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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】砂肝製品及び砂肝製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A22C 21/00 20060101AFI20230619BHJP
   A23L 13/50 20160101ALI20230619BHJP
【FI】
A22C21/00 B
A23L13/50
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021067716
(22)【出願日】2021-04-13
(65)【公開番号】P2022162740
(43)【公開日】2022-10-25
【審査請求日】2022-11-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502154566
【氏名又は名称】株式会社オヤマ
(74)【復代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】小山 達也
【審査官】宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-136391(JP,U)
【文献】りんさく,ビールに最高!砂肝のねぎ塩ダレ焼き,[online],2006年11月11日,https://cookpad.com/recipe/299560,[検索日:2022年12月5日]
【文献】村上歩美,節約食材「鶏ムネ肉」を味方に!削いで広げて厚さ半分「観音開き」やり方,[online],2017年06月22日,https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/column/lifestyle/1162565.html,[検索日:2022年12月5日]
【文献】「塩麹」のマンネリ脱却!目から鱗のアイデアレシピ3選 発酵調味料 活用レッスン♯1,[online],2020年10月06日,https://macaro-ni.jp/92525?page=2,[検索日:2022年12月5日]
【文献】科学者ママnicky,わんこの手作り砂肝ジャーキー,[online],2014年06月17日,https://ameblo.jp/0319amyy/entry-11879716064.html,[検索日:2022年12月5日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 17/00-21/06
A23L 13/00-13/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食鳥の砂肝が接続部を残して切断されるとともに内壁が除去され上記接続部を境に略左右対称の一対の肉塊を備えてなる砂肝肉を加工して得られる砂肝製品であって、
上記一対の肉塊を、夫々、上記接続部側から該接続部とは反対側の端部に向け且つ該端部を連結部として残して上記肉塊の肉塊切断面に平行な面に略沿って切断し、上記肉塊切断面側の基端肉片と外側の先端肉片とを形成し、上記接続部を境に一方の基端肉片と他方の基端肉片とを上記肉塊切断面が1つの平面に略沿うように展開するとともに、上記連結部を境に基端肉片と先端肉片とをこれらの肉片切断面が上記平面に平行になるように展開し、展開方向に沿って4つの肉片が連設される板状に形成し、
上記基端肉片と先端肉片との最大厚さを略同じにし、
上記4つの肉片の肉片切断面に、夫々、筋状の切込みを形成し、
上記切込みは、上記展開方向に直交する方向に略沿う横切込みと、上記展開方向に略沿い上記接続部及び連結部を通って形成される縦切込みとの2種類からなり、上記横切込みを、各肉片毎に1本形成し、上記縦切込みを2本形成し、
砂肝肉の外皮は、特異的に軟化させる酵素を有した処理液に浸漬されて軟化され、
上記処理液は塩麹を含み、該塩麹により軟化及び味付けされ、
真空タンブラーにより上記処理液内で真空マッサージされ、軟化及び味付けされていることを特徴とする砂肝製品。
【請求項2】
4つの肉片が連設される板状の状態で真空パックで包装されていることを特徴とする請求項1記載の砂肝製品。
【請求項3】
食鳥の砂肝が接続部を残して切断されるとともに内壁が除去され上記接続部を境に略左右対称の一対の肉塊を備えてなる砂肝肉の当該一対の肉塊を、夫々、上記接続部側から該接続部とは反対側の端部に向け且つ該端部を連結部として残して上記肉塊の肉塊切断面に平行な面に略沿って切断し、上記肉塊切断面側の基端肉片と外側の先端肉片とを形成し、上記接続部を境に一方の基端肉片と他方の基端肉片とを上記肉塊切断面が1つの平面に略沿うように展開するとともに、上記連結部を境に基端肉片と先端肉片とをこれらの肉片切断面が上記平面に平行になるように展開し、展開方向に沿って4つの肉片が連設される板状に形成した砂肝製品を製造する砂肝製品の製造方法であって、
上記一対の肉塊を備えた砂肝肉を、その接続部を境に一方の肉塊と他方の肉塊とをこれらの肉塊切断面が1つの平面に略沿うように展開する展開工程と、
該展開工程で展開された一対の肉塊に、夫々、上記接続部側から該接続部とは反対側の端部に向け且つ該端部を連結部として残して上記肉塊の肉塊切断面に平行な面に略沿って切断し、上記肉塊切断面側の基端肉片と外側の先端肉片とを形成するとともに、上記連結部を境に基端肉片と先端肉片とをこれらの肉片切断面が上記平面に略沿うように展開する切断展開工程とを備え
上記切断展開工程において、上記基端肉片と先端肉片との最大厚さを略同じにして切断し、
上記切断展開工程後に、上記4つの肉片の肉片切断面に、夫々、筋状の切込みを形成する切込み工程を備え、
上記切込みは、上記展開方向に直交する方向に略沿う横切込みと、上記展開方向に略沿い上記接続部及び連結部を通って形成される縦切込みとの2種類からなり、
上記切込み工程において、上記横切込みを、各肉片毎に1本形成し、上記縦切込みを2本形成し、
上記切断展開工程後に、砂肝肉の主に外皮を特異的に軟化させる酵素を有した処理液に所定時間浸漬する軟化工程を備え、
上記処理液は、塩麹を含み、
上記軟化工程は、真空タンブラーにより砂肝肉を処理液内で真空マッサージする前処理工程と、該前処理工程後の砂肝肉を処理液に所定時間浸漬する浸漬工程とを備えたことを特徴とする砂肝製品の製造方法。
【請求項4】
上記砂肝製品を4つの肉片が連設される板状の状態で真空パックで包装する包装工程を設けたことを特徴とする請求項3記載の砂肝製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏等の食鳥の砂肝が接続部を残して左右に切断された砂肝肉を加工して得られる砂肝製品及び砂肝製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食鳥としては、鶏をはじめ、鴨,七面鳥,ホロホロチョウ,キジ,ウズラ,アヒル,ガチョウ等を挙げることができるが、これらの食鳥の胃である砂肝は加工されて砂肝肉として食に供されている。一般に、鶏の場合で説明すると、図6に示すように、砂肝肉Sは、砂肝を略左右対称に接続部2を残して切断し、所謂「銀皮」と言われる白色の筋からなる外皮3を残し、所謂「黄皮」と言われる黄色の内壁(図示せず)を除去し、接続部2を介して肉塊切断面4で分離された一対の肉塊1,1を備えて形成されている(特許第4911513号公報(特許文献1),実公昭56-39328号公報(特許文献2)等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4911513号公報
【文献】実公昭56-39328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の砂肝肉Sにあっては、脂肪がほとんどなく主に筋肉でできており、また、外皮3の銀皮もあり、更には、肉塊1が嵩張ることもあって、噛みきりにくいという問題があった。これを解消するために、外皮3の銀皮を切除したり、肉塊1を分割することも行うが、それだけ全体が小さくなり、外観を損ねる。
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、全体を扁平状にして幅広にするとともに噛みきり易くし、外観と食感の改良を図った砂肝製品及び砂肝製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための本発明の砂肝製品は、食鳥の砂肝が接続部を残して切断されるとともに内壁が除去され上記接続部を境に略左右対称の一対の肉塊を備えてなる砂肝肉を加工して得られる砂肝製品であって、
上記一対の肉塊を、夫々、上記接続部側から該接続部とは反対側の端部に向け且つ該端部を連結部として残して上記肉塊の肉塊切断面に平行な面に略沿って切断し、上記肉塊切断面側の基端肉片と外側の先端肉片とを形成し、上記接続部を境に一方の基端肉片と他方の基端肉片とを上記肉塊切断面が1つの平面に略沿うように展開するとともに、上記連結部を境に基端肉片と先端肉片とをこれらの肉片切断面が上記平面に平行になるように展開し、展開方向に沿って4つの肉片が連設される板状に形成した構成としている。
【0006】
これにより、砂肝製品は、4つの肉片が連設される板状に形成されるので、全体が扁平状で幅広になり大きく見えるように外観を改良することができるとともに、扁平状に薄くなるので、それだけ、噛みきり易くなり、食感を向上させることができる。特に、肉塊の外面には、所謂「銀皮」と言われる白色の筋からなる外皮があり、この銀皮は筋なので噛みきりにくいが、肉塊の切断によってこの銀皮も切断されることから、それだけ、噛みきり易くすることができる。また、この砂肝製品は、4つの肉片が連設される板状であり、筋肉質であることから、あたかもスライスした牛タンのような外観と食感を与え、牛タンの代替品としても使うことができるようになり、それだけ、汎用性を向上させることができる。また、牛タンに比較して安価に提供することができるようになる。
【0007】
そして、必要に応じ、上記基端肉片と先端肉片との最大厚さを略同じにした構成としている。これにより、連設される4つの肉片が、夫々、略同じ厚さになるので、全体が厚さの均一な板状になり、そのため、より一層、スライスした牛タンのような外観を呈することができるようになる。
【0008】
また、必要に応じ、上記4つの肉片の肉片切断面に、夫々、筋状の切込みを形成した構成としている。これにより、肉片に切込みが入れられるので、この部位の繊維が切れることから、より一層噛みきり易くすることができる。
【0009】
この場合、上記切込みは、上記展開方向に直交する方向に略沿う横切込みと、上記展開方向に略沿い上記接続部及び連結部を通って形成される縦切込みとの2種類からなり、上記横切込みを、各肉片毎に1若しくは複数本形成し、上記縦切込みを1若しくは複数本形成したことが有効である。本発明では、横切込みを各肉片毎に1本形成し、縦切込みを2本形成している。これにより、肉片には縦横の切込みが入れられるので、それだけ砂肝肉の繊維が切れて、より一層噛みきり易くすることができる。しかも、縦切込みは、接続部を通るので、この接続部の表面には外皮の銀皮(白色の筋)が付帯しているが、この接続部の銀皮も切れることから、この点でも、噛みきり易くすることができる。
【0010】
また、必要に応じ、砂肝肉の外皮は、特異的に軟化させる酵素を有した処理液に浸漬されて軟化されている構成としている。食肉を軟化させる酵素としては、例えば、種々のプロテアーゼが知られているが、本発明においては、これらのプロテアーゼのなかでもとりわけ、硬質タンパク質の主成分であるコラーゲン、エラスチンを特異的に分解するものが選択される。
【0011】
これにより、筋原繊維の基本構造を維持したまま筋内膜を分解することができ、即ち、限定的酵素反応により外皮の銀皮を形成する特定のタンパク質のみを切断でき、砂肝肉本来の食感をほとんど損なうことなく保持しつつ、硬い筋を軟化させることができる。さらに、酵素の反応時間のコントロールも容易になる。このため、他の肉質部分の形を崩すことなく全体が適度な柔らかさに仕上げられ、噛みきり易くなって、食し易くなる。
【0012】
更に、必要に応じ、上記処理液は塩麹を含み、該塩麹により軟化及び味付けされている構成としている。塩麹によりPhや味の調整がなされ、塩麹に含まれる酵素によっても砂肝肉が軟化され、味付けされた状態で、より一層、噛みきり易く、食し易くなる。
【0013】
また、真空タンブラーにより処理液内で真空マッサージされ、軟化及び味付けされている構成としている。真空マッサージされるので塩麹や酵素が砂肝肉内に良く浸透し、より一層、味付けされた状態で、噛みきり易く、食し易くなる。
【0014】
更に、必要に応じ、4つの肉片が連設される板状の状態で真空パックで包装された構成としている。真空パックにより、板状の状態を保持できるので、真空パックから取出した際の調理を容易に行うことができる。
【0015】
また、上記の目的を達成するための本発明の砂肝製品の製造方法は、食鳥の砂肝が接続部を残して切断されるとともに内壁が除去され上記接続部を境に略左右対称の一対の肉塊を備えてなる砂肝肉の当該一対の肉塊を、夫々、上記接続部側から該接続部とは反対側の端部に向け且つ該端部を連結部として残して上記肉塊の肉塊切断面に平行な面に略沿って切断し、上記肉塊切断面側の基端肉片と外側の先端肉片とを形成し、上記接続部を境に一方の基端肉片と他方の基端肉片とを上記肉塊切断面が1つの平面に略沿うように展開するとともに、上記連結部を境に基端肉片と先端肉片とをこれらの肉片切断面が上記平面に平行になるように展開し、展開方向に沿って4つの肉片が連設される板状に形成した砂肝製品を製造する砂肝製品の製造方法であって、
上記一対の肉塊を備えた砂肝肉を、その接続部を境に一方の肉塊と他方の肉塊とをこれらの肉塊切断面が1つの平面に略沿うように展開する展開工程と、
該展開工程で展開された一対の肉塊に、夫々、上記接続部側から該接続部とは反対側の端部に向け且つ該端部を連結部として残して上記肉塊の肉塊切断面に平行な面に略沿って切断し、上記肉塊切断面側の基端肉片と外側の先端肉片とを形成するとともに、上記連結部を境に基端肉片と先端肉片とをこれらの肉片切断面が上記平面に平行になるように展開する切断展開工程とを備えた構成としている。
【0016】
切断展開工程においては、一方の肉塊と他方の肉塊を展開した状態で、先に、一方の肉塊と他方の肉塊を切断し、それから、各肉塊において、基端肉片と先端肉片とを展開しても良く、あるいは、先に、一方の肉塊において、切断してすぐに基端肉片と先端肉片とを展開し、それから、他方の肉塊において、切断してすぐに基端肉片と先端肉片とを展開しても良く、手順はどのようにしても良い。この場合、一方の肉塊と他方の肉塊を展開した状態で、各肉塊に、肉塊切断面に平行な肉片切断面を形成するので、展開しない状態で切断する場合に比較して、切断がやり易くなり、それだけ、作業効率を向上させることができる。
【0017】
そして、これにより製造された砂肝製品によれば、砂肝製品は、4つの肉片が連設される板状に形成されるので、全体が扁平状で幅広になり外観を改良することができるとともに、扁平状に薄くなるので、それだけ、噛みきり易くなり、食感を向上させることができる。特に、肉塊の外皮である銀皮は噛みきりにくいが、肉塊の切断によってこの銀皮も切断されることから、それだけ、噛みきり易くすることができる。また、この砂肝製品は、4つの肉片が連設される板状であり、筋肉質であることから、あたかもスライスした牛タンのような外観と食感を与え、牛タンの代替品としても使うことができるようになり、それだけ、汎用性を向上させることができる。また、牛タンに比較して安価に提供することができるようになる。
【0018】
また、必要に応じ、上記切断工程において、上記基端肉片と先端肉片との最大厚さを略同じにして切断する構成としている。これにより、連設される4つの肉片が、夫々、略同じ厚さになるので、全体が厚さの均一な板状になり、そのため、より一層、スライスした牛タンのような外観を呈することができるようになる。
【0019】
更に、必要に応じ、上記展開工程後に、上記4つの肉片の肉片切断面に、夫々、筋状の切込みを形成する切込み工程を備えた構成としている。これにより、肉片に切込みが入れられるので、この部位の繊維が切れることから、より一層噛みきり易くすることができる。
【0020】
この場合、上記切込みは、上記展開方向に直交する方向に略沿う横切込みと、上記展開方向に略沿い上記接続部及び連結部を通って形成される縦切込みとの2種類からなり、
上記切込み工程において、上記横切込みを、各肉片毎に1若しくは複数本形成し、上記縦切込みを1若しくは複数本形成する構成としている。これにより、肉片には縦横の切込みが入れられるので、それだけ砂肝肉の繊維が切れて、より一層噛みきり易くすることができる。しかも、縦切込みは、接続部を通るので、この接続部の表面には外皮の銀皮(白色の筋)が付帯しているが、この銀皮も切れることから、この点でも、噛みきり易くすることができる。
【0021】
また、必要に応じ、上記切断展開工程後に、砂肝肉の主に外皮を特異的に軟化させる酵素を有した処理液に所定時間浸漬する軟化工程を備えた構成としている。食肉を軟化させる酵素としては、例えば、種々のプロテアーゼが知られているが、本発明においては、これらのプロテアーゼのなかでもとりわけ、硬質タンパク質の主成分であるコラーゲン、エラスチンを特異的に分解するものが選択される。
【0022】
これにより、筋原繊維の基本構造を維持したまま筋内膜を分解することができ、即ち、限定的酵素反応により外皮の銀皮を形成する特定のタンパク質のみを切断でき、砂肝肉本来の食感をほとんど損なうことなく保持しつつ、硬い筋を軟化させることができる。さらに、酵素の反応時間のコントロールも容易になる。このため、他の肉質部分の形を崩すことなく全体が適度な柔らかさに仕上げられ、噛みきり易くして、食し易くすることができる。
【0023】
この場合、上記処理液は、塩麹を含むことが有効である。塩麹によりPhや味の調整をすることができるとともに、塩麹に含まれる酵素によっても砂肝肉を軟化させることができ、より一層、噛みきり易くして、食し易くすることができる。
【0024】
また、この場合、上記軟化工程は、真空タンブラーにより砂肝肉を処理液内で真空マッサージする前処理工程と、該前処理工程後の砂肝肉を処理液に所定時間浸漬する浸漬工程とを備えた構成とすることが有効である。前処理工程で、タンブラー内に肉を投入して回転させる事により、堅い筋肉の繊維が軟らかくなると同時に、塩麹や酵素が砂肝肉内に良く浸透する。そのため、浸漬工程で、酵素による軟化機能を確実に発揮させることができる。また、蛋白質がアミノ酸に分解され、短時間で肉のうま味を増すことができる。そのため、砂肝肉全体を、味付けした状態で、より一層、噛みきり易くして、食し易くすることができる。
【0025】
更にまた、必要に応じ、上記砂肝製品を4つの肉片が連設される板状の状態で真空パックで包装する包装工程を設けた構成としている。真空パックにより、板状の状態を保持できるので、真空パックから取出した際の調理を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、砂肝製品は、4つの肉片が連設される板状に形成されるので、全体が扁平状で幅広になり外観を改良することができるとともに、扁平状に薄くなるので、それだけ、噛みきり易くなり、食感を向上させることができる。特に、肉塊の外面には、外皮である銀皮が付帯しており、この銀皮は噛みきりにくいが、肉塊の切断によってこの銀皮も切断されることから、それだけ、噛みきり易くすることができる。また、この砂肝製品は、4つの肉片が連設される板状であり、筋肉質であることから、あたかもスライスした牛タンのような外観と食感を与え、牛タンの代替品としても使うことができるようになり、それだけ、汎用性を向上させることができる。また、牛タンに比較して安価に提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態に係る砂肝製品を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る砂肝製品の製造方法を示す工程図である。
図3】本発明の実施の形態に係る砂肝製品の製造方法において、展開工程を示し、(a1)は平面図、(a2)は平面図に対応した正面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る砂肝製品の製造方法において、切断展開工程を示し、(a1)(b1)(c1)(d1)は平面図、(a2)(b2)(c2)(d2)は各平面図に夫々対応した正面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る砂肝製品の製造方法において、切込み工程を示す図である。
図6】従来からある砂肝肉の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る砂肝製品及び砂肝製品の製造方法について詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、本発明の実施の形態に係る砂肝製品Tは、食鳥としての鶏の砂肝肉Sを加工して得られる。砂肝肉Sは、図6にも示すように、砂肝を略左右対称に接続部2を残して切断し、所謂「銀皮」と言われる白色の筋からなる外皮3を残し、所謂「黄皮」と言われる黄色の内壁(図示せず)を除去し、接続部2を介して肉塊切断面4で分離された一対の肉塊1,1を備えて形成されている。
【0029】
詳しくは、実施の形態に係る砂肝製品Tは、砂肝肉Sの一対の肉塊1を、夫々、接続部2側からこの接続部2とは反対側の端部に向け且つ端部を連結部10として残して、肉塊1の肉塊切断面4に平行な面に略沿って切断し、肉塊切断面4側の基端肉片11と外側の先端肉片12とを形成し、接続部2を境に一方の基端肉片11と他方の基端肉片11とを肉塊切断面4が1つの平面Hに略沿うように展開し、連結部10を境に基端肉片11と先端肉片12とをこれらの肉片切断面13が平面Hに平行になるように展開し、展開方向Rに沿って4つの肉片(12,11,11,12)が連設される板状に形成されている。
【0030】
また、基端肉片11と先端肉片12との最大厚さは、略同じにして切断されている。その最大厚さtは、例えば、5mm≦t≦12mmの範囲程度である。更に、4つの肉片(12,11,11,12)の肉片切断面13には、夫々、筋状の切込み20が形成されている。この切込み20は、展開方向Rに直交する方向に略沿う横切込み21と、展開方向Rに略沿い接続部2及び連結部10を通って形成される縦切込み22との2種類からなる。横切込み21は、各肉片毎に1本形成され、縦切込み22は、2本形成されている。
【0031】
また、本砂肝製品Tは、砂肝肉Sの外皮3である銀皮は、特異的に軟化させる酵素を有した処理液に浸漬されて軟化されている。処理液は塩麹を含み、この塩麹により軟化及び味付けされている。更に、本砂肝製品Tは、真空タンブラーにより上記の処理液内で真空マッサージされ、軟化及び味付けされている。
【0032】
そして、本砂肝製品Tは、4つの肉片(12,11,11,12)が連設される板状の状態で、複数(例えば8枚)が真空パック31で包装されている。この包装製品30は、冷凍庫に入れられて冷凍され、流通させられる。
【0033】
次に、本発明の実施の形態に係る砂肝製品Tの製造方法について説明する。実施の形態に係る製造方法は、図1乃至図5に示すように、上記の砂肝製品Tを製造するものであり、この製造方法においては、事前に加工されて冷凍保存された砂肝肉Sを用いる。砂肝肉Sは、上述もし、図6にも示すように、砂肝を略左右対称に接続部2を残して切断し、所謂「銀皮」と言われる白色の筋からなる外皮3を残し、所謂「黄皮」と言われる黄色の内壁(図示せず)を除去し、接続部2を介して一対の肉塊1を備えて形成されている。
【0034】
実施の形態では、砂肝肉Sは、袋詰めされて冷凍庫で冷凍され、そのままでも出荷可能になっているものを使用する。そして、使用する砂肝肉Sは、適時に冷凍庫から必要量を取出し、予め解凍するとともに袋から取り出しておく。
【0035】
実施の形態に係る製造方法は、図2に示すように、(1)展開工程と、(2)切断展開工程と、(3)切込み工程と、(4)軟化工程と、(5)包装工程と、(6)冷凍工程とを備えている。また、軟化工程(4)は、前処理工程(4-1)と浸漬工程(4-2)を備えて構成されている。以下、各工程について説明する。
【0036】
(1)展開工程
図3(a1)(a2)に示すように、解凍された砂肝肉Sを、その接続部2を境に一方の肉塊1と他方の肉塊1とをこれらの肉塊切断面4が平面Hに略沿うように手作業で展開する。例えば、まな板の上面からなる平面Hに砂肝肉Sを載置して展開する。
【0037】
(2)切断展開工程
図4に示すように、展開工程で展開された一対の肉塊1に、夫々、接続部2側からこの接続部2とは反対側の端部に向け且つ端部を連結部10として残して肉塊1の肉塊切断面4に平行な面に略沿って手作業で切断し、肉塊切断面4側の基端肉片11と外側の先端肉片12とを形成するとともに、連結部10を境に基端肉片11と先端肉片12とをこれらの肉片切断面13が上記の平面Hに平行になるように手作業で展開する。この場合、基端肉片11と先端肉片12との最大厚さは、略同じにして切断する。
【0038】
実施の形態では、図4(a1)(a2)に示すように、先に、展開状態の一方の肉塊1において、端部を連結部10として残して切断し、図4(b1)(b2)に示すように、この状態ですぐに基端肉片11と先端肉片12とを展開し、それから、図4(c1)(c2)に示すように、砂肝肉Sを180°回転し、他方の肉塊1において、端部を連結部10として残して切断し、それから、図4(d1)(d2)に示すように、この状態ですぐに基端肉片11と先端肉片12とを展開する。尚、先に、一方の肉塊1と他方の肉塊1との両方を、端部を連結部10として残して切断し、それから、各肉塊1において、基端肉片11と先端肉片12とを展開しても良く、適宜変更して差支えない。
【0039】
この場合、一方の肉塊1と他方の肉塊1を展開した状態で、各肉塊1に、肉塊切断面4に平行な肉片切断面13を形成するので、展開しない状態で切断する場合に比較して、切断がやり易くなり、それだけ、作業効率を向上させることができる。
【0040】
(3)切込み工程
図5に示すように、展開工程後に、4つの肉片(12,11,11,12)の肉片切断面13に、夫々、筋状の切込み20を手作業で形成する。切込み20は、展開方向Rに直交する方向に略沿う横切込み21と、展開方向Rに略沿い接続部2及び連結部10を通って形成される縦切込み22との2種類からなる。また、横切込み21は、各肉片毎に1本形成し、縦切込み22は、2本形成する。図5(a)(b)に示すように、先に、各肉片毎に横切込み21を形成し、その後、図5(c)に示すように、砂肝肉Sの向きを90°回転させ、縦切込み22を形成する。横切込み21及び縦切込み22の形成順は、これに限定されるものではない。
【0041】
(4)軟化工程
(4-1)前処理工程
図2に戻り、周知の真空タンブラーにより、砂肝肉Sを処理液内で真空マッサージを、例えば、5分~10分程度行なう。処理液は、液状の塩麹に、砂肝肉の主に外皮を特異的に軟化させる酵素を添加して構成されている。酵素は、筋原繊維の基本構造を維持したまま筋内膜を分解することができる酵素、即ち、限定的酵素反応により銀皮(筋)を形成する特定のタンパク質のみを切断できる酵素を用いる。例えば、プロテアーゼのなかでもとりわけ、硬質タンパク質の主成分であるコラーゲン、エラスチンを特異的に分解するものが選択される。タンブラー内に肉を投入して回転させると、堅い筋肉の繊維が軟らかくなると同時に、塩麹や酵素が砂肝肉内に良く浸透する。
【0042】
(4-2)浸漬工程
前処理工程後の砂肝肉を処理液に所定時間浸漬する。処理液への浸漬は、冷蔵庫内において、例えば、1時間~24時間程度行なう。この場合、筋部位は、硬質タンパク質(コラーゲン)から構成される結合組織を多く含む部位であり、この酵素の力によってスジを特異的に切断することができる。また、塩麹によりPhや味の調整をすることができるとともに、塩麹に含まれる酵素によっても砂肝肉Sを軟化させることができる。
【0043】
酵素は、筋原繊維の基本構造を維持したまま筋内膜を分解することができ、即ち、限定的酵素反応により外皮の銀皮を形成する特定のタンパク質のみを切断でき、砂肝肉本来の食感をほとんど損なうことなく保持しつつ、硬い筋を軟化させることができる。さらに、酵素の反応時間のコントロールも容易になる。このため、他の肉質部分の形を崩すことなく全体が適度な柔らかさに仕上げられ、噛みきり易くして、食し易くすることができる。
【0044】
この場合、予め、前処理工程において、真空タンブラー内で堅い筋肉の繊維が軟らかくなり、塩麹や酵素が砂肝肉内に良く浸透しているので、この浸漬工程で、酵素による軟化機能を確実に発揮させることができる。また、蛋白質がアミノ酸に分解され、短時間で肉のうま味を増すことができる。そのため、砂肝肉全体を、味付けした状態で、より一層、噛みきり易くして、食し易くすることができる。
【0045】
(5)包装工程
周知の包装機を用い、砂肝製品Tを4つの肉片(12,11,11,12)が連設される板状の状態で真空パック31で包装し、包装製品30にする。
【0046】
(6)冷凍工程
包装製品30を、例えば、-25℃以下に設定した冷凍庫に入れ、砂肝製品Tを冷凍する。
【0047】
このようにして製造された砂肝製品Tは、真空パック31に入れたまま解凍してその後これから取出し、あるいは、真空パック31から取出してから解凍し、調理に供する。この場合、砂肝製品Tは、真空パック31により、板状の状態を保持できるので、真空パック31から取出した際の調理を容易に行うことができる。
【0048】
また、砂肝製品Tは、4つの肉片(12,11,11,12)が連設される板状に形成されるので、全体が扁平状で幅広になり大きく見えるように外観を改良することができるとともに、扁平状に薄くなるので、それだけ、噛みきり易くなり、食感を向上させることができる。特に、肉塊1の外面には、白色の筋である外皮3である銀皮が付帯しており、この銀皮は噛みきりにくいが、肉塊1の切断によってこの銀皮も切断されることから、それだけ、噛みきり易くすることができる。
【0049】
更に、この砂肝製品Tは、4つの肉片(12,11,11,12)が連設される板状であり、筋肉質であることから、あたかもスライスした牛タンのような外観と食感を与え、牛タンの代替品としても使うことができるようになり、それだけ、汎用性を向上させることができる。また、牛タンに比較して安価に提供することができるようになる。更にまた、この砂肝製品Tにおいては、基端肉片11と先端肉片12との最大厚さが略同じなので、連設される4つの肉片(12,11,11,12)全体が厚さの均一な板状になっており、そのため、より一層、スライスした牛タンのような外観を呈することができるようになる。
【0050】
また、4つの肉片(12,11,11,12)の肉片切断面13に、夫々、横切込み21と縦切込み22との2種類の切込み20が形成されているので、この部位の繊維が切れることから、より一層噛みきり易くすることができる。特に、縦切込み22は、接続部2を通るので、この接続部2の表面には外皮3の銀皮が付帯しているが、この接続部2の銀皮も切れることから、この点でも、より一層噛みきり易くすることができる。
【0051】
更に、砂肝製品Tは、真空タンブラーにより処理液内で真空マッサージされて軟化及び味付けされるので、味付けされた状態で軟化され、より一層噛みきり易くすることができる。更には、砂肝肉Sの外面に付帯された外皮3である銀皮は、特異的に軟化させる酵素を有した処理液に浸漬されて軟化されているので、筋部位は、硬質タンパク質(コラーゲン)から構成される結合組織を多く含む部位であるが、この酵素の力によってスジを特異的に切断することができ、この点でも、噛みきり易くすることができる。そのため、他の肉質部分の形を崩すことなく全体が適度な柔らかさに仕上げられ、食し易くすることができる。
【0052】
尚、上記実施の形態においては、処理液の成分は上述した成分に限定されるものではなく適宜変更して差支えない。また、処理液の酵素の種類についても、適宜変更して差支えない。更にまた、上記実施の形態において、砂肝肉Sとしては、冷凍品を解凍したものを用いたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、生肉をそのまま加工するようにしても良く、適宜変更して差支えない。また、砂肝製品Tにおいて、肉片切断面13の形成は、必ずしも、まな板等の平面Hに肉塊1の肉塊切断面4を展開して切断形成しなくても良く、結果的に、4つの肉片が連設される板状に形成されるのであれば、どのように切断形成しても良く、適宜変更して差支えない。
【0053】
また、上記実施の形態においては、食鳥として鶏の場合で説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、鴨,七面鳥,ホロホロチョウ,キジ,ウズラ,アヒル,ガチョウ等、本発明を、他の食鳥の砂肝に適用しても良いことは勿論である。本発明は、上述した本発明の実施の形態に限定されず、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の砂肝製品Tは、4つの肉片が連設される板状であり、筋肉質であることから、あたかもスライスした牛タンのような外観と食感を与え、牛タンの代替品としても使うことができるようになり、それだけ、汎用性を向上させることができるとともに、牛タンに比較して安価に提供することができるようになり、特に、生産量の多い鶏の砂肝においては極めて有用になり、食品分野に多大に貢献することができる。
【符号の説明】
【0055】
T 砂肝製品
S 砂肝肉
1 肉塊
2 接続部
3 外皮
4 肉塊切断面
H 平面
R 展開方向
10 連結部
11 基端肉片
12 先端肉片
13 肉片切断面
20 切込み
21 横切込み
22 縦切込み
(1)展開工程
(2)切断展開工程
(3)切込み工程
(4)軟化工程
(4-1)前処理工程
(4-2)浸漬工程
(5)包装工程
(6)冷凍工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6