(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】通信プロトコル変換装置、通信プロトコル変換方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 67/562 20220101AFI20230619BHJP
H04L 69/08 20220101ALI20230619BHJP
H04L 67/12 20220101ALI20230619BHJP
【FI】
H04L67/562
H04L69/08
H04L67/12
(21)【出願番号】P 2019235425
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-12-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519462908
【氏名又は名称】Goal connect株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519462919
【氏名又は名称】大下 明
(74)【代理人】
【識別番号】110002055
【氏名又は名称】弁理士法人iRify国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大下 明
【審査官】浦口 幸宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-252534(JP,A)
【文献】特開2002-056225(JP,A)
【文献】特開平03-088539(JP,A)
【文献】曽根高則義 他,分散型電源によるエネルギーサービスの通信プロトコル要件の検討,平成30年電気学会全国大会講演論文集 シンポジウム講演[DVD-ROM],一般社団法人電気学会,2018年03月05日,pp.S22(41)~S22(46)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 13/00
H04L 67/12
H04L 67/562
H04L 69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力取引市場を運営管理する情報システム又は前記電力取引市場における取引の対象と
なるリソースを提供するリソース提供者の情報システムに接続される第1通信部と、
電力系統における基幹システムに接続される第2通信部と、
前記第1通信部により受信した通信メッセージを解析し、予め定められた複数種の第1
通信プロトコルのうちの何れに準拠した通信メッセージであるかを判別する判別部
であって、前記複数種の第1通信プロトコルの各々を一意に識別する識別情報に対応付けて当該識別情報の示す第1通信プロトコルに準拠した通信メッセージの形式を示す形式情報を格納済のデータベースの格納内容を参照し、前記第1通信部により受信した通信メッセージが前記複数種の第1通信プロトコルのうちの何れに準拠した通信メッセージであるかを判別する判別部と、
前記第1通信部により受信した通信メッセージが前記複数種の第1通信プロトコルのうちの何れかに準拠した通信メッセージであると前記判別部により判別された場合、前記第1通信部により受信した通信メッセージを、前記判別部による判別結果に応じて前記基幹システムとの通信を規定する第2通信プロトコルに準拠した通信メッセージに変換する変換部と、
前記変換部により変換済の通信メッセージを、前記第2通信部を介して前記基幹システ
ムへ送信する転送制御部と
、を備え、
前記第1通信部により受信した通信メッセージが前記複数種の第1通信プロトコルのうちの何れかに準拠した通信メッセージではないと前記判別部により判別された場合、前記第1通信部により受信した通信メッセージから識別情報及び形式情報を抽出して前記データベースに追加登録する、通信プロトコル変換装置。
【請求項2】
前記データベースを格納した記憶部を有することを特徴とする請求項1に記載の通信プロトコル変換装置。
【請求項3】
電力取引市場を運営管理する情報システム又は前記電力取引市場における取引の対象と
なるリソースを提供するリソース提供者の情報システムから予め定められた複数種の第1
通信プロトコルの何れかに従って送信される通信メッセージを受信し、受信した通信メッ
セージを解析して前記複数種の第1通信プロトコルのうちの何れに準拠した通信メッセー
ジであるかを判別する判別ステップであって、前記複数種の第1通信プロトコルの各々を一意に識別する識別情報に対応付けて当該識別情報の示す第1通信プロトコルに準拠した通信メッセージの形式を示す形式情報を格納済のデータベースの格納内容を参照し、前記受信した通信メッセージが前記複数種の第1通信プロトコルのうちの何れに準拠した通信メッセージであるかを判別する判別ステップと、
前記受信した通信メッセージが前記複数種の第1通信プロトコルのうちの何れかに準拠した通信メッセージであると前記判別ステップにて判別された場合、前記受信した通信メッセージを、前記判別ステップの判別結果に応じて、電力系統における基幹システムとの通信を規定する第2通信プロトコルに準拠した通信メッセージに変換する変換ステップと、
前記変換ステップにて変換済の通信メッセージを、前記基幹システムへ送信する転送ス
テップと、
前記受信した通信メッセージが前記複数種の第1通信プロトコルのうちの何れかに準拠した通信メッセージではないと前記判別ステップにて判別された場合、前記受信した通信メッセージから識別情報及び形式情報を抽出して前記データベースに追加登録する登録ステップと、
を含む通信プロトコル変換方法。
【請求項4】
コンピュータに、
電力取引市場を運営管理する情報システム又は前記電力取引市場における取引の対象と
なるリソースを提供するリソース提供者の情報システムから予め定められた複数種の第1
通信プロトコルの何れかに従って送信される通信メッセージを受信し、受信した通信メッ
セージを解析して前記複数種の第1通信プロトコルのうちの何れに準拠した通信メッセー
ジであるかを判別する判別ステップであって、前記複数種の第1通信プロトコルの各々を一意に識別する識別情報に対応付けて当該識別情報の示す第1通信プロトコルに準拠した通信メッセージの形式を示す形式情報を格納済のデータベースの格納内容を参照し、前記受信した通信メッセージが前記複数種の第1通信プロトコルのうちの何れに準拠した通信メッセージであるかを判別する判別ステップと、
前記受信した通信メッセージが前記複数種の第1通信プロトコルのうちの何れかに準拠した通信メッセージであると前記判別ステップにて判別された場合、前記受信した通信メッセージを、前記判別ステップの判別結果に応じて、電力系統における基幹システムとの通信を規定する第2通信プロトコルに準拠した通信メッセージに変換する変換ステップと、
前記変換ステップにて変換済の通信メッセージを、前記基幹システムへ送信する転送ス
テップと、
前記受信した通信メッセージが前記複数種の第1通信プロトコルのうちの何れかに準拠した通信メッセージではないと前記判別ステップにて判別された場合、前記受信した通信メッセージから識別情報及び形式情報を抽出して前記データベースに追加登録する登録ステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信プロトコルの変換技術に関し、特に、電力系統の基幹システムと他の情報システムとの間の通信プロトコルの変換技術に関する。
【背景技術】
【0002】
2016年4月の電力自由化以降、我が国では、電力を取引するための市場として計画値に対して不足する電力量を取引する卸電力市場が開設されており、今後、容量市場及び需給調整市場の開設が想定されている。容量市場とは例えば国全体で必要となる供給力を取引する市場のことをいい、需給調整市場とは需給ギャップの補填又は需給変動への対応及び周波数維持等のための調整力を取引する市場のことをいう。以下、卸電力市場、容量市場及び需給調整市場をまとめて「電力取引市場」と総称する。
【0003】
電力取引市場における取引は、電力取引市場を運営管理する情報システムと電力事業者の電力系統における基幹システムとの間のデータ通信により実現される。このデータ通信に使用される通信プロトコルは情報システム毎に異なり得る。同様に、電力の需給を調整するためのリソース(換言すれば、電力取引市場において取引対象となるリソース、例えば、電力を供給するリソースである発電機、電力を消費するリソースである空調設備や生産設備等)を有する事業者の情報システムと基幹システムとの間のデータ通信に使用される通信プロトコルも情報システム毎に異なり得る。このため、電力事業者が新たな電力取引市場に参入する場合或いは新たなリソース所有者と取引を開始する場合には新たな情報システムを基幹システムに接続することが必要となり、当該新たに接続する情報システムの通信プロトコルに合せて基幹システムの通信機能を改修することが必要となっていた。
【0004】
電力事業では、毎日業務が発生するため、電力取引市場を運営管理する情報システム等の他の情報システムと基幹システムとの連携の発生頻度が高く、また、制度変更も頻繁にあるため、新市場の創設等の環境変化も多い。しかし、基幹システムの改修には多大な手間と費用が必要になるという問題があった。そこで、既存システムの通信機能の改修を行うことなく他の情報システムとのデータ通信を行えるようにする技術が種々提案されており、その一例として特許文献1に開示の技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示の発明は、電力設備の集中監視を行う集中監視制御システムの発明であり、電力取引市場等を運営管理する情報システムと基幹システムとの間のデータ通信を実現する技術ではない。つまり、基幹システムの通信機能を改修することなく、新たな情報システムと当該基幹システムとの間のデータ通信を可能にする技術は従来無かった。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、電力系統の基幹システムの通信機能を改修することなく、電力取引市場を運営管理する新たな情報システム又は新たなリソース提供者の情報システムと基幹システムとの間のデータ通信を行えるようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、電力取引市場を運営管理する情報システム又は前記電力取引市場における取引の対象となるリソースを提供するリソース提供者の情報システムに接続される第1通信部と、電力系統における基幹システムに接続される第2通信部と、前記第1通信部により受信した通信メッセージを解析し、予め定められた複数種の第1通信プロトコルのうちの何れに準拠した通信メッセージであるかを判別する判別部と、前記第1通信部により受信した通信メッセージを、前記判別部による判別結果に応じて、前記基幹システムとの通信を規定する第2通信プロトコルに準拠した通信メッセージに変換する変換部と、前記変換部により変換済の通信メッセージを、前記第2通信部を介して前記基幹システムへ送信する転送制御部と、を有する通信プロトコル変換装置、を提供する。
【0009】
電力取引市場を運営管理する情報システム又は取引の対象となるリソースを提供するリソース提供者の情報システムと、基幹システムと、を本発明の通信プロトコル変換装置を介して接続すれば、情報システムから基幹システムへ送信される通信メッセージは通信プロトコル変換装置によって第2通信プロトコルに準拠した通信メッセージに変換されて基幹システムへ送信される。つまり、本発明の通信プロトコル変換装置を介して基幹システムに情報システムを接続することにより、基幹システムの通信機能の改修を行うことなく、新たな情報システムと基幹システムとの間のデータ通信を行えるようになる。
【0010】
より好ましい態様の通信プロトコル変換装置において、前記判別部は、前記複数種の第1通信プロトコルの各々を一意に識別する識別情報に対応付けて当該識別情報の示す第1通信プロトコルに準拠した通信メッセージの形式を示す形式情報を格納したデータベースを参照して、前記第1通信部により受信した通信メッセージが前記複数種の第1通信プロトコルのうちの何れに準拠した通信メッセージであるかを判別する。本態様によれば、新たな情報システムを本発明の通信プロトコル変換装置を介して基幹システムに接続する場合に、当該情報システムにおける通信に使用される第1通信プロトコルの識別情報及び形式情報を上記データベースに格納しておくことで、基幹システムの通信機能を改修することなく、当該新たな情報システムとの間のデータ通信を行えるようになる。さらに好ましい態様においては、上記データベースを格納した記憶部を上記通信プロトコル変換装置に設けてもよい。
【0011】
また、上記課題を解決するために本発明は、電力取引市場を運営管理する情報システム又は前記電力取引市場における取引の対象となるリソースを提供するリソース提供者の情報システムから予め定められた複数種の第1通信プロトコルの何れかに従って送信される通信メッセージを受信し、受信した通信メッセージを解析して前記複数種の第1通信プロトコルのうちの何れに準拠した通信メッセージであるかを判別する判別ステップと、前記受信した通信メッセージを、前記判別ステップの判別結果に応じて、電力系統における基幹システムとの通信を規定する第2通信プロトコルに準拠した通信メッセージに変換する変換ステップと、前記変換ステップにて変換済の通信メッセージを、前記基幹システムへ送信する転送ステップと、を含む通信プロトコル変換方法を提供する。
【0012】
電力取引市場を運営管理する情報システム又は取引の対象となるリソースを提供するリソース提供者の情報システムと基幹システムとの間の通信を中継するゲートウェイ等の中継装置に本発明の通信プロトコル変換方法を実行させることで、基幹システムの通信機能の改修を行うことなく、新たな情報システムと基幹システムとの間のデータ通信を行えるようになる。
【0013】
また、上記課題を解決するために本発明は、コンピュータに、電力取引市場を運営管理する情報システム又は前記電力取引市場における取引の対象となるリソースを提供するリソース提供者の情報システムから予め定められた複数種の第1通信プロトコルの何れかに従って送信される通信メッセージを受信し、受信した通信メッセージを解析して前記複数種の第1通信プロトコルのうちの何れに準拠した通信メッセージであるかを判別する判別ステップと、前記受信した通信メッセージを、前記判別ステップの判別結果に応じて、電力系統における基幹システムとの通信を規定する第2通信プロトコルに準拠した通信メッセージに変換する変換ステップと、前記変換ステップにて変換済の通信メッセージを、前記基幹システムへ送信する転送ステップと、を実行させるプログラム、を提供する。
【0014】
電力取引市場を運営管理する情報システム又は取引の対象となるリソースを提供するリソース提供者の情報システムと基幹システムとの間の通信を中継するゲートウェイ等の中継装置に本発明のプログラムをインストールし、当該中継装置のコンピュータを当該プログラムに従って作動させることで、基幹システムの通信機能の改修を行うことなく、新たな情報システムと基幹システムとの間のデータ通信を行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による通信プロトコル変換装置10A及び通信プロトコル変換装置10Bを有する通信システム1の構成例を示す図である。
【
図2】通信プロトコル変換装置10の構成例を示すブロック図である。
【
図3】通信プロトコル変換装置10の制御部100が変換プログラム134aに従って実現する機能ブロックの一例を示す図である。
【
図4】通信プロトコル変換装置10の制御部100が変換プログラム134aに従って実行する通信プロトコル変換方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態による通信プロトコル変換装置10A及び通信プロトコル変換装置10Bを含む通信システム1の構成例を示す図である。
図1に示すように、通信システム1は、通信プロトコル変換装置10A及び通信プロトコル変換装置10Bの他に、情報システム20A~20Fと、電力系統における基幹システム30と含む。
【0017】
情報システム20A、20B及び20Cの各々は、通信プロトコル変換装置10Aを介して基幹システム30に接続される。情報システム20A、20B及び20Cの各々は、電力取引市場を運営管理する情報システムである。例えば、情報システム20Aは卸電力市場を運営管理し、情報システム20Bは容量市場を運用管理し、情報システム20Cは需給調整市場を運営管理する。以下では、情報システム20A、20B及び20Cの各々を区別する必要がない場合には「市場システム」と呼ぶ場合がある。本実施形態では、3種類の市場システムが通信プロトコル変換装置10Aに接続されているが、通信プロトコル変換装置10Aに接続される市場システムは2つであってもよく、また4つ以上であってもよい。
【0018】
情報システム20D、20E及び20Fの各々は、通信プロトコル変換装置10Bを介して基幹システム30に接続されている。情報システム20D、20E及び20Fの各々は、電力の需要と供給とを調整するためのリソース(換言すれば、電力取引市場において取引対象となるリソース)を有する事業者(以下、リソース提供者)の情報システムである。例えば、情報システム20Dは、発電機を有し、電力の供給者となるリソース提供者の情報システムである。情報システム20Eは、生産設備等を有し、電力の需要者となるリソース提供者の情報システムである。情報システム20Fは、蓄電池を有し、電力の供給者又は電力の需要者となるリソース提供者の情報システムである。以下では、情報システム20D、20E及び20Fの各々を区別する必要がない場合には「リソースシステム」と呼ぶ場合がある。本実施形態では、3種類のリソースシステムが通信プロトコル変換装置10Bに接続されているが、通信プロトコル変換装置10Bに接続されるリソースシステムは2つであってもよく、また4つ以上であってもよい。
【0019】
情報システム20D~20Fの各々とのデータ通信を規定する通信プロトコルは、情報システム毎に異なる。本実施形態では、情報システム20Dとのデータ通信を規定する通信プロトコルはSEPであり、情報システム20Eとのデータ通信を規定する通信プロトコルはFTPであり、情報システム20Fとのデータ通信を規定する通信プロトコルはMQTTである。なお、リソースシステムとのデータ通信を規定する通信プロトコルは、SEP、FTP、及びMQTTには限定されず、HTTP、UDP、TCP、SOAP、Modbus、或いは独自プロトコルであってもよい。
【0020】
情報システム20A~20Cの各々とのデータ通信を規定する通信プロトコルは基本的にはOpen-ADRであるが、通信プロトコル内で定義可能な情報が個々に異なり、本実施形態では夫々異なる通信プロトコルとして扱う。なお、市場システムとのデータ通信を規定する通信プロトコルもOpen-ADRには限定されず、HTTP等の他の通信プロトコルであってもよい。以下では、情報システム20D~20Fの各々を区別する必要がない場合には「情報システム20」と表記し、市場システム及びリソースシステムとのデータ通信を規定する通信プロトコルを「第1通信プロトコル」と総称する。基幹システム30とのデータ通信を規定する通信プロトコルは、上記複数種の第1通信プロトコルの何れとも異なる。以下では、基幹システム30とのデータ通信を規定する通信プロトコルを「第2通信プロトコル」と呼ぶ。
【0021】
通信プロトコル変換装置10A及び通信プロトコル変換装置10Bは例えばゲートウェイである。通信プロトコル変換装置10Aは、情報システム20A、20B及び20Cの各々から受信する通信メッセージを、第2通信プロトコルに準拠した通信メッセージに変換して基幹システム30へ転送する。同様に、通信プロトコル変換装置10Bは、情報システム20D、20E及び20Fの各々から受信する通信メッセージを、第2通信プロトコルに準拠した通信メッセージに変換して基幹システム30へ転送する。以下、本実施形態の特徴を顕著に示す通信プロトコル変換装置10A及び通信プロトコル変換装置10Bを中心に説明する。また、以下では、通信プロトコル変換装置10Aと通信プロトコル変換装置10Bの各々を区別する必要がない場合には「通信プロトコル変換装置10」と表記する。なお、本実施形態の通信システム1には、電力系統の基幹システムが一つだけ含まれているが、複数の基幹システムが含まれていてもよい。通信システム1に複数の基幹システムが含まれる場合には、基幹システム毎に、市場システムと当該基幹システムとを接続する通信プロトコル変換装置10及びリソースシステムと当該基幹システムとを接続する通信プロトコル変換装置10を設けるようにすればよい。
【0022】
図2は、通信プロトコル変換装置10の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように通信プロトコル変換装置10は、制御部100と、第1通信部110と、第2通信部120と、記憶部130と、これら構成要素間のデータ授受を仲介するバス140と、を有する。
【0023】
制御部100は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のコンピュータである。制御部100は、記憶部130に記憶されている変換プログラム134aに従って作動することにより、通信プロトコル変換装置10の制御中枢として機能する。変換プログラム134aに従って制御部100が実現する機能、及び当該変換プログラム134aに従って制御部100が実行する処理の詳細については後に明らかにする。
【0024】
第1通信部110及び第2通信部120は共にNIC(Network Interface Card)である。第1通信部110は、市場システム又はリソースシステムに有線接続されている。具体的には、通信プロトコル変換装置10Aにおける第1通信部110は、一般公衆回線又は専用回線等の電気通信回線を介して情報システム20A、20B及び20Cに接続されている。これに対して、通信プロトコル変換装置10Bにおける第1通信部110は、電気通信回線を介して情報システム20D、20E及び20Fに接続されている。本実施形態では、第1通信部110と市場システム又はリソースシステムとの接続形態は有線接続であるが、無線接続であってもよい。通信プロトコル変換装置10Aの第2通信部120と、通信プロトコル変換装置10Bの第2通信部120は、共に電気通信回線を介して基幹システム30に有線接続されている。第2通信部120と基幹システム30との接続形態も無線接続であってもよい。
【0025】
第1通信部110は、接続先の情報システムから予め定められた複数種の第1通信プロトコルの何れかに従って送信される通信メッセージを受信し、受信した通信メッセージを制御部100に引き渡す。また、第1通信部110は、制御部100から引き渡される通信メッセージを接続先の情報システムへ送信する。第2通信部120は、基幹システム30から第2通信プロトコルに従って送信されてくる通信メッセージを受信して制御部100に引き渡す一方、制御部100から引き渡される通信メッセージを基幹システム30へ送信する。
【0026】
記憶部130は、
図2に示すように揮発性記憶部132と不揮発性記憶部134とを有する。揮発性記憶部132は例えばRAM(Random Access Memory)である。揮発性記憶部132は、プログラムを実行する際のワークエリアとして制御部100によって利用される。不揮発性記憶部134は例えばハードディスクである。不揮発性記憶部134には、本発明の特徴を顕著に示す通信プロトコル変換方法を制御部100に実行させる変換プログラム134aと、変換プログラム134aの実行過程で参照されるデータを格納した変換用データベース134bとが予め格納されている。
【0027】
通信プロトコル変換装置10Aの変換用データベース134bには、市場システムにおける複数種の第1通信プロトコルの各々を一意に識別する識別情報(例えば、通信プロトコルの名称を表す文字列)に対応付けて当該識別情報の示す第1通信プロトコルに準拠した通信メッセージの形式を示す形式情報が予め格納されている。通信プロトコル変換装置10Bの変換用データベース134bには、リソースシステムにおける複数種の第1通信プロトコルの各々を一意に識別する識別情報及び形式情報に対応付けて、リソース毎の固有の条件(リソースにアクセスするためのアドレス、リソースの設置場所、リソースの利用可能時間等)を示すリソース情報が予め格納されている。なお、リソース情報の対応付けは必ずしも必須ではなく、省略してもよい。変換用データベース134bへの識別情報等の各種情報の登録は、例えばwebコンソール等を通信プロトコル変換装置10に接続し、このwebコンソールを用いた初期設定にて行えばよい。
【0028】
通信プロトコル変換装置10の電源(
図2では図示略)の投入又はリセットを契機として、制御部100は、変換プログラム134aを不揮発性記憶部134から揮発性記憶部132へ読み出し、変換プログラム134aの実行を開始する。変換プログラム134aに従って作動している制御部100は、
図3に示す判別部100a、変換部100b及び転送制御部100cとして機能する。
図3は、制御部100が変換プログラム134aに従って実現する機能ブロックの一例を示す図である。
図3における判別部100a、変換部100b及び転送制御部100cは、制御部100を変換プログラム134aに従って作動させることにより実現されるソフトウェアモジュールである。これらソフトウェアモジュールの機能は次の通りである。
【0029】
判別部100aは、まず、第1通信部110により受信した通信メッセージを、文字列を表す仮データとして揮発性記憶部132に書き込む。次いで、判別部100aは、揮発性記憶部132に書き込んだ仮データを解析し、上記受信した通信メッセージが予め定められた複数種の第1通信プロトコルのうちの何れに準拠した通信メッセージであるかを判別する。より詳細に説明すると、判別部100aは、変換用データベース134bの格納内容を参照し、仮データに対応する通信メッセージの形式に基づいて当該通信メッセージが複数種の第1通信プロトコルのうちの何れに準拠した通信メッセージであるかを判別し、当該第1通信プロトコルの識別情報を特定する。
【0030】
変換部100bは、揮発性記憶部132に格納された仮データ(すなわち、第1通信部110により受信した通信メッセージ)を、判別部100aによる判別結果に応じて第2通信プロトコルに準拠した通信メッセージに変換する。具体的には、複数種の第1通信プロトコルの各々を示す識別情報に対応付けて第2通信プロトコルに準拠した通信メッセージへの変換ルールを示すルール情報を変換プログラム134aに予め埋め込んでおき、制御部100には判別部100aにより特定された識別情報に対応するルール情報の示す変換ルールに従って通信メッセージの変換を行わせるようにすればよい。転送制御部100cは、変換部100bにより変換済の通信メッセージを、第2通信部120を介して基幹システム30へ送信する。
【0031】
また、制御部100は変換プログラム134aに従って通信プロトコル変換方法を実行する。
図4は、この通信プロトコル変換方法の流れを示すフローチャートである。
図4に示すように、この通信プロトコル変換方法は、判別ステップSA100、変換ステップSA110、及び転送ステップSA120の三つの処理を含む。これら各処理の処理内容は次の通りである。
【0032】
判別ステップSA100では、制御部100は判別部100aとして機能する。判別ステップSA100では、制御部100は、情報システム20から送信されてくる通信メッセージを第1通信部110を介して受信し、受信した通信メッセージを仮データとして揮発性記憶部132に書き込む。そして、制御部100は、変換用データベース134bの格納内容を参照して仮データを解析し、当該仮データが複数種の第1通信プロトコルのうちの何れに準拠した通信メッセージであるかを判別する。
【0033】
変換ステップSA110では、制御部100は変換部100bとして機能する。変換ステップSA110では、制御部100は、判別ステップSA100にて揮発性記憶部132に書き込んだ仮データ、すなわち第1通信部110を介して受信した通信メッセージを、判別ステップSA100の判別結果に応じて第2通信プロトコルに準拠した通信メッセージに変換する。
【0034】
転送ステップSA120では、制御部100は転送制御部100cとして機能する。転送ステップSA120では、制御部100は、変換ステップSA110にて変換済の通信メッセージを、第2通信部120を介して基幹システム30へ送信する。
【0035】
通信プロトコル変換装置10を上記のような構成としたため、通信システム1において情報システム20から基幹システム30へ送信される通信メッセージは、通信プロトコル変換装置10によって第2通信プロトコルに準拠した通信メッセージに変換されて基幹システム30へ送信される。このため、本実施形態の通信プロトコル変換装置10によれば、基幹システム30の通信機能を改修することなく、新たな情報システムとの間でデータ通信を行うことが可能になる。なお、基幹システム30から情報システム20へ送信される通信メッセージについては、当該通信メッセージの宛先に応じた第1通信プロトコルに準拠した通信メッセージに変換して当該宛先へ転送する処理を制御部100に実行させるようにすればよい。
【0036】
また、リソースについては新規導入するというよりは既存設備を利用することが多く、リソースシステム側の通信プロトコルを基幹システムの通信プロトコルに併せようとするとリソースシステム側の通信機能の改修が必要となるが、本発明によればリソースシステム側の通信機能の改修も不要となる。
【0037】
(C:変形)
以上本発明の実施形態について説明したが、この実施形態に以下の変形を加えても勿論よい。
(1)上記実施形態では、通信プロトコル変換装置10の不揮発性記憶部134に変換用データベース134bが格納済であったが、制御部100からアクセス可能な記憶装置(例えばネットワーク対応のハードディスク等)に変換用データベース134bが格納されていてもよい。また、識別情報と形式情報とを互いに対応付けて変換プログラム134aに埋め込んでおいてもよく、この場合、変換用データベース134bは省略可能である。つまり、変換用データベース134bは本発明の通信プロトコル変換装置の必須構成要素ではなく、省略可能な任意構成要素である。
【0038】
(2)上記実施形態では、判別部100a、変換部100b及び転送制御部100cをソフトウェアモジュールで実現したが、これら各部をASICなどのハードウェアモジュールで実現し、これらハードウェアモジュールと第1通信部110及び第2通信部120とを組み合わせて本発明の通信プロトコル変換装置を構成してもよい。
【0039】
(3)上記実施形態では変換用データベース134bに識別情報等の各種情報が予め格納済であったが、第1通信部110を介して受信した通信メッセージから識別情報等の各種情報を抽出して変換用データベース134bに追加登録するようにしてもよい。
【0040】
(3)上記実施形態では、変換プログラム134aが通信プロトコル変換装置10の不揮発性記憶部134に予め記憶されていた。しかし、
図4に示す通信プロトコル変換方法をCPUなどの一般的なコンピュータに実行させるプログラムを単体で製造又は販売してもよい。このようなプログラムに従って一般的なコンピュータを作動させることで、当該コンピュータを本発明の通信プロトコル変換装置として機能させることが可能になるからである。
【0041】
なお、上記プログラムの具体的な提供態様としては、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory)又はフラッシュROM(Read Only Memory)などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に上記プログラムを書き込んで配布する態様、又はインターネットなどの電気通信回線経由のダウンロードにより上記プログラムを配布する態様が考えられる。
【符号の説明】
【0042】
1…通信システム、10,10A、10B…通信プロトコル変換装置、20A、20B、20C、20D、20E、20F…情報システム、30…基幹システム、100…制御部、100a…判別部、100b…変換部、100c…転送制御部、110…第1通信部、120…第2通信部、130…記憶部、132…揮発性記憶部、134…不揮発性記憶部、134a…変換プログラム、134b…変換用データベース、140…バス。