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  • 特許-前立腺癌を治療するための組成物 図1
  • 特許-前立腺癌を治療するための組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】前立腺癌を治療するための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/09 20060101AFI20230616BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20230616BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
A61K38/09 ZMD
A61K9/19
A61P13/08
A61P35/00 ZNA
A61K47/26
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022052785
(22)【出願日】2022-03-29
(62)【分割の表示】P 2018197142の分割
【原出願日】2010-04-30
(65)【公開番号】P2022088517
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】09251242.5
(32)【優先日】2009-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】61/187,819
(32)【優先日】2009-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500297535
【氏名又は名称】フェリング ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】オレセン,タイン,コールド
(72)【発明者】
【氏名】カントール,ペル
(72)【発明者】
【氏名】エリクセン,ラーシュ
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-511491(JP,A)
【文献】VIEW OF NCT00268892 ON 2009_03_14,CLINICAL TRIALS.GOV ARCHIVE,米国,2009年03月14日,http://clinicaltrials.gov/archive/NCT00268892/2009_03_14
【文献】VIEW OF NCT00468286 ON 2009_04_21,CLINICAL TRIALS.GOV ARCHIVE,2009年04月21日,http://clinicaltrials.gov/archive/NCT00468286/2009_04_21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61P 35/00
A61P 13/08
A61K 9/19
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤中に溶解したデガレリクスまたはその薬学的に許容される塩および添加剤の凍結乾燥物を含み、
デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩の量が200~300mgであり、デガレリクスの濃度が溶剤中デガレリクス20~80mg/mLであり、溶剤が水であり、および添加剤がマンニトールであり、
デガレリクスの開始用量200~300mg、溶剤中デガレリクス濃度20~80mg/mLで投与され、次いで開始用量の28日後に、デガレリクスの維持用量320~550mg、溶剤中デガレリクス濃度50~80mg/mLで投与され、次いで1回または複数回のさらなるデガレリクスの維持用量320~550mg、溶剤中デガレリクス濃度50~80mg/mLで、各回の維持用量が3か月の間隔を置いて投与されるレジメンにおいて、開始用量の投与に用いられる、
前立腺癌を治療するための医薬製剤。
【請求項2】
デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩の量が240mgである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩の濃度が、溶剤中デガレリクス40mg/mLである、請求項1又は2に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺癌を治療するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌は、工業化世界における男性の主要な死因および病因である。前立腺癌の大部
分はテストステロン依存性に増殖し、進行性前立腺癌の管理における現在の医療的アプロ
ーチは、アンドロゲン遮断を含む。その目的は、血清テストステロン(T)を去勢レベル
未満(T≦0.5ng/mL)まで低下させることである。これは、例えば両側精巣摘出
術により、またはゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)受容体アゴニストの投与によ
り達成することができる。
【0003】
ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)は、視床下部によって産生され、下垂体にお
いて受容体と相互作用して黄体形成ホルモン(LH)の産生を刺激する天然ホルモンであ
る。LHの産生を低下させるために、ロイプロリド(Lupron)およびゴセレリンな
どのGnRH受容体(GnRH-R)のアゴニストが開発されてきた。このようなGnR
H-Rアゴニストは、最初はLHの放出を刺激するように作用し、長期間の治療後に初め
て、LHがそれ以上産生されなくなるようGnRH-Rを脱感作するように作用し、最終
的に精巣によるテストステロン産生の抑制をもたらす。しかし、そのアゴニストによるL
H産生の初期刺激は、男性ホルモン産生の初期急増につながる。「テストステロン急増」
または「フレア反応」として知られるこの現象は、2~4週間もの間にわたって持続し、
前立腺癌を刺激する可能性がある。これは、現在の症状の悪化または脊髄圧迫、骨痛およ
び尿道閉塞などの新たな症状の出現につながり得る。この問題を回避するために取られて
きた1つのアプローチは、総アンドロゲン除去療法(AAT)として知られる、GnRH
-Rアゴニストの投与と、フルタミドまたはビカルタミドなどの抗アンドロゲン薬との併
用であった。しかし、抗アンドロゲン薬の使用は、肝臓および胃腸における重大な副作用
を伴う。
【0004】
ゴナドトロピン放出ホルモン受容体(GnRH-R)のアンタゴニストは、GnRHア
ゴニストに伴う「テストステロン急増」または「フレア反応」を克服するために開発され
てきた。GnRHアンタゴニストは、GnRH受容体に競合的に結合してこれを遮断し、
LHおよび卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌の急速な低下を引き起こすことによって、
初期刺激/急増を伴わずにテストステロン産生を低下させる。しかし、GnRHアンタゴ
ニストペプチドは、ヒスタミン放出活性の発生を伴うことが多い。
【0005】
前立腺癌を治療するためのアンドロゲン遮断療法における、GnRHアゴニストおよび
アンタゴニストの両方の使用では、有望な結果が得られたが、その一方で入手可能な薬剤
の相対的安全性に関する懸念がある。例えば、GnRHアンタゴニストであるAbare
lix(商標)は、低血圧および失神を伴うアナフィラキシーを含めた重大なアレルギー
反応のリスクをもたらすことが見出され、さらに治療経過中において効力が失われる場合
があることも見出された。実際のところ、Abarelix(商標)(米国においてはP
lenaxis(商標))は最終的に承認されたが、それは進行性前立腺癌を伴う選ばれ
た患者についてのみに過ぎず、これらの問題と明らかに関係のある商業上の理由によって
、2005年に結局、市場から撤退した。特に、特定のアンドロゲン遮断療法が心血管の
健康に有害な影響を及ぼし得ることが示唆されている(Yannucciら(2006年
)J.Urology 176巻:520~525頁、およびEtzioniら(199
9年)J.Natl.Canc.Inst.91巻:1033頁を参照されたい)。
【0006】
本出願人らは、前立腺癌を治療するための第三世代GnRHアンタゴニスト、すなわち
デガレリクスを開発した。デガレリクスは、GnRHの合成デカペプチドアンタゴニスト
である。多施設無作為化試験における長期的評価によって、デガレリクスは有効であり、
かつ全身性アレルギー反応の所見を伴うことなく、忍容性が良好であることが実証された
。(Koechlingら、「種々のGnRHアンタゴニストがヒト皮膚からのヒスタミ
ン放出に及ぼす影響(Effect of various GnRH antagon
ists on histamine release from human ski
n)」;Poster,8th Int.Symp.GnRH Analogues i
n Cancer & Human Rep.;European J.Pharm.、
2009年3月(投稿中)を参照されたい)。月1回投与製剤としての販売承認申請/新
薬申請が、2008年2月27日にFDAおよびEMEAに提出された。2008年12
月24日にFDAから、および2009年2月27日にEMEAから販売承認が得られた
【0007】
しかし、投与要件を最小化(故に、例えば患者の月1回の通院の必要性を減少)しつつ
、血清テストステロンを長期間(例えば1年間以上にわたって)0.5ng/mL未満に
維持する治療レジメンの必要性が存在する。
【0008】
本出願人らは、より長期間にわたって血清テストステロンを0.5ng/mL未満に維
持(すなわち、テストステロンブレイクスルーを予防)するためには、(デガレリクスの
)血漿中トラフ濃度中央値が9~10ng/mL超、好ましくは11または12または1
3ng/mL超に維持されるようにデガレリクスを投与することが必要なことを見出した
図1を参照されたい)。従来の製剤(例えば月1回投与の製剤)は、テストステロンブ
レイクスルーを3ヵ月間にわたって予防しない。しかし、単に用量を増加することは、副
作用のリスクからも、用量サイズが扱いにくくなり得ることからも容易ではない。
【0009】
デガレリクスは、皮下注射用の溶液として再溶解される(デガレリクス酢酸塩の)粉末
として処方される。粉末は、注射用水(「WFI」)で、あるいはデガレリクスの用量お
よび濃度によっては、等張性を維持するためにマンニトール液(例えば2.5%または5
%)で再溶解される。
【0010】
水性媒体中では5mg/mL以上の濃度で、デガレリクス酢酸塩は核形成依存性フィブ
リル化を示し、これが注射部位においてインビボのゲル様のデポーを形成する能力を該物
質に与えている。したがって、血漿などの体組織に接触すると、デガレリクスは自発的に
ゲルのデポーを形成する。次いでデガレリクスは、持続的な拡散によりデポーから放出さ
れる。デガレリクスのフィブリル化は、核形成依存的な機序に従っており、故にデポーの
性質は主にデガレリクス濃度に関連している。
【0011】
デガレリクスは2つの段階、すなわち最初の高い血漿中濃度レベルの原因である投与直
後における急速な放出と、維持期の血漿中濃度レベルを決定する緩徐な放出の段階におい
て、デポーから放出されることが提案された。デガレリクスの薬物動態(PK)モデリン
グにおいては、これら2つの異なる段階は、デポーからの放出を制御する2つの一次入力
の段階、すなわち、最初の急速な放出の原因であり、急速吸収半減期によって表現される
急速入力と、観察された長期的段階の原因であり、緩徐吸収半減期によって表現される緩
徐入力として説明されてきた。
【0012】
濃度-時間曲線下面積(AUC)は、注射液の用量および濃度の両方に関連する。用量
の増加とともにAUCは増加するが、注射液の濃度を増加すれば、AUCは減少する。し
たがって、10、20、30、40、および60mg/mLの用量濃度を使用した場合の
絶対バイオアベイラビリティは、それぞれ43.4%、40.0%、31.1%、27.
4%および21.3%と推定された。つまり、濃度を増加すると全体的なバイオアベイラ
ビリティが減少する。濃度を増加することに対する実用上の利点は、注射液の容量が減少
し、それに伴い患者のコンプライアンスの可能性が増加することなどであると認められる
【0013】
本出願人らは、例えば維持期に適用されるようなデガレリクスの高用量および高濃度で
の投与は、得られるデポーからの、デガレリクスのより緩徐な放出特性につながることを
(上で論じたデガレリクスのバイオアベイラビリティの全体的な減少とともに)予想外に
見出した。この驚くべき効果は、デガレリクスの規定された用量、規定された高濃度での
投与によって、所望の治療効果(すなわち、必要とされる血漿中濃度)を有するのに十分
なデガレリクスを放出するが、その血漿中濃度が治療的に有効なレベルに長期間(開始用
量が十分であるとして、例えば3ヵ月以上)維持されるように十分緩徐にそれを放出する
、デポーが得られることを意味する。デガレリクスの濃度を増加することは、持続的な放
出能力が実際に増大するという予想外の有益性とともに、これらのより高い用量において
も注射液のサイズが扱いやすいことを意味する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本出願人らは、本発明にしたがって投与した場合に、月1回の注射を必要とすることな
くデガレリクスの持続放出を得ることができる、デガレリクスを高用量および高濃度で投
与するための組成物を開発した。
【0015】
したがって本発明によれば、第1の観点では、デガレリクスまたはその薬学的に許容さ
れる塩(例えば酢酸塩)を含む前立腺癌を治療するための組成物であって、溶剤(例えば
水性の溶剤、例えば水)中に溶解したデガレリクスおよび添加剤の凍結乾燥物(例えば共
凍結乾燥物、例えば糖、例えばマンニトール)を含み、患者に対して、デガレリクスの開
始用量200~300mg、溶剤中デガレリクス濃度20~80mg/mLで投与され、
次いで開始用量の14~56日後に、デガレリクスの維持用量320~550mg、溶剤
中デガレリクス濃度50~80mg/mLで投与され、次いで(任意に)1回または複数
回のさらなるデガレリクスの維持用量320~550mg、溶剤中デガレリクス濃度50
~80mg/mLで、各回の維持用量が56日~112日の間隔を置いて投与される組成
物が提供される。
【0016】
一例では、該組成物は、患者に対して開始用量200~300mgで投与され、次いで
開始用量の1ヵ月後、例えば28日後に、維持用量320~550mgで投与され、次い
で1回または複数回のさらなる維持用量320~550mgで、維持用量が3ヵ月(例え
ば84日)の間隔にて投与される。デガレリクスの開始用量は、例えば240mg、例え
ば、溶剤中デガレリクス濃度40mg/mLであることができる。維持用量、または各回
の維持用量は、例えば360mgまたは480mg、例えば、溶剤中デガレリクス濃度6
0mg/mLであることができる。
【0017】
デガレリクス(またはその薬学的に許容される塩)は、例えば水性の溶剤、例えば水(
例えばWFI)、または水とマンニトールの溶液などの溶剤中の液剤として投与されるも
のである。開始用量および維持用量は、注射により投与されるものであってもよい。維持
用量は、好ましくは、各回が維持用量の(実質的に)半分を含む2回の注射として投与さ
れる。該組成物によって、例えば開始用量の28日後から、デガレリクスの治療的に有効
な血漿中トラフ濃度平均値(血漿中濃度9ng/mL以上、好ましくは10ng/mL以
上、例えば12ng/mL以上、当技術分野で知られる技術によって測定)を得ることが
でき、この治療的に有効な濃度を、例えば少なくとも365日間および/または治療継続
期間にわたって維持することができる。本明細書において、用語「治療継続期間」は、維
持用量が投与される限りの間を意味し、したがって「この治療的に有効な濃度を治療継続
期間にわたって維持する」とは、治療的に有効な濃度が、少なくとも最後の維持用量が投
与されるまで維持されることを意味する。該組成物は、開始用量の例えば3日後から、例
えば7日後から、例えば14日後から、例えば28日後から、患者の血清テストステロン
レベルを0.5ng/mL以下に低下させることができ、例えば少なくとも365日間お
よび/または治療継続期間にわたって、血清テストステロンレベルを0.5ng/mL以
下に維持することができる。
【0018】
実験により240mg(40mg/mL)が有効な開始用量であることが立証された。
1ヵ月間の投与計画試験においては、2種類の月1回維持用量、すなわち160mg(4
0mg/mL)および80mg(20mg/mL)が、28日目から364日目までのテ
ストステロン奏効率それぞれ100%および98%と有効であることが実証された。しか
し、240mg、160mgまたは80mgの用量では、テストステロンの抑制は注射後
3ヵ月にわたって持続しないであろう。したがって、開始用量240mg(40mg/m
L)では、追加的な用量が3ヵ月より前に(例えば28日目に)必要とされるであろう。
480mgの「真」の3ヵ月投与スケジュール[すなわち、開始用量480mgとともに
、3、6、9ヵ月目のさらなる用量]のシミュレーションでは、PKのトラフレベル(デ
ガレリクス濃度)はおよそ8ng/mLとなり、不十分であることを示唆している。0ヵ
月目の投与および1ヵ月目の追加的な投薬をもって、定常状態レベルにより速やかに到達
すると考えられ、これが(製剤形態、用量および濃度とともに)重要である。「真」の3
ヵ月デポーとするために、開始用量としてより高い用量を用いることは現実的ではない。
これは、血漿中デガレリクス濃度を増加させるための開始期/初回投与期の十分な放出と
、同時に3ヵ月にわたり十分に高い定常状態濃度を達成するための長期の十分な放出とが
併せて必要とされるためである。本出願人らは驚くべきことに、規定された組成物によっ
て、例えば開始用量の28日後から、デガレリクスの治療的に有効な血漿中濃度平均値(
血漿中トラフ濃度9ng/mL以上)を得ることができ、この治療的に有効な濃度を、月
1回の維持用量を必要とすることなく、例えば少なくとも365日間および/または治療
継続期間にわたって維持することができることを見出した。さらに驚くべきことに、本出
願人らによる規定された組成物(この方法において使用する場合)および治療は、(デガ
レリクスの用量240mg、濃度40mg/mLの投与と比較した)注射に関連する副作
用の有意な増加を伴わない。規定された維持用量(1回または複数回)におけるデガレリ
クスの高い用量(および濃度)を念頭に置けば、このことは特に意義深い。
【0019】
デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩の維持用量濃度は、溶剤中デガレリクス
50~80mg/mL、例えば50、51、52、53、54、55、56、57、58
、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、
72、73、74、75、76、77、78、79、80mg/mL、例えば55~65
mg/mLであることができる。本出願人らは、デガレリクスまたはその薬学的に許容さ
れる塩(例えば酢酸塩)の維持用量[例えば水などの溶剤中に、デガレリクスおよび添加
剤(例えば共凍結乾燥物、例えばマンニトール)を含む凍結乾燥物を溶解することにより
形成される]、例えば360mg、480mg、溶剤中デガレリクス濃度、例えば55~
65mg/mLの間、例えば60mg/mLの投与が特に有効となり得ることを見出した
。デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩の維持用量480mg、溶剤中デガレリ
クス濃度60mg/mLの84日の間隔(3ヵ月に1回)での投与(例えば開始用量の2
8日(1ヵ月)後に最初の維持用量を開始する)によって、テストステロンの有効な抑制
(すなわち0.5ng/mL未満へのテストステロンの速やかな低下、およびこのレベル
未満の維持、それに伴うテストステロンブレイクスルーの予防)を、1年に及ぶ期間ある
いはそれ以上にわたって、有害作用の有意な可能性なしに得ることができる。副作用がな
いことは、高用量および2回の注射であることを考慮すれば、特に注目すべきである。驚
くべきことに、それよりはるかに低い1ヵ月用量(これは1回の注射である)と比較して
、注射に関連する副作用の増加がない。
【0020】
本発明のさらに別の観点においては、溶剤(例えば水性の溶剤、例えば水)中に溶解し
たデガレリクスまたはその薬学的に許容される塩(例えばデガレリクス酢酸塩)および添
加剤(例えば共凍結乾燥物、例えばマンニトール)の凍結乾燥物を含み、デガレリクスの
濃度が、溶剤中デガレリクス40~80mg/mL、好ましくは50~80mg/mLで
ある医薬製剤(例えば注射用製剤)が提供される。デガレリクスまたはその薬学的に許容
される塩の濃度は、溶剤中デガレリクス50~80mg/mLの間、例えば50、51、
52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、6
5、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78
、79、80mg/mL、例えば55~65mg/mLであることができる。デガレリク
スの量は、320~550mgの間(例えば350~490mgの間、例えば440~5
20mgの間)であることができる。デガレリクスの量は、例えば240mg、360m
gまたは480mgであってもよい。該医薬製剤は、例えば注射によって、例えば単回の
注射として、好ましくは2回の注射などとして投与することができる。
【0021】
本発明のさらに別の観点においては、溶剤中デガレリクス濃度20~80mg/mLで
溶剤(例えば水性の溶剤、例えば水)中に溶解したデガレリクスまたはその薬学的に許容
される塩(例えばデガレリクス酢酸塩)および添加剤(例えば共凍結乾燥物、例えば糖、
例えばマンニトール)の凍結乾燥物を含む組成物を提供するための部品キットであって、
デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩および添加剤の凍結乾燥物の1つまたは複
数の容器(例えばバイアル)ならびに溶剤の1つまたは複数の容器(例えばバイアル、プ
レフィルドシリンジ)を、任意に投与(例えば注射)用手段(例えば注射器および/また
は安全針、カニューレなど)とともに含む部品キットが提供される。キットは、任意に、
溶剤の容器(複数可)(例えばプレフィルドシリンジ、バイアル)とデガレリクスの容器
(複数可)(例えばバイアル)の間を溶剤が移動する(移動を改善する)手段(例えばア
ダプタ手段、例えばアダプタ)を含んでいてもよい。キットはまた、任意に、再溶解をさ
らに改善または改良するデバイス(例えば旋回デバイス)も含んでいてもよい。キットは
、20~80mg/mLの間、例えば50~80mg/mLの間、例えば55~65mg
/mL、例えば56、57、58、59、60、61、62、63、64mg/mLのデ
ガレリクス濃度を有する溶液を提供することができる。デガレリクスの量は、デガレリク
ス220~550mgの間、例えば320~550mgの間(例えば350~490mg
の間、例えば440~520mgの間)であることができる。デガレリクスの量は、例え
ば240mg、360mgまたは480mgであってもよい。一例では、キットは、デガ
レリクス480mgを濃度60mg/mLで有する溶液を提供することができる。キット
は、例えばデガレリクス240mgの2つの容器(例えばバイアル)と、例えば液剤(例
えば10mLのWFI)の単一の容器(バイアル)とを含んでいてもよい。デガレリクス
の各々のバイアルを例えば4.2mLのWFIと混合すると、デガレリクス約240mg
、濃度60mg/mLの溶液4mLが得られ、2つのバイアルを合わせると、単回の注射
またはより好ましくは2回の注射用の維持用量8mLが構成されることを、当業者には容
易に理解されよう。さらなる例では、キットは、デガレリクス240mg(添加剤入りの
凍結乾燥物として)の2つの容器(例えばバイアル)および、例えば各々がWFI(4.
2mL)を含む、2つのプレフィルドシリンジを含んでいてもよい。4.2mLのWFI
を含むプレフィルドシリンジを、容器のうち1つのデガレリクス240mgと混合すると
、デガレリクス約240mg、濃度約60mg/mLの溶液(注射液)4mLが得られ、
このようなシリンジおよび容器2つずつを合わせると、[2回の注射としての]注射用の
維持用量(480mg)8mLが構成されることを、当業者には容易に理解されよう。
【0022】
本発明のさらに別の観点においては、前立腺癌を治療する方法であって、それを必要と
する患者に対して、溶剤中に溶解したデガレリクスおよび添加剤の凍結乾燥物を含む組成
物を、デガレリクスの開始用量200~300mg、溶剤中デガレリクス濃度20~80
mg/mLで投与し、次いで開始用量の14~56日後に、デガレリクスの維持用量32
0~550mg、溶剤中デガレリクス濃度50~80mg/mLで投与し、次いで(任意
に)1回または複数回のさらなるデガレリクスの維持用量320~550mg、溶剤中デ
ガレリクス濃度50~80mg/mLで、各回の維持用量を56日~112日の間隔を置
いて投与することを含む方法が提供される。
【0023】
デガレリクスは、開始用量200~300mgで投与し、次いで開始用量の28日(1
ヵ月)後に、維持用量320~550mgで投与し、次いで1回または複数回のさらなる
維持用量320~550mgで、維持用量(1回または複数回)を84日(3ヵ月)の間
隔を置いて投与することができる。
【0024】
デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩の維持用量(1回または複数回)濃度は
、50~80mg/mL、例えば55~65mg/mLであってもよい。
【0025】
本発明のさらに別の観点においては、デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩お
よび添加剤の凍結乾燥物を含み、デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩の凍結乾
燥物が200mg~300mgの範囲の量で存在する少なくとも1つの開始用量容器と、
デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩および添加剤の凍結乾燥物を含み、デガレ
リクスまたはその薬学的に許容される塩の凍結乾燥物が320mg~550mgの範囲の
量で存在する少なくとも1つの維持用量容器と、溶剤を含む少なくとも1つの容器とを含
むキットが提供される。一例では、キットは、デガレリクス480mgを濃度60mg/
mLで有する溶液を提供することができる。キットは、例えばデガレリクス240mgの
2つの容器(例えばバイアル)と、例えば液剤(例えば6mLまたは10mLのWFI)
の単一の容器(バイアル)とを含んでいてもよい。デガレリクスの各々のバイアルを例え
ば4.2mLのWFIと混合すると、デガレリクス約240mg、溶剤中の濃度60mg
/mLの溶液4mLが得られ、2つのバイアルを合わせると、単回の注射またはより好ま
しくは2回の注射用の維持用量8mLが構成されることを、当業者には容易に理解されよ
う。
【0026】
さらに別の例では、本開示によるキットは、デガレリクスまたはその薬学的に許容され
る塩および添加剤の凍結乾燥物を含み、デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩の
凍結乾燥物が320mg~550mgの範囲の量で存在する少なくとも1つの第1の容器
と、溶剤を含む少なくとも1つの第2の容器とを含む。
【0027】
本発明のさらに別の観点においては、それを必要とする患者において前立腺癌を治療す
るための開始用量濃度および維持用量濃度を調製する方法が提供される。この方法は、デ
ガレリクスまたはその薬学的に許容される塩および添加剤の凍結乾燥物を含む少なくとも
1つの開始用量容器と、溶剤を含む少なくとも1つの容器とを組み合わせ、デガレリクス
またはその薬学的に許容される塩および添加剤の凍結乾燥物が溶剤中に溶解して、20~
80mg/mLの溶剤中デガレリクス濃度範囲を達成し、開始用量濃度を形成するステッ
プと、開始用量の形成より14~56日の範囲の間隔を置いた後に、デガレリクスまたは
その薬学的に許容される塩および添加剤の凍結乾燥物を含む少なくとも1つの維持用量容
器と、溶剤を含む少なくとも1つの第2の容器とを組み合わせ、デガレリクスまたはその
薬学的に許容される塩および添加剤の凍結乾燥物が溶剤中に溶解して、50~80mg/
mLの溶剤中デガレリクス濃度範囲を達成し、維持用量濃度を形成するステップと、少な
くとも1つの維持用量容器と溶剤を含む少なくとも1つの容器とを組み合わせて、維持用
量濃度を形成する前記ステップを、少なくとも1回、前回の維持用量の組合せから56日
~112日の範囲の間隔を置いた後で繰り返すステップとを含む。
【0028】
本発明のさらに別の観点においては、前立腺癌を治療するための組成物を調製する方法
が提供される。この方法は、デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩および添加剤
の凍結乾燥物を含む少なくとも1つの第1の容器と、溶剤を含む少なくとも1つの第2の
容器とを組み合わせ、デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩および添加剤の凍結
乾燥物が溶剤中に溶解して、50~80mg/mLの溶剤中デガレリクス濃度範囲を達成
し、維持用量濃度を形成するステップを含む。
【0029】
維持用量濃度に関しては、該調製方法によって、50~80mg/mLの間、例えば5
5~65mg/mL、例えば56、57、58、59、60、61、62、63または6
4mg/mL、またはその間の任意の数値の溶剤中デガレリクス濃度を有する溶液を得る
ことができる。デガレリクスの用量は、320mg~550mg(例えば350mg~5
20mg、例えば440mg~490mg)の範囲であってもよい。デガレリクスの用量
は、例えば、240mg(開始用量)、360mg(維持用量)または480mg(維持
用量)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】治療成功率(テストステロンが0.5ng/mL以下の患者の割合)対血漿中デガレリクス濃度を表すグラフである。
図2】3ヵ月間の異なる投与計画後におけるデガレリクスの血漿中トラフ濃度レベル中央値およびテストステロンの反応を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
定義
本明細書において、用語「初期用量」、「開始用量」および「初回投与用量」は、互換
可能に使用される。用語「血漿中濃度」は、「血漿中トラフ濃度」を意味する。
【0032】
治療1ヵ月間は通常28日間と考えられ、また本明細書中に記載の臨床試験結果におい
て使用される場合、28日間と定義される。これによって、2ヵ月間は56日間を指し、
3ヵ月間は84日間を指し、4ヵ月間は112日間を指し、以下同様である。
【0033】
用語「前立腺癌」は、前立腺の細胞が変異し制御不能に増殖し始める、前立腺のあらゆ
る癌を指す。用語「前立腺癌」は、早期、限局性の前立腺癌および後期、局所進行性の前
立腺癌(癌細胞が前立腺から体の他の部分、特に骨とリンパ節へと広がる(転移する))
を含む。
【0034】
デガレリクスおよび関連の医薬製剤
デガレリクスは、5位および6位においてp-ウレイド-フェニルアラニンを組み込ん
でいるGnRHデカペプチド(pGlu-His-Trp-Ser-Tyr-Gly-L
eu-Arg-Pro-Gly-NH)の類似体である、強力なGnRHアンタゴニス
トである(Jiangら(2001年)J.Med.Chem.44巻:453~67頁
)。これは、アンドロゲン遮断が保証される前立腺癌患者(既に前立腺切除術または放射
線療法を受けた後に、PSAレベルが上昇している患者を含む)の治療に適用される。
【0035】
デガレリクスは、下垂体GnRH受容体に競合的および可逆的に結合し、それによって
ゴナドトロピン、およびその結果としてテストステロン(T)の放出を急速に低下させる
、選択的GnRH受容体アンタゴニスト(遮断薬)である。前立腺癌は、ホルモン感受性
前立腺癌の治療における大原則であるテストステロン遮断に対して感受性である。GnR
Hアゴニストとは異なり、GnRH受容体遮断薬は、治療開始後の黄体形成ホルモン(L
H)急増、それに続くテストステロン急増/腫瘍刺激、および潜在的な症候性フレアを誘
発しない。
【0036】
有効成分デガレリクスは合成直鎖デカペプチドアミドであり、7個の非天然アミノ酸を
含有し、そのうちの5個がD-アミノ酸である。この薬剤物質は酢酸塩であるが、物質の
活性部分は遊離塩基としてのデガレリクスである。デガレリクスの酢酸塩は、(凍結乾燥
後に得られる低密度の)白色からオフホワイトの非晶質粉末である。その化学名は、D-
アラニンアミド、N-アセチル-3-(2-ナフタレニル)-D-アラニル-4-クロロ
-D-フェニルアラニル-3-(3-ピリジニル)-D-アラニル-L-セリル-4-[
[[(4S)-ヘキサヒドロ-2,6-ジオキソ-4-ピリミジニル]カルボニル]アミ
ノ]-L-フェニルアラニル-4-[(アミノカルボニル)アミノ]-D-フェニルアラ
ニル-L-ロイシル-N6-(1-メチルエチル)-L-リシル-L-プロリルである。
これは、実験式C821031816Clおよび分子量1,632.3Daを有す
る。デガレリクスの化学構造は以前に示されており(欧州特許第1003774号、米国
特許第5,925,730号、米国特許第6,214,798号)、式:Ac-D-2N
al-D-4Cpa-D-3Pal-Ser-4Aph(Hor)-D-4Aph(Cb
m)-Leu-Lys(iPr)-Pro-D-Ala-NHによって表すことができ
る。
【0037】
デガレリクスは、以下にさらに詳しく記載するように、通常は腹部において、(静脈投
与ではなく)皮下投与するために処方することができる。皮下注射により投与される他の
薬剤と同様に、注射部位を定期的に変えて、治療を注射部位の不快感に適応させ得るよう
にしてもよい。一般に、注射は患者が圧力に曝されることのない領域、例えばウエストバ
ンドやベルトに近くなく、また肋骨に近くない領域に施されるべきである。
【0038】
皮下注射または筋肉内注射によるデガレリクスの投与は良好に作用するが、毎日注射す
ることは一般に患者に好まれないので、国際公開第03/006049号ならびに米国特
許出願公開第20050245455号および第20040038903号にさらに詳し
く記載されているように、デガレリクスのデポー剤を利用することができる。簡潔に言え
ば、デガレリクスの皮下投与は、このペプチドをゲル様のデポーから(典型的には)1~
3ヵ月間にわたって放出させるデポー技術を使用して実施することができる。デガレリク
ス(および関連するGnRHアンタゴニストペプチド)はGnRH受容体に対し高い親和
性を有し、他のGnRH類似体よりもはるかに水に溶けやすい。デガレリクスおよびこれ
らの関連するGnRHアンタゴニストは、皮下注射の後にゲルを形成することができ、こ
のゲルは、数週間どころか数カ月にもわたってこのペプチドを放出するデポーとして作用
することができる。
【0039】
したがって、デガレリクスは、注射(例えば上記のようにデポーを形成するための、例
えば皮下注射)用の溶液として(溶剤とともに)再溶解される粉末として提供し得る。粉
末は、デガレリクス(例えば酢酸塩として)およびマンニトールを含む凍結乾燥物として
提供し得る。適切な溶剤は、水(例えば注射用水、またはWFI)である。溶剤は、例え
ば6mLの溶剤を含む容器(例えばバイアル)中に提供し得る。例えば、デガレリクスは
、溶液各1mLが約40mgのデガレリクスを含むように3mLのWFIとともに再溶解
するため、120mgのデガレリクス(酢酸塩)を含むバイアル中に提供し得る。つまり
再溶解すると、約120mgのデガレリクスを含む注射用の溶液3mLが得られる。この
ような溶液の2回分の注射は、デガレリクス約240mg、濃度40mg/mLの開始用
量を提供する。別の例では、デガレリクスは、240mgのデガレリクス(酢酸塩)を含
むバイアル中に提供し得る。約4mLのWFIとともに再溶解した後、溶液各1mLは約
60mgのデガレリクスを含む。このような溶液の2回分の注射は、デガレリクス約48
0mg、濃度60mg/mLの維持用量を提供する。別の例では、デガレリクスは、18
0mgのデガレリクス(酢酸塩)を含むバイアル中に提供し得る。約3mLのWFIとと
もに再溶解した後、溶液各1mLは約60mgのデガレリクスを含む。このような溶液の
2回分の注射は、デガレリクス約360mg、濃度60mg/mLの維持用量を提供する
。注射の準備ができた再溶解済み溶液は、視覚的に透明な液体として知覚されるべきであ
る。
【0040】
デガレリクスの投与計画は、開始用量240mgとして、デガレリクス製剤約40mg
/mLの3mLを2回の注射として投与し、次いで維持用量480mgとして、デガレリ
クス製剤約60mg/mLの4mLを2回の注射として投与することができる。
【0041】
開始用量の投与後に、次いで維持用量が、14~56日の範囲の間隔、例えば14日、
28日、56日、またはその間の任意の間隔で、さらには例えば28日の間隔で投与され
る。維持用量は、デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩、添加剤、および溶剤を
含む。維持用量は、デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩320mg~550m
gの範囲、例えば320mgから、340mg、360mg、380mg、400mg、
420mg、440mg、460mg、480mg、500mg、520mg、540m
g、550mg、またはその間の任意の数値であり、さらには例えばデガレリクスまたは
その薬学的に許容される塩360mgまたは480mgである。デガレリクスまたはその
薬学的に許容される塩の維持用量濃度は、50mg/mL~80mg/mLの範囲、例え
ば50mg/mLから、55mg/mL、60mg/mL、65mg/mL、70mg/
mL、75mg/mL、80mg/mL、またはその間の任意の数値であり、さらには例
えばデガレリクスまたはその薬学的に許容される塩60mg/mLである。ある例では、
デガレリクスの投与計画は、開始用量の投与後に、デガレリクスまたはその薬学的に許容
される塩の維持用量360mgまたは480mgとして、溶剤中約60mg/mLの4m
Lを2回の注射として投与することができる。
【0042】
さらなる維持用量は、最初の維持用量の投与後に、56日~112日の間隔、例えば5
6日、84日、112日、またはその間の任意の間隔で、さらには例えば84日で投与す
ることができる。さらなる維持用量(1回または複数回)の投与は、必要に応じて継続し
てよい(例えば維持用量は、前回の維持用量の56~112日後に投与してもよい)。さ
らなる維持用量は、デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩、添加剤、および溶剤
を含む。さらなる維持用量は、デガレリクスまたはその薬学的に許容される塩320mg
~550mgの範囲、例えば320mgから、340mg、360mg、380mg、4
00mg、420mg、440mg、460mg、480mg、500mg、520mg
、540mg、550mg、またはその間の任意の数値であり、さらには例えばデガレリ
クスまたはその薬学的に許容される塩360mgまたは480mgである。デガレリクス
またはその薬学的に許容される塩のさらなる維持用量の濃度は、50mg/mL~80m
g/mLの範囲、例えば50mg/mLから、55mg/mL、60mg/mL、65m
g/mL、70mg/mL、75mg/mL、80mg/mL、またはその間の任意の数
値であり、さらには例えばデガレリクスまたはその薬学的に許容される塩60mg/mL
である。
【実施例
【0043】
投与および投薬量
実施例1-臨床試験
デガレリクス開発プログラムの進行中にわたって、母集団の薬物動態/薬力学(PK/
PD)モデリングおよびシミュレーションを用いて、PKデータおよびPDデータならび
にこれらと他のパラメータとの関連性についてより良い理解を得た。以前の試験で得られ
た結果により、デガレリクスの血漿中トラフ濃度中央値7.34ng/mLでは、96%
の患者が28日目に血清テストステロン(T)≦0.5ng/mLを達成し、血漿中濃度
中央値4.54ng/mLでは、この同じ患者群の83%が84日目にT≦0.5ng/
mLとなることが実証された。該母集団における変動のため、この血漿中濃度中央値は、
約95%の患者においてテストステロンの抑制を長期間維持するのに十分ではないと考え
られた。故に、1ヵ月間投与計画プログラムに関する第3相試験において、投与される用
量は9ng/mL以上のデガレリクスの血清中トラフレベル平均値を生じるはずであるこ
とが提案された。
【0044】
28日目より後の去勢された患者[(T)≦0.5ng/mL]の割合とデガレリクス
濃度との関係を、図1に示す。これは臨床試験における1473名の前立腺癌患者からの
データに基づいており、PKレベルを0~1、1~2、2~3ng/mL、以下同様の間
隔に分割し、PK間隔の中点に対して観察された割合を95%信頼区間(CI)の平滑線
で結んでプロットしたものである。これはデガレリクス濃度が9~10ng/mLの閾値
より上にある条件では、97%の患者が去勢されていることを示している。
【0045】
したがって、1ヵ月間投与計画臨床プログラムにおいて、開始用量240mg(40m
g/mL)により、最初の28日間で95%の患者においてテストステロンの去勢レベル
(T≦0.5ng/mL)への抑制が得られたことが示された。維持用量のデガレリクス
80mg(20mg/mL)は、1ヵ月間プログラムについては十分であった。80mg
(20mg/mL)の維持用量におけるトラフレベル平均値は、約12ng/mLであっ
た。
【0046】
したがって、1ヵ月間デガレリクス投与プログラムにおいて、240mg(40mg/
mL)は検証された最も有効な開始用量として立証された。その結果として、開始用量2
40mg(40mg/mL)は、3ヵ月間投与計画試験にも使用された。1ヵ月間投与計
画試験においては、2つの維持用量すなわち160mg(40mg/mL)および80m
g(20mg/mL)が、28日目から364日目までのテストステロン奏効率それぞれ
100%および98%と有効であることが実証された。しかし、1ヵ月間投与計画プログ
ラムにて検証された用量は、いずれもテストステロンの抑制を注射後3ヵ月にわたって持
続することができなかった。本出願人らは、開始用量240mg(40mg/mL)とと
もに、追加的な用量が28日目頃に必要とされることを見出した。
【0047】
3ヵ月間投与計画の第2相試験では、3つの異なる投与計画を検討した。開始用量24
0mg(40mg/mL)の後、さらなる用量240mgが28日目に投与され、次いで
3、6および9ヵ月目に、あるいは4、7および10ヵ月目に投与された。維持用量24
0mgは、この試験では最初は濃度40mg/mLまたは60mg/mLで、異なる濃度
の異なるPKプロファイルによって認められた結果に基づき評価された。患者は、以下の
3つの異なるデガレリクス3ヵ月間維持用量投与計画のうちの1つに、同時に無作為に割
り付けられた。
1、3、6、9ヵ月目に240mg(40mg/mL)
1、3、6、9ヵ月目に240mg(60mg/mL)
1、4、7、10ヵ月目に240mg(60mg/mL)
【0048】
3つの治療レジメンは、いずれもその信頼区間下限値が80%水準を下回らなかった。
それ故、少なくとも80%の患者において1年間にわたって去勢レベルのテストステロン
を達成し、維持することにおける効力を実証するという主要目的は達成されなかった。本
出願人らは、テストステロンが0.5ng/mL超となるまでの時間の最も重要な予測因
子が、治療期間経過中のデガレリクスの血漿中レベルであることを見出した。したがって
、デガレリクスの血漿中レベルが低い患者ほど、1年間の治療期間中においてテストステ
ロンレベルが0.5ng/mL超となる可能性が高かった。月1回のテストステロンデー
タの分析は、患者は投与後2回の来院時は抑制されたままであるが、3ヵ月目の次の投与
の直前にはテストステロンエスケープの傾向があることを示している。個々の患者データ
は、テストステロンブレイクスルーの起きた大部分の患者が、再投与の後は再び抑制され
ていることを示しており、このことは3つのすべての治療群に当てはまる。これは、大部
分の患者において最初に0.5ng/mL超のテストステロンレベルが生じた時点が、前
回の用量から3ヵ月後、デガレリクス血漿中トラフレベルの時点であるという観測と一致
する。この試験におけるデガレリクスのトラフレベル中央値は、約6.5~7.5ng/
mLの範囲であった。これは、約95%の患者においてテストステロンレベルを0.5n
g/mL以下に維持するのに必要と考えられる9~10ng/mLのデガレリクスレベル
をかなり下回り、より高いデガレリクスの維持用量が求められることを示した。
【0049】
故に、この試験ではデガレリクス開始用量240mg(40mg/mL)に次いで、よ
り高いデガレリクスの維持用量、すなわち、360mg(60mg/mL)または480
mg(60mg/mL)のいずれかを含み、後者は1、4、7および10ヵ月目に投与し
た。
【0050】
登録時における前立腺癌の段階および罹病期間
この試験は、133名の患者の登録(予定した登録者数は120名)をもって、最近完
了した。ベースラインの疾患特性についての変数を、3ヵ月間投与計画に関する第2相試
験について表1に要約した。治療が治癒目的である限局性癌を有する患者は、約10%で
あった。大部分の患者は7~10のGleasonスコアを有しており、また大部分の患
者はECOG活動性スケールにおける評価で正常の活動であった。前立腺癌(PCA)の
診断時からの平均罹病期間も示されている。
【0051】
【表1】
【0052】
この試験は一般臨床試験であり、患者は0ヵ月目に開始用量240mg(40mg/m
L)を投与され、次いで以下のデガレリクス維持用量の2つの治療レジメンの一方を受け
た。
1、4、7、10ヵ月目に360mg(60mg/mL)
1、4、7、10ヵ月目に480mg(60mg/mL)
【0053】
開始用量は、120mg(40mg/mL)の注射を2回として皮下投与された。28
日後に、維持用量360mg(濃度60mg/mL、2×3mLの注射として投与)また
は480mg(濃度60mg/mL、2×4mLの注射として投与)が、同様に2回の注
射(各回240mg)として投与された。その後、3ヵ月に1回の間隔で、再び2回の注
射という形式において維持用量が投与される。デポーを形成するためのデガレリクスの再
溶解およびそれに続く皮下注射の技術は、当業者に知られており、本明細書において以前
に論じられている。各回の来院時に、血清テストステロン、前立腺特異的アンドロゲンお
よびデガレリクスの血漿中濃度が、当技術分野で知られる技術によって測定された。
【0054】
28日目~364日目までのテストステロンの反応(T≦0.5ng/mL)維持の累
積確率を、表2に治療用量ごとに示す。360mg(60mg/mL)用量レジメン(8
9.0%)と比較して、高用量の480mg(60mg/mL)は、数字的により大きな
治療反応(93.3%の患者がテストステロンの去勢レベルを維持した)を示している。
統計的に有意な差ではないとしても、90%の制御閾値を超える真の抑制率を有すること
の信頼包含確率において、2つの治療群間の差は顕著である。すなわち、480mg治療
群は90%を超える真の抑制率の信頼度が79.9%であるのに対し、360mg治療群
については39.7%に過ぎない。
【0055】
【表2】
【0056】
表3は、試験来院時におけるテストステロンが抑制(T≦0.5ng/mL)された患
者の割合を示す。
【0057】
480mg(60mg/mL)のデガレリクス維持用量は、95%超の患者においてテ
ストステロンの持続的抑制を示した。360mg(60mg/mL)の維持用量では、少
なくとも90%の患者にテストステロンの持続的抑制があった。比較的低い値は、再投与
の直前、7ヵ月目(196日目、90.6%)および10ヵ月目(280日目、93.3
%)に現れた。全体では127名の患者中125名(98%)が、28日目に去勢レベル
未満のテストステロンレベル抑制を示した。
【0058】
図2は、3ヵ月間の異なる投与計画後におけるデガレリクスの血漿中トラフ濃度レベル
中央値およびテストステロンの反応を表すグラフである。
【0059】
【表3】
【0060】
表4は、試験来院時におけるPSAの変化率中央値を示す。1ヵ月後に、PSAにさら
なる低下があり、試験期間を通して中央値の低下は持続した(96~97%の中央値低下
)。
【0061】
【表4】
【0062】
有害事象
2008年9月2日のデータカットオフ日までに、前立腺癌患者133名は、第2相す
なわち上記実施例の3ヵ月間投与計画臨床プログラム(CS18)においてデガレリクス
に曝露された。
【0063】
CS18のいずれかの治療群において5%超の患者に報告された、治療中に出現した比
較的共通の有害事象は、以下のとおり要約される(%の値は、480mgおよび360m
g用量群の両方を合わせた全体の値である):ほてり(34%)、注射部位疼痛(17%
)、体重増加(11%)、高血圧(8%)、注射部位紅斑(7%)、精巣萎縮(6%)、
無力症(5%)、関節痛(5%)、疲労(5%)、女性化乳房(5%)、発熱(4%)、
体重減少(5%)、発熱(4%)。以前のGnRHアンタゴニストでは、即時型の全身性
過敏症反応が報告されていた。即時型アナフィラキシー反応は、本デガレリクス臨床プロ
グラムにおいては報告されなかった。
【0064】
本臨床プログラムでは肝毒性を引き起こす可能性について集中的に評価され、データカ
ットオフ日のものとして、そのデータはデガレリクス治療後の臨床的に有意な肝機能の低
下を何ら示していない。
【0065】
実施例1において、何らかの注射部位反応の発生率は26%であり、この何らかの注射
部位反応の発生率は2つの用量間で同程度であった。最も頻繁に報告された注射部位反応
は、注射部位疼痛(17%)であった。驚くべきことに、これらのデータは、デガレリク
スのはるかに低い用量(例えば240mg)を用いた1ヵ月間投与計画臨床プログラムの
結果と類似していた。大部分の注射部位反応は、重症度において軽度から中等度(各11
%)であったが、5%の患者が重度の注射部位反応を報告した。重度の注射部位反応を報
告した6名の患者は、重度の事象として注射部位疼痛を報告した。
【0066】
結論
したがって、本出願人らは、該薬力学的(PD)用量反応は、デガレリクス用量の増加
と(1年間の治療の最後または入手可能な最終測定時における)より高いデガレリクスの
トラフレベル中央値との薬物動態学的(PK)/薬力学的関連性と、論理的に整合するこ
とを見出した。240mg、360mgおよび480mgの維持用量に対して、それぞれ
、約7ng/mL、10ng/mLおよび13ng/mLのデガレリクスの血漿中トラフ
レベル中央値が認められている。加えて、360mgおよび480mg維持用量で治療を
受けた患者において、有害事象の発生率およびパターンに大きな差はなかった。これらの
テストステロン抑制およびPK結果に基づいて、本明細書に記載され、かつ以下に規定さ
れる開始用量および維持用量は、有効な3ヵ月間投与計画を代表する。
図1
図2
【配列表】
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