(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】紙幣処理システム
(51)【国際特許分類】
G07D 11/24 20190101AFI20230619BHJP
G07D 11/34 20190101ALI20230619BHJP
【FI】
G07D11/24
G07D11/34
(21)【出願番号】P 2019044375
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 陽
(72)【発明者】
【氏名】府内 克好
(72)【発明者】
【氏名】堀 哲也
【審査官】平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-020853(JP,A)
【文献】特開2006-085346(JP,A)
【文献】特開2015-056010(JP,A)
【文献】特開2012-198678(JP,A)
【文献】特開2015-184802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00 - 3/16,
9/00 - 13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現金センタに設置された複数の紙幣仕分け装置と、店舗に設置され取り外し可能な紙幣カセットを有する自動取引装置とからなり、前記紙幣カセットを用いて前記自動取引装置と前記紙幣仕分け装置との間で紙幣の受け渡しを行う紙幣処理システムであって、
前記自動取引装置は、前記紙幣仕分け装置によって仕分けられた紙幣が装填された紙幣カセットを取り付けて運用を開始し、
前記自動取引装置は、装置内部の全紙幣の記番号と格納の順序とを常時管理して前記紙幣カセット内の紙幣枚数を確定し、当該確定した紙幣枚数を前記紙幣カセットの記憶部に記憶し、
前記紙幣仕分け装置は、前記紙幣カセットの記憶部に紙幣枚数が記憶された状態で前記自動取引装置から回収した複数の紙幣カセット内の紙幣を、複数の前記紙幣仕分け装置による並列処理にて仕分け処理を行い、
前記紙幣仕分け装置は、仕分け処理を行った紙幣を前記紙幣カセットに装填する際に、その紙幣カセットの識別情報と装填される紙幣の金種情報と枚数情報、各々の紙幣の記番号情報、仕分け処理情報を前記紙幣カセットの記憶部に記憶する
ことを特徴とする、紙幣処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の紙幣処理システムであって、
前記記番号情報は、前記紙幣カセットの識別情報と関連付けてサーバ装置へ記憶させることを特徴とする、紙幣処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の紙幣処理システムであって、
前記紙幣仕分け装置は仕分け済み紙幣を所定の枚数単位に束巻紙で束ねる束巻部を有し、束巻紙へ束巻単位に識別コード情報を印字することを特徴とする、紙幣処理システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の紙幣処理システムであって、
前記紙幣カセットを前記自動取引装置へ装填すると、前記自動取引装置は前記紙幣カセットの記憶部の情報を読み取って金種と枚数情報と記番号情報を設定することを特徴とする、紙幣処理システム。
【請求項5】
請求項2に記載の紙幣処理システムであって、
前記紙幣カセットを前記自動取引装置へ装填すると、前記自動取引装置は前記紙幣カセットの記憶部の情報を読み取って金種と枚数情報と記番号情報を設定し、
前記自動取引装置に設定される記番号情報は、前記サーバ装置に記録された情報を用いて設定されることを特徴とする、紙幣処理システム。
【請求項6】
請求項1に記載の紙幣処理システムであって、
前記紙幣仕分け装置は、前記紙幣カセットを接続すると仕分け処理を開始することを特徴とする、紙幣処理システム。
【請求項7】
請求項1に記載の紙幣処理システムであって、
前記紙幣カセットはその扉の開閉検知部を有していることを特徴とする、紙幣処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣処理システムに係り、特に金融機関等に設置された現金自動取引装置(ATM)と現金センタに設置された紙幣仕分け装置との間における、紙幣の補充回収・精査、仕分け等の紙幣処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関に設置されたATMでは、内部の紙幣が不足すると現金センタにて用意された補充用現金が警送会社等によって配送されATMへ装填される。また、ATM内部で過剰となった紙幣は、同様に警送会社等によって現金センタへ回収される。
【0003】
現金センタでは、紙幣仕分け装置等によって補充用紙幣を必要な金種及び数量を計数してATM用の紙幣カセットへ装填し、警送会社等によってカセットごと搬送されATMへ装填される。
【0004】
また、ATMから回収された紙幣は、ATMのカセットに装填したまま現金センタへ配送され、紙幣仕分け装置等によってトータル枚数の確認、金種や紙幣の正損分離(傷んだ紙幣を分類)等を行い、再利用不可能な紙幣については中央銀行へ返却する等の処理を行っている。
【0005】
従来、この種の発明としては例えば特許文献1に記載のものがあり、銀行本店や現金センタで管理される大量の紙幣を、記番号を利用して管理することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、現金センタで紙幣を装填する際に、どの紙幣カセットにどの記番号の紙幣を装填したかがわかるような仕組みが記述されているが、ATMにセットして以降の紙幣の管理ができず、例えば、出金時の2枚繰り出しなどが起きると、ATM単位での紙幣枚数は確定できたとしても、各々の紙幣カセット内の紙幣枚数を確定することができない。そのため、現金センタに紙幣カセットが戻ってきた時には、まず、ATM毎で枚数が合っているか精査をした後に、紙幣の仕分けを行う必要がある。
ATM毎に枚数が合っているか精査する際には、ATMの複数のカセット(複数の金種)を1台の仕分け装置(ソータ)で精査するため、作業の効率が悪くなっている。また、紙幣を精査して、その後、仕分けするという2段階の作業が必要となり、同じ紙幣を何度も数える必要があり、作業の効率化が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
現金センタに設置された複数の紙幣仕分け装置と、店舗に設置され取り外し可能な紙幣カセットを有する自動取引装置とからなり、その紙幣カセットを用いて自動取引装置と紙幣仕分け装置との間で紙幣の受け渡しを行う紙幣処理システムにおいて、自動取引装置は紙幣仕分け装置によって仕分けられた紙幣が装填された紙幣カセットを取り付けて運用を開始し、紙幣仕分け装置は内部の紙幣枚数が確定した状態で自動取引装置から回収した複数の紙幣カセット内の紙幣を、複数の紙幣仕分け装置による並列処理にて仕分け処理を行うように構成した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、紙幣カセット単位で収納紙幣の枚数が確定されているため、現金センタにおいて、紙幣カセット単位で複数の装置で仕分けを並行して実施することができ、紙幣の計数、仕分けを効率よく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の紙幣処理システムのコンセプトを説明する図
【
図2】本発明の紙幣処理システムで用いる紙幣仕分け装置の図
【
図3】本発明の紙幣処理システムで用いる紙幣仕分け装置の図
【
図4】本発明の紙幣処理システムで用いる紙幣仕分け装置の図
【
図5】本発明の紙幣処理システムで用いる紙幣仕分け装置の図
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.本紙幣処理システムの全体構成
図1は本発明に係る紙幣処理システムの全体構成である。大まかな運用の流れとしては、現金センタにて紙幣カセットへの紙幣を装填し、警送会社等によってその紙幣カセットを銀行店舗の自動取引装置(ATM)310へ配送して紙幣(カセット)を装填する紙幣装填処理(A)と、ATM310内の紙幣(カセット)を回収し、警送会社等によって現金センタ100へ配送後、紙幣仕分け装置(ソータ)110にて金種や正損を分類する紙幣回収仕分け処理(B)に分類される。
(A)紙幣装填処理
現金センタ100では銀行支店300の自動取引装置(ATM)310へ装填させる紙幣を準備するため、紙幣111を紙幣仕分け装置(ソータ)110を用いて、ATM310内の紙幣カセット120単位に金種・数量毎に仕分けする。このとき、ソータ110の紙幣鑑別部によって仕分けされた紙幣1枚毎の記番号が読み取り・記憶されており、仕分けされた紙幣が紙幣カセット120へ装填されると同時に、紙幣カセット120が備える記憶装置121(例えばRFID等)へそのカセットに装填される紙幣の金種、枚数、各々の紙幣の記番号、仕分け情報(仕分けをした作業員名、仕分け日、カセットへ装填した作業員名、カセットへ装填した日など)がソータ110と紙幣カセット120間の無線通信等を介して記憶される。
【0012】
仕分け処理した紙幣は係員によって手作業で紙幣カセット120へ装填される。もしくは、ソータと紙幣カセットとを接続させてソータから直接紙幣カセットへ仕分け済み紙幣を装填させることもできる
なお、紙幣カセット120の記憶装置121へ上述の情報を記憶させる代わりに、サーバ200へカセットを識別するIDと共に記憶させてもよい。具体的には、ソータ110によって仕分け処理がなされた際に、仕分けされた所定の枚数単位(例えば100枚)に、ソータ110の紙幣束巻部によって束巻きを行い、その束巻紙へ固有の二次元バーコードを印字する。係員が束を解いて紙幣カセット120へ紙幣を装填する際に別途用意した読取装置で二次元バーコードを読み取って、二次元バーコードと紙幣カセットの識別IDとを関連付けて再度サーバ200へ記録することも可能である。
【0013】
このようにして紙幣が装填された紙幣カセット120は、警送会社等によって各銀行支店300に向けて配送され、ATM310内へ装填される。この間、紙幣カセット120は開扉できないように管理されており、また、紙幣カセット単位に内部の紙幣1枚毎の記番号121aや仕分け・装填に関わった作業員に関する詳細情報が記録されるため、後に紙幣の違算等が発生した場合においてもその事象を詳細にトレースすることができる。
【0014】
ATM310に紙幣カセット120を装填すれば、ATM310は紙幣カセット120のRFIDなどの記憶装置121に記憶された金種情報、枚数、記番号情報などを得ることができる。
【0015】
これらの紙幣情報は、紙幣カセットを識別するカセットIDを元に、サーバ200からATM310にダウンロードするようにしてもよい。
【0016】
また、ソータ110と紙幣カセット120を連結させ、人手を介さずソータ110から直接紙幣カセット120へ紙幣を装填することもできる。これによって、紙幣カセットへの紙幣装填時に作業員が紙幣を直接触ることがないため、作業員による紙幣の抜き取り等の不正行為を防止することが可能である。
(B)紙幣回収仕分け処理
本発明のATM310では、入金・出金取引中における搬送紙幣の記番号は全て管理されており、紙幣搬送中のジャム等が発生した場合においても、各紙幣カセット120内部の紙幣枚数は確定させることができる。例えば、出金取引時には予め記録しておいた紙幣カセット内の記番号の連続性をチェックして、連続性が途絶えた場合は前後紙幣の記番号などから、何枚繰り出したかを確定させることができる。これらの枚数や記番号情報は、カセットのRFIDなどの記憶装置121に記憶される。もしくは個々のATMにて管理され、カセットの識別情報と共に、サーバ200において、管理されても良い。
【0017】
抜き取られた紙幣カセット120の記憶装置121には、そのATMの識別番号(ATM-ID)、金種、枚数、抜き取った係員ID、抜き取り作業をした日が記憶されている。紙幣カセット内紙幣の記番号312は紙幣カセットの記憶装置121に記憶されているが、識別情報に紐付けしてサーバ200へ記憶されていても良い
抜き取られた紙幣カセットは警送会社等によって現金センタへ運ばれ、仕分け作業を行う。上述のように、各カセット毎の枚数が確定しているので、ATMに収容されていた複数のカセット間で、ATM毎の金額を確定させるための事前の計数が不要となる。このため、複数のカセットを複数の仕分け装置を用いて並行処理が可能となる。
【0018】
仕分け処理は現金センタの係員が紙幣カセットから抜き出した紙幣を紙幣仕分け装置のホッパにセットしてもよいし、紙幣カセットのまま、紙幣仕分け装置とドッキングさせることによって、係員が紙幣カセット内の紙幣に直接手を触れることなく、仕分け処理を行うこともできる。
2.各装置の構成
次に、本発明の紙幣処理システムに係る各装置の構成について説明する。
(1)紙幣仕分け装置
図2は本発明に係る紙葉類仕分け装置110の外観鳥瞰図である。仕分けの対象となる紙幣束は入金部(ホッパとも称する)115にセットされ、装置内に1枚ずつ引き込まれて予め設定された仕分けルール(例えば金種等)に基づいて装置内の鑑別装置等で分類され、スタッカ(ポケットとも称する)111~114へ仕分けられて排出される。
【0019】
スタッカ111~114は前面が開放されており、係員等が手を挿入して仕分けられた紙幣を取り出すことができる。また、仕分けの過程において仕分け不能と判定された紙幣はリジェクト部116~117へ排出される。
【0020】
図3は紙幣仕分け装置110の内部構造図である。
図2と同じ部位には同一の参照番号を付与している。ホッパ110にセットされた紙幣は下端側から一枚ずつ装置内へ引き込まれ、鑑別部118にて紙幣の金種や状態(損傷状態、向き、表裏等)を鑑別された後、搬送路119を経て各スタッカ111~114へ搬送される。鑑別部118では紙幣の記番号を読み取って装置内に一時的に記憶したり、通信機能により外部のサーバー装置等へ仕分け処理した紙幣の記番号情報を送信することができる。
【0021】
また、
図4に示すように、紙幣仕分け装置110は入金部115に代えてATMの紙幣カセット120を接続して紙幣を取り込む紙幣カセット入力接続部11Aを有している。
【0022】
また、仕分け済みの紙幣をATMの紙幣カセットを接続して直接装填したり、仕分け済みの紙幣を所定の枚数単位に束を巻く束巻ユニットを接続する外部ユニット接続部を有している。
図5は外部ユニット接続部11Bを介して束巻ユニット11Cを接続した状態を示す図である。
【0023】
また、仕分け結果情報をATMの紙幣カセットに設けたRFIDへ書き込むための無線通信機能を有している。
(2)自動取引装置
本発明の自動取引装置は取引を行う利用者が操作することによって紙幣の入出金等を行うことができるものであって、金種別の取り外し可能な紙幣カセットが複数個備えられている。入金取引時には紙幣入出金口から入金された紙幣が鑑別部にて金種や真偽、正損(紙幣の傷み程度)を鑑別されると共に紙幣の記番号が読み取られ記録される。鑑別結果に基づく入金金額を利用者に確認し、問題なければ金種別の紙幣カセットへ搬送される。
【0024】
また、出金取引時には利用者によって指定された金額に基づいて所定の金種の紙幣カセットから必要な枚数の紙幣が出金され、鑑別部によって金種や真偽・正損、記番号が確認され払い出し可能と判断された紙幣は入出金口へ搬送され、払い出し不可と判断された紙幣は一時保管庫に一旦格納された後、所定のタイミングでリジェクト紙幣用カセットに搬送される。紙幣搬送系の構成によっては、一時保管庫を介さずに直接リジェクト紙幣用カセットへ搬送させることもできる。
【0025】
本自動取引装置は上述のように装置内部の全紙幣の記番号情報が管理されており、どの紙幣カセットにどのような記番号の紙幣がどのような順序で格納されているかが常にわかるようになっている。このため、本自動取引装置は紙幣カセット内の紙幣枚数は常に確定した状態を維持することができる。すなわち、紙幣カセット内の枚数が不確定となりうる事象(例えば紙幣ジャムやカセットからの2枚繰り出しなど)が発生したとしても、上述のように厳格に管理された記番号情報を用いて、その前後の紙幣の情報から、紙幣カセット内の紙幣枚数を確定させることができる。
【0026】
紙幣カセットには記憶装置としてのRFID(Radio frequency identifier)が内蔵されており、自動取引装置との間で情報のやり取りを行うことができる。また、紙幣仕分け装置との間でも情報のやり取りを行うことができる。さらに、紙幣カセットは紙幣装填用扉の開閉検知機能を有しており、カセット運搬時等の不正な扉開を検知することが可能である。
【0027】
自動取引装置は、紙幣カセットの装填時に紙幣カセットのRFIDに記憶されている記番号情報を読み取って装置内の情報としてアップロードすることができる。また、記番号情報がサーバに記憶されている場合、紙幣カセットを自動取引装置へセットした際にサーバから記番号情報をダウンロードすることができる。すなわち、紙幣カセットを自動取引装置へセットすると、自動取引装置は紙幣カセットの識別情報(カセットID)をキーとしてサーバに対して紙幣情報をリクエストし、サーバではカセットIDに紐付けて記憶している記番号情報へアクセスして自動取引装置へその内容を送信する。
【0028】
また、係員によって自動取引装置から紙幣カセットを取り出して回収する際には、自動取引装置の識別情報、金種、枚数、回収した係員の識別情報、回収日などの情報をRFIDへ書き込むこともできる。
【符号の説明】
【0029】
100:現金センタ
110:紙幣仕分け装置
120:紙幣カセット
200:サーバ
300:銀行支店
310:自動取引装置