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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】標準貫入試験装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/02 20060101AFI20230619BHJP
   G01N 3/40 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
E02D1/02
G01N3/40 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019190440
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021067000
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物名 自動貫入試験装置リーフレット 発行日 令和1年9月11日 発行所 株式会社東設土木コンサルタント 該当ページ 1ページ 公開のタイトル 「自動標準貫入試験装置」
(73)【特許権者】
【識別番号】501091006
【氏名又は名称】株式会社東設土木コンサルタント
(73)【特許権者】
【識別番号】503209526
【氏名又は名称】株式会社セロリ
(73)【特許権者】
【識別番号】517320048
【氏名又は名称】株式会社ケーウェイズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】山内 優
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】諸田 健一
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-131161(JP,A)
【文献】特開平05-196453(JP,A)
【文献】実開昭60-135334(JP,U)
【文献】特開昭59-158822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/02
G01N 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端が地面に貫入されるロッドと、
前記ロッドに挿し通されて該ロッドのアンビルを打撃するハンマと、
前記ロッドを上下方向に摺動可能に支持し、ロッドに追従して落下するガイド部材と、
前記ガイド部材に上下方向に取り付けられたラックと、
前記ガイド部材を上下方向に摺動自在に支持する支柱と、
前記支柱に取り付けられて、前記ラックの下降距離を測定するロータリエンコーダとを備えたことを特徴とする標準貫入試験装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記ロッドの上部を案内する上部ガイドと、前記ロッドの途中箇所を案内する下部ガイドと、前記上部ガイドと下部ガイドとを連結する柱部とを有し、
前記下部ガイドの上面は、前記ロッド上において、前記アンビルの上面よりも下方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の標準貫入試験装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記ロッドの上部を案内する上部ガイドと、前記ロッドの途中箇所に固定されたアンビルを案内する下部ガイドと、前記上部ガイドと下部ガイドとを連結する柱部とを有し、
前記下部ガイドは、鉛直方向に長軸を持つ長穴を有し、
前記アンビルは、前記長穴に移動可能に挿し込まれるピンを有し、
前記ロッドは、前記アンビルのピンを前記下部ガイドの長穴に挿し込むことで該下部ガイドに摺動可能に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の標準貫入試験装置。
【請求項4】
前記ハンマの上方から前記ロッドに挿し通されて該ハンマを把持および解放するキャッチャと、
前記キャッチャを昇降させるモータと、
前記モータの操作および前記ロータリエンコーダの測定した値の取得と表示が可能な端末とをさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の標準貫入試験装置。
【請求項5】
前記ハンマの上方から前記ロッドに挿し通されて該ハンマを把持および解放するキャッチャと、
前記キャッチャを昇降させるモータとを備え、
前記キャッチャは、前記ハンマとの接触の有無を検知する近接スイッチを有し、
前記近接スイッチの検知結果に応じて前記モータの回転方向を切り替える制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の標準貫入試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、JIS A-1219号に規定された地盤の標準貫入試験を行う標準貫入試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤の硬軟を評価するJIS A-1219号に規定された標準貫入試験は、重さ63.5kgのハンマを76cm自由落下させ、前述JISに規定されたサンプラを地盤に30cm貫入させる回数を測定するものである。当該標準貫入試験にあって、30cmの貫入距離と打撃回数の管理は、作業者が巻き尺で測り、野帳に手書きで記録する方法が一般的であり、信頼性が高いとはいえない。信頼性を高める測定方法として、貫入移動する部品にワイヤを固定し、ワイヤの巻き出し量をロータリエンコーダで測定する方法があるが、ハンマの落下にともなう衝撃や作業中の不注意によってワイヤの断絶、およびセンサの破損を招くおそれがある。
【0003】
一方、試験の結果の情報管理については、作業者が野帳に記録する方法の場合、誤記等の人為的なミスを排除することはできず、また、試験の結果は容易に改ざん可能である。さらに、試験終了後に、試験結果を伝達するため、即時状況評価するには、評価技術者が現地に立ち会う必要がある。このように、情報管理についても、時間、コスト、信頼性の面で短所がある。
【0004】
本発明の先行技術文献として、特許文献1を挙げることができる。同文献にはノッキングブロックの近傍位置にスケールを取付け、スケールを撮像手段により撮像し、撮像手段が撮像した画像情報とドライブハンマーの打撃数にもとづいて、標準貫入試験を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-23560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ハンマによる衝撃が発生してもロータリエンコーダの損傷を低減して耐久性を高め、標準貫入試験の測定値をデジタル化して信頼性を高め、また試験の操作を自動化して安全性および利便性を高めた標準貫入試験装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる標準貫入試験装置の代表的な構成は、下端が地面に貫入されるロッドと、ロッドに挿し通されてロッドのアンビルを打撃するハンマと、ロッドを上下方向に摺動可能に支持し、ロッドに追従して落下するガイド部材と、ガイド部材に上下方向に取り付けられたラックと、ガイド部材を上下方向に摺動自在に支持する支柱と、支柱に取り付けられて、ラックの下降距離を測定するロータリエンコーダとを備えたことを特徴とする。
【0008】
上記構成では、簡潔な装置構成を達成しつつ、ハンマの打撃時の衝撃が測定部であるロータリエンコーダに伝わり難くなっている。詳しくは、ハンマの打撃時の衝撃は主にロッドに伝わり、その後からガイド部材が追従して落下し、このガイド部材にロータリーエンコーダが接続されているため、ロータリエンコーダには直接的に衝撃が伝わらない。したがって、上記構成によれば、ロータリエンコーダの損傷を低減することができる。またロータリエンコーダによって測定値をデジタル化することができるため、測定値の信頼性を高めることが可能である。
【0009】
上記のガイド部材は、ロッドの上部を案内する上部ガイドと、ロッドの途中箇所を案内する下部ガイドと、上部ガイドと下部ガイドとを連結する柱部とを有し、下部ガイドの上面は、ロッド上において、アンビルの上面よりも下方に位置しているとよい。
【0010】
上記構成によれば、ハンマが下部ガイドに衝突しないため、下部ガイドに衝撃が直接的に加わることを防止でき、ひいてはロータリエンコーダを含む各部位を衝撃から保護することが可能になる。
【0011】
上記のガイド部材は、ロッドの上部を案内する上部ガイドと、ロッドの途中箇所に固定されたアンビルを案内する下部ガイドと、上部ガイドと下部ガイドとを連結する柱部とを有し、下部ガイドは、鉛直方向に長軸を持つ長穴を有し、アンビルは、長穴に移動可能に挿し込まれるピンを有し、ロッドは、アンビルのピンを下部ガイドの長穴に挿し込むことで下部ガイドに摺動可能に接続されていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、ロッドとガイド部材を摺動可能に接続しながら、ロッドがガイド部材から脱落しないように摺動範囲を規制することができる。これによって、試験装置を移動させているときや、設置するときなどの利便性を向上させることが可能である。
【0013】
当該標準貫入試験装置は、上記のハンマの上方からロッドに挿し通されてハンマを把持および解放するキャッチャと、キャッチャを昇降させるモータと、モータの操作およびロータリエンコーダの測定した値の取得と表示が可能な端末とをさらに備えてもよい。
【0014】
上記構成によって、装置から離れた位置で標準貫入試験を実施することが可能になり、作業員の負担軽減や安全に資することができる。
【0015】
当該標準貫入試験装置は、ハンマの上方から前記ロッドに挿し通されて該ハンマを把持および解放するキャッチャと、キャッチャを昇降させるモータとを備え、キャッチャは、ハンマとの接触の有無を検知する近接スイッチを有し、近接スイッチの検知結果に応じてモータの回転方向を切り替える制御部をさらに備えてもよい。
【0016】
上記構成によれば、キャッチャがハンマを把持したか解放したかによって、キャッチャの昇降運動が切り替わるため、ハンマによるアンビルの打撃を自動で繰り返すことが可能になる。したがって、標準貫入試験をより簡単に実施することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ハンマによる衝撃が発生してもロータリエンコーダの損傷を低減して耐久性を高め、標準貫入試験の測定値をデジタル化して信頼性を高め、また試験の操作を自動化して安全性および利便性を高めた貫入移動距離測定装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る標準貫入試験装置の概要を示した図である。
図2】ハンマおよびキャッチャの動作の概要である。
図3】キャッチャとロッドの上部との拡大図である。
図4】ガイド部材を単独で示した図である。
図5】下部ガイド付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る標準貫入試験装置(以下、試験装置100)の概要を示した図である。当該試験装置100は、JIS A-1219号に規定された地盤の標準貫入試験を行う装置である。標準貫入試験は、地盤や土質に関する調査方法であり、地盤の硬軟、締まり具合、土層の構成を判断するため、土の強度や堅さの指標となるN値とよばれる数値を測定する。N値は、サンプラ116を地盤に30cm打ち込むまでに要したハンマ122の打撃数である。
【0021】
標準貫入試験の主な流れは、ボーリングによって掘削した地面の孔に、鋼鉄製のパイプ状のサンプラ116を挿入し、そこに63.5kgのハンマ122を繰り返し落下させて、サンプラ116を30cm打ち込むまで行う。そのときの打撃数をN値として取得し、またサンプラ116から地盤の試料を採取する。
【0022】
従来の試験装置は、ハンマ122にロープ108を接続してローラーウインチを介しながら作業員が手動で引き上げたり、またサンプラ116の周囲に三つ又の足場を組んでサンプラ116の上方を別の作業員が押さえる必要があったりするなど、労力を要する構成となっていた。さらに、サンプラ116の貫入距離は作業員が手作業で測り、N値の測定も作業員の記憶と野帳への書込みによって記録していたため、正確性や信頼性に改善の余地があった。
【0023】
上記課題を踏まえ、当該試験装置100では、支柱104を中心とした簡潔な構成で、モータ付きプーリウィンチ106やロータリエンコーダ130、さらには測定値を取得する端末132を使用して、より少ない労力で安全かつ信頼性の高い測定を行うことを可能にしている。
【0024】
当該試験装置100の本体は、地面に設置する基盤102と、基盤102に垂直に立てられた支柱104を中心にして構成されている。基盤102と支柱104は、ボルトおよびナットで連結されていて、運搬時に分解することが可能になっている。基盤102には、ハンマ122を引き上げるモータ付きのプーリウィンチ106や、プーリウィンチ106からのロープ108の離脱を防ぐ防止車輪110なども設置されている。支柱104の上部には、ロープ108を案内する2つの滑車112が設けられている。プーリウィンチ106には、不図示の発電機から電源が供給される。
【0025】
ロッド114は、下端側から順に、地面に貫入されるパイプ状のサンプラ116、サンプラ116と接続しているボーリングロッド118、およびボーリングロッド118と接続しているガイドロッド120によって構成されている。ロッド114は、地面に対して鉛直の姿勢で、上部ガイド144および下部ガイド146によって支柱104に保持されている。
【0026】
ハンマ122は、モンケンとも呼ばれ、重量がJIS規格に沿って63.5kgに設定されている。ハンマ122は、ロッド114に挿し通されて、ロッド114の途中箇所に固定されたアンビル140を打撃する。
【0027】
キャッチャ124は、ハンマ122の上方からロッド114に挿し通されて、ハンマ122の把持と解放を行う。キャッチャ124は、ハンマ122を把持するために、下端側に一対のスプリングフック126a、126b(図3(a)参照)が設けられている。キャッチャ124にはロープ108が接続されていて、ロープ108を介してプーリウィンチ106によってロッド114上を昇降する。
【0028】
ガイド部材128は、支柱104に対して、ロッド114を鉛直な姿勢で保持する部材である。ガイド部材128は、上部ガイド144、下部ガイド146および柱部148によって構成されている。これらガイド部材128は、ロッド114と共に移動できるよう、支柱104に対して上下方向に摺動自在に支持されている。また上部ガイド144および下部ガイド146は、ロッド144を摺動可能に支持している。当該試験装置100では、ガイド部材128の移動距離をロータリエンコーダ130で測定することで、サンプラ116の貫入距離を測定する。
【0029】
ロータリエンコーダ130は、支柱104に固定された当該試験装置100の測定部であり、ガイド部材128の移動距離を測定する。詳しくは、ロータリエンコーダ130は、ラックアンドピニオン構造によってガイド部材128のラック150(図4(b)参照)と噛み合い、ガイド部材128の上下移動に伴って内部の円盤を回転させ、その回転量を電気信号に変換して移動距離を検出する。
【0030】
端末132は、無線通信によって、当該試験装置100の操作部および表示部として機能する。例えば、端末132は、制御部134を介して、プーリウィンチ106の開始や停止などが操作できるほか、サンプラ116の貫入距離やハンマ122の打撃数などを取得し表示することができる。端末132を備えることによって、試験装置100の本体から離れた位置で標準貫入試験を実施することができ、作業員の負担軽減や安全に資することが可能になる。
【0031】
端末132は、動画撮影や非常停止なども可能であり、またデータの改ざん防止処置を施して試験の信頼性を高めること等も可能である。端末132を通じて得た各データは、インターネットなどのネットワークを介して管理者のサーバ133に送信することができる。
【0032】
制御部134は、主にプーリウィンチ106の動作を制御する。例えば、制御部134は、キャッチャ124に設けられた近接スイッチ136のON/OFFを検知して、プーリウィンチ106の回転方向を制御する。また、制御部134は、サンプラ116が規定の貫入距離に到達したときや、ハンマ122の打撃が規定の数に到達したときなど、あらかじめ決められた条件に従ってプーリウィンチ106の動作を自動で停止することが可能である。
【0033】
図2は、ハンマ122およびキャッチャ124の動作の概要である。図3は、キャッチャ124とロッド114の上部との拡大図である。以下、図2および図3を参照して、ハンマ122とキャッチャ124の構成について説明する。
【0034】
図2(a)は、キャッチャ124でハンマ122を引き上げているときの様子である。前述したように、キャッチャ124は、スプリングフック126a、126b(図3(a)参照)でハンマ122を把持し、ロープ108を介してプーリウィンチ106(図1参照)によって引き上げられる。このとき、キャッチャ124にはハンマ122との接触の有無を検知する近接スイッチ136が設けられている。図1の制御部134は、近接スイッチ136がONのときはキャッチャ124がハンマ122を把持したと判定し、プーリウィンチ106を巻取方向に回転させる。
【0035】
図2(b)は、キャッチャ124がハンマ122を開放した時の様子である。ここで、図3(b)に示すように、ロッド114の上部には、上端に向かって次第に径が太くなったリリース部138が設けられている。キャッチャ124がリリース部138まで引き上げられると、スプリングフック126a、126bがリリース部138の傾斜に沿って開き、ハンマ122を開放する。これによって、図2(b)に示すようにハンマ122が落下してアンビル140を打撃し、サンプラ116が地面に貫入する。リリース部138は、JIS規格に沿って、ハンマ122がアンビル140に対して上方の76cmから落下するように設けられている。
【0036】
制御部134(図1参照)は、近接スイッチ136がOFFのときはキャッチャ124がハンマ122を解放したと判定し、プーリウィンチ106の回転方向を繰出方向に切り換える。これによって、キャッチャ124はロッド114上を下降する。また、制御部134は、近接スイッチ136のOFFへの切換えを利用して、ハンマ122の打撃数をカウントして端末132に送信する。
【0037】
図2(c)は、キャッチャ124が再びハンマ122を把持した様子である。キャッチャ124がハンマ122を把持して近接スイッチ136がONになると、制御部134(図1参照)は再びプーリウィンチ106の回転方向を巻取方向に切り換える。これによって、図2(a)のように再びキャッチャ124およびハンマ122が上昇する。これら一連の動作は、サンプラ116の貫入距離やハンマ122の打撃数が規定の値になるまで繰り返される。
【0038】
これらのように、当該試験装置100では、制御部134が近接スイッチ136の検知結果に応じてプーリウィンチ106のモータの回転方向を切り換えるため、ハンマ122の引き上げと落下とが自動で繰り返される。すなわち、当該試験装置100であれば、端末132から試験開始のスイッチを入れた後は、規定の貫入距離や打撃数に到達するまで、ハンマ122によるアンビル140の打撃が自動で繰り返し行われるため、標準貫入試験をより簡単かつ安全に実施することが可能になっている。
【0039】
図3(a)は、キャッチャ124とロッド114の上部とを拡大して例示している。ロッド114の上部には、ロッド114を支える上部ガイド144にキャッチャ124が衝突しないよう、弾性体142が設置されている。弾性体142は、例えばロッド114の周囲に設置されたコイルスプリングによって実現される。
【0040】
図3(b)は、図3(a)のキャッチャ124が引き上げられたときの様子である。前述したように、キャッチャ124は、ロッド114のリリース部138を通ることでスプリングフック126a、126bが開き、ハンマ122を解放する。このとき、キャッチャ124は、ハンマ122を解放したことでロープ108からの引き上げる力を急激に受け、上方に跳ね上がるおそれがある。このとき、ロッド114に弾性体142が設けられていることで、跳ね上がったキャッチャ124を上部ガイド144に衝突させることなく柔軟に受け止めることが可能になっている。このようにして衝撃を緩和することで、各所の破損を防ぐほか、ロータリエンコーダ130(図1参照)の測定精度の向上に資することができる。また、キャッチャ124が上部ガイド144に衝突する心配が無いため、当該試験装置100は従来の装置構成に比べてロッド114の上端側を短くして全高を抑えることが可能である。
【0041】
図4は、ガイド部材128を単独で示した図である。図4(a)は、図1と同じ方向からガイド部材128を示している。前述したように、当該試験装置100では、ガイド部材128の移動距離をロータリエンコーダ130で測定することで、サンプラ116(図1参照)の貫入距離を測定する。
【0042】
ガイド部材128は、主に上部ガイド144、下部ガイド146、および柱部148によって構成されている。上部ガイド144は、ロッド114の上部を案内する部位である。上部ガイド144は、支柱104の周りを囲むように支柱に取り付けられ、プーリ等を利用して支柱104に対して上下方向に摺動することが可能になっている。また、上部ガイド144は、先端側に上下方向に貫通した孔が設けられていて、ロッド114を通すことが可能になっている。
【0043】
下部ガイド146は、ロッド114(図1参照)の下部を案内する部位であり、上部ガイド144と同様にロッド114を通しつつ支柱104に沿って摺動可能になっている。本実施形態では、下部ガイド146は、ロッド114の下部側の途中箇所に固定されたアンビル140を案内する構成となっている。
【0044】
柱部148は、支柱104に沿って上部ガイド144と下部ガイド146とを連結する部材である。図4(b)は、ガイド部材128を支柱104とは反対側から見た図である。柱部148には、上下方向にラック150が取り付けられている。ラック150は、支柱104に固定されたロータリエンコーダ130のピニオンと噛み合い、上下方向に移動することでロータリエンコーダ130のピニオンを回転させる。
【0045】
ロータリエンコーダ130は、内部の円盤の回転を検知するセンサであり、支柱104に固定されている。ロータリエンコーダ130は、ラック150に噛み合うピニオンを有し、ピニオンを通じて円盤を回転させ、その回転量からラック150の下降距離を測定する。
【0046】
上記構成によって、ハンマ122(図1参照)の打撃によってロッド114が地中に打ちこまれると、ガイド部材128がロッド114に追従して(遅れて)落下し、そのときのラック150の下降距離がロータリエンコーダ130によってデジタル値として取得される。ロータリエンコーダ130による測定値は、制御部134を介して端末132に送信される。
【0047】
図5は、下部ガイド146付近の拡大図である。図5(a)は、ハンマ122の打撃前の下部ガイド146付近の様子である。アンビル140は、ハンマ122が打撃する部位であり、ロッド114の途中箇所に固定されていて、ロッド114よりも径が太くなっている。
【0048】
下部ガイド146は、アンビル140と嵌合する部位として、鉛直方向に長軸を持つ長穴152を有している。一方、アンビル140は、長穴152に挿し込まれるピン154を有している。ピン154は、円形で、長穴152の内部を長軸方向に移動可能になっている。ロッド114は、アンビル140のピン154を下部ガイド146の長穴152に挿し込むことで、下部ガイド146に摺動可能に接続された状態になっている。
【0049】
上記の構成によって、ロッド114とガイド部材128を摺動可能に接続しながら、ロッド114がガイド部材128から脱落しないように摺動範囲を規制することが可能になっている。これによって、試験装置100を移動させているときや、設置するときなどの利便性を向上させることが可能である。
【0050】
アンビル140は、下端側にフランジ156を有している。アンビル140を含むロッド114の全体は地面に立てられる一方、下部ガイド146を含むガイド部材128は支柱104を上下に摺動可能になっている。このとき、ガイド部材128はロッド114には固定されていないため、ガイド部材128は落下しようとし、下部ガイド146がアンビル140のフランジ156に乗った状態となる。下部ガイド146がアンビル140のフランジ156に乗ったとき、下部ガイド146の上面は、ロッド114上においてアンビル140の上面よりも下方に位置するよう構成されている。
【0051】
図5(b)は、ハンマ122がアンビル140を打撃した瞬間の様子である。下部ガイド146の上面がアンビル140の上面よりも下方に位置することで、打撃時のハンマ122は下部ガイド146には衝突しない。この構成によって、ハンマ122の打撃時の衝撃が下部ガイド146に直接的に加わることを防止し、ひいてはロータリエンコーダ130(図1参照)を含む当該試験装置100の各部位を衝撃から保護することが可能になっている。
【0052】
図5(c)は、ハンマ122がアンビル140を打撃した後の様子である。ハンマ122がアンビル140を打撃することで、ロッド114が地中に打ち込まれる。そして、下部ガイド146は、ロッド114に追従するようにして下降し、再びアンビル140のフランジ156に乗る。このときの柱部148の下降距離が、前述したロータリエンコーダ130(図4(a))によって測定され、サンプラ116の貫入距離に換算される。
【0053】
上述したように、当該試験装置100では、ロッド114がアンビル140のピン154を介して下部ガイド146に摺動可能に接続されていて、ロッド114と下部ガイド146とが固定されていない。この構成によって、ハンマ122の打撃時の衝撃は主にロッド114に伝わり、その後からガイド部材128が追従して落下する。そのため、ロータリエンコーダ130には直接的に衝撃が伝わらない。したがって、より信頼性の高い測定値を得ることが可能になる。
【0054】
以上のように、当該試験装置100は、ロータリエンコーダ130を衝撃から保護して、測定精度の向上および損傷の低減を図ることが可能である。また、ロータリエンコーダ130によってデジタル化した測定値を得ることができるため、信頼性の高い測定を行うことが可能である。
【0055】
当該試験装置100では、端末132および制御部134を利用して、標準貫入試験をほぼ自動で行うことが可能であり、作業員はハンマ122等から離れた位置に待機できるため、試験の安全性および利便性を高めることが可能になっている。また、当該試験装置100は、従来の三つ又の足場が必要な試験装置に比べて、支柱104を中心とした簡潔な構成になっていて、加えて排気の無い電動駆動であるため、狭い深礎内でも使用しやすい。さらに、端末132からサーバ133に測定値を送ることができるため、管理者は複数個所から標準貫入試験の測定値を取得して、そのエリアの地盤や土質の調査を効率よく行うことが可能である。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、JIS A-1219号に規定された地盤の標準貫入試験を行う標準貫入試験装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
100…試験装置、102…基盤、104…支柱、106…プーリウィンチ、108…ロープ、110…防止車輪、112…滑車、114…ロッド、116…サンプラ、118…ボーリングロッド、120…ガイドロッド、122…ハンマ、124…キャッチャ、126a、126b…スプリングフック、128…ガイド部材、130…ロータリエンコーダ、132…端末、133…サーバ、134…制御部、136…近接スイッチ、138…リリース部、140…アンビル、142…弾性体、144…上部ガイド、146…下部ガイド、148…柱部、150…ラック、152…長穴、154…ピン、156…フランジ
図1
図2
図3
図4
図5