(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】容器の中敷き部材
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20230619BHJP
【FI】
A01G9/02 101Q
(21)【出願番号】P 2019087427
(22)【出願日】2019-05-07
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390013435
【氏名又は名称】アップルウェアー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】平尾 勝志
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-056922(JP,U)
【文献】実開昭62-192332(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/08
A47J 27/00 - 27/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内底を有する容器内へ嵌め入れて内底側に容器内と区画された空間を画成する中敷き部材において、
容器の側壁内面との間に全周的に環状の空間を形成可能なように内底よりも小さく形成された設置盤体と、
前記設置盤体の全周で外方へ張り出して設けられた仕切り盤体と、を有しており、
前記設置盤体および前記仕切り盤体は、偏平な盤状に一体形成されており、
前記設置盤体は、中床部とこの中床部の下面で下方へ突出する接地脚とを有し、
前記仕切り盤体は、張り出し側の端縁部と前記設置盤体の前記中床部との間にわたるスリットが前記設置盤体を中心とする放射状配置で複数本設けられることによって前記スリットの相互間に上下方向へ
弾性をもって撓み変形可能な可撓性を有する可撓ブレードが形成され、
前記可撓ブレードには複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする容器の中敷き部材。
【請求項2】
前記可撓ブレードは、前記仕切り盤体の1周を1/6~1/10に分割することによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の容器の中敷き部材。
【請求項3】
内底を有する容器内へ嵌め入れて内底側に容器内と区画された空間を画成する中敷き部材において、
容器の側壁内面との間に全周的に環状の空間を形成可能なように内底よりも小さく形成された設置盤体と、
前記設置盤体の全周で外方へ張り出して設けられた仕切り盤体と、を有しており、
前記設置盤体は、中床部とこの中床部の下面で下方へ突出する接地脚とを有し、
前記仕切り盤体は、張り出し側の端縁部と前記設置盤体の前記中床部との間にわたるスリットが前記設置盤体を中心とする放射状配置で複数本設けられることによって前記スリットの相互間に上下方向へ可撓性を有する可撓ブレードが形成され、
前記可撓ブレードには
複数の貫通孔が形成され、一方のスリットを形成している側縁と他方のスリットを形成している側縁との間に、周方向で傾いて高低差を生じさせてあることを特徴とす
る容器の中敷き部材。
【請求項4】
前記可撓ブレードにおいて、前記高低差を付与する傾きが唯一、ブレード表面に付与する面方向の立体造形であることを特徴とする請求項3記載の容器の中敷き部材。
【請求項5】
内底を有する容器内へ嵌め入れて内底側に容器内と区画された空間を画成する中敷き部材において、
容器の側壁内面との間に全周的に環状の空間を形成可能なように内底よりも小さく形成された設置盤体と、
前記設置盤体の全周で外方へ張り出して設けられた仕切り盤体と、を有しており、
前記設置盤体は、中床部とこの中床部の下面で下方へ突出する接地脚とを有し、
前記仕切り盤体は、張り出し側の端縁部と前記設置盤体の前記中床部との間にわたるスリットが前記設置盤体を中心とする放射状配置で複数本設けられることによって前記スリットの相互間に上下方向へ可撓性を有する可撓ブレードが形成され、
前記可撓ブレードには複数の貫通孔が形成され、
前記設置盤体の前記中床部と前記仕切り盤体の前記可撓ブレードとの接続部に肉厚差を利用して接続間の曲がり位置を規定する屈曲誘導部が設けられていることを特徴とす
る容器の中敷き部材。
【請求項6】
前記屈曲誘導部は上部が凹で下部が凸となる側面U形を呈して形成されており、
前記設置盤体の前記中床部には上面又は下面に射出成形ゲート痕を残して前記設置盤体と前記仕切り盤体とが一体形成されていることを特徴とする請求項5に記載の容器の中敷き部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽容器等の内底を有した容器に対して、内底側に容器内と区画された空間(例えば水切りのための空間)を形成させる場合などに好適に使用することができる中敷き部材に関する。
【背景技術】
【0002】
プランターや植木鉢などの植栽容器を使って植栽する場合に、植栽容器の内底に、少し浮かせた状態で網や多孔板等により形成された水切り用の中敷き部材を敷くことがある。このような中敷き部材のなかには、その下面で突出する脚部を含めて、その全体が樹脂により一体成形された「スノコ」と呼称されるものが知られている(特許文献1)。
特許文献1に記載の中敷き部材は、容器における開口部や内底の形状及び号数(サイズ)ごとに適用させた1対1対応のものが準備されており、容器の販売時には、個々の容器と組み合わせた状態で(1セットの組み物として)市場に流通させていた。
【0003】
ところで、植木鉢内へ詰める土壌に所定の保水状態を維持させるための「離隔体」なるものが、別途、提案されている(特許文献2)。
この離隔体は、下方を凸とする中空の半球形(椀形)を呈したもので、上方を向く円形の開口部のまわりには、径方向外方へ小幅に張り出すフランジが設けられていた。この離隔体は、半球状部分を植木鉢の鉢内へ嵌め入れるようにしつつ、フランジを植木鉢の上周リブ上に載せることを本来の使用状態とするものであり(特許文献2の第3図)、これによって植木鉢内における比較的浅い位置で土壌を上下に分割させる。
【0004】
なお、フランジには周方向に等間隔で複数本の仮切り込み線が設けられていた。この仮切り込み線は、フランジ上面にVノッチ状に刻んだ細い筋状のもので未だ実際の切れ目とされたものではない。なぜなら、植木鉢の上周リブに載せたフランジは、外見に晒されるところとなり、切れ目としてしまうことで植木鉢全体の外観が悪化するからである。
このような離隔体は、植木鉢の号数が小さくてフランジ全体が植木鉢の上周リブに適正に載らなかったり引っ掛かりが浅かったりした特殊な場合にだけ、その都度、使用者がカッターやハサミなどにより、仮切り込み線に沿った切れ目を入れるようにする。そして、切れ目により小刻みに分割させたフランジ小片を上方へ立ち上げるようにしながら、立ち上げたフランジ全体を植木鉢における側壁内面の上周部へ密接させるように押し込ませる(特許文献2の第2図及び第4図)、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3146548号公報
【文献】実公平4-27311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された従来の中敷き部材(スノコ)は、前記したように適用対象の容器が1対1対応になるように、個別に製造されたものである。そのため、容器の種類に応じて中敷き部材も同数の品種を準備する必要があり、このような事情が製造コストの低廉化にとって大きなネックになっていた。また在庫管理なども面倒になっていた。
また、中敷き部材を紛失したり破損したりした場合や、そもそも中敷き部材を備えない容器に新たに中敷き部材を使用したいとの要請があった場合でも、前記のような製造上の(品種的な)事情と共に、そもそも小売りをしない販売形態が採られていたことが原因で、使用者サイドで中敷き部材だけを入手することは不可能であった。結果として、中敷き部材を使用できない場合があった。
【0007】
一方、特許文献2に記載された従来提案の「離隔体」なるものにおいて、漫然と説明を読めば、フランジ上面に設けた仮切り込み線に沿わせて切れ目を入れることにより、小さな植木鉢にも使用できるということになる。
しかしながら、特許文献2の第1図から理解できるように、仮切り込み線は只でさえ小
幅のフランジに対してその張出量より更に短くて全幅にわたっておらず、しかも、第3図から理解できるようにフランジの肉厚は半球状部分よりも分厚く形成されている。加えて、フランジが小幅であるために仮切り込み線に沿って切れ目を入れたところで、分割後のフランジ小片を立ち上げるには相当の力を要することが判る。
【0008】
また、立ち上げたフランジ全体を含めて離隔体全体を植木鉢内へ嵌め入れるためには、全周にわたる全てのフランジ小片を一斉に(同時に)立ち上げる必要があるのだから、半球状部分の中心部を相当に強い力で真下へ押し込むようにする必要がある筈である。
しかし、前記のように個々のフランジ小片を立ち上げるだけでも力を要するのだから、全てのフランジ小片を一斉に立ち上げるために要する力がどれほど強いものになるかは想像に難くない。なお、説明にはポリエチレン製との記載があるが、半球状部分を保形させるための硬さは全体的に有している筈であり、従ってフランジ小片もそれなりに硬いことに疑いの余地はない。
【0009】
これらのことから、特許文献2に記載の離隔体の実用性には大きな疑念が残る。そうであれば、このような離隔体の技術を、植栽容器内の内底まで嵌め入れなければならない水切り用の中敷き部材に転用することなどは、到底不可能であると言わざるを得ない。すなわち、植栽という広義では同じ範疇に入るとしても、用途や使用状態に関しては中敷き部材とは全く異質の技術である。
【0010】
そもそも、小さな植木鉢に対して使用する段になって、いちいち複数本もの仮切り込み線を根気よく切断しなければならない点は、カッターやハサミなど、植栽とはおおよそ無縁である工具の準備が必要であることを含めて極めて不便であると言わざるを得ず、前記のように植木鉢への嵌め入れに相当強い力を要することと併せて、子供や女性、高齢者などには使用できない場合があることも容易に推察される。
【0011】
また、フランジに切れ目を入れて立ち上げてしまった離隔体は、その使用後において、号数の大きな植栽容器へ再使用することは不可能であるという不具合も指摘できる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、号数の異なる各種サイズの容器に対して極めて簡単に嵌め入れできることができ、繰り返して各種サイズの容器への再利用性が図れ、製造コストの低廉化も図れるようにした容器の中敷き部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る容器の中敷き部材は、内底を有する容器内へ嵌め入れて内底側に容器内と区画された空間を画成する中敷き部材において、容器の側壁内面との間に全周的に環状の空間を形成可能なように内底よりも小さく形成された設置盤体と、前記設置盤体の全周で外方へ張り出して設けられた仕切り盤体と、を有しており、前記設置盤体および前記仕切り盤体は、偏平な盤状に一体形成されており、前記設置盤体は、中床部とこの中床部の下面で下方へ突出する接地脚とを有し、前記仕切り盤体は、張り出し側の端縁部と前記設置盤体の前記中床部との間にわたるスリットが前記設置盤体を中心とする放射状配置で複数本設けられることによって前記スリットの相互間に上下方向へ弾性をもって撓み変形可能な可撓性を有する可撓ブレードが形成され、前記可撓ブレードには複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0013】
前記可撓ブレードは、前記仕切り盤体の1周を1/6~1/10に分割することによって形成されたものとするのが好適である。
また、本発明に係る容器の中敷き部材は、内底を有する容器内へ嵌め入れて内底側に容器内と区画された空間を画成する中敷き部材において、容器の側壁内面との間に全周的に環状の空間を形成可能なように内底よりも小さく形成された設置盤体と、前記設置盤体の全周で外方へ張り出して設けられた仕切り盤体と、を有しており、前記設置盤体は、中床部とこの中床部の下面で下方へ突出する接地脚とを有し、前記仕切り盤体は、張り出し側の端縁部と前記設置盤体の前記中床部との間にわたるスリットが前記設置盤体を中心とする放射状配置で複数本設けられることによって前記スリットの相互間に上下方向へ可撓性を有する可撓ブレードが形成され、前記可撓ブレードには複数の貫通孔が形成され、一方のスリットを形成している側縁と他方のスリットを形成している側縁との間に、周方向で傾いて高低差を生じさせてあることを特徴とする。
前記可撓ブレードにおいて、前記高低差を付与する傾きが唯一、ブレード表面に付与する面方向の立体造形であるとするのが好適である。
【0014】
また、本発明に係る容器の中敷き部材は、内底を有する容器内へ嵌め入れて内底側に容器内と区画された空間を画成する中敷き部材において、容器の側壁内面との間に全周的に環状の空間を形成可能なように内底よりも小さく形成された設置盤体と、前記設置盤体の全周で外方へ張り出して設けられた仕切り盤体と、を有しており、前記設置盤体は、中床部とこの中床部の下面で下方へ突出する接地脚とを有し、前記仕切り盤体は、張り出し側の端縁部と前記設置盤体の前記中床部との間にわたるスリットが前記設置盤体を中心とする放射状配置で複数本設けられることによって前記スリットの相互間に上下方向へ可撓性を有する可撓ブレードが形成され、前記可撓ブレードには複数の貫通孔が形成され、前記設置盤体の前記中床部と前記仕切り盤体の前記可撓ブレードとの接続部に肉厚差を利用して接続間の曲がり位置を規定する屈曲誘導部が設けられていることを特徴とする。
前記屈曲誘導部は上部が凹で下部が凸となる側面U形を呈して形成されており、前記設置盤体の前記中床部には上面又は下面に射出成形ゲート痕を残して前記設置盤体と前記仕切り盤体とが一体形成されているものとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る容器の中敷き部材は、号数の異なる各種サイズの容器に対して極めて簡単に嵌め入れできることができ、繰り返して各種サイズの容器への再利用性が図れ、製造コストの低廉化も図れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る中敷き部材について容器を仮想線で描いて使用状態を示した斜視図であって(a)は号数の小さな容器への適用時であり(b)は号数の大きな容器への適用時である。
【
図3】本発明に係る中敷き部材を示した平面図である。
【
図4】(a)は
図3のA-A線矢視図であり(b)は
図3のB-B線断面図である。
【
図5】(a)は
図3のC-C線端面図であり(b)は(a)のD部拡大図である。
【
図7】本発明に係る中敷き部材について開口部及び内底が四角状とされた容器を仮想線で描いて使用状態を示した斜視図である。
【
図8】屈曲誘導部の別例を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1乃至
図6は、本発明に係る中敷き部材1の一実施形態を示している。この中敷き部材1は、植栽容器等の内底を有した容器内へ嵌め入れて、内底側に容器内と区画された空間(例えば水切りのための空間)を形成させる場合などに好適に使用することができる。
なお、容器が植栽容器である点や、内底側に形成する空間を水切りに利用する点などは、特に限定されるものではない。また、ここにおいて「内底」には、水抜きの孔をはじめ、軽量化目的の開口、スタッキングリブや補強リブ等の突起物など、種々のものが形成されていてもよいし、形成されていなくともよい。
【0018】
更に言うと、容器自体についてもその形状や材質、号数(サイズ)など何ら限定されるものではない。例えば、
図1(a)は開口部及び内底が円形で号数の小さな下すぼみ中空円錐台状を呈した容器Xへの使用状態を示しており、これに対して
図1(b)及び
図6は、
図1(a)の容器Xに比べて号数の大きな下すぼみ中空円錐台状を呈した容器Yへの使用状態を示している。また
図7は、開口部及び内底が四角状とされた下すぼみ中空角錐台状を呈した容器Zへの使用状態を示している。
【0019】
このように、本発明に係る中敷き部材1は、複数の号数にわたる範囲内でフリーサイズ化したものであり、しかも種々様々な形状の容器(X,Y,Z等)に対して汎用的に適用できるものである。
図2乃至
図4に示すように、本発明の中敷き部材1は、全体としては偏平な盤状(図例では円盤状とした)に形成されたものであって、盤中央には設置盤体2が配置されており、この設置盤体2のまわりを取り囲むように仕切り盤体3が配置された構成となっている。
【0020】
これら設置盤体2及び仕切り盤体3は、樹脂等により互いに一体形成されている。なお、設置盤体2は容器(X,Y,Z等)の大きさや形状に拘わらず、盤形状を略不変に維持させればよい部分であり、殊に上面は容器(X,Y,Z等)内へ嵌め入れた後も平坦面であることが好ましいとされる。そのため、この設置盤体2にはある程度の硬さが要求される。
【0021】
一方で、仕切り盤体3は、中敷き部材1を容器(X,Y,Z等)内へ嵌め入れる際には、容器(X,Y,Z等)の大きさや形状に馴染んで上方へ撓み変形することが必要とされる部分であり、殊に外周縁部は容器(X,Y,Z等)内へ嵌め入れた後に、容器(X,Y,Z等)の側壁内面に当接した状態を維持することが望まれている。そのため、この仕切り盤体3にはある程度の柔軟性が必要とされる。
【0022】
これらのことを理由として、少なくとも仕切り盤体3は、曲げや捻りを誘発させるような外力に対して比較的容易に変形することのできる可撓性を有し、またこのような変形に対しては形状復元性(弾性)を有したものであることが要求されている。
そのため、形成素材とする樹脂には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネイト、塩化ビニル、シリコン等を選択するのが好ましい。とは言え、採用する形成素材には、素材の持つ可撓性、形状復元性(弾性)と、設置盤体2及び仕切り盤体3の厚さや大きさ(面積)等との関係において、列挙した樹脂以外のものも含めて適切な素材種を選択すればよい。
【0023】
設置盤体2は、容器(X,Y,Z等)の側壁内面との間に全周的に環状の空間を形成できるように、容器(X,Y,Z等)の内底よりも小さく形成されている。設置盤体2の大きさと容器(X,Y,Z等)の内寸との寸法関係が厳密的又は具体的に規定されるわけではないが、前記した容器内へ形成させる環状の空間は、仕切り盤体3を上方へ撓ませながら嵌め入れるためのスペースであるため、設置盤体2は容器(X,Y,Z等)の内底よりも小さくすることを一応の目安とする。
【0024】
ここで「一応の目安」としているのは、容器によっては、稀に、内底にその中心になるほど徐々に径小となるような複数の段部やテーパー等が施されているような場合があり、この場合にはどの深さ位置をもって「内底」とするかが不明瞭になることがあるためである。
この設置盤体2は、中床部5とこの中床部5の下面で下方へ突出する接地脚6とを有している。中床部5に対する接地脚6の配置は、容器(X,Y,Z等)の内底にスタッキングリブや補強リブ等の突起物(図示略)が設けられている場合に、これらの突起物と接触干渉しないことを前提として設定するのがよい。
【0025】
なお、本実施形態では4個の接地脚6が設けられたものとしてあるが、設ける個数が限定されるものではない。3個以上とすることが好ましいが、個々の接地脚6を大型化することによって2個に減らすことも可能である。
また接地脚6の形状についても特に限定されるものではない。例えば、図例では下すぼみの円錐台状としているが、下すぼみの角錐台状としてもよいしストレートの円柱形や角柱形としてもよい。下端の形状を扁平とするも半球状乃至尖端形とするも任意である。中空構造としても中実構造としてもよい。また、場合によっては食器類の足まわり(糸尻)に見られるように、中床部5の中央で一つのリング形に突出する形状を採用してもよい。
【0026】
本実施形態において接地脚6は、中床部5の上面で開口する中空構造を採用してある。この接地脚6の中空部7は、容器(X,Y,Z等)に対して中敷き部材1を嵌め入れたり取り出したりする際に、作業者が指を差し込んで摘みやすくするのに適した開口大きさ、深さに形成してある。
前記したように、接地脚6の配置を容器(X,Y,Z等)の内底に設けられた突起物との干渉を避ける設定とすることは、多くの場合、作業者が接地脚6の中空部7へ指を差し込みやすい配置(老若男女の平均的な手の大きさに馴染む配置)にする点でも有益となる。
【0027】
各接地脚6における中空部7の内側面には、差し入れた指の滑り止め作用を奏する周リブ8を、深さ方向に複数本が並ぶように形成してある。この周リブ8は、中空部7の内周面全周に設けてもよいが、指で摘みあげるようにする場合の指の引っ掛かり面だけとするように、中床部5の中心へ臨むような配置で、それぞれ1/5周~1/2周程度(図例では1/4周程度)を設けるようにしてもよい。
【0028】
仕切り盤体3は、設置盤体2の全周で外方へ張り出して設けられたものであって、複数枚の可撓ブレード12を有している。各可撓ブレード12は、いずれも同大同形状とされており、スリット13を介して互いに隣り合うように配置されている。
これら各スリット13は、仕切り盤体3における張り出し側の端縁部と設置盤体2における中床部5との間にわたって形成されており、仕切り盤体3を周方向で分断するようになっている。前記したように各可撓ブレード12が同大同形状であるため、各スリット13も同幅であり周方向に同間隔の配置とされている。
【0029】
言い換えれば、仕切り盤体3には、設置盤体2を中心とする放射状配置で複数本のスリット13が設けられており、これらのスリット13により、スリット13の相互間に可撓ブレード12が形成されていると言うことができる。
スリット13の幅は、容器(X,Y,Z等)が植栽容器である場合には3~5mmとするのが好適である。スリット13を3mmに満たない幅に形成することは樹脂成形の過程で難しく、また5mmを超える場合は土壌の漏れを誘発させてしまうおそれがあるので、好適には4mm以下とするのがよい。
【0030】
可撓ブレード12には複数の貫通孔15が形成されている。本実施形態では、貫通孔15の開口形状が正六角形を呈したものとしてあり、また
図5(b)に示すように上方の開口に比べて下方ほど開口が小さくなる方向の勾配が付されたものとしてある。貫通孔15の開口内に付された勾配は成形時の脱型勾配である。
なお、貫通孔15の開口形状は円形や楕円形でもよいし正方形や長方形など、その他の形状としてもよい。
【0031】
このようにして形成された可撓ブレード12は、張り出し側の端縁部に対して上下方向へ曲がりや捻りの外力が加えられたときに、ブレード自体に撓みが生じて撓み変形を起こすようになる。すなわち、各可撓ブレード12は、上下方向へ可撓性を有したものとされている。
可撓ブレード12の可撓性は、軟らかすぎても硬すぎても不都合である。その硬さ(腰の強さ)の調節は前記したように形成素材の選出と可撓ブレード12の厚さによって行う。一例として、形成素材をポリプロピレンとする場合にあって、可撓ブレード12は1.2mm程度とするのが好適であった。
【0032】
このように、可撓ブレード12は、ブレード自体の可撓性だけを利用して屈曲するものとしてもよいが、本実施形態では、更に屈曲性を高め且つ屈曲が決まった位置で生じるようにするために、
図5(b)に示すように、設置盤体2の中床部5と仕切り盤体3の可撓ブレード12との接続部に屈曲誘導部18を設けてある。
この屈曲誘導部18は、中床部5の肉厚t
1に比べて薄い肉厚t
2となるように形成してあり、可撓ブレード12に起こる撓み変形が位置的に屈曲誘導部18で優先して発生するようになっている。肉厚差(t
1>t
2)をどの程度の差にするかについては、設置盤体2及び仕切り盤体3の形成素材の持つ可撓性、形状復元性(弾性)によって適宜設定することができる。
【0033】
具体的にはt1=1.4mm、t2=0.8mmとした。因みに、前記のように可撓ブレード12の厚さを1.2mmとする場合には、中床部5と可撓ブレード12との間にも肉厚差が生じるので、これによっても可撓ブレード12の撓み変形が生じ易くなっている。
本実施形態の屈曲誘導部18は、上部が凹で下部が凸となる側面U形を呈して形成されたものとしてある。そのため、形状に起因したスプリングバック作用を得ることができ、殊に形状復元性(弾性)を高める観点から有益となっている。
【0034】
屈曲誘導部18を前記のような断面U字状にする場合、設置盤体2と仕切り盤体3とを樹脂で一体成形するためには、射出成形による成形を必要とする。そのため、設置盤体2の中床部5にはその上面又は下面に対して射出成形ゲート痕(多くの場合、注入側ではイボ状乃至斑点状の痕跡になり反注入側ではヒケ状の痕跡になる)20が残されることになる。すなわち、このような射出成形ゲート痕20の存在が、断面U字状の屈曲誘導部18を備えた一体成形品を射出成形したことの証となる。
【0035】
中床部5に射出成形ゲート痕20を配置して射出成形することによる作用効果としては、射出成形ゲート痕20を中心として周方向全周にわたって均等に、径方向の樹脂流れが生じることになるので、屈曲誘導部18の断面U字状を設計通り巧く(型くずれ無しに)成形できる。また、屈曲誘導部18を成形後にも樹脂流れが澱むことがないので、可撓ブレード12における張り出し側の端縁部まで樹脂が確実に行き渡って可撓ブレード12自体も、確実に設計通り巧く(型くずれ無しに)成形できる点を挙げることができる。
【0036】
屈曲誘導部18の断面形状については、断面U字状とすることが限定されるものではなく、
図8に示すような各種の断面形状を採用可能となる。
図8(a)は上部が扁平で下部が凹となる裏溝形を呈したものであり、
図8(b)は設置盤体2の中床部5に比べて仕切り盤体3の可撓ブレード12を薄く形成することで下面段差を生じさせたものであり、
図8(c)は上部が扁平で下部が半球状の凸となる裏リブ形を呈したものであり、
図8(d)は上部が凸で下部が凹となる断面n字状を呈したものである。
【0037】
なお、屈曲誘導部18は必ずしも必要ではなく、設置盤体2の中床部5と仕切り盤体3の可撓ブレード12とが直接的に接続された構造(屈曲誘導部18を備えずに可撓ブレード12自体の可撓性のみを利用する構造)としてもよい。
可撓ブレード12は、前記したように複数の貫通孔15を形成させるものであるので、貫通孔15による開口面積に相当して硬さや剛性が低下している。そのため、場合によっては周方向のブレード幅が狭すぎると、可撓ブレード12にとって必要な剛性を保てなくなることが予想される。
【0038】
可撓ブレード12に必要とされる剛性(腰の強さなど)は、容器(X,Y,Z等)の側壁内面に当接して撓み変形を生じたときに、張り出し側の端縁部が容器(X,Y,Z等)の側壁内面から離反して容器の内方へ曲がったり倒れ込んだりしないようにするために必要とされている。
なぜなら、容器(X,Y,Z等)の側壁内面と可撓ブレード12の張り出し側の端縁部との間に隙間が生じると、この隙間に土壌が詰まり、この土壌が更に可撓ブレード12を容器内方へ押し倒すように作用して、ますます隙間を広げるようになる。そのため、このようになった中敷き部材1では隙間が水路の役目となってしまい、水切りとしての作用が低下したり作用を奏しなくなったりするおそれが生じるのである。
【0039】
本発明者の試行錯誤によると、仕切り盤体3の1周を1/6~1/10に分割して可撓ブレード12を形成すれば、可撓ブレード12に対して十分な面積を確保できることになり、これによって好適な可撓性が得られることを知見した。なかでも、1/8とするのが、中空角錐台状を呈した容器Z(
図7参照)へ汎用性を拡大させる意味も込めて一層好ましいものであった。
【0040】
なお、仕切り盤体3の1周を1/6に分割すれば可撓ブレード12は6枚となり、設置盤体2の中床部5は正六角形になる。同様に分割数が1/8であれば可撓ブレード12は8枚、設置盤体2の中床部5は正八角形になり、1/10であれば可撓ブレード12は10枚、設置盤体2の中床部5は正十角形になる。
1/6未満では可撓ブレード12が硬すぎて十分な可撓性が得られず、1/10を超えると可撓ブレード12が軟らかすぎて前記した隙間の問題が起こりやすいものであった。
【0041】
可撓ブレード12の両側はスリット13によって挟まれた配置となっているが、個々の可撓ブレード12を見たときに、本実施形態では一方のスリット13を形成している側縁と他方のスリット13を形成している側縁との間に、周方向で傾くことによって高低差が生じるようにしてある。
この傾きは、ブレード面をフラットなまま直線的に傾けたものとしても、曲面的に傾けたものとしてもよい。
【0042】
このような高低差を生じさせておくと、中敷き部材1を容器(X,Y,Z等)内へ嵌め入れる際には、各可撓ブレード12が張り出し側の端縁部を上方へ撓ませるように変形してゆく過程で、スリット13を挟んで隣接関係を成す両側の可撓ブレード12が互いに重なり合うようになる。そのため、各スリット13が一部乃至全部塞がるようになり、中敷き部材1の上方に充填される土壌が中敷き部材1の下方へ必要以上に漏れ出るおそれがない。
【0043】
前記したように、容器(X,Y,Z等)の側壁内面と可撓ブレード12の張り出し側の端縁部との間に隙間が生じるのを防止するという意味において、可撓ブレード12のブレード表面に付与する面方向の立体造形としては、高低差を付与する傾きが唯一のものとするのが好適となる。要するに、容器(X,Y,Z等)への嵌め入れをスムーズにさせることなどを理由として、可撓ブレード12の張り出し側の端縁部を上方へカールさせるような立体造形は、施すべきではない。
【0044】
このような構成を具備して成る本発明の中敷き部材1は、容器(X,Y,Z等)に嵌め入れてゆくと、各可撓ブレード12の張り出し側の端縁部が容器(X,Y,Z等)の側壁内面に当接することに伴って各可撓ブレード12が個々に張り出し側の端縁部を上方へ撓ませるように変形する。
このとき、可撓ブレード12自体の撓みと屈曲誘導部18での屈曲とが並行して発生するが、容器(X,Y,Z等)の号数が小さいことを理由として可撓ブレード12に上向きの大きな外力が加わったような場合には、屈曲誘導部18での屈曲が優先する傾向となる。
【0045】
可撓ブレード12の撓み変形や屈曲誘導部18での屈曲が生じることにより、中敷き部材1を平面視したときの外径が容器(X,Y,Z等)の号数に応じて径小化されるので、号数違いや形状違いにも適応して、
図1(a)(b)及び
図7に示すように確実な嵌め入れができることになる。
各可撓ブレード12が張り出し側の端縁部を上方へ撓ませるように変形する際には、スリット13を挟んで隣接関係を成す両側の可撓ブレード12が互いに重なり合ってスリット13が一部乃至全部塞がるようになるので、中敷き部材1の上方に充填される土壌が中敷き部材1の下方へ必要以上に漏れ出るのを防止できる利点が得られる。これにより、仕切り盤体3の下方が土壌で詰まってしまうようなことが防止される。
【0046】
なお、スリット13は径方向で直線的なものとする他、径方向で湾曲させるようにすることも可能である。このようにすると、スリット13を挟んで隣接関係を成す両側の可撓ブレード12が重なる際に、各可撓ブレード12には径方向内方よりも径方向外方になるにしたがって重なりのタイミングに遅れが生じるような現象が得られる。
そのため、各可撓ブレード12には、径方向外方ほど変形し易い状態(重ならずに1枚でいる状態)が可及的に長く継続されるようになる。また、可撓ブレード12同士が重なるときの摩擦抵抗も増大傾向にも時間的なズレ(遅延)が生じることになる。
【0047】
これらのことから、各可撓ブレード12において、張り出し側の端縁部を上方へ撓ませるような変形を生じさせやすくなるという利点が得られる。要するに、本発明中敷き部材1を容器(X,Y,Z等)へ嵌め入れ易くなるという利点に繋がる。
ところで、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
【0048】
例えば、可撓ブレード12に形成している貫通孔15は、設置盤体2の中床部5に対しても形成させることができる。但し、中床部5に形成する貫通孔15の開口面積や形成数などに関して、中床部5の硬さを過度に軟らかくさせない範囲とすることや、貫通孔15を介して土壌が落下する量を制限できる範囲とすることに留意する必要がある。
中敷き部材1(仕切り盤体3)の平面視形状は、円形とすることが限定されるものではなく、例えば正四角形を超える正多角形(正八角形など)とすることも可能である。
【0049】
可撓ブレード12に対し、隣接する可撓ブレード12間での重なりを起こさせるための傾きを設ける場合において、全ての可撓ブレード12に同じ傾きを設ける必要はなく、例えば1枚おきの配置となる可撓ブレード12にのみ傾きを設けてもよい。
また、このように1枚おきの配置となる可撓ブレード12に傾きを設ける場合では、可撓ブレード12の幅方向両側の側縁が高くなり幅方向中央部が低くなるような傾きを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 中敷き部材(本発明中敷き部材)
2 設置盤体
3 仕切り盤体
5 中床部
6 接地脚
7 中空部
8 周リブ
12 可撓ブレード
13 スリット
15 貫通孔
18 屈曲誘導部
20 射出成形ゲート痕
X,Y,Z 容器