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特許7297457画像処理装置、X線診断装置及び超音波診断装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】画像処理装置、X線診断装置及び超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20230619BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20230619BHJP
   A61B 8/08 20060101ALI20230619BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20230619BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20230619BHJP
   A61F 2/24 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
A61B6/00 370
A61B6/00 331E
A61B6/00 360Z
A61B6/03 360J
A61B8/08
A61B8/14
A61B34/20
A61F2/24
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019022526
(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公開番号】P2020069375
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】16/177,043
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519049064
【氏名又は名称】リチャード スモーリング
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】リチャード スモーリング
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー クルス-ギルクリスト
(72)【発明者】
【氏名】坂口 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0197354(US,A1)
【文献】特開2012-081202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14、8/00-8/15、34/00-90/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め複数の方向から撮像された被検体の心臓領域の第1医用画像と、前記心臓領域がリアルタイムに撮像された第2医用画像とを記憶する少なくとも1つの記憶部と、
前記第1医用画像から心腔内の心臓弁が有する弁葉間の境界を示す弁境界線と、カテーテルを挿入するための前記心腔の内壁の挿入点とをそれぞれ設定し、
前記内壁から離れて前記挿入点と前記弁境界線の端部とを個別に結ぶ複数の安全線を生成することにより、前記弁境界線と前記安全線とを含むナビゲーション図形を生成し、
前記ナビゲーション図形を前記第2医用画像に重畳して重畳画像を生成し、
前記重畳画像を表示部に表示させる処理回路と
を具備し、
前記処理回路は、前記重畳画像上で前記カテーテルが前記内壁に挿入された後には、前記挿入点に代えて前記挿入された位置と前記弁境界線の端部とを個別に結ぶように前記複数の安全線を更新することにより、前記ナビゲーション図形を更新する、画像処理装置。
【請求項2】
予め複数の方向から撮像された被検体の心臓領域の第1医用画像と、前記心臓領域がリアルタイムに撮像された第2医用画像とを記憶する少なくとも1つの記憶部と、
前記第1医用画像から心腔内の心臓弁が有する弁葉間の境界を示す弁境界線と、カテーテルを挿入するための前記心腔の内壁の挿入点とをそれぞれ設定し、
前記内壁から離れて前記挿入点と前記弁境界線の端部とを個別に結ぶ複数の安全線を生成することにより、前記弁境界線と前記安全線とを含むナビゲーション図形を生成し、
前記ナビゲーション図形を前記第2医用画像に重畳して重畳画像を生成し、
前記重畳画像を表示部に表示させる処理回路と
を具備し、
前記処理回路は、前記重畳画像上で前記カテーテルが前記内壁に挿入された後には、前記挿入点に代えて前記カテーテルの先端と前記弁境界線の端部とを個別に結ぶように前記複数の安全線を更新することにより、前記ナビゲーション図形を更新する、画像処理装置。
【請求項3】
前記ナビゲーション図形は、前記複数の安全線と前記弁境界線とにより囲まれた曲面を形成する、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ナビゲーション図形は、前記複数の安全線と前記弁境界線とのうちの2つを互いに結ぶ三点を角とする図形である、請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記ナビゲーション図形が形成する面の投影面積が最小となる第1方向から前記第2医用画像が撮像された場合に、前記複数の安全線は互いに略重なって前記カテーテルの軌道を示唆する、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記ナビゲーション図形が形成する面の投影面積が最大となる第2方向から前記第2医用画像が撮像された場合に、前記複数の安全線はそれぞれ前記カテーテルの軌道の限界を示唆する、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記処理回路は、前記心臓弁における少なくとも1つの逆流位置を前記弁境界線上に設定し、前記逆流位置を示す図形を含むように前記弁境界線を更新し、前記更新した弁境界線と前記安全線とを含むように前記ナビゲーション図形を生成する、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記処理回路は、前記心臓弁における少なくとも1つの逆流位置を前記弁境界線上に設定し、前記逆流位置と前記挿入点とを結んで前記カテーテルの先端の少なくとも1つの軌道を更に生成し、前記軌道を更に含むように前記ナビゲーション図形を生成する、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記心腔は左心房であり、
前記心臓弁は僧帽弁であり、
前記内壁は心房中隔であり、
前記カテーテルの先端は、前記逆流位置で前記弁葉を留めるためのクリップを着脱自在に保持しており、
前記処理回路は、複数の逆流位置が設定されたとき、前記挿入点を通るカテーテルの先端の進行に応じて前記先端と前記複数の逆流位置のいずれかとを結ぶように前記軌道を更新する更新処理を実行し、全ての逆流位置にクリップが留置されるまで前記更新処理を繰り返し実行する、請求項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記第1医用画像は、X線ボリューム画像又は複数の2次元X線造影画像であり、前記第2医用画像は、X線透視画像である、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記第1医用画像は、超音波ボリューム画像であり、前記第2医用画像は、X線透視画像である、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記第1医用画像は、超音波ボリューム画像であり、前記第2医用画像は、超音波画像である、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項13】
被検体に対してX線を照射するX線照射部と、
前記X線を検出するX線検出部と、
前記X線検出部の出力に基づいて、前記被検体の心臓領域のX線画像をリアルタイムに生成する画像生成回路と、
予め複数の方向から撮像された前記心臓領域の第1医用画像を記憶し、前記生成されたX線画像を第2医用画像として記憶する少なくとも1つの記憶部と、
前記第1医用画像から心腔内の心臓弁が有する弁葉間の境界を示す弁境界線と、カテーテルを挿入するための前記心腔の内壁の挿入点とをそれぞれ設定し、
前記内壁から離れて前記挿入点と前記弁境界線の端部とを個別に結ぶ複数の安全線を生成することにより、前記弁境界線と前記安全線とを含むナビゲーション図形を生成し、
前記ナビゲーション図形を前記第2医用画像に重畳して重畳画像を生成し、
前記重畳画像を表示部に表示させる処理回路と
を具備し、
前記処理回路は、前記重畳画像上で前記カテーテルが前記内壁に挿入されたときには、前記挿入点に代えて前記挿入された位置と前記弁境界線の端部とを個別に結ぶように前記複数の安全線を更新することにより、前記ナビゲーション図形を更新する、X線診断装置。
【請求項14】
被検体に対してX線を照射するX線照射部と、
前記X線を検出するX線検出部と、
前記X線検出部の出力に基づいて、前記被検体の心臓領域のX線画像をリアルタイムに生成する画像生成回路と、
予め複数の方向から撮像された前記心臓領域の第1医用画像を記憶し、前記生成されたX線画像を第2医用画像として記憶する少なくとも1つの記憶部と、
前記第1医用画像から心腔内の心臓弁が有する弁葉間の境界を示す弁境界線と、カテーテルを挿入するための前記心腔の内壁の挿入点とをそれぞれ設定し、
前記内壁から離れて前記挿入点と前記弁境界線の端部とを個別に結ぶ複数の安全線を生成することにより、前記弁境界線と前記安全線とを含むナビゲーション図形を生成し、
前記ナビゲーション図形を前記第2医用画像に重畳して重畳画像を生成し、
前記重畳画像を表示部に表示させる処理回路と
を具備し、
前記処理回路は、前記重畳画像上で前記カテーテルが前記内壁に挿入された後には、前記挿入点に代えて前記カテーテルの先端と前記弁境界線の端部とを個別に結ぶように前記複数の安全線を更新することにより、前記ナビゲーション図形を更新する、X線診断装置。
【請求項15】
前記ナビゲーション図形は、前記複数の安全線と前記弁境界線とにより囲まれた曲面を形成する、請求項13又は14に記載のX線診断装置。
【請求項16】
前記ナビゲーション図形は、前記複数の安全線と前記弁境界線とのうちの2つを互いに結ぶ三点を角とする図形である、請求項15に記載のX線診断装置。
【請求項17】
被検体に向けて超音波を送信し、前記超音波の反射波を受信する超音波プローブと、
前記超音波プローブの出力に基づいて、前記被検体の心臓領域の超音波画像をリアルタイムに生成する画像生成回路と、
予め複数の方向から撮像された前記心臓領域の第1医用画像を記憶し、前記生成された超音波画像を第2医用画像として記憶する少なくとも1つの記憶部と、
前記第1医用画像から心腔内の心臓弁が有する弁葉間の境界を示す弁境界線と、カテーテルを挿入するための前記心腔の内壁の挿入点とをそれぞれ設定し、
前記内壁から離れて前記挿入点と前記弁境界線の端部とを個別に結ぶ複数の安全線を生成することにより、前記弁境界線と前記安全線とを含むナビゲーション図形を生成し、
前記ナビゲーション図形を前記第2医用画像に重畳して重畳画像を生成し、
前記重畳画像を表示部に表示させる処理回路と
を具備する超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像処理装置、X線診断装置及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、心臓弁の疾患に対する診断又はカテーテル治療に関して、心臓領域の画像を生成する様々な医用画像診断装置が知られている。この種の医用画像診断装置としては、超音波診断装置及びX線診断装置がある。
【0003】
超音波診断装置は、例えば、超音波ドプラ法を用い、心臓弁の疾患により血液の逆流が噴出している弁口付近の血流や組織の動きを超音波カラー画像で表示する。逆流が視認された場合、人工弁やクリップといった留置デバイス又は弁を縫合する縫合デバイス等を挿入するカテーテル治療が施される。
【0004】
X線診断装置は、このようなカテーテル治療の際に、カテーテルが挿入された心臓領域のX線画像を表示する。但し、X線画像には、心臓壁や心臓弁が表示されない。
【0005】
このため、X線診断装置は、カテーテル先端のデバイスを誘導するためのナビゲーション図形をX線画像上に表示することが好ましい。ナビゲーション図形は、弁輪を示す円形線と、弁輪の中心を通る直線とを有している。なお、X線画像及びナビゲーション図形は、X線診断装置に代えて、画像処理装置に表示される場合もある。
【0006】
以上のようなナビゲーション図形は、通常は特に問題ないが、本発明者の検討によれば、カテーテル治療の安全性及び正確性を向上させる余地がある。例えば、ナビゲーション図形の円形線及び直線によれば、カテーテル先端が直線から外れた場合の安全な範囲が不明なため、カテーテル先端を心腔の内壁に衝突させてしまう可能性がある。従って、ナビゲーション図形は、カテーテル治療の安全性を向上させる余地がある。これに加え、ナビゲーション図形の円形線及び直線によれば、心臓弁の向きが不明なため、留置デバイスの回転角度を心臓弁の向きに合わせられない可能性がある。従って、ナビゲーション図形は、カテーテル治療の正確性を向上させる余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2014-524753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、カテーテル治療の安全性及び正確性を向上できるナビゲーション図形を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る画像処理装置は、少なくとも1つの記憶部及び処理回路を備えている。
【0010】
前記記憶部は、予め複数の方向から撮像された被検体の心臓領域の第1医用画像と、前記心臓領域がリアルタイムに撮像された第2医用画像とを記憶する。
前記処理回路は、前記第1医用画像から心腔内の心臓弁が有する弁葉(leaflets)間の境界を示す弁境界線と、カテーテルを挿入するための前記心腔の内壁の挿入点とをそれぞれ設定する。
前記処理回路は、前記内壁から離れて前記挿入点と前記弁境界線の端部とを個別に結ぶ複数の安全線を生成することにより、前記弁境界線と前記安全線とを含むナビゲーション図形を生成する。
前記処理回路は、前記ナビゲーション図形を前記第2医用画像に重畳して重畳画像を生成する。
前記処理回路は、前記重畳画像を表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の外観を示す模式図である。
図2図2は、同実施形態に係るX線診断装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、同実施形態における設定機能を説明するための模式図である。
図4図4は、同実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
図5図5は、同実施形態における動作を説明するための模式図である。
図6図6は、同実施形態の第1変形例におけるナビゲーション図形を示す模式図である。
図7図7は第1変形例に係るX線診断装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図8図8は、同実施形態の第2変形例におけるナビゲーション図形を示す模式図である。
図9図9は、同実施形態の第3変形例における設定テーブルを示す模式図である。
図10図10は、同実施形態の第6変形例におけるナビゲーション図形を示す模式図である。
図11図11は、同実施形態の第6変形例におけるナビゲーション図形を示す模式図である。
図12図12は、第2の実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
図13図13は、第3の実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
図14図14は、第4の実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
図15図15は、第5の実施形態に係る超音波診断装置及びその周辺構成を説明するためのブロック図である。
図16図16は、同実施形態における設定機能を説明するための模式図である。
図17図17は、同実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
図18図18は、同実施形態の変形例の動作を説明するためのフローチャートである。
図19図19は、第6の実施形態における撮像方向を説明するための模式図である。
図20図20は、同実施形態における撮像方向を説明するための模式図である。
図21図21は、同実施形態の変形例を説明するための模式図である。
図22図22は、同実施形態の変形例を説明するための模式図である。
図23図23は、第7の実施形態に係る画像処理装置及びその周辺構成を説明するためのブロック図である。
図24図24は、各実施形態における安全線を説明するための模式図である。
図25図25は、各実施形態の変形例における安全線の例を説明するための模式図である。
図26図26は各実施形態の他の変形例における安全線の例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して各実施形態を説明する。なお、各実施形態では、心臓弁の一例として僧帽弁を用いている。また、挿入点の一例として穿刺点を用いている。また、カテーテル先端に保持されるデバイスの一例としてクリップ(例、MitraClip(登録商標))の如き、留置デバイスを用いている。但し、これらの例に限定されない。心臓弁としては、例えば、三尖弁、大動脈弁又は肺動脈弁といった任意の弁が適宜、使用可能となっている。また、カテーテルの先端に保持されるデバイスとしては、例えば、人工弁を縫合する縫合デバイスといった任意の治療用デバイスが適宜、使用可能となっている。「挿入点」及び「穿刺点」は、それぞれ「挿入位置」及び「穿刺位置」に読み替えてもよい。また、X線診断装置としては、バイプレーン構造を例に挙げて述べるが、これに限らず、シングルプレーン構造を用いてもよい。
【0013】
また、以下の説明は、主に、X線診断装置が有する画像処理装置を例に挙げて述べるが、これに限定されない。すなわち、X線診断装置が有する画像処理装置についての説明は、超音波診断装置が有する画像処理装置や、各診断装置の外部に設けた画像処理装置についても同様に適用される。また同様に、超音波診断装置が有する画像処理装置についての説明は、X線診断装置が有する画像処理装置や、各診断装置の外部に設けた画像処理装置についても同様に適用される。これは、各診断装置により生成された第1医用画像及び第2医用画像の各々に対する画像処理を、任意の画像処理装置が実行できるからである。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係るX線診断装置の外観を示す外観図である。図1に示すように、本実施形態に係るX線診断装置1は、複数の支持機構(バイプレーン構造)を有する。
【0015】
図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成を示したブロック図である。このX線診断装置1は、高電圧発生装置3、第1X線管5、第1X線検出器7、第1支持機構9、第1コリメータ11、第2X線管15、第2X線検出器17、第2支持機構19、第2コリメータ21、天板24、寝台25、駆動部27、画像生成回路29、画像処理装置30、制御回路41を備えている。X線診断装置1は、心電計43を接続してもよい。画像処理装置30は、少なくとも1つのメモリ31、入力インタフェース33、ディスプレイ35、処理回路37及び通信インタフェース39を備えている。画像処理装置30は、X線診断装置1が備える場合に限らず、X線診断装置1の外部装置として設けてもよい。
【0016】
高電圧発生装置3は、第1X線管5と第2X線管15とに供給する管電流と、第1X線管5と第2X線管15とに印加する管電圧とを発生する。高電圧発生装置3は、制御回路41に制御され、管電流を第1X線管5と第2X線管15とに供給し、管電圧を第1X線管5と第2X線管15とに印加する。
【0017】
第1X線管5は、高電圧発生装置3から供給された管電流と、高電圧発生装置3により印加された管電圧とに基づいて、X線の焦点(以下、第1焦点と呼ぶ)においてX線(以下、第1X線と呼ぶ)を発生する。第1焦点から発生された第1X線は、第1X線管5の前面に設けられたX線放射窓を介して、被検体Pに照射される。なお、第1焦点から発生された第1X線の一部は、第1X線管5とX線放射窓との間に設けられた第1コリメータ11により遮蔽される。すなわち、入力インタフェース33から入力された第1照射範囲に従って第1コリメータ11が移動され、第1X線の照射範囲が限定される。また、第1X線管5及び第1コリメータ11は、X線照射部の一例である。
【0018】
第1X線検出器7は、第1X線管5から発生され、被検体Pを透過した第1X線を検出する。例えば、第1X線検出器7は、フラットパネルディテクタ(Flat Panel Detecter:以下、第1FPDと呼ぶ)を有する。第1FPDは、複数の半導体検出素子を有する。半導体検出素子には、直接変換形と間接変換形とがある。直接変換形とは、入射X線を直接的に電気信号に変換する形式である。間接変換形とは、入射X線を蛍光体で光に変換し、その光を電気信号に変換する形式である。
【0019】
第1X線の入射に伴って複数の半導体検出素子で発生された電気信号は、図示していないアナログディジタル変換器(Analog to Digital converter:以下、A/D変換器と呼ぶ)に出力される。A/D変換器は、電気信号をディジタルデータに変換する。A/D変換器は、ディジタルデータを画像生成回路29に出力する。なお、第1X線検出器7として、イメージインテンシファイア(Imageintensifier)が用いられてもよい。また、第1X線検出器7は、X線検出部の一例である。
【0020】
第1支持機構9は、第1X線管5と第1X線検出器7とを移動可能に支持する。具体的には、第1支持機構9は、例えば、図1におけるCアーム91とCアーム支持部93とを有する。Cアーム91は、第1X線管5と第1X線検出器7とを、互いに向き合うように搭載する。Cアーム支持部93は、Cアーム91のC形状に沿う方向(以下、C方向と呼ぶ)に、Cアーム91をスライド可能に支持する。
【0021】
また、Cアーム支持部93は、Cアーム91とCアーム支持部93とを接続する第1接続部95を略中心として、C方向に直交する方向(以下、C直交方向と呼ぶ)に回転可能にCアーム91を支持する。なお、Cアーム支持部93は、後述する天板24の短軸方向(図1図2のX方向)と長軸方向(図1図2のY方向)とに平行移動可能にCアーム91を支持することも可能である。また、Cアーム91は、第1焦点と第1X線検出器7との距離(線源受像面間距離(Source Image Distance:以下、第1SIDと呼ぶ))を変更可能に、第1X線管5と第1X線検出器7とを支持する。
【0022】
第2X線管15は、高電圧発生装置3から供給された管電流と、高電圧発生装置3により印加された管電圧とに基づいて、X線の焦点(以下、第2焦点と呼ぶ)においてX線(以下、第2X線と呼ぶ)を発生する。第2焦点から発生された第2X線は、第2X線管15の前面に設けられたX線放射窓を介して、被検体Pに照射される。なお、第2焦点から発生された第2X線の一部は、第2X線管15とX線放射窓との間に設けられた第2コリメータ21により遮蔽される。すなわち、入力インタフェース33から入力された第2照射範囲に従って第2コリメータ21が移動され、第2X線の照射範囲が限定される。また、第2X線管15及び第2コリメータ21は、X線照射部の一例である。
【0023】
第2X線検出器17は、第2X線管15から発生され、被検体Pを透過したX線を検出する。例えば、第2X線検出器17は、第2FPDを有する。第2X線の入射に伴って複数の半導体検出素子で発生された電気信号は、図示していないA/D変換器に出力される。A/D変換器は、電気信号をディジタルデータに変換する。A/D変換器は、ディジタルデータを画像生成回路29に出力する。なお、第2X線検出器17として、イメージインテンシファイアが用いられてもよい。また、第2X線検出器17は、X線検出部の一例である。
【0024】
第2支持機構19は、第2X線管15と第2X線検出器17とを移動可能に支持する。具体的には、第2支持機構19は、例えば、図1におけるΩアーム191とΩアーム支持部193とを有する。Ωアーム191は、第2X線管15と第2X線検出器17とを、互いに向き合うように搭載する。Ωアーム支持部193は、Ωアーム191のΩ形状に沿う方向(以下、Ω方向と呼ぶ)に、Ωアーム191をスライド可能に支持する。
【0025】
また、Ωアーム支持部193は、天井に設けられたレール195に沿って移動可能に設置される。レール195は、例えば、天板24の長軸方向に平行に、天井に設けられる。Ωアーム支持部193は、Ωアーム191とΩアーム支持部193とを接続する第2接続部197を略中心として、Ω方向に直交する方向(以下、Ω直交方向と呼ぶ)に回転可能にΩアーム191を支持する。なお、Ωアーム支持部193は、後述する天板24の短軸方向(図1図2のX方向)と長軸方向(図1図2のY方向)とに平行移動可能にΩアーム191を支持することも可能である。また、Ωアーム191は、第2焦点と第2X線検出器17との距離(線源受像面間距離(Source Image Distance:以下、第2SIDと呼ぶ))を変更可能に、第2X線管15と第2X線検出器17とを支持する。
【0026】
寝台25は、被検体Pを載置する天板24を有する。なお、天板24には、被検体Pが載置される。
【0027】
駆動部27は、制御回路41に制御され、第1支持機構9と、第2支持機構19と、寝台25とを駆動する。具体的には、駆動部27は、制御回路41からの制御信号に応じた駆動信号をCアーム支持部93に供給して、Cアーム91をC方向にスライド、C直交方向に回転させる。駆動部27は、制御回路41からの制御信号に応じた駆動信号をΩアーム支持部193に供給して、Ωアーム191をΩ方向にスライド、Ω直交方向に回転させる。
【0028】
X線撮像時においては、第1X線管5と第1X線検出器7との間、および第2X線管15と第2X線検出器17との間に、天板24に載置された被検体Pが配置される。駆動部27は、天板24に対する第1X線管5の位置(または、第1支持機構9の位置)と、天板24に対する第2X線管15の位置(または、第2支持機構19の位置)を、制御回路41などに出力する。
【0029】
駆動部27は、制御回路41から制御され、天板24を駆動することにより、天板24を移動させる。具体的には、駆動部27は、制御回路41からの制御信号に基づいて、天板24の短軸方向(図1図2のX方向)または天板24の長軸方向(図1図2のY方向)に、天板24をスライドさせる。また、駆動部27は、鉛直方向(図1図2のZ方向)に関して、天板24を昇降する。加えて、駆動部27は、長軸方向と短軸方向とのうち少なくとも一つの方向を回転軸(図1のX軸、Y軸)として、天板24を傾けるために天板24を回転してもよい。
【0030】
駆動部27は、第1支持機構9の位置(以下、第1位置と呼ぶ)と、第2支持機構19の位置(以下、第2位置と呼ぶ)とを制御回路41に出力する。なお、第1位置及び第2位置は、それぞれ第1支持機構9及び第2支持機構19から制御回路41へ出力されてもよい。
【0031】
駆動部27は、第1X線管5と天板24との相対的な位置関係(以下、第1相対位置と呼ぶ)を、制御回路41に出力する。駆動部27は、第2X線管15と天板24との相対的な位置関係(以下、第2相対位置と呼ぶ)を、制御回路41に出力する。
【0032】
第1相対位置とは、例えば、天板24に対するCアーム91の角度(傾き)、Cアーム91のスライドの角度(アーム角度と呼ぶ)などである。傾きと、アーム角度とは、例えば、被検体Pに対するアイソセンタを基準としたオイラー角である。なお、駆動部27は、第1支持機構9の位置、Cアーム91の角度などに従って任意に回転させるために、第1X線検出器7を駆動してもよい。
【0033】
第2相対位置とは、例えば、天板24に対するΩアーム191の角度(傾き)、Ωアーム191のスライドに関するアーム角度などである。傾きと、アーム角度とは、例えば、被検体Pに対するアイソセンタを基準としたオイラー角である。なお、駆動部27は、第2支持機構19の位置、Ωアーム191の角度などに従って任意に回転させるために、第2X線検出器17を駆動してもよい。
【0034】
画像生成回路29は、第1X線検出器7の出力に基づいて、被検体Pの心臓領域のX線画像をリアルタイムに生成する。また、画像生成回路29は、第2X線検出器17の出力に基づいて、被検体Pの心臓領域のX線画像をリアルタイムに生成する。例えば、画像生成回路29は、第1X線検出器7および第2X線検出器17から出力されたディジタルデータに対して、前処理を実行する。前処理とは、第1X線検出器7および第2X線検出器17におけるチャンネル間の感度不均一の補正、および金属等のX線強吸収体による極端な信号の低下またはデータの脱落に関する補正等である。
【0035】
画像生成回路29は、前処理されたディジタルデータに基づいて、第1相対位置および第2相対位置にそれぞれ対応する2つのX線画像を生成する。画像生成回路29は、生成したX線画像をメモリ31およびディスプレイ35に出力する。
【0036】
メモリ31は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)及び画像メモリなど電気的情報を記録するメモリと、それらメモリに付随するメモリコントローラやメモリインタフェースなどの周辺回路から構成されている。メモリ31は、予め複数の方向から撮像された被検体Pの心臓領域の第1医用画像を記憶し、画像生成回路29で生成されたX線画像を第2医用画像として記憶する。第2医用画像は、被検体の心臓領域がリアルタイムに撮像されたライブ画像である。リアルタイムとは、画像の順次取得に並行して、当該画像の表示または処理が順次実行されることを意味する。リアルタイムの意味は、以下の各実施形態でも同様である。
【0037】
ここで、第1医用画像がX線ボリューム画像又は複数の2次元X線造影画像であり、第2医用画像がX線透視画像であってもよい。X線ボリューム画像は、X線診断装置により取得された3次元画像でもよく、X線CT(Computed Tomography)装置により取得された3次元CT画像でもよい。また、第1医用画像が超音波ボリューム画像であり、第2医用画像がX線透視画像であってもよい。
【0038】
また、メモリ31は、処理回路37で生成された重畳画像、本X線診断装置1の制御プログラム、画像処理装置30のプログラム、診断プロトコル、入力インタフェース33から送られてくる操作者の指示、X線撮像に関する撮像条件および透視条件などの各種データ群、入力インタフェース33とネットワークとを介して送られてくる種々のデータ、第1X線線量、第2X線線量などを記憶する。メモリ31は、第1相対位置、第2相対位置、第1照射範囲、第2照射範囲を記憶してもよい。
【0039】
メモリ31は、第1X線の発生に関する第1X線照射条件や第2X線の発生に関する第2X線照射条件を記憶する。各X線照射条件は、各X線の線質に関する条件(管電圧、管電流など)、照射時間、照射間隔、各X線絞り11,21における開口、管電流(mA)と照射時間(s)との積(以下、管電流時間積(mAs)と呼ぶ)、入力インタフェース33を介して選択された線質調整フィルタの厚み(または種類)、撮像視野(Field of view:FOV)、照射レート(1秒あたりのX線照射回数)などである。
【0040】
メモリ31は、第1X線の照射(発生)ごとの第1幾何学的条件や、第2X線の照射(発生)ごとの第2幾何学的条件を記憶する。各幾何学的条件は、天板24の位置、Cアーム91の位置、Cアーム91の角度、各X線の照射方向(第1方向、第2方向)、各SID、各FPD回転角度などである。また、メモリ31は、記憶部の一例である。
【0041】
入力インタフェース33は、例えば、ネットワーク、図示していない外部記憶装置に関するインターフェースである。本X線診断装置1によって得られたX線画像等のデータおよび解析結果などは、入力インタフェース33およびネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0042】
入力インタフェース33は、各X線照射条件、第1X線管および第2X線管各々による撮像位置、各照射範囲、第1方向、第2方向などを入力する。具体的には、入力インタフェース33は、操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定を本X線診断装置1に取り込む。撮像位置は、例えば、アイソセンタに対する角度で規定される。例えば、第1斜位方向(RAO)、第2斜位方向(LAO)、尾頭方向(CRA)、頭尾方向(CAU)の起点を撮像位置とし、アイソセンタを図2の直交3軸の原点とすると、起点における透視位置の角度は0°である。
【0043】
入力インタフェース33は、トラックボール、スイッチボタン、フットスイッチ、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インタフェース33は、制御回路41及び処理回路37等に接続されている。入力インタフェース33は、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し制御回路41及び処理回路37へ出力する。なお、本実施形態において、入力インタフェース33は、トラックボール、スイッチボタン、フットスイッチ、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路41及び処理回路37へ出力する電気信号の処理回路も、入力インタフェース33の例に含まれる。
【0044】
ディスプレイ35は、制御回路41及び処理回路37に制御され、医用画像、ナビゲーション図形及び重畳画像などを表示する。なお、ディスプレイ35は、ディスプレイ本体に表示用の信号を供給する内部回路、ディスプレイと内部回路とをつなぐコネクタやケーブルなどの周辺回路から構成されている。また、ディスプレイ35は、表示部の一例である。
【0045】
処理回路37は、図示しないプロセッサとメモリを備え、入力インタフェース33にて入力あるいは設定された上述の各種情報がメモリに保存される。そして、プロセッサは、これらの入力情報や設定情報に基づいて画像処理装置30の各ユニットを統括的に制御し、ナビゲーション図形を重畳した第2医用画像をディスプレイ35に表示させる。
【0046】
具体的には、処理回路37のプロセッサは、メモリ31内のプログラムを呼び出し実行することにより、プログラムに対応する設定機能371、図形生成機能372、重畳画像生成機能373及び表示制御機能374を実現する。なお、図2においては単一の処理回路37にて設定機能371、図形生成機能372、重畳画像生成機能373及び表示制御機能374が実現されるものとして説明した。但し、これに限らず、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしても構わない。また、設定機能371、図形生成機能372、重畳画像生成機能373及び表示制御機能374の分担は、便宜的なものであり、適宜、変更可能である。例えば、設定機能371の設定処理を図形生成機能372が実行してもよい。
【0047】
ここで、設定機能371は、メモリ31に保存された第1医用画像から心腔内の心臓弁が有する弁葉(leaflets)間の境界を示す弁境界線と、カテーテルを挿入するための心腔の内壁の挿入点とをそれぞれ設定する。例えば図3に示すように、入力インタフェース33の操作に応じて、挿入点としての穿刺点p1と、左心房LA内の僧帽弁mvの弁葉(leaflets)間の境界の複数の端部e1,e2が指定されたとする。設定機能371は、指定された穿刺点p1を設定し、指定された複数の端部e1,e2を直線で結んだ弁境界線L1を設定する。また例えば、設定機能371は、弁葉間の境界上の複数の点が指定されると、当該複数の点を折れ線又は曲線で結んだ弁境界線を設定してもよい。なお、図3中、RAは右心房(right atrium)を示す。
【0048】
図形生成機能372は、内壁から離れて穿刺点p1と弁境界線の端部e1,e2とを個別に結ぶ複数の安全線S1,S2を生成することにより、弁境界線L1と安全線S1,S2とを含むナビゲーション図形100を生成する。例えば、図形生成機能372は、操作者による入力インタフェース33の操作に応じて、穿刺点が指定されると、当該穿刺点と弁境界線の複数の端部とを直線又は曲線で結ぶ複数の安全線を生成する。また例えば、図形生成機能372は、穿刺点と曲率とが指定されると、当該穿刺点と弁境界線の複数の端部とを当該曲率の曲線で結ぶ複数の安全線を生成する。「安全線(セーフティライン)」は、”ガイドスコープライン”と呼んでもよい。なお、ナビゲーション図形100は、3次元空間上の3次元図形(3次元座標で定まる図形)と、当該3次元図形を2次元空間に投影した2次元図形(2次元座標で定まる図形)とのそれぞれを意味する。本実施形態中、ナビゲーション図形は、安全線を生成した直後には、3次元図形である。また、3次元図形としてのナビゲーション図形は、2次元空間に投影されることにより、2次元図形となる。
【0049】
重畳画像生成機能373は、ナビゲーション図形を第2医用画像に重畳して重畳画像を生成する。「ナビゲーション図形」は、「ガイド図形」又は「ガイドライン」と呼んでもよい。
【0050】
表示制御機能374は、重畳画像をディスプレイ35に表示させる。
【0051】
通信インタフェース39は、有線、無線又はその両方にて外部装置と通信するための回路である。外部装置は、例えば、モダリティ、画像処理装置、放射線部門情報管理システム(RIS:Radiological Information System)、病院情報システム(HIS:Hospital Information System)及びPACS(Picture Archiving and Communication System)等のシステムに含まれるサーバ、あるいは他のワークステーション等である。
【0052】
制御回路41は、図示していないCPU(Central Processing Unit)とメモリを備える。制御回路41は、入力インタフェース33から送られてくる操作者の指示、撮像位置、第1X線管5による撮像方向(第1方向)、第2X線管15による撮像方向(第2方向)、第1照射範囲、第2照射範囲、第1X線条件、第2X線条件などの情報を、図示していなメモリに一時的に記憶する。制御回路41は、メモリに記憶された操作者の指示、撮像位置、第1方向、第2方向、第1照射範囲、第2照射範囲、第1X線条件、第2X線条件などに従って、X線撮像を実行するために、高電圧発生装置3、第1X線検出器7、第2X線検出器17、第1コリメータ11、第2コリメータ21、駆動部27、画像生成回路29などを制御する。
【0053】
心電計(ECG:electrocardiograph)43は、被検体Pの心臓の電気現象による時間的変化を記録したグラフ、すなわち心電図(ECG波形)を計測する。心電計43で検出された心電波形信号は、内部メモリに記憶されると共に、必要があれば処理回路37に送られ、心電波形に同期したナビゲーション図形を表示するために用いられる。
【0054】
次に、以上のように構成されたX線診断装置の動作を図4のフローチャート及び図5の模式図を用いて説明する。なお、以下の動作は、僧帽弁の閉鎖不全に対してクリップを留置するカテーテル治療の際に、ナビゲーション図形を生成する処理について主に述べる。また、準備段階として、予め超音波ドプラ法により、被検体の僧帽弁に逆流が生じていること(閉鎖不全)が確認済みであるものとする。
【0055】
ステップST1において、操作者は、X線透視画像を参照しながら、被検体Pの大腿静脈からカテーテルを右心房RAに進め、カテーテルを心房中隔に穿刺して左心房LAに挿入する。
【0056】
ステップST2~ST3において、操作者は、左心房LAにピッグテールカテーテルを挿入し、左心房LAに造影剤を入れながら3D撮像を行う。例えば、被検体Pの体軸を中心にCアーム91を回転させながら第1X線管5から被検体Pの心臓領域に照射された第1X線を第1X線検出器7が検出する。画像生成回路29は、第1X線検出器7の出力に基づいて左心房LAのボリューム画像を生成し、ボリューム画像をメモリ31に保存する。これにより、X線診断装置1は、左心房LAのボリューム画像を取得する。このボリューム画像は、ナビゲーション図形を生成するための第1医用画像に相当する。
【0057】
ステップST4において、画像処理装置30の処理回路37は、メモリ31に保存されたボリューム画像をディスプレイ35に表示させる。処理回路37の設定機能371は、例えば図3に示したように、操作者による入力インタフェース33の操作に応じて、左心房LA内の僧帽弁mvが有する弁葉(leaflets)間の弁境界線L1と、カテーテルの穿刺点p1とを設定する。弁境界線L1を設定する際には、僧帽弁(mitral leaflets)の中央の溝を指定してもよく、僧帽弁の中央の溝の両端を指定してもよい。
【0058】
ステップST5において、処理回路37の図形生成機能372は、穿刺点p1と、弁境界線L1の端部e1,e2とを安全線S1,S2で結ぶ三角形を三次元空間内で計算する。図3の右側に示す如き、安全線S1,S2が互いに重なった線を、カテーテル先端の軌道(Trajectory)と定義する。図3の左側に示す如き、安全線S1,S2間の範囲は、カテーテル先端が移動した際に、内壁に衝突しない安全な範囲を示している。
【0059】
ステップST6において、X線診断装置1は、Cアーム91,Ωアーム191を静止させた状態で、X線撮像を行う。すなわち、X線診断装置1は、互いに直交する方向から第1X線及び第2X線を被検体Pの心臓領域に照射し、第1X線検出器7及び第2X線検出器17の出力に基づいて、それぞれX線透視画像を生成する。第1X線及び第2X線は、同時に照射してもよく、いずれか一方を照射してもよい。いずれか一方を照射する場合、操作者による入力インタフェース33の操作に応じて、照射するX線を切り替えればよい。いずれにしても、生成されたX線透視画像は、メモリ31に保存される。
【0060】
ステップST7において、図形生成機能372は、ステップST5で計算した3次元空間内の三角形を2次元平面に投影したナビゲーション図形100を生成する。
【0061】
ステップST8において、処理回路37の重畳画像生成機能373は、ナビゲーション図形100をX線透視画像に重畳した重畳画像を生成する。
【0062】
ステップST9において、処理回路37の表示制御機能374は、重畳画像をディスプレイ35に表示させる。ここで、重畳画像内のX線透視画像はリアルタイム動画であり、ナビゲーション図形100は基本的に静止している。
【0063】
ステップST10において、操作者は、図5に示す如き、ディスプレイ35に表示された2方向からのナビゲーション図形100を参照しながら、カテーテル101の先端に装着されたクリップ102を前方に進める。これにより、スムーズに僧帽弁mvの弁葉間の位置にクリップ102を誘導することができる。また、クリップ102が僧帽弁mvに近づいた際に、操作者は、カテーテル101の操作により、カテーテル101の先端の軸を中心としてクリップ102を回転させる。これにより、操作者は、平面図i1に示すように、クリップ102が開いた状態での長手方向を弁境界線L1に垂直に交わるように調整する。この調整は、弁境界線L1を境に開閉する弁葉を挟める向きに、クリップ102を回転させるためのものである。但し、平面図i1は、理解の容易化のために示したものであり、ディスプレイ35には表示されない。
【0064】
以下、操作者は、左心房LAから左心室(left ventricle)LVにクリップ102を進め、僧帽弁mvの弁葉間をクリップ102で留める。このクリップ102は、例えばMitraClip(登録商標)のように、矢印に似た形状を有し、先端を支点にして矢印が閉じることにより、弁葉間を留めるように構成されている。操作者は、弁葉間をクリップ102で留めた後、クリップ102を僧帽弁mvに留置してカテーテル101を抜去する。
【0065】
しかる後、超音波ドプラ法により、被検体Pの僧帽弁mvの逆流が停止していること(閉鎖不全の解消)が確認されると、カテーテル治療が完了する。
【0066】
なお、ステップST10では、バイプレーン構造を用いた場合について説明したが、これに限定されない。例えば、シングルプレーン構造を用い、撮像方向に応じてCアームの位置を移動させることにより、第1方向からのナビゲーション図形100と第2方向からのナビゲーション図形100とを交互に参照してもよい。
【0067】
上述したように第1の実施形態によれば、第1医用画像から心腔内の心臓弁が有する弁葉間の境界を示す弁境界線と、カテーテルを挿入するための心腔の内壁の挿入点とをそれぞれ設定する。当該内壁から離れて穿刺点と弁境界線の端部とを個別に結ぶ複数の安全線を生成することにより、弁境界線と安全線とを含むナビゲーション図形を生成する。ナビゲーション図形を第2医用画像に重畳して重畳画像を生成する。重畳画像をディスプレイに表示させる。従って、カテーテル治療の安全性及び正確性を向上できるナビゲーション図形を提供することができる。
【0068】
これに加え、ナビゲーション図形100を用いるカテーテル治療の結果として、手技失敗のリスクが低減され、操作者の確信を高め、トータルの手技時間を短縮することができる。
【0069】
また、ナビゲーション図形は、複数の安全線と弁境界線とのうちの2つを互いに結ぶ三点を角とする図形である。このようなナビゲーション図形としては、前述した三角形に限らず、三辺のうちの少なくとも一辺が曲線であって、3つの角をもつ図形を用いてもよい。例えば、弁境界線が直線であり、複数の安全線に相当する二辺が曲線であって、3つの角をもつ図形を用いてもよい。また、ナビゲーション図形は、複数の安全線と弁境界線とにより囲まれた平面を形成してもよく、当該囲まれた曲面を形成してもよい。
【0070】
また、ナビゲーション図形が形成する面の投影面積が最小となる第1方向から第2医用画像が撮像された場合に、複数の安全線が互いに略重なってカテーテルの軌道を示唆するようにしてもよい。また、ナビゲーション図形が形成する面の投影面積が最大となる第2方向から第2医用画像が撮像された場合に、複数の安全線がそれぞれカテーテルの軌道の限界を示唆するようにしてもよい。なお、ナビゲーション図形が形成する面の投影面積が最大となる場合、ナビゲーション図形が形成する面の形状は、三角形に限らず、内壁に当たらない範囲で任意の形状が使用可能となっている。但し、本明細書中では、三角形を例に挙げて述べている。
【0071】
また例えば、操作者は、上記軌道の限界の示唆に伴い、第2方向でクリップ102がナビゲーション図形100としての三角形の中央を進行するようにする。なお、三角形の中央に限らず、弁境界線L1上で逆流位置が右寄り又は左寄りであれば、逆流位置に応じてクリップ102を進めるようにする。また、上記軌道の示唆に伴い、第1方向でクリップ102が安全線S1,S2と重なるようにし、さらに、開いた状態のクリップ102が真横に見える回転角度とする。これにより、確実にクリップ102を誘導できるようになる。
【0072】
補足すると、例えば、クリップ102の場合、カテーテル101の進行方向だけでなく、クリップ102の回転角度を合わせる必要がある。クリップ102を回転して正しい方向に入れないと僧帽弁mvの弁葉間を留めることができない。そこで、本実施形態では、クリップ102の回転角度が分かるように、ナビゲーション図形100を円と線ではなく、弁境界線L1を有する図形とする。操作者は、Cアーム91を回転操作して(あるいはバイプレーンで)複数方向の重畳画像を観察しながら、クリップ102を進行させる。
【0073】
このように、本実施形態のナビゲーション図形100は、従来のナビゲーション図形に比べ、カテーテル治療の安全性及び正確性が向上されている。
【0074】
なお、従来のナビゲーション図形に関連した手法として、[1]CTO(Chronic Total Occlusion:慢性完全閉塞病変)の計画線と、[2]針ガイダンス・ソフトウェア(needle guidance software)がある。
【0075】
ここで、[1]CTOの計画線は、1本の曲線であるため、従来のナビゲーション図形と同様に、安全性及び正確性を向上させる余地がある。
【0076】
[2]針ガイダンス・ソフトウェアは、事前の3D画像データに基づき、針を刺す方向と距離を計画する。しかしながら、針ガイダンスは、1本の直線であるため、従来のナビゲーション図形と同様に、安全性及び正確性を向上させる余地がある。
【0077】
すなわち、本実施形態のナビゲーション図形100は、上記関連手法[1],[2]に比べ、カテーテル治療の安全性及び正確性が向上されている。
【0078】
以上のような第1の実施形態は、以下の第1乃至第6変形例のように変形してもよい。第1乃至第6変形例は、以下の各実施形態にも適用可能である。また、以下の説明は、前述した図面と略同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。
【0079】
<第1変形例>
第1変形例は、図6に3つの例を示すように、ナビゲーション図形100が逆流位置を示している。図6の左下側は、弁境界線L1上に第1の逆流位置r1が設定された例を示し、図6の中下側は、第1の逆流位置r1と穿刺点p1とを結ぶ軌道Tj1が生成された例を示している。図6の右下側は、第1及び第2の逆流位置r1,r2が設定され、2つの軌道Tj1,Tj2が生成された例を示している。
【0080】
これに伴い、処理回路37の設定機能371は、前述した機能に加え、心臓弁における少なくとも1つの逆流位置r1を弁境界線L1上に設定する。
【0081】
図形生成機能372は、前述した機能に加え、逆流位置r1を示す図形を含むように弁境界線L1を更新し、更新した弁境界線L1と安全線S1,S2とを含むようにナビゲーション図形100を生成する。なお、逆流位置r1を示す図形としては、図6には円形を示しているが、これに限らず、四角形や星形などの任意の図形が使用可能である。また、図形生成機能372は、心臓弁における少なくとも1つの逆流位置r1を弁境界線上に設定し、逆流位置r1と穿刺点p1とを結んでカテーテル101の先端の少なくとも1つの軌道Tj1を更に生成し、軌道Tj1を更に含むようにナビゲーション図形100を生成してもよい。ここで、生成する軌道Tj1は、図3において略重なった安全線S1,S2として定義した軌道に似ているが、安全線S1,S2間においてもカテーテル101の先端を案内する点で精度が高い。補足すると、ごく希に、逆流位置が弁境界線L1の中央になく、弁境界線L1の一端に寄っている場合がある。あるいは、複数の逆流位置がある場合がある。これらいずれの場合でも第1変形例の軌道によれば、カテーテル101の先端を逆流位置に案内できる。なお、軌道Tj1が生成される場合には、軌道Tj1と弁境界線L1との交点として逆流位置r1を視認できるため、逆流位置r1を示す図形を省略可能である。
【0082】
また、図形生成機能372は、複数の逆流位置r1,r2が設定されたとき、穿刺点p1を通るカテーテル101の先端の進行に応じて当該先端と複数の逆流位置r1,r2のいずれかとを結ぶように軌道Tj1,Tj2を更新する更新処理を実行する。図形生成機能372は、全ての逆流位置r1,r2にクリップ102が留置されるまで更新処理を繰り返し実行する。
【0083】
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0084】
次に、以上のように構成された第1変形例に係るX線診断装置の動作について図7のフローチャートを用いて説明する。以下の説明は、図6の3つの例のうち、右下側に示した例を参照して述べる。なお、心腔は左心房であり、心臓弁は僧帽弁である。心腔の内壁は心房中隔である。カテーテル101の先端は、逆流位置で弁葉を留めるためのクリップを着脱自在に保持しているものとする。
【0085】
いま、前述同様にステップST1~ST3が実行され、左心房LAのボリューム画像をメモリ31に保存したとする。
【0086】
また同様にステップST4が実行され、処理回路37の設定機能371が、入力インタフェース33の操作に応じて、僧帽弁mvの弁葉間の弁境界線L1と、心房中隔におけるカテーテルの穿刺点p1とを設定したとする。
【0087】
次に、ステップST4aにおいて、設定機能371は、操作者による入力インタフェース33の操作に応じて、僧帽弁mvの2つの逆流位置r1,r2を弁境界線L1上に設定する。
【0088】
ステップST4bにおいて、図形生成機能372は、設定された2つの逆流位置r1,r2と穿刺点p1とを結んでカテーテル101の先端の2つの軌道Tj1,Tj2を更に生成する。
【0089】
以下、前述同様にステップST5~ST9が実行され、ナビゲーション図形100をX線透視画像に重畳した重畳画像がディスプレイ35に表示される。但し、ステップST7で生成されるナビゲーション図形100は、逆流位置r1,r2及び軌道Tj1,Tj2を含んでいる。このため、重畳画像内のナビゲーション図形100は、逆流位置r1,r2及び軌道Tj1,Tj2を含んでいる。
【0090】
ステップST10aにおいて、操作者は、ディスプレイ35に表示された2方向からのナビゲーション図形100を参照しながら、カテーテル101の先端に装着されたクリップ102を前方に進める。
【0091】
ステップST11において、複数の逆流位置r1,r2が設定されたとする。このとき、図形生成機能372は、穿刺点p1を通るカテーテル101の先端の進行に応じて当該先端と複数の逆流位置r1,r2のいずれかとを結ぶように軌道Tj1,Tj2を更新する更新処理を実行する。これにより、スムーズに弁境界線L1上の一方の逆流位置r1にクリップ102を誘導することができる。操作者は、逆流位置r1から左心室LVにクリップ102を進め、僧帽弁mvの弁葉間をクリップ102で留めた後、クリップ102を留置してカテーテル101の先端を穿刺点p1から抜去する。
【0092】
ステップST12において、図形生成機能372は、全ての逆流位置r1,r2にクリップ102が留置されるまで更新処理を繰り返し実行する。具体的には、図形生成機能372は、未更新の軌道Tj2の有無を判定することにより、クリップ102が留置されていない残りの逆流位置r2の有無を判定する。この判定の結果、残りの逆流位置r2があればステップST10aに戻る。なお、ステップST10a~ST12の処理を繰り返し実行する際に、既存の穿刺点p1を用いることにより、被検体Pの負担を最小にする。
【0093】
またステップST12の判定の結果、残りの逆流位置r2がなければ、超音波ドプラ法により、被検体Pの僧帽弁mvの逆流が停止していること(閉鎖不全の解消)が確認されると、カテーテル治療が完了する。
【0094】
以上のような第1変形例によれば、心臓弁における少なくとも1つの逆流位置を弁境界線上に設定し、逆流位置を示す図形を含むように弁境界線を更新する。更新した弁境界線と安全線とを含むようにナビゲーション図形を生成する。これにより、第1の実施形態の効果に加え、カテーテルの先端を逆流位置に案内する精度を向上させることができる。
【0095】
また、心臓弁における少なくとも1つの逆流位置を弁境界線上に設定し、逆流位置と穿刺点とを結んでカテーテルの先端の少なくとも1つの軌道を更に生成する。軌道を更に含むようにナビゲーション図形を生成する。これにより、カテーテルの先端を逆流位置に案内する精度を、より一層向上させることができる。
【0096】
また、複数の逆流位置が設定されたとき、穿刺点を通るカテーテルの先端の進行に応じて先端と複数の逆流位置のいずれかとを結ぶように軌道を更新する更新処理を実行する。全ての逆流位置にクリップが留置されるまで更新処理を繰り返し実行する。これにより、複数の逆流位置がある場合に、カテーテルの先端を各々の逆流位置に案内する精度を向上させることができる。
【0097】
<第2変形例>
第2変形例は、図8に一例を示すように、ナビゲーション図形100の安全線S1,S2を曲線とした形態である。ここで、ナビゲーション図形100は、複数の安全線S1,S2と弁境界線L1とにより囲まれた曲面を形成する。ナビゲーション図形100は、複数の安全線S1,S2と弁境界線L1とのうちの2つを互いに結ぶ三点を角とする図形である。また、前述同様に、ナビゲーション図形100が形成する面の投影面積が最小となる第1方向から第2医用画像が撮像された場合に、複数の安全線S1,S2は互いに略重なってカテーテル101の軌道を示唆する。また同様に、ナビゲーション図形100が形成する面の投影面積が最大となる第2方向から第2医用画像が撮像された場合に、複数の安全線S1,S2はそれぞれカテーテル101の軌道の限界を示唆する。また、ナビゲーション図形100は、図8の右下側に示すように、弁境界線L1に垂直に突入できるように、クリップ102を案内する。
【0098】
これに伴い、処理回路37の図形生成機能372は、自動的に安全線S1,S2の曲線を描いてもよい。この場合、図形生成機能372は、右心房RAにあるカテーテル101の曲率を検出し、検出結果に基づいて曲率変化が少ないように、穿刺点p1と端部e1,e2とを結ぶ安全線S1,S2の曲線を描くことが好ましい。カテーテル101は、物理的実体であり、急に曲がったり折れたりしないためである。あるいは、図形生成機能372は、操作者による入力インタフェース33の操作を促して当該操作に応じて安全線S1,S2の曲線を描くようにしてもよい。この場合、図形生成機能372は、互いに異なる曲率を有する複数の曲線パターンを予め準備しておき、複数の曲線パターンのいずれかを操作者に選択させてもよい。あるいは、図形生成機能372は、操作者が描いた安全線S1,S2の曲線を、右心房RAにあるカテーテル101の曲率に対して曲率変化が少ないように補正してもよい。
【0099】
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0100】
以上のような第2変形例によれば、ナビゲーション図形100が複数の安全線S1,S2と弁境界線L1とにより囲まれた曲面を形成する。これにより、第1の実施形態の効果に加え、複数の安全線を曲線とすることにより、カテーテルの先端を弁境界線に垂直に突入するように案内することができる。従って、カテーテル治療の安全性及び正確性をより一層、向上させることができる。
【0101】
<第3変形例>
第3変形例は、ナビゲーション図形100の色、線種、表示のオン/オフといった、形状以外の表示設定に関する形態である。
【0102】
これに伴い、メモリ31は、例えば図9に示すように、入力インタフェース33の操作に応じて更新可能な設定テーブル31Tを保存する。
【0103】
ここで、設定テーブル31Tは、画像名、制御対象、選択肢及びフラグを関連付けて記憶する。画像名としては、例えば、「ナビゲーション図形」及び「ボリューム画像」などが適宜、使用可能となっている。制御対象としては、例えば、「色」、「線種」、「表示」などが適宜、使用可能となっている。選択肢としては、「真白」、「真黒」、「カラー」などが適宜、使用可能となっている。「カラー」は、デフォルトで特定の色が設定されていてもよく、時間毎に色が変わる設定でもよい。フラグとしては、選択「1」、非選択「0」などが適宜使用可能となっている。
【0104】
図形生成機能372は、前述した機能に加え、設定テーブル31Tに基づいて、色や線種を調整したナビゲーション図形100を生成する。
【0105】
重畳画像生成機能373は、前述した機能に加え、設定テーブル31Tに基づいて、ボリューム画像を更に重畳させて重畳画像を生成する。
【0106】
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0107】
以上のような第3変形例によれば、画像名、制御対象、選択肢及びフラグを関連付けて記憶する設定テーブルに基づいて、重畳画像を生成する。これにより、第1の実施形態の効果に加え、操作者の好みに応じて、ナビゲーション図形やボリューム画像を見易く表示することができる。
【0108】
例えば、ナビゲーション図形100を透視画像上に表示する際には、真白、真黒又はカラーで線を表示することができる。ナビゲーション図形100の線を実線又は点線等に適宜調整できる。ナビゲーション図形100の表示をオン又はオフに調整できる。また、透視画像上に、ボリューム画像を投影した重畳画像とナビゲーション図形100とを同時に表示することができる。これにより、X線透視画像上に写らない僧帽弁mvがボリューム画像から視認できるようになる。ナビゲーション図形100及びボリューム画像を個別にオン/オフ制御することができる。
【0109】
<第4変形例>
第4変形例は、ナビゲーション図形100の回転表示に関する形態である。
【0110】
これに伴い、図形生成機能372は、前述した機能に加え、メモリ31内の第1相対位置及び第2相対位置が示す各アーム91,191の角度に応じた回転角度となるようにナビゲーション図形100を生成する。
【0111】
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0112】
以上のような第4変形例によれば、各アーム91,191の角度に応じた回転角度となるようにナビゲーション図形100を生成する。X線透視画像は、各アーム91,191の角度に応じてリアルタイムで撮像されている。このため、重畳画像は、各アーム91,191の回転に応じて、回転したX線透視画像に、回転したナビゲーション図形100を重畳させて生成される。従って、第1の実施形態の効果に加え、各アーム91,191の回転に応じてナビゲーション図形100を回転表示することができる。
【0113】
<第5変形例>
第5変形例は、心位相毎のナビゲーション図形を心拍運動に同期させて切り替えるといった、形状の変化を伴う表示制御に関する形態である。これに伴い、第5変形例では、図2に示した心電計43が用いられる。また、心電計43の心電波形信号に基づいて、心位相毎に、ボリューム画像が取得される。
【0114】
また、処理回路37の設定機能371は、前述した機能に加え、心位相毎のボリューム画像に対して、弁境界線L1及び穿刺点p1の設定を実行する。
【0115】
図形生成機能372は、心位相毎に設定された弁境界線L1及び穿刺点p1に基づいて、心位相毎に複数の安全線S1,S2を生成することにより、心位相毎にナビゲーション図形100を生成する。
【0116】
重畳画像生成機能373は、心電計43の心電波形信号に基づいて、心拍運動に同期させて、対応する心拍フェーズのナビゲーション図形100をX線透視画像に重畳して重畳画像を生成する。
【0117】
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0118】
以上のような第5変形例によれば、心位相毎にナビゲーション図形を生成し、心拍運動に同期させて、対応する心位相のナビゲーション図形を含む重畳画像を生成する。これにより、心拍運動に同期させたナビゲーション画像を表示することができる。
【0119】
<第6変形例>
第6変形例は、図10及び図11に示すように、カテーテル101の先端の進行に応じて、ナビゲーション図形100を更新する形態である。
【0120】
これに伴い、図形生成機能372は、重畳画像上でカテーテル101が内壁に穿刺された後には、穿刺点p1に代えてカテーテル101の先端と弁境界線L1の端部e1,e2とを個別に結ぶように複数の安全線S1,S2を更新することにより、ナビゲーション図形100を更新する。
【0121】
これに加え、図形生成機能372は、ナビゲーション図形100の更新と共に、カテーテル101の先端と弁境界線L1との間の距離をミリメートル単位で数値表示してもよい。これは、カテーテル101の先端と弁境界線L1の中央位置との間の距離としてもよく、カテーテル101の先端と、弁境界線L1上の指定位置との間の距離としてもよい。指定位置は、例えば、入力インタフェース33の操作により指定された逆流位置とすればよい。
【0122】
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0123】
以上のような第6変形例によれば、重畳画像上でカテーテルが内壁に穿刺された後には、穿刺点に代えてカテーテルの先端と弁境界線の端部とを個別に結ぶように複数の安全線を更新することにより、ナビゲーション図形を更新する。従って、第1の実施形態の効果に加え、カテーテルが進んだ距離と残りの距離とに応じて、ナビゲーション図形を変化させるため、カテーテル治療の進行具合を視覚的に提示することができる。
【0124】
補足すると、処理回路37がカテーテル101の先端を検知し、カテーテル101の先端の進行に応じてナビゲーション図形100を更新するため、操作者の確信をより一層、高めることができる。
【0125】
また、処理回路37がカテーテル101の先端を検知し、カテーテル101の先端に装着されたクリップ102の根元から弁境界線L1までの距離を評価できるため、操作者の確信をより一層、高めることができる。
【0126】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、カテーテル治療の手技開始前に、被検体Pのボリュームデータを取得している形態に関する。
【0127】
多くの場合、手技開始前にボリューム画像(3Dデータ)が得られている。ここで、ボリューム画像としては、CT、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴イメージング)、TTE(transthoracic echocardiography:経胸心エコー)、TEE(transesophageal echocardiography:経食道心エコー)のいずれかの画像データが使用可能となっている。通常は、CTデータ又はTEEデータがボリューム画像として得られている場合が多い。ボリューム画像がある場合、手技開始前に、三次元空間内の弁境界線L1及び安全線S1,S2を生成可能である。手技開始後に、ボリューム画像とX線透視画像との位置合わせ(registration)が実行され、ずれの解消後、ナビゲーション図形100がX線透視画像に重畳される。
【0128】
これに伴い、重畳画像生成機能373は、前述した機能に加え、メモリ31内のボリュームデータ(第1医用画像)とX線透視画像(第2医用画像)とを位置合わせする機能をもっている。
【0129】
図形生成機能372は、手技開始前に計算された三次元空間内の穿刺点p1と、位置合わせ後にX線透視画像から検出した穿刺点p1x(図示せず)とのずれを解消するように、三次元空間内の穿刺点p1を更新する。具体的には、図形生成機能372は、重畳画像上でカテーテル101が内壁に穿刺されたときには、穿刺点p1に代えて当該穿刺された位置p1xと弁境界線L1の端部e1,e2とを個別に結ぶように複数の安全線S1,S2を更新することにより、ナビゲーション図形100を更新する。
【0130】
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0131】
次に、以上のように構成されたX線診断装置の動作について図12のフローチャートを用いて説明する。
【0132】
手技前のステップST21において、前述したステップST1~ST3と同様に、左心房LAのボリューム画像を取得してメモリ31に保存する。
【0133】
手技前のステップST22において、画像処理装置30の処理回路37は、メモリ31に保存されたボリューム画像をディスプレイ35に表示させる。設定機能371は、操作者による入力インタフェース33の操作に応じて、左心房LA内の僧帽弁mvが有する弁葉間の弁境界線L1と、手技前の計画上の穿刺点p1とを設定する。
【0134】
また、図形生成機能372は、計画上の穿刺点p1と、弁境界線L1の端部e1,e2とを安全線S1,S2で結ぶ図形を三次元空間内で計算する。計算結果の図形は、ボリューム画像に重畳され、ボリューム画像と共にメモリ31に保存される。
【0135】
次に、手技を開始する。手技開始後のステップST23において、X線診断装置1は、Cアーム91,Ωアーム191を静止させた状態で、X線撮像を行う。このとき、X線診断装置1は、互いに直交する方向から第1X線及び第2X線を被検体Pの心臓領域に照射し、第1X線検出器7及び第2X線検出器17の出力に基づいて、それぞれX線透視画像を生成する。なお、前述同様に、第1X線及び第2X線は、同時に照射してもよく、いずれか一方を照射してもよい。いずれにしても、生成されたX線透視画像は、メモリ31にディスプレイ35に表示される。
【0136】
ステップST24において、重畳画像生成機能373は、表示中のX線透視画像と、計算結果の図形が重畳されたボリューム画像とを位置合わせする。
【0137】
ステップST25において、図形生成機能372は、ステップST22で計算した3次元空間内の図形を2次元平面に投影したナビゲーション図形100を生成する。重畳画像生成機能373は、ナビゲーション図形100をX線透視画像に重畳した重畳画像を生成する。表示制御機能374は、重畳画像をディスプレイ35に表示させる。
【0138】
ステップST26において、操作者は、重畳画像を参照しながら、カテーテル101を心房中隔に穿刺して右心房RAから左心房LAにカテーテル101を進める。この時点で、事前に計画した時に計算された心房中隔の穿刺点p1と、実際の穿刺点p1xとの間にずれが発生する場合がある。
【0139】
ステップST27において、図形生成機能372は、計画上の穿刺点p1と、位置合わせ後に重畳画像におけるX線透視画像から検出した穿刺点p1xとのずれを解消するように、計画上の穿刺点p1の座標を更新する。なお、弁境界線L1の端部e1,e2の座標は更新しない。X線透視画像は2D画像であり、穿刺点p1は3次元空間にあるため、厳密な更新ができないが、運用上問題ない精度での更新が可能である。
【0140】
ステップST28において、図形生成機能372は、更新された穿刺点p1に基づき、ナビゲーション図形100を更新する。重畳画像生成機能373は、ナビゲーション図形100をX線透視画像に重畳した重畳画像を更新する。表示制御機能374は、更新された重畳画像をディスプレイ35に表示させる。
【0141】
以下、ステップST29において、前述したステップST10と同様の処理が実行される。
【0142】
上述したように第2の実施形態によれば、ステップST1~ST3における造影座位を用いた3D撮像によりボリューム画像を取得するステップが不要になるので、第1の実施形態及び各変形例の効果に加え、時間短縮と造影剤低減が可能となる。
【0143】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、第2の実施形態の変形例であり、計画上の穿刺点p1を更新しない形態である。
【0144】
これに伴い、図形生成機能372は、第2の実施形態で用いた、計画上の穿刺点p1を更新する機能が省略される。
【0145】
他の構成は、第2の実施形態と同様である。
【0146】
以上のような構成によれば、図13に示すように、穿刺点p1の更新に関するステップST27,ST28が省略され、前述したステップST21~ST26,ST29が実行される。
【0147】
このとき、手技開始前に計画した穿刺点p1に基づくナビゲーション図形100をX線透視画像に重畳した重畳画像が表示される。操作者は、この重畳画像を参照しながらカテーテル治療を行う。これにより、第2の実施形態の効果に加え、精度が落ちるものの、穿刺点p1を更新する処理を省略することができる。なお、ナビゲーション図形100を重畳せず、X線透視画像とは別の画面(ウインドウ画面、モニタ画面)にナビゲーション図形100を表示してもよい。
【0148】
<第4の実施形態>
第4の実施形態は、第1乃至第3の各実施形態の変形例であり、穿刺点p1及び弁境界線L1の設定にボリューム画像を用いず、少なくとも1方向から造影撮像した2次元X線造影画像を用いる形態である。すなわち、第4の実施形態では、3次元空間内で三角形などの図形を計算せず、2次元空間内で穿刺点p1と弁境界線L1の端部とを結ぶ図形を定義する。
【0149】
これに伴い、メモリ31は、少なくとも1つの2次元X線造影画像を第1医用画像として記憶する。但し、複数方向から撮像した複数の2次元X線造影画像を第1医用画像として記憶することが、リスク軽減の観点から好ましい。複数方向としては、例えば2方向又は3方向としてもよい。
【0150】
設定機能371は、前述した設定の際に、第1医用画像として2次元X線造影画像を用いる。
【0151】
図形生成機能372は、2次元X線造影画像上に設定された穿刺点p1と弁境界線の端部e1,e2とを個別に結ぶ複数の安全線S1,S2を生成することにより、弁境界線L1と安全線S1,S2とを含むナビゲーション図形100を生成する。ここで、図形生成機能372としては、撮像方向毎に2次元X線造影画像上に設定された弁境界線L1と安全線S1,S2とにより囲まれた図形を、2次元空間のナビゲーション図形100としてもよい。すなわち、撮像方向毎に、個別にナビゲーション図形100を生成してもよい。
【0152】
あるいは、図形生成機能372は、撮像方向毎に2次元X線造影画像上に設定された弁境界線L1と安全線S1,S2とを用いてエピポーラ理論に基づく計算を実行してもよい。この場合、図形生成機能372は、3次元空間内で弁境界線L1と安全線S1,S2とにより囲まれた図形を計算し、当該計算した図形を2次元空間に投影したナビゲーション図形100を生成する。すなわち、複数の撮像方向に基づく3次元空間内で図形を計算し、ナビゲーション図形100を生成してもよい。
【0153】
他の構成は、第1乃至第3の各実施形態と同様である。
【0154】
次に、以上のように構成されたX線診断装置の動作を図14のフローチャートを用いて説明する。
【0155】
ステップST31において、操作者は、X線透視画像を参照しながら、被検体Pの大腿静脈からカテーテルを右心房RAに進め、カテーテルを心房中隔に穿刺して左心房LAに挿入する。
【0156】
ステップST32において、穿刺の後、X線診断装置1は、各アーム91,191を静止させた状態で、デジタルアンギオグラフィ造影撮像を行い、左心房LAの2次元X線造影画像を取得する。この2次元X線造影画像はメモリ31に保存される。
【0157】
ステップST33において、他の方向から造影撮像する場合には、X線診断装置1は、操作者の操作により、新たに撮像する方向にCアーム91を回転移動させた後、ステップST32を再実行する。また、他の方向から造影撮像しない場合には、ステップST34に進む。なお、撮像方向が1つの場合、ステップST33は省略される。
【0158】
ステップST34において、画像処理装置30の処理回路37は、ある撮像方向の2次元X線造影画像をメモリ31から読み出してディスプレイ35に表示させる。設定機能371は、操作者による入力インタフェース33の操作に応じて、2次元X線造影画像上で、左心房LA内の僧帽弁mvが有する弁葉間の弁境界線L1と、カテーテルの穿刺点p1とを設定する。
【0159】
ステップST35~ST36において、図形生成機能372は、穿刺点p1と弁境界線L1の端部e1,e2とを結ぶ複数の安全線S1,S2を生成することにより、弁境界線L1と安全線S1,S2とを含むナビゲーション図形100を生成する。
【0160】
ステップST37において、他の撮像方向のナビゲーション図形を生成する場合には、当該他の撮像方向に関して、ステップST34~ST36を再実行する。また、他の撮像方向のナビゲーション図形を生成しない場合には、ステップST38に進む。なお、撮像方向が1つの場合、ステップST37は省略される。
【0161】
ステップST38において、X線診断装置1は、Cアーム91,Ωアーム191を静止させた状態で、例えば、ある撮像方向から第1X線を被検体Pの心臓領域に照射し、第1X線検出器7の出力に基づいて、X線透視画像を生成する。重畳画像生成機能373は、ナビゲーション図形100をX線透視画像に重畳した重畳画像を生成する。表示制御機能374は、重畳画像をディスプレイ35に表示させる。
【0162】
ステップST39において、操作者は、Cアーム91の角度を変えずに手技を続行すれば、ナビゲーション図形100を参照しながら、カテーテル101の先端に装着されたクリップ102を前方に進めることができる。このとき、適宜、撮像方向を変更し、当該変更に応じたX線透視画像とナビゲーション図形との重畳画像をディスプレイ35に表示させてもよい。また前述同様に、クリップ102の回転角度を調整することもできる。以下、操作者は、前述同様に手技を実行し、カテーテル治療が完了する。
【0163】
上述したように第4の実施形態によれば、第1医用画像として2次元X線造影画像を用いた構成としても、第1乃至第3の各実施形態及び各変形例と同様の効果を得ることができる。
【0164】
<第5の実施形態>
第5の実施形態は、第1乃至第4の各実施形態の変形例であり、TEE(transesophageal echocardiography:経食道心エコー)を用いる形態である。
【0165】
例えば、僧帽弁のカテーテル治療では、超音波プローブの一例であるTEEプローブの先端を被検体の食道から挿入して被検体内から心臓などを観測するTEEが一般的に用いられる。TEEプローブを固定する場合、あるいは3次元TEEを用いる場合には、3次元情報をリアルタイムに取得可能である。
【0166】
これに伴い、第5の実施形態では、超音波診断装置において、TEEボリューム画像内で穿刺位置p1及び弁境界線L1を設定し、穿刺位置p1と弁境界線L1の端部とを結ぶ複数の安全線S1,S2を生成し、ナビゲーション図形100を生成する。X線診断装置1は、超音波診断装置により生成されたナビゲーション図形100をX線透視画像に重畳して重畳画像を生成及び表示する。
【0167】
具体的には、図15に示すように、超音波診断装置120がネットワークを介してX線診断装置1の画像処理装置30に通信可能となっている。
【0168】
ここで、超音波診断装置120は、超音波プローブ121及び装置本体122を備えている。装置本体122は、送受信回路123、画像生成回路124及び画像処理装置130を備えている。画像処理装置130は、少なくとも1つのメモリ131、入力インタフェース133、ディスプレイ135、処理回路137及び通信インタフェース139を備えている。画像処理装置130は、超音波診断装置120が備える場合に限らず、超音波診断装置120の外部装置として設けてもよい。
【0169】
超音波プローブ121は、複数の圧電振動子が配置された細い管状の先端部を有し、この先端部を被検体の食道に挿入して被検体内から超音波を送受信するTEEプローブである。なお、一つの圧電振動子が一チャンネルを構成するものとして説明する。圧電振動子は、送受信回路123から供給される駆動信号に応答して超音波を発生する。圧電振動子は、被検体の生体組織で反射された超音波(反射波)の受信に応答して、受信エコー信号を発生する。超音波プローブとしては、複数の圧電振動子がアジマス方向(ラテラル方向)およびエレベーション方向に配列された2次元アレイプローブとしてもよい。2DアレイタイプのTEEプローブは、電気的な制御により、例えば心臓の直交する断面を同時に観察することが可能である。
【0170】
送受信回路123は、処理回路137による制御のもとで、超音波プローブ121における複数の圧電振動子各々に駆動信号を供給する。送受信回路123は、各圧電振動子によって発生された受信エコー信号に基づいて、受信信号を発生する。具体的には、送受信回路123は、図示していないパルス発生器と、送信遅延回路と、パルサ回路と、プリアンプと、アナログディジタル(Analog to digital(以下、A/Dと呼ぶ))変換器と、受信遅延回路と、加算器とを有する。
【0171】
画像生成回路124は、超音波プローブ121の出力に基づいて、被検体の心臓領域の超音波画像をリアルタイムに生成する。具体的には例えば、画像生成回路124は、図示していないBモード処理ユニットとドプラ処理ユニットとを有する。Bモード処理ユニットは、図示していない包絡線検波器、対数変換器などを有する。包絡線検波器は、送受信回路123から出力された受信信号に対して包絡線検波を実行する。包絡線検波器は、包絡線検波された信号を、後述する対数変換器に出力する。対数変換器は、包絡線検波された信号に対して対数変換して弱い信号を相対的に強調する。Bモード処理ユニットは、対数変換器により強調された信号に基づいて、各走査線および各超音波送受信における深さごとの信号値(Bモードデータ)を発生する。
【0172】
なお、Bモード処理ユニットは、被走査領域におけるラテラル方向、エレベーション方向、深さ方向(以下、レンジ方向と呼ぶ)にそれぞれ対応付けて配列された複数の信号値からなる3次元Bモードデータを発生してもよい。レンジ方向とは、走査線上の深さ方向である。なお、3次元Bモードデータは、複数の画素値または複数の輝度値などを、走査線に沿って、ラテラル方向、エレベーション方向、レンジ方向にそれぞれ対応付けて配列させたデータであってもよい。また、3次元Bモードデータは、被走査領域において予め設定された関心領域(Region Of Interest: 以下、ROIと呼ぶ)に関するデータであってもよい。また、Bモード処理ユニットは、3次元Bモードデータの代わりにボリュームデータを発生してもよい。以下、Bモード処理ユニットで発生されるデータをまとめて、Bモードデータと呼ぶ。
【0173】
ドプラ処理ユニットは、図示していないミキサー、低域通過フィルタ、速度/分散/Power演算デバイス等を有する。ミキサーは、送受信回路123から出力された受信信号に、送信周波数と同じ周波数f0を有する基準信号を掛け合わせる。この掛け合わせにより、ドプラ偏移周波数fdの成分の信号と(2f0+fd)の周波数成分を有する信号とが得られる。低域通過フィルタは、ミキサーからの2種の周波数成分を有する信号のうち、高い周波数成分(2f0+fd)の信号を取り除く。ドプラ処理ユニットは、高い周波数成分(2f0+fd)の信号を取り除くことにより、ドプラ偏移周波数fdの成分を有するドプラ信号を発生する。なお、ドプラ処理ユニットは、ドプラ信号を発生するために、直交検波方式を用いてもよい。ドプラ信号は、例えば、血流、組織、造影剤によるエコー成分である。
【0174】
速度/分散/Power演算デバイスは、図示していないMTI(Moving Target Indicator)フィルタ、自己相関演算器等を有する。MTIフィルタは、発生されたドプラ信号に対して、臓器の呼吸性移動や拍動性移動などに起因するドプラ成分(クラッタ成分)を除去する。自己相関演算器は、MTIフィルタによって血流情報のみが抽出されたドプラ信号に対して、自己相関値を算出する。自己相関演算器は、算出された自己相関値に基づいて、血流の平均速度値、分散値、ドプラ信号の反射強度等を算出する。速度/分散/Power演算デバイスは、複数のドプラ信号に基づく血流の平均速度値、分散値、ドプラ信号の反射強度等に基づいて、カラードプラデータを発生する。以下、ドプラ信号とカラードプラデータとをまとめて、ドプラデータと呼ぶ。
【0175】
また、ドプラデータとBモードデータとをまとめてローデータ(Raw Data)と呼ぶ。ローデータは、エコー信号のうち、送信超音波の高調波成分によるBモードデータ、および被検体内の生体組織に関する弾性データであってもよい。Bモード処理ユニットおよびドプラ処理ユニットは、発生したローデータを後述するディジタルスキャンコンバータ(Digital Scan Converter:以下DSCと呼ぶ)に出力する。Bモード処理ユニットおよびドプラ処理ユニットは、発生したローデータを図示していないシネメモリに出力することも可能である。
【0176】
画像生成回路124は、図示していないDSCを有する。画像生成回路124は、DSCに対して、座標変換処理(リサンプリング)を実行する。座標変換処理とは、例えば、ローデータからなる超音波スキャンの走査線信号列を、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換することである。画像生成回路124は、座標変換処理に続けて補間処理を、DSCに対して実行する。補間処理とは、隣り合う走査線信号列におけるローデータを用いて、走査線信号列間にデータを補間する処理である。
【0177】
画像生成回路124は、ローデータに対して座標変換処理と補間処理とを実行することにより、表示画像としての超音波画像を生成する。なお、画像生成回路124は、生成した超音波画像に対応するデータを記憶する画像メモリを有していてもよい。画像生成回路124は、生成された超音波画像に、種々のパラメータの文字情報および目盛等を合成する。Bモードデータを用いて生成された超音波画像をBモード画像と呼んでもよい。また、ドプラデータを用いて生成された超音波画像をドプラ画像と呼んでもよい。また、TEEプローブの出力に基づいて生成された超音波ボリューム画像をTEEボリューム画像と呼んでもよい。
【0178】
シネメモリは、例えばフリーズする直前の複数のフレームに対応する超音波画像を保存するメモリである。このシネメモリに記憶されている画像を連続表示(シネ表示)することで、超音波動画像を表示することも可能である。
【0179】
メモリ131は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)及び画像メモリなど電気的情報を記録するメモリと、それらメモリに付随するメモリコントローラやメモリインタフェースなどの周辺回路から構成されている。メモリ131は、フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターン、本超音波診断装置の制御プログラム、診断プロトコル、送受信条件等の各種データ群、Bモードデータ、ドプラデータ、画像生成回路124で生成されたBモード画像、ドプラ画像、TEEボリューム画像などを記憶する。例えば、メモリ131は、予め複数の方向から撮像された心臓領域の超音波画像を第1医用画像として記憶し、画像生成回路124により生成された超音波画像を記憶してもよい。
【0180】
入力インタフェース133は、操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定を装置本体122に入力するためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インタフェース133は、処理回路137に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路137へと出力する。なお、本明細書において入力インタフェース133はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路137へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース133の例に含まれる。
【0181】
ディスプレイ135は、処理回路137に制御され、超音波画像、ナビゲーション図形及び重畳画像などを表示する。ディスプレイ135は、ディスプレイ本体に表示用の信号を供給する内部回路と、内部回路に接続されたコネクタやケーブルなどの周辺回路から構成されている。ディスプレイ135は、画像生成回路124で生成された各種超音波画像を表示する。また、ディスプレイ135は、画像生成回路124で生成された超音波画像に対して、ブライトネス、コントラスト、ダイナミックレンジ、γ補正などの調整および、カラーマップの割り当てを実行してもよい。
【0182】
処理回路137は、図示しないプロセッサとメモリを備えている。処理回路137は、操作者により入力インタフェース133を介してから入力されたモード選択、受信遅延パターンリストの選択、送信開始・終了に基づいて、メモリ131に記憶された送受信条件と装置制御プログラムを読み出し、これらに従って本超音波診断装置の本体を制御する。例えば、処理回路137のプロセッサは、メモリ131から読み出した制御プログラムに従って、送受信回路123及び画像生成回路124などを制御する。
【0183】
これに加え、処理回路137のプロセッサは、メモリ131内のプログラムを呼び出し実行することにより、プログラムに対応する設定機能1371、図形生成機能1372、重畳画像生成機能1373及び表示制御機能1374を実現する。なお、図15においては単一の処理回路137にて設定機能1371、図形生成機能1372、重畳画像生成機能1373及び表示制御機能1374が実現されるものとして説明した。但し、これに限らず、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしても構わない。また、設定機能1371、図形生成機能1372、重畳画像生成機能1373及び表示制御機能1374の分担は、便宜的なものであり、適宜、変更可能である。例えば、設定機能1371の設定処理を図形生成機能1372が実行してもよい。
【0184】
ここで、設定機能1371は、メモリ131に保存されたTEEボリューム画像から心腔内の心臓弁が有する弁葉間の境界を示す弁境界線と、カテーテルを挿入するための心腔の内壁の穿刺点とをそれぞれ設定する。例えば前述同様に、図16に示すように、設定機能1371は、操作者による入力インタフェース133の操作に応じて、穿刺点p1と、左心房LA内の僧帽弁mvの弁葉間の境界の複数の端部e1,e2が指定されたとする。このとき、設定機能1371は、穿刺点p1を設定すると共に、当該複数の端部e1,e2を直線で結んだ弁境界線L1を設定する。
【0185】
図形生成機能1372は、内壁から離れて穿刺点p1と弁境界線の端部e1,e2とを個別に結ぶ複数の安全線S1,S2を生成することにより、弁境界線L1と安全線S1,S2とを含むナビゲーション図形100を生成する。例えば、図形生成機能1372は、操作者による入力インタフェース133の操作に応じて、穿刺点が指定されると、当該穿刺点と弁境界線の複数の端部とを直線又は曲線で結ぶ複数の安全線を生成する。また例えば、図形生成機能1372は、穿刺点と曲率とが指定されると、当該穿刺点と弁境界線の複数の端部とを当該曲率の曲線で結ぶ複数の安全線を生成する。
【0186】
図形生成機能1372は、生成したナビゲーション図形100を含むTEEボリューム画像をX線診断装置1に送信してもよい。
【0187】
重畳画像生成機能1373は、ナビゲーション図形を超音波画像に重畳して重畳画像を生成する。表示制御機能1374は、重畳画像をディスプレイ135に表示させる。但し、重畳画像生成機能1373及び表示制御機能1374は、本実施形態では用いず、後述する変形例で用いる。
【0188】
通信インタフェース139は、有線、無線又はその両方にて外部装置と通信するための回路である。外部装置は、例えば、モダリティ、画像処理装置、放射線部門情報管理システム(RIS:Radiological Information System)、病院情報システム(HIS:Hospital Information System)及びPACS(Picture Archiving and Communication System)等のシステムに含まれるサーバ、あるいは他のワークステーション等である。
【0189】
次に、以上のように構成された超音波診断装置及びX線診断装置の動作を図17のフローチャートを用いて説明する。なお、被検体Pは、X線診断装置1の天板24に載置され、且つTEEプローブとしての超音波プローブ121の先端が食道から挿入されているものとする。
【0190】
ステップST41において、操作者は、X線透視画像を参照しながら、被検体Pの大腿静脈からカテーテルを右心房RAに進め、カテーテルを心房中隔に穿刺して左心房LAに挿入する。
【0191】
ステップST42~ST43において、超音波診断装置120は、超音波プローブ121の出力に基づいて、TEEにより3次元撮像を行う。これにより、超音波診断装置120は、被検体Pの左心房LAのTEEボリューム画像を取得する。このTEEボリューム画像はメモリ131に保存される。
【0192】
ステップST44において、画像処理装置130の処理回路137は、TEEボリューム画像をメモリ131から読み出してディスプレイ135に表示させる。設定機能1371は、操作者による入力インタフェース133の操作に応じて、TEEボリューム画像上で、左心房LA内の僧帽弁mvが有する弁葉間の弁境界線L1と、カテーテルの穿刺点p1とを設定する。
【0193】
ステップST45~ST46において、図形生成機能1372は、穿刺点p1と弁境界線L1の端部e1,e2とを結ぶ複数の安全線S1,S2を生成することにより、弁境界線L1と安全線S1,S2とを含むナビゲーション図形100を生成する。
【0194】
ステップST47において、図形生成機能1372は、通信インタフェース139により、ナビゲーション図形100を含むTEEボリューム画像をネットワーク経由でX線診断装置1に送信する。
【0195】
ステップST48において、X線診断装置1の画像処理装置30は、通信インタフェース39により、TEEボリューム画像を受信してメモリ31に保存する。
【0196】
ステップST49において、画像処理装置30の重畳画像生成機能373は、メモリ31からTEEボリューム画像を読み出し、TEEボリューム画像内のナビゲーション図形100をX線透視画像に重畳し、重畳画像を生成する。表示制御機能374は、重畳画像をディスプレイ35に表示させる。
【0197】
ステップST50において、操作者は、前述同様に、ナビゲーション図形100を参照しながら、カテーテル101の先端に装着されたクリップ102を前方に進めることができる。また前述同様に、クリップ102の回転角度を調整することもできる。以下、操作者は、前述同様に手技を実行し、カテーテル治療が完了する。
【0198】
上述したように第5の実施形態によれば、第1医用画像が超音波ボリューム画像であり、第2医用画像がX線透視画像であり、超音波診断装置がナビゲーション図形を生成し、X線診断装置が重畳画像を生成する構成としても、第1乃至第4の各実施形態及び各変形例と同様の効果を得ることができる。
【0199】
<変形例>
第5の実施形態の変形例について説明する。
【0200】
この変形例は、図15中、X線診断装置1が省略され、超音波診断装置120により、ナビゲーション図形を超音波画像に重畳した重畳画像を表示する形態である。
【0201】
これに伴い、この変形例では、超音波診断装置120において、前述した重畳画像生成機能1373及び表示制御機能1374が用いられる。また、メモリ131は、例えば、予め複数の方向から撮像された心臓領域の第1医用画像を記憶し、画像生成回路124で生成された超音波画像を第2医用画像として記憶する。また、メモリ131は、記憶部の一例である。また、ディスプレイ135は、表示部の一例である。
【0202】
超音波診断装置120の他の構成は、第5の実施形態と同様である。
【0203】
次に、以上のように構成された超音波診断装置の動作について図18のフローチャートを用いて説明する。被検体Pは、図示しない寝台に載置され、TEEプローブとしての超音波プローブ121の先端が食道から挿入されているものとする。
【0204】
ステップST41aにおいて、操作者は、TEE画像を参照しながら、被検体Pの大腿静脈からカテーテルを右心房RAに進め、カテーテルを心房中隔に穿刺して左心房LAに挿入する。
【0205】
次に、ステップST42~ST46が前述同様に実行され、TEEボリューム画像上にナビゲーション図形100が生成される。このTEEボリューム画像はメモリ131に保存される。
【0206】
ステップST49aにおいて、超音波診断装置120の重畳画像生成機能1373は、メモリ131からTEEボリューム画像を読み出し、TEEボリューム画像内のナビゲーション図形100をTEE画像に重畳し、重畳画像を生成する。表示制御機能1374は、重畳画像をディスプレイ135に表示させる。
【0207】
ステップST50aにおいて、操作者は、TEE画像上のナビゲーション図形100を参照しながら、前述同様に、カテーテル101の先端に装着されたクリップ102を回転及び進行させることができる。以下、操作者は、前述同様に手技を実行し、カテーテル治療が完了する。
【0208】
上述したようにこの変形例によれば、第1医用画像が超音波ボリューム画像であり、第2医用画像が超音波画像であり、超音波診断装置がナビゲーション図形及び重畳画像を生成する構成としても、第5の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第5の実施形態の効果として得られる第1乃至第4の各実施形態及び各変形例と同様の効果を得ることができる。
【0209】
すなわち、超音波診断装置120は、ナビゲーション図形100をX線透視画像に重畳させることなく、TEE画像内でナビゲーション図形100を表示する。操作者は、TEE画像上に表示されたナビゲーション図形100を参照しながらカテーテル先端のクリップ102を進行及び回転させることができる。このようにしても、第1乃至第5の各実施形態及び各変形例と同様の効果を得ることができる。
【0210】
<第6の実施形態>
第6の実施形態は、第1乃至第5の各実施形態の変形例であり、ナビゲーション図形100を見易くする観点から、ナビゲーション図形100が形成する面の投影面積に基づいて、各アーム91,191を制御する形態である。
【0211】
具体的には図形生成機能372は、図19に示すように、安全線S1,S2と弁境界線L1とを含むナビゲーション図形100を生成した後、ナビゲーション図形100が形成する面の投影面積が最大となる撮像方向d1を示す情報を制御回路41に送出する。制御回路41は、撮像方向d1を示す情報に基づいて、Ωアーム191の位置を制御する。ナビゲーション図形100が形成する面が三角形の場合、図19中央の三次元空間上の三角形と、図19左側の二次元空間上の三角形とは、互いに平行となる。このような撮像方向d1は、例えば、弁境界線L1に垂直な方向であり、且つ、弁境界線L1の中点M1と穿刺点p1とを結ぶ二分線Lhにも垂直な方向として、求めればよい。なお、撮像方向d1を弁境界線L1及び二分線Lhから求める場合、ナビゲーション図形100が形成する面の投影面積を求める必要はない。投影面積を求める場合には、例えば、図19左側の二次元空間上の三角形の面積として求めてもよく、当該二次元空間上の三角形が囲む画素の個数を計数して求めてもよい。
【0212】
また、図形生成機能372は、このときのΩアーム191による撮像方向d1とは垂直に交わる撮像方向d2を示す情報を制御回路41に送出する。制御回路41は、撮像方向d2を示す情報に基づいて、Cアーム91を制御する。このときのCアーム91による撮像方向は、ナビゲーション図形100が形成する面の投影面積が最小となる方向となっている。図19中央の三次元空間上の三角形と、図19右側の二次元空間上の直線とは、互いに同一平面上にある。すなわち、三次元空間上の図形(三角形)が属する平面と、二次元空間上の図形(直線)が属する平面とは互いに直交する。このような撮像方向d2は、例えば、弁境界線L1に平行な方向として、求めればよい。また同様に、撮像方向d2を弁境界線L1から求める場合、ナビゲーション図形100が形成する面の投影面積を求める必要はない。投影面積を求める場合には、例えば、図19右側の二次元空間上の略直線状の三角形の面積として求めてもよく、当該二次元空間上の略直線状の三角形が囲む画素の個数を計数して求めてもよい。
【0213】
なお、図20に示すように、安全線S1,S2及び弁境界線L1に囲まれた図形が曲面を生成する場合でも同様に、撮像方向d1,d2を求めることが可能である。なお、撮像方向d1を弁境界線L1及び二分線Lhから求める場合には、撮像方向d1が必ずしも最大の投影面積に対応しない可能性があるが、容易且つ迅速に撮像方向d1を決定できる。撮像方向d2は、弁境界線L1に平行な方向としてもよく、図20右側の二次元空間上の略L字状の曲線が囲む画素の個数を計数して求めてもよい。
【0214】
他の構成は、第1乃至第5の各実施形態と同様である。
【0215】
以上のような構成によれば、ナビゲーション図形が形成する面の投影面積に基づいて、各アーム91,191による撮像方向を制御するので、第1乃至第5の各実施形態及び各変形例の効果に加え、表示された重畳画像内のナビゲーション図形を見易くすることができる。
【0216】
例えば、挿入したクリップ102を進行させる際には、撮像方向d1を弁境界線L1に垂直にすると、弁境界線L1とクリップ102の回転角度との関係が視認し易くなる。そこで、三角形を生成した際に、その三角形が最大の投影面積をとる撮像方向d1となるように、Ωアーム191の位置を制御する。また、撮像方向d1に垂直な撮像方向d2として、撮像方向d2を弁境界線L1に平行にすると、三角形が1本の線に投影され、弁境界線L1の位置とクリップ102の進行方向との関係が視認し易くなる。そこで、Ωアーム191の回転に前後して、その三角形が最小の投影面積をとる撮像方向d2となるようにCアーム91の位置を制御する。
【0217】
<変形例>
第6の実施形態の変形例は、X線診断装置1を用いず、超音波診断装置120において、ナビゲーション図形100を見易くする観点から、ナビゲーション図形100が形成する面の投影面積に基づいて、断面の表示を制御する形態である。
【0218】
基本的には、図形生成機能1372は、図19及び図20により説明した図形生成機能372と同様の機能を有する。但し、超音波診断装置120の図形生成機能1372は、各アーム91,191を用いないことに関連して、図形生成機能372とは異なる機能をもつ。
【0219】
すなわち、図形生成機能1372は、図21に示すように、安全線S1,S2と弁境界線L1とを含むナビゲーション図形100を生成する。しかる後、図形生成機能1372は、ナビゲーション図形100が形成する面の投影面積が最大となる投影方向d1aに直交する第1断面SL1を走査する指示を送受信回路123に送出する。送受信回路123は、この指示に基づいて、TEEである超音波プローブ121を制御する。なお、投影方向d1aは、前述した撮像方向d1に対応する。前述同様に、図21中央の三次元空間上の三角形と、図21左側の二次元空間上の三角形とは、互いに平行となる。このような第1断面SL1は、例えば、穿刺点p1と弁境界線L1の端部e1,e2とを含む二次元空間の平面として、求めればよい。なお、第1断面SL1を求める際に、投影面積を求める必要はない。
【0220】
また、図形生成機能1372は、このときの投影方向d1aとは垂直に交わる投影方向d2aに直交する第2断面SL2を走査する指示を送受信回路123に送出する。送受信回路123は、この指示に基づいて、超音波プローブ121を制御する。このときの第2断面SL2は、ナビゲーション図形100が形成する面の投影面積が最小となる。このような第2断面SL2は、例えば、弁境界線L1に直交する平面であり、且つ弁境界線L1の中点M1と穿刺点p1とを含む二次元空間の平面として、求めればよい。なお、中点M1は、逆流位置r1,r2のいずれかに代えてもよい。また、第2断面SL2を求める際に、投影面積を求める必要はない。
【0221】
なお、図22に示すように、安全線S1,S2及び弁境界線L1に囲まれた図形が曲面を生成する場合でも同様に、前述同様に、第1断面SL1及び第2断面SL2を求めることが可能である。
【0222】
以上のような変形例によれば、超音波診断装置120においても、第6の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0223】
<第7の実施形態>
第7の実施形態は、第1乃至第6の各実施形態の変形例であり、X線診断装置1及び超音波診断装置120の外部装置として、画像処理装置230を備えている。画像処理装置230は、少なくとも1つのメモリ231、入力インタフェース233、ディスプレイ235、処理回路237及び通信インタフェース239を備えている。処理回路237は、図示しないプロセッサとメモリを備えている。処理回路237のプロセッサは、メモリ231内のプログラムを呼び出し実行することにより、プログラムに対応する設定機能2371、図形生成機能2372、重畳画像生成機能2373及び表示制御機能2374を実現する。
【0224】
ここで、画像処理装置230は、X線診断装置1及び超音波診断装置120の各々とネットワークを介して通信可能であり、X線診断装置1及び超音波診断装置120の各々の画像処理装置30,130と同様の機能をもっている。これらの画像処理装置30,130,230は、それぞれ特許請求の範囲に記載の画像処理装置の例である。このため、画像処理装置230の説明としては、前述した各診断装置1,120内の画像処理装置30,130の説明から、参照符号の100の位を読み替えることにより、重複した詳細な説明を省略する。
【0225】
すなわち、メモリ231は、前述したメモリ31,131と同様の構成であり、予め複数の方向から撮像された被検体の心臓領域の第1医用画像と、当該心臓領域がリアルタイムに撮像された第2医用画像とを記憶する。この第2医用画像は、X線診断装置1又は超音波診断装置120により生成及び送信され、通信インタフェース239により受信されてメモリ231に書き込まれる。第1医用画像及び第2医用画像については、それぞれ前述した通りである。また、メモリ231は、画像処理装置230のプログラムを記憶する。また、メモリ231は、記憶部の一例である。
【0226】
入力インタフェース233は、前述した入力インタフェース33,133と同様の構成であり、操作者の操作に応じた電気信号を処理回路237に出力する。
【0227】
ディスプレイ235は、前述したディスプレイ35,135と同様の構成であり、処理回路237に制御され、医用画像、ナビゲーション図形及び重畳画像などを表示する。また、ディスプレイ235は、表示部の一例である。
【0228】
処理回路237は、前述した処理回路37,137と同様の構成であり、図示しないプロセッサとメモリを備え、入力インタフェース233にて入力あるいは設定された各種情報がメモリに保存される。処理回路237のプロセッサは、メモリ231内のプログラムを呼び出し実行することにより、プログラムに対応する設定機能2371、図形生成機能2372、重畳画像生成機能2373及び表示制御機能2374を実現する。
【0229】
設定機能2371は、前述した設定機能371,1371と同様の機能であり、メモリ231に保存された第1医用画像から心腔内の心臓弁が有する弁葉間の境界を示す弁境界線と、カテーテルを挿入するための心腔の内壁の挿入点とをそれぞれ設定する。
【0230】
図形生成機能2372は、前述した図形生成機能372,1372と同様の機能であり、内壁から離れて穿刺点p1と弁境界線の端部e1,e2とを個別に結ぶ複数の安全線S1,S2を生成することにより、弁境界線L1と安全線S1,S2とを含むナビゲーション図形100を生成する。
【0231】
重畳画像生成機能2373は、前述した重畳画像生成機能373,1373と同様の構成であり、ナビゲーション図形を第2医用画像に重畳して重畳画像を生成する。
【0232】
表示制御機能2374は、前述した表示制御機能374,1374と同様の構成であり、重畳画像をディスプレイ235に表示させる。
【0233】
通信インタフェース239は、前述した通信インタフェース39,139と同様の構成であり、有線、無線又はその両方にて外部装置と通信するための回路である。外部装置は、前述した通りであるが、特に、モダリティとしてX線診断装置1又は超音波診断装置120が含まれる。
【0234】
このような画像処理装置230は、X線診断装置1内の画像処理装置30が外部装置として設けられたものとして機能する。あるいは、画像処理装置230は、超音波診断装置120内の画像処理装置130が外部装置として設けられたものとして機能する。
【0235】
以上のような構成によれば、X線診断装置1及び超音波診断装置120の外部装置として設けた画像処理装置230が、第1乃至第6の各実施形態及び各変形例の画像処理装置30,130と同様に動作して同様の効果を得ることができる。
【0236】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、第1医用画像から心腔内の心臓弁が有する弁葉間の境界を示す弁境界線と、カテーテルを挿入するための心腔の内壁の穿刺点とをそれぞれ設定する。当該内壁から離れて穿刺点と弁境界線の端部とを個別に結ぶ複数の安全線を生成することにより、弁境界線と安全線とを含むナビゲーション図形を生成する。ナビゲーション図形を第2医用画像に重畳して重畳画像を生成する。重畳画像をディスプレイに表示させる。従って、カテーテル治療の安全性及び正確性を向上できるナビゲーション図形を提供することができる。
【0237】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU (central processing unit)、GPU (Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図2図15及び図23における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0238】
また、図2においては、単一のメモリ31を用いる場合について説明したが、これに限らず、単一のメモリ31に代えて、互いに分散して配置された複数のメモリを用いる構成に変形してもよい。この変形例の場合、例えば、第1医用画像及び第2医用画像の各々を、互いに異なるメモリに記憶させることが可能である。このような変形例は、図15及び図23における単一のメモリ131,231についても同様に実施できる。
【0239】
また、上記説明では、図24(a)~(b)に示すように、2つの弁葉(leaflets)([弁]尖 (cusps))を有する僧帽弁mvに対して、穿刺点p1、弁境界線L1の端部e1,e2を設定することにより、複数の安全線S1,S2を生成する場合を例に挙げて述べている。但し、弁葉の数は、3つでもよい。また、カテーテルは、心臓壁に穿刺することにより左心房LA等に挿入する場合に限らず、心臓壁に穿刺せずに静脈から右心房RAに挿入してもよい。
【0240】
すなわち、上記各実施形態及び各変形例において、図25(a)~(b)に示すように、3つの弁葉([弁]尖)を有する三尖弁tvに対して、挿入点p2、弁境界線L1~L2の端部e1~e4を設定することにより、複数の安全線S1~S4を生成してもよい。また、三尖弁tvの場合、図25(b)に示す例に限らず、適宜、安全線S1,…の本数を減らしてもよい。例えば図25(c)に示すように、内側の2つの安全線S3,S4を省略し、外側の安全線S1,S2を生成してもよい。この場合、弁境界線L1~L2を視認し易くすることができる。また同様に、図25(d)に示すように、手前の安全線S3を省略し、外側及び中央の安全線S1,S2,S4を生成してもよい。このようにしても、弁境界線L1~L2を視認し易くすることができる。あるいは図25(c)~(d)に示す変形例に限らず、所望により、他の安全線を省略してもよい。
【0241】
また、図26(a)~(b)に示すように、3つの弁葉([弁]尖)を有する大動脈弁av又は肺動脈弁pvも同様に、穿刺又は挿入による挿入点p2、弁境界線L1~L3の端部e1~e4を設定することにより、複数の安全線S1~S4を生成可能である。この場合も同様に、例えば図26(c)~(d)に示すように、適宜、安全線S1,…の本数を減らし、弁境界線L1~L3を視認し易くすることができる。あるいは図26(c)~(d)に示す変形例に限らず、所望により、他の安全線を省略してもよい。また図26に示した設定は、三尖弁tvについても適用することができる。
【0242】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0243】
1 X線診断装置
3 高電圧発生装置
5 第1X線管
7 第1X線検出器
9 第1支持機構
91 Cアーム
93 Cアーム支持部
95 第1接続部
11 第1コリメータ
15 第2X線管
17 第2X線検出器
19 第2支持機構
191 Ωアーム
193 Ωアーム支持部
195 レール
197 第2接続部
21 第2コリメータ
24 天板
25 寝台
27 駆動部
29,124 画像生成回路
30,130,230 画像処理装置
31,131,231 メモリ
31T 設定テーブル
33,133,233 入力インタフェース
35,135,235 ディスプレイ
37,137,237 処理回路
371,1371,2371 設定機能
372,1372,2372 図形生成機能
373,1373,2373 重畳画像生成機能
374,1374,2374 表示制御機能
39,139,239 通信インタフェース
41 制御回路
43 心電計
91 Cアーム
93 Cアーム支持部
95 第1接続部
100 ナビゲーション図形
101 カテーテル
102 クリップ
120 超音波診断装置
121 超音波プローブ
122 装置本体
123 送受信回路
av 大動脈弁
d1,d2 撮像方向
d1a,d2a 投影方向
e1,e2,e3,e4 端部
i1 平面図
L1,L2,L3 弁境界線
Lh 二分線
LA 左心房
M1 中間点
mv 僧帽弁
p1 穿刺点
pv 肺動脈弁
RA 右心房
r1,r2 逆流位置
S1,S2,S3,S4 安全線
SL1 第1断面
SL2 第2断面
tv 三尖弁
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