(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】エレベータ巻上機
(51)【国際特許分類】
B66B 11/08 20060101AFI20230619BHJP
【FI】
B66B11/08 C
(21)【出願番号】P 2019069879
(22)【出願日】2019-04-01
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】307043120
【氏名又は名称】サノシーテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519116539
【氏名又は名称】佐野 真義
(73)【特許権者】
【識別番号】516172042
【氏名又は名称】佐野 達広
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】佐野 真義
(72)【発明者】
【氏名】佐野 達広
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-206334(JP,A)
【文献】特開平08-192974(JP,A)
【文献】特開2001-151442(JP,A)
【文献】特開2000-247559(JP,A)
【文献】米国特許第05547044(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/00 - 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、荷物を昇降させる昇降カゴと釣り合い錘とがそれぞれ両側に懸吊された主ロープが巻き掛けられたシーブと、前記電動モータの回転を予め定められた回転速度に減速して前記シーブへ出力する減速機とを備えたトラクションロープ式エレベータ用の巻上機であって、
前記減速機は、
前記電動モータの駆動軸と同一又は該駆動軸に直結され、第1ヘリカルピニオンが同軸上に配置された入力軸と、
前記第1ヘリカルピニオンに噛合する第1ヘリカルギアと第2ヘリカルピニオンとが同軸上に配置された中間軸と、
前記第2ヘリカルピニオンに噛合する第2ヘリカルギアと前記シーブとが同軸上に配置された出力軸とを各々の軸方向を互いに平行に配置して備え、
前記中間軸が、前記入力軸及び前記出力軸よりも上方又は下方にずらした高さ位置に配置され、
前記減速機の入力軸と中間軸と出力軸とを内部に保持する減速機筐体は、6面の一般構造用圧延鋼材が直方体状に
溶接されて構成されており、前記入力軸と中間軸と出力軸とは、各々ベアリングによって前記減速機筐体の側壁に回転可能に支持されていることを特徴とするエレベータ巻上機。
【請求項2】
前記中間軸が前記入力軸に対して45°の仰角又は45°の俯角に配置され、
前記出力軸が前記中間軸に対して45°の俯角又は45°の仰角に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ巻上機。
【請求項3】
前記請求項1
又は2に記載のエレベータ巻上機が昇降路の下部の地下ピットスペースに配設されることを特徴とする請求項1
又は2に記載のエレベータ巻上機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ巻上機に関し、高さを低く小型とすることができ、静音性が高く、安価に製造可能であり、特に荷物用エレベータに好適なエレベータ巻上機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータは大きく分けて、人の輸送を目的とする乗用エレベータと、荷物の輸送を目的とする載積荷重が大きい荷物用エレベータとがある。これら乗用エレベータ及び荷物用エレベーターとしては、昇降路の下部ピットスペースや上部スペースに巻上機と制御盤とを配置することで昇降路の上部等に機械室を必要としない運用(即ち、「機械室レスエレベータ」)が主流となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特に、乗用エレベータと荷物用エレベータとは同じエレベータであるため、殆ど同じような構成を有しているが、好ましくは、荷物用エレベータとしては、乗用エレベータにない特徴として、荷物の出し入れのために間口を広くとり、1tを超す重量のフォークリフト等の搬送用機器による積み込み積み出しを行えるように急激な荷重変化に対しても対抗することを念頭にしている。また、荷物を安全に搬送することが目的なので、乗用エレベータほどの速い速度は必要ないこと等の特徴を有している。
【0004】
更に、荷物用エレベータの巻上機としては、急激な荷重変化に対して対抗できるようにするため、昇降路の下部ピットスペースに確実に固定されて配設され、この巻上機を中心として主ロープで昇降かごと釣り合い錘とのバランスを取って配置することが主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような機械室レスエレベータにおいては、昇降路内又はその周囲のスペースに巻上機自体を配設するために、小型のものが切望されており、特に、地下ピットスペースに配設される巻上機については、巻上機自体の背を低くして小型化のもの、静音性が高いものが切望されている。また、地下ピットスペースに配設される荷物用エレベータの巻上機については、これに加えて、急激な上方向への荷重変化に対しても対抗できる巻上機が切望されている。
【0007】
本発明は、高さを低くして小型とすることができ、駆動時の静音性が高く、安価に製造可能であり、荷物用として用いるに好適なエレベータ巻上機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明に係るエレベータ巻上機は、電動モータと、荷物を昇降させる昇降カゴと釣り合い錘とがそれぞれ両側に懸吊された主ロープが巻き掛けられたシーブと、前記電動モータの回転を予め定められた回転速度に減速して前記シーブへ出力する減速機とを備えたトラクションロープ式エレベータ用の巻上機であって、
前記減速機は、
前記電動モータの駆動軸と同一又は該駆動軸に直結され、第1ヘリカルピニオンが同軸上に配置された入力軸と、
前記第1ヘリカルピニオンに噛合する第1ヘリカルギアと第2ヘリカルピニオンとが同軸上に配置された中間軸と、
前記第2ヘリカルピニオンに噛合する第2ヘリカルギアと前記シーブとが同軸上に配置された出力軸とを各々の軸方向を互いに平行に配置して備え、
前記中間軸が、前記入力軸及び前記出力軸よりも上方又は下方にずらした高さ位置に配置され、
前記減速機の入力軸と中間軸と出力軸とを内部に保持する減速機筐体は、6面の一般構造用圧延鋼材が直方体状に溶接されて構成されており、前記入力軸と中間軸と出力軸とは、各々ベアリングによって前記減速機筐体の側壁に回転可能に支持されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載された発明に係るエレベータ巻上機は、請求項1に記載の中間軸が前記入力軸に対して45°の仰角又は45°の俯角に配置され、前記出力軸が前記中間軸に対して45°の俯角又は45°の仰角に配置されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載された発明に係る荷物用エレベータ巻上機は、請求項1又は2に記載のエレベータ巻上機が昇降路の下部の地下ピットスペースに配設されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、高さを低くして小型とすることができ、駆動時の静音性が高く、安価に製造可能であり、荷物用として用いるに好適なエレベータ巻上機を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の荷物用エレベータ巻上機の一実施例の構成を示す平面図である。
【
図7】本発明の荷物用エレベータ巻上機の別の実施例の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明においては、電動モータと、荷物を昇降させる昇降カゴと釣り合い錘とがそれぞれ両側に懸吊された主ロープが巻き掛けられたシーブと、電動モータの回転を予め定められた回転速度に減速してシーブへ出力する減速機とを備えたトラクションロープ式エレベータ用の巻上機である。
【0015】
本発明の減速機は、電動モータの駆動軸と同一又は該駆動軸に直結され、第1ヘリカルピニオンが同軸上に配置された入力軸と、第1ヘリカルピニオンに噛合する第1ヘリカルギアと第2ヘリカルピニオンとが同軸上に配置された中間軸と、第2ヘリカルピニオンに噛合する第2ヘリカルギアと前記シーブとが同軸上に配置された出力軸とを各々の軸方向を平行に配置して備え、中間軸が入力軸と出力軸とを結ぶ線よりも上方又は下方にずらした高さ位置に配置されているものである。
【0016】
即ち、本発明の巻上機の減速機を従来からの主流である3段ヘリカル方式を2段ヘリカル方式に変更するものである。2段ヘリカル方式とすることにより、減速比を調整しやすい利点を奏し、騒音、マシン効率、総重量、コストにメリットが出ることになり、高さを低くして小型とすることができ、駆動時の静音性が高く、安価に製造可能な荷物用のエレベータ巻上機を得ることができる。
【0017】
より詳しくは、本発明の巻上機の設置場所については、当然のことながら、昇降路の頂部に配設された機械室に設置することも可能であるが、機械室レスとして、ピット(底部)に設置することも可能である。この場合、荷物用エレベータとしては、高さが低く小型とすることができ、静音性が高く、安価に製造可能である上に、引っ張り強度に充分に対抗できるかが重要となる。また、本発明の巻上機の積載荷重としては、荷物用エレベータとして利用可能なように、500kg~4000kgの範囲内を想定することにより、荷物用エレベータとして、種々の状況に応じて設置することができる。また、カゴ速度としては、30~60m/minの範囲を想定し、より好ましくは、30m/min、45m/min、60m/minの3つ速度を想定している。
【0018】
即ち、減速機の平行に配置される入力軸と中間軸と出力軸とを直線状に配するのではなく、中間位置の中間軸を入力軸と出力軸とを結ぶ線よりも上方又は下方にずらした高さ位置に配置することにより、減速機の高さを低くでき、巻上機自体を小型にすることができる。また、2段のヘリカルピニオンとヘリカルギアとで減速することによって、静音性が高くできる。2段のヘリカルピニオン及びヘリカルギアのみで使用することにより、当然のことながら、3段以上のものと比べて安価に製造することができる。
【0019】
本発明の減速機の入力軸と中間軸と出力軸とは、好ましくは、中間軸が入力軸に対して45°の仰角又は45°の俯角に配置され、出力軸が中間軸に対して45°の俯角又は45°の仰角に配置されているものでは、小さい設置面積でも3本の軸を配置することができるため、単純に並列に並べるよりも全体として占有空間が小さくて済み(例えば273mmから192mmとなるように)小型となる。
【0020】
本発明の巻上機については、機械室レスの乗用エレベータにも使用可能ではあるが、好適には機械室レスの荷物用エレベータに使用されることを想定している。即ち、昇降路内又はその周囲のスペースに巻上機自体を配設するために、小型で静音性が高い特性を有している。特に、荷物用エレベータの巻上機として、1tを超す重量のフォークリフト等の機器での搬入の際に荷重変化による急激な引っ張り強度変化に対抗できるように、地下ピットスペースに配設されることを想定して、巻上機自体の背を低く小型化することを想定している。
【0021】
加えて、荷物用エレベータの他の特色としては、乗用エレベータほどの速度は必要ないことから、減速機の減速比の範囲を広いものではなく狭くして対応していけばよいため、ギアの段数を少なくすることができる。例えば、3段ギアによるギア比は、20~90であり、4段ギアによるギア比は80~500程度となっているが、本発明の巻上機の減速機としては、30~38のギア比の2段ヘリカル方式とすることにより、乗用エレベータほどの速度ではないが、高さが低く小型とすることができ、静音性が高く、安価に製造可能な荷物用エレベータ巻上機を得ることができる。
【0022】
本発明の巻上機の減速機筐体としては、従来から使用されている鋳鉄品(FC材)ではなく、好ましくは、一般構造用圧延鋼材(SS材)とする。即ち、減速機の入力軸と中間軸と出力軸とを内部に保持する減速機筐体が、一般構造用圧延鋼材から構成されているものである。これにより、鋳鉄品と比較して、より静音性が高く、引っ張り強度に対抗することができ、より安価に製造可能な特徴を奏する。
【0023】
巻上機の減速機としては、従来は鋳鉄製が主流であった。即ち、型に鉄を流し込んで成形して製造されていた。このため、型の隅々まで流し込まれた鉄がいきわたるように炭素量を多くしている。このため、耐摩耗性、耐熱性、耐食性に優れ、高い振動吸収性能を有する筐体となっている。しかしながら、引っ張り強度、特に軸に対して直角方向の力(ラジアル荷重)に対しては脆い課題があった。
【0024】
本発明の巻上機の好ましい態様としては、減速機筐体を一般構造用圧延鋼材(SS鋼材)で構成する。即ち、一般構造用圧延鋼材(SS鋼材)同士を溶接等で筐体を形成することにより、内部に配置された軸のラジアル荷重に対する強度(特に上方向の引っ張りに対する強度)を増すことができ、より安価に製造することが可能となる。特に、引っ張り強度に対抗することが可能となるため、地下ピットスペースに配設される荷物用エレベータの巻上機として有効である。
【0025】
また、一般構造用圧延鋼材(SS鋼材)で構成することにより、脚の長さの調整等のカスタマイズの自由度が増すことができる。更に、筐体に内に遮蔽板等を取り付けたり、防振ゴムを本体に付設させたり防振塗料を施す等の自由度が増し、より騒音を軽減することができる利点も奏する。
【0026】
また、本発明の巻上機としては、好ましくは、ブレーキ取付位置を3カ所に自由に取付できる構造とする。より具体的には、電動モーターの駆動軸の反負荷側、減速機と電動モーターとの間、負荷側(シーブ側)の3カ所に設置可能とすることにより、自由度を増すことができる。
【実施例】
【0027】
図1は本発明の荷物用エレベータ巻上機の一実施例の構成を示す平面図である。
図2は
図1の正面図である。
図3は
図1の右側面図である。
図4は
図1の左側面図である。
図5は
図1の要部の構成を示す平面図である。
図6は
図5の右側面図である。
図7は本発明の荷物用エレベータ巻上機の別の実施例の構成を示す平面図である。
図8は
図7の正面図である。
図9は
図7の右側面図である。
図10は
図7の左側面図である。
【0028】
図1~
図6に示す実施例のエレベータ巻上機10は、2本の長い鉄骨の間を2本の短い鉄骨で組み合わせた基台13上に配置された減速機20と、この減速機20の一方の側面に配置された電動モータ11と、減速機20の他方の側面に配置された荷物を昇降させる昇降カゴと釣り合い錘とがそれぞれ両側に懸吊された主ロープが巻き掛けられたシーブ12とを備える。本実施例では、電動モータ11の駆動軸15の反減速機20側にブレーキ装置14が配されている。
【0029】
シーブ12には、図示してはいないが、一端側に昇降カゴが、他端側に釣り合い錘が懸吊されている主ロープが巻き掛けられており、電動モータ11の回転力が減速機20を介してシーブ12に伝達され、このシーブ12の回転に伴って、主ロープが移動することによって昇降カゴがエレベータ昇降路内を上下方向に走行するように構成されている。
【0030】
電動モータ11は、図示しない制御装置によって回転数が制御されるものであり、その出力制御で同じく図示しない昇降カゴの走行の加減速、停止が制御される。昇降カゴが目的階の乗場位置に到達して停止すると、ブレーキ装置14が動作され、シーブ12の回転が阻止され、昇降カゴの静止状態が保持される。尚、このブレーキ装置14の更に外方にはトルクレンチのヘッドを取り得蹴れるように、ヘッド取付部16が備えられ、このヘッド取付部16にトルクレンチをセットする事で、実トルクの計測が可能となっている。
【0031】
減速機20は、電動モータ11の回転を2つのヘリカルギア段で予め定められた回転速度に減速してシーブ12へ出力する。具体的な構成は、
図5及び
図6に示すように、基台13上に載置された直方体状の筐体28と、電動モータ11の駆動軸15の同軸上に連結された、第1ヘリカルピニオン21が同軸上に配置された入力軸22と、第1ヘリカルピニオン21に噛合する第1ヘリカルギア23と第2ヘリカルピニオン24とが同軸上に配置された中間軸25と、第2ヘリカルピニオン24に噛合する第2ヘリカルギア26とシーブ12とが同軸上に配置された出力軸27とを各々の軸方向を互いに平行に配置して備える。
【0032】
中間軸25は、入力軸22及び出力軸27よりも上方にずらした高さ位置に配置されている。より具体的には、中間軸25が入力軸22に対して仰角αの角度が45°に配置され、出力軸27は、中間軸25に対して俯角βが45°に配置されている。尚、各々の軸はベアリング29によって筐体28の側壁に回転可能に支持されている。これにより、2つのヘリカルギア段によって高さを低くすると共に、幅を小さくすることができ、静音性が高く、安価に製造可能な巻上機を得ることができる。即ち、減速機20には、2つのヘリカルギア段で構成されているため、静音性が高く、安価に製造可能であり、3本の軸の中間軸を上方にずらしているため、小型化することができる。
【0033】
これに加えて、直方体状の筐体28が、一般構造用圧延鋼材(SS鋼材)から構成されている。即ち、直方体状の筐体の6面を構成する各々の面を一般構造用圧延鋼材(SS鋼材)を溶接して接合し手形成することにより、鋳鉄品と比較して、より静音性が高く、引っ張り強度に対抗することができ、より安価に製造することができる。
【0034】
即ち、従来は鋳鉄製が主流であった減速機20の筐体28を一般構造用圧延鋼材(SS鋼材)で構成した。これにより、内部に配置された軸のラジアル荷重に対する強度(特に上方向の引っ張りに対する強度)を増すことができ、より安価に製造することが可能となり、引っ張り強度に対抗することが可能となるため、地下ピットスペースに配設される荷物用エレベータの巻上機として有効である。尚、本実施例の減速機の減速比としては、30~38の2段ヘリカル方式を想定している。これにより、荷物用エレベータの巻上機として広く利用可能となる。
【0035】
図7~
図10に示す別の実施例のエレベータ巻上機70は、
図1のエレベータ巻上機10のブレーキ装置14の配置が相違した以外は同じである。即ち、別の実施例のエレベータ巻上機70は、同様に、2本の長い鉄骨の間を2本の短い鉄骨で組み合わせた基台73上に配置された減速機80と、この減速機80の一方の側面に配置された電動モータ71と、減速機80の他方の側面に配置された荷物を昇降させる昇降カゴと釣り合い錘とがそれぞれ両側に懸吊された主ロープが巻き掛けられたシーブ72とを備える。本実施例では、電動モータ71と減速機80との間にブレーキ装置74が配されている。
【0036】
シーブ72についても、図示しない昇降カゴに一端が、釣り合い錘に他端が懸吊されている主ロープが巻き掛けられており、電動モータ71の回転力が減速機80を介してシーブ72に伝達され、このシーブ72の回転に伴って、主ロープが移動することによって昇降カゴがエレベータ昇降路内を上下方向に走行するように構成されている。
【0037】
電動モータ71についても、図示しない制御装置によって回転数が制御されるものであり、その出力制御で同じく図示しない昇降カゴの走行の加減速、停止が制御される。昇降カゴが目的階の乗場位置に到達して停止すると、ブレーキ装置74が動作され、シーブ72の回転が阻止され、昇降カゴの静止状態が保持される。尚、このブレーキ装置74の更に外方にはトルクレンチのヘッドを取り得蹴れるように、ヘッド取付部76が備えられ、このヘッド取付部76にトルクレンチをセットする事で、実トルクの計測が可能となっている。
【0038】
減速機80は、電動モータ71の回転を2つのヘリカルギア段で予め定められた回転速度に減速してシーブ72へ出力する。具体的な構成は、
図5及び
図6に示したものと同様に構成されている。即ち、基台73上に載置された直方体状の筐体88と、電動モータ71の駆動軸75の同軸上に第1ヘリカルピニオン(図示せず)が配置された入力軸82と、第1ヘリカルピニオンに噛合する第1ヘリカルギアと第2ヘリカルピニオンとが同軸上に配置された図示しない中間軸と、第2ヘリカルピニオンに噛合する第2ヘリカルギア(図示せず)とシーブ82とが同軸上に配置された出力軸87とを各々の軸方向を互いに平行に配置して備える。
【0039】
この実施例でも同様に、中間軸は、入力軸82及び出力軸87よりも上方にずらした高さ位置に配置されている。これにより、高さが低く小型とすることができ、静音性が高く、安価に製造可能な巻上機を得ることができる。即ち、減速機80には、2つのヘリカルギア段で構成されているため、静音性が高く、安価に製造可能であり、3本の軸の中間軸を上方にずらしているため、小型化することができる。
【0040】
この直方体状の筐体88についても、一般構造用圧延鋼材(SS鋼材)から構成されている。即ち、直方体状の筐体の6面を構成する各々の面を一般構造用圧延鋼材(SS鋼材)を溶接して接合し手形成することにより、鋳鉄品と比較して、より静音性が高く、引っ張り強度に対抗することができ、より安価に製造することができる。
【0041】
従来は鋳鉄製が主流であった減速機80の筐体88を一般構造用圧延鋼材(SS鋼材)で構成することにより、内部に配置された軸のラジアル荷重に対する強度(特に上方向の引っ張りに対する強度)を増すことができ、より安価に製造することが可能となり、引っ張り強度に対抗することが可能となるため、地下ピットスペースに配設される荷物用エレベータの巻上機として有効である。尚、本実施例の減速機についても減速比としては、30~38の2段ヘリカル方式を想定している。これにより、荷物用エレベータの巻上機として広く利用可能となる。
【0042】
尚、ブレーキ装置の取付位置については、他に減速機とシーブとの間に設置可能である。これら電動モータの駆動軸の反減速機側、電動モータと減速機との間、減速機とシーブとの間との3カ所に設置可能とすることにより、自由度を増すことができる。
【符号の説明】
【0043】
10…荷物用エレベータ巻上機、
11…電動モータ、
12…シーブ、
13…基台、
14…ブレーキ装置、
15…駆動軸、
16…ヘッド取付部、
20…減速機、
21…第1ヘリカルピニオン、
22…入力軸、
23…第1ヘリカルギア、
24…第2ヘリカルピニオン、
25…中間軸、
26…第2ヘリカルギア、
27…出力軸、
28…筐体、
29…ベアリング、
70…荷物用エレベータ巻上機、
71…電動モータ、
72…シーブ、
73…基台、
74…ブレーキ装置、
75…駆動軸、
76…ヘッド取付部、
80…減速機、
82…入力軸、
87…出力軸、
88…筐体、