(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】摺動部品及び摺動部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/34 20060101AFI20230619BHJP
F16C 17/04 20060101ALI20230619BHJP
F16C 33/14 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
F16J15/34 G
F16C17/04 Z
F16C33/14 Z
(21)【出願番号】P 2020571156
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2020003641
(87)【国際公開番号】W WO2020162347
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2019018307
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】橋本 広行
(72)【発明者】
【氏名】瀧ヶ平 宜昭
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-68330(JP,A)
【文献】特開平11-287329(JP,A)
【文献】実開平2-136863(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/34-15/38
F16C 17/04
F16C 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の摺動部材のうち少なくとも一方の摺動部材は、該一方の摺動部材の摺動面に凹設される複数の凹み部から成る凹み部群と、該凹み部群よりも該一方の摺動部材の厚み方向にずれて設けられる複数の中空部と、を備え、
前記中空部は、前記一方の摺動部材において前記凹み部群のうち最も深い凹み部の厚み分だけ摩耗した際に、少なくとも複数の凹み部から成る凹み部群をなすように配置されている摺動部品。
【請求項2】
前記凹み部群のうち最も深い凹み部の厚み方向まで摩耗するまでの間において、前記摺動面に配置される前記凹み部群の体積は、変動幅が20%以内である請求項1に記載の摺動部品。
【請求項3】
前記中空部は、前記摺動面に直交する方向から見て前記凹み部と一部または全部が重畳するように配置されている請求項1または2に記載の摺動部品。
【請求項4】
前記凹み部群は、深さの異なる複数の凹み部から構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項5】
前記凹み部と前記中空部は、前記厚み方向に延びる絞り通路により連通している請求項1ないし4のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項6】
前記絞り通路は、前記凹み部と前記中空部とが一部重畳することにより構成されている請求項5に記載の摺動部品。
【請求項7】
複数の前記中空部は、同一形状を成す請求項1ないし6のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項8】
前記中空部は、少なくとも平面を有する請求項1ないし7のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項9】
隣接する前記凹み部間に存在する前記一方の摺動部材の基材は、前記摺動面から該摺動面の反対側の面まで前記厚み方向に連続して延びている請求項1ないし8のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項10】
一対の摺動部材のうち少なくとも一方の摺動面には平面を有する複数の凹み部が設けられ、
前記凹み部より深い位置に平面を有する中空部が設けられ、前記中空部は前記凹み部と連通されている摺動部品。
【請求項11】
前記中空部は前記凹み部と周方向あるいは径方向にずれて位置している請求項10に記載の摺動部品。
【請求項12】
前記凹み部の平面は前記凹み部の底面であり、前記中空部の平面は前記中空部の底面である請求項10または11に記載の摺動部品。
【請求項13】
前記中空部は前記凹み部の底面と軸方向で一部重なる状態で周方向あるいは径方向にずれて位置し、前記中空部は前記凹み部の底面と軸方向で重なる箇所にて連通するように連設された請求項12に記載の摺動部品。
【請求項14】
特定の領域を除いて所定の材料を厚み方向に積層し連結することにより、摺動面に形成される断面視凹形状の複数の凹み部から成る凹み部群と、前記凹み部群のうち最も深い凹み部の厚み方向まで摩耗した際に、少なくとも複数の凹み部から成る凹み部群をなすように配置される複数の中空部と、を有する摺動部材を製造する摺動部品の製造方法。
【請求項15】
前記凹み部と前記中空部とを前記厚み方向に連結する絞り通路を形成する請求項14に記載の摺動部品の製造方法。
【請求項16】
前記所定の材料を付加製造装置により積層する請求項14または15に記載の摺動部品の製造方法。
【請求項17】
前記所定の材料をベース部材の上に積層し一体化する請求項14ないし16のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対移動する摺動部品に関し、例えば自動車、一般産業機械、あるいはその他のシール分野の回転機械の回転軸を軸封する軸封装置に用いられる摺動部品、または自動車、一般産業機械、あるいはその他の軸受分野の機械の軸受に用いられる摺動部品及び摺動部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被密封流体の漏れを防止する軸封装置として例えばメカニカルシールやすべり軸受などがある。メカニカルシールやすべり軸受などは、相対回転し摺動面同士が摺動するように一対の摺動部材から構成された摺動部品を備えている。このような摺動部品において、密封性を長期的に維持させるためには、「密封」と「潤滑」という条件を両立させなければならない。特に、近年においては、環境対策等のために、被密封流体の漏れ防止を図りつつ、摺動に伴うエネルギー損失を低減させるべく、より一層、低摩擦化の要求が高まっている。低摩擦化の手法としては、回転により摺動面間に動圧を発生させ、液膜を介在させた状態で摺動することにより達成できる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された摺動部品は、一対の摺動部材のうち一方の摺動部材の摺動面の全領域に断面視凹状のディンプルが複数設けられている。一対の摺動部材が相対回転すると、一方の摺動部材に設けられたディンプルに被密封流体が供給され、摺動面間に動圧が発生して摺動面間がわずかに離間し、且つ被密封流体をディンプルが保持することで、摺動面間に液膜を介在させた状態で摺動面同士を摺動させることができるため、被密封流体の漏れ防止を図りつつ、機械的損失を低減できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-68330号公報(第5頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の摺動部品は、ディンプルを設けることにより摺動面間の潤滑性が高められているが、経年等による摺動面の摩耗によりディンプルの深さが徐々に浅くなり、被密封流体を十分に保持することができなくなるため、摺動面間の潤滑性が低下する虞があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、摺動面間の潤滑性を長く持続させることができる摺動部品及び摺動部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の摺動部品は、
一対の摺動部材のうち少なくとも一方の摺動部材は、該一方の摺動部材の摺動面に凹設される複数の凹み部から成る凹み部群と、該凹み部群よりも該一方の摺動部材の厚み方向にずれて設けられる複数の中空部と、を備え、
前記中空部は、前記一方の摺動部材において前記凹み部群のうち最も深い凹み部の厚み分だけ摩耗した際に、少なくとも複数の凹み部から成る凹み部群をなすように配置されている。
これによれば、凹み部群のうち最も深い凹み部の厚み方向まで一方の摺動部材の摺動面が摩耗しても複数の凹み部から成る凹み部群が摺動面上に出現するため、摺動面間の潤滑性を持続できる。
【0008】
前記凹み部群のうち最も深い凹み部の厚み方向まで摩耗するまでの間において、前記摺動面に配置される前記凹み部群の体積は、変動幅が20%以内であってもよい。
これによれば、摺動面が摩耗しても出現する凹み部群の体積の変動幅が20%以内と小さいので摺動面の摩耗度合いによって潤滑性が変動することを抑制できる。
【0009】
前記中空部は、前記摺動面に直交する方向から見て前記凹み部と一部または全部が重畳するように配置されていてもよい。
これによれば、摺動面の摩耗度合いによって摺動面における凹み部の出現位置が大きく変動することを抑制できる。
【0010】
前記凹み部群は、深さの異なる複数の凹み部から構成されていてもよい。
これによれば、一方の摺動部材の使用領域のどの位置に摺動面が存在しても、該摺動面上に出現する凹み部群の体積を一定に近付けることができる。
【0011】
前記凹み部と前記中空部は、前記厚み方向に延びる絞り通路により連通してもよい。
これによれば、凹み部と中空部に被密封流体を保持できるとともに、絞り通路を介して摺動面の摩耗粉の一部を中空部側に排出できるため、凹み部に摩耗粉が堆積することを抑制できる。
【0012】
前記絞り通路は、前記凹み部と前記中空部とが一部重畳することにより構成されていてもよい。
これによれば、凹み部と中空部との間を被密封流体や摩耗粉が移動しやすい。
【0013】
複数の前記中空部は、同一形状を成していてもよい。
これによれば、使用領域の中で摺動面上に出現する凹み部群の体積が一定となるように中空部を配置しやすい。
【0014】
前記中空部は、少なくとも平面を有していてもよい。
これによれば、中空部を効率よく配置することができる。
【0015】
隣接する前記凹み部間に存在する前記一方の摺動部材の基材は、前記摺動面から該摺動面の反対側の面まで前記厚み方向に連続して延びていてもよい。
これによれば、摺動面の強度を高めることができる。
【0016】
前記課題を解決するために、本発明の摺動部品は、
一対の摺動部材のうち少なくとも一方の摺動面には平面を有する複数の凹み部が設けられ、
前記凹み部より深い位置に平面を有する中空部が設けられ、前記中空部は前記凹み部と連通されている。
これによれば、一方の摺動部材の摺動面が摩耗して凹み部が消滅しても凹み部より深い位置に設けられる中空部が摺動面上に出現するため、摺動面間の潤滑性を持続できる。
【0017】
前記中空部は前記凹み部と周方向あるいは径方向にずれて位置していてもよい。
これによれば、凹み部と中空部との間を被密封流体や摩耗粉が移動しやすい。
【0018】
前記凹み部の平面は前記凹み部の底面であり、前記中空部の平面は前記中空部の底面であってもよい。
これによれば、中空部を効率よく配置することができる。
【0019】
前記中空部は前記凹み部の底面と軸方向で一部重なる状態で周方向あるいは径方向にずれて位置し、前記中空部は前記凹み部の底面と軸方向で重なる箇所にて連通するように連設されていてもよい。
これによれば、中空部を効率よく配置できるとともに、凹み部と中空部との間を被密封流体や摩耗粉が移動しやすい。
【0020】
前記課題を解決するために、本発明の摺動部品の製造方法は、
特定の領域を除いて所定の材料を厚み方向に積層し連結することにより、摺動面に形成される断面視凹形状の複数の凹み部から成る凹み部群と、前記凹み部群のうち最も深い凹み部の厚み方向まで摩耗した際に、少なくとも複数の凹み部から成る凹み部群をなすように配置される複数の中空部と、を有する摺動部材を製造するものである。
これによれば、凹み部群のうち最も深い凹みの厚み方向まで一方の摺動部材の摺動面が摩耗しても複数の凹み部から成る凹み部群が摺動面上に出現するため、摺動面間の潤滑性を持続できる。また、所定の材料を一方の摺動部材の厚み方向に積層させながら形成することで複数の中空部を一方の摺動部材における所望の位置に配置することができる。
【0021】
前記凹み部と前記中空部とを前記厚み方向に連結する絞り通路を形成してもよい。
これによれば、加工により生じる加工紛を絞り通路を介して中空部から外部に排出できるため、摺動部材を簡便にかつ高精度に製造することができる。
【0022】
前記所定の材料を付加製造装置により積層してもよい。
これによれば、付加製造装置にプリンタを用いて摺動部材を簡便にかつ高精度に製造することができる。
【0023】
前記所定の材料をベース部材の上に積層し一体化してもよい。
これによれば、ベース部材により摺動部材の強度を確保できるとともに迅速に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施例1に係る摺動部品としてメカニカルシールの一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るメイティングリングの摺動面を示す平面図である。
【
図4】(a)は本発明の実施例1に係る厚み方向に配置されるディンプル及び中空部を示す概略断面図、(b)は(a)を摺動面側から見た概略図である。
【
図5】(a)~(c)は摺動面の摩耗度合いの変化を示す概略図である。
【
図6】摺動時間に対するディンプル群の体積の変化を示す概略図である。
【
図7】(a)~(c)はメイティングリングの製造工程を示す概略図である。
【
図8】(a)(b)は本発明の実施例1に係るディンプル及び中空部の形状の変形例を示す概略図である。
【
図9】本発明の実施例1に係るディンプル及び中空部の配置の変形例である。
【
図10】(a)は本発明の実施例2に係るメイティングリングの摺動面を示す平面図、(b)は(a)の概略断面図である。
【
図11】(a)(b)は本発明の実施例2に係る摺動部品の1つ目の変形例を示す図である。
【
図12】(a)(b)は本発明の実施例2に係る摺動部品の2つ目の変形例を示す図である。
【
図13】本発明の実施例3に係るメイティングリングの摺動面を示す平面図である。
【
図14】(a)はB-B断面図、(b)はC-C断面図である。
【
図15】本発明の実施例3に係る摺動部品の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る摺動部品及び摺動部品の製造方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0026】
実施例1に係る摺動部品及び摺動部品の製造方法につき、
図1から
図7を参照して説明する。尚、本実施例においては、摺動部品がメカニカルシールである形態を例に挙げ説明する。また、メカニカルシールを構成する摺動部品の外周側を被密封流体側、内周側を大気側として説明する。
【0027】
図1に示される一般産業機械用のメカニカルシールは、摺動面の外周側から内周側に向かって漏れようとする被密封流体を密封するインサイド形のものであって、回転軸1にスリーブ2を介して回転軸1と一体的に回転可能な状態で設けられた円環状の一方の摺動部品としてのメイティングリング20と、被取付機器のハウジング4に固定されたシールカバー5に非回転状態かつ軸方向移動可能な状態で設けられた他方の摺動部品としての円環状のシールリング10と、から主に構成され、ベローズ7によってシールリング10が軸方向に付勢されることにより、シールリング10の摺動面11とメイティングリング20の摺動面21とが互いに密接摺動するようになっている。尚、シールリング10の摺動面11は平坦面となっており、この平坦面には凹み部が設けられていない。
【0028】
シールリング10およびメイティングリング20は、代表的にはSiC(硬質材料)同士またはSiC(硬質材料)とカーボン(軟質材料)の組み合わせで形成されるが、これに限らず、摺動材料はメカニカルシール用摺動材料として使用されているものであれば適用可能である。尚、SiCとしては、ボロン、アルミニウム、カーボン等を焼結助剤とした焼結体をはじめ、成分、組成の異なる2種類以上の相からなる材料、例えば、黒鉛粒子の分散したSiC、SiCとSiからなる反応焼結SiC、SiC-TiC、SiC-TiN等があり、カーボンとしては、炭素質と黒鉛質の混合したカーボンをはじめ、樹脂成形カーボン、焼結カーボン等が利用できる。また、上記摺動材料以外では、金属材料、樹脂材料、表面改質材料(コーティング材料)、複合材料等も適用可能である。尚、メイティングリング20の製造方法については、後に詳述する。
【0029】
図2に示されるように、メイティングリング20は、シールリング10の摺動面11と軸方向に対向する環状の摺動面21を有している。摺動面21は、平坦面であって、円周方向に凹み部としてのディンプル22が全面に形成されて凹み部群としてのディンプル群22Aを構成している。各ディンプル22は、摺動面21に直交する方向から見て円形状を成し、且つ径方向断面視において摺動面21側に開口する凹形状を成している。すなわち、ディンプル22は、摺動面21に対して直交する中心軸を有する円柱形状を成している(
図3,
図4参照)。尚、摺動面21は、ディンプル22に対してランド部とも言える。
【0030】
具体的には、ディンプル群22Aは、ディンプル22がメイティングリング20の内径側から外径側に離間して4つ配置される列23Aと、内径側から外径側に離間して5つ配置される列23Bと、が周方向に交互に配置されて構成されており、上記2つの列23A,23Bは、メイティングリング20の中心から放射状に沿って配置されている。尚、複数のディンプル22は、摺動面21の周方向に千鳥状に配置されている。
【0031】
図3は、メイティングリング20を列23Aの位置で軸方向に切断した状態を図示している。尚、列23Bは、列23Aと数以外同一であることから、列23Bの説明を省略する。
【0032】
列23Aは、深さ寸法L1のディンプル22と、ディンプル22よりも浅い深さ寸法L2のディンプル22’と、から構成されている(L1>L2)。ディンプル22及びディンプル22’は、摺動面21の径方向に交互に配設されている。
【0033】
ディンプル22には、複数の中空部24a,24b,24c,24dがメイティングリング20の厚み方向(以下、単に厚み方向ということもある。)に形成されており、ディンプル22及び中空部24a,24b,24c,24dにより凹状ユニット25Aを構成している。同様に、ディンプル22’には、複数の中空部24a’,24b’,24c’,24d’が厚み方向に並列されており、ディンプル22’及び中空部24a’,24b’,24c’,24d’により凹状ユニット25Bを構成している。
【0034】
中空部24a~24d及び中空部24a’~24d’は、同一の深さ寸法L3となっており、各中空部の深さ寸法L3は、新品状態のディンプル22の深さ寸法L1と同一となっている。また、ディンプル22の深さ寸法L1とディンプル22’の深さ寸法L2との差は寸法L4となっている。すなわち、凹状ユニット25Aと凹状ユニット25Bとは、寸法L4分メイティングリング20の厚み方向にずれて配置されている。尚、メイティングリング20において摺動面21として使用され得る厚み方向の使用領域は、摩耗等によってもいずれかの中空部が出現しディンプルとして機能し得る領域であって、摺動面21から凹状ユニット25Aの最深部に配置される中空部24dの底部までの領域を指す。
【0035】
次いで、凹状ユニット25Aにおけるディンプル22と中空部24a~24dとの配列について
図4に基づいて説明する。尚、凹状ユニット25Bは、凹状ユニット25Aと同一構成であるため、その説明を省略する。
【0036】
図4(a)に示されるように、中空部24aは、ディンプル22の内径方向にずれかつ厚み方向に一部重畳して配置されており、ディンプル22と中空部24aとは通路26aにより連通している。同様に、中空部24bは、中空部24aの外径方向にずれかつ厚み方向に一部重畳して配置されており、中空部24aと中空部24bとは通路26bにより連通している。また、中空部24cは、中空部24bの内径方向にずれかつ厚み方向に一部重畳して配置されており、中空部24bと中空部24cとは通路26cにより連通している。また、中空部24dは、中空部24cの外径方向にずれかつ厚み方向に一部重畳して配置されており、中空部24cと中空部24dとは通路26dにより連通している。すなわち、ディンプル22及び中空部24a~24dは、径方向に交互にずれて厚み方向にジグザグ状に配置されているとともに、通路26a~26dを通じて互いに連通している。
【0037】
また、中空部24aにおける摺動面21側の平面としての端面27aは、ディンプル22の平面としての底面22aと厚み方向の同一位置に配置されており、通路26aは、端面27aと底面22aとが径方向に一部重畳して形成されている。言い換えると、通路26aは底面27aの開口箇所と底面22aの開口箇所が重なって形成されている。中空部24b~24dも同様に、摺動面21側の端面27b~27dが摺動面21側に隣接する中空部24a~24cの底面28a~28cと厚み方向の同一位置に配置されており、通路26b~26dは、端面27b~27dと底面28a~28cとが径方向に一部重畳して形成されている。つまり、通路26a~26dは、ディンプル22及び中空部24a~24dの径方向の断面積よりも小さい絞り通路となっている。
【0038】
より詳細には、
図4(b)に示されるように、ディンプル22及び中空部24b,24dは、摺動面21に直交する方向から見て重畳して配置されており、中空部24a,24cは、ディンプル22及び中空部24b,24dの内径側にずれた位置において摺動面21を直交する方向から見て重畳して配置されている。
【0039】
次いで、メイティングリング20の摩耗度合いの変化について
図5及び
図6に基づいて説明する。
図5(a)は、
図2のA-Aの位置で切断した図であり、シールリング10とメイティングリング20とが新品の状態を示している。
図5(a)の状態からシールリング10とメイティングリング20とが相対回転すると、ディンプル22,22’により摺動面11,21の間に被密封流体の膜を形成して良好な潤滑を維持できるようになっている。これは、ディンプル群22Aが摺動面11,21間の潤滑性を保つために最適な体積に設計されているためである(
図6の点P1参照)。
【0040】
図5(b)に示すように、経年などにより摺動面21が摩耗するにしたがって、ディンプル22,22’で構成されるディンプル群22Aの体積が漸次小さくなる(
図6の点P1と点P2との間を参照)。しかしながら、ディンプル22’が消滅した際(
図6の点P2参照)には、中空部24a’における摺動面21側の端面27a’を構成する壁部が削られて中空部24a’がシールリング10側に開放する。すなわち、中空部24a’が新たなディンプルとして出現し、これによりディンプル群22Aの体積が新品状態時の体積と同程度に増加する(
図6の点P3参照)。
【0041】
そして、
図5(c)に示すように、摺動面21がさらに摩耗すると、ディンプル22及び中空部24a’で構成されるディンプル群22Aの体積が漸次小さくなる(
図6の点P3と点P4との間を参照)。しかしながら、ディンプル22が消滅した際には、中空部24aの端面27aを構成する壁部が削られて中空部24aがシールリング10側に開放する。すなわち、中空部24aが新たなディンプルとして出現し、これによりディンプル群22Aの体積が新品状態時の体積と同程度に増加する(
図6の点P5参照)。
【0042】
このように、メイティングリング20の摺動面21が摩耗してもメイティングリング20の使用領域の中で、ディンプル群22Aの体積が常に変動許容範囲内に収まるため、摺動面11,21の間が貧潤滑となることなく、且つ摺動面11,21間に過剰な浮力が発生して潤滑性や密封性が低下することを防止でき、摺動面11,21間の潤滑性を好適に持続できる。
【0043】
また、摺動面21上に出現するディンプル群22Aの体積の変動幅は20%以内となっており、変動幅が小さいので摺動面21の摩耗度合いによって潤滑性が変動することを抑制できる。尚、本実施例1では、メイティングリング20の使用領域の中で、ディンプル群22Aが同一個数の中空部により形成される形態を例示するが、メイティングリング20の使用領域の中で摺動面21上に出現するディンプル群22Aが異なる個数(2つ以上)の中空部により形成されていてもよい。好ましくは、メイティングリング20の使用領域の中で、摺動面21上に出現するディンプル群22Aの体積の変動幅が20%以内、好ましくは5%以内となっていればよい。
【0044】
また、凹状ユニット25A,25Bを構成する中空部24a~24d及び中空部24a’~24d’は、摺動面21に直交する方向から見て、ディンプル22,22’に対して一部または全部が重畳して配置されているので、摺動面21の摩耗度合いによって、ディンプルとして出現する中空部24a~24d及び中空部24a’~24d’の位置が、摺動面21の径方向や周方向に大きく変動せず、摺動面11,21間に均等に被密封流体の膜を生成できる。
【0045】
さらに、摺動面21に直交する方向から見て、凹状ユニット25A,25Bの径方向及び周方向への専有面積を小さくすることができるので、凹状ユニット25A,25Bをメイティングリング20に多数配置することができる。
【0046】
また、凹状ユニット25A,25Bは、それぞれのディンプル22,22’に対して中空部24a~24d,24a’~24d’が径方向に交互にずれて厚み方向にジグザグ状に配置されているとともに、凹状ユニット25A,25B同士が厚み方向にずれている。すなわち、ディンプル群22Aは、深さの異なる複数のディンプル22,22’で構成されるので、メイティングリング20の使用領域のどの位置に摺動面21が存在しても、該摺動面21上に出現するディンプル群22Aの体積を一定に近付けるようにメイティングリング20を構成できる。
【0047】
また、ディンプル22,22’と中空部24a~24d,24a’~24d’は、厚み方向に延びる通路26a~26dにより連通しているので、ディンプル22,22’と中空部24a~24d,24a’~24d’に被密封流体を多く保持できるとともに、通路26a~26dを介して摺動面21の摩耗粉の一部を中空部24a~24d,24a’~24d’側に排出・貯留できるため、ディンプル22,22’に摩耗粉が堆積して摺動面11,21間の潤滑性が阻害されることを抑制できる。また、中空部24a~24d,24a’~24d’はラビリンス構造となっているため、中空部24a~24d,24a’~24d’内に貯留された摩耗粉はディンプル22,22’に戻り難い。特に、中空部24,24d’側に貯留された摩耗粉は、ディンプル22,22’に戻り難い。
【0048】
さらに、通路26a~26dは、ディンプル22,22’と中空部24a~24d,24a’~24d’とが一部重畳することにより構成されているので、ディンプル22,22’と中空部24a~24d,24a’~24d’との間を被密封流体や摩耗粉が移動しやすいばかりか、ディンプル22,22’及び中空部24a~24d,24a’~24d’とは別段の絞り通路を形成しなくてよいため、凹状ユニット25A,25Bを形成しやすい。
【0049】
また、各中空部24a~24d,24a’~24d’は、同一形状を成すため、使用領域の中で摺動面21上に出現するディンプル群22Aの体積が一定となるように中空部24a~24d,24a’~24d’を配置しやすい。
【0050】
さらに、各中空部24a~24d,24a’~24d’は、平面である端面27a~27cと、底面28a~28cと、を有するため、端面27a~27c及び底面28a~28c同士を近付けて中空部24a~24d,24a’~24d’を多数配置することができる、言い換えると少ないスペースで効率よく配置できる。
【0051】
また、各中空部24a~24d,24a’~24d’は、摺動面21に対して直交する中心軸を有する円柱形状に形成されており、摺動面21の摩耗度合いによって各中空部24a~24d,24a’~24d’の開口領域が変化しないため、ディンプル群22Aの体積が一定となるように中空部24a~24d,24a’~24d’を配置しやすい。
【0052】
また、径方向または周方向に隣接するディンプル22,22’間に存在するメイティングリング20の基材20Aは、摺動面21から後述する摺動面21の反対側に位置するベース部材20B(
図7参照)まである程度の幅を持って柱状に厚み方向に連続して延びているため、摺動面21を高い強度で支持することができる。
【0053】
次いで、メイティングリング20の製造方法について
図7に基づいて説明する。本実施例におけるメイティングリング20は、付加製造(Additive Manufacturing)装置の一種である3Dプリンタを用いた積層造形法により製造される。尚、
図7では、わかりやすく説明するために、敷き詰められる所定の材料としてのSiC粉末Mの層の厚みを実際よりも厚くなるように示している。
【0054】
具体的には、
図7(a)に示されるように、3Dプリンタの台座の上に、所定の厚みを有し該厚み方向から見て円形板状を成すベース部材20Bを配置するとともに、ベース部材20Bを全体的に覆うようにSiC粉末Mを敷き詰める。
【0055】
そして、
図7(b)に示されるように、レーザ等の図示しない熱源によりSiC粉末Mを溶融・凝固させてメイティングリング20における基材20Aをベース部材20Bの厚み方向に積層・連結させる。このとき、積層されたSiC粉末Mにおいて、各中空部となる部分(特定の領域)を除いた部分を溶融・凝固させる。
【0056】
図7(c)に示されるように、メイティングリング20が所望の厚みに達するまで、SiC粉末Mを敷き詰める工程と、SiC粉末Mを溶融・凝固させる工程と、を繰り返し、メイティングリング20が所望の厚みに達すると、各中空部24a~24d,24a’~24d’及びディンプル22,22’内に残存するSiC粉末Mをディンプル22,22’の開口部から外部に排出して製造が完了する。
【0057】
このように、各中空部24a~24d,24a’~24d’及びディンプル22,22’を除く領域(所定の材料)にSiC粉末Mをメイティングリング20の厚み方向に積層・連結して基材20Aを形成することで、複数の中空部24a~24d,24a’~24d’及びディンプル22,22’を所望の位置に配置したメイティングリング20を形成することができる。
【0058】
また、前述のように、各中空部24a~24d,24a’~24d’及びディンプル22,22’は、通路26a~26dにより連通しているので、通路26a~26dを介して中空部24a~24d,24a’~24d’内の不要なSiC粉末Mを外部に排出でき、メイティングリング20を3Dプリンタの積層造形法を用いて簡便にかつ高精度に製造することができる。このようにして製造しているので、メイティングリング20の使用中に摩耗によって中空部がディンプルとなっても製造時のSiC粉末Mが出現しないようになっている。
【0059】
また、SiC粉末Mをベース部材20Bの上に積層し一体化するため、ベース部材20Bによりメイティングリング20の強度を確保できるとともに迅速に製造することができる。尚、ベース部材20Bの上にSiC粉末Mを積層・連結する形態を例示したが、ベース部材20Bを用いず、台座上に直接メイティングリング20を製造してもよい。
【0060】
また、前記実施例1では、各ディンプル及び各中空部が摺動面に対して直交する中心軸を有する円柱状に形成される形態を例示したが、例えば、
図8(a)に示されるように、ディンプル221及び中空部241a~241dが球形状を成していてもよい。尚、ディンプル及び中空部は、円錐状や三角錐状、周方向や径方向に長い凹状溝等であってもよい。
【0061】
また、前記実施例1では、各ディンプル及び各中空部が絞り通路により連結されていたが、
図8(b)に示されるように、ディンプル222,222’と各中空部242とが連通せず且つ周方向から見て厚み方向に重畳するように独立して設けられていてもよい。尚、独立するディンプル222,222’と各中空部242とが、所定の長さを有する図示しない絞り流路により連通されていてもよい。
【0062】
また、前記実施例1では、凹状ユニット25Aにおいて、ディンプル22及び中空部24b,24dが摺動面21を直交する方向から見て重畳して配置されており、中空部24a,24cが摺動面21を直交する方向から見て重畳し、且つディンプル22及び中空部24b,24dの内径側にずれて配置されている形態を例示したが、
図9に示されるように、ディンプル223及び中空部243a~243dが厚み方向に向けて螺旋状に配置されていてもよい。具体的には、ディンプル223及び中空部243cが摺動面21を直交する方向から見て重畳し、中空部243a,243dがディンプル223及び中空部243cと径方向にずれた位置において摺動面21を直交する方向から見て重畳し、中空部243bが摺動面21を直交する方向から見てディンプル223及び中空部243a,243c,243dと径方向にずれた位置に配置されていてもよい。
【0063】
また、前記実施例1では、凹状ユニット25Aと凹状ユニット25Bとがメイティングリング20の厚み方向にずれて配置されている形態を例示したが、凹状ユニット25Aと凹状ユニット25Bとが厚み方向の同一位置に配置されていてもよい。この場合であっても、凹状ユニット25A,25Bは厚み方向にそれぞれ連通しているため、メイティングリング20の使用領域の中でディンプル群が形成されない状態を回避できる。すなわち、メイティングリング20の使用領域の中で、摺動面11,21間を適度に離間させ、且つ適度に被密封流体を保持できる所定範囲内の体積を有するディンプル群が形成されていればよい。
【実施例2】
【0064】
次に、実施例2に係る摺動部品につき、
図10を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。尚、ここでは、列23Aの形態のみ説明する。
【0065】
図10(a)に示されるように、実施例2のメイティングリング201の列23Aにおいて、凹状ユニット25A同士が連通路12により連通されており、凹状ユニット25B同士が連通路13により連通されている。
【0066】
連通路12は、各凹状ユニット25Aの最深部に配置される中空部24d同士を連通している。この連通路12は、複数の中空部12aが断面V字状に連なることで形成されている。また、連通路13は、各凹状ユニット25Bの最深部に配置される中空部24d’同士を連通している。この連通路13は、複数の中空部13aが断面V字状に連なることで形成されている。これによれば、連通路12,13に被密封流体を多量に保持できるとともに、摺動面21の摩耗紛を連通路12,13に排出できるため、ディンプル22,22’に摩耗粉が堆積することを抑制できる。
【0067】
次に、実施例2に係る摺動部品の1つ目の変形例について説明する。
図11に示されるように、連通路121,131は、その最深部がメイティングリング202の軸方向(厚み方向)と直交するように径方向に延びており断面U字状を成している。このように、連通路121,131の形状は自由に変更することができる。
【0068】
次いで、実施例2に係る摺動部品の2つ目の変形例について説明する。
図12に示されるように、連通路122,132は、その最深部からメイティングリング203の外径側まで延びる連通溝部122a,132aが形成されている。これによれば、連通溝部122a,132aを通じて連通路122,132に被密封流体を引き込むことができるとともに、連通溝部122a,132aを通じて被密封流体側に摺動面21の摩耗紛を排出できる。連通溝部122a,132aの被密封流体の引き込み及び排出は、摺動面21に出現するディンプルの深さによって変化する。
【実施例3】
【0069】
次に、実施例3に係る摺動部品につき、
図13及び
図14を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0070】
図13及び
図14に示されるように、メイティングリング204の列231Aは、厚み方向にずれて配置される凹状ユニット251A,251Bのディンプル224,224’が径方向に交互に配置されて構成されている。
【0071】
凹状ユニット251Aのディンプル224は、摺動面21を直交する方向から見て、その開口部が半円形状に形成されており、メイティングリング203の回動方向と反対側(
図13の白抜き矢印参照)の壁部224aが該回転方向に対して直交するように厚み方向に延びて形成されているとともに、回動方向側の湾曲する壁部224bが厚み方向に向かって先細りするテーパ形状に形成されている。
【0072】
また、中空部244a~244dは、ディンプル224と同一形状を成し、厚み方向に重畳するように配置されている。すなわち、ディンプル224及び中空部244a~244dは、厚み方向に向けてそれぞれ先細りしているので、ディンプル224及び中空部244a~244dの重畳する部分は、絞り流路261a~261dとなっている。
【0073】
また、凹状ユニット251Bのディンプル224’は、深さ寸法がディンプル224よりも浅く形成されており、中空部244a’~244d’は、ディンプル224及び中空部244a~244dと同一形状を成している。
【0074】
これによれば、ディンプル224,224’の壁部224b,224b’側からそのテーパ形状に沿って円滑に被密封流体を流入させることができるため、動圧発生効果を高めることができる。また、ディンプル224及び中空部244a~244dを板厚方向に直線状に配置したため、凹状ユニット251A,251Bを効率よく多数配置できる。
【0075】
また、実施例3の摺動部品の変形例として次のようなものもある。
図15に示されるように、ディンプル224の回動方向の反対側には、壁部224aを挟んで半球形状の液保持部14が形成されている。また、液保持部14は、中空部244a~244dの壁部270a~270dを挟んで中空部244a~244dの回転方向の反対側にもそれぞれ形成されている。壁部224a及び壁部270a~270dには、貫通孔280がそれぞれ形成されており、ディンプル224と液保持部14、及び壁部270a~270dと各液保持部14を連通している。
【0076】
これによれば、摺動面21が摩耗して液保持部14が開口したときに、液保持部14内に被密封流体を保持できるとともに、その被密封流体を貫通孔280を通してディンプル224側へ流入させることができるようになっているので、ディンプル224の被密封流体の保持能力が向上する。
【0077】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0078】
例えば、前記実施例では、摺動部品として、一般産業機械用のメカニカルシールを例に説明したが、自動車やウォータポンプ用等の他のメカニカルシールであってもよい。また、メカニカルシールは、アウトサイド形のものであってもよい。
【0079】
また、前記実施例では、ディンプル及び中空部をメイティングリングにのみ設ける例について説明したが、ディンプル及び中空部をシールリングにのみ設けてもよく、シールリングとメイティングリングの両方に設けてもよい。
【0080】
また、ディンプルの数は、多すぎると発生する動圧が大きくなり、少なすぎると摺動面の周方向に亘って作用する動圧の変化が大きくなるため、使用環境等に応じて適宜設定されることが好ましい。
【0081】
また、摺動部品として、メカニカルシールを例について説明したが、すべり軸受等メカニカルシール以外の摺動部品であってもよい。
【0082】
また、前記実施例では、付加製造装置として材料を噴出させて堆積させる3Dプリンタを用いて摺動部材を形成する形態を例示したが、付加製造方法は問わず例えばシート積層(sheet Lamination)装置を用いて、凹凸形状の板材を積層して連結することで厚み方向に複数の中空部を有する摺動部材を形成してもよい。
【0083】
また、前記実施例では、凹み部群を構成する凹み部の深さが2種類(ディンプル22,22’)である形態を例示したが、3種類以上の深さの凹み部により凹み部群を構成してもよい。これによれば、凹み部群の体積の変動許容範囲を狭めることができる。尚、中空部が同一形状である形態を例示したが、それぞれ異なる形状で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10 シールリング(他方の摺動部材)
11 摺動面
20 メイティングリング(一方の摺動部材)
20A 基材
20B ベース部材
21 摺動面
22,22’ ディンプル(凹み部)
22A ディンプル群(凹み部群)
24a~24d 中空部
25A,25B 凹状ユニット
26a~26d 通路(絞り通路)
201~204 メイティングリング(一方の摺動部材)
221~224 ディンプル(凹み部)
M SiC粉末(所定の材料)