(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】レジスト組成物及びそれを用いるパターン形成方法、並びに、化合物及び樹脂
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20230619BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20230619BHJP
C07H 13/08 20060101ALI20230619BHJP
C07D 311/62 20060101ALI20230619BHJP
C08G 85/00 20060101ALI20230619BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
G03F7/004 531
G03F7/039 601
G03F7/004 503A
G03F7/004 501
C07H13/08 CSP
C07D311/62
C08G85/00
G03F7/20 501
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2019510236
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2018013579
(87)【国際公開番号】W WO2018181882
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2017072550
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】工藤 宏人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】越後 雅敏
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-227667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/039
C07H 13/08
C07D 311/62
C08G 85/00
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの酸解離性反応基を構造中に含むタンニン及び少なくとも一つの酸解離性反応基を構造中に含むタンニン誘導体からなる群から選択されるタンニン化合物を1種以上含み、前記タンニン化合物が、下記式(0)で表される化合物を1種以上含
み、前記式(0)で表される化合物が有する下記Rの総数に対する前記酸解離性反応基の導入率が74%以上である、
レジスト組成物。
【化1】
(式(0)において、Aは各々独立して水素原子、又は下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。但し、少なくとも一つのAは、下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。)
【化2】
(式(A)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示し、前記酸解離性反応基は、置換メチル基、1-置換エチル基、1-置換-n-プロピル基、1-分岐アルキル基、シリル基、アシル基、1-置換アルコキシメチル基、環状エーテル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、並びに、下記の基からなる群より選ばれる基である。但し、少なくとも一つのRは、前記酸解離性反応基を示す。*は、式(0)との結合部を示す。)
【化3】
【請求項2】
前記式(A)におけるRが、水素原子又は前記酸解離性反応基である、請求項1に記載のレジスト組成物。
【請求項3】
前記式(0)で表される化合物は、下記式(1)で表される化合物である、請求項1
又は請求項2に記載のレジスト組成物。
【化4】
(式(1)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、前記酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、前記酸解離性反応基を示す。)
【請求項4】
溶媒をさらに含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載のレジスト組成物。
【請求項5】
酸発生剤をさらに含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載のレジスト組成物。
【請求項6】
酸拡散制御剤をさらに含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載のレジスト組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載のレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
前記レジスト膜を現像してパターンを形成する工程と、
を含むパターン形成方法。
【請求項8】
下記式(0)で表される化合物
であって、前記式(0)で表される化合物が有する下記Rの総数に対する下記酸解離性反応基の導入率が74%以上である、化合物。
【化5】
(式(0)において、Aは各々独立して水素原子、又は下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。但し、少なくとも一つのAは、下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。)
【化6】
(式(A)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示し、前記酸解離性反応基は、置換メチル基、1-置換エチル基、1-置換-n-プロピル基、1-分岐アルキル基、シリル基、アシル基、1-置換アルコキシメチル基、環状エーテル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、並びに、下記の基からなる群より選ばれる基である。但し、少なくとも一つのRは、前記酸解離性反応基を示す。*は、式(0)との結合部を示す。)
【化7】
【請求項9】
前記式(A)におけるRが、水素原子又は前記酸解離性反応基である、請求項
8に記載の化合物。
【請求項10】
下記式(1)で表される化合物
であって、前記式(1)で表される化合物が有するRの総数に対する下記酸解離性反応基の導入率が74%以上である、化合物。
【化8】
(式(1)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示し、前記酸解離性反応基は、置換メチル基、1-置換エチル基、1-置換-n-プロピル基、1-分岐アルキル基、シリル基、アシル基、1-置換アルコキシメチル基、環状エーテル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、並びに、下記の基からなる群より選ばれる基である。但し、少なくとも一つのRは、前記酸解離性反応基を示す。)
【化9】
【請求項11】
前記式(1)におけるRが、水素原子又は前記酸解離性反応基である、請求項
10に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にリソグラフィー材料として用いられる化合物又は樹脂、その化合物又は樹脂を含むレジスト組成物、及びそれを用いるパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの一般的なレジスト材料は、アモルファス薄膜を形成可能な高分子系レジスト材料である。例えば、ポリメチルメタクリレートや、酸解離性反応基を有するポリヒドロキシスチレン又はポリアルキルメタクリレート等の高分子系レジスト材料が挙げられる。そして、このような高分子系レジスト材料の溶液を基板上に塗布することによって作製したレジスト薄膜に、紫外線、遠紫外線、電子線、極端紫外線(EUV)、X線などを照射することにより、45~100nm程度のラインパターンを形成している。
【0003】
しかしながら、高分子系レジスト材料は分子量が1万~10万程度と大きく、分子量分布も広い。このため、高分子系レジスト材料を用いるリソグラフィーでは、微細パターン表面にラフネスが生じ、パターン寸法を制御することが困難となり、歩留まりが低下する。従って、従来の高分子系レジスト材料を用いるリソグラフィーでは微細化に限界がある。これまで、より微細なパターンを作製するために、種々の低分子量レジスト材料が提案されている。
【0004】
例えば、低分子量多核ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像型のネガ型感放射線性組成物(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)が提案されている。また、高耐熱性を有する低分子量レジスト材料の候補として、低分子量環状ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像型のネガ型感放射線性組成物(例えば、特許文献3及び非特許文献1)も提案されている。更に、レジスト材料のベース化合物として、ポリフェノール化合物が低分子量ながら高耐熱性を付与でき、レジストパターンの解像性やラフネスの改善に有用であることが知られている(例えば、非特許文献2)。
【0005】
また、分子レジスト材料として、タンニン及びその誘導体を用いるレジスト組成物(例えば、特許文献4)が提案されている。
【0006】
更に、電子線又は極端紫外線(Extreme UltraViolet:以下、適宜「EUV」と称する。)によるリソグラフィーは、反応メカニズムが通常の光リソグラフィーと異なる。電子線又はEUVによるリソグラフィーにおいては、数十nmの微細なパターン形成を目標としている。このようにレジストパターン寸法が小さくなるほど、露光光源に対して高感度であるレジスト材料が求められる。特にEUVによるリソグラフィーでは、スループットの点で、レジスト組成物の高感度化を図る必要がある。
これらの問題を改善するレジスト材料として、チタン、ハフニウムやジルコニウムを有する無機レジスト材料が提案されている(例えば、特許文献5及び特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-326838号公報
【文献】特開2008-145539号公報
【文献】特開2009-173623号公報
【文献】特許4588551号公報
【文献】特開2015-75500号公報
【文献】特開2015-108781号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】T.Nakayama,M.Nomura,K.Haga,M.Ueda:Bull.Chem.Soc.Jpn.,71,2979(1998)
【文献】岡崎信次、他22名「フォトレジスト材料開発の新展開」株式会社シーエムシー出版、2009年9月、p.211-259
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された組成物は、耐熱性が十分ではなく、得られるレジストパターンの形状が悪くなるおそれがある。また、特許文献3や非特許文献1に記載された組成物は、半導体製造プロセスに用いられる安全溶媒に対する溶解性が十分でなく、また、感度も十分でなく、さらに得られるレジストパターン形状が悪くなる場合があり、低分子量レジスト材料のさらなる改良が望まれている。
非特許文献2には溶解性についての記載がなく、また、化合物の耐熱性はいまだ十分ではなく、耐熱性の一段の向上が求められている。
また、特許文献4に記載された組成物は、用いているタンニン及びその誘導体は混合物であるため、例えば、ロット毎に特性が変化する等の製品安定性に問題が出るおそれがある。
さらに、特許文献5及び6に記載されたレジスト材料は、比較的高感度であるものの、未だ十分であるとはいえない。また安全溶媒に対する溶解性が低い、保存安定性が悪い、膜に欠陥が多い等の欠点がある。
【0010】
前記事情に鑑み、本発明は、膜の欠陥低減(薄膜形成)が可能で、保存安定性が良好であり、高感度であり、かつ良好なレジストパターン形状を付与できるレジスト組成物及びそれを用いるレジストパターン形成方法、並びに、安全溶媒に対する溶解性の高い化合物又は樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定構造を有する化合物を含むレジスト組成物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 少なくとも一つの酸解離性反応基を構造中に含むタンニン及びその誘導体、並びに、これらをモノマーとして得られる樹脂からなる群から選択されるタンニン化合物を1種以上含む、レジスト組成物。
[2] 前記タンニン化合物が、下記式(0)で表される化合物、及び下記式(0)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂からなる群から選択される1種以上を含む、前記[1]に記載のレジスト組成物。
【化1】
(式(0)において、Aは各々独立して水素原子、又は下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。但し、少なくとも一つのAは、下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。)
【化2】
(式(A)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。*は、式(0)との結合部を示す。)
[3] 前記タンニン化合物が、下記式(0-1)又は下記式(0-2)で表される化合物、及び、下記式(0-1)及び/又は下記式(0-2)で表される化合物に由来する構造を有する縮合物、並びに、これらをモノマーとして得られる樹脂、からなる群から選択される1種以上を含む、前記[1]に記載のレジスト組成物。
【化3】
【化4】
(式(0-1)、及び式(0-2)中、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。)
[4] 前記式(0)で表される化合物は、下記式(1)で表される化合物である、前記[2]に記載のレジスト組成物。
【化5】
(式(1)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。)
[5] 溶媒をさらに含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載のレジスト組成物。
[6] 酸発生剤をさらに含む前記[1]~[5]のいずれかに記載のレジスト組成物。
[7] 酸拡散制御剤をさらに含む、前記[1]~[6]のいずれかに記載のレジスト組成物。
[8] 前記[1]~[7]のいずれかに記載のレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を露光する工程と、前記レジスト膜を現像してパターンを形成する工程と、を含むパターン形成方法。
[9] 下記式(0)で表される化合物。
【化6】
(式(0)において、Aは各々独立して水素原子、又は下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。但し、少なくとも一つのAは、下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。)
【化7】
(式(A)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。*は、式(0)との結合部を示す。)
[10] 前記[9]に記載の化合物をモノマーとして得られる樹脂。
[11] 下記式(0-1)又は下記式(0-2)で表される化合物、及び、下記一般式(0-1)及び/又は下記一般式(0-2)で表される化合物に由来する構造を有する縮合物、からなる群から選択される1種である化合物。
【化8】
【化9】
(式(0-1)、及び式(0-2)中、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。)
[12] 前記[11]に記載の化合物をモノマーとして得られる樹脂。
[13] 下記式(1)で表される化合物。
【化10】
(式(1)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。)
[14] 前記[13]に記載の化合物をモノマーとして得られる樹脂。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、膜の欠陥低減(薄膜形成)が可能で、保存安定性が良好であり、高感度で、かつ、良好なレジストパターン形状を付与できるレジスト組成物、及びそれを用いるレジストパターン形成方法を提供できる。
また、本発明により、安全溶媒に対する溶解性の高い化合物又は樹脂を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する(以下、「本実施形態」と称する)。なお、本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
【0015】
[レジスト組成物]
本実施形態のレジスト組成物は、少なくとも一つの酸解離性反応基を構造中に含むタンニン及びその誘導体、並びに、これらをモノマーとして得られる樹脂からなる群から選択されるタンニン化合物を1種以上含む(以下、これらを総称して「本実施形態におけるタンニン化合物」と称する)。本実施形態におけるタンニン化合物は、少なくとも一つの酸解離性反応基を構造中に含むものであれば、タンニン酸誘導体や後述する縮合型タンニンを含む一般的なタンニン誘導体から選ばれる化合物を使用することが出来る。
【0016】
本実施形態のレジスト組成物は、製品安定性の観点から、本実施形態におけるタンニン化合物として、下記式(0)で表される化合物、及び下記式(0)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0017】
【化11】
(式(0)において、Aは各々独立して水素原子、又は下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。但し、少なくとも一つのAは、下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。)
【化12】
(式(A)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。*は、式(0)との結合部を示す。)
【0018】
また、容易入手性の観点から、本実施形態におけるタンニン化合物として、下記式(0-1)又は下記式(0-2)で表される化合物、及び、下記式(0-1)及び/又は下記式(0-2)で表される化合物に由来する構造を有する縮合物、並びに、当該縮合物をモノマーとして得られる樹脂、からなる群から選択される1種以上(以下、これらを総じて「縮合型タンニン化合物」と称することがある)を用いることができる。縮合型タンニン化合物の具体的態様については後述する。
【0019】
【0020】
【化14】
(式(0-1)、及び式(0-2)中、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。)
【0021】
同様に、容易入手性の観点から、本実施形態におけるタンニン化合物として、下記式(0-3)で表される化合物、及び、当該化合物をモノマーとして得られる樹脂からなる群から選択される1種以上を用いることも好ましい。
【0022】
【化15】
(式(0-3)において、Aは各々独立して水素原子、又は下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。但し、少なくとも一つのAは、下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。)
【0023】
【化16】
(式(A)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。*は、式(0-3)との結合部を示す。)
【0024】
さらに、本実施形態におけるタンニン化合物としては、下記式(0-4)などの一般的なタンニン誘導体を使用することもできる。
【化17】
(式(0-4)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。)
【0025】
[式(0)で表される化合物]
本実施形態における式(0)で表される化合物は以下のとおりである。
【0026】
【0027】
前記式(0)において、Aは各々独立して水素原子、又は下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。但し、少なくとも一つのAは、下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。
【0028】
【0029】
前記式(A)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。*は、式(0)との結合部を示す。
【0030】
本実施形態のレジスト組成物は、本実施形態におけるタンニン化合物として、特定の構造を有する化合物及び当該化合物をモノマーとして得られる樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含むことができる。式(0)で表される化合物はタンニン酸誘導体であるが、タンニン酸は構造中に多数の水酸基を含有するため、その誘導体であるタンニン酸誘導体は溶解度制御が容易であり、また、リソグラフィーにおいて高感度化が期待できる。
【0031】
前記式(0)で表される化合物としては特に限定されないが、例えば、下記式(0')又は式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0032】
【0033】
前記式(0')において、A'は各々独立して下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。
【0034】
【0035】
前記式(A)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。*は、式(0')との結合部を示す。
【0036】
【0037】
前記式(1)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。
【0038】
[縮合型タンニン化合物]
上述のように、本実施形態におけるタンニン化合物として、縮合型タンニン化合物を用いることができる。本実施形態における縮合型タンニン化合物としては、例えば、下記化合物から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。なお、下記(3)における縮合物は、式(0-1)及び式(0-2)で表される化合物に由来する構造のいずれかのみを有するものであってもよいし、両式に由来する構造を含むものであってもよい。また、前記縮合物に含まれる各式に由来する構造の数は特に限定されるものではない。
(1)下記式(0-1)で表される化合物
(2)下記式(0-2)で表される化合物
(3)下記式(0-1)及び/又は下記式(0-2)で表される化合物に由来する構造を有する縮合物
(4)前記(1)~(3)をモノマーとして得られる樹脂
【0039】
【0040】
【化24】
(式(0-1)、及び式(0-2)中、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。)
【0041】
本実施形態における縮合型タンニン化合物として用いることのできる化合物は特に限定されないが、例えば、下記式(2-1)~(2-5)で表される各々の化合物が挙げられる。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
前記式(2-1)~(2-5)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。
【0047】
[その他の好適に使用できる化合物]
本実施形態におけるタンニン化合物としては、下記式(0-3)に示すケプラタンニン誘導体、下記式(0-4)に示すワットルタンニン誘導体などの縮合型タンニン誘導体も好適に使用できる。
【0048】
【化29】
(式(0-3)において、Aは各々独立して水素原子、又は下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。但し、少なくとも一つのAは、下記式(A)で表されるいずれかの構造を示す。)
【0049】
【化30】
(式(A)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。*は、式(0-3)との結合部を示す。)
【0050】
【0051】
式(0-4)において、Rは各々独立して水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示す。但し、少なくとも一つのRは、酸解離性反応基を示す。
【0052】
本実施形態のレジスト組成物に含まれる前記化合物の化学構造は、1H-NMR分析により決定できる。
本実施形態のレジスト組成物に含まれるタンニン化合物は、前記式(0)などに示すとおり、少なくとも一つの酸解離性反応基を含むため、リソグラフィーにおいて高感度が期待できる。またベンゼン骨格を有するため、耐熱性に優れる。さらに、天然物に由来するタンニン酸を原料として使用できるため、安価に得ることができる。
【0053】
Rは、各々独立して、水素原子、置換又は無置換の炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状若しくは炭素数3~20の環状のアルキル基、置換又は無置換の炭素数6~20のアリール基、置換又は無置換の炭素数2~20のアルケニル基、ハロゲン原子、或いは、酸解離性反応基を示し、少なくとも一つのRは酸解離性反応基である。
【0054】
なお、本明細書において「置換」とは、別途の定義がない限り、官能基中の一つ以上の水素原子が、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、複素環基、炭素数1~20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数0~20のアミノ基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数1~20のアシル基、炭素数2~20のアルコキシカルボニル基、炭素数1~20のアルキロイルオキシ基、炭素数7~30のアリーロイルオキシ基又は炭素数1~20のアルキルシリル基等で置換されていることを意味する。
【0055】
無置換の炭素数1~20の直鎖状脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
置換の炭素数1~20の直鎖状脂肪族炭化水素基としては、例えば、フルオロメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-シアノプロピル基及び20-ニトロオクタデシル基等が挙げられる。
【0056】
無置換の炭素数3~20の分岐脂肪族炭化水素基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ネオペンチル基、2-ヘキシル基、2-オクチル基、2-デシル基、2-ドデシル基、2-ヘキサデシル基、2-オクタデシル基等が挙げられる。
置換の炭素数3~20の分岐脂肪族炭化水素基としては、例えば、1-フルオロイソプロピル基及び1-ヒドロキシ-2-オクタデシル基等が挙げられる。
【0057】
無置換の炭素数3~20の環状脂肪族炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
置換の炭素数3~20の環状脂肪族炭化水素基としては、例えば、2-フルオロシクロプロピル基及び4-シアノシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0058】
無置換の炭素数6~20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
置換の炭素数6~20のアリール基としては、例えば、4-イソプロピルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、4-メチルフェニル基、6-フルオロナフチル基等が挙げられる。
【0059】
無置換の炭素数2~20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、オクチニル基、デシニル基、ドデシニル基、ヘキサデシニル基、オクタデシニル基等が挙げられる。
置換の炭素数2~20のアルケニル基としては、例えば、クロロプロピニル基等が挙げられる。
【0060】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0061】
-酸解離性反応基-
本明細書において「酸解離性反応基」とは、酸の存在下で開裂して、アルカリ可溶性基等に変化を生じる特性基をいう。アルカリ可溶性基としては、特に限定されないが、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、ヘキサフルオロイソプロパノール基等が挙げられ、中でも、導入試薬の入手容易性の観点から、フェノール性水酸基及びカルボキシル基が好ましく、フェノール性水酸基が特に好ましい。
【0062】
酸解離性反応基は、高感度・高解像度なパターン形成を可能にするために、酸の存在下で連鎖的に開裂反応を起こす性質を有することが好ましい。酸解離性反応基としては、特に限定されないが、例えば、KrFやArF用の化学増幅型レジスト組成物に用いられるヒドロキシスチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸系樹脂等において提案されているもののなかから適宜選択して用いることができる。
【0063】
酸解離性反応基の好ましい例としては、酸により解離する性質を有する、置換メチル基、1-置換エチル基、1-置換-n-プロピル基、1-分岐アルキル基、シリル基、アシル基、1-置換アルコキシメチル基、環状エーテル基、アルコキシカルボニル基及びアルコキシカルボニルアルキル基からなる群より選ばれる基が挙げられる。なお、酸解離性反応基は、ラフネス性の観点から、架橋性官能基を有さないことが好ましい。
【0064】
置換メチル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数2~20の置換メチル基であり、炭素数4~18の置換メチル基が好ましく、炭素数6~16の置換メチル基がより好ましい。置換メチル基の具体例としては、以下に限定されないが、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、エトキシメチル基、n-プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、n-ブトキシメチル基、t-ブトキシメチル基、2-メチルプロポキシメチル基、エチルチオメチル基、メトキシエトキシメチル基、フェニルオキシメチル基、1-シクロペンチルオキシメチル基、1-シクロヘキシルオキシメチル基、ベンジルチオメチル基、フェナシル基、4-ブロモフェナシル基、4-メトキシフェナシル基、ピペロニル基、及び下記式(13-1)で表される置換基等を挙げることができる。
【0065】
【0066】
前記式(13-1)中、R2Aは、炭素数1~4のアルキル基である。R2Aの具体例としては、以下に限定されないが、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、t-ブチル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0067】
1-置換エチル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数3~20の1-置換エチル基であり、炭素数5~18の1-置換エチル基が好ましく、炭素数7~16の置換エチル基がより好ましい。1-置換エチル基の具体例としては、以下に限定されないが、1-メトキシエチル基、1-メチルチオエチル基、1,1-ジメトキシエチル基、1-エトキシエチル基、1-エチルチオエチル基、1,1-ジエトキシエチル基、n-プロポキシエチル基、イソプロポキシエチル基、n-ブトキシエチル基、t-ブトキシエチル基、2-メチルプロポキシエチル基、1-フェノキシエチル基、1-フェニルチオエチル基、1,1-ジフェノキシエチル基、1-シクロペンチルオキシエチル基、1-シクロヘキシルオキシエチル基、1-フェニルエチル基、1,1-ジフェニルエチル基、及び下記式(13-2)で表される置換基等を挙げることができる。
【0068】
【0069】
前記式(13-2)中、R2Aは、前記と同様である。
【0070】
1-置換-n-プロピル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数4~20の1-置換-n-プロピル基であり、炭素数6~18の1-置換-n-プロピル基が好ましく、炭素数8~16の1-置換-n-プロピル基がより好ましい。1-置換-n-プロピル基の具体例としては、以下に限定されないが、1-メトキシ-n-プロピル基及び1-エトキシ-n-プロピル基等を挙げることができる。
【0071】
1-分岐アルキル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数3~20の1-分岐アルキル基であり、炭素数5~18の1-分岐アルキル基が好ましく、炭素数7~16の分岐アルキル基がより好ましい。1-分岐アルキル基の具体例としては、以下に限定されないが、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2-メチルアダマンチル基、及び2-エチルアダマンチル基等を挙げることができる。
【0072】
シリル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数1~20のシリル基であり、炭素数3~18のシリル基が好ましく、炭素数5~16のシリル基がより好ましい。シリル基の具体例としては、以下に限定されないが、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジエチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリ-tert-ブチルシリル基及びトリフェニルシリル基等を挙げることができる。
【0073】
アシル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数2~20のアシル基であり、炭素数4~18のアシル基が好ましく、炭素数6~16のアシル基がより好ましい。アシル基の具体例としては、以下に限定されないが、アセチル基、フェノキシアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、アダマンチルカルボニル基、ベンゾイル基及びナフトイル基等を挙げることができる。
【0074】
1-置換アルコキシメチル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数2~20の1-置換アルコキシメチル基であり、炭素数4~18の1-置換アルコキシメチル基が好ましく、炭素数6~16の1-置換アルコキシメチル基がより好ましい。1-置換アルコキシメチル基の具体例としては、以下に限定されないが、1-シクロペンチルメトキシメチル基、1-シクロペンチルエトキシメチル基、1-シクロヘキシルメトキシメチル基、1-シクロヘキシルエトキシメチル基、1-シクロオクチルメトキシメチル基及び1-アダマンチルメトキシメチル基等を挙げることができる。
【0075】
環状エーテル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数2~20の環状エーテル基であり、炭素数4~18の環状エーテル基が好ましく、炭素数6~16の環状エーテル基がより好ましい。環状エーテル基の具体例としては、以下に限定されないが、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、4-メトキシテトラヒドロピラニル基及び4-メトキシテトラヒドロチオピラニル基等を挙げることができる。
【0076】
アルコキシカルボニル基としては、通常、炭素数2~20のアルコキシカルボニル基であり、炭素数4~18のアルコキシカルボニル基が好ましく、炭素数6~16のアルコキシカルボニル基がさらに好ましい。アルコキシカルボニル基の具体例としては、以下に限定されないが、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基又は下記式(13-3)のn=0で表される酸解離性反応基等を挙げることができる。
【0077】
アルコキシカルボニルアルキル基としては、特に限定されないが、通常、炭素数2~20のアルコキシカルボニルアルキル基であり、炭素数4~18のアルコキシカルボニルアルキル基が好ましく、炭素数6~16のアルコキシカルボニルアルキル基がさらに好ましい。アルコキシカルボニルアルキル基の具体例としては、以下に限定されないが、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、n-プロポキシカルボニルメチル基、イソプロポキシカルボニルメチル基、n-ブトキシカルボニルメチル基又は下記式(13-3)のn=1~4で表される酸解離性反応基等を挙げることができる。
【0078】
【0079】
前記式(13-3)中、R3Aは水素原子又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であり、nは0~4の整数である。
【0080】
これらの酸解離性反応基の中でも、置換メチル基、1-置換エチル基、1-置換アルコキシメチル基、環状エーテル基、アルコキシカルボニル基、及びアルコキシカルボニルアルキル基が好ましく、より高い感度を発現する観点から、置換メチル基、1-置換エチル基、アルコキシカルボニル基及びアルコキシカルボニルアルキル基がより好ましく、炭素数3~12のシクロアルカン、ラクトン及び6~12の芳香族環から選ばれる構造を有する酸解離性反応基がさらに好ましい。
【0081】
炭素数3~12のシクロアルカンとしては、単環でも多環でもよいが、多環であることが好ましい。
炭素数3~12のシクロアルカンの具体例としては、以下に限定されないが、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等が挙げられ、より具体的には、以下に限定されないが、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロデカン等のポリシクロアルカンが挙げられる。これらの中でも、アダマンタン、トリシクロデカン、テトラシクロデカンが好ましく、アダマンタン、トリシクロデカンがより好ましい。炭素数3~12のシクロアルカンは置換基を有してもよい。
ラクトンとしては、以下に限定されないが、例えば、ブチロラクトン又はラクトン基を有する炭素数3~12のシクロアルカン基が挙げられる。
6~12の芳香族環としては、以下に限定されないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましく、ナフタレン環がより好ましい。
【0082】
前記の中でも、特に下記式(13-4)で表される各基からなる群から選ばれる酸解離性反応基が、解像性がより高くなる傾向にあるため好ましい。
【0083】
【0084】
前記式(13-4)中、R5Aは、水素原子又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基であり、R6Aは、水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子又はカルボキシル基であり、n1Aは0~4の整数であり、n2Aは1~5の整数であり、n0Aは0~4の整数である。
【0085】
また、前記式(A),式(A')式(0-1)~(0-4)等で示される化合物中のRに含まれる酸解離性反応基の具体例としては、以下の構造式が含まれる。尚、下記式(12)におけるRは式(A)等中のRと同様のものを示す。また、下記式(15)~(17)及び式(19)~(22)中、a,b,c,dは任意の構成単位のモル比を示す。また、式中、*は、各式における主構造との結合部を示す。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
[式(0)及び(1)で表される化合物の製造方法]
式(0)及び(1)で表される化合物の製造方法としては特に限定されないが、例えば、下記式(0A)及び(1A)で示されるタンニン酸の少なくとも1つのフェノール性水酸基に酸解離性反応基を導入することで得られる。
【0093】
【0094】
式(0A)において、Bは各々独立して水素原子、又は下記式(B)で表されるいずれかの構造を示す。但し、少なくとも一つのBは、下記式(B)で表されるいずれかの構造を示す。また、下記式(B)中の*は式(0A)との結合部を示す。
【0095】
【0096】
【0097】
式(0-1)又は下記式(0-2)で表される化合物、並びに、下記式(0-1)及び/又は下記式(0-2)で表される化合物に由来する構造を有する縮合物の製造方法としては特に限定されないが、例えば、下記式(0-1A)又は下記式(0-2A)で表される化合物、及び下記式(0-1A)及び/又は下記式(0-2A)で表される化合物に由来する構造を有する縮合物、で示される縮合型タンニンの少なくとも1つのフェノール性水酸基に酸解離性反応基を導入することで得られる。
【化45】
【化46】
【0098】
本実施形態において、フェノール性水酸基に酸解離性反応基を導入する方法は公知の方法を適用することができる。
酸解離性反応基を導入するための化合物は、公知の方法で合成もしくは容易に入手でき、例えば、酸クロライド、酸無水物、ジカーボネートなどの活性カルボン酸誘導体化合物、アルキルハライド、ビニルアルキルエーテル、ジヒドロピラン、ハロカルボン酸アルキルエステルなどが挙げられるが、特に限定はされない。
【0099】
例えば、以下のようにして、タンニン酸(1A)の少なくとも1つのフェノール性水酸基に酸解離性反応基を導入することができる。
アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性溶媒に前記タンニン酸(1A)を溶解又は懸濁させる。続いて、エチルビニルエーテル等のビニルアルキルエーテル又はジヒドロピランを加え、ピリジニウム-p-トルエンスルホナート等の酸触媒の存在下、常圧で、20~60℃、6~72時間反応させる。反応液をアルカリ化合物で中和し、蒸留水に加え白色固体を析出させた後、分離した白色固体を蒸留水で洗浄し、乾燥することにより前記式(1)で示される化合物を得ることができる。
【0100】
酸触媒としては、特に限定されず、周知の酸触媒である無機酸や有機酸を用いることができる。酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、フッ酸等の無機酸;シュウ酸、マロン酸、こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、蟻酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸、或いはケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、製造上の観点から、有機酸及び固体酸が好ましく、入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、塩酸又は硫酸がより好ましい。なお、酸触媒については、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0101】
また、例えば、以下のようにして、タンニン酸(1A)の少なくとも1つのフェノール性水酸基に酸解離性反応基を導入することもできる。
アセトン、THF、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性溶媒にタンニン酸(1A)を溶解又は懸濁させる。続いて、エチルクロロメチルエーテル等のアルキルハライド又はブロモ酢酸メチルアダマンチル等のハロカルボン酸アルキルエステルを加え、炭酸カリウム等の塩基触媒の存在下、常圧で、20~110℃、6~72時間反応させる。反応液を塩酸等の酸で中和し、蒸留水に加え白色固体を析出させた後、分離した白色固体を蒸留水で洗浄し、乾燥することにより前記式(1)で示される化合物を得ることができる。
【0102】
塩基触媒としては、特に限定されず、周知の塩基触媒より適宜選択することができ、例えば、金属水素化物(水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物等)、金属アルコール塩(ナトリウムメトキシドやカリウムエトキシド等のアルカリ金属のアルコール塩)、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物等)、金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩等)、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩等の無機塩基;アミン類(例えば、第3級アミン類(トリエチルアミン等のトリアルキルアミン、N,N-ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、1-メチルイミダゾール等の複素環式第3級アミン)等、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等の酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩等)等の有機塩基が挙げられる。これらの中でも、入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。塩基触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0103】
本実施形態において原料として使用するタンニン酸(0A)及び(1A)、並びに、縮合型タンニンである(0-1A)又は(0-2A)で表される化合物、及び(0-1A)及び/又は(0-2A)で表される化合物に由来する構造を有する縮合物の入手方法としては特に限定されず、市販のタンニン酸、及び縮合型タンニンを使用することができる。
【0104】
[式(0)、及び式(0-1)、又は式(0-2)で表される化合物、及び式(0-1)及び/又は式(0-2)で表される化合物に由来する構造を有する縮合物をモノマーとして得られる樹脂]
本実施形態における樹脂は、例えば、式(0)、式(1)、及び式(0-1)、又は式(0-2)で表される化合物、及び式(0-1)及び/又は式(0-2)で表される化合物に由来する構造を有する縮合物(以下、これらを総じて「式(0)等で表される化合物」と称する)と、式(0)等で表される化合物と架橋反応性を有する化合物と、を反応させることによって得られる。
架橋反応性を有する化合物としては、式(0)等で表される化合物をオリゴマー化又はポリマー化し得るものである限り、公知のものを特に制限なく使用することができる。その具体例としては、例えば、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、カルボン酸ハライド、ハロゲン含有化合物、アミノ化合物、イミノ化合物、イソシアネート、不飽和炭化水素基含有化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0105】
[レジスト永久膜]
なお、本実施形態のレジスト組成物を用いてレジスト永久膜を作製することもできる、前記組成物を塗布してなるレジスト永久膜は、必要に応じてレジストパターンを形成した後、最終製品にも残存する永久膜として好適である。永久膜の具体例としては、特に限定されないが、例えば、半導体デバイス関係では、ソルダーレジスト、パッケージ材、アンダーフィル材、回路素子等のパッケージ接着層や集積回路素子と回路基板の接着層、薄型ディスプレー関連では、薄膜トランジスタ保護膜、液晶カラーフィルター保護膜、ブラックマトリクス、スペーサーなどが挙げられる。特に、前記組成物からなる永久膜は、耐熱性や耐湿性に優れている上に昇華成分による汚染性が少ないという非常に優れた利点も有する。特に表示材料において、重要な汚染による画質劣化の少ない高感度、高耐熱、吸湿信頼性を兼ね備えた材料となる。
【0106】
前記組成物をレジスト永久膜用途に用いる場合には、硬化剤の他、更に必要に応じてその他の樹脂、界面活性剤や染料、充填剤、架橋剤、溶解促進剤などの各種添加剤を加え、有機溶剤に溶解することにより、レジスト永久膜用組成物とすることができる。
【0107】
前記レジスト永久膜用組成物は前記各成分を配合し、攪拌機等を用いて混合することにより調整できる。また、前記レジスト下層膜用組成物やレジスト永久膜用組成物が充填剤や顔料を含有する場合には、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散装置を用いて分散あるいは混合して調整することが出来る。
【0108】
[化合物又は樹脂の精製方法]
本実施形態における化合物又は樹脂(即ち、本実施形態におけるタンニン化合物)は、例えば、以下の方法により精製することができる。
本実施形態におけるタンニン化合物の1種以上を、溶媒に溶解させて溶液(S)を得る工程と、
得られた溶液(S)と酸性の水溶液とを接触させて、前記化合物又は前記樹脂中の不純物を抽出する工程(第一抽出工程)と、を含み、
前記溶液(S)を得る工程で用いる溶媒が、水と任意に混和しない有機溶媒を含む、精製方法。
【0109】
第一抽出工程において、前記樹脂は、式(0)、(1)、及び式(0-1)又は式(0-2)で表される化合物、或いは、式(0-1)及び/又は式(0-2)で表される化合物に由来する構造を有する縮合物と、これら化合物架橋反応性を有する化合物と、の反応によって得られる樹脂であることが好ましい。
本実施形態における精製方法によれば、上述した特定の構造を有する化合物又は樹脂に不純物として含まれうる種々の金属の含有量を低減することができる。本実施形態において不純物として含まれる金属含有量は、ICP-MS分析によって測定することができ、例えば、PerkinElmer社製“ELAN DRCII”などの測定機器を用いることができる。
【0110】
より詳細には、本実施形態における精製方法においては、前記化合物又は前記樹脂を、水と任意に混和しない有機溶媒に溶解させて溶液(S)を得て、さらにその溶液(S)を酸性水溶液と接触させて抽出処理を行うことができる。これにより、本実施形態におけるタンニン化合物を含む溶液(S)に含まれる金属分を水相に移行させた後、有機相と水相とを分離して金属含有量の低減された本実施形態におけるタンニン化合物を得ることができる。
【0111】
本実施形態における精製方法で使用する本実施形態におけるタンニン化合物は、1種を単独でもよいが、2種以上を混合することもできる。また、本実施形態におけるタンニン化合物は、各種界面活性剤、各種架橋剤、各種酸発生剤、各種安定剤等を含有していてもよい。
【0112】
本実施形態における精製方法で使用される水と任意に混和しない有機溶媒としては、特に限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましく、具体的には、室温下における水への溶解度が30%未満である有機溶媒であり、より好ましくは溶解度が20%未満であり、特に好ましくは溶解度が10%未満である有機溶媒が好ましい。有機溶媒の使用量は、使用する本実施形態におけるタンニン化合物に対して、1~100質量倍であることが好ましい。
【0113】
水と任意に混和しない有機溶媒の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、国際公開2015/080240に記載のものが挙げられる。これらの中でも、トルエン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル等が好ましく、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましく、メチルイソブチルケトン、酢酸エチルがさらに好ましい。メチルイソブチルケトン、酢酸エチル等は、本実施形態におけるタンニン化合物の飽和溶解度が比較的高く、沸点が比較的低いことから、工業的に溶媒を留去する場合や乾燥により除去する工程での負荷を低減することが可能となる。
これらの有機溶媒はそれぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。
【0114】
本実施形態における精製方法で使用される酸性の水溶液としては、一般に知られている有機系化合物若しくは無機系化合物を水に溶解させた水溶液の中から適宜選択することができる。酸性の水溶液としては、特に限定されないが、例えば、国際公開2015/080240に記載のものが挙げられる。これら酸性の水溶液は、それぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。これら酸性の水溶液の中でも、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸からなる群より選ばれる1種以上の鉱酸水溶液、又は、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれる1種以上の有機酸水溶液であることが好ましく、硫酸、硝酸、及び酢酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸等のカルボン酸の水溶液がより好ましく、硫酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸の水溶液がさらに好ましく、蓚酸の水溶液が特に好ましい。蓚酸、酒石酸、クエン酸等の多価カルボン酸は金属イオンに配位し、キレート効果が生じるため、より効果的に金属を除去できる傾向にある。また、ここで用いる水は、金属含有量の少ない水、例えばイオン交換水等を用いることが好ましい。
【0115】
酸性の水溶液のpHは特に限定されないが、本実施形態におけるタンニン化合物への影響を考慮し、水溶液の酸性度を調整することが好ましい。通常、pH範囲は0~5程度であり、好ましくはpH0~3程度である。
【0116】
酸性の水溶液の使用量は特に限定されないが、金属除去のための抽出回数を低減する観点及び全体の液量を考慮して操作性を確保する観点から、当該使用量を調整することが好ましい。酸性の水溶液の使用量は、前記溶液(S)100質量%に対して、好ましくは10~200質量%であり、より好ましくは20~100質量%である。
【0117】
本実施形態の精製方法においては、酸性の水溶液と、本実施形態におけるタンニン化合物及び水と任意に混和しない有機溶媒を含む溶液(S)と、を接触させることにより、溶液(S)中の本実施形態におけるタンニン化合物から金属分を抽出することができる。
【0118】
本実施形態の精製方法においては、溶液(S)が、さらに水と任意に混和する有機溶媒を含むことが好ましい。水と任意に混和する有機溶媒を含む場合、本実施形態におけるタンニン化合物の仕込み量を増加させることができ、また分液性が向上し、高い釜効率で精製を行うことができる傾向にある。水と任意に混和する有機溶媒を加える方法としては特に限定されない。例えば、予め有機溶媒を含む溶液に加える方法、予め水又は酸性の水溶液に加える方法、有機溶媒を含む溶液と水又は酸性の水溶液とを接触させた後に加える方法のいずれでもよい。これらの中でも、予め有機溶媒を含む溶液に加える方法が、操作の作業性や仕込み量の管理のし易さの点で好ましい。
【0119】
水と任意に混和する有機溶媒としては、特に限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましい。水と任意に混和する有機溶媒の使用量は、溶液相と水相とが分離する範囲であれば特に限定されないが、本実施形態におけるタンニン化合物に対して、0.1~100質量倍であることが好ましく、0.1~50質量倍であることがより好ましく、0.1~20質量倍であることがさらに好ましい。
【0120】
水と任意に混和する有機溶媒の具体例としては、特に限定されないが、例えば、国際公開2015/080240に記載のものが挙げられる。これらの中でも、N-メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が好ましく、N-メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。これらの溶媒はそれぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。
【0121】
本実施形態の精製方法においては、溶液(S)と酸性の水溶液との接触の際、すなわち、抽出処理を行う際の温度は、好ましくは20~90℃であり、より好ましくは30~80℃の範囲である。抽出操作は、特に限定されないが、例えば、溶液(S)と酸性の水溶液とを、撹拌等により、よく混合させた後、得られた混合溶液を静置することにより行われる。これにより、本実施形態におけるタンニン化合物と、有機溶媒と、を含む溶液(1)に含まれていた金属分が水相に移行する。また、本操作により、溶液(S)の酸性度が低下し、本実施形態におけるタンニン化合物の変質を抑制することができる。
【0122】
前記混合溶液は、静置することにより、本実施形態におけるタンニン化合物及び有機溶媒を含む溶液相と、水相とに分離するので、デカンテーション等によって、本実施形態におけるタンニン化合物と有機溶媒とを含む溶液相を回収する。静置する時間は特に限定されないが、有機溶媒を含む溶液相と水相との分離をより良好にする観点から、当該静置する時間を調整することが好ましい。通常、静置する時間は1分以上であり、好ましくは10分以上であり、より好ましくは30分以上である。また、抽出処理は1回だけでも構わないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うことも有効である。
【0123】
本実施形態における精製方法においては、第一抽出工程後、本実施形態におけるタンニン化合物を含む溶液相を、さらに水に接触させて、本実施形態におけるタンニン化合物中の不純物を抽出する工程(第二抽出工程)を含むことが好ましい。
具体的には、例えば、酸性の水溶液を用いて前記抽出処理を行った後に、該水溶液から抽出され、回収された本実施形態におけるタンニン化合物と有機溶媒とを含む溶液相を、さらに水による抽出処理に供することが好ましい。水による抽出処理は、特に限定されないが、例えば、前記溶液相と水とを、撹拌等により、よく混合させた後、得られた混合溶液を、静置することにより行うことができる。当該静置後の混合溶液は、本実施形態におけるタンニン化合物及び有機溶媒を含む溶液相と、水相とに分離するため、デカンテーション等によって本実施形態におけるタンニン化合物と有機溶媒とを含む溶液相を回収することができる。
また、ここで用いる水は、金属含有量の少ない水、例えばイオン交換水等であることが好ましい。抽出処理は1回だけでも構わないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うことも有効である。また、抽出処理における両者の使用割合や、温度、時間等の条件は特に限定されないが、先の酸性の水溶液との接触処理の場合と同様で構わない。
【0124】
こうして得られた本実施形態におけるタンニン化合物及び有機溶媒を含む溶液に混入しうる水分については、減圧蒸留等の操作を施すことにより容易に除去できる。また、必要により前記溶液に有機溶媒を加え、本実施形態におけるタンニン化合物の濃度を、任意の濃度に調整することができる。
【0125】
得られた本実施形態におけるタンニン化合物及び有機溶媒を含む溶液から、本実施形態におけるタンニン化合物を単離する方法は、特に限定されず、減圧除去、再沈殿による分離、及びそれらの組み合わせ等、公知の方法で行うことができる。また、必要に応じて、濃縮操作、ろ過操作、遠心分離操作、乾燥操作等の公知の処理を行うことができる。
【0126】
[レジスト組成物の物性等]
本実施形態のレジスト組成物は、スピンコートによりアモルファス膜を形成することができる。用いる現像液の種類によって、ポジ型レジストパターン及びネガ型レジストパターンのいずれかを作り分けることができる。
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下であることが好ましく、0.05~5Å/secであることがより好ましく、0.0005~5Å/secであることがさらに好ましい。溶解速度が5Å/sec以下である場合、現像液に不溶で、レジストとすることが容易となる傾向にある。また、溶解速度が0.0005Å/sec以上である場合、解像性が向上する傾向にある。これは、本実施形態におけるタンニン化合物の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する露光部と、現像液に溶解しない未露光部との界面のコントラストが大きくなるためと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効果がある。
【0127】
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。溶解速度が10Å/sec以上である場合、現像液に易溶で、レジストに一層向いている。また、溶解速度が10Å/sec以上である場合、解像性が向上する傾向にある。これは、本実施形態におけるタンニン化合物のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するためと推測される。また、ディフェクトの低減効果がある。
前記溶解速度は、23℃にて、アモルファス膜を所定時間現像液に浸漬させ、その浸漬前後の膜厚を、目視、エリプソメーター又はQCM法等の公知の方法によって測定し、決定することができる。
【0128】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により露光した部分の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上である場合、現像液に易溶で、レジストに一層向いている。また、溶解速度が10Å/sec以上である場合、解像性が向上する傾向にある。これは、本実施形態におけるタンニン化合物のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するためと推測される。また、ディフェクトの低減効果がある。
【0129】
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により露光した部分の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下であることが好ましく、0.05~5Å/secであることがより好ましく、0.0005~5Å/secであることがさらに好ましい。溶解速度が5Å/sec以下である場合、現像液に不溶で、レジストとすることが容易となる傾向にある。また、溶解速度が0.0005Å/sec以上である場合、解像性が向上する傾向にある。これは、本実施形態におけるタンニン化合物の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する未露光部と、現像液に溶解しない露光部との界面のコントラストが大きくなるためと推測される。また、LERの低減、ディフェクトの低減効果がある。
【0130】
[レジスト組成物の他の成分]
本実施形態のレジスト組成物は、本実施形態におけるタンニン化合物を固形成分として含有する。すなわち、本実施形態のレジスト組成物は、式(0)、(1)、及び式(0-1)、又は式(0-2)で表される化合物、及び式(0-1)及び/又は式(0-2)で表される化合物からなる群から選択される1種以上の縮合物で表される化合物と、式(0)、(1)、及び式(0-1)、又は式(0-2)で表される化合物、及び式(0-1)及び/又は式(0-2)で表される化合物からなる群から選択される1種以上の縮合物で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂とをそれぞれ単独で、又は、これらを組み合わせて含有してもよい。
【0131】
本実施形態のレジスト組成物は、溶媒をさらに含有することが好ましい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、国際公開2013/024778に記載のものが挙げられる。
【0132】
本実施形態のレジスト組成物に含まれる溶媒は、安全溶媒であることが好ましく、より好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン(CHN)、シクロペンタノン(CPN)、2-ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル及び乳酸エチルから選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましくはPGMEA、PGME及びCHNから選ばれる少なくとも1種である。
【0133】
本実施形態のレジスト組成物において、固形成分の量と溶媒との量の比は、特に限定されないが、固形成分及び溶媒の合計質量100質量%に対して、固形成分1~80質量%及び溶媒20~99質量%であることが好ましく、より好ましくは固形成分1~50質量%及び溶媒50~99質量%、さらに好ましくは固形成分2~40質量%及び溶媒60~98質量%であり、特に好ましくは固形成分2~10質量%及び溶媒90~98質量%である。
【0134】
本実施形態のレジスト組成物は、他の固形成分として、酸発生剤(P)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。
【0135】
本実施形態のレジスト組成物において、本実施形態におけるタンニン化合物の含有量は、特に限定されないが、固形成分の全質量(本実施形態におけるタンニン化合物、酸発生剤(P)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)などの任意に使用される固形成分の総和、以下同様)の50~99.4質量%であることが好ましく、より好ましくは55~90質量%、さらに好ましくは60~80質量%、特に好ましくは60~70質量%である。本実施形態におけるタンニン化合物の含有量が前記範囲にある場合、解像度が一層向上し、ラインエッジラフネス(LER)が一層小さくなる傾向にある。
なお、本実施形態におけるタンニン化合物として化合物と樹脂との両方を含有する場合、前記含有量は、本実施形態におけるタンニン化合物の合計量(即ち化合物と樹脂との合計量)である。
【0136】
(酸発生剤)
本実施形態のレジスト組成物は、可視光線、紫外線、エキシマレーザー、電子線、極端紫外線(EUV)、X線及びイオンビームから選ばれるいずれかの放射線の照射により直接的又は間接的に酸を発生する酸発生剤(P)を一種以上含有することが好ましい。
この場合、レジスト組成物中の酸発生剤(P)の含有量は、固形成分の全質量の0.001~49質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましく、3~30質量%がさらに好ましく、10~25質量%が特に好ましい。酸発生剤(P)の含有量が前記範囲内である場合、一層高感度でかつ一層低エッジラフネスのパターンプロファイルが得られる傾向にある。
本実施形態のレジスト組成物においては、系内に酸が発生すれば、酸の発生方法は限定されない。g線、i線などの紫外線の代わりにエキシマレーザーを使用すれば、より微細加工が可能であるし、また高エネルギー線として電子線、極端紫外線、X線、イオンビームを使用すればさらなる微細加工が可能である。
【0137】
酸発生剤(P)としては、特に限定されず、国際公開2013/024778に記載のものを用いることができる。これらの酸発生剤の中でも、耐熱性の観点から、芳香環を有する酸発生剤が好ましく、下記式(8-1)又は(8-2)で表される酸発生剤がより好ましい。
【0138】
【0139】
(式(8-1)中、R13は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状、分枝状若しくは環状アルキル基、直鎖状、分枝状若しくは環状アルコキシ基、ヒドロキシル基又はハロゲン原子を示し、X-は、アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基若しくはハロゲン置換アリール基を有するスルホン酸イオン又はハロゲン化物イオンを示す。)
【0140】
【0141】
(式(8-2)中、R14は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状、分枝状若しくは環状アルキル基、直鎖状、分枝状若しくは環状アルコキシ基、ヒドロキシル基又はハロゲン原子を示す。X-は前記と同様である。)
【0142】
前記式(8-1)又は(8-2)のX-が、アリール基若しくはハロゲン置換アリール基を有するスルホン酸イオンを有する酸発生剤がさらに好ましく、アリール基を有するスルホン酸イオンを有する酸発生剤がさらにより好ましく、ジフェニルトリメチルフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロメタンスルホナートが特に好ましい。該酸発生剤を用いることで、LERを低減することができる傾向にある。
前記酸発生剤(P)は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0143】
(酸拡散制御剤)
本実施形態のレジスト組成物は、放射線照射により酸発生剤から生じた酸のレジスト膜中における拡散を制御して、未露光領域での好ましくない化学反応を阻止する作用等を有する酸拡散制御剤(E)を含有してもよい。酸拡散制御剤(E)を使用することにより、レジスト組成物の貯蔵安定性が向上する。また解像度が一層向上するとともに、放射線照射前の引き置き時間、放射線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。
【0144】
酸拡散制御剤(E)としては、特に限定されず、例えば、国際公開2013/024778に記載されている窒素原子含有塩基性化合物、塩基性スルホニウム化合物、塩基性ヨードニウム化合物等の放射線分解性塩基性化合物が挙げられる。酸拡散制御剤(E)は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0145】
酸拡散制御剤(E)の含有量は、固形成分の全質量の0.001~49質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.01~5質量%がさらに好ましく、0.01~3質量%が特に好ましい。酸拡散制御剤(E)の含有量が前記範囲内であると、解像度の低下、パターン形状、寸法忠実度等の劣化を一層抑制できる傾向にある。さらに、電子線照射から放射線照射後加熱までの引き置き時間が長くなっても、パターン上層部の形状が劣化するおそれが少ない。また、酸拡散制御剤(E)の含有量が10質量%以下であると、感度、未露光部の現像性等の低下を防ぐことができる傾向にある。またこのような酸拡散制御剤を使用することにより、レジスト組成物の貯蔵安定性が向上し、また解像度が向上するとともに、放射線照射前の引き置き時間、放射線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。
【0146】
本実施形態のレジスト組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、その他の成分(F)として、溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、酸架橋剤、界面活性剤、及び有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体等の各種添加剤を1種以上添加することができる。
【0147】
(溶解促進剤)
溶解促進剤は、本実施形態におけるタンニン化合物の現像液に対する溶解性が低すぎる場合に、その溶解性を高めて、現像時の本実施形態におけるタンニン化合物の溶解速度を適度に増大させる作用を有する成分であり、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。前記溶解促進剤としては、例えば、低分子量のフェノール性化合物を挙げることができ、例えば、ビスフェノール類、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン等を挙げることができる。これらの溶解促進剤は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。溶解促進剤の含有量は、使用する本実施形態におけるタンニン化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分の全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0148】
(溶解制御剤)
溶解制御剤は、本実施形態におけるタンニン化合物が現像液に対する溶解性が高すぎる場合に、その溶解性を制御して現像時の溶解速度を適度に減少させる作用を有する成分である。このような溶解制御剤としては、レジスト被膜の焼成、放射線照射、現像等の工程において化学変化しないものが好ましい。
【0149】
溶解制御剤としては、特に限定されず、例えば、フェナントレン、アントラセン、アセナフテン等の芳香族炭化水素類;アセトフェノン、ベンゾフェノン、フェニルナフチルケトン等のケトン類;メチルフェニルスルホン、ジフェニルスルホン、ジナフチルスルホン等のスルホン類等を挙げることができる。これらの溶解制御剤は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0150】
溶解制御剤の含有量は、特に限定されず、本実施形態におけるタンニン化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分の全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0151】
(増感剤)
増感剤は、照射された放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを酸発生剤(P)に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を有し、レジストの見掛けの感度を向上させる成分である。このような増感剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン類、ビアセチル類、ピレン類、フェノチアジン類、フルオレン類等を挙げることができる。これらの増感剤は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。増感剤の含有量は、本実施形態におけるタンニン化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分の全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0152】
(酸架橋剤)
酸架橋剤は、酸発生剤(P)から発生した酸の存在下で、本実施形態におけるタンニン化合物を、分子内又は分子間架橋し得る化合物である。このような酸架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2013/024778号に記載のものを用いることができる。酸架橋剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。酸架橋剤の含有量は固形成分の全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0153】
(界面活性剤)
界面活性剤は、本実施形態のレジスト組成物の塗布性やストリエーション、レジストの現像性等を改良する作用を有する成分である。界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン系、カチオン系、ノニオン系あるいは両性のいずれでもよい。これらの中でも、ノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤は、レジスト組成物の製造に用いる溶媒との親和性がよく、前記作用がより顕著となる。ノニオン系界面活性剤の例としては、国際公開2013/024778に記載のものが挙げられる。界面活性剤の含有量は、特に限定されず、使用する本実施形態におけるタンニン化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分の全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0154】
(有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体)
本実施形態のレジスト組成物は、感度劣化防止又はレジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体を含有してもよい。なお、これらの成分は、酸拡散制御剤と併用することもできるし、単独で用いてもよい。有機カルボン酸としては、特に限定されず、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ-n-ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸又はそれらのエステルなどの誘導体;ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸ジ-n-ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸又はそれらのエステルなどの誘導体;ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸及びそれらのエステルなどの誘導体が挙げられ、これらの中でも特にホスホン酸が好ましい。
【0155】
有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体の含有量は、使用する本実施形態におけるタンニン化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分の全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0156】
(その他添加剤)
本実施形態のレジスト組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、前記溶解制御剤、増感剤、及び界面活性剤以外の添加剤を1種以上含有してもよい。そのような添加剤としては、特に限定されず、例えば、染料、顔料、及び接着助剤等が挙げられる。例えば、染料又は顔料を含有すると、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和できるので好ましい。また、接着助剤を含有すると、基板との接着性を改善することができるので好ましい。さらに、他の添加剤としては、、特に限定されず、例えば、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤、形状改良剤等、具体的には4-ヒドロキシ-4'-メチルカルコン等を挙げることができる。
【0157】
任意成分(F)の合計含有量は、固形成分の全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0158】
本実施形態のレジスト組成物において、本実施形態におけるタンニン化合物、酸発生剤(P)、酸拡散制御剤(E)、任意成分(F)の含有量(本実施形態におけるタンニン化合物/酸発生剤(P)/酸拡散制御剤(E)/任意成分(F))は、固形物基準の質量%で、好ましくは50~99.4/0.001~49/0.001~49/0~49、より好ましくは55~90/1~40/0.01~10/0~5、さらに好ましくは60~80/3~30/0.01~5/0~1、特に好ましくは60~70/10~25/0.01~3/0である。
各成分の含有割合は、その総和が100質量%になるように各範囲から選ばれる。各成分の含有割合が前記範囲にある場合、感度、解像度、現像性等の性能に一層優れる傾向にある。
【0159】
本実施形態のレジスト組成物の調製方法は、特に限定されず、例えば、使用時に各成分を溶媒に溶解して均一溶液とし、その後、必要に応じて、例えば孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過する方法等が挙げられる。
【0160】
本実施形態のレジスト組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、各種の樹脂を含むことができる。各種の樹脂としては、特に限定されず、例えば、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、スチレン-無水マレイン酸樹脂、及びアクリル酸、ビニルアルコール、又はビニルフェノールを単量体単位として含む重合体あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。樹脂の含有量は、特に限定されず、使用する本実施形態におけるタンニン化合物の種類に応じて適宜調節されるが、該化合物或いは樹脂100質量部当たり、30質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは0質量部である。
【0161】
[レジストパターンの形成方法]
本実施形態のレジストパターンの形成方法は、特に限定されず、好適な方法として、上述したレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、形成されたレジスト膜を露光する工程と、前記露光したレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、を含む方法が挙げられる。
本実施形態におけるレジストパターンは、多層プロセスにおける上層レジストとして形成することもできる。
【0162】
具体的なレジストパターンを形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、従来公知の基板上に前記レジスト組成物を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって塗布することによりレジスト膜を形成する。従来公知の基板とは、特に限定されず、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、特に限定されないが、例えば、シリコンウェハー、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、特に限定されないが、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、金等が挙げられる。また必要に応じて、前記基板上に無機系の膜及び/又は有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、特に限定されないが、例えば、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、特に限定されないが、例えば、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。基板上には、ヘキサメチレンジシラザン等による表面処理を行ってもよい。
【0163】
次に、必要に応じて、レジスト組成物を塗布した基板を加熱する。加熱条件は、レジスト組成物の含有組成等により変わるが、20~250℃が好ましく、より好ましくは20~150℃である。基板を加熱することによって、レジストの基板に対する密着性が向上する傾向にあるため好ましい。次いで、可視光線、紫外線、エキシマレーザー、電子線、極端紫外線(EUV)、X線、及びイオンビームからなる群から選ばれるいずれかの放射線により、レジスト膜を所望のパターンに露光する。露光条件等は、レジスト組成物の配合組成等に応じて適宜選定される。
【0164】
本実施形態のレジストパターンの形成方法においては、露光における高精度の微細パターンを安定して形成するために、放射線照射後に加熱することが好ましい。加熱条件は、レジスト組成物の配合組成等により変わるが、20~250℃が好ましく、より好ましくは20~150℃である。
【0165】
次いで、露光されたレジスト膜を現像液で現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。
前記現像液としては、使用する本実施形態におけるタンニン化合物に対して溶解度パラメーター(SP値)の近い溶剤を選択することが好ましく、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤又はアルカリ水溶液を用いることができる。例えば、国際公開2013/024778に記載のものを用いることができる。
現像液の種類によって、ポジ型レジストパターン又はネガ型レジストパターンを作り分けることができるが、一般的に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤の場合はネガ型レジストパターン、アルカリ水溶液の場合はポジ型レジストパターンが得られる。
【0166】
前記の溶剤は、複数混合してもよいし、性能を有する範囲内で、前記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が70質量%未満であることが好ましく、50質量%未満であることがより好ましく、30質量%未満であることがさらに好ましく、10質量%未満であることがさらにより好ましく、実質的に水分を含有しないことが特に好ましい。すなわち、現像液に対する有機溶剤の含有量は、特に限定されず、現像液の全量に対して、30質量%以上100質量%以下であることが好ましく、50質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらにより好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。
【0167】
アルカリ水溶液としては、特に限定されず、例えば、モノ-、ジ-あるいはトリアルキルアミン類、モノ-、ジ-あるいはトリアルカノールアミン類、複素環式アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等のアルカリ性化合物が挙げられる。
【0168】
特に、現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種の溶剤を含有することが、レジストパターンの解像性やラフネス等のレジスト性能がさらに改善する傾向にあるため好ましい。
【0169】
現像液の蒸気圧は、特に限定されず、例えば、20℃において、5kPa以下が好ましく、3kPa以下がより好ましく、2kPa以下がさらに好ましい。現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する傾向にある。
【0170】
5kPa以下の蒸気圧を有する現像液の具体例としては、国際公開2013/024778に記載のものが挙げられる。
【0171】
特に好ましい範囲である2kPa以下の蒸気圧を有する現像液の具体例としては、国際公開2013/024778に記載のものが挙げられる。
【0172】
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば、特開昭62-36663号公報、特開昭61-226746号公報、特開昭61-226745号公報、特開昭62-170950号公報、特開昭63-34540号公報、特開平7-230165号公報、特開平8-62834号公報、特開平9-54432号公報、特開平9-5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることがさらに好ましい。
【0173】
界面活性剤の使用量は、現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%、好ましくは0.005~2質量%、さらに好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0174】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。パターンの現像を行なう時間には特に制限はないが、好ましくは10秒~90秒である。
【0175】
また、現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0176】
現像の後には、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
【0177】
現像後のリンス工程に用いるリンス液としては、架橋により硬化したレジストパターンを溶解しないものであれば特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液又は水を使用することができる。前記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。より好ましくは、現像の後に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。さらに好ましくは、現像の後に、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。さらにより好ましくは、現像の後に、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。特に好ましくは、現像の後に、C5以上の1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。パターンのリンスを行なう時間には特に制限はないが、好ましくは10秒~90秒である。
【0178】
ここで、現像後のリンス工程で用いられる1価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、国際公開2013/024778に記載のものが挙げられる。
【0179】
前記各成分は、複数混合してもよいし、前記以外の有機溶剤と混合して使用してもよい。
【0180】
リンス液中の含水率は、特に限定されず、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。リンス液中の含水率を10質量%以下にすることで、より良好な現像特性を得ることができる傾向にある。
【0181】
現像後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃において0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下がより好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下がさらに好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性がより向上し、さらにはリンス液の浸透に起因した膨潤がより抑制され、ウェハ面内の寸法均一性がより良化する傾向にある。
【0182】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0183】
リンス工程においては、現像を行ったウェハを、前記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法としては特に限定されないが、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、これらの中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm~4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。
【0184】
レジストパターンを形成した後、エッチングすることによりパターン配線基板が得られる。エッチングの方法としては、プラズマガスを使用するドライエッチング、及びアルカリ溶液、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液等によるウェットエッチングなど公知の方法で行うことができる。
【0185】
レジストパターンを形成した後、めっきを行うこともできる。前記めっき法としては、特に限定されないが、例えば、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、金めっきなどが挙げられる。
【0186】
エッチング後の残存レジストパターンは有機溶剤で剥離することができる。前記有機溶剤として、特に限定されないが、例えば、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート),PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル),EL(乳酸エチル)等が挙げられる。前記剥離方法としては、特に限定されないが、例えば、浸漬方法、スプレイ方式等が挙げられる。またレジストパターンが形成された配線基板は、多層配線基板でもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【0187】
本実施形態において、配線基板は、レジストパターン形成後、金属を真空中で蒸着し、その後レジストパターンを溶液で溶かす方法、すなわちリフトオフ法により形成することもできる。
【実施例】
【0188】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定はされるものではない。
以下に、実施例における化合物の測定方法及びレジスト性能等の評価方法を示す。
【0189】
[測定方法]
(1)化合物の構造
化合物の構造は、Bruker社製"Advance600II spectrometer"を用いて、以下の条件で、1H-NMR測定を行い、確認した。
周波数:400MHz
溶媒:d6-DMSO
内部標準:TMS
測定温度:23℃
【0190】
[評価方法]
(1)化合物の安全溶媒溶解度試験
化合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)への溶解性は、PGMEAへの溶解量を用いて以下の基準で評価した。なお、溶解量の測定は23℃にて、化合物を試験管に精秤し、PGMEAを所定の濃度となるよう加え、超音波洗浄機にて30分間超音波をかけ、その後の液の状態を目視にて観察することにより測定した。評価は以下に従って行った。
A:5.0質量% ≦ 溶解量
B:3.0質量% ≦ 溶解量 <5.0質量%
C:溶解量 <3.0質量%
【0191】
(2)レジスト組成物の保存安定性及び薄膜形成
レジスト組成物の保存安定性は、レジスト組成物を調製後、23℃、50%RHにて3日間静置し、析出の有無を目視にて観察することによって評価した。3日間静置後のレジスト組成物において、均一溶液であり析出がない場合には「A」、析出がある場合は「C」と評価した。また、均一状態のレジスト組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中で露光前ベークして、厚さ40nmのレジスト膜を形成した。調製したレジスト組成物について、薄膜形成が良好な場合には「A」、形成した膜に欠陥がある場合には「C」と評価した。
【0192】
(3)レジストパターンのパターン評価
均一なレジスト組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中で露光前ベークして、厚さ60nmのレジスト膜を形成した。得られたレジスト膜に対して、電子線描画装置(ELS-7500、(株)エリオニクス社製)を用いて、50nm、40nm及び30nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射した。当該照射後に、レジスト膜を、それぞれ所定の温度で、90秒間加熱し、TMAH2.38質量%アルカリ現像液に60秒間浸漬して現像を行った。その後、レジスト膜を、超純水で30秒間洗浄、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。形成されたレジストパターンについて、ラインアンドスペースを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー製"S-4800")によって観察し、レジスト組成物の電子線照射による反応性を評価した。
「感度」は、パターンを得るために必要な単位面積当たりの最小のエネルギー量で示し、以下に従って評価した。
A:50μC/cm2未満でパターンが得られた場合
C:50μC/cm2以上でパターンが得られた場合
「パターン形成」は、得られたパターン形状をSEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)にて観察し、以下に従って評価した。
A:矩形なパターンが得られた場合
B:ほぼ矩形なパターンが得られた場合
C:矩形でないパターンが得られた場合
【0193】
[合成例]
(合成実施例1)TNA-ADBACの合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器において、タンニン酸(TNA)3.9g(2.3mmol)、炭酸カリウム0.30g(2.2mmol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.64g(2mmol)をN-メチルピロリドン50mLに溶解させ、2時間撹拌した。撹拌後、ブロモ酢酸-2-メチルアダマンタン-2-イル13.2g(46mmol)を加え、100℃にて24時間反応させた。反応終了後、1N塩酸水溶液に滴下し、生じた黒色固体をろ別し、カラムクロマトグラフィーによる分離精製を行うことで、下記式(TNA-ADBAC)で示される目的化合物を7.8g得た。
得られた化合物(TNA-ADBAC)について、前記測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(TNA-ADBAC)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)6.5~7.5(20H,Ph-H)、4.4~5.0(37H,O-CH2-C(=O)-)、1.2~2.7(314.5H,C-H/Adamantane of methylene and methine)、3.9~4.0(4H、C-CH(-O)-C)、5.4(1H、O-CH(-O)-)、9.3~9.6(6.5H、-OH)
得られた化合物(TNA-ADBAC)について、NMRによって酸解離性反応基の導入率を測定した結果、74%であった。
【0194】
【0195】
また、得られた化合物(TNA-ADBAC)について、前記方法によって安全溶媒への溶解性を評価した。結果を表1(実施例1、1-2)に示す。
【0196】
(合成実施例2)TNA-ADBAC100の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mLの容器において、タンニン酸(TNA)1.7g(1mmol)、炭酸カリウム3.46g(25mmol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド2.437g(7.56mmol)をN-メチルピロリドン25mLに溶解させ、2時間撹拌した。撹拌後、ブロモ酢酸-2-メチルアダマンタン-2-イル9.01g(31.4mmol)を加え、80℃にて24時間反応させた。反応終了後、1N塩酸水溶液に滴下し、生じた黒色固体をろ別し、カラムクロマトグラフィーによる分離精製を行うことで、下記式(TNA-ADBAC100)で示される目的化合物を1.01g得た。
得られた化合物(TNA-ADBAC100)について、前記測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(TNA-ADBAC100)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)6.5~7.5(20H,Ph-H)、4.4~5.0(50H,O-CH2-C(=O)-)、1.2~2.7(425H,C-H/Adamantane of metyl、methylene and methine)、3.9~4.0(4H、C-CH(-O)-C)、5.4(1H、O-CH(-O)-)
得られた化合物(TNA-ADBAC100)について、NMRによって酸解離性反応基の導入率を測定した結果、100%であった。
【0197】
【0198】
また、得られた化合物(TNA-ADBAC100)について、前記方法によって安全溶媒への溶解性を評価した。結果を表1(実施例2)に示す。
【0199】
(合成実施例3)TNA-BVEの合成
合成実施例1において、ブロモ酢酸-2-メチルアダマンタン-2-イルに代えてブチルビニルエーテルを用い、溶媒としてN-メチルピロリドンに代えてテトラヒドロフランを用いた以外は同様に合成をおこない、下記式(TNA-BVE)の化学構造を持つ目的化合物を得た。
得られた化合物について、前記測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(TNA-BVE)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)6.5~7.5(20H,Ph-H)、4.4~5.0(37H,O-CH2-C(=O)-)、5.5(24H,C-H/BVE of methine)、1.0~3.4(288H,C-H/BVE of metyhyl and methylene)、3.9~4.0(4H、C-CH(-O)-C)、5.4(1H、O-CH(-O)-)、9.3~9.6(1H、-OH)
得られた化合物(TNA-BVE)について、NMRによって酸解離性反応基の導入率を測定した結果、96%であった。
【0200】
【0201】
また、得られた化合物(TNA-BVE)について、前記方法によって安全溶媒への溶解性を評価した。結果を表1(実施例3)に示す。
【0202】
(合成実施例4)TNA-BOCの合成
合成実施例1においてブロモ酢酸-2-メチルアダマンタン-2-イルに代えてジ-t-ブチルジカーボネートを用い、溶媒としてN-メチルピロリドンに代えてテトラヒドロフランを用いた以外同様に合成をおこい、下記式(TNA-BOC)の化学構造を持つ目的化合物を得た。
得られた化合物について、前記測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(TNA-BOC)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)6.5~7.5(20H,Ph-H)、4.4~5.0(37H,O-CH2-C(=O)-)、1.4(225H,C-H/BOC of metyhyl)、3.9~4.0(4H、C-CH(-O)-C)、5.4(1H、O-CH(-O)-)
得られた化合物(TNA-BOC)について、NMRによって酸解離性反応基の導入率を測定した結果、100%であった。
【0203】
【0204】
また、得られた化合物(TNA-BOC)について、前記方法によって安全溶媒への溶解性を評価した。結果を表1(実施例4)に示す。
【0205】
(合成実施例5)TNA-MeBOCの合成
合成実施例1において、ブロモ酢酸-2-メチルアダマンタン-2-イルに代えてブロモ酢酸t-ブチルを用い、溶媒としてN-メチルピロリドンに代えてテトラヒドロフランを用い、さらに18-クラウン-6を0.4g(1.5mmol)加えた以外は同様に合成をおこない、下記式(TNA-MeBOC)の化学構造を持つ目的化合物を得た。
得られた化合物について、前記測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(TNA-MeBOC)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)6.5~7.5(20H,Ph-H)、4.4~5.0(37H,O-CH2-C(=O)-)、1.4(225H,C-H/BOC of metyhyl)、4.5(225H,C-H/BOC ofmethylene)、3.9~4.0(4H、C-CH(-O)-C)、5.4(1H、O-CH(-O)-)
得られた化合物(TNA-MeBOC)について、NMRによって酸解離性反応基の導入率を測定した結果、100%であった。
【0206】
【0207】
また、得られた化合物(TNA-MeBOC)について、前記方法により安全溶媒への溶解性を評価した。結果を表1(実施例5)に示す。
【0208】
(合成実施例6)ECT-BOCの合成
合成実施例4において、タンニン酸(TNA)の代わりに下記式(ECT)の構造を持つエピカテキン(東京化成工業(株)製)3.34g(11.5mmol)を用いた以外同様にして、下記式(ECT-BOC)の化学構造を持つ目的化合物を得た。
得られた化合物について、前記測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(ECT-BOC)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)2.7(2H、-CH2-)、4.8~4.9(2H、methine)、5.8~5.9(2H、Ph-H)、6.6~6.7(3H、Ph-H)、1.4(9H、-CH3)
得られた化合物(ECT-BOC)について、NMRによって酸解離性反応基の導入率を測定した結果、100%であった。
【0209】
【0210】
【0211】
また、得られた化合物(ECT-BOC)について、前記方法により安全溶媒への溶解性を評価した。結果を表1(実施例6)に示す。
【0212】
(比較合成例1)CR-1の合成
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積10Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、1,5-ジメチルナフタレン1.09kg(7mol、三菱ガス化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液2.1kg(ホルムアルデヒドとして28mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)0.97mLを仕込み、常圧下、100℃で還流させながら7時間反応させた。その後、希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製試薬特級)1.8kgを反応液に加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応の1,5-ジメチルナフタレンを減圧下で留去することにより、淡褐色固体のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂1.25kgを得た。
【0213】
続いて、ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、前記のようにして得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂100g(0.51mol)とパラトルエンスルホン酸0.05gとを仕込み、190℃まで昇温させて2時間加熱した後、攪拌した。その後さらに、1-ナフトール52.0g(0.36mol)を加え、さらに220℃まで昇温させて2時間反応させた。溶剤希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下で除去することにより、黒褐色固体の変性樹脂(CR-1)126.1gを得た。
【0214】
(比較合成例2)CR-1-BOCの合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器において、前記で得られた化合物(CR-1)10gとジ-t-ブチルジカーボネート(アルドリッチ社製)5.5g(25mmol)とをアセトン100mLに仕込み、炭酸カリウム(アルドリッチ社製)3.45g(25mmol)を加えて、内容物を20℃で6時間撹拌して反応を行って反応液を得た。次に反応液を濃縮し、濃縮液に純水100gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って固形物を分離した。
得られた固形物を水洗し、減圧乾燥させ、黒色固体の変性樹脂(CR-1-BOC)を4g得た。
また、得られた化合物(CR-1-BOC)について、上述の測定方法により安全溶媒への溶解性を評価した。結果を表1(比較例1)に示す。
【0215】
[実施例及び比較例]
(レジスト組成物の調製)
前記合成例及び比較合成例で合成した各化合物を用いて、下記表1に示す配合でレジスト組成物を調製した。なお、表1中のレジスト組成物の各成分のうち、酸発生剤(P)、酸拡散制御剤(E)及び溶媒(S-1)については、以下のものを用いた。
〔酸発生剤(P)〕
P-1:トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート(みどり化学(株))
〔酸拡散制御剤(E)〕
E-1:トリオクチルアミン(東京化成工業(株))
〔溶媒〕
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(東京化成工業(株))
【0216】
上述の測定方法により、得られたレジスト組成物の各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0217】
【0218】
表1から分かるように実施例1~6で用いた化合物(合成実施例1~6で合成した化合物)は比較例1で用いた化合物(比較合成例2で合成した化合物)と同等に優れた安全溶媒への溶解性を有することが確認できた。
【0219】
前記測定方法に従って、薄膜形成について評価したところ実施例1~6で得られたレジスト組成物は、比較例1と同等に優れた薄膜を形成することができた。
【0220】
上述の測定方法により、実施例及び比較例で得られたレジスト組成物を用いて、パターン評価(感度及びパターン形状評価)を実施した。50nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射により、実施例1では良好なポジ型レジストパターンを得た。比較例1との比較からもわかるように、実施例1~6で得られたレジスト組成物は、感度及びパターンの形状がともに優れていた。
【0221】
前記結果から、本実施形態における化合物は、安全溶媒に対する溶解性が高く、該化合物を含むレジスト組成物は、保存安定性が良好で、優れた薄膜形成が可能であり、さらに、比較化合物(CR-1-BOC)を含むレジスト組成物と比べて、高感度であると共に優れたレジストパターン形状を付与できることが分かった。
なお、本発明の要件を満たす限り、実施例に記載した化合物以外の化合物も同様の効果を示す。
【0222】
上述のように、本発明のレジスト組成物及びそれを用いるパターン形成方法、並びに、化合物及び樹脂は、例えば、電気用絶縁材料、レジスト用樹脂、半導体用封止樹脂、プリント配線板用接着剤、電気機器・電子機器・産業機器等に搭載される電気用積層板、電気機器・電子機器・産業機器等に搭載されるプリプレグのマトリックス樹脂、ビルドアップ積層板材料、繊維強化プラスチック用樹脂、液晶表示パネルの封止用樹脂、塗料、各種コーティング剤、接着剤、半導体用のコーティング剤、半導体用のレジスト用樹脂、下層膜形成用樹脂等に、広く且つ有効に利用可能である。
【0223】
2017年3月31日に出願された日本国特許出願2017-072550号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
また、明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。