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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】分析システムおよび分析画像の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20230619BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20230619BHJP
   G01N 24/12 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 400
A61B5/055 382
G01N24/00 100B
G01N24/12 510L
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022579777
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2022025081
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2021167393
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516294377
【氏名又は名称】株式会社ReMI
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】内海 英雄
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-046103(JP,A)
【文献】Manjusha Deshmukh,Image Fusion and Image Quality Assessment of Fused Images,International Journal of Image Processing,2010年,VOLUME - 4 ISSUE - 5,pp.484-508
【文献】Christoph Volker,Multi sensor data fusion approach for automatic honeycomb detection in concrete,NDT & E International,volume 71,2015年,pp.54-60
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像構成部があり、
前記画像構成部は、記憶部と画像演算部を備えており、
前記記憶部は、少なくとも基礎画像画素情報と作動画像画素情報を記憶するものであり、
前記基礎画像画素情報と前記作動画像画素情報は、同一の試料であって、同一の分析対象領域を含み、異なる撮影方式で撮影した、所定の数の画素を含むものであり、
前記作動画像画素情報は、分析情報を含み、輝度および/または分解能が前記基礎画像画素情報より低い画像画素情報であり、
前記基礎画像画素情報は、中間階調を含む多階調輝度情報を含むものであり、前記分析情報を含まないか、含んでも分析に影響を与えないものであり、
前記画像演算部は、少なくとも1以上の前記基礎画像画素情報と少なくとも1以上の前記作動画像画素情報に対して、アダマール積を含む演算を行うことで新たな創生画像画素情報を構築する、
分析システム。

【請求項2】
前記画像演算部は、前記作動画像画素情報に含まれる画素数が、前記基礎画像画素情報に含まれる画素数より少ない場合、前記アダマール積を含む演算を行う前に、前記作動画像画素情報に含まれる画素数を前記基礎画像画素情報に含まれる画素数と一致させるよう補間する演算を行う請求項1記載の分析システム。

【請求項3】
前記基礎画像画素情報と前記作動画像画素情報の位置合わせを含む画像編集機能をさらに備えた請求項1記載の分析システム。

【請求項4】
前記作動画像画素情報は、撮影方式の異なる2以上の複数の画素情報を取得し、作成されるものである請求項1記載の分析システム。

【請求項5】
前記画像演算部は、アダマール積を含む演算を行う前に、前記作動画像画素情報に含まれる画素数を減らす演算を行い、次いで、前記画素数の減らされた前記作動画像画素情報に含まれる画素数を、前記基礎画像画素情報に含まれる画素数と一致させるよう補間する演算を行う請求項1記載の分析システム。

【請求項6】
さらに画像撮影部を有する請求項1~5のいずれか1項に記載の分析システム。

【請求項7】
前記画像撮影部が磁気共鳴を原理とするものである請求項6に記載の分析システム。

【請求項8】
基礎画像画素情報と作動画像画素情報を用意する工程、
前記工程の前記基礎画像画素情報と前記作動画像画素情報は、同一の試料であって、同一の分析対象領域を含み、異なる撮影方式で撮影した、所定の数の画素を含むものであり、
前記作動画像画素情報は、分析情報を含み、輝度および/または分解能が基礎画像画素情報より低い画像画素情報であり、
前記基礎画像画素情報は、中間階調を含む多階調輝度情報を含むものであり、前記分析情報を含まないか、含んでも分析に影響を与えないものであり、
次いで、少なくとも1以上の前記基礎画像画素情報と少なくとも1以上の前記作動画像画素情報に対してアダマール積を含む演算を行う工程と
を含む新たな創生画像画素情報の製造方法。

【請求項9】
前記作動画像画素情報に含まれる画素数が、前記基礎画像画素情報に含まれる画素数より少ない場合、前記アダマール積を含む演算を行う工程の前に、前記作動画像画素情報に含まれる画素数を前記基礎画像画素情報に含まれる画素数と一致させるよう補間する演算を行う工程を有する請求項8に記載の創生画像画素情報の製造方法。

【請求項10】
さらに、前記アダマール積を含む演算を行う工程の前に、前記基礎画像画素情報と前記
作動画像画素情報の位置合わせを含む画像編集を行う工程を有する請求項8に記載の創生
画像画素情報の製造方法。

【請求項11】
前記作動画像画素情報は、撮影方式の異なる2以上の複数の画素情報を取得し、作成されるものである請求項8記載の創生画像画素情報の製造方法。

【請求項12】
前記アダマール積を含む演算を行う工程の前に、前記作動画像画素情報に含まれる画素数を減らし、次いで、前記画素数の減らされた前記作動画像画素情報に含まれる画素数を、前記基礎画像画素情報に含まれる画素数と一致させるよう補間する演算を行う工程を含む請求項8記載の創生画像画素情報の製造方法。

【請求項13】
記憶部から、少なくとも基礎画像画素情報と作動画像画素情報を画像演算部に取り込み、
前記基礎画像画素情報と前記作動画像画素情報は、同一の試料であって、同一の分析対象領域を含み、異なる撮影方式で撮影した、所定の数の画素を含むものであり、
前記作動画像画素情報は、分析情報を含み、輝度又は分解能が前記基礎画像画素情報より低い画像画素情報であり、
前記基礎画像画素情報は、中間階調を含む多階調輝度情報を含むものであり、前記分析情報を含まないか、含んでも分析に影響を与えないものであり、
少なくとも1以上の前記基礎画像画素情報と少なくとも1以上の前記作動画像画素情報に対して、アダマール積を含む演算を行うように前記画像演算部を作動させることを特徴とするプログラム。

【請求項14】
前記作動画像画素情報に含まれる画素数が、前記基礎画像画素情報に含まれる画素数より少ない場合、アダマール積を含む演算を行う前に、前記作動画像画素情報に含まれる画素数を前記基礎画像画素情報に含まれる画素数と一致させるよう補間する演算を行うように前記演算部を作動させる請求項13記載のプログラム。

【請求項15】
さらに、前記アダマール積を含む演算を行う前に、前記基礎画像画素情報と前記作動画像画素情報の位置合わせを含む画像編集を行うように前記演算部を作動させる請求項13に記載のプログラム。

【請求項16】
前記作動画像画素情報は、撮影方式の異なる2以上の複数の画素情報を取得し、作成されるものである請求項13記載の分析システム。

【請求項17】
アダマール積を含む演算を行う前に、前記作動画像画素情報に含まれる画素数を減らし、次いで、前記画素数の減らされた前記作動画像画素情報に含まれる画素数を、前記基礎画像画素情報に含まれる画素数と一致させる補間を行うように前記演算部を作動させる請求項13記載のプログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴画像撮影装置(分析システム)(MRI、magnetic resonance imaging)、PET(positron emission tomography)、CT(computed tomography)、光学顕微鏡画像撮影装置、共焦点顕微鏡画像撮影装置、電子顕微鏡、質量分析画像撮影装置(Mass Spectrometry Imaging)を含め、写真撮影を行うあらゆる分析画像撮影装置に関する分析システムである。
特に、本明細書は、磁気共鳴法(核磁気共鳴、電子スピン共鳴、強磁性共鳴、その他)及びその画像化法を用い、スピンに由来する情報を取得し画像化する磁気共鳴画像撮影装置(分析システム)について開示する。
【背景技術】
【0002】
画像分析システムは、画像を構成する画素輝度の二次元ないし三次元行列を基に、可視化する装置であり、画素輝度は分析対象の信号強度と雑音から成る。従って、画像分析システムでは、画素の信号強度、及び/又は、信号雑音比が、高いことが望ましい。しかし、PETとCTを組み合わせたPET-CTでは、PET画像は分解能が低いという問題があった。信号強度、及び/又は、信号雑音比は、観測対象の量、濃度、観測時間に依存し、現在の画像分析システムによる低分解能、低輝度な画像は活用が限定されていた。画像の活用が限定されるほど低輝度でないとしても、より鮮明な画像が求められていた。
【0003】
たとえば、MRIではプロトン密度(PD)画像や、T1強調画像、T2強調画像が汎用されているが、緩和時間が短くなるほど、T1強調画像は明るくなり(陽影画像)、T2強調画像は暗くなる(陰影画像)。常磁性物質が存在すると常磁性緩和促進(PRE、paramagnetic relaxation enhancement)により、緩和時間が短くなり、造影剤として使われている。常磁性物質であるヘモグロビンを利用した脳機能MRIでは、T2*強調画像(T2 star weighted image)が利用されているが、画像輝度が十分でない問題があった。高輝度を獲得するために、積算回数を増やす方法がとられているが、輝度は積算回数の平方根に比例して増大する程度であることから、撮像時間が長くなることも大きな問題であった。化学シフト画像も、スペクトル情報を取得するために、画素面積が広くなり、分解能が低下する問題があった。
【0004】
分析画像撮影装置から得られる画像が低輝度、低分解能であるという問題は、MRIに限らず、分析システムであれば普遍的に存在する問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】US 4891593
【文献】WO92/04640
【文献】WO94/03824
【0006】
【文献】W. Youngdee et al, Optimization of field-cycled PEDRI for in vivo imaging of free radicals, Phys, Med. Biol. 46 (2001) 2531-2544
【文献】D. Lurei et al. Field-cycled PEDRI imaging of free radicals with detection at 450mT, Magn. Reson. Imaging 23,175-181(2005)
【文献】George P.H. Styan, Hadamard Products and Multivariate Statistical Analysis, Linear Algebra and Its Application 6: 217-240 (1973)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高感度または高分解能のこれまでにない新たな創生画像の構築を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、上記課題を次のように解決した。
画像構成部があり、前記画像構成部は、記憶部と画像演算部を備えており、前記記憶部は、少なくとも基礎画像画素情報と作動画像画素情報を記憶するものであり、前記基礎画像画素情報と前記作動画像画素情報は、同一の試料であって、同一の分析対象領域を含み、異なる撮影方式で撮影した、所定の数の画素を含むものであり、前記作動画像画素情報は、分析情報を含み、輝度および/または分解能が前記基礎画像画素情報より低い画像画素情報であり、前記基礎画像画素情報は、中間階調を含む多階調輝度情報を含むものであり、前記分析情報を含まないか、含んでも分析に影響を与えないものであり、前記画像演算部は、少なくとも1以上の前記基礎画像画素情報と少なくとも1以上の前記作動画像画素情報に対して、アダマール積を含む演算を行うことで新たな創生画像画素情報を構築する、分析システム。


【0009】
また、本発明の一態様は、上記課題を次のように解決した。
基礎画像画素情報と作動画像画素情報を用意する工程、前記工程の前記基礎画像画素情報と前記作動画像画素情報は、同一の試料であって、同一の分析対象領域を含み、異なる撮影方式で撮影した、所定の数の画素を含むものであり、前記作動画像画素情報は、分析情報を含み、輝度および/または分解能が基礎画像画素情報より低い画像画素情報であり、前記基礎画像画素情報は、中間階調を含む多階調輝度情報を含むものであり、前記分析情報を含まないか、含んでも分析に影響を与えないものであり、次いで、少なくとも1以上の前記基礎画像画素情報と少なくとも1以上の前記作動画像画素情報に対してアダマール積を含む演算を行う工程とを含む新たな創生画像画素情報の製造方法。
また、本発明の一態様は、上記課題を次のように解決した。
記憶部から、少なくとも基礎画像画素情報と作動画像画素情報を画像演算部に取り込み、前記基礎画像画素情報と前記作動画像画素情報は、同一の試料であって、同一の分析対象領域を含み、異なる撮影方式で撮影した、所定の数の画素を含むものであり、前記作動画像画素情報は、分析情報を含み、輝度又は分解能が前記基礎画像画素情報より低い画像画素情報であり、前記基礎画像画素情報は、中間階調を含む多階調輝度情報を含むものであり、前記分析情報を含まないか、含んでも分析に影響を与えないものであり、少なくとも1以上の前記基礎画像画素情報と少なくとも1以上の前記作動画像画素情報に対して、アダマール積を含む演算を行うように前記画像演算部を作動させることを特徴とするプログラム。

【発明の効果】
【0010】
本発明の分析システムは、従来からある画像のオーバーレイ(重ね合わせ・和)ではなく、アダマール積で新たな画像を構築する点で、従来にない画像を創生することができる。アダマール積を敢えてオーバーレイと対比できるように表現すれば、従来のオーバーレイは2つの画像の和である。これに対して、本発明のアダマール積は、2つの画像の画素毎の乗算による新たな画像の創生である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aは本技術の磁気共鳴画像撮影装置(分析システム)1の概念図である。
図1B図1Bはパルスシーケンスの説明図である。
図2A図2Aはファントムと実験に供される実画像等の説明図である。(a)はファントムである。画像A~Cは、撮影方式の異なる3つの画像であり、[画像A]はDNP画像取得用のESR励起下での画像である。[画像B]はESR非励起を除き[画像A]と同じ条件で撮影した画像であり、T1強調画像と呼ばれる画像である。[画像C]はPD画像である。
図2B図2Bは実験1で構築するT1創生画像の説明図である。
図2C図2Cは実験1の信号強度(SI)と信号雑音比(SNR)を数値解析した結果の表である。
図2D図2Dは実験2で構築するDNP創生画像の説明図である。
図2E図2Eは実験3で構築するDNP・T1創生画像の説明図である。
図2F図2Fは実験2及び実験3の信号強度(SI)と信号雑音比(SNR)を数値解析した結果の表である。
図3A図3Aは実験4でヒトの手袋で構築したDNP創生画像の説明図である。
図3B図3Bは実験5で、実験4より少ないエンコード画像(16×16)から構築した16×16→128×128DNP創生画像の説明図である。
図3C図3Cは実験4及び実験5の信号強度(SI)と信号雑音比(SNR)を数値解析した結果の表である。
図4A図4Aは生物試料を用いた実験6~実験8で構築するT1創生画像、DNP創生画像、DNP・T1創生画像の説明図である。
図4B図4Bは信号強度(SI)と信号雑音比(SNR)を数値解析した表である。(a)は実験6の結果の表であり、(b)は実験7及び実験8の結果の表である。
図5A図5Aは生物試料を用いた実験9の説明図であり、実験7より少ないエンコード画像(32×32)から構築した32×32→256×256DNP創生画像の作成工程を説明している。
図5B-1】図5B-1は生物試料を用いた実験7と実験9で得られた創生画像と試料(2MのCmp封入試料管)の部分の拡大写真である。(a)は実験7で得られた256×256DNP創生画像であり、(b)は実験9で得られた32×32→256×256DNP創生画像である。
図5B-2】図5B-2は生物試料を用いた実験10で得られた32×32→256×256DNP・T1創生画像と試料(2mMのCmp封入試料管)の部分の拡大写真である。
図5C図5Cは、実験7(図5B-1(a))、実験9(図5B-1(b))、実験8(図4A(c))及び実験10(図5B-2(c))の結果を順に、信号強度(SI)と信号雑音比(SNR)で比較した表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
出願人は、本発明の実施形態例として磁気共鳴画像撮影装置(分析システム)1を例示するが、磁気共鳴画像撮影装置(分析システム)1以外の分析画像撮影装置にも適用可能であり、本技術の範囲を限定するものではない。本発明は、画像撮像装置以外にスペクトル分析システム1でもよい。
【0013】
具体的な実施例や実施形態例に含まれる数々の実験を説明する前に、出願人は本発明の技術的原理やアダマール積などの概念を説明する。
【0014】
MRIの撮影方式の中には、原理的にどうしても画素輝度が低下してしまうものがあった。画素輝度の低下を防ぐために画素面積を大きくする方法や撮影回数を増やす積算法などが開発された。ところが、前者の場合には分解能が低下し、後者の場合には撮影時間が長くなる。
このように、磁気共鳴画像撮影装置(分析システム)1は、測定しようとするスピン情報の種類によっては、検出されるシグナル強度が弱い場合や、不鮮明な画像や分解能が低い画像しか得られないもの(たとえば、化学シフト画像など)があった。これらの問題点は電子スピンを撮影する動的核偏極(DNP)-MRI(特許文献1)にも存在する。そのため、これらのスピン情報を含む画像は、分析を行いにくく、活用が妨げられてきた。
【0015】
本技術は、同一の試料の同一分析領域を、異なる撮影方式で個別に或いは同時に撮影した基礎画像画素情報(core image information)と作動画像画素情報(operating image information)を取得することで開始される。そして、本技術は、両画像画素情報に対してアダマール積を含む演算を行うことで新たな画像を構築する。構築された新たな画像は、種々の撮影方式で撮影された低輝度の画像を高輝度化し、不鮮明な画像や低分解の画像を高分解化し、画像の撮影時間を短縮するものである。
基礎画像画素情報と作動画像画素情報は、1回の撮影で撮影された画像から、スペクトルを分解する等複数の情報を分けて得ることも可能である。これもまた、本発明でいう「異なる撮影方式で個別に撮影した」という概念に含む。
【0016】
前記基礎画像画素情報とは、分析画像撮影装置で取得される画像画素情報であり、分解能や輝度が高い画像であることが望ましい。基礎画像画素情報は、分析画像撮影装置で取得される分解能や輝度が高い画像画素情報であれば、どのような撮影方式で撮影された画像であってもよい。
磁気共鳴画像撮影装置(分析システム)1で取得された基礎画像画素情報の場合、基礎画像画素情報は、スピン密度やスピン分極など何らかのスピン情報から得られた画像である。作動画像画素情報は、分析情報を含み、輝度および/または分解能が基礎画像画素情報より低い画像画素情報である。また、基礎画像画素情報は、分析情報を含まない、または、分析情報を含んでもよいが分析に影響を与えない画像であり、輝度の高いおよび/または分解能が高い画像である。
【0017】
基礎画像画素情報と作動画像画素情報は、同じモダリティーで撮影される異なる撮影方式であってよい。基礎画像画素情報がMRIのような核スピン情報を撮影する撮影方式である場合、作動画像画素情報は陽電子崩壊断層画像の撮影方式で取得された画像画素情報であってもよい。
【0018】
(行列の数学記号による表記)
「行列」は、数学記号で表記するとき、太字及び/又はイタリック体の文字で表記される。しかしながら、特許明細書は、太字とイタリック体による表記ができない仕様となっている。そこで、本明細書の「行列」の数学記号表記は、以下の[数1]に示すように太字ではないアルファベットにアンダーラインを付すこととした。
また、[数3]は、行列を太字のイタリック体のアルファベットで表記する。
【0019】
【数1】
また、T1強調画像などに使われるT1は、フォントの関係で「T1」と表記している場合がある。
【0020】
出願人は本発明の理論的原理を説明する。画像は画素として2次元ではピクセル(x、y)、3次元ではボクセル(x、y、z)がある。出願人は、ピクセルを例として説明するが、3次元画像撮影装置を排除するものではない。ある時刻tにおける画像の画素(x、y)の輝度CI(Contrast Intensity)(x,y)は、式[数2]で示され、各画素の信号強度であるSI(x,y)に雑音であるNoise(x,y)が加わったものである。
画像は、画素の集まりであり式[数2]で示すように表すことができる。
【数2】
【0021】
(画像画素情報)
m×nのピクセルから成る画像の画像画素情報は、mとnが同数の場合には、画像は正方形となり、同数でない場合には長方形となる。本発明を適用できる画像は、形状を問わない。また、本発明は、画素自体が長方形の場合でも他の形の場合でも適用できる。
【0022】
発明者は、基礎画像画素情報と作動画像画素情報の概念を提案する。
以下の説明は、基礎画像及び作動画像を、n×nの正方形画像として説明する。
作動画像と基礎画像は、同一の試料の同じ分析対象領域を異なる撮影方式で撮影又は取得される必要がある。作動画像と基礎画像は、サイズの大きな画像からトリミングにより分析対象領域が切り出されたものであってもよい。ただし、作動画像画素情報と基礎画像画素情報は、共に同じ分析対象領域を含む必要がある。
【0023】
作動画像画素情報の行列表記は、行列に下付き文字で「op」を付して、CI op と表記する。
実施例のDNP画像などの作動画像は、検出されるシグナル強度が弱い画像であり、分解能が低い画像の例として説明されている。
【0024】
基礎画像画素情報の行列表記は、行列に下付き文字で「core」を付して、CI core と表記する。実施例のPD画像などの基礎画像は、分解能や輝度が高い画像の例として説明されている。基礎画像画素情報(画素行列CI core )は、作動画像画素情報とアダマール積演算されたときに分析対象の核スピンの分布状態を高輝度で高分解に反映するものが望ましく、その撮影方式は限定されない。
【0025】
上記の基礎画像画素情報(画素行列CI core )と作動画像画素情報(画素行列CI op )から式[数3]に示すアダマール積(非特許文献3を参照)を行うことで、高輝度の新たな創生画像(画素行列CI created )が得られる。
【数3】
【0026】
画像再構築において雑音除去は一般的な課題である。MRIを始め分析画像撮影装置は、種々の情報を加味し演算することで、分析に適した画像画素情報を提供する。この画像画素情報は画像作成過程の演算処理で雑音が強調されることがある。たとえばDNP画像(特許文献1~3)はESR励起有の画像と無の画像の2枚の画像の減法画像(subtracted image)や比画像で作成されるが、それにより雑音が増加する。後述する実施形態例は、減法画像を使ったDNP画像を作動画像画素情報として使う例を含んでいる。後述する実施形態例に含まれる数々の実験は、作動画像画素情報と高輝度かつ高分解能の基礎画像画素情報に対してアダマール積演算し、創生画像を構築することで、作動画像画素情報に含まれる雑音を低減し、信号雑音比を著しく向上できることを証明している。
【0027】
前記作動画像は輝度が低い場合があり、画像輝度は積算回数の平方根に比例し増大するので、積算回数を増やすことも可能であるが、撮像時間が長くなり、高輝度化や高分解能化に限界がある。他の方法として、画素の信号を増強させ、または、雑音を低減するために、画像分析領域の画素数を低減し画素面積を大きくすることが行われている。たとえば、前記DNP-MRIで生体内常磁性物質の画像化にはESR励起の出力や時間に制約があり、DNPに関連した信号強度は弱く、低磁場MRIではエンコード数を減らし、画素面積を大きくすることで分析可能な画像を得ている(特許文献1)。
雑音を多く含む画像に対して、ノイズフィルタを使う方法などが使われているが、画像輝度が低い場合、十分な効果が得られないなど、有効な手段が無かった。
【0028】
本発明は、このように、エンコード数が少ない作動画像でも、作動画像画素情報の画素行列の数と位置を基礎画像画素情報の画素行列に一致させるよう画素数変換(補間)することで、式[数3]のアダマール積を含む演算処理を可能とし、高輝度・高分解の新たな創生画像を構築できる。画素行列の変換は一次元でも多次元の線形補間法でも良い。また、基礎画像画素情報と作動画像画素情報は、アダマール積演算を行う前に、両画像に含まれる分析対象領域を合わせする必要がある。位置合わせは、画素移動やアフィン変換を採用しても良い。
【0029】
(分析画像撮影装置に関する実施例)
図1Aは、本技術の磁気共鳴画像撮影装置(分析システム)1の概念図であり、画像撮影部2と、制御部3、データベース4で構成される。撮影者(分析者)は、適宜な撮影方式で分析試料の分析領域に対して基礎画像画素情報の撮影を行う。それに前後して、撮影者(分析者)は、基礎画像画素情報と同一の試料、同一の分析領域に対して、基礎画像画素情報を撮影した撮影方式と異なる撮影方式で作動画像画素情報の撮影を行う。
【0030】
本装置で撮影される画像は、基礎画像と作動画像を含む少なくとも2枚の画像であり、基礎画像画素情報と作動画像画素情報を演算する画像構成部を有する。制御部3は、本技術のプログラム(ソフトウエア)をインストールされたコンピュータであり、撮影条件を変えた一つもしくは複数の基礎画像や、一つもしくは複数の作動画像を撮影するように、撮影を制御している。
【0031】
撮影は、フリップ角度を小さくしエルンスト角を用いて積算回数を増やすことや、balanced steady-state free procession (b-SSFP)などを含む任意のパルスシーケンスを活用することにより、基礎画像画素情報のシグナル強度を高めるようにしてもよい。
【0032】
(データベース)
適切な撮影方式を撮影者に提供するため、データベース4を備えてもよい。データベース4に蓄積されたデータは、撮影条件決定のために活用することができる。
【0033】
作動画像の選択は、撮影者(分析者)が必要とする一つ或いは複数のスピン情報によって決まる。撮影者(分析者)は、撮影方式選択部312に必要とする作動画像の撮影方式を入力する。撮影者(分析者)は、作動画像の撮影条件を決めるに当たり、データベース4にある作動画像撮影条件データベース42から必要となる情報を制御部3に接続されたディスプレイ5に表示することができる。本実施例においては、両データベース(41・42)は、少なくとも撮影条件情報を記憶しているものであるが、他の情報を更に含むことを妨げない。
また、分析システム1は、撮影者(分析者)が分析目的を入力すると、データベース4から分析目的に適した撮影方式を選び出し、ディスプレイ5に提示するようにしてもよい。
【0034】
(記憶部)
制御部3の撮影制御部31は、決定された撮影条件(磁場強度、パルスシーケンス等)どおりに、画像撮影部2を制御する。寝台24には、撮影対象者が寝かされており撮影が開始される。静磁場発生部211は撮影対象者の周囲に静磁場を作る。そして、磁場発生部21にある傾斜磁場発生部212,電磁波送受信部23は、撮影制御部31により制御され撮影が行われる。画像撮影部2の電磁波送受信部23はNMR信号を受信すると、NMR信号を画像変換部321へ送る。画像変換部321は、NMR信号を画像化する。撮影方式を変えて撮影がなされ、基礎画像画素情報と作動画像画素情報が記憶部323に記憶される。
【0035】
(画像変換部)
なお、実施例の画像撮影部2と画像変換部321は、別の部材として分けて説明しているが、画像撮影部2が画像変換部321を備えていてもよく、基礎画像画素情報と作動画像画素情報を最終的に得られれば画像化する部材は適宜でよい。
また、実施例のMRIは、電磁波送受信部23で受信されたNMR信号を画像化するために画像変換部321を必要とするが、光学顕微鏡のような分析システム1では、画像撮影部2だけがあれば足り、画像変換部321は、必要に応じて設けられる部材である。
【0036】
(位置合わせ等のアダマール演算前の画像調整)
基礎画像画素情報と作動画像画素情報は、双方の画像画素情報とも同一の試料(同一患者)、同一の分析領域を少なくとも含むものである。記憶部323は、画像撮影部2が撮影した基礎画像画素情報と作動画像画素情報を記憶するものである。撮影された画像は、制御部3に接続されたディスプレイ5に表示される。
分析システム1は、制御部3に、画像編集機能や位置合わせ機能などの画像に関する調整機能を備えている。
基礎画像画素情報及び作動画像画素情報は、分析システム1に備えられた画像編集機能を用いて、分析対象領域のみを切り出すことができる。当該編集作業は、画像編集機能が自動的に行う、または画像編集機能を使って撮影者(分析者)が手動で行うことができる。
【0037】
位置合わせも同様であり、分析システム1に備えられた位置合わせ機能を用いて、位置合わせ機能が自動的に行う、または撮影者(分析者)が位置合わせ機能を使って手動で行うことができる。
位置合わせ機能は、基礎画像画素情報と作動画像画素情報を別の色で表示することができ、位置合わせを助けることができる。撮影者(分析者)は、基礎画像画素情報と作動画像画素情報のいずれかの画像画素情報を選択し、移動や変形をおこなうことで、両画像の少なくとも分析対象領域を位置合わせする。もちろん、撮影者(分析者)は、全画像領域に対して位置合わせを行ってもよい。
位置合わせ機能は、画素移動やアフィン変換など様々な方法が開発されており、使用する画像により適切な位置合わせ手段を採用することが好ましい。
撮影は、位置合わせを簡単にするためにマーカを付して行われることが好ましい。
本発明における位置合わせ等の画像調整機能は、機能として分析システム1が備えていればよく、自動や手動など実行主体が何であるかを問わない。
なお、位置合わせは、おおむね位置があっていれば足り、厳密な位置合わせまで要求されないことがある。また、画像撮影部2で位置合わせを要しない画像が取得される場合は、位置合わせをする必要がない。
【0038】
画像調整を終えた基礎画像画素情報と作動画像画素情報は、再び記憶部323に送られ記憶された後、画像演算部322に送られる。画像演算部322に送られた基礎画像画素情報と作動画像画素情報は、アマダール積を含む演算がなされることになる。
位置合わせの後、作動画像画素情報と基礎画像画素情報は、画像演算部322によりアダマール積演算が行われ、創生画像が構築される。
画像演算部322は、アマダール積の他に、ノイズ除去、色の割り当てなど他の演算を行う機能を備えている。撮影者(分析者)は、この機能を使用することで、創生画像画素情報を分析しやすいように加工することができる。
制御部3は、ディスプレイ5に画像演算部322により演算された新たな画像を表示するよう制御を行う。
【0039】
画像構成部32は、創生画像に含まれる分析対象領域を周囲と区別できる態様で表す画像を構築してもよい。区別できる態様は、ハッチング、色などを含む。
【0040】
(分析システムに含まれる機能部)
画像構成部32などの機能部は実体物として存在する必要はなく、クラウド上に構築された複数のコンピュータの集合であってもよい。さらに、複数のコンピュータを適宜動作させるソフトウエアがあり、それらコンピュータが共同して画像構成部32、画像変換部321、画像演算部322として機能するものであってもよい。実施例で示した「・・・部」という表現は、明確な実体物として存在する必要はなく、実質的に画像構成部32、画像変換部321、画像演算部322として機能するものをいう。
【0041】
(異なる撮影方式)
本発明でいう「異なる撮影方式」とは、MRIとX線CTなど異なるモダリティーであることも含む。
また、基礎画像画素情報は、顔写真であり、作動画像画素情報は、顔のしわを強調するため、特殊な波長の光を含む光源や特殊な方向から光を照射する光源などを用いて撮影した「しわ強調画像画素情報」であり得る。
さらに、本発明でいう「異なる撮影方式」とは、一つの画像からスペクトルなど異なる情報を分解して異なる情報を含む2つの画像を作成し、分析情報を含む側を作動画像画素情報とし、他方を基礎画像画素情報したものも含む。
【0042】
<実施態様1>
実施態様1は、磁場環境下で磁気共鳴を用いて、試料における検出核スピンの磁気情報に基づいて作動画像画素情報と基礎画像画素情報をそれぞれ取得し、両情報を演算することで対象核スピンの磁気情報を高感度・高分解画像化方法や分析方法であってもよい。
実施態様1の方法は、試料における核磁化、及び/又は、緩和情報に基づいて高輝度・高分解の基礎画像画素情報を取得するステップがある。
実施態様1の方法は、動的核偏極情報、緩和速度情報、拡散情報、灌流情報、磁化率情報、化学シフト情報などを含む情報の1つ又は複数に基づいて作動画像画素情報を取得し、及び/又は作成するステップがある。
実施態様1の方法は、基礎画像画素情報に対して、作動画像画素情報をアダマール積などの演算処理することにより電子スピン情報画像、緩和時間画像、拡散画像、灌流情報、磁化率画像、又は、化学シフトなどに由来する画像を取得するステップがある。
<実施態様2>
実施態様1に加えて、作動画像画素情報は、動的核偏極、緩和現象、拡散現象、磁化率、化学シフトなどの1つ又は複数に係る画素シグナル強度の変化を取得し、作成することを特徴とする方法。
<実施態様3>
上記実施態様に加えて、画素シグナル強度の変化は、シグナル強度差、又は、シグナル強度比、加算、減算、乗算、除算、対数などの代数処理などであり、該変化はフィルター処理を含む関数処理演算で得られる方法。
<実施態様4>
上記実施態様に加えて、動的核偏極情報に基づく作動画像画素情報は、ESR励起と非励起の画像画素情報に基づいて取得され、ESR励起の画像画素情報により電子スピン情報を特定することを特徴とする方法。
<実施態様5>
上記実施態様に加えて、拡散情報或いは磁化率情報に基づく作動画像画素情報は、T2*(T2 star)画像画素情報、及び/又は、位相画像画素情報に基づいて取得されることを特徴とする方法。
<実施態様6>
上記実施態様に加えて、作動画像画素情報の取得に当たり、エンコード数を減らすことを含めマトリックス数を減らして取得する。その後、マトリックス数の減らされた画像は、マトリックス数を基礎画像画素情報のマトリックス数と合わせようにマトリックス数変換(画素補間)を行われる工程を含んでもよい。
<実施態様7>
上記実施態様に加えて、核スピン化学シフトを対象とした画像の取得において、高輝度・高分解の基礎画像画素情報は、対象とする特定の核スピンの核磁化の画像を基にすることができる。画像は、核オーバーハウザー効果、及び/又は、スピンデカップリング、脂肪信号抑制法、緩和現象を含む現象の1つ又は複数を活用して取得される。そして、作動画像画素情報は、化学シフト画像(CSI)、代謝速度や代謝物の割合の画像を含む画像から得られたマトリックス数の小さい画像画素情報に基づいて取得される。そして、創生画像は、高輝度・高分解の基礎画像画素情報に対して、作動画像画素情報を演算することで取得される。また、核スピン基礎画像画素情報に加えて、プロトン画像を基礎画像画素情報として併用しても良い。
【0043】
なお、上述の実施の態様において、各ステップの実施順序は、各ステップの記載の順序に限定されるものではない点に留意されたい。
【0044】
<実施形態例1>
実施形態例1で行われる実験は、常磁性物質による緩和促進情報及び動的核偏極情報から作られる画像を作動画像画素情報としている。基礎画像画素情報は、プロトン密度画素画像画素情報(PD画像画素情報)あるいはT1強調画像画素情報を用いている。用いられた磁気共鳴画像撮影装置(分析システム)1は、FC-DNP-MRI(特許文献2、3、非特許文献1、2)である。本発明の実施には、固定磁場DNP-MRI(特許文献1)で転用でき、緩和促進情報を作動画像画素情報とする場合には、固定磁場MRIを転用できる。本発明の分析システム1は、基礎画像画素情報と作動画像画素情報を取得できるのであれば、形態を問わない。分析システム1は、既存のMRI装置に接続すること、画像撮影部2と結合すること、撮影された画像画素情報のみを入力できるようにすることなどで実現できる。
以下の実験は、撮影された画像画素情報のみを使用した例として行われた。
【0045】
(実験で使用するパルスシーケンス)
図1Bは、パルスシーケンスの説明図である。図1Bのパルスシーケンスは、以下の実験で使用するパルスシーケンスを表している。図1BのESR励起画像撮影のパルスシーケンスは、低磁場(5mT)で1300ミリ秒間のESR励起で始まる。撮影は、高磁場(300mT)に変換した時点を0秒としたとき時刻td=200ミリ秒でNMR励起電磁波を送信し、傾斜磁場下でTE(エコー時間)時間中にNMR信号を受信し、続けて傾斜磁場を変え位相エンコードしながら撮影が行われる。また、ESR非励起画像撮影のパルスシーケンスは、低磁場(5mT)で1300ミリ秒間のESR非励起で始まり、以降はESR励起画像撮影と同様に行う。
【0046】
(作動画像画素情報を得るためのパルスシーケンス)
なお、ESR励起画像の画像画素情報とESR非励起画像(T1強調画像)の画像画素情報は、DNP作動画像画素情報を得るために使われる原画像となる。
図1Bのパルスシーケンスは実験のために選ばれたものであって、本発明が図1Bのパルスシーケンスに限られないことは言うまでもない。また、図1Bのパルスシーケンスは、使用したFC-DNP-MRIで使うための1例として示したものである。
【0047】
1強調画像撮影の画像画素情報は、ESR非励起画像画素情報を用いても良く、高磁場(300mT)に固定し、T1強調画像用の繰り返し時間(TR)で撮影した画像の画像画素情報を用いても良い。
【0048】
(基礎画像画素情報を得るためのパルスシーケンス)
基礎画像画素情報はPD画像(プロトン密度画像)あるいはT1強調画像の画像画素情報を用いても良い。PD画像(プロトン密度画像)を撮影するパルスシーケンスは、高磁場(300mT)に固定し、エコーを使う場合はTRをT1画像撮影用パルスシーケンスと比べて長くする。撮影は、TR(2000ミリ秒)経過後にNMR励起電磁波を送信し、位相傾斜磁場を与えた後に周波数エンコードを用いてTE時間でNMR信号を受信し、続けてTR後に、傾斜磁場を変え位相エンコードしながら行われる。
TRが縦緩和時間より短い場合にはT1強調画像が得られ、TRが縦緩和時間の2倍以上長い場合にはPD画像が得られる。TRが縦緩和時間の数十分の一程度に短い場合には縦緩和近似画像となる。
【0049】
[実験1]
図2Aはファントムと実験に供される実画像等の説明図である。(a)はファントムである。画像A~Cは、撮影方式の異なる3つの画像であり、[画像A]はDNP画像取得用のESR励起下での画像である。[画像B]はESR非励起という他はAと同じ条件の画像であり、T1強調画像と呼ばれる画像である。[画像C]はPD画像である。
図2Aの(a)のファントムは、5本の試料管内に、次の物質を入れられたものである。当該試験管内に入れられた物質は、時計回りに空気(Empty)、純水(Water)、常磁性物質Cmp(3-carbamoyl-PROXYL)濃度が2mM、4mM、8mMの溶液である。
これらの画像は、いずれもTE=7ミリ秒、フリップ角=90度、バンド幅=30kHz、積算回数=1、位相エンコード数=160、周波数エンコード数=160、スライス厚=5mm、マトリックス数は256×256で得られた。以下の実験は、画像A~Cのたった3つの画像から多様な高分解能で高輝度の創生画像が作られ得ることを示す目的で行われた。なお、画像A~Cは撮像した画像から分析対象領域だけを切り出したものである。
撮影条件は前述した[実験に使用するパルスシーケンス]で説明したとおりである。
【0050】
本発明の実施に当たり、撮影者(分析者)は、異なる撮影方式で撮影された2枚の画像を用意する。一方を基礎画像と決め、他方を作動画像と決める。基礎画像は、作動画像より高輝度および/または高分解能の画像である。
実験1で用意された画像は、図2AのT1強調画像[B画像]とPD画像[C画像]の2枚の画像である。
【0051】
図2Bは実験1の説明図ある。図2AのT1強調画像([B画像])は、Cmpの濃度が高くなるにつれ白さが増しており、Cmp濃度依存性の画像であるが、明暗がはっきりせず、低分解能で輝度の低い画像であることが分かる。これに対して、図2AのPD画像([C画像])はCmpの濃度が2mM、4mM、8mM、水(0mM)の輝度がほとんど変わらないが、図2AのT1強調画像([B画像])より、高分解で高輝度の画像である。
【0052】
そこで、図2Bに示すように、発明者は、図2Aの[C画像]のPD画像を基礎画像、図2Aの[B画像]のT1強調画像を作動画像とした。
【0053】
図2Bの[B画像]、[C画像]は、図2Aのそれと同じ画像である。
図2B(a)[B画像]のT1作動画像画素情報と図2B(b)[C画像]のPD基礎画像画素情報は、位置合わせされた後にアダマール積演算がなされ、結果として図2B(c)に示すT1創生画像画素情報が得られた。図中の「〇」記号はアダマール積による演算記号を表す。
それぞれの画像画素情報を画素行列で表せば、(CI op-T1 )及び(CI core-PD )である。そして、
CI op-T1CI core-PD CI created-T1
を計算することでT1創生画像画素情報(CI created-T1 )が得られる。
なお、実験1で得られた創生画像は、「T1創生画像」と命名された。「創生画像」の命名は、撮影者(分析者)に任されている。たとえば、人物の写った風景写真がある時、人物の写真、衣服の写真、背景の建物の写真のいずれと捉えるかは、撮影者の撮影目的で決まる。また、本明細書で創生画像に対して命名をしている場合があるが、これは、説明を分かりやすくするためである。命名は、本発明と本質的に関係しない。いずれにせよ、本発明で構築される創生画像は、これまでに全く知られていない画像である。1つの創生画像は、多様な分析目的に使うことができる。
【0054】
図2B(a)([B画像])のT1作動画像は、4本の試料管の輝度が明瞭でなかったが、図2B(c)のT1創生画像は、4本の試料管が高輝度でCmp濃度に応じた輝度差が明確で、常磁性緩和促進が可視化されていた。
【0055】
図2Cは実験1の信号強度(SI)と信号雑音比(SNR)を数値解析した結果の表である。図2Bの各画像の試料管領域と空間雑音領域にMRI関心領域(ROI;Region of Interest)を設定し、米国健康研究所(NIH)提供の解析ソフトImageJで輝度を求め、AAPM Reportに従いSIとSNRを求めたものである。以下の実験で信号強度(SI)と信号雑音比(SNR)の数値解析結果が表として示されるが、数値解析法は、この方法で行われた。
目視による評価は、図2Cの数値分析結果により以下のように裏付けられた。
【0056】
アダマール積で得られたT1創生画像のSIは、Cmp濃度依存性があり、比較対照のT1強調画像([B画像])のSIより2000倍も上昇していた。さらに、T1創生画像の信号雑音比(SNR)は、比較対照であるT1強調画像([B画像])より20倍ほど増加している。この効果は本発明の重要な点である。従来法であり作動画像として使われたT1強調画像([B画像])は信号雑音比(SNR)が10以下で、雑音による影響が顕著であった。
このような信号雑音比(SNR)の向上は、従来から多用されている画像のオーバーレイ(和の演算による画像)ではあり得ないことである。
1創生画像は、作動画像の画素情報と基礎画像の画素情報がアダマール積演算されることにより、作動画像に存在していた雑音寄与分が相対的に減じた画像(創生画像)となっている。
なお、この効果は後述の実験でよりはっきりした。
【0057】
[実験2]
実験2と実験3は、動的核偏極情報の実験である。
常磁性物質を画像化する磁気共鳴画像撮影装置(分析システム)1は、Lurieらによって開発された(特許文献1)。
Lurieらは、静磁場下での常磁性物質の分極を電子スピン共鳴(ESR)で励起することで、常磁性物質と超微細結合している水分子の水素核スピンは、動的核偏極(DNP、dynamic nuclear polarization)し、その水素核スピンを可視化するDNP-MRI法(特許文献1)を開発した。更に、ESR励起を低磁場で、核スピン分極と検出を高磁場で行う磁場変換法DNP-MRI(Field Cycling DNP MRI:FC-DNP-MRI)も開発した(たとえば、特許文献2、3,非特許文献1、2参照)。しかし、特許文献2、3に示される従前のFC-DNP-MRIは、磁場固定型DNP-MRI(特許文献1)をそのままFC-DNP-MRIに転用しただけで、定常条件を前提にしている。そして、従前のFC-DNP-MRIは、撮影条件下での磁化変化や輝度への影響に関する理論的解析に問題点があり、得られた画像輝度が十分でなかった。
実験2は、DNP創生画像が従来法のDNP画像([E画像])より改善するか調べるための実験である。
【0058】
図2Dは実験2の説明図である。
実験2で用いられた画像は、図2Aの画像[A画像]、[B画像]と[C画像]の3枚である。
従来法のDNP(動的核偏極)画像([E画像])は、LurieらのDNP画像法(非特許文献1と2を参照)により撮影された。DNP画像([E画像])は、ESR励起[画像A]とESR励起[画像B]を位置合わせした後に、対応する画素毎に減法(subtraction)を演算することで得られる。
得られたDNP画像([E画像])は図2D(c)である。背景が白くなっているのはESR非励起画像([B画像]・ESR=0W)からESR励起画像([A画像]・ESR=6.5W])の減法(subtraction)を演算した際に画素輝度が雑音で負となるからである。見ても分かるとおり、DNP画像([画像E])は不明瞭な画像であり、コントラストもはっきりせず、特に背景が雑音で沸騰した湯のようになっている。実験2では、このDNP画像を従来法による画像とし、比較対照とした。
実験2は、この不明瞭なDNP画像([画像E])をDNP作動画像画素情報(CI op-DNP )とし、基礎画像画素情報は、実験1と同様にPD画像[C画像]画素情報(CI core-PD )を採用した。両画像は位置合わせされた後にアダマール積演算されて、図2D(e)のDNP創生画像画素情報(CI created-DNP )が得られた。
見てのとおり、図2D(e)のDNP創生画像の背景は雑音による不鮮明さが消え、試料が浮かび上がるようになっている。また、図2D(d)のPD基礎画像[画像C]では、水の試料が高い輝度で撮影されていたのに、図2D(e)のDNP創生画像では全く消えている。もともと、DNP画像([画像E])は、原理的にCmpを撮影することができるが、この濃度範囲では濃度依存性が低いことが判明している。これは、ESR励起によるDNP効果が常磁性物質の濃度により頭打ちとなる現象に由来する。
【0059】
[実験3]
図2Eは、実験3の説明図である。実験3は、DNP創生画像自体を新たな基礎画像とし、それと異なる撮影方式で得たT1強調画像[B画像]を作動画像とした場合、どのような結果が得られるか調べた実験である。
実験2で得られたDNP創生画像であるCI op-DNP CI core-PD は、実験3の基礎画像画素情報として使われた。
CI op-DNP CI core-PD coreCI op-T1 で新たに構築されたDNP・T1創生画像を図2E(e)に示す。
【0060】
実験1のT1創生画像は、Cmp濃度依存性は明確に観察されたが、水の試料が写るなど特異性に難点があった。他方、実験2のDNP創生画像は、Cmp依存性は明確ではないが、Cmpに特異性があり、水の試料は写っていなかった。
得られたDNP・T1創生画像図(2E(e))は、DNP創生画像(図2D(e))に較べて、Cmp濃度依存性が強く認められ、かつ、水が写っていない画像となっており、分析に適した画像となっていることが判明した。
目視による評価は、図2D図2Eの数値分析結果により以下のように裏付けられた。
【0061】
図2Fは実験2及び実験3の信号強度(SI)と信号雑音比(SNR)を数値解析した結果の表である。
実験2の結果の欄を見て分かるように、常磁性物質の検出に使われる従来法であるDNP画像([画像E])と比べ、DNP創生画像(CI op-DNP CI core-PD を演算)は信号強度で1800倍、信号雑音比で20倍の増大が得られた。
実験3のDNP・T1創生画像((CI op-DNP CI core-PD coreCI op-T1 で演算)は、従来法に較べ、信号強度で140万倍、信号雑音比で160倍という驚異的な高輝度化した画像が得られ、かつDNP創生画像では明確でなかった常磁性物質濃度依存性が信号強度として鮮明に可視化されていた。
このように、創生画像の信号強度と信号雑音比が桁違いに増加することから、作動画像の撮影時間tdを十分の一以下にすることができ、大幅に撮影時間が短縮することができた。
実験1~実験3をとおして基礎画像として採用されたPD画像([C画像])は、プロトン密度を示す画像であるためプロトン以外の物質の濃度依存性を持たない。そのため、PD画像([C画像])は、MRIを使った分析において基礎画像としての有用性が高い画像であることが分かった。
【0062】
(基礎画像画素情報と作動画像画素情報)
基礎画像画素情報と作動画像画素情報として何を選択するかは、分析目的によって変化し得る。
実験3の分析目的がCmpの濃度を知るということであったとすると、分析情報はCmpの濃度になる。[画像E]のDNP画像及び[画像B]のT1強調画像は、共に多かれ少なかれCmpの濃度依存がある画像であるから、作動画像としてふさわしい。
他方、[画像C]のPD画像は、プロトン濃度に依存しCmpの濃度依存性がないから、基礎画像画素情報としてふさわしい。PD基礎画像画素情報は、分析情報を増幅する役割を果たすことが分かった。
【0063】
基礎画像画素情報は、高輝度で高分解な画像を与える適切な撮影方式が無い場合、2以上の複数の異なる画像に対してアダマール積演算することで人為的な基礎画像画素情報を構築することもできる。アダマール積演算の結果、最終的に構築された画像が、分析情報を含まない又は分析に影響を与えないのであれば、その画像画素情報を基礎画像画素情報として使うことができる。
対して、作動画像画素情報は、分析情報を含むが基礎画像画素情報より分析対象領域が高輝度および/または高分解能を備えていない。作動画像画素情報は、実験3のように、撮影方式の異なる2以上の複数の画像画素情報であってもよい。
【0064】
[実験4・実験5]
実験4と実験5は、作動画像のエンコード数を低減させた撮影方式を使用し、実験2より撮影時間の短縮させた別の実証例でヒトの腕に見立てた台所用ゴム手袋(ポリビニルアルコール封入)で行った。
ファントムは、水あるいは2mMのCmpフリーラジカル溶液を封入した2本の試料管(外径13mm・高さ30mm)を、ヒトの腕に見立てた台所用ゴム手袋(ポリビニルアルコール封入)の下に設置することで作成され、2mMのCmpフリーラジカル溶液封入試料管はESR励起用コイル内に装着されている。
【0065】
実験4で使用する磁気共鳴画像撮影装置(分析システム)1は、実験1と同様にFC-DNP-MRIが選ばれた。そして、作動画像となる原画像の撮影条件は、実験1と同様であり、図1Bに示すパルスシーケンスでNMR信号を検出した。但し、基礎画像は、実験1とは異なる撮影方式の画像である。基礎画像の撮影条件はTR=500ミリ秒、フリップ角=60度、バンド幅=20kHz、位相エンコード数=65、周波数エンコード数=96、スライス厚=5mm、マトリックス数は128×128であった。
【0066】
実験4の図3A(a)の写真はTR=500ミリ秒で撮影された基礎画像、図3A(b)の写真はESRの励起を行わずtd=200ミリ秒で得た画像で、いわゆるT1強調画像、図3A(c)は当該ESR励起(ESR=6.5Wで1300ミリ秒間)した後にtd=200ミリ秒で撮影された画像である。
図3A(d)は、図3A(b)のESR非励起画像の画素情報と図3A(c)のESR励起画像の画素情報の減法画像(従来法のDNP画像)であり、比較対照として使われた。そして、この画像は、実験4のDNP作動画像として選ばれた。
図3A(a)の基礎画像画素情報と図3A(d)のDNP作動画像画素情報は、アダマール積演算がなされ、図3A(e)のDNP創生画像が構築された。
【0067】
図3A(e)のDNP創生画像は、画像の背景がクリアであり、Cmp封入試料管の画像が従来法のDNP画像よりもSIで約一万倍、SNRで40倍程度も増加し、顕著な高輝度画像となっている。(後述の図3C参照)
【0068】
図3Bは、実験5の説明図である。実験5は実験4と同じファントムで、撮影エンコード数を16×16とし、他の条件は実験4と同じである。発明者は、DNP画像を作るために16×16のマトリックス数で2枚の原画像を撮影した。即ち、図3B(b)はESR非励起で撮影した画像(T1強調画像)であり、図3B(c)はESR励起で撮影した画像である。DNP原画像を得るために、両画像の画像画素情報に対して、減法(subtraction)が演算され、16×16のマトリックス数の減法画像(subtracted image)(図3B(d)、DNP原画像)が得られた。
次いで、16×16のDNP画像画素情報は、画素数変換(画素補間)により、128×128のマトリックス数に2次元線形補間され、これを128×128DNP作動画像画素情報(図3B(e))とした。
図3B(a)は、128×128のマトリックス数、TR=500ミリ秒で撮影された基礎画像である。この基礎画像画素情報と図3B(e)のDNP作動画像画素情報はアダマール積演算され、128×128のDNP創生画像が構築された。
【0069】
(画素を補間したときの表記)
画素を補間したときの表記は、たとえば32×32のマトリックス数の画像画素情報を128×128のマトリックス数の画像画素情報に画素補間をした場合、矢印を使って”32×32→128×128”などと表記する。
【0070】
(実験5の結果)
16×16のマトリックス数の図3B(d)の減法画像(DNP原画像)では、Cmp封入試料管の解像度が著しく低く画素の粗さが目立ち、分析しにくいものであった。しかし、16×16→128×128DNP創生画像である図3B(f)は、Cmp封入試料管の形状がきわめて明瞭で高輝度な画像であった。実験4の図3A(e)のDNP創生画像と実験5の図3B(f)の創生画像を比較すると、実験5の図3B(f)は、Cmp封入試料管の形状が鮮明であり、輪郭が実験5の図3B(d)よりはっきりしていた。
【0071】
この結果は驚くべきものであり、実験5の結果は不鮮明な画像分析に著しい貢献をもたらす可能性を示した。従来の低磁場固定装置でのDNP画像は、感度が低く(輝度が低い)、マトリックス数を小さく(一つの画素の面積を大きく)しないと撮影が困難な撮影方式である。本発明は、そのようなマトリックス数の小さな画像からでも、明瞭な分析画像(DNP創生画像)を構築することができる。
【0072】
発明者は実験4と実験5の画像に対して数値による客観的評価を行った。図3Cは実験4及び実験5の信号強度(SI)と信号雑音比(SNR)を数値解析した結果の表である。
図3Cの数値解析は、実験1と同様の方法で行われた。
【0073】
実験4の128×128のマトリックス数で撮影された従来法のDNP画像とDNP創生画像(CI created-DNP )を比較すると、SIは約一万倍にSNRは39倍まで増加していた。この実験4の結果は前述の実験2の結果を再現しており、本発明が分析に非常に有効であることを示している。
【0074】
一方、実験5の画素数変換(線型補間法)の結果は、対照である従来技術のDNP画像の信号強度が、764.28であったのに対して、画素補間によって得られた16×16→128×128DNP創生画像の信号強度は約三千倍に、SNRは60倍増加し、従来技術よりも分析に適した画像が構築あることを裏付けた。
注目すべきはSNRであり、実験4の128×128DNP創生画像の増加(Increase)率が39倍であったのに対して、実験5の増加(Increase)率は60倍であった。
実験4の作動画像画素情報は、128×128CI op-DNP のマトリックス数で撮影されたものである。他方、実験5の作動画像画素情報は、エンコード数を1/8に減らしたマトリックス数で撮影された16×16CI op-DNP の画像画素情報である。撮影された作動画像画素情報が実験5の方が実験4より少ないマトリックス数であるにも関わらず、SNRが向上していた。
【0075】
実験4と実験5の結果は、原画像のマトリックス数を1/8まで少なく撮影しても、SNRが良好になることを示している。MRIなどの磁気共鳴撮影装置は、マトリックス数が増すほど撮影に時間がかかる。撮影者(分析者)は、マトリックス数を減らすことで撮影時間の時間短縮ができる。
さらに、本発明は、従来技術と比較して、驚くほど改善したSIとSNRの創生画像を構築でき撮影者(分析者)の分析を助けることができることが判明した。
【0076】
[実験6~実験8]
実験6~実験8は、生体により近い鶏の手羽でも実験1~3と同じ結果が得られるか確かめる目的でなされた。
鶏の手羽の皮下に2mMのフリーラジカル溶液を封入した封入試料管(外径・高さ共に8mm)を包埋することで行われた。鶏の手羽は、皮膚を挟んでESR励起用表面コイルが装着され、実験1~3と同様にFC-DNP-MRIを用いて実施された。
図4Aは生物試料を用いた実験6~8の説明図である。
図4Aの[画像A’]、[画像B’]及び[画像C’]は、実験6~実験8に使うために予め撮影された3枚の画像で、撮影条件は実験1と同様である。[画像A’]はDNP画像取得用のESR励起下での画像である。[画像B’]はESR非励起を除き画像Aと同じ条件で撮影した画像であり、T1強調画像と呼ばれる画像である。[画像C’]はPD画像である。[画像D’]は、2mMのCmp封入試料管(Cmp2Mm)及びESRコイル表面(Surface)近傍部分、手羽部位(wing)、空隙雑音部分に設定した関心領域ROIsを示す図である。
各ROIは、輝度が測定され、実験1と同様の方法で数値解析が行われた。図4Bは信号強度(SI)と信号雑音比(SNR)を数値解析した表である。(a)は実験6の結果の表であり、(b)は実験7及び実験8の結果の表である。図4B(a)及び(b)の表の左欄は、上からwing、Cmp2mM、surfaceの順に設定した[画像D’]のROIsにおけるデータであることを示す。
【0077】
[画像B’]は、ESR非励起画像でありDNP画像作成用以外に、T1作動画像としても使われた。
[画像A’]と[画像B’]の画像画素情報の減法(subtraction)を演算され、図4A(a)の従来法のDNP画像[画像E’]が取得され、比較対照として使われた。また、この画像はDNP作動画像としても使われた。
【0078】
実験6は、[画像B’]のT1強調画像を作動画像とし、[画像C’]のPD基礎画像を使い、CI op-T1 CI core-PD のアダマール積演算を行った実験である。得られたT1創生画像は図4A(e)のCI created-T1 である。
【0079】
実験7は、図4A(b)に図示されているようにCI op-DNP CI core-PD のアダマール積演算を行なった実験で、得られたDNP創生画像画素情報は、CI created-DNP である。
また、実験8は、図4A(b)を基礎画像として、CI op-DNP 〇|CI core-PD core CI op-T1 のアダマール積演算を行い、DNP・T1創生画像画素情報CI created-DNP・T1 を得た。
【0080】
図4B(a)は実験6のT1創生画像の結果であり、比較例となる従来法のT1強調画像に較べ、SIで2千倍以上に、SNRで20倍以上に増加している。この数値解析の結果から、従来技術と比較して、本発明のT1創生画像は、SIとSNRにおいて、きわめて分析が行いやすい画像となっていることが分かった。
【0081】
図4B(b)の表のDNP創生画像(実験7)とDNP・T1創生画像(実験8)の数値解析の結果、従来法に較べ、本発明のDNP創生画像では、SIで2000倍程度、SNRで20倍増大した。さらに、本発明のDNP・T1創生画像では、従来法にSIで百万倍、SNRで100倍以上という驚異的な高分解能・画像高輝度化された画像が得られた。
【0082】
[実験9]
以下の実験7、実験9及び実験10は、一連の実験であり、鶏の手羽を用いて作動画像のマトリックス数が与える影響を調べる目的でなされたものである。これらの実験は、同じく作動画像のマトリックス数の影響を調べた実験4及び実験5の結果が、撮影対象や撮影方式などの特殊な事情の下で起きたものでなく、あらゆる画像分析で起きることを確かめることを目的とする。
【0083】
実験9及び実験10は、実験6~実験8と同様の試料を使い、同様の撮影方式及び撮影条件で行われた。
実験9は、画素数変換(画素補間)の効果を調べるための実験である。図5Aは生物試料を用いた実験9の説明図であり、実験7より少ないエンコード画像(32×32)から構築した32×32→256×256DNP創生画像の作成工程を説明している。
比較対照は、すべての画像が256×256のマトリックス数の実験7が選ばれた。
[画像C’]のPD画像は、実験7と同じ256×256のマトリックス数の画像を使用した。[画像A’’]と[画像B’’]は、新たに撮影された画像であり、マトリックス数を32×32とした以外は、それぞれ[画像A’]と[画像B’]と同じ撮影方式で撮影された画像である。
【0084】
マトリックス数32×32の[画像A’’]と[画像B’’]は、実験7と同様に、両画像の画像画素情報に対して減法(subtraction)演算され、DNP画像と呼ばれるマトリックス数32×32の減法画像(図5A(d))が得られた。
減法画像であるDNP画像は、[画像C’]のPD基礎画像とマトリックス数が異なる。両画像のマトリックス数を一致させるため、32×32の減法画像(DNP画像)は、線型補間法を用いた画素数変換(画素補間)により、32×32→256×256のマトリックス数の画像(図5A(e))が取得された。発明者は、この32×32→256×256DNP画像を作動画像として用い、256×256のPD基礎画像画素情報([画像C’]図5A(a))に対して、アダマール積演算を行った。その結果、DNP創生画像画素情報(図5A(f))である32×32→256×256CI created-DNP が得られた。当該創生画像は、図5B-1(b)に示されている。
また、当該創生画像を得るための数式は、図5Aに示したとおりである。
比較対照となる図5B―1(a)の256×256CI created-DNP は、実験7で得られたものである。
両者を対比すると、図5B-1(b)の32×32→256×256CI created-DNP は、比較対照である図5B―1(a)の256×256CI created-DNP よりはるかに視認性が高い画像であった。
【0085】
この結果は、これまで得られた結果(実験4と実験5の結果)と同じであり、この結果が特殊な状況下で起きた結果ではないことを裏付けている。
なお、実験4と実験5と同様に、実験7及び実験9の評価は、ROIすなわち試料(2mMのCmp封入試料管)の部分がはっきりと見えているか否かで評価される。鶏の手羽が良く見えるか否かは本実験の評価と無関係である。
【0086】
なお、画素補間を行わない実験7の創生画像が、画素補間を行った実験9の創生画像より劣ることを意味するものではない。
撮影方式によっては、画素補間を行わなくとも分析が十分行える創生画像を得ることができる場合もある。画素補間により、分析対象が影響を受けるなどのことがある場合は、画素補間を行わない創生画像を用いて、分析することが好ましい。
【0087】
[実験10]
実験10は、図4Aで示した256×256のマトリックス数の[画像A’]、[画像B’]及び[画像C’]使用した実験8を比較対照とした実験である。
実験8で得られた創生画像画素情報は、256×256CI created-DNP・T1 で表される。
実験10により、図5Aで示した256×256の[画像A’’]及び[画像B’’]と256×256の[画像C’]を用いて、256×256CIcreated-DNP・T1で表される創生画像画素情報(図5B―2(c))が構築された。
使用した数式は図5B―2(c)に示されている。
実験10で得られたDNP・T1創生画像は、試料(2mMのCmp封入試料管)の部分がきわめて鮮明に判別できる画像であった。
【0088】
図5Cは、実験7(図5B-1(a))、実験9(図5B-1(b))、実験8(図4A(c))及び実験10(図5B-2(c))の結果を順に、信号強度(SI)と信号雑音比(SNR)で比較した表である。信号強度(SI)と信号雑音比(SNR)の数値解析は、実験6と同様の方法を用いた。
図5Cの表は、エンコード数を1/8に減らした32×32の作動画像を用いた創生画像(DNP創生画像)でも、256×256の作動画像を用いた創生画像(DNP創生画像)と同程度の信号強度及び信号雑音比が得られていることを示している。
実験10で示した本発明のDNP・T1創生画像を従来法のDNP画像と比較すると、その信号強度は70万倍程度に、信号雑音比は百倍程度に増加し、本発明の効果が裏付けられた。
【0089】
(マトリックス数)
なお、作動画像の最適なマトリックス数は、撮影方式や分析影目的などに応じて異なることは言うまでもない。撮影方式や分析目的などにより、作動画像の最適なマトリックス数は、16×16が適切である場合や、128×128が適切である場合など多様である。マトリックス数を少なくすることで必ず信号強度(SI)や信号雑音比(SNR)が良好になるとは限らないこと、そして、分析対象物(検体)により最適なマトリックス数があることが分かった。
したがって、エンコード数を低減する本発明を実際に実施する場合は、予備撮影を行い、対象により最適なマトリックス数を求めておくことが好ましいことが判明した。
【0090】
(本発明の応用)
従来からMRIにおいては、信号強度が低い試料の撮影はエンコード数を減らして画素面積を大きくすることが行われている。高感度化には積算回数を増やす方法もあるが、MRI撮像時間が積算回数に応じて長くなることが問題となっている。たとえば、従来技術で撮影された化学シフト画像や融解DNPを利用した超偏極代謝画像法は、代謝を調べる為に使われているが、化学シフト情報を取得するため画素サイズを大きくして撮影せざるを得なかった。画素サイズを大きくすれば必然的に画素数(マトリックス数)が小さくなり、空間分解能が低くなる。
少ないエンコード数の画像を鮮明にする方法として、圧縮センシング法やパッチ法、ベイズ法などのアルゴリズムが提出されているが、複雑な計算過程が必要となるなど問題が多い。
本明細書で示した数々の実験は、たとえ画素数が少ない作動画像でも、作動画像と撮影方式の異なる高分解能の基礎画像を別途用意し、アダマール積演算することで、高輝度かつ高分解能の創生画像が構築できることを示している。
【0091】
さらに、作動画像は目的に応じ撮影方式の異なる画像を何枚でも使用できる。
たとえば、物質Aの分布を画像分析したい場合を想定する。
撮影方式αは、物質Aの検出感度が高く濃度も分かる画像が撮影できるが、物質Aの類似物質A’やA’’も検出してしまう欠点がある。
撮影方式βは、物質Aの類似物質A’やA’’は全く検出しないが、物質Aの検出感度は小さいという欠点がある。
本発明は、撮影方式αのα作動画像と撮影方式βのβ作動画像という2枚の作動画像を用いることで、互いの欠点を補い、きわめて良好な創生画像を構築することができる。
【0092】
また、適切な基礎画像が無い場合、撮影者(分析者)は、撮影方式の異なる複数の画像をアダマール積演算することで、特定の物質に対する濃度依存性のない基礎画像を創生することもできる。
【0093】
さらに、MRIなどの磁気共鳴撮影装置は、一つの画像の撮影に時間がかかるため、動画撮影が難しいとされていた。たとえば、医療の技術分野では、心臓の動画撮影が求められている。そこで、パラレルイメージングやSensitivity encoding (SENSE)などと呼ばれる手法(これまでの手法)が開発されてきた。これまでの手法は、位相エンコードを飛ばし飛ばしに撮影することで撮影速度を向上しようとする手法である。位相エンコードが飛ばされるためエイリアシングが生じるが、これを複数の受信コイル(電磁波送受信部23)を使うことで解決しようとする手法であった。
【0094】
ここで発明者は、本発明を適用することで、複数の受信コイル(電磁波送受信部23)を使う必要なく動画を撮影する一例を示す。
実施例の磁気共鳴画像撮影装置(分析システム)1は、エンコード数を減らすことで、心臓を高速撮影することが可能である。そして、撮影者(分析者)は、別の断層撮影方式(MRIでなくてもよい)を用意し、同じ患者の心臓に対して、心臓の鼓動フェーズごとに高分解能で高輝度の画像を撮影し、これを基礎画像とすることができる。
【0095】
撮影者(分析者)は、磁気共鳴画像撮影装置(分析システム)1で撮影された多数の画像から、基礎画像となる鼓動フェーズと合致する画像を選び出す。そして、撮影者(分析者)は、本発明の分析システム1を使い、心臓疾患の検出に適した撮影方式で作動画像を撮影する。作動画像は、マトリックス数を減らすことが可能であり、高速撮影できるため、鼓動フェーズごとに撮影することができる。選ばれたマトリックス数の少ない画像は、画素を補間し基礎画像のマトリックス数と一致させることで、作動画像が取得される。この場合、分析対象は、心臓の画像全体である。
撮影者(分析者)は、このように作成された作動画像と基礎画像を使うことで、心臓の特定のフェーズに対応する創生画像を得ることが可能となる。このような創生画像を心臓鼓動の全てのフェーズにわたって作れば、動画となる。
動画作成は、本発明の分析システム1が自動的に行うようにしてもよいし、撮影者(分析者)が行ってもよいことは言うまでもない。
【0096】
(異なる撮影方式)
また、核スピン化学シフトを対象とした画像の取得において、高輝度・高分解能の基礎画像画素情報は、対象とする特定の核スピンの核磁化の画像を基に作られていてもよい。たとえば、基礎画像画素情報は、核オーバーハウザー効果、及び/又は、スピンデカップリング、脂肪信号抑制法、緩和現象を含む現象の1つ又は複数を活用して取得されてもよい。
【0097】
また、前述の実験では、MRIを使い縦緩和現象に注目したが、横緩和作動画像や、磁気感受性作動画像、スピン拡散作動画像、灌流作動画像などの作動画像から、夫々の現象に関する高輝度の創生画像を得ることができる。
本発明の分析システム1は、PD強調画像、T1強調画像、T2強調画像、拡散強調画像、灌流強調画像、化学シフト画像、DNP画像、T2*強調画像(T2 star weighted image)、脳機能画像(functional brain image)、磁化率強調画像(susceptibility-weighted image)、位相画像(phase image)など様々な画像を作動画像や基礎画像とすることができる。さらに、本発明は、脂肪など特定の組織の信号を抑制する目的や化学シフト画像のピーク選択をする目的で使用するDixson法などを併用して使うこともできる。
本発明は、また、水素に限らず、13Cなど様々な核スピン画像の分析に適用可能である。
【0098】
基礎画像と作動画像は、1枚のカラー画像を基礎画像とし、当該カラー画像をスペクトル分解し、特定のスペクトルの成分だけを有する画像を得て、この画像を作動画像としてもよい。本発明でいう「異なる撮影方式」は、一枚の画像から所定の成分を抽出することも含む概念である。
【0099】
(画像のマトリックス数の低減手段)
発明者は、撮影の段階でマトリックス数を減らした画像を取得し、これを作動画像とする実施例を示してきた。
発明者は、16×16で撮影されたDNP画像に代えて、128×128や256×256で取得された画像のマトリックス数(画素数)の画像をソフトウエアにより16×16に減らして、実験5のように再びする実験を繰り返した。また、MIR以外の撮影方式で撮影された画像でも、実験5と同様な実験を繰り返した。
このシミュレーション実験データは示さないが、実験の結果は、実験5と同様の結果を得ることができた。
シミュレーション実験の結果は、本発明があらゆる撮影手段(X線、超音波、PETなど)の画像でも普遍的に成立することを示した。しかも、基礎画像と作動画像が、X線とMRIなど異なったモダリティーの画像であっても、成立することが分かった。
【0100】
(画像撮影部)
本発明の分析システム1は、画像撮影部2を備えていてもよい。分析システム1が画像撮影部2を備えていると、撮影条件(マトリックス数の大小など)を変えた多数の画像を撮影することができるため、創生画像に最適な作動画像や基礎画像を選ぶことができる。
【0101】
(自動化)
本発明の分析システム1は、最適な創生画像となる作動画像や基礎画像の選択を自動化する制御部3を有することができる。さらに、本発明の分析システム1は、画像撮影部2の撮影の制御を自動化することができる。
本発明の分析システム1は、この他、様々な工程を自動化することができる。
【0102】
(画素数変換による画素数の低減)
前述したように、作動画像画素情報は、基礎画像画素情報よりマトリックス数が少ない場合に、本発明の効果が高まるケースがあることが判明している。そこで、基礎画像画素情報と同じマトリックス数で撮影された作動画像画素情報のマトリックス数を、画素数変換により一旦低減させる実験を行った。マトリックス数が低減された作動画像画素情報は、再び基礎画像画素情報のマトリックス数と同じになるように画素数が補間された。驚くべきことに、このような工程を用いて作成された創生画像画素情報は、同じマトリックス数で撮影された画像を用いた創生画像画素情報より、分析対象領域が明瞭になり、分析しやすいものであった。本発明は、このような使い方も包含する。
【0103】
(3次元画像)
一般的な3次元画像は、2次元画像の積層、或いは3次元フーリエ変換により作られる。本発明は、実施例のような2次元画像のみならず、3次元画像に拡張することも可能である。さらに、本発明は、3次元アダマール積により、画素をボクセルとした、3次元画像画素情報に適用することを含む。
【0104】
(画像の一部への本発明の適用)
アダマール積を行うに際して、前述した実施例や実験では、基礎画像と作動画像のマトリックス数を同じにする態様を説明してきた。基礎画像と作動画像は共に同じ分析対象領域有していればよい。たとえば、基礎画像の撮影領域が広く、全体の一部にのみ分析対象領域が撮影されているとする。他方、作動画像は、分析対象領域に絞った撮影が行われ、分析対象領域しか撮影されていないとする。
このような場合、基礎画像の分析対象領域の部分に対してのみ、本発明が適用される。基礎画像と作動画像は、分析対象領域を含むように仮想的に画像が切り出され、両画像のマトリックス数が一致するように画素数変換がなされ、位置合わせされた上で、アダマール積を含む演算が行われる。
このとき創生された画像は、基礎画像の分析対象領域以外の部分は基礎画像画素情報のままとなり、分析対象領域のみが創生画像画素情報に置き換えられた画像となる。
【0105】
(撮影済み画像の活用)
本発明は、過去に撮影した撮影済み画像画素情報に対しても適用できる。たとえば、がんと診断される前の(過去の)画像画素情報を活用して、がん組織が、がんと診断される前にからどのように大きくなり現在に至ったのか時間を遡って追跡することができる。DICOMデータを活用することは、本発明の好ましい態様である。このように、本発明の分析システム1は、画像撮影部2を有さず、必要な作動画像画素情報と基礎画像画素画像をネットワーク上からダウンロードして使うものとしてもよい。
【0106】
(分析システム)
前述したように本発明の分析システム1は、画像撮影部2を備えていても、備えていなくてもよい。さらに、本発明の分析システム1は、ネットワーク上に存在していてもよいし、プログラムのモジュールとして分散配置されていてもよい。本発明の分析システム1が画像撮影部2を備えている場合、前記分析システム1は、MRIなどの画像撮影部2と一体化していてもよいし、前記分析システム1は画像撮影部2にコネクターで接続されるものであってもよい。また、本発明の分析システム1は、画像撮影部2を有さない単なる画像の分析システムである場合も含む。この場合、分析システム1は画像取り込み装置が設けられ、取り込まれた画像から創生画像が構築されることとなる。
【0107】
これまで説明してきた数々の実験は、信号強度(SI)と信号雑音比(SNR)が悪すぎて分析困難(不可能)であったものを可能にできることを示しており、この点だけでも本発明の技術貢献は大きい。
また、読影医師のように大量の画像を分析することを要求される撮影者(分析者)は、読影しやすい本発明の創生画像を用いることにより、読影時間が短縮化できる。しかも、創生画像は鮮明なため、読影医師の誤読を減らすことに貢献できる。
【0108】
以上、出願人は本技術に係る実施形態例、実験を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、前述の各実施形態例、実験は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 磁気共鳴画像撮影装置(分析システム)
2 画像撮影部
21 磁場発生部
211 静磁場発生部
212 傾斜磁場発生部
23 電磁波送受信部
24 寝台
3 制御部
31 撮影制御部
312 撮影方式選択部
32 画像構成部
321 画像変換部
322 画像演算部
323 記憶部
4 データベース
41 基礎画像撮影条件データベース
42 作動画像撮影条件データベース
5 ディスプレイ
【要約】
低輝度および/または分解能が低い画像を活用できるようにする。
画像構成部があり、前記画像構成部は、記憶部と画像演算部を備えており、前記記憶部は、少なくとも基礎画像画素情報と作動画像画素情報を記憶するものであり、前記基礎画像画素情報と前記作動画像画素情報は、同一の試料であって、同一の分析対象領域を含み、異なる撮影方式で撮影した、所定の数の画素を含むものであり、前記作動画像画素情報は、分析情報を含み、輝度および/または分解能が前記基礎画像画素情報より低い画像画素情報であり、前記画像演算部は、少なくとも1以上の前記基礎画像画素情報と少なくとも1以上の前記作動画像画素情報に対して、アダマール積を含む演算を行うことで新たな創生画像画素情報を構築する、分析システム。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B-1】
図5B-2】
図5C