IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭電工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-加熱装置 図1
  • 特許-加熱装置 図2
  • 特許-加熱装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/04 20060101AFI20230619BHJP
   H05B 6/10 20060101ALN20230619BHJP
【FI】
H05B6/04 311
H05B6/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019095700
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020191225
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】518102425
【氏名又は名称】昭電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173679
【弁理士】
【氏名又は名称】備後 元晴
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 和行
【審査官】宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-092709(JP,A)
【文献】特開2016-082670(JP,A)
【文献】特開平04-006788(JP,A)
【文献】特開平08-302431(JP,A)
【文献】実開昭48-099542(JP,U)
【文献】実開昭51-034741(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0245679(US,A1)
【文献】実開昭59-143027(JP,U)
【文献】特開昭61-263084(JP,A)
【文献】特開平11-087035(JP,A)
【文献】石田 弘樹(岡山理科大学 理学部 応用物理学科 准教授),商用電源周波数で共鳴させた非接触給電装置(60Hz-WPT),中国地域さんさんコンソ 新技術説明会(2015年11月5日)発表資料,https://shingi.jst.go.jp/pdf/2015/sansan09.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/00-6/44
H02J 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次回路と、
前記一次回路と磁界共鳴によって結合される二次回路と、
前記二次回路を囲むことで前記一次回路と前記二次回路との間を隔て、前記磁界共鳴の磁場に対して透過性を示す断熱壁と、
を備え、
前記一次回路は、
一次磁性コアと、
前記一次磁性コアの周囲に配され、動作周波数が400Hz以下の交流電流を受電する給電コイルとを有し、
前記二次回路は、
前記一次磁性コアと磁界共鳴によって結合される二次磁性コアと、
前記二次磁性コアの周囲に短絡してループ状に配される導電性の加熱対象物と、
前記加熱対象物と電気的に接続される二次側共振用コンデンサとを有し、
前記加熱対象物が前記断熱壁と別の断熱性部材の内部に配され、前記二次磁性コア及び前記二次側共振コンデンサが前記断熱性部材の内部に配されない、
加熱装置。
【請求項2】
前記一次回路は、前記給電コイルと電気的に接続される一次側共振用コンデンサをさらに有する、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記加熱対象物の形状がリング状、パイプ状又はケーブル状であり、前記加熱対象物がループ状に配される、請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記二次回路は、リング状容器をさらに有し、
前記加熱対象物は、導電性の液体又は導電性の粉末であり、
前記リング状容器は、前記二次磁性コアの周囲にリング状に設けられ、内部に前記加熱対象物を収容可能に構成される、請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記加熱対象物の温度を直接的に又は間接的に計測する温度計測手段と、
前記温度計測手段によって計測された温度に基づいて前記給電コイルへの給電量を調整する給電量調整手段とをさらに備える、請求項1からのいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記一次磁性コアの磁極面積が前記給電コイルの断面積より大きく、
前記二次磁性コアの磁極面積が前記給電コイルの断面積より大きい、請求項1からのいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記給電コイルと電気的に接続された可変変圧器を備える、請求項1からのいずれか1項に記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置に関し、より詳しくは、商用電源を用いて加熱対象物を高温に加熱可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高温熱処理は、金属をはじめとする工業部材における重要な加工工程であり、部材の形状や処理内容に応じた様々な熱処理設備が使われている。大型の高温熱処理設備では石油や天然ガスなどの化石燃料も用いられるが、より小型の設備では簡便さのために電気を利用するものもある。
【0003】
電気を利用する設備として、加熱対象に電極を接触させて通電し、内部抵抗によるジュール熱で内部から加熱する直接通電加熱方式の設備が知られている。この設備は、簡便な装置構成で加熱対象を内部から満遍なく加熱できるという利点を有する。しかしながら、設備の使用期間が長くなるにつれて、電極が消耗する。この消耗に起因して、ランニングコストを押し上げるという課題がある。また、電極の消耗物が加熱対象物に混入するリスクを確実に抑えるには、他の方式による設備の提案が求められる。
【0004】
直接通電加熱方式とは別の方式の設備として、高周波誘導加熱方式の設備が知られている。この設備の例として、渦電流によるジュール熱で加熱対象を内部から加熱する設備のほか、加熱対象を誘導コイルの内部に配置する設備、あるいは誘導コイルの軸方向の近傍に配置する設備等が知られている。この方式は、電極の消耗を伴わないため、電極の消耗物が加熱対象物に混入するリスクを確実に抑えられるという利点を有する。他方、作業員への高周波の曝露や周辺機器へのノイズ混入、設置に届出が必要となる等の改善課題を有する。
【0005】
直接通電方式における電極の消耗の課題と、高周波誘導加熱方式における高周波の利用に伴う課題との両方を解決する手段として、誘導加熱装置に低周波を用いることが提案されている。例えば、特許文献1は、閉ループ回路を形成する磁性コアに低周波磁界を供与することで、前記磁性コアの周囲に配置する断熱容器内に収められた加熱対象物である金属に二次電流を誘導してジュール熱を発生させる誘導加熱装置を開示する。特許文献1に記載の誘導加熱装置は、加熱対象物内部に直接誘導電流を発生させることから電極を用いないため、直接通電方式における電極の消耗の課題を解決できる。また、特許文献1に記載の誘導加熱装置は、低周波を用いることから、高周波誘導過熱方式における高周波の利用に伴う課題も解決できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平4-006788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1が開示する装置は、駆動装置により回転する可動コアを用いた交番磁束発生装置によって、加熱対象物に対して適切な周波数の交番磁束を供与し、加熱効率を高め得る。しかしながら、この交番磁束発生装置において生じるエネルギー損失に対する考慮が十分でない。
【0008】
また、特許文献1が開示する装置は、磁気漏れによって交番磁束の一部が漏れ磁束となり、加熱対象物内部に誘導電流を流すことなく消費されてしまう。この磁気漏れによって生じる漏れインダクタンスに対する考慮も十分でない。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、直接通電加熱における電極の消耗の課題と、高周波誘導加熱における高周波電磁波の課題との両方を解決でき、高周波誘導加熱における変圧器がもたらすイニシャルコスト上昇及びエネルギー損失の課題も解決でき、低周波誘導加熱における漏れ磁束によるエネルギー損失の課題も解決でき、加熱対象物が発する熱が磁性コアや加熱装置全体を温めるために浪費されることもない、低周波で動作する磁界共鳴を用いた加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、非接触型の給電装置と直接通電加熱装置とを用い、これら両装置の間を断熱壁で隔て、前記非接触型の給電装置の受電設備を特別な構造にすることで、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
本発明は、加熱装置に関する。加熱装置は、一次回路と、前記一次回路と磁界共鳴によって結合される二次回路と、前記二次回路を囲むことで前記一次回路と前記二次回路との間を隔て、前記磁界共鳴の磁場に対して透過性を示す断熱壁とを備え、前記一次回路は、一次磁性コアと、前記一次磁性コアの周囲に配され、動作周波数が400Hz以下の交流電流を受電する給電コイルとを有し、前記二次回路は、前記一次磁性コアと磁界共鳴によって結合される二次磁性コアと、前記二次磁性コアの周囲に短絡してループ状に配される導電性の加熱対象物と、前記加熱対象物と電気的に接続される二次側共振用コンデンサとを有する。
【0012】
本発明に係る加熱装置において、まず、一次回路にて、動作周波数が400Hz以下の交流電流を給電コイルが受電する。この受電により、給電コイルの略中央に配される一次磁性コアに変動磁場が発生する。そして、変動磁場は、一次磁性コアから、二次回路の二次磁性コアに到達する。一次回路と二次回路との間は、断熱壁で隔てられているものの、断熱壁は、磁界共鳴の磁場に対して透過性を示すため、一次磁性コアと二次磁性コアとの磁気結合は、阻害されない。一次磁性コアで発生した変動磁場は、磁場透過性の断熱壁を通って二次磁性コアに到達可能である。
【0013】
続いて、二次回路にて、変動磁場が二次磁性コアに到達すると、電磁誘導の法則により、二次磁性コアの周囲に短絡してループ状に配される導電性の加熱対象物の内部に誘導電流を発生させる。加熱対象物は、内部抵抗を有するため、加熱対象物の内部に誘導電流が発生すると、加熱対象物の内部にジュール熱が加えられる。
【0014】
本発明に係る加熱装置によると、加熱対象に電極を接触させる必要がないために、直接通電加熱における電極の消耗の課題と、電極の消耗に起因する諸課題(ランニングコストの押し上げ、電極の消耗物の混入リスク軽減)とを解決できる。
【0015】
また、給電コイルでの受電に用いられる交流電流の動作周波数は400Hz以下であり、低周波帯である。本発明に係る加熱装置によると、高周波帯の交流電流を利用することなく、ジュール熱で加熱対象物を内部から加熱できるため、高周波誘導加熱における諸課題(作業員への高周波の曝露、周辺機器へのノイズ混入、設置に際しての要届出)を解決できる。
【0016】
続いて、高周波誘導加熱及び低周波誘導加熱におけるエネルギー損失の解決について説明する。非特許文献1(“磁界共振結合における効率と磁束”,日本AEM学会誌,vol.24,No.4,pp.317-322(2016))によると、加熱装置の共振周波数をω、一次回路のレジスタンス、インダクタンス、キャパシタンスをそれぞれr、L、C、二次回路のレジスタンス、インダクタンス、キャパシタンスをそれぞれr、L、C、負荷をR、励磁インダクタンスをL、結合係数をkとすると、電力伝送の効率ηは式(1)によって求められる。
η=(ωL/[{(r+R+(ωL-1/ωC}r
+(ωL+(ωL] ・・・(1)
【0017】
負荷Rが式(2)の示す最適負荷RLoptと等しいとき、式(1)は理想的な磁界共鳴条件にある。
Lopt={r +(r/r)(ωL+(ωL-1/ωC1/2 ・・・(2)
【0018】
また、このときC、ω、Lは式(3)を満たす。
=1/(Lω) ・・・(3)
【0019】
本発明に係る加熱装置によると、二次回路の加熱対象物に、二次側共振用コンデンサが電気的に接続される。そして、二次側共振用コンデンサがもつキャパシタンス(静電容量)が漏れインダクタンスを補償することによって磁界共鳴条件を達成できるため、本発明に係る加熱装置では、漏れ磁束によるエネルギー効率の低下を解決できる。
【0020】
続いて、加熱対象物が発するジュール熱が対象物の加熱以外の用途に浪費されることの抑制という課題の解決について説明する。本発明に係る加熱装置では、二次回路が断熱壁で囲まれている。断熱壁があることによって、加熱対象物が発するジュール熱が二次回路の外部に流出することを抑制できる。したがって、本発明に係る加熱装置によると、加熱対象物が発するジュール熱が一次回路側の各部材(一次磁性コア、給電コイル)をはじめとした二次回路の外部にある加熱装置全体を温めるために浪費されることを抑えられる。
【0021】
以上のとおりであるため、本発明によると、直接通電加熱における電極の消耗の課題と、高周波誘導加熱における高周波電磁波の課題との両方を解決でき、高周波誘導加熱及び低周波誘導加熱における変圧器がもたらすイニシャルコスト上昇及びエネルギー損失の課題も解決でき、加熱対象物が発する熱が磁性コアや加熱装置全体を温めるために浪費されることを抑えられる、低周波で動作する磁界共鳴を用いた加熱装置を提供できる。
【0022】
本発明に係る加熱装置において、前記一次回路は、前記給電コイルと電気的に接続される一次側共振用コンデンサをさらに有することが好ましい。
【0023】
一次側共振用コンデンサは、一次回路のリアクタンスを減少させ、それによって一次磁性コアと二次磁性コアを結合する主磁束を強める。主磁束が強まることで、二次回路における電磁誘導が強まり、加熱対象物への給電効率をよりいっそう高められる。
【0024】
本発明に係る加熱装置において、前記加熱対象物が断熱性部材の内部に配されることが好ましい。
【0025】
この加熱装置によると、断熱性部材があることによって、加熱対象物が発するジュール熱が断熱性部材の外部に流出することを抑制できるため、一次回路側の各部材をはじめとした二次回路の外部にある部材に加え、二次回路側の各部材(二次磁性コア及び二次側共振用コンデンサ)を温めるために加熱対象物が発するジュール熱が浪費されることを抑えられる。
【0026】
本発明に係る加熱装置において、前記加熱対象物の形状がリング状、パイプ状又はケーブル状であり、前記加熱対象物がループ状に配されることが好ましい。
【0027】
リング状、パイプ状又はケーブル状の加熱対象物をループ状に配すること等によって、加熱対象物が短絡された電気的回路を形成する。したがって、二次磁性コアの変動磁場が電磁誘導の法則によって、加熱対象物内に誘導電流を発生可能である。
【0028】
本発明に係る加熱装置において、前記二次回路がリング状容器をさらに有することも好ましい。この場合、前記加熱対象物は、導電性の液体又は導電性の粉末であり、前記リング状容器は、前記二次磁性コアの周囲にリング状に設けられ、内部に前記加熱対象物を収容可能に構成されることが好ましい。
【0029】
リング状容器に液体又は粉末の加熱対象物を収容することで、加熱対象物が短絡された電気的回路を形成する。したがって、二次磁性コアの変動磁場が電磁誘導の法則によって、加熱対象物内に誘導電流を発生させる。
【0030】
本発明に係る加熱装置は、前記加熱対象物の温度を直接的に又は間接的に計測する温度計測手段と、前記温度計測手段によって計測された温度に基づいて前記給電コイルへの給電量を調整する給電量調整手段とをさらに備えることが好ましい。
【0031】
この加熱装置によると、加熱対象物の温度を直接的に又は間接的に計測し、この計測の結果に基づいて、給電コイルに給電する給電元(電源等)の電流又は位相を制御できるため、さらに効率的な電力伝送と加熱対象物の加熱処理を行うことができる。
【0032】
加熱対象物の温度を直接的に計測する温度計測手段としては、温度センサ等が挙げられる。また、加熱対象物の温度を間接的に計測する温度計測手段としては、給電コイルに接続された電流計等が挙げられる。当該電流計を用いて給電コイルにかかる電気抵抗の変化を算出し、算出結果から温度変化を求めることができる。
【0033】
また、加熱装置が温度計測手段を備えることにより、加熱対象物の温度を一定以下に保つ、一定範囲内に保つ、あるいは温度の上昇速度を一定範囲内に維持する等、安定した加熱処理が可能となる。これにより、金属に対する焼きなまし、焼戻し、浸炭処理等も可能となる。
【0034】
本発明に係る加熱装置は、前記一次磁性コアの磁極面積が前記給電コイルの断面積より大きく、前記二次磁性コアの磁極面積が前記給電コイルの断面積より大きいことが好ましい。
【0035】
一次磁性コアの磁極面積が給電コイルの断面積より大きいことから、一次磁性コアから出る第1磁束ループを減少させる。また、二次磁性コアの磁極面積が給電コイルの断面積より大きいことから、二次磁性コアから出る第2磁束ループを減少させる。これら第1磁束ループ及び第2磁束ループの減少は、一次磁性コアと二次磁性コアとの磁界結合を強める。したがって、一次回路側の給電コイルと二次回路側の加熱対象物との間の結合係数kを理想的な値である1に近づけることができ、加熱対象物への給電効率をよりいっそう高められる。
【0036】
本発明に係る加熱装置は、前記給電コイルと電気的に接続された可変変圧器を備えることも好ましい。
【0037】
前記可変変圧器により、加熱対象物の電気的特性に応じた周波数選択が可能となり、磁界共鳴条件の達成を容易にする。また、前記可変変圧器は、前記温度計測手段と組み合わせることにより、加熱対象物の電気的特性が加熱に伴って変化する場合の、前記給電コイルに供給される交流電流の周波数変更をも可能とする。この周波数変更によって、加熱に伴い加熱対象物の電気的特性が変化しても磁界共鳴条件が維持され、加熱対象物への給電効率をよりいっそう高められる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によると、直接通電加熱における電極の消耗の課題と、高周波誘導加熱における高周波電磁波の課題との両方を解決でき、高周波誘導加熱及び低周波誘導加熱における漏れ磁束によるエネルギー損失の課題も解決でき、加熱対象物が発する熱が磁性コアや加熱装置全体を温めるために浪費されることもない、低周波で動作する磁界共鳴を用いた加熱装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本実施形態に係る加熱装置1を説明するための概略模式図である。
図2】本実施形態の第1の変形例に係る加熱装置1’を説明するための概略模式図である。
図3】本実施形態の第2の変形例に係る加熱装置1’’を説明するための概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0041】
<加熱装置1>
図1は、本実施形態に係る加熱装置1を説明するための概略模式図である。加熱装置1は、少なくとも、一次回路10と、二次回路20と、二次回路20を囲むことで一次回路10と二次回路20との間を隔てる断熱壁30とを備える。
【0042】
〔一次回路10〕
一次回路10は、少なくとも、一次磁性コア11と、給電コイル12とを有する。
【0043】
[一次磁性コア11]
一次磁性コア11は、磁性体であれば特に限定されない。給電コイル12が発生させる磁界の変動に沿って磁化し、かつ保磁力が磁場の変動を妨げないよう、一次磁性コア11は、硬質磁性体に比べて、透磁率が高く、保磁力が低い、軟質磁性体であることが好ましい。
【0044】
本実施形態において、硬質磁性体とは、いわゆる磁石をいい、保磁力が大きく永久磁石として用いられる物質をいう。それに対し、軟質磁性体とは、磁石にくっつく材料をいい、外部の磁界を取り除くと速やかに磁気がなくなり、元の状態に戻る物質をいう。
【0045】
一次磁性コア11の具体例として、純鉄やケイ素鋼やステンレス鋼等が挙げられるが、渦電流によるエネルギー損失をより減らすために、純鉄やケイ素鋼やステンレス鋼より鉄損が小さい、鉄酸化物系フェライト、コバルト基アモルファス、センダスト、パーマロイ等を用いても良い。
【0046】
中でも、珪素と鉄を原料とするため鉄酸化物フェライト等より比較的に安価で、かつ、純鉄より透磁率が高いことから、一次磁性コア11は、ケイ素鋼であることが望ましい。
【0047】
一次磁性コア11から出る第1磁束を、二次磁性コア21へと伝えるために、一次磁性コア11の形状は、磁性体材料をコの字型に折り曲げて、後述する二次磁性コア21に対向させた形状であることが好ましい。対向させることで一次磁性コア11から出る第1磁束ループを減少させることができる。
【0048】
また、給電コイル12に沿った第1磁束の発生効率を高めるために、磁性体材料を、特定の方向に対して磁化されやすい、方向性電磁鋼板として加工し、磁化されやすい方向と給電コイル12が発生させる磁界の方向をそろえることもまた好ましい。
【0049】
[給電コイル12]
給電コイル12は、一次磁性コア11の周囲に配され、動作周波数が400Hz以下の交流電流を受電するコイル形状の導電体より成る。この受電により、給電コイル12の略中央に配される一次磁性コア11に変動磁場が発生する。そして、変動磁場は、一次磁性コア11から、二次回路20の二次磁性コア21に到達する。
【0050】
給電コイル12は、交流電流を受電して変動磁場を発生させるコイル形状の導電体であれば良く、特に材料及び細部の構造を限定されない。
【0051】
給電コイル12での受電に用いられる交流電流の動作周波数は400Hz以下である。動作周波数400Hzを超えると、一次磁性コア11、及び二次磁性コア21をそれぞれケイ素鋼板で構成した場合の伝送効率が急激に低下するため、好ましくない。
【0052】
動作周波数は、300Hz以下であることがより好ましく、200Hz以下であることがさらに好ましく、100Hz以下であることがよりさらに好ましい。そして、商用電源を利用できることから、動作周波数は、50Hz又は60Hzであることが特に好ましい。
【0053】
本発明に係る加熱装置1によると、高周波帯の交流電流を利用することなく、ジュール熱で加熱対象物22を内部から加熱できるため、高周波誘導加熱における諸課題(作業員への高周波の曝露、周辺機器へのノイズ混入、設置に際しての要届出)を解決できる。
【0054】
なお、動作周波数の下限は特に限定されないが、より低い動作周波数での好適な加熱にはより大容量のキャパシタンスを必要とすることから、動作周波数は、5Hz以上であることが好ましく、10Hz以上であることがより好ましい。
【0055】
[一次側共振用コンデンサ13]
必須の構成ではないが、一次回路10は、一次側共振用コンデンサ13を備えることが好ましい。一次側共振用コンデンサ13は、一次回路10のリアクタンスを減少させ、それによって一次磁性コア11と二次磁性コア21を結合する主磁束を強める機能を有する。主磁束が強まることで、二次回路20における電磁誘導が強まり、加熱対象物22への給電効率をよりいっそう高められる。
【0056】
[可変変圧器16]
必須の構成ではないが、一次回路10は、可変変圧器16を備えることが好ましい。可変変圧器16は、加熱対象物22の電気的特性に応じた周波数選択を可能とすることから、磁界共鳴条件の達成を容易にする。また、可変変圧器16は、温度計測手段25と組み合わせることにより、加熱対象物22の電気的特性が加熱に伴って変化する場合の、給電コイル12に供給される交流電流の周波数変更を可能とする。この周波数変更によって、加熱に伴い加熱対象物22の電気的特性が変化しても磁界共鳴条件が維持され、加熱対象物22への給電効率をよりいっそう高められる。
【0057】
〔二次回路20〕
二次回路20は、少なくとも、二次磁性コア21と、加熱対象物22と、二次側共振用コンデンサ23とを備える。
【0058】
[二次磁性コア21]
二次磁性コア21は、一次磁性コア11と磁界共鳴によって結合される。二次磁性コア21は、一次磁性コア11と同様に、磁性体であれば特に限定されない。給電コイル12が発生させる磁界の変動に沿って磁化し、かつ、保磁力が磁場の変動を妨げないよう、二次磁性コア21は、硬質磁性体より、透磁率が高く、保磁力が低い、軟質磁性体であることが好ましい。二次磁性コア21の材料は、これらの条件を満たすものであれば、特に限定されず、代表的なものとして、純鉄やケイ素鋼やステンレス鋼等が挙げられるが、渦電流によるエネルギー損失をより減らすために、純鉄やケイ素鋼やステンレス鋼より鉄損が小さい、鉄酸化物系フェライト、コバルト基アモルファス、センダスト、パーマロイ等を用いても良い。
【0059】
二次磁性コア21は、一次磁性コア11で発生し、断熱壁30を越えて到達した変動磁場を受け取る。変動磁場をより効率よく受け取るために、磁性体材料を、特定の方向に対して磁化されやすい、方向性電磁鋼板として加工し、磁化されやすい方向と、加熱対象物22が形成するループの垂直方向をそろえることもまた好ましい。
【0060】
二次磁性コア21は、加熱処理に伴ってその温度が上昇し、酸化が進むことから、耐食性を備えた軟質磁性体であるフェライト系ステンレス鋼であることもまた好ましい。
【0061】
[加熱対象物22]
加熱対象物22は、二次磁性コア21の周囲に短絡してループ状に配される導電体である。リング状、パイプ状又はケーブル状の加熱対象物22をループ状に配すること等によって、加熱対象物22が短絡された電気的回路を形成する。したがって、二次磁性コア21の変動磁場が電磁誘導の法則によって、加熱対象物22内に誘導電流を発生可能である。二次回路20にて、二次磁性コア21に到達した変動磁場は、電磁誘導の法則により、二次磁性コア21の周囲に短絡してループ状に配された導電性の加熱対象物22の内部に誘導電流を発生させる。加熱対象物22は内部抵抗を有するため、加熱対象物22の内部に誘導電流が発生すると、加熱対象物22の内部にジュール熱が加えられる。
【0062】
加熱対象物22の材質は導電体であれば、特に限定されず、鉄、非鉄金属、合金、導電性高分子等が挙げられる。加熱対象物22の形状は二次磁性コア21の周囲に短絡してループ状に配置可能であれば良く、歯車などリング状のもの、鋼管などパイプ状のもの、鋼線などケーブル状のものが考えられるが、その材質及び形状はこれらに限定されない。
【0063】
リング状、パイプ状又はケーブル状の加熱対象物22をループ状に配すること等によって、加熱対象物22が短絡された電気的回路を形成する。したがって、二次磁性コア21の変動磁場が電磁誘導の法則によって、加熱対象物22内に誘導電流を発生可能である。
【0064】
本発明に係る加熱装置1によると、加熱対象に電極を接触させる必要がないために、直接通電加熱における電極の消耗の課題と、電極の消耗に起因する諸課題(ランニングコストの押し上げ、電極の消耗物の混入リスク軽減)とを解決できる。
【0065】
[二次側共振用コンデンサ23]
二次側共振用コンデンサ23は、加熱対象物22と電気的に接続される。二次側共振用コンデンサ23は、磁界共鳴を達成するに過不足ない静電容量を備えていれば良く、その構造や製法を問わない。
【0066】
非特許文献1(“磁界共振結合における効率と磁束”,日本AEM学会誌,vol.24,No.4,pp.317-322(2016))によると、加熱装置の共振周波数をω、一次回路10のレジスタンス、インダクタンス、キャパシタンスをそれぞれr、L、C、二次回路20のレジスタンス、インダクタンス、キャパシタンスをそれぞれr、L、C、負荷をR、励磁インダクタンスをL、結合係数をkとすると、電力伝送の効率ηは式(1)によって求められる。
η=(ωL/[{(r+R+(ωL-1/ωC}r
+(ωL+(ωL] ・・・(1)
【0067】
負荷Rが式(2)の示す最適負荷RLoptと等しいとき、式(1)は理想的な磁界共鳴条件にある。
Lopt={r +(r/r)(ωL+(ωL-1/ωC1/2 ・・・(2)
【0068】
また、このときC、ω、Lは式(3)を満たす。
=1/(Lω) ・・・(3)
【0069】
すなわち、二次側共振用コンデンサ23は、二次回路20のキャパシタンスをC=1/(Lω)とする静電容量を備えることが好ましい。
【0070】
本発明に係る加熱装置1によると、二次回路20の加熱対象物22に、二次側共振用コンデンサ23が電気的に接続される。そして、二次側共振用コンデンサ23が持つキャパシタンス(静電容量)によって磁界共鳴条件を達成できるため、本発明に係る加熱装置1では、漏れ磁束によるエネルギー効率の低下を解決できる。
【0071】
[断熱性部材24]
必須の構成ではないが、二次回路20は、加熱対象物22の周囲に配する断熱性部材24を備えることが好ましい。断熱性部材24があることによって、加熱対象物22が発するジュール熱が断熱性部材24の外部に流出することを抑制できるため、一次回路10側の各部材をはじめとした二次回路20の外部にある部材に加え、二次回路20側の各部材(二次磁性コア21及び二次側共振用コンデンサ23)を温めるために加熱対象物22が発するジュール熱が浪費されることを抑えられる。
【0072】
断熱性部材24は、磁界共鳴の磁場に対して透過性を示す材料であればエネルギー損失となる渦電流の発生を抑えられ、好ましい。断熱性部材24の材料は断熱性があり、前記鉄損を抑えるものであれば、特に限定されず、グラスウール、セラミックファイバー、ガラスクロス、シリカクロス、バサルトファイバー、ロックウール、コンクリート、アルミナセメント等が挙げられる。また、前記材料を組み合わせた複合部材による断熱性部材24の構成も、可能である。
【0073】
[温度計測手段25]
二次回路20は、加熱対象物22の温度を直接的に又は間接的に計測する温度計測手段25と、温度計測手段25によって計測された温度に基づいて給電コイル12への給電量を調整する給電量調整手段とをさらに備えることが好ましい。
【0074】
この加熱装置1によると、加熱対象物22の温度を直接的に又は間接的に計測し、この計測の結果に基づいて、給電コイル12に給電する給電元(電源等)の電流又は位相を制御できるため、さらに効率的な電力伝送と加熱対象物22の加熱処理を行うことができる。
【0075】
温度計測手段25は、加熱対象物22の温度を計測可能であれば、特に限定されない。直接的な温度計測手段25として、熱電対、放射温度計、及びこれらを組み合わせたものが挙げられる。間接的な温度計測手段25として、加熱対象物22と電気的に接続される電流計を用いて抵抗の温度変化を計る手法等が挙げられる。しかし、本発明の温度計測手段25は、これらに限定されない。
【0076】
温度計測手段25により、加熱対象物22の温度を一定以下あるいは一定範囲内に保つ、温度の上昇速度を一定範囲内に維持する等の、加熱処理が可能となる。これにより、金属に対する焼きなまし、焼戻し、浸炭処理等も可能となる。
【0077】
〔断熱壁30〕
加熱装置1は、断熱壁30を備える。断熱壁30は、二次回路20を囲むことで一次回路10と二次回路20との間を隔てるように構成される。
【0078】
断熱壁30は、磁界共鳴の磁場に対して透過性を示す。磁場に対して透過性を示さない場合、断熱壁30内部にエネルギー損失となる渦電流が発生するため、好ましくない。
【0079】
断熱壁30は、磁界共鳴の磁場に対して透過性を示す材料であれば、特に限定されず、グラスウール、セラミックファイバー、ガラスクロス、シリカクロス、バサルトファイバー、ロックウール、コンクリート、アルミナセメント等が挙げられる。また、これらの材料を2種類以上組み合わせた複合部材による断熱壁30の構成も、可能である。このように構成された断熱壁30は、一次回路10と二次回路20との間を隔てながらも、磁界共鳴の磁場に対して透過性を示すため、一次磁性コア11と二次磁性コア12との磁気結合は、阻害されない。一次磁性コア11で発生した変動磁場は、磁場透過性の断熱壁30を通って二次磁性コア21に到達可能である。
【0080】
また、断熱壁30は、二次回路20を囲んで構成される。断熱壁30が二次回路20を囲むことによって、加熱対象物22が発するジュール熱が二次回路20の外部に流出することを抑制できる。したがって、本発明に係る加熱装置1によると、加熱対象物22が発するジュール熱が一次回路10側の各部材(一次磁性コア11、給電コイル12)をはじめとした二次回路20の外部にある加熱装置1全体を温めるために浪費されることを抑えられる。
【0081】
本発明に係る加熱装置1は一次回路10と二次回路20を磁界共鳴させることで動作する。このとき一次回路10と二次回路20との間を隔てる断熱壁30は、磁界共鳴の磁場に対して透過性を示すため、一次磁性コア11と二次磁性コア21との磁気結合は、阻害されない。一次磁性コア11で発生した変動磁場は、磁場透過性の断熱壁30を通って二次磁性コア21に到達可能である。
【0082】
<加熱装置1の使用方法>
以下、本実施形態に係る加熱装置1の使用方法を説明する。
【0083】
電源を入れると一次回路10の給電コイル12が交流電流を受電し、そうすると、電磁誘導の原理によって給電コイル12の周囲に第1磁界が発生し、発生した第1磁界が一次磁性コア11を磁化して第1磁束を発生させ、その第1磁束が変動磁場に対して透過性を示す断熱壁30を越えて二次磁性コア21に到達し、この第1磁束が二次磁性コア21を磁化し、二次磁性コア21周囲に変動磁場を発生させる。
【0084】
この変動磁場が電磁誘導の原理によって二次磁性コア21周囲にループ状に配された加熱対象物22内部に直接的に誘導電流を発生させ、発生した誘導電流が加熱対象物22内部にジュール熱を生じさせ、加熱対象物22を直接的に内部から加熱する。
【0085】
このとき、加熱対象物22に接続された二次側共振用コンデンサ23の存在によって、一次回路10と二次回路20は磁界共鳴の状態となり、給電コイル12が受電した交流電流が、加熱対象物22へと、磁界共鳴でない場合より遥かに高い効率で伝送される。加熱対象物22内部に発生したジュール熱は、耐熱性部材24の存在によって二次回路20全体を温めることなく加熱対象物22の加熱に用いられ、また、耐熱性部材24の外側に流出したジュール熱の一部も、断熱壁30の存在によって一次回路10を温めることなく加熱対象物22を加熱する。
【0086】
加熱対象物22を、加熱対象物22の温度の上限と下限とによって規定された温度範囲内で加熱処理を行う場合には、加熱対象物22の温度が上限に近づいたこと、あるいは、下限に近づいたことを温度計測手段25が検知する。温度計測手段25が、加熱対象物22の温度が上限に近づいたことが検知した場合には、給電コイル12に供給する交流電流の電流あるいは位相を調節して、伝送される電流を減らし、加熱対象物22の温度が、規定された温度範囲内に留まるようにする。温度計測手段25が、加熱対象物22の温度が下限に近づいたことが検知した場合には、給電コイル12に供給する交流電流の電流あるいは位相を調節して、伝送される電流を増やし、加熱対象物22の温度が、規定された温度範囲内に留まるようにする。
【0087】
<本実施形態の第1の変形例に係る加熱装置1’>
図2は、本実施形態の第1の変形例に係る加熱装置1’を説明するための概略模式図である。加熱装置1’は、二次回路20’の構成が一部異なるほかは、本実施形態で説明した加熱装置1と同じ構成である。以下、加熱装置1’に関し、図1に示した加熱装置1とは異なる特徴について説明する。
【0088】
〔二次回路20’〕
二次回路20’において、加熱対象物22’は、固体に限るものではなく、液体又は粉末であってもよい。このとき、二次回路20’は、リング状容器24’を備え、加熱対象物22’は、リング状容器24’の内部に収容される。
【0089】
[加熱対象物22’]
加熱対象物22’は、導電性の液体又は粉末であれば、特に限定されず、鉄粉、銅粉などの金属粉末、ポリアセチレン、ポリチオフェンなど導電性ポリマーの粉末、ポリビニルアルコール水溶液など金属導電性の水溶液、食品等が挙げられる。
【0090】
[リング状容器24’]
リング状容器24’は、二次磁性コア21の周囲に配される。リング状容器24’は、液体又は粉末の加熱対象物22’を収容可能に構成される。リング状容器24’の材料は加熱対象物22’を収容可能であれば、特に限定されず、ガラス、アルミナ磁器、ムライト磁器、その他セラミック等が挙げられる。このリング状容器24’は、断熱性であっても良い。またこのリング状容器24’は、開閉可能な蓋によって覆われていても良い。
【0091】
リング状容器24’に液体又は粉末の加熱対象物22’を収容することで、液体又は粉末の加熱対象物22’が短絡された電気的回路を形成する。したがって、二次磁性コア21の変動磁場が電磁誘導の法則によって、加熱対象物22’内に誘導電流を発生させる。加熱対象物22’は、内部抵抗を有するため、加熱対象物22’の内部に誘導電流が発生すると、加熱対象物22’の内部にジュール熱が加えられる。
【0092】
<本実施形態の第2の変形例に係る加熱装置1’’>
図3は、本実施形態の第2の変形例に係る加熱装置1’’を説明するための概略模式図である。加熱装置1’’は、一次回路10’’における一次磁性コア11’’の形状と、二次回路20’’における二次磁性コア21’’の形状とが異なるほかは、本実施形態で説明した加熱装置1と同じ構成である。以下、加熱装置1’’に関し、図1に示した加熱装置1とは異なる特徴について説明する。
【0093】
〔一次回路10’’〕
一次回路10’’は、一次磁性コア11’’を備える。
【0094】
〔一次磁性コア11’’〕
本変形例における一次磁性コア11’’は、一次磁性コア11と同様の材料で構成され、磁極面積が給電コイル12の断面積より大きい。一次磁性コア11’’の磁極面積が給電コイル12の断面積より大きいことから、一次磁性コア11’’から出る第1磁束ループを減少させる。
【0095】
第1磁束ループを減少させる観点から、一次磁性コア11’’の磁極面積は、給電コイル12の断面積に比べて大きい方が好ましく、一次磁性コア11’’の磁極面積は、給電コイル12の断面積の2倍以上であることがより好ましく、3倍以上であることがさらに好ましい。
【0096】
他方、第1磁束ループの減少量に対する一次磁性コア11’’の重量増加が著しくなることから、一次磁性コア11’’の磁極面積の上限は、給電コイル12の断面積の100倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましい。
【0097】
〔二次回路20’’〕
二次回路20’’は、二次磁性コア21’’を備える。
【0098】
〔二次磁性コア21’’〕
本変形例における二次磁性コア21’’は、二次磁性コア21と同様の材料で構成され、磁極面積が給電コイル12の断面積より大きく。二次磁性コア21’’の磁極面積が給電コイル12の断面積より大きいことから、二次磁性コア21’’から出る第2磁束ループを減少させる。
【0099】
第2磁束ループを減少させる観点から、二次磁性コア21’’の磁極面積は、給電コイル12の断面積に比べて大きい方が好ましく、二次磁性コア21’’の磁極面積は、給電コイル12の断面積の2倍以上であることがより好ましく、3倍以上であることがさらに好ましい。
【0100】
他方、第2磁束ループの減少量に対する二次磁性コア21’’の重量増加が著しくなることから、二次磁性コア21’’の磁極面積の上限は、給電コイル12の断面積の100倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましい。
【0101】
一次磁性コア11’’、及び、二次磁性コア21’’の磁極形状が著しく非対称であると、磁極形状が対称である場合より、第1磁束ループ、及び、第2磁束ループが増大する。第1磁束ループ、及び、第2磁束ループを減少させるために、一次磁性コア11’’、及び、二次磁性コア21’’の磁極形状は、対称であることが好ましい。
【0102】
非対称な磁極形状による第1磁束ループ、及び、第2磁束ループの増大を避けるために、一次磁性コア11’’の磁極面積と二次磁性コア21’’の磁極面積とが略等しいことが好ましい。具体的には、一次磁性コア11’’の磁極面積が、二次磁性コア21’’の磁極面積に対して0.7倍以上であることが好ましく、0.8倍以上であることがより好ましく、0.9倍以上であることがさらに好ましく、0.95倍以上であることが特に好ましい。
【0103】
また、一次磁性コア11’’の磁極面積が、二次磁性コア21’’の磁極面積に対して1.3倍以下であることが好ましく、1.2倍以下であることがより好ましく、1.1倍以下であることがさらに好ましく、1.05倍以下であることが特に好ましい。
【0104】
本変形例において、第1磁束ループ及び第2磁束ループの減少は、一次磁性コア11’’と二次磁性コア21’’との磁界結合を強める。したがって、一次回路側の給電コイル12と二次回路側の加熱対象物22との間の結合係数kを理想的な値である1に近づけることができ、加熱対象物22への給電効率をよりいっそう高められる。
【0105】
また、本変形例の加熱装置1’’は、第一変形例で示したものと同様のリング状容器24’を備えることができる。これによって第一変形例の場合と同様に、液体又は粉末である加熱対象物22’を加熱することが可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 加熱装置
10 一次回路
11、11’’ 一次磁性コア
12 給電コイル
13 一次側共振用コンデンサ
16 可変変圧器
20 二次回路
21、21’’ 二次磁性コア
22、22’ 加熱対象物
23 二次側共振用コンデンサ
24 断熱性部材
24’ リング状容器
25 温度計測手段
30 断熱壁

図1
図2
図3