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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】餅調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 43/046 20060101AFI20230619BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20230619BHJP
【FI】
A47J43/046
A23L7/10 102
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018232683
(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2020092823
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】有井 真吾
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-181542(JP,A)
【文献】特開2014-052108(JP,A)
【文献】特開2015-051223(JP,A)
【文献】実開昭60-149360(JP,U)
【文献】特開2012-100794(JP,A)
【文献】特開2002-085951(JP,A)
【文献】特開2002-051920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 42/00-44/02
A23L 7/00- 7/104
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、回転羽根と、モータと、ヒータと、制御手段と、を備える餅調理器であって、
前記容器内に餅米および水がセットされた状態において、前記制御手段は、前記容器の温度を前記ヒータで制御し、また前記容器内に取り付けられた前記回転羽根を前記モータによって所定の回転速で回転させて、前記モータの消費電力の監視を開始し、前記モータの消費電力の経時変動が上昇から下降へ転じる時点を監視する、ことを特徴とする餅調理器。
【請求項2】
前記容器の内面には、前記回転羽根の回転軸から前記容器の内面までの距離が前記回転羽根の回転方向に従って離れていく箇所が複数ある、ことを特徴とする請求項1記載の餅調理器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記モータの消費電力の監視を開始してから前記時点までの間の時間内の短い一定の時間において、前記回転羽根を前記モータによって前記所定の回転速よりも高回転させる、ことを特徴とする請求項1または2記載の餅調理器。
【請求項4】
前記制御手段は、前記時点を監視した後、前記ヒータおよび前記モータを停止させた状態とし、その後、前記ヒータによって前記容器を所定時間加熱した後、前記回転羽根を前記モータによって前記所定の回転速よりも高回転させる、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の餅調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、餅米を炊き上げた後、その餅米を搗き上げて餅を作る餅調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭で餅を作る餅調理器として、ボイラーで発生した蒸気をホッパーに供給して餅米を蒸し上げた後、回転羽根を回転して搗き上げる蒸し搗き方式が知られている。この方式の調理器は、調理前にもち米を12時間程度かけて十分に吸水させる必要があるため、すぐに餅をつくることが出来ない。また、搗き工程を実行する前に蓋を開放する手間が発生するため、予約タイマーでできあがり時間を設定することや搗き上がった餅を保温して収容することが出来ない。
【0003】
そこで、特許文献1に示すような、餅米を炊き上げた後、餅を搗き上げる炊き搗き方式の餅調理器が提案されている。特許文献1の炊き搗き方式では、蒸し搗き方式のように事前に餅米を十分に吸水させておくかわりに、予熱工程で加熱しながら米粒に吸水させ、炊飯工程で米粒をα化し、冷却工程で余分の水分が除いてから、ねり工程でねり上げて餅としている。
【0004】
この特許文献1では、予熱-撹拌-炊飯-冷却-ねりといった各工程を、時間の経過に伴い順次移行させている。しかし、予熱工程を時間によって管理した場合、餅米の種類等によって吸水の程度に差が生じやすい。しかも、予熱工程中に撹拌が行われないため、容器内の米粒に温度ムラが生じ、米粒全体を均一に糊化させることが難しい。その結果、予熱工程後の撹拌により糊化が不十分な米粒が糊化が進行した餅米と混ざりあうことで吸水が不十分なまま粒残りし、食味の悪い餅となる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許2610504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、米粒の吸水状況を見極めた上で、炊き混ぜ工程の終了までの時間をセットし、材料の量や種類に関係なく、仕上がりのいい餅を作ることができる餅調理器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために本発明は、餅米や水などの材料が収容される調理容器と、該調理容器に取り付けられる回転羽根と、該回転羽根を駆動する駆動手段と、材料を加熱する加熱手段と、駆動手段と加熱手段とを制御して、調理容器内の材料を加熱しながらかき混ぜて餅米を炊き上げる炊き混ぜ工程と、炊き上げた餅米を練り上げる搗き工程とを実行する制御手段とを備え、制御手段は、炊き混ぜ工程において、駆動手段の駆動状態に基づいて餅米が所定の吸水状況に達したことを判断し、この判断ポイントから炊き混ぜ終了までの工程時間を材料量に関わらず一定としたことを特徴とする。
【0008】
制御手段は、炊き混ぜ工程における駆動手段の消費電力の経時変動が所定値よりも下降したら餅米が所定の吸水状況に達したと判断する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の餅調理器によれば、餅米の吸水状況を判断した上で、規定時間炊き混ぜ工程を実行するようにしたので、米の種類や量に関係なく、安定した餅米の炊飯を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】餅調理器の外観を示す説明図である。
図2】餅調理器の内部構成を説明図である。
図3】調理容器9の平面視を示す説明図である。
図4】餅調理器の制御系を示すプロック図である。
図5】炊き搗きコースのタイムチャート図である。
図6】炊き搗きコースのフローチャート図である。
図7】再練りコースのタイムチャート図である。
図8】再練りコースのフローチャート図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る餅調理器の構造について、図1図3を用いて説明する。
1は本体ケースで、底部に基台2を固定し、該基台2上に調理室3とモータ4を並べて載置している。5は蓋体で、本体ケース1の上面における調理室3側の上面に取り付けられ、本体ケース1の背面に設けたヒンジに開閉自在で、且つ着脱自在に取り付けられている。6は基板ケースで、モータ4の上面に前記蓋体5と並列して固定され、内部に回路基板7を備え、上面に操作パネル8を備えている。
【0012】
9は調理容器で、円筒状・角筒状・ホッパー状いずれかの形状をなし、底面下部に円筒状の取付部10を取り付けている。調理容器9の底面中心には、回転軸11が設けられ、回転軸11の上端に回転羽根12、下端に上カップリング13がそれぞれ取り付けられている。調理容器9の内面には、内側に膨出させたリブ14が形成され、容器の底面付近から容器の中心高さ付近に渡って複数箇所に設けられる。リブ14は、図3に示すように、水平断面で緩傾斜と急傾斜の斜面を形成した凸形状をなし、容器内面における回転羽根12の回転方向に対してリブ14の上り面を急傾斜、下り面を緩傾斜としている。
【0013】
15は容器支持部で、調理室3の底面に設けられ、調理容器9の取付部10が内嵌する円筒状をなしている。容器支持部15は、底部中心に回転軸16を貫通し、回転軸16の上端に調理容器9の上カップリング13と係合する下カップリング17が取り付けられ、回転軸16の下端に大プーリ18が取り付けられている。19はモータ4の駆動軸で、先端には小プーリ20が設けられ、ベルト21を介して回転軸16の大プーリ18に連係されている。22はヒータで、調理室3の内部下方において調理容器9を囲むように略水平に配設されている。23は温度センサで、調理室3の壁面に取り付けられ、調理室3の内部温度を監視している。その他、24は調理室3内の様子を確認する覗き窓、25は調理室3内の蒸気を排気する蒸気排出口、26は蓋体5の開く操作レバー、27は本体ケース1の脚部である。
【0014】
このように構成する餅調理器は、主に炊き搗き方式で餅を作る餅つき機として用いられる。調理に際し、調理容器9の回転軸11に回転羽根12を取り付け、生の餅米と水をセットしたら、調理容器9の取付部10を調理室3の容器支持部15に嵌めて、調理容器9を調理室3に収容する。取付部10と容器支持部15は、バヨネット結合等の周知の構造で連結され、この連結により上カップリング13と下カップリング17が係合し、モータ4の回転駆動が回転羽根12に伝動されるようになる。その後、操作パネル8で選択した調理プログラムを実行し、モータ4とヒータ22を制御して餅を作る。
【0015】
図4は調理器の制御系を示すプロック図である。
回路基板7は、マイコンボード28とパワーボード29とを備えている。マイコンボード28には、餅調理コースの実行プログラムが記憶されたメモリ30が内蔵されるとともに、操作パネル8とパワーボード29が接続されており、パワーボード29には、ブザー31が設けられるとともに、モータ4・ヒータ22・温度センサ23がそれぞれ接続されている。
【0016】
操作パネル8は、表示パネル32と、餅調理コースを選択するコースキー33、餅のかたさを選択するかたさキー34と、調理完了時間を選択する予約キー35と、調理を開始する開始キー36と、調理の停止や設定の取消を行う停止キー37とを備えている。コースキー33では、餅米を炊いてから搗き上げて餅を作る炊き搗きコースと、この炊き搗きコースを時短で実行するスピードコースと、市販の切り餅や硬くなった餅をつきたての状態に戻す再練りコースと、調理前の餅米を洗米する洗米コースとが選択できる。かたさキー34では、できあがった餅の軟らかさを「かため・ふつう・やわらかめ」の三段階から選択できる。予約キー35では、餅のできあがりまでの時間を1時間後~12時間後までの範囲で30分毎に設定できる。
【0017】
これにより、マイコンボード28では、操作パネル8で選択される餅調理コースに応じてメモリ30からプログラムを読み出し、このプログラムに応じてパワーボード29に接続されたモータ4やヒータ22を制御する。以下、餅調理コースの<炊き搗きコース>と、<再練りコース>について説明する。
【0018】
<炊き搗きコース>
このコースは、調理容器に餅米と水をセットするだけで、全自動で餅を作るコースである。ここでは、調理容器に餅米と、合数に応じた量の水を入れ、操作パネル8のコースキー33で「炊き搗き」、かたさキー34で「ふつう」を選択した場合を示す。
【0019】
開始キー36を入力して調理が開始すると、炊き混ぜ工程が順次実行される。
炊き混ぜ工程は、ヒータ22と温度センサ23で調理室内を所定温度(140℃)に保持するよう温度制御(1)しながら、モータ4を低速駆動(2)して回転羽根12をゆっくりと回転させ、餅米に吸水させていく。この吸水区間では、餅米を加熱しながらゆっくりとかき混ぜることで、調理容器内の餅米が位置替えされ、米全体がムラなく吸水される。尚、モータ4を所定のタイミングで高速駆動させて回転羽根12を素早く回転させる動作を実行することで、餅米の部分的な焦げ付きを防止している。
【0020】
米粒が糊化してくると、米の粘性によってモータの回転負荷が高くなり、消費電力は次第に上昇していくが、更に糊化が進むと、米が1つの塊にまとまってくるため、モータの回転負荷が断片的に低下し、消費電力が下降に転ずる。そこで、消費電力の経時変動が所定値よりも下降したら餅米が所定の吸水状況に達したと判断(3)して、規定時間T1のタイマーをセットして、ヒータ22と温度センサ23による温度制御とモータ4による低速駆動を規定時間T1の間、餅米を炊飯していく。この炊飯区間では、米粒の芯部に渡って水分が浸透され、米粒の糊化をより進行させる。また、米粒をゆっくりとかき混ぜることで、糊化する前の餅米が糊化が進んだ餅米と混ざり込んで粒残りすることを防ぐ。
【0021】
規定時間T1が経過(4)すると、モータ4とヒータ22を停止(5)し、規定時間T2の間、餅米の蒸らし工程を行う。蒸らし工程では、米粒の加熱とかき混ぜを停止することで、米粒の性状を安定させ、米粒内の水分バランスが均一化され、餅米のコシと弾力を引き出す。
【0022】
規定時間T2が経過(6)すると、モータ4を高速駆動(7)して回転羽根12を回転させ、規定時間T3の間、炊きあがった餅米を搗き上げる搗き工程が実行される。搗き工程は、調理容器9の内面に膨出したリブが抵抗となって餅に捻転・展延の作用を与えることで、コシのある餅が搗き上げる。規定時間T3が経過(8)すると、モータ4を停止(9)して調理終了となり、ブザーを発動して報知する。
【0023】
搗き上がる餅の軟らかさは、搗き工程の開始と同時に駆動するヒータ22の時間によって調整する。餅米を再加熱することで、餅米の水分量が蒸気として排出されるため、搗き上がったときに餅をかために仕上げることができる。そのため、かたさキー34で「ふつう」が選択されると、再加熱時間t1を設定し、搗き工程開始から時間t1の間、ヒータ22を駆動する。尚、かたさキー34で「かため」が選択されると、時間t1より長い再加熱時間t2を設定する一方、かたさキー34で「やわらかめ」が選択されると、再加熱は行わない。
【0024】
このように、炊き搗きコースは、炊き混ぜ→蒸らし→搗きの各工程を順次実行して餅を作るコースである。炊き混ぜ工程は、餅米が所定の吸水状況になったと判断してから、規定時間の炊飯を行うことを特徴としている。これにより、米量・水量・米の種類等に関係なく、安定した仕上がりの餅を提供することができる。
【0025】
また、搗き工程では、搗き始めに餅米を再加熱する時間によって、仕上がりの餅の軟らかさを調整することを特徴としている。これにより、搗き工程の時間は変えることなく、餅の軟らかさを変えることができる。
【0026】
尚、上記した処理(3)では、消費電力の経時変動が所定値よりも下降したら餅米が所定の吸水状況に達したと判断しているが、これは特に限定されるものではなく、モータ4の電流値や電圧値に基づいて判断しても良い。
【0027】
<再練りコース>
このコースは、市販の切り餅もしくは家庭で硬くなった餅を軟らかいつきたての餅に戻すためのコースである。調理室内を所定温度(140℃)に保持するよう温度制御(1)しながら、ここでは、調理容器に市販の切り餅2~7枚と、枚数に応じた量の水を入れ、操作パネル8のコースキー33で「再練り」を選択した後、開始キー36を入力すると調理が開始する。
【0028】
調理が開始すると、ヒータ22が駆動(10)して調理室内を所定温度(140℃)に加熱する。調理室内が所定温度に到達(11)したら、調理室内を所定温度(140℃)に保持するよう温度制御(12)しながら、モータ4を低速で駆動(13)して回転羽根12を回転させる。これにより、切り餅は、加熱された水とともにゆっくり撹拌されることで軟化していく。モータ4の低速駆動から規定時間T4が経過(14)すると、切り餅が1つの塊にまとまってくるので、この時点からモータ4を高速駆動(15)して餅を練り上げる。規定時間T5が経過(16)すると、モータ4とヒータ22を停止(17)して調理終了となり、ブザーを発動して報知する。尚、搗き工程中において、所定のタイミングでブザーを発動し、餅に混ぜ込む具材の投入を促す報知を行ってもよい。
【0029】
以上のように、本発明の餅調理器は構成され、炊き搗き方式で餅を作ることができる。むろん、調理容器に回転羽根を備えた構成であるため、パン・うどん等の生地作りをしたり、うるち米の炊飯を行うこともできる。また、主にパン焼き器・炊飯器・オーブンとして機能する調理器に、餅調理コースを追加した場合であっても、本発明の餅調理機能を付加することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 本体ケース
3 調理室
4 モータ
9 調理容器
22 ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8