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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】生鮮物の保存システム及び保存方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/36 20060101AFI20230619BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230619BHJP
   A23L 17/60 20160101ALI20230619BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20230619BHJP
   A23L 19/10 20160101ALI20230619BHJP
   A23L 19/12 20160101ALI20230619BHJP
   A23B 7/04 20060101ALI20230619BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20230619BHJP
   F25D 16/00 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
A23L3/36 Z
A23L5/00 Z
A23L17/60 Z
A23L19/00 Z
A23L19/10
A23L19/12 Z
A23B7/04
F28D20/00 B
F25D16/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022189316
(22)【出願日】2022-11-28
【審査請求日】2022-11-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505447629
【氏名又は名称】株式会社昭和冷凍プラント
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100224269
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 佑太
(72)【発明者】
【氏名】若山 敏次
(72)【発明者】
【氏名】若山 聖子
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-111862(JP,A)
【文献】やませながいも [オンライン], 2021.12.05 [検索日 2022.12.28], インターネット:<URL:https://www.yamase-nagaimo.jp/qa/%E5%86%B7%E5%87%8D%E3%81%A8%E3%82%8D%E3%82%8D%E3%82%92%E3%81%8A%E5%BC%81%E5%BD%93%E3%82%84%E3%83%86%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88%E7%AD%89%E3%81%AE%E7%94%A8%E9%80%94%E3%81%AB%E4%BD%BF>
【文献】やませながいも [オンライン], 2021.12.05 [検索日 2022.12.28], インターネット:<URL:https://www.yamase-nagaimo.jp/qa/%E5%86%B7%E5%87%8D%E3%81%A8%E3%82%8D%E3%82%8D%E3%81%AE%E8%A7%A3%E5%87%8D%E6%99%82%E9%96%93%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%82%8C%E3%81%8F%E3%82%89%E3%81%84%EF%BC%9F>
【文献】やませながいも [オンライン], 2018.03.31 [検索日 2022.12.28], インターネット:<URL:https://www.yamase-nagaimo.jp/2264.html>
【文献】まりもストア [オンライン], 2015 [検索日 2022.12.28], インターネット:<URL:https://marimostore.thebase.in/items/28339091>
【文献】LANDBESTET [オンライン], 2015 [検索日 2022.12.28], インターネット:<URL:https://landbestet.com/index.php?main_page=product_info&products_id=106664>
【文献】365style [オンライン], 2010.02.18 [検索日 2022.12.28], インターネット:<URL:https://www.365style.biz/2010/0218-tokyo-tororo.html>
【文献】ニッポンセレクト [オンライン], 2021.05.19 [検索日 2022.12.28], インターネット:<URL:https://www.nipponselect.com/shop/r/r101307/>
【文献】ふるさとチョイス [オンライン], 2020.09.05 [検索日 2022.12.28], インターネット:<URL:https://www.furusato-tax.jp/product/detail/05204/4673454>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/36
A23L 19/00
A23L 5/00
A23B 7/04
F28D 20/00
F25D 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷材の中に生鮮物を入れる又は蓄冷材に生鮮物を接触させることで生鮮物を保存するための蓄冷材であって、
粘性を有する磨砕された食品を含みかつ氷結前温度に冷却及び維持された蓄冷材。
【請求項2】
前記蓄冷材が、磨砕されたナガイモを含む請求項1に記載の蓄冷材。
【請求項3】
前記蓄冷材が、砕かれた、すりおろした、若しくは千切りされた大根、砕かれた、すりおろした、若しくは千切りされたじゃがいも、海藻、又は食品からデンプンを取り出した残渣、のいずれか1つ又は任意に組合せて作製された嵩増材をさらに含む請求項2に記載の蓄冷材。
【請求項4】
前記蓄冷材が柔軟な素材の袋にパッキングされていることを特徴とする請求項1に記載の蓄冷材。
【請求項5】
前記蓄冷材が、磨砕されたナガイモを含む請求項4に記載の蓄冷材。
【請求項6】
前記蓄冷材が、砕かれた、すりおろした、若しくは千切りされた大根、砕かれた、すりおろした、若しくは千切りされたじゃがいも、海藻、又は食品からデンプンを取り出した残渣、のいずれか1つ又は任意に組合せて作製された嵩増材をさらに含む請求項5に記載の蓄冷材。
【請求項7】
生鮮物の保存システムであって、
粘性を有する磨砕された食品を含む蓄冷材と、
不凍液と、
前記不凍液を氷結前温度に冷却するための不凍液冷却装置と、
少なくとも1つ以上の外周面側が二重構造であって、前記蓄冷材が溜められたケーシングと、
前記ケーシングの一部であってかつ前記二重構造の内部に形成される空間部と、
前記空間部の一部であって前記ケーシング外部に開口する入口開口部と、
前記空間部の一部であって前記ケーシング外部に開口する出口開口部と、
前記ケーシングの一部に形成された生鮮物を出し入れするための扉と、を有し、
前記不凍液冷却装置によって冷却された前記不凍液が前記入口開口部から前記空間部へと注入され、順次前記不凍液が前記出口開口部から排出され、当該排出された前記不凍液が前記不凍液冷却装置によって冷却され、再度前記空間部へと注入されて循環すること、及び、
当該循環により氷結前温度に冷却及び維持された前記蓄冷材の中に生鮮物を入れる又は前記蓄冷材に生鮮物を接触させることで生鮮物を保存するためのシステム。
【請求項8】
前記蓄冷材の少なくとも一部が、柔軟な素材の袋にパッキングされていることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記不凍液が塩水である請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記不凍液が塩水である請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
生鮮物の保存システムであって、
粘性を有する磨砕された食品を含む蓄冷材と、
前記蓄冷材を氷結前温度に冷却するための冷却装置と、
前記蓄冷材を溜めるためのケーシングと、
前記ケーシングの一部であって前記ケーシング外部に開口する入口開口部と、
前記ケーシングの一部であって前記ケーシング外部に開口する出口開口部と、
前記ケーシングの一部に形成された生鮮物を出し入れするための扉と、を有し、
前記冷却装置により冷却された前記蓄冷材が前記入口開口部から注入され、順次前記出口開口部から前記蓄冷材が排出され、当該排出された前記蓄冷材が前記冷却装置によって冷却され、再度前記ケーシング内へと注入されて循環すること、及び、
当該循環により氷結前温度に冷却及び維持された前記ケーシング内の前記蓄冷材の中に生鮮物を入れる又は前記蓄冷材に生鮮物を接触させることで生鮮物を保存するためのシステム。
【請求項12】
前記蓄冷材が、磨砕されたナガイモを含む請求項7~11のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
前記蓄冷材が、砕かれた、すりおろした、若しくは千切りされた大根、砕かれた、すりおろした、若しくは千切りされたじゃがいも、海藻、又は食品からデンプンを取り出した残渣、のいずれか1つ又は任意に組合せて作製された嵩増材をさらに含む請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
生鮮物の保存方法であって、
粘性を有する磨砕された食品を含む蓄冷材を、氷結前温度まで冷却及び維持し、
前記蓄冷材の中に生鮮物を入れる又は前記蓄冷材に生鮮物を接触させる保存方法。
【請求項15】
生鮮物の保存方法であって、
粘性を有する磨砕された食品を含む蓄冷材を、柔軟な素材の袋にパッキングして、氷結前温度まで冷却及び維持し、
前記蓄冷材の中に生鮮物を入れる又は前記蓄冷材に生鮮物を接触させる保存方法。
【請求項16】
前記蓄冷材が、磨砕されたナガイモを含む請求項14又は15に記載の保存方法。
【請求項17】
前記蓄冷材が、砕かれた、すりおろした、若しくは千切りされた大根、砕かれた、すりおろした、若しくは千切りされたじゃがいも、海藻、又は食品からデンプンを取り出した残渣、のいずれか1つ又は任意に組合せて作製された嵩増材をさらに含む請求項16に記載の保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生鮮物保存用の蓄冷材、それを用いた生鮮物の保存システム及び保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生魚などの生ものは、氷水、又は氷水に多少の塩分を加えたものに漬けて、0℃~-2℃程度の温度領域(以下、「氷結前温度」とする)にて保存されることが多い。
【0003】
上記の氷結前温度は、生魚などの水産物に限らず、青果物、畜産物といった生鮮物一般の保存にも適し、貯蔵のみならず熟成や発酵にも用いられている。生鮮物を凍らさないため、解凍の過程で生鮮物を傷めることもない。例えば、特許文献1では、地下建造物室内にて氷温倉庫を実現する発明を開示している。
こうした氷結前温度による保存を機器によって実現する前より、雪国では、畑に穴を掘りそこに根菜等を入れ、むしろを載せ、土をかけ、雪で覆う、いわゆる「雪室(ゆきむろ)」による保存が行われてきた。雪の中が外気よりも温かく、凍らないことを利用した天然の保存方法であって、熟成にも適する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-179063号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
氷結前温度に冷却した空気内で生鮮物を保存する場合に(特許文献1)、それを実現する冷蔵設備は、霜取り(デフロスト)を行う機能を備える必要があり、また冷蔵における除湿作用によって、生鮮物が乾燥するため、それを考慮した機能を備える必要がある。これら点が雪室に劣る点でもある。
氷結前温度にした氷水に浸して生鮮物を保存する場合には、氷が水面に浮くことで氷水の上部の温度と下部の温度に違いが生じ、氷水全体として均一な氷結前温度が実現されない。氷は水よりもさらに熱伝導度が高いため、融解させないためのエネルギーも相対的に大きくなる。
【0006】
本発明は、生鮮物を氷結前温度に保存するための蓄冷材、それを用いた生鮮物の保存システム及び保存方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明は以下の構成を有する。
1)本発明の態様は、
冷材の中に生鮮物を入れる又は蓄冷材に生鮮物を接触させることで生鮮物を保存するための蓄冷材であって、
粘性を有する磨砕された食品を含みかつ氷結前温度に冷却及び維持された蓄冷材
別の態様として、
前記蓄冷材が柔軟な素材の袋にパッキングされていることを特徴とする。
2)別の態様として、
生鮮物を保存システムであって、
前記蓄冷材と、
不凍液と、
前記不凍液を氷結前温度に冷却するための不凍液冷却装置と、
少なくとも1つ以上の外周面側が二重構造であって、前記蓄冷材が溜められたケーシングと、
前記ケーシングの一部であってかつ前記二重構造の内部に形成される空間部と、
前記空間部の一部であって前記ケーシング外部に開口する入口開口部と、
前記空間部の一部であって前記ケーシング外部に開口する出口開口部と、
前記ケーシングの一部に形成された生鮮物を出し入れするための扉と、
前記不凍液冷却装置によって冷却された前記不凍液が前記入口開口部から前記空間部へと注入され、順次前記不凍液が前記出口開口部から排出され、当該排出された前記不凍液が前記不凍液冷却装置によって冷却され、再度前記空間部へと循環すること、及び、
当該循環により氷結前温度に冷却及び維持された前記蓄冷材の中に生鮮物を入れる又は前記蓄冷材に生鮮物を接触させることで生鮮物を保存するためのシステム。
別の態様として、
前記蓄冷材の少なくとも一部が、柔軟な素材の袋にパッキングされていることを特徴とする。
別の態様として、
前記不凍液が塩水であるシステム。
3)別の態様として、
生鮮物の保存システムであって、
前記蓄冷材と、
前記蓄冷材を氷結前温度に冷却するための冷却装置と、
前記蓄冷材を溜めるためのケーシングと、
前記ケーシングの一部であって前記ケーシング外部に開口する入口開口部と、
前記ケーシングの一部であって前記ケーシング外部に開口する出口開口部と、
前記ケーシングの一部に形成された生鮮物を出し入れするための扉と、
前記冷却装置により冷却された前記蓄冷材を前記入口開口部から入れ、順次前記出口開口部から前記蓄冷材が排出され、当該排出された前記蓄冷材が前記冷却装置によって冷却され、再度前記ケーシング内へと循環すること、及び、
当該循環により氷結前温度に冷却及び維持された前記ケーシング内の前記蓄冷材の中に生鮮物を入れる又は前記蓄冷材に生鮮物を接触させることで生鮮物を保存するためのシステム。
4)本発明の態様として、
生鮮物の保存方法であって、
粘性を有する磨砕された食品を含む蓄冷材を、氷結前温度まで冷却及び維持し、
前記蓄冷材の中に生鮮物を入れる又は前記蓄冷材に生鮮物を接触させる。
5)別の態様として、
前記蓄冷材が柔軟な素材の袋にパッキングされていることを特徴とする。
6)別の態様として、
前記蓄冷材が、磨砕されたナガイモを含む。
7)別の態様として、
前記蓄冷材が、砕かれた、すりおろした、若しくは千切りされた大根、砕かれた、すりおろした、若しくは千切りされたじゃがいも、海藻、又は食品からデンプンを取り出した残渣、のいずれか1つ又は任意に組合せて作製された嵩増材をさらに含む。

【発明の効果】
【0008】
生鮮物を冷却保存するために、水又は氷水よりも熱伝導度の低い蓄冷材を用いることで、定温保存設備内における温度変化の影響を受けにくく、生鮮物のより長期の保存を可能にする。食品由来の蓄冷材であることから、保存する生鮮物に付着したまま食することもでき、蓄冷材が定温保存設備外に漏れた場合でも無害である。食品の鮮度をより長く維持できることで、フードロス削減にも資する。使用した蓄冷材は家畜の餌として再利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の定温保存設備の構成例を示した概略図である。
図2図2は、本発明の定温保存設備にて不凍液を循環させる構成例を示した概略図である。
図3図3は、本発明の定温保存設備にて蓄冷材を循環させる構成例を示した概略図である。
図4図4は、本発明の保存方法の実施態様を例示した図である。
図5図5は、本発明の保存方法の別の実施態様を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ナガイモなどの磨砕された状態で粘性を有する食品を用いた蓄冷材、それを用いた生鮮物の保存システム及び保存方法に関する。
ここにいう蓄冷材とは保冷材と同義で、保冷の目的のために用いる材料を指す。
磨砕により粘性が生じる食品であっても、磨砕する前から粘性を有する食品であってもよく、いずれにしても磨砕後の状態で粘性を有する食品を用いて、蓄冷材を作製する。
【0011】
磨砕された状態で粘性を有する食品を用いて蓄冷材を作る理由は、水又は氷水に対して一般に熱伝導度が低く、生鮮物の保冷に適しているためであり、また蓄冷材の中に生鮮物を漬け込む場合、蓄冷材の温度で生鮮物全体を包み込むことができるためである。
漁獲された魚が、店舗等で調理されるまで、氷結前温度にされた氷水につけて管理されることも多いが、熱伝導度の高い氷は溶けやすく、氷結前温度の氷水を作製する手間、使用に適した大きさに砕く手間、溶かさずに維持させる手間もかかる。磨砕された状態で粘性を有する食品を用いた蓄冷材はそうした手間を省くことができる。
蓄冷材で生鮮物全体を包み込むという目的を達することができる限り、また後述のようにパイプ内を循環させる場合には循環可能である限り、蓄冷材には固体物が含まれていても良く、すりおろした食品のみならず、千切りされた食品や海藻が含まれていてもよい。またそうした使用目的に適した蓄冷材の粘度に水分等で調整されることが望ましい。
蓄冷材で生鮮物全体を包み込むことで保存することは、生鮮物の乾燥を防ぐことができ、氷結前温度に冷却した空気内で生鮮物を保存する場合に対しての有利性となる。
【0012】
磨砕された状態で粘性を有する食品が、氷水や水との比較で低い熱伝導度となる理由として、粘性のために対流が妨げられて表面の温度変化に対して内部の温度変化がしにくいこと、表面において膜が張る場合には蒸発で奪われる熱エネルギーが少なくなり温度変化しにくいことなどが一般にいわれる。
相対的に温度変化しにくい蓄冷材により生鮮物を包み込むことで生鮮物を保存することは、均一な温度で生鮮物を保存することを可能にし、氷水に浸して生鮮物を保存する場合に対しての有利性となる。
【0013】
磨砕された状態で粘性を有する食品として主にナガイモを想定する。
ナガイモを主な食品として想定する理由は、ヤマイモ科に属する他のイモである大和芋や自然薯に比べて粘りが少なく、水分量は80%を超え、味が比較的淡泊であることから、ナガイモの味が生鮮物のもつ味や風味に及ぼす影響が少ないという利点がある。また、他のヤマイモと比較して水分量が多く粘度は低めなため、流動性が大きく、直接その中に生鮮物を入れられ、生鮮物を包み込めるため、蓄冷材に好適である。
粘度があまりに大きいと沈まず、生鮮物の包み込みを可能とする保冷剤として機能しない。粘度調整や嵩増しなどのために適宜すりおろしたナガイモに水を加えて蓄冷材とすることもできる。その水には窒素を注入し窒素置換水としてもよい。溶存酸素濃度を減少させ、酸素がもたらす生鮮物の鮮度への悪影響を低減させることができる。より長期の保存が可能になることで、熟成させることができ、うまみ成分が引き出されることにもつながる。
【0014】
おろしたナガイモには以上の利点があることに加え、液状であるためにそこに塩分等の調味料を混ぜ合わせることができ、その蓄冷材の中で保存される生鮮物に調味料を浸透させることもできる。
調味料を浸透させることで生鮮物の保存期間をさらに伸ばすことができるとともに、生鮮物を蓄冷材から取り出してそのまま調理して食せるようになる。又は熟成した生鮮物を蓄冷材から取り出してそのまま食すことができる場合もある。
調味料として、塩、砂糖、醤油を主に想定するが生鮮物に浸透し得る、みりん等その他の調味料であってもよい。例えば、すりおろしたナガイモに塩分2%を加えたものでもよい。
浸透圧の調整は、蓄冷材の塩分調節によって可能であるが、この塩分調整によって蓄冷材の熱伝導度を変えることもできる。
【0015】
蓄冷材全体の嵩増しをするために、粘性を有する磨砕された食品である上記の蓄冷材に、さらに嵩増材を加えて蓄冷材としてもよい。
その嵩増材には、砕かれた、すりおろした、若しくは千切りされた大根、砕かれた、すりおろした、若しくは千切りされたじゃがいも、又は海藻、のいずれか1つ又は任意に組合せたものなどが使用できる。
いずれも食品であるため保存する生鮮物とともに口に入っても安全である。蓄冷材を入れる容器又は蓄冷材を調整する容器から外側にあふれた場合でも無害である。
嵩増材を加えることは、単にナガイモのみで蓄冷材を作製するよりもコストを削減できるだけではない。ナガイモと他の食品を混ぜ合わせる際に入り込む空気によって蓄冷材の熱伝導度をさらに小さくすることができる。さらに海藻類には商品価値の無いものを利用することで、蓄冷材作製の費用を抑えることができ、フードロスを削減するため環境にも優しい。
ナガイモに塩分を加えて海藻混ぜたものを使用する場合、海藻自体が蓄冷材の一部であるとともに、海藻自体の鮮度も維持される。
【0016】
食品の加工過程においてデンプンは多用されるが、デンプンを取り出した残渣を嵩増材として用いてもよい。この残渣は、産業廃棄物として処理されるものであるので、蓄冷材作製の費用を抑えることができ、またフードロスを削減するため環境にも優しい。
嵩増材としてデンプンと、水又は塩水を攪拌加熱したものを利用してもよい。デンプンとお湯を攪拌することで粘度が増し、生鮮物を蓄冷材に入れるときに生鮮物を包み込む作用が強くなり、蓄冷材の温度に生鮮物を維持させやすくなる。トウモロコシや小麦由来のデンプンよりもジャガイモのデンプンの方が、膨張率が高く、嵩増しの目的には適している。
嵩増材を入れて蓄冷材とする場合においても、塩分等の調味料を加えることで、生鮮物へ調味料を浸透させることができる。
粘性を有する食品及び嵩増材を構成する食品が身近である程、作製の手間が相対的に省け、例えば小型の定温庫設備等への蓄冷材の利用を身近なものにする。
保存する生鮮物と共に蓄冷材をも食する可能性のある場合には、蓄冷材を構成する素材が、健康面で効能が高い程、その素材を使用する意義も高まる。例えばナガイモの粘り成分にはムチンが含まれ、粘膜保護作用があり、胃炎や胃潰瘍の予防や改善に役立つ。大根のすりおろしには小腸の働きを助ける消化酵素(ジアスターゼ)が含まれる。
なお上述の記述は、嵩増材を入れて蓄冷材とする場合に、嵩増材とナガイモ以外の粘性を有する磨砕された食品とを組み合わせて蓄冷材とする場合を排除するものではない。
【0017】
蓄冷材は、後述の通り、柔軟な素材の袋にパッキングされ、それを生鮮物に接触させてもよい。
以上で説明した蓄冷材は後述のいずれの実施形態においても共通する。
【0018】
(1)第1の実施形態
本発明の第1の実施形態では、蓄冷材を冷蔵設備等で氷結前温度まで冷却し、生鮮物の保存のためにその蓄冷材の中に生鮮物を入れる又は蓄冷材に生鮮物を接触させる。例えばウニのように、蓄冷材の中に入れた場合に型崩れするような生鮮物は、蓄冷材の中に入れずに、蓄冷材の上面に置くなどして蓄冷材と接触させる。
上述のように蓄冷材の中に塩等の調味料を加えることで、蓄冷材の中に入れた生鮮物に調味料が浸透し、それにより長期保存が可能になり、熟成させた場合にはうまみ成分が引き出され、そのまま食せることも可能にする。しかしそうした作用を残しつつも生鮮物に蓄冷材を付着させることを好まない場合には、食品用のガーゼなどで生鮮物をくるむことで、蓄冷材の付着を妨げつつ生成物の取り出しを容易にすることもできる。また生鮮物に調味料の浸透をさせたくない場合には、防水性の包装でラッピングしてもよい。
【0019】
別の形態として、蓄冷材を柔軟な素材の袋にパッキングし、それを生鮮物に接触させてもよい。生鮮物に蓄冷材の付着を好まない場合に、上述のように各生鮮物をガーゼ等でくるむのではなく、蓄冷材自体が袋にパッキングされていることで、付着を回避する形態である。そのため、袋は水分を透過させない材質であることが好ましい。
袋に入れることで、蓄冷材の持ち運びを容易にし、その使用を身近なものとすることにもつながる。袋が柔軟な素材である必要があるのは、生鮮物を包み込むように接触させられるようにするためである。本発明に係る蓄冷材の有効性を最も発揮する態様は蓄冷材の中に生鮮物を直接入れる態様であるが、こうした特性をもつ袋であれば、生鮮物との接触面も広くなり、蓄冷材の有効性を維持することができる。
【0020】
(2)第2の実施形態
本実施形態は、図4に示すように、氷結前温度に設定された冷蔵設備40を用いて、蓄冷材7を氷結前温度に維持する。
蓄冷材7はケース41に入れられ、蓄冷材7そのものでなくそのケース41が冷蔵設備40に入れられることで、冷蔵設備40に蓄冷材7が付着しないようにしている。生鮮物8はケース41に形成された扉43を開閉することで出し入れされる。
生鮮物8は、第1の実施形態と同様に、蓄冷材7の中に入れてもよいし、蓄冷材7の上面に置くなど蓄冷材7に接触させて保存してもよい。蓄冷材7の付着を回避するために生鮮物8をガーゼ等でくるむことができる点も第1の実施形態と同様である。
【0021】
別の形態として、蓄冷材7を柔軟な素材の袋にパッキングし、それを生鮮物8に接触させてもよい。蓄冷材7をパッキングする目的や効果は第1の実施形態と同じである。
袋にパッキングして蓄冷材7を用いる場合にはケース41は使用せずともよく、それにより蓄冷材7が冷蔵設備40に付着することもない。蓄冷材7の入った袋によって生鮮物8が包み込まれるように接触させ、蓄冷材7と生鮮物8の接触面を広くすることが好ましい。
【0022】
(3)第3の実施形態
本実施形態は、図5に示すように、持ち運びにおいて本発明に係る蓄冷材7を使用するためのものである。
氷結前温度に冷却された蓄冷材7をケース51に入れ、できる限り温度を維持するために断熱構造を有した保冷ボックス50の中にケース51を入れる。ケース51を用いることで蓄冷材7が保冷ボックス50に付着することを回避できる。
第2の実施形態同様に、ケース51には生鮮物8を出し入れするための扉が設けられていてもよい。
生鮮物8は、第1の実施形態と同様に、蓄冷材7の中に入れてもよいし、蓄冷材7の上面に置くなど蓄冷材7に接触させて保存してもよい。蓄冷材7の付着を回避するために生鮮物8をガーゼ等でくるむことができる点も第1の実施形態と同様である。
【0023】
別の形態として、蓄冷材7を柔軟な素材の袋にパッキングし、それを生鮮物8に接触させてもよい。蓄冷材7をパッキングする目的や効果は第1の実施形態と同じである。
袋にパッキングして蓄冷材7を用いる場合にはケース51は使用せずともよく、それにより蓄冷材7が保冷ボックス50に付着することもない。蓄冷材7の入った袋によって生鮮物8が包み込まれるように接触させ、蓄冷材7と生鮮物8の接触面を広くすることが好ましい。
【0024】
(4)第4の実施形態
図1図2を用いて本発明の第4の実施形態を説明する。
図1で示すように、本実施形態は、蓄冷材7を常時氷結前温度に維持するために、不凍液9の循環を用いた定温保存設備1を備える生鮮物の保存システムである。また、蓄冷材7の中に生鮮物8を入れる、又は蓄冷材7の上面に生鮮物8を置くなど蓄冷材7に接触させることで生鮮物8を保存するためのシステムである。
【0025】
本実施形態におけるシステムは、主に定温保存設備1と不凍液冷却装置3を有する。
定温保存設備1は、生鮮物8が入れられる蓄冷材7を溜めるためのケーシング2を備える。ケーシング2は、少なくとも1つ以上の外周面側が二重構造になっている。図1においては、ケーシング2の上面側全体の天板15とケーシング2の下面側全体の床が二重構造となっている例を示す。
これに限らず、例えばケーシング2の下面側全体の床が二重構造となっており、上面側はその一部が二重構造となっていてもよい。
【0026】
少なくとも1つ以上の外周面側を二重構造にする理由は、二重構造の内部に空間部を形成し、不凍液9を循環させる経路とするためである。図2では、二重構造の天板15内部に天板内空間部16と、二重構造の床内部に床下空間部19が形成されている例を図示する。
【0027】
二重構造にするもう一つの理由は、蓄冷材7と不凍液9とを混合させないためである。
これにより不凍液9が、食品由来の蓄冷材7及びそこに入れられる生鮮物8に、何らかの影響をもたらすことを回避でき、同時に不凍液9に安価で機能性の高い非食品を使用することができるようになる。
図2においては、天板内空間部16に注入される不凍液9は、天板15の外枠面によって蓄冷材7と隔てられ、床下空間部19に注入される不凍液は、床下空間部の上底17によって蓄冷材7と隔てられる。
【0028】
ケーシング2の一部である外周面側に形成された空間部には、空間部の外部すなわちケーシング2の外部に開口し、不凍液9を取り込むための入口開口部と、空間部の外部すなわちケーシング2の外部に開口し、不凍液9を排出するための出口開口部とが備わる。
図2においては、天板内空間部16に天板入口開口部11と天板出口開口部12が形成され、床下空間部19に床下入口開口部13と床下出口開口部14が形成された例を図示する。不凍液9が、天板入口開口部11から天板内空間部16に注入され、天板出口開口部12から天板内空間部16の外へと、すなわちケーシング2の外へと排出される。同様に不凍液9が、床下入口開口部13から床下空間部19に注入され、床下出口開口部14から床下内空間部19の外へと、すなわちケーシング2の外へと排出される。
ケーシング2の外周面には、蓄冷材7や不凍液9が外部の温度の影響を受けにくくなるように、断熱材を用いることが好ましい。
図2では1つの空間部に1か所ずつの入口開口部と出口開口部が設けられた例を示すが、これに限らず、不凍液9の対流が効率よく生じる位置又は個数で設置されることが好ましい。
【0029】
ケーシング2はその一部に生鮮物8を出し入れするための扉が形成される。図2では、天板15自体が、扉となっており、取っ手28をつかみヒンジ27を軸に観音開きとなる例を示す。別の態様ではこれに限らず、例えば天板15の一部に扉を形成してもよく、また、ケーシング2の上面側の一部に二重構造となった天板15を設ける場合には二重構造となっている天板15自体に若しくはその一部に扉を設けてもよいし、二重構造となっていないケーシング2の上面側の全部に若しくは一部に扉を設けてもよい。
【0030】
本実施形態におけるシステムは、不凍液9を氷結前温度に冷却するための不凍液冷却装置3を備える。
不凍液冷却装置3は、定温保存設備1から排出された不凍液9が入ってくると、それを氷結前温度に冷却し、定温保存設備1へと送出する。
不凍液冷却装置3は、ケーシング2内に溜められた蓄冷材7の温度を温度計により計測し、その値が氷結前温度となるような温度に不凍液を冷却する制御機能を備えていてもよい。
不凍液はブライン液とも呼ばれ、一般に、エチレングリコール、プロピレングリコール等を主成分とするものが市販される。本実施形態においても一般的で安価な不凍液を用いることができる。
別の形態として、不凍液に塩水を用いてもよい。漏れたときなどに、人体に対する影響がない点でメリットを有する。生鮮物8はもちろん、蓄冷材7が食品由来であることから、不凍液にも食品を用いることで、食品を扱うシステムとしてシステム全体で安全性を担保できるようになる。
【0031】
不凍液冷却装置3と定温保存設備1は、例えば循環パイプ6によって接続され、ポンプ4の圧力によりその循環パイプ6の中を不凍液9が循環する。
本実施形態においては、図2の矢印で示す方向に不凍液9が循環する。不凍液冷却装置3によって冷却された不凍液9が天板入口開口部11及び床下入口開口部13から天板内空間部16及び床下空間部19へと注入され、順次不凍液9が天板出口開口部12及び床下出口開口部14から排出され、この排出された不凍液9が不凍液冷却装置3によって冷却され、再度定温保存設備1の空間部16、19へと循環する。
このように、循環する不凍液9によって空間部16、19が冷却され、それによって蓄冷材7が冷却される。
【0032】
不凍液の循環させる方法として、図2におけるケーシングの下面側のように、不凍液9を床下入口開口部13から直に床面空間部19に流し込むことで注入することもできる。
また図2におけるケーシングの上面側のように、空間部内パイプ26を天板内空間部16に這わせることで、空間部内パイプ26内で不凍液9を循環させることもできる。いずれの場合も、空間部16、19の温度が下がることで空間部16、19の外面が冷却され、蓄冷材7が冷却されることになる。
【0033】
不凍液循環システムを使うことで、氷結前温度に維持された不凍液によって蓄冷材を氷結前温度に維持できる。不凍液自体が入手しやすく、その点でコストが相対的に安価である。また、氷水を用いて氷結前温度を作る場合と比較し、氷結前温度の氷を作製する手間、使用に適した大きさに砕く手間、溶かさずに維持させる手間を削減できる。
氷水や水と比較した場合に、熱伝導度の低い蓄冷材7の特性と相まって、ケーシング2内の温度のばらつきを抑えることができ、本実施形態におけるシステムは、生鮮物8の保存に適している。
【0034】
別の形態として、ケーシング2内の蓄冷材7は、少なくとも一部が、柔軟な素材の袋にパッキングされていてもよい。パッキングされた蓄冷材7の配置の仕方に限定はないが、例えば下方にパッキングされていない蓄冷材7を、上方にパッキングされた蓄冷材7を置き、蓄冷材7の付着を避けたい生鮮物8はパッキングされた蓄冷材7に接触させて保存させる態様などが考えられる。また、ケーシング内部を仕切りで区分けしパッキングの有無によって蓄冷材7を分離し、パッキングされた蓄冷材7の入った側を蓄冷材7の付着がないスペースとし、他方を、調味料を浸透させる生鮮物8のためのスペースとしてもよい。
いずれの態様で蓄冷材7を用いる場合も、氷結前温度の空気内で生鮮物8を保存する場合と比較した際の本発明の有利性を残すために、生鮮物8を包み込むように接触させることができる程度に、蓄冷材7がケーシング2内で存在することが好ましい。
【0035】
(5)第5の実施形態
図3を用いて本発明の第5の実施形態を説明する。
第4の実施形態では、不凍液冷却装置3によって冷却された不凍液9を介して蓄冷材7を冷却していたが、本実施形態では蓄冷材7自体を冷却設備31によって冷却し、蓄冷材7自体を冷却装置31及び定温保存設備30との間で循環させる。
【0036】
本実施形態のシステムは、主に定温保存設備30と冷却装置31を有する。定温保存設備30は、生鮮物8が入れられる蓄冷材7を溜めるためのケーシング32を備える。ケーシング32の外周面は、蓄冷材7が外部の温度の影響を受けにくくなるように、断熱材を用いることが好ましい。
ケーシング32の一部には、循環する蓄冷材7をケーシング32内に注入するためのケーシング外部に開口した入口開口部36と、循環する蓄冷材7を排出するためのケーシング外部に開口した出口開口部37を備える。
図3では、ケーシング32内のおおよそ対角線上に位置するように入口開口部36と出口開口部37を1つずつ配置する。蓄冷材7をケーシング32内に溜めていく際に入口開口部36から蓄冷材7を注入し、ケーシング32の上方まで溜まったときに、順次ケーシング上方に位置する出口開口部37からケーシング32外に排出されていくような位置に配置する例となっている。
この例に限らず、蓄冷材7がケーシング内に注入し排出される過程で、効率よく対流が生じる位置及び個数で入口開口部36及び出口開口部37が設置されていてもよい。特に第4の実施形態と異なり、循環させるものが不凍液9ではなく、粘性を有する蓄冷材7であることから、対流が生じにくいことを考慮して、複数個所に入口開口部36及び出口開口部37を設けてもよい。
【0037】
第4の実施形態と同様に、定温保存設備30は、ケーシング32の一部に形成された生鮮物を出し入れするための扉を備える。図3では、ケーシング32の上面全体の天板35自体が、扉となっており、取っ手38をつかみヒンジ39を軸に観音開きとなる例を示す。これに限らず、ケーシング32の上面の一部に形成された扉であってもよい。
【0038】
本実施形態のシステムは、蓄冷材7を氷結前温度に冷却するための冷却装置31を有する。
冷却装置31は、定温保存設備1から排出された蓄冷材7が入ってくると、それを氷結前温度に冷却し、定温保存設備1へと送出する。
冷却装置3は、ケーシング32内に溜められた蓄冷材7の温度を温度計により計測し、その値が氷結前温度となるような温度に蓄冷材7を冷却する制御機能を備えていてもよい。
【0039】
定温保存設備1と冷却装置31は、例えばパイプによって接続され、ポンプ4の圧力によりその循環パイプ6の中を蓄冷材7が循環する。
蓄冷材がパイプ内を移動できる程度の粘性である必要があるため、適度に水などによって粘性が加減される。
本実施形態においては、図3の矢印で示す方向に蓄冷材7が循環する。冷却装置3によって冷却された蓄冷材7が入口開口部36からケーシング32へと注入され、順次蓄冷材7が出口開口部37から排出され、この排出された蓄冷材7が冷却装置31によって冷却され、再度定温保存設備1のケーシング32内へと注入されて循環する。
以上のように冷却された蓄冷材7の中に生鮮物を入れる又は蓄冷材7の上面に生鮮物8を置くなど接触させることにより、生鮮物8が氷結前温度で保存される。
ケーシング32に蓄冷材7を溜めてから循環させても、循環の過程で溜めてもどちらでもよい。
本実施形態のシステムは、氷結前温度に常時維持された蓄冷材7によって生鮮物8を氷結前温度で保存することができる。氷結前温度の氷水で生鮮物を保存する場合と比較して、熱伝導度の低い本発明に係る蓄冷材を用いることで、ケーシング内の温度のばらつきを抑えることができ、また氷結前温度の氷を作製することや保存すること、使用のために削ることの手間を削減できる。以上の点から本実施形態におけるシステムは、生鮮物8の保存に適している。
【0040】
本実施形態においては、第4の実施形態と異なり蓄冷材7自体を冷却し、不凍液9を用いないため、ケーシング32の外周面を二重構造にして空間部を形成する必要がない。
別の形態として、第4の実施形態と第5の実施形態を併用してもよい。すなわち不凍液9も蓄冷材7も循環可能なシステムであってもよい。この形態では、蓄冷材7が氷結前温度に到達するまでの時間を短縮することができ、また蓄冷材7を氷結前温度に維持させやすくなる。
【0041】
別の形態として、ケーシング2内の蓄冷材7は、一部が、柔軟な素材の袋にパッキングされていてもよい。この場合、循環する蓄冷材7によってパッキングされた蓄冷材7が氷結前温度に冷却される。そして蓄冷材7の付着を避けたい生鮮物8はパッキングされた蓄冷材7のみに接触させて保存するようにする。
氷結前温度の空気内で生鮮物8を保存する場合と比較した際の本発明の有利性を残すために、生鮮物8を包み込むように接触させることができる程度に、蓄冷材7がケーシング2内で存在することが好ましい。
【0042】
本発明に係る蓄冷材、それを用いた生鮮物の保存方法、保存システム、定温保存設備、冷却装置等は、上述した実施形態及び変形例に係る構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の要旨変更とならない範囲において、様々な蓄冷材の材料、不凍液ないし蓄冷材の循環方法、冷却装置と定温保存設備との接続方法、循環させる不凍液ないし蓄冷材への圧力の掛け方等の組合せを含め、周知・慣用技術との組合せなど、種々の態様を包含するものである。
【符号の説明】
【0043】
1 定温保存設備
2 ケーシング
3 不凍液冷却装置
4 ポンプ
6 循環パイプ
7 蓄冷材
8 生鮮物
9 不凍液

11 天板入口開口部
12 天板出口開口部
13 床下入口開口部
14 床下出口開口部
15 天板
16 天板内空間部
17 上底
18 下底
19 床下空間部
26 空間部内パイプ
27 ヒンジ
28 取っ手

30 定温保存設備
31 冷却装置
32 ケーシング
35 天板
36 入口開口部
37 出口開口部
38 取っ手
39 ヒンジ

40 冷蔵設備
41 ケース
43 扉

50 保冷ボックス
51 ケース


【要約】
【課題】本発明は、粘性を有する磨砕された食品を含む蓄冷材による生鮮物の保存システムを提供する。
【解決手段】生鮮物を保存システムであって、粘性を有する磨砕された食品を含む蓄冷材と、不凍液と、前記不凍液を氷結前温度に冷却するための不凍液冷却装置と、少なくとも1つ以上の外周面側が二重構造であって、前記蓄冷材が溜められたケーシングと、前記ケーシングの一部であってかつ前記二重構造の内部に形成される空間部と、空間部の一部であってケーシング外部に開口する入口開口部と、空間部の一部であってケーシング外部に開口する出口開口部と、ケーシングの一部に形成された生鮮物を出し入れするための扉と、を有するシステム。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5