(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
E02F9/22 E
(21)【出願番号】P 2022551910
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2021033823
(87)【国際公開番号】W WO2022065143
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2020158816
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】吉川 正規
(72)【発明者】
【氏名】田中 哲二
(72)【発明者】
【氏名】青木 勇
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和之
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 浩司
(72)【発明者】
【氏名】内藤 啓介
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-065571(JP,A)
【文献】特開2018-053539(JP,A)
【文献】特開2015-063271(JP,A)
【文献】特開2014-145447(JP,A)
【文献】特開2011-122706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪が設けられた車体と、
前記車体に搭載されたエンジンと、
前記エンジンから伝達されるトルクを増幅させるトルクコンバータと、
前記エンジンの回転数を調整するアクセルペダルと、
前記複数の車輪に付与する制動力を調整するブレーキペダルと、
前記車体に取り付けられた荷役作業装置と、
前記荷役作業装置を駆動する油圧シリンダと、
前記エンジンにより駆動されて前記油圧シリンダに作動油を供給する荷役用油圧ポンプと、
前記エンジンを制御するコントローラと、
を備えた作業車両において、
前記コントローラは、
前記アクセルペダルの踏込量と、前記ブレーキペダルの踏込量と、前記トルクコンバータの回転速度の比であるトルコン速度比と、
に基づいて、前記エンジンがストール状態となる条件である第1制限条件を満たすか否かを判定し、
前記荷役用油圧ポンプの吐出圧と、前記油圧シリンダのストローク量と、に基づいて、
前記油圧シリンダのロッドがストロークエンドに近い位置まで伸びると共に、前記荷役用油圧ポンプから吐出した作動油がリリーフしそうな状態となる第2制限条件を満たすか否かを判定し、
前記第1制限条件および前記第2制限条件の両条件を満たすと判定した場合に、前記エンジンの上限回転数を制限する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
前記コントローラは、
前記アクセルペダルの踏込量がその上限値に基づいて設定された第1閾値以上であってかつ前記ブレーキペダルの踏込量がその上限値に基づいて設定された第2閾値以上であって、かつ前記トルコン速度比が前記エンジンのストール時における前記トルコン速度比に基づいて設定された第3閾値以下であって、かつ前記荷役用油圧ポンプの吐出圧がリリーフ圧に基づいて設定された第4閾値以上であって、かつ前記油圧シリンダのストローク量がその限界値に基づいて設定された第5閾値以上である場合に、前記エンジンの上限回転数を制限する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項1に記載の作業車両において、
前記荷役作業装置の角度を検出する角度センサを有し、
前記コントローラは、
前記角度センサで検出された前記荷役作業装置の角度に基づいて前記油圧シリンダのストローク量を算出する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項1に記載の作業車両において、
前記コントローラにより前記エンジンの上限回転数が制限されている旨の報知を行う報知装置を備え、
前記コントローラは、
前記エンジンの上限回転数を制限している場合に、前記報知に係る報知信号を前記報知装置に対して出力する
ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂や鉱物といった作業対象物の掘削作業や運搬作業、積込作業などに用いられる作業装置を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダや油圧ショベルなどの作業車両は、車体に対して上下方向に回動可能なアーム部材と、アーム部材に対して上下方向に回動可能なバケットと、を有する作業装置を備える。アーム部材およびバケットはそれぞれ、油圧シリンダに作動油が供給されてロッドが伸縮することにより駆動する。例えば、アーム部材が上がりきった状態や、バケットが積荷を抱え込んでいる状態では、ロッドが限界まで伸縮してピストンがストロークエンドに達し、衝撃が発生する場合がある。
【0003】
そこで、特許文献1に記載の油圧ショベルでは、油圧シリンダのピストンがストロークエンドに接近したことを検出すると、油圧ポンプの吐出流量やエンジン回転数を減少させて衝撃を緩和している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の油圧ショベルの技術をホイールローダに適用した場合、例えば、バケットがアーム部材に対して上方向に限界まで回動した状態(フルチルト状態)となり得る掘削作業や、アーム部材が車体に対して上方向に限界まで回動した状態となり得る積込み作業においても、エンジン回転数が制限されることになり、実作業が滞って作業効率が低下する虞がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、油圧シリンダがストロークエンドに位置した場合であっても、作業効率を維持しながら燃費を低減することが可能な作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、複数の車輪が設けられた車体と、前記車体に搭載されたエンジンと、前記エンジンから伝達されるトルクを増幅させるトルクコンバータと、前記エンジンの回転数を調整するアクセルペダルと、前記複数の車輪に付与する制動力を調整するブレーキペダルと、前記車体に取り付けられた荷役作業装置と、前記荷役作業装置を駆動する油圧シリンダと、前記エンジンにより駆動されて前記油圧シリンダに作動油を供給する荷役用油圧ポンプと、前記エンジンを制御するコントローラと、を備えた作業車両において、前記コントローラは、前記アクセルペダルの踏込量と、前記ブレーキペダルの踏込量と、前記トルクコンバータの回転速度の比であるトルコン速度比と、に基づいて、前記エンジンがストール状態となる条件である第1制限条件を満たすか否かを判定し、前記荷役用油圧ポンプの吐出圧と、前記油圧シリンダのストローク量と、に基づいて、前記油圧シリンダのロッドがストロークエンドに近い位置まで伸びると共に、前記荷役用油圧ポンプから吐出した作動油がリリーフしそうな状態となる第2制限条件を満たすか否かを判定し、前記第1制限条件および前記第2制限条件の両条件を満たすと判定した場合に、前記エンジンの上限回転数を制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、油圧シリンダがストロークエンドに位置した場合であっても、作業効率を維持しながら燃費を低減することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の各実施形態に係るホイールローダの一構成例を示す外観側面図である。
【
図2】ホイールローダによるVシェープローディングについて説明する説明図である。
【
図3A】ホイールローダの掘削作業において、バケットを地山に突入させた場面を説明する説明図である。
【
図3B】ホイールローダの掘削作業において、バケットが荷を掬い上げる場面を説明する説明図である。
【
図3C】ホイールローダの掘削作業において、荷が積まれた状態のバケットを上方に持ち上げる場面を説明する説明図である。
【
図4】ホイールローダのダンプアプローチ動作について説明する説明図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るホイールローダの駆動システムの構成を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る車体コントローラが有する機能を示す機能ブロック図である。
【
図7】第1実施形態に係る車体コントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】アクセルペダル踏込量とエンジン回転数との関係を示すグラフである。
【
図10】本発明の第2実施形態に係るホイールローダの駆動システムの構成を示す図である。
【
図11】エンジンとHSTポンプとの関係について示すグラフである。
【
図12】第2実施形態に係る車体コントローラが有する機能を示す機能ブロック図である。
【
図13】第2実施形態に係る車体コントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態に係る作業車両の一態様として、例えば土砂や鉱物といった作業対象物を掘削してダンプトラックなどの積込み先へ積み込む荷役作業を行うホイールローダについて説明する。
【0011】
<ホイールローダ1の構成>
まず、ホイールローダ1の構成について、
図1を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の各実施形態に係るホイールローダ1の一構成例を示す外観側面図である。
【0013】
ホイールローダ1は、車体が中心付近で中折れすることにより操舵されるアーティキュレート式の作業車両である。具体的には、車体の前部となる前フレーム1Aと車体の後部となる後フレーム1Bとが、センタジョイント10によって左右方向に回動自在に連結されており、前フレーム1Aが後フレーム1Bに対して左右方向に屈曲する。
【0014】
車体には4つの車輪11が設けられており、2つの車輪11が前輪11Aとして前フレーム1Aの左右両側に、残り2つの車輪11が後輪11Bとして後フレーム1Bの左右両側に、それぞれ設けられている。なお、
図1では、左右一対の前輪11Aおよび後輪11Bのうち、左側の前輪11Aおよび後輪11Bのみを示している。また、車体に設けられる複数の車輪11の具体的な数については、特に制限はない。
【0015】
前フレーム1Aの前部には、荷役作業に用いる油圧駆動式の荷役作業装置2が取り付けられている。荷役作業装置2は、前フレーム1Aに基端部が取り付けられたリフトアーム21と、リフトアーム21を駆動する2つのリフトアームシリンダ22と、リフトアーム21の先端部に取り付けられたバケット23と、バケット23を駆動するバケットシリンダ24と、リフトアーム21に回動可能に連結されてバケット23とバケットシリンダ24とのリンク機構を構成するベルクランク25と、を有している。
【0016】
なお、2つのリフトアームシリンダ22およびバケットシリンダ24はいずれも、荷役作業装置2を駆動する油圧シリンダの一態様である。また、2つのリフトアームシリンダ22は車体の左右方向に並んで配置されているが、
図1では、左側に配置されたリフトアームシリンダ22のみを破線で示している。
【0017】
リフトアーム21は、基端部が前フレーム1Aに取り付けられており、2つのリフトアームシリンダ22に作動油が供給されて各ロッド220が伸縮することにより、前フレーム1Aに対して上下方向に回動する。より具体的には、リフトアーム21は、2つのリフトアームシリンダ22の各ロッド220が伸びることにより前フレーム1Aに対して上方向に回動し、各ロッド220が縮むことにより前フレーム1Aに対して下方向に回動する。
【0018】
リフトアーム21における前フレーム1Aとの連結部の近くには、前フレーム1Aに対するリフトアーム21の角度θ1(以下、単に「アーム角度θ1」とする)を検出する角度センサとしてのアーム角度センサ31が取り付けられている。アーム角度センサ31で検出されたアーム角度θ1は、後述する車体コントローラ5に入力される。
【0019】
バケット23は、バケットシリンダ24に作動油が供給されてロッド240が伸縮することにより、リフトアーム21に対して上下方向に回動する。より具体的には、バケット23は、バケットシリンダ24のロッド240が伸びることによりチルト(リフトアーム21に対して上方向に回動)し、ロッド240が縮むことによりダンプ(リフトアーム21に対して下方向に回動)する。
【0020】
なお、バケット23は、例えばブレードなどの各種アタッチメントに交換することが可能であり、ホイールローダ1は、バケット23を用いた掘削作業の他に、押土作業や除雪作業などの各種作業を行うこともできる。
【0021】
バケット23におけるリフトアーム21との連結部の近くには、リフトアーム21に対するバケット23の角度θ2(以下、単に「バケット角度θ2」とする)を検出する角度センサとしてのバケット角度センサ32が取り付けられている。バケット角度センサ32で検出されたバケット角度θ2は、アーム角度θ1と同様に、後述する車体コントローラ5に入力される。
【0022】
後フレーム1Bには、オペレータが搭乗する運転室12と、ホイールローダ1の駆動に必要な各機器を内部に収容する機械室13と、車体が傾倒しないように荷役作業装置2とのバランスを保つためのカウンタウェイト14と、が設けられている。後フレーム1Bにおいて、運転室12は前部に、カウンタウェイト14は後部に、機械室13は運転室12とカウンタウェイト14との間に、それぞれ配置されている。
【0023】
<荷役作業時におけるホイールローダ1の動作>
次に、荷役作業時におけるホイールローダ1の動作について、
図2~4を参照して説明する。
【0024】
図2は、ホイールローダ1によるVシェープローディングについて説明する説明図である。
図3A~Cは、ホイールローダの掘削作業について説明する説明図であり、
図3Aは、バケット23を地山101に突入させた場面を、
図3Bは、バケット23が荷を掬い上げる場面を、
図3Cは、荷が積まれた状態のバケット23を上方に持ち上げる場面を、それぞれ示している。
図4は、ホイールローダ1のダンプアプローチ動作について説明する説明図である。
【0025】
まず、ホイールローダ1は、掘削対象である地山101に向かって前進し(
図2に示す矢印X1)、
図3Aに示すように、バケット23を地山101に突入させる。次に、
図3Bに示すように、オペレータがバケット23をチルトさせながらリフトアーム21を上げ操作することにより、又はバケット23をチルトさせた後にリフトアーム21を上げ操作することにより、ホイールローダ1は土砂や鉱物などの荷を掬い上げる。そして、
図3Cに示すように、オペレータがリフトアーム21を上げ操作することにより、荷が積まれた状態のバケット23はさらに上方に持ち上がる。
【0026】
図3A~Cに示す一連の作業が掘削作業に相当し、
図3Bおよび
図3Cに示す状態では、バケット23は、内部に積まれた荷がこぼれ落ちないよう、リフトアーム21に対して上方向に限界まで回動している(フルチルト状態)ことがある。その場合、バケットシリンダ24のロッド240は上限まで伸びており、バケットシリンダ24のストローク量は予め設定された限界値に達している。掘削作業が終わると、ホイールローダ1は、元の場所に一旦後退する(
図2に示す矢印X2)。
【0027】
次に、ホイールローダ1は、積込み先であるダンプトラック102に向かって前進し、ダンプトラック102の手前で停止するダンプアプローチ動作を行う(
図2に示す矢印Y1)。なお、
図2では、ダンプトラック102の手前で停止している状態のホイールローダ1を破線で示している。
【0028】
ダンプアプローチ動作では、
図4に示すように、具体的には、オペレータはアクセルペダルをいっぱいまで踏み込む(フルアクセル)と共に、リフトアーム21の上げ操作を行う(
図4に示す右側の状態)。次に、オペレータは、フルアクセルの状態のままにしてリフトアーム21をさらに上昇させながら、同時にブレーキペダルを少し踏み込んでダンプトラック102に衝突しないよう車速を調整する(
図4に示す中央の状態)。そして、オペレータはブレーキペダルをさらに踏み込んでダンプトラック102の手前で停止し、バケット23をダンプさせてバケット23内の荷をダンプトラック102へ排出する(
図4に示す左側の状態)。
【0029】
図4に示す左側の状態では、ダンプトラック102の荷台の高さに応じて、リフトアーム21は前フレーム1Aに対して上方向に限界まで回動していることがある。その場合、2つのリフトアームシリンダ22の各ロッド220は上限まで伸びており、2つのリフトアームシリンダ22のストローク量は予め設定された限界値に達している。また、バケット23のダンプ動作についても、リフトアーム21に対して下方向に限界まで回動している(フルダンプ状態)ことがある。その場合、バケットシリンダ24のロッド240は下限まで縮んでおり、バケットシリンダ24のストローク量は予め設定された限界値に達している。
【0030】
ダンプトラック102への積込み作業が終わると、ホイールローダ1は、元の場所に後退する(
図2に示す矢印Y2)。このように、ホイールローダ1は、地山101とダンプトラック102との間でV字状に往復走行する「Vシェープローディング」という方法により掘削作業および積込み作業を行う。
【0031】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係るホイールローダ1の駆動システムについて、
図5~9を参照して説明する。
【0032】
(駆動システムの全体構成)
まず、第1実施形態に係るホイールローダ1の駆動システムの全体構成について、
図5を参照して説明する。
【0033】
図5は、第1実施形態に係るホイールローダ1の駆動システムの構成を示す図である。
【0034】
本実施形態に係るホイールローダ1は、トルクコンバータ式の走行駆動システムによって車体の走行が制御されており、エンジン41と、エンジン41を制御するエンジンコントローラ41Aと、エンジン41の出力軸に連結されたトルクコンバータ42(以下、「トルコン42」とする)と、トルコン42の出力軸に連結されたトランスミッション43と、エンジンコントローラ41A、トルコン42、およびトランスミッション43を含む各機器を制御する車体コントローラ5と、を備えている。
【0035】
エンジンコントローラ41Aは、CANを介して車体コントローラ5に接続されており、車体コントローラ5から出力される信号に基づいてエンジン41を制御する。なお、必ずしも、エンジンコントローラ41Aと車体コントローラ5とが別々で設けられている必要はなく、エンジンコントローラ41Aと車体コントローラ5とで1つのコントローラが構成されていてもよい。
【0036】
トルコン42は、インペラ、タービン、およびステータで構成された流体クラッチであり、入力トルク(エンジン41から伝達されるトルク)に対して出力トルクを増幅させる機能、すなわちトルク比(=出力トルク/入力トルク)を1以上とする機能を有する。
【0037】
このトルク比は、トルコン42の入力軸の回転数でもあるエンジン41の回転数NE(以下、「エンジン回転数NE」とする)とトルコン42の出力軸の回転数NT(以下、「トルコン出力回転数NT」とする)との比、すなわちトルコン42の回転速度の比であるトルコン速度比e(=出力軸の回転数NT/入力軸の回転数NE)が大きくなるにつれて小さくなる。このようにして、トルコン42は、エンジン41の回転数を変えた上でトランスミッション43に伝達する。
【0038】
エンジン回転数NEはエンジン41の出力軸に設けられた第1回転数センサ33で、トルコン出力回転数NTはトルコン42の出力軸に設けられた第2回転数センサ34で、それぞれ検出されて車体コントローラ5に入力される。
【0039】
トランスミッション43は、複数のクラッチを有するクラッチ機構と、複数段の変速ギアを有するギア機構とによって構成されており、車体の進行方向および速度段を切り替える。すなわち、トランスミッション43は、トルコン42の出力軸のトルクや回転数、回転方向を変えた上で4つの車輪11へ伝達する。
【0040】
トルクコンバータ式の走行駆動システムでは、まず、運転室12内に設けられたアクセルペダル71をオペレータが踏み込むとその踏込量に応じてエンジン41が回転し、エンジン41の回転に伴ってエンジン41の出力軸に連結されたトルコン42の入力軸が回転する。すなわち、エンジン回転数NEはアクセルペダル71を操作することで調整される。
【0041】
アクセルペダル71の踏込量α(以下、「アクセルペダル踏込量α」とする)とエンジン回転数NEとは比例関係にあり、アクセルペダル踏込量αが大きくなるとエンジン回転数NEは増加する。なお、アクセルペダル踏込量αは、アクセルペダル71に取り付けられた第1踏込量センサ35によりペダル開度として検出されて車体コントローラ5に入力される。
【0042】
トルコン42の入力軸が回転すると、トルコン42の内部の油を介してトルコン42の出力軸が回転し、トルコン42からの出力トルクがトランスミッション43で変速された上で4つの車輪11にそれぞれ伝達される。これにより、ホイールローダ1が走行する。
【0043】
他方、ホイールローダ1を停止させる場合あるいは減速させる場合、オペレータは運転室12内に設けられたブレーキペダル72を踏み込む。そして、ブレーキペダル72の踏込量β(以下、「ブレーキペダル踏込量β」とする)に応じてトランスミッション43のクラッチ機構が制御され、4つの車輪11への駆動力の伝達が遮断される。すなわち、4つの車輪11に付与する制動力は、ブレーキペダル72を操作することで調整される。なお、ブレーキペダル踏込量βは、第2踏込量センサ36によりブレーキ二次圧として検出されて車体コントローラ5に入力される。
【0044】
また、ホイールローダ1には、車体の走行駆動システムに加えて、荷役作業装置2を駆動するための荷役駆動システムが搭載されている。荷役駆動システムは、エンジン41により駆動されて2つのリフトアームシリンダ22およびバケットシリンダ24のそれぞれに作動油を供給する荷役用油圧ポンプ44と、荷役用油圧ポンプ44と2つのリフトアームシリンダ22との間に設けられた第1方向制御弁45と、荷役用油圧ポンプ44とバケットシリンダ24との間に設けられた第2方向制御弁46と、を含んで構成される。
【0045】
第1方向制御弁45は、荷役用油圧ポンプ44から吐出されて2つのリフトアームシリンダ22に供給される作動油の流れ(流量および方向)を制御する。同様にして、第2方向制御弁46は、荷役用油圧ポンプ44から吐出されてバケットシリンダ24に供給される作動油の流れを制御する。荷役用油圧ポンプ44の吐出圧P1(以下、単位「吐出圧P1」とする)は、吐出圧センサ37で検出されて車体コントローラ5に入力される。
【0046】
第1方向制御弁45および第2方向制御弁46はそれぞれ、車体コントローラ5から出力された指令信号に基づいて制御される。運転室12内には、荷役作業装置2(リフトアーム21およびバケット23)を操作するための操作装置73が設けられており、操作装置73の操作量に応じた操作信号が車体コントローラ5に入力される。そして、車体コントローラ5は、操作装置73から出力された操作信号に基づいた指令信号を出力する。
【0047】
また、本実施形態では、運転室12内にはモニタ12Aが設けられており、モニタ12Aには、車体コントローラ5から出力された表示信号(報知信号)に基づいて、例えばエンジン41の状態など、ホイールローダ1の動作に必要な各機器の状態が表示される。
【0048】
(車体コントローラ5の構成)
次に、車体コントローラ5の構成について、
図6を参照して説明する。
【0049】
図6は、車体コントローラ5が有する機能を示す機能ブロック図である。
【0050】
車体コントローラ5は、CPU、RAM、ROM、HDD、入力I/F、および出力I/Fがバスを介して互いに接続されて構成される。そして、アーム角度センサ31、バケット角度センサ32、第1回転数センサ33、第2回転数センサ34、第1踏込量センサ35、および第2踏込量センサ36といった各種のセンサなどが入力I/Fに接続され、エンジンコントローラ41Aやモニタ12Aなどが出力I/Fに接続されている。
【0051】
このようなハードウェア構成において、ROMやHDD若しくは光学ディスク等の記録媒体に格納された制御プログラム(ソフトウェア)をCPUが読み出してRAM上に展開し、展開された制御プログラムを実行することにより、制御プログラムとハードウェアとが協働して、車体コントローラ5の機能を実現する。
【0052】
なお、本実施形態では、車体コントローラ5をソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成されるコンピュータとして説明しているが、これに限らず、例えば他のコンピュータの構成の一例として、ホイールローダ1の側で実行される制御プログラムの機能を実現する集積回路を用いてもよい。
【0053】
車体コントローラ5は、データ取得部51と、トルコン速度比算出部52と、ストローク量算出部53と、制限条件判定部54と、記憶部55と、信号出力部56と、を含む。
【0054】
データ取得部51は、第1踏込量センサ35で検出されたアクセルペダル踏込量α、第2踏込量センサ36で検出されたブレーキペダル踏込量β、第1回転数センサ33で検出されたエンジン回転数NE、第2回転数センサ34で検出されたトルコン出力回転数NT、吐出圧センサ37で検出された吐出圧P1、アーム角度センサ31で検出されたアーム角度θ1、およびバケット角度センサ32で検出されたバケット角度θ2に関するデータをそれぞれ取得する。
【0055】
トルコン速度比算出部52は、データ取得部51で取得されたエンジン回転数NEおよびトルコン出力回転数NTに基づいてトルコン速度比e(=NT/NE)を算出する。ストローク量算出部53は、データ取得部51で取得されたアーム角度θ1に基づいてリフトアームシリンダ22のストローク量S1(以下、「アームストローク量S1」とする)を、データ取得部51で取得されたバケット角度θ2に基づいてバケットシリンダ24のストローク量S2(以下、「バケットストローク量S2」)を、それぞれ算出する。
【0056】
なお、本実施形態では、車体コントローラ5が、検出されたアーム角度θ1に基づいてアームストローク量S1を、検出されたバケット角度θ2に基づいてバケットストローク量S2を、それぞれ算出しているが、これに限らず、例えば油圧シリンダのストローク量を測定可能なストロークセンサなどを用いて直接的にストローク量を検出してもよい。ただし、ストロークセンサなどを用いる場合には、リフトアームシリンダ22やバケットシリンダ24に別途新たに取り付ける必要があるため、既存のアーム角度センサ31およびバケット角度センサ32を用いた方がコストを削減することができる。
【0057】
制限条件判定部54は、第1制限条件および第2制限条件を満たすか否かを判定する。「第1制限条件」は、エンジン41のストールに係る条件であり、アクセルペダル踏込量αが第1踏込量閾値αth以上であって(α≧αth)、かつブレーキペダル踏込量βが第2踏込量閾値βth以上である(β≧βth)と共に、本実施形態では、トルコン速度比eが速度比閾値eth以下である(e≦eth)ことを含む。
【0058】
なお、トルコン速度比eが速度比閾値eth以下である(e≦eth)ことを第1制限条件に含めることによって、制限条件判定部54(車体コントローラ5)は、エンジン41のストール状態を精度よく判定することができる。
【0059】
第1踏込量閾値αthは、アクセルペダル踏込量の上限値に基づいて設定された第1閾値に相当し、例えば上限値の90%程度の値に設定されている。第2踏込量閾値βthは、ブレーキペダル踏込量の上限値に基づいて設定された第2閾値に相当し、例えば上限値の90%程度の値に設定されている。速度比閾値ethは、エンジン41のストール時におけるトルコン速度比に基づいて設定された第3閾値に相当し、例えば0.2程度の値に設定されている。
【0060】
すなわち、第1制限条件を満たす場合、ホイールローダ1は、少なくとも、停車に近い速度まで減速すると共に、上限回転数に近い回転数でエンジン41をふかしている状態(空ぶかし状態)となっている。
【0061】
「第2制限条件」は、荷役用油圧ポンプ44のリリーフおよびリフトアームシリンダ22またはバケットシリンダ24のストロークエンドに係る条件であり、吐出圧P1が吐出圧閾値P1th以上であって(P1≧P1th)、かつアームストローク量S1が第1ストローク量閾値S1th以上(S1≧S1th)またはバケットストローク量S2が第2ストローク量閾値S2th以上である(S2≧S2th)ことを含む。
【0062】
吐出圧閾値P1thは、荷役作業装置2を駆動するための駆動回路のメインリリーフ圧に基づいて設定された第4閾値に相当し、例えばメインリリーフ圧の90%程度に設定されている。第1ストローク量閾値S1thおよび第2ストローク量閾値S2thは、各ストローク量の限界値に基づいて設定された第5閾値に相当し、例えば各ストローク量の限界値の90%程度に設定されている。
【0063】
すなわち、第2制限条件を満たす場合、ホイールローダ1は、少なくとも、2つのリフトアームシリンダ22の各ロッド220およびバケットシリンダ24のロッド240のうちのいずれかがストロークエンドに近い位置まで伸びるまたは縮むと共に、荷役用油圧ポンプ44から吐出した作動油がリリーフしそうな状態となっている。
【0064】
記憶部55はメモリであり、第1踏込量閾値αth、第2踏込量閾値βth、速度比閾値eth、吐出圧閾値P1th、第1ストローク量閾値S1th、および第2ストローク量閾値S2thがそれぞれ記憶されている。
【0065】
信号出力部56は、制限条件判定部54において第1制限条件および第2制限条件を満たすと判定された場合、エンジンコントローラ41Aに対してエンジン41の上限回転数を制限する制限信号を出力する。なお、このエンジン41の上限回転数は、エンジン41の最高回転数であってもよいし、任意に定めた回転数であってもよい。
【0066】
また、本実施形態では、信号出力部56は、制限条件判定部54において第1制限条件および第2制限条件を満たすと判定された場合、モニタ12Aに対してエンジン41の上限回転数が制限されている旨の表示に係る表示信号をモニタ12Aに対して出力する。モニタ12Aは、エンジン41の上限回転数が制限されている旨の報知を行う報知装置の一態様である。なお、報知装置は、必ずしもモニタ12Aのような表示装置である必要はなく、例えば音声装置であってもよい。
【0067】
(車体コントローラ5内での処理)
次に、車体コントローラ5内で実行される具体的な処理の流れについて、
図7を参照して説明する。また、車体コントローラ5内の処理によって奏する作用および効果について、
図8および
図9を参照して説明する。
【0068】
図7は、車体コントローラ5で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図8は、アクセルペダル踏込量αとエンジン回転数NEとの関係を示すグラフである。
図9は、モニタ12Aの表示の一例を示す図である。
【0069】
まず、データ取得部51は、第1踏込量センサ35で検出されたアクセルペダル踏込量α、第2踏込量センサ36で検出されたブレーキペダル踏込量β、第1回転数センサ33で検出されたエンジン回転数NE、および第2回転数センサ34で検出されたトルコン出力回転数NTをそれぞれ取得する(ステップS501)。
【0070】
次に、トルコン速度比算出部52は、ステップS501で取得されたエンジン回転数NEおよびトルコン出力回転数NTに基づいてトルコン速度比e(=NT/NE)を算出する(ステップS502)。
【0071】
次に、制限条件判定部54は、ステップS501で取得されたアクセルペダル踏込量αが第1踏込量閾値αth以上であり、かつブレーキペダル踏込量βが第2踏込量閾値βth以上であるか否かを判定する(ステップS503)。
【0072】
ステップS503において、アクセルペダル踏込量αが第1踏込量閾値αth以上であり、かつブレーキペダル踏込量βが第2踏込量閾値βth以上である(α≧αthかつβ≧βth)と判定された場合(ステップS503/YES)、続いて、制限条件判定部54は、ステップS502で算出されたトルコン速度比eが速度比閾値eth以下であるか否かを判定する(ステップS504)。
【0073】
ステップS504において、トルコン速度比eが速度比閾値eth以下である(e≦eth)と判定された場合(ステップS504/YES)、データ取得部51は、吐出圧センサ37で検出された吐出圧P1、アーム角度センサ31で検出されたアーム角度θ1、およびバケット角度センサ32で検出されたバケット角度θ2をそれぞれ取得する(ステップS505)。
【0074】
次に、ストローク量算出部53は、ステップS505で取得されたアーム角度θ1に基づいてアームストローク量S1を、ステップS505で取得されたバケット角度θ2に基づいてバケットストローク量S2を、それぞれ算出する(ステップS506)。
【0075】
次に、制限条件判定部54は、ステップS505で取得された吐出圧P1が吐出圧閾値P1th以上であり、かつステップS506で算出されたアームストローク量S1が第1ストローク量閾値S1th以上またはバケットストローク量S2が第2ストローク量閾値S2th以上であるか否かを判定する(ステップS507)。
【0076】
ステップS507において、吐出圧P1が吐出圧閾値P1th以上であり、かつアームストローク量S1が第1ストローク量閾値S1th以上またはバケットストローク量S2が第2ストローク量閾値S2th以上である(P1≧P1thかつS1≧S1th、またはP1≧P1thかつS2≧S2th)と判定された場合(ステップS507/YES)、信号出力部56は、エンジンコントローラ41Aに対して制限信号を出力すると共に(ステップS508)、モニタ12Aに対して表示信号を出力し(ステップS509)、車体コントローラ5内における処理が終了する。
【0077】
ステップS503においてアクセルペダル踏込量αが第1踏込量閾値αth未満、またはブレーキペダル踏込量βが第2踏込量閾値βth未満である(α<αthまたはβ<βth)と判定された場合(ステップS503/NO)、ステップS504においてトルコン速度比eが速度比閾値ethよりも大きい(e>eth)と判定された場合(ステップS504/YES)、ステップS507において吐出圧P1が吐出圧閾値P1th以上でない、または吐出圧P1が吐出圧閾値P1th以上であってもアームストローク量S1が第1ストローク量閾値S1th未満であり、かつバケットストローク量S2が第2ストローク量閾値S2th未満である(P1<P1th、またはP1≧P1thかつS1<S1thかつS2<S2th)と判定された場合(ステップS507/NO)、車体コントローラ5における処理が終了する。
【0078】
このように、車体コントローラ5において、第1制限条件(少なくともステップS503)および第2制限条件(ステップS507)を満たす場合に、
図8に示すように、エンジン41の上限回転数をNE1からNE2(
図8において一点鎖線で示す)に制限することにより、エンジン41のストール状態を解消して燃費を低減することができる。そして、この場合、荷役作業装置2は、少なくともリフトアームシリンダ22およびバケットシリンダ24のいずれかがストロークエンドに近い状態であって、かつ荷役用油圧ポンプ44の作動油がリリーフ直前の状態であるため、エンジン41の上限回転数を制限しても作業に支障が出ない。したがって、ホイールローダ1では、作業効率を維持しながら燃費を低減することが可能となっている。
【0079】
また、本実施形態では、
図9に示すように、車体コントローラ5がエンジン41の上限回転数を制限している間その旨がモニタ12Aに表示されるため、オペレータに注意喚起を行うことができる。
【0080】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るホイールローダ1の駆動システムについて、
図10~13を参照して説明する。なお、
図10~13において、第1実施形態に係るホイールローダ1について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0081】
(駆動システムの全体構成)
まず、第2実施形態に係るホイールローダ1の駆動システムの全体構成について、
図10および
図11を参照して説明する。
【0082】
図10は、本発明の第2実施形態に係るホイールローダ1の駆動システムの構成を示す図である。
図11は、エンジン41とHSTポンプ61との関係について示すグラフである。
【0083】
本実施形態に係るホイールローダ1は、滑らかな発進および衝撃の少ない停止が可能であるHST式の走行駆動システムにより走行が制御されている。このHST式の走行駆動システムは、
図10に示すように、エンジン41により駆動される走行用油圧ポンプとしてのHSTポンプ61と、HSTポンプ61を制御するための圧油を補給するHSTチャージポンプ61Aと、一対の管路600A,600Bを介してHSTポンプ61と閉回路接続された走行用油圧モータとしてのHSTモータ62と、を含んで構成される。
【0084】
HSTポンプ61は、傾転角(傾転量)に応じて押しのけ容積が制御される斜板式の可変容量型の油圧ポンプである。傾転角は、車体コントローラ5Aから出力された指令信号にしたがってポンプ用レギュレータにより調整される。また、HSTポンプ61の傾転角θ3(以下、単に「傾転角θ3」とする)は、傾転角センサ38により検出されて車体コントローラ5Aに入力される。
【0085】
HSTモータ62は、傾転角(傾転量)に応じて押しのけ容積が制御される斜板式の可変容量型の油圧モータであり、エンジン3の駆動力を4つの車輪11に伝達する。傾転角は、HSTポンプ61の場合と同様に、車体コントローラ5Aから出力された指令信号にしたがってモータ用レギュレータにより調整される。なお、HSTモータ62の負荷圧力P2(以下、単に「負荷圧力P2」とする)は、一方の管路600A側に設けられた圧力センサ39で検出されて車体コントローラ5Aに入力される。
【0086】
HST式の走行駆動システムでは、まず、オペレータがアクセルペダル71を踏み込むとエンジン41が回転し、エンジン41の駆動力によりHSTポンプ61が駆動する。次に、HSTポンプ61から吐出した圧油がHSTモータ62に流入してHSTモータ62が回転する。そして、HSTモータ62から出力された出力トルクがアクスルを介して4つの車輪11に伝達されて車体が走行する。
【0087】
図11の上側および真ん中に示すように、アクセルペダル踏込量αが大きくなってエンジン回転数NEが増えていくと、HSTポンプ61の傾転角θ3および入力トルクTも比例して大きくなる。これにより、HSTポンプ61の吐出流量Qが増え、HSTポンプ61からHSTモータ62に流入する圧油の流量が増えるため、HSTモータ62の回転数が増加して車速が速くなる。
【0088】
(車体コントローラ5Aの構成)
次に、車体コントローラ5Aの構成について、
図12および
図13を参照して説明する。
【0089】
図12は、第2実施形態に係る車体コントローラ5Aが有する機能を示す機能ブロック図である。
図13は、第2実施形態に係る車体コントローラ5Aで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0090】
図12に示すように、本実施形態に係る車体コントローラ5Aは、データ取得部51Aと、ストローク量算出部53と、制限条件判定部54Aと、記憶部55Aと、信号出力部56と、を含む。すなわち、本実施形態に係る車体コントローラ5Aには、第1実施形態に係る車体コントローラ5に含まれていたトルコン速度比算出部52は含まれない。
【0091】
図13に示すように、まず、データ取得部51Aは、第1踏込量センサ35で検出されたアクセルペダル踏込量α、第2踏込量センサ36で検出されたブレーキペダル踏込量β、圧力センサ39で検出された負荷圧力P2、および傾転角センサ38で検出された傾転角θ3をそれぞれ検出する(ステップS501A)。
【0092】
次に、ステップS503に進み、制限条件判定部54Aは、ステップS501Aで取得されたアクセルペダル踏込量αが第1踏込量閾値αth以上であり、かつブレーキペダル踏込量βが第2踏込量閾値βth以上であるか否かを判定する。
【0093】
ステップS503において、アクセルペダル踏込量αが第1踏込量閾値αth以上であり、かつブレーキペダル踏込量βが第2踏込量閾値βth以上である(α≧αthかつβ≧βth)と判定された場合(ステップS503/YES)、続いて、制限条件判定部54Aは、ステップS501Aで取得された負荷圧力P2が圧力閾値P2th以上であり、かつ傾転角θ3が傾転角閾値θ3th以上であるか否かを判定する(ステップS504A)。
【0094】
ここで、圧力閾値P2thは、HST駆動回路のリリーフ圧に基づいて設定された第6閾値に相当し、例えばリリーフ圧の90%程度に設定されている。傾転角閾値θ3thは、HSTポンプ61の傾転角の上限値(傾転上限量)に基づいて設定された第7閾値に相当し、例えば上限角度の90%程度に設定されている。
【0095】
すなわち、本実施形態では、第1制限条件は、アクセルペダル踏込量αが第1踏込量閾値αth以上であって(α≧αth)、かつブレーキペダル踏込量βが第2踏込量閾値βth以上である(β≧βth)と共に、負荷圧力P2が圧力閾値P2th以上であり(P2≧P2th)、かつ傾転角θ3が傾転角閾値θ3th以上である(θ3≧θ3th)ことを含む。
【0096】
ステップS504Aにおいて、負荷圧力P2が圧力閾値P2th以上であり、かつ傾転角θ3が傾転角閾値θ3th以上である(P2≧P2thかつθ3≧θ3th)と判定された場合(ステップS504A/YES)、ステップS505以降へ進む。一方、ステップS504Aにおいて、負荷圧力P2が圧力閾値P2th未満、または傾転角θ3が傾転角閾値θ3th未満である(P2<P2thまたはθ3<θ3th)と判定された場合(ステップS504A/NO)、車体コントローラ5Aにおける処理が終了する。
【0097】
このように、ホイールローダ1の走行駆動システムがHST式の走行駆動システムの場合であっても、トルコン式の走行駆動システムの場合と同様に、車体コントローラ5Aが、第1制限条件および第2制限条件を満たす場合にエンジン41の上限回転数を制限することで、作業効率を維持しながら燃費を低減することが可能となっている。
【0098】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0099】
例えば、上記実施形態では、作業車両の一態様としてホイールローダ1を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えばフォークリフト等の他の作業車両にも本発明を適用することが可能である。
【0100】
また、上記実施形態において示したように、ホイールローダ1の走行に関する駆動方式については特に制限はなく、トルコン式であってもHST式であっても本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0101】
1:ホイールローダ(作業車両)
2:荷役作業装置
5,5A:車体コントローラ(コントローラ)
11,11A:前輪(車輪)
11,11B:後輪(車輪)
12A:モニタ(報知装置)
22:リフトアームシリンダ(油圧シリンダ)
24:バケットシリンダ(油圧シリンダ)
41:エンジン
42:トルコン(トルクコンバータ)
44:荷役用油圧ポンプ
51:アクセルペダル
52:ブレーキペダル
α:アクセルペダル踏込量
αth:第1踏込量閾値(第1閾値)
β:ブレーキペダル踏込量
βth:第2踏込量閾値(第2閾値)
e:トルコン速度比
eth:速度比閾値(第3閾値)
P1:吐出圧
P1th:吐出圧閾値(第4閾値)
S1,S2:ストローク量
S1th,S2th:ストローク量閾値(第5閾値)