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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】水栓
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20230619BHJP
   E03C 1/086 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
E03C1/042 B
E03C1/086
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019081753
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020180431
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 友亮
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-96645(JP,A)
【文献】特開平6-306901(JP,A)
【文献】登録実用新案第3187887(JP,U)
【文献】特開2003-119856(JP,A)
【文献】特開2011-219959(JP,A)
【文献】KVK 壁付サーモスタット式シャワー・混合栓 KF800(W)(T)・KM800(W)(T)(各仕様共通) 施工説明書,株式会社KVK,2023年01月12日,p.4,6,https://www.kvk.co.jp/support/category/assets/KF800_S.pdf
【文献】壁付サーモスタット,株式会社KVK,2023年01月12日,p.1,https://www.kvk.co.jp/support/category/detail/KF800.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓の本体部に配設された水栓吐出口と、該水栓吐出口に一端部が着脱可能とされ他端部に吐出管吐出口が設けられた吐出管と、前記水栓吐出口又は前記吐出管吐出口に対して選択的に取付け可能とされるとともに整流及び異物除去の機能を有するキャップと、を有し、
前記吐出管は前記水栓吐出口に対して取付けられたとき前記吐出管吐出口からの吐水が可能となり、
前記キャップは前記水栓吐出口又は前記吐出管吐出口に取付けられたとき前記キャップからの吐水が可能となり、
前記水栓は湯水混合水栓であり、
前記水栓吐出口は第1ねじが設けられた円筒状に形成されており、
前記吐出管吐出口は第2ねじが設けられた円筒状に形成されており、
前記キャップには前記第1ねじと前記第2ねじのいずれに対しても螺合可能な第3ねじが形成されており、
前記キャップは整流のための整流板及び異物除去のためのメッシュが一体的に形成されており、
前記一体的に形成とは、複数の部材を一体的に組み上げて形成したものであり、
前記キャップは、大径部と小径部とを同一軸上に上下に並べて配置した略円筒状の部材であり、前記小径部の内筒部には径方向に延びるとともに軸方向に延びる複数の径方向壁面と、軸を中心とした周方向に延びるとともに軸方向に延びる複数の周方向壁面と、によって囲まれて形成される上面視で扇形状をした複数の扇状開口が形成されており、
前記径方向壁面と前記周方向壁面とが前記整流板に該当する水栓。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓に関する。詳しくは、水栓本体からの吐水と水栓本体に取付けた吐水管からの吐水とを使い分けることができる水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水栓本体に配設された水栓吐出口に吐水管を連結してこの吐水管の吐水管吐水口から水又は湯を吐出させることができる水栓が知られている(特許文献1)。また、吐水管の先端部に吐水管キャップを配設し、吐水管キャップの吐出口に整流や異物除去の目的で整流部材やメッシュを内蔵した吐出口キャップを取付けた水栓も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-332310号公報
【文献】特開2002-242247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された技術において、水栓本体の水栓吐出口から水又は湯を吐出させることと、水栓吐出口に取付けられた吐水管の吐水管吐出口から水又は湯を吐出させることと、を選択的に行いたい場合がある。かかる場合に、単に水栓吐出口から先端部に吐水管キャップと吐水管吐出口キャップが取付けられた状態の吐水管を取り外して水又は湯を水栓吐出口から吐出させるのでは整流や異物除去が施されていない水又は湯が吐出されてしまう。そこで、水栓吐出口から吐水管を取り外したときに水栓吐出口に整流部材やメッシュを内蔵した水栓吐出口キャップを別途準備して取付けなければならず部品点数が増加してコスト増につながるという問題があった。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の課題は、部品点数の増加を抑制して水栓本体からの吐水と水栓本体に取付けた吐水管からの吐水とを使い分けることができる水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、水栓の本体部に配設された水栓吐出口と、該水栓吐出口に一端部が着脱可能とされ他端部に吐出管吐出口が設けられた吐出管と、前記水栓吐出口又は前記吐出管吐出口に対して選択的に取付け可能とされるとともに整流及び/又は異物除去の機能を有するキャップと、を有し、前記吐出管は前記水栓吐出口に対して取付けられたとき前記吐出管吐出口からの吐水が可能となり、前記キャップは前記水栓吐出口又は前記吐出管吐出口に取付けられたとき前記キャップからの吐水が可能となることを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、キャップは水栓吐出口と吐出管吐出口に対して選択的に取付け可能であるので、部品点数の増加を招くことなく水栓吐出口からの吐水と吐出管吐出口からの吐水を使い分けることができる水栓を提供することができる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記水栓吐出口は第1ねじが設けられた円筒状に形成されており、前記吐出管吐出口は第2ねじが設けられた円筒状に形成されており、前記キャップには前記第1ねじと前記第2ねじのいずれに対しても螺合可能な第3ねじが形成されていることを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、水栓吐出口又は吐出管吐出口に対するキャップの選択的な取付けを簡潔な構造で達成することができる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記キャップは整流のための整流板及び/又は異物除去のためのメッシュが一体的に形成されていることを特徴とする。
【0011】
第3発明によれば、水栓吐出口又は吐出管吐出口に対してキャップを取付けるだけで整流及び/又は異物除去の機能が達成できるので、水栓本体からの吐水と水栓本体に取付けた吐水管からの吐水とを使い分ける際の作業性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態である水栓の斜視図である。吐出管を取付けた状態である。
図2図1のII-II矢視線断面図である。
図3】上記実施形態における水栓の斜視図である。吐出管を取り外した状態である。
図4図3のIV-IV矢視線断面図である。
図5】上記実施形態におけるキャップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る水栓1の構成について、図1図5を用いて説明する。以下の説明において、方向に関する説明は各図に示された上下前後左右の方向に基づいて行うものとする。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る水栓1は、浴室の壁面Wに取付けられる壁付けタイプの湯水混合水栓である。水栓1は、左右方向に延びる略円筒形状の水栓本体2と、いずれも水栓本体2に取付けられた、湯側継手管3と、水側継手管4と、シャワー吐出管5と、カラン吐出管6と、カバー7と、を有する。ここで、水栓本体2とカラン吐出管6が、それぞれ、特許請求の範囲の「本体部」と「吐出管」に相当する。
【0015】
図1図4に示すように、水栓本体2には、その左右方向中央部の下面にカラン吐出管6を連結するカラン吐出口21が下方に向けて開口して設けられている。また、水栓本体2には、その左右方向中央部の後面にシャワー吐出管5を連結するシャワー吐出口22が後方に向けて開口して設けられている。さらに水栓本体2には、その後面の左側に図示しない給湯源から湯の供給を受けるクランク状に折れ曲がった湯側継手管3が連結され、その後面の右側に図示しない給水源から水の供給を受けるクランク状に折れ曲がった水側継手管4が連結されている。水栓本体2の左側の側部には、略円筒形状の温調ハンドル23が左右方向に延びる軸回りに回動可能に設けられている。温調ハンドル23を回動させることによって湯側継手管3から供給される湯と水側継手管4から供給される水との混合割合が変更され、カラン吐出口21又はシャワー吐出口22から吐出される湯水の温度が調節されるようになっている。水栓本体2の右側の側部には、略円筒形状の切替ハンドル24が左右方向に延びる軸回りに回動可能に設けられている。切替ハンドル24のレバー24aを所定の止水位置から上向きに回動させることによりその回動量に応じた単位時間当たりの量の湯水をシャワー吐出口22から吐出させられるようになっている。また、切替ハンドル24のレバー24aを所定の止水位置から下向きに回動させることによりその回動量に応じた単位時間当たりの量の湯水をカラン吐出口21から吐出させられるようになっている。ここで、カラン吐出口21が、特許請求の範囲の「水栓吐出口」に相当する。
【0016】
図1図4に示すように、カラン吐出口21は、円筒形状をしておりその内径部分21aはその直径がカラン吐出管6の横断面の直径よりわずかに大きく形成されている。外径部分21bはその直径がカラン吐出管6の横断面の直径の1.5倍程度に形成され、その下端部側には、雄ねじ21b1が形成されている。カラン吐出口21には、後述するカラン吐出管6が左右方向に回動自在に連通接続される。シャワー吐出口22は、円筒形状をしておりエルボ形状のシャワー吐出管5が連通接続されている。シャワー吐出管5のシャワー吐出口22と反対側の端部には図示しないシャワーホースが取付けられ、シャワーヘッドまでの給水を可能としている。水栓本体2には、その前面及び上面を覆ってカバー7が取付けられている。カバー7は、水栓本体2の見栄えを良くするとともに上面部を小物置きとして利用できるものである。ここで、雄ねじ21b1が、特許請求の範囲の「第1ねじ」に相当する。
【0017】
図1及び図2に示すように、カラン吐出管6は、金属製の吐出管本体30と、吐出管本体30の先端部側に取付けられる樹脂製のキャップ部材31と、を有する。吐出管本体30は、カラン吐出管6がカラン吐出口21に取付けられたとき、水平方向に延びる部分である水平部30aと、水平部30aの一端部側から屈曲しながら上方に向かって延びるエルボ部30bと、を有する。図2によく示されるように、エルボ部30bの上端部側には図示しない鍔部が設けられている。ナット30cをカラン吐出口21の雄ねじ21b1に対して螺合させることによりナット30cによって鍔部をカラン吐出口21に対して押圧しエルボ部30bが左右方向に回動自在に連通接続される。すなわち、ナット30cにはカラン吐出口21の雄ねじ21b1に対して螺合可能な雌ねじが形成されている。ここで、エルボ部30bの上端部と吐出管本体30の先端部が、それぞれ、特許請求の範囲の「一端部」と「他端部」に相当する。
【0018】
図1及び図2に示すように、キャップ部材31は、エルボ状の部材で前後方向に延びる吐出管取付部31aと、上下方向に延びる吐出管吐出口31bと、を有する。吐出管取付部31aの内筒部31a1にはカラン吐出管6の先端部が挿入されて、カラン吐出管6に対しキャップ部材31が取付けられている。吐出管吐出口31bは、円筒形状をしておりその内径部分31b1はその直径がカラン吐出管6の横断面の直径とほぼ同じ大きさに形成されている。外径部分31b2はその直径がカラン吐出管6の横断面の直径の1.5倍程度に形成され、その下端部側には、雄ねじ31b21が形成されている。雄ねじ31b21は、カラン吐出口21の雄ねじ21b1と同一のねじ山形状で同一のピッチとされている。吐出管吐出口31bの内筒部31a1の内側には、上下方向に延びる円柱状の位置決めピン31cが配設されている。位置決めピン31cは、キャップ部材31の内筒部31a1にカラン吐出管6が挿入されたとき、カラン吐出管6の先端部が当接してそれ以上の挿入を阻止しカラン吐出管6に対するキャップ部材31の位置決めをする機能を果たす。ここで、雄ねじ31b21が、特許請求の範囲の「第2ねじ」に相当する。
【0019】
図2図4及び図5に示すように、キャップ40は、大径部41と小径部42とを同一軸上に上下に並べて配置した略円筒状の樹脂製部材である。大径部41の内筒部には、カラン吐出口21の雄ねじ21b1及びキャップ部材31の雄ねじ31b21に対して螺合可能な雌ねじ41aが形成されている。小径部42の内筒部には径方向に延びるとともに軸方向に延びる複数の径方向壁面42aと、軸を中心とした周方向に延びるとともに軸方向に延びる複数の周方向壁面42bと、によって囲まれて形成される上面視で扇形状をした複数の扇状開口42cが形成されている。複数の扇状開口42cがキャップ40から吐水するキャップ吐水口43を構成し、吐水の整流機能を果たす。径方向壁面42aと周方向壁面42bの上端部側には、メッシュ44が配置されて吐水に含まれる異物除去の機能を果たす。キャップ40は、メッシュ44とパッキン45を介して吐出管吐出口31bに対して連通接続されたとき、キャップ吐水口43から湯水を吐出可能となる(図2参照)。また、キャップ40は、メッシュ44とパッキン45を介してカラン吐出口21に対して連通接続されたとき、キャップ吐水口43から湯水を吐出可能となる(図4参照)。ここで、径方向壁面42aと周方向壁面42bが、それぞれ特許請求の範囲の「整流板」に相当する。また、雌ねじ41aが、特許請求の範囲の「第3ねじ」に相当する。
【0020】
以上のように構成される本実施形態は、以下のような作用効果を奏する。キャップ40はカラン吐出口21と吐出管吐出口31bに対して選択的に取付け可能であるので、部品点数の増加を招くことなくカラン吐出口21からの吐水と吐出管吐出口31bからの吐水を使い分けることができる水栓1を提供することができる。換言すると、水栓1は、部品点数の増加を抑制して水栓本体2からの吐水と水栓本体2に取付けたカラン吐出管6からの吐水とを使い分けることができる。
【0021】
また、キャップ40にはカラン吐出口21の雄ねじ21b1及びキャップ部材31の雄ねじ31b21に対して螺合可能な雌ねじ41aが形成されているので、カラン吐出口21又は吐出管吐出口31bに対する選択的な取付けを簡潔な構造で達成することができる。さらに、カラン吐出口21又は吐出管吐出口31bに対してキャップ40を取付けるだけで整流及び/又は異物除去の機能が達成できるので、水栓本体2からの吐水と水栓本体2に取付けたカラン吐出管6からの吐水とを使い分ける際の作業性が良い。
【0022】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0023】
1.上記実施形態においては、水栓1を湯水混合水栓として構成したが、これに限らず水のみ又は湯のみを吐出する水栓であってもよい。
【0024】
2.上記実施形態においては、カラン吐出管6の先端部側に取付けられる樹脂製のキャップ部材31に吐出管吐出口31bを設けたが、これに限らずカラン吐出管6の先端部側を下方に向けて折り曲げて吐出管吐出口を設けてもよい。
【0025】
3.上記実施形態においては、特許請求の範囲の「第1ねじ」と「第2ねじ」を雄ねじとして形成し、特許請求の範囲の「第3ねじ」を雌ねじとして形成した。しかし、これに限らず「第1ねじ」と「第2ねじ」を雌ねじとして形成し、特許請求の範囲の「第3ねじ」を雄ねじとして形成することもできる。
【符号の説明】
【0026】
1 水栓
2 水栓本体(本体部)
6 カラン吐出管(吐出管)
21 カラン吐出口(水栓吐出口)
21a 内径部分
21b 外径部分
21b1 雄ねじ(第1ねじ)
30 吐出管本体
30a 水平部
30b エルボ部
30c ナット
31 キャップ部材
31b 吐出管吐出口
31b1 内径部分
31b2 外径部分
31b21 雄ねじ(第2ねじ)
40 キャップ
41 大径部
41a 雌ねじ(第3ねじ)
42 小径部
42a 径方向壁面(整流板)
42b 周方向壁面(整流板)
42c 扇状開口
43 キャップ吐水口
44 メッシュ
図1
図2
図3
図4
図5