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特許7297257金属置換ベータ型ゼオライト及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】金属置換ベータ型ゼオライト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/46 20060101AFI20230619BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20230619BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
C01B39/46
B01J29/76 A ZAB
B01D53/94 222
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019550298
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2018039759
(87)【国際公開番号】W WO2019082990
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2017206108
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100182925
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 明弘
(72)【発明者】
【氏名】窪田 好浩
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 怜史
(72)【発明者】
【氏名】片田 直伸
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 学史
(72)【発明者】
【氏名】山崎 康夫
(72)【発明者】
【氏名】古川 孝裕
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-172811(JP,A)
【文献】特開2015-205277(JP,A)
【文献】特開2012-162446(JP,A)
【文献】特開2010-070450(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129555(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/013560(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20-39/54
B01J 21/00-38/74
C07C 1/00-409/44
C07D 301/00-305/14
C07B 31/00-61/00
C07B 63/00-63/04
B01D 53/94
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属型であり且つ有機構造規定剤を使用せずに製造されたベータ型ゼオライトを、アンモニウムイオンによりイオン交換し、更にフィルターケーキ法にて、銅イオン又は鉄(II)イオンによりイオン交換した金属置換ベータ型ゼオライト。
【請求項2】
銅イオンによりイオン交換された金属置換ベータ型ゼオライトであって、製造されたままの状態においてブレンステッド酸点の量及びルイス酸点の量をアンモニア赤外-質量分析昇温脱離法にて測定したときに、ブレンステッド酸点の量よりもルイス酸点の量が多い、金属置換ベータ型ゼオライト。
【請求項3】
銅イオンによりイオン交換された金属置換ベータ型ゼオライトであって、製造されたままの状態の銅置換ベータ型ゼオライト1kg当たりのブレンステッド酸点の量をB、ルイス酸点の量をLとした場合、L/Bが1.5以上である、請求項1又は2に記載の金属置換ベータ型ゼオライト
【請求項4】
銅イオンによりイオン交換された金属置換ベータ型ゼオライトであって、600MHzの27Al MAS NMRスペクトル測定に供したときに、6配位のAlに由来するピークが実質的に観察されない、請求項1~3の何れか一項に記載の金属置換ベータ型ゼオライト。
【請求項5】
銅イオンによりイオン交換された金属置換ベータ型ゼオライトであって、600MHzの27Al MAS NMRスペクトル測定に供したときに、6配位のAlに由来するピークのうちのメインピークの強度X、4配位のAlに由来するピークのうちのメインピークの強度Yとしたときに、Y/Xが15以上である、請求項1又は2に記載の金属置換ベータ型ゼオライト
【請求項6】
M/Alモル比が0.3以上1以下である、請求項1に記載の金属置換ベータ型ゼオライト(但し、MはFe又はCuである)。
【請求項7】
銅イオンによりイオン交換した後の製造されたままの状態においてブレンステッド酸点の量及びルイス酸点の量をアンモニア赤外-質量分析昇温脱離法にて測定したときに、金属置換ベータ型ゼオライト1kg当たりのブレンステッド酸点の量及びルイス酸点の量の合計量が0.5mol以上3.5mol以下である、請求項1~の何れか1項に記載の金属置換ベータ型ゼオライト。
【請求項8】
アルカリ金属型であり且つ有機構造規定剤を使用せずに製造されたベータ型ゼオライトにおけるアルカリ金属イオンを、アンモニウムイオンによりイオン交換してアンモニウム置換ベータ型ゼオライトを得、該アンモニウム置換ベータ型ゼオライトのケーキに銅イオン又は鉄(II)イオン含有水溶液を通液することにより該アンモニウム置換ベータ型ゼオライトにおけるアンモニウムイオンを銅イオン又は鉄(II)イオンによりイオン交換する、金属置換ベータ型ゼオライトの製造方法。
【請求項9】
前記銅イオン又は鉄(II)イオン含有水溶液における銅イオン又は鉄(II)イオンの濃度が0.3mol/L以下である、請求項に記載の金属置換ベータ型ゼオライトの製造方法。
【請求項10】
ケーキ状に成形した前記アルカリ金属置換ベータ型ゼオライトに、pH6.5以上7.5以下のアンモニウムイオン含有水溶液を通液して、該アルカリ金属置換ベータ型ゼオライトにおけるアルカリ金属をアンモニウムイオンによりイオン交換する、請求項又はに記載の金属置換ベータ型ゼオライトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅イオン又は鉄イオン交換したベータ型ゼオライト及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、車両等の排気ガス浄化用触媒として広く使用されている。例えば、窒素酸化物を除去するには、アンモニアSCR法が広く用いられていて、銅や鉄などの遷移金属を担持したゼオライト等を触媒とし、アンモニアを還元剤としている。
【0003】
ゼオライトは、マイクロ細孔が規則的に存在する多孔性物質で、単位質量当たりの表面積が大きい。マイクロ細孔のサイズによって、気相中の分子をふるい分けすることができるので、窒素酸化物のような比較的小さな分子だけ反応場に取り込みハイドロカーボンのような大きな分子を選択的に除去することも可能である。マイクロ細孔のサイズは、ゼオライトの結晶構造に依存する。自動車等の内燃機関の排ガス浄化用触媒については、小孔径のゼオライトとしては、SSZ-13やSAPO34などいわゆるCHA型と呼ばれるもの、中孔径のものとしては、MFI型、大孔径のゼオライトとしては、ベータ型ゼオライトが実用的に用いられている。
【0004】
ゼオライトは、Si、Al及びOの各元素で構成される骨格を持ち、骨格内に結合したAl(アルミニウム)原子の周辺が負に帯電し、この電荷を打ち消すためにアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、アンモニウムイオン、プロトン(水素イオン)のようなカチオン性の物質が対カチオンとして配位することができる。例えば対カチオンがナトリウムイオンであるゼオライトをナトリウム型、対カチオンが銅イオンであるゼオライトを銅型、対カチオンが鉄イオンであるゼオライトを鉄型と呼ぶ場合もある。対カチオンは交換することが可能なのでイオン交換機能が発現する。
【0005】
ゼオライトは通常アルカリ金属型で合成され、アルカリ金属イオンを直接銅イオン又は鉄イオンで交換するか、あるいはアルカリ金属イオンをアンモニウムイオンで交換後に銅イオン又は鉄イオンで交換して金属イオン置換ゼオライト(銅型又は鉄型ゼオライト)を調製することができる。
【0006】
従来のベータ型ゼオライトは、SiとAlの原子比率Si/Al比(以下、「SAR」ともいう)を高くすることにより、耐水熱性を高くすることができ、車両等の内燃機関の排ガス浄化用触媒に好適に用いられてきた。
【0007】
しかし、SARが高いがゆえにイオン交換サイトが少なく、銅や鉄などの遷移金属をイオン交換する量を多くすることができないので活性が低いという欠点があった。そのため、イオン交換以外の方法、例えば遷移金属を付着担持させるなどの方法で金属を保持させる必要があった。このような金属は、高温状態で次第に凝集して気体分子が接触できなくなり触媒活性を失うなどの問題点がある。
【0008】
この二律背反の課題の解決策として、有機構造規定剤(以下、OSDAともいう)フリーでベータ型ゼオライトを製造する方法が見出され、低SARで、イオン交換量が大きくかつ結晶構造が安定なベータ型ゼオライトを製造することが可能となった(特許文献1)。
また、特許文献2には、OSDAフリーベータ型ゼオライトをアンモニウムイオン交換した後に鉄又は銅イオンにイオン交換したゼオライトのSCR触媒活性を評価したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-129590号公報
【文献】特表2013-526406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の記載の方法で製造されたOSDAフリーベータ型ゼオライトに対し、公知の方法で銅イオン又は鉄イオンをイオン交換した金属置換ベータ型ゼオライトは、600℃以上での長時間の水熱耐久条件下における排ガス浄化用触媒性能に改善の余地があった。また特許文献2にも、公知の方法で銅イオン又は鉄イオンをイオン交換することが記載されているにすぎない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は、上記種々の課題を解決するためになされたものである。
本発明は、アルカリ金属型であり且つOSDAを使用せずに製造されたベータ型ゼオライトを、アンモニウムイオンによりイオン交換し、更にフィルターケーキ法にて、銅イオン又は鉄(II)イオンによりイオン交換した金属置換ベータ型ゼオライトを提供するものである。
【0012】
また本発明は、銅イオンによりイオン交換された金属置換ベータ型ゼオライトであって、製造されたままの状態においてブレンステッド酸点の量及びルイス酸点の量をアンモニア赤外-質量分析昇温脱離法(「IRMS-TPD法」と呼ばれることもある)にて測定したときに、ブレンステッド酸点の量よりもルイス酸点の量が多い、金属置換ベータ型ゼオライトを提供するものである。
【0013】
また本発明は、アルカリ金属型であり且つOSDAを使用せずに製造されたベータ型ゼオライトにおけるアルカリ金属イオンを、アンモニウムイオンによりイオン交換してアンモニウム置換ベータ型ゼオライトを得、該アンモニウム置換ベータ型ゼオライトのケーキに銅イオン又は鉄(II)イオン含有水溶液を通液することにより該アンモニウム置換ベータ型ゼオライトにおけるアンモニウムイオンを銅イオン又は鉄(II)イオンによりイオン交換する、金属置換ベータ型ゼオライトの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の金属置換ベータ型ゼオライトは、従来よりも排ガス浄化用触媒性能に優れたものである。特に本発明の金属置換ベータ排ガス型ゼオライトは、水熱条件下でのSCR触媒活性に優れたものである。また本発明の金属置換ベータ型ゼオライトの製造方法は、本発明の金属置換ベータ型ゼオライトを工業的に有利な方法で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(a)は、水中で、アンモニウムイオンと銅(II)イオンがイオン交換する過程を示す模式図であり、図1(b)は高温気相中で、窒素酸化物とアンモニアが銅(II)と銅(I)を触媒として反応し、NとHOに変換する過程を示す模式図である。
図2図2(a)及び(b)は、実施例1で得られたゼオライトについて測定した27Al MAS NMRのスペクトルである。
図3図3(a)及び(b)は、比較例1で得られたゼオライトについて測定した27Al MAS NMRのスペクトルである。
図4図4は、実施例及び比較例で得られた金属置換ベータ型ゼオライトのSCR触媒活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
以下では、まず、本発明の銅置換ベータ型ゼオライトについて説明する。
本発明者は、排ガス浄化用触媒活性の高い銅置換ベータ型ゼオライトの構成を鋭意検討したところ、単位質量当たりの気体分子が接触可能な銅イオン量を多くすることが重要であることを知見した。更に、そのような銅置換ベータ型ゼオライトの構成を鋭意検討したところ、ブレンステッド酸点の量及びルイス酸点の量をアンモニア赤外-質量分析昇温脱離法にて測定したときに、ブレンステッド酸点の量よりもルイス酸点の量が多い銅置換ベータ型ゼオライトが、高い触媒活性を有することを見出した。
【0017】
この理由としては、以下のことが考えられる。
アンモニア赤外-質量分析昇温脱離法ではゼオライトへのアンモニアの吸着挙動からルイス酸点量及びブレンステッド酸点量を測定できる。
このアンモニア赤外-質量分析昇温脱離法にて、銅置換ベータ型ゼオライトにアンモニアを接触させると、銅イオンは、ブレンステッド酸点を生じさせない一方で、該銅イオンにアンモニアが配位結合をするため、気体分子が接触可能な銅イオンはアンモニアに対してルイス酸として機能する。つまりアンモニア赤外-質量分析昇温脱離法にて測定されるルイス酸点量は、気体分子が接触可能な銅イオンの量を反映していると考えられる。気体分子が接触可能な銅イオンの量は触媒活性点の量を反映する。
一方、銅置換ベータ型ゼオライトにおけるブレンステッド酸点は、例えば、銅イオンに置換しきれなかったイオン交換サイトの量を示すと考えられる。例えば、アンモニウム型ゼオライトに銅イオン交換によって銅イオンを導入して銅置換ベータ型ゼオライトを得る場合、銅置換ベータ型ゼオライトにおいてアンモニウムイオンが残っていると、加熱後には対カチオンがプロトンである水素型となってブレンステッド酸点を発現する。
【0018】
従って、本発明の銅置換ベータ型ゼオライトをアンモニア赤外-質量分析昇温脱離法にて測定したときに、ブレンステッド酸点の量に比べてルイス酸点の量が多いことは、イオン交換しきれずに残存した置換前のイオンが少なく、且つ気体分子が接触可能な銅イオンが多いことによると考えられる。
【0019】
ブレンステッド酸点の量及びルイス酸点の量は、銅置換ベータ型ゼオライトの製造されたままの状態において測定する。製造されたままとは、製造されてから水分含量が10体積%以上の状態下で600℃以上、10時間以上の加熱が行われていない状態を指す。ここでいう加熱にはアンモニア赤外-質量分析昇温脱離法による測定時に行う加熱(例えば後述する実施例に記載されているような823Kまで昇温し、1時間保持する加熱)は含まれない。
【0020】
ベータ型ゼオライトにおける触媒活性をより高くする観点から、製造されたままの状態の銅置換ベータ型ゼオライト1kg当たりのブレンステッド酸点の量及びルイス酸点の量の合計量は0.5mol以上であることが好ましく、2mol以上であることがより好ましく、2.2mol以上であることが特に好ましい。また、ベータ型ゼオライトの製造しやすさ等の点から、銅置換ベータ型ゼオライト1kg当たりのブレンステッド酸点の量及びルイス酸点の量の合計量は3.5mol以下であることが好ましい。
【0021】
また、ベータ型ゼオライトにおける触媒活性をより高くする観点から、製造されたままの状態の銅置換ベータ型ゼオライト1kg当たりのブレンステッド酸点の量をB、製造されたままの状態の銅置換ベータ型ゼオライト1kg当たりのルイス酸点の量をLとした場合、L/Bは1.5以上であることが好ましい。また、L/Bの上限としては、特に限定されないが、例えば4.0程度であれば十分に触媒活性を高める効果が高い。
【0022】
特に限定されないが、例えば、本実施形態において、製造されたままの状態の銅置換ベータ型ゼオライトは、当該銅置換ベータ型ゼオライト1kg当たりブレンステッド酸点量が0.1mol~1.2molであることが好ましく、0.2mol~1.0molであることが更に好ましい。製造されたままの状態の本実施形態の銅置換ベータ型ゼオライト1kg当たりルイス酸点量は1.5mol~2.5molであることが好ましい。
【0023】
ブレンステッド酸点の量及びルイス酸点の量は、後述する実施例に記載の方法にて測定する。ブレンステッド酸点の量よりもルイス酸点の量が多く、またブレンステッド酸点及びルイス酸点量が上記の範囲である銅置換ベータ型ゼオライトは、後述する好適な製造方法にて製造できる。
【0024】
更に、本実施形態の銅置換ベータ型ゼオライトは、600MHzの27Al MAS NMRスペクトル測定に供したときに、6配位のAlに由来するピークが実質的に観察されないことが、更に触媒活性を高める点で好ましい。
【0025】
ゼオライト固体に含まれるアルミニウムにはSi-O-Alの共有結合を持つ骨格内アルミニウムと、Si-O-Al共有結合を持たない骨格外アルミニウムが存在することがわかっている。このうち骨格内アルミニウムがイオン交換機能を発現する。27Al MAS NMRによってアルミニウムの配位状態を分析することが可能である。原則として、アルミニウムが4配位であるときは骨格内アルミニウムである一方で、アルミニウムが6配位であるときは骨格外アルミニウムである。そして、骨格内アルミニウムが多いほどイオン交換容量が大きくなりアルミニウム1モルで1モルの一価のカチオンをイオン交換することができる。
本実施形態において、600MHzの27Al MAS NMRスペクトル測定に供したときに、6配位のAlに由来するピークが実質的に観察されないとは、骨格外のアルミニウムが存在しないか、存在してもごく少ないことを意味する。
【0026】
600MHzの27Al MAS NMRスペクトル測定に供したときに、「6配位のAlに由来するピークが実質的に観察されない」とは、具体的には、6配位に由来するピークの強度に対する4配位のアルミニウムに由来するピーク強度の比が一定以上であることを意味する。例えば本実施形態の銅置換ベータ型ゼオライトは600MHzの27Al MAS NMRスペクトル測定に供したときに、6配位のアルミニウムに由来するピークのうちのメインピークの強度をX、4配位のアルミニウムに由来するピークのうちのメインピークの強度をYとしたときに、好ましくはY/Xが15以上であることを意味する。Y/Xは30以上であることがより好ましく、50以上であることが特に好ましい。ここでいう強度比とは、便宜上、NMRチャートにおけるピーク高さ比である。メインピークとは、最も強度(ピーク高さ)の高いピークである。Y/Xは大きければ大きいほど好ましいが、上限として1000程度であれば、銅置換ベータ型ゼオライトを製造しやすいため好ましい。
最も好ましくは本実施形態の銅置換ベータ型ゼオライトは、27Al MAS NMRにおいて、アルミニウムに由来するピークとして、4配位のアルミニウムに由来するピークのみが観察され、6配位のアルミニウムに由来するピークが観察されないことが好ましい。
【0027】
27Al MAS NMRにおいて例えば、1000ppmの硝酸アルミニウム水溶液を基準とした場合、4配位のアルミニウムに由来するピークは52~57ppmに観察され、6配位のアルミニウムに由来するピークは0~3ppmに観察される。
【0028】
27Al MAS NMRは、製造後の銅置換ベータ型ゼオライトを500℃で1時間空気雰囲気下で焼成した後、又は700℃で20時間水熱処理した後に測定する。この状態下で6配位のAlに由来するピークが実質的に観察されない銅置換ベータ型ゼオライトが高い触媒活性を有する理由は明確ではないが、本発明者は、本実施形態の銅置換ベータ型ゼオライトは、耐熱性が高く、これらの焼成や水熱処理後であっても、焼成前の骨格内アルミニウムが骨格外へと脱離することが抑制されているものと考えている。600MHzの27Al MAS NMRにおいて6配位のAlに由来するピークが実質的に観察されない銅置換ベータ型ゼオライトは、後述する好適な製造方法にて製造できる。
【0029】
以下、更に、本発明の銅置換ベータ型ゼオライト及び鉄置換ベータ型ゼオライトについて説明する。
【0030】
本発明の銅又は鉄置換ベータ型ゼオライトは気体と接触可能な銅又は鉄イオンがより多く導入されていることを反映してゼオライト中Alの存在に起因するイオン交換サイトにおいてより高い割合で銅又は鉄が導入されていることが好ましい。この観点から、銅又は鉄置換ベータ型ゼオライトのM/Alモル比は0.3以上であることが好ましく、0.35以上であることがより好ましく、0.45以上であることが最も好ましい。ここで、MはCu又はFeである。このように大きなM/Alモル比を有することで金属置換ベータ型ゼオライトは、各種触媒として一層有用なものとなる。M/Alモル比は上限値に特に制限はないが、好ましくは1以下である。
【0031】
更に、金属置換ベータ型ゼオライトの触媒活性を一層高いものとするために、ベータ型ゼオライト中の金属Mの含有量も高いことが好ましく、例えば前記金属Mの量は、金属置換ベータ型ゼオライト中、2.5質量%以上であることが好ましい。ベータ型ゼオライト中の金属M含有量の好ましい上限としては、例えば、5質量%程度であれば、それ以上高くなくても十分に高い性能を発揮できる。
【0032】
また、銅置換ベータ型ゼオライトの一層触媒活性を高いものとするために、ベータ型ゼオライト中のAl含有量は、3質量%以上であることが好ましく、3.5質量%以上であることがより好ましい。ベータ型ゼオライト中のAl含有量の好ましい上限としては、例えば、4.5質量%程度であれば、それ以上高くなくても十分に高い性能を発揮できる。
【0033】
また、金属置換ベータ型ゼオライトの一層触媒活性を高いものとするために、金属ベータ型ゼオライト中のSi/Alモル比は、8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、5.8以下であることが特に好ましい。ベータ型ゼオライト中のSi/Alモル比の下限としては、例えば、4.2以上が好ましく挙げられる。
【0034】
更に、金属置換ベータ型ゼオライトのNa含有量は1質量%以下であることが好ましい。
【0035】
M/Alモル比、Si/Alモル比、Cu含有量、Fe含有量及び、Al含有量は、ICP-AES法にて、例えば下記実施例に記載の方法にて測定できる。
【0036】
金属置換ベータ型ゼオライトの触媒活性等の点から、金属置換ベータ型ゼオライトのミクロ細孔容積は、0.08~0.28cm3/gであることが好ましく、0.1~0.23cm3/gであることが更に好ましい。ミクロ細孔容積は例えば下記実施例に記載の方法にて測定できる。
【0037】
本実施形態の金属置換ベータ型ゼオライトは、有機構造規定剤(OSDA)を使用せずに合成されたものであることが好ましい。本発明の金属置換ベータ型ゼオライトは、欠損が少ないため、高い触媒活性を有すると発明者は考えている。「OSDAを使用せずに合成された」とは、具体的には、それを合成する原料中にOSDAが含まれていないことを指す。従って、例えば原料中に、OSDAを用いて製造した種結晶が用いられていても、その種結晶が使用前に焼成されることによりOSDAが除去されており、且つその他の原料中にもOSDAが含まれていない場合は、「OSDAを使用せずに合成された」場合に含まれる。OSDAフリーベータ型ゼオライトを用いることは、OSDAを用いないという点で、経済性の観点及び環境負荷の観点からも有利である。なお、本発明のゼオライトは、無機及び有機のいずれのSDAも使用せずに製造されたものであることが特に好ましい。
【0038】
更に本実施形態の金属置換ベータ型ゼオライトは、アルカリ金属型であり且つ、OSDAを使用せずに製造されたベータ型ゼオライトを、アンモニウムイオンによりイオン交換し、更にフィルターケーキ法にて、銅イオン又は鉄(II)イオンによりイオン交換したものであることが好ましい。本発明者は、このような金属置換ベータ型ゼオライトが、フィルターケーキ法を使用せずに銅イオン又は鉄(II)イオンによりイオン交換した金属置換ベータ型ゼオライトに比べて、ブレンステッド酸点量よりもルイス酸点量が大きく、また上記NMR測定において加熱後の骨格外Alがほとんど観察されず、耐水熱性に優れ、触媒活性、特にSCR触媒活性の点で優れたものとなることを確認した。本明細書には本実施形態の好ましい構造や特性について可能な限りのことを記載しているが、更にそれ以上の金属置換ベータ型ゼオライトの構造や特性を規定する為には、著しく過大な経済的支出及び時間を要し、不可能であるという事情が存在する。特許出願の性質上、迅速性等を必要とすることに鑑みて、出願人は、本発明の金属置換ベータ型ゼオライトの好ましい特徴を上記の通り本明細書に記載した上で、更に、アルカリ金属型であり且つ、OSDAを使用せずに製造されたベータ型ゼオライトを、アンモニウムイオンによりイオン交換し、更にフィルターケーキ法にて、銅イオン又は鉄(II)イオンによりイオン交換した銅置換ベータ型ゼオライトであることも記載した。
【0039】
フィルターケーキ法とは、イオン交換対象となるベータ型ゼオライトのケーキにイオン交換液を通液することを指す。ベータ型ゼオライトのケーキは、水等の液体でベータ型ゼオライトを懸濁し、これをろ過板上に注ぎ、液体分をろ過させ、固体分をろ過板上に残存させた湿潤状態の固形物である。ケーキ形成時の液体分のろ過、及び、ケーキへのイオン交換液の通液は、液体分を吸引して行うことが好ましい。
【0040】
以下、本発明の金属置換ベータ型ゼオライトの好適な製造方法について更に説明する。本製造方法は、アルカリ金属型であり且つ、OSDAを使用せずに製造されたベータ型ゼオライトにおけるアルカリ金属イオンを、アンモニウムイオンによりイオン交換してアンモニウム置換ベータ型ゼオライトを得、該アンモニウム置換ベータ型ゼオライトのケーキに銅イオン又は鉄(II)イオン含有水溶液を通液することにより該アンモニウム置換ベータ型ゼオライトにおけるアンモニウムイオンを銅イオン又は鉄(II)イオンによりイオン交換するものである。本製造方法によれば、アンモニウムイオンによりイオン交換されたベータ型ゼオライトの陽イオン交換サイトに対して銅又は鉄(II)を非常に高効率で導入でき、耐熱性、特に耐水熱性に優れ、触媒活性の高い金属置換ベータ型ゼオライトを得ることができる。
【0041】
原料ベータ型ゼオライトは、一般にナトリウム等のアルカリ金属を含んでいる。アルカリ金属を含むベータ型ゼオライトは、これを石油化学工業における触媒として用いる場合や、内燃機関の排ガス浄化用触媒として用いる場合に、所期の特性を発揮しにくいので、イオン交換によって除去し、アンモニウム型のベータ型ゼオライトとなす。
【0042】
OSDAフリーベータ型ゼオライトの合成方法としては、例えば国際公開2011/013560号パンフレットに記載の方法を採用することができる。また、中国特許出願公開第101249968A号明細書に記載の方法も採用することができる。更に、Chemistry of Materials, Vol.20, No.14, p.4533-4535 (2008)に記載の方法を採用することもできる。
【0043】
OSDAフリーベータ型ゼオライトの合成方法の一例を挙げるならば、以下のとおりである。
(i)以下に示すモル比で表される組成の反応混合物となるように、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源、及び水を混合し、
(ii)SiO2/Al23=40~200、特に44~200
Na2O/SiO2=0.22~0.4、特に0.24~0.35
2O/SiO2=10~50、特に15~25
SiO2/Al23比が8~30であり、かつ平均粒子径が150nm以上、特に150~1000nm、とりわけ200~600nmである、有機化合物を含まないベータ型ゼオライトを種結晶として用い、これを、前記反応混合物中のシリカ成分に対して0.1~20質量%の割合で該反応混合物に添加し、
(iii)前記種結晶が添加された前記反応混合物を100~200℃、特に120~180℃で密閉加熱する。
【0044】
原料ベータ型ゼオライトのアンモニウムイオンによるイオン交換には、アンモニウム化合物が用いられ、特に硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウムを用いることが好ましい。硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム等のアンモニウム化合物によってイオン交換を行う場合、これらの化合物の水溶液のpHを6.5~7.5にすることが好ましい。イオン交換は、アンモニウムイオンを含む水溶液を加熱した状態下に、又は非加熱の状態下に行うことができる。原料ベータ型ゼオライトのアンモニウムイオンによるイオン交換は、原料ベータ型ゼオライトとアンモニウムイオンとを接触させる任意の方法で行うことができるが、好ましくはフィルターケーキ法を採用し、前記の方法にて原料ベータ型ゼオライトをケーキ状に成形し、これにアンモニウムイオンを含む水溶液を通液させることが、得られるアンモニウムイオン置換ベータ型ゼオライトにおけるアンモニウム交換効率を高める点で好ましい。
【0045】
その後、原料ベータ型ゼオライトを洗浄して、アンモニウム置換ベータ型ゼオライトを得る。このアンモニウム型のベータ型ゼオライトは、アルカリ金属イオンの含有量が極めて低減したものとなる。
【0046】
更に、本製造方法では、この該アンモニウム置換ベータ型ゼオライトの銅イオン又は鉄(II)イオンによるイオン交換をフィルターケーキ法にて行う。つまり、アンモニウム置換ベータ型ゼオライトのケーキに銅イオン又は鉄(II)イオン含有水溶液を通液することにより該アンモニウム置換ベータ型ゼオライトにおけるアンモニウムイオンを銅イオン又は鉄(II)イオンによりイオン交換する。
【0047】
ケーキに通液させる銅イオン含有水溶液の調製に用いる銅イオン源としては、硫酸銅、酢酸銅、硝酸銅、リン酸銅、塩化銅等を挙げることができ、硫酸銅、酢酸銅、塩化銅が好ましい。銅イオン含有水溶液における銅イオン濃度は、0.01mol/L以上0.3mol/L以下が好ましく、0.03mol/L以上0.2mol/L以下がより好ましい。好ましい通液量は、ゼオライト10gに対し、0.05L~0.15Lであり、より好ましくは0.08L~0.1Lである。また後述するように銅イオン含有水溶液の好ましいpHは3~6、特に4~5である。
【0048】
また、ケーキに通液させる鉄(II)イオン含有水溶液の調製に用いる鉄(II)イオン源としては、硫酸鉄(II)、酢酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、リン酸鉄(II)、塩化鉄(II)等を挙げることができる。鉄(II)イオン含有水溶液における鉄(II)イオン濃度及び通液量は、上記で挙げた、銅イオン含有水溶液における銅イオンの好ましい濃度及び通液量と同様である。触媒活性に優れた鉄置換ベータ型ゼオライトを得るために、鉄(II)イオン含有水溶液の調製に際しては、二価の鉄が三価の鉄に酸化されることを防止する化合物を水中に添加する必要がある。そのような化合物としては、Fe(II)イオンのイオン交換を妨げず、かつFe(II)イオンがFe(III)イオンに酸化されることを防止し得る化合物であるアスコルビン酸が好ましい。鉄(II)イオン含有水溶液中におけるアスコルビン酸の含有量は、添加する二価の鉄のモル数の0.1~10倍、特に0.5~8.5倍とすることが、二価の鉄の酸化を効果的に防止する観点から好ましい。
【0049】
アンモニウム置換ゼオライトのケーキは、上述した通り、アンモニウム置換ゼオライトを水等の溶媒に懸濁したスラリーを調製し、これを濾過板上で濾過させることにより形成する。鉄イオン交換の場合には、このスラリーにも、アスコルビン酸を含有させておくことが好ましい。このスラリー中のアスコルビン酸の量は、アンモニウム置換ゼオライト100質量部に対して1質量部以上150質量部以下であることが、二価の鉄の酸化を効果的に防止する観点から好ましい。
【0050】
金属担持量を高める点から、ゼオライト1gあたりの通液総量は、0.5~1000mlが好ましく、1~100mlがより好ましい。また、1gで1分当たりの通液量は、0.005~20mlが好ましく、0.01~10mlがより好ましい。
【0051】
通液後のベータ型ゼオライトは洗浄後、乾燥や焼成することで好適な金属置換ベータ型ゼオライトを得ることができる。
【0052】
本製造方法によると、ゼオライトに含まれるイオン交換サイトに対して高い割合で銅又は二価鉄を保持させることができ、ブレンステッド酸点よりもルイス酸点が多く、また、600MHzの27Al MAS NMRスペクトル測定に供したときに、6配位のAlに由来するピークが実質的に観察されない、金属置換ベータ型ゼオライトを得ることができる。この理由は明確ではないが、本発明者は、以下の理由によると考えている。以下では、銅イオン交換をモデルに説明するが、鉄イオン交換も同様であると考えられる。
【0053】
ゼオライトを銅イオンにイオン交換する方法としては、例えば、所定濃度の銅(II)イオン含有水溶液をビーカーに入れ、そこに所定量のアルカリ金属型ゼオライト又はアンモニウム型ゼオライトを投入し、できるだけ長い時間撹拌接触したのち、濾過等で固液分離するといった方法である。本発明者は、この従来の方法でイオン交換すると、投入した金属のすべてはイオン交換しないことが判った。その理由は、(1)式のようなイオン交換平衡となるからと考えられる。
【0054】
【数1】
【0055】
このときイオン交換前後の溶液のpHは、銅の塩(CuA2)及びアルカリ金属又はアンモニウムの塩(MA)と水の解離平衡によってきまる。
また、銅イオン交換液は、酢酸、硫酸、塩酸などアニオンの種類によらず、pHは5.5よりも低く、温度を高くすると更にpHは低いものとなる。銅のプールベーダイヤグラムによると水溶液中の銅イオンを安定化させるには、pHは5より高いと水酸化銅が生成し、アンモニウム型ゼオライトの銅イオンによるイオン交換が不可能となる。アルミニウムのプールベーダイヤグラムによると、pHが4より低いとゼオライト中のアルミニウムが水溶液側に溶出してゼオライトのイオン交換容量が小さくなる可能性がある。従って、イオン交換液のpHは4から5の狭い範囲に調整することが望ましい。前述のように、アニオンの種類と濃度、ゼオライトの量などの条件によってpHは大きく変化するものである。本明細書でいうpHは25℃のときの値である。
【0056】
銅イオン交換したゼオライトを酸性の水溶液に加えると(2)式に示すようなpHに応じて銅が溶出する平衡も生じる。
【0057】
【数2】
【0058】
このように、ゼオライトを銅イオン含有水溶液中に分散させる従来の方法では、イオン交換平衡反応と銅溶出平衡反応の複雑な平衡関係の中で、イオン交換率を高めにくいという問題があった。
【0059】
これに対し、本製造方法では、イオン交換液とゼオライトとの接触時間が短いため、イオン交換液の組成制御が容易である。ゼオライトには、最終的には、アルカリ金属イオン又はアンモニウムカチオンが含まれないイオン交換液が接触することになり、ゼオライトに含まれるイオン交換サイトに対してほぼ等量の銅又は鉄を保持させることができる。
【0060】
本製造方法を工業的に実施するには、ベルトフィルタを用いた生産方式が考えられる。市販のベルトフィルタにOSDAフリーで製造したベータ型ゼオライトを水に懸濁し、両端をローラーで折り返した閉環状のベルトを数cm/sec程度の速度で稼働させた多孔性のベルト上に適切な厚みをもったケーキを連続的に形成する。第一ゾーンでは、塩化アンモニウムと炭酸アンモニウムを水に溶解しpHを7に調整したイオン交換液(アンモニウムイオン含有水溶液)をシャワー状に吹きかける。イオン交換液はベルトの下部から真空で適宜分離する。ついで、第二ゾーンでは、銅イオン又は鉄(II)イオン含有水溶液をイオン交換液とし、同様の方法でイオン交換する。第三ゾーンでは、純水をシャワー状に吹きかけることで水洗し、余剰のイオン交換液を除去する。このような装置であれば、例えば、自動車用触媒コンバータ向けの銅置換ベータ型ゼオライトを工業規模で生産することができる。
【0061】
このようにして得られた本実施形態の金属置換ベータ型ゼオライトは、固体酸触媒や吸着剤として有望なものであり、更に詳細にはパラフィンを接触分解する触媒、例えば石油化学工業における長鎖炭化水素(例えばヘキサン)のクラッキング触媒として特に有望であり、また、ガソリンエンジン及びディーゼルエンジン等の各種内燃機関の排ガス浄化用ハイドロカーボントラップとしても有望なものである。
【0062】
特に本実施形態の金属置換ベータ型ゼオライトがSCR触媒として好適であるのは以下の理由によると本発明者は考えている。以下では、銅置換ベータ型ゼオライトをモデルに説明するが、鉄(II)置換ベータ型ゼオライトについても同様である。
一般にベータ型ゼオライトは、SCR触媒と使用する場合、図1に示すメカニズムで働くと考えられる。
ゼオライト結晶構造中のアルミニウムは、Siに比べると価数が1つ少ないため、近傍にある酸素が負に帯電し、そこでカチオンのイオン交換が行われる。図1(a)のように、イオン交換によりゼオライトに担持された銅イオンは、SCR触媒として使用される場合、アンモニアによって図1(b)のようにCu(II)からCu(I)に還元され、それが触媒となって、NO、NOと2NHとの反応速度を高め、結果的にN及びHOに効率的に変換させるものである。NHは、窒素酸化物を還元するために供給されるが、反応を進めるためにある程度過剰に供給する必要がある。効率的なNO、NOの還元のために、過剰なNHを触媒近傍に保持させる必要がある。
本実施形態の金属置換ベータ型ゼオライトは、ゼオライトに含まれるイオン交換サイトに対してほぼ等量の銅を保持させることができ、上述したようにブレンステッド酸点の量よりもルイス酸点の量が多いため、気体と接触可能なCuが多いと考えられることから、CuとNHの錯結合(見かけ上ルイス酸として測定される)により効果的に保持することができると考えられる。
【実施例
【0063】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
なお、分析装置や方法は以下の通りである。
・組成分析は株式会社島津製作所製のICPS-7510を用いて行った。
・ミクロ細孔容積は次のように求めた。マイクロトラックベル社製BELSorpMAXを用い、真空下(到達圧力2Pa)300℃で1h前処理後に-196℃で測定された窒素の吸着等温線から、窒素の圧力0.005atmにおける窒素吸着容量を求め、次の計算式で求めた。
ミクロ細孔容積(cm-1)=0.005atmにおける窒素吸着容量(molN2-1)×28.01(gN2 molN2 -1)/0.808(gLiqN2 cm-3
【0064】
〔製造例1〕
(1)種結晶の合成
水酸化テトラエチルアンモニウムをOSDAとして用い、アルミン酸ナトリウムをアルミナ源とし、微粉状シリカ(MizukasilP707)をシリカ源とする従来公知の方法により、165℃、96時間、攪拌加熱を行って、SiO2/Al23モル比が24.0のベータ型ゼオライトを合成した。これを電気炉中で空気を流通しながら550℃で10時間焼成して、OSDAを含まない結晶を製造した。この結晶を走査型電子顕微鏡により観察した結果、平均粒子径は280nmであった。この有機物を含まないベータ型ゼオライトの結晶を、種結晶として使用した。
【0065】
(2)OSDAフリーベータ型ゼオライトの合成
純水13.9gに、アルミン酸ナトリウム0.235gと、36質量%水酸化ナトリウム1.828gを溶解して水溶液を得た。微粉状シリカ(Cab-O-sil、M-5)2.024gと、前記の種結晶0.202gを混合したものを、少しずつ前記の水溶液に添加して攪拌混合し、反応混合物を得た。この反応混合物におけるSiO/Alモル比は70、NaO/SiOモル比は0.3、HO/SiOモル比は20であった。この反応混合物を60mLのステンレス製密閉容器に入れて、熟成及び攪拌することなしに140℃で34時間、自生圧力下で静置加熱した。密閉容器を冷却後、生成物を濾過、温水洗浄して白色粉末を得た。この生成物についてX線回折測定を行ったところ、不純物を含まないベータ型ゼオライトであることが確認された。組成分析の結果、そのSi/Alモル比は6.4であった。
【0066】
〔実施例1〕
(1)アンモニウム置換ゼオライトの調製
製造例1で得られたナトリウム型のOSDAフリーベータ型ゼオライトを1400gとり、8500ml、60℃の水に懸濁し、下部に真空ビンを接続した直径330mmのヌッチェに5Cの濾紙をおきその上に注ぐことで、厚さ2cm程度のゼオライトケーキを形成した。
次に、塩化アンモニウムと炭酸アンモニウムを水に溶解してpHを7に調整したイオン交換液を用意し、40℃とし上記のゼオライトケーキに注ぎ下部の真空によって除去する操作を5回繰り返した。
次に、イオン交換液を60℃に加温し、ゼオライトケーキに注ぎ、過剰な溶質を洗浄した。洗浄度合いは、洗浄液のpH及び電気伝導度を測定し、所定値(pH=7、30μS/m)となるまで行った。
【0067】
(2)銅置換ゼオライトの調製
(1)で得られたアンモニウム置換ゼオライトを271gとり、2433mlの水に懸濁し、下部に真空ビンを接続した直径165mmのヌッチェに5Cの濾紙をおきその上に注ぐことで、厚さ2cm程度のゼオライトケーキを形成した。
次に、硫酸銅(II)を水に溶解して銅イオン濃度を0.1mol/Lに調整した銅(II)イオン交換液(pH4)2572mlを4分割してそれぞれ1回分とし、その1回分(643ml)をゼオライトケーキに注ぎ、下部の真空によって除去する操作を4回繰り返した。1回の除去にかける10分間~30分間程度となるように真空度を調整した。
次に、純水をゼオライトケーキに注ぎ、過剰な溶質を洗浄した。洗浄度合いは、洗浄液のpH及び電気伝導度を測定し、所定値(pH=7、30μS/m)となるまで行った。
これを取り出して100℃で4時間乾燥し、実施例1の銅置換ベータ型ゼオライトを得た。得られた銅置換ベータ型ゼオライトの組成分析及びミクロ細孔容積、及びブレンステッド酸点量及びルイス酸点量の測定結果を表1に示す。表1には、アンモニウムイオンに交換後、銅イオン交換前のベータ型ゼオライトの組成分析及び酸点量の結果も併せて示す。なおブレンステッド酸点量及びルイス酸点量は下記の方法にて測定した。表1に示すように、実施例1の銅イオン交換ベータ型ゼオライトは、ブレンステッド酸点量よりもルイス酸点量の方が多く、銅置換ベータ型ゼオライト1kg当たりのブレンステッド酸点の量をB、ルイス酸点の量の量をLとした場合、L/Bは2.19(=2.11/0.96)であった。
【0068】
【表1】
【0069】
<ブレンステッド酸点量及びルイス酸点量>
実施例1で得られた銅置換ベータ型ゼオライトのブレンステッド酸点量及びルイス酸点量を文献“Naonobu Katada, Yusuke Kawaguchi, Kazuki Takeda, Taku Matsuoka, Naoki Uozumi, Kazuki Kanai, Shohei Fujiwara, Keisuke Kinugasa, Koshiro Nakamura, Satoshi Suganuma and Masato Nanjo, Appl. Catal., A: Gen., Vol. 530, pp. 93-101 (2017)”の方法でアンモニア赤外-質量分析昇温脱離法で分析した。
すなわち、当該ゼオライト約10mgをめのう乳鉢ですりつぶし、直径10mm金属製円筒内で鏡面板で挟んで20MPa程度の圧力をかけて直径10mmの円盤状に圧縮成型した。その後、マイクロトラックベル株式会社製IRMS-TPD装置の付属mesh型試料ホルダーに入れて同装置にセットし、酸素6.3:窒素93.7のモル比を持つ混合気体を34μmol min-1の流速で流通させて823Kまで昇温し、823Kで1h保ち、823Kのまま10min真空排気し、真空を保ったまま343Kまで降温した後に流速82μmol min-1のヘリウムを流通させ、出口を真空ポンプで排気して系内を6.0kPaに保ち、2K min-1の速度で803Kまで昇温し、昇温中に赤外スペクトルを1Kに1回の頻度で測定した。続いてヘリウムを流通させたまま343Kまで降温し、脱気後に343Kでアンモニア13kPaを導入し30min保ち、180min脱気後に流速82μmol min-1のヘリウムを流通させ、出口を真空ポンプで排気して系内を6.0kPaに保ち、2K min-1の速度で803Kまで昇温し、昇温中に質量スペクトルを常時記録すると同時に赤外スペクトルを1Kに1回の頻度で測定した。昇温の終了後に既知濃度のアンモニア・ヘリウム混合気体を流通させ、このときの質量分析計の応答を元に質量スペクトルを気相アンモニア濃度に換算し、気相アンモニア濃度を温度に対してプロットした関数をM(T)とした。ただしTは温度を示す。また測定の終了後に試料を取り出して秤量した。一方、赤外光の各波数におけるアンモニア吸着後の赤外吸光度からアンモニア吸着前の赤外吸光度を減じたものを波数に対してプロットしたものを赤外差スペクトルとし、赤外差スペクトルの1260-1330cm-1に現れるピーク面積の温度による微分に-1を乗じたものを温度に対してプロットした関数をL(T)、1420-1500cm-1に現れるピーク面積の温度による微分に-1を乗じたものを温度に対してプロットした関数をB(T)とした。次式のzが最小となるようなx、yを試行錯誤によって選んだ。
【0070】
【数3】
【0071】
得られたxL(T)はルイス酸点のアンモニアTPDプロファイル、yB(T)はブレンステッド酸点のアンモニアTPDプロファイルである。次式によってルイス酸点量とブレンステッド酸点量を決定した。
【0072】
【数4】
【0073】
ただしここでFは測定時のヘリウムの体積流量(本測定では34cm-1)、Wは試料の質量、ΔTは赤外スペクトルの測定間隔(本測定では1K)。
【0074】
27Al MAS NMR>
実施例1の銅置換ベータ型ゼオライトを1時間、500℃で空気雰囲気下で焼成した(焼成物)。焼成は、常温のマッフル炉から2℃/minで500℃まで昇温し、1時間保持した後、降温して取り出すことにより行った。焼成前の状態、及び、焼成後の状態の27Al MAS NMR(マジック角回転核磁気共鳴)スペクトルを、以下の方法により測定した。測定装置としては、Bruker 社製 AVANCE III 600 を用いた。
試料管に試料(82~127mg程度)を詰め、プローブ内に導入した。1Hの共鳴周波数600.130 MHzに対応する27Alの共鳴周波数156.388 MHzに応じたチューニングを行うとともに、試料管を外部磁場に対して54.73°(マジック角)傾け、3~15 kHzで高速回転させた。ラジオ波のパルスを照射し、得られたFID(自由誘導減衰)信号をフーリエ変換してNMRスペクトルを得た。繰り返し時間と積算時間はそれぞれ0.5秒及び10分と設定した。
銅置換ベータ型ゼオライトのサンプルの27Al MAS NMRのスペクトルを図2に示す。図2に示すように、焼成前の状態(図2(a)、製造したままの状態)、及び、焼成後の状態(図2(b))のいずれにおいても、銅置換ベータ型ゼオライトのサンプルでは、4配位にAlに帰属される単一ピーク(化学シフト55~56ppm付近)のみが観測され、6配位Alに帰属される単一ピーク(化学シフト0~3ppm付近)は実質的に観測されなかった。具体的には、焼成前の状態では、4配位Alに帰属される単一ピークのピーク高さをYとし、6配位Alに帰属される単一ピークのピーク高さをXとしたときのピーク高さ比Y/Xが∞であり、焼成後の状態ではY/Xが19.8であった。
【0075】
〔比較例1〕
製造例1と同じ条件においてOSDAフリーで製造したベータ型ゼオライトを用い、実施例1の(1)と同じ条件でアンモニウムイオン交換を行い、アンモニウム置換ゼオライトを製造した。
【0076】
このアンモニウム置換ゼオライトを29gとり、804mlの水に懸濁し、20.61gの硫酸銅を添加して、銅イオン濃度が濃度0.1mol/Lになるようにした。その後、25℃で5時間撹拌した。このときの硫酸銅水溶液のpHは4であった。
次に、下部に真空ビンを接続した直径80mmのヌッチェに5Cの濾紙をおきその上に硫酸銅水溶液を注ぐことで、厚さ1cm程度の銅置換ゼオライトケーキを形成した。
【0077】
次に、純水をゼオライトケーキに注ぎ、過剰な溶質を洗浄した。洗浄度合いは、洗浄液のpH及び電気伝導度を測定し、所定値(pH=7、30μS/m)となるまで行った。これを取り出して実施例1と同条件にて乾燥し、比較例1の銅置換ベータ型ゼオライトを得た。得られた銅置換ベータ型ゼオライトの組成分析及び酸点量の分析結果を表1に示す。表1に示すように、比較例1の銅イオン交換ベータ型ゼオライトは、ブレンステッド酸点量よりもルイス酸点量の方が少なかった。
【0078】
比較例1の銅置換ベータ型ゼオライトについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を図3に示す。図3に示すように、比較例1の銅置換ベータ型ゼオライトは、焼成前の状態では、4配位にAlに帰属される単一ピーク(化学シフト55.5099ppm)に加えて6配位Alに帰属される単一ピーク(化学シフト0~3ppm付近)は実質的に観測されなかった(図3(a))が、焼成後には観測された(図3(b))。具体的には、焼成前の状態では、4配位Alに帰属される単一ピークのピーク高さをYとし、6配位Alに帰属される単一ピークのピーク高さをXとしたときのピーク高さ比Y/Xが∞であり、焼成後の状態ではY/Xが3.3であった。
【0079】
〔実施例2〕
実施例1において、硫酸銅(II)を酢酸銅(II)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の銅置換ベータ型ゼオライトを得た。表1に示すように、実施例1と同様、この実施例2の銅置換ベータ型ゼオライトは、ブレンステッド酸点量よりもルイス酸点量の方が多いことが確認された。
【0080】
〔比較例2〕
比較例1において、硫酸銅(II)を酢酸銅(II)に変更した以外は比較例1と同様にして、比較例2の銅置換ベータ型ゼオライトを得た。表1に示すように、この比較例2について、ブレンステッド酸点量よりもルイス酸点量の方が少ないことが確認された。
【0081】
〔実施例3〕
水5360mlに、アスコルビン酸1080gを加えて溶解させた後に、実施例1の(1)で得られたアンモニウム置換ベータ型ゼオライトを1074g投入し、400rpmで、10分程度攪拌した。得られたスラリーを下部に真空ビンを接続した直径330mmのヌッチェに5Cの濾紙をおきその上に注ぐことで、厚さ2cm程度のゼオライトケーキを形成した。
次に、水14430mlに、アスコルビン酸2153gを溶解させた後に、硫酸鉄(II)七水和物を410g加えて溶解させて、鉄(II)イオン濃度を0.1mol/Lに調整した鉄イオン交換液(25℃)を用意した。これを4分割してそれぞれ1回分とし、その1回分(3607ml)をゼオライトケーキに注ぎ、下部の真空によって除去する操作を4回繰り返した。1回の除去にかける10分間~30分間程度となるように真空度を調整した。
次に、純水をゼオライトケーキに注ぎ、過剰な溶質を洗浄した。洗浄度合いは、洗浄液のpH及び電気伝導度を測定し、所定値(pH=7、40μS/m)となるまで行った。これを取り出して100℃で4時間乾燥し、実施例3の鉄(II)置換ベータ型ゼオライト(fresh)を得た。
得られた鉄(II)置換ベータ型ゼオライトについて上記の方法にて組成分析したところ、Fe/Alのモル比率が0.37、Si/Alのモル比率が4.84、Fe含量が2.8質量%、Al含量が3.8質量%であった。
【0082】
〔比較例3〕
市販の銅置換CHA型ゼオライト(Cu-CHA触媒、SSZ13)を用いた。
【0083】
〔比較例4〕
市販の鉄置換ベータ型ゼオライト(Fe-BEA触媒)を用いた。
【0084】
実施例1及び3で得られた金属置換ベータ型ゼオライト(製造したままの状態)、比較例1で得られた金属置換ベータ型ゼオライト(製造したままの状態)、比較例3及び4の市販の金属置換ゼオライトについて、以下の方法で<SCR触媒活性>を測定した。
<SCR触媒活性>
評価対象である各ゼオライトを、テストピース上にコーティング処理して試料を得た。
:10体積%、HO:10体積%、残りをNとした混合ガスを調製し、700℃に保持した炉に導入し、その中にゼオライト試料を20時間静置して水熱耐久処理を行った。
その後、当該ゼオライト試料を取り出し、常温まで冷却した。当該ゼオライト試料を常圧固定床流通式反応管に充填した。下記の組成のガスを、SV:75000h-1の条件で流通させながら、100℃から600℃まで20℃/min昇温の条件で、SCR触媒活性を測定した。
(ガス組成)NO:200ppm(体積基準)、NH:200ppm(体積基準)、CO:10体積%、O:6体積%、HO:7体積%、及びNバランス、
測定結果を図4に示す。
【0085】
図4に示すように、銅置換ゼオライトのうち、実施例1のベータ型ゼオライトは200~400℃の低温域でのSCR触媒活性が高く、しかも、400℃~600℃の高温域でもSCR触媒活性が高いことが判る。
これに対し、実施例1とは逆にブレンステッド酸点量がルイス酸点量よりも多く、NMRスペクトルにおいて6配位のアルミニウムに由来するピークが観察された比較例1の銅置換ベータ型ゼオライトは、低温域及び高温域にわたりSCR触媒活性が低いことが判る。また、比較例3の市販のCu-CHAゼオライトについても、高温域においてSCR触媒活性が低いことが判る。
更に、鉄置換ゼオライトのうち、実施例3のベータ型ゼオライトは、比較例4の市販の鉄置換ベータ型ゼオライトに比べて、優れた高温域のSCR触媒活性を有することが判る。
【0086】
以上の通り、本発明の金属置換ベータ型ゼオライトはSCR触媒活性が高いことから、産業上の有用性は高いものである。特に、従来、銅置換ベータ型ゼオライトは、鉄置換ベータ型ゼオライトに比べると低温域での触媒活性は高いが、高温域での活性が低いことが知られている。それに比べて、本発明の銅置換ベータ型ゼオライトは、銅置換ベータ型ゼオライトであるにもかかわらず、高温において高いSCR触媒活性が見られた。また、通常の耐水熱性ゼオライトは、全て高SARであることから、銅イオン交換量が少ない。それに比べると、本発明のゼオライトは、イオン交換量が大きく、銅などの金属イオン交換量が多い。従って、SCR触媒の動的特性が高いことが想定され有用性が高いことは明らかである。

図1
図2
図3
図4