(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】プライマー組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/14 20060101AFI20230619BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230619BHJP
C09D 133/06 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D5/00 D
C09D133/06
(21)【出願番号】P 2019093070
(22)【出願日】2019-05-16
【審査請求日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2018172626
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591037960
【氏名又は名称】シーカ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【氏名又は名称】木内 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】秋山 寿江
(72)【発明者】
【氏名】岡松 隆裕
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-265974(JP,A)
【文献】特開平07-286128(JP,A)
【文献】特表平08-504449(JP,A)
【文献】特開平05-032933(JP,A)
【文献】特開平11-106939(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163434(WO,A1)
【文献】特表平11-514392(JP,A)
【文献】特表平08-500370(JP,A)
【文献】国際公開第2017/065174(WO,A1)
【文献】特開2006-341224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル粒子を含有する(メタ)アクリル系エマルジョンを含有するプライマー組成物であって、
前記(メタ)アクリル粒子が、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(a)を重合させて得られる(メタ)アクリル系ポリマー(A)からなる粒子であり、
前記重合性モノマー(a)が、下記式(1)で表されるヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)
と、
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)と、
(メタ)アクリル酸モノマー(a3)と、
(メタ)アクリル系シランカップリング剤(a4)とを含有し、
前記重合性モノマー(a)に対する前記ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)のモル比(a1/a)が、
0.307~0.7である、
プライマー組成物。
【化1】
式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素数3以上のアルキレン基を表す。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)が、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー(a2-1)を含有し、
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、前記(メタ)アクリル酸モノマー(a3)に由来する繰り返し単位(A3)を有し、
前記繰り返し単位(A3)が有するカルボキシ基が、第3級アミン類(B)でイオン化されており、
前記重合性モノマー(a)に対する前記(メタ)アクリル系シランカップリング剤(a4)のモル比(a4/a)が、0.001~0.05であり、
前記重合性モノマー(a)に対する前記(メタ)アクリル酸モノマー(a3)のモル比(a3/a)が、0.01~0.2であり、
前記(メタ)アクリル酸モノマー(a3)に対する前記第3級アミン類(B)のモル比(B/a3)が、0.1~1.0であり、
前記(メタ)アクリル粒子の含有量が、組成物の総質量に対して、15質量%以上60質量%以下であり、
更に、充填剤を含有する請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
下地と防水材とを密着させるために使用され、
前記下地が無機系硬質素材であり、前記防水材がウレタン防水材である、
請求項1又は2に記載のプライマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建築用シーリング材(例えば防水材など)をモルタルのような無機系硬質素材等の被着体と接着させるために、被着体にプライマーを塗布することが必要である。
また、上記被着体は屋外で使用されるため、耐水性が要求される。
現在、環境汚染をできるだけ少なくし、作業者への安全衛生をより一層向上させるために水系プライマーの開発が求められている。
このように、水系プライマーには、優れた接着性や耐水性が要求される。
【0003】
従来種々のプライマー組成物が提案されているが、例えば、特許文献1には、耐水性に優れるプライマー組成物の提供を目的として、(メタ)アクリル系エマルジョンと、第3級アミン類とを含有し、(メタ)アクリル系エマルジョンが、アルコキシシリル基1を有するポリ(メタ)アクリレート、及び、アルキル基とヒドロキシ基とカルボキシ基とアルコキシシリル基2とを有する自己乳化型の(メタ)アクリル系ポリマーを含み、ポリ(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル系ポリマーの合計含有量が、15~60質量%である、防水材用のプライマー組成物(ただし、ポリ(メタ)アクリレートは、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を有さない。)が記載されている([請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようななか、本発明者らは特許文献1を参考にして、アルキル基とヒドロキシ基とカルボキシ基と加水分解性シリル基とを有する(メタ)アクリル系ポリマーを含有する(メタ)アクリル系エマルジョンを調製しこれをプライマーとしてモルタル等に塗布し乾燥させた場合、接着性及び耐水性が劣る場合があることを本発明者らは知見した。特に、プライマーの乾燥時間が長くなることによって接着破壊状態が変化する、又は、耐水試験後に接着破壊状態が著しく悪化する場合があることが明らかとなった。
そこで、本発明は、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性に優れるプライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、プライマー組成物に含有される(メタ)アクリル系ポリマーを構成する重合性モノマー(a)が特定のヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)を含有することによって所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0007】
[1] (メタ)アクリル粒子を含有する(メタ)アクリル系エマルジョンを含有するプライマー組成物であって、
上記(メタ)アクリル粒子が、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(a)を重合させて得られる(メタ)アクリル系ポリマー(A)からなる粒子であり、
上記重合性モノマー(a)が、下記式(1)で表されるヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)を含有し、
上記重合性モノマー(a)に対する上記ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)のモル比(a1/a)が、0.15以上である、プライマー組成物。
【化1】
式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素数3以上のアルキレン基を表す。
[2] 上記重合性モノマー(a)が、更に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)を含有し、
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)が、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー(a2-1)を含有する、[1]に記載のプライマー組成物。
[3] 上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、更に、(メタ)アクリル酸モノマー(a3)に由来する繰り返し単位(A3)を有し、
上記繰り返し単位(A3)が有するカルボキシ基が、第3級アミン類(B)でイオン化されている、[1]又は[2]に記載のプライマー組成物。
[4] 上記重合性モノマー(a)が、更に、
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)と、
(メタ)アクリル酸モノマー(a3)と、
(メタ)アクリル系シランカップリング剤(a4)とを含有する、[1]~[3]のいずれかに記載のプライマー組成物。
[5] 上記重合性モノマー(a)に対する上記(メタ)アクリル系シランカップリング剤(a4)のモル比(a4/a)が、0.001~0.05である、[4]に記載のプライマー組成物。
[6] 上記重合性モノマー(a)に対する上記(メタ)アクリル酸モノマー(a3)のモル比(a3/a)が、0.01~0.2である、[3]~[5]のいずれかに記載のプライマー組成物。
[7] 上記(メタ)アクリル酸モノマー(a3)に対する上記第3級アミン類(B)のモル比(B/a3)が、0.1~1.0である、[3]~[6]のいずれかに記載のプライマー組成物。
[8] 上記(メタ)アクリル粒子の含有量が、組成物の総質量に対して、15質量%以上60質量%以下である、[1]~[7]のいずれかに記載のプライマー組成物。
[9] 下地と防水材とを密着させるために使用される、[1]~[8]のいずれかに記載のプライマー組成物。
[10] 上記防水材がウレタン防水材である、[9]に記載のプライマー組成物。
[11] 上記下地が無機系硬質素材である、[9]又は[10]に記載のプライマー組成物。
[12] 更に、充填剤を含有する、[1]~[11]のいずれかに記載のプライマー組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプライマー組成物は、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルはアクリロイルまたはメタクリロイルを表し、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを表す。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性のうちの少なくとも1つがより優れることを、「本発明の効果がより優れる」ということがある。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル系シランカップリング剤(a4)」を「加水分解性シリル基含有重合性モノマー(a4)」と称する場合がある。
【0010】
[プライマー組成物]
本発明のプライマー組成物(本発明の組成物)は、
(メタ)アクリル粒子を含有する(メタ)アクリル系エマルジョンを含有するプライマー組成物であって、
上記(メタ)アクリル粒子が、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(a)を重合させて得られる(メタ)アクリル系ポリマー(A)からなる粒子であり、
上記重合性モノマー(a)が、下記式(1)で表されるヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)を含有し、
上記重合性モノマー(a)に対する上記ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)のモル比(a1/a)が、0.15以上である、プライマー組成物である。
【化2】
式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素数3以上のアルキレン基を表す。
【0011】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。
従来、建築用シーリング材に使用されるプライマー組成物において、接着性確保のため、上記組成物に含有される固形分(実質的なプライマー成分)が、シーリング材(防水材を含む。以下同様)及び/又は被着体(以下シーリング材及び/又は被着体を「シーリング材等」とも称する。)と相互作用及び/又は反応しうる官能基を有する手法が採用されている。上記のような官能基としては、例えば、ヒドロキシ基が挙げられる。
上記実質的なプライマー成分が、アルキル基とヒドロキシ基とカルボキシ基とアルコキシシリル基とを有する(メタ)アクリル系ポリマーである場合、上記(メタ)アクリル系ポリマーがヒドロキシ基を多く有すれば接着性を向上させうることが予測された。
しかし、上記予測に反し、上記ヒドロキシ基が2-ヒドロキシエチルメタアクリレートによって上記ポリマーに導入されている場合、(メタ)アクリル系ポリマーにおけるヒドロキシ基の含有量を単に多くしても、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性が、昨今要求されているレベルを満足しない場合があることを本発明者らは知見した(第1表の比較例1)。
【0012】
これに対して、ヒドロキシ基が上記式(1)で表されるヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)(以下これを「特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)」と称する場合がある。)によって導入された(メタ)アクリル系ポリマーを含有する本発明のプライマー組成物は、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性が優れることを本発明者らは見出している。
【0013】
これは、実質的なプライマー成分である(メタ)アクリル系ポリマーが、特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)に由来する繰り返し単位においてR2の炭素鎖が長いことによって、シーリング材等と相互作用/反応しやすいためであると本発明者らは推測する。
なお、本発明に関するメカニズムは上記に限定されない。本発明の範囲内であれば、メカニズムは上記以外であってもよい。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0014】
〔(メタ)アクリル系エマルジョン〕
本発明のプライマー組成物が含有する(メタ)アクリル系エマルジョンは、分散質としての(メタ)アクリル粒子と、分散媒とを含有するエマルジョンである。
ここで、分散質である(メタ)アクリル粒子の相は、液相であっても固相であってもよい。すなわち、一般的には、液相である分散媒に液相である分散質が分散した系を「エマルジョン」といい、液相である分散媒に固相である分散質が分散した系を「サスペンション」というが、本発明においては、「エマルジョン」は「サスペンション」を含む概念とする。
また、分散媒は水系溶媒であれば特に制限されない。水系溶媒としては、例えば、水;水に可溶な有機溶媒を水に混合した混合溶媒;などが挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば、アルコール;メチルエチルケトン(MEK)のようなケトンが挙げられる。
【0015】
<(メタ)アクリル粒子>
上記(メタ)アクリル粒子は、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(a)を重合させて得られる(メタ)アクリル系ポリマー(A)からなる粒子である。
上記(メタ)アクリル粒子は、上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)の粒子であればよい。
(メタ)アクリル粒子の形状は、粒状であれば特に制限されない。
また、(メタ)アクリル粒子の平均粒子径は、例えば、0.01~0.6μmとすることができる。なお、平均粒子径は、粒度径分布測定機(Nanotrac UPA-EX150、日機装社製)を用いて測定することができる。
【0016】
<ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)>
本発明において、上記重合性モノマー(a)は、下記式(1)で表されるヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)(特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1))を含有する。
【化3】
式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素数3以上のアルキレン基を表す。
上記重合性モノマー(a)が特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)を含有する、つまり、上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)が特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)に由来する繰り返し単位(A1)を有することによって、本発明のプライマー組成物は、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性に優れる。
【0017】
R1は、本発明の効果により優れ、プライマー層に柔軟性を付与できるという観点から、水素原子が好ましい。
【0018】
R2としてのアルキレン基の炭素数は、本発明の効果により優れ、プライマー層に柔軟性を付与できるという観点から、3~8が好ましく、4~8がより好ましく、4が更に好ましい。
上記アルキレン基は、直鎖状、分岐状若しくは環状又はこれらの組み合わせのいずれであってもよい。上記アルキレン基は直鎖状であることが好ましい。
式(1)において表されているOH(ヒドロキシ基)は、本発明の効果により優れ、プライマー層に柔軟性を付与できるという観点から、式(1)で表される化合物の末端(R2としてのアルキレン基の末端)に結合することが好ましい。
【0019】
上記ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)としては、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのうち、本発明の効果により優れるという観点から、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)がより好ましい。
【0020】
<特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)の含有量>
本発明において、上記重合性モノマー(a)(の全量。以下、(メタ)アクリル系ポリマーを重合する際に使用された各モノマーの含有量の規定において同様。)に対する特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)のモル比(a1/a)は、0.15以上である。
上記モル比(a1/a)が上記範囲であることによって、本発明のプライマー組成物は常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性に優れる。
上記モル比(a1/a)の上限は、0.7以下とできる。
上記モル比(a1/a)は、本発明の効果により優れるという観点から、0.2~0.6が好ましい。
【0021】
なお、本発明において、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を重合させる際に使用されたモノマーは、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する繰り返し単位に反映されるものとする。
このため、本発明において、(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)に由来する下記式(2)で表される繰り返し単位を有する。
【化4】
【0022】
また、本発明において、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を重合させる際に使用されたモノマーの使用量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する繰り返し単位の繰り返し単位数に反映されるとできる。
このため、本発明において、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する全繰り返し単位数に対する、上記式(2)で表される繰り返し単位の繰り返し単位の割合を、0.15以上とできる。
【0023】
((メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2))
上記重合性モノマー(a)は、更に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)を含有することが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)は、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルである。
【0024】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)において、エステル結合に結合するアルキル基(脂肪族炭化水素基)としては、例えば、直鎖状、分岐状若しくは環状のいずれか、又はこれらの組合せであってもよい。
【0025】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー(a2-1)、(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステルモノマー(a2-2)が挙げられる。
なお、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー(a2-1)においてシクロアルキル基が更にアルキル基を有してもよい。本明細書において、シクロアルキル基が更にアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマーを、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー(a2-1)に分類するものとする。
また、(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステルモノマー(a2-2)は、(メタ)アクリル酸直鎖状アルキルエステルモノマー及び(メタ)アクリル酸分岐状アルキルエステルモノマーのうちのいずれであってもよい。
(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステルモノマー(a2-2)は、エステル結合に結合するアルキル基(脂肪族炭化水素基)において環状構造を有さないものとできる。
【0026】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)は、本発明の効果により優れるという観点から、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー(a2-1)を含有することが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー(a2-1)及び(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステルモノマー(a2-2)を含有することがより好ましく、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー(a2-1)及び(メタ)アクリル酸分岐状アルキルエステルモノマーを含有することが更に好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステルモノマー(a2-2);
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー(a2-1)が挙げられる。
これらのうち、本発明の効果により優れ、プライマー層(膜)の耐水性に優れるという観点から、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが好ましく、メタクリル酸シクロヘキシルがより好ましく、2-エチルヘキシルアクリレート及びメタクリル酸シクロヘキシルを併用することが更に好ましい。
【0028】
・モル比(a1/a)と(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)の組み合わせ
・・組み合わせ1
上記モル比(a1/a)が0.35~0.45である場合、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)は、本発明の効果により優れるという観点から、(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステルモノマー(a2-2)を含有することが好ましく、(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステルモノマー(a2-2)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー(a2-1)を含有することがより好ましく、(メタ)アクリル酸分岐状アルキルエステルモノマー及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー(a2-1)を含有することが更に好ましい。
【0029】
・・組み合わせ2
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)が(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー(a2-1)のみである場合、上記モル比(a1/a)は、本発明の効果により優れるという観点から、0.15~0.7が好ましく、0.45を超えることがより好ましく、0.498~0.6が更に好ましい。
【0030】
((メタ)アクリル酸モノマー(a3))
上記重合性モノマー(a)は、更に、(メタ)アクリル酸モノマー(a3)を含有することが好ましい。
(メタ)アクリル酸モノマー(a3)は、アクリル酸および/またはメタクリル酸(MAA)である。これらのうち、メタクリル酸が好ましい。
【0031】
上記重合性モノマー(a)に対する(メタ)アクリル酸モノマー(a3)のモル比(a3/a)は、本発明の効果により優れ、プライマー層(膜)の耐水性に優れるという観点から、0.01~0.2が好ましく、0.05~0.15がより好ましい。
【0032】
((メタ)アクリル系シランカップリング剤(a4)(加水分解性シリル基含有重合性モノマー(a4)))
上記重合性モノマー(a)は、更に、(メタ)アクリル系シランカップリング剤(a4)(加水分解性シリル基含有重合性モノマー(a4))を含有することが好ましい。
(メタ)アクリル系シランカップリング剤(a4)(加水分解性シリル基含有重合性モノマー(a4))は、加水分解性シリル基と重合性官能基としての(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。
【0033】
上記加水分解性シリル基は、アルコキシシリル基であることが好ましく、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基がより好ましく、ジアルコキシシリル基が更に好ましい。
アルコキシシリル基がジアルコキシシリル基またはモノアルコキシシリル基である場合、上記アルコキシシリル基におけるケイ素原子に(アルコキシ基以外に)更に結合しうる基としては、例えば、炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、環状を含む。)、芳香族炭化水素基、又はこれらの組合せが挙げられる。上記炭化水素基は、アルキル基であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記加水分解性シリル基と上記重合性官能基とは、例えば、有機基(例えば、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基)を介して結合できる。上記有機基は特に制限されない。
【0034】
(メタ)アクリル系シランカップリング剤(a4)(加水分解性シリル基含有重合性モノマー(a4))としては、具体的には、例えば、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランが好ましく用いられる。
【0035】
上記重合性モノマー(a)に対する(メタ)アクリル系シランカップリング剤(a4)(加水分解性シリル基含有重合性モノマー(a4))のモル比(a4/a)は、本発明の効果により優れ、プライマー層(膜)の耐水性に優れるという観点から、0.001~0.05が好ましく、0.020~0.035がより好ましい。
【0036】
上記重合性モノマー(a)は、(特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)以外に)更に、
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)と、
上記(メタ)アクリル酸モノマー(a3)と、
上記(メタ)アクリル系シランカップリング剤(a4)(加水分解性シリル基含有重合性モノマー(a4))とを含有することが好ましい。
【0037】
本発明において、上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、ヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)に由来する繰り返し単位(A1)を少なくとも有する。
上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、更に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)に由来する繰り返し単位(A2)、及び/又は、(メタ)アクリル酸モノマー(a3)に由来する繰り返し単位(A3)を有することが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)に由来する繰り返し単位(A2)と、(メタ)アクリル酸モノマー(a3)に由来する繰り返し単位(A3)と、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系シランカップリング剤(a4)(加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有重合性モノマー(a4))に由来する繰り返し単位(A4)とを有することがより好ましい。
【0038】
本発明においては、上記(メタ)アクリル粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、上述したモノマー(a1)~(a4)に由来する繰り返し単位(A1)~(A4)以外に、他のモノマー、すなわち、エチレン性不飽和結合を有する化合物に由来する繰り返し単位を有していてもよい。
上記エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシシランのようなビニルシラン;オレフィン;スチレンのようなビニル性芳香族炭化水素化合物;(メタ)アクリルアミドモノマー(a5)などが挙げられる。
上記重合性モノマー(a)は、本発明の効果(特にオープンタイム後の接着性)により優れるという観点から、更に、上記エチレン性不飽和結合を有する化合物として、(メタ)アクリルアミドモノマー(a5)を含有することが好ましい。
【0039】
((メタ)アクリルアミドモノマー(a5))
上記重合性モノマー(a)が更に含有することができる(メタ)アクリルアミドモノマー(a5)は、(メタ)アクリルアミド基(CH2=CR-CO-N<又はCH2=CR-CO-NH-。式中のRは水素原子又はメチル基を表す。)を有する化合物であれば特に制限されない。
上記(メタ)アクリルアミド基における窒素原子に結合しうる基としては、例えば、水素原子、官能基を有してもよい炭化水素基が挙げられる。
上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、環状を含む。)、芳香族炭化水素基、又はこれらの組合せが挙げられる。上記炭化水素基は、アルキル基であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記(メタ)アクリルアミド基における窒素原子に結合しうる基は、官能基を有する炭化水素基が好ましい態様の1つとして挙げられる。上記官能基としては、例えば、ヒドロキシ基が挙げられる。
【0040】
(メタ)アクリルアミドモノマー(a5)としては、例えば、
(メタ)アクリルアミド;
N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミドのような、上記官能基がないアルキル(メタ)アクリルアミド;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドのような、ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0041】
(メタ)アクリルアミドモノマー(a5)は、本発明の効果により優れ、貯蔵安定性(例えば、長期貯蔵安定性又は高温貯蔵安定性。以下同様)に優れるという観点から、ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリルアミドが好ましく、ヒドロキシアルキル基を1つ有する(メタ)アクリルアミドがより好ましく、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが更に好ましい。
【0042】
上記重合性モノマー(a)に対する(メタ)アクリルアミドモノマー(a5)のモル比(a5/a)は、本発明の効果により優れ、プライマー層(膜)の耐水性、貯蔵安定性に優れるという観点から、0.001~0.01が好ましく、0.001~0.005がより好ましい。
【0043】
なお、上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、カルボキシ基と反応可能な官能基(例えば、カルボジイミド基又はオキサゾリン基)を有さないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0044】
・自己乳化型ポリマー
上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)が、更に、(メタ)アクリル酸モノマー(a3)に由来する繰り返し単位(A3)を有する場合、上記繰り返し単位(A3)が有するカルボキシ基が第3級アミン類(B)でイオン化されていることが好ましい。このような場合、上記第3級アミン類(B)でイオン化された(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、自己乳化型のポリマーとなりうる。
上記カルボキシ基の少なくとも一部が上記第3級アミン類(B)でイオン化されていればよく、すべてがイオン化されていてもよい。
イオン化されたカルボキシ基は-COO-で表される。
一方、第3級アミン類(B)はカルボキシ基をイオン化して、カチオンとなる。
【0045】
(第3級アミン類)
上記第3級アミン類(B)は、窒素原子に有機基(炭素原子)が3個結合する化合物であれば特に制限されない。
【0046】
有機基は特に制限されない。例えば、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基が挙げられる。
炭化水素基は、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、環状を含む。)、芳香族炭化水素基、又はこれらの組合せが挙げられる。
ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン等が挙げられる。ヘテロ原子は別のヘテロ原子、炭素原子又は水素原子と結合して官能基を構成してもよい。
有機基としては、具体的には例えば、ヒドロキシ基を有してもよい脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0047】
第3級アミン類(B)としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミンが挙げられる。
【0048】
上記第3級アミン類(B)の使用量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記(メタ)アクリル酸モノマー(a3)に対する上記第3級アミン類(B)のモル比(B/a3)が、0.1~1.0であることが好ましい。
【0049】
・(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量
本発明においては、上記(メタ)アクリル粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果がより優れるという観点から、10,000以上が好ましく、10,000~100,000がより好ましい。
なお、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で表される重量平均分子量である。
なお、本発明において、上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、上記第3級アミン類(B)を含まない。
【0050】
・(メタ)アクリル系ポリマー(A)の調製方法
上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)の調製方法としては、例えば、上記(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(a)を有機溶媒中、重合開始剤の存在下において重合させる方法が挙げられる。
【0051】
上記重合性モノマー(a)全量に対する上記重合開始剤のモル比(重合開始剤/a)は、本発明の効果により優れ、プライマー層(膜)の耐水性に優れるという観点から、0.001~0.01であることが好ましい。
【0052】
上記重合は、例えば、99℃以下の条件下において行うことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
このため、上記重合開始剤としては、例えば、10時間半減期温度(T10)が99℃以下の重合開始剤が好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記10時間半減期温度が99℃以下の重合開始剤としては、例えば、AIBN(2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、T10:65℃)のようなアゾ系重合開始剤;有機過酸化物が挙げられる。
【0053】
上記有機過酸化物としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーオクタO、10時間半減期温度が65.3℃)、ラウリルパーオキサイド(T10:62℃)のような脂肪族炭化水素のパーオキサイド;
ベンゾイルパーオキサイド(T10:74℃)のような芳香族パーオキサイドが挙げられる。
【0054】
本発明において、重合開始剤の10時間半減期温度は以下の方法で求めることができる。具体的には、ラジカルに対して不活性な溶剤を使用して重合開始剤の希薄溶液を調製した後、一定の温度にて熱分解させることを複数の温度で行うことにより、10時間半減期温度を求めることができる。アゾ系重合開始剤溶液の調製にはトルエンを溶剤として用いることができる。有機過酸化物系重合開始剤の調製にはモノクロロベンゼンを溶剤として用いることができる。
【0055】
上記10時間半減期温度が99℃以下の重合開始剤は、上記重合性モノマー(a)を効率よく(メタ)アクリル系ポリマー(A)に導入することによって、(メタ)アクリル系エマルジョン又はプライマー組成物中の残存モノマーを減らし、残存モノマーによる貯蔵安定性の低下を抑制し、長期又は高温の条件下における貯蔵安定性に優れるという観点から、有機過酸化物が好ましく、脂肪族炭化水素のパーオキサイドがより好ましく、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートが更に好ましい。
【0056】
・(メタ)アクリル系エマルジョンの調製方法
本発明においては、上記(メタ)アクリル系エマルジョンの調製方法は特に限定されず、例えば、上述した特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)、(メタ)アクリル酸モノマー(a3)および(メタ)アクリル系シランカップリング剤(a4)(加水分解性シリル基含有重合性モノマー(a4))を、AIBN(2,2′-アゾビスイソブチロニトリル)のような重合開始剤の存在下で重合させ、(メタ)アクリル系ポリマーを得、上記のように得られた(メタ)アクリル系ポリマーと第3級アミン類(B)を水中で混合することによって、(メタ)アクリル系エマルジョンを製造することができる。上記のとおり製造された(メタ)アクリル系エマルジョンは、(メタ)アクリル系ポリマーからなる粒子である(メタ)アクリル粒子を含有することができる。
【0057】
・・上記重合開始剤として有機過酸化物を使用して(メタ)アクリル系エマルジョンを製造する方法
また、上記10時間半減期温度が99℃以下の重合開始剤として有機過酸化物を使用して(メタ)アクリル系エマルジョンを製造する方法の例を以下に説明する。
まず、上述した特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)、並びに、必要に応じて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)、(メタ)アクリル酸モノマー(a3)、(メタ)アクリル系シランカップリング剤(a4)(加水分解性シリル基含有重合性モノマー(a4))及び(メタ)アクリルアミドモノマー(a5)を用いて、これらをメチルエチルケトン(MEK)のような有機溶媒と混合して混合液を得て、
次に、上記混合物に、上記重合開始剤を加えて反応液を得て、
次に、上記反応液を、例えば99℃以下の条件下で撹拌しながら重合性モノマー(a)を反応させ、(メタ)アクリル系ポリマーを得て、
反応終了後、反応液に、上記反応液を撹拌しながら上記第3級アミン類(B)を加え、
上記第3級アミン類(B)を加えた後、撹拌しながら系内に水を加えことによって、(メタ)アクリル系エマルジョンを製造する方法が挙げられる。上記のとおり製造された(メタ)アクリル系エマルジョンは、(メタ)アクリル系ポリマーからなる粒子である(メタ)アクリル粒子を含有することができる。
【0058】
・・レドックス開始剤
上記のように上記重合開始剤(例えばアゾ系重合開始剤又は有機過酸化物)を用いて上記重合性モノマー(a)を重合し、系内に第3級アミン類(B)及び水を加えて乳化して、(メタ)アクリル系エマルジョンを得た後(乳化後)、(メタ)アクリル系エマルジョン又はプライマー組成物中の残存モノマーを減らし、残存モノマーによる貯蔵安定性の低下を抑制し、長期又は高温の条件下における貯蔵安定性に優れるという観点から、(メタ)アクリル系エマルジョンに更にレドックス開始剤及び還元剤を加え、反応させることが好ましい。
【0059】
上記レドックス開始剤は、本発明の効果により優れ、プライマー層(膜)の耐水性、貯蔵安定性に優れるという観点から、水溶性又は水分散性の有機過酸化物が好ましく、t-ブチルヒドロパーオキサイドがより好ましい。
【0060】
上記重合性モノマー(a)全量に対する上記レドックス開始剤のモル比(レドックス開始剤/a)は、本発明の効果により優れ、プライマー層(膜)の耐水性、貯蔵安定性に優れるという観点から、0.0005~0.01であることが好ましい。
【0061】
上記還元剤は、本発明の効果により優れ、プライマー層(膜)の耐水性、貯蔵安定性に優れるという観点から、水溶性又は水分散性の還元剤が好ましく、例えば、アスコルビン酸塩、イソアスコルビン酸、ロンガリット(ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム)等が好ましい。
【0062】
上記レドックス開始剤に対する上記還元剤のモル比(還元剤/レドックス開始剤)は、本発明の効果により優れ、プライマー層(膜)の耐水性、貯蔵安定性に優れるという観点から、0.1~1.0であることが好ましい。
【0063】
上記レドックス開始剤及び還元剤を用いた際の反応は、例えば、反応系が沸騰しない程度の温度条件下で行うことができる。
以上のとおり、例えば、重合性モノマー(a)を重合開始剤の存在下で重合させ、(メタ)アクリル系ポリマーを得、上記(メタ)アクリル系ポリマーと第3級アミン類(B)を水中で混合し、更に、必要に応じてレドックス開始剤及び還元剤を用いて重合を進めることによって、(メタ)アクリル系エマルジョンを製造することができる。上記のとおり製造された(メタ)アクリル系エマルジョンは、(メタ)アクリル系ポリマーからなる粒子である(メタ)アクリル粒子を含有することができる。
上記のように(メタ)アクリル系エマルジョンを製造したのち、(メタ)アクリル系エマルジョンから、適宜、有機溶媒を除去してもよい。
【0064】
上記のようにして製造された(メタ)アクリル系エマルジョンをそのまま本発明のプライマー組成物として使用することができる。
【0065】
本発明において、上記(メタ)アクリル系エマルジョンは、乳化剤(界面活性剤)を含まないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0066】
((メタ)アクリル粒子((メタ)アクリル系重合体)の含有量)
本発明においては、上記(メタ)アクリル粒子((メタ)アクリル系重合体)の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、プライマー組成物の総質量に対して、15~60質量%であることが好ましく、25~60質量%がより好ましく、30~60質量%であることが更に好ましい。
なお、本発明において、上記(メタ)アクリル粒子の含有量は、上記第3級アミン類(B)の量を含まない。
【0067】
〔添加剤〕
本発明のプライマー組成物は、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、上述した(メタ)アクリル系エマルジョン以外のエマルジョン、充填剤、顔料、ブロッキング防止剤、分散安定剤、揺変剤、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、難燃剤、触媒、消泡剤、増粘剤、分散剤、有機溶剤、オキサゾリン基又はカルボジイミド基のような、カルボン酸と反応し得る架橋性基を有する化合物などが挙げられる。
【0068】
(充填剤)
本発明の組成物は、本発明の効果により優れ、貯蔵安定性(特に長期貯蔵安定性)に優れるという観点から、更に、充填剤を含有することが好ましい。
【0069】
上記充填剤は、プライマー組成物が通常含有することができる充填剤であれば特に制限されない。具体的には、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、タルク、クレー、カーボンブラックが挙げられる。充填剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記充填剤は、なかでも、本発明の効果に優れ、貯蔵安定性(特に長期貯蔵安定性)に優れるという観点から、シリカを含むことが好ましい。
【0070】
上記充填剤としてのシリカは特に制限されない。上記シリカは、本発明の組成物中に分散しやすいという観点から、コロイダルシリカが好ましい。
コロイダルシリカとは、二酸化ケイ素又はその水和物のコロイドを指す。
コロイダルシリカは特に制限されない。具体的には、例えば、Na+安定型アルカリゾル、酸性ゾル、NH4
+安定型アルカリゾル、中性域での安定性を高めたゾル、表面カチオン性の酸性ゾルが挙げられる。コロイダルシリカはなかでも、本発明の効果により優れ、貯蔵安定性(特に長期貯蔵安定性)に優れるという観点から、中性域での安定性を高めたゾルを含むことが好ましい。
【0071】
上記コロイダルシリカの市販品としては、例えば、商品名スノーテックス ST-CXS、スノーテックス ST-C、スノーテックス ST-CM(いずれも日産化学株式会社製)のような中性域での安定性を高めたゾル;
商品名スノーテックス ST-N(日産化学株式会社製)のような、NH4
+安定型アルカリ性ゾルが挙げられる。
【0072】
上記充填剤の含有量は、本発明の効果に優れ、貯蔵安定性(特に長期貯蔵安定性)に優れるという観点から、本発明の組成物に含有される(メタ)アクリル系エマルジョンに含有される固形分量100質量部に対して、1~40質量部であることが好ましく、3~25質量部がより好ましく、3~12質量部が更に好ましい。
なお、充填剤が媒体(分散媒)を含む場合、上記充填剤の含有量は、媒体(分散媒)を含まない正味の充填剤の含有量を意味する。
また、上記(メタ)アクリル系エマルジョンに含有される固形分量は、(メタ)アクリル系エマルジョンに含有される(メタ)アクリル粒子の含有量を意味する。
【0073】
〔製造方法〕
本発明のプライマー組成物の製造方法は特に限定されない。
上述のとおり、上記のように得られた(メタ)アクリル系エマルジョンをそのまま本発明のプライマー組成物として使用することができる。
また、例えば、上述した(メタ)アクリル系エマルジョンに上記添加剤(例えば充填剤)を加え、これらを混合する方法が挙げられる。
本発明のプライマー組成物を製造する際、組成物に更に水を添加してもよい。
【0074】
〔粘度〕
本発明のプライマー組成物の20℃における粘度は、特に限定されないが、例えば、10~900mPa・sが好ましく、10~800mPa・sがより好ましい。
上記粘度は、JIS K 7117-2:1999に記載の方法に従い、E型粘度計(100rpm)を用いて20℃の条件下で測定できる(単位:mPa・s)。
【0075】
〔用途〕
本発明のプライマー組成物は、下地と防水材とを密着させるプライマー組成物として使用することができる。
防水材としては、例えば、シリコーン系、変成シリコーン系、ウレタン系、ポリサルファイド系、ポリイソブチレン系防水材が挙げられる。なかでも、ウレタン防水材、特に、建築用ウレタン防水材に好適に用いることができる。
また、下地としては、例えば、無機系硬質素材が挙げられ、具体的には例えば、モルタル、ガラス、シリコーンハードコート、セラミック、コンクリート、磁器、金属などが挙げられる。
【0076】
〔使用方法〕
本発明のプライマー組成物を用いて下地と防水材とを密着させる方法としては、例えば、まず、本発明のプライマー組成物を下地に塗布し、20~28℃の条件下で乾燥させる。本発明のプライマー組成物から形成されるプライマー層は、その中に水が残留していても、下地と防水材との密着性に優れるので、本発明のプライマー組成物を使用する場合、その乾燥時間を短くすることができる。また、プライマーの乾燥時間は25~40分とすることができる。
次に、上記乾燥後の下地の上に、防水材を設ける。防水材が液状である場合は防水材を上記乾燥後の下地の上に流し込み、防水材がシート状である場合はシートを上記乾燥後の下地の上に敷いて、その後、例えば、25℃、45%RHの条件下で3~7日間養生させることによって、下地と防水材とを密着させることができる。
【実施例】
【0077】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0078】
<<第1表>>
〔(メタ)アクリル系ポリマーの調製〕
下記第1表の重合性モノマー(a)欄に示す各モノマーを同表に示す量(モル比)で用いてこれらを有機溶媒(MEK)中に添加し、撹拌機で混合しながら80℃の条件下でラジカル重合させ、反応開始から5時間後に重合を停止し、各(メタ)アクリル系ポリマー(AA1)~(AA15)を調製した。
【0079】
【0080】
上記第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
<モノマー(a1)>
・4HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル。式(1)において、R1が水素原子であり、R2が-(CH2)4-である。
<比較モノマー>
・HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
【0081】
<モノマー(a2)>
・MMA:メタクリル酸メチル
・2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
・CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル。CHMAは、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルモノマー(a2-1)に該当する。
【0082】
<モノマー(a3)>
・MAA:メタクリル酸
【0083】
<モノマー(a4)>
・KBE-502:γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業社製)
【0084】
<重合開始剤>
・AIBN:2,2′-アゾビスイソブチロニトリル
【0085】
<第3級アミン類(B)>
・TEA:トリエチルアミン
【0086】
〔プライマー組成物の製造〕
上記のとおり調製された各(メタ)アクリル系ポリマーと、上記第1表中の第3級アミン類(B)と、蒸留水とを混合して、各(メタ)アクリル系ポリマーにおいて繰り返し単位(A3)が有するカルボキシ基を第3級アミン(B)でイオン化し、各(メタ)アクリル系エマルジョンを製造した。上記各(メタ)アクリル系エマルジョン中に含有される(メタ)アクリル粒子の含有量を30質量%とした。
上記のとおり製造された各(メタ)アクリル系エマルジョンを、そのままプライマー組成物として使用した。
【0087】
〔評価〕
<試験片の調製>
・常態試験用試験片
上記のとおり製造された各プライマー組成物を、被着体であるモルタル(縦50mm×横50mm、パルテック社製)上に、刷毛を用いて、80g(各プライマー組成物の固形分量として)/m2の膜厚となるように塗布し、25℃で1時間(プライマー乾燥時間)乾燥させてプライマー層とした。
次に、上記プライマー層の上にウレタン防水材(商品名ハマタイト アーバンルーフ NX、横浜ゴム株式会社製、ウレタン防水材)を厚さ3mmとなるように流し込み、25℃、45%相対湿度の条件下で7日間ウレタン防水材を硬化させ、常態試験用試験片を得た。
【0088】
・オープンタイム試験用試験片
上記プライマー乾燥時間を6時間とする他は上記常態試験用試験片と同様にして試験片を調製し、オープンタイム試験用試験片を得た。
【0089】
・耐水試験用試験片
上記のとおり調製された常態試験用試験片を25℃の条件下において1週間浸水させ、その後試験片を水中から引き上げ、耐水試験用試験片を得た。
【0090】
<剥離試験(接着性)>
(剥離試験)
23℃の条件下において、上記のとおり得られた各試験片のウレタン防水材の端部を手でつかみ、試験片からウレタン防水材をモルタルに対して90°の角度で剥離する剥離試験を行った。
剥離試験後の各試験片における接着界面の破壊状態を目視で確認した。結果を上記第1表に示した。
【0091】
(剥離試験の評価基準)
接着界面の破壊状態について、「CF」はプライマー層の凝集破壊を意味する。
また、評価結果の表示において、「CF」の後の数値は、上記各試験片のウレタン防水材の接着面全体に対して、上記CFが占める面積の百分率(%)を意味する。
試験後の接着界面の破壊状態がCF90~100%であった場合、接着性に非常に優れると評価してこれを「I」と表示した。
CF80%以上90%未満であった場合、接着性に優れると評価してこれを「II」と表示した。
CF70%以上80%未満であった場合、接着性がやや優れると評価してこれを「III」と表示した。
CF60%以上70%未満であった場合、接着性がやや劣ると評価してこれを「IV」と表示した。
CF50%以上60%未満であった場合、接着性が劣ると評価してこれを「V」と表示した。
CF50%未満であった場合、接着性が非常に劣ると評価してこれを「VI」と表示した。
【0092】
(常態試験の評価結果)
上記常態試験(常態試験用試験片を用いた剥離試験)の結果を上記評価基準に基づいて評価し、これをもとに常態接着性を評価した。
常態試験の結果はI~Vが好ましい。CFが占める面積の百分率が大きいほどより好ましい。
【0093】
(オープンタイム試験の評価結果)
上記オープンタイム試験(オープンタイム試験用試験片を用いた剥離試験)の結果を上記評価基準に基づいて評価し、これをもとにオープンタイム後の接着性を評価した。
オープンタイム試験の結果はI~Vが好ましい。CFが占める面積の百分率が大きいほどより好ましい。
【0094】
(耐水試験の評価結果)
上記耐水試験(耐水試験用試験片を用いた剥離試験)の結果を上記評価基準に基づいて評価し、これをもとに耐水後の接着性を評価した。
耐水試験の結果はI~Vが好ましい。CFが占める面積の百分率が大きいほどより好ましい。
【0095】
(膜の耐水試験)
上記のとおり製造されたプライマー組成物を25℃の条件下において1週間乾燥させ、縦2cm、横2cm、厚さ0.5mmの膜(プライマーの膜)を作製し、上記のとおり作製した膜を25℃の蒸留水に1週間浸漬させ、その後水中から引き上げ、引き上げ直後の膜の状態を目視で観察した。結果を上記第1表に示した。
【0096】
・評価基準
引き上げ直後の膜の状態が浸漬前と比べて変化がなかった場合、耐水後の膜の安定性が非常に優れると評価し、これを「A」と表示した。
引き上げ直後の膜が浸漬前と比べて僅かに白化した場合、耐水後の膜の安定性がやや優れると評価し、これを「B」と表示した。
引き上げ直後の膜が浸漬前と比べて明らかに白化した場合、耐水後の膜の安定性がやや悪いと評価し、これを「C」と表示した。
引き上げ直後の膜が浸漬前と比べて膨潤した場合、耐水後の膜の安定性が非常に悪いと評価し、これを「D」と表示した。
【0097】
上記第1表に示す結果から明らかなように、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する重合性モノマー(a)が特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)を含有しない場合、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性が劣った(比較例1対実施例3)。
また、特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)の含有量が所定の範囲を外れる場合、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性が劣った(比較例2対実施例3~5と比較例4,5、比較例3対実施例6~12)。
【0098】
これに対し、本発明の組成物は、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性に優れた。
【0099】
<<第2表>>
〔プライマー組成物の製造〕
下記第2表の重合性モノマー(a)欄に示す各モノマーを同表に示す量(モル比)で用いて、これらをメチルエチルケトン(MEK)と混合して混合液を得て、
次に、上記混合物に、下記第2表に示す重合開始剤を加えて反応液を得て、
次に、上記反応液を、80℃の条件下、撹拌子で50rpmの回転速度で撹拌しながら5時間反応させ、(メタ)アクリル系ポリマー(AA2-1)~(AA2-9)を調製した。
反応終了後、上記反応液を撹拌子で800rpmの回転速度で撹拌しながら反応液に、MEKに溶解させた第2表に示す第3級アミン類(B)を第2表に示す量(第3級アミン類(B)正味の量)で加え、
上記第3級アミン類(B)を加えた後、撹拌しながら系内に水を加え、十分撹拌させ、各(メタ)アクリル系ポリマーにおいて繰り返し単位(A3)が有するカルボキシ基を第3級アミン(B)でイオン化した。
このあと、系内からMEKを35℃の条件下で1~1.5時間かけて除去して、各(メタ)アクリル系エマルジョンを製造した。
上記各(メタ)アクリル系エマルジョン中に含有される(メタ)アクリル粒子の含有量を30質量%とした。
上記のとおり製造された各(メタ)アクリル系エマルジョンを、そのままプライマー組成物として使用した。
【0100】
【0101】
上記第2表に示した各成分の詳細は、モノマー(a5)欄のHEAA、及び、重合開始剤欄の有機過酸化物(パーオクタO)以外、上記第1表に示した各成分と同じである。モノマー(a5)欄のHEAA、及び、重合開始剤欄の有機過酸化物(パーオクタO)の詳細は以下のとおりである。
<モノマー(a5)>
・HEAA:2-ヒドロキシエチルアクリルアミド(下記構造)
【0102】
【0103】
<重合開始剤>
・有機過酸化物(パーオクタO):1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油株式会社製、製品名「パーオクタO」)。10時間半減期温度65.3℃。
なお、「有機過酸化物(パーオクタO)」欄に示す数値は、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートの正味の量である。
【0104】
〔評価〕
常態試験、オープンタイム試験、耐水試験及び膜の耐水試験を上記<<第1表>>の〔評価〕と同様に行い、評価した。これに加えて長期貯蔵安定性を以下のとおり評価した。
(長期貯蔵安定性)
上記のとおり製造されたプライマー組成物(初期)を20℃の条件下に半年間置いて、長期貯蔵後プライマー組成物を準備した。
上記初期プライマー組成物と長期貯蔵後プライマー組成物を、目視で観察し、上記初期プライマー組成物及び長期貯蔵後プライマー組成物の粘度を以下の方法で測定した。上記粘度は、JIS K 7117-2:1999に記載の方法に従い、E型粘度計(100rpm)を用いて20℃の条件下で測定された(単位:mPa・s)。
【0105】
・長期貯蔵安定性の評価基準
長期貯蔵後プライマー組成物の粘度が、上記初期プライマー組成物の粘度の1.5倍以内であった場合、長期貯蔵安定性に非常に優れると評価し、これを「◎」と表示した。
長期貯蔵後プライマー組成物の粘度が、上記初期プライマー組成物の粘度の1.5倍より大きく、3倍以内であった場合、長期貯蔵安定性にやや優れると評価し、これを「〇」と表示した。
長期貯蔵後プライマー組成物の粘度が、上記初期プライマー組成物の粘度の3倍を超えた場合(長期貯蔵後プライマー組成物が、固化した場合を除く。)、長期貯蔵安定性にやや劣ると評価し、これを「△」と表示した。
長期貯蔵後プライマー組成物が、固化した場合、長期貯蔵安定性に非常に劣ると評価し、これを「×」と表示した。
【0106】
上記第2表に示す結果から明らかなように、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する重合性モノマー(a)が特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)を含有しない場合、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性が劣った(比較例1対実施例5、6)。
また、特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)の含有量が所定の範囲を外れる場合、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性が劣った(比較例2対実施例5、6)。
【0107】
これに対し、本発明の組成物は、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性に優れた。
また、重合開始剤として有機過酸化物を使用する実施例5は、アゾ系開始剤を使用する実施例7よりも、長期貯蔵安定性に優れた。
【0108】
<<第3表>>
〔プライマー組成物の製造〕
下記第3表の重合性モノマー(a)欄に示す各モノマーを同表に示す量(モル比)で用いて、これらをメチルエチルケトン(MEK)と混合して混合液を得て、
次に、上記混合物に、下記第3表に示す重合開始剤を加えて反応液を得て、
次に、上記反応液を、80℃の条件下、撹拌子で50rpmの回転速度で撹拌しながら5時間反応させ、
反応終了後、上記反応液を撹拌子で800rpmの回転速度で撹拌しながら反応液に、MEKに溶解させた第3表に示す第3級アミン類(B)を第3表に示す量(第3級アミン類(B)正味の量)で加え、
上記第3級アミン類(B)を加えた後、撹拌しながら系内に水を加え、十分撹拌させ、ここまでで得られた各(メタ)アクリル系ポリマーにおいて繰り返し単位(A3)が有するカルボキシ基を第3級アミン(B)でイオン化した。
次いで、上記乳化後、系内に、第3表に示すレドックス開始剤及び還元剤を加え、80℃の条件下で、更に、反応(重合性モノマー(a)の重合)させた。
このあと、系内からMEKを35℃の条件下で1~1.5時間かけて除去して、各(メタ)アクリル系エマルジョンを製造した。
上記のとおり製造された各(メタ)アクリル系エマルジョン中に含有される(メタ)アクリル粒子は、それぞれ、(メタ)アクリル系ポリマー(A)としての(メタ)アクリル系ポリマー(AA3-1)~(AA3-12)からなる粒子を含む。
上記のとおり製造された各(メタ)アクリル系エマルジョン中に含有される(メタ)アクリル粒子の含有量を30質量%とした。
上記のとおり製造された各(メタ)アクリル系エマルジョンを、そのままプライマー組成物として使用した。
【0109】
【0110】
上記第3表に示した各成分の詳細は、レドックス開始剤、及び、還元剤1~3以外、上記第1表及び第2表に示した各成分と同じである。レドックス開始剤、及び、還元剤1~3の詳細は以下のとおりである。
<レドックス開始剤>
・レドックス開始剤(パーブチルH):t-ブチルヒドロパーオキサイド水溶液(商品名;パーブチルH69、日油(株)製、固形分濃度69%)
なお、「レドックス開始剤(パーブチルH)」欄に示す数値は、t-ブチルヒドロパーオキサイドの正味の量である。
【0111】
<還元剤>
・還元剤1(SIM):イソアスコルビン酸ナトリウム
・還元剤2(SA):アスコルビン酸ナトリウム
・還元剤3(ロンガリット):ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム
【0112】
〔評価〕
常態試験、オープンタイム試験、耐水試験及び膜の耐水試験を上記<<第1表>>の〔評価〕と同様に行い、評価した。これに加えて高温貯蔵安定性を以下のとおり評価した。
(高温貯蔵安定性)
上記のとおり製造されたプライマー組成物(初期)を70℃の条件下に4日間置いて、高温貯蔵後プライマー組成物を準備した。
上記初期プライマー組成物と高温貯蔵後プライマー組成物を、目視で観察し、上記初期プライマー組成物及び高温貯蔵後プライマー組成物の粘度を以下の方法で測定した。上記粘度は、JIS K 7117-2:1999に記載の方法に従い、E型粘度計(100rpm)を用いて20℃の条件下で測定された(単位:mPa・s)。
【0113】
・高温貯蔵安定性の評価基準
高温貯蔵後プライマー組成物の粘度が、上記初期プライマー組成物の粘度の1.5倍以内であった場合、高温貯蔵安定性に非常に優れると評価し、これを「◎」と表示した。
高温貯蔵後プライマー組成物の粘度が、上記初期プライマー組成物の粘度の1.5倍より大きく、3倍以内であった場合、高温貯蔵安定性にやや優れると評価し、これを「〇」と表示した。
高温貯蔵後プライマー組成物の粘度が、上記初期プライマー組成物の粘度の3倍を超えた場合(高温貯蔵後プライマー組成物が、固化した場合を除く。)、高温貯蔵安定性にやや劣ると評価し、これを「△」と表示した。
高温貯蔵後プライマー組成物が、固化した場合、高温貯蔵安定性に非常に劣ると評価し、これを「×」と表示した。
【0114】
上記第3表に示す結果から明らかなように、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する重合性モノマー(a)が特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)を含有しない場合、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性が劣った(比較例1対実施例7、8)。
また、特定ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)の含有量が所定の範囲を外れる場合、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性が劣った(比較例2対実施例7、8)。
【0115】
これに対し、本発明の組成物は、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性に優れた。
また、重合開始剤として有機過酸化物を使用する実施例2は、アゾ系重合開始剤を使用する実施例9よりも、高温貯蔵安定性に優れた。
また、第3級アミンによる乳化後、更に、レドックス開始剤及び還元剤を用いる実施例7は、レドックス開始剤及び還元剤を用いない実施例10よりも、高温貯蔵安定性に優れた。
【0116】
<<第4表>>
〔充填剤含有プライマー組成物の製造〕
下記第4表に、本発明の組成物が、更に充填剤(としてコロイダルシリカ)を含有する態様を示す。
下記第4表に示す、原料エマルジョン(上記第3表の実施例2で製造された(メタ)アクリル系エマルジョン)と、各コロイダルシリカとを用いて、これらを混合し、各充填剤含有プライマー組成物を製造した。
【0117】
下記第4表に、第4表中の各実施例において充填剤含有プライマー組成物を製造する際に使用された、原料エマルジョン全体の量(単位g)と、コロイダルシリカ分散液全体の量(単位g)を表示した。
上記のとおり製造された各充填剤含有プライマー組成物をプライマー組成物として使用した。
なお、第4表中の右端縦欄の「第3表の実施例2」は、第3表の実施例2の(メタ)アクリル系エマルジョンそのものであり、充填剤は添加されていない。
【0118】
【0119】
上記第4表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
<原料エマルジョン(第3表の実施例2の(メタ)アクリル系エマルジョン)>
第4表で使用された原料エマルジョンは、上記第3表の実施例2で製造された(メタ)アクリル系エマルジョンである。
第3表の実施例2で製造された(メタ)アクリル系エマルジョン(原料エマルジョン)は、(メタ)アクリル粒子を含有する(メタ)アクリル系エマルジョンであって、(メタ)アクリル粒子が、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(a)を重合させて得られる(メタ)アクリル系ポリマー(AA3-2)からなる粒子であり、
上記重合性モノマー(a)が、上記式(1)で表されるヒドロキシ基含有重合性モノマー(a1)に該当する4HBA(アクリル酸4-ヒドロキシブチル)を含有し、
上記重合性モノマー(a)に対する4HBAのモル比(a1/a)が、0.15以上(0.399)であるので、本発明の組成物に含有される(メタ)アクリル系エマルジョンに該当する。
上記原料エマルジョンは、(メタ)アクリル粒子として、(メタ)アクリル系ポリマー(AA3-2)からなる粒子を含む。(メタ)アクリル粒子の含有量は、上記原料エマルジョンの30質量%であった。
【0120】
<コロイダルシリカ>
・ST-CXS:商品名スノーテックス ST-CXS 日産化学株式会社。シリカ粒子が水中に分散した材料であり、中性域での安定性を高めたゾル。固形分14質量%。
・ST-C:商品名スノーテックス ST-C 日産化学株式会社。シリカ粒子が水中に分散した材料であり、中性域での安定性を高めたゾル。固形分20質量%。
・ST-CM:商品名スノーテックス ST-CM 日産化学株式会社。シリカ粒子が水中に分散した材料であり、中性域での安定性を高めたゾル。固形分30質量%。
【0121】
〔評価〕
常態試験、オープンタイム試験、耐水試験及び膜の耐水試験を上記<<第1表>>の〔評価〕と同様に行い、評価した。また、長期貯蔵安定性を上記<<第2表>>の長期貯蔵安定性と同様に評価した。
【0122】
第4表に示すとおり、本発明の組成物は、更に充填剤を含有する場合であっても、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性に優れた。
充填剤(正味の充填剤)の含有量が、原料エマルジョンに含有される固形分[(メタ)アクリル粒子]量100質量部に対して、15質量部以下である実施例1~5は、実施例6よりも、常態接着性、オープンタイム後の接着性及び耐水後の接着性により優れ、長期貯蔵安定性により優れた。
充填剤(正味の充填剤)の含有量が、原料エマルジョンに含有される固形分[(メタ)アクリル粒子]量100質量部に対して、12質量部以下である実施例1~4は、実施例5、6よりも、オープンタイム後の接着性、長期貯蔵安定性により優れた。