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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】警報発出システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20230619BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20230619BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20230619BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20230619BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20230619BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
G08B21/02
A61B5/0245 100E
A61B5/11 100
A61B5/113
A61B5/08
A61B5/00 102A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022024189
(22)【出願日】2022-02-18
(62)【分割の表示】P 2018019367の分割
【原出願日】2018-02-06
(65)【公開番号】P2022087093
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2017020466
(32)【優先日】2017-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公益社団法人計測自動制御学会が2016年11月26日に発行した「第25回計測自動制御学会中国支部学術講演会論文集」において発表
(73)【特許権者】
【識別番号】520081949
【氏名又は名称】中村 浩士
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 幹也
(72)【発明者】
【氏名】中島 翔太
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩士
【審査官】大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-273611(JP,A)
【文献】特開2002-017693(JP,A)
【文献】特開2007-151617(JP,A)
【文献】特開2013-116216(JP,A)
【文献】特開2006-238971(JP,A)
【文献】特開2014-153125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00-25/00
A61B 5/00-10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血流音若しくは心音及び呼吸音を検知し音響信号を取得する体導音センサと、
被検者の脇の下に挿入可能な先端部を有し該先端部に前記体導音センサを設けてある棒状体と、
前記体導音センサにより取得された音響信号に基づいて音響心拍数を計測する音響心拍数計測部及び音響呼吸数を計測する音響呼吸数計測部を有する体導音信号処理手段と、
前記音響心拍数計測部で計測された音響心拍数のデータ及び前記音響呼吸数計測部で計測された音響呼吸数のデータを、所定のインターバルで送信するデータ送信手段と、
前記データ送信手段から送信された音響心拍数のデータ及び音響呼吸数のデータを受信するデータ収集手段と、
前記データ収集手段が受信した音響心拍数のデータ及び音響呼吸数のデータに基づいて、心拍数及び呼吸数のいずれかに異常があるか否か判定し、異常があると判定した場合に警報を発する警報手段を備える
ことを特徴とする警報発出システム。
【請求項2】
前記警報発出システムは、少なくともZ軸方向における被検者の体動の加速度を検知し加速度信号を取得する加速度センサと、
該加速度センサにより取得された加速度信号に基づいて加速度心拍数を計測する加速度心拍数計測部及び加速度呼吸数を計測する加速度呼吸数計測部を有する加速度信号処理手段と、
前記音響心拍数計測部で計測された音響心拍数及び前記加速度心拍数計測部で計測された加速度心拍数に基づいて、修正心拍数を演算する修正心拍数演算部と、
前記音響呼吸数計測部で計測された音響呼吸数及び前記加速度呼吸数計測部で計測された加速度呼吸数に基づいて、修正呼吸数を演算する修正呼吸数演算部を有し、
前記警報手段は、修正心拍数のデータ及び修正呼吸数のデータに基づいて、心拍数及び呼吸数のいずれかに異常があるか否か判定し、異常があると判定した場合に警報を発する
ことを特徴とする請求項1に記載の警報発出システム
【請求項3】
前記加速度信号処理手段は、前記加速度センサにより取得された加速度信号をフーリエ変換する加速度信号変換部を有し、
前記加速度心拍数計測部は、前記加速度信号変換部で得られた加速度変換信号から低周波成分を除去する第2の低周波除去部と、該第2の低周波除去部で得られた第2の低周波除去信号に基づいて加速度心拍数を演算する加速度心拍数演算部を有し、
前記加速度呼吸数計測部は、前記加速度信号変換部で得られた加速度変換信号から高周波成分を除去する第2の高周波除去部と、該第2の高周波除去部で得られた第2の高周波除去信号に基づいて加速度呼吸数を演算する加速度呼吸数演算部を有している
ことを特徴とする請求項に記載の警報発出システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検者の脇の下にセットされる体導音センサを用いて、被検者の血流音、心音、呼吸音等を検出し、検出された音響信号に基づいて音響心拍数及び音響呼吸数を計測し、計測された音響心拍数及び音響呼吸数に基づいて、心拍数及び呼吸数のいずれかに異常があるか否か判定し、異常があると判定した場合に警報を発する警報発出システムに関するものである。
また、この発明は、被検者の胸部又は腹部にセットされる加速度センサを用いて、被検者の胸部又は腹部における加速度を検出し、検出された加速度信号に基づいて加速度心拍数及び加速度呼吸数を計測し、計測された加速度心拍数及び加速度呼吸数に基づいて、心拍数及び呼吸数のいずれかに異常があるか否か判定し、異常があると判定した場合に警報を発する警報発出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、呼吸器や循環器系疾患の早期発見を目的として、体導音(例えば、血流音、心音、呼吸音等)や加速度信号に基づく診断システムの研究・開発が進められている。
そして、血流音は手首の近く、心音は胸部又は腹部の近く、呼吸音は頬の近くで採取すれば明瞭な信号を取得し易い。
しかし、3箇所にマイクロホンを装着し、それぞれの体導音を採取することは、時間、コスト、手間がかかり、被検者の負担も大きい。
【0003】
そこで、特許文献1(特開2015-31889号公報)に記載されるように、1箇所で採取された混合音響信号から特定の成分を高精度に分離することのできる音響信号分離装置が提案されている(特に、段落0006~0007を参照)。
また、特許文献2(特許第3809847号公報)に記載されるように、1つの加速度センサで被検者の生体情報を得て、呼吸数や心拍数を検出する睡眠診断装置も提案されている(特に、段落0006~0007を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-31889号公報
【文献】特許第3809847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の音響信号分離装置においては、音響センサ11(超低周波収録用のマイクロホン)が頸動脈上皮部に装着されているため、装着に手間がかかり、体導音以外の音を拾いやすいという欠点があった。
また、特許文献2の睡眠診断装置においては、寝姿変化、呼吸数及び心拍数以外の情報は導出できないという問題があった。
さらに、特許文献1の音響信号分離装置及び特許文献2の睡眠診断装置は、いずれも被検者の状態によっては、心拍数又は呼吸数の計測結果に誤差が生じるおそれがあった。
この発明は、体導音センサを被検者に容易に装着できるようにし、かつ、体導音センサが体導音以外の音を拾いにくくすることを第1の目的としてなされたものである。
そして、体導音センサと加速度センサを併用して、被検者の状態によらず、心拍数及び呼吸数の計測を高精度で行えるようにすることを第2の目的とし、1つの加速度センサで得た被検者の体動に関する情報に基づいて、呼気・吸気の識別及び呼吸の強弱も計測可能とすることを第3の目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の警報発出システムは、
血流音若しくは心音及び呼吸音を検知し音響信号を取得する体導音センサと、
被検者の脇の下に挿入可能な先端部を有し該先端部に前記体導音センサを設けてある棒状体と、
前記体導音センサにより取得された音響信号に基づいて音響心拍数を計測する音響心拍数計測部及び音響呼吸数を計測する音響呼吸数計測部を有する体導音信号処理手段と、
前記音響心拍数計測部で計測された音響心拍数のデータ及び前記音響呼吸数計測部で計測された音響呼吸数のデータを、所定のインターバルで送信するデータ送信手段と、
前記データ送信手段から送信された音響心拍数のデータ及び音響呼吸数のデータを受信するデータ収集手段と、
前記データ収集手段が受信した音響心拍数のデータ及び音響呼吸数のデータに基づいて、心拍数及び呼吸数のいずれかに異常があるか否か判定し、異常があると判定した場合に警報を発する警報手段を備える
ことを特徴とする警報発出システム。
【0007】
請求項に係る発明は、請求項1に記載の警報発出システムにおいて、
前記警報発出システムは、少なくともZ軸方向における被検者の体動の加速度を検知し加速度信号を取得する加速度センサと、該加速度センサにより取得された加速度信号に基づいて加速度心拍数を計測する加速度心拍数計測部及び加速度呼吸数を計測する加速度呼吸数計測部を有する加速度信号処理手段と、前記音響心拍数計測部で計測された音響心拍数及び前記加速度心拍数計測部で計測された加速度心拍数に基づいて、修正心拍数を演算する修正心拍数演算部と、前記音響呼吸数計測部で計測された音響呼吸数及び前記加速度呼吸数計測部で計測された加速度呼吸数に基づいて、修正呼吸数を演算する修正呼吸数演算部を有し、
前記警報手段は、修正心拍数のデータ及び修正呼吸数のデータに基づいて、心拍数及び呼吸数のいずれかに異常があるか否か判定し、異常があると判定した場合に警報を発することを特徴とする。
【0008】
請求項に係る発明は、請求項に記載の警報発出システムにおいて、
前記加速度信号処理手段は、前記加速度センサにより取得された加速度信号をフーリエ変換する加速度信号変換部を有し、
前記加速度心拍数計測部は、前記加速度信号変換部で得られた加速度変換信号から低周波成分を除去する第2の低周波除去部と、該第2の低周波除去部で得られた第2の低周波除去信号に基づいて加速度心拍数を演算する加速度心拍数演算部を有し、
前記加速度呼吸数計測部は、前記加速度信号変換部で得られた加速度変換信号から高周波成分を除去する第2の高周波除去部と、該第2の高周波除去部で得られた第2の高周波除去信号に基づいて加速度呼吸数を演算する加速度呼吸数演算部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明の警報発出システムによれば、体導音センサが、被検者の脇の下に挿入可能な先端部を有する棒状体の先端部に設けてあるので、棒状体の先端部を脇の下に差し込むだけで体導音センサを被検者に装着することができ、しかも体導音センサが体導音以外の音を拾いにくい。
そのため、手軽に被検者の心拍数及び呼吸数を計測することができ、しかも比較的高い精度で心拍数及び呼吸数を同時に計測することができる。
また、在宅患者の遠隔診断システムを実現したり、心拍数や呼吸数に異常のある被災者を的確に把握して警報を発したり、居眠り運転を検知して運転者や同乗者に対して警報を発したりすることができる。
【0010】
請求項に係る発明の警報発出システムによれば、請求項1に係る発明の効果に加え、体導音センサと加速度センサを併用して被検者の心拍数及び呼吸数の計測を行うので、被検者の状態によらず、その計測精度を高めることができる。
【0011】
請求項に係る発明の警報発出システムによれば、請求項に係る発明の効果に加え、加速度センサにより取得された加速度信号をフーリエ変換して加速度変換信号を得た上で、加速度変換信号から低周波成分を除去した第2の低周波除去信号に基づいて加速度心拍数を演算するとともに、加速度変換信号から高周波成分を除去した第2の高周波除去信号に基づいて加速度呼吸数を演算することができるので、被検者の心拍数及び呼吸数を簡素な構成によって精度良く計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1に係る心拍数及び呼吸数計測装置の概念図。
図2】実施例1に係る棒状体の側面図、体導音センサの拡大断面図及び平面図。
図3】実施例1に係る体導音信号処理手段のブロック図。
図4】体導音センサで計測された音響信号の一例。
図5図4の音響信号をフーリエ変換して得られた音響変換信号のグラフ。
図6】実施例2に係る第2の体導音信号処理手段のブロック図。
図7】実施例2に係る第2の体導音信号処理手段の処理フロー。
図8】体導音センサで計測された音響信号の他の例。
図9図8の音響信号をフーリエ変換して得られた音響変換信号のグラフ。
図10図9に示す音響変換信号から心音及び呼吸音に近い周波数成分を抽出した信号のグラフ。
図11図10に示す信号を逆フーリエ変換して得られた逆変換信号のグラフ。
図12】実施例3に係る心拍数及び呼吸数計測装置の概念図。
図13】実施例3に係る加速度センサの斜視図。
図14】実施例3に係る加速度信号処理手段のブロック図。
図15】加速度センサで計測された加速度信号の一例。
図16図15の加速度信号をフーリエ変換して得られた加速度変換信号のグラフ。
図17図16に示す加速度変換信号から高周波成分を除去した信号のグラフ。
図18図17に示す信号を逆フーリエ変換して得られた逆変換信号のグラフ。
図19】強呼吸、弱呼吸、無呼吸の状態における逆変換信号のグラフ。
図20】実施例4に係る第2の加速度信号処理手段のブロック図。
図21】実施例4に係る第2の加速度信号処理手段の呼吸数に関する処理フロー。
図22】実施例4に係る第2の加速度信号処理手段の心拍数に関する処理フロー。
図23】加速度センサで計測されたY軸方向加速度信号の一例。
図24図23のY軸方向加速度信号をフーリエ変換して得られたY軸方向加速度変換信号のグラフ。
図25図24に示すY軸方向加速度変換信号から呼吸数に近い周波数成分を抽出した高周波除去信号のグラフ。
図26図25に示す高周波除去信号を逆フーリエ変換して得られた呼吸波形信号のグラフ。
図27】加速度センサで計測されたZ軸方向加速度信号の一例。
図28図27のZ軸方向加速度信号から呼吸波形信号を差し引いて得られたZ軸方向差分加速度信号のグラフ。
図29】変形例(1)に係る心拍数及び呼吸数計測装置の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は実施例1に係る心拍数及び呼吸数計測装置の概念図である。
棒状体1は、被検者の脇の下に挿入可能な先端部を有し、その先端部に体導音センサ2が設けてある。
体導音センサ2を用いて被検者の心拍数及び呼吸数を計測する場合には、棒状体1の先端部を被検者の脇の下に挿入し、体導音センサ2の上面を被検者の胸側に向けて腕で挟むか棒状体1の中央部等をテープやベルトで固定する。
そして、被検者が落ち着いてから体導音センサ2によって取得された音響信号を体導音信号処理手段3で受信し、音響心拍数計測部4及び音響呼吸数計測部5で処理して、被検者の音響心拍数及び音響呼吸数を演算して求める。
報知手段6は、音響心拍数計測部4及び音響呼吸数計測部5から音響心拍数及び音響呼吸数に関する情報を受信し、表示部7に音響心拍数及び音響呼吸数を表示して、検査者又は被検者に知らせる。
【0015】
図2(a)は実施例1に係る棒状体1の側面図であり、図2(b)は棒状体1の先端部に設けてある体導音センサ2の拡大断面図及び平面図である。
体導音センサ2は、図2(b)に示すように全体の形状は円柱状であり、中央部に段差のある凹部8を有する円柱状のアクリル製ケース9と、凹部8の中心部に嵌め込まれているエレクトレットコンデンサマイクロホン(ECM)10と、凹部8の開口側を閉塞するウレタンゲル充填材11とからなっている。
【0016】
図3は実施例1に係る体導音信号処理手段3のブロック図である。
体導音信号処理手段3は、体導音センサ2からの音響信号を受けると、所定時間(例えば30秒間)における音響信号を音響信号変換部12によりフーリエ変換し音響変換信号を得て、音響心拍数計測部4及び音響呼吸数計測部5に送信する。
そして、音響心拍数計測部4においては、低周波除去部13(具体的にはハイパスフィルタ)によって、受信した音響変換信号から周波数0.8Hz未満の信号を除去し、音響心拍数演算部14では低周波除去部13から送られた低周波除去信号がピークとなる周波数を判定して音響心拍数を演算する。
また、音響呼吸数計測部5においては、高周波除去部15(具体的にはローパスフィルタ)によって、受信した音響変換信号から周波数0.5Hz以上の信号を除去し、音響呼吸数演算部16では高周波除去部15から送られた高周波除去信号がピークとなる周波数を判定して音響呼吸数を演算する。
【0017】
図4は体導音センサ2を用いて、被検者の左脇の下において30秒間にわたって計測された音響信号の一例であり、図5図4の音響信号をフーリエ変換して得られた音響変換信号のグラフである。
この例によれば、周波数が0.8Hz以上の信号は、周波数1.1Hzにおいてピークとなっているので、音響心拍数は66[bpm]となり、周波数が0.5Hz未満の信号は、周波数0.33Hzにおいてピークとなっているので、音響呼吸数は20[回/分]となっていることが分かる。
【実施例2】
【0018】
図6は実施例2に係る第2の体導音信号処理手段17のブロック図である。
また、実施例2に係る心拍数及び呼吸数計測装置の概念図は実施例1(図1)と同様であり、実施例1に係る心拍数及び呼吸数計測装置と相違しているのは、音響心拍数計測部4に低周波除去信号逆変換部20が追加されて第2の音響心拍数計測部18となっている点及び音響呼吸数計測部5に高周波除去信号逆変換部21が追加されて第2の音響呼吸数計測部19となっている点である。
そして、棒状体1、体導音センサ2、報知手段6、表示部7、音響信号変換部12、低周波除去部13及び高周波除去部15については、実施例1と同じなので説明は省略する。
【0019】
実施例2に係る第2の体導音信号処理手段17においては、図7の処理フロー図に示すように、体導音センサ2で取得した生体音を音響信号変換部12によりフーリエ変換し、低周波除去部13によって低周波除去信号(心音に近い信号)を抽出するとともに、高周波除去部15によって高周波除去信号(呼吸音に近い信号)を抽出する。
その後、低周波除去信号が、低周波除去信号逆変換部20によって逆フーリエ変換され、得られた逆変換信号に対して音響心拍数演算部14で自己相関関数処理して周期を導出し、導出した周期に基づいて音響心拍数を演算する。
また、高周波除去信号が、高周波除去信号逆変換部21によって逆フーリエ変換され、得られた逆変換信号について音響呼吸数演算部16で周期を導出し、導出した周期に基づいて音響呼吸数を演算する。
【0020】
図8は体導音センサ2を用いて、被検者の左脇の下において30秒間にわたって計測された音響信号の他の例であり、図9図8の音響信号をフーリエ変換して得られた音響変換信号のグラフである。
そして、図10図9に示す音響変換信号から心音及び呼吸音に近い周波数成分を抽出した信号のグラフであり、心音については0.9~2Hz、呼吸音については0.5Hz未満の信号を抽出している。
また、図11図10に示す信号を、それぞれ逆フーリエ変換して得られた逆変換信号のグラフであり、この例によれば、心音の周期は0.79秒、呼吸音の周期は2.55秒となっているので、音響心拍数は75.9[bpm]、音響呼吸数は23.5[回/分]と演算される。
【実施例3】
【0021】
図12は実施例3に係る心拍数及び呼吸数計測装置の概念図である。
棒状体1、体導音センサ2、体導音信号処理手段3、音響心拍数計測部4及び音響呼吸数計測部5については、実施例1と同じなので説明は省略する。
実施例3では、体導音センサ2に加えて加速度センサ22を用いて被検者の加速度心拍数及び加速度呼吸数を計測し、両センサによる心拍数及び呼吸数の演算結果を総合することにより、精度の高い心拍数及び呼吸数を求めている。
なお、加速度センサ22にはスマートフォンに内蔵されている3軸方向の加速度を検知できる加速度計(LIS2DH)を利用し、図13に示すように、スマートフォンの短辺に平行な軸をX軸、長辺に平行な軸をY軸、X軸及びY軸に直交する軸をZ軸とし、下向きをZ軸の正方向としている。
【0022】
加速度センサ22を用いて被検者の加速度心拍数及び加速度呼吸数を計測する場合には、スマートフォンの背面を仰向けに寝ている被検者の胸又は腹部に載せ、両面テープ等の適宜の手段により固定する。
そして、被検者が落ち着いてから加速度センサ22によって取得された加速度信号を加速度信号処理手段23で受信し、加速度心拍数計測部24及び加速度呼吸数計測部25で処理して、加速度心拍数及び加速度呼吸数を演算して求める。
なお、加速度センサ22から加速度信号処理手段23に加速度信号を送信するには、スマートフォンに搭載されている有線又は無線通信手段を適宜利用すれば良い。
【0023】
修正心拍数演算部26は、音響心拍数計測部4及び加速度心拍数計測部24で演算された音響心拍数及び加速度心拍数に基づいて、精度の高い修正心拍数を演算する。
また、修正呼吸数演算部27は、音響呼吸数計測部5及び加速度呼吸数計測部25で演算された音響呼吸数及び加速度呼吸数に基づいて、精度の高い修正呼吸数を演算する。
一例としては、音響心拍数と加速度心拍数の単純平均又は加重平均を演算するとともに、音響呼吸数と加速度呼吸数の単純平均又は加重平均を演算する。
報知手段6は、修正心拍数演算部26及び修正呼吸数演算部27から修正心拍数及び修正呼吸数に関する情報を受信し、表示部7に修正心拍数及び修正呼吸数を表示して、検査者又は被検者に知らせる。
【0024】
図14は実施例3に係る加速度信号処理手段23のブロック図である。
加速度信号処理手段23は、加速度センサ22からの加速度信号を受けると、所定時間(例えば40秒間)における加速度信号を、加速度信号変換部28によりフーリエ変換し加速度変換信号を得て、加速度心拍数計測部24及び加速度呼吸数計測部25に送信する。
そして、加速度心拍数計測部24においては、第2の低周波除去部29(具体的にはバンドパスフィルタ)によって受信した加速度変換信号から周波数0.8Hz未満及び2Hz以上の信号を除去し、第2の低周波除去信号逆変換部30によって得られた低周波除去信号を逆フーリエ変換し、得られた逆変換信号について加速度心拍数演算部31で周期を導出し、導出した周期に基づいて加速度心拍数を演算する。
また、加速度呼吸数計測部25においては、第2の高周波除去部32(具体的にはローパスフィルタ)によって受信した加速度変換信号から周波数0.5Hz以上の信号を除去し、第2の高周波除去部32によって得られた高周波除去信号を逆フーリエ変換し、得られた逆変換信号について加速度呼吸数演算部34で周期を導出し、導出した周期に基づいて加速度呼吸数を演算する。
【0025】
図15は加速度センサ22を用いて、被検者の腹部の上において40秒間にわたって計測されたZ軸方向における加速度信号の一例である。
また、図16図15の加速度信号をフーリエ変換して得られた加速度変換信号のグラフである。
さらに、図17図16に示す加速度変換信号から高周波成分を除去した信号のグラフであり、図18図17に示す信号を逆フーリエ変換して得られた逆変換信号のグラフである。
そして、図18のグラフからは、40秒間のうち前半の20秒間に9回(27[回/分])の呼吸が行われ、後半の20秒間に6回の呼吸が行われていたことが分かる。
なお、低周波除去信号を逆フーリエ変換して得られた逆変換信号についてのグラフは示していないが、図15の例では、前半20秒間における加速度心拍数は84[bpm]、後半20秒間における加速度心拍数は54[bpm]であった。
すなわち、逆変換信号を解析すれば、心拍数や呼吸数が途中で変化した場合においても、それぞれの期間における心拍数や呼吸数を演算し報知することができる。
【0026】
図18の逆変換信号からは、呼気と吸気を判別することもできる。
この例では、逆変換信号のグラフが右上がりの期間(加速度が増加する期間)は呼気(息を吐いている期間)であり、右下がりの期間(加速度が減少する期間)は吸気(息をすっている期間)であると判別することができる。
また、図18の逆変換信号から呼吸の強弱も判定できる。
図19は、強呼吸、弱呼吸、無呼吸の状態における逆変換信号のグラフであるが、加速度の振幅幅が概ね0.06[m/s2]以上であれば強呼吸の状態、0.03~0.06[m/s2]の範囲であれば弱呼吸の状態、0.03[m/s2]以下であれば無呼吸の状態であると判定することができる。
このように、高周波除去信号を逆フーリエ変換することにより、呼吸数変化の解析、呼気と吸気の判別及び呼吸の強弱の判定を行えることが分かる。
【実施例4】
【0027】
図20は実施例4に係る第2の加速度信号処理手段35のブロック図である。
また、実施例4に係る心拍数及び呼吸数計測装置の概念図は実施例3(図12)と同様であり、実施例3に係る心拍数及び呼吸数計測装置と相違しているのは、加速度信号変換部28がY軸方向加速度信号変換部36とZ軸方向加速度信号抽出部37に分けてある点、加速度呼吸数計測部25が第2の加速度呼吸数演算部40、第2の高周波除去部32及び第2の高周波除去信号逆変換部33からなる第2の加速度呼吸数計測部38となっている点並びに加速度心拍数計測部24が差分演算部42及び第2の加速度心拍数演算部43からなる第2の加速度心拍数計測部38となっている点である。
そして、棒状体1、体導音センサ2、体導音信号処理手段3、音響心拍数計測部4、音響呼吸数計測部5、報知手段6、表示部7、加速度センサ22、修正心拍数演算部26及び修正呼吸数演算部27については、実施例1又は3と同じなので説明は省略する。
【0028】
実施例4に係る第2の加速度信号処理手段35においては、図21の処理フロー図に示すように、加速度センサ22で測定された所定時間(例えば33秒間)におけるY軸方向加速度信号をY軸方向加速度信号変換部36によりフーリエ変換し、得られたY軸方向加速度変換信号を第2の加速度呼吸数演算部40に送る。
すると、第2の加速度呼吸数演算部40は、最大振幅が閾値(例えば40)を超えているか判別し、超えていなければ無呼吸と判定し、超えていれば最大振幅の周波数に基づいて加速度呼吸数を導出する。
また、Y軸方向加速度信号変換部36で得られたY軸方向加速度変換信号から第2の高周波除去部32によって高周波除去信号(呼吸音に近い信号)を抽出し、第2の高周波除去信号逆変換部33によって高周波除去信号が逆フーリエ変換され、逆変換信号(呼吸波形信号41)を導出する。
【0029】
実施例4に係る第2の加速度信号処理手段35においては、さらに、図22の処理フロー図に示すように、Z軸方向加速度信号抽出部37が加速度センサ22からZ軸方向加速度信号を抽出し、所定時間(例えば33秒間)におけるZ軸方向加速度信号を差分演算部42に送る。
すると、差分演算部42は所定時間におけるZ軸方向加速度信号から第2の高周波除去信号逆変換部33で得られた呼吸波形信号41を差し引き、Z軸方向差分加速度信号を得て第2の加速度心拍数演算部43に送信する。
そして、第2の加速度心拍数演算部43においては、パルス振幅が閾値(例えば0.2m/s2以上又は-0.2m/s2以下)となっているか判別し、なっていなければ心拍なしと判定し、なっていれば心拍パルスの時間間隔(周期)に基づいて加速度心拍数を導出する。
【0030】
図23は加速度センサ22を用いて、被検者の胸部の上(好ましくは、加速度センサ22の上部を左心尖部の真上、加速度センサ22の下部を左心尖部の腹部側の上)において33秒間にわたって計測されたY軸方向加速度信号の一例である。
また、図24図23のY軸方向加速度信号をフーリエ変換して得られたY軸方向加速度変換信号のグラフである。
そして、このグラフから最大振幅の周波数は0.24Hzであることが分かり、計測時間である33秒間では約8回(14.4回/分)の加速度呼吸数と演算される。
さらに、図25図24に示すY軸方向加速度変換信号から高周波成分を除去した信号のグラフであり、図26図25に示す高周波除去信号を逆フーリエ変換して得られた逆変換信号(呼吸波形信号41)のグラフである。
【0031】
図27は加速度センサ22を用いて、被検者の胸部の上(好ましくは、加速度センサ22の上部を左心尖部の真上、加速度センサ22の下部を左心尖部の腹部側の上)において33秒間にわたって計測されたZ軸方向加速度信号の一例である。
また、図28図27のZ軸方向加速度信号から図26の逆変換信号(呼吸波形信号)を差し引いた信号のグラフである。
そして、図28のグラフからは、パルス振幅が閾値(例えば0.2m/s2以上又は-0.2m/s2以下)となっていることが分かるとともに、33秒間に36回(周期0.912秒=65.5回/分)の心拍が行われていたことが分かる。
【0032】
実施例1~4の心拍数及び呼吸数計測装置に関する変形例を列記する。
(1)実施例4では体導音センサ2及び加速度センサ22を用いて心拍数及び呼吸数を計測し、表示部7に計測され演算された修正心拍数及び修正呼吸数を表示したが、図29に示すように、加速度センサ22のみを用いて加速度心拍数及び加速度呼吸数を計測し、表示部7に計測された加速度心拍数及び加速度呼吸数を表示するようにしても良い。
そうした場合、発明の構成は次のとおりとなる。
「 少なくともY軸方向及びZ軸方向における被検者の体動の加速度を検知し、Y軸方向加速度信号及びZ軸方向加速度信号を取得する加速度センサと、
該加速度センサにより取得されたY軸方向加速度信号に基づいて加速度呼吸数を計測する加速度呼吸数計測部と、前記加速度センサにより取得されたZ軸方向加速度信号に基づいて加速度心拍数を計測する加速度心拍数計測部を有する加速度信号処理手段と、
前記加速度呼吸数計測部で計測された加速度呼吸数及び前記加速度心拍数計測部で計測された加速度心拍数を報知する報知手段を備える
ことを特徴とする心拍数及び呼吸数計測装置。」
【0033】
(2)実施例1~4の報知手段6は、表示部7に心拍数及び呼吸数を表示して、検査者又は被検者に知らせるものであったが、表示部7に数字を表示するものに限らず、レベルメータのような表示としても良く、アナログ的な表示としても良い。
また、表示部7に代えて又は加えてスピーカを設け、音声で心拍数及び呼吸数を報知するようにしても良い。
(3)実施例3及び4の報知手段6は、表示部7に修正心拍数及び修正呼吸数を表示して検査者又は被検者に知らせるものであったが、表示部7に修正心拍数及び修正呼吸数を表示するのに代えて又は加えて、体導音センサ2を用いて計測された音響心拍数及び音響呼吸数並びに加速度センサ22を用いて計測された加速度心拍数及び加速度呼吸数を表示する表示部を設けても良い。
【0034】
(4)実施例1及び2においては、体導音センサ2を、円柱状のアクリル製ケース9と、凹部8の中心部に嵌め込まれているECM10と、凹部8の開口側を閉塞するウレタンゲル充填材11とからなるものとしたが、棒状体1の先端部自体に凹部を設け、その凹部にECMを嵌め込み、その開口側をウレタンゲル充填材で閉塞しても良い。
また、ECMに代えて通常のコンデンサ型、可動コイル型、圧電型などのマイクロホンを用いても良く、充填材としてはウレタンゲルに限らず、硬化後の状態で人体の皮膚と同等の音響インピーダンス特性をもつ疎水性の樹脂であれば、適宜の弾性高分子材料が採用可能である。
(5)実施例3及び4では加速度センサ22としてスマートフォンに内蔵されている3軸方向の加速度を検知できる加速度計(LIS2DH)を利用したが、実施例3においては少なくともZ軸方向(鉛直方向)における加速度を検知できるものであれば、どんなものでも良く、実施例4においては少なくともY軸方向(長手方向)及びZ軸方向(鉛直方向)における加速度を検知できるものであれば、どんなものでも良い。
【0035】
(6)実施例1の音響心拍数計測部4においては、低周波除去部13によって、受信した音響変換信号から周波数0.8Hz未満の信号を除去し、音響呼吸数計測部5においては、高周波除去部15によって、受信した音響変換信号から周波数0.5Hz以上の信号を除去した。
また、実施例2の第2の音響心拍数計測部18においては、低周波除去部13によって、受信した音響変換信号から0.9~2Hzの信号を抽出し、第2の音響呼吸数計測部19においては、高周波除去部15によって、0.5Hz未満の信号を抽出した。
しかし、どの範囲の信号を除去し又は抽出するかについては、個人差や計測時の被検者の状態に応じて適宜変化させても良い。
例えば、被検者の心拍数や呼吸数が低い場合(心拍数が45程度、呼吸数が20程度)、低周波除去部13によって周波数0.6Hz未満の信号を除去し、高周波除去部15によって周波数0.4Hz以上の信号を除去するようにし、逆に被検者の心拍数や呼吸数が高い場合(心拍数が80程度、呼吸数が50程度)、低周波除去部13によって周波数1.1Hz未満の信号を除去し、高周波除去部15によって周波数1.0Hz以上の信号を除去するようにすれば良い。
また、実施例3の加速度心拍数計測部24においては、第2の低周波除去部29によって受信した加速度変換信号から周波数0.8Hz未満及び2Hz以上の信号を除去し、加速度呼吸数計測部25においては、第2の高周波除去部32によって受信した加速度変換信号から周波数0.5Hz以上の信号を除去したが、上記と同様に個人差や計測時の被検者の状態に応じて、除去する信号の周波数帯を変化させても良い。
例えば、心拍数が90[bpm]を超えることはないと仮定した場合、第2の低周波除去部29によって受信した加速度変換信号から周波数0.8Hz未満の信号及び1.5Hz超の信号を除去するようにすれば良く、呼吸数が9[回/分]を下回ることはないと仮定した場合、第2の高周波除去部32によって受信した加速度変換信号から周波数0.15Hz未満の信号及び0.5Hz以上の信号を除去するようにすれば良い。
(6)実施例3においては、第2の低周波除去信号逆変換部30及び第2の高周波除去信号逆変換部33を備えているが、いずれか一方の逆変換部だけを備えるようにしても良く、心拍数及び呼吸数の変化を解析したり、呼気と吸気の判別や心拍及び呼吸の強弱の判定を行ったりする必要がなければ、これらの逆変換部は備えなくても良い。
【0036】
実施例1~4の心拍数及び呼吸数計測装置の応用例を列記する。
(A)被検者への装着が容易であり、しかも心拍数と呼吸数を同時に計測できるため、心筋細胞又は冠状動脈硬化巣に中性脂肪が蓄積する難病で“心臓の肥満”と呼ばれることもある中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)の医学研究用生体量計測装置として病院での治験用として好適に利用できる。
なお、TGCVの医学研究用に限らず、各種の呼吸器や循環器系疾患に関する研究や治験用としても利用できる。
(B)加速度センサ22を内蔵しているスマートフォン(実施例1又は2の場合には加速度センサ22を内蔵していなくても良い)に専用のアプリを搭載することにより、体導音信号処理手段3、報知手段6、加速度信号処理手段23、修正心拍数演算部26、修正呼吸数演算部27等の機能を持たせるとともに、心拍数や呼吸数等の各種データをインターネット回線経由で病院にあるサーバやクラウドサーバに送信できるようにして、在宅患者の遠隔診断システムを実現することができる。
特に、ぜんそく、睡眠時無呼吸症候群又は心疾患等、呼吸器や循環器系の病気に罹患している通院患者に適用するのに適している。
また、呼吸器や循環器系の病気に罹患していなくても、そのような病気にかかる可能性の高い中高齢者等に適用して健康管理を行う健康管理システムに利用できる。
さらに、睡眠不足がアルツハイマー病の原因になることに鑑み、心拍数や呼吸数等の各種データに基づいて睡眠状態を監視し、睡眠不足の解消に向けてアドバイスしたり環境を整えたりすることで認知症の予防に役立てることもできる。
【0037】
(C)実施例1~4の心拍数及び呼吸数計測装置に、現在の心拍数や呼吸数のデータを所定のインターバルで、有線又は無線によりデータ収集手段に送信できる機能を持たせれば、災害現場で治療を必要としている被災者に、その心拍数及び呼吸数計測装置を装着することにより、心拍数や呼吸数に異常のある被災者を的確に把握して警報や指示を発するトリアージ支援用のシステムを構築できる。
(D)実施例1~4の心拍数及び呼吸数計測装置から得た心拍数や呼吸数のデータに基づいて居眠り運転を検知し、運転者や同乗者に対して警報を発する装置を車に搭載するか運転者が所持するようにすれば、居眠り運転検知システムを構築できる。
この居眠り運転検知及び警報機能も、上記(B)の応用例と同様、各種スマートフォンに専用のアプリを搭載することにより実現可能である。
(E)実施例1~4の心拍数及び呼吸数計測装置では、一つの体導音センサ2で取得した生体音又は一つの加速度センサ22で取得した加速度信号に基づいて、同時に心拍数及び呼吸数のデータを得ることができるので、これらのデータに基づいて心拍数と呼吸数の同期の程度(以下「ゆらぎ」という。)を数値化することができ、ゆらぎの数値によって被検者が安定状態か不安定状態かを見極めることができる。
具体的には、一定時間中(例えば1分間)における単位時間中(例えば5秒間)の呼吸数群についての標準偏差である呼吸変動(Respiratory rate variability:RRV)を、一定時間中(例えば1分間)における単位時間中(例えば5秒間)の心拍数群についての標準偏差である心拍変動(Heart rate variability:HRV)で除した値によりゆらぎを数値化し、この数値が小さくなる時には被検者が安定状態から不安定状態に向かっていると判定し、この数値が大きくなる時には被検者が不安定状態から安定状態に向かっていると判定する。
この被検者状態判定機能も、上記(B)の応用例と同様、各種スマートフォンに専用のアプリを搭載することにより実現可能である。
【0038】
(F)さらに、上記(E)に記載したゆらぎの数値に、不安定定数Kを掛けることにより包括的不安定指数を求めることができる。
包括的不安定指数は、被検者が安定状態に向かっているか不安定状態に向かっているかを判定できるだけではなく、痛み刺激の大きさの判定にも使うことができる。
その理由は、「痛み」は生体にとって包括的不安定状態であり、脳は「痛み」を感じると原始的反射を使って優先的に、かつ、可能な限り速やかに、この包括的不安定状態から脱しようとするからである。
すなわち、脳は自分(脳)自身の維持の為に、心臓と肺のサイクルをゆらぎによって調整し、脳内の酸素濃度と持続時間を確保しようとしていると考えられる。
よって、包括的不安定指数を痛み指数と読み替えれば、痛みの数値化が可能となる。
なお、包括的不安定指数は絶対的不安定指数と呼んでも良く、包括的(絶対的)安定指数の逆数ということもできる。
また、不安定定数Kは生体によってそれぞれ異なる固定値であり、生体固有値といえる。
そして、包括的不安定指数=1/包括的安定指数=K×呼吸変動/心拍変動という関係があるので、Kの値は絶対的不安定状態又は絶対的安定状態において、呼吸変動と心拍変動をモニターできれば計算できる。
ただし、絶対的不安定状態や絶対的安定状態といった理想的な状況は簡単には作り出せないため、今後その計算手法を開発する必要がある。
【符号の説明】
【0039】
1 棒状体 2 体導音センサ 3 体導音信号処理手段
4 音響心拍数計測部 5 音響呼吸数計測部 6 報知手段
7 表示部 8 凹部 9 アクリル製ケース
10 エレクトレットコンデンサマイクロホン(ECM)
11 ウレタンゲル充填材
12 音響信号変換部 13 低周波除去部
14 音響心拍数演算部 15 高周波除去部
16 音響呼吸数演算部 17 第2の体導音信号処理手段
18 第2の音響心拍数計測部 19 第2の音響呼吸数計測部
20 低周波除去信号逆変換部 21 高周波除去信号逆変換部
22 加速度センサ 23 加速度信号処理手段
24 加速度心拍数計測部 25 加速度呼吸数計測部
26 修正心拍数演算部 27 修正呼吸数演算部
28 加速度信号変換部 29 第2の低周波除去部
30 第2の低周波除去信号逆変換部 31 加速度心拍数演算部
32 第2の高周波除去部 33 第2の高周波除去信号逆変換部
34 加速度呼吸数演算部 35 第2の加速度信号処理手段
36 Y軸方向加速度信号変換部 37 Z軸方向加速度信号抽出部
38 第2の加速度呼吸数計測部 39 第2の加速度心拍数計測部
40 第2の加速度心拍数演算部 41 呼吸波形信号
42 差分演算部 43 第2の加速度心拍数演算部
K 不安定定数
図1
図2
図3
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