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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】貫入ロッド
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/02 20060101AFI20230619BHJP
   E21B 17/042 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
E02D1/02
E21B17/042
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020193094
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022081881
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】502231096
【氏名又は名称】株式会社サムシング
(73)【特許権者】
【識別番号】000233734
【氏名又は名称】株式会社アステック入江
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前 俊守
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮城 健
(72)【発明者】
【氏名】大前 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】牧野 暢久
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 凜太郎
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112820(JP,A)
【文献】特開昭64-048988(JP,A)
【文献】特許第4911470(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00- 3/115
E21B 1/00-49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に対して回転しつつ貫入される丸棒状の貫入ロッドであって、
基部と、前記基部と同芯で前記基部から突出するように設けられたおねじ部と、前記基部と同芯で前記基部と前記おねじ部との間に設けられた中間部であって前記おねじ部の有効径よりも大きく且つ前記基部の直径よりも小さい直径で形成され、軸方向に関して前記おねじ部の長さよりも小さい中間部と、前記おねじ部の外周面に設けられ末端を前記中間部に接続した螺旋状のねじ山であって、平行ねじで構成されるねじ山と、を有する第1ロッドと、
前記おねじ部に締結可能なめねじ部を有する第2ロッドと、
を備える貫入ロッド。
【請求項2】
前記中間部の直径は、前記おねじ部の外径と略同等である請求項1に記載の貫入ロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質の調査を行う貫入試験機に用いられる貫入ロッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土質の調査を行う貫入試験には、貫入試験機が使用されている。貫入試験機は、載荷台と、載荷台に対して回転可能に設けられるチャックユニットと、チャックユニットを回転駆動する駆動源部と、チャックユニットに把持される貫入ロッドと、を備える(特許文献1参照)。貫入試験は、一般に15mの程度の深度まで行われる。このため、貫入ロッドの先端側に位置する先端ロッドの末端に、延長ロッドが継ぎ足される。これによって、貫入ロッドの長さが延長される。
【0003】
特許文献2の図18には、延長ロッドの模式図が示されている。図7に従来の延長ロッドのおねじ部の詳細を示す。同図に示すように、延長ロッド又は先端ロッドのおねじ部のねじ山と、延長ロッド又は先端ロッドの基部と、の間には、隙間が設けられる。この隙間は、旋盤加工によってねじ切りをする際に、ねじ切りの完了後におねじ切りバイトが逃げる逃げ部を構成する。なお、特許文献2の図1は、おねじ部を模式的に示したものであり、当該隙間が記載されていない。通常、旋盤加工によるねじ切りでは、おねじ切りバイトが延長ロッド又は先端ロッドの基部と干渉してしまうために、おねじ部の根元までねじ山を形成することは困難である。このため、貫入ロッドを製造する業界では、おねじ部のねじ山と、延長ロッド又は先端ロッドの基部と、の間に、隙間を設けることを従来から行ってきた。
このように形成された先端ロッドのおねじ部に対して、延長ロッドのめねじ99を締結することで継ぎ足しがなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-265451号公報
【文献】特許第6211732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先端ロッドと延長ロッドとを継ぎ足して形成した貫入ロッドに対して、貫入試験機から延長ロッドに対してトルクが加えられると、先端ロッドのおねじと延長ロッドのめねじとが必要以上に強固に締結されてしまう問題がある。このため、試験の終了後に、先端ロッドと延長ロッドとを分離するために、緩め方向に大きなトルクが必要となり、作業者に大きな負担がかかるとともに作業効率が悪いという問題があった。
従って、本発明の目的は、第1ロッドと第2ロッドとの間の締結解除を容易にできる貫入ロッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下により解決される。すなわち、本発明(1)の貫入ロッドは、地盤に対して回転しつつ貫入される貫入ロッドであって、
基部と、前記基部と同芯で前記基部から突出するように設けられたおねじ部と、前記基部と同芯で前記基部と前記おねじ部との間に設けられた中間部であって前記おねじ部の有効径よりも大きく且つ前記基部の直径よりも小さい直径で形成された中間部と、前記おねじ部の外周面に設けられ末端を前記中間部に接続した螺旋状のねじ山と、を有する第1ロッドと、
前記おねじ部に締結可能なめねじ部を有する第2ロッドと、
を備える。
【0007】
本発明(2)の貫入ロッドにおいて、前記中間部の直径は、前記おねじ部の外径と略同等である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1ロッドと第2ロッドとの間の締結解除を容易にできる貫入ロッドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の貫入試験機を示した側面図である。
図2図1に示す貫入試験機の第1ロッドおよび第2ロッドを示す側面図である。
図3図1に示す第1ロッドのおねじ構造体を拡大して示す側面図である。
図4】実施例に係る第1ロッドの試験片Aと、第2ロッドの試験片Bと、を示す側面図である。
図5】ねじり試験において、試験片Bを万力で挟んで保持し、この試験片Bに試験片Aを手指で軽く締結した状態を示す斜視図である。である。
図6図5に示す状態の試験片Aの凸部に対して、トルク計付きのトルクレンチを装着して、締付作業および緩め作業を行っている状態を示す斜視図である。
図7】比較例にかかる第1ロッドの試験片Aのおねじ部を拡大して示す側面図である。
図8】実施例にかかるおねじ構造体に対して、めねじ部を締結する途中の状態を示し、めねじ部を軸方向に沿う面で切断して示した模式図である。
図9】実施例にかかるおねじ構造体に対して、めねじ部を完全に締結した状態を示し、めねじ部を軸方向に沿う面で切断して示した模式図である。
図10】比較例にかかるおねじ部に対して、めねじ部を締結する途中の状態を示し、めねじ部を軸方向に沿う面で切断して示した模式図である。
図11】比較例にかかるおねじ部に対して、めねじ部を完全に締結した状態を示し、めねじ部を軸方向に沿う面で切断して示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照しつつ、貫入試験機およびそれに用いられる貫入ロッドについて説明する。貫入試験機は、例えば、戸建て住宅の地盤調査として最も一般的に行われるJIS A 1221 スクリューウエイト貫入試験等に用いられる。
[第1実施形態]
【0011】
図1図3を参照して、実施形態の貫入試験機11について説明する。図1に示すように、貫入試験機11は、地盤12上に設置される脚部13と、脚部13から上方に延びる支軸14と、支軸14に対して昇降可能な載荷台15と、載荷台15上に回転可能に設けられるチャックユニット16と、載荷台15上に設けられチャックユニット16を回転駆動する駆動源17(モータ)と、チャックユニット16に把持されて鉛直線回りに正転方向および逆転方向に回転可能な貫入ロッド18と、を有する。
【0012】
脚部13は、中央部に地盤を露出させるように開口部21を有しており、貫入ロッド18は、開口部21を介して地盤12を掘り進むことができる。脚部13は、貫入試験機11を移動するのに用いられるローラを有していてもよい。チャックユニット16は、貫入ロッド18を外側から把持するための複数の鋼球を有する。
【0013】
貫入ロッド18は、地盤調査において、地盤12に対して回転しつつ貫入される。貫入ロッド18は、例えば鋼材、より詳細にはクロムモリブデン鋼によって棒状に形成されている。貫入ロッド18は、例えば、SCM435Hで構成されることが好ましい。図2に示すように、貫入ロッド18は、第1ロッド22と、第1ロッド22に接続される第2ロッド23と、を有する。第1ロッド22は、後述する先端ロッド31又は延長ロッド32に対応するものである。第2ロッド23は、延長ロッド32に対応している。なお、この対応関係は一例であり、第2ロッド23が先端ロッド31に対応し、第1ロッド22が延長ロッド32に対応していてもよい。
【0014】
先端ロッド31は、中実の丸棒状の基部33と、基部33の一方の端部に設けられた貫入体34(貫入刃)と、基部33の一方の端部とは反対側の端部に設けられたおねじ構造体35と、チャックユニット16の鋼球によって把持される細長い溝状の把持溝36と、を有する。
【0015】
図2図3に示すように、おねじ構造体35は、基部33と同芯で基部33から突出するように設けられたおねじ部37と、基部33と同芯で基部33とおねじ部37との間に設けられた中間部38と、おねじ部37の外周面に設けられた螺旋状のねじ山41と、を有する。
【0016】
図3に示すように、おねじ部37は、略円柱形に形成されている。ねじ山41は、おねじ部37の先端側に位置する先端41Aと、先端41Aとは反対側の末端41Bと、を有する。末端41Bは、中間部38に隙間なく接続されている。
【0017】
中間部38は、略円柱形に形成されている。中間部38の直径は、おねじ部37の有効径よりも大きく、且つ基部33の直径よりも小さい直径で形成されていることが好ましい。おねじ部37の有効径は、おねじ部37のピッチ線を構成する円筒の直径である。中間部38の直径は、おねじ部37(ねじ山41)の外径と略同等であることが、おねじ構造体35の加工(切削加工、旋盤加工、ねじ切り加工)を容易にできる点で、さらに好ましい。
【0018】
図2に示すように、延長ロッド32は、中実の丸棒状の基部33と、基部33の一方の端部に設けられためねじ部42と、基部33の一方の端部とは反対側の端部に設けられたおねじ構造体35と、チャックユニット16の鋼球によって把持される細長い把持溝36と、を有する。めねじ部42は、おねじ構造体35を受け入れ可能に、基部33の端面から凹状に窪むように形成されている。めねじ部42は、おねじ部37(ねじ山41)と相補的な形状の第2ねじ山を有し、おねじ部37と締結可能である。延長ロッド32のおねじ構造体35は、先端ロッド31のおねじ構造体35と同様の形態を有する。延長ロッド32の把持溝36は、先端ロッド31の把持溝36と同様の形態を有する。
【0019】
本実施形態の貫入ロッド18の作用について説明する。以下の説明は、先端ロッド31に第1ロッド22が対応し、延長ロッド32に第2ロッド23が対応するものとして行う。
【0020】
貫入試験機11によって地盤12を調査する際に、まず貫入ロッド18(先端ロッド31)に対して上方から図示しない錘を用いて所定重量の負荷荷重を付与して、地盤12に対して貫入ロッド18が沈む否かを確認する。所定重量でも貫入ロッド18が貫入しない場合には、駆動源17の駆動によってチャックユニット16を介して貫入ロッド18に右回りのトルクを付与する。これによって、貫入ロッド18を右回りに回転させ、貫入ロッド18によって地盤12を掘り進める。貫入ロッド18が地盤に対して所定の深さ分差し込まれ、貫入ロッド18(先端ロッド31)の長さが足りなくなった場合には、先端ロッド31の末端に対して延長ロッド32を継ぎ足して、掘削を継続する。
【0021】
その際、作業者は、チャックユニット16による先端ロッド31の把持を解除する。そして、先端ロッド31のおねじ構造体35に延長ロッド32のめねじ部42を締結して貫入ロッド18を延長する。そして、載荷台15を上昇させ、チャックユニット16によって延長ロッド32を把持する。この状態で、貫入ロッド18を回転させて地盤12の掘削を継続する。先端ロッド31の貫入体34が固い地盤12に到達したときに、掘削作業を完了する。
【0022】
このように、掘削作業を継続すると、貫入ロッド18に比較的に大きなトルクが付与されるとともに、土壌の抵抗によって貫入ロッド18に捩じるように力が働く。これによって、先端ロッド31のおねじ構造体35に対して延長ロッド32のめねじ部42が強固に締結されることとなる。本実施形態のおねじ構造体35では、ねじ山41の末端41Bが中間部38に対して隙間なく接続されているために、先端ロッド31に対して延長ロッド32を締め込むようなトルクが加えられた場合でも、めねじ部42の第2ねじ山の先端が中間部38に突き当たり、それ以上めねじ部42の第2ねじ山が前進してしまうことがない。これによって、おねじ部37に対してめねじ部42の第2ねじ山が過度に前進し、その結果、おねじ部37が軸方向に弾性変形又は塑性変形で必要以上に引き延ばされてしまうような事態を生じない。このため、地盤調査の完了後に、先端ロッド31から延長ロッド32を取り外す際に、先端ロッド31に対する延長ロッド32の締結を緩める際の緩めトルクが低減される。
上記した実施形態は、種々の置き換えや変形を加えて実施できる。
【実施例
【0023】
本発明の貫入ロッド18の第1ロッド22と第2ロッド23との間の締結の解除に必要な緩めトルクを評価するために、以下のねじり試験を行った。実施例、比較例に係る第1ロッド22および第2ロッド23は、ともにSCM435Hで形成されている。
(実施例の試験片A、Bの作成)
【0024】
図4に示すように、実施形態で説明した丸棒状の第1ロッド22の根元側(おねじ構造体35が形成された側)を切断して、所定長さを有する実施例の試験片Aを形成した。試験片Aにおける基部33の軸方向の長さは、1000mmとした。試験片Aの基部33の直径は、19.0mmである。試験片Aのおねじ構造体35が形成されている端部とは反対側の端部に、六角ソケットレンチを取り付け可能な六角ナット形状の凸部51を切削加工で形成した。凸部51の軸方向の長さは10mmとした。凸部51のねじの呼びは、JIS B 1181のM14とした。
【0025】
おねじ構造体35のおねじ部37の軸方向の長さと、中間部38の軸方向の長さとを合計した長さは、20.0mmとした。中間部38の軸方向の長さは、1.0mmとした。中間部38の直径は、13.6mmとした。おねじ部37の外径(ねじ山41の外径)は、13.6mmとした。おねじ部37のねじ山41は、その末端41Bが中間部38に隙間なく接続するように形成された。
【0026】
実施形態で説明した丸棒状の第2ロッド23の先端側(めねじ部42が形成された側)を切断して、所定長さを有する実施例の試験片Bを形成した。試験片B(基部33)の軸方向の長さは、1000mmとした。試験片Bの基部33の直径は、19.0mmである。試験片Bのめねじ部42が形成された端部とは反対側の端部に、万力でクランプするための面取面52を一対に形成した。面取面52同士は、互いに平行になるように形成した。面取面52の軸方向の長さは、30mmとした。めねじ部42は、試験片Aのおねじ構造体35に対して締結できるように、これと相補的な形状に形成された。
(比較例の試験片A、Bの作成)
【0027】
出願人とは異なるメーカーの製造・販売に係る市販品の貫入ロッド18の第1ロッド22および第2ロッド23を上記実施例と同様に切断して、比較例に係る試験片Aと試験片Bを作成した。すなわち、丸棒状の第1ロッド22の根元側(おねじ部37が形成された側)を切断して、所定長さを有する比較例の試験片Aを形成した。比較例の試験片Aにおける基部33の軸方向の長さは、1000mmとした。試験片Aの直径は、19.1mmである。試験片Aのおねじ部37が形成されている端部とは反対側の端部に、六角ソケットレンチを取り付け可能な六角ナット形状の凸部51を切削加工で形成した。凸部51の軸方向の長さは10mmとした。凸部51のねじの呼びは、JIS B 1181のM14とした。
【0028】
図7に示すように、比較例の試験片Aのおねじ部37のねじ山41の末端41Bと基部33との間には、隙間が形成されている。おねじ部37の軸方向の長さZ1は、20.0mmであった。おねじ部37のねじ山41の末端41Bと基部33までの軸方向の長さZ2は、4.1mmであった。おねじ部37の外径(ねじ山の外径)は、13.6mmであった。おねじ部37の根本の位置の直径dは、11.4mmであった。
【0029】
丸棒状の第2ロッド23の先端側(めねじ部42が形成された側)を切断して、所定長さを有する比較例2の試験片Bを形成した。比較例2の試験片B(基部33)の軸方向の長さは、1000mmとした。試験片Bの基部33の直径は、19.1mmである。比較例2の試験片Bのめねじ部42が形成された端部とは反対側の端部に、万力でクランプするための面取面52を一対に形成した。面取面52同士は、互いに平行になるように形成した。面取面52の軸方向の長さは、30mmとした。めねじ部42は、試験片Aのおねじ部37に対して締結できるように、これと相補的な形状を有する。
(ねじり試験)
【0030】
図5に示すように、実施例の試験片Bの面取面52を万力55で挟み、試験片Bが起立するように試験片Bを万力55に固定した。この試験片Bのめねじ部42に対して、試験片Aのおねじ部37(おねじ構造体35)を手指によって軽く締結した。図6に示すように、トルク計53(東京測器研究所製、型式番号LTA-500NA)を装着した六角ソケットレンチ54を試験片Aの凸部51に嵌合させた。六角ソケットレンチ54を用いて、目標値210N・mを狙って試験片Aを締め方向(右回り)に回転させて、試験片Bに締結した。締結完了後、六角ソケットレンチ54を用いて試験片Aを緩め方向(左回り)に回転させて、試験片Aを回転させ、試験片Bに対して試験片Aを緩めた。試験片Bに対する試験片Aの締め付け作業と、試験片Bに対する試験片Aの緩め作業と、を計3回行った。締め付け作業と緩め作業との間は、常にトルク計53によってトルクを測定した。比較例についても上記実施例と同様にねじり試験を行った。測定された締付トルクおよび緩めトルクのうち、最大のものを表1に示す。なお、緩めトルクは、左回り方向のトルクであり、右回り方向の締付トルクとは逆方向である。
【0031】
【表1】
【0032】
このねじり試験によれば、実施例の最大緩めトルクの3回の平均値である148.6N・mに対して、比較例の最大緩めトルクの3回の平均値である198.6N・mは1.34倍大きくなった。したがって、実施例の最大緩めトルクは、比較例の最大緩めトルクに比して34%低減された。
(考察)
【0033】
図8図11を参照して、実施例、比較例について考察する。同図は、おねじ部37およびめねじ部42の上半分のみを示し、めねじ部42を中心軸に沿って破断した断面図とした。実施例では、図8から図9に示す状態になるように、おねじ部37に対してめねじ部42を締結して210N・m付近にすると、めねじ部42の先端側のねじ山が中間部38に当接して止まる。これによって、それ以上おねじ部37に対してめねじ部42が過度にねじ込まれることがない。より詳細には、めねじ部42の先端側のねじ山の一部は中間部38に当接することで潰れて変形しつつ、中間部38に対して当接する。このため、おねじ部37の根元に対してめねじ部42のねじ山が過度に侵入することがない。おねじ部37に対してめねじ部42が締結された状態では、めねじ部42の先端側の端面56は、基部33に当接する。
【0034】
実施例では、めねじ部42が過度にねじ込まれることがないため、おねじ部37に働く軸方向(引張方向)の応力が、めねじ部42のすべてのねじ山の全体に応力が分散される。したがって、おねじ部37に対してめねじ部42を緩める際に、すべてのねじ山に分散されている比較的に小さな応力が緩やかに開放される。その結果、実施例によれば最大緩めトルクが低減されると考えられる。
【0035】
これに対して、比較例では、おねじ部37のねじ山41の末端41Bと基部33との間の隙間が設けられる。図10から図11に示す状態になるように、おねじ部37に対してめねじ部42を締結して210N・m付近にすると、隙間に対してめねじ部42のねじ山が過度に入り込み、おねじ部37の隙間付近(図11に示すA部付近)で応力集中を生じる。その結果、おねじ部37の当該部分で弾性変形又は塑性変形を生じて、当該部分が延びることとなる。その結果、おねじ部37の当該隙間付近は、寸法Z2´になる(Z2´>Z2)。一方、おねじ部37に対してめねじ部42を緩める際には、図11に示すA部付近に集中している比較的に大きな応力が急激に開放されることとなる。その結果、比較例では最大緩めトルクが大きくなると考えられる。
【0036】
上記実施形態および実施例によれば、以下のことがいえる。貫入ロッド18は、地盤12に対して回転しつつ貫入される貫入ロッド18であって、基部33と、基部33と同芯で基部33から突出するように設けられたおねじ部37と、基部33と同芯で基部33とおねじ部37との間に設けられた中間部38であっておねじ部37の有効径よりも大きく且つ基部33の直径よりも小さい直径で形成された中間部38と、おねじ部37の外周面に設けられ末端を中間部38に接続した螺旋状のねじ山41と、を有する第1ロッド22と、おねじ部37に締結可能なめねじ部42を有する第2ロッド23と、を備える。
【0037】
一般に、ねじのトルクは、ねじが発生する締付力と比例関係にある。したがって、第1ロッド22のおねじ部37に対して第2ロッド23のめねじ部42が過度に前進すると、おねじ部37に必要以上の弾性変形を生じて、貫入作業の完了後に第1ロッド22から第2ロッド23を分離する際に必要な緩めトルクが大きくなり過ぎる問題を生じることとなる。上記の構成によれば、地盤12に対して貫入ロッド18が回転しつつ貫入する際に、中間部38に対してめねじ部42のねじ山の先端を当接させることができる。このため、このように極めて簡単な構造によって、第1ロッド22のおねじ部37に対する第2ロッド23のめねじ部42の過度な締め付けを防止できる。その結果、おねじ部37に必要以上の弾性変形を生じてしまうことを防止して、貫入作業の完了後に第1ロッド22から第2ロッド23を分離する際に必要な最大緩めトルクを著しく低減できる。これによって、作業者の作業負担を低減しつつ、作業効率も向上できる。
【0038】
中間部38の直径は、おねじ部37の外径と略同等である。この構成によれば、中間部38と接続するようなねじ山をおねじ部37に形成するように旋盤加工によってねじ切りをするために、ねじ切りの完了後にねじ切りバイトをワークの回転中心から後退させる際に、後退中のねじ切りバイトが中間部38と干渉し、ねじ切りバイトやワークを破損してしまうような不具合を生じることを防止できる。
【符号の説明】
【0039】
11 貫入試験機
12 地盤
18 貫入ロッド
22 第1ロッド
23 第2ロッド
31 先端ロッド
32 延長ロッド
33 基部
35 おねじ構造体
37 おねじ部
38 中間部
41 ねじ山
41A 先端
41B 末端
42 めねじ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11