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  • 特許-防護服 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】防護服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20230619BHJP
   A41D 13/02 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
A41D13/005 105
A41D13/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021111920
(22)【出願日】2021-07-06
(62)【分割の表示】P 2017106419の分割
【原出願日】2017-05-30
(65)【公開番号】P2021177024
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505466642
【氏名又は名称】株式会社東洋ユニオン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】前城 直輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠一
(72)【発明者】
【氏名】長峰 春夫
(72)【発明者】
【氏名】飯山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-088301(JP,U)
【文献】特開2009-203560(JP,A)
【文献】特開2005-034557(JP,A)
【文献】特開2008-202179(JP,A)
【文献】特開2008-023274(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0260409(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/005
A41D 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の首、脇、胸、腹又は背のリンパ部分に対応する位置に複数の内ポケットが形成されていて、かつ、脚部または足元に排気口が形成されていて、なおかつ、前記着用者の手、足および顔以外の全身を覆っている防護服であって、
前記内ポケットに収納された保冷剤パックを備えており、
前記保冷剤パックは、隅角部のみに複数の穴が設けられた伝熱性に優れた容器に収納されたドライアイスと、前記ドライアイスと着用者との間に介設される伝熱性に優れた容器に密封された保冷剤と、が積層されており、
前記保冷剤が、前記リンパ部分を直接的に冷却し、
前記ドライアイスが、前記保冷剤を冷却するとともに、前記ドライアイスの昇華によって発生した冷気が、前記穴から排出されて前記排気口から排気される過程において前記着用者の全身を冷却することを特徴とする、防護服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護服に関する。
【背景技術】
【0002】
高温環境下での作業時に、水と高吸水性樹脂等からなるものが袋詰めされた保冷剤を着用することで、熱中症対策を行う場合がある。保冷剤により身体のリンパ部分を集中的に冷却すれば、熱中症対策として効果的であることが知られている。なお、気温30℃前後の一般的な高温環境下では、保冷剤を着用した状態で、1~1.5時間サイクルで作業を行うことが望ましい。
【0003】
放射性物質、汚染水、廃棄物等に接する作業を行う場合は、通気性がない防護服、保護服、防塵服等(以下、単に「防護服等」という)を着用しているため、体表面温度が40℃前後になる場合がある。そのため、防護服等を装着している場合には、保冷剤による冷却効果は30分程度しか見込めなかった。この他、比較的長く冷却効果を持続することを目的として、ドライアイスを使用する場合がある。例えば、特許文献1には、樹脂製の可塑性部材により構成された収容体に収容されたドライアイスと、この収容体を包装する包装体とを備える冷却パックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3202282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のドライアイスを利用した冷却方法は、凍傷防止の観点から、ドライアイス(冷却材)によって直接的に身体を冷却することはできず、ドライアイスの昇華に伴って発生する冷気によって、ドライアイスの周囲を冷却するのが一般的であった。
本発明は、保冷剤によって所定の位置を直接的に冷却することを可能とし、かつ、当該保冷剤の冷却効果をより長く持続させることを可能とし、なおかつ、装着者の全身を冷却することを可能とした防護服を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の防護服(保護服や防塵服等を含む)は、着用者の首、脇、胸、腹又は背のリンパ部分に対応する位置に複数の内ポケットが形成されていて、かつ、脚部または足元に排気口が形成されていて、なおかつ、前記着用者の手、足および顔以外の全身を覆っている防護服であり、前記内ポケットに収納された保冷剤パックを備えるものである。前記保冷剤パックは、隅角部のみに複数の穴が設けられた伝熱性に優れた容器に収納されたドライアイスと、前記ドライアイスと着用者との間に介設される伝熱性に優れた容器に密封された保冷剤とが積層されていて、前記保冷剤が前記リンパ部分を直接的に冷却する。また、前記ドライアイスが、前記保冷剤を冷却するとともに、前記ドライアイスの昇華によって発生した冷気が、前記穴から排出されて前記排気口から排気される過程において前記着用者の全身を冷却する
かかる防護服によれば、保冷剤によってリンパ部分を効果的に冷却することができる。また、保冷剤がドライアイスにより冷却されるため、保冷剤の冷却効果が長時間持続する。さらに、ドライアイスを収納した容器には複数の穴が形成されているため、穴から排出された冷気によって防護服の内部を全体的に冷却し、これにより着用者の全身を冷却する効果も期待できる。また、装着者はドライアイスと直接接しないため、ドライアイスによって凍傷する心配もない。さらに、前記防護服の下部(例えば、脚部または足元)に排気口が形成されているため、ドライアイスの昇華により発生した炭酸ガスを排気することができる。
【0007】
また、本発明の防護服(保護服や防塵服等を含む)を着用した状態で作業を行う作業者の冷却方法は、ドライアイスを収容した複数の穴を有する容器を前記防護服の内側に着用するとともに、前記容器の人体側に保冷剤を添設することを特徴とする。
かかる冷却方法によれば、ドライアイスの昇華に伴う冷気(炭酸ガス)により防護服内で着用者の全身を冷却する。また、保冷剤によって、所定の位置を冷却することができるとともに、ドライアイスにより保冷剤の冷却効果が長時間持続する。また、装着者はドライアイスと直接接しないため、ドライアイスによって凍傷する心配もない。
なお、前記防護服の下部(足元等)に排気口を形成しておけば、ドライアイスの昇華により発生した炭酸ガスを排気することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の防護服によれば、保冷剤によって所定の位置を直接的に冷却することを可能とし、かつ、当該保冷剤の冷却効果をより長く持続させることを可能とし、なおかつ、装着者の全身を冷却することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の保冷剤パックの使用状況の一例を示す図である。
図2】本実施形態の保冷剤パックを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、図1に示すように、防護服(保護服や防塵服等を含む)2および防塵マスク21等を着用して作業を行う作業員が装着する保冷剤パック1と、この保冷剤パック1を利用した冷却方法について説明する。
防護服2は、ポリエチレン繊維の不織布により形成されており、作業員の手、足、顔を除いて全身を覆っている。なお、防護服2を構成する材料や防護服の形状等は限定されるものではない。作業員の顔部分は、防塵マスク21等によって覆われている。防護服2のファスナー部分や、袖と手袋22との境界部分や裾と靴23との境界部分等は、ケミカルテープ24などにより目止めされている。また、本実施形態では、防護服2の外側に、合羽(図示せず)を着用するものとする。すなわち、本実施形態では、作業員が放射線、粉塵、汚水等に接することがないように、作業員の全身を防護服2等により覆っている。なお、目止め方法は、ケミカルテープの貼着に限定されるものではない。
【0011】
本実施形態の保冷剤パック1は、図2に示すように、ドライアイス3と、保冷剤4とを備えている。防護服2の内側に保冷剤パック1を装着することで、防護服2内で上昇した体温を冷却する。ドライアイス3と保冷剤4は、ゴムや布等により形成されたケース(袋等)に一緒に挿入した状態で使用してもよいし、個別なものを重ねて使用してもよい。
【0012】
ドライアイス3は、ブロック状、板状または粒状の固体二酸化炭素である。本実施形態では、2~3時間程度使用することを想定して、250g程度のドライアイス3を1つの保冷剤パック1に使用する。なお、ドライアイス3の大きさ(量)は限定されるものではなく、使用時間に応じて適宜決定すればよい。
【0013】
ドライアイス3は、樹脂フィルムにより形成された袋(容器)5に収容されている。袋5には、隅各部等に複数の小さな穴6(例えば、直径0.2mmで、3~5cmピッチ)が形成されていて、ドライアイス3の昇華によって発生した冷気が外部に排出可能に構成されている。本実施形態では、袋5として、ポリエチレンフィルムにより形成されたものを使用する。なお、袋5に形成される穴6の位置、数、大きさ、形状等は限定されるものではなく、適宜形成すればよい。また、袋5を構成する材料は、ドライアイス3の変形に追従して変形することが可能で、かつ、伝熱性に優れた材質を備えていれば、ポリエチレンに限定されるものではなく、ポリエステル等の他の樹脂フィルムであってもよい。また、袋5は、必ずしも樹脂フィルムにより形成されている必要はなく、例えば、紙、織布、不織布により形成されていてもよい。さらに、ドライアイス3を収容する容器5は、必ずしも袋状である必要はない。
【0014】
保冷剤4は、水と高吸水性樹脂等からなるものが保冷剤容器に密封されたものであって、ドライアイス3と人体との間に介設される。本実施形態の保冷剤4は、袋状の保冷剤容器に密封されたものを使用するが、保冷剤容器は、内容物を密封可能で、かつ、伝熱性に優れていれば、袋に限定されるものではない。
【0015】
保冷剤パック1は、防護服2の内部に着用する。本実施形態では、着用者の首、脇、胸、腹、背等のリンパ部分に対応する位置において、人体側から保冷剤4、ドライアイス3の順に積層されるように装着する。このとき、保冷剤4は、肌着を介して着用者の肌に接触させる。なお、保冷剤パック1は、肌着に貼り付けてもよいし、防護服2の内面に貼り付けてもよい。また、保冷剤パック1は、防護服2の内ポケット等に挿入してもよいし、あるいは、防護服2の内側に着用したメッシュ材で形成された身体冷却用衣服のポケット部に挿入してもよい。また、首などの肌着がない部分では、保冷剤4と肌との間にガーゼやタオル等を介設する。
本実施形態の防護服2には、脚部や足元等の下部に、排気口(図示せず)が形成されている。なお、排気口の配置、形状、数等は限定されるものではなく、適宜形成すればよい。また、排気口は、必要に応じて形成すればよい。
【0016】
以上、本実施形態の保冷剤パック1を使用した冷却方法によれば、保冷剤4により、リンパ部分を直接的に冷却することで、高温環境下で作業を行う作業員を効果的に冷却することができる。また、保冷剤4は、ドライアイス3により冷却されるため、保冷剤4を単独で使用する場合に冷却時間(30分程度)に比べて、長時間(2~3時間)にわたって冷却効果が維持される。また、保冷剤4は、ドライアイス3によって冷却されるため、事前に凍らせておかなくても使用することができ、準備に要する時間や手間を省略することができる。
【0017】
また、ドライアイス3の昇華によって発生した冷気が、袋5の穴6から排出されて防護服2内に行き渡るため、作業員の全身が冷気によって冷やされる。また、袋5から排出された冷気は、防護服2に形成された排気口から排気されるため、防護服2内に気流が形成されて、防護服2内全体に冷気が行き渡る。防護服2内に炭酸ガスが充満することもない。また、ドライアイス3と作業員の肌との間に保冷剤4を介設しているため、ドライアイス3による凍傷を防ぐことができる。ドライアイス3は、昇華によって小さくなっても、冷却効果を維持するため、長時間の使用が可能である。ドライアイス3は、250g程度であれば、保冷剤パック1の着用(大きさや重さ等)によって作業が阻害されることもない。
【0018】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
前記実施形態では、高温環境下で作業を行う場合に、保冷剤パック1を使用する場合について説明したが、保冷剤パック1を使用する用途は限定されるものではなく、例えば、レジャーやスポーツ等の熱中症対策等に使用してもよい。
ドライアイス3を収容した袋5を、さらに、ゴム製または布製の専用ケースに収容すれば、より確実に凍傷を防ぐことができる。なお、専用ケースは、冷気を排気することが可能となるように、通気性に優れたものを使用する。
【符号の説明】
【0019】
1 保冷剤パック
2 防護服
3 ドライアイス
4 保冷剤
5 袋(容器)
6 穴
図1
図2