(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】実験室システムの動作方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20230619BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20230619BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
G01N35/00 E
G01N35/10 D
G01N35/10 B
G01N35/02 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018101413
(22)【出願日】2018-05-28
【審査請求日】2021-05-17
(32)【優先日】2017-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・メッツラー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・スコフィールド
(72)【発明者】
【氏名】オーレ・ランベク
(72)【発明者】
【氏名】モリッツ・フォン ホップフガルテン
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-037346(JP,A)
【文献】特表2014-532882(JP,A)
【文献】特表2010-529432(JP,A)
【文献】特開2010-217057(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0242395(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実験室システム(1)を動作させるためのコンピュータ実装方法であって、前記実験室システムが、生体試料を処理する複数の実験室器具(10、10PRE、10LD、10AI、10PA)と、通信ネットワーク(70)によって通信可能に接続された制御ユニット(20)とを含み、前記方法が、
-前記複数の実験室器具(10)の1つによって、生体試料を受け取って識別するステップと、
-前記制御ユニット(20)によってデータベースからオーダー・リストを引き出すステップであって、前記リストが、前記生体試料に対応する複数のターゲットを含み、各ターゲットが、前記複数の実験室器具(10、10PRE、10LD、10AI、10PA)の内少なくとも1つによって前記生体試料に対して実行される少なくとも1つの処理ステップを定める、ステップと、
-前記制御ユニット(20)によって、
前記生体試料を処理する際の複数の優先規則のうちの少なくとも1つの優先規則を含むワークフロー戦略を
決定するステッ
プと、
-前記制御ユニット(20)によって、前記ワークフロー戦略に対応するワークフロー承認基準をデータベースから引き出すステップと、
-前記制御ユニット(20)によって、前記ワークフロー戦略および前記オーダー・リストに基づいて前記生体試料を処理するための試料ワークフローを決定するステップと、
-前記制御ユニット(20)によって、前記試料ワークフローが前記ワークフロー承認基準を満たすか否か判定するステップと、
-前記試料ワークフローが前記ワークフロー承認基準を満たさない場合、前記試料ワークフローが前記ワークフロー承認基準を満たすまで、前記制御ユニット(20)によって、
前記少なくとも1つの優先規則における変更を通じて前記ワークフロー戦略を再考し、前記再考されたワークフロー戦略および前記オーダー・リストに基づいて、前記制御ユニット(20)によって前記試料ワークフローを決定するステップと、
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
実験室システム(1)を動作させるためのコンピュータ実装方法であって、前記実験室システムが、生体試料を処理する複数の実験室器具(10、10PRE、10LD、10AI、10PA)と、通信ネットワーク(70)によって通信可能に接続された制御ユニット(20)とを含み、前記方法が、
-前記複数の実験室器具(10)の1つによって、生体試料を受け取って識別するステップと、
-前記制御ユニット(20)によってデータベースからオーダー・リストを引き出すステップであって、前記リストが、前記生体試料に対応する複数のターゲットを含み、各ターゲットが、前記複数の実験室器具(10、10PRE、10LD、10AI、10PA)の内少なくとも1つによって前記生体試料に対して実行される少なくとも1つの処理ステップを定める、ステップと、
-前記制御ユニット(20)によって、
前記生体試料を処理する際の複数の優先規則のうちの少なくとも1つの優先規則を含むワークフロー戦略を
決定するステッ
プと、
-前記制御ユニット(20)によって、前記ワークフロー戦略に対応するワークフロー承認基準をデータベースから引き出すステップと、
-前記制御ユニット(20)によって、前記ワークフロー戦略および前記オーダー・リストに基づいて前記生体試料を処理するための試料ワークフローを決定するステップと、
-前記制御ユニット(20)によって、前記試料ワークフローが前記ワークフロー承認基準を満たすか否か判定するステップと、
-前記試料ワークフローが前記ワークフロー承認基準を満たさない場合、前記制御ユニット(20)によって
前記少なくとも1つの優先規則における変更を通じて前記ワークフロー戦略を再考することと、前記制御ユニット(20)によってワークフロー承認基準を再考することと、前記再考されたワークフロー戦略および前記オーダー・リストに基づいて、前記制御ユニット(20)によって前記試料ワークフローを決定することとを、前記試料ワークフローが前記再考されたワークフロー承認基準を満たすまで行うステップと、
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の実験室システム(1)を動作させるためのコンピュータ実装方法であって、更に、
前記制御ユニット(20)によって前記生体試料の特性を判定するステップを含み、前記生体試料の特性が、
-前記生体試料の試料分量、
-前記生体試料の試料品質、
-試料収集日時、
-患者を識別する指示、および/または
-試料処理履歴、
の内少なくとも1つを含み、
前記ワークフロー承認基準が、前記生体試料の少なくとも1つの特性に基づく少なくとも1つのワークフロー評価規則を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の実験室システム(1)を動作させるためのコンピュータ実装方法において、前記試料ワークフローが、
-前記ターゲットを処理すべき順序、
-前記ターゲットの処理のタイミング、および
-前記ワークフロー承認基準を満たし全てのターゲットを含む試料ワークフローを決定できない場合、前記試料ワークフローによって含まれない除外ターゲットのリスト、
の内少なくとも1つを定める、コンピュータ実装方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の実験室システム(1)を動作させるためのコンピュータ実装方法において、前記試料ワークフローが、更に、
-前記生体試料から調製されるアリコートの数n、および
-アリコートまたは生体試料の各ターゲットへの割り当て、
を定め、前記方法が、更に、
前記試料ワークフローが前記ワークフロー承認基準または前記再考されたワークフロー承認基準を満たす場合、前記制御ユニット(20)によって、前記生体試料のn個のアリコートを調製するように、1つ以上の実験室器具(10、10PRE、10LD、10AI、10PA)に命令するステップを含む、コンピュータ実装方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の実験室システム(1)を動作させるためのコンピュータ実装方法であって、更に、
前記制御ユニット(20)によって、前記ターゲットのプロパティを判定するステップを含み、前記ターゲットのプロパティが、
-ターゲットの優先順位、
-前記ターゲットが強制検査かまたは非強制ターゲットかを示すインディケータ、
-ターゲットに対する最小試料分量、および/または
-推定処理時間、
の内少なくとも1つを含む、コンピュータ実装方法。
【請求項7】
請求項6に記載の実験室システム(1)を動作させるためのコンピュータ実装方法であって、更に、
-前記オーダー・リストによって含まれるターゲット、
-前記それぞれのターゲットに対応する処理ステップを実行するために必要とされる消耗品、
-前記実験室システム(1)の稼働時間、および/または
-前記それぞれのターゲットがどこから発せられたか、
の内少なくとも1つに基づいて、前記制御ユニット(20)によって、前記複数のターゲットのターゲット優先順位を設定するステップを含む、コンピュータ実装方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の実験室システム(1)を動作させるためのコンピュータ実装方法において、前記ワークフロー戦略および前記オーダー・リストに基づいて前記試料ワークフローを決定する前記ステップが、
-それぞれのターゲット優先順位に基づいて前記オーダー・リスト内のターゲットをソートするステップ、および/または
-汚染を回避するために、前記生体試料の同じアリコートが割り当てられたターゲットをソートするステップ、
の内少なくとも1つを含む、コンピュータ実装方法。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか1項に記載の実験室システム(1)を動作させるためのコンピュータ実装方法において、前記ワークフロー承認基準が、
-前記試料ワークフローの総応答時間(TAT)の推定値が、既定の許容TAT以下であるか否か判定する、および/または、
-総必要試料分量の推定値が、前記生体試料の利用可能な試料分量以下であるか否か判定する、
のうちの1または複数を含む、前記ターゲットの少なくとも1つのプロパティに基づく少なくとも1つのワークフロー評価規則を含み、
前記複数のワークフロー評価規則が、少なくとも1つ以上の論理演算子によって組み合わせられる、コンピュータ実装方法。
【請求項10】
請求項5から9のいずれか1項に記載の実験室システム(1)を動作させるためのコンピュータ実装方法において、前記
少なくとも1つの優先規則が、
-前記生体試料から作られるアリコートの数を最大化することによって、並列に処理されるターゲットの数を最大化する、最速TAT優先規則、
-全てのターゲットに対する総必要試料分量の推定値が、前記生体試料の利用可能な試料分量以下となるまで、前記生体試料から作られるアリコートの数を減らす、全ターゲット完了優先規則、
-前記ターゲットの処理のタイミングを、前記対応する実験室器具によって実行される検査のスケジュール、および/または対応する実験室器具のそれぞれのアッセイの品質制御の有効性と揃える、最小消耗品浪費優先規則、および/または、
-前記生体試料の利用可能な試料分量が、全てのターゲットに対する総必要試料分量の推定値未満である場合、前記試料ワークフローから非強制ターゲットを除外し、それにより、強制ターゲットを非強制ターゲットよりも優先する、強制ターゲット優先規則、
の内、少なくとも1つを含む、コンピュータ実装方法。
【請求項11】
請求項2および5から9のいずれか1項に記載の実験室システム(1)を動作させるためのコンピュータ実装方法において、前記
少なくとも1つの優先規則が、
-前記生体試料から作られるアリコートの数を最大化することによって、並列に処理されるターゲットの数を最大化する、最速TAT優先規則、
-全てのターゲットに対する総必要試料分量の推定値が、前記生体試料の利用可能な試料分量以下となるまで、前記生体試料から作られるアリコートの数を減らし、前記許容可能な推定TATを増大させる、全ターゲット完了優先規則、
-前記ターゲットの処理のタイミングを、前記対応する実験室器具によって実行される検査のスケジュール、および/または対応する実験室器具のそれぞれのアッセイの品質制御の有効性と揃える、最小消耗品浪費優先規則、および/または、
-前記生体試料の利用可能な試料分量が、全てのターゲットに対する総必要試料分量の推定値未満である場合、前記試料ワークフローから非強制ターゲットを除外し、前記ワークフロー評価規則から非強制ターゲットを除外することによって、強制ターゲットを非強制ターゲットよりも優先する、強制ターゲット優先規則、
の内、少なくとも1つを含む、コンピュータ実装方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の実験室システム(1)を動作させるためのコンピュータ実装方法であって、更に、前記制御ユニット(20)によって、前記生体試料の所定の確保分量を確保するステップを含み、前記確保分量が、前記ワークフロー戦略および前記オーダー・リストに基づいて前記試料ワークフローを決定する際に考慮されず、前記確保分量が、今後のターゲットのためおよび/または保管の目的で取り置かれる、コンピュータ実装方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の実験室システム(1)を動作させるためのコンピュータ実装方法において、前記複数の実験室器具(10)が、少なくとも1つの分析計器(10AI)を含み、前記オーダー・リストが、少なくとも1つの検査命令を含み、前記生体試料に対して実行される前記少なくとも1つの処理ステップが、前記分析計器(10AI)によって実行される少なくとも1つの分析検査を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項14】
請求項2から13のいずれか1項に記載の実験室システム(1)を動作させるためのコンピュータ実装方法において、前記ワークフロー戦略を再考するステップ、および前記試料ワークフローを決定するステップが、多くとも所定の最大繰り返し回数だけ実行され、
前記試料ワークフローが、前記最大繰り返し回数の後、前記ワークフロー承認基準を満たさない場合、前記制御ユニット(20)が、
-前記生体試料を、操作員が手作業で試料を処理するためのターゲットに分類し、および/または試料ワークフローを決定するときのエラーを示す信号を生成する、および/または
-対応する試料管識別子を有する空のアリコート管を作成し、操作員への追加の試料分量を前記空のアリコート管に供給する命令を示す信号を生成する、および/または
-前記利用可能な試料分量に基づいてできるだけ多くの生体試料のアリコートを作り、生体試料を含む試料管を、操作員が手作業で試料を処理するためのターゲットに分類し、操作員への追加の試料分量を供給する命令を示す信号を生成する、および/または
-前記最大繰り返し回数の後、前記試料ワークフローが前記ワークフロー承認基準を満たさないことを示す警報信号を生成する、
ように前記実験室システム(1)を制御する、コンピュータ実装方法。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか1項に記載の実験室システム(1)を動作させるためのコンピュータ実装方法において、前記ワークフロー戦略を再考するステップ、ワークフロー承認基準を再考するステップ、および前記試料ワークフローを決定するステップが、多くとも所定の最大繰り返し回数だけ実行され、
前記試料ワークフローが、前記最大繰り返し回数の後、前記ワークフロー承認基準を満たさない場合、前記制御ユニット(20)が、
-前記生体試料を、操作員が手作業で試料を処理するためのターゲットに分類し、および/または試料ワークフローを決定するときのエラーを示す信号を生成する、および/または
-対応する試料管識別子を有する空のアリコート管を作成し、操作員への追加の試料分量を前記空のアリコート管に供給する命令を示す信号を生成する、および/または
-前記利用可能な試料分量に基づいてできるだけ多くの生体試料のアリコートを作り、生体試料を含む試料管を、操作員が手作業で試料を処理するためのターゲットに分類し、操作員への追加の試料分量を供給する命令を示す信号を生成する、および/または
-前記最大繰り返し回数の後、前記試料ワークフローが前記ワークフロー承認基準を満たさないことを示す警報信号を生成する、
ように前記実験室システム(1)を制御する、コンピュータ実装方法。
【請求項16】
実験室システム(1)であって、
-生体試料を処理するための複数の実験室器具(10、10PRE、10LD、10AI、10PA)と、
-制御ユニット(20)と、
を含み、前記複数の実験室器具(10、10PRE、10LD、10AI、10PA)および前記制御ユニット(20)が、通信ネットワーク(70)によって通信可能に接続されており、前記制御ユニット(20)が、請求項1から15までのいずれか1項にしたがって前記方法を実行するように構成される、実験室システム(1)。
【請求項17】
請求項16に記載の実験室システム(1)において、前記複数の実験室器具(10)が、
-生体試料を受け取って識別するように構成された試料入力ステーション(12)を含む、試料装填用実験室器具(10LD)、および/または
-前記生体試料の特性を示す測定値を得るように構成された分析実験室器具(10AI)、および/または
-分析実験室器具(10AI)によって分析されるために、生体試料を調製するように構成された分析前実験室器具(10PRE)、および/または
-前記実験室器具(10、10PRE、10LD、10AI、10PA)間において前記生体試料を移送するように構成された、試料移送システム(15)、および/または
-1つ以上の生体試料を格納するように構成された分析後実験室器具、
を含み、前記複数の実験室器具(10、10PRE、10LD、10AI、10PA)の内少なくとも1つが、前記生体試料を主生体試料および1つ以上のそのアリコートに分割するように構成された分注機(14)を含む、実験室システム(1)。
【請求項18】
命令を格納するコンピュータ読み取り可能媒体であって、前記命令は、実験室システム(1)の制御ユニット(20)によって実行されると、請求項1から15までに記載の方法の内いずれか1つの方法を実行するように、前記実験室システム(1)を制御し、前記実験室システム(1)は、
-生体試料を処理するための複数の実験室器具(10、10PRE、10LD、10AI、10PA)と、
-前記制御ユニット(20)と、
を含む、コンピュータ読み取り可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、生体試料を処理するために実験室システムを動作させるコンピュータ実装方法に関する。更に、本願は生体試料を処理する実験室システムに関する。
【背景技術】
【0002】
試験管内診断検査は、臨床判断に大きな効果があり、中枢となる情報を医師に提供する。
分析実験室(analytical laboratories)、具体的には、臨床実験室では、患者の生理学的状態を判定するために、分析システムによって試料に対して複数の分析が実行される。生体試料に対して実行される種類の分析検査は、通例では検査命令として実験室情報システムに登録され、通例では実験システムに送られるターゲットとして指定される。
【0003】
既設の実験室手順によれば、生体試料を受け取ったとき、最初に、例えば、バーコード標識およびバーコード・リーダのような識別標識および対応する標識リーダによって、それを識別する。一旦生体標本が識別されたなら、複数のターゲットを含むデータベースからオーダー・リスト(order list)を引き出す。各ターゲットは、実験室器具の内1つ以上によって生体試料に対して実行される1つ以上の処理ステップを定める。これらの処理ステップは、分析前処理ステップ(等分、試料準備等)、分析処理ステップ(生体試料における分析物の存在および/または濃度を判定するためのアッセイ等)、または分析後処理ステップ(生体試料の保管等)としてもよい。実験室システムの種々の実験室器具によって生体試料を処理できるようになる前に、試料ワークフローを決定する。試料ワークフローは、生体試料から調製される複数のアリコート(aliquot)、生体試料のアリコートのターゲットに対する割り当て、ターゲットを処理しようとするシーケンス、および/またはターゲットの処理のタイミングを含むリストからの1つ以上から定められる。
【0004】
生体試料を受け取って識別する毎に、試料ワークフローを決定する制御ユニット(Roche Diagnostics社のcobas ITミドルウェア、cobas Infinity、またはcobas IT3000製品等)のための解決手段が知られている。このような既知の制御ユニットは、生体試料を処理するときにおける1つ以上の優先規則を定めるワークフロー戦略に基づいて試料ワークフローを決定する。一例として、特定の実験室にとっては、最も速い処理時間(ターン・アラウンド時間(TAT))が最優先(highest priority)となる。この場合、ワークフロー戦略は、同時に数台の器具においてアリコートの並列処理を可能にするために、生体試料の数個のアリコートの作成を優先する。試料ワークフローの妥当性を判断するために、1つ以上のワークフロー評価規則を含むワークフロー承認基準(workflow acceptance criteria)を定める。1つの共通するワークフロー評価規則は、全要求試料分量の推定値が、生体試料の利用可能な試料分量以下か否かである。試料ワークフローがワークフロー承認基準を満たす場合、実験室器具は、制御ユニットによって、試料ワークフローにしたがって生体試料を処理するように命令される。しかしながら、試料ワークフローがワークフロー承認基準を満たさない場合、既知の解決手段は、試料ワークフローがワークフロー承認基準を満たさなかったことを示すエラー・メッセージを出すだけである。必要に応じて、特定の場合には、操作員がこのような試料を手作業で処理するために、生体試料をいわゆるエラー・ターゲット(error target)に分類する(sort)。
【0005】
しかしながら、これは、手作業の介入が必要とされ、時間がかかり、エラーが発生し易く、担当者の負荷が増え、実験室の常時監視が必要となり、特に夜通しの場合には望ましくないので、不利である。
【0006】
したがって、本明細書において開示する実施形態は、実験室システムを動作させる方法、またはこのような方法を実行するように構成された実験室システムを提供し、生体試料の自動処理(automated handling)を可能にし、ユーザのエラーを防止し、担当者の負荷を低減し、常時監視の必要性を回避するために、制御ユニットが生体試料を処理するワークフローを決定する方法を改良することを目的とする。
【発明の概要】
【0007】
本明細書において開示する実施形態は、生体試料を処理するための試料ワークフローを決定するために繰り返し手法を採用することによってこの目的に取り組み、ワークフロー戦略およびワークフロー承認基準を繰り返し再考し(refine)、ワークフロー承認基準を満たすワークフローが見つかるまで、試料ワークフローを(再)決定する。
【0008】
開示する方法/システムの実施形態は特に有利である。何故なら、制御ユニットがこれまで承認できる試料ワークフローを決定できなかったために操作員が介入しなければならかった回数を大幅に減らすことができ、または全く無くすこともできるからである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
開示する方法/デバイス/システムの更に他の特徴および利点について、以下に、説明によってそして図面を参照することによって詳しく説明する。図面は以下を示す。
【
図1A】
図1Aは、開示する実験室システムの実施形態の非常に模式的なブロック図である。
【
図1B】
図1Bは、試料移送システムによって接続された分析前器具、分析後器具、および分析計器を含む、開示する実験室システムの実施形態の非常に模式的なブロック図である。
【
図2】
図2は、実験室システムを動作させるための開示方法の実施形態を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、実験室システムを動作させるための開示方法の他の実施形態を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実験室システムを動作させるための開示方法の更に他の実施形態を示すフローチャートである。
【0010】
注記事項:図は、同じ拡縮率で描かれているのではなく、例示のみとして提示されており、発明の範囲を定めるためではなく、理解を一層深めるためにのみ役立つものである。これらの図から、本発明の特徴のいずれについても、限定を推論してはならない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本特許出願では、特定の用語が使用され、その明確な語句(formulation)が、特定の選択された用語によって限定されるように解釈してはならず、その特定の用語の背後にある一般的な概念に関係するように解釈してしかるべきである。
【0012】
「実験室器具」(laboratory instrument)という用語は、本明細書において使用する場合、1つ以上の生体試料に対して1つ以上の処理ステップ/ワークフロー・ステップを実行するように動作可能な任意の装置または装置コンポーネントを包含する。「処理ステップ」という表現は、したがって、遠心分離、等分、試料分析等のような、物理的に実行される処理ステップを指す。「実験室器具」という用語は、分析前器具、分析後器具、更には分析計器にも該当する。
【0013】
「分析前器具」(pre-analytical instrument)という用語は、本明細書において使用する場合、1つ以上の生体試料に対して1つ以上の分析前処理ステップを実行することによって、1つ以上の連続する分析検査のために試料を調製する1つ以上の実験室デバイスを含む。分析前処理ステップは、例えば、遠心分離ステップ、キャッピング(capping)、ディキャッピング(decapping)、またはリキャッピング(recapping)ステップ、等分ステップ、緩衝材を試料に添加するステップ等とすることができる。「分析システム」という表現は、本明細書において使用する場合、1つ以上の生体試料に対して分析検査を実行するように動作可能な1つ以上の実験室デバイスまたは動作ユニットを含む任意のモノリシックまたはマルチモジュール実験室デバイスを包含する。
【0014】
「分析後器具」(post-analytical instrument)という用語は、本明細書において使用する場合、1つ以上の生体試料を自動的に処理するおよび/または格納するように動作可能な任意の実験室器具を包含する。分析後処理ステップは、リキャッピング・ステップ、分析システムから試料を取り出すステップ、または前記サンプルを格納ユニットまたは生体廃棄物を収集するユニットに移送するステップを含むことができる。
【0015】
「アナライザ/分析計器」(analyzer/analytical instrument)という用語は、本明細書において使用する場合、測定値を得るように構成された任意の装置または装置のコンポーネントを包含する。アナライザは、種々の化学的、生物学的、物理的、光学的、またはその他の技術的手順によって、試料またはその成分のパラメータ値を決定するように動作可能である。アナライザは、前述の試料または少なくとも1つの分析物の前記パラメータを測定し、得られた測定値を返すように動作可能であってもよい。アナライザから返される可能性のある分析結果のリストは、限定ではなく、試料中の分析物濃度、試料中の分析物の存在を示すディジタル(はい、またはいいえ)結果(検出レベルを上回る濃度に対応する)、光学的パラメータ、DNAまたはRNA配列、タンパク質または代謝物の質量分析から得られたデータ、および様々な種類の物理的または化学的パラメータを含む。分析計器は、試料および/または試薬のピペット操作(pipetting)、分与、および混合を補助するユニットを含むことができる。アナライザは、アッセイを行うために試薬を保持するための試薬保持ユニットを含んでもよい。 試薬は、例えば、個別の試薬または1群の試薬を収容するコンテナまたはカセットの形態で配置され、保管区画またはコンベヤ内の該当する受容部または位置に置かれてもよい。これは、消耗品の供給ユニットを含んでもよい。アナライザは、そのワークフローが特定の種類の分析に対して最適化された処理および検出システムを含んでもよい。このようなアナライザの例には、 化学反応または生体反応の結果を検出するため、あるいは化学反応または生体反応の進行を監視するために使用される、臨床化学アナライザ、凝集化学アナライザ、免疫化学アナライザ、尿アナライザ、核酸アナライザ、組織アナライザ(形態学的染色および組織化学染色を含む)がある。
【0016】
「実験室システム」(laboratory system)という用語は、本明細書において使用する場合、制御ユニットに動作可能に接続された複数の実験室器具を含む実験室において使用するための任意のシステムを包含する。
【0017】
「制御ユニット」(control unit)、「実験室ミドルウェア」(laboratory middleware)という用語は、本明細書において使用する場合、ワークフロー(1つまたは複数)およびワークフロー・ステップ(1つまたは複数)を実験室システムによって実行するために、複数の実験室器具を含む実験室システムを制御するように構成可能な任意の物理的または仮想的処理デバイスを包含する。制御ユニットは、例えば、分析前、分析後、および分析ワークフロー(1つまたは複数)/ワークフロー・ステップ(1つまたは複数)を実行するように、実験室システム(またはその特定の器具)に命令する。制御ユニットは、特定の試料にはどのステップを実行する必要があるかについての情報を、データ管理ユニットから受け取ることもできる。ある実施形態では、制御ユニットがデータ管理ユニットと一体となる場合もあり、サーバ・コンピュータによって構成されてもよく、および/または1つの器具の一部であってもよく、実験室システムの複数の器具に跨って分散されてもよい。実例をあげると、制御ユニットは、動作を実行するための命令が備えられたコンピュータ読み取り可能プログラムを実行するプログラマブル・ロジック・コントローラとして具体化されてもよい。
【0018】
「通信ネットワーク」(communication network)という用語は、本明細書において使用する場合、WIFI、GSM、UMTS、または他の無線ディジタル・ネットワークのような任意の種類の無線ネットワーク、あるいはイーサネット等のケーブルに基づくネットワークを包含する。具体的には、通信ネットワークはインターネット・プロトコルIPを実装できる。例えば、通信ネットワークは、ケーブルに基づくネットワークと無線ネットワークとの組み合わせを含む。システムのユニットが1つの実験室器具内に含まれる実施形態では、通信ネットワークは、器具内に通信チャネルを含む。
【0019】
「ユーザ・インターフェース」(user interface)という用語は、本明細書において使用する場合、操作員と機械との間における対話処理のための任意の適したソフトウェアおよび/またはハードウェアを包含し、操作員からのコマンドを入力として受け取り、更にフィードバックを与え操作員に情報を伝えるグラフィカル・ユーザ・インターフェースを含むが、これに限定されるのではない。また、システム/デバイスは、異なる種類のユーザ/操作員に役立つために、様々なユーザ・インターフェースを露出することができる。
【0020】
「ワークフロー」(workflow)という用語は、本明細書において使用する場合、ワークフロー・ステップ/処理ステップの集合体を指す。特定実施形態によれば、ワークフローは、処理ステップが実行されるシーケンスを定める。
【0021】
「ワークフロー・ステップ」(workflow step)または「処理ステップ」(processing step)という用語は、本明細書において使用する場合、ワークフローに属する任意のアクティビティを包含する。アクティビティは、基礎的または複合的な性質を有することができ、通例1つ以上の器具において、または1つ以上の器具によって実行される。
【0022】
「試料」、「患者試料」、および「生体試料」という用語は、対象となる分析物を含んでいる可能性のある物質のことをいう。患者試料は、全血、唾液、眼球水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、排泄物、精液、母乳、腹水、粘液、滑液、腹膜液、羊水、組織、培養細胞等を含む、生理液のような、任意の生体供給源から得ることができる。患者試料は、血液から血漿を調製する、粘性流体を希釈する、溶解等というように、使用前に前処置することができる。処置方法は、ろ過、蒸留、濃縮、干渉成分の不活性化、および試薬の添加を伴うことができる。患者試料は、供給源から得られたまま直接使用されてもよいが、試料の特性を変更する前処置の後に使用されてもよい。ある実施形態では、最初は固体または半固体の生物学的物質を、適した液体媒体に溶解または懸濁することによって液状にすることができる。ある実施形態では、試料が特定の抗原または核酸を含有すると推察することができる。
【0023】
「STAT試料」(STAT sample)とは、分析結果が患者にとって生命にかかわる重要性があるかもしれないため、緊急に処理および分析しなければならない試料のことである。
「試料管」(sample tube)という用語は、試料を移送、格納、および/または処理するための任意の個々の容器(container)を指す。具体的には、前記用語は、限定ではなく、必要に応じて上端にキャップを含む実験室ガラス、またはプラスチック製品を指す。
【0024】
試料管、例えば、血液を収集するために使用される試料管は、多くの場合、試料の処理に影響を及ぼす血餅活性物質または抗凝血性物質のような、添加物質を含む。その結果、特定の分析、例えば、臨床化学分析、血液分析、または凝固分析の分析前要件および分析要件に合わせて、異なる種類の管を作るのが通例である。複数の種類の試料管を混合することにより、(血液)試料が分析に使用できなくなる可能性がある。試料の収集および取り扱いにおける誤りを防止するために、多くの管製造会社の試料キャップは、固定および均一着色方式にしたがって、エンコードされている。加えてまたは代わりに、いくつかの種類の試料管は、特定の管寸法、キャップの寸法、および/または管の色によって特徴付けられる。管の寸法とは、例えば、高さ、サイズ、および/またはその他の特徴的形状プロパティを含む。
【0025】
「試料プレート」(sample plate)、「マイクロプレート」(microplate)、または「マイクロウェル・プレート」(microwell plate)という用語は、本明細書において使用する場合、複数の試料ウェルを矩形行列に配列して有する多くの分析研究および臨床診断検査実験室において共通して使用されるプレート/トレイを指す。マイクロプレートの各ウェルは、通例、数十ナノリットルから数ミリリットルの間の生体試料を保持する。マイクロプレートは、種々の寸法、定型(format)、および構成を有する。比色免疫測定法では、マイクロプレート・プレートは、一般に、光透過性プラスチックで形成される。何故なら、アッセイ結果の読み取りが通例ウェル内の内容物を通して行われるからである。光子発光免疫測定法では、ウェル毎に結果を測光法で読み取るときの「クロストーク」を低減するため(すなわち、迷光によって起こる干渉を低減するため)に、黒または白のポリスチレンのような、不透明のプラスチックでマイクロプレートを作ることもできる。
【0026】
「アリコート」(aliquot)、「患者試料アリコート」(patient sample aliquot)、および「生体試料アリコート」(biologial sample aliquot)という用語は、等分によって、即ち、具体的にはピペッティング・プロセス(pipetting process)を使用して、通常生体試料を分割することによって得られる試料、患者試料、または生体試料の一部を指す。このコンテキストでは、生体試料を主試料と呼び、生体試料が内在する管を主試料管と呼ぶ。一方、主試料から分割されたサンプル部分をアリコートと呼び、これらが内在する管(1つまたは複数)をアリコート管または副管と呼ぶ。生体試料のアリコート(1つまたは複数)が作られるとき、通常、主試料管または試料プレート・ウェルとは別個の副試料管または試料プレート・ウェルに入れられる。
【0027】
「試料ラック」(sample rack)という用語は、通例プラスチックおよび/または金属で作られ、例えば、1つ以上の列に配置された1つ以上の試料管、例えば、5つ以上の試料管を受け入れ、保持し、移送するのに適するように構成された搬送機である。試料管、または試料管内の試料、または試料ラック内に保持された試料管上にある、バーコードのような標識の視覚的または光学的検査または読み取りを可能にするために、開口、窓、またはスリットを設けることができる。
【0028】
「管種」(tube type)という用語は、本明細書において使用する場合、少なくとも1つの共有プロパティによって特徴つけることができる試料管のカテゴリを指し、これによって、前記共有プロパティを実験室デバイスによって自動的に検出することができ、こうして、第1の管種の1組の試料管を他のものから区別するために使用することができる。ある管種は、複数の異なる分析検査に使用することができる試料を搬送するように設計される。このような管種の一例に、血清管がある。しかしながら、管種は分析検査毎に特定であってもよい。
【0029】
「試料入力ステーション」(sample input station)という用語は、本明細書において使用する場合、試料が同じ器具によって処理される前または実験室システムの他の器具に転送される(移送システムによってまたは手作業で)前に試料管を受け取るように構成された器具の一部または器具全体を指す。試料管は、個々にまたはラック毎に試料入力ステーションに装填することができる。
【0030】
ワークセルは、移送システム(コンベアおよび/またはロボット・アーム)によって接続されてもよい。あるいは、試料は、1つのワークセルから他のワークセルに手作業で移送されるか、またはワークセルが直接互いに接続される。
【0031】
「分析物」(analyte)という用語は、本明細書において使用する場合、分析される試料の成分、例えば、種々のサイズの分子、イオン、たんぱく質、代謝物等を指す。分析物について収集された情報は、生体(organism)または特定の組織に対する薬物の投与の影響を評価するため、あるいは診断を行うために使用することができる。つまり、「分析物」とは、存在および/または濃度についての情報を得ようとする(intended)対象の物質に対する一般的な用語である。分析物の例には、例えば、グルコース、凝固パラメータ、内因性タンパク質(例えば、心筋から放出されたタンパク質)、代謝物、核酸等がある。
【0032】
「分析」(analysis)または「分析検査」(analytical test)という用語は、本明細書において使用する場合、生体試料のパラメータ、例えば、吸光度、蛍光度、電位、あるいは測定データを得るための反応の他の物理的または化学的特性を特徴付ける実験室手順を包含する。
【0033】
「ターゲット」(target)という用語は、本明細書において使用する場合、任意のデータ・オブジェクト、コンピュータにロード可能なデータ構造、このようなデータを表す変調データを指し、特定の生体試料に対して実行される1つ以上の実験室処理ステップを示す。例えば、ターゲット・レコードとは、ファイルまたはデータベースにおけるエンティティであってもよい。本明細書において開示する実施形態によれば、例えば、ターゲットが特定の試料に対して実行される分析検査の識別子を含む場合または識別子と関連付けて格納されている場合、ターゲットは、分析検査の検査順序を指示することができる。あるいはまたは加えて、ターゲットは生体試料に対して実行される分析前および/または分析後処理ステップを指すこともできる。
【0034】
「分析データ」(analytical data)という用語は、本明細書において使用する場合、生体試料の測定結果を記述する任意のデータを包含する。較正の場合、分析データは、較正結果、即ち、較正データを含む。具体的には、分析データは、分析が行われた試料の識別子、および測定データのような、分析の結果を記述するデータを含む。
【0035】
「ソーティング」(sorting)および「グルーピング」(grouping)という用語は、以下では、少なくとも後続の処理ステップの間グループの全ての試料を同様に処理するために、特定のグループの全ての試料によって共有される特徴に基づく、生体試料のグルーピングを示すために、同意義で使用されることとする。
【0036】
「溶血性」(hemolytic)または(respectively)「溶血」(hemolysis)という用語は、生体試料の血管細胞損傷を意味する。一般に、細胞損傷は、頻繁に試料拒絶の理由になる、瀉血の間に発生する。試験管内溶血は、瀉血の間に起こる可能性があり、セル・メンブレンの破壊、およびヘモグロビンの周囲流体への漏洩の原因となる。これは、間違ったニードルによる不適切な検体採取、血液試料の過剰な混合、検体移送中における不適切な格納温度または手荒な扱いによって発生する可能性がある。試料を拒絶する代わりに、溶血が存在するときの結果を解釈するように臨床医に催促する警告と共に、結果を報告してもよい。
【0037】
「脂肪血症」(lipemic)または「脂肪血」(lipemia)という用語は、リポタンパク質およびカイロミクロンを含む大きな脂質粒子を有する血漿を指す。その結果、これらの試料は、試料混濁が増大し、凝固の長期化(prolongation)という結果が生ずる場合がある。干渉はアナライザ間で変化する可能性がある。混濁試料は、散乱、反射、または吸収により、試料を通過する光の強度減衰を招く。超遠心分離によって、試料から大きな脂質粒子を除去することができる。また、もっと高い希釈を使用することによって、脂血症の干渉を最小化することもできる。
【0038】
「黄疸性」(icteric)または「黄疸」(icterus)という用語は、高いレベルのビリブリンを有する血漿試料を指す。黄疸血漿試料は、集中治療室にいる患者、ならびに消化器、外科、小児科の患者からの試料において、高い発生率を有する。
【0039】
以下に、図面を参照して、開示する方法/システムの特定実施形態について説明する。
図1Aのブロック図に示すように、生体試料(1つまたは複数)を処理するための、開示する実験室システム1の実施形態は、複数の実験室器具10、10PRE、10LD、10AI、10PAと、通信ネットワーク70によって通信可能に接続された制御ユニット20とを含む。複数の実験室器具10、10PRE、10LD、10AI、10PAは、制御ユニット20からの命令にしたがって、生体試料に対して処理ステップを実行するように構成されている。
図1Bに示すように、開示する実験室システム1の他の実施形態によれば、複数の実験室器具10、10PRE、10LD、10AI、10PAは、分析前器具10PRE、試料入力ステーション12を含む、試料を装填するための実験室器具(1つまたは複数)10LD、分析後器具10PA、および分析計器AIも含むリストからの1つ以上の器具であってもよい。
【0040】
実験室システム1に含まれる分析前器具10preは、試料の遠心分離のための器具、キャッピング、ディキャッピング、またはリキャッピング器具、分注機(aliquoter)、一時的に生体試料またはそのアリコートを格納するためのバッファを含むリストからの1つ以上としてもよい。
【0041】
実験室システム1に含まれる分析後器具10preは、リキャッパ(recapper)、分析システムから試料を取り出すためのアンローダ、および/または試料を格納ユニットまたは生体廃棄物収集ユニットに移送するためのアンローダを含むリストからの1つ以上としてもよい。
【0042】
開示する実験室システム1の種々の実施形態によれば、複数の実験室器具10、10PRE、10LD、10AI、10PAは、 臨床および免疫化学アナライザ、凝集化学アナライザ、免疫化学アナライザ、尿アナライザ、核酸アナライザ、血液学用器具(hematology instruments)等のように、同一の器具または異なる器具であってもよい。
【0043】
更に他の実施形態によれば、試料入力ステーション12および複数の実験室器具10、10PRE、10LD、10AI、10PAは、コンベア・ベルト移送システム、または試料入力ステーション12と複数の実験室器具10、10PRE、10LD、10AI、10PAとの間において、生体試料またはそのアリコートを収容した試料管を移送するように構成された多次元試料管移送テーブルのような、移送システム15(
図1B参照)によって接続される。
【0044】
サンプル入力ステーション12は、試料管に含まれている生体試料を受け取るように構成されている。試料管は、個々にまたは試料管ラック内に装填することができ、各ラックは1つ以上の試料管を保持することができる。開示する実験室システム1の種々の実施形態によれば、試料入力ステーション12は、分析前実験室器具10PRE内に含まれるか、複数の実験室器具10、10PRE、10LD、10AI、10PA内に含まれるか、または試料10Idを装填するための専用実験室器具である。実験室器具10、10PRE、10LD、10AI、10PAの内少なくとも1つ、具体的には、試料入力ステーション12を含む試料装填用実験室器具10LDは、生体試料を識別するように構成されている。特定実施形態によれば、試料入力ステーション12は、試料管(1つまたは複数)に関連付けられた試料管識別子(1つまたは複数)に基づいて生体試料を識別するように構成された識別子リーダを含む。開示するシステムの実施形態によれば、試料管識別子はバーコードまたはRFIDタグである。対応して、識別子リーダはバーコード・リーダまたはRFIDリーダである。
【0045】
実験室システム1を動作させる方法の第1実施形態について、これより、
図2のフローチャート上に図示されるように説明する。
ステップ100において、複数の実験室器具10、10PRE、10LD、10AI、10PAの内の1つが生体試料を受け取って識別する。開示する方法/システムの特定実施形態によれば、生体試料を保持する試料管に貼り付けられた識別標識に基づいて、生体試料を識別する。
【0046】
一旦生体試料が識別されたなら、ステップ102において、制御ユニット20はデータベースからオーダー・リスト(order list)を引き出す。オーダー・リストは、生体試料に対応する複数のターゲットを含む。各ターゲットは、実験室器具10、10PRE、10LD、10AI、10PAの内の1つ以上によって生体試料に対して実行される1つ以上の処理ステップを定める。開示する方法/システムの特定実施形態によれば、生体試料から数個のアリコートを調製する、または同じ分析計器によって数種類の分析検査が実行されるというように、同じターゲットにおいて数個の処理ステップが実行されることもある。
【0047】
生体試料に対応する複数のターゲットを含むオーダー・リストを引き出すことに加えて、開示する方法/システムの特定実施形態によれば、ステップ103において、制御ユニット20は、更に、以下の内1つ以上を含むターゲットの種々のプロパティを引き出す/判定するように構成されている。
【0048】
-ターゲットを処理すべき緊急性を表すターゲット優先順位。例えば、STAT試料(例えば、救急処置)に対するターゲットは、他のターゲットよりも優先される。開示する方法/システムの更に他の実施形態によれば、制御ユニット20は、以下の内の1つ以上に基づいて複数のターゲットのターゲット優先順位を設定/調節する。
【0049】
-オーダー・リストに含まれる他のターゲット、
-それぞれのターゲットに対応する処理ステップを実行するために必要とされる消耗品(1つまたは複数)、
-実験室システム1の稼働時間(work shift)、および/または
-それぞれのターゲットの発生元(origin)(例えば、特定の病院または病院組織から出された検査指令の優先順位付け)。
【0050】
-ターゲットが強制検査かまたは非強制ターゲットかを示すインディケータ。このプロパティは、現在の試料ワークフロー内において、ターゲットが絶対に実行されなければならないのか、または何らかの理由(試料の分量が十分でないというような)で実行できない場合にはターゲットを延期/破棄してもよいのか否かを定める。全ての強制的ターゲットをワークフローに組み込むことができないと、そのワークフローが拒否される結果となる(「強制的ターゲット優先規則」に関しては以下を参照のこと)。
【0051】
-ターゲットの感度、特に、相互汚染に対する感度を示すターゲット感度レベル。例えば、核酸検査(NAT)を実行する分析計器は非常に感度が高く、したがって対応して高いターゲット感度レベルを有する。相互汚染の危険性に影響を及ぼす他の観点(aspect)に、生体試料の履歴、またはその特定のアリコートの履歴がある。例えば、特定のアリコートまたは主試料が、多用途液体処理針を使用する(使い捨てのピペットの代わりに)ターゲットによって処理されたことがある場合、ターゲット感度レベルがもっと高いターゲットによって、同じアリコートが処理されてはならない。何故なら、そのアリコートは潜在的に汚染されている可能性があるからである。
【0052】
-ターゲットに対する最小試料分量(volume)。この値は、特定のターゲットにしたがって全ての処理ステップを実行するために必要とされるサンプル分量の最小量を定める。
-推定処理時間。この値は、特定のターゲットにしたがって全ての処理ステップを実行するために必要とされる最小時間量を定める。
【0053】
ステップ104において、制御ユニット20は、ワークフロー戦略を選択する/決定する/引き出す。このワークフロー戦略にしたがって、生体試料を処理するための試料ワークフローを決定する第1試行を実行する。ワークフロー戦略は、生体試料を処理する際の1つ以上の優先規則を定める。優先規則の更に詳細な説明については、以下を参照のこと。
【0054】
開示する方法/システムの種々の実施形態によれば、制御ユニット20は、ワークフロー戦略をデータベースまたは参照テーブルから引き出す。データベースまたは参照表は、直接制御ユニット20の記憶デバイス上に格納されるか、これに通信可能に接続された記憶デバイスに格納される。
【0055】
開示する方法/システムの種々の実施形態によれば、ワークフロー戦略は、以下の優先規則の内1つ以上を含む。これらの優先規則にしたがって、試料ワークフローが制御ユニット20によって決定される。
【0056】
-最速応答時間(TAT)優先規則。
この優先規則を含む戦略は、試料ワークフローの処理速度を優先する。第1実施形態によれば、試料ワークフローの処理速度は、生体試料から作られるアリコートの数を増やすことによって優先され、これによって、一度に複数の実験室器具10、10PRE、10LD、10AI、10PAによる生体試料あるいは(respectively)そのアリコートの同時および/または時間重複処理を可能にする。したがって、ワークフロー戦略に基づいて試料ワークフローを決定するステップは、生体試料から作られるアリコートの数を最大化することによって、並列に処理されるターゲットの数を最大化するステップを含む。
図3は、実験室システム1を動作させるための開示方法の他の実施形態のフローチャートを示し、最速応答時間TAT優先規則を含むワークフロー戦略を表す。
【0057】
-全ターゲット完了優先規則。この優先規則を含む戦略は、オーダー・リスト上にある全てのターゲットの処理を可能にする試料ワークフローを決定することを目的とする。このようなワークフロー戦略は、例えば、処理速度よりも、ワークフローの完了を優先する。したがって、この戦略は、利用可能な生体試料に基づいて、具体的には、利用可能な試料の分量に基づいて、全てのターゲットが処理されることを確保するために、アリコートが少ないワークフロー、またはアリコートが完全にないワークフロー(ターゲット汚染感度が無視されない(violate)場合)に基づいて、ワークフローを決定する。一方、利用可能な試料の分量は十分であるが、試料の劣化を回避するために生体試料を素早く処理しなければならない場合(例えば、凝集検査)、このワークフロー戦略は、適時処理のために作られるアリコートの数および利用可能な試料分量(amount of available sample volume)の均衡を取る。
【0058】
図4は、実験室システムを動作させるための開示方法の更に別の実施形態のフローチャートを示し、全ターゲット処理優先規則を含むワークフロー戦略を表す。
-最小消耗品浪費優先規則。
【0059】
この優先規則を含む戦略は、ターゲットの処理のタイミングを、対応する実験室器具10、10PRE、10LD、10AI、10PAによって実行される検査のスケジュール、および/または対応する実験室器具のそれぞれのアッセイの品質制御の有効性と揃えることを目的とする。例えば、並列に(バッチで)複数の試料を処理することができる実験室器具10、10PRE、10LD、10AI、10PAがある。このような場合、開示する方法/システムの実施形態によれば、「最小消耗品浪費」優先規則を含む戦略は、識別された生体試料またはそのアリコートの処理のタイミングを、既に予定に組まれている処理と揃えて並列処理を可能にするように、どの処理ステップが既に実行する予定になっているか考慮に入れることによって、マルチウェル試料プレート(1つまたは複数)および/または制御/較正素材(mataerial)のような消耗品を節約する。
【0060】
-強制ターゲット優先規則
この優先規則を含む戦略は、強制ターゲットとして識別されたターゲットの処理を優先することを目的とする。具体的には、試料ワークフローが、利用可能な試料の分量で、少なくとも強制ターゲットの全てに対処できることを確保するために、生体試料の利用可能な試料分量の使用を考慮に入れる。
【0061】
尚、ワークフロー戦略が1つよりも多い優先規則を、特に、特定のワークフロー戦略に対する関連性(relevance)によって指令される優先規則を含んでもよいことは注記してしかるべきである。したがって、開示する方法/システムの更に他の実施形態によれば、ワークフロー戦略は、第1の優先順位として、「全ターゲット完了優先規則」と、「最速応答時間(TAT)優先順位」との組み合わせを含む。この組み合わせによって、ワークフロー戦略は、最速のTATを有するが、同時に、利用可能な試料分量が全てのターゲットを完了するには十分であるように、同時処理のために丁度同数のアリコートを作る試料ワークフローを決定する。
【0062】
一旦ワークフロー戦略が選択されたなら、ステップ106において、制御ユニット20は、対応するワークフロー承認基準をデータベースから引き出す。開示する方法/システムの種々の実施形態によれば、制御ユニット20は、ワークフロー承認基準をデータベースまたは参照表から引き出す。データベースまたは参照表は、直接制御ユニット20の記憶デバイス上に格納されるか、これに通信可能に接続された記憶デバイスに格納される。ワークフロー承認基準は、試料ワークフローが許容可能と見なされるために、試料ワークフローが満たさなければならない条件を定める。
【0063】
開示する方法/システムの実施形態によれば、ワークフロー承認基準は、以下のワークフロー評価規則(1つまたは複数)の内1つ以上を含む。
-試料ワークフローの全応答時間(TAT)の推定値が所定の許容TAT以下であるか否か判定する。本明細書において開示する実施形態によれば、全応答時間を推定するために、制御ユニット20は、オーダー・リスト内にあるターゲット毎に、各処理ステップに対応する推定処理時間を引き出す。その後、制御ユニット20は、特定のターゲットが生体試料のアリコートを使用して並列で処理されることを考慮して、全応答時間(TAT)を計算する。
【0064】
-全必要試料分量の推定値が、生体試料の利用可能な試料分量以下であるか否か判定する。本明細書において開示する実施形態によれば、全必要資料分量を推定するために、制御ユニット20は、オーダー・リスト内にある各ターゲットの各処理ステップに対応する、推定必要試料分量を引き出す。その後、制御ユニット20は、種々の試料コンテナ内における「無駄容積」(dead volume)のために、生体試料からの各アリコートの作成の結果通常試料分量の無駄が生ずることを考慮に入れて、総必要試料分量の推定値を計算する。更に、特定の実施形態(certain embodiments)によれば、制御ユニット20は、所定の確保分量(reserve volume)の生体試料を確保するように構成され、確保分量は、ワークフロー戦略およびオーダー・リストに基づいて試料ワークフローを決定するためには考慮されず、確保分量は今後のターゲットのためおよび/または保管の目的で取り置かれる。このような場合、推定総必要試料分量は、この確保分量を含む。
【0065】
-ターゲット感度が無視されていないか否か判定する。ターゲット感度が無視されるのは、アリコート(または主試料)に対して、感度が低い方のターゲットが処理ステップを実行した後に、感度が高い方のターゲットが同じアリコート(または主試料)に対して実行されることが、試料ワークフローにおいて予定に組まれている場合である。本明細書において開示する実施形態によれば、ターゲット感度が無視されていないか否か判定するために、制御ユニット20は、各ターゲットのターゲット感度レベルを引き出すように構成され、ターゲット感度レベルは、例えば、相互汚染に対するターゲットの感度がどの位であるかを示す。例えば、核酸検査(NAT)を実行する分析計器は非常に敏感であり、したがって、対応して非常に高いターゲット感度レベルを有する。相互汚染の危険性に影響を及ぼす他の観点に、生体試料またはその特定アリコートの履歴がある。例えば、特定のアリコートまたは主試料が、多用途液体処理針を使用する(使い捨てのピペットの代わりに)器具によって処理されたことがある場合、ターゲット感度レベルがもっと高いターゲットによって、同じアリコートが処理されてはならない。何故なら、そのアリコートは潜在的に汚染されている可能性があるからである。
【0066】
要約すると、ターゲット感度は、ターゲットの分析検査の種類、および/または生体試料/アリコートを扱う方法によって判定することができる。
開示する方法/システムの実施形態によれば、ワークフロー承認基準は、複数のワークフロー評価規則を含み、これらは1つ以上の論理演算子、例えば、AND、OR、XOR、NOT等によって組み合わせられる。
【0067】
本明細書において開示する実施形態によれば、次の2種類のワークフロー評価規則がある。
-満たされなければならないワークフロー許容規則、および
-試料ワークフローによって違反されてはならないワークフロー拒否規則。
【0068】
しかしながら、殆どの場合、ワークフロー拒否規則およびワークフロー許容規則は、対応する論理演算子を使用して、交換することができる。
一実施形態によれば、ワークフロー承認基準は、以下のように定められる。
【0069】
-ワークフロー評価規則a)は、試料ワークフローの総応答時間(TAT)の推定値が所定の許容TAT以下であるか?
「AND」
-ワークフロー評価規則b)は、総必要試料分量の推定値が、生体試料の利用可能な試料分量以下であるか?
「AND」
-ワークフロー評価規則c)は、ターゲット感度が無視されていないか?
したがって、試料ワークフローが許容できるのは、それがワークフロー承認基準を満たす場合であり、この実施形態では、ワークフロー評価規則a)、b)、およびc)の全てが満たされることが必要である。
【0070】
本明細書において開示する実施形態によれば、制御ユニット20は、生体試料の特性を判定するように構成され、ステップ101において、以下の内1つ以上を含む。
-生体試料の試料分量。
【0071】
試料分量は、液体レベル検出を使用して、および/またはデータベースから生体試料の分量を引き出すことによって決定される(生体試料の分量は、手作業で登録されたか、または任意の液体レベル検出手段によって決定されデータベースに保存された)。
【0072】
-生体試料の試料品質。
試料品質は、特に、生体試料の分析処理ステップでは非常に重要である。開示する方法/システムの実施形態によれば、試料品質は、分析前器具10PREによって、撮像または他の適した試料品質判定方法によってというようにして、判定される。共通する試料品質特性は、生体試料が、溶血性(hemolytic)、黄疸性(icteric)、または脂肪血性(lip emic)か否かを示す。
【0073】
-試料収集日時。
試料が収集された日時は、ターゲットの分析処理ステップの精度に重要な役割を果たす。特に、凝集検査、および血液学用器具(hematological instruments)は、経年変化した試料によって大きな影響を受ける。本明細書において開示する実施形態によれば、試料ワークフローは、制御ユニットによって、試料収集日時、および試料の経年変化に対するターゲットの感度を参考にして決定される。
【0074】
-患者を識別する指示。
多くの場合、手持ちの結果全てによって患者の総合的診断を容易にするために、特定の患者に属するオーダー・リストの全てのターゲットを同時に完了することが望ましいことがある。つまり、本明細書において開示する実施形態によれば、試料ワークフローは、制御ユニットによって、患者を識別する指示を参考にして決定される。
【0075】
-試料処理履歴。
このコンテキストでは、試料履歴とは、以前に実行された処理ステップによって、試料がどのような影響を受けた可能性があるかについての指示を意味する。具体的には、実験室器具による試料の潜在的な汚染が、試料履歴に含まれる。本明細書において開示する実施形態によれば、試料ワークフローは、制御ユニットによって、試料履歴および試料感度レベルを参考にして決定される。
【0076】
本明細書において開示する実施形態によれば、ワークフロー承認基準は、生体試料の1つ以上の特性に基づく1つ以上のワークフロー評価規則を含む。
オーダー・リストを引き出し、ワークフロー戦略を選択し、対応するワークフロー承認基準を引き出した後、ステップ108において、制御ユニット20は試料ワークフローを決定する。
【0077】
開示する方法/システムの実施形態によれば、試料ワークフローは以下の内1つ以上を定める。
-生体試料から調製するアリコートの数n。この数nは、生体試料をいくつの部分に分割するか定め、このような部分を生体試料のアリコートと呼ぶ。また、受け取ったままの生体試料を主試料と呼ぶ。特定の(certain)実施形態によれば、制御ユニット20は、生体試料の所定の確保分量を確保するように構成され、この確保分量は、ワークフロー戦略およびオーダー・リストに基づいて試料ワークフローを決定するためには考慮されない。確保分量は今後のターゲットのためおよび/または保管の目的で取り置かれる。選択したワークフロー戦略に応じて、アリコートの数が0になる場合もある。言い換えると、アリコートが作られず、全てのターゲットの全ての処理ステップが主試料に対して実行される。このようなワークフローをアリコートなしワークフロー(aliquotless workflow)とも呼ぶ。尚、アリコートなし試料ワークフローは、特定のオーダー・リストには実現可能であるが、相互汚染の危険性のために常に当てはまる訳ではないことは注記してしかるべきである。具体的には、1つの実験室器具が生体試料を汚染し、したがって他のもっと敏感な実験室器具が、生体試料が汚染されている危険性のために、もはや正確な分析結果を提供することができなくなるという危険性がある。このような場合、ワークフロー戦略は、相互汚染に関係する少なくとも1つのワークフロー評価規則を満たさず、ワークフロー戦略を再考した後に新たな試料ワークフローを決定し、アリコートを作成して、このもっと敏感なターゲットに割り当てる。あるいはまたは加えて、再考したワークフロー戦略は、同じアリコート(または主試料)に対して敏感な方のターゲットを先に実行し、その後に、それよりも敏感でないターゲットを実行する試料ワークフローを決定する。
【0078】
-アリコートまたは主試料の各ターゲットに対する割り当て。
一旦要求数nのアリコートが決定されたなら(前述のように、0の可能性もある)、前記ターゲットにおいて1つ以上の処理ステップを実行するために、アリコートまたは主試料を各ターゲットに割り当てる。
【0079】
-ターゲットを処理すべきシーケンス。
ターゲット処理シーケンスは、生体試料がターゲットによって処理される順序を定める。このシーケンスは、特に、同じアリコートまたは主試料が、感度および/または汚染危険度が異なる1つよりも多い実験室器具によって処理されるときに、非常に重要となる。
【0080】
-ターゲットの処理のタイミング。
開示する方法/システムの実施形態によれば、処理シーケンスに加えて、生体試料またはそのアリコートが処理されるタイミングも、試料ワークフローによって定められる。例えば、生体試料が最初に分析前器具10PREによって処理される必要があり、その後直ちに分析計器10AIによって処理されなければならない場合、タイミングは非常に重要となる。他の例をあげると、分析計器10AIに対して適正な試料調整を確保するために、培養器または遠心分離器のような分析前器具10PREにおいて、生体試料が非常に特定的な時間量を費やす必要があるときである。更に、試料劣化を考慮すると、ターゲットの処理のタイミングも関連がある。試料劣化は、特に、試料が温度制御エリアの外側にあるときに、その処理時間と相関付けられることが多い。その場合、特定の時間量の後、温度制御保管ユニットのような分析後器具10PAに、試料を転送しなければならない。
【0081】
他の例は、特定の処理ステップ、具体的には、希にしか実行されない特定の分析検査が、実験室システム1において比較的希に実行されるときである。このような場合、開示する方法/システムの実施形態は、時間を延長してそれぞれのターゲットを実行できないということを回避するために、ターゲットの処理のタイミングを、実験室システム1によって実行される検査のスケジュールと合わせる。
【0082】
また、ターゲットの処理のタイミングは、特定の実験室器具10、10PRE、10LD、10AI、10PA、特に、分析計器10AIの品質制御の有効性および/または較正を考慮すると、非常に重要となる。
【0083】
-除外ターゲットのリスト。
除外ターゲットのリストは、ワークフロー承認基準を満たし全てのターゲットを含む試料ワークフローを決定できなかった場合に、試料ワークフローに含まれない全てのターゲットを含む。
【0084】
図2から
図4に示したように、次のステップ110として、制御ユニット20は、試料ワークフローがワークフロー承認基準を満たすか否か判定する。開示する方法/システムの実施形態によれば、ワークフロー承認基準が複数のワークフロー評価規則を含み、1つ以上の論理演算子によってワークフロー評価規則が組み合わされる場合、ワークフロー評価規則の論理組み合わせとしてのワークフロー判断基準が評価される。「満たす」(satisfy/satisfies)という用語は、試料ワークフローに対してワークフロー評価規則の論理組み合わせを適用した結果、「真」ステートメントが得られたという事実を指す。
【0085】
試料ワークフローがワークフロー承認基準を満たす場合、ステップ116において、制御ユニット20は、実験室器具10、10PRE、10LD、10AI、10PAに、試料ワークフローにしたがって生体試料を処理するように命令する。オーダー・リストにおけるターゲット、および制御ユニット20によって決定された試料ワークフローに対応して、複数の実験室器具10、10PRE、10LD、10AI、10PAに、生体試料および/またはそのアリコートに対して、分析前、分析後、および分析処理ステップを実行するように命令する。
【0086】
しかしながら、試料ワークフローがワークフロー承認基準を満たさない場合、制御ユニット20は、ワークフロー戦略を再考し(ステップ112)、ワークフロー承認基準を再考し(ステップ114)、試料ワークフローが(再考した)ワークフロー承認基準を満たすまで、(再考した)ワークフロー戦略およびオーダー・リストに基づいて、試料ワークフローを再度決定する(ステップ108)ように構成されている。
【0087】
開示する方法/システムの実施形態によれば、ワークフロー戦略を再考するステップは、以下のような、生体試料を処理するときにおける1つ以上の優先規則の内少なくとも1つの変更を含む。
【0088】
-ターゲットを処理すべきシーケンスを再考する、および/または、
-ターゲットの処理のタイミングを再考する、および/または、
-ワークフロー承認基準を満たし全てのターゲットを含む試料ワークフローを決定できなかった場合、試料ワークフローに含まれない除外ターゲットのリストを再考する、および/または
-生体試料から調製されるアリコートの数nを再考する、および/または、
-アリコートまたは主試料の各ターゲットへの割り当てを再考する。
【0089】
「全ターゲット完了優先規則」に対応して、WF戦略を再考するステップ112は、全てのターゲットに対する総必要試料分量の推定値が、生体試料の利用可能な試料分量以下になるまで、生体試料から作られるアリコートの数を減らすステップを含む。あるいはまたは加えて、WF戦略を再考するステップ112は、分析処理ステップを含むターゲットを、試料分量が少なくて済む分析計器10AIに割り当てるステップを含む(例えば、異なるハードウェア、異なる希釈レベルのため)。
【0090】
「最速TAT優先規則」に対応して、WF戦略を再考するステップ112は、推定した処理時間が短い方の分析計器10AIに、分析処理ステップを含むターゲットを割り当てるステップを含む。
【0091】
「強制ターゲット優先規則」に対応して、WF戦略を再考するステップ112は、生体試料の利用可能な試料分量が、全てのターゲットに対する総必要試料分量の推定値未満である場合、試料ワークフローから非強制ターゲットを除外するステップを含む。
【0092】
開示する方法/システムの実施形態によれば、ワークフロー承認基準を再考するステップ114は、ワークフロー評価規則(1つまたは複数)の内少なくとも1つの変更を含み、ワークフロー評価規則(1つまたは複数)は、ワークフロー戦略の優先規則(1つまたは複数)を考慮して再考される。
【0093】
「全ターゲット完了優先規則」に対応して、ワークフロー承認基準を再考するステップ114は、許容可能な推定TATを増大させるステップを含む。
「強制ターゲット優先規則」に対応して、ワークフロー承認基準を再考するステップ114は、ワークフロー評価規則から非強制ターゲットを除外することによって、強制ターゲットを非強制ターゲットよりも優先するステップを含む。
【0094】
本明細書において開示する実施形態によれば、ワークフロー戦略を再考するステップ112および/またはワークフロー承認基準を再考するステップ114は、直前の繰り返しの試料ワークフローによって満たされなかったワークフロー評価規則(1つまたは複数)に従う。言い換えると、ワークフロー評価規則が満たされない場合、次の繰り返しにおいて、もはやその判断基準に違反しないように、ワークフロー戦略を再考する。しかしながら、これが可能でない場合、ワークフロー評価規則も再考され、この再考によって、ワークフロー評価規則が一層寛大(permissive)になる、即ち、緩くなる(less strict)ことが多い。例えば、最速TAT優先規則では、ワークフロー評価規則が寛大になる程、許容処理時間を長くすることが許される。
【0095】
更に他の実施形態によれば、ワークフロー戦略を再考するステップ112、ワークフロー承認基準を再考するステップ114、および試料ワークフローを決定するステップ108は、多くとも所定の最大回数の繰り返ししか実行されない。この所定の最大回数の繰り返し試行の後でも試料ワークフローが未だワークフロー承認基準を満たさない場合、制御ユニット20は、実験室システム1を制御して、
-生体試料をエラー・ターゲットに導くおよび/または試料ワークフローを決定する際のエラーを示す信号を生成する、および/または
-対応する試料管識別子を有する空のアリコート管を作り、操作員に追加の試料分量を空のアリコート管に供給するように命令することを示す信号を生成する、および/または
-利用可能な試料分量に基づいて、できるだけ多くの生体試料のアリコートを作り、主試料を含む試料管をエラー・ターゲットに導き、操作員に追加の試料分量を供給する命令を示す信号を生成する、および/または
-最大回数の繰り返しの後、試料ワークフローがワークフロー承認基準を満たさないことを示す警報信号を生成する。
【0096】
このコンテキストでは、繰り返しとは、一連のステップ、ワークフロー戦略を選択し/再考するステップ(104)、ワークフロー承認基準を引き出す/再考するステップ(106)、および試料ワークフローを決定/再決定するステップ(108)を指す。
【0097】
更に開示および提案するのは、 本明細書に含まれる(enclosed)実施形態の1つ以上において、プログラムがコンピュータまたはコンピュータ・ネットワーク上で実行されたときに、本発明にしたがって方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータ・プログラムである。具体的には、コンピュータ・プログラムをコンピュータ読み取り可能データ担体上に格納することができる。つまり、具体的には、以上で示したような1つの方法ステップ、1つよりも多い方法ステップ、または全ての方法ステップでさえも、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークを使用することにより、好ましくは、コンピュータ・プログラムを使用することにより、実行することができる。
【0098】
更に開示および提案するのは、本明細書に含まれる(enclosed)実施形態の1つ以上において、プログラムがコンピュータまたはコンピュータ・ネットワーク上で実行されたときに、本開示にしたがって方法を実行するためのプログラム・コード手段を有するコンピュータ・プログラム製品である。具体的には、プログラム・コード手段はコンピュータ読み取り可能データ担体上に格納することができる。
【0099】
更に開示および提案するのは、データ構造が格納されているデータ担体であり、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークの作業メモリまたは主メモリにロードされるというように、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークにロードされた後、本明細書において開示した実施形態の1つ以上にしたがって方法を実行することができる。
【0100】
更に開示および提案するのは、プログラムがコンピュータまたはコンピュータ・ネットワーク上で実行されたときに、本明細書において開示した実施形態の1つ以上にしたがって方法を実行するために、機械読み取り可能担体上に格納されたプログラム・コード手段を有するコンピュータ・プログラム製品である。本明細書において使用する場合、コンピュータ・プログラム製品とは、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に、紙のフォーマットまたはコンピュータ読み取り可能データ担体上というように、任意のフォーマットで存在する。具体的には、コンピュータ・プログラム製品は、データ・ネットワークを通じて配布することができる。
【0101】
更に開示および提案するのは、本明細書において開示した実施形態の1つ以上にしたがって方法を実行するために、コンピュータ・システムまたはコンピュータ・ネットワークによって読み取り可能な命令を含む変調データ信号である。
【0102】
本発明のコンピュータ実装された態様に言及するときは、本明細書において開示した実施形態の1つ以上による方法の方法ステップの内1つ以上、または全ての方法ステップでさえも、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークを使用することにより、実行することができる。このように、一般に、データの提供および/または操作を含む方法ステップはいずれも、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークを使用することによって実行することができる。一般に、これらの方法ステップは、通例、試料を供給するというような手作業および/または実際の測定を実行する特定の態様を必要とする方法ステップを除いて、あらゆる方法ステップを含むことができる。
【0103】
更に本明細書によって開示および提案するのは、次の通りである。
-少なくとも1つのプロセッサを含むコンピュータまたはコンピュータ・ネットワークであって、このプロセッサが、本明細書において説明した実施形態の1つにしたがって方法を実行するように構成される(adapted)、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワーク。
【0104】
-コンピュータにロード可能なデータ構造であって、このデータ構造がコンピュータ上で実行されている間に、本明細書において説明した実施形態の1つにしたがって方法を実行するように構成される(adapted)、データ構造。
【0105】
-コンピュータ・プログラムであって、このプログラムがコンピュータ上で実行されている間に、本明細書において説明した実施形態の1つにしたがって、前述の方法を実行するように構成される(adapted)、コンピュータ・プログラム。
【0106】
-コンピュータ・プログラムであって、このコンピュータ・プログラムがコンピュータまたはコンピュータ・ネットワーク上で実行されている間に、本明細書において説明した実施形態の1つにしたがって、前述の方法を実行するためのプログラム手段を含む、コンピュータ・プログラム。
【0107】
-前出の実施形態によるプログラム手段を含むコンピュータ・プログラムであって、プログラム手段が、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体上に格納される、コンピュータ・プログラム。
【0108】
-記憶媒体であって、この記憶媒体上にデータ構造が格納され、このデータ構造が、コンピュータまたはコンピュータ・ネットワークの主および/または作業ストレージにロードされた後、本明細書において説明した実施形態の1つにしたがって方法を実行するように構成される(adapted)、記憶媒体。
【0109】
-プログラム・コード手段を有するコンピュータ・プログラム製品であって、このプログラム・コード手段がコンピュータ上またはコンピュータ・ネットワーク上で実行されると、本明細書おいて説明した実施形態の1つにしたがって前述の方法を実行するために、プログラム・コード手段を記憶媒体上に格納することができる、または格納される、コンピュータ・プログラム製品。
【0110】
尚、以下の特許請求の範囲に定められる、本発明の範囲から逸脱することなく、これまでに説明した具体的な構造に基づいて、多くの変形も採用できることは理解されよう。
【符号の説明】
【0111】
1 実験室システム
10 実験室器具
10PRE 分析前実験室器具
10LD 試料装填用実験室器具
10A0I 分析実験室器具
10PA 分析後実験室器具
12 試料入力ステーション
14 分注機
15 試料移送システム
20 制御ユニット
30 ホスト・システム
70 通信ネットワーク