(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】電気化学キャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 11/52 20130101AFI20230619BHJP
H01G 11/30 20130101ALI20230619BHJP
【FI】
H01G11/52
H01G11/30
(21)【出願番号】P 2018220248
(22)【出願日】2018-11-26
【審査請求日】2021-08-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小川 賢
(72)【発明者】
【氏名】原田 弘子
(72)【発明者】
【氏名】高澤 康行
【審査官】西間木 祐紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-066681(JP,A)
【文献】特開2016-076373(JP,A)
【文献】特開昭58-018871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/52
H01G 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、亜鉛負極、及び、セパレータを含んで構成される電気化学キャパシタであって、
該セパレータは、透水性試験で測定した透水量が0.01g以下の疎水性粒子及び該透水量が0.01gを超える親水性粒子を含み、更に、ガラス転移温度が60℃未満の結着成分を含み、
該セパレータは、更に、ポリオレフィン系ポリマー及び/又はポリビニルアルコール系ポリマーを含む不織布を有し、
セパレータ中、疎水性粒子と親水性粒子と結着剤の合計質量割合が30質量%以上であり、該疎水性粒子と該親水性粒子との体積割合は、10:90~99:1であり、該結着成分の含有量は、疎水性粒子と親水性粒子との合計質量割合に対し、1~20質量%であり、
該透水性試験は、室温、常圧下で、内径1.5cmの円筒形容器の下部に、フッ素処理済ポリプロピレン製不織布を設置し、その下側に、水吸収体としてαセルロースからなる、3cm×3cm、厚み1mm、重量400mgのろ紙を設置し、円筒形容器の上部付近から、試料粉体1gを静かに投入し、その後、水2gを静かに投入し、1時間経過後にろ紙に吸収された水分量を計測し、1時間あたりの透水量をろ紙の重量変化から算出して計測するものであることを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項2】
前記疎水性粒子は、ポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学キャパシタ。
【請求項3】
前記親水性粒子は、無機化合物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気化学キャパシタ。
【請求項4】
前記疎水性粒子と前記親水性粒子との体積割合は、20:80~80:20であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電気化学キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学キャパシタに関する。より詳しくは、ハイブリッドキャパシタとして好適に用いられる電気化学キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学キャパシタ(例えば、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタに代表されるハイブリッドキャパシタ等)は、一般に、二次電池に比べて容量が小さいものの、出力性能に優れるとともに耐久性が高いため、近年、ハイブリッド自動車等の補助電源や回生電力貯蔵装置、二次電池の代替デバイス、太陽光発電のエネルギーバッファに用いられる等、非常に注目されている。特に、比較的大容量であるとともに電極間に起電力が生じるハイブリッドキャパシタの研究開発が急速に進んでいる。
【0003】
例えば、ハイブリッドキャパシタとして、活性炭素布電極を正極とし、亜鉛電極を負極とし、電解質として酸化亜鉛を含む水酸化アルカリ水溶液とからなる電気化学キャパシタが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
なお、亜鉛電極は、電解液に水を使えるため安全性に優れ、出力できる電圧と重量当たりの電力量が高く、しかも安価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の電気化学キャパシタは、亜鉛負極を含んで構成される二次電池と同様に、長期間充放電を繰り返すと、亜鉛負極の活物質層等の近傍で亜鉛成分の溶解析出反応が起こる過程で、デンドライトという負極活物質の樹状結晶が発生し、このデンドライトによる電極間の短絡に起因して電気化学キャパシタの短寿命化が起こるという課題があった。亜鉛負極を含んで構成される電気化学キャパシタを長寿命のものとするために、デンドライトによる電極間の短絡を充分に抑制するための工夫の余地があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、亜鉛負極を含んで構成される電気化学キャパシタにおいて、デンドライトによる電極間の短絡を充分に抑制することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述したように、亜鉛負極を含んで構成される電気化学キャパシタにおいて、デンドライトによる電極間の短絡を充分に抑制することができる方法について種々検討し、電気化学キャパシタが、正極、亜鉛負極、及び、セパレータを含んで構成され、該セパレータが、疎水性粒子及び親水性粒子を含むものとすると、該セパレータは、そのイオン伝導性を充分なものとしながら、デンドライト成長を抑制する性能が顕著に優れたものとなり、デンドライトの貫通を充分に防止できることを見出した。そして、本発明者らは、当該電気化学キャパシタにおいて、デンドライトによる電極間の短絡を充分に抑制できることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、正極、亜鉛負極、及び、セパレータを含んで構成される電気化学キャパシタであって、該セパレータは、疎水性粒子及び親水性粒子を含む電気化学キャパシタである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上述の構成よりなり、亜鉛負極を含んで構成される電気化学キャパシタにおいて、デンドライトによる電極間の短絡を充分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0012】
<本発明の電気化学キャパシタ>
本発明の電気化学キャパシタは、正極、亜鉛負極、及び、セパレータを含んで構成される電気化学キャパシタであって、該セパレータは、疎水性粒子及び親水性粒子を含む。
【0013】
上記セパレータは、本発明の電気化学キャパシタの使用時において、親水性粒子表面がイオン伝導パスとなり、セパレータのイオン伝導性を充分なものとしながら、疎水性粒子の撥水性により、セパレータ中の実質的な電解液量が制限されることになり、セパレータ中の遊離の亜鉛酸イオン濃度が低いものとなるため、亜鉛成分の溶解析出反応が起こる過程で生じるデンドライトの成長を充分に抑制することができる。なお、疎水性粒子は、比表面積が小さな繊維状ではなく粒子形状である点で、上記の撥水性を顕著に発揮できる。親水性粒子も同様に、粒子形状であることでセパレータのイオン伝導性を非常に優れたものとすることができる。
以下では、本発明の電気化学キャパシタを構成するセパレータ、正極、亜鉛負極、及び、電解質について順に説明する。
【0014】
(セパレータ)
上記セパレータは、正極と亜鉛負極とを隔離し、正極と亜鉛負極との間のイオン伝導性を確保する部材であるが、上述したように疎水性粒子及び親水性粒子を含むものであればよい。
【0015】
〔疎水性粒子〕
上記セパレータは、疎水性粒子を含む。本明細書中、疎水性粒子とは、下記透水性試験により算出される透水量が0.01g以下である粒子をいう。疎水性粒子は、該透水量が0.01g以下である限り特に限定されず、例えば、粒子全体が疎水性材料で構成された粒子であってもよいし、表面が疎水性材料で被覆された粒子であってもよい。
上記疎水性粒子における透水量は、0.001g以下であることが好ましい。
なお、上記疎水性粒子における透水量の下限値は、0gである。
疎水性粒子は、独立した粒子形状を保つことが好ましい。
【0016】
<透水性試験方法>
図1に示されるように、室温、常圧下で、内径1.5cmの円筒形容器2の下部に、親水処理(フッ素処理)済ポリプロピレン製不織布4を設置し、更に、水吸収体としてαセルロースからなる、3cm×3cm、厚み1mm、重量400mgのろ紙3を設置し、円筒形容器2の上部付近から試料粉体1(1g)を静かに投入する。その後、水5(2g)を円筒形容器2の上部付近から静かに投入し、1時間経過後にろ紙3に吸収された水分量を計測し、1時間あたりの透水量を算出する。水分量は、ろ紙3の重量変化から計測することができる。なお、親水処理済ポリプロピレン製不織布4は、ろ紙3に試料粉体1が付着して重量誤差を生じないように、ろ紙3と試料粉体1との間に挿入したものである。また、試料がディスパージョンのような形態の場合は、円筒形容器2の下部に蓋をしてディスパージョンの固形分重量が1gになるように投入し、乾燥後に下部の蓋を外し親水処理済ポリプロピレン製不織布4及びろ紙3をセットした後、上述したように水5を投入して透水性試験を実施する。
なお、各種粒子について透水性試験を実施した結果を実施例に示す。
【0017】
なお、疎水性粒子は、その表面のガラス転移温度が60℃以上であることが好ましく、その全体のガラス転移温度が60℃以上であることがより好ましい。本明細書中、ガラス転移温度は、ポリマー等の材料をガラス板に塗布し、120℃で1時間乾燥して得られた乾燥体について、示差走査熱量計(装置名:熱分析装置DSC3100S、BRVKER)を用いて測定されるものである。
【0018】
以下では、まず、主として粒子全体が疎水性材料で構成された粒子について説明するが、表面が疎水性材料で被覆された粒子の疎水性材料部分についても同様のことが言える。
上記疎水性粒子は、ポリマーを含むことが好ましい。該ポリマーとしては、種々の疎水性材料を好適に用いることができ、熱可塑性、熱硬化性のいずれであってもよく、例えば、含ハロゲン原子エチレン系ポリマー、共役ジエン系ポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトン等が挙げられるが、中でも、含ハロゲン原子エチレン系ポリマー、共役ジエン系ポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、及び、ポリスルホン系ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0019】
上記含ハロゲン原子エチレン系ポリマーは、ポリエチレンの水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子に置換された構造のものであり、中でもポリエチレンの水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換された構造の含フッ素原子エチレン系ポリマーであることが好ましく、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等が好適なものとして挙げられる。
【0020】
上記共役ジエン系ポリマーは、共役ジエン系モノマー由来のモノマー単位を有するものである。
上記共役ジエン系ポリマーとしては、スチレン-ブタジエン系ポリマー、カルボキシ変性スチレン-ブタジエン系ポリマー、ポリブタジエン系ポリマー、カルボキシ変性ポリブタジエン系ポリマー、ポリイソプレン系ポリマー、カルボキシ変性ポリイソプレン系ポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン系ポリマー、カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエン系ポリマー等の1種又は2種以上を好適に用いることができる。これらの中でも、スチレン-ブタジエン系ポリマー、カルボキシ変性スチレン-ブタジエン系ポリマーが好ましく、特にカルボキシ変性スチレン-ブタジエン系ポリマーが好ましい。
【0021】
上記共役ジエン系ポリマーは、脂肪族共役ジエン系モノマー由来のモノマー単位、芳香族ビニルモノマー由来のモノマー単位、カルボキシ基及び/又はその塩であるカルボキシレート基を有する不飽和モノマー由来のモノマー単位以外の、その他の不飽和モノマー由来のモノマー単位を有していてもよい。
上記共役ジエン系ポリマー100質量%中、その他の不飽和モノマー由来のモノマー単位の質量割合は、30質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。
【0022】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー由来のモノマー単位を有するものであればよいが、代表的なものとしては(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来のモノマー単位を主体とする(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーが挙げられる。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来のモノマー単位を主体とするとは、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー100質量%中、(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来のモノマー単位の含有量が50質量%以上であることを言う。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル等が挙げられる。
【0024】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来のモノマー単位以外に、カルボキシ基及び/又はその塩であるカルボキシレート基を有する不飽和モノマー由来のモノマー単位や、その他の不飽和モノマー由来のモノマー単位を有していてもよい。
上記(メタ)アクリル系ポリマー100質量%中、その他の不飽和モノマー由来のモノマー単位の質量割合は、30質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。
【0025】
上記ポリオレフィン系ポリマーは、オレフィン由来のモノマー単位を有するポリマーを言い、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、環状ポリオレフィン系ポリマー等が挙げられる。
上記ポリスルホン系ポリマーは、スルホニル基を繰り返し単位に有するポリマーを言い、例えばポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニルスルホン(PSSU)が挙げられる。
上記ポリエーテルケトンは、エーテル結合及びケトン結合を有するポリマーであり、例えばポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
【0026】
中でも、上記ポリマーとしては、含ハロゲン原子エチレン系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトン等が好ましく、含ハロゲン原子エチレン系ポリマー及び/又はポリスルホン系ポリマーがより好ましい。
【0027】
上記ポリマーは、ポリマーが含む構成単位を形成するモノマー成分をラジカル発生剤の存在下、共重合し、必要に応じてこれをグラフト変性等することにより製造することができる。
モノマー成分の重合方法としては特に限定されず、例えば、水溶液重合法、乳化重合法、逆相懸濁重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等の方法が挙げられる。
【0028】
上記疎水性粒子の形状としては、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、鱗片状、多面体状、ロッド状、曲面含有状等が挙げられる。
上記疎水性粒子は、平均粒子径が50nm以上であることが好ましい。該平均粒子径は、100nm以上であることがより好ましく、200nm以上であることが更に好ましい。また、該平均粒子径は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
平均粒子径は、体積基準の粒度分布における平均粒子径であり、疎水性粒子水分散液約10mLをガラスセルに採取し、これを動的光散乱法による粒度分布測定器(パーティクルサイジングシステムズ〔Particle Sizing Systems〕社製、商品名:NICOMP Model 380)を用いて測定されるものである。
【0029】
上記疎水性粒子は、アスペクト比(縦/横)が1以上であればよい。また、該アスペクト比(縦/横)は、8以下であることが好ましい。該アスペクト比(縦/横)は、より好ましくは5以下であり、更に好ましくは2以下であり、特に好ましくは1.5以下である。
上記アスペクト比(縦/横)は、SEMにより観察した粒子の形状から求めることができる。例えば、上記粒子が直方体状の場合は、最も長い辺を縦、2番目に長い辺を横として、縦の長さを横の長さで除することにより求めることができる。その他の形状の場合には、アスペクト比が最も大きくなるように、ある一つの部分を底面に置き、それをアスペクト比が最も大きくなるような方向から投影した時にできる二次元の形において、ある一点から最も離れた一点の長さを測定し、その最も長いものを縦、縦の中心点を通る直線のうち最も短いものを横として、縦の長さを横の長さで除することにより求めることができる。
なお、アスペクト比(縦/横)が上述のような範囲の粒子は、例えば、そのようなアスペクト比を有する粒子を選択する方法や、粒子を製造する段階で調製条件を最適化し、該粒子を選択的に得る方法等により得ることが可能である。
【0030】
〔親水性粒子〕
上記セパレータは、親水性粒子を含む。本明細書中、親水性粒子とは、上記透水性試験により算出される透水量が0.01gを超える粒子であり、通常、ガラス転移温度を有さない無機化合物粒子である。親水性粒子は、該透水量が0.01gを超える限り特に限定されず、例えば、粒子全体が親水性材料で構成された粒子であってもよいし、表面が親水性材料で被覆された粒子であってもよい。
上記親水性粒子における透水量は、0.1g以上であることが好ましい。
なお、上記親水性粒子における透水量の上限値は、2gである。
【0031】
以下では、まず、主として粒子全体が親水性材料で構成された粒子について説明するが、表面が親水性材料で被覆された粒子の親水性材料部分についても同様のことが言える。
上記親水性粒子は、無機化合物を含むことが好ましい。該無機化合物としては、種々の親水性材料を好適に用いることができるが、例えば、酸化物、水酸化物、層状複水酸化物、及び、リン酸化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、本明細書中、水酸化物は、ヒドロキシ基を有する化合物であって、層状複水酸化物以外のものを言う。
【0032】
上記酸化物としては、例えば、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタノイド、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ルテニウム、酸化ニッケル、酸化パラジウム、酸化銅、酸化カドミウム、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化タリウム、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化鉛、酸化リン、酸化ビスマス等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。中でも、成膜時の分散液中やアルカリ性条件下の電気化学キャパシタ内であっても安定なものが好ましく、例えば酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムが好ましく、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムがより好ましい。なお、酸化ジルコニウムは、例えば、イットリウム、スカンジウム、イッテルビウム等の元素を固溶化したものであってもよく、酸素欠陥を持つものであってもよい。
【0033】
上記水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化スカンジウム、水酸化イットリウム、水酸化ランタノイド、水酸化チタン、水酸化ジルコニウム、水酸化ニオブ、水酸化ルテニウム、水酸化ニッケル、水酸化パラジウム、水酸化銅、水酸化カドミウム、ホウ酸、水酸化アルミニウム、水酸化ガリウム、水酸化インジウム、水酸化タリウム、ケイ酸、水酸化ゲルマニウム、水酸化スズ、水酸化鉛、リン酸、水酸化ビスマス等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。中でも、アルカリ性条件下での溶解度が低いものが好ましく、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化チタン、水酸化ジルコニウムが好ましく、水酸化マグネシウムがより好ましい。
【0034】
上記層状複水酸化物は、下記一般式:
[M1
1-xM2
x(OH)2](An-)x/n・mH2O
(M1は、Mg、Fe、Zn、Ca、Li、Ni、Co、Cu、Mnのいずれかである二価金属イオンを表す。M2は、Al、Fe、Mn、Co、Cr、Inのいずれかである三価金属イオンを表す。An-は、Cl-、NO3
-、CO3
2-、COO-等の1価以上、3価以下のアニオンを表す。中でも、An-は、2価以下のアニオンを表すことが好ましい。mは0以上の数であり、nは1以上、3以下の数である。xは0.20以上、0.40以下の数である。)に代表される化合物であり、このような層状複水酸化物としては、例えば、ハイドロタルサイト、マナッセイト、モツコレアイト、スティッヒタイト、ショグレナイト、バーバートナイト、パイロアウライト、イオマイト、クロロマガルミナイト、ハイドロカルマイト、グリーン ラスト1、ベルチェリン、タコバイト、リーベサイト、ホネサイト、イヤードライト、メイキセネライト等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。中でも、工業的に利用が容易である点で、前記一般式におけるM1がMg、M2がAlであるハイドロタルサイトが好ましい。
なお、これら層状水酸化物は、例えば、150℃以上、900℃以下で焼成することにより脱水した化合物や層間内の陰イオンを分解させた化合物、層間内の陰イオンを水酸化物イオン等に交換した化合物であってもよい。
上記層状複水酸化物には、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、シラノール基等の官能基を持つ化合物が配位していてもよい。また、上記層状複水酸化物は層間内に有機物を有していてもよい。
【0035】
上記リン酸化合物としては、例えばヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)、ヒドロキシアパタイトのカルシウムイオンの一部又は全部をマグネシウムに置換したマグネシウムヒドロキシアパタイト、ストロンチウムに置換したストロンチウムヒドロキシアパタイト、バリウムに置換したバリウムヒドロキシアパタイト等が挙げられる。中でも、ヒドロキシアパタイト、マグネシウムヒドロキシアパタイトが好ましい。
【0036】
上記無機化合物は、中でも、マグネシウム含有化合物であることが好ましい。また、該無機化合物としては、水酸化物、層状複水酸化物、リン酸化合物が好ましく、中でも、層状複水酸化物及び/又は水酸化物であることがより好ましい。上記無機化合物は、セパレータの強度をより優れたものとする観点からは、水酸化物であることが更に好ましく、セパレータのイオン伝導性をより優れたものとする観点からは、層状複水酸化物であることが更に好ましい。
【0037】
上記親水性粒子の形状としては、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、鱗片状、多面体状、ロッド状、曲面含有状等が挙げられる。
上記親水性粒子は、平均粒子径が2μm以下であるものが好ましい。該平均粒子径は、より好ましくは1μm以下であり、更に好ましくは0.5μm以下である。また、該平均粒子径は、0.001μm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることが更に好ましい。
上記平均粒子径とは、体積基準の粒度分布における平均粒子径であり、親水性粒子を分散媒(0.2%ヘキサメタりん酸ナトリウム含有イオン交換水)で希釈し、得られた希釈液約10mLをガラスセルに採取し、これを動的光散乱法による粒度分布測定器(パーティクルサイジングシステムズ〔Particle Sizing Systems〕社製、商品名:NICOMP Model 380)を用いて測定されるものである。
【0038】
なお、体積平均粒子径が上記のような範囲の粒子は、例えば、粒子をボールミル等により粉砕し、得られた粗粒子を分散剤に分散させて所望の粒子径にした後に乾固する方法や、該粗粒子をふるい等にかけて粒子径を選別する方法のほか、粒子を製造する段階で調製条件を最適化し、所望の粒子径の(ナノ)粒子を得る方法等により製造することが可能である。
【0039】
上記親水性粒子は、アスペクト比(縦/横)が1以上であればよい。また、該アスペクト比(縦/横)は、8以下であることが好ましい。該アスペクト比(縦/横)は、より好ましくは5以下であり、更に好ましくは2以下であり、特に好ましくは1.5以下である。
上記アスペクト比(縦/横)の求め方は、上述した通りである。
また、アスペクト比(縦/横)が上述のような範囲の粒子は、上述した方法により得ることができる。
【0040】
上記疎水性粒子と上記親水性粒子との体積割合は、例えば、1:99~99:1とすることが好ましく、10:90~90:10とすることがより好ましく、15:85~85:15とすることが更に好ましく、20:80~80:20とすることが特に好ましい。これにより、イオン伝導性を充分なものとする効果と、デンドライトによる電極間の短絡を充分に抑制できる効果とをよりバランス良く発揮することができる。
【0041】
上記セパレータは、例えば、上述したように、疎水性粒子としてポリマー粒子を含み、親水性粒子として無機化合物粒子を含むアニオン伝導性膜であることが好ましい。
【0042】
本明細書中では、アニオン伝導性膜は、電気化学キャパシタの反応に関与する水酸化物イオン等のアニオンを透過する膜であって、ポリマー粒子と、無機化合物粒子を含むものを言う。上記アニオン伝導性膜は、後述する無機化合物粒子等の作用により、透過するアニオンの選択性を有する。なお、当該アニオンの選択性は、水酸化物イオン等のアニオンは透過しやすく、アニオンであってもイオン半径の大きな、活物質に由来する金属含有イオン(例えば、Zn(OH)4
2-)等の透過は充分に防止する。本明細書中、アニオン伝導性とは、水酸化物イオン等のイオン半径の小さなアニオンを充分に透過すること、ないし、当該アニオンの透過性能を意味する。金属含有イオン等のイオン半径の大きなアニオンは、より透過しにくいものであり、全く透過しなくても構わない。
【0043】
〔結着成分〕
上記セパレータは更に、結着成分を含んでいてもよい。結着成分は、通常、ガラス転移温度が60℃未満である成分をいい、粒子間を結着することで、セパレータの構造安定性に寄与できるものである。結着成分は、ガラス転移温度が50℃以下であることが好ましい。
また結着成分は、非粒子状であることが好ましい。
更に、結着成分は、周囲の他の成分(疎水性粒子、親水性粒子、多孔質支持体等)と結着していることが好ましい。
【0044】
上記結着成分は、ガラス転移温度が60℃未満である非結晶性のバインダーポリマーであることが好ましい。非結晶性であることにより、周囲の部材と結合を作りやすく、結着成分として好適に機能する。なお、バインダーポリマーは、繊維状であることが好ましい。
上記バインダーポリマーとしては、上述した疎水性粒子であるポリマー粒子を構成するポリマーと同様のものを使用できるが、中でも、共役ジエン系ポリマー、(メタ)アクリル系ポリマーが好ましく、共役ジエン系ポリマーがより好ましい。
【0045】
上記バインダーポリマーは、上述したように繊維状であることが好ましく、熱や圧力等により繊維化された状態になってもよい。ポリマーの繊維化により、セパレータの強度、アニオン伝導度等を好適に調節することができる。
【0046】
上記結着成分(好ましくは、バインダーポリマー)の含有量は、上記疎水性粒子と上記親水性粒子との合計質量割合に対し、1~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0047】
〔多孔質支持体〕
上記セパレータは、更に、ポリオレフィン系ポリマー等からなる多孔質支持体(多孔質基材)を有し、多孔質支持体に疎水性粒子、親水性粒子、及び、必要に応じて結着成分の混合物(分散液)が含浸した樹脂含浸層であってもよく、多孔質基材に該混合物を接触させ、必要に応じて混合物を乾燥させて得られる積層構造のものであってもよい。
【0048】
上記多孔質支持体は、特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、環状ポリオレフィン系ポリマー等のポリオレフィン系ポリマー;ビニロン等のポリビニルアルコール系ポリマー;脂肪族ポリアミド;芳香族ポリアミド;スチレン系ポリマー;ポリエステル系ポリマー;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ホリフェニルスルホン等のポリスルホン系ポリマー;ポリフェニレンサルファイド系ポリマー等の樹脂材料により構成された不織布、織布、微多孔質フィルム等が好適なものとして挙げられ、中でも、ポリオレフィン系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマーがより好ましい。
上記セパレータは、本発明に係る分散液を多孔質支持体に含浸させて得られる樹脂含浸層と多孔質支持体とが少なくとも部分的に一体化したものである。該セパレータでは、本発明に係る分散液の固形分が多孔質支持体中の空孔の少なくとも一部を埋めている。
【0049】
上記多孔質支持体の質量割合は、上記セパレータ100質量%中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。また、該質量割合は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。
【0050】
上記多孔質支持体の密度は、塗料含浸時の観点から、0.05g/cm3以上が好ましく、0.1g/cm3以上がより好ましい。また、該密度は、2.0g/cm3以下が好ましく、1.0g/cm3以下が更に好ましい。
【0051】
上記多孔質支持体の膜厚は、電気化学キャパシタ性能や強度を優れたものとしたり、含浸時に無機成分との分離を抑えたりする観点から、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。また、該膜厚は、5μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。
【0052】
〔その他の成分〕
上記セパレータは更に、従来公知の分散剤、増粘剤、導電性カーボン、導電性セラミックス等のその他の成分を含んでいてもよい。
上記セパレータにおけるその他の成分の含有割合は、セパレータの強度の観点からセパレータ100質量%中、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下である。
【0053】
上記セパレータは、平均膜厚が10μm~1mmであることが好ましい。10μm以上であると耐久性をより優れたものとすることができる。また、1mm以下であるとコスト面から有利となる上、イオンの透過の能力も充分に優れる。該平均膜厚は、20μm以上であることがより好ましい。また、該平均膜厚は、500μm以下であることがより好ましい。
上記平均膜厚は、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて任意の10点を測定した平均値である。
【0054】
上記セパレータは、ガス透過性であることが好ましい。
ガス透過性とは、透気度がガーレー値で10000秒以下であればよい。該ガーレー値は、9500秒以下であることが好ましい。
また上記ガーレー値は、500秒以上であることが好ましく、1000秒以上であることがより好ましい。
上記ガーレー値は、実施例に記載のガーレー法により測定されるものである。ガーレー値は、気体の通過しやすさを表す指標であり、値が大きいほど気体を通しにくい。
なお、上記ガーレー値は、セパレータが複数の層が積層された積層体である場合は、積層体について測定されたガーレー値である。
【0055】
上記セパレータは、空隙率が20体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましい。また、該空隙率は、90体積%以下であることが好ましく、80体積%以下であることがより好ましい。
上記空隙率は、セパレータの体積に対するセパレータの空隙の体積で表されるものであり、水銀ポロシメーターにより測定することができる。
【0056】
上記セパレータの作製方法の一例としては、先ず、親水性粒子と公知の分散剤と水とを混合し、分散装置を用いて親水性粒子の分散液を作製する。分散液の作製には、超音波やボールミル、ペイントシェーカー等の分散装置を用いることができる。該分散液に、同様に分散状態(ディスパージョン状態)の疎水成分と結着成分を混合する。この時の混合液の固形分濃度を例えば60質量%以下に調整することで、混合時に塗料にせん断応力がかからない粘度にすることが好ましい。混合には、例えば撹拌羽を用いて塗料を撹拌して混合することができる。撹拌には、その他、マグネチックスターラーや振動撹拌機等も用いることができる。
塗料を溜めた液相の中に、多孔質支持体(例えば、不織布)を導入し、充分に含浸させた後、引き上げながら乾燥させ、シート化する。
なお、上記セパレータは、上記混合液を剥離基材上に塗工した後、多孔質支持体に接触させ、膜を乾燥させたうえで剥離基材から剥離して得ることもできる。
【0057】
(正極)
本発明の電気化学キャパシタは、亜鉛負極を含んで構成されるものである。
上記正極の活物質としては、特に限定されず、電気化学キャパシタの正極活物質として用いられるいずれのものも用いることができるが、例えば、活性炭、多孔質金属酸化物、多孔質金属、導電性重合体を用いることが好ましく、中でも、活性炭が好ましい。言い換えれば、上記正極は、炭素極であることが好ましい。
正極は、結着剤や導電助剤、触媒、溶媒等を加えてスラリー状とし、これを基板に塗布、乾燥して得ることができる。また、プレス成形してペレットとすることもできる。結着剤や導電助剤、触媒については、後述する。
【0058】
(亜鉛負極)
本発明の電気化学キャパシタは、亜鉛負極を含んで構成されるものである。
上記亜鉛負極は、負極活物質として亜鉛単体又は亜鉛化合物を含むものを意味する。亜鉛化合物は、活物質として用いることができるものであればよく、例えば、酸化亜鉛(JIS K1410(2006年)に規定する1種/2種/3種)や、水酸化亜鉛・硫化亜鉛・テトラヒドロキシ亜鉛アルカリ金属塩・テトラヒドロキシ亜鉛アルカリ土類金属塩・亜鉛ハロゲン化合物・亜鉛カルボキシラート化合物・亜鉛合金・亜鉛固溶体・ホウ酸亜鉛・リン酸亜鉛・リン酸水素亜鉛・ケイ酸亜鉛・アルミン酸亜鉛・炭酸化合物・炭酸水素化合物・硝酸化合物・硫酸化合物等に代表される周期表の第1族~第17族に属する元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を有する亜鉛(合金)化合物、有機亜鉛化合物、亜鉛化合物塩等が挙げられる。これらの中でも、亜鉛単体及び/又は酸化亜鉛が好ましい。
【0059】
上記正極及び亜鉛負極は、必要に応じて、活物質層内に、上記活物質とともに結着剤、導電助剤、触媒等のその他の成分等を含んでいてもよい。
【0060】
上記結着剤としては種々の公知のポリマーを用いることができるが、熱可塑性、熱硬化性のいずれであってもよく、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のハロゲン原子含有ポリマー、ポリオレフィン等の炭化水素部位含有ポリマー、ポリスチレン等の芳香族基含有ポリマー;アルキレングリコール等のエーテル基含有ポリマー;ポリビニルアルコール等の水酸基含有ポリマー;ポリアミド、ポリアクリルアミド等のアミド結合含有ポリマー;ポリマレイミド等のイミド基含有ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸塩等のカルボン酸塩基含有ポリマー;スルホン酸塩部位含有ポリマー;第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩含有ポリマー;イオン交換性ポリマー;天然ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR)等の人工ゴム;ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース)、カルボキシメチルセルロース等の糖類;ポリエチレンイミン等のアミノ基含有ポリマー;ポリウレタン等が挙げられる。なお、上記結着剤は、1種でも2種以上でも使用することができる。
【0061】
上記導電助剤としては、特に制限されないが、例えば、導電性カーボン、導電性セラミックス、亜鉛・銅・真鍮・ニッケル・銀・ビスマス・インジウム・鉛・錫等の金属等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記触媒としては、特に制限されず、従来公知の触媒を使用できる。
【0062】
本発明に係る活物質層の平均厚みは、100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、500μm以上であることが更に好ましく、活物質の脱落等を抑制して大量の活物質を搭載したエネルギー密度の高い電気化学キャパシタを構成できる観点から、1mm以上であることが特に好ましい。該活物質層の平均厚みは、例えば10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることが好ましい。
上記活物質層の平均厚みは、マイクロメーターにより任意に5点を測定して算出することができる。
【0063】
上記正極及び亜鉛負極は、更に、集電体を含むことが好ましい。
上記集電体としては、(電解)銅箔、銅メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡銅、パンチング銅、真鍮等の銅合金、真鍮箔、真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡真鍮、パンチング真鍮、ニッケル箔、耐食性ニッケル、ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)、パンチングニッケル、金属亜鉛、耐食性金属亜鉛、亜鉛箔、亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)、(パンチング)鋼板、導電性を付与した不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等を添加した(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等によりメッキされた(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;銀;電気化学キャパシタに集電体や容器として使用される材料等が挙げられる。
【0064】
(電解質)
本発明の電気化学キャパシタに用いる電解質としては、固体電解質を使用してもよいが、電気化学キャパシタの電解液として通常用いられる電解液(より好適には、水系電解液)を好適に用いることができる。水系電解液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、硫酸亜鉛水溶液、硝酸亜鉛水溶液、リン酸亜鉛水溶液、酢酸亜鉛水溶液等が挙げられる。これらの中でも、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液といったアルカリ性電解質が好ましい。上記水系電解液における電解質は、1種でも2種以上でも使用することができる。水系電解液は、有機溶剤を含んでいてもよい。
【0065】
本発明の電気化学キャパシタは、電気化学反応を起こす亜鉛負極を含んで構成されるものであり、ハイブリッドキャパシタとも言う。中でも、本発明の電気化学キャパシタは、炭素正極を含んで構成されるハイブリッドキャパシタであることが好ましい。
【0066】
本発明の電気化学キャパシタは、密閉されていてもよい。本発明の電気化学キャパシタが密閉されていることにより、電解液が蒸発したり、大気中の水分や二酸化炭素が混入したりすることを抑制することができる。例えば、大気中の二酸化炭素と電解液中の水酸化物イオンとの反応を抑制することができる。
【0067】
本発明の電気化学キャパシタは、公知の方法を適宜用いて製造することができる。例えば、亜鉛負極をセル中に配置し、電解質溶液をセル中に導入し、更に、正極、参照極、セパレータ等を必要に応じて配置して電気化学キャパシタを作製することができる。
【0068】
本発明の電気化学キャパシタは、イオン伝導性を充分なものとしながら、デンドライトによる電極間の短絡を充分に抑制することができ、ハイブリッド自動車等の補助電源や回生電力貯蔵装置、二次電池の代替デバイス、太陽光発電のエネルギーバッファ等の多くの用途に好適に使用できる。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0070】
各種測定は、以下の方法により行った。
<透気度>
JIS P 8117に準じて、ガーレー測定器を用いて、100ccの空気が透過する時間を測定した。
<平均粒子径>
上述した方法に従って測定されたものである。
【0071】
[比較例1]
7MKOH水溶液中に5wt%となるようにポリアクリル酸ナトリウム(アクアリックIHL)を添加し、高分子ヒドロゲルを作成し、これをセパレータとして用い、下記正極・下記負極・下記電解液と共にセルに導入し、真空ラミネートで密閉して、電気化学キャパシタ(ハイブリッドキャパシタ)を構築し、下記駆動条件等で駆動した。結果、2000サイクル時点で短絡した。
【0072】
(正極)
活性炭(比表面積1098m2/g)とPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)エマルション(Nv〔固形分〕60%)と水を20:2:50の質量割合で混合し、スラリー化したものをニッケル箔上へ塗布して作成した。
【0073】
(亜鉛負極)
亜鉛と酸化亜鉛を1:1の質量割合で混合し、その混合粉とPTFEエマルション(Nv60%)と水を40:2:10の質量割合で混練し、ペースト化した後、Snメッキされたパンチング鋼板に圧延して作成した。
【0074】
(電解液)
7mol/Lに調整したKOH水溶液(ZnO飽和量添加)
【0075】
(駆動条件等)
電極サイズ:3cm×3cm
駆動電流:1000mA(100C相当)
停止条件:充電1.5V、放電0.5V
【0076】
[実施例1]
比較例1で作成したセパレータの代わりに、親水性粒子として水酸化マグネシウム(平均粒子径250nm)、疎水性粒子としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(平均粒子径300nm、ガラス転移温度115℃)を用い、体積比1:1となるように混合しスラリー化した分散液に、分散液の固形分100質量%に対して10質量%のスチレンブタジエンゴム(ガラス転移温度-1℃)を混合したものを不織布に含浸させてセパレータとした。ガーレー値は5000秒程度であった。その他は比較例1と同様としたところ、5000サイクル経過時にも短絡が見られなかった。
【0077】
[実施例2]
親水性粒子と疎水性粒子を体積比2:8で混合した以外は実施例1と同様としたところ、セパレータのガーレー値は9500秒であり、5000サイクル経過時にも短絡が見られなかった。
【0078】
[実施例3]
親水性粒子と疎水性粒子を体積比8:2で混合した以外は実施例1と同様としたところ、セパレータのガーレー値は1200秒であり、5000サイクル経過時にも短絡が見られなかった。
【0079】
[実施例4]
疎水性粒子としてポリプロピレン(PP)(平均粒子径1000nm、ガラス転移温度0℃)を用いた以外は実施例1と同様としたところ、セパレータのガーレー値は3000秒であり、5000サイクル経過時にも短絡が見られなかった。
【0080】
[実施例5]
疎水性粒子としてポリエチレン(PE)(平均粒子径30μm、ガラス転移温度-125℃)を用いた以外は実施例1と同様としたところ、セパレータのガーレー値は1400秒であり、5000サイクル経過時にも短絡が見られなかった。
【0081】
なお、参考として、下記粒子についてそれぞれ透水性試験を実施し、疎水性/親水性を判定した実験結果を下記表1に示す。
【0082】
【0083】
上記実施例の結果から、正極、亜鉛負極、及び、セパレータを含んで構成される電気化学キャパシタにおいて、該セパレータが疎水性粒子及び親水性粒子を含むことにより、イオン伝導性を充分なものとしながら、デンドライトによる電極間の短絡を充分に抑制できることが分かった。
【符号の説明】
【0084】
1:試料粉体
2:円筒形容器
3:ろ紙
4:親水処理済ポリプロピレン製不織布
5:水