(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】キャビネット
(51)【国際特許分類】
A47F 3/00 20060101AFI20230619BHJP
A47F 7/00 20060101ALI20230619BHJP
A47F 5/00 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
A47F3/00 G
A47F7/00 N
A47F5/00 Z
(21)【出願番号】P 2019065203
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】394016874
【氏名又は名称】河淳株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】吉次 徹
(72)【発明者】
【氏名】横山 辰朗
【審査官】家辺 信太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-206640(JP,A)
【文献】実開昭58-069676(JP,U)
【文献】特開2008-106537(JP,A)
【文献】実開昭59-012379(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F3/04
A47B55/00
E05D15/06
F25D23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉扉の上部を支持する上部ガイドレールを有し、前記上部ガイドレールよりも手前側
にオフセットした位置に前記開閉扉が取り付けられるキャビネットであって、
前記上部ガイドレールに沿って開閉方向へ移動する取付金具を設け、前記取付金具を前記上部ガイドレールの前側面よりも手前側へ突出させ、この突出した部分に前記開閉扉を取り付けるための取付部を設け
、
前記開閉扉には、開閉方向へスライド可能なロック部材が取り付けられ、前記ロック部材は、ロックした状態では、前記開閉扉の幅方向の端部よりも内側に位置し、ロックを解除した状態では、前記ロック部材を外側へスライドさせることで前記開閉扉の端部よりも外側へ突出するようにしたことを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記取付金具には、前後方向に延びる回転軸を中心にして開閉方向に回転する移動ローラーが設けられ、前記移動ローラーよりも前記取付部が前側に位置するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
前記取付部には上下方向に突出する取付ピンが設けられ、前記ロック部材を前記開閉扉の内側にスライドさせて前記取付ピンを捕捉することで前記開閉扉をロックすることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載のキャビネット。
【請求項4】
前記移動ローラーには、周方向に沿って連続するガイド溝が形成され、前記上部ガイドレールには、前記ガイド溝に上側および下側から入り込む上係合部および下係合部が形成されていることを特徴とする
請求項2に記載のキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセットした位置に取り付けられた開閉扉を開閉させて物品を収納するキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの食品店舗では、商品を取り出す開口部分を斜めに形成するとともに、商品を陳列する下側の棚部の棚面積を広く確保したキャビネット(食品陳列什器、ショーケースなどともいう)が使用されている。このような食品陳列什器では、利用者が棚部に置かれた商品が見易く、かつ商品を取り出し易いという点で利便性がある。
【0003】
このような食品陳列什器では、食品の衛生状態を保つために、斜めに形成された開口部分を覆うようにして透明の傾斜扉(開閉扉)が設けられることがある。この開閉扉は、本体部に取り付けられた状態で、上部ガイドレールから手前方向へ斜め下側に延びるようにして、平板状、L字形状、或いは曲面状などに形成されている。すなわち、開閉扉は、上部ガイドレールに対して開閉扉の重心が手前側にオフセットした(ずらした)位置に配置されることになる。開閉扉は、この上部ガイドレールに沿って傾斜したままの状態で開閉方向(開口を正面に見て左右方向)に移動できるようになっている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0004】
このような開閉扉を上部ガイドレールに取り付ける構造としては、上部ガイドレールの左右のいずれか一方の端部から、開閉扉を上部ガイドレールの内側にスライドさせて取り付けるものが一般的である。このような構造では、開閉扉を上部ガイドレールから着脱するのに手間がかかる。しかしながら、この開閉扉を清掃する際には、食品陳列什器から容易に着脱できる構造が好ましい。また、タイムセールなどの繁忙時には開閉扉を敢えて外しておき、終了後に再度取り付けるような使用態様も考えられる。
【0005】
この開閉扉を容易に着脱できる技術としては、食品陳列什器ではない一般的な開閉扉の技術ではあるが、例えば特許文献4のようなものがある。この技術では、開閉扉の上辺部にこの開閉扉を吊り下げるためのフックを設け、スライドレールに沿って開閉方向へ走行する連結部材にこのフックを引っ掛けるだけで、開閉扉を吊り下げて容易に取り付けることができるようになっている。
なお、商品陳列棚では、上述したフックに引っ掛けて開閉扉を取り付ける構造のものは今までにない。
【0006】
一方、フックを引っ掛けて取り付ける構造では、利用者が開閉するときに開閉扉を誤って持ち上げてしまい、フックが外れてしまうおそれがある。そのため、上述した特許文献4の技術では、開閉扉を吊り下げた状態でフックと連結部材との間に生じる上下方向の隙間(フックを引っ掛けるときに必要になるスペース)を埋めて、開閉扉が持ち上がらないようにするための脱落防止部材が別部材として取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-206640号公報
【文献】特開2009-131435号公報
【文献】特開2012-196313号公報
【文献】特開2001-40930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献4の技術では、脱落防止部材が開閉扉や連結部材とは別部材として構成されているため、脱落防止部材を単体で取り外さなければならない。そのため、構造を理解していない店舗の販売員では、脱落防止部材を取り外す作業が繁雑であり、短時間で容易に着脱することができない。また、仮に取り外せたとしても、構造に不慣れな販売員では、脱落防止部材の取り付け忘れなどの作業ミスを引き起こすおそれがあった。
【0009】
また、特許文献4の脱落防止部材は、単体でねじ止めによって取り付けられているため、このねじを着脱する工具を使用するための作業スペースを広く確保する必要がある。しかしながら、より小型化が求められる商品陳列棚では、そのようなスペースを確保することが困難である。
【0010】
さらに、特許文献4の脱落防止部材は、開閉扉を正面から見てその裏側に取り付けられ、正面から見えない位置にあるので、この着脱構造を十分に理解した作業者でなければ脱落防止部材の取り外しが困難である。そのため、店舗の販売員が開閉扉を容易に取り外せる構造ではない。
【0011】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、開閉扉を容易に着脱することができるキャビネットを提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述課題を解決するため、本発明は、開閉扉の上部を支持する上部ガイドレールを有し、前記上部ガイドレールよりも手前側にオフセットした位置に前記開閉扉が取り付けられるキャビネットであって、前記上部ガイドレールに沿って開閉方向へ移動する取付金具を設け、前記取付金具を前記上部ガイドレールの前側面よりも手前側へ突出させ、この突出した部分に前記開閉扉を取り付けるための取付部を設け、前記開閉扉には、開閉方向へスライド可能なロック部材が取り付けられ、前記ロック部材は、ロックした状態では、前記開閉扉の幅方向の端部よりも内側に位置し、ロックを解除した状態では、前記ロック部材を外側へスライドさせることで前記開閉扉の端部よりも外側へ突出するようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、前記取付金具には、前後方向に延びる回転軸を中心にして開閉方向に回転する移動ローラーが設けられ、前記移動ローラーよりも前記取付部が前側に位置するようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、前記取付部には上下方向に突出する取付ピンが設けられ、前記ロック部材を前記開閉扉の内側にスライドさせて前記取付ピンを捕捉することで前記開閉扉をロックするようにしてもよい。
【0016】
さらにまた、前記移動ローラーには、周方向に沿って連続するガイド溝が形成され、前記上部ガイドレールには、前記ガイド溝に上側および下側から入り込む上係合部および下係合部が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るキャビネットは、開閉扉の上部を支持する上部ガイドレールを有し、前記上部ガイドレールよりも手前側にオフセットした位置に前記開閉扉が取り付けられるものであり、前記上部ガイドレールに沿って開閉方向へ移動する取付金具を設け、前記取付金具を前記上部ガイドレールの前側面よりも手前側へ突出させ、この突出した部分に前記開閉扉を取り付けるための取付部を設けているので、開閉扉の着脱作業を上部ガイドレールの前側で行うことができる。これにより、取付部が前側面の後側に位置する構造と比較して、開閉扉を容易に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る食品陳列什器であって、傾斜扉を有する食品陳列什器の全体を示す斜視図である。
【
図2】
図1の状態から、右側の傾斜扉を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2の状態から、さらに左側の傾斜扉を取り外した状態であって、本体部のみを示す斜視図である。
【
図5】上部ガイドレール10の部分の側部断面図である。
【
図6】前側扉が取り付けられる取付金具を単体で示す斜視図である。
【
図8】後側扉が取り付けられる取付金具を単体で示す斜視図である。
【
図10】後側扉を取付金具に取り付ける状態を斜め後ろ側から見た拡大斜視図である。
【
図11】固定具およびロック部材の固定前の状態を示す斜視図である。
【
図12】固定具およびロック部材の固定後の状態を示す斜視図である。
【
図14】固定具およびロック部材の固定前の状態であって、(A)は上側から見た平面図、(B)は(A)を下側から見た図、(C)は(B)の中央での断面図である。
【
図15】固定具およびロック部材の固定後の状態であって、(A)は上側から見た平面図、(B)は(A)を下側から見た図、(C)は(B)の中央での断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る食品陳列什器1(キャビネット)について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施の形態では、開閉扉3が上部ガイドレール10よりも手前側にオフセットした位置にある一例として、傾斜した開口部を覆うようにして取り付けられた傾斜扉3を有するキャビネットについて説明する。
【0020】
ここで、本明細書でいう「オフセットした位置に開閉扉が取り付けられるキャビネット」とは、一般的な引き戸のように上部ガイドレールの真下に開閉扉が吊り下げられるものとは異なり、上部ガイドレールよりも手前側で開閉扉が吊り下げられるタイプのキャビネットをいうものとする。より詳細には、開閉扉の重心が上部ガイドレールよりも手前側に位置し、吊り下げられた状態で上部ガイドレールに斜め方向の荷重が作用するタイプのキャビネットである。
【0021】
図1は、傾斜扉3を有する食品陳列什器1の全体を示す斜視図である。また、
図2は、
図1の状態から、右側の傾斜扉3aを取り外した状態を示し、
図3は、さらに左側の傾斜扉3bを取り外した状態であって、キャビネット本体2のみを示す斜視図である。さらに、
図4は、
図3のキャビネット本体2の分解斜視図である。
【0022】
なお、本実施の形態で使用する前後、左右、上下方向とは、
図1で示す方向をいうものとする。また、開閉扉の開閉方向とは、左右方向をいうものとする。
【0023】
食品陳列什器1は、
図1~
図4に示すように、食品陳列什器本体部2(以下、本体部2という)の前側に、傾斜した構造の開口部が設けられており、この開口部を覆うようにして2枚の傾斜扉3(
図1の右側に位置する前側扉3a、左側に位置する後側扉3b)が取り付けられている。より詳細には、本体部2の前側部分は、下側から上側に向かうに従い、後側へ斜めに傾斜するように形成されており、この傾斜面が開口している。また、傾斜扉3も同様に、本体部2に取り付けられた状態で、傾斜扉3の上側が下側よりも後側に位置するように傾斜した状態になる。
【0024】
なお、これらの前側扉3aおよび後側扉3bは、いわゆる引き戸タイプの扉であり、左右方向に移動させることでそれぞれ開閉できるようになっている。また、この傾斜扉3は、アクリルまたはガラスなどの透明な材質で形成されており、閉じた状態で本体部2の内部が見えるようになっている。
【0025】
本体部2は、その上側に、上部ガイドレール10が取り付けられている。この上部ガイドレール10は、開閉方向の左右の全長に亘って設けられている。また、この上部ガイドレール10の内部には、
図2~
図4に示すように、上部ガイドレール10に沿って開閉方向に移動可能な取付金具11a、11b(詳細な構造は後述する)が設けられている。この取付金具11a、11bは、移動ローラー37(
図5参照)を有し、上部ガイドレール10内をスムーズに移動できるようになっている。なお、上部ガイドレール10の上側には、
図4に示すように、化粧板12が取り付けられる。この化粧板12は、上部ガイドレール10に対してフラップするように取り付けられ、通常時は上部ガイドレール10と傾斜扉3の隙間を隠すために閉じられており、傾斜扉3を外す際に、上部に回動させる。
【0026】
また、本体部2は、その下側に、商品を陳列するための棚部4が設けられている。この棚部4は、上部ガイドレール10よりも手前側に延びており、棚部4の棚面積を広く確保している。これにより、棚部4に陳列される商品が見やすく、かつ、出し入れし易くしている。
【0027】
さらに、棚部4の前側には、
図1~
図4に示すように、下部ガイドレール20が取り付けられている。この下部ガイドレール20も上部ガイドレール10と同様に、開閉方向の左右の全長に亘って設けられている。
【0028】
前側扉3aは、
図2に示すように、上側に持ち上げることで本体部2から取り外せるようになっている。より詳細には、前側扉3aの上側部分は、上述した取付金具11a、11aの上に置かれて、固定具によって固定される。
【0029】
また、前側扉3aの下側部分は、下部ガイドレール20上にローラーを介して置かれている。これらにより、前側扉3aは、取付金具11a、11aが上部ガイドレール10に沿って開閉方向へ移動することで、取り付けられた前側扉3aも開閉方向へ自由に移動できるようになる。
【0030】
なお、後側扉3bの上側部分および下側部分も前側扉3aと同様な構造であり、上側に持ち上げることで本体部2から取り外すことができ、かつ、開閉方向へ自由に移動できる。
【0031】
図5は、上部ガイドレール10の部分の側部断面図である。上部ガイドレール10は、押出成形によって製作されており、その内部に取付空間S1、S2、S3が画成されている。より詳細には、上部ガイドレール10の前側に位置する前壁部14、後側に位置する後壁部15、および内部を区画する中間壁部13a、13bによって、取付空間S1、S2、S3が前後方向に画成されている。また、上部ガイドレール10の下側は、開口している。
【0032】
取付空間S1、S3には、クローザー(図示せず)が取り付けられる。このクローザーは開閉方向両方に取り付けられており、緩衝機能と引込み機能を備えている。より詳細には、このクローザーとは、傾斜扉3が半開きのときに閉じた状態まで強制的に移動させたり、傾斜扉3を強い力で閉じようとしたときにその力を緩衝するためのものである。食品陳列什器では、内部の衛生を保つために傾斜扉3を閉じた状態に保つことは有用であり、近年では需要が増えている。なお、このクローザーを設置しない場合には、上部ガイドレール10に取付空間S1、S3を設けずに構成することもできる。
【0033】
取付空間S2には、取付金具11a、11bに設けられた移動ローラー37が取り付けられる。この移動ローラー37は、上部ガイドレール10の左右のいずれかの端部から挿入され、開閉方向の任意の位置へと移動することができるようになっている。
【0034】
図6は、前側扉3aを取り付けるための取付金具11aを単体で示す斜視図である。また、
図7はその側面図である。
取付金具11aは、板金を折り曲げて形成した金具本体30と、この金具本体30に取り付けられる3つの移動ローラー37と、前側扉3aを取り付けるための取付ピン36とで構成されている。
【0035】
金具本体30は、上下方向に起立する起立面部31と、この起立面部31の下端から前側に延びる底面部32と、この底面部32の前側端部から上側に延びる高さ合わせ部33と、この高さ合わせ部33から前側に水平に延びる取付部34とで構成されている。
【0036】
起立面部31には、3つの移動ローラー37が左右方向に間隔を空けて取り付けられている。この移動ローラー37は、前後方向に延びる回転軸37aを中心にして開閉方向へと自由に回転することができるようになっている。また、移動ローラー37には、その外周面に沿ってガイド溝38が形成されている。このガイド溝38は、
図5に示すように、上部ガイドレール10の中間壁部13aの下側を折り返して形成された下係合部16、および、上部ガイドレールの上面から下側に向けて延びる上係合部17に入り込むようにして取り付けられる。
【0037】
このガイド溝38の溝の底部は円弧状に形成されており、上係合部17および下係合部16の先端も、ガイド溝38の円弧状の径と同じ径の円弧状に形成されている。この移動ローラー37には、傾斜扉3がオフセットして取り付けられる分だけ斜めに荷重が作用してしまうため、この斜めの荷重を受けるために、それぞれを円弧状に形成している。
【0038】
また、3つの移動ローラー37は、それぞれの取付高さを若干ずらしている。より詳細には、左右の両端の移動ローラー37の高さ位置を同じにし、中央の移動ローラー37のみを上側に少しずらして取り付けている。これにより、下係合部16および上係合部17と常に2点で接触するようにして、上下のがたつきを抑え滑らかに移動できるようにしている。
【0039】
底面部32の中央部分には、上下方向に延びる捕捉ピン35が設けられている。この捕捉ピン35は、上述したクローザーに捕捉され、取付金具11aを閉じた位置まで強制的に移動せるためのものである。なお、クローザーを設けない場合には、この捕捉ピン35も設ける必要はない。また、底面部32の前後方向の長さは、その前側端部が上部ガイドレール10の前側面10a(
図5参照)よりも前側に位置するように形成されている。
【0040】
また、高さ合わせ部33の上下方向の長さは、前側扉3aと後側扉3bの取り付け高さ位置によって決定されており、最適な高さに適宜変更して製作される。
【0041】
取付部34は、前側扉3aの上部を載せて固定するためのものであり、上下方向に延びる取付ピン36が設けられている。この取付ピン36は円柱状に形成されたピン部36aと、このピン部36aの直径よりも大きなフランジ部36bとで構成されている。
【0042】
このように取付金具11aを構成することで、取付金具11aは、上部ガイドレール10に沿って開閉方向へ移動できるとともに、取付部34を上部ガイドレール10の前側面10aよりも前側に突出させて、この取付部34に前側扉3aを取り付けられるようにすることができる。
【0043】
図8は、後側扉3bを取り付けるための取付金具11bを単体で示す斜視図である。
取付金具11bは、板金を折り曲げて形成した金具本体40と、この金具本体40に取り付けられる3つの移動ローラー37と、後側扉3bを取り付けるための取付ピン36とで構成されている。
【0044】
金具本体40は、上下方向に起立する起立面部41と、起立面部41の下端から前側に延びる取付部42と、起立面部41から後側に延びる第2取付部43とで構成されている。
【0045】
起立面部41には、取付金具11aと同様に、3つの移動ローラー37が同様にして取り付けられている。また、取付部42についても、上部ガイドレール10の前側面10aよりも前側に突出させ、この突出させた部分に取付ピン36が取り付けられている。さらに、第2取付部43にも、上下方向に延びるクローザー用の捕捉ピン45が設けられている。
【0046】
このように取付金具11bを構成することで、取付金具11bは、上部ガイドレール10に沿って開閉方向へ移動できるとともに、取付部42を上部ガイドレール10の前側面10aよりも前側に突出させて、この取付部42に後側扉3bを取り付けられるようにしている。
【0047】
図9は、傾斜扉3の上部の斜視図であり、
図10は、後側扉3bを取付金具11bに取り付ける状態を斜め後ろ側から見た拡大斜視図である。また、
図11は、固定具50およびロック部材60の固定前の状態を示す斜視図、
図12は、固定具50およびロック部材60の固定後の状態を示す斜視図である。さらに、
図13は、
図11または
図12の分解斜視図である。
【0048】
傾斜扉3の上部には、左右方向の全長に亘って上桟6が設けられており、この上桟6の内部には、取付金具11a、11bの取付ピン36に傾斜扉3を固定するための固定具50が取り付けられる。この固定具50は、例えば
図9に示すように、取付金具11bの取付部42の上に後側扉3bの上桟6を載せた後に、取付ピン36に対して後側にスライドさせて取り付けられる。そして、ロック部材60を右側にスライドすることで固定される。
【0049】
なお、固定具50は、傾斜扉3の開閉方向の左右の両端部分にそれぞれ設けられており、この2つの箇所で取付金具11a(11b)に取り付けられる。ロック部材60は、上桟6の左右端部の外側から左側または右側に向けてそれぞれスライドして挿入されるようになる。
【0050】
固定具50は、
図13に示すように、前後に2分割の筒状に形成されており、前側部材50aと後側部材50bとを組み合わせて使用されている。この固定具50の前側および後側のそれぞれは、
図11~
図13に示すように、開閉方向に連続して取付溝54が形成されており、
図5に示すように、この取付溝54が上桟6の突部に係止されるようにして取り付けられる。また、固定具50は、前側部材50aおよび後側部材50bが前後に重なり合う内側に左右方向に延びる窪み52がそれぞれ形成されており、組み合わせた状態で中空の筒状になる。
【0051】
また、前側部材50aおよび後側部材50bの左右方向の中央部には、前後方向に貫通する切り欠き部53が形成されている。この切り欠き部53には、上述した取付ピン36が前後方向にスライドして挿入される。なお、
図10に示すように、上桟6には、固定具50が取り付けられたときのこの切り欠き部53と対応する位置に、同様に切り欠き6aが設けられている。
【0052】
ロック部材60は、左側に位置する把持部61と、この把持部61から右側へ突出するロック部62とで構成されている。把持部61は、ロック部材60を作業者が手で掴んで左右にスライドさせるためのものであり、その下側に指を入れるための空間64が設けられている。この空間64には、
図14(C)、
図15(C)に示すように、指を引っ掛けるための突起65が突出している。
ロック部62は、その先端に2つの爪部62aが形成されている。この爪部62aに前後に挟まれる態様で、その内側には捕捉空間63が形成される。この爪部62aおよび捕捉空間63は、取付ピン36を捕捉するためのものである。
【0053】
このロック部材60は、
図11および
図12に示すように、ロック部62が固定具50に挿入される。より詳細には、
図11に示すように、爪部62aの部分のみが挿入された状態が固定前(ロック前)の状態であり、
図12に示すように、ロック部62の全体が挿入された状態が固定後(ロック後)の状態になる。
【0054】
次に、本発明の実施の形態に係る食品陳列什器1の動作・作用について詳細に説明する。
図14および
図15は、固定具50とロック部材60との動作を説明する概要図である。なお、前側扉3aおよび後側扉3bの着脱方法は同じであるため、以下の説明では前側扉3aの着脱について説明する。
【0055】
作業者が前側扉3aを本体部2に取り付けようとする場合、まずは、前側扉3aの上桟6を取付金具11aの取付部34の上に載せる。次に、前側扉3aを後側へとスライドさせ、上桟6の切り欠き6aを通して切り欠き部53の内部に取付ピン36を挿入する。また、高さ合わせ部33の上部には、
図6および
図7に示すように、取付部34よりも上側へ突出する突起33aが設けられており、この突起33aに前側扉3aを突き当てることで、前後方向の位置出しをしている。このロック前の状態では、
図14に示すように、ロック部材60は固定具50の外側に位置し、かつ、上桟6の外側に突出している(
図10参照)。また、
図14(C)に示すように、ロック部材60の爪部62aは、切り欠き部53に到達していない。
【0056】
この状態から、
図15に示すように、ロック部材60を固定具50に完全に挿入することで、ロック状態になる。詳細には、
図15(C)に示すように、爪部62aが切り欠き部53にまで到達し、爪部62aの弾性変形によって取付ピン36が捕捉空間63内に入り込むようになる。これにより、前側扉3aの前後方向および左右方向の位置が規制される。また、取付ピン36のフランジ部36bの下面が爪部52aの上面と当接することにより、上下方向の位置も規制される。
【0057】
ロックした状態では、ロック部材60の把持部61は、上桟6の端部(開閉扉の端部)よりも内側に入り込み、外側に突出していない状態になる。そのため、利用者側(手前側)からロック部材60が見えないようになる。一方、ロックを解除した状態では、ロック部材60を外側へスライドさせることで前側扉3aの端部よりも外側へ突出するようになり、ロックがされていないことを店員が一見して認識できるようにした。
【0058】
一方、前側扉3aを取り外すときには、この逆の手順を辿ることで容易に行うことができる。このとき、ロック部材60の把持部61には、指を入れるための空間64が形成されているので、この空間64に指を入れることで、容易に引き出すことができる。
【0059】
本発明の実施の形態に係る食品陳列什器1によれば、傾斜扉3の上部を支持する上部ガイドレール10を有し、上部ガイドレール10よりも手前側にオフセットした位置に傾斜扉3が取り付けられる食品陳列什器1であって、上部ガイドレール10に沿って開閉方向へ移動する取付金具11a、11bを設け、取付金具11a、11bを上部ガイドレール10の前側面10aよりも手前側へ突出させ、この突出した部分に傾斜扉3を取り付けるための取付部34、42を設けているので、傾斜扉3の着脱作業を上部ガイドレール10の前側で行うことができ、取付部が前側面10aの後側に位置する構造(従来では、上部ガイドレールの下側)と比較して、傾斜扉3を容易に着脱することができる。
【0060】
特に、取付金具11a、11bには、前後方向に延びる回転軸37aを中心にして開閉方向に回転する移動ローラー37が設けられ、移動ローラー37よりも取付部34、42が前側に位置するようにしているので、移動ローラー37に作用する斜め方向の荷重を適式に受ける構造にすることで、取付部34、42を前側に突出させることができる。
【0061】
また、開閉扉3には、開閉方向へスライド可能なロック部材60が取り付けられ、ロック部材60は、ロックした状態では、開閉扉3の幅方向の端部よりも内側に位置し、ロックを解除した状態では、ロック部材60を外側へスライドさせることで開閉扉3の端部よりも外側へ突出するようにしているので、作業者は、このロック部材60の突出の有無を確認するだけで、固定されているか否かが容易に判別することができる。また、固定した状態では、ロック部材60が傾斜扉3の外側に突出しないようになるので、利用者に違和感を与えない。
【0062】
さらに、取付部34、42には上下方向に突出する取付ピン36が設けられ、ロック部材60を開閉扉3の内側にスライドさせて取付ピン36を捕捉することで開閉扉3をロックしているので、このロック部材60をスライドさせるだけで、容易にロック(固定)することができる。また、開閉方向にスライドさせる構造なので、傾斜扉3の表面側にロックレバーやねじなどを設ける必要がなく、誤操作やいたずらで固定が解除されてしまうおそれがない。
【0063】
さらにまた、移動ローラー37には、周方向に沿って連続するガイド溝38が形成され、上部ガイドレール10には、ガイド溝38に上側および下側から入り込む上係合部17および下係合部16が形成されているので、移動ローラー37よりも前側に位置する取付部34、42に前後或いは上下に力が作用したとしても、移動ローラー37が前後に若干傾くことによって、この力を受け流すことができる。これにより、取付部34、42が手前側に設けられて斜め方向に負荷が作用したとしても、移動ローラー37が開閉方向にスムーズに移動できるようになる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態に係る食品陳列什器1について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0065】
例えば、本実施の形態では、上部ガイドレール10よりも手前側にオフセットした位置に開閉扉が取り付けられるキャビネットの一例として、傾斜した開口部を覆うようにして取り付けられた傾斜扉3を有する食品陳列什器1について説明したが、これに限定されない。例えば、特許文献2、3で開示されているような略L字形状、曲面形状に形成された開閉扉を有するキャビネットであっても、開閉扉がオフセットした位置に取り付けられるものであれば同様の課題が発生するので、本発明の効果を奏するようになる。
【0066】
また、本実施の形態では、キャビネットの一例として食品陳列什器1について説明しているが、扉がオフセットした位置に取り付けられて使用されるものであれば、書類棚、保管棚など、種々のものに使用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 食品陳列什器(キャビネット)
2 食品陳列什器本体(本体部)
3 傾斜扉(開閉扉)
3a 前側扉
3b 後側扉
4 棚部
6 上桟
6a 切り欠き
10 上部ガイドレール
10a 上部ガイドレールの前側面
11a、11b 取付金具
12 化粧板
13a 13b 中間壁部
14 前壁部
15 後壁部
16 下係合部
17 上係合部
20 下部ガイドレール
30、40 金具本体
31 起立面部
32 底面部
33 高さ合わせ部
33a 突起
34、42 取付部
35、45 捕捉ピン
36 取付ピン
36a ピン部
36b フランジ部
37 移動ローラー
37a 回転軸
38 ガイド溝
43 第2取付部
50 固定具
50a 前側部材
50b 後側部材
52 窪み
53 切り欠き部
54 取付溝
60 ロック部材
61 把持部
62 ロック部
62a 爪部
63 捕捉空間
64 空間
65 突起
S1、S2、S3 上部ガイドレール内の取付空間