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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】分解性ポリエステル繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/62 20060101AFI20230616BHJP
   D01D 4/02 20060101ALI20230616BHJP
   D01D 5/098 20060101ALI20230616BHJP
   D01D 5/253 20060101ALI20230616BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20230616BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
D01F6/62 303F
D01F6/62 306C
D01D4/02
D01D5/098
D01D5/253
C08L67/02
C08K3/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022537429
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 CN2020095572
(87)【国際公開番号】W WO2021135079
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】201911386281.8
(32)【優先日】2019-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518015734
【氏名又は名称】江蘇恒力化繊股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 山水
(72)【発明者】
【氏名】范 紅衛
(72)【発明者】
【氏名】湯 方明
(72)【発明者】
【氏名】王 麗麗
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109722740(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106400166(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109505026(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109666982(CN,A)
【文献】特表2022-511950(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111118650(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00-6/96、9/00-9/04
D01D1/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解性ポリエステル繊維の製造方法であって、ポリエチレンテレフタレート(PET)融体を紡糸口金上のY字型吐出孔から圧出した後、環状吹きで冷却し、FDY工程により延伸糸(Fully Drawn Yarn,FDY)を得て、さらに緩和熱処理して分解性ポリエステル繊維を得ることを特徴とし、
前記PET融体には、ドーピング修飾したZrOが分散されており、
前記ドーピング修飾の工程は、金属イオンMx+の溶液とZr4+の溶液とを均一になるように混合した後、沈殿剤を滴加して混合液のpH値を9~10に調整し、最後に沈殿物をか焼するものであり、
前記金属イオンMx+は、Mg2+、Li及びZn2+のうちの一種以上であり、
Y字型吐出孔におけるY字の中心線同士がなすスリット角の大きさの比率は1.0:1.5~3.1:1.5~3.1であり、Y字の幅は同一であり、最小スリット角をつくる2スリットとほかのスリットとの長さ比率は3:3:2であり、最短スリットの長幅比は1.5~2:1であり、
各Y字型吐出孔のY字の形状及びサイズは同一であり、
全てのY字型吐出孔は同心円を成すように分布し、各Y字型吐出孔の最小スリット角と向かい合うスリットの中心線は円心を通り、円心の反対方向へ向かう、
ことを特徴とする分解性ポリエステル繊維の製造方法。
【請求項2】
前記PET融体の固有粘度は0.60~0.66dL/gである
ことを特徴とする請求項1に記載の分解性ポリエステル繊維の製造方法。
【請求項3】
FDY紡糸工程に関する紡糸温度は280~285℃、冷却温度は20~25℃、冷却風速度は1.80~2.30m/s、第1ローラ速度は1800~2000m/min、第1ローラ温度は85~95℃、第2ローラ速度は3500~3700m/min、第2ローラ温度は160~180℃、巻取速度は3430~3610m/minとする
ことを特徴とする請求項2に記載の分解性ポリエステル繊維の製造方法。
【請求項4】
PET中のドーピング修飾したZrOの含有量は0.03~0.06wt%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の分解性ポリエステル繊維の製造方法。
【請求項5】
金属イオンMx+を含む溶液の濃度は、1~2wt%であり、溶剤は水であり、溶液中の陰イオンはNO-であり、
前記Zr4+を含む溶液は、濃度が20~25wt%のZrOの溶液であり、溶剤は硝酸であり、前記沈殿剤は濃度2mol/Lのアンモニア水であり、沈殿開始時、前記混合液中のMx+とZr4+のモル比は5~8:100である、
ことを特徴とする請求項4に記載の分解性ポリエステル繊維の製造方法。
【請求項6】
前記か焼前に、沈殿物を洗浄し、105~110℃で2~3時間乾燥させ、
前記か焼工程は、まず400℃まで昇温した後、2~3時間保温し、次に700℃まで昇温した後、1~2時間保温し、最後に空気中で冷却する、
ことを特徴とする請求項5に記載の分解性ポリエステル繊維の製造方法。
【請求項7】
前記緩和熱処理の温度は90~120℃、処理時間は20~30minである、
ことを特徴とする請求項1に記載の分解性ポリエステル繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概してポリエステル繊維製造技術に関し、より詳しくは、一種の分解性ポリエステル繊維及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学繊維は1920年代の有機合成化学と高分子化学の発展に始まり、わずか数十年間で紡績産業の柱になって生産量でも応用でも天然繊維をはるかに上回る。「三大合繊」と呼ばれたポリエステル、ナイロン及びアクリルのうちに、ポリエステル繊維は発展速度が最も早く、応用が最も広く、産量が最も高くて化学繊維ナンバーワンとして今の最も重要な紡績材料の一つになった。ポリエステル繊維は、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートとエチレングリコールとを原料としてエステル化またはエステル交換、さらに重縮合を経てポリエチレンテレフタレート(PET)になり、紡糸及び後処理により製造される繊維である。なお、半結晶高分子としてのポリエステルは良い熱可塑性を持って、服装、包装、生物産業、製造業などの分野に広く応用されている。PET産業の急発展とともに、PET廃棄物は環境に直接的な害を及ぼさないけれども、その膨大な排出量及び大気環境と微生物に高い耐性のために、既に世界的な有機環境汚染物質となった。今のPET廃棄物処理は、埋立、焼却または再生利用等によって行う。そのうち、埋立や焼却は便利であるが環境に悪影響があるので、再生利用は有効的で科学的な適正処理である。しかしながら、緻密な構造・高い結晶度を持つポリエステルは自然分解が遅いだから、再生利用処理の割合はまだ小さく、最高でも13%しかではない。近年中国のポリエステル再生利用はますます推し進められているが、回収率はまだ10%未満である。実用化のポリエステル分解方法は多く化学分解を採用しており、主に水分解とアルコール分解であって、ほかはアンモニア、アミンまたは熱などにより行う分解もある。しかしながら、今の化学分解によるポリエステル処理は、速度が遅くて効率が低いため、大量の衣類廃棄物の再生利用問題がまだ解決できない。
【0003】
つまり、ポリエステルの分解速度と分解効率を高める方法及び該ポリエステルの紡糸加工に関する研究は重要な意義がある課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来のポリエステル繊維の回収しにくいという問題を克服し、一種の分解性ポリエステル繊維及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため本発明は、
ポリエチレンテレフタレート(PET)融体を紡糸口金上のY字型吐出孔から圧出した後、環状吹きで冷却し、FDY工程により延伸糸(Fully Drawn Yarn,FDY)を得て、さらに緩和熱処理して分解性ポリエステル繊維を得る分解性ポリエステル繊維の製造方法であり、
前記PET融体には、ドーピング修飾ZrO2が分散されており、
前記ドーピング修飾の工程は、金属イオンMx+の溶液とZr4+の溶液とを均一になるように混合した後、沈殿剤を滴加して混合液のpH値を9~10に調整し、最後に沈殿物をか焼するものであり、
前記金属イオンMx+は、Mg2+、Li+及びZn2+のうちの一種以上であり、
Y字型吐出孔におけるY字の中心線同士がなすスリット角の大きさの比率は1.0:1.5~3.1:1.5~3.1であり、Y字の幅は同一であり、最小スリット角をつくる2スリットとほかのスリットとの長さ比率は3:3:2であり、最短スリットの長幅比は1.5~2:1であり、
各Y字型吐出孔のY字の形状及びサイズは同一であり、
全てのY字型吐出孔は同心円を成すように分布し、各Y字型吐出孔の最小スリット角と向かい合うスリットの中心線は円心を通り、円心の反対方向へ向かう、ことを課題解決のための手段とするものである。
【0006】
発明原理としては以下の通りである。
【0007】
本発明における分解性ポリエステル繊維は、ドーピング修飾したZrO2が分散されたポリエチレンテレフタレート融体をY字型吐出孔により圧出して紡糸するものである。本発明は溶液ブレンド、共沈殿及びか焼工程によりZrO2を金属酸化物(酸化マグネシウムと酸化リチウムと酸化亜鉛との中の一種以上)でドーピング修飾して、ZrO2の触媒する酸素還元過程に影響を与えて、ポリエステルの分解を加速する。酸素還元触媒としてのZrO2は、高イオン伝導率を持って、さらに低価数金属イオン(Mg2+、Li+またはZn2+)でドーピングすると、安定的な立方晶相が形成できる。なお、ある程度にドープイオンの半径がドープされたイオンの半径に近いほど,酸素活性点の形成及び酸素イオンの伝導に有利である。よって、本発明はZr4+と同じ半径の金属イオン(Mg2+、Li+またはZn2+の半径はすべて0.103nmである)でZrO2をドーピングして、酸素イオンの伝導を加速しさらに酸素還元反応を促進する。
【0008】
さらに、本発明における分解性ポリエステル繊維はY字型の異形断面を持って同じ繊度の丸断面繊維よりもっと広い表面積を有し、これも酸素イオンの伝導とポリエステルの分解を利する。
【0009】
本発明における口金は、長さもなす角も非合同な3スリットで組み立つY字型吐出孔を有し、さらに各吐出孔の最小角に対するスリットは円心の反対方向へ配向しながらその中心線は円心を通る。こんなY字型吐出孔より圧出したポリエチレンテレフタレート融体が環状吹きに当たる時に、その三つの分岐は著しく非対称・不均一に冷却するため、繊維断面において異なる位置の冷却速度は違いになる。具体的に、1.80~2.30m/sの高い速度の冷却風をほぼ直面する分岐は、冷却風と全体で触れ合うので、ただ吹きあたる面で冷却風と接触するほかの2分岐に比べて冷却速度が早くなる。紡糸張力によって、冷却が遅い部分は細くなりやすくて内応力が集まる。つまり、糸条の断面においては寸法と内応力が不均一になる。さらに、本発明は非対称的なY字型吐出孔を採用してその不均一性を強化しており、よって、得られた繊維に緩和熱処理を与えると、弾性に富み回復率が高い捲縮形態が現れる。
【0010】
本発明に係る好適態様を以下に示す。
【0011】
前記分解性ポリエステル繊維の製造方法において、PET融液の固有粘度は0.60~0.66dL/gである。
【0012】
前記分解性ポリエステル繊維の製造方法において、FDY紡糸工程に関する紡糸温度は280~285℃、冷却温度は20~25℃、冷却風速度は1.80~2.30m/s、第1ローラ速度は1800~2000m/min、第1ローラ温度は85~95℃、第2ローラ速度は3500~3700m/min、第2ローラ温度は160~180℃、巻取速度は3430~3610m/minとする。
【0013】
前記分解性ポリエステル繊維の製造方法において、PET中のドーピング修飾ZrO2の含有量は0.03~0.06wt%である。
【0014】
前記分解性ポリエステル繊維の製造方法において、金属イオンMx+を含む溶液の濃度は、1~2wt%であり、溶剤は水であり、溶液中の陰イオンはNO3-であり、Zr4+を含む溶液は、濃度が20~25wt%のZrOの溶液であり、溶剤は硝酸であり、沈殿剤は濃度2mol/Lのアンモニア水であり、沈殿開始時、混合液中のMx+とZr4+のモル比は5~8:100である。
【0015】
前記分解性ポリエステル繊維の製造方法において、か焼前に、沈殿物を洗浄し、105~110℃で2~3時間乾燥させ、か焼工程は、まず400℃まで昇温した後、2~3時間保温し、次に700℃まで昇温した後、1~2時間保温し、最後に空気中で冷却する。
【0016】
前記分解性ポリエステル繊維の製造方法において、緩和熱処理の温度は90~120℃、処理時間は20~30minである。
【0017】
本発明は、前記好適態様のいずれか一項に記載する方法で製造する分解性ポリエステル繊維、すなわち3次元捲縮形態を有し、断面がY字型を成す、ドーピング修飾ZrO2を含む複数本のPET単繊維からなる分解性ポリエステル繊維も提供する。
【0018】
好ましくは、前記分解性ポリエステル繊維について、
捲縮収縮率は22~26%、捲縮安定度は77~81%、捲縮伸長率は56~62%、捲縮弾性回復率は75~80%である。
【0019】
また、前記分解性ポリエステル繊維について、破断強度は2.7cN/dtex以上、破断伸長率は45.0±5.0%、総繊度は100~150dtexであり、25℃の温度と65%の相対湿度との条件下で60月間放置した後、固有粘度が10~16%低下する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の利点としては、
(1)本発明に提出した方法において、ドーピング修飾したZrO2を添加剤とする便利な方式でポリエステル繊維の自然分解を著しく促進する。
(2)本発明に提出した分解性ポリエステル繊維の製造方法はコストが低くて広い分野に適用できる。
(3)本発明に提出した分解性ポリエステル繊維は良い分解性も優れた弾性もある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明におけるY字型吐出孔の見取り図である。
図2】本発明における口金の吐出孔配置概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施例を挙げてさらに詳細に本発明を説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、本発明の内容を読んだこの分野の技術者のいろいろな本発明を改正することを許されても、それは本発明の等価形として、本発明の請求の範囲内にも限定されている。
【0023】
本発明における巻縮収縮率と巻縮安定度は中国国家標準規格GB6506-2001の「合成繊維変形糸巻縮性能の試験方法」によって測定する。
【0024】
捲縮伸長率(変形糸の弾性と捲縮程度を示すことで、変形糸に標準初荷重を与えるときの糸長と、さらに(より高い)伸長荷重を与えるときの糸長の差の、標準初荷重下の糸長に対する百分率である)及び捲縮弾性回復率の測定方法としては、
まず約50cmの繊維サンプルを100℃の水で30minかけて熱処理して自然乾燥し、次に約30cmの部分を切り取って、一端を固定して、そこから20cmの位置を表記して、他の端に0.0018cN/dtexの標準初荷重を与えて、30sを経た際に固定端から表記点までの糸長を初期長l1と記録し、さらに荷重を0.09cN/dtexと変換して、30sを経た際に固定端から表記点までの糸長を荷重長l2と記録し、最後に荷重を除いて、2minの回復を経た後、0.0018cN/dtexの標準初荷重を再び加えて、30sを経た際に固定端から表記点までの糸長を回復長l3と記録し、そして以下の式
CE = (l2-l1)/l1
SR = (l2-l3)/(l2-l1)
で捲縮伸長率CEと捲縮弾性回復率SRを計算する。
【0025】
なお、本発明におけるY字型吐出孔の見取図は図1、口金の吐出孔配置概念図は図2に示す。Y字型吐出孔について、3スリットの中心線のなす角の比率は1.0:1.5~3.1:1.5:3.1とし、最小角をつくる2スリットとほかのスリットとの長さ比率は3:3:2とし、最短スリットの長幅比は1.5~2.1:1とし、そのうえ、吐出孔は全部同心円によって位置し、各吐出孔の最小角に対するスリットは円心の反対方向へ配向しながらその中心線は円心を通る。図1図2はただ表示のためであって、本発明を限定するものではない。
【0026】
実施例1
分解性ポリエステル繊維の製造方法は、固有粘度の0.6dL/gのPET融液を口金に位置するY字型吐出孔により圧出し、環状吹きで冷却し、FDYにし、そして緩和熱処理する。具体的には、以下のとおりである;
PETにおいては0.03wt%のドーピング修飾するZrO2が分散されていた。ドーピング修飾工程は、まず1wt%のMg(NO3)2水溶液と20wt%のZrO2硝酸溶液とをMg2+とZr4+とのモル比の5:100によってよく混合し、さらに混合液へ2mol/Lのアンモニア水を滴加して混合液のpH値を9まで調整して沈殿物を生成させ、そして沈殿物を105℃で2時間かけて乾燥し、400℃まで加熱し2時間かけて保温しさらに700℃まで加熱し1時間かけて保温し、最後に空気で冷却する;
Y字型吐出孔は、中心線のなす角の比率は1.0:1.5:1.5とする3スリットで組み立つものであり、さらに最小角をつくる2スリットとほかのスリットとの長さ比率は3:3:2とし、最短スリットの長幅比は1.5:1とし、そのうえに、吐出孔は全部同心円によって位置し、各吐出孔の最小角に対するスリットは円心の反対方向へ配向しながらその中心線は円心を通る;
FDY紡糸工程について、紡糸温度は280℃、冷却温度は20℃、冷却風速度は1.8m/s、第1ローラ速度は1800m/min、第1ローラ温度は85℃、第2ローラ速度は3500m/min、第2ローラ温度は160℃、巻取速度は3430m/minとする;
緩和熱処理の温度は90℃、時間は30minとする。
得られた分解性ポリエステル繊維は、多本のドーピング修飾したZrO2を含むY字型断面の捲縮単糸で組み立つものであり、その捲縮収縮率は22%、捲縮安定度は77%、捲縮伸長率は56%、捲縮弾性回復率は75%とし、その破断強度は2.7cN/dtex、破断伸長率は50%、総繊度は100dtexとし、25℃の温度と65%の相対湿度との条件下で60月間かけて置いた後、その固有粘度の低下は10%とする。
【0027】
実施例2
分解性ポリエステル繊維の製造方法は、固有粘度の0.62dL/gのPET融液を口金に位置するY字型吐出孔により圧出し、環状吹きで冷却し、FDYにし、そして緩和熱処理する。具体的には、以下のとおりである;
PETにおいては0.03wt%のドーピング修飾するZrO2が分散されていた。ドーピング修飾工程は、まず1wt%のMg(NO3)2水溶液と21wt%のZrO2硝酸溶液とをMg2+とZr4+とのモル比の8:100によってよく混合し、さらに混合液へ2mol/Lのアンモニア水を滴加して混合液のpH値を9まで調整して沈殿物を生成させ、そして沈殿物を105℃で2時間かけて乾燥し、400℃まで加熱し3時間かけて保温しさらに700℃まで加熱し2時間かけて保温し、最後に空気で冷却する;
Y字型吐出孔は、中心線のなす角の比率は1.0:1.5:1.5とする3スリットで組み立つものであり、さらに最小角をつくる2スリットとほかのスリットとの長さ比率は3:3:2とし、最短スリットの長幅比は1.5:1とし、そのうえに、吐出孔は全部同心円によって位置し、各吐出孔の最小角に対するスリットは円心の反対方向へ配向しながらその中心線は円心を通る;
FDY紡糸工程について、紡糸温度は280℃、冷却温度は21℃、冷却風速度は1.8m/s、第1ローラ速度は1818m/min、第1ローラ温度は93℃、第2ローラ速度は3538m/min、第2ローラ温度は163℃、巻取速度は3434m/minとする;
緩和熱処理の温度は92℃、時間は25minとする。
得られた分解性ポリエステル繊維は、多本のドーピング修飾したZrO2を含むY字型断面の捲縮単糸で組み立つものであり、その捲縮収縮率は22%、捲縮安定度は77%、捲縮伸長率は57%、捲縮弾性回復率は75%とし、その破断強度は2.8cN/dtex、破断伸長率は50%、総繊度は146dtexとし、25℃の温度と65%の相対湿度との条件下で60月間かけて置いた後、その固有粘度の低下は11%とする。
【0028】
実施例3
分解性ポリエステル繊維の製造方法は、固有粘度の0.61dL/gのPET融液を口金に位置するY字型吐出孔により圧出し、環状吹きで冷却し、FDYにし、そして緩和熱処理する。具体的には、以下のとおりである;
PETにおいては0.03wt%のドーピング修飾するZrO2が分散されていた。ドーピング修飾工程は、まず1wt%のLiNO3水溶液と25wt%のZrO2硝酸溶液とをLi+とZr4+とのモル比の5:100によってよく混合し、さらに混合液へ2mol/Lのアンモニア水を滴加して混合液のpH値を9まで調整して沈殿物を生成させ、そして沈殿物を105℃で2時間かけて乾燥し、400℃まで加熱し2時間かけて保温しさらに700℃まで加熱し1時間かけて保温し、最後に空気で冷却する;
Y字型吐出孔は、中心線のなす角の比率は1.0:1.7:1.7とする3スリットで組み立つものであり、さらに最小角をつくる2スリットとほかのスリットとの長さ比率は3:3:2とし、最短スリットの長幅比は1.5:1とし、そのうえに、吐出孔は全部同心円によって位置し、各吐出孔の最小角に対するスリットは円心の反対方向へ配向しながらその中心線は円心を通る;
FDY紡糸工程について、紡糸温度は281℃、冷却温度は23℃、冷却風速度は1.8m/s、第1ローラ速度は1851m/min、第1ローラ温度は93℃、第2ローラ速度は3542m/min、第2ローラ温度は166℃、巻取速度は3483m/minとする;
緩和熱処理の温度は93℃、時間は25minとする。
得られた分解性ポリエステル繊維は、多本のドーピング修飾したZrO2を含むY字型断面の捲縮単糸で組み立つものであり、その捲縮収縮率は24%、捲縮安定度は78%、捲縮伸長率は57%、捲縮弾性回復率は75%とし、その破断強度は2.8cN/dtex、破断伸長率は49.7%、総繊度は143dtexとし、25℃の温度と65%の相対湿度との条件下で60月間かけて置いた後、その固有粘度の低下は12%とする。
【0029】
実施例4
分解性ポリエステル繊維の製造方法は、固有粘度の0.62dL/gのPET融液を口金に位置するY字型吐出孔により圧出し、環状吹きで冷却し、FDYにし、そして緩和熱処理することであって、具体的には、以下のとおりである;
PETにおいては0.04wt%のドーピング修飾するZrO2が分散されていた。ドーピング修飾工程は、まず2wt%のLiNO3水溶液と20wt%のZrO2硝酸溶液とをLi+とZr4+とのモル比の8:100によってよく混合し、さらに混合液へ2mol/Lのアンモニア水を滴加して混合液のpH値を9まで調整して沈殿物を生成させ、そして沈殿物を107℃で2時間かけて乾燥し、400℃まで加熱し3時間かけて保温しさらに700℃まで加熱し1時間かけて保温し、最後に空気で冷却する;
Y字型吐出孔は、中心線のなす角の比率は1.0:1.9:1.9とする3スリットで組み立つものであり、さらに最小角をつくる2スリットとほかのスリットとの長さ比率は3:3:2とし、最短スリットの長幅比は1.8:1とし、そのうえに、吐出孔は全部同心円によって位置し、各吐出孔の最小角に対するスリットは円心の反対方向へ配向しながらその中心線は円心を通る;
FDY紡糸工程について、紡糸温度は283℃、冷却温度は23℃、冷却風速度は1.9m/s、第1ローラ速度は1905m/min、第1ローラ温度は93℃、第2ローラ速度は3556m/min、第2ローラ温度は169℃、巻取速度は3492m/minとする;
緩和熱処理の温度は97℃、時間は24minとする。
得られた分解性ポリエステル繊維は、多本のドーピング修飾したZrO2を含むY字型断面の捲縮単糸で組み立つものであり、その捲縮収縮率は24%、捲縮安定度は79%、捲縮伸長率は58%、捲縮弾性回復率は76%とし、その破断強度は2.8cN/dtex、破断伸長率は47.2%、総繊度は142dtexとし、25℃の温度と65%の相対湿度との条件下で60月間かけて置いた後、その固有粘度の低下は12%とする。
【0030】
実施例5
分解性ポリエステル繊維の製造方法は、固有粘度の0.62dL/gのPET融液を口金に位置するY字型吐出孔により圧出し、環状吹きで冷却し、FDYにし、そして緩和熱処理することであって、具体的には、以下のとおりである;
PETにおいては0.04wt%のドーピング修飾するZrO2が分散されていた。ドーピング修飾工程は、まず1wt%のZn(NO3)2水溶液と25wt%のZrO2硝酸溶液とをZn2+とZr4+とのモル比の6:100によってよく混合し、さらに混合液へ2mol/Lのアンモニア水を滴加して混合液のpH値を10まで調整して沈殿物を生成させ、そして沈殿物を108℃で2時間かけて乾燥し、400℃まで加熱し2時間かけて保温しさらに700℃まで加熱し2時間かけて保温し、最後に空気で冷却する;
Y字型吐出孔は、中心線のなす角の比率は1.0:1.9:1.9とする3スリットで組み立つものであり、さらに最小角をつくる2スリットとほかのスリットとの長さ比率は3:3:2とし、最短スリットの長幅比は1.8:1とし、そのうえに、吐出孔は全部同心円によって位置し、各吐出孔の最小角に対するスリットは円心の反対方向へ配向しながらその中心線は円心を通る;
FDY紡糸工程について、紡糸温度は284℃、冷却温度は23℃、冷却風速度は2.1m/s、第1ローラ速度は1905m/min、第1ローラ温度は94℃、第2ローラ速度は3572m/min、第2ローラ温度は173℃、巻取速度は3519m/minとする;
緩和熱処理の温度は101℃、時間は23minとする。
得られた分解性ポリエステル繊維は、多本のドーピング修飾したZrO2を含むY字型断面の捲縮単糸で組み立つものであり、その捲縮収縮率は25%、捲縮安定度は80%、捲縮伸長率は58%、捲縮弾性回復率は76%とし、その破断強度は2.8cN/dtex、破断伸長率は47.2%、総繊度は148dtexとし、25℃の温度と65%の相対湿度との条件下で60月間かけて置いた後、その固有粘度の低下は13%とする。
【0031】
実施例6
分解性ポリエステル繊維の製造方法は、固有粘度の0.65dL/gのPET融液を口金に位置するY字型吐出孔により圧出し、環状吹きで冷却し、FDYにし、そして緩和熱処理することであって、具体的には、以下のとおりである;
PETにおいては0.05wt%のドーピング修飾するZrO2が分散されていた。ドーピング修飾工程は、まず1wt%のZn(NO3)2水溶液と25wt%のZrO2硝酸溶液とをZn2+とZr4+とのモル比の5:100によってよく混合し、さらに混合液へ2mol/Lのアンモニア水を滴加して混合液のpH値を10まで調整して沈殿物を生成させ、そして沈殿物を110℃で2時間かけて乾燥し、400℃まで加熱し2時間かけて保温しさらに700℃まで加熱し2時間かけて保温し、最後に空気で冷却する;
Y字型吐出孔は、中心線のなす角の比率は1.0:2.5:2.5とする3スリットで組み立つものであり、さらに最小角をつくる2スリットとほかのスリットとの長さ比率は3:3:2とし、最短スリットの長幅比は2:1とし、そのうえに、吐出孔は全部同心円によって位置し、各吐出孔の最小角に対するスリットは円心の反対方向へ配向しながらその中心線は円心を通る;
FDY紡糸工程について、紡糸温度は284℃、冷却温度は23℃、冷却風速度は2.3m/s、第1ローラ速度は1946m/min、第1ローラ温度は95℃、第2ローラ速度は3576m/min、第2ローラ温度は174℃、巻取速度は3554m/minとする;
緩和熱処理の温度は101℃、時間は21minとする。
得られた分解性ポリエステル繊維は、多本のドーピング修飾したZrO2を含むY字型断面の捲縮単糸で組み立つものであり、その捲縮収縮率は25%、捲縮安定度は80%、捲縮伸長率は59%、捲縮弾性回復率は78%とし、その破断強度は3cN/dtex、破断伸長率は46.2%、総繊度は135dtexとし、25℃の温度と65%の相対湿度との条件下で60月間かけて置いた後、その固有粘度の低下は14%とする。
【0032】
実施例7
分解性ポリエステル繊維の製造方法は、固有粘度の0.63dL/gのPET融液を口金に位置するY字型吐出孔により圧出し、環状吹きで冷却し、FDYにし、そして緩和熱処理することであって、具体的には、以下のとおりである;
PETにおいては0.05wt%のドーピング修飾するZrO2が分散されていた。ドーピング修飾工程は、まず1wt%のMg(NO3)2水溶液と24wt%のZrO2硝酸溶液とをMg2+とZr4+とのモル比の8:100によってよく混合し、さらに混合液へ2mol/Lのアンモニア水を滴加して混合液のpH値を10まで調整して沈殿物を生成させ、そして沈殿物を110℃で3時間かけて乾燥し、400℃まで加熱し3時間かけて保温しさらに700℃まで加熱し1時間かけて保温し、最後に空気で冷却する;
Y字型吐出孔は、中心線のなす角の比率は1.0:3.1:3.1とする3スリットで組み立つものであり、さらに最小角をつくる2スリットとほかのスリットとの長さ比率は3:3:2とし、最短スリットの長幅比は2:1とし、そのうえに、吐出孔は全部同心円によって位置し、各吐出孔の最小角に対するスリットは円心の反対方向へ配向しながらその中心線は円心を通る;
FDY紡糸工程について、紡糸温度は285℃、冷却温度は24℃、冷却風速度は2.3m/s、第1ローラ速度は1992m/min、第1ローラ温度は95℃、第2ローラ速度は3619m/min、第2ローラ温度は179℃、巻取速度は3581m/minとする;
緩和熱処理の温度は119℃、時間は20minとする。
得られた分解性ポリエステル繊維は、多本のドーピング修飾したZrO2を含むY字型断面の捲縮単糸で組み立つものであり、その捲縮収縮率は26%、捲縮安定度は81%、捲縮伸長率は62%、捲縮弾性回復率は80%とし、その破断強度は3cN/dtex、破断伸長率は40.1%、総繊度は136dtexとし、25℃の温度と65%の相対湿度との条件下で60月間かけて置いた後、その固有粘度の低下は15%とする。
【0033】
実施例8
分解性ポリエステル繊維の製造方法は、固有粘度の0.66dL/gのPET融液を口金に位置するY字型吐出孔により圧出し、環状吹きで冷却し、FDYにし、そして緩和熱処理することであって、具体的には、以下のとおりである;
PETにおいては0.06wt%のドーピング修飾するZrO2が分散されていた。ドーピング修飾工程は、まず2wt%のMg(NO3)2水溶液と25wt%のZrO2硝酸溶液とをMg2+とZr4+とのモル比の8:100によってよく混合し、さらに混合液へ2mol/Lのアンモニア水を滴加して混合液のpH値を10まで調整して沈殿物を生成させ、そして沈殿物を110℃で3時間かけて乾燥し、400℃まで加熱し3時間かけて保温しさらに700℃まで加熱し2時間かけて保温し、最後に空気で冷却する;
Y字型吐出孔は、中心線のなす角の比率は1.0:3.1:3.1とする3スリットで組み立つものであり、さらに最小角をつくる2スリットとほかのスリットとの長さ比率は3:3:2とし、最短スリットの長幅比は2:1とし、そのうえに、吐出孔は全部同心円によって位置し、各吐出孔の最小角に対するスリットは円心の反対方向へ配向しながらその中心線は円心を通る;
FDY紡糸工程について、紡糸温度は285℃、冷却温度は25℃、冷却風速度は2.3m/s、第1ローラ速度は2000m/min、第1ローラ温度は95℃、第2ローラ速度は3700m/min、第2ローラ温度は180℃、巻取速度は3610m/minとする;
緩和熱処理の温度は120℃、時間は20minとする。
得られた分解性ポリエステル繊維は、多本のドーピング修飾したZrO2を含むY字型断面の捲縮単糸で組み立つものであり、その捲縮収縮率は26%、捲縮安定度は81%、捲縮伸長率は62%、捲縮弾性回復率は80%とし、その破断強度は3cN/dtex、破断伸長率は40%、総繊度は150dtexとし、25℃の温度と65%の相対湿度との条件下で60月間かけて置いた後、その固有粘度の低下は16%とする。
図1
図2