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特許7297110リチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】リチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/22 20060101AFI20230616BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
C08F214/22
H01M4/62 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021576888
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 CN2021101494
(87)【国際公開番号】W WO2022041977
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】202010869841.1
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010869825.2
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521562120
【氏名又は名称】浙江衢州巨塑化工有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG QUZHOU JUSU CHEMICAL INDUSTRY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】Building 2,Eastem Part of No.25 Block,Sino-Russian Sci-Tech Cooperation Park,Zhejiang Quzhou High-Tech Industrial Park,Quzhou,Zhejiang 324004,China
(73)【特許権者】
【識別番号】521562131
【氏名又は名称】浙江巨化技術中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】Zhejiang Juhua Technology Center Co.,Ltd
【住所又は居所原語表記】Zhejiang Juhua Technology Center Co.,Ltd,Kecheng District,Quzhou,Zhejiang 324004,China
(73)【特許権者】
【識別番号】521562153
【氏名又は名称】浙江巨化股▲フン▼有限公司電化厂
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG JUHUA CO.,LTD.ELECTROCHEMISTRY PLANT
【住所又は居所原語表記】No.186 Huayuan Street,Kecheng District,Quzhou City,Zhejiang Province 324004,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】呉 宇鵬
(72)【発明者】
【氏名】韓 金銘
(72)【発明者】
【氏名】馬 从礼
(72)【発明者】
【氏名】呉 志剛
(72)【発明者】
【氏名】蘇 ▲ラン▼輝
(72)【発明者】
【氏名】王 金明
(72)【発明者】
【氏名】王 正良
(72)【発明者】
【氏名】趙 ▲シン▼犇
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104497190(CN,A)
【文献】特表2001-515107(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110183562(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 214/22
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)反応原料の組成が、1kg当たり換算で、
脱イオン水300~600kg、pH緩衝調整剤0.04~0.25kg、フッ化ビニリデンモノマー85~99.5kg、コモノマー0.5~15kg、メタロセン共力剤0.3~3kg、開始剤0.2~1.0kg、分散剤0.08~0.35kgである反応原料を用意し、使用に備えるステップ、
(2)pH緩衝調整剤と0.3~5wt%の脱イオン水をpH緩衝調整剤水溶液として調製し、使用に備え、分散剤と10~40wt%の脱イオン水を分散剤水溶液として調製し、使用に備える、pH緩衝調整剤水溶液及び分散剤水溶液を調製するステップ、
(3)反応釜内に、残りの脱イオン水、ステップ(2)で得られたpH緩衝調整剤水溶液及び分散剤水溶液を加え、釜内の温度を8~12℃に下げ、真空引きし、反応釜内の酸素含有量が≦20ppmになるまで窒素ガスで置換するステップ、
(4)反応釜内に、開始剤、コモノマー、メタロセン共力剤及び10~30wt%のフッ化ビニリデンモノマーを加えるステップ、
(5)反応釜を40~65℃に昇温し、重合反応を開始し、反応中で、残りのフッ化ビニリデンモノマーを追加することにより重合圧力を5.5~8.0Mpaに制御し、追加終了後、釜の温度を維持して反応を継続し、釜の圧力が4.0MPaに降下する時に降温して反応を停止させ、未反応のモノマーを回収し、洗浄、濾過、乾燥して、共重合PVDF樹脂を得るステップを含み、
前記メタロセン共力剤は、1kg当たり換算で、
0.01~0.5kgの4’-フェニル-2,2’:6’,2’’-ターピリジン、0.1~1kgのイソオクチル酸コバルト、10~25kgのビニルピロリドン、0.3~2kgのビニルフェロセン、100~150kgのジメチルクロロヒドロシランを反応温度が25~40℃、反応時間が1~5hである条件でヒドロシリル化反応させることにより得られ、
前記コモノマーは、塩化ビニル、2-エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルのうちの1種又は複数種の混合物であり、
前記pH緩衝調整剤は、ピロリン酸二水素二ナトリウム、リン酸二ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸アンモニウムのうちの1種又は複数種の混合物である、
ことを特徴とするリチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記分散剤は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースエーテルのうちの1種又は複数種の混合物である、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂の製造方法
【請求項3】
前記開始剤は、ジエチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ドデカノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートのうちの1種又は複数種の混合物である、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPVDF樹脂に関し、具体的には、リチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池応用において、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂は主に陽極(正極)接着剤に使用され、具体的な応用処方において、PVDF及びNMPをスラリー化して、正極活性材料(LFP、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム)、導電剤(SUPER_P導電性カーボンブラック)を加え、次に集電体上にコーティングしてリチウム電池正極材料を製造する。
【0003】
現在、リチウム電池市場、特に動力電池では、主にグラフト改質されたPVDF樹脂、例えば、ソレフ5130、5140等のPVDF樹脂が使用されており、該重合体は通常、沸点が非常に高い(202℃)溶剤(N-メチルピロリドン、NMP)内に溶解される。該重合体は接着剤として非常に効果的で且つ電気化学的に不活性であるが、工業応用面において実質的な問題があり、例えば、生産コストが高く、電極の製造中に溶剤を蒸発させるために大量のエネルギーが必要である。また、電気化学の観点から見ると、液体電解質を有する電池に使用するとLiFが形成され、PVDFの化学分解が加速される。電極破壊速度を加速するもう1つの要因はPVDF柔軟性の不足であり、サイクルにより引き起こされた収縮及び膨張の影響により、電極に亀裂が形成される。通常、化学グラフト及び放射線グラフト等、PVDFの接着性能を改善するための主な方法は、NMP溶液の回転粘度が高く、PVDF樹脂スラリーの調製と分散の要求が高い等の技術課題を有する。
【0004】
例えば、公開番号CN104530276Aの中国特許出願には、リチウム電池接着剤専用のPVDF樹脂の製造方法が開示されている。すなわち、反応釜に水及び乳化剤を加え、昇温し、フッ化ビニリデンモノマーを加え、反応釜の圧力を2.0~4.2Mpaに上げ、開始剤及び分子量調整剤を加え、温度及び圧力を維持し、重合反応を開始し、15~40min反応させた後、開始剤を追加し、モノマー反応量が所定の重量に達する際に、反応を停止させ、未反応のフッ化ビニリデンモノマーを分離して回収し、残りの製品を濾過し、オーブン乾燥して、ポリフッ化ビニリデン樹脂を得る。該方法はリチウム電池専用のPVDFホモポリマーの製造方法を記載しており、該方法で製造された樹脂をリチウム電池接着剤に使用すると、PVDF樹脂の使用量が大きく、接着能力が悪い等の問題がある。
【0005】
また、例えば、公開番号CN106450327Aの中国特許出願には、照射によりリチウム電池ポリフッ化ビニリデンの接着性能を改善する方法が開示されている。該発明は、化学グラフト改質の方法で、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)接着剤を含むリチウム電池を製造し、電池全体を電子加速装置の下又はダイナミトロン型加速装置のビームダウン装置の上に置いてリチウムイオン電池全体を照射し、照射線量を20~200kGy、照射線量率を50~15000Gy/sに設定し、PVDFを部分的に架橋することにより、その接着性能を改変し、電池の厚み膨張率を低減させ、電池の容量保持率を向上させ、さらに電池の安定性を改善し、電池の使用寿命を延ばす。その欠陥はNMP溶液の回転粘度が高いことである。
【0006】
また、例えば、公開番号CN110797537Aの中国特許出願には、リチウム硫黄電池接着剤、その製造方法及び応用が開示されており、リチウム電池接着剤の技術分野に属する。該接着剤は、メチル化アミノ樹脂及び溶剤で構成され、前記メチル化アミノ樹脂の濃度が5~20wt%である。それは、メチル化アミノ樹脂を溶剤に分散して、30~80℃に加熱し、メチル化アミノ樹脂が完全に溶解した後、室温に冷却して得た。該発明の接着剤は優れた機械的特性を有し、電極の体積膨張の緩衝に対して有利である。接着剤には大量の窒素に富む官能基が含まれ、化学的結合によって多硫化物を捕集し、多硫化リチウムのシャトル効果を良好に阻害できるだけでなく、リチウムイオンの移動を促進することができる。その欠点は、樹脂スラリーの調製と分散の要求が高い等の技術課題があることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の欠点を解消するために、本発明の目的は、リチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂及びその製造方法を提供し、重合処方及び重合方法を最適化し、重合反応温度、重合処方、投入方式等の重合反応に影響を与える要因を最適化することにより、PVDF樹脂の正極活物質及び集電体への接着性能を改善すると共に、NMP溶液の回転粘度及びPVDF樹脂スラリーの調製と分散の要求を低くすることである。
【0008】
上記目的を実現するために、本発明が採用する技術案は
その組成は、
フッ化ビニリデンモノマー 85~99.5重量部
コモノマー 0.5~15重量部
pH緩衝調整剤 0.04~0.25重量部
メタロセン共力剤 0.3~3重量部
開始剤 0.2~1.0重量部
分散剤 0.08~0.35重量部である、リチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂。
【0009】
前記メタロセン共力剤の組成は、
4’-フェニル-2,2’:6’,2’’-ターピリジン 0.01-0.5重量部
イソオクチル酸コバルト 0.1~1重量部
ビニルピロリドン 10~25重量部
ビニルフェロセン 0.3~2重量部
ジメチルクロロヒドロシラン 100~150重量部である。
【0010】
本発明の好ましい実施形態として、前記分散剤は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースエーテルのうちの1種又は複数種の混合物である。
【0011】
本発明の好ましい実施形態として、前記pH緩衝調整剤は、ピロリン酸二水素二ナトリウム、リン酸二ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸アンモニウムのうちの1種又は複数種の混合物である。
【0012】
本発明の好ましい実施形態として、前記開始剤は、ジエチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ドデカノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートのうちの1種又は複数種の混合物である。
【0013】
本発明の好ましい実施形態として、前記コモノマーは、塩化ビニル、メタクリル酸メチル、2-エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルのうちの1種又は複数種の混合物である。
【0014】
上記目的を実現するために、本発明が採用する第2種の技術案は、
(1)反応原料の組成が、脱イオン水300~600重量部、pH緩衝調整剤0.04~0.25重量部、フッ化ビニリデンモノマー85~99.5重量部、コモノマー0.5~15重量部、メタロセン共力剤0.3~3重量部、開始剤0.2~1.0重量部、分散剤0.08~0.35重量部である反応原料を用意し、使用に備えるステップ、
(2)pH緩衝調整剤と0.3~5wt%の脱イオン水をpH緩衝調整剤水溶液として調製し、使用に備え、分散剤と10~40wt%の脱イオン水を分散剤水溶液として調製し、使用に備える、pH緩衝調整剤水溶液及び分散剤水溶液を調製するステップ、
(3)反応釜内に、残りの脱イオン水、ステップ(2)で得られたpH緩衝調整剤水溶液及び分散剤水溶液を加え、釜内の温度を8~12℃に下げ、真空引きし、反応釜内の酸素含有量が≦20ppmになるまで窒素ガスで置換するステップ、
(4)反応釜内に、開始剤、コモノマー、メタロセン共力剤及び10~30wt%のフッ化ビニリデンモノマーを加えるステップ、
(5)反応釜を40~65℃に昇温し、重合反応を開始し、反応中で、残りのフッ化ビニリデンモノマーを追加することにより重合圧力を5.5~8.0Mpaに制御し、追加終了後、釜の温度を維持して反応を継続し、釜の圧力が4.0MPaに降下する時に降温して反応を停止させ、未反応のモノマーを回収し、洗浄、濾過、乾燥して、共重合PVDF樹脂を得るステップを含む、リチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂の製造方法。
【0015】
本発明の好ましい実施形態として、前記メタロセン共力剤は、
0.01~0.5重量部の4’-フェニル-2,2’:6’,2’’-ターピリジン、0.1~1重量部のイソオクチル酸コバルト、10~25重量部のビニルピロリドン、0.3~2重量部のビニルフェロセン、100~150重量部のジメチルクロロヒドロシランを反応温度が25~40℃、反応時間が1~5hである条件でヒドロシリル化反応させることにより得られる。
【0016】
本発明は、重合処方を最適化すると同時に、重合反応の温度、圧力、重合処方、投入方式等の重合反応に影響を与える要因を最適化することにより、重合方法を最適化し、PVDF樹脂の正極活物質及び集電体への接着性能を改善すると共に、NMP溶液の回転粘度を低減させ、且つPVDF樹脂スラリーの調製と分散の要求を低くする。
【0017】
ターピリジン誘導体の量がコバルト塩よりも少ない場合、一定の助触媒作用を奏することができ、コバルト塩の触媒特性を向上させ、且つビニルピロリドンの存在は付加生成物の生成に有利であり、付加生成物の選択性を高め、それがフェロセンとホスト-ゲスト相互作用を形成することができ、また、その上の機能的活性基のピロリルがポリマー分子鎖と化学結合で結合し、架橋剤として機能し、三次元網状構造を形成し、PVDFの柔軟性を高めて、電極の破壊速度を加速する要因を克服し、サイクルにより引き起こされた収縮及び膨張の影響により電極に亀裂が形成される現象を回避し、PVDF樹脂の総合的な機械的力学的特性を向上させる。
【0018】
本発明のリチウム電池用の共重合PVDF樹脂は、特に、リチウム電池、特に動力電池の正極材料の接着剤に適用できる。
【0019】
本発明に記載の融点は、樹脂が固体から粘度の異なる液体に変換する時にピークが最大値に達する場合の対応する温度を指す。その測定方法は、示差走査熱量法(DSC)等の本分野の通常の方法で測定することができ、見掛け密度はカップ法で測定され、回転粘度が回転粘度計で測定される。
【0020】
従来技術に比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
1、本発明は、PVDF樹脂スラリーの調製と分散の要求を低くし、本発明のPVDF樹脂の融点が168℃より大きい。
2、本発明は、NMP溶液の回転粘度を低減させ、本発明のPVDF樹脂の固有粘度が≧2.35dl/g、見掛け密度が0.30~0.6g/mL、10%NMP溶液の回転粘度が5000~7000mPa・sである。
3、本発明は、PVDF樹脂の正極活物質及び集電体への接着性能を改善し、本発明で製造されたPVDF樹脂を使用して、リチウム電池、特に動力電池の正極材料の接着剤に調製すると、その剥離強度は27N/mより大きい。
4、本発明は、電池の正極接着剤としてのPVDFの機械的特性を向上させ、本発明のPVDF樹脂中のビニルピロリドンがフェロセンとホスト-ゲスト相互作用を形成することができ、その上の機能的活性基のピロリルがポリマー分子鎖と化学結合で結合し、架橋剤として機能し、三次元網状構造を形成し、PVDFの柔軟性を高めて、電極の破壊速度を加速する要因を克服し、充放電サイクルにより引き起こされた収縮及び膨張の影響により電極に亀裂が形成された現象を回避する。
5、本発明の樹脂は、リチウム電池の実際の応用において、リチウム電池の内部抵抗を低減させ、リチウム電池の内部抵抗を41mΩ以下にし、リチウム電池の容量保持率を向上させ、リチウム電池の容量保持率を85.1%以上にする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1のPVDFサンプルの赤外吸収スペクトルである。 1401cm-1はPVDF中のCF2に接続されたCH2の変形振動吸収ピークであり、1180cm-1はCF2の伸縮振動吸収ピーク、974cm-1、854cm-1、796cm-1、761cm-1での鋭い吸収は結晶相の振動吸収ピークであり、870cm-1はアモルファス相の特徴的な吸収ピークである。
図2】実施例1の樹脂サンプルの一回目の昇温の吸熱スペクトルである。
図3】実施例1の樹脂サンプルの一回目の昇温後の降温発熱曲線である。
図4】実施例1の樹脂サンプルの二回目の昇温の吸熱スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の目的、技術案及び利点をより明瞭にするために、以下、実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明し、以下の説明が本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【0023】
実施例1
リチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂の製造方法は、
(1)1kg当たり換算で、0.01kgの4’-フェニル-2,2’:6’,2’’-ターピリジン、0.1kgのイソオクチル酸コバルト、10kgのビニルピロリドン、0.3kgのビニルフェロセン、100kgのジメチルクロロヒドロシランを反応釜内に加え、反応温度が25℃、反応時間が3hである条件でヒドロシリル化させ、66.2kgのメタロセン共力剤を得、0.3kgを取って使用に備える、メタロセン共力剤を調製するステップ、
(2)1kg当たり換算で、反応原料の組成が、
脱イオン水 300kg
pH緩衝調整剤:ピロリン酸二水素二ナトリウム 0.04kg
フッ化ビニリデン(VDF)モノマー 85kg
コモノマー:
塩化ビニル 0.3kg
2-エチルヘキシルアクリレート 0.2kg
開始剤:ジエチルヘキシルパーオキシジカーボネート 0.2kg
分散剤:メチルセルロース 0.08kg
メタロセン共力剤 0.3kgである反応原料を用意するステップ、
(3)pH緩衝調整剤であるピロリン酸二水素二ナトリウム0.04kgと15kgの脱イオン水をpH緩衝調整剤水溶液として調製し、使用に備え、分散剤であるメチルセルロース0.08kgと30kgの脱イオン水を分散剤水溶液として調製し、使用に備える、pH緩衝調整剤水溶液及び分散剤水溶液を調製するステップ、
(4)反応釜内に、残りの脱イオン水、ステップ(3)で得られたpH緩衝調整剤水溶液及び分散剤水溶液を加え、釜内の温度を10℃に下げ、真空引きし、窒素ガスで置換して反応釜内の酸素含有量が≦20ppmであるように制御するステップ、
(5)反応釜内に、開始剤であるジエチルヘキシルパーオキシジカーボネート0.2kg、コモノマー(塩化ビニル0.3kg、2-エチルヘキシルアクリレート0.2kg)、メタロセン共力剤0.3kg及び8.5kgのVDFモノマーを加えるステップ、
(6)反応釜を50℃に昇温し、重合反応を開始し、反応中で、残りのVDFモノマーを追加することにより重合圧力を6.0Mpaに制御し、追加終了後、釜の温度を維持して反応を継続し、釜の圧力が4.0MPaに降下する時に降温して反応を停止させ、未反応のモノマーを回収し、洗浄、濾過、乾燥して、共重合PVDF樹脂を得るステップを含む。
【0024】
実施例2
リチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂の製造方法は、
(1)1kg当たり換算で、0.05kgの4’-フェニル-2,2’:6’,2’’-ターピリジン、0.2kgのイソオクチル酸コバルト、19kgのビニルピロリドン、0.7kgのビニルフェロセン、122kgのジメチルクロロヒドロシランを反応釜内に加え、反応温度が28℃、反応時間が2hである条件でヒドロシリル化反応させ、71.8kgのメタロセン共力剤を得、0.9kgを取って使用に備える、メタロセン共力剤を調製するステップ、
(2)1kg当たり換算で、反応原料の組成が、
脱イオン水 500kg
pH緩衝調整剤:リン酸二ナトリウム 0.11kg
フッ化ビニリデン(VDF)モノマー 88kg
コモノマー:
メタクリル酸メチル 3kg
メタクリル酸ブチル 2kg
メタクリル酸2-エチルヘキシル 2kg
開始剤:t-ブチルパーオキシネオデカノエート 0.6kg
分散剤:ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.13kg
メタロセン共力剤 0.9kgである反応原料を用意するステップ、
(3)pH緩衝調整剤であるリン酸二ナトリウム0.11kgと15kgの脱イオン水をpH緩衝調整剤水溶液として調製し、使用に備え、分散剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロース0.13kgと100kgの脱イオン水を分散剤水溶液として調製し、使用に備える、pH緩衝調整剤水溶液及び分散剤水溶液を調製するステップ、
(4)反応釜内に、残りの脱イオン水、ステップ(3)で得られたpH緩衝調整剤水溶液及び分散剤水溶液を加え、釜内の温度を8℃に下げ、真空引きし、窒素ガスで置換して反応釜内の酸素含有量が≦20ppmであるように制御するステップ、
(5)反応釜内に、開始剤であるt-ブチルパーオキシネオデカノエート0.6kg、コモノマー(メタクリル酸メチル3kg、メタクリル酸ブチル2kg、メタクリル酸2-エチルヘキシル2kg)、メタロセン共力剤0.9kg、VDFモノマー26.4kgを加えるステップ、
(6)反応釜を40℃に昇温し、重合反応を開始し、反応中で、残りのVDFモノマーを追加することにより重合圧力を5.5Mpaに制御し、追加終了後、釜の温度を維持して反応を継続し、釜の圧力が4.0MPaに降下する時に降温して反応を停止させ、未反応のモノマーを回収し、洗浄、濾過、乾燥して、共重合PVDF樹脂を得るステップを含む。
【0025】
実施例3
リチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂の製造方法は、
(1)1kg当たり換算で、0.5kgの4’-フェニル-2,2’:6’,2’’-ターピリジン、1kgのイソオクチル酸コバルト、25kgのビニルピロリドン、2kgのビニルフェロセン、150kgのジメチルクロロヒドロシランを反応釜内に加え、温度が40℃、反応時間が5hである条件でヒドロシリル化反応させ、95kgのメタロセン共力剤を得、3kgを取って使用に備える、メタロセン共力剤を調製するステップ、
(2)1kg当たり換算で、反応原料の組成が、
脱イオン水 600kg
pH緩衝調整剤:ピロリン酸ナトリウム 0.25kg
フッ化ビニリデン(VDF)モノマー 99.5kg
コモノマー:
アクリル酸 5kg
メタクリル酸 10kg
開始剤:
ジイソプロピルパーオキシジカーボネート 0.5kg
ドデカノイルペルオキシド 0.5kg
分散剤:カルボキシメチルセルロース 0.35kg
メタロセン共力剤 3kgである反応原料を用意するステップ、
(3)pH緩衝調整剤であるピロリン酸ナトリウム0.25kgと6kgの脱イオン水をpH緩衝調整剤水溶液として調製し、使用に備え、分散剤であるカルボキシメチルセルロース0.35kgと180kgの脱イオン水を分散剤水溶液として調製し、使用に備える、pH緩衝調整剤水溶液及び分散剤水溶液を調製するステップ、
(4)反応釜内に、残りの脱イオン水、ステップ(3)で得られたpH緩衝調整剤水溶液及び分散剤水溶液を加え、釜内の温度を12℃に下げ、真空引きし、窒素ガスで置換して反応釜内の酸素含有量が≦20ppmであるように制御するステップ、
(5)反応釜内に、開始剤であるジイソプロピルパーオキシジカーボネート0.5kg、ドデカノイルペルオキシド0.5kg、コモノマーであるアクリル酸5kg、メタクリル酸10kg、メタロセン共力剤3kg、19.9kgのVDFモノマーを加えるステップ、
(6)反応釜を60℃に昇温し、重合反応を開始し、反応中で、残りのVDFモノマーを追加することにより重合圧力を7.0Mpaに制御し、追加終了後、釜の温度を維持して反応を継続し、釜の圧力が4.0MPaに降下する時に降温して反応を停止させ、未反応のモノマーを回収し、洗浄、濾過、乾燥して、共重合PVDF樹脂を得るステップを含む。
【0026】
実施例4
リチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂の製造方法は、
(1)1kg当たり換算で、0.1kgの4’-フェニル-2,2’:6’,2’’-ターピリジン、0.5kgのイソオクチル酸コバルト、20kgのビニルピロリドン、1kgのビニルフェロセン、110kgのジメチルクロロヒドロシランを反応釜内に加え、反応温度が35℃、反応時間が1hである条件でヒドロシリル化反応させ、73.7kgのメタロセン共力剤を得、2kgを取って使用に備える、メタロセン共力剤を調製するステップ、
(2)1kg当たり換算で、反応原料の組成が、
脱イオン水 300kg
pH緩衝調整剤:
炭酸水素ナトリウム 0.05kg
酢酸アンモニウム 0.2kg
フッ化ビニリデン(VDF)モノマー 85kg
コモノマー:アクリロニトリル 8kg
開始剤:
ジベンゾイルペルオキシド 0.1kg
t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート 0.1kg
分散剤:メチルセルロースエーテル 0.35kg
メタロセン共力剤 2kgである反応原料を用意するステップ、
(3)pH緩衝調整剤(炭酸水素ナトリウム0.05kg、酢酸アンモニウム0.2kg)と1.5kgの脱イオン水をpH緩衝調整剤水溶液として調製し、使用に備え、分散剤であるメチルセルロースエーテル0.35kgと120kgの脱イオン水を分散剤水溶液として調製し、使用に備える、pH緩衝調整剤水溶液及び分散剤水溶液を調製するステップ、
(4)反応釜内に、残りの脱イオン水、ステップ(3)で得られたpH緩衝調整剤水溶液及び分散剤水溶液を加え、釜内の温度を9℃に下げ、真空引きし、窒素ガスで置換して反応釜内の酸素含有量が≦20ppmであるように制御するステップ、
(5)反応釜内に、開始剤であるジベンゾイルペルオキシド0.1kg、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート0.1kg、コモノマーであるアクリロニトリル8kg、メタロセン共力剤2kg及びVDFモノマー25.5kgを加えるステップ、
(6)反応釜を65℃に昇温し、重合反応を開始し、反応中で、残りのVDFモノマーを追加することにより重合圧力を8.0Mpaに制御し、追加終了後、釜の温度を維持して反応を継続し、釜の圧力が4.0MPaに降下する時に降温して反応を停止させ、未反応のモノマーを回収し、洗浄、濾過、乾燥して、共重合PVDF樹脂を得るステップを含む。
【0027】
比較例1
リチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂の製造方法は、
(1)1kg当たり換算で、反応原料の組成が、脱イオン水300kg、フッ化ビニリデン(VDF)モノマー100kg、開始剤:t-ブチルパーオキシネオデカノエート0.1kg、分散剤:メチルセルロース0.2kgである反応原料を用意するステップ、
(2)分散剤であるメチルセルロース0.2kgと30kgの脱イオン水を分散剤水溶液として調製する、分散剤水溶液を調製するステップ、
(3)反応釜内に、残りの脱イオン水、ステップ(2)で得られた分散剤水溶液を加え、釜内の温度を10℃に下げ、真空引きし、窒素ガスで置換して反応釜内の酸素含有量が≦20ppmであるように制御するステップ、
(4)反応釜内に、フッ化ビニリデン(VDF)モノマー100kg、開始剤であるt-ブチルパーオキシネオデカノエート0.1kgを加えるステップ、
(5)反応釜内の材料を50℃に昇温し、重合反応を開始し、圧力が大幅に降下するまで重合圧力を6MPaに制御し、釜の圧力が4.0MPaに降下する時に降温して反応を停止させ、未反応のモノマーを回収し、洗浄、濾過、乾燥して、単独重合PVDF樹脂を得るステップを含む。
【0028】
比較例2
リチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂の製造方法は、
(1)1kg当たり換算で、4’-フェニル-2,2’:6’,2’’-ターピリジン 0.05kg、イソオクチル酸コバルト0.2kg、ビニルピロリドン19kg、ジメチルクロロヒドロシラン122kgを反応釜内に加え、反応温度が25℃、反応時間が3hである条件でヒドロシリル化させ、70.1kgのメタロセン共力剤を得、0.3kgを取って使用に備える、メタロセン共力剤を調製するステップ、
(2)1kg当たり換算で、反応原料の組成が、脱イオン水300kg、フッ化ビニリデン(VDF)モノマー100kg、開始剤であるt-ブチルパーオキシネオデカノエート0.1kg、分散剤であるメチルセルロース0.2kg、メタロセン共力剤0.3kgである、反応原料を用意するステップ、
(3)分散剤であるメチルセルロース0.2kgと30kgの脱イオン水を分散剤水溶液として調製する、分散剤水溶液を調製するステップ、
(4)反応釜内に、残りの脱イオン水とステップ(3)で得られた分散剤水溶液を加え、釜内の温度を10℃に下げ、真空引きし、窒素ガスで置換して反応釜内の酸素含有量が≦20ppmであるように制御するステップ、
(5)反応釜内に、フッ化ビニリデン(VDF)モノマー100kg、開始剤であるt-ブチルパーオキシネオデカノエート0.1kg、メタロセン共力剤0.3kgを加えるステップ、
(6)反応釜内の材料を50℃に昇温し、重合反応を開始し、圧力が大幅に降下するまで重合圧力を6MPaに制御し、釜の圧力が4.0MPaに降下する時に降温して反応を停止させ、未反応のモノマーを回収し、洗浄、濾過、乾燥して、単独重合PVDF樹脂を得るステップを含む。
【0029】
比較例3
リチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂の製造方法は、
(1)1kg当たり換算で、0.2kgのイソオクチル酸コバルト、19kgのビニルピロリドン、0.7kgのビニルフェロセン、122kgのジメチルクロロヒドロシランを反応釜内に加え、反応温度が25℃、反応時間が3hである条件でヒドロシリル化反応させ、75.2kgのメタロセン共力剤を得、0.3kgを取って使用に備える、メタロセン共力剤を調製するステップ、
(2)1kg当たり換算で、反応原料の組成が、脱イオン水300kg、フッ化ビニリデン(VDF)モノマー100kg、開始剤であるt-ブチルパーオキシネオデカノエート0.1kg、分散剤であるメチルセルロース0.2kg、メタロセン共力剤0.3kgである反応原料を用意するステップ、
(3)分散剤であるメチルセルロース0.2kgと30kgの脱イオン水を分散剤水溶液として調製する、分散剤水溶液を調製するステップ、
(4)反応釜内に、残りの脱イオン水とステップ(3)で得られた分散剤水溶液を加え、釜内の温度を10℃に下げ、真空引きし、窒素ガスで置換して反応釜内の酸素含有量が≦20ppmであるように制御するステップ、
(5)反応釜内に、フッ化ビニリデン(VDF)モノマー100kg、開始剤であるt-ブチルパーオキシネオデカノエート0.1kg、メタロセン共力剤0.3kgを加えるステップ、
(6)反応釜内の材料を50℃に昇温し、重合反応を開始し、圧力が大幅に降下するまで重合圧力を6MPaに制御し、釜の圧力が4.0MPaに降下する時に降温して反応を停止させ、未反応のモノマーを回収し、洗浄、濾過、乾燥して、単独重合PVDF樹脂を得るステップを含む。
【0030】
比較例4
リチウム電池接着剤用の共重合PVDF樹脂の製造方法は、
(1)1kg当たり換算で、0.05kgの4’-フェニル-2,2’:6’,2’’-ターピリジン、0.2kgのイソオクチル酸コバルト、0.7kgのビニルフェロセン、122kgのジメチルクロロヒドロシランを反応釜内に加え、温度が25℃、反応時間が3hである条件でヒドロシリル化反応させ、62.7kgのメタロセン共力剤を得、0.3kgを取って使用に備える、メタロセン共力剤を調製するステップ、
(2)1kg当たり換算で、反応原料の組成が、脱イオン水300kg、フッ化ビニリデン(VDF)モノマー100kg、開始剤であるt-ブチルパーオキシネオデカノエート0.1kg、分散剤であるメチルセルロース0.2kg、メタロセン共力剤0.3kgである反応原料を用意するステップ、
(3)分散剤であるメチルセルロース0.2kgと30kgの脱イオン水を分散剤水溶液として調製する、分散剤水溶液を調製するステップ、
(4)反応釜内に、残りの脱イオン水とステップ(3)で得られた分散剤水溶液を加え、釜内の温度を10℃に下げ、真空引きし、窒素ガスで置換して反応釜内の酸素含有量が≦20ppmであるように制御するステップ、
(5)反応釜内に、フッ化ビニリデン(VDF)モノマー100kg、開始剤であるt-ブチルパーオキシネオデカノエート0.1kg、メタロセン共力剤0.3kgを加えるステップ、
(6)反応釜内の材料を50℃に昇温し、重合反応を開始し、圧力が大幅に降下するまで重合圧力を6MPaに制御し、釜の圧力が4.0MPaに降下する時に降温して反応を停止させ、未反応のモノマーを回収し、洗浄、濾過、乾燥して、単独重合PVDF樹脂を得るステップを含む。
【0031】
特性テスト:
それぞれ実施例1~4で得られたPVDF樹脂サンプル、比較例1~4で得られたPVDF樹脂サンプル及び市販のPVDF製品JH-D2500ホモポリマー樹脂の特性をテストし、具体的な特性を表1に示す。
1.樹脂融点の測定
示差走査熱量計(DSC8000、米国製)、40℃/minの昇温速度で室温から220℃に上げ、3min恒温にし、次に10℃/minの速度で温度を40℃に下げ、さらに、10℃/minで220℃に昇温し、二回目で昇温して得られた溶融ピークのピーク値をサンプルの融点とする。
2.見掛け密度の測定
カップ法で測定して、樹脂の疎密と緻密の程度を特徴づける。
3.固有粘度の測定
毛細管流出法:定量PVDFをDMAc溶剤に溶解して希薄溶液を調製し、次に毛細管粘度計で測定し、溶液が重力作用により流出する時、ポアズイユ公式で粘度を計算することができる。
4.回転粘度の測定
樹脂をNMPに分散し、質量濃度8%の溶液を調製し、連続誘導粘度計で測定し、条件:25℃恒温、2号回転子、10rpm、測定時間が90秒間である。
5.剥離強度の測定
実施例1~4で得られたPVDF樹脂サンプル、比較例1~4で得られたPVDF樹脂サンプル及び市販のPVDF製品JH-D2500ホモポリマー樹脂をそれぞれDMAc溶剤に溶解し、質量分率8%の溶液を調製し、コーティング装置で上記溶液を清浄な銅板にコーティングし、60℃の環境で24h放置し、成膜の後、セロハンテープで正極板の表面に貼り付け、200*40mmのスプラインに切断して180°剥離強度テストを行った。
6.赤外吸収スペクトルの測定
打錠法:PVDF粉末材料と適量の臭化カリウム粉末をメノー乳鉢に入れ、注意深く研磨して両者を均一に分散させた後、打錠型に移し、型を油圧プレスに置き、錠状に型押し、次に錠剤を赤外分光計(Is50 FT-IR)のサンプルホルダーに置き、赤外吸収スペクトルの測定を行った。
7.リチウムイオン電池の特性テスト
(1)リチウムイオン電池の製造:
ステップ1、リチウムイオン電池の正極板の製造:
正極活物質LiCoO、PVDF接合剤及び導電性カーボンブラックを95:3:2の質量比でN-メチルピロリドン溶剤に混合し、均一に撹拌して、正極スラリーを得、得られた正極スラリーを0.2mmの正極集電体にコーティングし、乾燥して、コールドプレスし、圧密度1.6g/cmの極板を得、さらに切断して、タブを溶接し、正極板を得た。
ステップ2、リチウムイオン電池の負極板の製造:
炭素負極材料、PVDF接合剤及び導電剤を95:3:2の質量比でN-メチルピロリドン溶剤に混合し、均一に混合した後、負極スラリーを得、次に負極スラリーを銅箔などの負極集電体にコーティングし、乾燥した後負極膜を形成し、コールドプレス、スリット処理し、タブを溶接して、負極板を得た。
ステップ3、リチウムイオン電池の電解液の調製:
炭酸ビニル(EC):炭酸エチルメチル(EMC):炭酸ジメチル(DMC)=2:1:7の質量比で均一に混合し、16wt%の六フッ化リン酸リチウムを溶質として加え、電解液を調製した。
ステップ4、セパレータとして、ポリエチレン多孔質膜を使用し、多孔質膜の厚みが16μmであった。
ステップ5、リチウム電池の組み立て:
得られた正極板、負極板及びセパレータを順番に巻いて電池コアを形成し、アルミニウム膜で電池コアの頂部及び側部をシールし、注入口を残して電解液を注入し、次に化成、容量分析等の工程でリチウムイオン電池を製造した。
それぞれ実施例1~4で得られたPVDF樹脂製品、比較例1~4で得られたPVDF樹脂製品、市販のPVDF製品JH-D2500ホモポリマー樹脂をPVDF接合剤として電極板の製造に使用し、電池に組み立てて、その電気的特性をテストし、具体的に特性が表1に示された。
電池の内部抵抗値の検出:
交流電圧降下内部抵抗測定法で上記各電池の内部抵抗値をテストし、すなわち、リチウム電池に1kHz周波数、50mAの小電流を印加し、次にその電圧をサンプリングし、整流、フィルタリング等の一連の処理を行って、演算増幅回路によって該リチウム電池の内部抵抗値を計算した。
電池サイクルの使用寿命の検出:
検出条件が1C充放電であり、電気化学ワークステーションによって電池の300回サイクルした後の容量をテストし、容量保持率を計算した。
【表1】
本発明の樹脂サンプルをJH-D2500ホモポリマー樹脂に比べて、回転粘度の値がより小さく、固有粘度がより低いが、本発明の樹脂はより多くの極性基を含むため、その接着性能がより強い。樹脂の接着性能は剥離強度によって特徴づけられ、数値が27~33N/mである。リチウム電池の実際の応用において、本発明の樹脂で製造されたリチウムイオン電池は、その内部抵抗値がJH-D2500に近く、電池充放電サイクルテストにおいて、より高い容量保持率がある。
図1
図2
図3
図4