIT候補抗体の結合力確認
TIGITを安定的に発現させる細胞株を製作するために、Jurkat細胞(Jurkat E6.1(ATCC;TIB-152TM)にTIGIT cDNAを形質注入させ、抗生剤であるG418 1mg/mlを処理して選別し、TIGIT過発現細胞株を作製した(Jurkat-TIGIT)。Jurkat-TIGIT細胞株を、2%(v/v)FBSを添加したDPBS(以下、FACSバッファー)に再浮遊(resuspend)し、1,500rpmで遠心分離した後、細胞数が3×10cell/mlとなるようにFACSバッファーに再浮遊し、U底96ウェルプレートの各ウェルに100μlずつ入れた。その後、各ウェルの細胞及び培養液を回収し、1,500rpmで遠心分離した後、上澄液を捨てた。回収した細胞を、ヒトFcブロック(BD Pharmingen;Cat.#564220)溶液を0.5μl入れたFACSバッファー50μlに再浮遊した後、4℃で15分間培養した。TIGIT候補抗体又はヒトIgG4(Sigma;Cat.# I4639)を、FACSバッファー50μlに、25μg/ml、5μg/ml、1μg/ml、0.2μg/ml、0.04μg/ml、0.008μg/ml、0.0016μg/ml、0.00032μg/ml濃度の2倍となるように希釈した。Fcブロッカーがある状態の細胞に、先に希釈したTIGIT候補抗体又はヒトIgG4を50μlずつ入れて、25μg/ml、5μg/ml、1μg/ml、0.2μg/ml、0.04μg/ml、0.008μg/ml、0.0016μg/ml、0.00032μg/mlの濃度となるようにした後、4℃で1時間30分間反応させた。TIGIT候補抗体と反応させた細胞をFACSバッファーに再浮遊した後、1,500rpmで遠心分離して洗浄する過程を2回反復した。フィコエリトリン(以下、PE)標識されたヤギ抗ヒトFab’2(Phycoerithrin-conjugated goat anti-human Fab’2)(Sigma;Cat.# P8047)をFACSバッファーに1:500体積比率に希釈させた後、各ウェルに100μlずつ入れ、4℃で30分間、暗い所で反応させた。PEと反応させた細胞を回収してFACSバッファーに再浮遊し、1,500rpmで遠心分離して上澄液を捨てる洗浄過程を2回反復した。その後、細胞を固定バッファー(BD CytofixTM;Cat.#554655)100μlに再浮遊した後、4℃で30分間、暗い所で培養した。固定バッファーと反応させた細胞を回収してFACSバッファーに再浮遊し、1,500rpmで遠心分離して上澄液を捨てる洗浄過程を2回反復した。洗浄した細胞をFACSバッファー200μlに再浮遊した後、FACS LSR-Fortessa装備で細胞に標識されたPEのMFI(median fluorescence intensity)を比較した。全てのFACS分析は、FlowJoソフトウェアを用いた。その結果を図6に示し、TIGIT候補抗体のうち、WIN_1B6、WIN_1D2、1E8、1F10、1G8において高い結合力を示すことを確認した。
【0135】
実施例6.TIGITのリガンドであるPVRに対するTIGIT候補抗体の競争力確認
TIGIT過発現細胞株(Jurkat-TIGIT)を2%(v/v)FBS添加したDPBS(以下、FACSバッファー)に再浮遊し、1,500rpmで遠心分離した後、細胞数が3×10cells/mlとなるようにFACSバッファーに再浮遊してU底96ウェルプレートの各ウェルに100μlずつ入れた。その後、各ウェルの細胞及び培養液を回収して1,500rpmで遠心分離した後、上澄液を捨てた。回収した細胞をヒトFcブロック(BD Pharmingen;Cat.#564220)溶液を0.5μl入れたFACSバッファー50μlに再浮遊した後、4℃で15分間培養した。
【0136】
HEK293(ThermoFisher scientific;Cat.# A14527)細胞から精製されたPVR-Fcを、各ウェルに10μgずつ0.5μlで入れ、4℃で1時間反応させた。PVR-Fcと反応させた細胞をFACSバッファーに再浮遊した後、1,500rpmで遠心分離して洗浄する過程を2回反復した。TIGIT候補抗体又はヒトIgG4(Sigma;Cat.# I4639)をFACSバッファー100μlに、10μg/ml、0.2μg/ml、0.04μg/ml、0.008μg/ml、0.0016μg/ml、0.00032μg/mlの濃度となるように希釈し、各ウェルに100μlずつ入れて細胞を再浮遊した後、4℃で1時間反応させた。TIGIT候補抗体と反応させた細胞をFACSバッファーに再浮遊した後、1,500rpmで遠心分離して洗浄する過程を2回反復した。抗PVR-PE抗体(Invitrogen;Cat.#12-1550-41)を各ウェルに処理した後、4℃で30分間、暗い所で反応させた。抗PVR-PE抗体と反応させた細胞を回収してFACSバッファーに再浮遊し、1,500rpmで遠心分離して上澄液を捨てる洗浄過程を2回反復した。その後、細胞を固定バッファー(BD CytofixTM;Cat.#554655)100μlに再浮遊した後、4℃で30分間、暗い所で培養した。固定バッファーと反応させた細胞を回収してFACSバッファーに再浮遊し、1,500rpmで遠心分離して上澄液を捨てる洗浄過程を2回反復した。洗浄した細胞をFACSバッファー200μlに再浮遊した後、FACS LSR-Fortessa装備で細胞に標識されたPEのMFI(median fluorescence intensity)を比較した。全てのFACS分析は、FlowJoソフトウェアを用いた。その結果を図7に示し、TIGIT候補抗体のうち、WIN_1B6、WUN_1B11、WIN_1D2、1G8、1E8においてPVRと強く結合することを確認した。
【0137】
実施例7.TIGIT候補抗体のTIGITとPVRとの結合抑制効果によるT細胞活性化分析
TIGIT/CD155 Blockade Bioassay Kit(Promega,Cat No.J2305)を用いて、TIGIT候補抗体によるT細胞活性化を確認した。-140℃に保管中であるThaw-and-Use TIGIT効果器細胞1バイアルを溶かし、10%(v/v)FBSを添加したRPMI 1640(Gibco,Cat No.11875-065)を12ml入れて再浮遊させた。細胞液を80μlずつ96ウェル白色平底アッセイプレートの内側60個の溝に入れ、37℃で16時間~18時間培養させた。翌日、-140℃に保管中であるThaw-and-Use CD155aAPC/CHO-K1細胞1バイアルを溶かし、10%(v/v)FBSを添加したRPMI 1640(Gibco,Cat No.11875-065)3mlを入れて細胞を再浮遊させた。TIGIT候補抗体は最高濃度を300μg/ml(6X)として準備し、2.5倍ずつ順次に10回希釈させた。前日に培養したTIGIT効果器細胞プレートを取り出し、抗体20μlを入れてThaw-and-Use CD155aAPC/CHO-K1細胞浮遊物を20μl入れて37℃、COインキュベーターで6時間培養した。6時間後、96ウェルプレートをインキュベーターから取り出し、常温で20分放置した。Bio-glo基材(substrate)とバッファー10mlを混ぜた後、細胞懸濁液(cell suspension)の入っている内側60個の溝に120μlを処理後に10分間放置した。GloMax Discover Systemで発光(luminescence)を測定した。その結果を図8に示し、5種のTIGIT候補抗体のうち、1G8処理時にEC50値は2.1nMと、候補抗体のうち最高にT細胞の活性化能力を増加させることを確認した。
【0138】
実施例8.TIGIT候補抗体の交差反応確認
TIGIT抗体がマウス、サル及びヒトのTIGITに対する結合力があるどうかを確認するために、HEK293細胞に、それぞれの対照群ベクターとしてpEF1a-AcGFP-N1ベクター(Clontech,Cat No.631973)、マウスTIGIT、サルTIGIT及びヒトTIGITプラスミドを20μgそれぞれ入れ、LipofectamineTM3000(Invitrogen,Cat No.L3000001)を用いて形質注入した。形質注入48時間後に蛍光顕微鏡でGFP発現を確認した後、細胞を、TrypLE Express Solution(ThermoFisher Scientific;Cat.#12605010)を1ml処理して剥がし、10%(v/v)FBSを添加したDMEM(Gibco,Cat No.11995-065)を9mlで希釈した後、1,200rpmで5分間遠心分離し、上澄液を除去した。PBSで1回洗浄した後、FACSバッファーに細胞数が5×10cells/100μlの濃度となるように再浮遊させた。ヒトFcブロック溶液を各サンプル当たり1μl入れ、4℃で10分間反応させた。ヒトIgG4、WIN_1B6、WIN_1D2、E8、1F10、1G8を1μg/5×10cells濃度で処理し、4℃で1時間反応させた。FACSバッファーで洗浄後、PE標識されたヤギ抗ヒトFab’2抗体をFACSバッファーに1:200に希釈して各サンプル当たりに100μlずつ入れ、4℃で30分間反応させた。FACSバッファーを200μlまで満たした後、1,200rpmで5分間遠心分離して上澄液を除去した。固定バッファー300μlを入れて細胞を再浮遊させた。FACS LSR-Fortessa装備でGFPを発現させた細胞を選別し、TIGIT候補抗体はPE蛍光チャネルで確認し、FlowJoソフトウェアを用いて分析した。その結果を図9に示し、TIGIT候補抗体のうち、WIN_1B6、WIN_1D2、E8、1G8はヒトの他にサルのTIGITにも結合することを、細胞表面に発現したタンパク質に対する結合力によって確認した。しかし、マウスのTIGITにはいずれも結合しないことを確認した。
【0139】
実施例9.TIGIT候補抗体の調節性(regulatory)T細胞の抑制能確認
9.1 末梢血液から単核球細胞(PBMC)分離
濃縮赤血球血液バッグ(200~250ml)から18Gニードル及び50ml注射器を用いて、血液を使い捨てボトル(disposable bottle)に移した後、DPBSを追加して1:1に血液を希釈した。15mlのFicoll-paque(GE Healthcare,Cat No.17-1440-03)を新しい50mlコニカルチューブに準備し、Ficoll-paque上に30mlの希釈血液をコニカルチューブの壁面にピペットチップを当てて徐々にレイヤリングした。1,500rpm、25℃で30分間遠心分離し(no brake)、遠心分離終了後にPBMC層を丁寧に採取して新しい50mlコニカルチューブに移した後、洗浄バッファーを入れて合計で50mlにし、1500rpm、4℃で10分間遠心分離した。上澄液を捨てた後、細胞を洗浄バッファーで再浮遊し、1,500rpm、4℃で10分間遠心分離して上澄液を捨てた後、10%(v/v)FBSを添加したIMDM(GIBCO,Cat No.12440-053)で1回洗浄後に細胞数及び生存能力(viability)をチェックし、6ウェルプレートに16時間~18時間培養した。
【0140】
9.2 調節性T細胞分離
前日に培養したPBMCから調節性T細胞を分離するために、調節性T細胞分離キット(STEMCELL,Cat No.18063)を用いた。5×10cells/mlの分離されたヒトPBMCを丸底チューブ(round-bottom tube)に入れ、100μl CD25陽性選択カクテル(positive selection cocktail)を入れた後、常温で5分間反応させた。60μl Releasable RapidSpheres(使用前にボルテックス)を入れ、100μl CD4 T細胞濃縮カクテル(enrichment cocktail)をさらに入れた後、常温で5分間反応させた。再浮遊した後、丸底チューブをマグネットに挿入した後、常温で10分間反応させ、ピペットで丁寧に上澄液(CD4CD25)を抜き取って新しいチューブに移した。マグネットからチューブを丁寧に分離した後、EasySepバッファーを2.5ml入れて2~3回丁寧にピペット再浮遊した後、再びマグネットに装着した後、常温で5分間反応させた後、ピペットで丁寧に上澄液(CD4CD25)抜き取る。この過程を2回反復した。マグネットからチューブを分離し、開始した量でEasySepバッファーを入れた後、200μl放出バッファーを入れて5回以上再浮遊した後、CD127highディプリーションカクテル(depletion cocktail)を100ul入れた後、常温で5分間反応させた。Dextran RapidSpheres(使用前にボルテックス)を20μl入れ、常温で5分間反応させて再浮遊した後、丸底チューブをマグネットに挿入した後、常温で5分間反応させた。ピペットで丁寧に上澄液(CD4CD25CD127low)を抜き取って新しいチューブに移した後、10%(v/v)FBSを添加したIMDM(GIBCO,Cat No.12440-053)で1回洗浄後に細胞数を測定した。
【0141】
9.3 レスポンダー細胞にCFSE標識
前日に培養したPBMC 1×10cells/ml(1ml)を15mlチューブに入れ、20uM CFSE(eBioscience,Cat No.65-0850-84)を1ml入れて細胞をよく混ぜ、アルミホイルで光を遮断して37℃ CO培養器で20分間反応させた。20分後に、10mlの10%(v/v)FBSを添加した冷たいIMDMを入れ、1,200rpm、4℃で5分間遠心分離し、この過程を2回反復した。
【0142】
9.4 調節性T細胞とCFSE標識されたレスポンダー細胞共同培養
CFSEで標識したレスポンダー細胞を10%(v/v)FBSを添加したIMDMに再浮遊して96ウェル丸プレートに2×10cells/100μlで入れ、調節性T細胞を0:1、0.1:1(2×10)、0.25:1(5×10)、0.5:1(1×10)の割合で(Treg:レスポンダー)を入れた。溶解性(Soluble)抗CD3/抗CD28(2μg/ml)を各ウェルに添加し、ヒトIgG4とTIGIT抗体を10μg/mlの濃度で各ウェルに入れた後、37℃、5% CO培養器で5日間培養した。5日後に細胞及び培養液を回収して1,500rpmで遠心分離し、上澄液はIFN-γ ELISAのために-80℃に保管し、残りの細胞は回収し、FACSバッファーに交替した後、4℃で15分間Fc受容体をブロッキング(bloking)した。それぞれ異なる染料が標識されたCD45-PE(TONBO,Cat No.50-0459-T100)、CD3-Percific blue(Biolegend,Cat No.300330)、CD8-APC(TONBO,Cat No.20-0088-T100)、CD4-PE-Cy7(TONBO,Cat No.60-0049-T100)、CD25-APC-Cy7(Biolegend,Cat No.302614)に対する抗体をプレートに処理した後、30分間4℃で反応させた。反応後、FACSバッファーを満たして遠心分離し、この過程を3回反復する。細胞を固定バッファー(BD cytofix;cat.#554655)100μlに再浮遊した後、30分間4℃で反応させた。FACSバッファーで2回洗浄した後、分析のために、FACSバッファー200μlで再浮遊した。FACS LSR-Fortessa装備でCD8細胞のうちCFSEで細胞増殖を確認し、FlowJoソフトウェアを用いて分析した。その結果を図10に示した。TIGIT候補抗体によって調節性T細胞の機能が抑制され、対照群に比べてCD8T細胞が14%程度増加した細胞増殖を示した。
【0143】
9.5 TIGIT候補抗体によるIFN-γ分泌量確認
-80℃に保管した試料上澄液を常温で溶かし、1,500rpmで5分間遠心分離する。IFN-γ分泌量を測定するために、ヒトIFN-γイムノアッセイキット(R&D SYSTEMS,Cat No.DIF50)を用いた。ELISAに使用される全ての使用を常温に準備した。マイクロプレートストリップ(Microplate strips)をサンプル数だけ準備し、サンプルを入れる各ウェルに、100μlずつ希釈液RD1-51を入れた。上澄液をキャリブレータ希釈液(calibrator diluent)RD6-21で20倍に希釈する。IFN-γ標準株(standard stock)(1000pg/ml)を500pg/mlに希釈した後、1:1体積比率に順次希釈を6回行った。各ウェル当たり標準(standard)とサンプルを100μl入れて常温で2時間反応させた。洗浄バッファーで3回洗浄後に、ヒトIFN-γコンジュゲ-トをウェル当たり200μlずつ処理した後、常温で2時間反応させた。洗浄バッファーで3回洗浄後に、基質溶液をウェル当たり200μlずつ処理し、常温で30分間反応させた後に各ウェル当たり停止溶液を50μlずつ処理し、Molecular dynamics reader装備を用いて540nm又は570nm波長でO.D値を測定した。測定値は、SoftMax Pro5.4.1プログラムを用いて分析した。その結果を図10に示した。TIGIT候補抗体によって調節性T細胞の機能が抑制され、培養上澄液で測定したIFN-γ分泌量は、対照群に比べて2倍程度高い数値を示した。
【0144】
実施例10.TIGIT候補抗体の抗癌効果確認
Raji癌細胞とPVR過発現するように作製されたRaji-PVR細胞株をRPMI 1640培地(ThermoFisher Scientific;Cat.#11875093)に1×10cells/100μl濃度で15mlチューブに再浮遊し、30μl Calcein-AM(final 30uM,Invitrogen;Cat.#C3099)を入れた後、37℃で暗くして1時間反応させる。1時間後、RPMI 1640培地で2回洗浄後に、RPMI 1640培地1×10cells/100μl濃度で再浮遊して96ウェルプレートに入れる。増幅培養した(Expanded)NK細胞を、癌細胞と3:1にして各ウェルに入れ、この時、1G8を10μg/ml濃度で各ウェルに共に入れ、対照群としてヒトIgG4を同一に処理し、光を遮断して37℃温度で5% CO条件で6時間共同培養する。6時間後、96ウェルプレートを2,000rpm、3分間遠心分離し、100μl上澄液を取って96ウェル黒プレートに移した後、multiple readerにより485nm/535nm波長で各試料の値を測定した。下のような数式を用いて溶解度(lysis)値を分析した。その結果を図11に示した。PVRが過発現した細胞において1G8処理によってNK細胞の癌細胞死が増加したことを確認し、これは、PVR発現依存的にTIGITに対する特異的標的化(specific targeting)による効力を示すことを確認した。
【0145】
実施例11.TIGIT候補抗体(1G8)とPD-1抗体の併用処理によるT細胞反応性増加確認
11.1 末梢血液から分離された単核細胞(PBMC)からCD14陽性細胞分離後に成熟した樹状細胞に分化
冷凍保存された(Cryopreserved)健康な供与者由来末梢血液単核細胞(Peripheral blood mononuclear cells,PBMC)を37℃水槽で速かに溶かした後、50mLコニカルチューブ(conical tube)に移して振り動かしながら解凍培地(thawing media)(RPMI,Gibco11875-093+10% FBS,Gibco16000-044)を一滴ずつ点滴して混ぜた。その後、1200rpm、4℃で10分間遠心分離して上澄液を除去し、40mLのMACSバッファー(PBS+0.5% FBS+2mM EDTA)に再浮遊させた後、細胞数を定量した。細胞10個当たり20μLのCD14マイクロビーズ(Miltenyi Biotec,130-050-201)と80μLのMACSバッファーを処理した後、15分間光を遮断し、4℃で培養した。その後、1350rpm、4℃で8分間遠心分離して上澄液を除去し、500μLのMACSバッファーに再懸濁させた後、QuadroMACSセパレーター(Miltenyi Biotec,130-090-976)に装着されたLSカラム(Miltenyi Biotec130-042-401)にロードした。LSカラムをMACSバッファーで3mLずつ3回洗浄した後、QuadroMACSセパレーターから除去した後、15mLコニカルチューブ上に移した後、プランジャーで押してCD14陽性細胞を得た。得られたCD14陽性細胞は、1.2×10cells/mLの濃度でcomplete RPMI(RPMI,Gibco A10491-01+10% FBS+55μM β-Mercaptoethanol,Gibco 21985-023+1X Antibiotic-Antimycotic,Gibco 15240)に再浮遊させ、2X GM-CSF(2×10U/mL)(R&D systems,215-GM-010)と2X IL-4(2×10U/mL)(R&D systems,204-IL-010)サイトカインが含まれたcomplete RPMIと1:1の比率に混ぜて6ウェルプレートに入れた後、37℃のCOインキュベーターで培養した。3日後、各ウェルで上清培養液1.5mLずつを1mLピペットで除去し、各ウェルに1X GM-CSF+1X IL-4が含まれたcomplete RPMI培地を2mLずつ追加した。2日後、各6ウェルで2mL培養液を除去し、各サイトカインGM-CSF(1000U/mL)+IL-4(1000U/mL)+TNF-α(10ng/mL)(R&D systems,210-TA-010)+IL-1β(10ng/mL)(R&D systems,201-LB-005)+IL-6(10ng/mL)(R&D systems,206-IL-010)+PGE2(1μg/mL)(Sigma,P0409-1MG)が含まれた培地を3mL追加し、2日間細胞を37℃のCOインキュベーターで培養した。細胞を解いて培養して7日目に、底に接合した成熟した樹状細胞をピペッティングして50mL ニカルチューブに集めた後、細胞数を測定し、1×10cells/mLの濃度に調整した。
【0146】
11.2.末梢血液から分離された単核細胞(PBMC)から全体T細胞(pan T cell)分離及びVPD450染色
樹状細胞を分離した供与者とは異なる同種異系(allogeneic)供与者から分離された冷凍保存された末梢血液単核細胞(PBMC)を、37℃水槽で速かに溶かした後、50mLコニカルチューブに移して振り動かしながら解凍培地を一滴ずつ点滴して混ぜた。その後、1200rpm、4℃で10分間遠心分離して上澄液を除去し、40mLのMACSバッファーに再浮遊させた後、細胞数を定量した。細胞10個当たり10μLの全体T細胞ビオチン抗体(pan T cell biotin antibody)(Miltenyi Biotec,130-096-535)と40μLのMACSバッファーを処理した後、5分間光を遮断し、4℃で培養した。その後、細胞10個当たり20μLの抗ビオチンマイクロビーズ(Miltenyi Biotec,130-096-535)と30μLのMACSバッファーを処理した後、10分間光を遮断し、4℃で培養した。培養が終わった後、最終体積が500μLとなるようにMACSバッファーで量を合わせた後、QuadroMACSセパレーターに装着されたLSカラムにロードした。LSカラムをMACSバッファーで3mLずつ3回ロードしながら、LSカラムから流れ出た細胞を15mLコニカルチューブに全て集めた後、細胞数を定量した。集まったT細胞を1200rpm、4℃で10分間遠心分離して上澄液を除去した後、1X PBS溶液に再浮遊して最終濃度を2×10cells/mLに合わせた。細胞の入っている溶液と同じ体積の1μM VPD450溶液を入れた後、細胞をよく混ぜ、アルミニウムホイールで光を遮断して37℃のCOインキュベーターで20分間反応させた。その後、10mLの解凍培地を入れ、1200rpm、4℃で5分間遠心分離した後、上澄液を除去する過程を2回反復した。得られたT細胞の最終濃度が2×10cells/mLになるようにcomplete RPMI培地に再浮遊させた。
【0147】
11.3 樹状細胞と同種異系T細胞を用いた混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction,MLR)試験
11.1で由来した、7日間試験管で成熟した樹状細胞と、2.2で分離されたVPD450が染色された同種異系T細胞を、1:20の比率に共同培養をするために、complete RPMI培地の量を調整し、次のように最終濃度を合わせた(樹状細胞最終濃度:1×10cells/mL;T細胞最終濃度:2×10cells/mL)。96ウェルU底プレートに各ウェル当たり5×10cells/50μLの樹状細胞と1×10cells/50μLのT細胞をピペッティングして移した。一定の比率で細胞を移した後、次のように合計5つの条件で5日間共同培養を行った:1)樹状細胞とT細胞だけを培養、2)1)の条件にヒトIgG4タイプのアイソタイプ抗体(BioLegend,403702)を処理、3)1)の条件にTIGIT候補抗体(1G8)を単独処理、4)1)の条件にPD-1抗体(MSD,Pembrolizumab)を単独処理、5)1)の条件にTIGIT候補抗体(1G8)とPD-1抗体を併用処理。全ての実験において各抗体の最終濃度は5μg/mLとなるように調整した。各抗体を処理した後、96ウェルプレートを37℃のCOインキュベーターで5日間培養した。5日後に細胞及び培養液を回収して2000rpmで遠心分離した後、上澄液はヒトIFN-γ ELISA試験分析のために-80℃冷凍高に保管し、96ウェルプレートに残った細胞にはFACSバッファー(1% FBS/シースバッファー(sheath buffer))を添加した後、1200rpm、4℃で5分間遠心分離し、上澄液を除去する過程を2回反復した。100μLのFACSバッファーに再浮遊して5mLチューブに準備し、抗体を処理した後、30分間光を遮断し、4℃で培養した。抗体は、FITC抗CD8(BioLegend301006)、PE抗TIGIT(eBiosciences,12-9500-42)、PE-Cy7抗PD-1(eBiosciences,25-2799-42)、APC抗CD4(Tonbo20-0049-T100)、APC-Cy7抗CD3(BD560176)、PerCP Cy5.5抗7AAD(BD559925)を使用した。その後、、各サンプル当たりに1mL FACSバッファーを入れ、4℃、2,000rpmで3分間遠心分離した後、上澄液を除去して試料を得た。LSR FortessaでCD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞のうちVPD450陰性/陽性比率によって各グループの細胞増殖程度を確認し、分析した結果を図12Aに示した。
【0148】
図12Aで、CD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞のいずれにおいても、IgG4アイソタイプ抗体処理対照群に比べて、TIGIT候補抗体(1G8)単独処理時には統計的に有意な細胞増殖の増加が起きなかったが、PD-1抗体単独処理時には統計的に有意な細胞増殖の増加が起きた。この時、PD-1抗体単独処理時の反応に比べて、PD-1抗体とTIGIT候補抗体(1G8)を併用処理した条件において、統計的に有意な、より増加した細胞増殖が観察された。
【0149】
11.4 IFN-γ分泌量変化確認
-80℃に保管した試料上澄液を常温で溶かし、1500rpmで5分間遠心分離した。IFN-γ分泌量を測定するために、ヒトIFN-gamma Quantikine ELISAキット(R&D SYSTEMS,DIF50)を用いた。ELISAに使用された全ての試料を常温に放置して準備した。マイクロプレートストリップをサンプル数だけ準備し、サンプルを入れる各ウェルに、100μLずつ希釈液RD1-51を入れた。上澄液は、キャリブレータ希釈液RD6-21で20倍に希釈し、IFN-γ標準株(1000pg/mL)は500pg/mLに希釈した後、1:1体積比率に順次希釈を6回行った。各ウェル当たりに標準とサンプルを100μL入れ、常温で2時間反応させた。洗浄バッファーで3回洗浄後に、ヒトIFN-γコンジュゲ-トをウェル当たり200μLずつ処理した後、常温で2時間反応させた。洗浄バッファーで3回洗浄後に、基質溶液をウェル当たりに200μLずつ処理し、常温で30分間反応させた後、各ウェル当たりに停止溶液を50μLずつ処理し、直ちにMolecular dynamics reader装備を用いて540nm又は570nm波長でO.D値を測定した。測定値は、SoftMax Pro5.4.1プログラムを用いて分析した測定値を図12Bに示した。
【0150】
図12Bで、IgG4アイソタイプ抗体処理対照群に比べてTIGIT候補抗体単独処理時にはIFN-γ分泌量の差異がなかったが、PD-1抗体単独処理時には統計的に有意なIFN-γ分泌量の増加が起きた。この時、PD-1抗体単独処理時の反応に比べて、PD-1抗体とTIGIT候補抗体(1G8)を併用処理した条件において統計的に有意な、より増加(平均して47%程度)したIFN-γ分泌量が観察された。
【0151】
実施例12.TIGIT候補抗体(1G8)による調節性T細胞の活性指標(activation marker)発現減少確認
12.1 健康な供与者末梢血液から分離された単核細胞(PBMC)にTIGIT候補抗体(1G8)処理
冷凍保存された健康な供与者由来末梢血液単核細胞を37℃水槽に速かに溶かした後、50mLコニカルチューブに移して振り動かしながら解凍培地を一滴ずつ点滴して混ぜた。その後、1200rpm、4℃で10分間遠心分離して上澄液を除去し、15mLの解凍培地に細胞を再浮遊させた後、細胞数を定量した。1×10cells/mLでcomplete RPMIに再懸濁させた後、96ウェルU底プレートに1×10細胞とDynabeads Human T-Activator CD3/CD28(gibco,111.31D)2μLを、一つのウェル当たりに合計200μLに合わせて3倍数で分注した。各グループ別に当該抗体(1G8、hIgG4)は最終濃度1mg/mLに処理して6日間培養した。
【0152】
12.2 調節性T細胞の形質変化分析
6日間培養した細胞をプレートのまま4℃で2,000rpmで3分間遠心分離した後に上澄液を除去し、ウェル当たりに200μLのPBSで再浮遊した後、4℃、2,000rpmで3分間遠心分離した。上澄液を除去した後、死んだ細胞を区分するために、LIVE/DEADTM Fixable Aqua Dead Cell Stain Kit(Invitrogen,L34957)を処理し、30分間光を遮断して4℃で培養した。ウェル当たりにFACSバッファー100μLをさらに処理し、4℃、2,000rpmで3分間遠心分離した。上澄液を除去し、抗体を処理した後、30分間光を遮断して4℃で培養した。抗体は、BV421抗CD25(BD 562442)、FITC抗CD127(BD 564423)、BB700抗CD8(BD 566452)、R700抗CD4(BD 564975)、APC-H7抗CD3(BD 560176)、PE-Cy7抗CD39(eBioscience 25-0399-41)、PE-Cy7抗PD-1(Biolegend 135216)、Alexa647抗ICOS(Biolegend 313516)、Alexa647抗TIGIT(Biolegend 372724)、PE-Cy7抗LAG-3(Biolegend 369310)、PE-Cy7抗HLA-DR(BD 565096)、APC抗CCM1(R&D FAB2244A)を使用した。ウェル当たりにFACSバッファー100μLをさらに処理し、4℃、2,000rpmで3分間遠心分離した。上澄液を除去した後、FoxP3/transcription factor staining buffer set(eBioscience,00-5523-00)のプロトコルに従って細胞内染色(Intracellular staining)を行った。抗体は、PE抗FoxP3(eBiosicence 12-4776-42)、APC抗CTLA-4(R&D FAB386A)を使用した。染色を終えた細胞をLSR Fortessaで分析した結果を図13に示した。
【0153】
図13で、1G8抗体が正常人の調節性T細胞の活性指標のうち、ICOS、PD-1、LAG3の発現には影響を与えないが、CD39とCTLA-4の発現を有意に減少させることを確認した。
【0154】
実施例13.多発性骨髄腫患者のCD8T細胞と調節性T細胞の枯渇指標(exhaustion maker)発現分析
冷凍保存された多発性骨髄腫患者由来末梢血液単核細胞を37℃水槽に速かに溶かした後、50mLコニカルチューブに移して振り動かしながら解凍培地を一滴ずつ点滴して混ぜた。その後、1200rpm、4℃で10分間遠心分離して上澄液を除去し、15mLの解凍培地に細胞を再浮遊させた後、細胞数を定量した。解凍させた患者の末梢血液単核細胞を4個のFACSチューブに分けて入れた後、PBS 2mLを追加し、4℃、2,000rpmで3分間遠心分離した。上澄液を除去した後、死んだ細胞を区分するために、LIVE/DEADTMFixable Aqua Dead Cell Stain Kitを処理し、30分間光を遮断して4℃で培養した。各チューブにFACSバッファー2mLをさらに処理し、4℃、2,000rpmで3分間遠心分離した。上澄液を除去し、抗体を処理した後、30分間光を遮断して4℃で培養した。抗体は、Alexa700抗CD3(BD 557943)、PerCP-Cy5.5抗CD8(Biolegend 344710)、BB700抗CD8(BD 566452)、R700抗CD4(BD 564975)、BV421抗CD25(BD 562442)、BV786抗CD127(BD 563324)、FITC抗CD138(Biolegend 356508)、PE-Cy7抗PD-1(Biolegend 135216)、BV421抗TIGIT(BD 747844)、Alx647抗TIGIT(Biolegend 372724)、APC抗Tim-3(R&D FAB2356aA)、PE-Cy7抗LAG-3(Biolegend 369310)、APC抗CTLA-4(R&D FAB386A)を使用した。染色後チューブ当たりにFACSバッファー2mLを追加し、4℃、2,000rpmで3分間遠心分離した。上澄液除去後、FoxP3/transcription factor staining buffer setのプロトコルに従って細胞内染色を行った。抗体は、PE抗FoxP3(eBiosicence 12-4776-42)、APC抗CTLA-4(R&D FAB386A)を使用した。染色を終えた細胞をLSR Fortessaで分析した結果を図14に示した。
【0155】
図14で、多発性骨髄腫患者のCD8T細胞の枯渇指標5種のうち、TIGITの発現が他の4種に比べて顕著に高いことを確認した。多発性骨髄腫患者の調節性T細胞の場合、PD-1とTIGITの発現を比較したとき、TIGITの発現が著しく高かった。
【0156】
実施例14.TIGIT候補抗体(1G8)による多発性骨髄腫患者末梢血液単核細胞におけるIFN-γ発現増加確認
14.1 多発性骨髄腫患者の末梢血液単核細胞にTIGIT候補抗体(1G8)処理
冷凍保存された多発性骨髄腫患者由来末梢血液単核細胞を37℃水槽に速かに溶かした後、50mLコニカルチューブに移して振り動かしながら解凍培地を一滴ずつ点滴して混ぜた。その後、1200rpm、4℃で10分間遠心分離して上澄液を除去し、15mLの解凍培地に細胞を再浮遊させた後、細胞数を定量した。5×10cells/mLでcomplete RPMIに再浮遊した後、96ウェルU底プレートにウェル当たり1×10個の細胞とDynabeads Human T-Activator CD3/CD282μLを3倍数で分注した。各グループ別に当該抗体(TIGIT候補抗体(1G8)、PD-1抗体、hIgG4、TIGIT候補抗体(1G8)とPD-1抗体を併用処理)を1mg/mLで処理した。4日後、4℃、2,000rpmで3分間遠心分離した後、上清培養液を96ウェルU底プレートに100μLずつ収集し、-20℃に密封して保管した。
【0157】
14.2 IFN-γ分泌量変化確認
-20℃に保管した培養液をプレートのまま常温に放置して溶かす。IFN-γ分泌量を定量するために、BDTM Cytometric Bead Array(CBA)ヒトTh1/Th2/Th17サイトカインキット(BD,560484)のプロトコルに従った。キットから提供する凍結乾燥したサイトカイン標準株(standard stock)を15mLチューブに移した後、2mLの希釈用バッファーでピペッティングを十分にして溶解させた後、常温に最小で15分間放置する。その後、300μLの同一容量のバッファーで1:1に順次に希釈し、10個の標準(standard)を準備する。陰性基準の標準(standard)は希釈用バッファーとして準備する。培養液は、キットの希釈用バッファーを用いて1:20に希釈した。各サイトカインの捕捉用ビーズ(capture bead)を、サンプル数と標準(standard)数分だけ準備し、96ウェル1.1mLクラスターチューブバルク(Axygen,MTS-11-C)にサンプル50μLと混ぜた捕捉用ビーズ(capture bead)サンプル50μL、PE検出用抗体(detection antibody)50μLを入れてよく混ぜる。光を遮断して3時間培養した後、300μLの洗浄バッファーを加えて4℃、2,000rpmで3分間遠心分離した後、上澄液を除去する。過程の完了した各サンプルのIFN-γ分泌量をLSR Fortessaで分析し、図15に示した。
【0158】
図15で、多発性骨髄腫患者のPBMCに抗CD3/28刺激を与えた時のIFN-γ分泌量が、TIGIT候補抗体(1G8)を処理した場合に有意に増加することを確認した。
【0159】
実施例15.ヒト化マウスを用いたヒト大腸癌細胞異種移植モデルにおいてTIGIT候補抗体(1G8)の腫瘍成長抑制効果確認
TIGIT候補抗体(1G8)の腫瘍成長抑制効果をin vivoで確認するために、免疫細胞の不在しているNOG(NOD/Shi-scid/IL-2Rγnull,Jackson Laboratory,5~6週齢)マウスにヒト癌細胞株と正常人の末梢血液単核細胞を移植する異種移植動物モデルを使用した。ヒト癌細胞株には、ヒト大腸癌細胞株であるHT29(ATCC,HTB-38)を使用し、PE抗PVR抗体(Thermo Fisher Scientific,12-1550-41)を用いてPVR発現を確認した結果を図16に示した。HT29細胞に発現したPVRは、免疫細胞で発現したTIGITと結合して免疫細胞の活性抑制効果を誘発する。まず、HT29細胞3.5×10cells/0.2mLを、雌NOGマウスの右腋窩下側皮下に注射し、腫瘍が形成されるようにした(Day 0)。腫瘍細胞注射6時間後に、末梢血液単核細胞7×10cells/0.2mLを腹腔内注射し、ヒトの兔疫体系を備えたマウスモデルを作った。腫瘍体積が50~80mmに育った時、類似の腫瘍サイズを有するグループに分類し、TIGIT候補抗体(1G8)(10mg/kg)をマウスの腹腔に1週に2回、合計で6回投与した。TIGIT候補抗体(1G8)が10mg/kgの容量で投与された実験群の平均腫瘍体積は、陰性対照群の平均腫瘍体積と比較して、約28.1%程度の腫瘍成長抑制効果を示した(*:P<0.05)。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明に係る抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、TIGITに特異的であり、強く結合し、既存の抗TIGIT抗体に比べて優れた治療効能を示すことが明らかにされた。したがって、本発明に係る抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、免疫細胞活性化を用いる抗癌免疫治療剤として利用可能である。
【0161】
また、本発明の抗TIGIT抗体又はその抗原結合断片は、化学医薬品及びその他抗癌治療剤と併用治療療法などに活用可能である。
【0162】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は単に好ましい実施態様に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されない点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付する請求項とそれらの等価物によって定義されるといえよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
【配列表】
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