(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】タスク・アンビエント空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/65 20180101AFI20230619BHJP
F24F 11/54 20180101ALI20230619BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F11/54
(21)【出願番号】P 2019075753
(22)【出願日】2019-04-11
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】591023479
【氏名又は名称】ダイダン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【氏名又は名称】小林 義孝
(72)【発明者】
【氏名】花園 新太郎
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-164641(JP,A)
【文献】特開2004-284450(JP,A)
【文献】特開2009-274509(JP,A)
【文献】特開2007-198648(JP,A)
【文献】特開2008-304104(JP,A)
【文献】特開2015-017767(JP,A)
【文献】特開2013-046548(JP,A)
【文献】特開平05-256491(JP,A)
【文献】特開2016-200373(JP,A)
【文献】米国特許第06318113(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/65
F24F 11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定温度の空調空気を室内に給気する空調装置と、前記室内に設置されて利用者が着座する1つ又は複数の椅子とを備え、それら椅子が、それに着座した利用者に向かって所定風量の空気を送風する送風モードとそれに着座した利用者の臀部と腰部と背中とのうちの少なくとも臀部を暖める暖房モードとのいずれかの運転モードで運転しているON状態と、前記送風モードと前記暖房モードとのいずれの運転もしていないOFF状態とを有し、前記空調装置を利用して前記室内のタスク域を空調するタスク・アンビエント空調システムにおいて、
前記タスク・アンビエント空調システムが、前記ON状態にある椅子を判断する
とともに、前記ON状態にある椅子の割合が有効割合以上であるかを判断する運転状態判断手段と、前記運転状態判断手段によって前記ON状態にある椅子が前記送風モード又は前記暖房モードのいずれかのモードであることを検出
するとともに、前記運転状態判断手段によって前記ON状態にある椅子の割合が有効割合以上であると判断した場合、前記送風モードで運転している椅子の出力又は前記暖房モードで運転している椅子の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値以上であるかを判断するアンビエント空調制御変更演算手段とを有し、
前記タスク・アンビエント空調システムでは、前記運転状態判断手段によって前記ON状態にある椅子の割合が有効割合未満であると判断した場合、又は、前記アンビエント空調制御変更演算手段によって前記平均出力値が設定出力値未満であると判断した場合、前記空調装置の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持する前記通常モードで該空調装置を運転し、前記運転状態判断手段によって前記ON状態にある椅子の割合が有効割合以上であると判断するとともに、前記アンビエント空調制御変更演算手段によって前記平均出力値が設定出力値以上であると判断した場合、前記空調装置の設定温度を前記通常モードで運転する該空調装置の設定温度よりも上昇又は低下させるブーストモードで該空調装置を運転することを特徴とするタスク・アンビエント空調システム。
【請求項2】
前記タスク・アンビエント空調システムが、前記運転状態判断手段と前記アンビエント空調制御変更演算手段とを実施するとともに、所定のネットワークを介して前記空調装置の運転を通常モード又はブーストモードに切り替えるアンビエント域空調制御変更手段を含み、前記椅子を識別可能な識別子が、各椅子毎に付与され、前記アンビエント域空調制御変更手段が、前記識別子によってそれら椅子を特定し、前記椅子が、それに着座した利用者に向かって所定風量の空気を送風する送風装置と、それに着座した利用者の臀部と腰部とのうちの少なくとも臀部を暖める加熱装置と、前記利用者の着座及び非着座を検知する着座センサと、該椅子の送風装置及び加熱装置のON/OFFを切り替えるとともに該椅子の送風モードと暖房モードとを切り替える切替手段と、該椅子の送風装置の出力及び加熱装置の出力を調節する出力調節手段と、該椅子の識別子、前記着座センサが検知した着座状態値、前記送風装置及び前記加熱装置のON/OFF状態値、前記送風装置の出力値又は前記加熱装置の出力値を前記ネットワークを介して前記アンビエント域空調制御変更手段に送信する通信手段とを有する請求項1に記載のタスク・アンビエント空調システム。
【請求項3】
冷房期間中における前記空調装置のブーストモードでの運転では、該空調装置の設定温度を前記通常モードで運転する該空調装置の設定温度よりも低下させ、暖房期間中における前記空調装置のブーストモードでの運転では、該空調装置の設定温度を前記通常モードで運転する該空調装置の設定温度よりも上昇させる請求項1又は請求項2に記載のタスク・アンビエント空調システム。
【請求項4】
前記運転状態判断手段では、前記利用者が着座した椅子の数を分母とし、前記利用者が着座した椅子のうちの前記ON状態にある椅子の数を分子として該ON状態にある椅子の割合を算出し、算出したON状態にある椅子の割合が有効割合以上であるかを判断する請求項1ないし請求項3いずれかに記載のタスク・アンビエント空調システム。
【請求項5】
前記タスク・アンビエント空調システムでは、前記運転状態判断手段において判断される前記ON状態にある椅子の有効割合が70%~90%の範囲で設定され、前記アンビエント空調制御変更演算手段において判断される平均出力値の設定出力値が最大平均出力値の50%~70%の範囲で設定される請求項1ないし請求項4いずれかに記載のタスク・アンビエント空調システム。
【請求項6】
前記アンビエント域空調制御変更手段が、各椅子に付与された前記識別子を利用して所定数の椅子を一纏めにした第1椅子グループ~第n椅子グループにグループ分けし、前記第1椅子グループ~第n椅子グループのグループ毎に前記運転状態判断手段と前記アンビエント空調制御変更演算手段とを実施し、前記通常モード又は前記ブーストモードで運転する前記空調装置から所定温度の空調空気を第1椅子グループ~第n椅子グループの各グループ毎に給気させる請求項2ないし請求項5いずれかに記載のタスク・アンビエント空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置を利用して室内のタスク域を空調するタスク・アンビエント空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
利用者の携帯端末から無線通信によって通知された空調制御対象となる1つまたは複数のエリアにおける空調環境に関する要望申告をそれぞれ集計し、得られた集計結果に基づいてそのエリアの空調設備による空調制御を調整する空調制御調整装置が開示されている(特許文献1参照)。この空調制御調整装置は、要望申告に含まれる要望申告内容に基づいて、一定の集計期間ごとに、エリアに関する要望申告内容を集計する要望申告集計部と、エリアで実施している空調制御内容及びエリアで計測した空調環境状況とエリアに関する要望申告内容の集計結果とに基づいて、エリアの新たな空調制御内容を決定し、エリアの空調設備に対して指示する制御内容指示部とを備えている。
【0003】
また、利用者の着座荷重を支持する椅子本体と、椅子に固定されて吸入した空気を送出する送気装置と、送気装置から送出された空気を所定方向に案内して吹き出す誘導吹き出し手段とを備えた椅子が開示されている(特許文献2参照)。この椅子の誘導吹き出し手段は、先端部が椅子本体の外側位置に向かうように延設された誘導通路と、誘導通路の先端部に設けられ、空気の吹き出し方向が椅子本体の荷重支持面と交差しかつ着座者方向に向く角度範囲で、空気の吹き出し角度を調整可能な吹き出し部とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-200373号公報
【文献】特開2018-108177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示の空調制御調整装置は、利用者が携帯端末を用意する必要があり、その携帯端末に専用アプリケーションをインストールし、空調制御調整装置を利用する利用者が携帯端末から無線通信によってエリアにおける空調環境に関する要望申告を空調制御調整装置に申告しなければならず、要望を申告する手間がかかるとともに、要望の申告を好まない利用者にとっては申告が煩わしく負担に感じる場合がある。また、エリアの空調制御内容が属性(年齢や性別、職場であれば役職の違い等)の異なる利用者の意識(考え)に基づいて決定されるから、各利用者の意識(考え)が乖離する場合、エリアの空調制御内容が各利用者にとって不適なものとなる場合がある。
【0006】
前記特許文献2に開示の椅子は、椅子に着座した利用者(タスク域)に向かって送気装置から空気が送風されるが、椅子を設置した室内のアンビエント域空調と連動することはなく、各椅子の使用状況に応じて室内の空調空気の温度を変更することはできず、椅子の利用者に対して最適なタスク・アンビエント空調を実施することができない。
【0007】
本発明の目的は、室内の各利用者が意識的にアンビエント域空調の設定変更操作をする必要はなく、各利用者の手間を省くことができるとともに各利用者が負担を感じることがなく、各利用者の意識(考え)にかかわらず各利用者にとって最適な空調空気を室内に給気することができるタスク・アンビエント空調システムを提供することにある。本発明の他の目的は、送風装置及び加熱装置を備えた椅子を設置した建造物の室内に給気される空調空気の温度を各椅子の使用状況に応じて変更することができ、室内に設置された椅子の利用者に対して最適なタスク・アンビエント空調を実施することができるタスク・アンビエント空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明の前提は、所定温度の空調空気を室内に給気する空調装置と、室内に設置されて利用者が着座する1つ又は複数の椅子とを備え、それら椅子が、それに着座した利用者に向かって所定風量の空気を送風する送風モードとそれに着座した利用者の臀部と腰部と背中とのうちの少なくとも臀部を暖める暖房モードとのいずれかで運転しているON状態と、送風モードと暖房モードとのいずれの運転もしていないOFF状態とを有し、空調装置を利用して室内のタスク域を空調するタスク・アンビエント空調システムである。
【0009】
前記前提における本発明の特徴としては、タスク・アンビエント空調システムが、ON状態にある椅子を判断するとともに、ON状態にある椅子の割合が有効割合以上であるかを判断する運転状態判断手段と、運転状態判断手段によってON状態にある椅子が送風モード又は暖房モードのいずれかのモードであることを検出するとともに、運転状態判断手段によってON状態にある椅子の割合が有効割合以上であると判断した場合、送風モードで運転している椅子の出力又は暖房モードで運転している椅子の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値以上であるかを判断するアンビエント空調制御変更演算手段とを有し、タスク・アンビエント空調システムでは、運転状態判断手段によってON状態にある椅子の割合が有効割合未満であると判断した場合、又は、アンビエント空調制御変更演算手段によって平均出力値が設定出力値未満であると判断した場合、空調装置の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持する通常モードで該空調装置を運転し、運転状態判断手段によってON状態にある椅子の割合が有効割合以上であると判断するとともに、アンビエント空調制御変更演算手段によって平均出力値が設定出力値以上であると判断した場合、空調装置の設定温度を通常モードで運転する空調装置の設定温度よりも上昇又は低下させるブーストモードで空調装置を運転することにある。
【0010】
本発明の一例としては、タスク・アンビエント空調システムが、運転状態判断手段とアンビエント空調制御変更演算手段とを実施するとともに、所定のネットワークを介して空調装置の運転を通常モード又はブーストモードに切り替えるアンビエント域空調制御変更手段を含み、椅子を識別可能な識別子が、各椅子毎に付与され、アンビエント域空調制御変更手段が、識別子によってそれら椅子を特定し、椅子が、それに着座した利用者に向かって所定風量の空気を送風する送風装置と、それに着座した利用者の臀部と腰部とのうちの少なくとも臀部を暖める加熱装置と、利用者の着座及び非着座を検知する着座センサと、椅子の送風装置及び加熱装置のON/OFFを切り替えるとともに椅子の送風モードと暖房モードとを切り替える切替手段と、椅子の送風装置の出力及び加熱装置の出力を調節する出力調節手段と、椅子の識別子、着座センサが検知した着座状態値、送風装置及び加熱装置のON/OFF状態値、送風装置の出力値又は加熱装置の出力値をネットワークを介してアンビエント域空調制御変更手段に送信する通信手段とを有する。
【0011】
本発明の他の一例として、冷房期間中における空調装置のブーストモードでの運転では、空調装置の設定温度を通常モードで運転する空調装置の設定温度よりも低下させ、暖房期間中における空調装置のブーストモードでの運転では、空調装置の設定温度を通常モードで運転する空調装置の設定温度よりも上昇させる。
【0012】
本発明の他の一例として、運転状態判断手段では、利用者が着座した椅子の数を分母とし、利用者が着座した椅子のうちのON状態にある椅子の数を分子としてON状態にある椅子の割合を算出し、算出したON状態にある椅子の割合が有効割合以上であるかを判断する。
【0013】
本発明の他の一例として、タスク・アンビエント空調システムでは、運転状態判断手段において判断されるON状態にある椅子の有効割合が70%~90%の範囲で設定され、アンビエント空調制御変更演算手段において判断される平均出力値の設定出力値が最大平均出力値の50%~70%の範囲で設定される。
【0014】
本発明の他の一例としては、アンビエント域空調制御変更手段が、各椅子に付与された識別子を利用して所定数の椅子を一纏めにした第1椅子グループ~第n椅子グループにグループ分けし、第1椅子グループ~第n椅子グループのグループ毎に運転状態判断手段とアンビエント空調制御変更演算手段とを実施し、通常モード又はブーストモードで運転する空調装置から所定温度の空調空気を第1椅子グループ~第n椅子グループの各グループ毎に給気させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るタスク・アンビエント空調システムによれば、例えば、室内における椅子の利用者が多く、椅子における送風モード又は暖房モードの利用頻度が高く、空調装置の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持した場合、各利用者が室内の空調環境に不快に感じる状況にある場合、運転状態判断手段とアンビエント空調制御変更演算手段とによって空調装置の設定温度を通常モードで運転する空調装置の設定温度よりも上昇又は低下させるブーストモードで空調装置を運転するから、室内における椅子の利用者に最適な温度の空調空気を給気することができ、建造物の室内において空調エネルギーの削減と利用者の快適さとのバランスのとれた最適なタスク・アンビエント空調を実現することができる。タスク・アンビエント空調システムは、属性(年齢や性別、職場であれば役職の違い等)の異なる各利用者の意識(考え)にかかわらず各利用者にとって最適な空調空気を室内に給気することができ、各利用者が意識的に所定の操作を行う必要はなく、各利用者の手間を省くことができるとともに各利用者の負担をなくすことができる。
【0016】
運転状態判断手段がON状態にある椅子の割合が有効割合以上であるかを判断し、アンビエント空調制御変更演算手段が運転状態判断手段によってON状態にある椅子の割合が有効割合以上であると判断した場合、送風モードで運転している椅子の出力又は暖房モードで運転している椅子の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値以上であるかを判断し、運転状態判断手段によってON状態にある椅子の割合が有効割合未満であると判断した場合、又は、アンビエント空調制御変更演算手段によって平均出力値が設定出力値未満であると判断した場合、空調装置の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持する通常モードで空調装置を運転し、運転状態判断手段によってON状態にある椅子の割合が有効割合以上であると判断するとともに、アンビエント空調制御変更演算手段によって平均出力値が設定出力値以上であると判断した場合、空調装置の設定温度を通常モードで運転する空調装置の設定温度よりも上昇又は低下させるブーストモードで該空調装置を運転するタスク・アンビエント空調システムは、ON状態にある椅子の割合が有効割合未満の場合、室内における椅子の利用者が少なく、空調装置の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持したとしても、各利用者が不快に感じることはないから、運転状態判断手段によってON状態にある椅子の割合が有効割合未満であると判断した場合、空調装置の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持する通常モードで空調装置を運転することで、室内における椅子の利用者に適したタスク・アンビエント空調を実施することができる。タスク・アンビエント空調システムは、送風モードで運転している椅子の出力値又は暖房モードで運転している椅子の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値未満の場合、椅子における送風モード又は暖房モードの利用頻度が低く、空調装置の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持したとしても、各利用者が不快に感じることはないから、アンビエント空調制御変更演算手段によって平均出力が設定出力未満であると判断した場合、空調装置の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持する通常モードで空調装置を運転することで、室内における椅子の利用者に適したタスク・アンビエント空調を実施することができる。タスク・アンビエント空調システムは、ON状態にある椅子の割合が有効割合以上であるとともに、送風モードで運転している椅子の出力値又は暖房モードで運転している椅子の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値以上である場合、室内における椅子の利用者が多いとともに、椅子における送風モード又は暖房モードの利用頻度が高く、空調装置の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持した場合、各利用者が室内の空調環境に不快に感じる場合があるが、運転状態判断手段によってON状態にある椅子の割合が有効割合以上であると判断するとともに、アンビエント空調制御変更演算手段によって平均出力値が設定出力値以上であると判断した場合、空調装置の設定温度を通常モードで運転する空調装置の設定温度よりも上昇又は低下させるブーストモードで該空調装置を運転するから、室内における椅子の利用者に最適な温度の空調空気を給気することができ、椅子の利用頻度や送風モード又は暖房モードの利用頻度、送風モード又は暖房モードの出力値に対応した最適なタスク・アンビエント空調を実現することができる。タスク・アンビエント空調システムは、各利用者の意識(考え)にかかわらず、空調装置の運転モードを通常モード又はブーストモードに自動的に切り替えるから、各利用者の意識(考え)にかかわらず各利用者にとって最適な空調空気を室内に給気することができ、各利用者が意識的に所定の操作を行う必要はなく、各利用者の手間を省くことができるとともに各利用者の負担をなくすことができる。
【0017】
運転状態判断手段とアンビエント空調制御変更演算手段とを実施するとともに、所定のネットワークを介して空調装置の運転を通常モード又はブーストモードに切り替えるアンビエント域空調制御変更手段を含み、椅子を識別可能な識別子が各椅子毎に付与され、アンビエント域空調制御変更手段が識別子によってそれら椅子を特定し、椅子がそれに着座した利用者に向かって所定風量の空気を送風する送風装置と、それに着座した利用者の臀部と腰部とのうちの少なくとも臀部を暖める加熱装置と、利用者の着座及び非着座を検知する着座センサと、椅子の送風装置及び加熱装置のON/OFFを切り替えるとともに椅子の送風モードと暖房モードとを切り替える切替手段と、椅子の送風装置の出力及び加熱装置の出力を調節する出力調節手段と、椅子の識別子、着座センサが検知した着座状態値、送風装置及び加熱装置のON/OFF状態値、送風装置の出力値又は加熱装置の出力値をネットワークを介してアンビエント域空調制御変更手段に送信する通信手段とを有するタスク・アンビエント空調システムは、所定のネットワークを利用してアンビエント域空調制御変更手段や椅子、空調装置が接続されるから、例えば、アンビエント域空調制御変更手段をインターネット上のクラウドに構築することができ、又は、アンビエント域空調制御変更手段や椅子、空調装置をLANやWAN等のネットワークによって接続することができ、椅子の着座状態値(椅子に対する着座又は非着座)、送風装置及び加熱装置のON/OFF状態値(送風装置及び加熱装置のON/OFF)、椅子の送風モードの出力値又は暖房モードの出力値をアンビエント域空調制御変更手段がネットワークを介して受信しつつ、空調装置の運転モード(通常モード又はブーストモード)の切り替えをネットワークによる遠隔操作よって自動で行うことができる。タスク・アンビエント空調システムは、椅子の送風モード時に椅子に設置された送風装置から所定風量の空気を利用者に向かって送風し、室内の空調空気を利用者に吹き付けることで、利用者の体温や体感温度を下げることができるとともに、椅子の暖房モード時に椅子に設置された加熱装置によって利用者の臀部と腰部とのうちの少なくとも臀部を暖めることができ、空調装置から給気される空調空気と相まって利用者の体温や体感温度を最適に調節することができる。タスク・アンビエント空調システムは、各椅子を識別可能な識別子が椅子毎に付与され、アンビエント域空調制御変更手段が識別子によって各椅子を特定するから、椅子の着座状態値(椅子に対する着座又は非着座)、送風装置及び加熱装置のON/OFF状態値(送風装置及び加熱装置のON/OFF)、椅子の送風モードの出力値又は暖房モードの出力値を各椅子毎に把握することができ、ON状態にある椅子の割合が有効割合以上であるかを正確に判断することができるとともに、送風モードで運転している椅子の出力値又は暖房モードで運転している椅子の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値以上であるかを正確に判断することができる。タスク・アンビエント空調システムは、識別子によって椅子を特定しつつ、運転状態判断手段やアンビエント空調制御変更演算手段を正確に実施することができるから、室内における椅子の利用者に最適な温度の空調空気を給気することができ、椅子の利用頻度や送風モード又は暖房モードの利用頻度、送風モードの出力又は暖房モードの出力値に対応した最適なタスク・アンビエント空調を実現することができる。タスク・アンビエント空調システムは、各利用者の意識(考え)にかかわらず、アンビエント域空調制御変更手段が空調装置の運転モードをインターネットやLAN、WAN等のネットワークによる遠隔操作よって通常モード又はブーストモードに自動的に切り替えるから、各利用者が意識的に所定の操作を行う必要はなく、各利用者の手間を省くことができるとともに各利用者が負担を感じることがなく、各利用者の意識(考え)にかかわらず各利用者にとって最適な空調空気を室内に給気することができる。タスク・アンビエント空調システムは、椅子が無線ネットワークを介してアンビエント域空調制御変更手段と通信することで、利用者による椅子の自由な移動を妨げることはない。また、椅子が無線ネットワークを介してアンビエント域空調制御変更手段と通信可能であるから、アンビエント域空調制御変更手段の設置位置を自由に設定することができる。更に、例えば、アンビエント域空調制御変更手段をクラウドに設定した場合、建造物のメンテナンス担当者が遠隔地から複数の建造物に構築されたタスク・アンビエント空調システムを一括して管理することができ、複数の建造物においてタスク・アンビエント空調システムの各設定値の変更やプログラムの更新が可能となり、システムの省力化を図ることができる。
【0018】
冷房期間中における空調装置のブーストモードでの運転において、空調装置の設定温度を通常モードで運転する空調装置の設定温度よりも低下させ、暖房期間中における空調装置のブーストモードでの運転において、空調装置の設定温度を通常モードで運転する空調装置の設定温度よりも上昇させるタスク・アンビエント空調システムは、冷房期間中において、ON状態にある椅子の割合が有効割合以上であるとともに、送風モードで運転している椅子の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値以上である場合、室内の利用者が暑いと感じていると推定され、その場合、空調装置の設定温度を通常モードで運転する空調装置の設定温度よりも低下させることで、送風装置から送風される空気(空調空気)と相まって椅子を利用する利用者の体温を最適に調節することができ、利用者の不快感を取り除くことができる。タスク・アンビエント空調システムは、暖房期間中において、ON状態にある椅子の割合が有効割合以上であるとともに、暖房モードで運転している椅子の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値以上である場合、室内の利用者が寒いと感じていると推定され、その場合、空調装置の設定温度を通常モードで運転する空調装置の設定温度よりも上昇させることで、加熱装置による加熱と相まって利用者の体温を最適に調節することができ、利用者の不快感を取り除くことができる。
【0019】
運転状態判断手段において、利用者が着座した椅子の数を分母とし、利用者が着座した椅子のうちのON状態にある椅子の数を分子としてON状態にある椅子の割合を算出し、算出したON状態にある椅子の割合が有効割合以上であるかを判断するタスク・アンビエント空調システムは、利用者が着座した椅子に対するON状態にある椅子の割合が有効割合未満の場合、椅子に着座した利用者の送風モード又は暖房モードの利用頻度が低く、空調装置の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持したとしても、各利用者が不快に感じることはないから、運転状態判断手段によって利用者が着座した椅子に対するON状態にある椅子の割合が設定割合未満であると判断した場合、空調装置の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持する通常モードで空調装置を運転することで、室内における椅子の利用者に適したタスク・アンビエント空調を実施することができる。タスク・アンビエント空調システムは、利用者が着座した椅子に対するON状態にある椅子の割合が有効割合以上であるとともに、送風モードで運転している椅子の出力値又は暖房モードで運転している椅子の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値以上である場合、室内における椅子の利用者が多いとともに、椅子における送風モード又は暖房モードの利用頻度が高く、空調装置の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持した場合、各利用者が室内の空調環境に不快に感じる場合があるが、運転状態判断手段によって利用者が着座した椅子に対するON状態にある椅子の割合が有効割合以上であると判断するとともに、アンビエント空調制御変更演算手段によって平均出力値が設定出力値以上であると判断した場合、空調装置の設定温度を通常モードで運転する空調装置の設定温度よりも上昇又は低下させるブーストモードで該空調装置を運転するから、室内における椅子の利用者に最適な温度の空調空気を給気することができ、椅子の利用頻度や送風モード又は暖房モードの利用頻度、送風モード又は暖房モードの出力値に対応した最適なタスク・アンビエント空調を実現することができる。
【0020】
運転状態判断手段において判断されるON状態にある椅子の有効割合が70%~90%の範囲で設定され、アンビエント空調制御変更演算手段において判断される平均出力値の設定出力値が最大平均出力値の50%~70%の範囲で設定されるタスク・アンビエント空調システムは、椅子の有効割合を利用者が着座した椅子に対して70%~90%の範囲で設定することで、利用者が着座した椅子に対するON状態にある椅子の割合が70%~90%未満の場合、椅子に着座した利用者の送風モード又は暖房モードの利用頻度が低く、空調装置の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持したとしても、各利用者が不快に感じることはないから、運転状態判断手段によって利用者が着座した椅子に対するON状態にある椅子の割合が70%~90%未満であると判断した場合、空調装置の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持する通常モードで空調装置を運転することで、室内における椅子の利用者に適したタスク・アンビエント空調を実施することができる。タスク・アンビエント空調システムは、設定出力値を最大平均出力値の50~70%の範囲で設定することで、利用者が着座した椅子に対するON状態にある椅子の割合が70%~90%以上であるとともに、送風モードで運転している椅子の出力値又は暖房モードで運転している椅子の出力値を平均化した平均出力値が50%~70%以上である場合、室内における椅子の利用者が多いとともに、椅子における送風モード又は暖房モードの利用頻度が高く、空調装置の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持した場合、各利用者が室内の空調環境に不快に感じる場合があるが、運転状態判断手段によって利用者が着座した椅子に対するON状態にある椅子の割合が70%~90%以上であると判断するとともに、アンビエント空調制御変更演算手段によって平均出力値が50%~70%以上であると判断した場合、空調装置の設定温度を通常モードで運転する空調装置の設定温度よりも上昇又は低下させるブーストモードで該空調装置を運転するから、室内における椅子の利用者に最適な温度の空調空気を給気することができ、椅子の利用頻度や送風モード又は暖房モードの利用頻度、送風モード又は暖房モードの出力値に対応した最適なタスク・アンビエント空調を実現することができる。
【0021】
アンビエント域空調制御変更手段が各椅子に付与された識別子を利用して所定数の椅子を一纏めにした第1椅子グループ~第n椅子グループにグループ分けし、第1椅子グループ~第n椅子グループのグループ毎に運転状態判断手段とアンビエント空調制御変更演算手段とを実施し、通常モード又はブーストモードで運転する空調装置から所定温度の空調空気を第1椅子グループ~第n椅子グループの各グループ毎に給気させるタスク・アンビエント空調システムは、多数の椅子が設置された広い室内全体に通常モード又はブーストモードで運転する空調装置から所定温度の空調空気を給気した場合、室内の各箇所における空調温度が異なり、椅子の全ての利用者に最適な空調環境を提供することができない場合があるが、室内に設置された複数の椅子が所定数の椅子を一纏めにした第1椅子グループ~第n椅子グループにグループ分けされ、通常モード又はブーストモードで運転する空調装置から所定温度の空調空気を各グループ毎に給気することで、広い室内において椅子の利用頻度や送風モード又は暖房モードの利用頻度、送風モード又は暖房モードの出力値に対応したきめ細かい最適なタスク・アンビエント空調を実現することができ、広い室内におけるそれら椅子の利用者に最適な温度の空調空気を給気することができる。タスク・アンビエント空調システムは、アンビエント域空調制御変更手段が各椅子に付与された識別子を利用して各グループを特定するから、椅子の着座状態値(椅子に対する着座又は非着座)、送風装置及び加熱装置のON/OFF状態値(送風装置及び加熱装置のON/OFF)、椅子の送風モードの出力値又は暖房モードの出力値を各グループ毎であって各椅子毎に把握することができ、ON状態にある椅子の割合が有効割合以上であるかを各グループ毎に正確に判断することができるとともに、送風モードで運転している椅子の出力値又は暖房モードで運転している椅子の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値以上であるかを各グループ毎に正確に判断することができる。タスク・アンビエント空調システムは、識別子によって椅子を特定し、識別子を利用して各グループを特定しつつ、運転状態判断手段やアンビエント空調制御変更演算手段を各グループ毎に正確に実施することができるから、室内における椅子の利用者に最適な温度の空調空気を給気することができ、椅子の利用頻度や送風モード又は暖房モードの利用頻度、送風モードの出力又は暖房モードの出力値に対応した最適なタスク・アンビエント空調を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一例として示すタスク・アンビエント空調システム10の構成図。
【
図2】タスク・アンビエント空調システムのタスク域空調空間を形成する椅子の一例を示す斜視図。
【
図4】タスク・アンビエント空調システムを設置した建造物の室の室内空調方式の一例を示す図。
【
図5】タスク・アンビエント空調システムにおいて行われる各手段の一例を示すフローチャート。
【
図6】タスク・アンビエント空調システムを設置した建造物の室の室内空調の他の一例を示す上面図。
【
図7】タスク・アンビエント空調システムにおいて行われる各手段の他の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一例として示すタスク・アンビエント空調システム10の構成図である
図1等の添付の図面を参照し、本発明に係るタスク・アンビエント空調システムの詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、
図2は、タスク・アンビエント空調システム10のタスク域空調空間を形成する椅子14の一例を示す斜視図であり、
図3は、椅子14の側面図である。
図4は、タスク・アンビエント空調システム10を設置した建造物15の室16の室内空調方式の一例を示す図である。
図4では、無線LANルーター12の図示を省略している。
【0024】
タスク・アンビエント空調システム10は、アンビエント域空調制御変更手段11(制御手段)と、無線LANルーター12(通信装置)と、空調装置13と、室16の室内に設置された複数の椅子14とから形成されている。室16の室内には、
図1に示すように、エアコン用リモコン17が設置されている。室16に隣接する機械室18には、通信中継器(通信プロトコル変換器)19と終端装置20(ONU)とが設置されている。
【0025】
アンビエント域空調制御変更手段11は、
図1に示すように、所定のデータセンター(図示せず)に形成されたクラウド21(クラウドコンピューティング)に構築されている。クラウド21としては、Infrastructure as a Service(IaaS)、Platform as a Service(PaaS)、Software as a Service(SaaS)を利用することができる。タスク・アンビエント空調システム10にクラウド21を利用することで、クラウドサービスプラットフォームからインターネット経由でITリソースをオンデマンドで利用することができる。
【0026】
アンビエント域空調制御変更手段11は、中央処理部(仮想CPUまたは仮想MPU)とメモリ(仮想メインメモリおよび仮想キャッシュメモリ)とを有して独立したオペレーティングシステム(仮想OS)によって動作する仮想サーバであり、大容量仮想記憶領域が生成されている。アンビエント域空調制御変更手段11のメモリには、タスク・アンビエント空調システム10の各手段を実施するアプリケーションが記憶(格納)されている。アンビエント域空調制御変更手段11の大容量仮想記憶領域には、椅子14の固体番号(識別子)が記憶(格納)されている。
【0027】
アンビエント域空調制御変更手段11は、インターネットを介して空調装置13の運転モードを受信し、インターネットを介して無線LANルーター12からそれら椅子14の各種情報を受信するとともに、インターネットを介して所定の制御指令(制御信号)を空調装置13に送信する。アンビエント域空調制御変更手段11は、運転状態判断手段を実行するとともに、アンビエント空調制御変更演算手段を実行する。アンビエント域空調制御変更手段11と無線LANルーター12とは、インターネットの他に、LANやWAN等のネットワークによって接続される場合がある。
【0028】
なお、アンビエント域空調制御変更手段11が中央処理部(CPUまたはMPU)とメモリ(メインメモリおよびキャッシュメモリ)とを有して独立したオペレーティングシステム(OS)によって動作する物理的なコンピュータ(サーバ)に構築されていてもよい。アンビエント域空調制御変更手段11が物理的なコンピュータに構築される場合、そのコンピュータは、機械室18又はデータセンターに設置される。
【0029】
無線LANルーター12(通信装置)は、建造物15(例えば、オフィスビルや店舗ビル、多目的ホール、校舎、講堂、図書館、研究所等)の室16の室内(
図1参照)に設置されている。無線LANルーター12は、中央処理部(CPUまたはMPU)とメモリ(メインメモリおよびキャッシュメモリ)とを有して独立したオペレーティングシステム(OS)によって動作する物理的なコンピュータを内蔵している。無線LANルーター12には、複数の通信デバイス(椅子14)をインターネットを介してアンビエント域空調制御変更手段11に接続する機能を有し、椅子14にIPアドレスを付与するとともに、不正な進入を遮断するファイアウォールやフィルター等のセキュリティ機能を有する。
【0030】
利用者又は建造物15の室16の管理者は、ウェブブラウザを利用し、無線LANルーター12に通信中継器19、終端装置45を通じてインターネット(所定のネットワーク)に接続可能であり、インターネットを利用してアンビエント域空調制御変更手段11にアクセスかつログインすることができる。無線LANルーター12は、所定の通信手段を利用して椅子14の制御部と通信可能である。無線LANルーター12は、椅子14の制御部から送信された各種情報を受信し、椅子14の制御部から受信した各種情報をインターネットを介してアンビエント域空調制御変更手段11に送信する。通信手段としては、無線LANやBluetooth(登録商標)、WiMAX(ワイマックス)、4G(フォー・ジー)、5G(ファイブ・ジー)等を利用することができる他、今後開発されるあらゆる通信手段を利用することができる。
【0031】
タスク・アンビエント空調システム10は、インターネットを介してアンビエント域空調制御変更手段11から所定の制御指令(制御信号)を受信し、アンビエント域空調制御変更手段11から受信した制御指令(制御信号)を空調装置13の制御部(図示せず)に送信する。タスク・アンビエント空調システム10は、空調装置13の制御部から送信された運転モードをインターネットを介してアンビエント域空調制御変更手段11に送信する。
【0032】
空調装置13は、建造物15の室外に設置された室外機22と、室16の天井23に設置された室内機24とから形成されたヒートポンプ式エアコンである。空調装置13は、所定温度の空調空気を室16の室内に給気する。空調装置13の運転モードは、空調空気の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持する通常モードと、空調空気の設定温度を通常モードで運転する空調装置13の設定温度よりも上昇又は低下させるブーストモードとがある。通常モードにおける設定温度は、室内に設置されたエアコン用リモコン17において設定又は変更することができる。
【0033】
冷房期間中(例えば、夏期及び中間期)における空調装置13のブーストモードでの運転では、空調空気の設定温度を通常モードで運転する空調装置13の設定温度よりも低下(例えば、1~2℃低下)させる。暖房期間中(例えば、冬期)における空調装置13のブーストモードでの運転では、空調空気の設定温度を通常モードで運転する空調装置13の設定温度よりも上昇(例えば、1~2℃上昇)させる。
【0034】
図2,3に示すように、椅子14は、脚部25と、脚部25の上端に設置されるボックス状の支基26と、支基26の上面に取り付けられた座受部材27と、座受部材27に前後方向へスライド可能に取り付けられ座28と、支基26の後部から上方へ延びる背もたれ29とから形成されている。椅子14は、送風装置30と、加熱装置31と、着座センサ32と、バッテリー(蓄電池)(図示せず)と、ON/OFFスイッチ(切替手段)(図示せず)及び切替スイッチ(切替手段)(図示せず)と、出力調節つまみ(出力調節手段)(図示せず)と、制御部(図示せず)とを有する。
【0035】
椅子14の制御部は、所定の通信手段によって椅子14の各種情報を無線LANルーター12に送信可能な通信機能(送信手段)(図示せず)を備えている。それら椅子14の制御部には、各椅子14を識別可能な固体番号(識別子)が付与されている。各椅子14は、それに付与された固体番号(識別子)によって特定(識別)される。
【0036】
椅子14の電源供給用ON/OFFスイッチ(切替手段)や送風モード/暖房モード切替スイッチ(切替手段)、送風装置30(送風ファン)及び加熱装置31(ヒーター)の出力の出力調節つまみ(出力調節手段)は、椅子14の座28の側部に設置されている。椅子14の電源供給用ON/OFFスイッチは、送風装置30及び加熱装置31の起動又は停止に使用される。送風モード/暖房モード切替スイッチは、送風モード(送風装置30)又は暖房モード(加熱装置31)の切替に使用される。送風装置30(送風ファン)及び加熱装置31(ヒーター)の出力の出力調節つまみは、送風装置30の出力(風量)又は加熱装置31の出力(温度)の調節に使用される。
【0037】
なお、送風装置30又は加熱装置31の出力設定は、弱から強まで5段階(例えば、弱2、弱1、中、強1、強2)で調節可能であるが、弱から強まで6段階以上で調節することもでき、弱から強まで無段階で調節することもできる。バッテリー(蓄電池)は、椅子14の座28の後部に着脱可能に設置され、送風装置30(送風ファン)や加熱装置31(ヒーター)に電力を供給する。
【0038】
脚部25は、先端部にキャスタ33が取り付けられた多岐脚34と、多岐脚34の中央部から上方へ延びる脚柱35とを有する。脚柱35には、ガススプリングからなる昇降機構が内蔵されている。支基26は、脚柱35の上端部に水平方向へ回転可能に取り付けられている。支基26には、脚柱35の昇降調整機構と背もたれ29の傾動調整機構とが内蔵されている。脚柱35のガススプリングの操作部は、支基26の内部の昇降調整機構に連結されている。
【0039】
背もたれ29は、略L字状の支持フレーム36と、支持フレーム36の上端部に取り付けられた背もたれ本体37とを備えている。支持フレーム36の下端部は、支基26の内部の傾動調整機構に連結されている。座28は、硬質樹脂または金属から作られた支持ベース(高強度部位)(図示せず)と、支持ベースの上面側に設置されたクッション部材(図示せず)と、クッション部材の上面の一部に保持される通気性弾性部材(図示せず)と、通気性張材38とを有する。通気性張材38は、クッション部材及び通気性弾性部材を被覆する。
【0040】
送風装置30は、一対の送風ファン39と、送風ダクト40と、吹き出し口41とから形成されている。送風装置30は、椅子14に着座した利用者Yに向かって所定風量の空気を送風する。それら送風ファン39は、座28を形成する支持ベースの下面に取り付けられている。それら送風ファン39は、ON/OFFスイッチ及び切替つまみ(切替手段)に接続され、バッテリーから供給された電力によって駆動する。送風ダクト40は、送風ファン39に連結され、送風ファン39から座28の両側部に向かって延びている。吹き出し口41は、送風ダクト40の先端部に設置され、送風ファン39から送風された空気を座28の上方へ向かって吹き出す。
【0041】
送風装置30では、送風ダクト40を動かして吹き出し口41の向きを変えることができ、吹き出し口41の向きを変えることで、送風ファン39から送風された空気の送風方向を変えることができる。切替スイッチを送風モード(送風装置30)にし、出力調節つまみで送風装置30(送風ファン39)の出力(風量)を調節するとともに、ON/OFFスイッチをONにすると、送風ファン39が起動し、
図3に矢印で示すように、椅子14の座面から送風ファン39に向かって空気が吸引され、調節された出力(風量)の空気が吹き出し口41から送風される。なお、ON/OFFスイッチをOFFにすると、送風ファン39(送風装置30)が停止する。
【0042】
送風モード時の椅子14の制御部は、その通信機能によって椅子14の制御パラメータ値(固体番号(識別子)、着座状態値、送風装置状態値、加熱装置状態値、送風/暖房モード値、送風出力値、加熱出力値)を無線LANルーター12に送信する。
【0043】
加熱装置31は、所定面積のヒーターであって、座28を形成する通気性弾性部材の上面に設置されている。加熱装置31は、椅子14に着座した利用者Yの臀部を暖める。加熱装置31(ヒーター)が背もたれ本体37に設置されていてもよい。この場合、加熱装置31が椅子14に着座した利用者Yの腰部及び背中を暖める。加熱装置31は、ON/OFFスイッチ及び切替つまみ(切替手段)に接続され、バッテリーから供給された電力によって駆動する。
【0044】
切替スイッチを暖房モード(加熱装置31)にし、出力調節つまみで加熱装置31(ヒーター)の出力(温度)を調節するとともに、ON/OFFスイッチをONにすると、加熱装置31が稼働し、座28が所定温度に加熱される。なお、ON/OFFスイッチをOFFにすると、加熱装置31が停止する。
【0045】
暖房モード時の椅子14の制御部は、送風モード時の椅子14の制御部と同様の通信方式によって椅子14の制御パラメータ値を無線LANルーター12に送信する。
【0046】
着座センサ32は、通気性張材38の直下であって通気性弾性部材に設置されている。着座センサ32には、圧力センサ(感圧式メンブレンセンサ)が使用されているが、静電容量式センサを使用することもできる。着座センサ32は、利用者Yが椅子14に着座した場合にONになり、着座信号(着座センサON)を椅子14の制御部に送信し、利用者Yが椅子14に着座していない場合にOFFになり、非着座信号(着座センサOFF)を椅子14の制御部に送信する。椅子14の制御部は、その通信機能によって椅子14の制御パラメータ値を無線LANルーター12に送信する。
【0047】
タスク・アンビエント空調システム10を設置した建造物15の室内空調方式の一例は、
図1,4に示すように、天井埋込型エアコンである。空調装置13(室外機22)で作られた空調空気は、
図1,4に矢印で示すように、室内機24の吹出口から室内に向かって給気される。室内の空気は、室内機24の室内空気取入口に流入した後、熱交換されて再び吹出口から給気され、室内空気を循環空調する。
【0048】
タスク・アンビエント空調10は、
図1に示すように、室内をタスク域42(作業域)とそれ以外のアンビエント域43(周辺域)とに区画し、タスク域42に集中して冷暖房を行う空調方式である。タスク域42に冷暖房を集中して行うことにより、アンビエント域43の空調負荷を低減することができる。この室内空調では、
図4に示すように、空調空気を天井41の室内機24から利用者Y(椅子14)に向かって吹き出すことで利用者Yの周囲(タスク域42)を冷暖房するから、タスク域42を快適に保つことができるとともに、アンビエント域43の空調エネルギーの省エネを図りつつ、利用者Yが快適に作業することができる。
【0049】
図5は、タスク・アンビエント空調システム10において行われる各手段の一例を示すフローチャートである。
【0050】
タスク・アンビエント空調システム10を利用する手順の一例は、以下のとおりである。タスク・アンビエント空調システム10を起動させるには、システムONボタン(図示せず)をタップ(クリック)する。システムONボタンをタップすると、無線LANルーター12がインターネットに接続され、無線LANルーター12がアンビエント域空調制御変更手段11にアクセスかつログインする。タスク・アンビエント空調システム10の起動時には、全ての椅子14に利用者Yが着座していない。なお、椅子14のON/OFFスイッチ(切替手段)はOFFになっているものとする。
【0051】
タスク・アンビエント空調システム10では、ON状態の椅子14の有効割合(設定割合)、送風モード又は暖房モードで運転されている椅子の設定出力値が事前に設定されている。設定された有効割合及び設定された設定出力値は、アンビエント域空調制御変更手段11のキャッシュメモリに一時的に記憶(格納)される。なお、冷房期間や暖房期間を設定することもできる。また、エアコン用リモコン17によって室16の室内の設定温度が設定される。
【0052】
有効割合(運転モード切替判定値)は、アンビエント域空調制御変更手段11が実施する運転状態判断手段においてON状態にある椅子の割合の閾値(境界値)となる割合である。運転状態判断手段では、椅子14が送風モード(冷房期間中に送風モードON信号を受信している場合)と暖房モード(暖房期間中に暖房モードON信号を受信している場合)とのいずれかで運転している場合、椅子14がON状態と判断する。ON状態にある椅子14の有効割合は、90%で設定されたものとする。なお、ON状態にある椅子14の有効割合は、70%~90%の範囲で設定することができる。
【0053】
アンビエント域空調制御変更手段11の運転状態判断手段では、利用者Yが着座した椅子14(着座信号(着座センサON)を送信している椅子)の数を分母とし、利用者Yが着座した椅子14のうちのON状態にある椅子14(送風モードOFF信号又は暖房モードOFF信号を送信している椅子14)の数を分子としてON状態にある椅子14の割合を算出し、算出したON状態にある椅子14の割合があらかじめ設定された有効割合以上(例えば、90%以上)であるか又は有効割合未満(例えば、90%未満)であるかを判断する。この場合、椅子14に利用者Yが着座しているが(着座信号(着座センサON)を受信しているが)送風モードと暖房モードとのいずれの運転もされていない場合(送風モードOFF信号又は暖房モードOFF信号を受信している場合)、椅子14がOFF状態にあると判断する。
【0054】
運転状態判断手段においてアンビエント域空調制御変更手段11は、冷房期間中(夏期及び中間期)において利用者Yが着座した椅子14が暖房モードで運転されている場合(冷房期間中に暖房モードON信号を受信している場合)、その椅子14がOFF状態であると判断するとともに、その椅子14を割合算出の分母に算入しない。また、暖房期間中(冬期)において利用者Yが着座した椅子14が送風モードで運転されている場合(暖房期間中に送風モードON信号を受信している場合)、その椅子14がOFF状態であると判断するとともに、その椅子14を割合算出の分母に算入しない。
【0055】
設定出力値(運転モード切替判定値)は、アンビエント域空調制御変更手段11が実施するアンビエント空調制御変更演算手段において送風モードで運転している椅子14の出力値又は暖房モードで運転している椅子14の出力値を平均化した平均出力値の閾値(境界値)となる出力値である。アンビエント空調制御変更演算手段において判断される平均出力値の設定出力値は、最大平均出力値の60%で設定(例えば、送風装置30又は加熱装置31の出力値が弱から強まで5段階(例えば、弱2、弱1、中、強1、強2)で調節可能である場合、3段階(中)に設定)されたものとする。なお、設定出力値は、最大平均出力値の50~70%の範囲で設定することができる。アンビエント空調制御変更演算手段では、送風モードで運転している椅子14の出力値又は暖房モードで運転している椅子14の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値以上であるか又は設定出力値未満であるかを判断する。
【0056】
設定温度やON状態の椅子14の有効割合、設定出力値を設定した後、タスク・アンビエント空調システム10を起動させる。タスク・アンビエント空調システム10の起動時では、空調装置13が通常モードで運転される。アンビエント域空調制御変更手段11は、通常モード信号(制御指令)をエアコン用リモコン17に送信する。通常モード信号を受信したエアコン用リモコン17は、通常モード信号(起動信号)を空調装置13の制御部に送信する。通常モード信号を受信した空調装置13の制御部は、通常モードで空調装置13の運転を開始する。
【0057】
通常モード運転においてアンビエント域空調制御変更手段11は、空調装置13の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持する。椅子14に利用者Yが着座していない場合、着座センサ32が非着座信号(着座センサOFF)(着座状態値)を椅子14の制御部に送信する。椅子14の制御部は、その通信機能によって椅子14の固体番号(識別子)と非着座信号とを無線LANルーター12に送信する。無線LANルーター12は、椅子14の固体番号(識別子)と非着座信号とをアンビエント域空調制御変更手段11に送信する。アンビエント域空調制御変更手段11は、非着座信号(着座センサOFF)を椅子14の固体番号(識別子)に関連付けた状態でキャッシュメモリに記憶(格納)する。
【0058】
利用者Yが建造物15の室16に入り、所定の作業を行うために椅子14に着座すると、着座センサ32がONになり、着座センサ32が着座信号(着座センサON)(着座状態値)を椅子14の制御部に送信する。椅子14の制御部は、その通信機能によって着座センサ32がONになった椅子14の固体番号(識別子)と着座信号(着座センサON)とを無線LANルーター12に送信する。無線LANルーター12は、椅子14の制御部から受信した固体番号(識別子)と着座信号(着座センサON)とをアンビエント域空調制御変更手段11に送信する。アンビエント域空調制御変更手段11は、固体番号(識別子)に関連付けた状態でキャッシュメモリに記憶(格納)した非着座信号(着座センサOFF)を着座信号(着座センサON)に切り替える。
【0059】
椅子14に着座した利用者Yが冷房期間において切替スイッチを送風モード(送風装置)にし、又は、椅子14に着座した利用者Yが暖房期間において切替スイッチを暖房モード(加熱装置31)にし、出力調節つまみを回して送風装置30の出力(風量)又は加熱装置28の出力(温度)を弱2(20%)、弱1(40%)、中(60%)、強1(80%)、強2(100%)のいずれかに設定するとともに、椅子14のON/OFFスイッチ(切替手段)をONにする。椅子14のON/OFFスイッチがONになると、送風装置30が起動し、送風ファン39から送風された空気が吹き出し口41から利用者Yに向かって送風され、又は、加熱装置28(ヒーター)が起動し、椅子14の座25が暖められる。
【0060】
椅子14の制御部は、ON/OFFスイッチ(切替手段)がONになった椅子14の固体番号(識別子)を無線LANルーター12に送信し、送風装置30の送風モードON信号(ON/OFF状態値)又は加熱装置28(ヒーター)の暖房モードON信号(ON/OFF状態値)を無線LANルーター12に送信するとともに、送風ファン39(送風装置30)の送風モード出力信号(送風装置30の出力(弱2(20%)、弱1(40%)、中(60%)、強1(80%)、強2(100%)のいずれか))(送風装置30の出力値)又は加熱装置28の暖房モード出力信号(加熱装置の出力(弱2(20%)、弱1(40%)、中(60%)、強1(80%)、強2(100%)のいずれか))(加熱装置27の出力値)を無線LANルーター12に送信する。
【0061】
無線LANルーター12は、椅子14の制御部から受信した固体番号(識別子)、送風モードON信号、送風モード出力信号又は椅子14の制御部から受信した固体番号(識別子)、暖房モードON信号、暖房モード出力信号をアンビエント域空調制御変更手段11に送信する。アンビエント域空調制御変更手段11は、無線LANルーター12から受信した送風モードON信号及び送風モード出力信号を固体番号(識別子)に関連付けた状態でキャッシュメモリに記憶(格納)し、又は、通信装置12から受信した暖房モードON信号及び暖房モード出力信号を固体番号(識別子)に関連付けた状態でキャッシュメモリに記憶(格納)する。
【0062】
利用者Yが椅子14から立ち上がると、着座センサ32がOFFになり、着座センサ32が非着座信号(着座センサOFF)(着座状態値)を椅子14の制御部に送信する。椅子14の制御部は、着座センサ32がOFFになった椅子14の固体番号(識別子)と非着座信号(着座センサOFF)とを無線LANルーター12に送信する。無線LANルーター12は、椅子14の制御部から受信した固体番号(識別子)と非着座信号(着座センサOFF)とをアンビエント域空調制御変更手段11に送信する。
【0063】
アンビエント域空調制御変更手段11は、固体番号(識別子)と非着座信号(着座センサOFF)とを受信すると、その固体番号(識別子)に対応した椅子14の着座信号(着座センサON)を非着座信号(着座センサOFF)に切り替え、その固体番号(識別子)に対応した椅子14の送風装置30の出力値又は椅子14の加熱装置28の出力値を0にするとともに、その固体番号(識別子)と送風装置停止信号(送風装置OFF信号)又は加熱装置停止信号(加熱装置OFF信号)とを無線LANルーター12に送信する。
【0064】
アンビエント域空調制御変更手段11から固体番号(識別子)と送風装置停止信号(送風装置OFF信号)又は加熱装置停止信号(加熱装置OFF信号)とを受信した無線LANルーター12は、その固体番号(識別子)に対応する椅子14の制御部に送風装置停止信号又は加熱装置停止信号を送信する。送風装置停止信号又は加熱装置停止信号を受信した椅子14の制御部は、送風装置30(送風ファン39)を停止し、又は、加熱装置31(ヒーター)を停止する。
【0065】
送風装置30又は加熱装置31(ヒーター)が停止した椅子14に利用者Yが再び着座した場合、送風装置30(送風ファン39)が再び起動し、又は、加熱装置28が再び起動するとともに、既述のように、椅子14の固体番号(識別子)、送風モードON信号、送風モード出力信号又は椅子14の固体番号(識別子)、暖房モードON信号、暖房モード出力信号が無線LANルーター12からアンビエント域空調制御変更手段11に送信される。なお、アンビエント域空調制御変更手段11は、冷房期間中(夏期及び中間期)において椅子14が暖房モードで運転されている場合(冷房期間中に暖房モードON信号を受信している場合)、その椅子14がOFF状態であると判断する。また、暖房期間中(冬期)において椅子14が送風モードで運転されている場合(暖房期間中に送風モードON信号を受信している場合)、その椅子14がOFF状態であると判断する。
【0066】
椅子14が送風モード又は暖房モードで運転中に利用者Yが椅子14のON/OFFスイッチ(切替手段)をONからOFFに切り替えた場合、送風装置30(送風ファン39)又は加熱装置31(ヒーター)が停止する。椅子14の制御部は、ON/OFFスイッチがOFFになった椅子14の固体番号(識別子)と送風装置30の送風モードOFF信号(ON/OFF状態値)又は加熱装置28の暖房モードOFF信号(ON/OFF状態値)とを無線LANルーター12に送信する。無線LANルーター12は、椅子14の制御部から受信した固体番号(識別子)と送風モードOFF信号又は暖房モードOFF信号とをアンビエント域空調制御変更手段11に送信する。
【0067】
アンビエント域空調制御変更手段11は、固体番号(識別子)と送風モードOFF信号又は暖房モードOFF信号とを受信すると、その固体番号(識別子)に対応した椅子14の送風モードONを送風モードOFFに切り替え、その固体番号(識別子)に対応した椅子14の送風装置30の出力値を0にし、又は、その固体番号(識別子)に対応した椅子14の暖房モードONを暖房モードOFFに切り替え、その固体番号(識別子)に対応した椅子14の加熱装置31の出力値を0にする。なお、ON/OFFスイッチがOFFから再びONに切り替わった場合、送風装置30(送風ファン39)又は加熱装置31(ヒーター)が再び起動するとともに、既述のように、椅子14の固体番号(識別子)、送風モードON信号、送風モード出力信号又は椅子14の固体番号(識別子)、暖房モードON信号、暖房モード出力信号が無線LANルーター12からアンビエント域空調制御変更手段11に送信される。
【0068】
利用者Yが椅子14に着座した場合、アンビエント域空調制御変更手段11(クラウド15に構築された仮想サーバ又は機械室18に設置された物理的なコンピュータ)は、ON状態にある椅子14の割合(B/A×100)が有効割合以上(B/A×100≧有効割合)であるか又は有効割合未満(B/A×100<有効割合)であるかを判断する(運転状態判断手段)(S-1)。Aは、室16の内部に設置された全ての椅子14のうちの利用者Yが着座した椅子14(着座信号(着座センサON)を送信している椅子14)の数であり、Bは、利用者Yが着座した椅子14のうちのON状態にある椅子14(送風モードOFF信号又は暖房モードOFF信号を送信している椅子14)の数である。
【0069】
アンビエント域空調制御変更手段11は、
図5に示すように、ステップ1(S-1)の運転状態判断手段において、ON状態にある椅子14(送風モード又は暖房モードで運転している椅子14)の割合が有効割合未満(B/A×100<有効割合)であると判断した場合、空調装置13の設定温度(空調装置13から給気する空調空気の温度)をあらかじめ設定された設定温度に維持する通常モードで空調装置13を運転する(S-2)。アンビエント域空調制御変更手段11は、通常モード信号(制御指令)を空調装置13の制御部に送信する。通常モード信号を受信した空調装置13の制御部は、空調装置13の通常モード運転を継続する。
【0070】
アンビエント域空調制御変更手段11は、タスク・アンビエント空調システム10を終了するかを判断する(S-3)。タスク・アンビエント空調システム10を終了する場合、アンビエント域空調制御変更手段11が停止する。ステップ3(S-3)において、タスク・アンビエント空調システム10の利用を継続する場合、アンビエント域空調制御変更手段11は、ステップ1(S-1)に戻って運転状態判断手段を実施する。
【0071】
ステップ1(S-1)の運転状態判断手段において、ON状態にある椅子14の割合が有効割合以上(B/A×100≧有効割合)であると判断した場合、アンビエント域空調制御変更手段11は、ON状態にあるそれら椅子14の送風モードで運転している椅子14の出力値又は暖房モードで運転している椅子14の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値以上(C≧設定出力値)であるか又は設定出力値未満(C<設定出力値)であるかを判断する(アンビエント空調制御変更演算手段)(平均出力判断手段)(S-4)。Cは、平均出力値(総出力(5段階の場合、椅子毎に5段階を積算した総数)/ON状態にある椅子14の数)である。
【0072】
アンビエント域空調制御変更手段11は、ステップ4(S-4)のアンビエント空調制御変更演算手段において、平均出力値が設定出力値未満(C<設定出力値)であると判断した場合、空調装置13の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持する通常モードで空調装置13を運転する(S-2)。アンビエント域空調制御変更手段11は、通常モード信号(制御指令)を空調装置13の制御部に送信する。空調装置13の制御部は、空調装置13の通常モード運転を継続する。
【0073】
ステップ3(S-3)において、通常モード運転を継続中にタスク・アンビエント空調システム10を終了する場合、アンビエント域空調制御変更手段11が停止する。ステップ3(S-3)において、タスク・アンビエント空調システム10の利用を継続する場合、アンビエント域空調制御変更手段11は、通常モード運転を継続しつつ、ステップ1(S-1)に戻って運転状態判断手段を実施する。
【0074】
ステップ1(S-1)の運転状態判断手段において、ON状態にある椅子14の割合が有効割合以上(B/A×100≧有効割合)であると判断するとともに、ステップ4(S-4)のアンビエント空調制御変更演算手段において、平均出力値が設定出力値以上(C≧設定出力値)であると判断した場合、アンビエント域空調制御変更手段11は、空調装置13の設定温度(空調装置13から給気する空調空気の温度)をあらかじめ設定された設定温度よりも上昇又は低下させるブーストモードで空調装置を運転する(S-5)。
【0075】
アンビエント域空調制御変更手段11は、ブーストモード信号(制御指令)を空調装置13の制御部に送信する。ブーストモード信号を受信した空調装置13の制御部は、空調装置13を通常モードからブーストモードに切り替え、ブーストモードで空調装置13を運転する。ブーストモードでは、冷房期間中において空調装置13の設定温度(空調装置13から給気する空調空気の温度)をあらかじめ設定された設定温度よりも1~2℃低下させ、暖房期間中において空調装置13の設定温度(空調装置13から給気する空調空気の温度)をあらかじめ設定された設定温度よりも1~2℃上昇させる。
【0076】
ステップ3(S-3)において、ブーストモード運転を継続中にタスク・アンビエント空調システム10を終了する場合、アンビエント域空調制御変更手段11が停止する。ステップ3(S-3)において、タスク・アンビエント空調システム10の利用を継続する場合、アンビエント域空調制御変更手段11は、ブーストモード運転を継続しつつ、ステップ1(S-1)に戻って運転状態判断手段を実施する。
【0077】
アンビエント域空調制御変更手段11は、空調装置13のブーストモードでの運転中に、ステップ1(S-1)に戻ってON状態にある椅子14の割合が有効割合未満であると判断した場合、又は、ステップ1(S-1)においてON状態にある椅子14の割合が有効割合以上であると判断するとともに、ステップ4(S-4)のアンビエント空調制御変更演算手段において、平均出力値が設定出力値未満であると判断した場合、ブーストモードから通常モードに切り替え、通常モードで空調装置13を運転する。
【0078】
なお、アンビエント域空調制御変更手段11は、所定の人工知能アルゴリズムを利用し、又は、プリセット情報による制御指示内容を利用し、ON状態にある椅子を判断する運転状態判断手段と、運転状態判断手段によってON状態にある椅子が送風モード又は暖房モードのいずれかのモードであることを検出してアンビエント空調制御目標値を演算するアンビエント空調制御変更演算手段とを実施し、空調装置を通常モードで運転し、又は、空調装置の設定温度を通常モードで運転する空調装置の設定温度よりも上昇又は低下させるブーストモードで空調装置を運転する場合もある。
【0079】
タスク・アンビエント空調システム10は、ON状態にある椅子14(送風モード又は暖房モードで運転している椅子14)の割合が有効割合未満(B/A×100<有効割合)の場合、室16の室内における送風モード又は暖房モードで運転している椅子14の利用者Yが少なく、空調装置13の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持したとしても、各利用者Yが不快に感じることはないから、アンビエント域空調制御変更手段11が運転状態判断手段によってON状態にある椅子14の割合が有効割合未満であると判断した場合、空調装置13の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持する通常モードで空調装置13を運転することで、室内における椅子14の利用者Yに適したタスク・アンビエント空調を実施することができる。
【0080】
タスク・アンビエント空調システム10は、送風モードで運転している椅子14の出力値又は暖房モードで運転している椅子14の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値未満(C<設定出力値)の場合、椅子14における送風モード又は暖房モードの利用頻度が低く、空調装置13の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持したとしても、各利用者Yが不快に感じることはないから、アンビエント域空調制御変更手段11がアンビエント空調制御変更演算手段によって平均出力値が設定出力値未満であると判断した場合、空調装置13の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持する通常モードで空調装置13を運転することで、室内における椅子14の利用者Yに適したタスク・アンビエント空調を実施することができる。
【0081】
タスク・アンビエント空調システム10は、ON状態にある椅子14の割合が有効割合以上(B/A×100≧有効割合)であるとともに、送風モードで運転している椅子14の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値以上(C≧設定出力値)である場合、室16の室内における送風モードで運転している椅子14の利用者Yが多いとともに、椅子14における送風モードの利用頻度が高く、空調装置13の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持した場合、室内の利用者Yが暑いと感じていると推定され、各利用者Yが室内の空調環境に不快に感じる場合があるが、アンビエント域空調制御変更手段11が運転状態判断手段によってON状態にある椅子14の割合が有効割合以上であると判断するとともに、アンビエント空調制御変更演算手段によって平均出力値が設定出力値以上であると判断した場合、空調装置13の設定温度を通常モードで運転する空調装置13の設定温度よりも低下(例えば、設定温度(空調装置13から給気する空調空気の温度)をあらかじめ設定された設定温度よりも1~2℃低下)させるブーストモードで空調装置13を運転するから、室内における椅子14の利用者Yに最適な温度の空調空気を給気することができ、椅子14の利用頻度や送風モードの利用頻度、送風モードの出力値に対応した最適なタスク・アンビエント空調を実現することができる。
【0082】
タスク・アンビエント空調システム10は、ON状態にある椅子14の割合が有効割合以上(B/A×100≧有効割合)であるとともに、暖房モードで運転している椅子14の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値以上(C≧設定出力値)である場合、室16の室内における暖房モードで運転している椅子14の利用者が多いとともに、椅子14における暖房モードの利用頻度が高く、空調装置13の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持した場合、室内の利用者Yが寒いと感じていると推定され、各利用者Yが室内の空調環境に不快に感じる場合があるが、アンビエント域空調制御変更手段11が運転状態判断手段によってON状態にある椅子14の割合が有効割合以上であると判断するとともに、アンビエント空調制御変更演算手段によって平均出力値が設定出力値以上であると判断した場合、空調装置13の設定温度を通常モードで運転する空調装置13の設定温度よりも上昇(例えば、空調装置13の設定温度(空調装置13から給気する空調空気の温度)をあらかじめ設定された設定温度よりも1~2℃上昇)させるブーストモードで空調装置13を運転するから、室内における椅子14の利用者Yに最適な温度の空調空気を給気することができ、椅子14の利用頻度や暖房モードの利用頻度、暖房モードの出力値に対応した最適なタスク・アンビエント空調を実現することができる。
【0083】
タスク・アンビエント空調システム10は、インターネットやLAN、WAN等のネットワークを利用してアンビエント域空調制御変更手段11や椅子14、空調装置13が接続されるから、例えば、アンビエント域空調制御変更手段11をインターネット上のクラウド21に構築することができ、椅子14の着座状態値(椅子14に対する着座又は非着座)、送風装置30及び加熱装置31のON/OFF状態値(送風装置30及び加熱装置31のON/OFF)、椅子14の送風モードの出力値又は暖房モードの出力値をアンビエント域空調制御変更手段11がネットワークを介して受信しつつ、空調装置13の運転モード(通常モード又はブーストモード)の切り替えをネットワークによる遠隔操作よって自動で行うことができる。
【0084】
タスク・アンビエント空調システム10は、椅子14の送風モード時に椅子14に設置された送風装置30から所定風量の空気を利用者Yに向かって送風し、室16の内部の空調空気を利用者Yに吹き付けることで、利用者Yの体温や体感温度を下げることができるとともに、椅子14の暖房モード時に椅子14に設置された加熱装置31によって利用者の臀部と腰部とのうちの少なくとも臀部を暖めることができ、空調装置13から給気される空調空気と相まって利用者の体温や体感温度を最適に調節することができる。
【0085】
タスク・アンビエント空調システム10は、各椅子14を識別可能な固体番号(識別子)が椅子14毎に付与され、アンビエント域空調制御変更手段11が固体番号によって各椅子14を特定するから、椅子14の着座状態値(椅子14に対する着座又は非着座)、送風装置30及び加熱装置31のON/OFF状態値(送風装置30及び加熱装置31のON/OFF)、椅子14の送風モードの出力値又は暖房モードの出力値を各椅子14毎に把握することができ、ON状態にある椅子14の割合が有効割合以上であるか又は有効割合未満であるかを正確に判断することができるとともに、送風モードで運転している椅子14の出力値又は暖房モードで運転している椅子14の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値以上であるか又は設定出力値未満であるかを正確に判断することができる。
【0086】
タスク・アンビエント空調システム10は、属性(年齢や性別、職場であれば役職の違い等)の異なる各利用者Yの意識(考え)にかかわらず、アンビエント域空調制御変更手段11が空調装置13の運転モードをインターネットやLAN、WAN等のネットワークによる遠隔操作よって通常モード又はブーストモードに自動的に切り替えるから、各利用者Yが意識的に所定の操作を行う必要はなく、各利用者Yの手間を省くことができるとともに各利用者Yが負担を感じることがなく、各利用者Yの意識(考え)にかかわらず各利用者Yにとって最適な空調空気を室16の室内に給気することができる。
【0087】
タスク・アンビエント空調システム10は、椅子14がインターネット(無線ネットワーク)を介してアンビエント域空調制御変更手段11と通信することで、利用者Yによる椅子14の自由な移動を妨げることはない。また、椅子14がインターネットを介してアンビエント域空調制御変更手段11と通信可能であるから、アンビエント域空調制御変更手段11の設置位置を自由に設定することができる。更に、例えば、アンビエント域空調制御変更手段11をクラウド21に設定した場合、建造物15の管理者(メンテナンス担当者)が遠隔地から複数の建造物15に構築されたタスク・アンビエント空調システム10を一括して管理することができ、複数の建造物15においてタスク・アンビエント空調システム10の各設定値の変更やプログラムの更新が可能となり、システム10の省力化を図ることができる。
【0088】
図6は、タスク・アンビエント空調システム10を設置した建造物15の室16の室内空調の他の一例を示す上面図であり、
図7は、タスク・アンビエント空調システム10において行われる各手段の他の一例を示すフローチャートである。
図6では、無線LANルーター12の図示を省略し、通信中継器22(通信プロトコル変換器)19及びディスプレイ20(タッチパネル)並びに終端装置45(ONU)が設置された機械室18の図示を省略している。
【0089】
空調装置13は、室外機22と複数台の室内機24a~24cとから形成されたヒートポンプ式エアコンである。
図6に示す室16の室内空調は、天井埋込型エアコンであり、室16の天井に4つの室内機24a~24dが設置されている。それら室内機24a~24dは、送風ダクト44a~44dを介して空調装置13に接続されている。アンビエント域空調制御変更手段11は、室16の室内に設置されたそれら椅子14に付与された固体番号(識別子)を利用し、所定数の椅子14(6個の椅子14)を一纏めにした第1椅子グループG1~第4椅子グループG4(第1椅子グループ~第n椅子グループ)にグループ分けしている。
【0090】
なお、
図6では、第1椅子グループG1~第4椅子グループG4を図示しているが、椅子14のグループの数に特に制限はなく、5つ以上のグループにグループ分けすることができる。アンビエント域空調制御変更手段11の大容量仮想記憶領域には、それら椅子14の固体番号(識別子)が記憶(格納)されているとともに、各グループG1~G4を形成する椅子14の各固体番号(識別子)がそれらグループG1~G4を識別するグループ識別子に関連付けられた状態で記憶(格納)されている。
【0091】
アンビエント域空調制御変更手段11の大容量仮想記憶領域には、設定温度及びON状態の椅子14の有効割合並びに設定出力値が記憶(格納)され、冷房期間(夏期及び中間期、例えば、4月~11月)及び暖房期間(冬期例えば、12月~3月)が記憶(格納)されている。アンビエント域空調制御変更手段11は、椅子14に付与された固体番号(識別子)によってそれら椅子14を特定するとともに第1~第4グループG1~G4(第1椅子グループ~第n椅子グループ)を特定する。アンビエント域空調制御変更手段11は、各第1~第4椅子グループG1~G4毎に運転状態判断手段とアンビエント空調制御変更演算手段とを実施し、通常モード又はブーストモードで運転する空調装置13から所定温度の空調空気を各第1~第4椅子グループG1~G4毎に給気させる。
【0092】
タスク・アンビエント空調システム10では、ディスプレイ20を利用して椅子14をグループ分けすることができる。ディスプレイ20において各グループを形成する椅子14の固体番号(識別子)をグループ毎に纏めて入力する。アンビエント域空調制御変更手段11は、グループ毎に入力された椅子14の固体番号(識別子)によって所定数の椅子14を一纏めにしてグループ分けし(S-10)、グループ毎に入力された椅子の固体番号(識別子)をグループ識別子に関連付けた状態で大容量仮想記憶領域に記憶(格納)する。なお、グループを形成する椅子14を何時でも自由に入れ替えることができ、グループ数を増減することができるとともに、グループを再編することができる。
【0093】
図7に示すように、各グループG1~G4毎に利用者Yが椅子14に着座した場合、アンビエント域空調制御変更手段11は、ON状態にある椅子14の割合(B/A×100)が有効割合(設定割合)以上(B/A×100≧有効割合)であるか又は有効割合未満(B/A×100<有効割合)であるかを各グループG1~G4毎に判断する(運転状態判断手段)(S-11a~S-11d)。
【0094】
アンビエント域空調制御変更手段11は、ステップ11a~11d(S-11a~S-11d)の運転状態判断手段において、ON状態にある椅子14(送風モード又は暖房モードで運転している椅子14)の割合が有効割合未満(B/A×100<有効割合)であると判断した場合、空調装置13の設定温度(空調装置13から給気する空調空気の温度)をあらかじめ設定された設定温度に維持する通常モードで空調装置13を運転する(S-12a~S-12d)。アンビエント域空調制御変更手段11は、通常モード信号(制御指令)を空調装置13の制御部に送信する。通常モード信号を受信した空調装置13の制御部は、通常モード運転を各グループG1~G4毎に継続する。
【0095】
ステップ11a~11d(S-11a~S-11d)の運転状態判断手段において、ON状態にある椅子14の割合が有効割合以上(B/A×100≧有効割合)であると判断した場合、アンビエント域空調制御変更手段11は、ON状態にあるそれら椅子14の送風モードで運転している椅子14の出力値又は暖房モードで運転している椅子14の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値以上(C≧設定出力値)であるか又は設定出力値未満(C<設定出力値)であるかを各グループG1~G4毎に判断する(アンビエント空調制御変更演算手段)(平均出力判断手段)(S-14a~S-14d)。
【0096】
アンビエント域空調制御変更手段11は、ステップ14a~14d(S-14a~S-14d)のアンビエント空調制御変更演算手段において、各グループG1~G4毎の平均出力値が設定出力値未満(C<設定出力値)であると判断した場合、空調装置13の設定温度をあらかじめ設定された設定温度に維持する通常モードで空調装置13を運転する(S-12a~S-12d)。アンビエント域空調制御変更手段11は、通常モード信号(制御指令)を空調装置13の制御部に送信する。通常モード信号を受信した空調装置13の制御部は、空調装置13の通常モード運転を各グループG1~G4毎に継続する。
【0097】
ステップ11a~11d(S-11a~S-11d)の運転状態判断手段において、ON状態にある椅子14の割合が有効割合以上(B/A×100≧有効割合)であると判断するとともに、ステップ14a~14d(S-14a~S-14d)のアンビエント空調制御変更演算手段において、平均出力値が設定出力値以上(C≧設定出力値)であると判断した場合、アンビエント域空調制御変更手段11は、空調装置13の設定温度(空調装置13から給気する空調空気の温度)をあらかじめ設定された設定温度よりも上昇又は低下させるブーストモードで空調装置を運転する(S-15a~S-15d)。
【0098】
なお、例えば、第1及び第2グループG1,G2における運転状態判断手段において、ON状態にある椅子14の割合が有効割合未満(B/A×100<有効割合)であると判断し、又は、第1及び第2グループG1,G2におけるアンビエント空調制御変更演算手段において、平均出力値が設定出力値未満(C<設定出力値)であると判断した場合、第1及び第2グループG1,G2において空調装置13を通常モードで運転する(S-12a,S-12b)。
【0099】
第3及び第4グループG3,G4における運転状態判断手段において、ON状態にある椅子14の割合が有効割合以上(B/A×100≧有効割合)であると判断するとともに、第3及び第4グループG3,G4におけるアンビエント空調制御変更演算手段において、平均出力値が設定出力値以上(C≧設定出力値)であると判断した場合、第3及び第4グループG3,G4において空調装置13をブーストモードで運転する(S-15c,S-15d)。
【0100】
したがって、第1~第4グループG1~G4の全てにおいて通常モード運転が行われ、第1~第4グループG1~G4の全てにおいてブーストモード運転が行われる他、第1~第4グループG1~G4のうちの少なくとも1つのグループにおいて通常モード運転が行われ、第1~第4グループG1~G4のうちの少なくとも1つのグループにおいてブーストモード運転が行われる場合がある。
【0101】
アンビエント域空調制御変更手段11は、通常モード運転を継続中やブーストモード運転を継続中にタスク・アンビエント空調システム10を終了するかを判断する(S-13a~S-13d)。ステップ13a~13d(S-13a~S-13d)において、タスク・アンビエント空調システム10を終了する場合、アンビエント域空調制御変更手段11が停止する。ステップ13a~13d(S-13a~S-13d)において、タスク・アンビエント空調システム10の利用を継続する場合、アンビエント域空調制御変更手段11は、通常モード運転を継続しつつ、又は、ブーストモード運転を継続しつつ、ステップ11a~11d(S-11a~S-11d)に戻って各グループG1~G4毎に運転状態判断手段を実施する。
【0102】
タスク・アンビエント空調システム10は、多数の椅子14が設置された広い室16の室内全体に通常モード又はブーストモードで運転する空調装置13から所定温度の空調空気を給気した場合、室内の各箇所における空調温度が異なり、椅子14の全ての利用者Yに最適な空調環境を提供することができない場合があるが、室16の室内に設置された複数の椅子14が所定数の椅子14を一纏めにした第1椅子グループG1~第4椅子グループG4(第1椅子グループ~第n椅子グループ)にグループ分けされ、通常モード又はブーストモードで運転する空調装置13から所定温度の空調空気を各グループG1~G4毎に給気することで、広い室内において椅子14の利用頻度や送風モード又は暖房モードの利用頻度、送風モード又は暖房モードの出力に対応したきめ細かい最適なタスク・アンビエント空調を実現することができ、広い室内におけるそれら椅子14の利用者Yに最適な温度の空調空気を給気することができる。
【0103】
タスク・アンビエント空調システム10は、アンビエント域空調制御変更手段11が各椅子14に付与された固体番号(識別子)を利用して各グループG1~G4を特定するから、椅子14の着座状態値(椅子14に対する着座又は非着座)、送風装置30及び加熱装置31のON/OFF状態値(送風装置30及び加熱装置31のON/OFF)、椅子14の送風モードの出力値又は暖房モードの出力値を各グループG1~G4毎であって各椅子14毎に把握することができ、ON状態にある椅子14の割合が有効割合以上であるかを各グループG1~G4毎に正確に判断することができるとともに、送風モードで運転している椅子14の出力値又は暖房モードで運転している椅子14の出力値を平均化した平均出力値が設定出力値以上であるかを各グループG1~G4毎に正確に判断することができる。
【0104】
タスク・アンビエント空調システム10は、固体番号(識別子)によって各椅子14を特定し、固体番号(識別子)を利用して各グループG1~G4を特定しつつ、運転状態判断手段やアンビエント空調制御変更演算手段を各グループG1~G4毎に正確に実施することができるから、室16の室内における椅子14の利用者Yに最適な温度の空調空気を給気することができ、椅子14の利用頻度や送風モード又は暖房モードの利用頻度、送風モードの出力値又は暖房モードの出力値に対応した最適なタスク・アンビエント空調を各グループG1~G4毎に実現することができる。
【符号の説明】
【0105】
10 タスク・アンビエント空調システム
11 アンビエント域空調制御変更手段
12 無線LANルーター(通信装置)
13 空調装置
14 椅子
15 建造物
16 室
17 エアコン用リモコン
18 機械室
19 通信中継器(通信プロトコル変換器)
20 終端装置(ONU)
21 クラウド
22 室外機
23 天井
24 室内機
24a~24d 室内機
25 脚部
26 支基
27 座受部材
28 座
29 背もたれ
30 送風装置
31 加熱装置
32 着座センサ
33 キャスタ
34 多岐脚
35 脚柱
36 支持フレーム
37 背もたれ本体
38 通気性張材
39 送風ファン
40 送風ダクト
41 吹き出し口
42 タスク域
43 アンビエント域
44a~44d 送風ダクト