(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】印判
(51)【国際特許分類】
B41K 1/32 20060101AFI20230619BHJP
B41K 1/54 20060101ALI20230619BHJP
B41K 1/50 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
B41K1/32 Z
B41K1/54 C
B41K1/50 Z
(21)【出願番号】P 2019145962
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-06-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示による公開(1回目) 開催日 平成30年10月21日(2018.10.21) 開催名 Asia Week 2018(開催場所:立命館大学 大阪いばらきキャンパス) 展示による公開(2回目) 開催日 令和1年5月19日(2019.05.19) 開催名 いばらき×立命館DAY 2019(開催場所:立命館大学 大阪いばらきキャンパス) 販売による公開 販売日 令和1年7月9日(2019.07.09) 販売場所 つくば宇宙センター
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】三矢 貴幸
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-087853(JP,A)
【文献】特開2009-214446(JP,A)
【文献】特開2017-132207(JP,A)
【文献】特開2019-126994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41K 1/32
B41K 1/54
B41K 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字体を有する枠体と、インキ吸蔵体を有し前記印字体の上部にセットされるカートリッジとを備えた印判であって、該カートリッジの側面に、前記印字体とインキ吸蔵体とが離間した状態で保持するスペーサを着脱自在に配置したことを特徴とする印判。
【請求項2】
スペーサは、スペーサ本体部と、このスペーサ本体部の両側から前方に向けて突出する一対の腕部と、後方に形成した操作片部を有している請求項1に記載の印判。
【請求項3】
枠体はカートリッジに対して、印字体とインキ吸蔵体とが離間した状態と密接した状態の二段階で係止可能な構造である請求項1または2に記載の印判。
【請求項4】
カートリッジと枠体に設けた係止部に、スペーサの上端および下端が係止することで前記枠体の下動を防止し、印字体とカートリッジとを離間した状態で保持する構造とした請求項1~3のいずれかに記載の印判。
【請求項5】
スペーサは、カートリッジ、枠体のいずれかに着脱自在に嵌合されていることを特徴とする請求項1~4
のいずれかに記載の印判。
【請求項6】
スペーサは、カートリッジに嵌合しており、該カートリッジへの嵌合力のみで枠体の下動を防止し、印字体とカートリッジとを離間した状態で保持する構造とした請求項5に記載の印判。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送中等において印字体とインキ吸蔵体とが不用意に接触するのを確実に防止することができる印判に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、印字体として多孔質印材にサーマルヘッドを利用して所望の捺印パターンの捺印部を形成するようにした多孔質印判が知られている。このような印判の場合、捺印パターンを形成する前の印字体にはインキが含浸していない必要がある。このため、印字体とインキ吸蔵体とを離間した状態で商品を出荷し、店頭に設置されたサーマルヘッド式の印面加工機により印字体に所望のパターンの印面を形成し、その後、印字体とインキ吸蔵体とを密着させて印字体にインキを供給し、印判として使用に供されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の印判では、搬送中や印面加工機へのセット工程等の取扱い時において、不用意に力が加わり印字体とインキ吸蔵体とが密着して、印字体にインキが含浸してしまう場合があった。この場合は、すでにインキを含浸した印字体に印面加工機により印面加工することはできず、不良品を発生させることになるという問題があった。
【0004】
そこで、搬送中等の取扱い時において不用意に力がかかっても、印字体とインキ吸蔵体とが接触して印字体にインキが含浸するのを確実に防止することができるインキ含浸防止機能付きの新たな印判の開発が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような従来の問題点を解決して、搬送中等の取扱い時において印字体とインキ吸蔵体とが不用意に接触して印字体にインキが含浸するのを確実に防止し、印面加工機による印字体の印面加工を円滑に行うことができる印判を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の印判は、印字体を有する枠体と、インキ吸蔵体を有し前記印字体の上部にセットされるカートリッジとを備えた印判であって、該カートリッジの側面に、前記印字体とインキ吸蔵体とが離間した状態で保持するスペーサを着脱自在に配置したことを特徴とするものであり、これを請求項1に係る発明とする。
【0008】
好ましい実施形態によれば、前記スペーサは、スペーサ本体部と、このスペーサ本体部の両側から前方に向けて突出する一対の腕部と、後方に形成した操作片部を有しているものが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【0009】
また、その他の好ましい実施形態によれば、前記枠体はカートリッジに対して、印字体とインキ吸蔵体とが離間した状態と密接した状態の二段階で係止可能な構造とするのが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。
【0010】
また、その他の好ましい実施形態によれば、前記カートリッジと枠体に設けた係止部に、スペーサの上端および下端が係止することで前記枠体の下動を防止し、印字体とカートリッジとを離間した状態で保持する構造とするのが好ましく、これを請求項4に係る発明とする。
【0011】
また、その他の好ましい実施形態によれば、スペーサは、カートリッジ、枠体のいずれかに着脱自在に嵌合されている構造とするのが好ましく、これを請求5に係る発明とする。
【0012】
また、その他の好ましい実施形態によれば、前記スペーサは、カートリッジに嵌合しており、該カートリッジへの嵌合力のみで枠体の下動を防止し、印字体とカートリッジとを離間した状態で保持する構造とするのが好ましく、これを請求項6に係る発明とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、印字体を有する枠体と、インキ吸蔵体を有し前記印字体の上部にセットされるカートリッジとを備えた印判であって、該カートリッジの側面に、前記印字体とインキ吸蔵体とが離間した状態で保持するスペーサを着脱自在に配置したので、離間状態が保持されている搬送中や印面加工機へのセット工程等の取扱い時においては、不用意に力が加わっても前記スペーサが印字体とインキ吸蔵体とが密着するのを防止し、印字体にインキが含浸するのを確実に防止する。これにより、印字体の印面加工をスムースに行うことができ、その後は前記スペーサを引き抜いて印字体とインキ吸蔵体とを密着させ、印判としての使用に供することができる。
【0014】
また、請求項2に係る発明では、前記スペーサは、スペーサ本体部と、このスペーサ本体部の両側から前方に向けて突出する一対の腕部と、後方に形成した操作片部を有しているものとしたので、カートリッジの側面に対し前記一対の腕部を差し込むだけで、取り付け及び引き抜き操作を簡単かつ確実に行うことができる。
【0015】
また、請求項3に係る発明では、前記枠体はカートリッジに対して、印字体とインキ吸蔵体とが離間した状態と密接した状態の二段階で係止可能な構造としたので、印字体とインキ吸蔵体とを二段階式に節度感よく係止することができる。この結果、印字体がインキ吸蔵体と離間している状態でもカートリッジから不用意に外れることがなく、流通時において前記枠カートリッジが体から分離するのを防止することができる。一方、インキ吸蔵体と密接した後はその状態を確実に保持して安定的にインキの供給を行うことができる。
【0016】
また、請求項4に係る発明では、前記カートリッジと枠体に設けた係止部に、スペーサの上端および下端が係止することで前記枠体の下動を防止し、印字体とカートリッジとを離間した状態で保持する構造としたので、シンプルな構造で確実に印字体とカートリッジの離間状態を保持することができる。
【0017】
また、請求項5に係る発明では、スペーサは、カートリッジ、枠体のいずれかに着脱自在に嵌合されているものとしたので、カートリッジ、枠体のいずれかからスペーサが不用意に外れる事が無く、前記スペーサが印字体とインキ吸蔵体とが密着するのを確実に防止することができる。
【0018】
また、請求項6に係る発明では、前記スペーサは、カートリッジに嵌合しており、該カートリッジへの嵌合力のみで枠体の下動を防止し、印字体とカートリッジとを離間した状態で保持する構造としたので、前記スペーサ単独でカートリッジの下動を防止することができ、印判のデザイン上の制約を極力小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)は本発明の実施の形態を示す上側からの斜視図、(b)は正面図、(c)は下側からの斜視図である。
【
図4】(a)はスペーサを示す正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図である。
【
図6】(a)は印字体とインキ吸蔵体とが離間した状態を示す上側からの斜視図、(b)は正面図、(c)は下側からの斜視図である。
【
図8】(a)は印字体とインキ吸蔵体とが密接した状態を示す上側からの斜視図、(b)は正面図、(c)は下側からの斜視図である。
【
図12】本発明に係る印判をケースに収納した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は、本発明に係る印判を示し、(a)は上側からの斜視図、(b)は正面図、(c)は下側からの斜視図である。また、
図2は
図1(c)におけるA-A断面図、
図3はB-B断面図である。なお、市販の製品としては、
図12~
図13に示すように、把持部21とキャップ22を組み合わせた形態として流通されている。
【0021】
本発明の印判は、基本的な構造として枠体1とカートリッジ2とを備えている。前記枠体1は印字体3を有しており、またカートリッジ2はインキ吸蔵体4を有して前記印字体3の上部にセットされる構造である。ここでいう印字体3の上部とは、印判使用時における位置関係を示しており、
図1~
図11では印字体3を上向きにしているため上下の表現は逆になっているが、相対的な位置関係は同じである。
【0022】
前記印字体3は、多孔質印材にサーマルヘッドを利用して所望の捺印パターンの捺印部を形成するようにしたものであり、捺印パターンを形成する前の印字体3にはインキが含浸していないことが要求されている。このため、印字体3とインキ吸蔵体4とを離間した状態で出荷・搬送し、店頭やイベント会場等に設置してあるサーマルヘッド式の印面加工機により印字体3に所望のパターンの印面を形成する。その後、印字体3とインキ吸蔵体4とを密着させて印字体3にインキを供給し、連続捺印が可能な印判として使用に供されるものである。なお、この密着は、枠体1をカートリッジ2側へ押し込むこと(逆でもよい)で容易に行うことができる。
【0023】
前記カートリッジ2の側面2aには、前記印字体3とインキ吸蔵体4とを離間した状態で保持するためのスペーサ5が着脱自在に取り付けられている。即ち、このスペーサ5は、出荷・搬送時には印字体3とインキ吸蔵体4とを離間した状態に保持し、印面加工機による印面形成後には印字体3とインキ吸蔵体4とが密接した状態に保持するものであって、カートリッジ2の側面2aに容易に着脱可能な構造となっている。
【0024】
前記スペーサ5は、
図4~
図5に示されるように、スペーサ本体部5aと、このスペーサ本体部5aの両側から前方に向けて突出する一対の腕部5b、5bと、後方に形成した操作片部5cを有している。また図示のものでは、腕部5bの内壁に鍔部5dが突設されており、この鍔部5dに前記枠体1の端部を当接できる構造となっている。更に、腕部5bの先端部には内側に向けたフック部5eが形成されており、腕部5b、5bにより前記カートリッジ2を節度感よく挟持し、嵌合するように構成されている。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態を示すもので、前記スペーサ5をカートリッジ2の側面2aに嵌合し、取り付けた状態を示している。また、
図2と
図3は、
図1のA-A断面図とB-B断面図である。
図3から明らかなように、スペーサ5の一対の腕部5b、5bはカートリッジ2の側面を挟持しており、かつ腕部5bの下端がカートリッジ2の段部2bに当接した状態となっている。また、枠体1の下端は係止部として腕部5bの内壁に突設した鍔部5dに当接した状態となっており、この結果、印字体3とインキ吸蔵体4とは離間した状態に保持され、印字体3にインキが含浸することはない。また、不用意に力が加わってもスペーサ5が印字体3とインキ吸蔵体4との密着を確実に防止することとなる。前記スペーサ5は前記カートリッジ2の側面2aに嵌合する以外に、前記枠体1の側面に嵌合するように構成してもよく、いずれの場合も、前記印字体3と前記インキ吸蔵体4とが離間した状態で保持することができるように、前記スペーサ5が前記カートリッジ2の側面2aに配置されていれば機能上の問題はない。また、前記スペーサ5は前記カートリッジ或いは前記枠体1に嵌合されていなくても機能上の問題はない。
一方、スペーサ5の操作片部5cを指で摘まんで引き抜けば簡単にカートリッジ2から外すことができ、この後、枠体1をカートリッジ2側へ押し込めば、印字体3とインキ吸蔵体4とを容易に密接させることができる。以後は、インキの供給が開始されて連続捺印が可能となる。
【0026】
更に、前記枠体1はカートリッジ2に対して、印字体3とインキ吸蔵体4とが離間した状態と密接した状態の二段階で係止可能な構造となっている。
図6は、前記印字体3とインキ吸蔵体4とが離間した状態を示す図であり、
図7は
図6のC-C断面図である。また
図8は、前記印字体3とインキ吸蔵体4とが密接した状態を示す図であり、
図9は
図8のD-D断面図である(
図6~
図9ではスペーサ5は取り付けられていない)。
【0027】
図7に示されるように、枠体1の周壁の内側端部には突起6が形成されており、カートリッジ2の側面2aの上部には第1の溝部7aが形成されていて、前記突起6と第1の溝部7aとが係合して枠体1とカートリッジ2が係止する構造となっている。この結果、印字体3とインキ吸蔵体4とが離間した状態が保持されることとなる。また、この係止関係によって、流通時等にカートリッジ2が脱落するという不具合も防止することができる。
【0028】
更に、
図9に示されるように、カートリッジ2の側面2aの下部には第2の溝部7bが形成されていて、カートリッジ2を押し下げた場合に、前記枠体1の突起6と第2の溝部7bとが係合して枠体1とカートリッジ2が係止する構造となっている。この状態では、印字体3とインキ吸蔵体4とが密接した状態が保持されることとなり、以後、インキが供給されて連続捺印が可能となる。
このように、前記枠体1はカートリッジ2に対して、二段階式に節度感よく係止可能な構造となっており、流通時も捺印時も適正な位置関係を保持することができる。
【0029】
以上に説明した他に、前記カートリッジ2の側面2aに、印字体3とインキ吸蔵体4とを離間した状態で保持するためのスペーサ5の取り付け構造としては、以下のものでもよい。
図10に示されるように、前記カートリッジ2と枠体1に設けた係止部に、スペーサ5の上端および下端が係止することで前記枠体1の下動を防止し、印字体3とインキ吸蔵体4とを離間した状態で保持する構造とすることができる。即ち、スペーサ5はシンプルな板状体であり、枠体1の下端がスペーサ5の上端に当接し、カートリッジ2の段部2bがスペーサ5の下端に当接した状態で両者間に介在しており、印字体3とインキ吸蔵体4とは離間した状態に保持されている。この結果、印字体3にインキが含浸することはなく、また、不用意に力が加わってもスペーサ5が印字体3とインキ吸蔵体4との密着を確実に防止することができる。
【0030】
また、
図11に示されるように、前記スペーサ5は、カートリッジ2への嵌合力のみで枠体1の下動を防止し、印字体3とインキ吸蔵体4とを離間した状態で保持する構造とすることができる。例えば前記スペーサ5を前記カートリッジ2に対して圧入嵌合で固定する場合、両者の間に発生する摩擦力が前記スペーサ5の保持力となり、この保持力のみで前記枠体1の下動を防止する。この実施形態は前記スペーサ単独でカートリッジの下動を防止する構造であり、カートリッジ2に段部を形成する必要がなく、印判のデザイン上の制約を極力小さくすることができる。
【0031】
以上の説明からも明らかなように、本発明はカートリッジの側面に、印字体とインキ吸蔵体とが離間した状態で保持するスペーサを着脱自在に取り付けたので、離間状態が保持されている搬送中や印面加工機へのセット工程等の取扱い時においては、不用意に力が加わっても前記スペーサが印字体とインキ吸蔵体とが密着するのを防止して、印字体にインキが含浸するのを確実に防止し、印字体の印面加工をスムースに行うことができるものである。また、その後は前記スペーサを引き抜いて印字体とインキ吸蔵体とを密着させ、印判としての連続使用に供することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 枠体
2 カートリッジ
2a 側面
2b 段部
3 印字体
4 インキ吸蔵体
5 スペーサ
5a スペーサ本体部
5b 腕部
5c 操作片部
5d 鍔部
5e フック部
6 突起
7a 第1の溝部
7b 第2の溝部
21 把持部
22 キャップ