(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】積層フィルムおよび成形体、ならびにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/16 20060101AFI20230616BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20230616BHJP
C08J 7/046 20200101ALI20230616BHJP
【FI】
B32B27/16
B32B7/022
C08J7/046 Z CER
C08J7/046 CEZ
(21)【出願番号】P 2022524518
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2021019013
(87)【国際公開番号】W WO2021235493
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2020088300
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】滝川 慶
(72)【発明者】
【氏名】細川 武喜
(72)【発明者】
【氏名】高橋 純平
(72)【発明者】
【氏名】中出 剛司
(72)【発明者】
【氏名】小林 和人
【審査官】青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-184284(JP,A)
【文献】特開2011-228674(JP,A)
【文献】国際公開第2011/090172(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/040541(WO,A1)
【文献】特開2018-012279(JP,A)
【文献】特開2019-123211(JP,A)
【文献】特開2017-215435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 7/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持基材と、
前記透明支持基材の少なくとも一方の主面に配置されたコーティング層と、を備え、
前記コーティング層は、活性エネルギー線硬化性の樹脂組成物を含み、
前記コーティング層の厚さは、2μm超であり、
前記コーティング層の押し込み深度100nmにおけるナノインデンテーション法による押し込み硬さHB
100は、0.30GPa以上0.65GPa以下であり、
前記コーティング層の押し込み深度2000nmにおけるナノインデンテーション法による押し込み硬さHB
2000は、0.15GPa以上0.35GPa以下であり、
前記押し込み硬さHB
2000は、前記押し込み硬さHB
100より小さく、
前記樹脂組成物の重合率PBと、活性エネルギー線を1500mJ/cm
2照射した後の前記コーティング層における前記樹脂組成物の重合率PAとの差は、15%以上である、積層フィルム。
【請求項2】
活性エネルギー線を1500mJ/cm
2照射した後の前記コーティング層表面の鉛筆硬度は、H以上である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
160℃における伸張率は、5%以上である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記コーティング層の厚さは、3μm以上20μm以下である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記透明支持基材の厚さは、75μm以上500μm以下である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムおよび成形体、ならびにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイは、コンピュータ、テレビジョン、携帯電話、携帯情報端末機器(タブレットパソコン、モバイル機器および電子手帳など)、車載機器など、様々な電装部品に使用されている。
【0003】
ディスプレイの情報表示部分は、通常、保護材によって保護されている。保護材には、アンチグレア(anti-glare)性向上のために微細な凹凸が設けられる場合がある。特許文献1には、高さが100nm以上250nm以下の凸部を備えるフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、保護材には、質感等の表面性状が異なる複数の領域が継ぎ目なく形成されたデザイン(以下、シームレスデザインと称す。)、例えばディスプレイの情報表示部分とその周囲を囲むベゼル部分とが一体的に形成されたデザインが求められている。しかし、特許文献1に記載されているフィルムを用いて、シームレスデザインを実現することは困難である。本発明の課題は、シームレスデザインを実現するのに適した、賦形性および金型からの離型性に優れる積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
透明支持基材と、
前記透明支持基材の少なくとも一方の主面に配置されたコーティング層と、を備え、
前記コーティング層は、活性エネルギー線硬化性の樹脂組成物を含み、
前記コーティング層の厚さは、2μm超であり、
前記コーティング層の押し込み深度100nmにおけるナノインデンテーション法による押し込み硬さHB100は、0.30GPa以上0.65GPa以下であり、
前記コーティング層の押し込み深度2000nmにおけるナノインデンテーション法による押し込み硬さHB2000は、0.15GPa以上0.35GPa以下であり、
前記押し込み硬さHB2000は、前記押し込み硬さHB100より小さい、積層フィルム。
【0007】
[2]
前記樹脂組成物の重合率PBと、活性エネルギー線を1500mJ/cm2照射した後の前記コーティング層における前記樹脂組成物の重合率PAとの差は、15%以上である、上記[1]に記載の積層フィルム。
【0008】
[3]
活性エネルギー線を1500mJ/cm2照射した後の前記コーティング層表面の鉛筆硬度は、H以上である、上記[1]または[2]に記載の積層フィルム。
【0009】
[4]
160℃における伸張率は、5%以上である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0010】
[5]
前記コーティング層の厚さは、3μm以上20μm以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0011】
[6]
前記透明支持基材の厚さは、75μm以上500μm以下である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0012】
[7]
透明支持基材の少なくとも一方の主面に、活性エネルギー線硬化性の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
前記樹脂組成物に5mJ/cm2以上150mJ/cm2以下の活性エネルギー線を照射して、コーティング層を得る第1照射工程と、を備え、
前記コーティング層の厚さは、2μm超であり、
前記コーティング層の押し込み深度100nmにおけるナノインデンテーション法による押し込み硬さHB100は、0.30GPa以上0.65GPa以下であり、
前記コーティング層の押し込み深度2000nmにおけるナノインデンテーション法による押し込み硬さHB2000は、0.15GPa以上0.35GPa以下であり、
前記押し込み硬さHB2000は、前記押し込み硬さHB100より小さい、積層フィルムの製造方法。
【0013】
[8]
透明支持基材と、
前記透明支持基材の少なくとも一方の主面に配置された硬化樹脂層と、を備え、
前記硬化樹脂層の前記透明支持基材とは反対側の主面は、凹凸が形成された第1領域とそれ以外の第2領域とを備え、
前記第1領域と前記第2領域とは、一体的に形成されており、
前記硬化樹脂層表面の鉛筆硬度は、H以上である、成形体。
【0014】
[9]
前記硬化樹脂層は、前記透明支持基材の一方の主面に配置されており、
さらに、前記透明支持基材の他方の主面に配置された加飾層を備える、上記[8]に記載の成形体。
【0015】
[10]
前記硬化樹脂層は、前記透明支持基材の一方の主面に配置されており、
さらに、前記透明支持基材の他方の主面に配置された成形樹脂層を備える、上記[8]または[9]に記載の成形体。
【0016】
[11]
上記[1]~[6]のいずれかに記載の積層フィルムの前記コーティング層を、凹凸を有する金型に接触させて、前記コーティング層の一部に凹凸を形成する凹凸形成工程と、
前記凹凸形成工程の後、前記コーティング層に活性エネルギー線を照射して、硬化樹脂層を得る第2照射工程と、を備える、成形体の製造方法。
【0017】
[12]
前記第2照射工程では、硬化後の前記コーティング層表面の鉛筆硬度がH以上になるように、前記活性エネルギー線が照射される、上記[11]に記載の成形体の製造方法。
【0018】
[13]
前記積層フィルムにおいて、前記コーティング層は前記透明支持基材の一方の主面に配置されており、
前記透明支持基材の他方の主面に、加飾層が配置されている、上記[11]または[12]に記載の成形体の製造方法。
【0019】
[14]
前記積層フィルムにおいて、前記コーティング層は前記透明支持基材の一方の主面に配置されており、
前記凹凸形成工程では、前記金型に前記コーティング層を対向させるとともに、前記透明支持基材に向かって成形用樹脂を射出して、前記コーティング層に前記凹凸とともに成形樹脂層が形成される、上記[11]~[13]のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【0020】
[15]
前記金型は、前記積層フィルムに立体形状を付与し、
さらに、前記準備工程の後、前記凹凸形成工程の前に、前記積層フィルムを前記立体形状に沿った形状に成形するプレフォーム工程を備える、上記[14]に記載の成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、賦形性および金型からの離型性に優れる積層フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る積層フィルムの製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る積層フィルムの製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る成形体を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る成形体を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明のさらに他の実施形態に係る成形体を模式的に示す斜視図である。
【
図7】本発明のさらに他の実施形態に係る成形体を模式的に示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図10】本発明のさらに他の実施形態に係る成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
保護材の最外には、通常、硬化樹脂を含む層(以下、硬化樹脂層と称す場合がある。)が配置される。シームレスデザインを実現するためには、この硬化樹脂層に、例えば、ディスプレイの情報表示部分に対応する領域とベゼルに対応する領域とが、一体的に形成される必要がある。すなわち、硬化樹脂層の表面に、凹凸を備える領域と、これとは異なる質感(テクスチャー)、例えばつや感を有する領域とが形成されなければならない。しかし、硬い硬化樹脂層に凹凸を付与するのは困難である。そこで、樹脂を完全に硬化させる前に、凹凸を形成することが考えられる。
【0024】
凹凸を備える領域およびこれとは異なる質感を有する領域は、例えば、完全未硬化でも完全硬化でもない硬化樹脂層(コーティング層)に、凹凸部と平坦部とを有する金型を押し当てることにより形成される。コーティング層のタック性が大きいと、金型から剥離する際、特に平坦部に密着していたコーティング層の表面が荒れたり白化したりして、所望の質感が得られ難い。コーティング層のタック性は、表面近傍におけるコーティング層の硬度に影響される。
【0025】
一方、凹凸の形成し易さは、コーティング層の内部における硬度に影響される。例えば、コーティング層の内部における硬度が過度に低いと復元率が高くなり、凹凸が形成され難くなる。特に、付与される凸部の高さと同程度コーティング層の内部の位置における硬度が、凹凸の形成し易さに大きな影響を与える。
【0026】
本実施形態は、コーティング層の表面近傍および内部の硬度に着目し、これらが特定の範囲および関係を満たすコーティング層を備える積層フィルムを提供する。このようなコーティング層は、完全未硬化でも完全硬化でもない。そのため、コーティング層には、凹凸が転写され得る硬度と、金型から容易に剥離され得る低タック性とが兼備される。よって、コーティング層に異なる質感を有する複数の領域、例えば凹凸領域と平滑な領域とを同時に形成することができる。さらに、立体形状に成形される(例えば、プレフォームされる)コーティング層を未硬化あるいは半硬化状態にできるため、伸び易い。よって、積層フィルムを複雑な立体形状に成形することも可能である。加えて、凹凸、さらに必要に応じて立体形状を付与した後、コーティング層を完全に硬化させることにより、これらの形状は長期的に保持される。
【0027】
本実施形態に係る積層フィルムを用いることにより、シームレスデザインが実現される。すなわち、本実施形態に係る積層フィルムは、シームレスデザインを有する成形体の材料として適している。近年、例えば車載用途においては、ベゼル部分をインストルメントパネルおよび/またはセンタークラスターパネルを兼ねるまで拡大したようなシームレスデザインを有するパネルも提案されている。このようなパネルは、非常に大きく、また複雑な立体形状を有している。本実施形態に係る積層フィルムは、特に、上記のようなシームレスデザインを有する大型の成形体の材料として適している。
【0028】
積層フィルム
本実施形態に係る積層フィルムは、透明支持基材と、透明支持基材の少なくとも一方の主面に配置されたコーティング層と、を備える。コーティング層の厚さは、2μm超である。コーティング層は、活性エネルギー線硬化性の樹脂組成物を含む。
【0029】
(押し込み硬さ)
コーティング層の押し込み深度100nmにおけるナノインデンテーション法による押し込み硬さHB100は、0.30GPa以上0.65GPa以下である。コーティング層の押し込み深度2000nmにおけるナノインデンテーション法による押し込み硬さHB2000は、0.15GPa以上0.35GPa以下である。押し込み硬さHB2000は、押し込み硬さHB100より小さい。このようなコーティング層は、完全未硬化でも完全硬化でもない状態(以下、半硬化あるいは半硬化状態と称する。)であるといえる。
【0030】
押し込み硬さHB100は、コーティング層の表面近傍における硬度(以下、表面硬度と称する場合がある。)を示している。押し込み硬さHB2000は、コーティング層の内部における硬度(以下、内部硬度と称する場合がある。)を示している。コーティング層の内部とは、コーティング層の透明支持基材側の領域である。押し込み硬さが大きいほど、硬度が高い。コーティング層の硬度は、表面から透明支持基材に向かうほど小さくなっていてもよい。
【0031】
コーティング層に、300nm以上4000nm以下程度の比較的高い凸部が付与される場合、凹凸の形成し易さは、コーティング層の内部硬度が支配的である。内部硬度が低いと、コーティング層は押し込まれた金型の凹凸に沿って容易に変形することができる。ただし、コーティング層の硬度が過度に低いと、積層フィルムを金型から外した時に、コーティング層は元の形状に戻り易い。凸部が高い場合、この傾向は顕著である。
【0032】
本実施形態において、コーティング層は、凹凸が転写され、維持される程度の内部硬度を備える。一方、コーティング層の表面硬度は高く、低タック性を示すとともに変形し難い。つまり、金型から剥離される際の凹凸の変形は、コーティング層の表面硬度が高いことによって抑制される。そのため、本実施形態に係る積層フィルムに、所望の凹凸を容易に形成することができる。本実施形態では、コーティング層に上記のような比較的高い凸部が付与されることを想定し、コーティング層の深度2000nmにおける硬度に着目している。
【0033】
特許文献1のように高さが数百nm程度の小さな凸部が付与される場合、凹凸の形成し易さは、コーティング層の表面硬度が支配的である。この場合、表面近傍におけるコーティング層は、凹凸が転写され得る硬度を有している必要がある。そのため、特許文献1では、弾性成分と粘性成分との比に関連するパラメータαを、80以上94以下に規定している。この数値は、コーティング層に圧子を押し込んだ際の復元率が高いことを示している。復元率が高いということは、少なくとも表面近傍におけるコーティング層は硬度が低く、高い弾性を有していることを意味する。コーティング層の内部は、通常、表面より硬度が低い。つまり、コーティング層の内部はより高い弾性を有している。このように、表面および内部ともに弾性が高く、復元率の高いコーティング層に、300nm以上の高い凸部を精度よく形成することは困難である。
【0034】
押し込み硬さHB100が0.30GPa以上であると、コーティング層の表面は低タック性を示すとともに変形し難い。よって、コーティング層は金型から容易に剥離される。つまり、コーティング層の表面に転写された金型の模様を高精度で維持したまま、積層フィルムを剥離することができる。押し込み硬さHB100が0.65GPa以下であると、積層フィルムを伸張することが容易となる。よって、積層フィルムを、クラックの発生を抑制しながら、複雑な立体形状に成形することができる。
【0035】
押し込み硬さHB2000が0.15GPa以上0.35GPa以下であると、コーティング層は凹凸が容易に賦形される程度の硬度を有する。つまり、コーティング層は、優れた賦形性を有する。そのため、コーティング層に所望の模様を付与することができる。
【0036】
押し込み硬さHB2000が押し込み硬さHB100より小さいことにより、コーティング層の表面近傍および内部は、それぞれの機能を発揮することができる。すなわち、コーティング層は、優れた離型性と賦形性とを発揮する。
【0037】
コーティング層は、積層フィルムに微細な凹凸、さらに必要に応じて立体形状を付与した後、完全に硬化することができる。これにより、付与された凹凸および立体形状は長期的に保持される。すなわち、得られる成形体は、優れた形状保持性を有する。
【0038】
押し込み硬さHB100および押し込み硬さHB2000の測定対象は、上記の微細な凹凸が形成される直前の積層フィルムである。測定対象の積層フィルムにおけるコーティング層は、半硬化状態である。上記押し込み硬さに影響を与えない範囲で、上記押し込み硬さの測定後、凹凸形成前の積層フィルムには、加熱処理や加飾、プレフォームが行われてもよい。加熱処理や加飾、プレフォームが行われた後、押し込み硬さHB100および押し込み硬さHB2000が測定されてもよい。
【0039】
ナノインデンテーション法による押し込み硬さHは、ナノインデンテーション装置を用いて、例えば、連続剛性測定法(Continuous Stiffness Measurement)により求められる。連続剛性測定法では、サンプルに、準静的な試験荷重(直流(DC)荷重)に加えて微小荷重(交流(AC)荷重)が与えられる。これにより、サンプルにかかる力が微小に振動する。その結果として発生する変位の振動成分および変位と荷重との位相差から、深さに対するスティフネスを計算する。これにより、深さに対して、硬度の連続的なプロファイルが取得できる。このプロファイルにおける深さ100nmの硬度が押し込み硬さHB100あるいは後述するHA100であり、2000nmでの硬度が押し込み硬さHB2000あるいは後述するHA2000である。
【0040】
連続剛性測定法には、例えば、Advanced Dynamic E and H.NMTメソッドが使用できる。ナノインデンテーション装置としては、NANOMECHANICS,INC.製のiMicro Nanoindenterが使用できる。この場合、荷重およびスティフネスの計算にはiMicro専用ソフトを用いればよい。サンプルには、圧子により最大荷重50mNに到達するまで荷重がかけられる。圧子としては、例えばバーコビッチ(verkovich)型のダイアモンド圧子が用いられる。測定およびスティフネスの計算にあたって、コーティング層のポアソン比および荷重等は、適宜適切な値を設定すればよい。
【0041】
(伸張率)
160℃における積層フィルムの伸張率は、5.0%以上が好ましい。この場合、積層フィルムは180℃以下の成形温度において十分な伸張率を示す。よって、積層フィルムは立体形状に成形され易くなる。特に、後述するプレフォーム工程において、積層フィルムの損傷が抑制され易くなる。上記伸張率は、8.0%以上がより好ましく、10%以上が特に好ましい。上記伸張率は、500%以下であってよく、200%以下であってよい。本明細書における成形(forming)は、プレフォーム工程および凹凸形成工程による成型(molding)を含む概念である。
【0042】
伸張率は、JIS K 7127に準拠して測定される。具体的には、積層フィルムを長さ200mm×幅10mmに切り出した試験片、および、チャック間距離が150mmである引張り試験機を用いる。160℃雰囲気下、引張速度300mm/分の条件にて、試験片の長辺を2.5%伸張させる。その後、当該試験片を、倍率1000倍またはそれ以上の顕微鏡により観察して、長さ1mmを超える大きさのクラックの有無を確認する。クラックの発生が無ければ、新たな試験片を切り出し、次は長辺を5%伸張させる。そして、同様の手順にてクラック発生の観察を実施する。この手順を繰り返し、上記の大きさを有するクラックが初めて確認されたときの伸張率を、積層フィルムの伸張率とする。伸張率を、例えば、2.5%ずつ大きくして上記の手順を繰り返せばよい。
【0043】
以下、本実施形態に係る積層フィルムを構成する要素について、詳細に説明する。
[透明支持基材]
透明支持基材は、コーティング層を支持する基材である。透明支持基材は、透明である限り特に限定されない。透明であるとは、具体的には、全光線透過率が40%以上であることをいう。透明支持基材の全光線透過率は、90%以上が好ましい。全光線透過率は、JIS K 7361-1に準拠する方法により測定することができる。
【0044】
当分野において公知である透明支持基材が、特に制限されることなく用いられる。透明支持基材は、無色であってもよく、有色であってもよい。
【0045】
透明支持基材は、用途に応じて適宜選択される。透明支持基材としては、例えば、ポリカーボネート(PC)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系フィルム;ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系フィルム;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系フィルム;ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系フィルム;ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系フィルムが挙げられる。また、透明支持基材は、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリオキシメチレン、エポキシ樹脂等の樹脂を含むフィルムであってよく、これらポリマーの混合物を含むフィルムであってもよい。
【0046】
透明支持基材は、複数のフィルムの積層体であってもよい。透明支持基材は、例えば、アクリル系フィルムと、ポリカーボネート系フィルムとの積層体であってよい。
【0047】
透明支持基材は、光学的に異方性を有していてもよく、等方性を有していてもよい。光学的に異方性を有する透明支持基材の複屈折の大きさは、特に限定されない。異方性を有する透明支持基材の位相差は、波長の1/4(λ/4)であってよく、波長の1/2(λ/2)であってよい。
【0048】
透明支持基材の厚さは、積層フィルムおよび/または成形体の用途および製造方法などに応じて適宜設定される。透明支持基材の厚さは、強度およびハンドリング性の観点から、30μm以上が好ましく、75μm以上がより好ましく、200μm以上が特に好ましい。透明支持基材の厚さは、伸張性の観点から、500μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましい。一態様において、透明支持基材の厚さは、75μm以上500μm以下である。
【0049】
透明支持基材は、積層フィルムが立体形状に成形される際の温度において、伸張性を有することが望ましい。透明支持基材は、例えば、プレフォーム工程における成形温度において伸張性を有することが望ましい。プレフォーム工程における成形温度は、通常、180℃以下である。成形性の観点から、透明支持基材を構成する材料のガラス転移温度(Tg)は、成形温度以下、すなわち180℃以下が好ましい。
【0050】
[コーティング層]
コーティング層は、活性エネルギー線硬化性の樹脂組成物を含む。ただし、コーティング層は、完全には硬化しておらず、完全に未硬化でもない。コーティング層は、半硬化状態である。積層フィルムに凹凸などの各種形状が付与された後、コーティング層を完全に硬化することにより、当該形状は長期間にわたって保持される。
【0051】
半硬化の樹脂組成物(コーティング層)は、例えば、樹脂組成物に、5mJ/cm2以上150mJ/cm2以下の活性エネルギー線を照射することにより形成することができる。樹脂組成物を半硬化にするための活性エネルギー線の積算光量はこれに限定されず、樹脂組成物の組成等によって適宜設定される。本実施形態では、樹脂組成物の組成等を考慮し、さらに、コーティング層の押し込み硬さHB100および押し込み硬さHB2000が、上記の範囲および関係を満たすように、活性エネルギー線が照射される。
【0052】
1500mJ/cm2の活性エネルギー線を照射された樹脂組成物は、通常、完全に硬化しているといえる。後述の本実施形態に係る成形体における硬化樹脂層(例えば、ハードコート層および/または機能層)もまた、完全に硬化している。すなわち、1500mJ/cm2の活性エネルギー線を照射された樹脂組成物に係る物性は、成形体における硬化樹脂層に係る物性とみなすことができる。完全硬化状態の樹脂組成物(硬化樹脂層)の鉛筆硬度は、例えば、H以上である。
【0053】
樹脂組成物が活性エネルギー線に暴露されていない、あるいは、5mJ/cm2未満の活性エネルギー線に暴露された樹脂組成物は、完全に未硬化であるとみなすことができる。
【0054】
コーティング層は、1層であってもよく、2層以上を含んでいてもよい。各層を形成する樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性の樹脂を含む限り、それぞれ同じでも、異なっていてもよい。積層数に関わらず、押し込み深度100nmおよび2000nmにおける硬度が上記の範囲および関係を満たすことにより、賦形性および金型からの離型性に優れる積層フィルムが得られる。
【0055】
コーティング層は、少なくとも半硬化のハードコート層を含むことが好ましく、代表的には、半硬化のハードコート層と半硬化の機能層とを含む。ハードコート層は、主に、成形体に耐擦傷性や高い硬度を付与するために設けられる。機能層は光干渉層であってよい。光干渉層は、主に反射率を低減させるために、ハードコート層の外側に配置される。
【0056】
光干渉層は、1層であってよく、複数の層を備えていてよい。光干渉層は、例えば、高屈折率を有する層(以下、高屈折率層あるいはHR層と称する場合がある。)、中屈折率を有する層(以下、中屈折率層あるいはMR層と称する場合がある。)および低屈折率を有する層(以下、低屈折率層あるいはLR層と称する場合がある。)の少なくとも1つを備える。HR層の屈折率は、1.55以上2.00以下であってよい。MR層の屈折率は、1.45以上1.60以下であってよい。LR層の屈折率は、1.35以上1.50以下であってよい。
【0057】
機能層は、光干渉層以外の他の層であってよく、光干渉層とともに他の層を備えていてもよい。他の層としては、例えば、抗菌・抗ウィルス層、防汚層が挙げられる。抗菌・抗ウィルス層および防汚層は、例えば、ハードコート層(さらには、光干渉層)の外側に配置される。
【0058】
<重合率>
コーティング層における樹脂組成物、すなわち半硬化状態の樹脂組成物の重合率PBと、活性エネルギー線を1500mJ/cm2照射した後の樹脂組成物、すなわち完全硬化状態の樹脂組成物の重合率PAとの差(=|PB-PA|)は、例えば、15%以上である。|PB-PA|がこの範囲であると、形状保持性はより向上する。|PB-PA|は、18%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。|PB-PA|は、60%以下であってよく、50%以下が好ましい。|PB-PA|が15%以上60%以下である場合、コーティング層は、半硬化状態であるといえる。重合率により、コーティング層およびハードコート層の押し込み硬さHを制御することができる。
【0059】
重合率は、例えば、赤外分光法(IR:Infrared Spectroscopy)により得られる赤外吸収スペクトルに基づき、下記の手順によって得ることができる。
【0060】
まず、未硬化のコーティング層を、コーティング層の透明支持基材とは反対側の表面からフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)で分析する。横軸が波数(cm-1)を示し、縦軸が吸光度を示すスペクトルチャート上において、690cm-1から2015cm-1までの間のベースラインを決定する。このベースラインを用いて、(メタ)アクリロイル基の炭素-炭素間の二重結合(C=C)に由来する波数810cm-1付近および1440cm-1付近におけるピーク高さINC1およびINC2をそれぞれ算出する。同様に、上記ベースラインを用いて、エステル結合の炭素-酸素結合(C=O)に由来する波数1730cm-1付近におけるピーク高さINOを算出する。ピーク高さINC1およびINC2をそれぞれピーク高さINOで除した値を初期値r01およびr02とする。
【0061】
次に、半硬化状態のコーティング層を、上記と同様にして、FT-IRで分析し、(メタ)アクリロイル基のC=Cに由来する波数810cm-1付近および1440cm-1付近におけるピーク高さIBC1およびIBC2、エステル結合のC=Oに由来する波数1730cm-1付近におけるピーク高さIBOを算出する。ピーク高さIBC1およびIBC2をそれぞれピーク高さIBOで除した値をrB1およびrB2とする。
【0062】
初期値r01に対するrB1の割合(=rB1/r01)および初期値r02に対するrB2の割合(=rB2/r02)は、それぞれC=Cの減少率を表わしている。C=Cは、重合反応によって減少する。そのため、1からrB1/r01を引いた値、および、1からrB2/r02を引いた値は、重合率を示す指標となり得る。半硬化状態の樹脂組成物の重合率PB(%)は、(1-rB1/r01)×100、あるいは、(1-rB2/r02)×100により算出される。
【0063】
さらに、完全硬化状態のコーティング層を、上記と同様にして、FT-IRで分析し、(メタ)アクリロイル基のC=Cに由来する波数810cm-1付近および1440cm-1付近におけるピーク高さIAC1およびIAC2、エステル結合のC=Oに由来する波数1730cm-1付近におけるピーク高さIAOを算出する。ピーク高さIAC1およびIAC2をそれぞれピーク高さIAOで除した値をrA1およびrA2とする。硬化状態の樹脂組成物の重合率PA(%)は、(1-rA1/r01)×100、あるいは、(1-rB2/r02)×100により算出される。
【0064】
本実施形態において、重合率の差(=|PB-PA|)が15%以上であるとは、|(1-rA1/r01)×100-(1-rB1/r01)×100|、および、|(1-rA2/r02)×100-(1-rB2/r02)×100|の少なくとも一方が、15%以上であることを言う。
【0065】
〈押し込み硬さ〉
押し込み硬さHB100は、0.30GPa以上0.65GPa以下である。押し込み硬さHB100は、0.40GPa以上が好ましく、0.45GPa以上がより好ましい。押し込み硬さHB100は、0.60GPa以下が好ましく、0.55GPa以下がより好ましく、0.50GPa以下が特に好ましい。
【0066】
押し込み硬さHB100と、活性エネルギー線を1500mJ/cm2照射した後のコーティング層の押し込み深度100nmにおけるナノインデンテーション法による押し込み硬さHA100との差(=|HB100-HA100|)は、特に限定されない。形状保持性の観点から、|HB100-HA100|は、0.05GPa以上であってよい。|HB100-HA100|がこの範囲であると、形状保持性も向上し易い。|HB100-HA100|は、0.30GPa以下であってよい。本実施形態によれば、|HB100-HA100|は上記範囲を満たすことができる。
【0067】
押し込み硬さHB2000は、0.15GPa以上0.35GPa以下である。押し込み硬さHB2000は、0.20GPa以上が好ましい。押し込み硬さHB2000は、0.33GPa以下が好ましい。
【0068】
押し込み硬さHB2000と、活性エネルギー線を1500mJ/cm2照射した後のコーティング層の押し込み深度2000nmにおけるナノインデンテーション法による押し込み硬さHA2000との差(=|HB2000-HA2000|)は、特に限定されない。賦形性の観点から、|HB2000-HA2000|は、0.05GPa以上が好ましい。|HB2000-HA2000|がこの範囲であると、形状保持性も向上し易い。|HB2000-HA2000|は、0.30GPa以下であってよい。本実施形態によれば、|HB2000-HA2000|は上記範囲を満たすことができる。
【0069】
押し込み硬さHB100と押し込み硬さHB2000との差(=|HB100-HB2000|)は特に限定されない。賦形性および離型性の観点から、|HB100-HB2000|は、0.15GPa以上が好ましく、0.17GPa以上がより好ましい。|HB100-HB2000|は、0.30GPa以下が好ましく、0.25GPa以下がより好ましい。
【0070】
コーティング層は、積層フィルムが立体形状に成形される際の温度において、伸張性を有することが望ましい。コーティング層は、例えば、後述するプレフォーム工程における成形温度において伸張性を有することが望ましい。プレフォーム工程における成形温度は、通常、180℃以下である。成形性の観点から、コーティング層における樹脂組成物のTgは、成形温度以下、すなわち180℃以下が好ましい。
【0071】
コーティング層は、凹凸形成に使用される金型から剥離され易いことが求められる。凹凸形成に使用される金型の温度は、通常、50℃以上である。離型性の観点から、コーティング層における樹脂組成物のTgは、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。ガラス転移温度は、JIS K 7121に準拠した示差走査型熱量計(DSC)によって測定される。コーティング層における樹脂組成物のTgは、コーティング層の硬化の程度と関連する。Tgを制御することにより、コーティング層の賦形性および離型性を向上することができる。
【0072】
〈鉛筆硬度〉
耐擦傷性がさらに向上し易い点で、活性エネルギー線を1500mJ/cm2照射した後のコーティング層表面の鉛筆硬度は、H以上が好ましく、2H以上がより好ましい。鉛筆硬度は、JIS K 5600-5-4に準拠して測定される。
【0073】
<視感反射率>
未硬化の光干渉層を含む積層フィルムは、特に優れた反射防止性能を有する。例えば、積層フィルムの光干渉層側から測定した、380nm以上780nm以下の波長領域における正反射光を含む視感反射率は、0.1%以上4.0%以下である。積層フィルムを硬化して得られる成形体の、第1領域に加えて、第2領域もまた、優れた反射防止性を有する。よって、成形体には外光による映り込みが少なく、成形体は、良好な表示特性および良好な視認性を有している。成形体の第2領域における上記視感反射率は、同様に、0.1%以上4.0%以下であり得る。
【0074】
積層フィルムおよび成形体の上記視感反射率は、0.1%以上3.0%以下が好ましく、0.1%以上2.5%以下がより好ましい。
【0075】
上記視感反射率は、正反射光を含むすべての反射光を測定して得られる。つまり、上記視感反射率は、いわゆるSCI(Specular Component Include)方式により測定される。この方法は、被測定物の表面状態による影響を受け難いため、未硬化の層の視感反射率を測定することができる。
【0076】
積層フィルムの上記視感反射率は、具体的には、以下の方法により測定できる。
透明支持基材の、コーティング層とは反対側の面に、黒色塗料(例えば、品名:CZ-805 BLACK(日弘ビックス社製))を、バーコーターを用い、乾燥膜厚が3μm以上6μm以下となるように塗布する。その後、室温環境下で5時間放置して乾燥させることにより、評価サンプルMを作成する。
【0077】
得られた評価サンプルMのコーティング層側から、分光色彩計(例えば、日本電色工業社製のSD7000)を用いて、380nm以上780nm以下の波長領域におけるSCI方式による視感反射率を測定する。
【0078】
成形体の上記視感反射率は、以下のようにして測定できる。
上記で作成された評価サンプルMに、積算光量150mJ/cm2超(例えば、積算光量1500mJ/cm2)の活性エネルギー線を照射することにより、評価サンプルNを作成する。得られた評価サンプルNのコーティング層側から、上記と同様にして視感反射率を測定する。
【0079】
〈厚さ〉
コーティング層の厚さは、2μm超である限り、特に限定されない。比較的高い凸部の形成が容易である点で、コーティング層の厚さは、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。容易に硬化される点で、コーティング層の厚さは、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。コーティング層の厚さは、例えば、3μm以上20μm以下である。コーティング層が複数の層を含む場合、コーティング層の厚さは、これらの厚さの合計である。
【0080】
ハードコート層の厚さは、上記のコーティング層の厚さと同じ範囲を取り得る。機能層の1層当たりの厚さは、例えば、5nm以上300nm以下であり、10nm以上200nm以下である。
【0081】
コーティング層の厚さは、その断面から求められる。具体的には、積層フィルムから10mm×10mmの試験片を切り出す。ミクロト-ムを用いて、試験片から断面を観察するための切片を作成する。得られた切片をレーザ顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡にて観察し、任意の10点におけるコーティング層の厚さを測定する。これらの平均値をコーティング層の厚さとする。透明支持基材の厚さも同様にして求められる。ミクロトームとして、例えば、Leica Microsystems社製、RM2265が用いられる。レーザ顕微鏡として、例えば、KEYENCE社製、VK8700が用いられる。
【0082】
(樹脂組成物)
樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性のモノマー、オリゴマーおよびポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種を含む。活性エネルギー線は特に限定されず、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線であってよい。以下、活性エネルギー線硬化性のモノマー、オリゴマーおよびポリマーを、樹脂成分と総称する場合がある。樹脂組成物により、重合率、および、コーティング層および硬化樹脂層の押し込み硬さHを制御することができる。
【0083】
コーティング層が複数の層を備える場合、各層を形成する樹脂成分は、同じであってよく、異なっていてもよい。なかでも、各層は、同一あるいは同種の樹脂成分を含むことが好ましい。各層の密着性が向上し、層間の剥離が生じ難くなるためである。
【0084】
一態様において、樹脂組成物は、重合性ポリマーを含む。重合性ポリマーにより、コーティング層には硬化性とともに低タック性が付与され易くなる。
【0085】
別の態様において、樹脂組成物は、重合性および非重合性のポリマー(以上、ポリマーと総称する場合がある。)の少なくとも一方と、重合性のモノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方と、を含む。ポリマーにより、コーティング層には低タック性が付与され易くなる。また、賦形性が向上し易くなる。重合性のモノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方とともにポリマーを配合することにより、重合率の差(=|PB-PA|)が15.0%以上になるように調整し易くなる。その結果、形状保持性はさらに向上し易くなる。タック性の制御が容易となる点で、樹脂組成物は、重合性ポリマーおよび非重合性ポリマーの双方と、重合性のモノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方と、を含むことが好ましい。
【0086】
〈非重合性ポリマー〉
非重合性ポリマーは、重合性不飽和基を含有しないポリマーである。
非重合性ポリマーの重量平均分子量は、5,000以上である。タック性の観点から、非重合性ポリマーの重量平均分子量は、10,000以上が好ましい。非重合性ポリマーの重量平均分子量は、200,000以下であってよく、100,000以下が好ましく、80,000以下がより好ましい。
【0087】
非重合性ポリマーとしては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。透明性、タック性、物性、耐久性の観点から、アクリル樹脂が好ましい。
【0088】
〈重合性ポリマー〉
重合性ポリマーは、重合性不飽和基を含有するポリマーである。
重合性ポリマーの重量平均分子量は、5,000以上である。タック性の観点から、重合性ポリマーの重量平均分子量は、10,000以上が好ましい。非重合性ポリマーの重量平均分子量は、200,000以下であってよく、100,000以下が好ましく、80,000以下がより好ましい。
【0089】
重合性ポリマーは、炭素-炭素結合、エーテル結合、ウレア結合、エステル結合、ウレタン結合等を含むポリマー鎖を主鎖として含み、重合性不飽和基を側鎖あるいは末端基として含む。透明性の観点から、炭素-炭素結合を含むポリマー鎖が好ましい。賦形性の観点から、ウレタン結合を含むポリマー鎖が好ましい。
【0090】
重合性不飽和基は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、特に好ましくは5以上含まれる。重合性不飽和基は特に限定されない。なかでも、重合性不飽和基として、アクリロイル基およびメタクリロイル基が好ましい。
【0091】
好ましい重合性ポリマーとしては、具体的には、ウレタン(メタ)アクリレートポリマー、アクリル(メタ)アクリレートポリマーが挙げられる。
【0092】
ウレタン(メタ)アクリレートポリマーは、例えば、(1)分子内に末端イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、水酸基およびアクリロイル基(またはメタクリロイル基)を有する化合物を付加反応させる方法、または、(2)ポリイソシアネート化合物とポリオールとを反応させて得られるポリウレタンポリオールに、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマーを反応させる方法により調製することができる。
【0093】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートあるいはこれらジイソシアネート化合物のうち芳香族のイソシアネート類を水添して得られるジイソシアネート化合物(例えば、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチレントリフェニルトリイソシアネートなどのような2価あるいは3価のポリイソシアネート化合物、および、これらのジイソシアネートのビュレットタイプ付加物やイソシアヌレート環タイプ付加物が挙げられる。
【0094】
上記の方法(1)における水酸基およびアクリロイル基(またはメタクリロイル基)を有する化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、および、これらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン等を付加して得られるアルキレンオキサイド変性またはラクトン変性の化合物を挙げることができる。
【0095】
上記の方法(2)におけるポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリカプロラクトンジオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0096】
上記の方法(2)におけるイソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、イソシアネートエチルアクリレート、イソシアネートプロピルアクリレート、さらにヒドロキシエチルアクリレート等の活性水素含有重合性モノマーにヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物を付加してなる不飽和化合物が挙げられる。
【0097】
ウレタン(メタ)アクリレートポリマーは、ウレア結合を有するウレタンウレア(メタ)アクリレートポリマーであってもよい。ウレタンウレア(メタ)アクリレートポリマーは、例えば、上記の方法(2)におけるポリオールに加えてポリアミンを併用することによって調製することができる。
【0098】
アクリル(メタ)アクリレートポリマーは、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を含有するアクリルポリマーである。具体的には、グリシジルメタクリレートを共重合したアクリル樹脂に(メタ)アクリル酸を付加した化合物、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートを共重合したアクリル樹脂に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどを付加した化合物、水酸基含有モノマーを共重合したアクリル樹脂に2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加した樹脂が挙げられる。
【0099】
ポリマーは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0100】
ハードコート層を形成する樹脂組成物(以下、樹脂組成物HCと称す場合がある。)において、ポリマーの含有量は、樹脂組成物HCの固形分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が特に好ましい。樹脂組成物HCにおいて、ポリマーの含有量は、85質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、45質量部以下が特に好ましい。樹脂組成物HCにおけるポリマーの含有量は、例えば、5質量部超85質量部以下である。重合性ポリマーと非重合性ポリマーとの配合比は特に限定されない。
【0101】
光干渉層を形成する樹脂組成物(以下、樹脂組成物Rと称す場合がある。)において、ポリマーの含有量は、樹脂組成物Rの固形分100質量部に対して、5質量部超が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が特に好ましい。ポリマーの含有量は、樹脂組成物Rの固形分100質量部に対して、85質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、25質量部以下が特に好ましい。樹脂組成物Rにおけるポリマーの含有量は、例えば、5質量部超85質量部以下である。重合性ポリマーと非重合性ポリマーとの配合比は特に限定されない。
【0102】
〈重合性オリゴマー〉
重合性オリゴマーは、重合性不飽和基を含有するオリゴマーである。
重合性オリゴマーの重量平均分子量は、500以上5,000未満である。重合性オリゴマーの重量平均分子量は、2,000以上であってよい。
【0103】
重合性オリゴマーは、分子量以外、重合性ポリマーと同様の構成を有する。重合性オリゴマーは、炭素-炭素結合、エーテル結合、ウレア結合、エステル結合、ウレタン結合等を含むオリゴマー鎖を主鎖として含み、重合性不飽和基を側鎖あるいは末端基として含む。透明性の観点から、炭素-炭素結合を含むオリゴマー鎖が好ましい。賦形性の観点から、ウレタン結合を含むオリゴマー鎖が好ましい。
【0104】
重合性不飽和基は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、特に好ましくは5以上含まれる。重合性不飽和基は特に限定されない。なかでも、重合性不飽和基として、アクリロイル基およびメタクリロイル基が好ましい。
【0105】
好ましい重合性オリゴマーとしては、具体的には、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0106】
上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーおよびアクリル(メタ)アクリレートオリゴマーはそれぞれ、ウレタン(メタ)アクリレートポリマーおよびアクリル(メタ)アクリレートポリマーと同様にして調製される。
【0107】
重合性オリゴマーは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0108】
重合性オリゴマーまたは重合性ポリマーとして、市販品を用いてもよい。市販されているウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーまたはポリマーとしては、例えば、日本化薬株式会社製のDPHA-40H、UX-5000、UX-5102D20、UX-5103D、UX-5005、UX-3204、UX-4101、UXT-6100、UX-6101、UX-8101、UX-0937、UXF-4001-M35,UXF-4002;共栄社化学株式会社製のUF-8001G、UA-510H;ダイセル・オルネクス株式会社製のEBECRYL 244、EBECRYL 284、EBECRYL 8402、EBECRYL 8807、EBECRYL 264、EBECRYL 265、EBECRYL 9260、EBECRYL 8701、EBECRYL 8405、EBECRYL 1290、EBECRYL 5129、EBECRYL 220、KRM 8200、KRM 7804、KRM 8452;三菱ケミカル株式会社製のUV-1700B、UV-6300B、UV-7600B、UV-7640B、UV-7650B、UV-3520EA、UV-7000B、紫光UV-AF305A;アルケマ社製のCN-9001、CN-9004、CN-9005、CN-965、CN-9178、CN-9893、CN-9782、CN-964、CN-9013、CN-9010;新中村化学工業株式会社製のU-10PA、U-10HA、UA-33A、UA-53H、UA-32P、U-15HA、UA-122P、UA-160TM、UA-31F、UA-7100、UA-4200、UA-4400;根上工業株式会社製のアートレジンUN-3320HA、アートレジンUN-3320HB、アートレジンUN-3320HC、アートレジンUN-3320HS、アートレジンH-7M40、アートレジンUN-904、アートレジンUN-904M、アートレジンUN-901T、アートレジンUN-905、アートレジンUN-951、アートレジンUN-952、アートレジンUN-953、アートレジンUN-954、アートレジンUN-906、アートレジンUN-906S、アートレジンUN-907、アートレジンUN-908、アートレジンUN-333、アートレジンUN-5507、アートレジンUN-6300、アートレジンUN-6301、アートレジンUN-7600、アートレジンUN-7700、アートレジンUN-9000PEP、アートレジンUN-9200、アートレジンUN-904UREA、アートレジンUN-H7UREA、などを用いることができる。
【0109】
市販されているアクリル(メタ)アクリレートオリゴマーまたはポリマーとしては、例えば、DIC株式会社製、ユニディックV-6840、ユニディックV-6841、ユニディックV-6850、ユニディックEMS-635、ユニディックWHV-649;日立化成株式会社製、ヒタロイド7975、ヒタロイド7977、ヒタロイド7988、ヒタロイド7975D;根上工業株式会社製、アートキュアRA-3969MP、アートキュアRA-3960PG、アートキュアRA-3602MI、アートキュアOAP-5000、アートキュアOAP-2511、アートキュアAHC-9202MI80、アートキュアRA-3704MB、アートキュアRA-3953MP、アートキュアRA-4101、アートキュアMAP-4000、アートキュアMAP2801などを用いることができる。
【0110】
〈重合性モノマー〉
重合性モノマーは、重合性不飽和基を含有するモノマーである。
重合性モノマーの分子量は特に限定されない。重合性モノマーの重合性不飽和基当量は、50g/eq.以上であってよく、200g/eq.以下であってよい。
【0111】
重合性モノマーは、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、特に好ましくは5以上の重合性不飽和基を有する。重合性不飽和基としては、アクリロイル基およびメタクリロイル基が好ましく例示される。好ましい重合性モノマーは、多官能(メタ)アクリレートモノマーである。
【0112】
多官能(メタ)アクリレートモノマーは、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との脱水反応、あるいは、多価アルコールと(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応によって、調製することができる。
【0113】
重合性不飽和基当量が50g/eq.以上200g/eq.以下である多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(2)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(3)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(10)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(3)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンジ(メタ)アクリレートなどの2官能(メタ)アクリレートモノマー;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(8)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(1)トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(3)トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなどの3官能(メタ)アクリレートモノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化(8)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能(メタ)アクリレートモノマー;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能(メタ)アクリレートモノマー;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能(メタ)アクリレートモノマー;トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートなどの7官能以上の(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0114】
重合性モノマーは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0115】
樹脂組成物HCにおいて、重合性オリゴマーの含有量は、例えば、樹脂組成物HCの固形分100質量部に対して、5質量部以上95質量部以下である。重合性モノマーの含有量は、例えば、樹脂組成物HCの固形分100質量部に対して、5質量部以上95質量部以下である。重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーの合計の含有量は、樹脂組成物HCの固形分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーの合計の含有量は、樹脂組成物HCの固形分100質量部に対して、95質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましい。樹脂組成物HCにおける重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーの合計の含有量は、例えば、樹脂組成物HCの固形分100質量部に対して、5質量部以上95質量部以下である。
【0116】
樹脂組成物Rにおいて、重合性オリゴマーの含有量は、例えば、樹脂組成物Rの固形分100質量部に対して、5質量部以上85質量部以下である。重合性モノマーの含有量は、例えば、樹脂組成物Rの固形分100質量部に対して、5質量部以上85質量部以下である。重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーの合計の含有量は、樹脂組成物Rの固形分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、13質量部以上が特に好ましい。重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーの合計の含有量は、樹脂組成物Rの固形分100質量部に対して、85質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましい。樹脂組成物Rにおける重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーの合計の含有量は、例えば、樹脂組成物Rの固形分100質量部に対して、5質量部以上85質量部以下である。
【0117】
〈透光性微粒子〉
樹脂組成物は、必要に応じて透光性微粒子を含む。透光性微粒子により、硬化後のコーティング層(硬化樹脂層)のアンチグレア性および硬度がより向上し易い。透光性微粒子の平均粒子径は、例えば1.0μm以上10μm以下であり、0.5μm以上10μm以下であってよい。平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布計によって測定される体積換算の積算が50%となる粒子径(D50)をいう。透光性微粒子は、透明または半透明である。半透明であるとは、具体的には、JIS K 7361-1に準拠する方法により測定される全光線透過率が、30%以上40%未満であることをいう。
【0118】
透光性微粒子は、有機微粒子であってよく、無機微粒子であってよい。透光性微粒子として市販品を用いてもよい。市販されている透光性微粒子としては、例えば、積水化成品工業株式会社製のテクポリマーSSXシリーズ(スチレン-アクリル共重合体微粒子)、綜研化学株式会社製ケミスノーSXシリーズ(スチレン重合体微粒子)、ケミスノーMXシリーズ(アクリル重合体微粒子)、株式会社日本触媒製シーホスターKE-P、KE-Sシリーズ(シリカ微粒子)、ソリオスターRA(シリコンーアクリル共重合体微粒子)、エポスターS12(メラミン重合体微粒子)、エポスターMAシリーズ(スチレン-アクリル共重合体微粒子)、アクリル共重合体微粒子、日興リカ株式会社製MSPシリーズ、NHシリーズ(シリコーン微粒子)、新日本住金マテリアルズ株式会社製AZシリーズ、AYシリーズ(アルミナ微粒子)が挙げられる。なかでも、テクポリマーSSXシリーズ(スチレン-アクリル共重合体微粒子)ケミスノーSXシリーズ(スチレン重合体微粒子)、エポスターMAシリーズ(スチレン-アクリル共重合体微粒子)が好ましい。
【0119】
〈フィラー〉
樹脂組成物は、必要に応じてフィラーを含む。フィラーにより、コーティング層の硬化による体積収縮が緩和される。フィラーにより、硬化後のコーティング層の耐擦傷性が向上する。
【0120】
フィラーの1次粒子径は、透明性および安定性の観点から、5nm以上1,000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、100nm以下が特に好ましい。1次粒子径は、断面電子顕微鏡の画像から、画像処理ソフトウェアを用いて測定される。
【0121】
フィラーは、有機微粒子であってよく、無機微粒子であってよい。なかでも、無機微粒子が好ましい。無機微粒子としては、例えば、シリカ(SiO2)粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化スズ粒子、アンチモンドープ酸化スズ(略称;ATO)粒子、リンドープ酸化スズ粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタンに銀を担持した粒子、シリカ・アルミナ粒子に銀を担持した粒子、ガラスに複金属(銀・亜鉛・銅)イオンを担持した粒子、ヨウ化銅粒子が挙げられる。なかでも、コストおよび安定性の観点から、シリカ粒子およびアルミナ粒子がより好ましい。フィラーの表面は、(メタ)アクリロイル基等の不飽和基により修飾されていることが好ましい。
【0122】
フィラーとして、市販品を用いてもよい。市販されているシリカ粒子(コロイダルシリカ)としては、例えば、日産化学工業株式会社製のIPA-ST、MEK-STM、IBK-ST、PGM-ST、XBA-ST、MEK-AC-2101、MEK-AC-2202、MEK-AC-4101およびMIBK-SD、扶桑化学工業株式会社製のPL-1-IPA、PL-1-TOL、PL-2-IPA、PL-2-MEKおよびPL-3-TOL、日揮触媒化成株式会社製のOSCALシリーズおよびELECOMシリーズ、ビックケミー ジャパン社製のNANOBYK-3605が挙げられる。市販されているアルミナ粒子としては、例えば、住友大阪セメント株式会社製のAS-150I、AS-150T、ビックケミー ジャパン社製のNANOBYK-3601、NANOBYK-3602、NANOBYK-3610が挙げられる。
【0123】
市販されているリンドープ酸化スズ粒子としては、例えば、日産化学株式会社製のHX-204 IP、CIKナノテック社製のPTOPGM15WT%-N09が挙げられる。酸化チタンに銀を担持した粒子としては、例えば、日揮触媒化成社製のATOMY BALL-(S)が挙げられる。シリカ-アルミナ粒子に銀を担持した粒子としては、例えば、日揮触媒化成社製のATOMY BALL-(UA)、ELCOM NU-1023SIV、ELCOM NU-1024SIVが挙げられる。シリカ粒子に銀担持させた粒子としては、例えば、石塚硝子社製のイオンピュアZAF HSが挙げられる。ヨウ化銅粒子としては、例えば、NBCメッシュテック社製のCufitec BE4-ANA01、AA1-ANA01、BB2-ANA01、BD3-ANA01が挙げられる。
【0124】
樹脂組成物HCにおいて、フィラーの含有量は、樹脂組成物HCの固形分100質量部に対して、60質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、15質量部以下が特に好ましい。フィラーの含有量は、樹脂組成物HCの固形分100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上が特に好ましい。樹脂組成物HCにおけるフィラーの含有量は、例えば、樹脂組成物HCの固形分100質量部に対して、0.1質量部以上60質量部以下である。
【0125】
樹脂組成物Rにおいて、フィラーの含有量は、樹脂組成物Rの固形分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、7質量部以上が特に好ましい。フィラーの含有量は、樹脂組成物Rの固形分100質量部に対して、90質量部以下が好ましい。樹脂組成物Rにおけるフィラーの含有量は、例えば、樹脂組成物Rの固形分100質量部に対して、1質量部以上90質量部以下である。
【0126】
〈光重合開始剤〉
樹脂組成物は、必要に応じて光重合開始剤を含む。光重合開始剤の配合量は、樹脂組成物の固形分100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0127】
光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤が挙げられる。
【0128】
アルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンが挙げられる。
【0129】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、2,4,6-トリエチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリフェニルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイドが挙げられる。
【0130】
チタノセン系光重合開始剤としては、例えば、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムが挙げられる。オキシムエステル系重合開始剤としては、例えば、1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、オキシフェニル酢酸、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルが挙げられる。
【0131】
光重合開始剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0132】
なかでも、長波長領域、例えば370nm以上の波長領域に吸収波長を有する光重合開始剤が好ましい。このような光重合開始剤としては、例えば、上記のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が挙げられる。2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドは、IGM Resins B.V.社からOmnirad TPO Hとして市販されている。ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドは、IGM Resins B.V.社からOmnirad 819として市販されている。
【0133】
コーティング層を半硬化させるような穏やかな硬化条件で活性エネルギー線が照射される場合、コーティング層の内部では硬化反応は進行し難いため、所望の硬度が得られ難い。長波長領域に吸収波長を有する光重合開始剤を用いることにより、コーティング層の内部における硬化反応が促進される。
【0134】
〈溶媒〉
樹脂組成物は、必要に応じて溶媒を含む。溶媒は特に限定されず、組成物中に含まれる成分、塗布される基材の種類および組成物の塗布方法などに応じて適時選択される。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびケトン系溶媒が好ましい。
【0135】
〈屈折率低下成分〉
樹脂組成物Rは、光干渉層の屈折率を低下させる屈折率低下成分を含むことが好ましい。屈折率低下成分は、例えば粒子状である(以下、屈折率低下粒子と称する場合がある。)。
【0136】
屈折率低下成分としては、例えば、中空状シリカ微粒子が挙げられる。中空状シリカ微粒子は、光干渉層の強度を保持しつつ、その屈折率を下げることができる。中空状シリカ微粒子は、内部に気体が充填された構造および/または気体を含む多孔質構造体である。屈折率は、気体の占有率に反比例して低下する。そのため、中空状シリカ微粒子は、シリカ微粒子の本来の屈折率に比べて、低い屈折率を有する。中空状シリカ微粒子としては、例えば、スルーリア4320(日揮触媒社製)が挙げられる。
【0137】
屈折率低下成分として、内部および/または表面の少なくとも一部に、ナノポーラス構造が形成されるようなシリカ微粒子を用いてもよい。ナノポーラス構造は、シリカ微粒子の形態、構造、凝集状態、塗膜の内部での分散状態に応じて、形成される。屈折率低下成分として、中空状アクリル微粒子を用いてもよい。中空状アクリル微粒子としては、例えば、積水化成工業社製XX-5952Z、XX-5966Z、XX-6061Zが挙げられる。
【0138】
屈折率低下粒子の体積平均粒子径は、50nm以上200nm以下が好ましい。体積平均粒子径は、1次粒子径である。
【0139】
屈折率低下成分の含有量は、樹脂組成物Rの固形分100質量部に対して、35質量部以上が好ましく、37.5質量部以上がより好ましい。屈折率低下成分の含有量は、樹脂組成物Rの固形分100質量部に対して、75質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましい。これにより、硬化された光干渉層は、優れた反射防止性を発揮し易い。屈折率低下成分の含有量は、例えば、樹脂組成物Rの固形分100質量部に対して、35質量部以上75質量部以下である。
【0140】
〈その他〉
樹脂組成物は、必要に応じて種々の添加剤を含む。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、レベリング剤および光安定剤(例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS))、抗菌剤、抗カビ剤、抗ウィルス剤、防汚剤が挙げられる。特に、抗菌剤、抗カビ剤、抗ウィルス剤、防汚剤は、最外層を形成する樹脂組成物(例えば、樹脂組成物R)に含まれることが望ましい。
【0141】
[保護フィルム]
積層フィルムは、コーティング層の外表面側に、保護フィルムを有していてもよい。保護フィルムは、コーティング層および積層フィルムを保護するとともに、樹脂組成物Rをフィルム状に成形するための離型紙として機能する。保護フィルムは、樹脂組成物Rが塗布される面に粘着層や離型層を有してもよい。
【0142】
当分野において公知である保護フィルムが、特に制限されることなく用いられる。保護フィルムは、無色であってもよく、有色であってもよい。保護フィルムは、透明であってもよい。
【0143】
保護フィルムの厚さは、特に限定されない。保護フィルムの厚さは、20μm以上100μm以下であってよい。これにより、コーティング層の保護効果が高まり易い。保護フィルムの厚さは、25μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、33μm以上がさらに好ましく、35μm以上が特に好ましい。保護フィルムの厚さは、85μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、65μm以下がさらに好ましい。保護フィルムの厚さは、粘着層の厚さを含まない値である。
【0144】
保護フィルムは、例えば樹脂製である。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルムおよびポリプロピレンフィルム(無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)および二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)を含む)等のポリオレフィンフィルム、これらポリオレフィンを変性し、更なる機能を付加した変性ポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートおよびポリ乳酸等のポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、AS樹脂フィルムおよびABS樹脂フィルム等のポリスチレン系樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムおよびポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリメチルペンテンフィルムが挙げられる。
【0145】
なかでも、ポリエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、変性ポリオレフィンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、OPPフィルムおよびCPPフィルムから選択される少なくとも1種が好ましい。特に、厚さ30μm以上100μm以下のポリエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、変性ポリオレフィンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、OPPフィルムおよびCPPフィルムから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0146】
樹脂フィルムには、必要に応じて、帯電防止剤、紫外線防止剤等の添加剤が添加されていてもよい。樹脂フィルムの表面は、コロナ処理あるいは低温プラズマ処理が施されていてもよい。
【0147】
図1は、本実施形態に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。積層フィルム10は、透明支持基材11とその一方の主面に配置されたコーティング層12とを備える。
【0148】
積層フィルムの製造方法
本実施形態に係る積層フィルムは、例えば、透明支持基材の少なくとも一方の主面に、活性エネルギー線硬化性の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、樹脂組成物に5mJ/cm
2以上150mJ/cm
2以下の活性エネルギー線を照射して、半硬化状態の樹脂組成物により形成されるコーティング層を得る第1照射工程と、を備える方法により製造される。
図2は、本実施形態に係る積層フィルムの製造方法を示すフローチャートである。
【0149】
(1)塗布工程(S11)
透明支持基材の少なくとも一方の主面に、活性エネルギー線硬化性の樹脂組成物(例えば、上記の樹脂組成物HC)を塗布する。これにより、未硬化のコーティング層が形成される。
【0150】
樹脂組成物は、公知の手法によって調製される。樹脂組成物は、例えば、ペイントシェーカー、ミキサー、ディスパーなどの通常用いられる混合装置を用いて、各成分を混合することによって調製される。
【0151】
樹脂組成物の塗布方法は、樹脂組成物の性状等に応じて適宜選択される。塗布方法としては、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、グラビアコート法またはエクストルージョンコート法が挙げられる。
【0152】
樹脂組成物の塗布量は特に限定されない。樹脂組成物は、コーティング層の厚さが2μm超、例えば3μm以上20μm以下になるように、塗布される。
【0153】
(2)乾燥工程(S12)
塗布工程(1)の後、第1照射工程(3)の前に、塗布された樹脂組成物を乾燥させてもよい。乾燥工程により、樹脂組成物に含まれる溶剤成分の少なくとも一部が除去されて、ハンドリング性が向上するとともに、硬化の程度が制御され易くなる。乾燥条件は特に限定されず、塗布量、溶剤の種類等に応じて適宜設定される。
【0154】
(3)第1照射工程(S13)
樹脂組成物に5mJ/cm2以上150mJ/cm2以下の活性エネルギー線を照射する。第1照射工程により、樹脂組成物は半硬化状態になって、上記のコーティング層が得られる。第1照射工程における積算光量により、樹脂組成物の重合率ひいてはコーティング層の押し込み硬さHを制御することができる。第1照射工程は、後述する凹凸形成工程の前に行われればよく、プレフォーム工程の前であってもよく、後であってもよい。
【0155】
本工程における積算光量は、10mJ/cm2以上であってよく、20mJ/cm2以上であってよい。本工程における積算光量は、130mJ/cm2以下であってよく、100mJ/cm2以下であってよい。活性エネルギー線の照射は、コーティング層側から行われてもよく、透明支持基材側から行われてもよい。活性エネルギー線の照射は、大気雰囲気で行ってもよく、窒素雰囲気で行ってもよい。
【0156】
コーティング層において、押し込み硬さHB2000は、押し込み硬さHB100より小さい。さらに、押し込み硬さHB2000は0.15GPa以上0.35GPa以下である。そのため、コーティング層は、優れた賦形性を有する。よって、コーティング層に所望の模様を付与することができる。押し込み硬さHB100は、0.30GPa以上0.65GPa以下である。そのため、コーティング層の表面に転写された金型の模様が高精度で維持されたまま、金型から積層フィルムを剥離することができる。
【0157】
活性エネルギー線の種類は特に限定されない。活性エネルギー線は、重合性のモノマーあるいはオリゴマーの種類に応じて適宜選択される。活性エネルギー線は特に限定されず、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線であってよい。なかでも、紫外線が好ましい。紫外線は、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯を用いて照射される。
【0158】
[複数の層を含むコーティング層を備える積層フィルムの製造方法]
複数の層(代表的には、半硬化のハードコート層および半硬化の光干渉層)を含むコーティング層は、ラミネート法あるいはコーティング法により形成される。第1照射工程(3)は、複数回行われてもよい。
【0159】
(ラミネート法)
ラミネート法では、塗布工程(1)に従って、それぞれ別の基材上に形成された複数の層を貼り合わせる。乾燥工程(2)は、層同士を貼り合わせる前に任意に行われる。第1照射工程(3)は、層同士を貼り合わせる前に、それぞれの層に対して行われてもよく、貼り合わせた後に一括して行われてもよい。ラミネート法によれば、未硬化の層同士であっても混相は抑制され易い。
【0160】
(コーティング法)
コーティング法では、塗布工程(1)に従って透明支持基材上に形成された層上に、他の層を形成する樹脂組成物が塗布される。乾燥工程(2)は、他の樹脂組成物が塗布される前に任意に行われる。混相抑制の観点から、第1照射工程(3)は、他の樹脂組成物が塗布される前に、透明支持基材上に形成された層に対して行われることが好ましい。他の樹脂組成物の塗布後、今度は他の樹脂組成物に対して第1照射工程(3)が行われる。
【0161】
図3は、本実施形態に係る積層フィルムの製造方法を示すフローチャートである。
図3は、ラミネート法により未硬化のハードコート層と未硬化の光干渉層とが積層された後、第1照射工程が行われる実施形態を示している。
【0162】
成形体
本実施形態に係る成形体は、上記の透明支持基材と、透明支持基材の少なくとも一方の主面に配置された硬化樹脂層(硬化後のコーティング層)と、を備える。硬化樹脂層の透明支持基材とは反対側の主面は、凹凸が形成された第1領域とそれ以外の第2領域とを備える。第1領域と第2領域とは、一体的に形成されている。硬化樹脂層表面の鉛筆硬度は、H以上である。成形体は、微細な凹凸とともに、立体形状(三次元形状)を有していてもよい。
【0163】
成形体は、本実施形態に係る積層フィルムのコーティング層に部分的に凹凸を付与し、硬化させることにより形成される。硬化樹脂層は、1500mJ/cm2の活性エネルギー線を照射されたコーティング層と同様の物性を有する。
【0164】
[硬化樹脂層]
硬化樹脂層は、微細な凹凸が形成された第1領域とそれ以外の第2領域とを備える。複数の第1領域および/または第2領域が配置されていてもよい。
【0165】
硬化樹脂層は、1層であってもよく、2層以上を含んでいてもよい。硬化樹脂層は、少なくともハードコート層を含む。一態様において、硬化樹脂層は、ハードコート層および1以上の機能層(代表的には、光干渉層)を含む。
【0166】
成形体は、例えば、ディスプレイの保護材として使用される。この場合、第1領域は、ディスプレイに対応するように配置される。第1領域は、成形体のディスプレイ部分として理解され得る。凹凸により、アンチグレア性が向上する。第1領域は、操作表示部に対応するように配置されてもよい。第2領域は、例えばディスプレイの周囲を囲む領域(ベゼル)に対応するように配置される。第2領域は、成形体のベゼル部分として理解され得る。第2領域は、第1領域とは異なる質感、例えばつや感を備える。そのため、ベゼル部分の意匠性が向上する。
【0167】
第1領域と第2領域とは、一体的に形成されている。すなわち、第1領域と第2領域とはいずれも、1つの硬化樹脂層の表面に配置されている。そのため、この成形体を用いることにより、シームレスデザインを実現することができる。
【0168】
硬化樹脂層表面の鉛筆硬度は、H以上である。つまり、硬化樹脂層は、高い硬度を有している。そのため、成形体は耐擦傷性に優れるとともに、凹凸は長期間にわたって保持される。硬化樹脂層表面の鉛筆硬度は、2H以上が好ましい。硬化樹脂層表面の鉛筆硬度は、凹凸の付与されていない領域(例えば、第2領域)において測定される。あるいは、測定用に作成された凹凸の付与されていない平滑な硬化樹脂層の表面において測定される。
【0169】
凸部の高さは特に限定されない。アンチグレア性の観点から、凸部の高さは、例えば、0.3μm以上4.0μm以下であってよく、1.0μm以上2.0μm以下であってよい。凸部の高さは、硬化樹脂層の厚み方向の断面から算出される。凸部の高さは、第1領域に形成された凹部の最も低い地点から凸部の最も高い点までの距離の、任意の5点における平均値である。
【0170】
アンチグレア性の観点から、第1領域の十点平均粗さRzJISは、0.2μm以上1.0μm以下が好ましい。十点平均粗さRzJISは、例えばレーザ顕微鏡を用いて、JIS B0601;2001の規定に準拠して求められる。十点平均粗さRzJISは、具体的には、カットオフ値位相補償帯域通過フィルタを適用して得た基準長さの粗さ曲線において、最高の山頂(凸部)から高い順に5番目までの山高さの平均と、最深の谷底(凹部)から深い順に5番目までの谷深さの平均との和である。
【0171】
[加飾層]
成形体は、さらに加飾層を備えていてもよい。成形体は、例えば、透明支持基材と、透明支持基材の一方の主面に配置された硬化樹脂層と、透明支持基材の他方の主面に配置された加飾層と、を備える。加飾層は、透明支持基材の他方の主面の一部に設けられてもよい。加飾層は、模様、文字または金属光沢などの装飾を成形体に与える層である。加飾層により、成形体の意匠性が高まる。加飾層は、例えば、第2領域に対向するように配置される。このとき、加飾層は、第2領域を通して視認される。
【0172】
加飾層としては、例えば、印刷層および蒸着層の少なくとも1つが挙げられる。印刷層および蒸着層はそれぞれ、1以上の層であり、複数の層を備えていてもよい。加飾層の厚さは特に限定されず、意匠性等に応じて、適宜設定される。
【0173】
印刷層には、例えば、木目模様、石目模様、布目模様、砂目模様、幾何学模様、文字、全面ベタが描かれる。印刷層は、例えば、バインダー樹脂と着色剤とを含む着色インキにより形成される。バインダー樹脂は特に限定されない。バインダー樹脂としては、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0174】
着色剤は特に限定されず、公知の顔料または染料が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料またはチタンニッケルアンチモン酸化物等の無機顔料が挙げられる。赤色顔料としては、例えば、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料または弁柄等の無機顔料が挙げられる。青色顔料としては、例えば、フタロシアニンブルー等の有機顔料またはコバルトブルー等の無機顔料が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、アニリンブラック等の有機顔料が挙げられる。白色顔料としては、例えば、二酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
【0175】
蒸着層は、例えば、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛、亜鉛等の群から選ばれる少なくとも一つの金属、またはこれらの合金もしくは化合物により形成される。
【0176】
[成形樹脂層]
成形体は、さらに成形樹脂層を備えていてもよい。成形樹脂層は、透明支持基材とともに硬化樹脂層を支持する。成形体は、例えば、透明支持基材と、透明支持基材の一方の主面に配置された硬化樹脂層と、透明支持基材の他方の主面に配置された成形樹脂層と、を備える。成形樹脂層の形状は制限されない。そのため、成形体のデザインの自由度が高まる。
【0177】
成形樹脂層を形成する樹脂は特に限定されない。成形樹脂層は、例えば、熱硬化性樹脂および/または熱可塑性樹脂を含む。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、熱硬化性ポリイミドが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、いわゆるエンジニアリングプラスチックが挙げられる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、超高分子量ポリエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマーが挙げられる。
【0178】
成形体は、透明支持基材と、透明支持基材の一方の主面に配置された硬化樹脂層と、透明支持基材の他方の主面に配置された加飾層と、成形樹脂層と、を備えていてもよい。加飾層は、例えば、硬化樹脂層と成形樹脂層とで挟まれるように配置されるか、あるいは、成形樹脂層の硬化樹脂層とは反対側の面に配置される。
【0179】
成形体は、ディスプレイの保護材として特に好適である。ディスプレイとして、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイが挙げられる。成形体は、特に、車載用のタッチパネルディスプレイの保護材として適している。成形体は、第1領域がディスプレイの情報表示部分に対向するように配置される。成形体は、ハードコート層が外側を向くように配置される。成形体は、また、ディスプレイの保護材を兼ねたインストルメントパネルおよび/またはセンタークラスターパネルとして特に好適である。
【0180】
図4は、本実施形態に係る成形体を模式的に示す断面図である。成形体20Aは、透明支持基材11とその一方の主面に配置された硬化樹脂層22とを備える。硬化樹脂層22は、微細な凹凸を備える第1領域221と、平滑な第2領域222とを備える。
【0181】
図5は、本実施形態に係る他の成形体を模式的に示す断面図である。成形体20Bは、透明支持基材11と、その一方の主面に配置された硬化樹脂層22と、加飾層23と、成形樹脂層24と、を備える。加飾層23は、第2領域222に対向するように、かつ、硬化樹脂層22と成形樹脂層24とで挟まれるように配置されている。
【0182】
図6は、本実施形態に係る他の成形体を模式的に示す断面図である。成形体20Cは、透明支持基材11と、その一方の主面に配置された硬化樹脂層22と、加飾層23と、成形樹脂層24と、を備える。加飾層23は、第2領域222に対向するように、かつ、成形樹脂層24の硬化樹脂層22とは反対側に配置されている。
【0183】
図7は、本実施形態に係るさらに他の成形体を模式的に示す斜視図である。成形体20Dは、透明支持基材11と、その一方の主面に配置された硬化樹脂層22と、加飾層23と、成形樹脂層24と、を備える。成形体20Dは、立体形状を有している。成形体20Dは、例えばカーナビゲーションシステムのディスプレイの保護材である。硬化樹脂層22は、複数の第1領域221と、これら第1領域221を取り囲む第2領域222とを備える。1つの第1領域221はディスプレイの情報表示部分に対応し、他の第1領域221は操作表示部に対向している。第2領域222はディスプレイを囲むベゼルに対応している。
【0184】
成形体の製造方法
本実施形態に係る成形体は、上記の積層フィルムのコーティング層に凹凸を形成し、その後、活性エネルギー線の照射(第2照射工程)を行うことにより得られる。これにより、コーティング層に異なる質感を有する複数の領域、例えば凹凸領域と平滑な領域とを同時に形成することができる。コーティング層は、上記の通り、活性エネルギー線硬化性であって、例えば、未硬化状態の樹脂組成物に、第1照射工程を行うことにより得られる。
【0185】
加飾層を備える成形体は、積層フィルム、透明支持基材と未硬化の樹脂組成物層とを備える積層体(以下、積層フィルムの前駆体と称す。)あるいは成形体に、加飾層を形成することにより得られる。加飾層を形成する工程(加飾工程)は、第1照射工程の前に行われてよく、第2照射工程の後に行われてもよく、第1照射工程と第2照射工程の間に行われてよい。
【0186】
立体形状を備える成形体は、積層フィルムを射出成型することにより得られる。射出成型工程は、凹凸形成工程の前、後、あるいはこれと並行して行われる。なかでも、射出成型工程と凹凸形成工程が並行して行われること、すなわち、微細な凹凸と立体形状とが一工程で形成されることが好ましい。
【0187】
射出成型工程の前に、プレフォーム工程が行われることが望ましい。プレフォーム工程では、積層フィルムあるいは積層フィルムの前駆体が、予め立体形状に近い形状に成形される。これにより、射出成型において、より容易に所望の立体形状が得られる。
【0188】
一態様において、成形体の製造方法は、積層フィルムへの凹凸形成工程と、第2照射工程と、を備える。
図8は、本実施形態に係る成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【0189】
一態様において、成形体の製造方法は、積層フィルムへの加飾工程と、プレフォーム工程と、凹凸形成工程(および射出成型工程)と、第2照射工程と、を備える。
図9は、本実施形態に係る成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【0190】
一態様において、成形体の製造方法は、積層フィルムの前駆体への加飾工程と、プレフォーム工程と、第1照射工程と、凹凸形成工程(および射出成型工程)と、第2照射工程と、を備える。
図10は、本実施形態に係る成形体の製造方法を示すフローチャートである。
以下、各工程を説明する。
【0191】
(i)積層フィルムの準備
例えば、上記のようにして作製された積層フィルムが準備される。
【0192】
(ii)積層フィルムの前駆体の作製
例えば、上記の塗布工程(1)と乾燥工程(2)とを含む方法により作製された積層フィルムの前駆体が準備される。
【0193】
(iii)第1照射工程(S25)
本工程では、積層フィルムの製造方法の第1照射工程(3)と同様にして、樹脂組成物に5mJ/cm2以上150mJ/cm2以下の活性エネルギー線が照射される。
【0194】
第1照射工程により樹脂組成物は半硬化して、コーティング層が形成される。コーティング層の押し込み硬さH100は、0.30GPa以上0.65GPa以下である。コーティング層の押し込み硬さHB2000は、0.15GPa以上0.35GPa以下である。押し込み硬さHB2000は押し込み硬さHB100より小さい。
【0195】
(iv)加飾工程(S23)
本工程では、透明支持基材の他方の主面、あるいは成形樹脂層の硬化樹脂層とは反対側の面に、上記の加飾層が形成される。
【0196】
印刷層の形成方法は特に限定されない。印刷層の形成方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ロールコート法およびスプレーコート法が挙げられる。蒸着層の形成方法も特に限定されない。蒸着層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法および鍍金法が挙げられる。
【0197】
(v)プレフォーム工程(S24)
本工程では、積層フィルムあるいはその前駆体に、所望の立体形状に沿った形状が成形される。プレフォーム工程の後、積層フィルムあるいはその前駆体の不要な部分を除去するトリミング工程を行ってもよい。
【0198】
プレフォームの方法は特に限定されない。プレフォームは、例えば、真空成型法、圧空成型法、真空圧空成型法により実行される。プレフォームでは、第1金型と積層フィルムあるいはその前駆体とが同じ処理室に設置される。積層フィルムあるいはその前駆体は、透明支持基材が第1金型に対向するように設置される。積層フィルムあるいはその前駆体を樹脂組成物のTg以上の温度に加熱して、処理室を真空状態および/または加圧状態にする。これにより、積層フィルムあるいはその前駆体は第1金型に沿って変形する。次いで、積層フィルムあるいはその前駆体を冷却して、第1金型から取り外す。
【0199】
第1金型の材質は特に限定されない。第1金型は、樹脂製であってよく、金属製であってよい。
【0200】
プレフォーム工程に供される樹脂組成物は、未硬化あるいは半硬化状態である。そのため、積層フィルムあるいはその前駆体は、クラックを生じることなく、第1金型に沿って容易に変形することができる。よって、複雑な立体形状が実現される。プレフォーム工程後の樹脂組成物は、依然として未硬化あるいは半硬化状態である。
【0201】
(vi)凹凸形成工程(S21)
本工程では、凹凸を有する金型(第2金型)に、半硬化状態の樹脂組成物を含むコーティング層を接触させて、コーティング層の一部に凹凸を形成する。
【0202】
コーティング層の押し込み深度100nmにおけるナノインデンテーション法による押し込み硬さHB100は、0.30GPa以上0.65GPa以下である。コーティング層の押し込み深度2000nmにおけるナノインデンテーション法による押し込み硬さHB2000は、0.15GPa以上0.35GPa以下である。押し込み硬さHB2000は、押し込み硬さHB100より小さい。そのため、コーティング層は、優れた離型性と賦形性とを発揮する。
【0203】
第2金型の材質は特に限定されない。第2金型は、樹脂製であってよく、金属製であってよい。金型の材質に関わらず、コーティング層は容易に金型から剥離される。
【0204】
本工程では、凹凸とともに、立体形状が付与されてもよい。この場合、凹凸とともに所望の立体形状を備える第2金型が用いられる。
【0205】
コーティング層が透明支持基材の一方の主面に配置されている場合、凹凸は、射出成型法(例えば、インサートモールド法)により付与されてもよい。射出成型では、例えば、部分的に凹凸を有する第2金型にコーティング層を対向させるとともに、透明支持基材に向かって成形用樹脂が射出される。これにより、コーティング層の一部に凹凸が形成されるとともに、透明支持基材の他方の主面に成形樹脂層が形成される。
【0206】
積層フィルムは、半硬化状態のコーティング層を備える。そのため、積層フィルムは、様々な形状の金型に追従することができる。さらに、プレフォームにより形成された立体形状と、本工程で用いられる第2金型との間で寸法差がある場合にも、クラックの発生が抑制される。
【0207】
(vii)第2照射工程(S22)
本工程では、コーティング層に活性エネルギー線が照射される。これにより、コーティング層は完全に硬化されて、硬化樹脂層が形成される。
【0208】
活性エネルギー線は、例えば、硬化樹脂層の鉛筆硬度がH以上になるように照射される。本工程における活性エネルギー線の積算光量は、150mJ/cm2超であり、例えば、300mJ/cm2以上2000mJ/cm2以下である。
【0209】
本実施形態に係る成形体の製造方法では、半硬化状態であるコーティング層を備える積層フィルムに対して、凹凸形成工程が行われる。そのため、積層フィルムに緻密な凹凸を高精度で付与することができる。さらに、積層フィルムを、クラックを生じさせることなく、様々な立体形状に成形することができる。そして、凹凸形成工程が終了した後、樹脂組成物は硬化される。そのため、付与された形状は、長期間にわたって保持される。
【実施例】
【0210】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。混合部数は、いずれも固形分の質量である。
【0211】
本明細書における実施例及び比較例において使用した各成分は、以下のとおりである。
(非重合性ポリマー)
アクリルポリマーA:Mw60,000
(重合性ポリマー)
アクリルポリマーB:Mw20,000
【0212】
アクリルポリマーA、Bは、以下のようにして調製した。
[アクリルポリマーAの調製]
n-ブチルメタクリレート30部、メチルメタクリレート70部、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート0.8部からなる混合物を調製した。別途、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた500ml反応容器に、トルエン40部を投入し、110℃に加温した。この反応容器内を撹拌させながら、上記混合物を、窒素雰囲気下で2時間かけて等速で滴下した。滴下終了後、110℃の温度条件下で1時間反応を行った。その後、上記反応容器に、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート1部とトルエン25部との混合溶液を、1時間かけて滴下した。次いで、反応容器内を145℃まで加熱して、さらに2時間反応させた。続いて、反応容器内を110℃以下に冷却し、さらにトルエン59部を添加した。これにより、重量平均分子量60,000のアクリルポリマーAを得た。
【0213】
[アクリルポリマーBの調製]
2,3-エポキシプロピルメタクリレート30部、メチルメタクリレート70部、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート10部からなる混合物を調製した。別途、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた500ml反応容器に、トルエン40部を投入し、110℃に加温した。この反応容器内を撹拌させながら、上記混合物を、窒素雰囲気下で2時間かけて等速で滴下した。滴下終了後、110℃の温度条件下で1時間反応を行った。その後、上記反応容器に、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート1部とトルエン25部との混合溶液を、1時間かけて滴下した。次いで、反応容器内を145℃まで加熱して、さらに2時間反応させた。続いて、反応容器内を110℃以下に冷却し、さらにトルエン59部を添加して、前駆体B1を得た。
【0214】
上記と同じ形の別の反応容器に、前駆体B1を306.5部、アクリル酸を15.66部、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.43部、トルエンを56部、それぞれ仕込み、空気を吹き込んで攪拌しながら、90℃まで加熱した。90℃の温度条件下、この反応容器に、さらに、トルエン3部とテトラブチルアンモニウムブロマイド0.81部との混合溶液を添加し、1時間反応させた。続いて、105℃まで加熱し、反応溶液中の固形分の酸価が8以下になるまで、105℃の温度条件下で反応を行った。その後、上記反応溶液にハイドロキノンモノメチルエーテル0.43部とトルエン3部との混合溶液を添加し、温度を75℃にした。続いて、カレンズMOI(昭和電工株式会社製、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)10.1部とトルエン5.0部とジブチルチンジラウレート0.043部との混合溶液を添加して、70℃の温度条件下で2時間反応させた。その後、60℃以下に冷却して、メタノール2部とトルエン10部との混合溶液を添加した。これにより、重量平均分子量20,000のアクリルポリマーBを得た。
【0215】
酸価の測定は、JIS K5601-2-1に準じて、上記反応溶液を0.1Nの水酸化カリウム(KOH)溶液で滴定して、下式 酸価={(KOH溶液の滴下量[ml])×(KOH溶液のモル濃度[mol/L]}/(固形分の質量[g])に従って算出した。
【0216】
(紫光UV-AF305A)
フッ素含有多官能シリコーンウレタンアクリレートオリゴマー
三菱ケミカル株式会社製
(KRM-8452)
多官能ウレタンアクリレートオリゴマー
ダイセル オルネクス社
Mw3,884
【0217】
(CN-9893)
2官能ウレタンアクリレートオリゴマー
サートマー社製
(アロニックスM-402)
多官能アクリルモノマー
東亜合成株式会社製
(アロニックスM-315)
3官能アクリルモノマー
東亜合成株式会社製
(アートレジンH-7M40)
4官能ウレタンアクリレートオリゴマー
根上工業株式会社製
Mw=1000~1500
(アートレジンUN-904M)
10官能ウレタンアクリレートオリゴマー
根上工業株式会社製
Mw=4900
【0218】
(ELCOM V-8802)
フィラー(シリカ微粒子、1次粒子径約10nm)
日揮触媒化成株式会社製
(HX-204 IP)
フィラー(リンドープ酸化スズゾル、一次粒子径5nm~20nm)
日産化学株式会社製
(スルーリア4320)
屈折率低下粒子(中空状シリカ微粒子、体積平均粒子径55nm)
日揮触媒化成株式会社製
【0219】
(Omnirad 184)
光重合開始剤
IGM Resins B.V.社製
(Omnirad TPO H)
光重合開始剤
IGM Resins B.V.社製
【0220】
[実施例1]
(1)樹脂組成物HC1の調製
プロピレングリコールモノメチルエーテルが投入された容器内で、アクリルポリマーAを37部、アロニックスM-402を35部、紫光UV-AF305Aを12部、ELCOM V-8802を15部、Omnirad184を上記の樹脂成分とELCOM V-8802との合計100部に対して2.9部、Omnirad TPO Hを上記の樹脂成分とELCOM V-8802との合計100部に対して3.9部を混合して、固形分濃度35%の透明な樹脂組成物HC1を製造した。
【0221】
(2)積層フィルムの作製
透明支持基材(PMMAおよびPCからなる2層フィルム、商品名:AW-10U、株式会社シャインテクノ製、総厚250μm、PMMA層厚35μm、PC層厚215μm)のPMMAの面に、樹脂組成物HC1をバーコーターにより塗布し、80℃で1分間乾燥させて溶媒を揮発させた。続いて、塗膜に積算光量35mJ/cm2の活性エネルギー線(紫外線)を照射して、半硬化状態のコーティング層(ハードコート層)を備える積層フィルムA1を得た。コーティング層の膜厚は8μmであった。
【0222】
(3)成形体の作製
(3-1)印刷層の形成
作製された積層フィルムA1における透明支持基材のコーティング層とは反対側の主面に、スクリーン印刷により印刷層を形成し、乾燥温度80℃で10分間乾燥させた。この印刷工程を5回繰り返し、その後、90℃で1時間乾燥させた。印刷層の形成には、アニリンブラックを用いた。
【0223】
(3-2)プレフォーム
印刷層を備える積層フィルムを160℃に加熱し、真空圧空成型法によりプレフォームを実施した。続いて、トリミングを実施した。
【0224】
(3-3)凹凸の形成
一部に凹凸を備える金型を用いて、インサートモールドを行った。金型は80℃に加熱した。成形用樹脂として、ポリカーボネート樹脂を用いた。金型の凸部の最大高さは2.0μmであり、十点平均粗さRzJISは1.5μmであった。
【0225】
(3-4)活性エネルギー線の照射
コーティング層に、積算光量1500mJ/cm2の活性エネルギー線(紫外線)を照射した。これにより、透明支持基材と、透明支持基材の一方の主面に配置された硬化樹脂層(ハードコート層)と、透明支持基材の他方の主面に配置された印刷層と、成形樹脂層と、を備える成形体X1を得た。硬化樹脂層の表面は、金型の凹凸が転写されて形成された第1領域と、平滑な第2領域とを備えていた。
【0226】
[評価]
積層フィルムA1または成形体X1に対して、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0227】
(a)離型性
成形体の硬化樹脂層の第2領域を目視観察し、下記の基準に従って評価した。
最良:表面に、金型を剥離する際に生じた荒れおよび白化が確認されない
良:表面に、金型を剥離する際に生じた荒れおよび白化がわずかに確認されるが、質感の大きな低下はない
可:表面に、金型を剥離する際に生じた荒れおよび白化が確認されるが、質感の著しい低下はない
不良:表面に、金型を剥離する際に生じた荒れおよび白化が確認され、質感の著しい低下がみられる
【0228】
(b)賦形性
成形体の硬化樹脂層の第1領域を目視観察し、下記の基準に従って評価した。
最良:十分なアンチグレア性が得られており、凸部の高さが、金型の凸部の最大高さの80%以上であると判断できる
良:実用上十分なアンチグレア性が得られており、凸部の高さが、金型の凸部の最大高さの50%以上80%未満であると判断できる
不良:アンチグレア性が不十分であり、凸部の高さが、金型の凸部の最大高さの50%未満であると判断できる
【0229】
(c)形状保持性
成形体を、相対湿度85%、温度85℃の恒温恒湿室に250時間、静置した。この加速試験の後、賦形性(b)と同様の基準で評価した。
【0230】
(d)押し込み硬さ
NANOMECHANICS,INC.製のiMicro Nanoindenterを用いて、連続剛性測定法(使用メソッド:Advanced Dynamic E and H.NMT)により測定した。
【0231】
具体的には、積層フィルムの表面に、準静的な試験荷重に微小なAC荷重を重畳して与えた。荷重は、最大荷重50mNに到達するまで与えた。圧子として、バーコビッチ型のダイアモンド圧子(先端曲率半径20nm)を使用した。発生する変位の振動成分および変位と荷重との位相差から、深さに対する連続的なスティフネスを計算して、深さに対する硬度のプロファイルを取得した。このプロファイルにおける深さ100nmの硬度を押し込み硬さHB100として、2000nmでの硬度を押し込み硬さHB2000とした。荷重およびスティフネスの計算にはiMicro専用ソフトを用いた。スティフネスの計算にあたって、コーティング層のポアソン比を0.35とした。荷重は、ひずみ速度(∂P/∂t)/Pが0.2となるように制御した。iMicro専用ソフトでの解析にあたって、コーティング層の表面位置として、測定時にiMicro専用ソフト上で仮に定義される点(d(Force)/d(Disp)がおよそ500N/mになる点)をそのまま設定した。
【0232】
(e)重合率
未硬化の積層フィルムおよび半硬化状態の積層フィルムについて、上記方法に従ってFT-IR分析を行い、それぞれの赤外吸収スペクトルを得た。赤外吸収スペクトルから、上記方法に従って重合率PB、PAを算出した。
【0233】
(f)伸張率
JIS K 7127に準拠して測定した。
具体的には、積層フィルムから長さ200mm×幅10mmの試験片を切り出した。この試験片を、チャック間距離が150mmである引張り試験機にセットして、160℃雰囲気下、引張速度300mm/分の条件にて、試験片を2.5%伸張した。その後、当該試験片を、倍率1000倍またはそれ以上の顕微鏡により観察して、長さ1mmを超える大きさのクラックの有無を確認した。クラックの発生が無ければ、新たな試験片を切り出し、次は長辺を5%伸張させた。そして、同様の手順にてクラック発生の観察を実施した。伸張率を2.5%ずつ大きくしながらこの手順を繰り返した。上記大きさのクラックが初めて確認されたときの伸張率を、積層フィルムの伸張率とした。同じ積層フィルムから試験片を3つ作成し、それぞれについて算出された伸張率の平均値を、積層フィルムの伸張率とした。
【0234】
(g)鉛筆硬度
JIS K 5600-5-4(1999) ひっかき硬度(鉛筆法)に従って、成形体の硬化樹脂層の第2領域における鉛筆硬度を測定した。
【0235】
[実施例2]
積層フィルムの作製(2)において、コーティング層の膜厚を6μmにしたこと以外、実施例1と同様にして、積層フィルムA2を得た。積層フィルムA2を用いて、実施例1と同様にして、成形体X2を得た。積層フィルムA2および成形体X2について、上記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0236】
[実施例3]
積層フィルムの作製(2)において、コーティング層の膜厚を10μmにしたこと以外、実施例1と同様にして、積層フィルムA3を得た。積層フィルムA3を用いて、実施例1と同様にして、成形体X3を得た。積層フィルムA3および成形体X3について、上記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0237】
[実施例4]
積層フィルムの作製(2)において、活性エネルギー線を窒素雰囲気下において照射したこと以外、実施例1と同様にして、積層フィルムA4を得た。積層フィルムA4を用いて、実施例1と同様にして、成形体X4を得た。積層フィルムA4および成形体X4について、上記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0238】
[実施例5]
積層フィルムの作製(2)において、活性エネルギー線を、積算光量が7.5mJ/cm2になるように照射したこと以外、実施例1と同様にして、積層フィルムA5を得た。積層フィルムA5を用いて、実施例1と同様にして、成形体X5を得た。積層フィルムA5および成形体X5について、上記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0239】
[実施例6]
積層フィルムの作製(2)において、活性エネルギー線を、積算光量が100mJ/cm2になるように照射したこと以外、実施例1と同様にして、積層フィルムA6を得た。積層フィルムA6を用いて、実施例1と同様にして、成形体X6を得た。積層フィルムA6および成形体X6について、上記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0240】
[比較例1]
積層フィルムの作製(2)において、活性エネルギー線を照射しなかったこと以外、実施例1と同様にして、積層フィルムB1を得た。積層フィルムB1を用いて、実施例1と同様にして、成形体Y1を得た。積層フィルムB1および成形体Y1について、上記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0241】
[比較例2]
積層フィルムの作製(2)において、活性エネルギー線を、積算光量が200mJ/cm2になるように照射したこと以外、実施例1と同様にして、積層フィルムB2を得た。積層フィルムB2を用いて、実施例1と同様にして、成形体Y2を得た。積層フィルムB2および成形体Y2について、上記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0242】
[比較例3]
積層フィルムの作製(2)において、活性エネルギー線を、積算光量が500mJ/cm2になるように照射したこと以外、実施例1と同様にして、積層フィルムB3を得た。積層フィルムB3を用いて、実施例1と同様にして、成形体Y3を得た。積層フィルムB3および成形体Y3について、上記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0243】
[比較例4]
積層フィルムの作製(2)において、活性エネルギー線を、積算光量が1500mJ/cm2になるように照射したこと以外、実施例1と同様にして、積層フィルムB4を得た。積層フィルムB4を用いて、実施例1と同様にして、成形体Y4を得た。積層フィルムB4および成形体Y4について、上記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0244】
【0245】
実施例1から実施例6の成形体はいずれも、離型性および賦形性に優れている。さらに、形状保持性も高かった。また、これら成形体に目視できるクラックは確認できなかった。
比較例1は、押し込み硬さHB100およびさHB2000がいずれも小さい例である。この例では離型性および賦形性が低い。
比較例2から比較例4は、押し込み硬さHB2000が大きい例である。これらの例でも賦形性が低い。比較例3および比較例4では、形状保持性も低かった。
【0246】
[実施例7]
(1)樹脂組成物HC2の調製
プロピレングリコールモノメチルエーテルを含む容器に、アクリルポリマーAを43部、アロニックスM-402を42部、ELCOM V-8802を15部、Omnirad184を上記の樹脂成分とELCOM V-8802との合計100部に対して2.9部、Omnirad TPO Hを上記の樹脂成分とELCOM V-8802との合計100部に対して3.9部混合して、固形分濃度35%の透明な樹脂組成物HC2を製造した。
【0247】
(2)積層フィルムの作製
樹脂組成物HC1に替えて樹脂組成物HC2を用いたこと以外、実施例6と同様にして、積層フィルムA7を得た。
(3)成形体の作製
積層フィルムA7を用いて、実施例1と同様にして、成形体X7を得た。積層フィルムA7および成形体X7について、上記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0248】
[実施例8]
(1)樹脂組成物HC3の調製
プロピレングリコールモノメチルエーテルを含む容器に、アクリルポリマーAを51部、アロニックスM-402を49部、Omnirad184を上記の樹脂成分100部に対して2.9部、Omnirad TPO Hを上記の樹脂成分の合計100部に対して3.9部混合して、固形分濃度35%の透明な樹脂組成物HC3を製造した。
【0249】
(2)積層フィルムの作製
樹脂組成物HC1に替えて樹脂組成物HC3を用いたこと以外、実施例6と同様にして、積層フィルムA8を得た。
(3)成形体の作製
積層フィルムA8を用いて、実施例1と同様にして、成形体X8を得た。積層フィルムA8および成形体X8について、上記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0250】
[実施例9]
(1)樹脂組成物HC4の調製
プロピレングリコールモノメチルエーテルを含む容器に、アクリルポリマーBを73部、紫光UV-AF305Aを12部、ELCOM V-8802を15部、Omnirad184を上記の樹脂成分とELCOM V-8802との合計100部に対して2.9部、Omnirad TPO Hを上記の樹脂成分とELCOM V-8802との合計100部に対して3.9部混合して、固形分濃度35%の透明な樹脂組成物HC4を製造した。
【0251】
(2)積層フィルムの作製
樹脂組成物HC1に替えて樹脂組成物HC4を用いたこと以外、実施例6と同様にして、積層フィルムA9を得た。
(3)成形体の作製
積層フィルムA9を用いて、実施例1と同様にして、成形体X9を得た。積層フィルムA9および成形体X9について、上記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0252】
[実施例10]
(1)樹脂組成物HC5の調製
プロピレングリコールモノメチルエーテルを含む容器に、アクリルポリマーBを85部、ELCOM V-8802を15部、Omnirad184を上記の樹脂成分とELCOM V-8802との合計100部に対して2.9部、Omnirad TPO Hを上記の樹脂成分とELCOM V-8802との合計100部に対して3.9部混合して、固形分濃度35%の透明な樹脂組成物HC5を製造した。
【0253】
(2)積層フィルムの作製
樹脂組成物HC1に替えて樹脂組成物HC5を用いたこと以外、実施例6と同様にして、積層フィルムA10を得た。
(3)成形体の作製
積層フィルムA10を用いて、実施例1と同様にして、成形体X10を得た。積層フィルムA10および成形体X10について、上記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0254】
[実施例11]
(1)樹脂組成物HC6の調製
プロピレングリコールモノメチルエーテルを含む容器に、アクリルポリマーBを100部、Omnirad184を上記の樹脂成分100部に対して2.9部、Omnirad TPO Hを上記の樹脂成分100部に対して3.9部混合して、固形分濃度35%の透明な樹脂組成物HC6を製造した。
【0255】
(2)積層フィルムの作製
樹脂組成物HC1に替えて樹脂組成物HC6を用いたこと以外、実施例6と同様にして、積層フィルムA11を得た。
(3)成形体の作製
積層フィルムA11を用いて、実施例1と同様にして、成形体X11を得た。積層フィルムA11および成形体X11について、上記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0256】
[実施例12]
(1)樹脂組成物HC7の調製
プロピレングリコールモノメチルエーテルを含む容器に、CN-9893を67.5部、アロニックスM-315を22.5部、アートレジンH-7M40を5.0部、アートレジンUN-904Mを5.0部、Omnirad184を上記の樹脂成分100部に対して2.9部、Omnirad TPO Hを上記の樹脂成分100部に対して3.9部混合して、固形分濃度35%の透明な樹脂組成物HC7を製造した。
【0257】
(2)積層フィルムの作製
樹脂組成物HC1に替えて樹脂組成物HC7を用いたこと、コーティング層の膜厚を3μmにしたこと、および、活性エネルギー線を、積算光量が150mJ/cm2になるように照射したこと以外、実施例1と同様にして、積層フィルムA12を得た。
(3)成形体の作製
積層フィルムA12を用いて、実施例1と同様にして、成形体X12を得た。積層フィルムA12および成形体X12について、上記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0258】
[実施例13]
(1)樹脂組成物HC8の調製
プロピレングリコールモノメチルエーテルを含む容器に、アートレジンH-7M40を50部、アートレジンUN-904Mを50部、Omnirad184を上記の樹脂成分100部に対して2.9部、Omnirad TPO Hを上記の樹脂成分100部に対して3.9部混合して、固形分濃度35%の透明な樹脂組成物HC8を製造した。
【0259】
(2)積層フィルムの作製
樹脂組成物HC1に替えて樹脂組成物HC8を用いたこと、および、コーティング層の膜厚を3μmにしたこと、および、活性エネルギー線を、積算光量が150mJ/cm2になるように照射したこと以外、実施例1と同様にして、積層フィルムA13を得た。
(3)成形体の作製
積層フィルムA13を用いて、実施例1と同様にして、成形体X13を得た。積層フィルムA13および成形体X13について、上記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0260】
[比較例5]
(1)樹脂組成物HC9の調製
プロピレングリコールモノメチルエーテルを含む容器に、紫光UV-AF305Aを85部、ELCOM V-8802を15部、Omnirad184を上記の樹脂成分とELCOM V-8802との合計100部に対して2.9部、Omnirad TPO Hを上記の樹脂成分とELCOM V-8802との合計100部に対して3.9部混合して、固形分濃度35%の透明な樹脂組成物HC9を製造した。
【0261】
(2)積層フィルムの作製
樹脂組成物HC1に替えて樹脂組成物HC9を用いたこと以外、実施例6と同様にして、積層フィルムB5を得た。
(3)成形体の作製
積層フィルムB5を用いて、実施例1と同様にして、成形体Y5を得た。積層フィルムB5および成形体Y5について、上記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0262】
[比較例6]
(1)樹脂組成物HC10の調製
プロピレングリコールモノメチルエーテルを含む容器に、紫光UV-AF305Aを100部、Omnirad184を上記の樹脂成分100部に対して2.9部、Omnirad TPO Hを上記の樹脂成分100部に対して3.9部混合して、固形分濃度35%の透明な樹脂組成物HC10を製造した。
【0263】
(2)積層フィルムの作製
樹脂組成物HC1に替えて樹脂組成物HC10を用いたこと以外、実施例6と同様にして、積層フィルムB5を得た。
(3)成形体の作製
積層フィルムB5を用いて、実施例1と同様にして、成形体Y6を得た。積層フィルムB6および成形体Y6について、上記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0264】
【0265】
実施例7から実施例13の成形体はいずれも、離型性および賦形性に優れている。実施例7から実施例12の成形体には、目視できるクラックは確認できなかった。実施例7から実施例11の成形体においては、さらに、形状保持性も高い。
比較例5は、押し込み硬さHB2000が過度に大きい例である。この例では、賦形性が低い。加えて、形状保持性も低かった。
比較例6は、押し込み硬さHB2000が大きい例である。この例では賦形性が低い。
【0266】
[実施例14]
(1)樹脂組成物LRの調製
プロピレングリコールモノメチルエーテルが投入された容器内で、アクリルポリマーAを14.8質量部、アロニックスM-402を10質量部、KRM-8452を13.3質量部、紫光UV-AF305Aを13.3質量部、および、Omnirad184を4.8質量部、混合した。さらに、スルーリア4320を43.8質量部、混合した。これにより、固形分濃度3%の乳白色の、低屈折率層用の樹脂組成物LRを調製した。樹脂組成物LRにより形成される層の屈折率は、1.20以上1.55以下であった。
【0267】
(2)積層フィルムの作製
(2-1)未硬化の光干渉層(低屈折率層)の形成
OPPフィルム(保護フィルム)に、樹脂組成物LRを、バーコーターにより、乾燥後の厚さが95nmになるよう塗布した。その後、80℃で1分間乾燥させて溶媒を揮発させ、未硬化の低屈折率層が形成された転写用フィルムC-1を得た。
【0268】
(2-2)未硬化のハードコート層の形成
実施例1と同様にして、透明支持基材上に、乾燥後の厚さが12μmの未硬化のハードコート層を形成した。
【0269】
(2-3)未硬化のハードコート層と低屈折率層との積層
透明支持基材で支持された未硬化のハードコート層表面と、転写用フィルムC-1の未硬化の低屈折率層表面とを貼り合わせた。続いて、保護フィルムを剥離した。
【0270】
(2-4)活性エネルギー線の照射
続いて、得られた積層体に積算光量35mJ/cm2の活性エネルギー線(紫外線)を照射した。これにより、透明支持基材と、半硬化のハードコート層と、半硬化の低屈折率層と、をこの順で有する積層フィルムA14を製造した。
【0271】
(3)成形体の作製
積層フィルムA1に替えて、未硬化の積層フィルムA14を用いたこと以外、実施例1と同様にして、透明支持基材と、透明支持基材の一方の主面に配置されたハードコート層と、ハードコート層上に配置された低屈折率層と、透明支持基材の他方の主面に配置された印刷層と、成形樹脂層と、を備える成形体X14を得た。積層フィルムA14および成形体X14について、上記の評価を行った。結果を表3に示す。
【0272】
[実施例15]
(1)樹脂組成物HRの調製
プロピレングリコールモノメチルエーテルが投入された容器内で、アクリルポリマーAを8.9質量部、KRM-8452を2.7質量部、および、Omnirad184を1.8質量部、混合した。さらに、HX-204 IPを86.5質量部、混合した。これにより、固形分濃度3%の乳白色の、高屈折率層用の樹脂組成物HRを調製した。樹脂組成物HRにより形成される層の屈折率は、1.55超2.00以下であった。
【0273】
(2)積層フィルムの作製
(2-1)未硬化の光干渉層(高屈折率層)の形成
OPPフィルム(保護フィルム)に、樹脂組成物R2を、バーコーターにより、乾燥後の厚さが95nmになるよう塗布した。その後、80℃で1分間乾燥させて溶媒を揮発させ、未硬化の高屈折率層が形成された転写用フィルムC-2を得た。
【0274】
(2-2)未硬化のハードコート層の形成
実施例1と同様にして、透明支持基材上に、乾燥後の厚さが8μmの未硬化のハードコート層を形成した。
【0275】
(2-3)未硬化の低屈折率層の形成
実施例14と同様にして、未硬化の低屈折率層が形成された転写用フィルムC-1を得た。
【0276】
(2-4)未硬化のハードコート層と低屈折率層と高屈折率層との積層
まず、転写用フィルムC-2の未硬化の高屈折率層表面と、透明支持基材で支持された未硬化のハードコート層表面とを貼り合わせた。
【0277】
次いで、転写用フィルムC-2の保護フィルムを剥離して、未硬化の高屈折率層を露出させた。続いて、高屈折率層に、転写用フィルムC-1の低屈折率層を貼り合わせた。保護フィルムを剥離して、積層体に積算光量35mJ/cm2の活性エネルギー線(紫外線)を照射した。半硬化状態のハードコート層、高屈折率層および低屈折率層をこの順で備える積層フィルムA15を得た。
【0278】
(3)成形体の作製
積層フィルムA14に替えて、積層フィルムA15を用いたこと以外、実施例14と同様にして、成形体X15を得た。積層フィルムA15および成形体X15について、上記の評価を行った。結果を表3に示す。
【0279】
実施例14および15では、さらに、得られた成形体の視感反射率も評価した。
(h)視感反射率
積層フィルムの透明支持基材における、ハードコート層とは反対側の面に対し、黒色塗料(品名:CZ-805 BLACK(日弘ビックス社製)を、バーコーターを用い、乾燥膜厚が3μm以上6μm以下となるように塗布した。次いで、黒色塗料を塗布した積層フィルムを、室温環境下で5時間放置し、乾燥を行った。続いて、積算光量1500mJ/cm2の活性エネルギー線を照射して、硬化した評価サンプルを作成した。
【0280】
評価サンプルの光干渉層側から、SCI方式による視感反射率を測定し、評価した。測定には、日本電色工業社製のSD7000を用い、測定波長領域を380nm以上780nm以下とした。
【0281】
【0282】
実施例14および15の成形体はいずれも、離型性、賦形性および形状保持性に優れている。さらに、これら成形体に、目視できるクラックは確認できなかった。加えて、成形体の視感反射率は小さく、優れた反射防止性能を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0283】
本発明によれば、微細な凹凸の賦形性および離型性に優れる積層フィルムを提供することができる。そのため、この積層フィルムは、特にシームレスデザインを備えるディスプレイの保護材を製造するために好ましく用いられる。
【0284】
本願は、2020年5月20日付けで日本国にて出願された特願2020-088300に基づく優先権を主張し、その記載内容の全てが、参照することにより本明細書に援用される。
【符号の説明】
【0285】
10 積層フィルム
11 透明支持基材
12 コーティング層
20A、20B、20C、20D 成形体
22 硬化樹脂層
221 第1領域
222 第2領域
23 加飾層
24 成形樹脂層