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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】抗原をカップリングさせた免疫試薬
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/532 20060101AFI20230619BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230619BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230619BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230619BHJP
   G01N 33/533 20060101ALI20230619BHJP
   G01N 33/535 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
G01N33/532 A
C07K16/18
C07K16/28 ZNA
G01N33/53 D
G01N33/533
G01N33/535
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2017559780
(86)(22)【出願日】2016-02-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-03-08
(86)【国際出願番号】 US2016016913
(87)【国際公開番号】W WO2016127149
(87)【国際公開日】2016-08-11
【審査請求日】2019-01-31
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】62/113,141
(32)【優先日】2015-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/247,415
(32)【優先日】2015-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517274914
【氏名又は名称】セル アイディーエックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ, デイビッド エー.
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】長井 真一
【審判官】▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0175828(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0285490(US,A1)
【文献】国際公開第2014/006123(WO,A1)
【文献】浜窪隆雄,「抗体医薬による統合的個別医療」,高分子,55巻,5月号(2006),p.334-337
【文献】小林典裕,「ハプテンイムノアッセイの超高感度化」,ぶんせき,2004,9,p.551-552
【文献】柳田絵美衣他,“免疫二重染色の原理”,immuuno(いむーの),2008年1月19日 <URL:http://immuno2.med.kobe-u.ac.jp/20080119-3315/>
【文献】Marvin E.Tanenbaum.,et.al.,“A Protein-Tgging System for Signal Amplification in Gene Expression and Fluorescence Imaging”,Cell,159,p.635-646,(2014),Elsevier Inc.
【文献】芳坂貴弘,「特集:無細胞生命科学の創成 無細胞翻訳系における非天然アミノ酸の導入技術の開発とその応用」,生化学,第79巻,第3号,p.247-253(2007)
【文献】M.G.Finn,et.al.,「クリックケミストリー1 クリックケミストリーの概念と応用 提唱者の立場から」,化学と工業,Vol.60-10,2007,p.976-980
【文献】眞鍋史乃,「抗体-抗がん剤複合体におけるリンカーテクノロジー」,Drug Delivery System,28-5,2013,p.406-411
【文献】伊藤智雄,「病理組織診断における免疫染色」,顕微鏡,Vol.48,No.1,2013,p.33-38
【文献】S.M.Okarvi,“Recent Progress in florine-18 labelled peptide radiopharmaceuticals”,European Journal of Nuclear Medicine,Vol.28,No.7,2001
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48- 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の免疫試薬組成物を含む多重化免疫試薬組成物であって、該複数の免疫試薬組成物の各々が、以下:
架橋抗原とカップリングした一次抗体;および
検出可能な二次抗体
を含む多重化免疫試薬組成物であって、該検出可能な二次抗体が該架橋抗原に対して特異的であり、最大で10nMの解離定数を有する、多重化免疫試薬組成物であって、
該複数の免疫試薬組成物の各々が、異なる一次抗体、異なる架橋抗原、および、異なる検出可能な二次抗体を含む、多重化免疫試薬組成物
【請求項2】
前記架橋抗原がペプチドである、請求項1に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項3】
前記架橋抗原が複数の抗原決定基を含む、請求項1に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項4】
前記複数の抗原決定基における各抗原決定基が同じである、請求項3に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項5】
前記複数の抗原決定基が線状反復構造を含む、請求項3に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項6】
前記線状反復構造が線状反復ペプチド構造である、請求項5に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項7】
前記複数の抗原決定基が少なくとも3個の抗原決定基を含む、請求項3に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項8】
前記架橋抗原が分岐型構造を含む、請求項3に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項9】
前記架橋抗原が、非天然残基を含むペプチドである、請求項1に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項10】
前記非天然残基が非天然立体異性体である、請求項9に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項11】
前記非天然残基がβ-アミノ酸である、請求項9に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項12】
前記一次抗体および前記架橋抗原が、コンジュゲーション部分を介して化学的カップリング反応によりカップリングしている、請求項1に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項13】
前記一次抗体および前記架橋抗原が高効率コンジュゲーション部分を介してカップリングしている、請求項12に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項14】
前記高効率コンジュゲーション部分がシッフ塩基である、請求項13に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項15】
前記シッフ塩基がヒドラゾンまたはオキシムである、請求項14に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項16】
前記高効率コンジュゲーション部分がクリック反応によって形成される、請求項13に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項17】
前記コンジュゲーション部分が切断可能なリンカーを含む、請求項12に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項18】
前記一次抗体が細胞マーカーに特異的である、請求項1に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項19】
前記細胞マーカーが、4-1BB、AFP、ALK1、アミロイドA、アミロイドP、アンドロゲン受容体、アネキシンA1、ASMA、BCA225、BCL-1、BCL-2、BCL-6、BerEP4、ベータ-カテニン、ベータ-HCG、BG-8、BOB-1、CA19-9、CA125、カルシトニン、カルデスモン、カルポニン-1、カルレチニン、CAM5.2、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD31、CD33、CD34、CD38、CD42b、CD43、CD45 LCA、CD45RO、CD56、CD57、CD61、CD68、CD79a、CD99、CD117、CD138、CD163、CDX2、CEA、クロモグラニンA、CMV、c-kit、c-MET、c-MYC、IV型コラーゲン、補体3c(C3c)、COX-2、CXCR5、CK1、CK5、CK6、CK7、CK8、CK14、CK18、CK17、CK19、CK20、CK903、CK AE1、CK AE1/AE3、D2-40、デスミン、DOG-1、E-カドヘリン、EGFR、EMA、ER、ERCC1、第VIII因子関連抗原、活性化第XIII因子、ファスシン、FoxP1、FoxP3、ガレクチン-3、GATA-3、GCDFP-15、GCET1、GFAP、グリコホリンA、グリピカン3、グランザイムB、HBME-1、Helicobacter Pylori、ヘモグロビンA、Hep Par1、HER2、HHV-8、HMB-45、HSV l/ll、ICOS、IFNガンマ、IgA、IgD、IgG、IgM、IL17、IL4、インヒビン、iNOS、カッパIg軽鎖、Ki67、LAG-3、ラムダIg軽鎖、リゾチーム、マンマグロビンA、MART-1/メランA、マスト細胞トリプターゼ、MLH1、MOC-31、MPO、MSA、MSH2、MSH6、MUC1、MUC2、MUM1、MyoD1、ミオゲニン、ミオグロビン、ナプシンA、ネスチン、NSE、Oct-2、OX40、OX40L、p16、p21、p27、p40、p53、p63、p504s、PAX-5、PAX-8、PD-1、PD-L1、PHH3、PIN-4、PLAP、PMS2、Pneumocystis jiroveci(carinii)、PR、PSA、PSAP、RCC、S-100、SMA、SMM、スムーセリン、SOX10、SOX11、サーファクタントアポプロテインA、シナプトフィジン、TAG72、TdT、トロンボモジュリン、チログロブリン、TIA-1、TIM3、TRAcP、TTF-1、チロシナーゼ、ウロプラキン、VEGFR-2、ビリン、ビメンチン、およびWT-1からなる群から選択される、請求項18に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項20】
前記一次抗体が、異なる種由来の免疫グロブリンに特異的である、請求項1に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項21】
前記検出可能な二次抗体が検出可能な標識を含む、請求項1に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項22】
前記検出可能な標識が、フルオロフォア、酵素、アップコンバージョンナノ粒子、量子ドット、または検出可能なハプテンである、請求項21に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項23】
前記検出可能な標識がフルオロフォアである、請求項22に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項24】
前記酵素が、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはグルコースオキシダーゼである、請求項22に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項25】
前記ペルオキシダーゼが西洋ワサビペルオキシダーゼまたはダイズペルオキシダーゼである、請求項24に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項26】
前記架橋抗原が検出可能な標識を含む、請求項1に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項27】
前記架橋抗原の前記検出可能な標識がフルオロフォアである、請求項26に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項28】
前記検出可能な二次抗体が検出可能な標識を含む、請求項26に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項29】
前記架橋抗原の前記検出可能な標識および前記二次抗体の前記検出可能な標識がどちらも、同じ波長の蛍光によって検出可能である、請求項28に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項30】
前記検出可能な二次抗体が、前記架橋抗原に対して特異的であり、最大で1nMの解離定数を有する、請求項1に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項31】
少なくとも3個の免疫試薬組成物を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項32】
少なくとも5個の免疫試薬組成物を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の多重化免疫試薬組成物。
【請求項33】
少なくとも10個の免疫試薬組成物を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の多重化免疫試薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年2月6日に出願された米国仮特許出願第62/113,141号、および2015年10月28日に出願された米国仮特許出願第62/247,415号の利益を主張し、この米国仮特許出願の開示内容は、その全体が参照により本明細書において援用される。
【背景技術】
【0002】
免疫学的アッセイの使用、特に免疫組織化学(IHC)染色の使用は、がん性腫瘍細胞を含む異常細胞の分析などの病理学的状態の分析において決定的な重要性をもつ。IHCにおいて、罹患組織に存在し得る特異抗原を認識する免疫グロブリンまたは抗体が、生検により得られたその組織の薄切片に適用される。その後、抗体のそれの同族の抗原への結合が、組織切片内で、典型的には、免疫グロブリンと共局在化している、ペルオキシダーゼなどの酵素により生成される色素形成酵素生成物の分布を画像化することにより、検出される。組織学的染色の分布と比較して、酵素生成物の分布を調べることにより、組織切片における抗原の分布の評価が可能になる。他の免疫学的アッセイにおいて、抗原への抗体の結合が、光学シグナル、電気シグナル、または化学シグナルを含む他の手段により検出され得る。特異抗原は、特定の細胞事象、例えば、感染、傷害、細胞増殖、炎症、または薬物応答を特徴付け得る。免疫学的アッセイはまた、細胞または生物学的組織の異なる部分に差次的に発現するタンパク質などのバイオマーカーとしての役割を果たす抗原の分布および局在化を理解するため、ならびに生化学的アッセイにおいてそれらの抗原を同定および定量するための、基礎研究において広く使用される。したがって、免疫学的アッセイは、例えば、ブロット、サンドイッチアッセイ、免疫吸着アッセイ、免疫細胞化学的アッセイ、および他の関連方法に有用である。これらの方法の全てが、免疫化学的試薬の改善から恩恵を受けることができる。
【0003】
臨床病理における組織分析の現在の方法は、単一の顕微鏡スライド上で実施される単一抗原の決定に本質的に制限される。重要なことには、抗体とそれの抗原の間の1対1の対応があり、そのことが、抗体の結合または結合の欠如により抗原の即時の決定を可能にする。各抗体がペルオキシダーゼまたは他の酵素と連結している場合、抗原の存在は、代理としてのそれぞれの組織切片上の酵素生成物の量および分布により決定することができる。しかしながら、特定の分析を完了するために評価されなければならない1つより多い抗原が存在する場合が多い。例えば、乳がんにおいて、治療を各患者へ最適にマッチさせるために、生検標本の最小限の抗原プロファイルが、腫瘍の悪性細胞における少なくとも3個の抗原:Her2/neu受容体(HER2)、エストロゲン受容体(ER)、およびプロゲステロン受容体(PR)の存在および存在量の評価を含む。したがって、分析を実施することは、その3つの別個の免疫グロブリンのそれぞれについてのアッセイを必要とし、その免疫グロブリンのそれぞれが、典型的には、その3個の抗原の1個のみを検出する能力がある単一特異性モノクローナル抗体である。したがって、その3個の異なる免疫グロブリンの悪性細胞への結合の度合を従来のアッセイを使用して調べるために、3つの異なるIHC試験が、腫瘍材料の同じブロックに由来する3つの異なる組織切片上で実施される必要がある。加えて、日常的な組織分析に現在、典型的に使用されているような、従来の酵素に基づいたアッセイに関して、各スライドは、所定の抗原の存在または非存在および発現のレベルを決定するために定性的スコアリングシステムを使用して、病理学者により評価されなければならない。その後、その3つの試験からの結果が組み合わされて、プロファイルが決定されるべきであり、それが、予後情報を提供し、治療の選択を助ける。そのようなアッセイの効率、精度、および信頼性は、その分野において大きな重要性をもつ。
【0004】
検査室間にわたり高レベルの再現性が必要であるため、免疫組織化学的分析は、典型的には、酵素的検出などの標準方法、および十分特徴付けられた抗体により認識されるような少数の十分研究された抗原に依拠する(Moriyaら(2006年)Med. Mol. Morphol. 39巻:8~13頁;Payneら(2008年)Histopathology 52巻:82~90頁;YehおよびMies(2008年)Arch. Pathol. Lab. Med. 132巻:349~57頁)。一次抗体に会合したペルオキシダーゼの直接的検出は場合によっては使用されるが、ペルオキシダーゼ連結二次抗体により、またはビオチンおよびアビジンなどの高親和性小分子/結合タンパク質ペアでタグ付けされた一次抗体を通しての間接的検出を使用して、シグナルを増幅し、それにしたがって、アッセイの感度を向上させることができる。しかしながら、これらの場合のそれぞれにおいて、シグナルの強度は、典型的には、主観的に判断され、したがって、アッセイの診断的および予後的価値を制限している。
【0005】
米国において、典型的には、乳房のしこりを発生している女性において、1年あたり約160万の乳房生検が実施されている。生検は、皮膚を通しての細針吸引もしくはコア針、または開放手術によりしこりの組織をサンプリングすることを必要とする。その後、得られた組織は、悪性細胞の存在を検出するために調べられる。そのような生検の大部分は、組織学技術を使用する組織の検査に基づいて良性と見なされる。2010年において、組織学的分析により、260,000個の生検が悪性を示すことが決定された。これらのうち、およそ200,000人の女性は浸潤性乳がんを有し、他の女性は、がん細胞が周囲組織に浸潤していない非浸潤性乳管癌(DCIS)として記載された。原発性腫瘍の早期検出および根治的処置の進歩が、乳がん生存統計を劇的に向上させている。しかしそれでも、多くの腫瘍が早期検出を逃れ、または効果的な一次治療にもかかわらず、乳がん死亡率の主な原因である遠隔転移を発生し続ける。乳がんの分子分析における現在の努力の多くは、新しいバイオマーカーを同定すること、ならびに予後および予測の機構的決定因子を定義することに向けられている。いかなるそのような新規な疾患マーカーも、組織生検の日常的な免疫組織化学染色へ容易に組み入れることができるならば、有益であると予想される。
【0006】
上記で言及されているように、酵素コンジュゲートを使用する検出の限界のため、各標的抗原が、別々の組織学的切片上で評価される場合が多く、内部対照が容易には実行されない。結果として、定量、共局在化の評価、および細胞以下の分解能が問題である。免疫組織化学検査における検出のための酵素コンジュゲートの、十分確立された代替物は、蛍光標識プローブを使用する。このアプローチの主要な利点は、多重化の可能性にある。手短に言えば、その抗体自体か、または、より典型的には、二次抗体もしくは他の間接的検出試薬のいずれかが、蛍光基、タンパク質、または既知の分光学的性質をもつ他の材料で標識される。蛍光標識の励起波長の光での試料の照射により、特定の発光波長の蛍光シグナルの存在、および組織切片内の部位におけるそのシグナルの局在化が観察される。したがって、蛍光シグナルは、抗原の量および分布に関する情報を提供することにおいて、色素形成酵素生成物と同じ目的を果たす。
【0007】
蛍光抗体を形成するための免疫グロブリンの化学反応性蛍光試薬での共有結合的修飾、および抗原の検出における蛍光抗体の使用は、現在、十分確立されており、1941年に、フルオレセインイソチオシアネートでの特定の免疫グロブリンのCoonsの修飾により実証されている。Coonsら(1941年)Proc Soc Exp Biol. 47巻:200~2頁。その後まもなく、別個の蛍光色、フルオレセインおよびローダミンで標識された抗体による2個の抗原の同時検出が続いた。現代化学は、紫外から赤外まで及ぶ励起および発光スペクトルを有する幅広い範囲の化学反応性フルオロフォアを提供している。次には、現代のコーティング方法は、特定の励起および発光バンドを選択することにより、10よりはるかに高いシグナル対ノイズ比を有する、可視光スペクトルにわたる4つまたはそれ超の異なるフルオロフォアを容易に区別することができる干渉フィルターを生み出している。
【0008】
蛍光に基づいた免疫学的アッセイは、病理学的切片の染色およびサイトメトリにおいて、少なくとも一部、複数の、異なって標識された蛍光抗体の使用を通して複数の抗原を区別する能力のために、重要性が増している。これらのアプローチにおいて、異なる抗体は、例えば、異なる波長で放射される蛍光を測定することにより、区別可能である。異なるフルオロフォアの他の分光学的性質もまた、結合した抗体を区別するために使用される可能性があり得る。蛍光に基づいたアッセイが、単一組織上で3つより多い抗原を検出するために使用される可能性があり得ることは認識されている一方で、蛍光標識一次抗体を用いる現在の方法は、十分な感度を提供していない。特に、5つより多いフルオロフォアの抗体への取り込みでの蛍光クエンチングまたは免疫反応性の低下により、3~5つだけのフルオロフォアが、単一抗体へコンジュゲートすることができる。さらに、モノクローナル抗体は、任意の標的抗原上の単一のエピトープと結合し、それゆえにさらに、抗原上の複数部位への複数の抗体の結合によるシグナルのいかなる可能な増幅も制限する。
【0009】
対照的に、蛍光標識ポリクローナル二次抗体は、複数の二次抗体が各一次抗体分子上に提示された別個のエピトープと結合することができるため、蛍光標識一次抗体より強いシグナルを生じることができる。しかしながら、このアプローチは、典型的には、一次抗体の大部分が2つの種、マウスおよびウサギにおいてのみ産生されているため、1個または2個だけの標的の検出に限定される。
【0010】
1つの種由来の抗体を使用する多重化を可能にするための1つのアプローチは、ハプテン修飾抗体および蛍光標識抗ハプテン抗体の使用であった。しかしながら、通常の試薬を使用して、この方法は、蛍光標識二次抗体により生じるシグナルより有意に低い強度であるシグナルを生成し、これは、おそらく、小分子ハプテンに対する市販抗体の相対的に低い親和性のためである。
【0011】
したがって、免疫組織化学検査をさらに進歩させるために、以下の基準の一部または全部を満たすことができる試薬のパネルを作製することができる技術の必要性が依然としてある:1)単一の組織試料内、および組織形態学の文脈の中において、現在利用可能なものより高い感度および特異性で、複数の抗原を同時に分析する能力、2)複数の抗原の空間分布をお互いの関係において分析する能力、3)より高い感度および特異性で、各抗原を個々に定量し、1個の抗原の別の抗原に対する比率を決定する能力、4)目的の対象(細胞型)をそれらの染色パターンに基づいて同定する能力、5)目的の対象を数値的に定量する能力、ならびに6)単一の組織上の複数の抗原の分析の完全な自動化を可能にする自動染色および画像分析パラダイムに組み入れられる能力。さらに、診断または研究を目的とした、迅速な標準化された複数抗原の検出および定量を可能にする、使いやすいキットの必要性が依然としてある。本開示は、これらの必要性、および現在取り組まれていない免疫学的アッセイにおける他の問題に取り組むことに向けられる。
【0012】
例えば、HaertigおよびFritschy(2009年)Encyclopedia of Life Sciences (ELS)、John Wiley & Sons(DOI:10.1002/9780470015902.a0002626.pub2)は、ビオチンでハプテン化された一次抗体での、ジゴキシゲニンでハプテン化された一次抗体での、およびフルオレセイン化された(fluoresceinated)レクチンでの組織切片の標識を開示する。その後、標識された試料は、蛍光標識ストレプトアビジン、抗ジゴキシゲニン、および抗フルオレセインを使用して染色された。しかしながら、これらのハプテンを使用して可能な多重化のレベルは制限され、ハプテンに対する利用可能な抗体の低親和性はさらに、これらのアッセイの感度を制限する。
【0013】
Frischら(2011年)Methods Mol. Biol. 717巻:233~244頁(DOI:10.1007/978-1-61779-024-9_13)は、単一の宿主源由来の一次抗原を使用する多色免疫蛍光技術を開示する。HaertigおよびFritschyと同様に、一次抗体は、ビオチンおよびジゴキシゲニンでハプテン化され、二次染色は、蛍光標識ストレプトアビジンおよび抗ジゴキシゲニンを含有した。試料は、追加として、ハプテン化された一次抗体での処理の前に、従来の蛍光標識異種間二次抗体/一次抗体のペアで標識されて、三重染色を提供する。その技術は、無関係の一次抗体と二次抗体の間の交差反応性を最小限にし、限定された同時的多重化を可能にするが、そのアプローチは、感度が制限され、多重化のより高いレベルへ容易に拡大することができない。
【0014】
Gerdesら(2013年)PNAS 110巻:11982~7頁(DOI:10.1073/pnas.1300136110)は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)がん組織において61個のタンパク質バイオマーカーを検出するためのMultiOmyx(商標)(GE Healthcare)超多重化(hyperplexing)技術の使用を記載する。このアッセイは、それぞれの次のラウンドの前に色素の過酸化物漂白が続く、染色の各ラウンドにおいて蛍光標識抗体のペアを使用する。(www.multiomyx.comもまた参照。)しかしながら、その技術は、蛍光標識一次抗体で、高発現の標的だけを検出するそれの能力、および蛍光標識二次抗体で低発現の標的を画像化するために間接的検出を使用する必要性によってかなり制限される。この技術はまた、各ラウンドについて抗体のペアリングの最適化を必要とする。その方法はまた、31ラウンドの染色、画像化、および漂白があるため、極めて大きな労働力を要する。複数回の過酸化物インキュベーションが、次のラウンドの染色および画像化における各標的の検出の感度に悪影響を与え得ることはさらに認識されている。
【0015】
Hollman-Hewgleyら(2014年)Am. J. Path. Surg. 38巻:1193~1202頁は、同様に、FFPEホジキンリンパ腫組織において10個のタンパク質バイオマーカーを検出するためのMultiOmyx(商標)(GE Healthcare)超多重化技術の使用を記載する。
【0016】
Stackら(2014年)Methods 70巻:46~58頁(DOI:10.1016/j.ymeth.2014..08.016)は、各マーカーについて別々の一重化IHCアッセイを必要とする異なる反復性多重化アプローチを記載する。最初の標識、続いて、ペルオキシダーゼ/チラミド検出により単一のバイオマーカーを画像化する一連のステップ、続いて、マイクロ波抗原回復(retrieval)ステップを使用する抗体取り除きがある。この手順は、調べるバイオマーカーの数によって、必要に応じて、5~6回、繰り返される。その手順は、完了するのに2日間、必要とする。
上記の試みにもかかわらず、感度がより高く、特異性がより高く、単一のアッセイにおいて複数の抗原を検出する能力がより高い、向上した免疫学的アッセイの試薬、方法、およびキットの開発が引き続き、必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【文献】Coonsら(1941年)Proc Soc Exp Biol. 47巻:200~2頁
【文献】HaertigおよびFritschy(2009年)Encyclopedia of Life Sciences (ELS)、John Wiley & Sons(DOI:10.1002/9780470015902.a0002626.pub2)
【文献】Frischら(2011年)Methods Mol. Biol. 717巻:233~244頁(DOI:10.1007/978-1-61779-024-9_13)
【文献】Gerdesら(2013年)PNAS 110巻:11982~7頁(DOI:10.1073/pnas.1300136110)
【文献】Hollman-Hewgleyら(2014年)Am. J. Path. Surg. 38巻:1193~1202頁
【文献】Stackら(2014年)Methods 70巻:46~58頁(DOI:10.1016/j.ymeth.2014..08.016)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本開示は、一態様では、様々な免疫学的アッセイにおいて有用性がある、免疫試薬組成物を提供することにより、これらおよびその他の必要性に対処する。具体的には、本発明のこの態様によれば、免疫試薬組成物は、
架橋抗原とカップリングした一次抗体;および
検出可能な二次抗体
を含み、該検出可能な二次抗体が該架橋抗原に対して高親和性で特異的である。
【0019】
一部の実施形態では、架橋抗原はペプチドまたは低分子ハプテンである。
【0020】
一部の実施形態では、架橋抗原は複数の抗原決定基を含む。具体的な実施形態では、複数の抗原決定基における各抗原決定基は同じである。別の具体的な実施形態では、複数の抗原決定基は線状反復構造を含む。より具体的には、線状反復構造は線状反復ペプチド構造である。
【0021】
別の具体的な実施形態では、複数の抗原決定基は少なくとも3個の抗原決定基を含むか、または架橋抗原は分岐型構造を含む。
【0022】
一部の実施形態では、架橋抗原は、非天然残基を含むペプチドである。具体的には、 非天然残基は、非天然立体異性体またはβ-アミノ酸であり得る。
【0023】
一部の実施形態では、一次抗体および架橋抗原は、コンジュゲーション部分を介して化学的カップリング反応によりカップリングしている。具体的な実施形態では、一次抗体および架橋抗原が、高効率コンジュゲーション部分によりカップリングされる。これらの実施形態の一部では、高効率コンジュゲーション部分は、ヒドラゾンまたはオキシムなどのシッフ塩基である。一部の実施形態では、高効率コンジュゲーション部分は、クリック反応により形成される。一部の実施形態では、コンジュゲーション部分は、開裂可能なリンカーを含む。
【0024】
ある特定の実施形態では、一次抗体は、細胞マーカーに特異的である。具体的には、細胞マーカーは、4-1BB、AFP、ALK1、アミロイドA、アミロイドP、アンドロゲン受容体、アネキシンA1、ASMA、BCA225、BCL-1、BCL-2、BCL-6、BerEP4、ベータ-カテニン、ベータ-HCG、BG-8、BOB-1、CA19-9、CA125、カルシトニン、カルデスモン、カルポニン-1、カルレチニン、CAM5.2、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD31、CD33、CD34、CD38、CD42b、CD43、CD45 LCA、CD45RO、CD56、CD57、CD61、CD68、CD79a、CD99、CD117、CD138、CD163、CDX2、CEA、クロモグラニンA、CMV、c-kit、c-MET、c-MYC、IV型コラーゲン、補体3c(C3c)、COX-2、CXCR5、CK1、CK5、CK6、CK7、CK8、CK14、CK18、CK17、CK19、CK20、CK903、CK AE1、CK AE1/AE3、D2-40、デスミン、DOG-1、E-カドヘリン、EGFR、EMA、ER、ERCC1、第VIII因子関連抗原、活性化第XIII因子、ファスシン、FoxP1、FoxP3、ガレクチン-3、GATA-3、GCDFP-15、GCET1、GFAP、グリコホリンA、グリピカン3、グランザイムB、HBME-1、Helicobacter Pylori、ヘモグロビンA、Hep Par1、HER2、HHV-8、HMB-45、HSV l/ll、ICOS、IFNガンマ、IgA、IgD、IgG、IgM、IL17、IL4、インヒビン、iNOS、カッパIg軽鎖、Ki67、LAG-3、ラムダIg軽鎖、リゾチーム、マンマグロビンA、MART-1/メランA、マスト細胞トリプターゼ、MLH1、MOC-31、MPO、MSA、MSH2、MSH6、MUC1、MUC2、MUM1、MyoD1、ミオゲニン、ミオグロビン、ナプシンA、ネスチン、NSE、Oct-2、OX40、OX40L、p16、p21、p27、p40、p53、p63、p504s、PAX-5、PAX-8、PD-1、PD-L1、PHH3、PIN-4、PLAP、PMS2、Pneumocystis jiroveci(carinii)、PR、PSA、PSAP、RCC、S-100、SMA、SMM、スムーセリン、SOX10、SOX11、サーファクタントアポプロテインA、シナプトフィジン、TAG72、TdT、トロンボモジュリン、チログロブリン、TIA-1、TIM3、TRAcP、TTF-1、チロシナーゼ、ウロプラキン、VEGFR-2、ビリン、ビメンチン、およびWT-1からなる群から選択され得る。別の実施形態では、一次抗体は、異なる種由来の免疫グロブリンに特異的である。
【0025】
実施形態では、検出可能な二次抗体は検出可能な標識を含む。一部の実施形態では、検出可能な標識は、フルオロフォア、酵素、アップコンバージョンナノ粒子、量子ドット、または検出可能なハプテンである。具体的な実施形態では、検出可能な標識はフルオロフォアである。他の具体的な実施形態では、酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはダイズペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼであり、アルカリホスファターゼであり、またはグルコースオキシダーゼである。
【0026】
一部の実施形態によれば、検出可能な二次抗体は、架橋抗原に対して特異的であり、最大で100nM、最大で30nM、最大で10nM、最大で3nM、最大で1nM、最大で0.3nM、最大で0.1nM、最大で0.03nM、最大で0.01nM、または最大で0.003nMまたはさらに低い解離定数を有する。
【0027】
一部の組成物の実施形態は、複数の、架橋抗原をカップリングさせた一次抗体(bridging antigen-coupled primary antibody)、および複数の検出可能な二次抗体を含み、それらには、3個、5個、10個、またはさらにそれ超の試薬ペアを含む組成物が挙げられる。
【0028】
別の態様では、本開示は、架橋抗原にカップリングした一次抗体を含む免疫試薬を提供する。
【0029】
具体的な実施形態では、免疫試薬は、上記の免疫試薬組成物の免疫試薬の特徴のうちの1つまたは複数を含む。
【0030】
別の態様によれば、本開示は、上記の免疫試薬のいずれか複数を含む多重化免疫試薬組成物を提供する。具体的な実施形態では、組成物は、少なくとも3個、少なくとも5個、少なくとも10個、またはさらにそれ超の免疫試薬を含む。
【0031】
別の態様では、本開示は、
第1の標的抗原を含む第1の試料を供給するステップ;
該第1の標的抗原を第1の免疫試薬と反応させるステップであって、該第1の免疫試薬が、該第1の標的抗原に特異的な上記免疫試薬のいずれかである、ステップ;
該第1の免疫試薬を第1の検出可能な二次抗体と反応させるステップであって、該第1の検出可能な二次抗体が、該第1の免疫試薬の架橋抗原に対して、高親和性で特異的である、ステップ;および
該第1の免疫試薬の該架橋抗原と会合している該第1の検出可能な二次抗体を検出するステップ
を含む、免疫学的アッセイのための方法を提供する。
【0032】
実施形態では、第1の標的抗原は、細胞マーカー、例えば、ER、HER2、PR、Ki67、EGFR、CK1、CK5、CK6、CK7、CK14、CK17、サイトケラチンAE1/AE3、ネスチン、ビメンチン、ASMA、Ber-EP4、p16、p40、p53、p63、c-kit、CDマーカーまたは上記マーカーのいずれかである。別の実施形態では、第1の標的抗原は異なる種由来の免疫グロブリンである。
【0033】
具体的な実施形態では、第1の検出可能な二次抗体は検出可能な標識を含む。より具体的には、検出可能な標識は、フルオロフォア、酵素、アップコンバージョンナノ粒子、量子ドット、または検出可能なハプテンである。一部の実施形態では、検出可能な標識はフルオロフォアであり、一部の実施形態では、酵素は、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはグルコースオキシダーゼである。具体的な実施形態では、ペルオキシダーゼは西洋ワサビペルオキシダーゼまたはダイズペルオキシダーゼである。
【0034】
一部の実施形態では、第1の標的抗原は組織切片内にある。これらの実施形態では、検出するステップは、蛍光検出ステップまたは酵素的検出ステップであり得る。
【0035】
一部の実施形態では、第1の標的抗原は、細胞内または細胞上に存在し得る。これらの実施形態では、第1の標的抗原は、細胞の表面上、細胞の細胞質内、または細胞の核内に存在し得る。
【0036】
一部の実施形態では、検出するステップは、蛍光検出ステップであり、具体的な実施形態では、方法は、第1の検出可能な二次抗体を結合している細胞を選別するステップをさらに含み得る。
【0037】
一部の実施形態では、方法は、
前記第1の試料における第2の標的抗原を第2の免疫試薬と反応させるステップであって、該第2の免疫試薬が、該第2の抗原に特異的な上記免疫試薬のいずれかである、ステップ;
該第2の免疫試薬を第2の検出可能な二次抗体と反応させるステップであって、該第2の検出可能な二次抗体が、該第2の免疫試薬の架橋抗原に対して、高親和性で特異的である、ステップ;および
該第2の免疫試薬の該架橋抗原と会合している該第2の検出可能な二次抗体を検出するステップ
をさらに含む。
【0038】
より具体的な方法の実施形態は、試料における少なくとも3個の標的抗原、試料における少なくとも5個の標的抗原、またはさらに、試料における少なくとも10個の標的抗原を検出することをさらに含む。
【0039】
一部の方法の実施形態は、第2の試料における第2の標的抗原を第2の免疫試薬と反応させるステップであって、該第2の免疫試薬が、該第2の標的抗原に特異的な上記免疫試薬のいずれかである、ステップ;
該第2の免疫試薬を第2の検出可能な二次抗体と反応させるステップであって、該第2の検出可能な二次抗体が、該第2の免疫試薬の架橋抗原に対して、高親和性で特異的である、ステップ;および
該第2の免疫試薬の該架橋抗原と会合している該第2の検出可能な二次抗体を検出するステップ
をさらに含み、前記第1の試料および該第2の試料が、組織試料の連続切片である。
【0040】
別の方法の実施形態は、第1の標的抗原を含む試料を供給するステップ;
該第1の標的抗原を第1の免疫試薬と反応させるステップであって、該第1の免疫試薬が、該第1の標的抗原に特異的な上記免疫試薬のいずれかである、ステップ;
該第1の免疫試薬を第1の反応性二次抗体と反応させるステップであって、該第1の反応性二次抗体が、該第1の免疫試薬の架橋抗原と高親和性で結合する、ステップ;および
該第1の反応性二次抗体を第1の検出可能な試薬と反応させるステップであって、該第1の検出可能な試薬が、該第1の標的抗原の近くで該試料と結合している、ステップ
を含む。
【0041】
一部の実施形態では、これらの方法は、第1の反応性二次抗体を前記試料から解離させるステップをさらに含む。
【0042】
一部の実施形態では、これらの方法は、前記試料における第2の標的抗原を第2の免疫試薬と反応させるステップであって、該第2の免疫試薬が、該第2の標的抗原に特異的な上記免疫試薬のいずれかである、ステップ;
該第2の免疫試薬を第2の反応性二次抗体と反応させるステップであって、該第2の反応性二次抗体が、該第2の免疫試薬の架橋抗原と高親和性で結合する、ステップ;および
該第2の反応性二次抗体を第2の検出可能な試薬と反応させるステップであって、該第2の検出可能な試薬が、該第2の標的抗原の近くで該試料に結合している、ステップ
をなおさらに含む。
【0043】
一部の実施形態では、これらの方法は、前記試料において前記第1の検出可能な試薬および前記第2の検出可能な試薬を検出するステップを含む。
【0044】
免疫学的アッセイのための他の方法は、
第1の標的抗原を含む試料を供給するステップ;
該第1の標的抗原を第1の一次抗体と反応させるステップであって、該第1の一次抗体が該第1の標的抗原に特異的である、ステップ;
該第1の一次抗体を第1の免疫試薬と反応させるステップであって、該第1の免疫試薬が、該第1の一次抗体に特異的な上記免疫試薬のいずれかである、ステップ;
該第1の免疫試薬を第1の検出可能な二次抗体と反応させるステップであって、該第1の検出可能な二次抗体が、該第1の免疫試薬の架橋抗原に対して、高親和性で特異的である、ステップ;および
該第1の免疫試薬の該架橋抗原と会合している該第1の検出可能な二次抗体を検出するステップ
を含む。
【0045】
別の態様によれば、本開示は、免疫学的アッセイのためのキットを提供する。実施形態では、キットは、上記の免疫試薬のいずれか、免疫試薬の架橋抗原に対して高親和性で特異的である検出可能な二次抗体、およびキットを使用するための指示(instruction)を含む。具体的な実施形態では、キットは、上記の免疫試薬のいずれかの少なくとも3個、少なくとも5個、またはさらに、少なくとも10個;免疫試薬の架橋抗原に対して高親和性で特異的である、少なくとも3個、少なくとも5個、またはさらに、少なくとも10個の検出可能な二次抗体;およびキットを使用するための指示を含む。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
架橋抗原とカップリングした一次抗体;および
検出可能な二次抗体
を含む免疫試薬組成物であって、該検出可能な二次抗体が該架橋抗原に対して高親和性で特異的である、免疫試薬組成物。
(項目2)
前記架橋抗原がペプチドである、項目1に記載の免疫試薬組成物。
(項目3)
前記架橋抗原が複数の抗原決定基を含む、項目1に記載の免疫試薬組成物。
(項目4)
前記複数の抗原決定基における各抗原決定基が同じである、項目3に記載の免疫試薬組成物。
(項目5)
前記複数の抗原決定基が線状反復構造を含む、項目3に記載の免疫試薬組成物。
(項目6)
前記線状反復構造が線状反復ペプチド構造である、項目5に記載の免疫試薬組成物。
(項目7)
前記複数の抗原決定基が少なくとも3個の抗原決定基を含む、項目3に記載の免疫試薬組成物。
(項目8)
前記架橋抗原が分岐型構造を含む、項目3に記載の免疫試薬組成物。
(項目9)
前記架橋抗原が、非天然残基を含むペプチドである、項目1に記載の免疫試薬組成物。
(項目10)
前記非天然残基が非天然立体異性体である、項目9に記載の免疫試薬組成物。
(項目11)
前記非天然残基がβ-アミノ酸である、項目9に記載の免疫試薬組成物。
(項目12)
前記一次抗体および前記架橋抗原が、コンジュゲーション部分を介して化学的カップリング反応によりカップリングしている、項目1に記載の免疫試薬組成物。
(項目13)
前記一次抗体および前記架橋抗原が高効率コンジュゲーション部分を介してカップリングしている、項目12に記載の免疫試薬組成物。
(項目14)
前記高効率コンジュゲーション部分がシッフ塩基である、項目13に記載の免疫試薬組成物。
(項目15)
前記シッフ塩基がヒドラゾンまたはオキシムである、項目14に記載の免疫試薬組成物。
(項目16)
前記高効率コンジュゲーション部分がクリック反応によって形成される、項目13に記載の免疫試薬組成物。
(項目17)
前記コンジュゲーション部分が切断可能なリンカーを含む、項目12に記載の免疫試薬組成物。
(項目18)
前記一次抗体が細胞マーカーに特異的である、項目1に記載の免疫試薬組成物。
(項目19)
前記細胞マーカーが、4-1BB、AFP、ALK1、アミロイドA、アミロイドP、アンドロゲン受容体、アネキシンA1、ASMA、BCA225、BCL-1、BCL-2、BCL-6、BerEP4、ベータ-カテニン、ベータ-HCG、BG-8、BOB-1、CA19-9、CA125、カルシトニン、カルデスモン、カルポニン-1、カルレチニン、CAM5.2、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD31、CD33、CD34、CD38、CD42b、CD43、CD45 LCA、CD45RO、CD56、CD57、CD61、CD68、CD79a、CD99、CD117、CD138、CD163、CDX2、CEA、クロモグラニンA、CMV、c-kit、c-MET、c-MYC、IV型コラーゲン、補体3c(C3c)、COX-2、CXCR5、CK1、CK5、CK6、CK7、CK8、CK14、CK18、CK17、CK19、CK20、CK903、CK AE1、CK AE1/AE3、D2-40、デスミン、DOG-1、E-カドヘリン、EGFR、EMA、ER、ERCC1、第VIII因子関連抗原、活性化第XIII因子、ファスシン、FoxP1、FoxP3、ガレクチン-3、GATA-3、GCDFP-15、GCET1、GFAP、グリコホリンA、グリピカン3、グランザイムB、HBME-1、Helicobacter Pylori、ヘモグロビンA、Hep Par1、HER2、HHV-8、HMB-45、HSV l/ll、ICOS、IFNガンマ、IgA、IgD、IgG、IgM、IL17、IL4、インヒビン、iNOS、カッパIg軽鎖、Ki67、LAG-3、ラムダIg軽鎖、リゾチーム、マンマグロビンA、MART-1/メランA、マスト細胞トリプターゼ、MLH1、MOC-31、MPO、MSA、MSH2、MSH6、MUC1、MUC2、MUM1、MyoD1、ミオゲニン、ミオグロビン、ナプシンA、ネスチン、NSE、Oct-2、OX40、OX40L、p16、p21、p27、p40、p53、p63、p504s、PAX-5、PAX-8、PD-1、PD-L1、PHH3、PIN-4、PLAP、PMS2、Pneumocystis jiroveci(carinii)、PR、PSA、PSAP、RCC、S-100、SMA、SMM、スムーセリン、SOX10、SOX11、サーファクタントアポプロテインA、シナプトフィジン、TAG72、TdT、トロンボモジュリン、チログロブリン、TIA-1、TIM3、TRAcP、TTF-1、チロシナーゼ、ウロプラキン、VEGFR-2、ビリン、ビメンチン、およびWT-1からなる群から選択される、項目18に記載の免疫試薬組成物。
(項目20)
前記一次抗体が、異なる種由来の免疫グロブリンに特異的である、項目1に記載の免疫試薬組成物。
(項目21)
前記検出可能な二次抗体が検出可能な標識を含む、項目1に記載の免疫試薬組成物。
(項目22)
前記検出可能な標識が、フルオロフォア、酵素、アップコンバージョンナノ粒子、量子ドット、または検出可能なハプテンである、項目21に記載の免疫試薬組成物。
(項目23)
前記検出可能な標識がフルオロフォアである、項目22に記載の免疫試薬組成物。
(項目24)
前記酵素が、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはグルコースオキシダーゼである、項目22に記載の免疫試薬組成物。
(項目25)
前記ペルオキシダーゼが西洋ワサビペルオキシダーゼまたはダイズペルオキシダーゼである、項目24に記載の免疫試薬組成物。
(項目26)
前記架橋抗原が検出可能な標識を含む、項目1に記載の免疫試薬組成物。
(項目27)
前記架橋抗原の前記検出可能な標識がフルオロフォアである、項目26に記載の免疫試薬組成物。
(項目28)
前記検出可能な二次抗体が検出可能な標識を含む、項目26に記載の免疫試薬組成物。
(項目29)
前記架橋抗原の前記検出可能な標識および前記二次抗体の前記検出可能な標識がどちらも、同じ波長の蛍光によって検出可能である、項目28に記載の免疫試薬組成物。
(項目30)
前記検出可能な二次抗体が、前記架橋抗原に対して特異的であり、最大で100nM、最大で30nM、最大で10nM、最大で3nM、最大で1nM、最大で0.3nM、最大で0.1nM、最大で0.03nM、最大で0.01nM、または最大で0.003nMの解離定数を有する、項目1に記載の免疫試薬組成物。
(項目31)
複数の、項目1~30のいずれか一項に記載の免疫試薬組成物を含む、多重化免疫試薬組成物。
(項目32)
少なくとも3個の免疫試薬組成物を含む、項目31に記載の多重化免疫試薬組成物。
(項目33)
少なくとも5個の免疫試薬組成物を含む、項目31に記載の多重化免疫試薬組成物。
(項目34)
少なくとも10個の免疫試薬組成物を含む、項目31に記載の多重化免疫試薬組成物。
(項目35)
架橋抗原とカップリングした一次抗体を含む免疫試薬。
(項目36)
前記架橋抗原がペプチドである、項目35に記載の免疫試薬。
(項目37)
前記架橋抗原が複数の抗原決定基を含む、項目35に記載の免疫試薬。
(項目38)
前記複数の抗原決定基における各抗原決定基が同じである、項目37に記載の免疫試薬。
(項目39)
前記複数の抗原決定基が線状反復構造を含む、項目37に記載の免疫試薬。
(項目40)
前記線状反復構造が線状反復ペプチド構造である、項目39に記載の免疫試薬。
(項目41)
前記複数の抗原決定基が少なくとも3個の抗原決定基を含む、項目37に記載の免疫試薬。
(項目42)
前記架橋抗原が分岐型構造を含む、項目37に記載の免疫試薬。
(項目43)
前記架橋抗原が、非天然残基を含むペプチドである、項目35に記載の免疫試薬。
(項目44)
前記非天然残基が非天然立体異性体である、項目43に記載の免疫試薬。
(項目45)
前記非天然残基がβ-アミノ酸である、項目43に記載の免疫試薬。
(項目46)
前記一次抗体および前記架橋抗原が、コンジュゲーション部分を介して化学的カップリング反応によりカップリングしている、項目35に記載の免疫試薬。
(項目47)
前記一次抗体および前記架橋抗原が高効率コンジュゲーション部分を介してカップリングしている、項目46に記載の免疫試薬。
(項目48)
前記高効率コンジュゲーション部分がシッフ塩基である、項目47に記載の免疫試薬。
(項目49)
前記シッフ塩基がヒドラゾンまたはオキシムである、項目48に記載の免疫試薬。
(項目50)
前記高効率コンジュゲーション部分がクリック反応によって形成される、項目47に記載の免疫試薬。
(項目51)
前記コンジュゲーション部分が切断可能なリンカーを含む、項目46に記載の免疫試薬。
(項目52)
前記一次抗体が細胞マーカーに特異的である、項目35に記載の免疫試薬。
(項目53)
前記細胞マーカーが、4-1BB、AFP、ALK1、アミロイドA、アミロイドP、アンドロゲン受容体、アネキシンA1、ASMA、BCA225、BCL-1、BCL-2、BCL-6、BerEP4、ベータ-カテニン、ベータ-HCG、BG-8、BOB-1、CA19-9、CA125、カルシトニン、カルデスモン、カルポニン-1、カルレチニン、CAM5.2、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD31、CD33、CD34、CD38、CD42b、CD43、CD45 LCA、CD45RO、CD56、CD57、CD61、CD68、CD79a、CD99、CD117、CD138、CD163、CDX2、CEA、クロモグラニンA、CMV、c-kit、c-MET、c-MYC、IV型コラーゲン、補体3c(C3c)、COX-2、CXCR5、CK1、CK5、CK6、CK7、CK8、CK14、CK18、CK17、CK19、CK20、CK903、CK AE1、CK AE1/AE3、D2-40、デスミン、DOG-1、E-カドヘリン、EGFR、EMA、ER、ERCC1、第VIII因子関連抗原、活性化第XIII因子、ファスシン、FoxP1、FoxP3、ガレクチン-3、GATA-3、GCDFP-15、GCET1、GFAP、グリコホリンA、グリピカン3、グランザイムB、HBME-1、Helicobacter Pylori、ヘモグロビンA、Hep Par1、HER2、HHV-8、HMB-45、HSV l/ll、ICOS、IFNガンマ、IgA、IgD、IgG、IgM、IL17、IL4、インヒビン、iNOS、カッパIg軽鎖、Ki67、LAG-3、ラムダIg軽鎖、リゾチーム、マンマグロビンA、MART-1/メランA、マスト細胞トリプターゼ、MLH1、MOC-31、MPO、MSA、MSH2、MSH6、MUC1、MUC2、MUM1、MyoD1、ミオゲニン、ミオグロビン、ナプシンA、ネスチン、NSE、Oct-2、OX40、OX40L、p16、p21、p27、p40、p53、p63、p504s、PAX-5、PAX-8、PD-1、PD-L1、PHH3、PIN-4、PLAP、PMS2、Pneumocystis jiroveci(carinii)、PR、PSA、PSAP、RCC、S-100、SMA、SMM、スムーセリン、SOX10、SOX11、サーファクタントアポプロテインA、シナプトフィジン、TAG72、TdT、トロンボモジュリン、チログロブリン、TIA-1、TIM3、TRAcP、TTF-1、チロシナーゼ、ウロプラキン、VEGFR-2、ビリン、ビメンチン、およびWT-1からなる群から選択される、項目52に記載の免疫試薬。
(項目54)
前記一次抗体が、異なる種由来の免疫グロブリンに特異的である、項目35に記載の免疫試薬。
(項目55)
前記検出可能な二次抗体が検出可能な標識を含む、項目35に記載の免疫試薬。
(項目56)
前記検出可能な標識が、フルオロフォアである、項目55に記載の免疫試薬。
(項目57)
複数の、項目35~56のいずれか一項に記載の免疫試薬を含む、多重化免疫試薬組成物。
(項目58)
少なくとも3個の免疫試薬を含む、項目57に記載の多重化免疫試薬組成物。
(項目59)
少なくとも5個の免疫試薬を含む、項目57に記載の多重化免疫試薬組成物。
(項目60)
少なくとも10個の免疫試薬を含む、項目57に記載の多重化免疫試薬組成物。
(項目61)
第1の標的抗原を含む第1の試料を供給するステップ;
該第1の標的抗原を第1の免疫試薬と反応させるステップであって、該第1の免疫試薬が、該第1の標的抗原に特異的な、項目35~56のいずれか一項に記載の免疫試薬である、ステップ;
該第1の免疫試薬を第1の検出可能な二次抗体と反応させるステップであって、該第1の検出可能な二次抗体が、該第1の免疫試薬の架橋抗原に対して、高親和性で特異的である、ステップ;および
該第1の免疫試薬の該架橋抗原と会合している該第1の検出可能な二次抗体を検出するステップ
を含む、免疫学的アッセイのための方法。
(項目62)
前記第1の標的抗原が細胞マーカーである、項目61に記載の免疫試薬組成物。
(項目63)
前記細胞マーカーが、4-1BB、AFP、ALK1、アミロイドA、アミロイドP、アンドロゲン受容体、アネキシンA1、ASMA、BCA225、BCL-1、BCL-2、BCL-6、BerEP4、ベータ-カテニン、ベータ-HCG、BG-8、BOB-1、CA19-9、CA125、カルシトニン、カルデスモン、カルポニン-1、カルレチニン、CAM5.2、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD31、CD33、CD34、CD38、CD42b、CD43、CD45 LCA、CD45RO、CD56、CD57、CD61、CD68、CD79a、CD99、CD117、CD138、CD163、CDX2、CEA、クロモグラニンA、CMV、c-kit、c-MET、c-MYC、IV型コラーゲン、補体3c(C3c)、COX-2、CXCR5、CK1、CK5、CK6、CK7、CK8、CK14、CK18、CK17、CK19、CK20、CK903、CK AE1、CK AE1/AE3、D2-40、デスミン、DOG-1、E-カドヘリン、EGFR、EMA、ER、ERCC1、第VIII因子関連抗原、活性化第XIII因子、ファスシン、FoxP1、FoxP3、ガレクチン-3、GATA-3、GCDFP-15、GCET1、GFAP、グリコホリンA、グリピカン3、グランザイムB、HBME-1、Helicobacter Pylori、ヘモグロビンA、Hep Par1、HER2、HHV-8、HMB-45、HSV l/ll、ICOS、IFNガンマ、IgA、IgD、IgG、IgM、IL17、IL4、インヒビン、iNOS、カッパIg軽鎖、Ki67、LAG-3、ラムダIg軽鎖、リゾチーム、マンマグロビンA、MART-1/メランA、マスト細胞トリプターゼ、MLH1、MOC-31、MPO、MSA、MSH2、MSH6、MUC1、MUC2、MUM1、MyoD1、ミオゲニン、ミオグロビン、ナプシンA、ネスチン、NSE、Oct-2、OX40、OX40L、p16、p21、p27、p40、p53、p63、p504s、PAX-5、PAX-8、PD-1、PD-L1、PHH3、PIN-4、PLAP、PMS2、Pneumocystis jiroveci(carinii)、PR、PSA、PSAP、RCC、S-100、SMA、SMM、スムーセリン、SOX10、SOX11、サーファクタントアポプロテインA、シナプトフィジン、TAG72、TdT、トロンボモジュリン、チログロブリン、TIA-1、TIM3、TRAcP、TTF-1、チロシナーゼ、ウロプラキン、VEGFR-2、ビリン、ビメンチン、およびWT-1からなる群から選択される、項目62に記載の方法。
(項目64)
前記第1の標的抗原が、異なる種由来の免疫グロブリンである、項目61に記載の方法。
(項目65)
前記第1の検出可能な二次抗体が検出可能な標識を含む、項目61に記載の方法。
(項目66)
前記検出可能な標識が、フルオロフォア、酵素、アップコンバージョンナノ粒子、量子ドット、または検出可能なハプテンである、項目65に記載の方法。
(項目67)
前記検出可能な標識がフルオロフォアである、項目66に記載の方法。
(項目68)
前記酵素が、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはグルコースオキシダーゼである、項目66に記載の方法。
(項目69)
前記ペルオキシダーゼが西洋ワサビペルオキシダーゼまたはダイズペルオキシダーゼである、項目68に記載の方法。
(項目70)
前記第1の検出可能な二次抗体が、前記第1の免疫試薬の前記架橋抗原に対して特異的であり、最大で100nM、最大で30nM、最大で10nM、最大で3nM、最大で1nM、最大で0.3nM、最大で0.1nM、最大で0.03nM、最大で0.01nM、または最大で0.003nMの解離定数を有する、項目61に記載の方法。
(項目71)
前記第1の標的抗原が組織切片内にある、項目61に記載の方法。
(項目72)
前記検出するステップが蛍光検出ステップである、項目71に記載の方法。
(項目73)
前記検出するステップが酵素的検出ステップである、項目71に記載の方法。
(項目74)
前記第1の標的抗原が細胞内または細胞上にある、項目61に記載の方法。
(項目75)
前記第1の標的抗原が前記細胞の表面上にある、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記第1の標的抗原が前記細胞の細胞質内にある、項目74に記載の方法。
(項目77)
前記第1の標的抗原が前記細胞の核内にある、項目74に記載の方法。
(項目78)
前記検出するステップが蛍光検出ステップである、項目74に記載の方法。
(項目79)
前記第1の検出可能な二次抗体に結合している細胞を選別するステップをさらに含む、項目78に記載の方法。
(項目80)
前記第1の試料における第2の標的抗原を第2の免疫試薬と反応させるステップであって、該第2の免疫試薬が、該第2の標的抗原に特異的な、項目35~56のいずれか一項に記載の免疫試薬である、ステップ;
該第2の免疫試薬を第2の検出可能な二次抗体と反応させるステップであって、該第2の検出可能な二次抗体が、該第2の免疫試薬の架橋抗原に対して、高親和性で特異的である、ステップ;および
該第2の免疫試薬の該架橋抗原と会合している該第2の検出可能な二次抗体を検出するステップ
をさらに含む、項目61に記載の方法。
(項目81)
前記試料において少なくとも3個の標的抗原を検出するステップをさらに含む、項目80に記載の方法。
(項目82)
前記試料において少なくとも5個の標的抗原を検出するステップをさらに含む、項目80に記載の方法。
(項目83)
前記試料において少なくとも10個の標的抗原を検出するステップをさらに含む、項目80に記載の方法。
(項目84)
第2の試料における第2の標的抗原を第2の免疫試薬と反応させるステップであって、該第2の免疫試薬が、該第2の標的抗原に特異的な、項目35~56のいずれか一項に記載の免疫試薬である、ステップ;
該第2の免疫試薬を第2の検出可能な二次抗体と反応させるステップであって、該第2の検出可能な二次抗体が、該第2の免疫試薬の架橋抗原に対して、高親和性で特異的である、ステップ;および
該第2の免疫試薬の該架橋抗原と会合している該第2の検出可能な二次抗体を検出するステップ
をさらに含み、前記第1の試料および該第2の試料が、組織試料の連続切片である、項目61に記載の方法。
(項目85)
前記第1の試料において複数の標的抗原が検出され、前記第2の試料において複数の標的抗原が検出される、項目84に記載の方法。
(項目86)
前記第1の試料において少なくとも3個の標的抗原が検出され、前記第2の試料において少なくとも3個の標的抗原が検出される、項目85に記載の方法。
(項目87)
少なくとも3個の試料において、少なくとも3個の標的抗原が検出され、該少なくとも3個の試料が組織試料の連続切片である、項目84に記載の方法。
(項目88)
前記少なくとも3個の試料のそれぞれにおいて、複数の標的抗原が検出される、項目87に記載の方法。
(項目89)
前記少なくとも3個の試料のそれぞれにおいて、少なくとも3個の標的抗原が検出される、項目88に記載の方法。
(項目90)
第1の標的抗原を含む試料を供給するステップ;
該第1の標的抗原を第1の免疫試薬と反応させるステップであって、該第1の免疫試薬が、該第1の標的抗原に特異的な、項目35~56のいずれか一項に記載の免疫試薬である、ステップ;
該第1の免疫試薬を第1の反応性二次抗体と反応させるステップであって、該第1の反応性二次抗体が、該第1の免疫試薬の架橋抗原と高親和性で結合する、ステップ;および
該第1の反応性二次抗体を第1の検出可能な試薬と反応させるステップであって、該第1の検出可能な試薬が、該第1の標的抗原の近くで該試料と結合している、ステップ
を含む、免疫学的アッセイのための方法。
(項目91)
前記第1の反応性二次抗体が酵素活性を含む、項目90に記載の方法。
(項目92)
前記酵素活性がペルオキシダーゼ活性である、項目91に記載の方法。
(項目93)
前記ペルオキシダーゼ活性が西洋ワサビペルオキシダーゼ活性である、項目92に記載の方法。
(項目94)
前記第1の検出可能な試薬がチラミドを含む、項目90に記載の方法。
(項目95)
前記第1の検出可能な試薬がフルオロフォアまたは発色団を含む、項目90に記載の方法。
(項目96)
前記第1の反応性二次抗体を前記試料から解離させるステップをさらに含む、項目90に記載の方法。
(項目97)
前記第1の反応性二次抗体が選択的処理により前記試料から解離する、項目96に記載の方法。
(項目98)
前記選択的処理が可溶性架橋抗原での処理を含む、項目97に記載の方法。
(項目99)
前記選択的処理が切断可能なリンカーの切断を含む、項目97に記載の方法。
(項目100)
前記第1の反応性二次抗体が熱処理により前記試料から解離する、項目96に記載の方法。
(項目101)
前記試料における第2の標的抗原を第2の免疫試薬と反応させるステップであって、該第2の免疫試薬が、該第2の標的抗原に特異的な、項目35~56のいずれか一項に記載の免疫試薬である、ステップ;
該第2の免疫試薬を第2の反応性二次抗体と反応させるステップであって、該第2の反応性二次抗体が、該第2の免疫試薬の架橋抗原と高親和性で結合する、ステップ;および
該第2の反応性二次抗体を第2の検出可能な試薬と反応させるステップであって、該第2の検出可能な試薬が、該第2の標的抗原の近くで該試料に結合している、ステップ
をさらに含む、項目96に記載の方法。
(項目102)
前記第2の反応性二次抗体が酵素活性を含む、項目101に記載の方法。
(項目103)
前記酵素活性がペルオキシダーゼ活性である、項目102に記載の方法。
(項目104)
前記ペルオキシダーゼ活性が西洋ワサビペルオキシダーゼ活性である、項目103に記載の方法。
(項目105)
前記第2の検出可能な試薬がチラミドを含む、項目101に記載の方法。
(項目106)
前記第2の検出可能な試薬がフルオロフォアまたは発色団を含む、項目101に記載の方法。
(項目107)
前記第1の反応性二次抗体が選択的処理により前記試料から解離する、項目101に記載の方法。
(項目108)
前記選択的処理が可溶性架橋抗原での処理を含む、項目107に記載の方法。
(項目109)
前記選択的処理が切断可能なリンカーの切断を含む、項目107に記載の方法。
(項目110)
前記第1の反応性二次抗体が熱処理により前記試料から解離する、項目101に記載の方法。
(項目111)
前記試料において前記第1の検出可能な試薬および前記第2の検出可能な試薬を検出するステップをさらに含む、項目101に記載の方法。
(項目112)
第1の標的抗原を含む試料を供給するステップ;
該第1の標的抗原を第1の一次抗体と反応させるステップであって、該第1の一次抗体が該第1の標的抗原に特異的である、ステップ;
該第1の一次抗体を第1の免疫試薬と反応させるステップであって、該第1の免疫試薬が、該第1の一次抗体に特異的な、項目35~56のいずれか一項に記載の免疫試薬である、ステップ;
該第1の免疫試薬を第1の検出可能な二次抗体と反応させるステップであって、該第1の検出可能な二次抗体が、該第1の免疫試薬の架橋抗原に対して、高親和性で特異的である、ステップ;および
該第1の免疫試薬の該架橋抗原と会合している該第1の検出可能な二次抗体を検出するステップ
を含む、免疫学的アッセイのための方法。
(項目113)
項目35~56のいずれか一項に記載の免疫試薬、
前記架橋抗原に対して、高親和性で特異的な検出可能な二次抗体、および
キットを使用するための指示
を含む、免疫学的アッセイのためのキット。
(項目114)
前記検出可能な二次抗体が検出可能な標識を含む、項目113に記載のキット。
(項目115)
前記検出可能な標識が、フルオロフォア、酵素、アップコンバージョンナノ粒子、量子ドット、または検出可能なハプテンである、項目114に記載のキット。
(項目116)
前記検出可能な標識がフルオロフォアである、項目115に記載のキット。
(項目117)
前記酵素が、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはグルコースオキシダーゼである、項目116に記載のキット。
(項目118)
前記ペルオキシダーゼが西洋ワサビペルオキシダーゼまたはダイズペルオキシダーゼである、項目117に記載のキット。
(項目119)
前記検出可能な二次抗体が、前記架橋抗原に対して特異的であり、最大で100nM、最大で30nM、最大で10nM、最大で3nM、最大で1nM、最大で0.3nM、最大で0.1nM、最大で0.03nM、最大で0.01nM、または最大で0.003nMの解離定数を有する、項目113に記載のキット。
(項目120)
項目113に記載のキットであって、
項目35~56のいずれか一項に記載の少なくとも3個の免疫試薬、
前記架橋抗原に対して、高親和性で特異的な、少なくとも3個の検出可能な二次抗体、および
該キットを使用するための指示
を含む、キット。
(項目121)
項目113に記載のキットであって、
項目35~56のいずれか一項に記載の少なくとも5個の免疫試薬、
前記架橋抗原に対して、高親和性で特異的な、少なくとも5個の検出可能な二次抗体、および
該キットを使用するための指示
を含む、キット。
(項目122)
項目113に記載のキットであって、
項目35~56のいずれか一項に記載の少なくとも10個の免疫試薬、
前記架橋抗原に対して、高親和性で特異的な、少なくとも10個の検出可能な二次抗体、および
該キットを使用するための指示
を含む、キット。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1A~1Cは、架橋抗原をカップリングさせた一次抗体、およびその架橋抗原に特異的な蛍光二次抗体を使用する例示的な免疫組織化学アッセイの概略図を示す。(A)目的の組織または他の試料の表面上に2個の灰色の星として表された、標的抗原、(B)標的抗原に結合した架橋抗原をカップリングさせた一次抗体、および(C)架橋抗原をカップリングさせた一次抗体に結合した蛍光二次抗体であって、ここで該二次抗体上のフルオロフォアが2個の黒色の星として表されている。
【0047】
図2図2A~2Bは、従来の異種間二次抗体での、およびFLAGタグ付き一次抗体に特異的な低親和性の市販の抗体でのMCF7細胞の免疫組織化学染色を示す。細胞を、非標識ヒト抗HER2/neu受容体一次抗体(A)か、またはFLAGタグ標識ヒト抗HER2/neu受容体一次抗体(B)のいずれかで標識した。その後、細胞を、市販の抗ヒト-Dy488二次抗体(A)または市販の抗FLAG-Dy490二次抗体(B)で染色した。
【0048】
図3図3A~3Bは、異種間二次抗体での、または架橋抗原に特異的な高親和性の抗体でのトリプルポジティブ乳がん細胞の免疫組織化学染色を示す。細胞を、非標識ウサギ抗HER2/neu受容体一次抗体(A)か、またはペプチド結合ウサギ抗HER2/neu受容体一次抗体(B)のいずれかで標識した。その後、細胞を、標準蛍光抗ウサギ二次抗体(A)または蛍光高親和性抗ペプチド抗体(B)で染色した。
【0049】
図4図4A~4Dは、4個のペプチドをカップリングさせた一次抗体/フルオロフォア標識抗ペプチド二次抗体のペアの比較を示す。ペアのそれぞれについて、抗Ki67一次抗体を、対象ペプチドにコンジュゲートした。対象ペプチドに特異的なフルオロフォア標識二次抗体を適用して、Ki67ポジティブシグナルを可視化した:(A)PEP2、(B)PEP3、(C)PEP4、および(D)PEP5。
【0050】
図5図5A~5Bは、PEP1ペアおよびPEP5ペアでのエストロゲン受容体の染色強度の比較を示す。抗ER一次抗体を、PEP1(A)か、またはPEP5(B)のいずれかとカップリングさせ、フルオロフォアで標識された、対応する高親和性抗ペプチド抗体で染色した。
【0051】
図6図6A~6Dは、ペプチドをカップリングさせた一次抗体および高親和性蛍光抗ペプチド二次抗体の3個の異なるペア:PEP7をカップリングさせた抗ER一次抗体/Dy550標識抗PEP7二次抗体、PEP5をカップリングさせた抗HER2一次抗体/Dy490標識抗PEP5二次抗体、およびPEP1をカップリングさせた抗Ki67一次抗体/Dy755標識抗PEP1二次抗体での乳がん組織の多重化染色を示す。(A)Dy550発光、(B)Dy490発光、(C)Dy755発光、および(D)3つの画像のオーバーレイ。
【0052】
図7図7は、抗原をカップリングさせた異種間二次抗体を使用する例示的な3ステップの増幅型染色プロトコールの概略図を示す。ステップA:試料を、第1の種由来の非修飾抗体で標識する;ステップB:結合した抗体を、架橋抗原をカップリングさせた異種間抗体で標識する;およびステップC:架橋抗原を、架橋抗原に特異的な蛍光抗体で染色する。
【0053】
図8図8A~8Bは、ペプチドをカップリングさせた異種間抗体での3ステップ染色手順を使用した、トリプルポジティブ乳がん組織におけるHER2(A)およびER(B)の染色の結果を示す。
【0054】
図9図9A~9Dは、ペプチドをカップリングさせた一次抗体および蛍光高親和性抗ペプチド二次抗体の3個の異なるペアでのメラノーマ組織切片の多重化染色を示す。(A)抗CD4ペアからの発光、(B)抗CD20ペアからの発光、(C)抗CD68ペアからの発光、ならびに(D)抗CD4ペア、抗CD20ペア、および抗CD68ペアからの発光のオーバーレイ。図9A、9B、および9Cにおける挿入図は、各切片のズームイン視野である。
【0055】
図10図10A~10Dは、ペプチドをカップリングさせた一次抗体および蛍光高親和性抗ペプチド二次抗体の3個の異なるペアでのトリプルネガティブ乳がん組織切片の多重化染色を示す。(A)抗CK5ペアからの発光、(B)抗CK6ペアからの発光、(C)抗Ki-67ペアからの発光、ならびに(D)抗CK5ペア、抗CK6ペア、および抗Ki-67ペアからの発光のオーバーレイ。
【0056】
図11図11A~11Eは、ペプチドをカップリングさせた一次抗体および蛍光高親和性抗ペプチド二次抗体の4個の異なるペアでの扁平上皮細胞子宮頚部がん組織切片の多重化染色を示す。(A)抗CK5ペアからの発光、(B)抗EGFRペアからの発光、(C)抗p40ペアからの発光、(D)抗Ki-67ペアからの発光、ならびに(E)抗CK5ペア、抗EGFRペアおよび、抗p40ペア、および抗Ki-67ペアからの発光のオーバーレイ。
【0057】
図12図12A~12Dは、ペプチドをカップリングさせた一次抗体および蛍光高親和性抗ペプチド二次抗体のペアでの腎臓がんコア生検切片の染色を示す。(A)抗IgAペアからの発光であって、二次抗体がDy491で標識されている;(B)抗C3cペアからの発光であって、二次抗体がDy550で標識されている;(C)抗COL4A5ペアからの発光であって、二次抗体がDy650で標識されている;および(D)抗IgGペアからの発光であって、二次抗体がDy755で標識されている。
【0058】
図13図13A~13Eは、単一の組織切片におけるトリプルポジティブ乳がんマーカーの四重染色を示す:(A)HER2、(B)ER、(C)PR、(D)Ki-67、および(E)4つの画像のオーバーレイ。
【0059】
図14図14A~14Eは、(A)CD3、(B)CD4、(C)CD8、および(D)CD20を検出する、単一の組織切片におけるトリプルポジティブ乳がんマーカーの四重染色を示す。(E)において、4つの画像のオーバーレイが示されている。
【0060】
図15図15は、HER2、ER、PR、Ki-67、CD3、CD4、およびCD8を示す、トリプルポジティブ乳がんパネル(図14)および四重免疫マーカーパネル(図15)での四重染色からの連続組織染色結果のオーバーレイを示す。
【0061】
図16図16A~16Eは、(A)CK5、(B)ビメンチン、(C)EGFR、(D)Ki-67を検出し、(E)4つの画像のオーバーレイである、トリプルネガティブ乳がん組織の四重染色を示す。
【0062】
図17図17A~17Eは、(A)CD8、(B)CD4、(C)CD20、(D)CD3を検出し、(E)4つの画像のオーバーレイである、トリプルネガティブ乳がん組織の四重染色を示す。
【0063】
図18図18は、EGFR、ビメンチン、CK5、Ki-67、CD3、CD4、およびCD8を示す、トリプルネガティブ乳がんパネル(図16)、および四重免疫マーカーパネル(図17)での四重染色からの連続組織染色結果のオーバーレイを示す。(CD20はソフトウェアの限界のため、示されていない。)
【0064】
図19図19は、CK5、ビメンチン、EGFR、およびKi-67を検出する、トリプルネガティブ乳がん組織の四重染色のオーバーレイを示す。
【0065】
図20図20Aは、CD4、CD8、CD68、およびFoxP3を検出する、トリプルネガティブ乳がん組織の四重染色のオーバーレイを示す。図20Bは、マーカー表現型(および推定の細胞型)および図20Aの切片からの代表的な視野内の各表現型の総数を示す、例示的な単一細胞画像を示す。
【0066】
図21図21は、CD3、PD-1、およびPD-L1を検出する、トリプルネガティブ乳がん組織の三重染色のオーバーレイを示す。代表的な単一細胞画像およびそれらの表現型もまた示されている。(TIL=腫瘍浸潤リンパ球)。
【0067】
図22図22は、トリプルネガティブ乳がんパネル(図19)、四重免疫マーカーパネル(図20A)、および三重免疫マーカーパネル(図21)での多重染色の3つの連続組織のオーバーレイを示す。
【0068】
図23図23は、同じ組織試料上の2個の標的に関する、例示的な逐次的チラミド染色増幅プロトコールの概略図を示す。第1の検出可能な二次抗体は、ステップDにおいて、過剰量の可溶形態の架橋抗原での処理により試料から選択的に取り除かれる。
【0069】
図24図24A~24Cは、逐次的チラミド染色増幅プロトコールの結果を示す。抗ペプチド二次抗体-HRPコンジュゲートのペプチドによる取り除きによるチラミドシグナル増幅プロトコールを使用して、単一組織切片において、2個の標的が同定される。(1)ウサギ抗HER1-PEP5/抗PEP5-HRP/チラミド-Dy490(図24A)、(2)過剰PEP5での抗PEP5-HRPの取り除き、および(3)ウサギ抗ER-PEP-2/抗PEP2-HRP/チラミド-Dy550でのERの染色(図24B)によるHER2およびERの逐次的染色。図24Cは、図24Aおよび24Bの画像のオーバーレイを提示する。
【0070】
図25図25は、検出可能な抗ペプチド二次抗体との反応のための抗原決定基の数を増加させるための、タンデムリピートペプチド架橋抗原を含む一次抗体での染色の概略図を示す。
【0071】
図26図26A~26Bは、二次抗体(A)での、およびタンデムリピートコンジュゲート化一次抗体(B)でのトリプルポジティブ乳がん組織の染色を示す。この場合、トリプルポジティブ乳がん組織(ILS30380)を、ウサギ抗HER2/Dy490-抗ウサギIgG(A)、およびタンデムリピート3X-ペプチド(PEP6’)コンジュゲート化抗HER2/Dy650-抗PEP6で染色した。
【0072】
図27図27は、フルオロフォア標識架橋抗原にカップリングした一次抗体を含む免疫試薬での染色の概略図を示す。
【0073】
図28図28A~28Dは、ウサギ抗HER2/抗ウサギ-FITCを、3つの漸増レベルの蛍光標識で修飾したHER2-PEP7-FITCと比較する、トリプルポジティブ乳がん組織上での染色結果を示す。
【0074】
図29図29A~29Bは、最初の染色後、免疫試薬を取り除くための加熱ステップによる、トリプルポジティブ乳がん組織の連続染色を示す。図29Aは、免疫マーカーCD8(原画では赤色)、CD4(原画では青色)、CD20(原画では緑色)、およびCD3(原画ではマゼンタ色)を標的とする免疫試薬のカクテルを使用する最初の四重染色を示す。画像化後、免疫試薬をマイクロ波加熱により取り除いた。図29Bは、続いて、乳がんマーカーHER2(原画では赤色)、ER(原画では青色)、PR(原画では緑色)、およびKi-67(原画ではマゼンタ色)を標的とする免疫試薬のカクテルを使用して、染色され、画像化された同じ切片を示す。乳がんパネルシグナルを、免疫マーカーパネルシグナルによって生じたシグナルに対して正規化した。
【発明を実施するための形態】
【0075】
抗原をカップリングさせた免疫試薬
本開示は、一態様では、一次抗体および架橋抗原を含む高性能の免疫試薬であって、一次抗体および架橋抗原がカップリングされており、架橋抗原が、高親和性の検出可能な二次抗体により認識可能である、免疫試薬を提供する。
【0076】
当技術分野において周知であるように、抗体は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する糖タンパク質である。抗体は、典型的には、2つの大きい重鎖および2つの小さい軽鎖を含むが、様々な代替の、または改変された抗体構造が、本開示の免疫試薬および組成物に適切に用いられ得る。例えば、抗体は、天然抗体、人工抗体、遺伝子操作された抗体、一価抗体、多価抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ラクダ科抗体(camelid)、モノボディ、一本鎖可変断片(scFv)、ならびに/またはFab断片およびF(ab’)断片を含むそれらの断片もしくは誘導体であり得る。ある特定の適用において、抗体は、単一特異性、多特異性、ヒト化、一本鎖、キメラ、ラクダ科単一ドメイン、サメ単一ドメイン、合成、組換え、ハイブリッド、変異型、CDRグラフト化抗体、および/またはそれらの断片もしくは誘導体であり得る。ある特定の実施形態では、抗体は、任意の適切な哺乳類種に由来し得る。例えば、抗体は、ヒト、ラット、マウス、ヤギ、モルモット、ロバ、ウサギ、ウマ、ラマ、またはラクダに由来し得る。他の実施形態では、抗体は、鳥類、例えば、ニワトリまたはアヒルなどに由来し得る。抗体の起源は、産生の方法には関係なく、ゲノム配列によって定義される。本免疫試薬の抗体は、様々なアイソタイプ、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、またはサブクラス、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4であり得る。抗体は、組換えで、または他の手段によって産生され得、それらには、まだなお抗原を結合することができる抗体断片、例えば、Fab、F(ab)、Fv、scFv、VhH、および/またはV-NARが挙げられ得る。
【0077】
本免疫試薬に使用するのに適切なポリクローナル抗体は、様々な方法を通して産生され得る。例えば、この目的のために、様々な動物が、目的の抗原、例えば、標的の生体分子、または標的の生体分子のエピトープを共有する別の分子をそれらに注射することにより免疫され得る。そのような抗原分子は、天然起源であってもよいし、またはDNA組換えもしくは合成方法により得てもよいし、またはそれらの断片であってもよく、所望のポリクローナル抗体は、生じた血清から得てもよいし、精製されてもよい。あるいは、標的の生体分子、または標的分子の適切なエピトープを配置する無傷細胞が使用され得る。様々なアジュバントもまた、免疫のために選択された動物に依存して、抗原の投与に対する免疫応答を増加させるために使用され得る。これらのアジュバントの例には、フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、ポリアニオンなどの表面活性物質、ペプチド、油乳剤、ヘモシアニン、ジニトロフェノール、またはリゾレシチンが挙げられる。
【0078】
本免疫試薬に使用するのに適切なモノクローナル抗体は、典型的には、ハイブリドーマ細胞から得られ、そのハイブリドーマ細胞は、所望の抗原で免疫されている動物由来の脾臓細胞と骨髄腫細胞の融合により調製される。その後、所望の抗体を発現する細胞が、所望の抗原に結合するそれらの能力によって同定される。その後、有意な量の所望の抗体を産生する安定なハイブリドーマクローンが、その抗体を有用な量で生成するように培養され得る。これらの技術は当技術分野において周知である。
【0079】
本免疫試薬は、免疫学的アッセイに使用されて、そのアッセイにおいて、目的の標的抗原を同定し、それと結合し得、標的結合の特異性は、免疫試薬を調製するために使用された抗体の特異性によって決定される。特に、本免疫試薬の一次抗体は、細胞内か、または細胞の表面上のいずれかで、目的のタンパク質または他の抗原性分子を提示する標的抗原に向けられ得る。標的抗原は、ある場合には、細胞内小器官内、例えば、細胞の核内またはミトコンドリア内に見出され得る。あるいは、標的抗原は、目的の表面上、例えば、イムノブロットまたは他の型の2次元媒体上などにディスプレイされ得る。標的抗原は、ある場合には、不純な形態、部分的に精製された形態、または精製された形態であり得る。一般的に、標的抗原は、免疫試薬と特異的に相互作用することが有効である限り、任意の適切な表面上、もしくはその中にあり得、またはさらに溶液中で遊離していてもよい。
【0080】
さらに、目的の標的抗原は、任意の、目的のタンパク質または他の分子であり得る。一部の実施形態では、標的抗原は、動物における細胞または組織の疾患状態についての情報を提供する細胞マーカーであり得る。例えば、標的抗原は、エストロゲン受容体(ER)、HER2/neu受容体(HER2)、プロゲステロン受容体(PR)、Ki67、EGFR、サイトケラチン1(CK1)、サイトケラチン5(CK5)、サイトケラチン6(CK6)、サイトケラチン7(CK7)、サイトケラチン14(CK14)、サイトケラチン17(CK17)、サイトケラチンAE1/AE3、ネスチン、ビメンチン、ASMA、Ber-EP4、p16、p40、p53、p63、c-kit、下記で列挙されたものを含む様々なCDマーカー、または本免疫試薬の一次抗体により特異的に認識可能な任意の他の標的抗原であり得る。一部の実施形態では、複数の細胞マーカーが標的とされ得る。例えば、一部の実施形態では、標的抗原はERおよびPRであり得る。他の実施形態では、標的抗原は、HER2、ER、およびPR、またはHER2、ER、およびKi67であり得る。まだ他の実施形態では、標的抗原は、HER2、ER、PR、およびKi67であり得る。まだなお他の実施形態では、標的抗原は、Ki67、EGFR、およびCK5であり得る。さらに他の実施形態では、標的抗原は、Ki67、EGFR、CK5、およびCK6であり得る。
【0081】
他の特異的な標的抗原として、4-1BB、AFP、ALK1、アミロイドA、アミロイドP、アンドロゲン受容体、アネキシンA1、ASMA、BCA225、BCL-1、BCL-2、BCL-6、BerEP4、ベータ-カテニン、ベータ-HCG、BG-8、BOB-1、CA19-9、CA125、カルシトニン、カルデスモン、カルポニン-1、カルレチニン、CAM5.2、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD31、CD33、CD34、CD38、CD42b、CD43、CD45 LCA、CD45RO、CD56、CD57、CD61、CD68、CD79a、CD99、CD117、CD138、CD163、CDX2、CEA、クロモグラニンA、CMV、c-kit、c-MET、c-MYC、IV型コラーゲン、補体3c(C3c)、COX-2、CXCR5、CK1、CK5、CK6、CK7、CK8、CK14、CK18、CK17、CK19、CK20、CK903、CK AE1、CK AE1/AE3、D2-40、デスミン、DOG-1、E-カドヘリン、EGFR、EMA、ER、ERCC1、第VIII因子関連抗原、活性化第XIII因子、ファスシン、FoxP1、FoxP3、ガレクチン-3、GATA-3、GCDFP-15、GCET1、GFAP、グリコホリンA、グリピカン3、グランザイムB、HBME-1、Helicobacter Pylori、ヘモグロビンA、Hep Par1、HER-2、HHV-8、HMB-45、HSV l/ll、ICOS、IFNガンマ、IgA、IgD、IgG、IgM、IL17、IL4、インヒビン、iNOS、カッパIg軽鎖、Ki-67、LAG-3、ラムダIg軽鎖、リゾチーム、マンマグロビンA、MART-1/メランA、マスト細胞トリプターゼ、MLH1、MOC-31、MPO、MSA、MSH2、MSH6、MUC1、MUC2、MUM1、MyoD1、ミオゲニン、ミオグロビン、ナプシンA、ネスチン、NSE、Oct-2、OX40、OX40L、p16、p21、p27、p40、p53、p63、p504s、PAX-5、PAX-8、PD-1、PD-L1、PHH3、PIN-4、PLAP、PMS2、Pneumocystis jiroveci(carinii)、PgR、PSA、PSAP、RCC、S-100、SMA、SMM、スムーセリン、SOX10、SOX11、サーファクタントアポプロテインA、シナプトフィジン、TAG72、TdT、トロンボモジュリン、チログロブリン、TIA-1、TIM3、TRAcP、TTF-1、チロシナーゼ、ウロプラキン、VEGFR-2、ビリン、ビメンチン、およびWT-1などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
一部の実施形態では、本免疫試薬の一次抗体は、同じ種内の異なる免疫グロブリン間で有意には異ならない、免疫グロブリン分子における1つまたは複数の配列に対して誘導される異種間反応性抗体(cross-species reactive antibody)であり得る。そのような配列は、典型的には、免疫グロブリン配列のいわゆる「定常領域」内に見出される。これらの配列の認識は可能であり、その理由は、免疫試薬に使用される抗体が、特定の動物種、例えばヤギの、異なる動物種、例えば、マウスまたはウサギから単離された免疫グロブリンでの免疫により生じるからである。マウス免疫グロブリンに対して、ヤギで生じた抗体は、したがって、「ヤギ抗マウス」抗体と呼ばれ、ウサギ免疫グロブリンに対して、ヤギで産生された抗体は、したがって、「ヤギ抗ウサギ」抗体と呼ばれる。異種間免疫グロブリンに対して誘導されたポリクローナル抗体は、実施例セクションにおいて例証されているように、異種間一次抗体における複数のエピトープを認識するそれらの能力に起因して、免疫学的アッセイにおける、シグナル増幅に有用であり得る。
【0083】
本免疫試薬の架橋抗原は、二次抗体により、理想的には高親和性で認識可能であるように選択される。したがって、架橋抗原の構造は、適切な動物において免疫応答を誘発することができる分子、または別の手段により適切な二次抗体を生じるように使用することができる分子によってのみ限定される。
【0084】
一部の実施形態では、架橋抗原は、一次抗体とは別々の分子実体であり、化学的カップリング反応により一次抗体に結合している。これらの実施形態では、架橋抗原は、架橋抗原を免疫試薬の一次抗体に化学的にカップリングすることができる少なくとも1つの基を含有するように設計される。その基はまた、二次抗体を生じるために使用される免疫原の調製において、架橋抗原をキャリアタンパク質または他の適切な分子に化学的にカップリングさせるのに有用であり得る。下記でより詳細に記載されているように、カップリング基は、具体的な実施形態では、架橋抗原が、一次抗体またはキャリアタンパク質に、高い特異性および効率性でコンジュゲートされるように、選択され得る。加えて、架橋抗原の一次抗体へのカップリングは、検出可能な二次抗体により認識される架橋抗原の能力に有意には影響を及ぼすべきではない。架橋抗原およびカップリング基は、いかなるバックグラウンドシグナルも避けるために、それら自体、干渉する吸光度(absorbance)または蛍光を有しないことも望ましい。さらに、架橋抗原およびカップリング基は、高純度で、理想的には低費用で、利用可能であるべきである。
【0085】
一部の実施形態では、本開示の架橋抗原は合成架橋抗原である。一部の実施形態では、架橋抗原は、天然産物である。具体的な実施形態では、架橋抗原はペプチドである。
【0086】
合成か、または天然源から単離されたかのいずれかのペプチドは、当業者により広く知られ、理解されているように、様々な手段により特異的な高親和性抗体を生じるために広範囲に使用されている。ペプチドに関して可能な構造バリエーションの範囲は、ほとんど無制限であり、したがって、そのことが、ペプチドを、本免疫試薬における架橋抗原としての使用に理想的に適したものにさせている。さらに、合成ペプチドは、例えば、固相ペプチド合成中、または合成後、C末端もしくはN末端に、または内部に取り込まれたアミノ酸残基または他の連結部分を含むことにより、ペプチド配列内の望ましい反応特性と共に、一次抗体へのそれらのカップリングを促進するための反応基を含むように設計することができる。ペプチド架橋抗原は、天然および人工のどちらも、任意のサイズであり得、任意の適切なアミノ酸または他の残基を含有し得る。それらは線状または環状であり得る。ペプチド架橋抗原は、これらの実施形態では、目的の抗体にコンジュゲートするそれらの能力、および検出可能な二次抗体により認識可能であるそれらの能力によってのみ限定される。
【0087】
一部の実施形態では、架橋抗原は、非天然残基を含むペプチドである。例えば、架橋抗原は、D-アミノ酸などの非天然立体異性体を含み得る。一部の実施形態では、非天然残基は、β-アミノ酸などの非天然アミノ酸であり得る。一部の実施形態では、架橋抗原の残基は、当業者により理解されているように、非ペプチド結合を使用してカップリングされ得る。
【0088】
一部の実施形態では、架橋抗原は、一次抗体自体のタンパク質配列の部分として発現するように操作されているペプチド抗原である。抗体の一次配列へ操作され、それにしたがって、架橋抗原として働き得る抗原の例には、非限定的に、Mycタグ、FLAGタグ、HAタグ、Sタグ、Streptag、Hisタグ、またはV5タグが挙げられる。
【0089】
本免疫試薬に有用に含まれる他の適切な架橋抗原には、非ペプチドの小分子抗原が挙げられる。ペプチド架橋抗原に関して当てはまるように、そのような抗原は、一次抗体にカップリングされるそれらの能力、および検出可能な二次抗体により認識可能であるそれらの能力によってのみ限定される。本明細書で「ハプテン」とも呼ばれる場合がある、例示的な非ペプチドの小分子抗原には、非限定的に、ニトロフェニル、ジニトロフェニル、トリニトロフェニル、ジゴキシゲニン、ビオチン、5-ブロモデオキシウリジン、3-ニトロチロシン、小分子薬物、および任意の他の類似した化学的タグが挙げられる。
【0090】
免疫試薬あたりの結合部位の数を増加させるために、ある場合には、単一の架橋抗原が、複数の抗原決定基またはエピトープを含むことが有利であり得る。架橋抗原における抗原決定基の多重度は、その免疫試薬と結合することができる二次抗体の数、および、それにしたがって、その免疫試薬を使用するアッセイの感度を増加させ得る。一部の実施形態では、複数の抗原決定基は、同じ抗原決定基の複数のコピーを含み得、一方、一部の実施形態では、複数の抗原決定基は、異なる抗原決定基を含み得る。一部の実施形態では、複数の抗原決定基は、線状反復構造を含み得る。より具体的には、線状反復構造は、線状反復ペプチド構造であり得る。一部の実施形態では、複数の抗原決定基は、少なくとも2個の抗原決定基、少なくとも3個の抗原決定基、少なくとも4個の抗原決定基、少なくとも6個の抗原決定基、またはさらにより多くの抗原決定基を含み得る。
【0091】
一部の実施形態では、架橋抗原は、分岐型構造を含み得る。例えば、分岐型構造は、当業者により理解されているように、例えば、他の重合構築物などのデンドリマー構造などを含み得る。
【0092】
さらに、複数の抗原決定基を含む架橋抗原は、抗原決定基間、例えば、ペプチド抗原決定基間に1つまたは複数のポリエチレングリコールリンカーなどを含み得ることが理解されるものとする。
【0093】
一部の実施形態では、ペプチド抗原決定基は、抗原決定基あたり、少なくとも4個、少なくとも6個、少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、またはさらにより多くのアミノ酸残基を含む。
【0094】
一次抗体および架橋抗原が別々の分子実体から調製される場合、一次抗体と架橋抗原のカップリングは、所望の結果に依存して多種多様な方法で達成され得ることが理解されるものとする。架橋抗原の一次抗体へのカップリングの位置および度合の制御が重要ではない場合には、非特異的化学クロスリンカーがカップリングを達成するのに使用され得る。しかしながら、架橋抗原が、一次抗体に、制御された特異的な様式でカップリングされることは一般的に望ましく、カップリング方法およびカップリング剤の選択は、カップリングの位置、度合、および効率に影響し得る。例えば、反応性チオール基は、抗体タンパク質の表面上では相対的に稀であるため、チオール反応性コンジュゲーション試薬の使用は、典型的には、相対的により低いレベルのタンパク質修飾を生じる。反応性アミノ基は、抗体の表面上にはるかにより一般的であり、それゆえに、アミン反応性コンジュゲート試薬(conjugating reagent)の使用は、典型的には、架橋抗原による相対的により高いレベルのタンパク質修飾を生じる。加えて、抗体のコンジュゲート試薬による修飾の程度は、例えば、抗体上の反応基の数に対するコンジュゲート試薬の限られた量を使用することにより、ある程度、滴定され得る。
【0095】
一部の免疫試薬の実施形態では、一次抗体と架橋抗原は、コンジュゲーション部分を介して化学的カップリング反応によりカップリングされる。具体的な実施形態では、一次抗体と架橋抗原は、高効率コンジュゲーション部分によりカップリングされる。免疫試薬は、好ましくは、相対的に低いモル濃度の出発材料で合成されるため、およびそれらの出発材料、例えば、一次抗体は、高価で相対的に少ない化学量で入手可能であるため、コンジュゲーション部分の形成は、できる限り効率的で特異的であること、およびそれの形成は、低いモル濃度の反応物で完了、またはほぼ完了することが非常に望ましい。具体的には、コンジュゲーション部分は、一次抗体と架橋抗原を速い反応速度および/または高い会合定数でカップリングすることができること、および、したがって、会合反応が、それの完了に関してできる限り効率的であることが望ましい。
【0096】
本免疫試薬の高効率コンジュゲーション部分は、典型的には、下記でより詳細に記載されているように、免疫試薬の各構成成分の相補的コンジュゲート試薬での別々の修飾により、形成される。相補的コンジュゲート試薬は、追加として、コンジュゲート試薬が、関連した免疫試薬構成成分、例えば、抗体へ、および架橋抗原へ結合するのを可能にする、さらなる反応性部分、例えば、チオール反応性部分またはアミノ反応性部分を含む。抗体および架橋抗原が、それぞれの相補的コンジュゲート試薬により、典型的には抗体上の複数の位置で、しかし架橋抗原上の単一の位置で修飾された後、修飾された構成成分上の相補的コンジュゲート形体(conjugating feature)は、非常に効率的で特異的な様式でお互いに会合して、コンジュゲーション部分を形成する。
【0097】
状況に応じて、本免疫試薬の高効率コンジュゲーション部分は、共有結合性または非共有結合性コンジュゲーション部分であり得る。具体的な実施形態では、高効率コンジュゲーション部分は、共有結合性コンジュゲーション部分、例えば、ヒドラゾン、オキシム、または別の適切なシッフ塩基部分である。そのようなコンジュゲーション部分の非限定的例は、例えば、米国特許第7,102,024号に見出すことができ、その特許は、全ての目的のために、その全体が、本明細書に参照により組み入れられている。これらのコンジュゲーション部分は、免疫試薬の一方の構成成分(例えば、一次抗体)に結合したコンジュゲート試薬上の一級アミノ基の、免疫試薬の他方の構成成分(例えば、架橋抗原)に結合したコンジュゲート試薬上の相補的カルボニル基との反応により、形成され得る。
【0098】
例えば、ヒドラゾンコンジュゲーション部分は、ヒドラジノ基、または保護されたヒドラジノ基の、カルボニル部分との反応により形成され得る。例示的なヒドラジノ基には、脂肪族、芳香族、もしくはヘテロ芳香族のヒドラジン基、セミカルバジド基、カルバジド基、ヒドラジド基、チオセミカルバジド基、チオカルバジド基、炭酸ジヒドラジン(carbonic acid dihydrazine)基、またはヒドラジンカルボキシレート基が挙げられる。米国特許第7,102,024号参照。オキシムコンジュゲーション部分は、オキシアミノ基、または保護されたオキシアミノ基の、カルボニル部分との反応により形成され得る。例示的なオキシアミノ基は下に記載されている。ヒドラジノ基およびオキシアミノ基は、ヒドラジノ基またはオキシアミノ基の塩の形成(非限定的に塩酸塩および硫酸塩などの鉱酸塩、ならびに非限定的に、酢酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、およびフマル酸塩などの有機酸の塩が挙げられるが、それらに限定されない)により、または当業者に公知の任意のアミノもしくはヒドラジノ保護基(例えば、Greeneら(1999年)Protective Groups in Organic Synthesis(第3版)(J. Wiley Sons, Inc.)参照)により保護され得る。シッフ塩基コンジュゲーション部分を生成するために使用されるカルボニル部分は、上記のヒドラジノ部分またはオキシアミノ部分の1つまたは複数とヒドラゾン結合またはオキシム結合を形成することができる任意のカルボニル含有基である。好ましいカルボニル部分には、アルデヒドおよびケトン、特に芳香族アルデヒドおよびケトンが挙げられる。本開示の好ましい実施形態では、高効率コンジュゲーション部分は、オキシアミノ含有構成成分と芳香族アルデヒド含有構成成分の、アニリン触媒の存在下での反応により形成される(Dirksenら(2006年)Angew. Chem. 45巻:7581~7584頁(DOI:10.1002/anie.200602877))。
【0099】
あるいは、本免疫試薬の高効率コンジュゲーション部分は、「クリック」反応、例えば、トリアゾールコンジュゲーション部分を形成する、アジド置換構成成分のアルキン置換構成成分との銅触媒による反応により形成され得る。Kolbら(2001年)Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 40巻:2004頁;Evans(2007年)Aus. J. Chem. 60巻:384頁参照。この反応の銅を含まない変形型、例えば、歪促進アジド-アルキンクリック反応もまた、高効率コンジュゲーション部分を形成するために使用され得る。例えば、Baskinら(2007年)Proc. Natl Acad. Sci. U.S.A. 104巻:16793~97頁参照。他のクリック反応の変形型には、テトラジン置換構成成分の、イソニトリル置換構成成分(Stoeckmannら(2011年)Org. Biomol. Chem. 9巻:7303頁)か、または歪んだアルケン置換構成成分(Karverら(2011年)Bioconjugate Chem. 22巻:2263頁)のいずれかとの反応が挙げられる。
【0100】
クリック反応の基本的特徴は、当業者によってよく理解されている。Kolbら(2001年)Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 40巻:2004頁参照。有用なクリック反応には、一般的に、[3+2]環化付加、例えば、ヒュスゲン1,3-双極子環化付加、および、特に、Cu(I)触媒による段階的変形型、チオール-エンクリック反応、ディールス-アルダー反応および逆電子要求ディールス-アルダー反応、イソニトリル(イソシアニド)とテトラジンの間の[4+1]環化付加、特にエポキシおよびアジリジン化合物のような小さい歪んだ環への、求核置換、尿素のカルボニル化学反応様形成、ならびに炭素-炭素二重結合へのいくつかの付加反応が挙げられるが、それらに限定されない。上記の反応のいずれも、非限定的に、本免疫試薬において共有結合性の高効率コンジュゲーション部分を生成するために使用され得る。
【0101】
一部の実施形態では、本免疫試薬のコンジュゲーション部分は切断可能なリンカーを含む。本高効率コンジュゲーション部分に有用に含まれる例示的な切断可能なリンカーは、当技術分野において公知である。例えば、Lericheら(2012年)Bioorg. Med. Chem. 20巻:571~582頁(doi:10.1016/j.bmc.2011.07.048)参照。高効率コンジュゲーション部分に切断可能なリンカーを含ませることにより、本免疫試薬において、架橋抗原の一次抗体からの選択的切断が可能になる。そのような選択的切断は、いくつかのイムノアッセイ方法において、例えば、架橋抗原およびそれの会合した二次抗体の放出の場合、有利であり得る。
【0102】
他の実施形態では、高効率コンジュゲーション部分は、非共有結合性コンジュゲーション部分である。非共有結合性コンジュゲーション部分の非限定的例には、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションペアまたはタンパク質-リガンド結合ペアが挙げられる。具体的な実施形態では、タンパク質-リガンド結合ペアは、アビジン-ビオチンペア、ストレプトアビジン-ビオチンペア、または別のタンパク質-ビオチン結合ペア(一般的には、Avidin-Biotin Technology、Meth. Enzymol.(1990年)184巻、Academic Press;Avidin-Biotin Interactions: Methods and Applications(2008年)McMahon編、Humana;Molecular Probes(登録商標)Handbook、4章(2010年)参照)、抗体-ハプテン結合ペア(一般的には、Molecular Probes(登録商標)Handbook、4章(2010年)参照)、S-ペプチドタグ-S-タンパク質結合ペア(KimおよびRaines(1993年)Protein Sci. 2巻:348~56頁)、または任意の他の高親和性ペプチド-ペプチドもしくはペプチド-タンパク質結合ペアである。そのような高親和性非共有結合性コンジュゲーション部分は、当技術分野において周知である。それぞれのコンジュゲートペアの反応性バージョン、例えば、チオール反応性バージョンまたはアミノ反応性バージョンもまた、当技術分野において周知である。これらのコンジュゲート試薬は、それぞれの抗体および架橋抗原を、場合によっては抗体上の複数の位置において、修飾するために使用され得る。修飾された抗体および架橋抗原は、その後、相補的形体、例えば、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションペアまたはタンパク質-リガンド結合ペアが、お互いに会合し、非共有結合性高効率コンジュゲーション部分を形成することを可能にするために、混合され得る。上記の共有結合性および非共有結合性連結基は高効率の会合反応を行うことができ、したがって、本免疫試薬の作製に使用するのによく適している。
【0103】
一部の実施形態では、高効率コンジュゲーション部分は、抗体と架橋抗原をカップリングすることにおいて、少なくとも50%、80%、90%、93%、95%、97%、98%、99%、またはさらにより効率的である。より具体的な実施形態では、高効率コンジュゲーション部分は、0.5mg/mL以下のタンパク質濃度において、少なくとも50%、80%、90%、93%、95%、97%、98%、99%、またはさらにより効率的である。一部の実施形態では、効率は、0.5mg/mL以下、0.2mg/mL以下、0.1mg/mL以下、0.05mg/mL以下、0.02mg/mL以下、0.01mg/mL以下、またはそれよりも低いタンパク質濃度で達成される。架橋抗原は、典型的には、本免疫試薬の調製において、抗体より多く使用されるため、連結反応の効率は、典型的には、会合反応の抗体構成成分の免疫試薬生成物への変換の程度によって判断される。例えば、抗体と架橋抗原をカップリングすることにおいて少なくとも50%効率的である高効率コンジュゲーション部分は、出発抗体の少なくとも50%が、会合反応において、抗体あたり所望の数の架橋抗原を有する免疫試薬へ変換されるという結果になる部分である。
【0104】
別の態様では、本開示は、複数の上記の免疫試薬を含む、免疫試薬パネルとも呼ばれる、免疫試薬組成物を提供する。実施形態では、組成物は、少なくとも3個、5個、10個、20個、30個、50個、100個、またはさらにそれ超の免疫試薬を含む。一部の実施形態では、含まれる免疫試薬の一次抗体は、細胞マーカーに特異的である。具体的な実施形態では、細胞マーカーは、少なくともERおよびPRである。他の具体的な実施形態では、細胞マーカーは、少なくともHER2、ER、およびPR、または少なくともHER2、ER、およびKi67である。なお他の具体的な実施形態では、細胞マーカーは、少なくともHER2、ER、PR、およびKi67である。まだなお他の具体的な実施形態では、細胞マーカーは、少なくともKi67、EGFR、およびCK5である。さらに他の具体的な実施形態では、細胞マーカーは、少なくともKi67、EGFR、CK5、およびCK6であり、または少なくともCK5、CK6、およびKi-67である。なお他の具体的な実施形態では、細胞マーカーは、少なくともCK5、EGFR、p40、およびKi-67であり、または少なくともIgA、補体3c(C3c)、コラーゲンIV型アルファ鎖5(COL4A5)、およびIgGである。一部の実施形態では、含まれる免疫試薬の架橋抗原はペプチドである。
【0105】
一部の実施形態では、本開示の免疫試薬組成物は、免疫細胞上の細胞マーカー、例えば、任意の組合せでの、CD3、CD4、CD8、CD20、CD68、および/またはFoxP3、ならびに上記で列挙された細胞マーカーのいずれかに特異的である。一部の実施形態では、免疫試薬組成物は、例えば、CTLA-4、CD152、PD-1、PD-L1などのようなチェックポイント経路に関連するマーカーに特異的である。
検出可能な二次抗体
【0106】
上記で言及されているように、本免疫試薬の架橋抗原は、検出可能な二次抗体により認識可能である。本免疫試薬を使用する免疫学的アッセイにおいて感度を増加させ、バックグラウンドを減少させるために、それぞれの検出可能な二次抗体の、それの対応する架橋抗原に対する親和性および/または特異性を最大限にすることが一般的に望ましい。当業者により理解されているように、抗体の抗原に対する親和性は、典型的には、平衡パラメータ、解離定数または「K」を使用して評価される。所定の濃度の抗体について、解離定数は、大まかに、抗体の半分が抗原に結合しており、抗体の半分が抗原に結合していない場合の抗原の濃度に対応する。したがって、より低い解離定数は、抗体の抗原に対するより高い親和性に対応する。
【0107】
解離定数はまた、抗体と抗原の解離および会合についての動力学速度定数の比に関係する。したがって、解離定数は、平衡結合測定によるか、または反応速度測定によるかのいずれかで、推定され得る。そのようなアプローチは当技術分野において周知である。例えば、抗体-抗原結合パラメータは、Biacore表面プラズモン共鳴に基づいた装置(GE Healthcare、Little Chalfont、Buckinghamshire、UK)、Octetバイオレイヤー干渉法システム(Pall ForteBio Corp.、Menlo Park、CA)などを使用して得られるセンサーグラムの動態分析から日常的に決定される。例えば、一連の抗体クローンおよびそれらの対応するペプチド抗原結合パートナーについての解離定数の決定の記載に関する米国特許出願公開第2013/0331297号参照。
【0108】
典型的な抗体は、マイクロモル濃度から高いナノモル濃度まで(すなわち、10-6M~10-8M)の範囲の平衡解離定数を有する。高親和性抗体は、一般的に、より低いナノモル濃度から高いピコモル濃度(すなわち、10-8M~10-10M)の範囲の平衡解離定数を有する。超高親和性抗体は、一般的に、ピコモル濃度範囲(すなわち、10-10M~10-12M)の平衡解離定数を有する。ペプチドまたは他の大分子に対する抗体は、典型的には、小分子ハプテンに対する抗体(マイクロモル濃度範囲またはさらにより高い解離定数を示し得る)より、それらの抗原に対するより高い親和性(より低いK)を有する。
【0109】
本免疫試薬の二次抗体は、抗原をカップリングさせた一次抗体に対するそれらの親和性を増加させるために最適化され得る。例えば、米国特許出願公開第2013/0331297号は、本免疫試薬に利用される検出可能な二次抗体を生じるために適切に修飾され得る、高親和性の抗体クローンを同定するための方法を開示する。これらの方法において、合成ペプチドをコードする短いDNA断片が、目的の抗体ライブラリーをコードする遺伝子プールの重鎖に融合され、酵母細胞が、酵母ディスプレイ抗体ライブラリーを作製するように形質転換される。酵母細胞は、高特異性を有する高親和性抗体クローンを単離するために、高速蛍光活性化細胞選別機(FACS)でスクリーニングされる。Aga2などの他の酵母ディスプレイシステムと比較して、このシステムは、形質転換された酵母細胞が、十分な量の抗体を培養培地へ分泌して、所望の特異性および親和性を有する候補クローンの同定のためのクローニングおよび抗体精製の追加のステップを必要とすることなしに、個々の酵母クローンの培養培地を直接アッセイして、発現した抗体の特異性および親和性を決定することができるという追加の利点を有する。
【0110】
上記の酵母ディスプレイライブラリーシステムは、高特異性および親和性を有するウサギモノクローナル抗体を産生するために免疫されたウサギから作製される抗体ライブラリーを使用し、したがって、優れた親和性および特異性を有する抗体クローンを単離するための酵母ディスプレイの効率と共に、小さいハプテンまたはペプチドに対する抗体を生じるためのウサギ免疫系の優れた能力を利用している。このアプローチを使用して、<0.01~0.8nMの範囲の抗体親和性を有する、小分子、ペプチド、およびタンパク質に対するウサギモノクローナル抗体のパネルが作製された。これらの親和性は、従来のハイブリドーマ技術を使用して生じるげっ歯類由来のほとんどのモノクローナル抗体の親和性を凌ぐ。そのアプローチはまた、ウサギハイブリドーマ技術で遭遇する低い融合効率および乏しい安定性の固有の問題を克服する。
【0111】
上記の酵母ディスプレイライブラリーシステムは、本免疫試薬組成物に使用される二次抗体の結合親和性を最適化するための1つのアプローチであるが、任意の適切なアプローチが、非限定的に、親和性を最適化するために使用され得ることが理解されるものとする。場合によっては、適切な高親和性抗体が最適化なしに利用可能であり得る。
【0112】
したがって、一部の実施形態では、検出可能な二次抗体は、架橋抗原に対して特異的であり、最大で100nM、最大で30nM、最大で10nM、最大で3nM、最大で1nM、最大で0.3nM、最大で0.1nM、最大で0.03nM、最大で0.01nM、最大で0.003nM、またはそれよりも低い解離定数を有する。より具体的な実施形態では、検出可能な二次抗体は、架橋抗原に対して特異的であり、最大で1nM、最大で0.3nM、最大で0.1nM、最大で0.03nM、最大で0.01nM、最大で0.003nM、またはそれよりも低い解離定数を有する。さらにより具体的な実施形態では、検出可能な二次抗体は、架橋抗原に対して特異的であり、最大で100pM、最大で30pM、最大で10pM、最大で3pM、またはそれよりも低い解離定数を有する。
【0113】
本免疫試薬の二次抗体は、検出可能な二次抗体であり、したがって、実施形態では、それは、検出可能な標識を含む。当業者により理解されているように、検出可能な二次抗体の検出可能な標識は、抗体への適切な結合が可能であるべきであり、その結合は、その抗体の架橋抗原との相互作用を有意に損なうことなく、実行されるべきである。
【0114】
一部の実施形態では、検出可能な標識は、それが、いかなる追加の構成成分も必要とすることなく検出され得るように、直接検出可能であり得る。例えば、直接検出可能な標識は、蛍光色素、生物蛍光タンパク質、例えば、フィコエリトリン、アロフィコシアニン、ペリジニンクロロフィルタンパク質複合体(「PerCP」)、緑色蛍光タンパク質(「GFP」)、もしくはそれらの誘導体(例えば、赤色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、または青色蛍光タンパク質)、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、遺伝子改変型ルシフェラーゼ、またはコメツキムシルシフェラーゼ)、もしくはサンゴ由来シアンおよび赤色蛍光タンパク質(加えて、サンゴ由来の赤色蛍光タンパク質のバリアント、例えば、黄色、オレンジ色、および遠赤のバリアント)、化学発光種、電気化学発光種、もしくは生物発光種を含む発光種、リン光種、放射性物質、ナノ粒子、SERSナノ粒子、量子ドットもしくは他の蛍光結晶ナノ粒子、回折粒子、ラマン粒子、キレート金属を含む金属粒子、磁気粒子、ミクロスフェア、RFIDタグ、マイクロバーコード粒子、またはこれらの標識の組合せであり得る。
【0115】
他の実施形態では、検出可能な標識は、それが、検出のために1つまたは複数の追加の構成成分の使用を必要とし得るように、間接的に検出可能であり得る。例えば、間接的に検出可能な標識は、適切な基質において色の変化をもたらす酵素、および標識を有する別の物質によって特異的に認識され得、または標識を有する物質と反応し得る他の分子であり得る。適切な間接的に検出可能な標識の非限定的例には、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼなどの酵素が挙げられる。具体的な実施形態では、ペルオキシダーゼは、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはダイズペルオキシダーゼである。間接的に検出可能な標識の他の例には、ハプテン、例えば、小分子またはペプチドなどのハプテンが挙げられる。非限定的例示的ハプテンには、ニトロフェニル、ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン、ビオチン、Mycタグ、FLAGタグ、HAタグ、Sタグ、Streptag、Hisタグ、V5タグ、ReAshタグ、FlAshタグ、ビオチン化タグ、Sfpタグ、または別の化学的タグもしくはペプチドタグが挙げられる。
【0116】
具体的な実施形態では、検出可能な標識は蛍光色素である。適切な蛍光色素の非限定的例は、その全体が参照により本明細書に組み入れられている、Life Technologies/Molecular Probes(Eugene、OR)およびThermo Scientific Pierce Protein Research Products(Rockford、IL)のカタログに見出され得る。例示的な色素には、フルオレセイン、ローダミン、および他のキサンテン色素誘導体、シアニン色素およびそれらの誘導体、ナフタレン色素およびそれらの誘導体、クマリン色素およびそれらの誘導体、オキサジアゾール色素およびそれらの誘導体、アントラセン色素およびそれらの誘導体、ピレン色素およびそれらの誘導体、ならびにBODIPY色素およびそれらの誘導体が挙げられる。好ましい蛍光色素には、Thermo Scientific Pierce Protein Research Productsから入手できるDyLightフルオロフォアファミリーが挙げられる。
【0117】
一部の実施形態では、検出可能な標識は、二次抗体へ直接結合しなくてもよいが、通常結合し得るよりも多数の検出可能な標識が二次抗体に結合することを可能にする、ポリマーまたは他の適切なキャリア中間体に結合し得る。
【0118】
具体的な実施形態では、検出可能な標識はオリゴヌクレオチドバーコードタグ、例えば、PCT国際特許公開第WO2012/071428A2号(その開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられている)に開示されたバーコードタグである。そのような検出可能な標識は、標的とされた試料の単離および/または選別を含むイムノアッセイ、例えば、フローサイトメトリに基づいた多重化免疫検出アッセイなどにおいて、特に有利である。これらの標識はまた、試料中の標的抗原のレベルが低く、検出の可能な限りの感度が必要とされる場合のイムノアッセイにおいても有用である。
【0119】
いくつかの実施形態では、本開示の検出可能な二次抗体は、複数の検出可能な標識を含み得る。これらの実施形態では、所定の二次抗体と会合した複数の検出可能な標識は、同じ標識の複数のコピーであってもよいし、または適切な検出可能なシグナルを生じる異なる標識の組合せでもよい。
【0120】
一部の免疫試薬の実施形態では、1つまたは複数の検出可能な標識を一次抗体の架橋抗原に結合させることは、試薬からのシグナル出力を増加させるために有利であり得る。架橋抗原へ有用に結合する検出可能な標識は、上記の検出可能な標識のいずれでもあり得る。そのような検出可能な標識は、一次抗体と二次抗体のペアからのシグナルが相加的であるように、理想的には、二次抗体の検出可能な標識と検出能において重なるべきである。さらに、検出可能な標識の架橋抗原への結合は、理想的には、一次抗体上の架橋抗原への二次抗体の結合に有意には影響するべきではない。同様に、架橋抗原への二次抗体の結合は、理想的には、検出可能な標識の検出能に有意には影響するべきではない。
【0121】
好ましい実施形態では、架橋抗原の検出可能な標識は、フルオロフォアである。より好ましい実施形態では、架橋抗原の検出可能な標識および二次抗原(secondary antigen)の検出可能な標識は、どちらもフルオロフォアである。他の好ましい実施形態では、架橋抗原の検出可能な標識および二次抗体の検出可能な標識は、同じ波長の蛍光によってどちらも検出可能である。まだ他の好ましい実施形態では、架橋抗原の検出可能な標識および二次抗体の検出可能な標識は、同じである。
【0122】
用語「一次抗体」および「二次抗体」は、その用語が免疫学的アッセイの分野において時々適用されるのとは、若干異なる方法で使用される場合があることが、本開示の関連において理解されるものとする。したがって、本一次抗体は、他の抗体を含む、目的の任意の分子を標的とするものとして広く解釈されるべきであり、本二次抗体は、架橋抗原が一次抗体にカップリングしている場合の架橋抗原を標的とするものとして広く解釈されるべきである。他の関連において、(例えば別の種由来の)別の抗体を標的とする抗体は、二次抗体であると見なされ得るが、その抗体は、本明細書においては、一次抗体であり得る。したがって、本開示における用語「一次抗体」および「二次抗体」は、その用語が、一方の抗体を他方から区別するために特許請求の範囲において使用される場合のみ限定的と見なされるべきである。
免疫試薬組成物ペア
【0123】
別の態様によれば、本開示は、架橋抗原とカップリングした一次抗体、および架橋抗原に特異的な検出可能な二次抗体を含む免疫試薬組成物を提供する。これらの組成物において、検出可能な二次抗体および抗原コンジュゲート化一次抗体は、架橋抗原に対する二次抗体の高親和性によりペアになる。ペアになった組成物は、組成物の別々の構成成分が水溶液中で一緒に混合された時はいつでも、例えば、その試薬が免疫学的アッセイに一緒に使用された時はいつでも、形成されると理解される。
【0124】
一次抗体およびカップリングした架橋抗原を含む免疫試薬は、本免疫試薬ペアに使用されるのに適した検出可能な二次抗体と同様、上記で詳細に記載される。当業者により理解されているように、これらの構成成分を含む組成物は、免疫学的アッセイの実施に有用性が見出され、その免疫学的アッセイには、IHC、サイトメトリ、フローサイトメトリ、例えば、蛍光活性化細胞選別、顕微鏡画像化、プレターゲティングイメージング、ならびにin vivoでの腫瘍および組織画像化の他の型、ハイコンテンツスクリーニング(HCS)、免疫細胞化学法(ICC)、免疫磁気細胞除去(immunomagnetic cellular depletion)、免疫磁気細胞捕捉、サンドイッチアッセイ、一般的なアフィニティアッセイ、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、ELISpot、マスサイトメトリ(CyTOF)、マイクロスフェアアレイ、多重化マイクロスフェアアレイ、マイクロアレイ、抗体アレイ、細胞アレイを含むアレイ、液相捕捉、側方フローアッセイ、化学発光検出、赤外線検出、ウェスタンブロット、サウスウェスタンブロット、ドットブロット、組織ブロットなどを含むブロッティング方法、またはそれらの組合せが挙げられる。
多重化免疫試薬ペア
【0125】
上記で言及されているように、現在の免疫学的アッセイは、従来の二次抗体の限られた機能性に起因して、単一試料において複数の抗原を検出するそれらの能力において非常に制限されている。当業者により理解されているように、異種間免疫グロブリンに対して誘導された抗体は、そのような免疫学的アッセイにおいて、目的の試料において一次抗体を標識するために使用される場合が多い。免疫学的アッセイにおいて一次抗体を検出するためのそのような異種間二次抗体の使用は、そのアッセイにおいていくらかの柔軟性を提供し、それは、一次抗体が同じ種から得られる限り、単一の検出可能な異種間二次抗体を使用して、多種多様な非標識一次抗体を染色することができるからである。異種間二次抗体の使用は、状況によっては、検出可能なシグナルを増幅することによりアッセイにおける感度の増加も提供する:特に二次抗体がポリクローナル抗体であり、複数のエピトープと結合することができる場合、単一の一次抗体は複数の二次抗体と結合し得、ならびに、二次抗体が重合され、および/または複数の検出可能な標識を担持し得る。それにより、そのようなシグナル増幅は、所定の一次抗体についてのアッセイの感度を増加させ得る。複数の一次抗体に対する単一の検出可能な二次抗体の使用もまた、各一次抗体が検出剤で個々に標識される必要がないため、相対的に便利で安価である。
【0126】
異種間二次抗体の使用は、免疫学的アッセイを実施するにおいていくつかの利点を提供するが、目的の全ての標的抗原に対して、一次抗体が同じ種から得られない場合には、そのような使用は不利であり得る。加えて、異種間二次抗体の使用はまた、従来の免疫学的アッセイの多重化能力を非常に制限し、これは、そのようなアッセイにおいて一度にたった1つの一次抗体しか検出することができないからである。第1の一次抗体での逐次的処理、二次抗体での染色、検出剤を除去するための試料の漂白または洗浄、第2の一次抗体での処理の繰り返しなどにより目的の同じ組織切片または他の試料を逐次的に標識することは可能であり、複数の細胞マーカーを評価するために一重化試薬で別々に逐次的な組織切片を染色することは可能であるが、そのような手順は、扱いにくく、信頼できず、可能な多重化のスケールにおいて非常に制限される。現在の多重化能力の限界は、最近、Stackら(2014年)Methods 70巻:46~58頁(DOI:10.1016/j.ymeth.2014.08.016)によって概説されている。
【0127】
本開示の免疫試薬は、多重化免疫学的アッセイにおいて異種間二次抗体を使用する必要性を排除することにより、上記の限界を克服する。その代わりとして、各ペアが異なる架橋抗原および対応する異なる二次抗体を有する、本免疫試薬組成物ペアの多重性は、単一の免疫学的アッセイにおいて同時に使用されて、高感度、高特異性、および低バックグラウンドを有する高レベルの多重化を達成し得る。架橋抗原は、検出可能な二次抗体による一次抗体の異種間認識の代わりに、効果的に機能する。架橋抗原の選択は、それが、目的の一次抗体とカップリングすることが可能であること、およびそれが、二次抗体により、理想的には高親和性で認識可能であることの必要条件によってのみ制限されることが理解されるものとする。これらの基準に合う、実質的に無制限の架橋抗原構造があるため、本免疫試薬を使用して可能な多重化のレベルは、同様に、実質的に無制限である。唯一の他の制限は、アッセイにおいて標的抗原を識別するために、異なる検出可能な二次抗体がお互いに、および試料におけるいかなる他のバックグラウンドシグナルからも、検出可能に区別できることである。しかしながら、免疫学的アッセイに使用される現在入手できる、多種多様な検出可能な標識に関して、この必要条件は有意な制限ではない。蛍光に基づいたアッセイにおいて高レベルの多重化を達成するのに有用な蛍光色素の例は、Stackら(2014年)Methods 70巻:46~58頁(DOI:10.1016/j.ymeth.2014.08.016)に記載されている。
【0128】
したがって、実施形態では、本開示は、複数の架橋抗原にカップリングした複数の一次抗体、および複数の検出可能な二次抗体を含む免疫試薬組成物を提供する。これらの組成物における各架橋抗原は、異なる一次抗体にカップリングされており、少なくとも1個の検出可能な二次抗体は各架橋抗原と高親和性で結合する。これらの組成物における複数の抗原をカップリングさせた一次抗体および検出可能な二次抗体は、前のセクションに記載された免疫試薬組成物ペアのいずれかであり得る。
【0129】
具体的な実施形態では、組成物は、少なくとも3個の免疫試薬組成物ペアを含む。より具体的な実施形態では、組成物は、少なくとも5個の免疫試薬組成物ペアを含む。なおより具体的な実施形態では、組成物は、少なくとも10個の免疫試薬組成物ペアを含む。さらにより具体的な実施形態では、組成物は、少なくとも20個、30個、50個、100個、またはさらにより多い免疫試薬組成物ペアを含む。
免疫試薬パネル
【0130】
上記の免疫試薬は、目的のある特定の組織、特に、腫瘍組織などの目的の罹患組織において、細胞マーカーの特定の組合せの発現をモニターすることに使用される診断パネルを作製するためにあらかじめ定義された群に組み合わせることができる。そのようなパネルは、そのような罹患組織を同定するための診断アッセイに有用であり、さらに、コンパニオン診断として有用であり、その場合、パネルは、特定の処置レジメンの経過中に時間と共に罹患組織において細胞マーカーのレベルをモニターするために使用される。そのようなコンパニオン診断は、処置レジメンの有効性の適時で信頼できる評価を提供し、さらに、処置投与量および頻度を特定の患者について最適化することを可能にし得る。上記のように、現在のIHC技術を使用する標的組織のモニタリングは、組織切片あたり1個もしくは2個の一次抗体に制限され、または異なる抗体での別々の、もしくは逐次的な組織切片の染色を必要とする。対照的に、上で記載されているように、本明細書に開示された免疫試薬パネルは、目的の組織または他の試料の染色が、単一組織切片または他の試料において多数の一次抗体で同時に実施することができるような、高レベルの多重化を可能にする。
【0131】
したがって、この態様によれば、本発明は、本開示の少なくとも3個の免疫試薬を含む免疫試薬組成物を提供する。具体的な実施形態では、免疫試薬組成物は、上記で詳細に記載されているように、本開示の少なくとも5個、少なくとも少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、またはさらにより多い免疫試薬を含む。
【0132】
特に関心が高いのは、例えば自己免疫疾患およびがんの処置において、免疫療法のレジメンを使用して処置される患者において組織試料をプロファイリングするための本免疫試薬パネルの使用である。例えば、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4(CTLA-4、CD152)を標的とする抗体(例えば、イピリムマブ)またはプログラム死受容体もしくはそれらのリガンド(PD-1またはPD-L1)を標的とする抗体(例えば、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブなど)を使用する、チェックポイント経路の遮断における最近の進歩は、特に効果的であることが示されている。例えば、Adamsら(2015年)Nature Rev. Drug Discov. 14巻:603~22頁;Mahoneyら(2015年)Nature Rev. Drug Discov. 14巻:561~84頁;Shinら(2015年)Curr. Opin. Immunol. 33巻:23~35頁参照。
【0133】
他の最近承認された抗がん剤は、腫瘍および他の疾患において上方制御または増幅される他の細胞表面タンパク質または遺伝子産物を標的とする(例えば、リンパ腫細胞におけるCD20に対するリツキシマブ、乳がん細胞におけるHER2/neuに対するトラスツズマブ、様々な腫瘍細胞におけるEGFRに対するセツキシマブ、様々ながん細胞および目におけるVEGFに対するベバシズマブ、ならびに骨における破骨細胞に対するデノスマブ参照)。したがって、これらの薬剤で処置される患者由来の組織試料のプロファイリングもまた、臨床医学において大きな現在の関心事となっている。
【0134】
同様に、抗がん剤での処置前か、または処置中のいずれかで患者から得られた組織試料もまた、分子プロファイリングから恩恵を受け得る。例えば、イマチニブ、レナリドミド、ペメトレキセド、ボルテゾミブ、リュープロレリン、アビラテロン酢酸エステル、イブルチニブ、カペシタビン、エルロチニブ、エベロリムス、シロリムス、ニロチニブ、スニチニブ、ソラフェニブなどで処置される患者は、有利には、本免疫試薬パネルを使用する、組織、特に罹患組織のプロファイリングによりモニターすることができる。
【0135】
免疫モジュレーターの分析を含む組織の分子プロファイリングのための方法およびシステム、ならびに疾患処置を評価およびモニターするためのそれらのプロファイルの使用もまた報告されている。例えば、米国特許第8,700,335B2号;同第8,768,629B2号;同第8,831,890B2号;同第8,880,350B2号;同第8,914,239B2号;同第9,053,224B2号;同第9,058,418B2号;同第9,064,045B2号;同第9,092,392B2号;PCT国際特許公開第WO2015/116868号参照。そのようなアプローチは、有利には、本免疫試薬の適切なパネルを使用して実施される。
【0136】
例示的なパネルは、以下のマーカーを含む腫瘍細胞、免疫細胞および種々の疾患関連マーカー抗原の組み合わせを標的とする:4-1BB、AFP、ALK1、アミロイドA、アミロイドP、アンドロゲン受容体、アネキシンA1、ASMA、BCA225、BCL-1、BCL-2、BCL-6、BerEP4、ベータ-カテニン、ベータ-HCG、BG-8、BOB-1、CA19-9、CA125、カルシトニン、カルデスモン、カルポニン-1、カルレチニン、CAM5.2、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD31、CD33、CD34、CD38、CD42b、CD43、CD45 LCA、CD45RO、CD56、CD57、CD61、CD68、CD79a、CD99、CD117、CD138、CD163、CDX2、CEA、クロモグラニンA、CMV、c-kit、c-MET、c-MYC、IV型コラーゲン、補体3c(C3c)、COX-2、CXCR5、CK1、CK5、CK6、CK7、CK8、CK14、CK18、CK17、CK19、CK20、CK903、CK AE1、CK AE1/AE3、D2-40、デスミン、DOG-1、E-カドヘリン、EGFR、EMA、ER、ERCC1、第VIII因子関連抗原、活性化第XIII因子、ファスシン、FoxP1、FoxP3、ガレクチン-3、GATA-3、GCDFP-15、GCET1、GFAP、グリコホリンA、グリピカン3、グランザイムB、HBME-1、Helicobacter Pylori、ヘモグロビンA、Hep Par1、HER-2、HHV-8、HMB-45、HSV l/ll、ICOS、IFNガンマ、IgA、IgD、IgG、IgM、IL17、IL4、インヒビン、iNOS、カッパIg軽鎖、Ki-67、LAG-3、ラムダIg軽鎖、リゾチーム、マンマグロビンA、MART-1/メランA、マスト細胞トリプターゼ、MLH1、MOC-31、MPO、MSA、MSH2、MSH6、MUC1、MUC2、MUM1、MyoD1、ミオゲニン、ミオグロビン、ナプシンA、ネスチン、NSE、Oct-2、OX40、OX40L、p16、p21、p27、p40、p53、p63、p504s、PAX-5、PAX-8、PD-1、PD-L1、PHH3、PIN-4、PLAP、PMS2、Pneumocystis jiroveci(carinii)、PgR、PSA、PSAP、RCC、S-100、SMA、SMM、スムーセリン、SOX10、SOX11、サーファクタントアポプロテインA、シナプトフィジン、TAG72、TdT、トロンボモジュリン、チログロブリン、TIA-1、TIM3、TRAcP、TTF-1、チロシナーゼ、ウロプラキン、VEGFR-2、ビリン、ビメンチン、およびWT-1など。
【0137】
好ましくは、パネルは、以下のマーカーの1個または複数を標的とする:CD4、CD8、CD20、CD68、PD-1、PD-L1、FoxP3、SOX10、グランザイムB、CD3、CD163、IL17、IL4、IFNガンマ、CXCR5、FoxP1、LAG-3、TIM3、CD34、OX40、OX40L、ICOS、および4-1BB。
【0138】
パネルは、下で詳細に記載された免疫学的アッセイのための方法での使用のための、キットの形態か、または別々に提供される一群の異なる免疫試薬としてかのいずれかで、提供される。特に、パネルは、試料を同時検出のために複数の免疫試薬と反応させる多重化方法において、使用される。免疫試薬は、上記の免疫試薬のいずれかであり、特に、上記で定義された標的抗原のいずれかに特異的な一次抗体および架橋抗原を含む免疫試薬であって、一次抗体および架橋抗原がカップリングされており、架橋抗原が検出可能な二次抗体により高親和性で認識される免疫試薬である。
【0139】
具体的な実施形態では、パネルは、細胞マーカーの以下の例示的な組合せを標的とする:
CD4、CD8、CD68、およびPD-L1;
CD4、CD8、FoxP3、およびCD68(任意の固形腫瘍について);
CD8、CD68、PD-L1、加えて、腫瘍関連マーカー(頭頚部腫瘍および膵腫瘍について);
SOX10、CD8、PD-1、およびPD-L1(メラノーマについて);
CD4、CD8、CD20、およびサイトケラチン(乳がんTILについて);
CD8、CD34、FoxP3、およびPD-L1(メラノーマ免疫学について);
CD8、CD34、PD-L1、およびFoxP1(がん免疫学について);
CD3、PD1、LAG-3、およびTIM3(T細胞疲弊について);
CD4およびFoxP3(Tregについて);
CD4およびIL17(Th17について);
CD8およびグランザイムB(活性化CD8について);
CD4およびCXCR5(TFhについて);
CD4およびIL4(Th2について);
CD4およびIFNg(Th1について);
CD4、CD8、CD3、およびCD20(一般的なリンパ球について);
CD4、CD8、CD68、およびCD20(リンパ球およびマクロファージについて);
CD4、FoxP3、CD8、およびCD20(Tregおよびリンパ球について);
CD4、FoxP3、CD8、およびグランザイムB(TregおよびAct CTLについて);
CD68(マクロファージについて);
CD68およびCD163(M2マクロファージについて);
CD20(B細胞について);ならびに
OX40、OX40L、ICOS、および41BB(目的の他の分子について)。
免疫学的アッセイの方法
【0140】
別の態様では、本開示は、免疫試薬を標的抗原と反応させるステップ、検出可能な二次抗体を免疫試薬と反応させるステップであって、検出可能な二次抗体が免疫試薬の架橋抗原と高親和性で結合する、ステップ、および結合した検出可能な二次抗体を検出するステップを含む、免疫学的アッセイの方法を提供する。これらの方法における免疫試薬および検出可能な二次抗体は、有用には、任意の適切な組合せでの、上記の免疫試薬および検出可能な二次抗体のいずれかであり得る。
【0141】
実施形態では、検出の方法は、免疫組織化学的方法である。上で記載されているように、免疫組織化学染色は、腫瘍細胞などの異常細胞の診断に頻繁に適用される、広く使用されている技術である。具体的な分子マーカーは、特定の腫瘍細胞、例えば、乳がん細胞の特性を示す。IHCもまた、バイオマーカー、および生物学的組織の異なる部分における差次的に発現したタンパク質の分布および局在化を理解するために頻繁に使用される。
【0142】
具体的な実施形態では、標的抗原は、組織切片内に存在する。組織切片内の抗原の検出は、臨床病理学分野の当業者によってよく理解されている。組織切片内の抗原を検出する例示的な方法は、例えば、Immunohistochemical Staining Methods、第6版(Dako/Agilent Technologies)に提供されている。典型的には固定化工程後の、固形組織試料が、試料の表面上の目的の1個または複数の標的抗原を露出させるために、薄片に切り分け得ることが理解されるものとする。連続組織切片、すなわち、最初の組織試料においてお互いに隣接、またはほとんど隣接していた切片の分析は、下でより詳細に記載されているように、最初の組織試料の3次元モデルの再構築、または標的抗原の多重化に関する能力の増加を可能にする。好ましい実施形態では、第1の標的抗原は、腫瘍試料の組織切片内の標的抗原である。
【0143】
他の具体的な実施形態では、方法により検出される抗原は、細胞内または細胞上にある。そのような検出は、例えば、サイトメトリの分野の当業者によって、よく理解されている。一部の実施形態では、抗原は細胞の表面上に存在し得る。他の実施形態では、抗原は、細胞の細胞質内に存在し得る。まだ他の実施形態では、抗原は細胞の核内に存在し得る。一部の実施形態では、抗原は、細胞内の1つより多い位置に存在し得る。
【0144】
上記方法に従って分析される組織は、任意の適切な組織試料であり得る。例えば、一部の実施形態では、組織は、結合組織、筋肉組織、神経組織、または上皮組織であり得る。同様に、分析される組織は、目的の任意の器官から入手され得る。適切な組織の非限定的例には、乳房、結腸、卵巣、皮膚、膵臓、前立腺、肝臓、腎臓、心臓、リンパ系、胃、脳、肺、および血液が挙げられる。
【0145】
一部の実施形態では、検出するステップは、蛍光検出ステップである。適切な蛍光検出標識は上で詳細に記載されている。
【0146】
一部の実施形態では、検出の方法は、検出可能な二次抗体に結合している細胞を選別するステップをさらに含む。細胞選別は、フローサイトメトリの分野内のよく理解された技術である。例示的なフローサイトメトリ検出方法は、例えば、Practical Flow Cytometry、第4版、Shapiro、Wiley-Liss、2003年;Handbook of Flow Cytometry Methods、Robinson編、Wiley-Liss、1993年;およびFlow Cytometry in Clinical Diagnosis、第4版、Careyら編、ASCP Press、2007年に提供されている。定量的多重化免疫学的アッセイ、特に、定量的フローサイトメトリアッセイにおけるヒドラゾン連結抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの使用は、PCT国際公開第WO2013/188756号およびFlorら(2013年)Chembiochem. 15巻:267~75頁に記載されている。
【0147】
一部の実施形態では、免疫学的アッセイの方法は、多重化アッセイにおいて追加の免疫試薬を追加の標的抗原と反応させるステップであって、追加の免疫試薬が追加の標的抗原に特異的な上記で定義された免疫試薬のいずれかである、ステップ、追加の免疫試薬を追加の検出可能な二次抗体と反応させるステップであって、追加の検出可能な二次抗体が追加の免疫試薬の架橋抗原と高親和性で結合する、ステップ、および結合した検出可能な追加の二次抗体を検出するステップを含む。多重化方法における追加の免疫試薬および二次抗体の反応の順番は、当業者によって理解されているように、所望の結果を達成するために、任意の適切な方法において変わり得る。一部の実施形態では、異なる免疫試薬の全部が、複数の標的抗原を含有する標的試料へ同時に加えられ得る。他の実施形態では、異なる免疫試薬が、任意の順番で逐次的に加えられ得る。二次抗体に関しても同様に、同時か、または任意の順番で逐次的かのいずれかで加えられ得る。多重化アッセイにおいて、方法は、単一のアッセイにおいて、2個、3個、5個、10個、20個、30個、50個、100個、またはさらにより多い異なる標的抗原を検出し得る。上で詳細に記載されているように、本免疫試薬をそのようなより高いレベルの多重化免疫学的アッセイに使用できることは、本免疫試薬の主な利点である。特に、および実施例に例証されているように、これらの免疫試薬は、優れた感度、選択性、およびバックグラウンドシグナルの極めて低いレベルを有する免疫学的アッセイを可能にする。
【0148】
一部の実施形態では、免疫学的アッセイの本方法は、所定の組織試料について可能な、検出可能な抗原の多重化のレベルを増加させるために、または試料の3次元画像を再構築するために、固定化組織試料の隣接した、またはほとんど隣接した切片の分析を含む。例えば、一部の実施形態では、方法は、第2の免疫試薬を第2の試料上の第2の標的抗原と反応させるステップをさらに含む。これらの方法の一部において、第1の試料および第2の試料は、組織試料の連続切片(すなわち、試料においてお互いに隣接し、またはほとんど隣接している切片)であり得、第2の免疫試薬は、第2の抗原に特異的な上記の免疫試薬のいずれかである。方法は、第2の検出可能な二次抗体を第2の免疫試薬と反応させるステップであって、第2の検出可能な二次抗体が第2の免疫試薬の架橋抗原に対して高親和性で特異的である、ステップ、および第2の免疫試薬の架橋抗原と会合している第2の検出可能な二次抗体を検出するステップをさらに含む。
【0149】
所定の組織試料の連続切片のイムノアッセイは、現在のハードウェアおよびソフトウェアの限界を考慮しても、抗原検出の多重化の著しい増加を提供することは理解される。例えば、本明細書に記載された免疫試薬および方法は、原理上は、架橋抗原および二次抗体の無制限のバリエーションに起因して無制限の多重化を可能にするが、それでもやはり、そのようなアッセイは、現在、利用可能な検出デバイスで単一の組織切片上で同時に区別することができる蛍光色素の数によって制限される。しかしながら、同じ組織試料の連続切片を、一次抗体の異なるパネルで染色して、異なる切片上での検出可能な標識、例えば、蛍光標識の同じパネルの再使用により標的抗原の異なるセットを同定することができる。検出可能な標識は、第1の試料切片を標識するのに使用された同じセットの二次抗体に結合し得、その場合、一次抗体の第2のパネルは、抗体の第1のパネルと共に使用されたのと同じセットの架橋抗原で標識される。代替として、および任意選択で、検出可能な標識は、第1の試料切片を標識するのに使用されたのとは異なるセットの二次抗体に結合し得、その場合、一次抗体の第2のパネルは、抗体の第1のパネルと共に使用されたのとは異なるセットの架橋抗原で標識される。
【0150】
所定の組織試料の連続切片のイムノアッセイは、3次元での標的組織抗原の分析を可能にし、それにしたがって、例えば、断層撮影技術により、試料組織の全体的構造に関するさらなる情報を提供することもまた理解される。一部の実施形態では、第1の試料および第2の試料は、試料の連続切片ではなく、代わりに、最初の組織内の空間で引き離されている場合があり、それゆえに、3次元における標的抗原の相対的空間的配置についてのなおさらなる情報を提供する。当業者は、3次元組織構造の再構築における連続切片画像の利用を理解している。
【0151】
一部の実施形態では、試料のそれぞれにおいて、複数の標的抗原が検出される。具体的な実施形態では、試料のそれぞれにおいて、少なくとも2個の標的抗原、少なくとも3個の標的抗原、少なくとも5個の標的抗原、少なくとも10個の標的抗原、少なくとも15個の標的抗原、少なくとも25個の標的抗原、またはさらにより多い標的抗原が検出される。一部の実施形態では、1個または複数の標的抗原が、少なくとも3個の試料、少なくとも4個の試料、少なくとも5個の試料、少なくとも10個の試料、少なくとも15個の試料、少なくとも25個の試料、またはさらにより多くの試料において検出される。
【0152】
別の態様では、本開示は、試料中の複数の標的抗原が、架橋抗原を含む一次抗体での最初の処理、および架橋抗原に特異的な反応性二次抗体でのその後の逐次処理により標識される、免疫学的アッセイの方法を提供する。具体的には、第1の標的抗原および第2の標的抗原を含む試料を、第1の標的抗原に特異的な第1の免疫試薬および第2の標的抗原に特異的な第2の免疫試薬と反応させ、その場合、第1の免疫試薬および第2の免疫試薬が上記の免疫試薬のいずれかである。第1の免疫試薬を、第1の反応性二次抗体と反応させ、その場合、第1の反応性二次抗体が第1の免疫試薬の架橋抗原と高親和性で結合する。その後、試料中の第1の抗原の位置は、第1の反応性二次抗体を第1の検出可能な試薬と反応させることにより強調され、それにより、第1の検出可能な試薬が、第1の抗原の近くで試料に結合している。その後、第1の反応性二次抗体を、試料から選択的に解離させ、第2の免疫試薬を、第2の反応性二次抗体と反応させ、その場合、第2の反応性二次抗体が第2の免疫試薬の架橋抗原と高親和性で結合する。その後、試料中の第2の抗原の位置は、第2の反応性二次抗体を第2の検出可能な試薬と反応させることにより強調され、それにより、第2の検出可能な試薬が、第2の抗原の近くで試料に結合している。その後、第1の検出可能な試薬および第2の検出可能な試薬を検出し、それにしたがって、試料における第1の標的抗原および第2の標的抗原の位置を同定する。
【0153】
これらの方法の具体的な実施形態では、第1の反応性二次抗体および第2の反応性二次抗体はそれぞれ、酵素活性、より具体的には、西洋ワサビペルオキシダーゼ活性などのペルオキシダーゼ活性を含む。他の具体的な実施形態では、第1の検出可能な試薬か、もしくは第2の検出可能な試薬のいずれかが、チラミドを含み、または第1の検出可能な試薬および第2の検出可能な試薬のそれぞれが、チラミドを含む。まだ他の具体的な実施形態では、第1の検出可能な試薬か、もしくは第2の検出可能な試薬のいずれかが、フルオロフォアもしくは発色団を含み、または第1の検出可能な試薬および第2の検出可能な試薬のそれぞれが、フルオロフォアもしくは発色団を含む。
【0154】
好ましい実施形態では、第1の反応性二次抗体は、選択的処理により試料から解離する。具体的には、選択的処理は、一次抗体を試料から解離させることなく、第1の反応性二次抗体を試料から解離させ得る。より具体的には、選択的処理は、可溶性架橋抗原での処理を含み得る。そのような処理は、当業者により理解されているように、相対的に高い濃度の可溶性架橋抗原、例えば、少なくとも1μM、少なくとも10μM、少なくとも100μM、少なくとも1mM、少なくとも10mM、またはさらにより高い濃度の可溶性架橋抗原の使用を含み得る。
【0155】
上記方法において、反応性二次抗体を試料から解離させるステップ、追加の免疫試薬を試料上の追加の標的抗原と反応させるステップ、追加の反応性二次抗体を追加の免疫試薬と反応させるステップ、および追加の反応性二次抗体を追加の検出可能な試薬と反応させるステップであって、その結果、追加の検出可能な試薬が追加の標的抗原の近くで試料に結合している、ステップが、試料上の望まれるだけの数の標的抗原の位置を検出するために、必要とされるだけの回数、繰り返され得ることも理解されるものとする。一部の実施形態では、ステップは、試料上の少なくとも3個の標的抗原、少なくとも4個の標的抗原、少なくとも5個の標的抗原、少なくとも10個の標的抗原、またはさらにより多い標的抗原の位置を検出するために繰り返される。
【0156】
これらのアッセイ方法に使用されるステップの順番は、使用される特定の反応条件に依存し得ること、および場合によっては、アッセイを完了させるために追加の反応ステップもまた必要であり得ることも理解されるものとする。例えば、反応性二次抗体を試料から解離させるために、非選択的方法(例えば、熱、変性など)が使用される場合には、アッセイにおいて追加の反応ステップを含むことが必要になる場合がある。具体的には、解離条件がまた一次抗体を試料から除去する場合には、追加の反応性二次抗体および追加の検出可能な試薬との反応の前に、追加の免疫試薬とのさらなる反応が工程に含まれてよい。言い換えれば、新しい免疫試薬の新しい標的抗原との反応が、各標的抗原についての工程に含まれる。しかしながら、好ましい実施形態では、反応性二次抗体が選択的に解離する場合、所望の標的抗原の全部との反応のために所望の免疫試薬の全部を、最初の反応ステップに加えることができ、反応性二次抗体だけが、次のサイクルにおいて加えられる。反応性二次抗体を試料から解離させるための選択的処理の使用は、過酷な処理からの試料への損傷を最小限にし、それにしたがって、アッセイからの結果を向上させる。
【0157】
本開示の免疫試薬は、様々な免疫化学的な検出方法に有用に用いられ得、その免疫化学的な検出方法には、非限定的に、顕微鏡画像化、プレターゲティングイメージング、ならびにin vivoでの腫瘍および組織画像化の他の型、ハイコンテンツスクリーニング(HCS)、免疫細胞化学法(ICC)、免疫磁気細胞除去、免疫磁気細胞捕捉、サンドイッチアッセイ、一般的なアフィニティアッセイ、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、ELISpot、マスサイトメトリ(CyTOF)、マイクロスフェアアレイ、多重化マイクロスフェアアレイ、マイクロアレイ、抗体アレイ、細胞アレイを含むアレイ、液相捕捉、側方フローアッセイ、化学発光検出、赤外線検出、ウェスタンブロット、サウスウェスタンブロット、ドットブロット、組織ブロットなどを含むブロッティング方法、またはそれらの組合せが挙げられる。これらのアッセイのそれぞれは、本免疫試薬を使用して達成される高レベルの多重化から恩恵を受け得る。
【0158】
本免疫試薬の抗体により認識される標的抗原は、例えば、目的の細胞タンパク質もしくは他の抗体か、または小分子抗原、例えば、ハプテンなどのいずれかのポリペプチド抗原であり得る。他の抗原もまた、当業者により理解されているように、本免疫試薬により有用に標的となり得る。例えば、本免疫試薬の標的には、タンパク質、微生物、ウイルス、細菌、薬物、ホルモン、毒素、生体分子、脂質、炭水化物、核酸、合成分子、修飾タンパク質などが挙げられる。
【0159】
上記方法は、制限なしに、研究および臨床実践場面に使用される。それらは、予測スクリーニングを含め診断を目的として、および他の型の予後アッセイにおいて、例えば、診断検査室の環境において、または臨床現場即時検査として、使用され得る。当該多重化抗体技術はまた、ハイスループットスクリーニングにおける使用にも十分適している。
調製の方法
【0160】
別の態様では、本開示は、上記の免疫試薬などの抗原をカップリングさせた免疫試薬を調製する新規な方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、化学的カップリング反応を使用して、一次抗体を架橋抗原にカップリングするステップを含む。具体的な実施形態では、一次抗体と架橋抗原は、高効率コンジュゲーション部分によってカップリングされる。一部の実施形態では、方法は、抗体を第1のコンジュゲート試薬で修飾するステップ、架橋抗原を第2のコンジュゲート試薬で修飾するステップ、および修飾された抗体を修飾された架橋抗原と反応させて、抗原をカップリングさせた免疫試薬を生成するステップを含む。具体的な実施形態では、第1のコンジュゲート試薬および第2のコンジュゲート試薬は、高効率でお互いに会合する。
【0161】
高効率とは、抗体の抗原をカップリングさせた抗体への変換の効率が、コンジュゲーション反応の条件下で、少なくとも50%、70%、90%、95%、または99%完了であることを意味する。一部の実施形態では、これらの効率は、0.5mg/mL以下、0.2mg/mL以下、0.1mg/mL以下、0.05mg/mL以下、0.02mg/mL以下、0.01mg/mL以下、またはそれよりも低いタンパク質濃度で達成される。
【0162】
調製方法に有用に用いられる抗体および架橋抗原には、上記の抗体および架橋抗原のいずれかが挙げられる。第1および第2のコンジュゲート試薬は、所望の結果に従って選択される。特に、アミノ基またはチオール基と特異的で選択的に反応することができる高効率コンジュゲート試薬が、抗体およびペプチド架橋抗原などのペプチドおよびタンパク質の修飾において特に有用である。加えて、第1および第2のコンジュゲート試薬は、高効率でお互いに会合するそれらの能力、および、それにしたがって、上記の抗原をカップリングさせた免疫試薬の一部において高効率コンジュゲーション部分を生じるそれらの能力について選択される。
【0163】
上で記載されているように、生じたコンジュゲーション部分は、共有結合性部分または非共有結合性部分であり得、それに応じて、修飾された抗体および修飾された架橋抗原を調製するために使用される第1および第2のコンジュゲート試薬が選択される。例えば、非共有結合性コンジュゲーション部分の場合、第1のコンジュゲート試薬は、好ましくは、その試薬を抗体の特定の反応性残基に結合させるための選択的反応基、およびコンジュゲーションペアの第1の構成成分を含む。同様に、第2のコンジュゲート試薬は、好ましくは、その試薬を架橋抗原の特定の反応性残基に結合させるための選択的反応基、およびコンジュゲーションペアの第2の構成成分を含む。コンジュゲーションペアの第1および第2の構成成分は、高効率で、非共有結合的にお互いに会合することができ、それにしたがって、抗原をカップリングさせた免疫試薬を生成することができる。
【0164】
前に記載されているように、非共有結合性コンジュゲーション部分の例には、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションペアおよびタンパク質-リガンド結合ペアが挙げられる。例えば、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションペアの場合、抗体を、ハイブリダイゼーションペアの1つのメンバーを含む第1のコンジュゲート試薬と反応させ、架橋抗原を、ハイブリダイゼーションペアの第2のメンバーを含む第2のコンジュゲート試薬と反応させる。したがって、修飾された抗体および修飾された架橋抗原は、お互いと混合することができ、ハイブリダイゼーションペアの2つのメンバーの会合により、高効率コンジュゲーション部分が生じる。
【0165】
同様に、抗原をカップリングさせた免疫試薬の非共有結合性コンジュゲーション部分を生じるためにタンパク質-リガンド結合ペアが使用される場合、抗体を、タンパク質-リガンドペアの一方または他方を含む第1のコンジュゲート試薬と反応させ、架橋抗原を、タンパク質-リガンドペアの相補的メンバーを含む第2のコンジュゲート試薬と反応させる。そのように修飾された抗体および架橋抗原は、その後、お互いと混合され、高効率コンジュゲーション部分が生じる。
【0166】
上で詳細に記載されているように、高効率共有結合性コンジュゲーション部分の例には、ヒドラゾン、オキシム、他のシッフ塩基、および様々なクリック反応のいずれかの生成物が挙げられる。高効率コンジュゲーション部分を形成するのに使用される例示的なヒドラジノ、オキシアミノ、およびカルボニルコンジュゲート試薬は、米国特許第7,102,024号に例証されており、本反応方法での使用に適応することができる。そこに記載されているように、ヒドラジン部分は、脂肪族、芳香族、もしくはヘテロ芳香族のヒドラジン、セミカルバジド、カルバジド、ヒドラジド、チオセミカルバジド、チオカルバジド、炭酸ジヒドラジン、またはヒドラジンカルボキシレートであり得る。カルボニル部分は、上記のヒドラジンまたはオキシアミノ部分の1つまたは複数とヒドラジンまたはオキシム結合を形成することができる任意のカルボニル含有基であり得る。好ましいカルボニル部分には、アルデヒドおよびケトンが挙げられる。本方法においてコンジュゲート試薬として使用されるこれらの試薬の一部の活性化バージョンは、例えば、Solulink,Inc.(San Diego、CA)およびJena Bioscience GmbH(Jena、Germany)から市販されている。一部の実施形態では、試薬は、抗原の合成中、例えば、固相合成によるペプチド架橋抗原の合成中に、架橋抗原へ取り込まれ得る。
【0167】
固定化および他のコンジュゲーション反応に使用される、オリゴヌクレオチドへのヒドラジン、オキシアミノ、およびカルボニルに基づいたモノマーの取り込みは、米国特許第6,686,461号;同第7,173,125号;および同第7,999,098号に記載されている。生体分子のコンジュゲーションおよび固定化に使用されるヒドラジンに基づいた、およびカルボニルに基づいた二官能性架橋試薬は、米国特許第6,800,728号に記載されている。様々な検出アッセイおよび他の適用においてオリゴヌクレオチドコンジュゲートを形成するための高効率ビスアリール-ヒドラゾンリンカーの使用は、PCT国際公開第WO2012/071428号に記載されている。上記参考文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み入れられている。
【0168】
一部の実施形態では、本開示の免疫試薬は、新規なコンジュゲート試薬および条件を使用して調製される。例えば、抗原をカップリングさせた免疫試薬の調製に有用なチオール反応性マレイミドオキシアミノ(MOA)コンジュゲート試薬は、スキーム1に示されているように調製され得る:
【化1】
アミノ反応性オキシアミノコンジュゲート試薬(AOA)は、スキーム2に示されているように調製され得る:
【化2】
【0169】
代替のチオール反応性およびアミノ反応性コンジュゲート試薬は、合成化学の分野の当業者によって理解されているように、上記の反応スキームの変形型を使用して調製され得る。そのような代替試薬は、本明細書に開示された調製方法の範囲内と見なされるべきである。
【0170】
上記のオキシアミノ含有試薬の一方または他方を使用して修飾された抗体および架橋抗原は、有用には、カルボニル含有試薬、例えば、ホルミルベンゾエート基などの芳香族アルデヒドでそれ自体、修飾される相補的抗体または架橋抗原と反応し得る。そのようなコンジュゲーション反応の代替の例は、スキーム3および4(R基およびR基は、独立して、抗体または架橋抗原を表す)に示されている。
【化3】
【0171】
抗体上および架橋抗原上のコンジュゲーション部分を形成する基の異なるメンバーの相対的配向は、その基がお互いに反応して、高効率コンジュゲーション部分を形成することができる限り、重要であるとは一般的に考えられていないことが理解されるものとする。言い換えれば、スキーム3および4の例において、R基は抗体であり得、R基は架橋抗原であり得、またはR基は架橋抗原であり得、R基は抗体であり得る。上記のコンジュゲートペアの全部について、共有結合性であろうと非共有結合性であろうと、一般的に同じことが当てはまる。実施例の表1に示されたペプチドは、スキーム4に示された反応を使用して一次抗体に結合し、ここで、AOA基はペプチドのアミノ末端で結合しており、「R」基はペプチドに対応し、「R」基は抗体である。
【0172】
上記のコンジュゲーション方法は、従来の架橋方法、例えば、二官能性架橋試薬を使用する方法と比べていくつかの利点を提供する。特に、その反応は、特異的、効率的、安定的である。特異性は、ホモ共役反応などの副反応が起こらず、または極めて低レベルで起こることを意味する。効率は、反応が、低タンパク質濃度でさえも完了、または完了近くまで進み、したがって、化学量論的量で、またはそれ近くで生成物を生じることを意味する。形成されるコンジュゲーション部分の安定性は、生じた免疫試薬が、コンジュゲートされた生成物が使用中に解離するという心配なしに、多種多様な目的のために使用することができることを意味する。場合によっては、上記コンジュゲーション方法は、その反応の一部において反応が起こるにつれて、発色団(chromaphore)が形成されるため、コンジュゲーション反応の過程が分光学的にモニターされ得るというさらなる利点を与える。
【0173】
ヒドラゾン連結アドリアマイシン/モノクローナル抗体コンジュゲートの合成および安定性は、Kanekoら(1991年)Bioconj. Chem. 2巻:133~41頁に記載されている。一連の芳香族ヒドラジド、ヒドラジン、およびチオセミカルバジドの合成およびタンパク質修飾特性は、米国特許第5,206,370号;同第5,420,285号;および同第5,753,520号に記載されている。コンジュゲーション的に拡張されたヒドラジン化合物および蛍光ヒドラジン化合物の作製は、米国特許第8,541,555号に記載されている。
診断キット
【0174】
別の態様では、本開示は、診断または研究を目的とした免疫化学的アッセイに使用されるキットを提供する。診断キットは、本開示の1つまたは複数の免疫試薬を、免疫学的アッセイにおける使用のための指示と共に含む。一部の実施形態では、キットはさらに、二次抗体、例えば、免疫試薬の架橋抗原に対して、高親和性で特異的である二次抗体を含む。さらに、本キットに含まれる免疫試薬は、典型的には、細胞マーカーに向けられた抗体を含み、それにより、キットは、組織試料内、細胞の懸濁物中、別の表面上、または別の媒体中の細胞マーカーの検出のための免疫学的アッセイに使用され得ることが理解されるものとする。しかしながら、状況によっては、キットが、異種間免疫グロブリンに向けられた抗体、例えば、抗マウス抗体、抗ウサギ抗体などを含む免疫試薬を提供することは有用であり得る。これらのキットにおいて、免疫試薬は、標的種の一次抗体の検出のための免疫学的アッセイに使用され得る。
【0175】
さらなる実施形態では、キットは、さらなる構成成分、例えば、細胞または組織を染色するためのキットの利用を可能にするための様々な組成のバッファー、および試料形態(morphology)の可視化を可能にするための細胞の対比染色剤などを含み得る。キットは、様々な様式で提供されて、上記の列挙された構成成分の一部もしくは全部を含み得、または本明細書に列挙されていない追加の構成成分を含み得る。
代替結合剤
【0176】
本開示の別の態様では、本免疫試薬の一次抗体構成成分は、標的抗原に高親和性で結合することができる別の作用物質で置き換えられ得る。例えば、アプタマーは、様々な三次構造を形成することができ、金属イオン、小分子、タンパク質、ウイルス、細胞などの標的と結合することができる一本鎖DNAまたはRNAオリゴマーである。Maら(2015年)Chem. Soc. Rev.(DOI:10.1039/C4CS00357H)参照。所定の標的分子に対して高親和性および高特異性を有するアプタマーは、当業者により理解されているように、試験管内進化法(Sytematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)(SELEX)として知られた手順を使用して、ランダムライブラリーから選択され得る。適切なアプタマーは、一旦同定され特徴付けられれば、例えば標識または他の所望の修飾が付加されることによってさらに改変され得る。例えば、アプタマーに基づいた蛍光バイオセンサーの概説としてWangら(2011年)Curr. Med. Chem. 18巻:4175~4184頁参照。
【0177】
本開示の免疫試薬は、有利には、より従来的な抗体から調製される免疫試薬について上で記載されているように、アプタマー、または他の類似した高親和性および高選択性結合剤を、それらの作用物質を架橋抗原にカップリングさせることにより、用い得る。したがって、この開示の目的のために、当業者により理解されているように、アプタマー、ならびに他の関連した高親和性および高選択性結合剤は、試料上の特定の標的分子を特異的に認識し、結合するアプタマーの能力により、本明細書で使用され特許請求される場合、用語「抗体」の範囲内に入ると見なされるべきであることが理解されるものとする。
【0178】
したがって、一部の実施形態では、本開示の免疫試薬は、
アプタマーおよび
架橋抗原
を含み得、そこでは、アプタマーおよび架橋抗原がカップリングされており、
架橋抗原が検出可能な二次抗体により高親和性で認識される。具体的な実施形態では、免疫試薬は、従来の抗体を含む上記の免疫試薬の特徴の1つまたは複数を含む。
他の態様
【0179】
他の態様では、本開示は、以下の番号付けされた項に記載される特徴を提供する。
1.架橋抗原とカップリングした一次抗体;および
検出可能な二次抗体
を含む免疫試薬組成物であって、該検出可能な二次抗体が該架橋抗原に対して高親和性で特異的である、免疫試薬組成物。
2.前記架橋抗原がペプチドまたは低分子ハプテンである、段落1に記載の免疫試薬組成物。
3.前記一次抗体および前記架橋抗原が、化学的カップリング反応によりカップリングしている、段落1に記載の免疫試薬組成物。
4.前記一次抗体および前記架橋抗原が高効率コンジュゲーション部分によってカップリングしている、段落1に記載の免疫試薬組成物。
5.前記高効率コンジュゲーション部分がシッフ塩基である、段落4に記載の免疫試薬組成物。
6.前記シッフ塩基がヒドラゾンまたはオキシムである、段落5に記載の免疫試薬組成物。
7.前記高効率コンジュゲーション部分がクリック反応によって形成される、段落4に記載の免疫試薬組成物。
8.前記一次抗体が細胞マーカーに特異的である、段落1に記載の免疫試薬組成物。
9.前記細胞マーカーが、ER、HER2、PR、Ki67、EGFR、CK1、CK5、CK6、CK7、CK14、CK17、サイトケラチンAE1/AE3、ネスチン、ビメンチン、ASMA、Ber-EP4、p16、p40、p53、p63、c-kitおよびCDマーカーからなる群から選択される、段落8に記載の免疫試薬組成物。
10.前記一次抗体が、異なる種由来の免疫グロブリンに特異的である、段落1に記載の免疫試薬組成物。
11.前記検出可能な二次抗体が検出可能な標識を含む、段落1に記載の免疫試薬組成物。
12.前記検出可能な標識が、フルオロフォア、酵素、アップコンバージョンナノ粒子、量子ドット、または検出可能なハプテンである、段落11に記載の免疫試薬組成物。
13.前記検出可能な標識がフルオロフォアである、段落12に記載の免疫試薬組成物。
14.前記酵素が、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはグルコースオキシダーゼである、段落12に記載の免疫試薬組成物。
15.前記ペルオキシダーゼが西洋ワサビペルオキシダーゼまたはダイズペルオキシダーゼである、段落14に記載の免疫試薬組成物。
16.前記検出可能な二次抗体が、前記架橋抗原に対して特異的であり、最大で100nM、最大で30nM、最大で10nM、最大で3nM、最大で1nM、最大で0.3nM、最大で0.1nM、最大で0.03nM、最大で0.01nM、または最大で0.003nMの解離定数を有する、段落1に記載の免疫試薬組成物。
17.複数の架橋抗原にカップリングした複数の一次抗体、および
複数の検出可能な二次抗体
を含む免疫試薬組成物であって、各架橋抗原が異なる一次抗体にカップリングしており、
少なくとも1個の検出可能な二次抗体が少なくとも1個の架橋抗原に対して高親和性で特異的である、免疫試薬組成物。
18.それぞれの架橋抗原がペプチドまたは低分子ハプテンである、段落17に記載の免疫試薬組成物。
19.前記複数の一次抗体および前記複数の架橋抗原が、化学的カップリング反応によりカップリングしている、段落17に記載の免疫試薬組成物。
20.前記複数の一次抗体および前記複数の架橋抗原が高効率コンジュゲーション部分によってカップリングしている、段落17に記載の免疫試薬組成物。
21.前記高効率コンジュゲーション部分がシッフ塩基である、段落20に記載の免疫試薬組成物。
22.前記シッフ塩基がヒドラゾンまたはオキシムである、段落21に記載の免疫試薬組成物。
23.前記高効率コンジュゲーション部分がクリック反応によって形成される、段落20に記載の免疫試薬組成物。
24.前記複数の一次抗体が複数の細胞マーカーに特異的である、段落17に記載の免疫試薬組成物。
25.前記細胞マーカーが、ER、HER2、PR、Ki67、EGFR、CK1、CK5、CK6、CK7、CK14、CK17、サイトケラチンAE1/AE3、ネスチン、ビメンチン、ASMA、Ber-EP4、p16、p40、p53、p63、c-kitおよびCDマーカーからなる群から選択される、段落24に記載の免疫試薬組成物。
26.前記複数の一次抗体が、異なる種由来の複数の免疫グロブリンに特異的である、段落17に記載の免疫試薬組成物。
27.前記複数の検出可能な二次抗体が検出可能な標識を含む、段落17に記載の免疫試薬組成物。
28.前記検出可能な標識が、フルオロフォア、酵素、アップコンバージョンナノ粒子、量子ドット、または検出可能なハプテンである、段落27に記載の免疫試薬組成物。
29.前記検出可能な標識がフルオロフォアである、段落28に記載の免疫試薬組成物。
30.前記酵素が、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはグルコースオキシダーゼである、段落28に記載の免疫試薬組成物。
31.前記ペルオキシダーゼが西洋ワサビペルオキシダーゼまたはダイズペルオキシダーゼである、段落30に記載の免疫試薬組成物。
32.前記少なくとも1つの検出可能な二次抗体が、前記少なくとも1つの架橋抗原に対して特異的であり、最大で100nM、最大で30nM、最大で10nM、最大で3nM、最大で1nM、最大で0.3nM、最大で0.1nM、最大で0.03nM、最大で0.01nM、または最大で0.003nMの解離定数を有する、段落17に記載の免疫試薬組成物。
33.各検出可能な二次抗体が各架橋抗原に対して高親和性で特異的である、項17に記載の免疫試薬組成物。
34.少なくとも3個の異なる架橋抗原を含む、項17に記載の免疫試薬組成物。
35.少なくとも5個の異なる架橋抗原を含む、項34に記載の免疫試薬組成物。
36.少なくとも10個の異なる架橋抗原を含む、項35に記載の免疫試薬組成物。
37.一次抗体、および
架橋抗原
を含む免疫試薬であって、一次抗体および架橋抗原がカップリングされており、
架橋抗原が検出可能な二次抗体により高親和性で認識される、免疫試薬。
38.前記架橋抗原がペプチドである、段落37に記載の免疫試薬。
39.前記一次抗体および前記架橋抗原が、化学的カップリング反応によりカップリングしている、段落37に記載の免疫試薬。
40.前記一次抗体および前記架橋抗原が高効率コンジュゲーション部分によってカップリングしている、段落37に記載の免疫試薬。
41.前記高効率コンジュゲーション部分がシッフ塩基である、段落40に記載の免疫試薬。
42.前記シッフ塩基がヒドラゾンまたはオキシムである、段落41に記載の免疫試薬。
43.前記高効率コンジュゲーション部分がクリック反応によって形成される、段落40に記載の免疫試薬。
44.前記一次抗体が細胞マーカーに特異的である、段落37に記載の免疫試薬。
45.前記細胞マーカーが、ER、HER2、PR、Ki67、EGFR、CK1、CK5、CK6、CK7、CK14、CK17、サイトケラチンAE1/AE3、ネスチン、ビメンチン、ASMA、Ber-EP4、p16、p40、p53、p63、c-kitおよびCDマーカーからなる群から選択される、段落44に記載の免疫試薬。
46.前記一次抗体が、異なる種由来の免疫グロブリンに特異的である、段落37に記載の免疫試薬。
47.前記架橋抗原が、最大で100nM、最大で30nM、最大で10nM、最大で3nM、最大で1nM、最大で0.3nM、最大で0.1nM、最大で0.03nM、最大で0.01nM、または最大で0.003nMの解離定数で前記検出可能な二次抗体によって認識される、段落37に記載の免疫試薬。
48.少なくとも3の、段落37~47のいずれか1項に記載の免疫試薬を含む免疫試薬組成物。
49.少なくとも5の、段落37~47のいずれか1項に記載の免疫試薬を含む、段落48に記載の免疫試薬組成物。
50.少なくとも10の、段落37~47のいずれか1項に記載の免疫試薬を含む、段落48に記載の免疫試薬組成物。
51.前記一次抗体が複数の細胞マーカーに対して特異的である、段落48に記載の免疫試薬組成物。
52.前記細胞マーカーが、ER、HER2、PR、Ki67、EGFR、CK1、CK5、CK6、CK7、CK14、CK17、サイトケラチンAE1/AE3、ネスチン、ビメンチン、ASMA、Ber-EP4、p16、p40、p53、p63、c-kitおよびCDマーカーからなる群から選択される、段落51に記載の免疫試薬組成物。
53.前記架橋抗原がペプチドである、段落48に記載の免疫試薬組成物。
54.第1の標的抗原を含む試料を供給するステップ;
第1の免疫試薬を該第1の標的抗原と反応させるステップであって、該第1の免疫試薬が、該第1の標的抗原に特異的な、段落37~47のいずれか一項に記載の免疫試薬である、ステップ;
第1の検出可能な二次抗体を該第1の免疫試薬と反応させるステップであって、該第1の検出可能な二次抗体が、該第1の免疫試薬の架橋抗原に対して、高親和性で特異的である、ステップ;および
該第1の免疫試薬の該架橋抗原と会合している該第1の検出可能な二次抗体を検出するステップ
を含む、免疫学的アッセイのための方法。
55.前記第1の標的抗原が細胞マーカーである、段落54に記載の方法。
56.前記細胞マーカーが、ER、HER2、PR、Ki67、EGFR、CK1、CK5、CK6、CK7、CK14、CK17、サイトケラチンAE1/AE3、ネスチン、ビメンチン、ASMA、Ber-EP4、p16、p40、p53、p63、c-kitおよびCDマーカからなる群から選択される、段落55に記載の方法。
57.前記第1の標的抗原が、異なる種由来の免疫グロブリンである、段落54に記載の方法。
58.前記第1の検出可能な二次抗体が検出可能な標識を含む、段落54に記載の方法。
59.前記検出可能な標識が、フルオロフォア、酵素、アップコンバージョンナノ粒子、量子ドット、または検出可能なハプテンである、段落58に記載の方法。
60.前記検出可能な標識がフルオロフォアである、段落59に記載の方法。
61.前記酵素が、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはグルコースオキシダーゼである、段落59に記載の方法。
62.前記ペルオキシダーゼが西洋ワサビペルオキシダーゼまたはダイズペルオキシダーゼである、段落61に記載の方法。
63.前記第1の検出可能な二次抗体が、前記第1の免疫試薬の前記架橋抗原に対して特異的であり、最大で100nM、最大で30nM、最大で10nM、最大で3nM、最大で1nM、最大で0.3nM、最大で0.1nM、最大で0.03nM、最大で0.01nM、または最大で0.003nMの解離定数を有する、段落54に記載の方法。
64.前記第1の標的抗原が組織切片内にある、段落54に記載の方法。
65.前記検出するステップが蛍光検出ステップである、段落64に記載の方法。
66.前記検出するステップが酵素的検出ステップである、段落64に記載の方法。
67.前記第1の標的抗原が細胞内または細胞上にある、段落54に記載の方法。
68.前記第1の標的抗原が前記細胞の表面上にある、段落67に記載の方法。
69.前記第1の標的抗原が前記細胞の細胞質内にある、段落67に記載の方法。
70.前記第1の標的抗原が前記細胞の核内にある、段落67に記載の方法。
71.前記検出するステップが蛍光検出ステップである、段落67に記載の方法。
72.前記第1の検出可能な二次抗体に結合している細胞を選別するステップをさらに含む、請求項71に記載の方法。
73.第2の免疫試薬を前記試料における第2の標的抗原と反応させるステップであって、該第2の免疫試薬が、該第2の抗原に特異的な、段落37~47のいずれか一項に記載の免疫試薬である、ステップ;
第2の検出可能な二次抗体をと該第2の免疫試薬反応させるステップであって、該第2の検出可能な二次抗体が、該第2の免疫試薬の架橋抗原に対して、高親和性で特異的である、ステップ;および
該第2の免疫試薬の該架橋抗原と会合している該第2の検出可能な二次抗体を検出するステップ
をさらに含む、段落54に記載の方法。
74.前記試料において少なくとも3個の標的抗原を検出するステップをさらに含む、段落73に記載の方法。
75.前記試料において少なくとも5個の標的抗原を検出するステップをさらに含む、段落74に記載の方法。
76.前記試料において少なくとも10個の標的抗原を検出するステップをさらに含む、段落75に記載の方法。
77.第1の標的抗原を含む試料を供給するステップ;
第1の一次抗体を該第1の標的抗原と反応させるステップであって、該第1の一次抗体が該第1の標的抗原に特異的である、ステップ;
第1の免疫試薬を該第1の一次抗体と反応させるステップであって、該第1の免疫試薬が、該第1の一次抗体に特異的な、段落37~47のいずれか一項に記載の免疫試薬である、ステップ;
第1の検出可能な二次抗体を該第1の免疫試薬と反応させるステップであって、該第1の検出可能な二次抗体が、該第1の免疫試薬の架橋抗原に対して、高親和性で特異的である、ステップ;および
該第1の免疫試薬の該架橋抗原と会合している該第1の検出可能な二次抗体を検出するステップ
を含む、免疫学的アッセイのための方法。
78.段落37~47のいずれか一項に記載の免疫試薬、
前記架橋抗原に対して、高親和性で特異的な検出可能な二次抗体、および
キットを使用するための指示
を含む、免疫学的アッセイのためのキット。
79.前記検出可能な二次抗体が検出可能な標識を含む、段落78に記載のキット。
80.前記検出可能な標識が、フルオロフォア、酵素、アップコンバージョンナノ粒子、量子ドット、または検出可能なハプテンである、段落79に記載のキット。
81.前記検出可能な標識がフルオロフォアである、段落80に記載のキット。
82.前記酵素が、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはグルコースオキシダーゼである、段落81に記載のキット。
83.前記ペルオキシダーゼが西洋ワサビペルオキシダーゼまたはダイズペルオキシダーゼである、段落82に記載のキット。
84.前記検出可能な二次抗体が、前記架橋抗原に対して特異的であり、最大で100nM、最大で30nM、最大で10nM、最大で3nM、最大で1nM、最大で0.3nM、最大で0.1nM、最大で0.03nM、最大で0.01nM、または最大で0.003nMの解離定数を有する、段落78に記載のキット。
85.段落78に記載のキットであって、
段落37~47のいずれか一項に記載の少なくとも3個の免疫試薬、
前記架橋抗原に対して、高親和性で特異的な、少なくとも3個の検出可能な二次抗体、および
該キットを使用するための指示
を含む、キット。
86.段落78に記載のキットであって、
段落37~47のいずれか一項に記載の少なくとも5個の免疫試薬、
前記架橋抗原に対して、高親和性で特異的な、少なくとも5個の検出可能な二次抗体、および
該キットを使用するための指示
を含む、キット。
87.段落78に記載のキットであって、
段落37~47のいずれか一項に記載の少なくとも10個の免疫試薬、
前記架橋抗原に対して、高親和性で特異的な、少なくとも10個の検出可能な二次抗体、および
該キットを使用するための指示
を含む、キット。
【0180】
本明細書に記載されている方法および適用の他の適切な修正および翻案が、本発明の範囲またはその任意の実施形態から逸脱することなく行われ得ることは、関連技術分野における当業者には容易に明らかである。本発明をこれまで詳細に記載してきたが、下記の実施例を参照することによって、本発明はより明瞭に理解される。実施例は、例示をする目的のみのために本明細書に含まれ、本発明を限定するものではない。
【実施例
【0181】
ペプチド標識一次抗体および蛍光抗ペプチド二次抗体での組織切片の多重標識
材料および方法
修飾バッファー(100mMホスフェート、150mM NaCl、pH7.4~7.6)、コンジュゲーションバッファー(100mMホスフェート、150mM NaCl、pH6.0)、アニリンバッファー(100mMホスフェート、150mM NaCl、100mMアニリン、pH6.0)、PBS(10mMホスフェート、150mM NaCl、pH7.0)。ThermoPierce(Rockford、IL)製のZeba脱塩カラム。
【0182】
アミノ反応性蛍光色素Dy488-OSu、Dy550-OSu、およびDy650-OSuを、Dyomics,Inc、Jena、Germanyから購入した。
抗体
【0183】
ヤギ抗マウス抗体およびヤギ抗ウサギ抗体を、ImmunoReagents,Inc.(Raleigh、NC)から購入した。ウサギモノクローナル抗エストロゲン受容体(ER)抗体、抗プロゲステロン受容体(PR)抗体、および抗HER2/neu受容体(HER2)抗体をEpitomics,Inc.(Fremont、CA)から購入した。マウス抗Ki67をBD Biosciences、San Diego、CAから購入した。PEP1、PEP2、PEP3、PEP4、およびPEP5に対するウサギモノクローナル抗ペプチド抗体をAvantGen,Inc.(San Diego、CA)から入手した。
蛍光染色および画像化
【0184】
以下のプロトコールを、下記の免疫蛍光染色実験に用いた。スライドをVala Sciences IC200Hist Imager(Vala Sciences、San Diego、CA)において画像化した。画像を、オープンソースImageJソフトウェアを使用して処理し、CyteSeerソフトウェア(Vala Sciences、San Diego、CA)を使用して定量した。
【0185】
他に指示がない限り、全ての乳がん組織は、Key Biomedical、Ojai、CAから購入された。
手作業での染色プロトコール:
1.スライドを以下の通り、脱蝋した:
キシレン 5分間
キシレン 5分間
100%エタノール 2分間
100%エタノール 2分間
95%エタノール 2分間
2.水道水で各2分間、2回、洗浄する。
3.蒸留水で2分間、1回、洗浄する。
4.抗原回復を、10mMクエン酸、pH6.0中、15分間、蒸すことにより達成した。
5.圧力を解放する前に10分間、スライドを圧力鍋の中で冷却した。
6.圧力を解放し、スライドを熱い蒸留水へ2分間、移動させた。
7.スライドを、流れる水道水の下、5分間、洗浄した。
8.スライドを、洗浄バッファー中、5分間、すすいだ。
9.疎水性ペンを使用して組織の周りにサークルを描いた。
10.スライドを、正常血清(3%ヤギまたはウサギ血清、時々、染色に応じて他の血清)で20分間、ブロッキングした。
11.前の溶液の除去後、150uL~200uLの架橋抗原標識一次抗体(抗体希釈剤を使用して希釈することができる)を、直接スライド上に加え、室温で1時間、インキュベートした。
12.スライドを、洗浄バッファーで各5分間、3回、洗浄した。
13.所望の濃度の蛍光標識抗架橋抗原抗体をスライドに加え、室温で1時間、インキュベートした。
14.スライドを、洗浄バッファーで各5分間、3回、洗浄した。
15.スライドを蒸留水ですすぎ、過剰の水をペーパータオルで除去した。
16.DAPIを含むFluoroshield(Immunobiosciences,Inc、cat# AR-6501-01)1~3滴を各スライドに加え、3~5分後、暗所中、室温で、カバーグラスを適用した。
三重染色プロトコール改変:
代替ステップ11.最適化濃度のペプチド標識一次抗体のカクテルをスライドに加え、室温で1時間、インキュベートした。具体的な例において、抗ER-PEP7(10ug/mL)および抗HER2-PEP5(5ug/mL)および抗Ki67-PEP1(5ug/mL)のカクテルを、トリプルポジティブ乳がん組織に加え、室温で1時間、インキュベートした。
代替ステップ13.所望の濃度のフルオロフォア標識抗架橋抗原抗体のカクテルを調製し、スライドに加え、室温で1時間、インキュベートした。具体的な例において、抗PEP7-Dy550、抗PEP5-Dy490、および抗PEP1-Dy755(全て、5ug/mL)のカクテルを加え、室温で1時間、インキュベートした。結果は図6に提示されている。
ペンタフルオロフェニルBoc-アミノオキシアセテート合成
【0186】
DMF(30mL)中のBoc-アミノオキシ酢酸(5.0g、26.2mmol;EMD Chemicals)の溶液に、ペンタフルオロフェノール(4.57g、24.8mmol;Oakwood Chemicals)およびEDC(5.51g、2.88mmol;Oakwood Chemicals)を加えた。反応混合物を室温で16時間、撹拌した。DMFをロータリーエバポレータにおいて除去し、残留物を、酢酸エチルと飽和重炭酸ナトリウムの間で分配した。重炭酸塩溶液を酢酸エチルで逆抽出し、合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、3.2gの白色固体(TLC(100%酢酸エチル)による単一スポット)を得た。
ペプチドへのAOAコンジュゲーション試薬の取り込み
【0187】
AOAリンカーを、ペプチドのN末端に、ペンタフルオロフェニルBoc-アミノオキシアセテートを用いた標準固相ペプチド合成を使用して、取り込ませたが、ただし、最終アミノ酸のFMOC脱保護後、樹脂をアセトニトリルで繰り返し洗浄し、塩基、すなわち、ジイソプロピルエチルアミンなしで、DMF中のペンタフルオロフェニルBoc-アミノオキシアセテートの溶液で処理した。全てのAOAペプチドを逆相HPLCにより精製し、全てのペプチドが、予想された質量を有することが示された。
抗体-ペプチドコンジュゲーションプロトコール
【0188】
DMF中のペンタフルオロフェニルBoc-アミノオキシアセテートの溶液(7.5モル当量)を、それぞれの固相ペプチド合成中のペプチドの脱保護N末端へ加え、2時間、インキュベートした。リンカー溶液には塩基を加えなかった。インキュベーションおよび洗浄後、ペプチドを、TFA(95%)/水(2.5%)/トリイソプロピルシラン(2.5%)の存在下で樹脂から切断し、凍結乾燥し、逆相HPLCにより精製した。
【0189】
以下のプロトコールを使用して、AOA修飾PEP5を抗HER2一次抗体にコンジュゲートさせた。同様のプロトコールを使用して、その他のペプチドをそれらのそれぞれの抗体にコンジュゲートさせた。修飾バッファー中の抗HER2の溶液(80uL;1.0mg/mLにおいて80ug;0.5nmol)に、スルホ-4-ホルミルベンズアミド(DMSO中2.0mg/mL溶液の0.45uL;12.8nmol;24モル当量;Cell_IDx,Inc.(San Diego、CA))の溶液を加えた。その反応物を室温で2時間、インキュベートし、コンジュゲーションバッファーであらかじめ平衡化した0.5mL Zebaカラムを使用して、コンジュゲーションバッファーへ脱塩した。抗体回収は、前のZebaカラム回収率に基づいて90%(72ug)であると想定された。AOA修飾PEP5(DMSO中5mg/mL溶液の0.43uL;1.2nmol:5モル当量;InnoPep,Inc.(San Diego、CA))を、HER2-4FBに加え、続いて、アニリンバッファー(7uL)を加えて、室温で2時間、インキュベートした。遊離ペプチドおよびアニリンを、Spin-X UF 30K分子量カットオフ濃縮器(Corning、UK)を使用して、完全な除去およびバッファー交換を確実にするために濃縮器における試料体積量の少なくとも5倍の、10mMホスフェート、150mM NaCl、pH7.0バッファーの3回の別々の添加を加えることにより、除去した。抗体-ペプチド生成物の濃度を、1.4の抗体吸光係数を使用して、分光測定で決定した。
【0190】
表1は、この実施例において一次抗体へ共有結合的に結合したペプチドのペプチド名およびアミノ酸配列を示す。「AOA」基(アミノオキシアセトアミド)を使用して、ペプチドを4FB修飾一次抗体に結合させた。ペプチドとそれの対応する抗体との間の解離定数(K)もまたは表1に示されている。これらの値は、ForteBio装置(www.fortebio.com)を使用して得られた。
【表1】
抗ペプチド二次抗体のフルオロフォアでの修飾
【0191】
高親和性抗ペプチド二次抗体を、以下の通り、フルオロフォアで修飾した:修飾バッファー(0.030mg;2.5mg/mL溶液の12uL)中の抗ペプチド抗体の溶液に、Dy488-NHSエステル(無水DMSO中の5.0mg/mL溶液の0.5uL;12モル当量)を加えた。その反応混合物を、室温で2時間、インキュベートし、PBSであらかじめ平衡化した0.5mL 40 K MWCO Zebaカラムを使用して、2回、脱塩した。
【0192】
表2は、架橋抗原をカップリングさせた一次抗体およびそれらの標的抗原、加えて、この実施例で調製された相補的な蛍光標識高親和性二次抗体ペア、ならびにトリプルポジティブ乳がん組織上でのそれらの染色の結果を提示する。
【表2】
結果
【0193】
本開示の例示的な免疫試薬での標的抗原の染色の概略図は、図1A図1Cに示されている。この図面において、標的抗原は目的の試料の表面上に灰色の輪郭線で描かれた2個の星として表されており(A)、その標的抗原は、その標的抗原に特異的な一次抗体で標識される(B)。この図に示されているように、一次抗体は、(図面において直線によって表された)2つの架橋抗原とカップリングされたが、必要に応じて、架橋抗原の一次抗体へのより高いレベルのカップリングが達成され得ることが理解されるものとする。その後、架橋抗原に対する高特異性および高親和性を有する検出可能な二次抗体を使用して、試料を染色し(C)、その図において、検出可能な標識は色の濃い輪郭線をもつ星として図示されている。
【0194】
図2Aおよび図2Bは、市販の低親和性マウスモノクローナル抗ペプチド抗体を使用した、ペプチド標識一次抗体の弱い染色を図示する。具体的には、MCF7細胞を、Herceptin抗体(A)か、またはHerceptin抗体のスルホ-S-4FBでの修飾、続いて、アニリン触媒の存在下におけるHyNic-Peg2-Flag-タグ(Solulink,Inc.、San Diego、CA)の添加により調製されたFLAGタグ標識Herceptin抗体(B)のいずれかを使用した、免疫細胞化学染色に供した。その後、その細胞を、標準蛍光ヤギ抗ヒト二次抗体(A)か、または抗ペプチド抗体のフルオロフォア標識について上で記載されているように調製された蛍光抗FLAG二次抗体(B)のいずれかで染色した。市販の低親和性抗FLAG抗体で染色された細胞は、標識された異種間二次抗体での従来の染色と比較して有意に低いシグナルを示している。
【0195】
ペプチドをカップリングさせた一次抗体を染色するための高親和性抗ペプチド抗体の使用は、図3Aおよび図3Bに図示されている。この実験において、HER2ポジティブ乳房組織(Key Biomedical,Inc.、Ojai、CA)由来の組織切片を、非標識ウサギ抗HER2/neu受容体一次抗体(A)か、またはペプチドをカップリングさせたウサギ抗HER2/neu受容体一次抗体(B)のいずれかで標識した。その後、試料を、Dy488標識ヤギ抗ウサギ二次抗体(A)か、またはPEP5配列に対する高親和性を有するDy490標識ウサギ抗PEP5抗体(B)のいずれかで染色した。その結果は、従来の二次抗体アプローチ(A)および架橋抗原に特異的な高親和性抗体での二次染色(B)について同等の染色を示している。
【0196】
図4A~4Dに示されているように、染色度と、架橋抗原を認識するために使用される抗体の親和性との間の相関が実証された。Ki67ポジティブ組織の切片を、まず、様々なペプチドをカップリングさせた抗Ki67一次抗体で標識した。その後、その切片を、カップリングされた様々なペプチドに特異的だが、異なる親和性を有するフルオロフォア標識二次抗体で染色した。その結果は、最高の親和性のペプチド-抗体ペア(PEP5/抗PEP5;K=40pM)(D)で標識された試料が、最も明るい蛍光強度を示し、一方、中間の親和性を有するペプチド-抗体ペア(PEP3/抗PEP3およびPEP4/抗PEP4;K=90pM)(B)および(C)は、中間の蛍光を示し、最低の親和性を有するペプチド-抗体ペア(PEP2/抗PEP2;K=160pM)(A)は若干、より低い蛍光強度を有した。
【0197】
2つの異なるペプチド/抗ペプチド抗体ペアのもう1つの比較において、図5Aおよび図5Bは、PEP1(A)か、またはPEP5(B)のいずれかとカップリングした抗ER一次抗体でのERポジティブ組織切片の標識を示す。続いて、試料を、高親和性抗PEP1抗体(A)または高親和性抗PEP5抗体(B)(それぞれ、Dy650で標識した)で染色した。
【0198】
単一の、ERポジティブ、HER2ポジティブ、およびKi-67ポジティブの乳がん組織試料の、3個のペプチド-抗体ペアの混合物での同時標識もまた実証されている。試料を、PEP7をカップリングさせたウサギモノクローナル抗ER一次抗体、PEP5をカップリングさせたウサギモノクローナル抗HER2/neu受容体一次抗体、およびPEP1をカップリングさせたウサギモノクローナル抗Ki67一次抗体の混合物で処理した。その後、標識された切片を、高親和性Dy550標識抗PEP7、Dy490標識抗PEP5、およびDy755標識抗PEP1の混合物で染色した。図6A~6Cは、(A)Dy550チャネル、(B)Dy490チャネル、および(C)Dy755チャネルからの発光を示す染色組織切片の画像を示す。図6Dは、その3つの別々のチャネルからの画像のオーバーレイを示す。3個の重要な診断腫瘍抗原の高い感度および特異性での同時標識は、本免疫試薬の強力な多重化能力を実証している。
【0199】
本開示の免疫試薬はまた、抗原をカップリングさせた一次抗体が異種間反応性抗体である、増幅型3ステップ染色手順に使用され得る。図7で図画的に示されているように、目的の組織試料における標的抗原(灰色の星)を、ステップAにおいて、第1の種由来の非修飾第1の一次抗体で標識する。その後、結合した抗体を、ステップBにおいて、第1の抗体の定常領域に特異的である第2の種由来の抗原をカップリングさせた第2の一次抗体で標識する。図7の図面において、カップリングさせた架橋抗原は、第2の一次抗体と共有結合的に会合した2つの灰色の線として図示されている。その後、抗原をカップリングさせた第2の一次抗体を、ステップCに示されているように、をカップリングさせた抗原に対して高親和性を有する検出可能な二次抗体で染色する。
【0200】
増幅型3ステップ染色手順の実験による確認は、図8Aおよび8Bに提供されている。この実験において、トリプルポジティブ(ER、HER2、およびPR)乳がん組織切片を、ウサギ抗HER2抗体(A)か、またはウサギER抗体(B)のいずれかで別々に標識した。次に、切片を、PEP1をカップリングさせた抗ウサギ抗体(A)で標識した。最後に、切片を、Dy650標識高親和性抗PEP6抗体で染色した。明るい染色は、その技術の有効性を実証している。
組織プロファイリングのための免疫試薬パネル
【0201】
抗ER、抗HER2、および抗Ki-67免疫試薬ペアのパネルを使用した、トリプルポジティブ乳がん組織切片の同時染色は、上で記載され、図6A~6Dに示された。以下の実施例は、罹患組織の多重化染色における本免疫試薬の定義済みのパネルの使用についてのさらなる支持を提供する。したがって、そのようなパネルは、複数の免疫試薬を含み、免疫試薬が、一次抗体および架橋抗原を含み、一次抗体および架橋抗原がカップリングされており、架橋抗原が、検出可能な二次抗体により高親和性で認識される。
【0202】
例えば、図9A図9Dは、メラノーマ組織切片の標識のための本免疫試薬のパネルの使用を実証する。具体的には、悪性メラノーマ組織スライド(ILS34116;ILSBio(www.ilsbio.com)から購入した)上のCD4、CD20、およびCD68標的を、ペプチドをカップリングさせた一次抗体および蛍光高親和性抗ペプチド二次抗体のパネルを使用して同時に検出した。一次抗体および二次抗体は、表3に記載されている。染色および画像化プロトコールは上記の通りである。
【表3】
【0203】
スライドを、特異的ペプチド抗原にコンジュゲートした一次抗体の、各抗体について5ug/mLのカクテルとインキュベートした。図9Aは、抗CD4免疫試薬染色T細胞の蛍光を示す。図9Bは、抗CD20免疫試薬染色B細胞の蛍光を示す。図9Cは、抗CD68免疫試薬染色マクロファージの蛍光を示す。図9Dは、3個全ての免疫試薬からの合わせた蛍光を示す。各パネルにおける挿入図は、スライドのズームインされた領域を表す。
【0204】
図10A図10Dは、サイトケラチン5(CK5)、サイトケラチン6(CK6)、およびKi-67を標的とする免疫試薬のパネルで標識されたトリプルネガティブ乳がん組織切片の同時染色を示す。免疫試薬を、表4に列挙された一次抗体および架橋ペプチド抗原から調製した。一次抗体を、蛍光標識高親和性抗ペプチド二次抗体を使用して検出した。染色および画像化プロトコールは、上記の通りである。
【表4】
【0205】
図10Aは、抗CK5免疫試薬ペアからの蛍光を示す。図10Bは、抗CK6免疫試薬ペアからの蛍光を示す。図10Cは、抗Ki67免疫試薬ペアからの蛍光を示す。図10Dは、3つ全ての標識からの蛍光のオーバーレイを示す。
【0206】
図11A図11Eは、子宮頚部扁平上皮がん組織切片の四重標識を示す。CK5に特異的な蛍光は図11Aに示され、EGFRについては図11Bに示され、p40については図11Cに示され、Ki-67については図11Dに示され、4つ全ての標識からの蛍光のオーバーレイは図11Eに示されている。免疫試薬は、表5に列挙された一次抗体および架橋抗原から調製された。染色および画像化プロトコールは上記の通りである。
【表5】
【0207】
図12A図12Dは、糸球体腎炎(glomerulonephtitis)コアにおけるIgA(A)、C3c(B)、COL4A5(C)、およびIgG(D)の同時標識を示す。免疫試薬は、表6に列挙された一次抗体および架橋抗原から調製された。免疫試薬ペアのそれぞれからの蛍光は別々に示されている。染色および画像化プロトコールは上記の通りである。
【表6】
蛍光免疫試薬パネルでの連続組織切片の多重染色
【0208】
正常または罹患の任意の組織において、組織内でお互いに相互作用する、免疫細胞を含む多くの型の細胞がある。したがって、目的の組織内の細胞の密度および相対的位置を同定し、定量し、および決定する必要性がある。免疫細胞が腫瘍を攻撃し、排除するのをブロックするように腫瘍が腫瘍の表面上でシグナルを生じることが最近発見されたため、組織内の細胞のそのような特徴付けは、がん組織において特に重要である。ペムブロリズマブ(Keytruda)およびニボルマブ(Opdivo)などのチェックポイント阻害薬は、このブロッキングを阻害し、それにしたがって、T細胞および他のリンパ球が腫瘍を排除するのを可能にする。それゆえに、そのような処置は、メラノーマ、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、および膀胱がんを含む様々な腫瘍において、ある特定のパーセンテージの患者で、長期治癒をもたらし得る。Tumehら(2014年)Nature 515巻:568~571頁(DOI:10.1038/nature13954)。しかしながら、チェックポイント阻害薬が有効であるかどうかを前もって決定することができる、現在利用可能な診断検査がない。したがって、間質に存在する多くの異なる細胞の同定、および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の浸潤と治療成績との間の相関の決定は、指向型治療をもたらし得る因子を同定することにおいて大きな効果を有する。
【0209】
罹患組織において同定することができる免疫細胞型および他の重要な細胞型の数をさらに拡大するために、複数の細胞バイオマーカーが同時に検出することができる、免疫細胞上のマーカーに向けられた記載の免疫試薬を使用することが本明細書で実証されている。さらに、連続組織検体および免疫試薬の複数のパネルを使用して、各連続組織からのシグナルをオーバーレイして、例えば8個および11個の標的マーカーを同時に検出し得ることが本明細書で実証されている。(下に記載された)一例において、4個のトリプルポジティブ乳がんマーカー(ER、PR、HER2、およびKi-67)を4個の免疫細胞マーカー(CD3、CD4、CD8、およびCD20)とオーバーレイし(overlain)、合計8個の標的マーカーに関する画像がもたらされた。(同様に下記に示された)第2の例において、4個のトリプルネガティブ乳がんマーカー(EGFR、CK5、ビメンチン、およびKi-67)を免疫細胞マーカーの同じパネル(CD3、CD4、CD8、およびCD20)とオーバーレイし、もう1つの八重画像がもたらされた。
【0210】
(同様に下に記載された)なお別の例において、免疫試薬の3つのパネルを使用して、3つの連続組織上で複数のマーカーを検出した。この例において、上記の4個のトリプルネガティブがんマーカー(CK5、EGFR、ビメンチン、およびKi-67)、第2の連続組織における4個の免疫マーカーのセット(CD4、CD8、CD68、およびFoxP3)、および第3の連続組織における3個の免疫マーカーの第2のセット(CD3、PD-1、およびPD-L)を標的とする免疫試薬で3つのトリプルネガティブ乳がん連続組織検体を標識し、十一重画像がもたらされた。これらの画像は、腫瘍組織の切片において複数の免疫マーカーを可視化する能力を実証している。
【0211】
具体的には、図13A図13Eは、トリプルポジティブ乳がん組織(ILS32707;ILSBio、Chestertown、MD)上でのER、PR、HER2、およびKi-67の同時標識を示す。免疫試薬は、表7に列挙された一次抗体および架橋抗原から調製された。免疫試薬ペアのそれぞれからの蛍光は別々に示されている。染色および画像化プロトコールは上記の通りである。
【表7】
【0212】
図14A図14Eは、トリプルポジティブ乳がん組織(ILS32707;ILSBio、Chestertown、MD)について図13に提示された組織データに関する連続組織上でのCD3、CD4、CD8、およびCD20の同時標識を示す。免疫試薬は、表8に列挙された一次抗体および架橋抗原から調製された。免疫試薬ペアのそれぞれからの蛍光は別々に示されている。染色および画像化プロトコールは上記の通りである。
【表8】
【0213】
図15は、トリプルポジティブ乳がんパネル(図13)および四重免疫マーカーパネル(図14)での四重染色からの連続組織染色結果のオーバーレイを示す。HER2(原画では赤色)、ER(原画では青色)、PR(原画では緑色)、Ki-67(原画ではマゼンタ色)、CD3(原画ではシアン色)、CD4(原画ではタリウム色)、およびCD8(原画ではオレンジ色)。CD20が画像化ソフトウェアにおける限界により示されていないことに留意されたい。
【0214】
図16A図16Eは、トリプルネガティブ乳がん組織(ILS36851;ILSBio、Chestertown、MD)上でのEGFR、CK5、ビメンチン、およびKi-67の同時標識を示す。免疫試薬は、表9に列挙された一次抗体および架橋抗原から調製された。免疫試薬ペアのそれぞれからの蛍光は別々に示されている。染色および画像化プロトコールは上記の通りである。
【表9】
【0215】
図17A図17Eは、トリプルネガティブ乳がん組織(ILS36851;ILSBio、Chestertown、MD)について図14に提示された組織データに関する連続組織上でのCD3、CD4、CD8、およびCD20の同時標識を示す。免疫試薬は、表8に列挙された一次抗体および架橋抗原から調製された。免疫試薬ペアのそれぞれからの蛍光は別々に示されている。染色および画像化プロトコールは上記の通りである。
【0216】
図18は、トリプルネガティブ乳がんパネル(図16)および四重免疫マーカーパネル(図17)での四重染色からの連続組織染色結果のオーバーレイを示す。EGFR(原画では赤色)、ビメンチン(原画では青色)、CK5(原画では緑色)、Ki-67(原画ではマゼンタ色)、CD3(原画ではシアン色)、CD4(原画ではタリウム色)、およびCD8(原画ではオレンジ色)。CD20が画像化ソフトウェアにおける限界により示されていないことに留意されたい。
【0217】
図19は、トリプルネガティブ乳がん組織(ILS36851;ILSBio、Chestertown、MD)上でのEGFR、CK5、ビメンチン、およびKi-67の同時標識を示す。免疫試薬は、表9に列挙された一次抗体および架橋抗原から調製された。免疫試薬ペアのそれぞれからの蛍光は別々に示されている。染色および画像化プロトコールは上記の通りである。CK5(原画では黄色)、ビメンチン(原画では銀色)、EGFR(原画では青緑色)、およびKi-67(原画では虹色)。
【0218】
図20Aは、トリプルネガティブ乳がん組織(ILS36851;ILSBio、Chestertown、MD)について図19に提示された組織データに関する連続組織上でのCD4、CD8、CD68、およびFoxP3の同時標識を示す。免疫試薬は、表10に列挙された一次抗体および架橋抗原から調製された。免疫試薬ペアのそれぞれからの蛍光は別々に示されている。染色および画像化プロトコールは上記の通りである。CD4(原画ではタリウム色)、CD8(原画ではオレンジ色)、CD68(原画ではマゼンタ色)、およびFoxP3(原画では赤色)。
【表10】
【0219】
図20Bは、図20Aの視野から取り出された別々の例示的なクローズアップ細胞画像を示す。各細胞画像についてのマーカー表現型(加えて、推定の細胞型)が示されている。最初の切片における各細胞型についての細胞数の定量もまた示されている。CyteSeerソフトウェア(Vala Sciences、San Diego、CA)を使用して、表現型数を決定した。
【0220】
図21は、トリプルネガティブ乳がん組織(ILS36851;ILSBio、Chestertown、MD)について図20に提示された組織データに関する連続組織上でのCD3、PD-1、およびPD-L1の同時標識を示す。免疫試薬は、表11に列挙された一次抗体および架橋抗原から調製された。免疫試薬ペアのそれぞれからの蛍光は別々に示されている。染色および画像化プロトコールは上記の通りである。CD3(原画では赤色)、PD-1(原画では緑色)、およびPD-L1(原画ではシアン色)。例示的なクローズアップ細胞画像もまた、それらのマーカー表現型および推定の細胞型と共に示されている。
【表11】
【0221】
図22は、四重トリプルネガティブ乳がんパネル(図19)、四重免疫マーカーパネル(図20)、および三重免疫マーカーパネル(図21)を使用する3つの連続組織染色結果のオーバーレイを示す。CK5(原画では黄色)、EGFR(原画では青緑色)、ビメンチン(原画ではThai色)、Ki-67(原画では虹色)、FoxP3(原画では赤色)、CD68(原画ではマゼンタ色)、CD4(原画ではタリウム色)、CD8(原画ではオレンジ色)、CD3(原画では青色)、PD-1(原画では緑色)、およびPD-L1(原画ではシアン色)。
可溶性ペプチドを使用する免疫試薬の選択的取り除き
【0222】
試料表面上の1個より多いマーカーを同定するためのウェスタンブロットアッセイと免疫組織化学アッセイの両方を染色し、取り除く能力は、典型的には、過酷な条件を必要とする。例えば、PerkinElmer(www.perkinelmer.com)製のOpalチラミドシグナル増幅(TSA)に基づいたアッセイに記載されているような3個より多いマーカーを検出するための免疫蛍光アッセイにおいて、弱酸性バッファー中での組織の15分間のマイクロ波処理が、一次抗体/二次抗体-HRPコンジュゲートを取り除くのに必要とされる。第2の報告された方法は、HRPを不活化するためにアジ化ナトリウム/ナトリウムペルオキシダーゼ(sodium peroxidase)処理を用いる。Ortiz de Montellanoら(1988年)Biochemistry 27巻:5470~5476頁(DOI: 10.1021/bi00415a013)。他では、相対的に高い温度および変性界面活性剤の使用を必要とする、組織から一次抗体を取り除く方法が開発されている。Piriciら(2009年)J. Histochem. Cytochem. 57巻:567~575頁(DOI:10.1369/jhc.2009.953240)。
【0223】
本明細書に記載および実証されているように、本免疫試薬は、温和な条件下、過剰量の可溶形態の架橋抗原での試料の処理により、組織試料から選択的に取り除くことができる。特に、図23は、その手順の例示的なバージョンを概略的に図示し、その手順において、2個の標的抗原を、ステップAにおいて、異なる架橋抗原を有する2個の特異的な免疫試薬で標識する。ステップBにおいて、試料を、第1の免疫試薬の架橋抗原に対して高親和性で特異的である第1の反応性二次抗体と反応させる。この例において、反応性二次抗体は、反応基として西洋ワサビペルオキシダーゼを担持する。試料を、ステップCにおいて、蛍光標識チラミド試薬で処理し、それにしたがって、第1の標的抗原に近い第1の免疫試薬を含む試料タンパク質が修飾される。
【0224】
第1の反応性二次抗体を次に、ステップDに示されているように、可溶形態の架橋抗原での処理により、試料から選択的に解離させる。可溶性架橋抗原は、二次抗体の結合部位についての効果的な競合物質であること、および可溶性架橋抗原は相対的に高い効果的な濃度で供給され得ることの理由から、このステップは、温和な条件下で実施することができ、したがって、試料への損傷を最小限にする。手順のステップEおよびFは、ステップBおよびCと同じであり、ただし、ステップEで使用される第2の反応性二次抗体は、第2の免疫試薬の架橋抗原に特異的であり、ステップFの蛍光標識チラミド試薬は、ステップCで使用されるチラミド試薬とは検出可能的に異なるフルオロフォアを担持する。ステップFの反応後、試料を画像化して、第1および第2の検出可能な試薬の位置、ならびに、それにしたがって、第1および第2の標的抗原の位置を検出することができる。
【0225】
上記の工程は、単に、本発明の追加の免疫試薬(その免疫試薬は追加の抗原に特異的である)で試料を処理することにより、望まれる数だけの標的抗原を検出するように容易に改変できることが理解されるものとする。追加の免疫試薬は、当業者により理解されているように、適切な反応性二次抗体、蛍光標識チラミド試薬、および可溶性架橋抗原で、必要な回数だけ、図23のステップB、C、およびDを繰り返すことにより、逐次的に標識される。
【0226】
上で記載され実証された、試料から反応性二次抗体を選択的に解離させる方法において、一次抗体および会合した架橋抗原は、その工程を通して試料に結合したままであり、それゆえに、標識のさらなるラウンドを、異なる架橋抗原に特異的である反応性二次抗体に限定する。上記の技術のバリエーションにおいて、架橋抗原を、切断可能なリンカーを使用して一次抗体にカップリングさせ得、したがって、単独で、または過剰量の可溶性架橋抗原の添加と組み合わせてのいずれかで、リンカーの切断により反応性二次抗体の選択的解離を可能にする。例えば、酵素、求核/塩基性試薬、還元剤、光照射、求電子/酸性試薬、有機金属試薬および金属試薬、ならびに酸化試薬により切断可能である、切断可能なリンカーは、当技術分野において公知である(例えば、Lericheら(2012年)Bioorg. Med. Chem. 20巻:571~582頁(doi:10.1016/j.bmc.2011.07.048)参照)。各標識サイクル中の架橋抗原の一次抗体からの切断により、引き続き添加される一次抗体は、同じ架橋抗原を使用して標識することができる。各サイクルにおける同じ架橋抗原で標識される一次抗体の使用は、同じ反応性二次抗体(例えば、HRP標識二次抗体)をまた各サイクルに使用することができるため、工程を単純化する。上記の方法で真実であったように、異なる標的抗原の標識における差は、異なる検出可能な試薬(例えば、異なるフルオロフォアで標識されたチラミド試薬)の使用により達成される。
【0227】
図24A図24Cは、記載された方法(さらなる詳細は下記に提供されている)を使用した、単一のトリプルポジティブ乳がん組織上でのHER2およびERの染色を図示する。図24Aは、PEP5標識一次抗体、HRP標識抗PEP5二次抗体、およびチラミド-Dy490蛍光試薬を使用するHER2の染色を示す。抗PEP5二次抗体を、過剰量のPEP5ペプチドを使用して取り除いた。図24Bは、PEP7標識一次抗体、HRP標識抗PEP7二次抗体、およびチラミド-Dy550蛍光試薬を使用する、同じ組織切片上でのその後のERの染色を示す。図24Cは、その2つの画像(HER2、原画では赤色;ER、原画では青色)のオーバーレイを示す。
【0228】
この方法の利点には以下が挙げられる:(1)全ての一次抗体を、先行技術方法とは違って、同時に加えることができ、先行技術方法においては、ストリンジェントな取り除き条件により、一次抗体の同時添加が可能でない;(2)蛍光標識は、熱または過酷な化学物質に曝露されず、したがって、それらのシグナル出力を損傷しない;および(3)画像化は、染色ステップの終わりに、たった一度だけ、実施される必要がある。
実験
【0229】
図24A図24Cの画像を得るために使用された選択的取り除き方法を、以下のように、トリプルポジティブ乳がん組織上で実施した:
1)抗HER2-PEP5および抗ER-PEP7のカクテルとの1時間のインキュベーション
2)組織をPBSで3回、洗浄した
3)抗PEP5抗体-HRPコンジュゲートとの30分間のインキュベーション
4)洗浄バッファー(PBS/2% tween20)で3回、洗浄した
5)チラミド-Dy-490で、10分間、処理した
6)洗浄バッファーで3回、洗浄した
7)組織を、PBS中のPEP5ペプチドの150μM溶液とインキュベートし、続いて10分間、洗浄した。
8)洗浄バッファーで3回、洗浄した
9)抗PEP7抗体-HRPコンジュゲートとの30分間のインキュベーション
10)洗浄バッファーで3回、洗浄した
11)チラミド-Dy550とインキュベートした
12)DAPI(SigmaAldrich、St.Louis、MO)を含むFluoroshieldを加えた
13)カバーグラスで覆った
14)画像
複数の抗原決定基を有する架橋抗原
【0230】
タンパク質へ組み込まれた、連続したアフィニティペプチドリピート、すなわち、タンデムリピートが、蛍光標識抗ペプチド抗体の結合で、有意により高いシグナルを生じることは認識されている。例えば、タンパク質配列内の反復性GCN4ペプチドエピトープの組込みは、蛍光抗GCN4抗体誘導体を使用する標識タンパク質の検出能を有意に増加させ得ることが示されている。Tanenbaumら(2014年)Cell 159巻:635~646頁。
【0231】
本明細書に記載されているように、連結可能な3Xタンデムリピートペプチドは、固相技術によって合成されており、抗ペプチド抗体での検出能の向上を示すために使用されている。配列AOA-(SGLQEQRNHLQ)-NH2(PEP6’;配列番号8)を有するタンデムリピートペプチドは、上記で参照されたPEP6配列のトランケート型バージョンである。AOA-3X-PEP6’ペプチドを、ウサギ抗PRにコンジュゲートし、このコンジュゲートの染色度を、蛍光標識二次抗体での標準2ステップ染色と比較した。このプロトコールは図25に概略的に表されており、図25において、示された一次抗体は、3Xタンデムリピートペプチドの2個で修飾され、したがって、複数の検出可能な抗ペプチド二次抗体に対する結合部位を提供している。
【0232】
図26Aは、ウサギ抗ヒトPR一次抗体をDy650標識抗ウサギ二次抗体と共に使用した、トリプルポジティブ乳がん組織(ILS30380)の従来の染色を図示する。図26Bは、3XタンデムリピートPEP6’ペプチドにカップリングしたウサギ抗ヒトPR一次抗体をDy650標識抗PEP6二次抗体と共に使用した、同じ組織試料の染色を図示する。これらの結果は、タンデムリピートコンジュゲートの染色度が、従来の蛍光標識二次抗体より15%強かったことを実証している。
蛍光標識を含む架橋抗原
【0233】
蛍光標識抗体からのシグナル発生の強度は、結合部位におけるフルオロフォアの数に依存する。しかしながら、抗体上のフルオロフォアの数は、おおよそ4~6個のフルオロフォアに制限され、これは、そのレベルを上回って標識の数を増加させることは、Forster共鳴エネルギー移動(FRET)により蛍光のクエンチングをもたらし得るからである。直接標識モノクローナル抗体は、非常に弱いシグナルを生じ、これは、単一の蛍光標識モノクローナル抗体上のフルオロフォアの数が限られているからであることは認識されている。しかしながら、蛍光標識二次抗体は、複数(すなわち、2~4個)の二次抗体が、標的に結合している各一次抗体と結合することができる場合、有意により強いシグナルを生成することも理解されている。
【0234】
例えば、図27に概略的に図示されているように、本発明の免疫試薬のシグナルを増加させるための試みにおいて、ペプチド架橋抗原の遠位末端にコンジュゲートした蛍光標識を含む連結可能な架橋抗原を合成した。フルオロフォア標識架橋抗原を、一次抗体にコンジュゲートし、その標識抗体を、その標識一次抗体により標的とされる抗原を含有する組織とインキュベートした(図27、ステップA、蛍光標識は「Z」と表されている)。次に、蛍光標識抗ペプチド二次抗体を、その試料に加え(図27、ステップB)、その後、そのように標識された試料を画像化した。
【0235】
トリプルポジティブ乳がん組織および一次抗体として抗HER2抗体を使用することにより、蛍光標識二次抗体と共に蛍光標識一次抗体は、一次抗体がフルオロフォアを含有しない場合のアッセイにおいて得られるシグナルより強いシグナルを提供することが実証された(図28A~28D)。
実験
【0236】
連結可能な蛍光ペプチドAOA-ETSGLQEQRNHLQGK(FITC)-NH2(PEP6-FITC)を、Innopep(www.innopep.com)において固相ペプチド合成により合成した。そのペプチドを、以下のインプット:5mg/mLのHER2、スルホ-S4FB(25当量)、ペプチド、10、20、および30当量での上記手順を使用してHER2に連結した。コンジュゲーション後、ペプチドの数を、FITCのA280への寄与の引き算した後のA490/A280比によって決定した。5個、6個、および7個のペプチドが、それぞれ、HER2に組み込まれたことが決定された。組織を、上記の手順を使用して染色した。
【0237】
図28A図28Dは、ウサギ抗HER2/抗ウサギ-FITCを、3つの漸増レベル、すなわち、5X、6X、および7Xの標識度(DOL)で修飾されたHER2-PEP6-FITCと比較した、トリプルポジティブ乳がん組織(ILS25092)における染色結果を示し、HER2の最高レベルのPEP6-FITC修飾の後のFITC-抗PEP6が、FITC-抗ウサギ二次抗体より強いシグナルを与えることを実証している。定量的結果は表12に提示されている。
【表12】
免疫試薬の熱による取り除き
【0238】
可溶性架橋抗原ペプチドまたは切断可能なコンジュゲーション部分を使用する免疫試薬の選択的取り除き(上記参照)の代替法として、本発明の免疫試薬で染色された試料をまた、熱処理を使用して組織試料から解離させている。具体的には、免疫試薬、CD3、CD4、CD8、およびCD20のカクテルでの最初の四重染色および画像化後、スライドを、洗浄バッファー中で一晩、インキュベートし、組織を害することなくカバーグラスを除去した。その後、スライドを、クエン酸バッファー、pH6中に置き、100%出力(4×45秒間)でマイクロ波により加熱して(microwaved)、沸点へと導いた。スライドを、さらに15分間、20%出力でマイクロ波により加熱し、その後、20分間、室温まで冷却させた。スライドを蒸留水中で2分間、その後、洗浄バッファー中で2分間、洗浄した。組織を、免疫試薬HER2、ER、PR、およびKi-67で染色し、画像化した。
【0239】
図29Aおよび図29Bは、熱による取り除き実験の結果を示し、同じ組織切片が各画像に示されている。組織切片は、CD8、CD4、CD20、およびCD3に特異的な免疫試薬のカクテルで染色されたトリプルポジティブ乳がん組織(ILS32707)であった(図29A)。マイクロ波加熱による取り除き後、同じ組織切片を、乳がんマーカーHER2、ER、PR、およびKi-67に対する免疫試薬のパネル(panet)で染色した(図29B)。シグナルを、各スライドについての抗体インキュベーションの第1のラウンドに対して正規化した。
【0240】
本明細書において記述した全ての特許、特許刊行物、および他の公表された参照文献は、それぞれが本明細書において参照により個々にかつ具体的に組み込まれているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0241】
具体的な例を提供してきたが、上記の説明は例示的なものであり、限定されるものではない。上記実施形態の特色のうちの任意の1つまたは複数は、本発明における任意の他の実施形態のうちの1つまたは複数の特色と任意の様式で合わせることができる。さらに、本発明の多くのバリエーションは、明細書を見直せば当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲をそれらの均等物の完全な範囲と共に参照することにより決定すべきである。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26A
図26B
図27
図28A
図28B
図28C
図28D
図29
【配列表】
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