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特許7297259中空柱状物の補強ユニットと中空柱状物の補強方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】中空柱状物の補強ユニットと中空柱状物の補強方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230619BHJP
   E04H 12/08 20060101ALI20230619BHJP
   E01F 9/696 20160101ALI20230619BHJP
【FI】
E04G23/02 F
E04H12/08
E01F9/696
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020025674
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021130928
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510169424
【氏名又は名称】株式会社トッププランニングJAPAN
(73)【特許権者】
【識別番号】505049663
【氏名又は名称】辻 和勝
(73)【特許権者】
【識別番号】506225765
【氏名又は名称】菱田 親
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】辻 和勝
(72)【発明者】
【氏名】菱田 親
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 浩治
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-110087(JP,A)
【文献】特開2016-079719(JP,A)
【文献】特開2010-047986(JP,A)
【文献】特開2014-101724(JP,A)
【文献】特開2013-253467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04H 12/08
E01F 9/696
H02G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
根枷を有する中空柱状物の内側から前記中空柱状物を補強する補強ユニットであって、
中空状に変形可能な補強部材と、
前記補強部材に収容され、内側に供給される気体により膨張可能な袋部材と、
を有してなり、
前記補強部材は、
筒状部と、
前記筒状部の一端に一体に連結される複数の脚部と、
を備える、
ことを特徴とする補強ユニット。
【請求項2】
前記筒状部の内側の空間は、複数の前記脚部それぞれの内側の空間と連通する、
請求項1記載の補強ユニット。
【請求項3】
前記袋部材は、
前記筒状部に対応する筒状袋部と、
前記筒状袋部の一端に一体に連結され、複数の前記脚部に対応する複数の脚状袋部と、
を備え、
前記筒状袋部の内側の空間は、複数の前記脚状袋部それぞれの内側の空間と連通する、
請求項2記載の補強ユニット。
【請求項4】
前記筒状袋部の一部は、前記筒状部の他端から突出し、
複数の前記脚状袋部それぞれの一部は、対応する前記脚部の先端から突出する、
請求項3記載の補強ユニット。
【請求項5】
前記中空柱状物の内側において、前記袋部材が膨張したとき、
前記筒状部の外周面は、前記中空柱状物の内壁面の一部に当接し、
複数の前記脚部それぞれの外周面は、前記内壁面の他の一部と、隣接する前記脚部の外周面と、に当接する、
請求項1乃至4のいずれかに記載の補強ユニット。
【請求項6】
複数の前記脚部それぞれは、
前記中空柱状物の内側における前記脚部の位置を調整する調整部材が着脱可能な取付部、
を備える、
請求項1記載の補強ユニット。
【請求項7】
複数の前記脚部それぞれの形状は、同じである、
請求項1記載の補強ユニット。
【請求項8】
前記根枷の一部は、前記中空柱状物の内側を横断し、
前記脚部の数は、前記根枷の数の倍数である、
請求項1記載の補強ユニット。
【請求項9】
前記補強部材は、接着剤を含浸可能な高強度繊維製で、
前記袋部材は、気体により膨張可能な不織布製である、
請求項1記載の補強ユニット。
【請求項10】
根枷を有する中空柱状物の内側から、補強ユニットを用いて前記中空柱状物を補強する中空柱状物の補強方法であって、
前記補強ユニットは、
中空状に変形可能な補強部材と、
前記補強部材に収容される袋部材と、
を備え、
前記補強部材は、
筒状部と、
前記筒状部の一端に一体に連結される複数の脚部と、
を備え、
前記補強ユニットを、前記中空柱状物の内側に挿入するユニット挿入工程と、
複数の前記脚部それぞれを、前記根枷と前記中空柱状物の内壁面との間それぞれに挿入して、前記根枷を複数の前記脚部それぞれの間に配置する脚部挿入工程と、
前記袋部材の内側に空気を供給して前記袋部材を膨張させ、前記筒状部と複数の前記脚部とを前記内壁面に貼り付ける貼付工程と、
を有してなる、
ことを特徴とする中空柱状物の補強方法。
【請求項11】
膨張した前記袋部材の内側に、充填材を供給する充填材供給工程と、
前記充填材を固化させる固化工程と、
を有してなる、
請求項10記載の中空柱状物の補強方法。
【請求項12】
前記補強部材に接着剤を含浸させる含浸工程、
を有する、
請求項10または11記載の中空柱状物の補強方法。
【請求項13】
前記貼付工程において、複数の前記脚部それぞれは、前記根枷を挟み込んだ状態で、隣接する前記脚部と密着する、
請求項10または11記載の中空柱状物の補強方法。
【請求項14】
前記脚部挿入工程において、複数の前記脚部それぞれは、前記脚部に着脱可能に取り付けられ前記脚部の位置を調整する調整部材を用いて、前記根枷と前記内壁面との間に挿入される、
請求項10記載の中空柱状物の補強方法。
【請求項15】
前記脚部挿入工程において、
複数の前記脚部それぞれの一部は、前記中空柱状物の長手方向において、前記根枷の下方に配置され、
前記筒状部の一部は、前記長手方向において、地表面の上方に配置される、
請求項10記載の中空柱状物の補強方法。
【請求項16】
前記脚部挿入工程において、
前記筒状部は、前記中空柱状物の長手方向において、前記根枷の下方に配置され、
複数の前記脚部それぞれの一部は、前記長手方向において、地表面の上方に配置される、
請求項10記載の中空柱状物の補強方法。
【請求項17】
前記補強ユニットは、請求項2乃至9のいずれかに記載の補強ユニットである、
請求項10記載の中空柱状物の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空柱状物の補強ユニットと中空柱状物の補強方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
地盤に設置される中空柱状物(例えば、電柱、街頭、カーブミラー、信号柱など)の強度は、風雨や地盤内の水分などの環境的な要因により、設置してからの時間の経過に伴い劣化する。また、中空柱状物は、道路脇に設置されるため、車両の衝突などの物理的な要因により、屈曲または破損する。このような劣化や屈曲、破損は、特に、地際(地表と地中との境界)において生じやすい。
【0003】
通常、中空柱状物の一部は、地中に埋設される。そのため、中空柱状物の交換は、容易に実施できない。そこで、中空柱状物は、中空柱状物の内側に補強材を配置することにより、補強される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された中空柱状物の補強方法では、先ず、接着剤を含浸した繊維製の筒状の補強部(補強部材)と、補強部に収容された内側風船部(袋部材)とが、中空柱状物の内側に挿入される。次いで、内側風船部に空気が圧送される。補強部は、膨張した内側風船部により、中空柱状物の内壁面に貼り付けられる。次いで、内側風船部内に流動性固化材(モルタル)が充填される。同補強方法では、補強部は流動性固化材により内壁面に押圧保持され、中空柱状物は補強部と流動性固化材とにより補強される。
【0005】
ここで、中空柱状物の回転や傾斜、倒壊を防ぐため、多くの中空柱状物には、根枷が備えられる。根枷は、地表面から300mm程度の深さの地中に設置される。一般的な根枷は、棒状で、中空柱状物を中空状柱状物の径方向に貫通する。すなわち、根枷は、中空柱状物の内側を横断する。そのため、根枷を備える中空柱状物に同補強方法を適用する場合、補強部は根枷より下方に挿入できず、中空柱状物は十分に補強されない。
【0006】
これまでにも、円柱状の補強体に根枷を避ける溝を形成することで、根枷を備える中空柱状物を補強する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、同技術は、中空柱状物の内径と根枷の大きさそれぞれに合わせて、補強体を製造しなければならない。根枷が変形している場合や、根枷の位置がずれている場合には、同根枷専用の補強体が必要となる。補強体は、鋼線を芯材とするモルタルの塊であるため、補強体の製造コストは、大きい。また、補強体はかなりの重量物となるため、補強体を中空柱状物の内側に挿入する場合、クレーンなどの作業車が必要となる。補強体の構造状、補強体は、中空柱状物の上部からのみ挿入可能である。そのため、同技術は、電柱のような上端から下端に向かって内径が大きくなる中空柱状物に対しては、適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-079719号公報
【文献】特開2010-047986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、根枷を備える中空柱状物の強度を容易に補強可能な中空柱状物の補強ユニットと、同補強ユニットを用いた中空柱状物の補強方法と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる補強ユニットは、根枷を有する中空柱状物の内側から中空柱状物を補強する補強ユニットであって、中空状に変形可能な補強部材と、補強部材に収容され、内側に供給される気体により膨張可能な袋部材と、を有してなり、補強部材は、筒状部と、筒状部の一端に一体に連結される複数の脚部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、根枷を備える中空柱状物の強度を容易に補強できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明にかかる補強ユニットの実施の形態を示す模式斜視図である。
図2図1の補強ユニットの模式断面図である。
図3】本発明にかかる補強方法に含まれる作業孔形成工程後の中空柱状物の状態を示す模式断面図である。
図4】本発明にかかる補強方法に含まれるユニット挿入工程の途中段階における中空柱状物の状態を示す模式断面図である。
図5】本発明にかかる補強方法に含まれる脚部挿入工程の途中段階における中空柱状物の状態を示す模式拡大断面図である。
図6】本発明にかかる補強方法に含まれる貼付工程の途中段階における中空柱状物の状態を示す模式断面図である。
図7】本発明にかかる補強方法に含まれる充填材供給工程後の中空柱状物の状態を示す模式断面図である。
図8】(a)図1の補強ユニットにより補強された中空柱状物の図7のBB線における模式断面図である。(b)同中空柱状物の図7のCC線における模式断面図である。(c)同中空柱状物の図7のDD線における模式断面図である。
図9】本発明にかかる補強ユニットの別の実施の形態を示す模式斜視図である。
図10図9の補強ユニットの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかる中空柱状物の補強ユニット(以下「本ユニット」という。)と、中空柱状物の補強方法(以下「本方法」という。)と、の実施の形態(以下「第1実施形態」という。)について説明する。各図において、同一の部材と要素とについては同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
「中空柱状物」は、例えば、電柱や街灯、信号柱(信号を支持する柱)、標識柱(標識を支持する柱)、ミラー柱(カーブミラーを支持する柱)など、内側に空間を有する柱状の構造物である。以下に説明する実施の形態は、標識柱を中空柱状物の例として、本発明の内容を説明する。
【0015】
標識柱は、例えば、上端から下端まで同じ内径を有する鋼管柱である。標識柱は、地盤から立設され、標識柱の一部は地盤に埋設される。標識柱は、棒状(円柱状)の根枷を備える。根枷は、地表面から約300mm下方の地中に埋設され、標識柱を標識柱の径方向に貫通する。その結果、根枷の一部は標識柱の内側を横断し、根枷と標識柱との間には、上方視において半円状の空間が2つ形成される。
【0016】
以下の説明において、「上下方向」は、中空柱状物が地盤に設置されている状態における天地方向である。すなわち、下方向は重力方向であり、上方向は下方向の反対方向である。
【0017】
●中空柱状物の補強ユニット(1)●
先ず、本ユニットの実施の形態について説明する。
【0018】
●補強ユニット(1)の構成
図1は、本ユニットの実施の形態を示す模式斜視図である。
図2は、本ユニットの模式断面図である。
【0019】
本ユニット1は、標識柱P(中空柱状物:図3参照。以下同じ。)の内側に配置されて、標識柱Pの強度を内側から補強する。本ユニット1は、保護部材10と、補強部材20と、袋部材30と、を有してなる。
【0020】
保護部材10は、補強部材20と袋部材30とを保護すると共に、後述する接着剤(不図示。以下同じ。)から作業者の皮膚を保護する。保護部材10は、例えば、接着剤に対する親和性の低い(接着剤に付き難い)合成樹脂製で、細長い袋体である。保護部材10は、接着剤を保護部材10の内側に導入するための導入弁(不図示)を備える。
【0021】
「作業者」は、本ユニット1を使用して、本方法により中空柱状物の強度の補強作業を実行する自然人である。
【0022】
補強部材20は、標識柱Pの内壁面に貼り付けられて、標識柱Pの強度を内側から補強する。補強部材20は、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維などの接着剤を含浸可能な高強度繊維製である。補強部材20は、補強部材20に収容されている袋部材30の変形(膨張)に応じて、中空状に変形可能である。補強部材20は、筒状部21と、2つの脚部22,23と、2つの取付部24,25と、を備える。
【0023】
筒状部21は、例えば、上下方向に向けて開口する円筒状に縫製される。筒状部21の外周面は、標識柱Pの内壁面のうち、所定の範囲の内壁面に適合する(合致する)。すなわち、例えば、筒状部21の外周面は、袋部材30が膨張したとき、標識柱Pの内径と同じ直径(外径)、または、僅かに大きい直径(外径)を有する。
【0024】
脚部22は、例えば、上下方向に向けて開口する半円筒状に縫製される。すなわち、脚部22は、半円筒状の第1外周面22aと、平面状の第2外周面22bと、を備える。第1外周面22aは、標識柱Pの内壁面のうち、筒状部21が適合する内壁面とは異なる範囲の内壁面に適合する(合致する)。すなわち、例えば、第1外周面22aは、袋部材30が膨張したとき、標識柱Pの半径と同じ半径、または、僅かに大きい半径を有する。
【0025】
脚部23は、例えば、上下方向に向けて開口する半円筒状に縫製される。すなわち、脚部23は、半円筒状の第1外周面23aと、平面状の第2外周面23bと、を備える。第1外周面23aは、標識柱Pの内壁面のうち、筒状部21が適合する内壁面とは異なる範囲の内壁面に適合する(合致する)。すなわち、例えば、第1外周面23aは、袋部材30が膨張したとき、標識柱Pの半径と同じ半径、または、僅かに大きい半径を有する。脚部23の形状は、脚部22の形状と同じである。
【0026】
脚部22,23それぞれの上端は、第2外周面22b,23b同士を対向させた状態で、筒状部21の下端に縫製される。すなわち、第1外周面22a,23aそれぞれの上端は、筒状部21の下端に縫製される。一方、第2外周面22b,23bそれぞれの上端は、一体に縫製される。その結果、脚部22,23それぞれの上端は、筒状部21の下端に一体に連結される。筒状部21の下端の開口は、脚部22,23それぞれの上端の開口により塞がれる。一方、脚部22,23それぞれの上端の開口は、筒状部21の下端の開口に塞がれる。筒状部21の内側の空間は、脚部22,23それぞれの内側の空間と連通する。
【0027】
取付部24,25は、例えば、後述する調整部材50(図4参照)が挿し込まれるポケットである。取付部24は、上方に向けて開口した状態で、脚部22の第1外周面22aの下端部に縫製される(取り付けられる)。取付部25は、上方に開口した状態で、脚部23の第1外周面23aの下端部に縫製される(取り付けられる)。
【0028】
袋部材30は、袋部材30の内側に気体(本実施の形態では、空気)が供給されることにより膨張し、補強部材20を標識柱Pの内壁面に押し付ける(固定する)。袋部材30は、例えば、ポリエチレン繊維などの弾性を有する合成樹脂繊維製の不織布である。袋部材30は、空気が供給される前は萎んでいて、空気が供給されることにより、標識柱Pの内径よりも大きく膨張可能である。すなわち、袋部材30は、供給される空気により変形可能な風船である。袋部材30は、筒状袋部31と、2つの脚状袋部32,33と、弁体34と、を備える。
【0029】
筒状袋部31は、例えば、下方向に向けて開口する円筒状の袋体に縫製される。筒状袋部31は、補強部材20の筒状部21に収容され、筒状部21と二重シート状に配置される。すなわち、筒状袋部31は、筒状部21に対応する。上下方向において、筒状袋部31の長さは、筒状部21の長さよりも長い。そのため、筒状袋部31の上端部は、筒状部21の上端部よりも上方に突出する。筒状袋部31は、空気が供給される前は萎んでいて、空気が供給されることにより、筒状部21(標識柱Pの内径)よりも大きく膨張可能である。
【0030】
脚状袋部32は、例えば、上方向に向けて開口する半円筒状の袋体に縫製される。脚状袋部32は、補強部材20の脚部22に収容され、脚部22と二重シート状に配置される。すなわち、脚状袋部32は、脚部22に対応する。上下方向において、脚状袋部32の長さは、脚部22の長さよりも長い。そのため、脚状袋部32の下端部は、脚部22の下端部よりも下方に突出する。脚状袋部32は、空気が供給される前は萎んでいて、空気が供給されることにより、脚部22よりも大きく膨張可能である。
【0031】
脚状袋部33は、例えば、上方向に向けて開口する半円筒状の袋体に縫製される。脚状袋部33は、補強部材20の脚部23に収容され、脚部23と二重シート状に配置される。すなわち、脚状袋部33は、脚部23に対応する。上下方向において、脚状袋部33の長さは、脚部23の長さよりも長い。そのため、脚状袋部33の下端部は、脚部23の下端部よりも下方に突出する。脚状袋部33は、空気が供給される前は萎んでいて、空気が供給されることにより、脚部23よりも大きく膨張可能である。脚状袋部33の形状は、脚状袋部32の形状と同じである。
【0032】
脚状袋部32,33の上端は、筒状部21と脚部22,23と同様に、筒状袋部31の上端に縫製される。すなわち、脚状袋部32,33それぞれの上端は、筒状袋部31の下端に一体に連結される。筒状袋部31の開口は、脚状袋部32,33それぞれの開口により塞がれる。一方、脚状袋部32,33それぞれの開口は、筒状袋部31の開口により塞がれる。その結果、筒状袋部31と脚状袋部32,33とは、1つの袋体を構成する。筒状袋部31の内側の空間は、脚状袋部32,33の内側の空間それぞれと連通する。
【0033】
弁体34は、後述する供給管材40(図4参照)が取り付けられ、供給管材40からの空気を袋部材30の内側に供給する供給口である。弁体34は、例えば、逆止弁である。弁体34は、筒状袋部31の上面に配置される。
【0034】
供給管材40は、例えば、標識柱Pの外部に配置されたコンプレッサC(図6参照)からの空気を袋部材30の内側に供給する。供給管材40は、例えば、ポリウレタンなどの合成樹脂製のチューブである。
【0035】
調整部材50(図4参照)は、標識柱Pの内側における脚部22,23の位置を調整するために、標識柱Pの強度の補強作業を行う作業者により操作される部材である。調整部材50は、例えば、可撓性を有する棒状の部材である。本実施の形態では、作業者により、2つの調整部材50,50が用いられる。
【0036】
接着剤(不図示)は、補強部材20を標識柱Pの内壁面に接着する(固定する)。接着剤は、例えば、エポキシ樹脂系の接着剤である。接着剤は、補強部材20に含浸される(染み込ませられる)。
【0037】
●補強ユニット(1)を用いた標識柱(中空柱状物)の補強方法
次に、本ユニット1を用いた標識柱Pの補強方法、すなわち、本方法について説明する。以下の説明では、作業者が本ユニット1を用いて標識柱Pの強度を補強するものとする。本方法は、作業孔形成工程と、前処理工程と、含浸工程と、ユニット挿入工程と、脚部挿入工程と、貼付工程と、充填材供給工程と、固化工程と、閉鎖工程と、を有してなる。
【0038】
先ず、作業者は、作業孔形成工程を実行する。
【0039】
図3は、作業孔形成工程後の標識柱Pの状態を示す模式断面図である。
同図は、地際(地表と地中との境界)を二点鎖線で示す(他の図面においても同じ)。
【0040】
「作業孔形成工程」は、標識柱Pの壁部に貫通孔である作業孔Phを形成する工程である。
【0041】
作業者は、例えば、ドリル(不図示)やカッター(不図示)を用いて、標識柱Pの壁部に作業孔Phを形成する。作業孔Phは、作業者の手の届く位置、例えば、地表から約750mm上方の位置に形成される。作業孔Phは、例えば、縦長の長孔である。
【0042】
次いで、作業者は、前処理工程を実行する。
【0043】
「前処理工程」は、標識柱Pの内側において、前処理を実行する工程である。
【0044】
「前処理」は、例えば、カメラ(不図示)などの撮像装置を用いて標識柱Pの内側を観察・記録する観察処理と、例えば、ワイヤブラシ(不図示)などの器具を用いて標識柱Pの内壁面を研磨・洗浄する洗浄処理と、を含む。
【0045】
次いで、作業者は、含浸工程を実行する。
【0046】
「含浸工程」は、保護部材10(図1参照)の導入弁(不図示)から保護部材10内に接着剤(不図示)を供給して、補強部材20に接着剤を含浸させる工程である。
【0047】
先ず、作業者は、例えば、ポンプ(不図示)を用いて、保護部材10内の空気を吸引した後に、保護部材10内に接着剤を供給する。次いで、作業者は、例えば、ローラ(不図示)を用いて、保護部材10を押圧することにより、保護部材10内に収容されている補強部材20(図1参照)に接着剤を含浸させる。含浸工程後の補強部材20は、細長い平板状となる。
【0048】
次いで、作業者は、ユニット挿入工程を実行する。
【0049】
図4は、ユニット挿入工程の途中段階における標識柱Pの状態を示す模式断面図である。同図は、図3のA矢視方向における断面を模式的に示す(以下同じ。)。
【0050】
「ユニット挿入工程」は、本ユニット1を標識柱Pの内側に挿入する工程である。
【0051】
先ず、作業者は、保護部材10の上端を切開して、供給管材40の一端を弁体34に取り付けると共に、2つの調整部材50,50それぞれの一端(下端)を取付部24,25それぞれに差し込む。
【0052】
次いで、作業者は、保護部材10を順次取り外しながら、補強部材20(袋部材30)を作業孔Phから標識柱Pの内側に挿入する。このとき、作業者は、調整部材50,50を用いて、脚部22,23を根枷P1に向けて押し下げながら、補強部材20を標識柱Pの内側に挿入する。
【0053】
次いで、作業者は、「脚部挿入工程」を実行する。
【0054】
図5は、脚部挿入工程の途中段階における標識柱Pの状態を拡大して示す模式拡大断面図である。
【0055】
「脚部挿入工程」は、脚部22,23それぞれを、根枷P1と標識柱Pとの間の半円状の空間それぞれに挿入する工程である。
【0056】
先ず、作業者は、調整部材50,50を操作して、脚部22,23それぞれを、根枷P1と標識柱Pとの間の半円状の空間それぞれの上方に移動させる。次いで、作業者は、調整部材50,50を下方に押し下げて、脚部22,23それぞれを、半円状の空間それぞれに挿入する。次いで、作業者は、脚部22,23の下端が所定の位置(例えば、根枷P1より下方へ200mmの位置)に到達するまで、調整部材50,50をさらに押し下げる。次いで、作業者は、調整部材50,50を取付部24,25から取り外し、標識柱Pの外部に取り出す。このとき、筒状部21の上端は、所定の位置(例えば、地表面より上方へ500mmの位置)に配置される。
【0057】
なお、脚部挿入工程において、作業者は、筒状部の下端(脚部の上端)が根枷に当接するまで調整部材を押し下げてもよい。
【0058】
次いで、作業者は、貼付工程を実行する。
【0059】
図6は、貼付工程の途中段階における標識柱Pの状態を示す模式断面図である。
【0060】
「貼付工程」は、袋部材30に空気を供給して、補強部材20を標識柱Pの内壁面に貼り付ける(固定する)工程である。
【0061】
先ず、作業者は、供給管材40を、例えば、コンプレッサCに接続して、供給管材40を介して、袋部材30に空気を供給する。その結果、袋部材30は、膨張する。
【0062】
袋部材30が膨張したとき、筒状袋部31は、標識柱Pの根枷P1より上方の内壁面の形状に適合するように筒状部21を押し広げる。筒状部21の外周面は、膨張した筒状袋部31により標識柱Pの内壁面に(当接して)押圧され、固定される。このとき、筒状部21は、標識柱Pの内壁面と略同じ形状(筒状)となる。すなわち、筒状部21は、筒状袋部31が膨張することにより、筒状(中空状)に変形する。
【0063】
一方、袋部材30が膨張したとき、脚状袋部32は、標識柱Pの根枷P1より下方の内壁面の形状に適合するように脚部22を押し広げる。脚部22の第1外周面22aは、膨張した脚状袋部32により標識柱Pの内壁面に(当接して)押圧され、固定される。同様に、脚状袋部33は、標識柱Pの根枷P1より下方の内壁面の形状に適合するように脚部23を押し広げる。脚部23の第1外周面23aは、膨張した脚状袋部33により標識柱Pの内壁面に(当接して)押圧され、固定される。このとき、根枷P1の下方において対向する第2外周面22b,23bそれぞれは、脚状袋部32,33により標識柱Pの径方向の中心に向かって押圧され、互いに密着する。すなわち、脚部22,23それぞれは、根枷P1を包み込むように変形して、根枷P1の下方において密着する。つまり、脚部22(23)は、隣接する脚部23(22)との間に根枷P1を挟み込んだ状態で、隣接する脚部23(22)と密着する。その結果、標識柱Pの根枷P1より下方の内側には、第2外周面22b,23bにより、標識柱Pの径方向に横断する板状の構成体(以下「板状構成体」という。)26が形成される。次いで、作業者は、供給管材40を弁体34から取り外し、標識柱Pの外部に取り出す。
【0064】
貼付工程後、上下方向(標識柱Pの長手方向)において、筒状部21は根枷P1の上方に配置され、筒状部21の上半部は地表面より上方に配置される。一方、上下方向において、脚部22,23の下半部は根枷P1より下方に配置される。すなわち、補強部材20は、根枷P1の下方から地表面の上方に亘って、標識柱Pの内側に貼り付けられる。
【0065】
このように、接着剤を含有した補強部材20が内壁面に押圧されることで、補強部材20は内壁面に皺なく密着し、接着剤により内壁面に接着される。その結果、接着剤が固化したとき、補強部材20と合成樹脂製の接着剤とは、繊維で強化された合成樹脂、すなわち、FRP(Fiber Reinforced Plastics)に近い構造となる。つまり、本方法は、中空柱状物(標識柱P)が設置された現場において、中空柱状物の内側にFRPに近い構造を作り出し、同構造で中空柱状物(標識柱P)の強度を補強する。
【0066】
次いで、作業者は、充填材供給工程と固化工程とを実行する。
【0067】
図7は、充填材供給工程後の標識柱Pの状態を示す模式断面図である。
【0068】
「充填材供給工程」は、袋部材30の内側に充填材60を供給・充填する工程である。
【0069】
「充填材60」は、供給時には流動性を有する液状で、時間の経過と共に固化する流動性固化材(例えば、モルタルや石膏、接着剤など)で構成される。本実施の形態では、充填材60は、固化時の収縮量が少ない、無収縮モルタルである。
【0070】
「固化工程」は、袋部材30に充填された充填材60を固化させる工程である。
【0071】
先ず、作業者は、袋部材30の筒状袋部31の上面を切開して、例えば、液送ポンプLPに接続された管LP1を介して、袋部材30の内側に充填材60を供給する。充填材60は、脚状袋部32,33と筒状袋部31とに供給・充填される。充填材60は、補強部材20を標識柱Pの内壁面に押圧して、固定する。充填材60は、例えば、筒状袋部31において、筒状部21の上端よりも上方まで充填される。充填材60は、補強部材20を押圧した状態で、時間の経過と共に、充填材60の成分による化学的作用により固まる(固化工程)。
【0072】
次いで、作業者は、閉鎖工程を実行する。
【0073】
「閉鎖工程」は、カバー部材(不図示)を用いて、作業孔Phを閉鎖する工程である。
【0074】
作業者は、液送ポンプLPに接続された管LP1を標識柱Pから取り出して、カバー部材により作業孔Phを外側から閉鎖する。
【0075】
図8(a)は本ユニット1により補強された標識柱Pの図7のBB線における模式断面図であり、(b)は同標識柱の図7のCC線における模式断面図であり、(c)は同標識柱の図7のDD線における模式断面図である。
【0076】
このように、本方法により本ユニット1が標識柱Pの内側に取り付けられることで、標識柱Pの強度は、本ユニット1により構成されるFRPに近い構造と、本ユニット1(袋部材30)の内側に充填される充填材60と、により内側から補強される。前述のとおり、補強部材20と袋部材30とは、変形可能な繊維製である。そのため、脚部22,23は、根枷P1の大きさ(太さ)や変形、位置ずれに関わらず、根枷P1と内壁面との間の空間に容易に挿通できる。また、脚部22,23それぞれは、脚状袋部32,33が膨張したとき、根枷P1を包み込むように変形して、根枷P1の下方において密着できる。さらに、袋部材30の内側に充填材60が充填される。そのため、図8(a)に示されるとおり、根枷P1の上方において、標識柱Pの強度は、補強部材20と充填材60とにより補強される。また、同図(b)に示されるとおり、根枷P1の位置において、標識柱Pの強度は、根枷P1を挟み込むように補強部材20と充填材60とにより補強される。さらに、同図(c)に示されるとおり、根枷P1の下方においても、標識柱Pの強度は、補強部材20と板状構成体26(22b,23b)と、充填材60と、により補強される。
【0077】
●まとめ(1)
以上説明した実施の形態によれば、本ユニット1は、中空状に変形可能な補強部材20と、補強部材20に収容されると共に気体により膨張可能な袋部材30と、を有する。補強部材20は、筒状部21と、筒状部21の下端に一体に連結される複数(本実施の形態では2つ)の脚部22,23と、を備える。この構成によれば、変形可能な脚部22,23それぞれは、根枷P1の大きさ(太さ)や変形、位置ずれに関わらず、根枷P1と内壁面との間の空間に容易に挿通される。また、袋部材30が膨張することで、脚部22,23は、根枷P1の下方において袋部材30により押し広げられ、標識柱Pの根枷P1より下方の内壁面に押圧され、固定される。その結果、本ユニット1は、根枷P1を備える中空柱状物(標識柱P)の強度を、地際の上方から根枷P1の下方に至るまで容易に補強できる。
【0078】
また、以上説明した実施の形態によれば、筒状部21の内側の空間は、複数の脚部22,23の内側の空間それぞれと連通する。この構成によれば、補強部材20は、補強部材20の形状に対応する形状を有する袋部材30を用いることで、1つの袋部材30で一斉に変形できる。
【0079】
さらに、以上説明した実施の形態によれば、袋部材30は、筒状部21に対応する筒状袋部31と、筒状袋部31の下端に一体に連結され、脚部22,23に対応する複数の脚状袋部32,33と、を備える。筒状袋部31の内側の空間は、複数の脚状袋部32,33の内側の空間それぞれと連通する。この構成によれば、袋部材30が膨張することで、補強部材20は、一斉に変形する。また、筒状袋部31と脚状袋部32,33のどの位置から空気が供給されても、袋部材30(筒状袋部31、脚状袋部32,33)は一斉に膨張でき、補強部材20(筒状部21、脚部22,23)は一斉に変形する。
【0080】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、筒状袋部31の上端部は、筒状部21の上端から上方に突出する。複数の脚状袋部32,33それぞれの下端部は、対応する脚部22,23の下端から突出する。この構成によれば、筒状部21は、筒状袋部31により下端から上端まで内壁面に押圧され、固定される。脚部22,23それぞれは、対応する脚状袋部32,33により上端から下端まで内壁面に押圧され、固定される。
【0081】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、標識柱Pの内側において、袋部材30が膨張したとき、筒状部21の外周面は、内壁面の一部に当接する。脚部22,23それぞれの第1外周面22a,23aは、内壁面の他の一部に当接する。脚部22(23)の第2外周面22b(23b)は、隣接する脚部23(22)の第2外周面23b(22b)に当接する。この構成によれば、補強部材20は、根枷P1の下方において、内壁面の全周に亘って、内側から標識柱Pの強度を補強できる。また、第2外周面22b,23b同士が当接することで、標識柱Pの根枷P1より下方の内側には、標識柱Pの径方向に横断する板状構成体26が形成される。その結果、板状構成体26の面に平行な方向において、標識柱Pの強度(特に、曲げ強度)は、板状構成体26により補強される。このように、本ユニット1は、根枷P1を備える中空柱状物(標識柱P)の強度を、地際の上方から根枷P1の下方に至るまで容易に補強できる。
【0082】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、補強部材20は、標識柱Pの内側における脚部22,23の位置を調整する調整部材50が着脱可能な取付部24,25、を備える。取付部24は脚部22に取り付けられ、取付部25は脚部23に取り付けられる。この構成によれば、作業者は、調整部材50を用いることで、脚部22,23それぞれを、根枷P1と内壁面との間の空間に極めて容易に挿通できる。また、調整部材50が取り外されることで、調整部材50は、再利用できる。
【0083】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、脚部22,23それぞれの形状は、同じである。この構成によれば、脚部22,23それぞれは、根枷P1の下方において、略同一形状に変形できる。その結果、脚部22による補強の程度は、脚部23による補強の程度と略同じにできる。
【0084】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、根枷P1の一部は、標識柱Pの内側を横断する。脚部22,23の数は、根枷P1の数(本実施の形態では1つ)の倍数(本実施の形態では2つ)である。この構成によれば、脚部22,23それぞれは、根枷P1を挟み込んだ状態で変形する。その結果、根枷P1の下方において、脚部22は隣接する脚部23と密着し、脚部23は隣接する脚部22と密着する。
【0085】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、本方法は、本ユニット1を標識柱Pの内側に挿入するユニット挿入工程と、脚部22,23それぞれを根枷P1と内壁面との間それぞれに挿入して、根枷P1を脚部22,23それぞれの間に配置する脚部挿入工程と、袋部材30の内側に空気を供給して袋部材30を膨張させ、筒状部21と脚部22,23とを内壁面に貼り付ける貼付工程と、膨張した袋部材30の内側に充填材60を供給する充填材供給工程と、充填材60を固化させる固化工程と、を有する。この構成によれば、本方法は、根枷P1を備える中空柱状物(標識柱P)の強度を、地際の上方から根枷P1の下方に至るまで、補強部材20(本ユニット1)と充填材60とにより容易に補強できる。
【0086】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、本方法は、補強部材20に接着剤を含浸させる含浸工程を含む。この構成によれば、補強部材20は、接着剤により内壁面に確実に接着される。その結果、本方法は、本ユニット1により構成されるFRPに近い構造と、本ユニット1(袋部材30)の内側に充填される充填材60と、により根枷P1を備える中空柱状物(標識柱P)の強度を内側から容易に補強できる。
【0087】
●中空状構造物の補強ユニット(2)●
次に、本発明にかかる補強ユニットの別の実施の形態(以下「第2実施形態」という。)について、先に説明した第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。第2実施形態では、脚部が筒状部の上端に連結される点が、第1実施形態と異なる。
【0088】
以下の説明において、第1実施形態と同じ符号を付された部材は、第1実施形態と同じ機能を備えるものとして、説明を省略する。
【0089】
●補強ユニット(2)の構成
図9は、本ユニットの別の実施の形態を示す模式斜視図である。
図10は、図9の本ユニットの模式断面図である。
図10は、説明の便宜上、本ユニット1Aが標識柱Pの内側に配置された状態を示す。
【0090】
本ユニット1Aは、保護部材10と、補強部材20Aと、袋部材30Aと、を有してなる。
補強部材20Aは、標識柱Pの内壁面に貼り付けられて、標識柱Pの強度を内側から補強する。補強部材20Aは、筒状部21Aと、2つの脚部22A,23Aと、2つの取付部24A,25Aと、を備える。筒状部21Aの構成は、筒状部21(図1参照)の構成と共通する。脚部22A,23Aの構成は、脚部22,23(図1参照)の構成と共通する。脚部22A,23Aの下端は、筒状部21Aの上端の開口を塞ぐように、筒状部21Aの上端に一体に連結される。筒状部21Aの内側の空間は、脚部22A,23Aの内側の空間それぞれと連通する。
【0091】
取付部24A,25Aは、例えば、調整部材50Aが係合される(引っ掛けられる)ポケットである。取付部24Aは、例えば、上下方向に向けて開口した状態で、脚部22Aの第1外周面22Aaの上端部に縫製される(取り付けられる)。取付部25Aは、上方に開口した状態で、脚部23Aの第1外周面23Aaの上端部に縫製される(取り付けられる)。
【0092】
袋部材30Aは、気体が供給されることにより膨張し、補強部材20Aを標識柱Pの内壁面に押し付ける(固定する)。袋部材30Aは、筒状袋部31Aと、2つの脚状袋部32A,33Aと、弁体34Aと、を備える。筒状袋部31Aの構成は、上方向に向けて開口する点を除き、筒状袋部31(図1参照)の構成と共通する。脚状袋部32A,33Aの構成は、下方向に向けて開口する点を除き、脚状袋部32,33(図1参照)の構成と共通する。脚状袋部32A,33Aの下端は、筒状袋部31Aの上端の開口を塞ぐように、筒状袋部31Aの上端に一体に連結される。筒状袋部31Aと脚状袋部32A,33Aとは、1つの袋体を構成する。筒状袋部31Aの内側の空間は、脚状袋部32A,33Aの内側の空間それぞれと連通する。弁体34Aは、例えば、脚状袋部32Aの上面に配置される。
【0093】
●補強ユニット(2)を用いた標識柱(中空柱状物)の補強方法
次に、本ユニット1Aを用いた標識柱Pの補強方法、すなわち、本方法の第2実施形態について説明する。以下の説明では、作業者が本ユニット1Aを用いて標識柱Pを補強するものとする。本方法は、作業孔形成工程と、前処理工程と、含浸工程と、ユニット挿入工程と、脚部挿入工程と、貼付工程と、充填材供給工程と、固化工程と、閉鎖工程と、を有してなる。
【0094】
本実施の形態における作業孔形成工程と、前処理工程と、含浸工程と、固化工程と、閉鎖工程それぞれは、先に説明した第1実施形態の各工程と共通する。
【0095】
ユニット挿入工程は、本ユニット1A全体が根枷P1の下方まで挿入される点を除き、先に説明した第1実施形態のユニット挿入工程と共通する。すなわち、作業者は、例えば、調整部材50A,50Aを用いて、本ユニット1Aを根枷P1と標識柱Pの内壁面との間の(半円状の)空間に挿入し、本ユニット1A全体を根枷P1の下方に押し下げる。
【0096】
脚部挿入工程は、脚部22A,23Aを下方から半円状の空間それぞれに挿入する点を除き、先に説明した第1実施形態の脚部挿入工程と共通する。すなわち、作業者は、一方の調整部材50Aを一方の半円状の空間に挿入して、一方の調整部材50Aの下端(下端は、例えば、フック状に形成される)を取付部24Aに引っ掛ける。また、作業者は、他方の調整部材50Aを他方の半円状の空間に挿入して、他方の調整部材50Aの下端を取付部25Aに引っ掛ける。次いで、作業者は、調整部材50A,50Aを引き上げることにより、下方から脚部22A,23Aを半円状の空間それぞれに挿入する。次いで、作業者は、脚部22A,23Aの上端が所定の位置(例えば、地際より上方へ500mmの位置)に到達するまで、調整部材50A,50Aをさらに引き上げる。次いで、作業者は、調整部材50A,50Aを取付部24A,25Aから取り外し、標識柱Pの外部に取り出す。
【0097】
なお、脚部挿入工程において、作業者は、筒状部の上端(脚部の下端)が根枷に当接するまで調整部材を引き上げてもよい。
【0098】
貼付工程は、空気が脚部22Aから供給される点を除き、先に説明した第1実施形態の貼付工程と共通する。すなわち、作業者は、弁体34Aに取り付けられた供給管材40(図6参照)を、コンプレッサC(図6参照)に接続して、供給管材40を介して、袋部材30Aに空気を供給する。その結果、袋部材30Aは膨張する。
【0099】
袋部材30Aが膨張したとき、筒状袋部31Aは、標識柱Pの根枷P1より下方の内壁面の形状に適合するように筒状部21Aを押し広げる。筒状部21Aの外周面は、膨張した筒状袋部31Aにより標識柱Pの内壁面に(当接して)押圧され、固定される。
【0100】
一方、袋部材30Aが膨張したとき、脚状袋部32Aは、標識柱Pの内壁面の形状に適合するように脚部22Aを押し広げる。脚部22Aの第1外周面22Aaは、膨張した脚状袋部32Aにより標識柱Pの根枷P1より上方の内壁面に(当接して)押圧され、固定される。同様に、脚状袋部33Aは、標識柱Pの内壁面の形状に適合するように脚部23Aを押し広げる。脚部23Aの第1外周面23Aaは、膨張した脚状袋部33Aにより標識柱Pの根枷P1より上方の内壁面に(当接して)押圧され、固定される。このとき、根枷P1の上方において対向する第2外周面22Ab,23Abそれぞれは、脚状袋部32A,33Aにより標識柱Pの径方向の中心に向かって押圧され、互いに密着して、板状構成体26Aを形成する。すなわち、脚部22A,23Aそれぞれは、根枷P1を包み込むように変形して、根枷P1の上方において密着する。つまり、脚部22A(23A)は、隣接する脚部23A(22A)との間に根枷P1を挟み込んだ状態で、隣接する脚部23A(22A)と密着する。次いで、作業者は、供給管材40を弁体34Aから取り外し、標識柱Pの外部に取り出す。
【0101】
貼付工程後、上下方向(標識柱Pの長手方向)において、筒状部21Aは根枷P1の下方に配置され。一方、上下方向において、脚部22A,23Aの大部分は根枷P1より上方に配置され、脚部22A,23Aの上半部は地表面よりも上方に配置される。すなわち、補強部材20Aは、根枷P1の下方から地表面の上方に亘って、標識柱Pの内側に貼り付けられる。
【0102】
充填材供給工程は、充填材60が脚状袋部32Aから供給される点を除き、先に説明した第1実施形態の充填材供給工程と共通する。すなわち、作業者は、脚状袋部32Aの上面を切開して、液送ポンプLP(図7参照)に接続された管LP1(図7参照)を介して、袋部材30Aの内側に充填材60を供給する。充填材60は、筒状袋部31Aと脚状袋部32A,33Aとに供給・充填される。充填材60は、補強部材20Aを標識柱Pの内壁面に押圧して、固定する。充填材60は、例えば、脚状袋部32A,33Aにおいて、脚部22A,23Aの上端よりも上方まで充填される。
【0103】
●まとめ(2)
以上説明した実施の形態によれば、本ユニット1Aは、先に説明した第1実施形態の本ユニット1を上下逆とした構成を有する。この構成によれば、変形可能な脚部22A,23Aそれぞれは、根枷P1の大きさ(太さ)や変形、位置ずれに関わらず、根枷P1と内壁面との間の空間に容易に挿通される。また、袋部材30Aが膨張することで、脚部22A,23Aは、根枷P1の上方において脚状袋部32A,33Aにより押し広げられ、標識柱Pの根枷P1より上方の内壁面に押圧され、固定される。一方、筒状部21Aは、根枷P1の下方において筒状袋部31Aにより押し広げられ、標識柱Pの根枷P1より下方の内壁面に押圧され、固定される。その結果、本ユニット1Aは、根枷P1を備える中空柱状物(標識柱P)の強度を、地際の上方から根枷P1の下方に至るまで容易に補強できる。
【0104】
●まとめ(その他)
なお、以上説明した各実施の形態において、脚部の数は、「2」に限定されない。すなわち、例えば、脚部の数は、「3」や「4」でもよい。ここで、脚部の数は、望ましくは、根枷と中空柱状物の内壁面との間の空間の数に対応する数であるとよい。すなわち、例えば、脚部の数は、根枷の数の倍数であるとよい。
【0105】
また、以上説明した各実施の形態において、脚状袋部の数は、脚部の数に対応すればよく、「2」に限定されない。すなわち、例えば、脚部の数が「4」であるとき、脚状袋部の数は「4」である。
【0106】
さらに、以上説明した各実施の形態において、脚部それぞれは、隣接する脚部に当接しなくてもよい。すなわち、例えば、根枷の下方において、脚部それぞれの間には、上下方向に沿う隙間が形成されてもよい。
【0107】
さらにまた、以上説明した各実施の形態において、袋部材の材料は、繊維に限定されない。すなわち、例えば、袋部材は、液密性・気密性の高い合成樹脂製でもよい。
【0108】
さらにまた、以上説明した各実施の形態において、筒状部の内側の空間は、脚部それぞれの内側の空間と連通しなくてもよい。この構成では、筒状袋部と脚状袋部それぞれは、別体で構成され、それぞれ個別に気体が供給される。
【0109】
さらにまた、以上説明した各実施の形態において、脚部の形状は、隣接する脚部の形状と異なってもよい。すなわち、例えば、根枷が変形しているとき、あるいは、根枷が中空柱状物の径方向からずれて配置されているとき、脚部それぞれの形状は、対応する空間(根枷と内壁面との間の空間)の大きさに応じて、異なってもよい。
【0110】
さらにまた、以上説明した実施の形態において、筒状袋部の一部は筒状部の端部から突出しなくてもよく、脚状袋部の一部は脚部の端部から突出しなくてもよい。この構成によれば、本ユニットは、袋部材の大きさ(上下方向の長さ)により、補強部材を中空柱状物の内側に押圧する領域(面積)を調整できる。この構成において、筒状部の両端のうち、脚部に連結されない側の端部は、開口を有さなくてもよい。脚部の両端のうち、筒状部に連結されない側の端部は、開口を有さなくてもよい。すなわち、補強部材は、1つの袋体として構成されてもよい。
【0111】
さらにまた、以上説明した各実施の形態において、中空柱状物に既に作業孔(例えば、標識柱の頂部の開口や点検用の窓など)が設けられている場合、本方法は、作業孔形成工程と閉鎖工程とを含まなくてもよい。この場合、作業者は、例えば、頂部の開口や点検用の窓を塞ぐ蓋を取り外して、中空柱状物の内側に本ユニットを挿入してもよい。
【0112】
さらにまた、以上説明した各実施の形態において、本方法は、接着剤含浸構成を含まなくてもよい。すなわち、例えば、接着剤は、予め、他の場所(例えば、本ユニットの製造工場)で補強部材に含浸されてもよい。また、接着剤は、ユニット挿入工程の前に、中空柱状物(標識柱)の内壁面にスプレーなどで塗布されてもよい。
【0113】
さらにまた、以上説明した各実施の形態において、作業者は、調整部材を取付部から取り外さず、中空柱状物(標識柱)の内側に放置してもよい。
【0114】
さらにまた、以上説明した各実施の形態において、作業者は、供給管材を弁体から取り外さず、中空柱状物(標識柱)の内側に放置してもよい。
【0115】
さらにまた、以上説明した各実施の形態において、作業者は、供給管材を利用して、充填材を袋部材の内側に供給してもよい。この場合、作業者は、袋部材の内側の空気の逃げ口として、袋部材の一部を切開してもよい。
【0116】
さらにまた、以上説明した各実施の形態において、本方法は、充填材供給工程と固化工程とを含まなくてもよい。すなわち、例えば、袋部材の内側に充填材が供給されなくてもよい。この構成において、袋部材は、少なくとも接着剤が固化するまでの間、気密に保たれる材料で構成されるとよい。この構成によれば、本ユニットは、根枷の下方においても、脚部により構成されるFRPに近い構造により、中空柱状物(標識柱)を内側から容易に補強できる。
【0117】
さらにまた、以上説明した各実施の形態において、脚部の長さは、筒状部の長さよりも長くてもよい。すなわち、例えば、袋部材は、100mmの長さの筒状部と、900mmの長さの脚部とを備えてもよい。この構成によれば、中空柱状物(標識柱)は、隣接する脚部同士が密着することで形成される板状構成体(FRPに近い構造を有する)により、根枷の下方から地表面の上方に至るまで補強される。また、この構成によれば、脚部の数を「4」とすることで、中空柱状物(標識柱)は、上方視で「+」状に交差する板状構成体により、さらに補強される。
【0118】
さらにまた、以上説明した各実施の形態は、特許請求の範囲に記載される発明の内容を不当に限定するものではない。また、以上説明した各実施の形態で説明される構成の全てが、本開示の必須構成要件であるとは限らない。
【符号の説明】
【0119】
1 補強ユニット
20 補強部材
21 筒状部
22 脚部
22a 第1外周面
22b 第2外周面
23 脚部
23a 第1外周面
23b 第2外周面
24 取付部
25 取付部
30 袋部材
31 筒状袋部
32 脚状袋部
33 脚状袋部
50 調整部材
60 充填材
1A 補強ユニット
20A 補強部材
21A 筒状部
22A 脚部
22Aa 第1外周面
22Ab 第2外周面
23A 脚部
23Aa 第1外周面
23Ab 第2外周面
24A 取付部
25A 取付部
30A 袋部材
31A 筒状袋部
32A 脚状袋部
33A 脚状袋部
50A 調整部材
P 中空柱状物
P1 根枷

図1
図2
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図10