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特許7297552リニアモータ及びリニアモータを搭載した圧縮機、並びにこの圧縮機を備えた冷蔵庫及び車両用エアサスペンション
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】リニアモータ及びリニアモータを搭載した圧縮機、並びにこの圧縮機を備えた冷蔵庫及び車両用エアサスペンション
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20230619BHJP
   F04B 27/02 20060101ALI20230619BHJP
   F04B 35/04 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
H02K41/03 A
F04B27/02 F
F04B35/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019116148
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021002954
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中津川 潤之介
(72)【発明者】
【氏名】青山 康明
(72)【発明者】
【氏名】三上 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 荘
(72)【発明者】
【氏名】酒井 博史
(72)【発明者】
【氏名】河合 義則
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-064412(JP,A)
【文献】特開2016-073005(JP,A)
【文献】特開昭54-125421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
F04B 27/02
F04B 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
界磁子と、複数の電機子磁極を有し、前記複数の電機子磁極が前記界磁子の進行方向に並んで備えられたリニアモータにおいて、
前記複数の電機子磁極間に電磁鋼板からなるブリッジ部を備え、
前記電磁鋼板の積層方向が前記界磁子の進行方向と直交方向であり、前記ブリッジ部を前記複数の電機子磁極の上まで伸長させ
前記界磁子と前記電機子磁極とが相対変位する方向を第1方向、前記第1方向に垂直な前記界磁子の幅方向に沿う方向を第2方向、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な前記界磁子の厚さ方向に沿う方向を第3方向とした場合、
前記ブリッジ部は、T型形状の電磁鋼板を前記第2方向に積層して構成すると共に、前記T型形状の中央の突出部が、隣接する前記複数の電機子磁極から軸力を受けて固定されたことを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
界磁子と、複数の電機子磁極を有し、前記複数の電機子磁極が前記界磁子の進行方向に並んで備えられたリニアモータにおいて、
前記複数の電機子磁極間に電磁鋼板からなるブリッジ部を備え、
前記電磁鋼板の積層方向が前記界磁子の進行方向と直交方向であり、前記ブリッジ部を前記複数の電機子磁極の上まで伸長させ、
前記界磁子と前記電機子磁極とが相対変位する方向を第1方向、前記第1方向に垂直な前記界磁子の幅方向に沿う方向を第2方向、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な前記界磁子の厚さ方向に沿う方向を第3方向とした場合、
前記ブリッジ部は、T型形状の電磁鋼板を前記第2方向に積層して構成すると共に、前記T型形状の両端に突起を備え、前記T型形状の中央の突出部と前記突起との間に、前記電機子磁極を嵌めて固定されたことを特徴とするリニアモータ。
【請求項3】
界磁子と、複数の電機子磁極を有し、前記複数の電機子磁極が前記界磁子の進行方向に並んで備えられたリニアモータにおいて、
前記複数の電機子磁極間に電磁鋼板からなるブリッジ部を備え、
前記電磁鋼板の積層方向が前記界磁子の進行方向と直交方向であり、前記ブリッジ部を前記複数の電機子磁極の上まで伸長させ、
前記界磁子と前記電機子磁極とが相対変位する方向を第1方向、前記第1方向に垂直な前記界磁子の幅方向に沿う方向を第2方向、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な前記界磁子の厚さ方向に沿う方向を第3方向とした場合、
前記ブリッジ部は、T型形状の電磁鋼板を前記第2方向に積層して構成すると共に、前記電機子磁極に設けられた穴部に、前記ブリッジ部の前記第1方向の突出部を挿入して固定されたことを特徴とするリニアモータ。
【請求項4】
界磁子と、複数の電機子磁極を有し、前記複数の電機子磁極が前記界磁子の進行方向に並んで備えられたリニアモータにおいて、
前記複数の電機子磁極間に電磁鋼板からなるブリッジ部を備え、
前記電磁鋼板の積層方向が前記界磁子の進行方向と直交方向であり、前記ブリッジ部を前記複数の電機子磁極の上まで伸長させ、
前記界磁子と前記電機子磁極とが相対変位する方向を第1方向、前記第1方向に垂直な前記界磁子の幅方向に沿う方向を第2方向、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な前記界磁子の厚さ方向に沿う方向を第3方向とした場合、
前記ブリッジ部は、十字型形状の電磁鋼板を前記第2方向に積層して構成すると共に、前記電機子磁極に設けられた穴部に、前記ブリッジ部の前記第1方向の突出部を挿入して固定されたことを特徴とするリニアモータ。
【請求項5】
界磁子と、複数の電機子磁極を有し、前記複数の電機子磁極が前記界磁子の進行方向に並んで備えられたリニアモータにおいて、
前記複数の電機子磁極間に電磁鋼板からなるブリッジ部を備え、
前記電磁鋼板の積層方向が前記界磁子の進行方向と直交方向であり、前記ブリッジ部を前記複数の電機子磁極の上まで伸長させ、
前記界磁子と前記電機子磁極とが相対変位する方向を第1方向、前記第1方向に垂直な前記界磁子の幅方向に沿う方向を第2方向、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な前記界磁子の厚さ方向に沿う方向を第3方向とした場合、
前記ブリッジ部は、十字型形状の電磁鋼板を前記第3方向に積層して構成すると共に、十字型形状の左右の突起部が、隣接する前記複数の電機子磁極から軸力を受けて固定されたことを特徴とするリニアモータ。
【請求項6】
シリンダと、前記シリンダの内側で往復動するピストンとを備えると共に、前記ピストンを駆動する駆動モータを備えた圧縮機において、
前記駆動モータとして前記請求項1乃至の何れか1項に記載のリニアモータを備えたことを特徴とする圧縮機。
【請求項7】
冷蔵室、冷凍室を備え、圧縮機の駆動により冷凍サイクルが動作することで冷却される冷蔵庫において、
前記圧縮機として、請求項に記載の圧縮機を備えたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項8】
車体と車輪との間に備えられた空気ばねと、前記空気ばねに圧縮空気を給排する空気圧縮機とを備えた車両に搭載される車両用エアサスペンションにおいて、
前記空気圧縮機として、請求項に記載の圧縮機を備えたこと特徴とする車両用エアサスペンション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータ及びリニアモータを搭載した圧縮機、並びにこの圧縮機を備えた冷蔵庫及び車両用エアサスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
推力発生機構を有するリニアモータは、回転機を直線状に切り開いた形状をしており、固定子と可動子の各々に構成された磁極の間に働く磁力によって、可動子に推力を発生させる。このような技術として、例えば特許文献1に記載されたリニアモータが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のリニアモータでは、隣接する電機子コア間にスペーサを配置している。スペーサは電磁鋼板を前後方向(電機子コアの積層方向と同一方向)に積層して構成され、リニアモータ内の磁束線をループさせて推力を発生させている(特許文献1の図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-64412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のリニアモータでは、スペーサ(以降ではこれをブリッジと呼称する)内に磁束が通る際、電磁鋼板の積層方向に磁束が貫通している。一般に電磁鋼板の母材の表面には、絶縁被膜である非磁性のコーティングが施されているため、ブリッジ内の磁束は積層方向に並ぶ多数の非磁性層を貫通することとなる。その結果、ブリッジ内の磁気抵抗が大きくなり、発生磁束量が低下し、推力の低下を引き起こす虞があった。また、リニアモータの駆動時にはブリッジ内の電磁鋼板を貫通する磁束が交番し、電磁鋼板の面内に渦電流が発生して渦電流損を増加させる虞があった。
【0006】
本発明の目的は、リニアモータの推力を向上し、かつ渦電流損を低減させるリニアモータ及びリニアモータを搭載した圧縮機、並びにこの圧縮機を備えた冷蔵庫及び車両用エアサスペンションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のリニアモータは、界磁子と、複数の電機子磁極を有し、前記複数の電機子磁極が前記界磁子の進行方向に並んで備えられたリニアモータにおいて、前記複数の電機子磁極間に電磁鋼板からなるブリッジ部を備え、前記電磁鋼板の積層方向が前記界磁子の進行方向と直交方向であり、前記ブリッジ部を前記複数の電機子磁極の上まで伸長させ、前記界磁子と前記電機子磁極とが相対変位する方向を第1方向、前記第1方向に垂直な前記界磁子の幅方向に沿う方向を第2方向、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な前記界磁子の厚さ方向に沿う方向を第3方向とした場合、前記ブリッジ部は、T型形状の電磁鋼板を前記第2方向に積層して構成すると共に、前記T型形状の中央の突出部が、隣接する前記複数の電機子磁極から軸力を受けて固定されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、推力を向上し、かつ渦電流損を低減させるブリッジ部を有するリニアモータ及びリニアモータを搭載した圧縮機、並びにこの圧縮機を備えた冷蔵庫及び車両用エアサスペンションを提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に係るリニアモータの斜視図。
図2】実施例1に係るリニアモータの左右方向に対して垂直な断面を示す斜視図。
図3】実施例1に係るリニアモータの前後方向に対して垂直な断面を示す斜視図。
図4】本発明との比較例である従来型リニアモータの斜視図。
図5】従来型リニアモータの左右方向に対して垂直な断面を示す斜視図。
図6】従来型リニアモータの前後方向に対して垂直な断面を示す斜視図。
図7】実施例1および比較例において、巻線に直流電流を通電し、可動子を前後方向に動かした時の可動子に発生する推力と、可動子の前後方向位置との関係を示した図。
図8】比較例のブリッジ部の左右方向に垂直な断面の模式図。
図9】実施例1のブリッジ部の上下方向に垂直な断面の模式図。
図10】比較例のブリッジ部の模式図。
図11】実施例1のブリッジ部の模式図。
図12】実施例2に係るリニアモータの斜視図。
図13】実施例2に係るリニアモータの左右方向に対して垂直な断面を示す斜視図。
図14】実施例3に係るリニアモータの斜視図。
図15】実施例3に係るリニアモータの左右方向に対して垂直な断面を示す斜視図。
図16】実施例3に係るリニアモータの前後方向に対して垂直な断面を示す斜視図。
図17】実施例4に係るリニアモータの斜視図。
図18】実施例4に係るリニアモータの左右方向に対して垂直な断面を示す斜視図。
図19】実施例4に係るリニアモータの前後方向に対して垂直な断面を示す斜視図。
図20】実施例5に係るリニアモータの斜視図。
図21】実施例5に係るリニアモータの左右方向に対して垂直な断面を示す斜視図。
図22】実施例5に係るリニアモータの前後方向に対して垂直な断面を示す斜視図。
図23】実施例6に係るリニアモータの斜視図。
図24】実施例6に係るリニアモータの左右方向に対して垂直な断面を示す斜視図。
図25】実施例6に係るリニアモータの前後方向に対して垂直な断面を示す斜視図。
図26】実施例7に係るリニアモータを用いた圧縮機を示す斜視図。
図27図26の圧縮機の要部を示す断面図。
図28】実施例8に係る冷蔵庫の構成図。
図29】実施例9に係る車両用エアサスペンションの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を、添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。複数の実施例及び各実施例の変更例において、同様の構成要素には同様の符号を付し、説明を省略する。説明の都合上、互いに直交する前後、左右、及び上下方向という語を用いるが、必ずしも重力方向は下向きである必要はなく、上、右、左、前若しくは後方向又はそれ以外の方向に平行にできる。
【0011】
なお、以下で説明する各実施例及び各変更例では、前後方向は可動子2の駆動方向に一致し、上下方向は永久磁石磁極210の磁極面(S,N極が生じる面)に垂直な方向に一致する。また、可動子2は前後方向を長手方向としており、左右方向を可動子2の幅方向と呼んで説明する場合がある。或いは、可動子2の移動方向(前後方向)に沿う方向、すなわち界磁子と電機子磁極とが相対変位する方向を第1方向、第1方向に垂直な界磁子の幅方向(左右方向)に沿う方向を第2方向、第1方向及び第2方向に垂直な界磁子の厚さ方向(上下方向)に沿う方向を第3方向として説明する場合もある。
【実施例1】
【0012】
図1乃至図3を参照して、本発明の実施例1に係るリニアモータについて、説明する。図1は、本発明の実施例1に係るリニアモータの斜視図である。図2は、図1に示すリニアモータの左右方向に対して垂直な断面を示す斜視図である。図3は、図1に示すリニアモータの前後方向に対して垂直な断面を示す斜視図である。
【0013】
リニアモータ100は、固定子1及び可動子2からなる。以降の説明では、電機子側を地面に対して静止させる固定子、界磁子側を地面に対して前後方向に移動させる可動子として説明するが、固定子と可動子とは逆の関係であっても良い。すなわちリニアモータ100は、界磁子と電機子とが相対変位するように構成される。
【0014】
〔固定子1の構成〕
固定子1は、電機子3と、電機子3の前側及び後側それぞれに配置された端部部材4と、巻線5と、を備える。電機子3は、軟磁性体のコア300及びブリッジ部310を有し、ブリッジ部310は複数の軟磁性体のコア300に挟まれるように配置されている。また、軟磁性体のブリッジ部310は、複数のコア300の上部まで伸長して構成されている。これにより、複数のコア300及びブリッジ部310を含む磁路を形成できるようにしている。コア300には上下に電機子磁極301(磁極歯)があり、それぞれ巻線5が巻回されている。
【0015】
電機子3は、2つ以上を前後方向に並べることができる。また、端部部材4は、最も前側の電機子3の前側及び/又は最も後側の電機子3の後側に設けることができる。図2及び図3の矢印で示すように、磁束は可動子2の進行方向に対し平行及び直交方向に形成される。換言すると、可動子2の進行方向に対し平行及び直交方向に磁気回路が形成される。
【0016】
〔コア300の構成〕
コア300は、可動子2を上下方向から挟んで対向配置された電機子磁極301(磁極歯)と、これら2つの電機子磁極301をつなぐ腕部302とを有する。電機子磁極301及び腕部302は、例えば、電磁鋼板を前後方向に積層して構成できる。電機子磁極301には巻線5を巻回している。
【0017】
腕部302は、巻線5及び可動子2の左右方向における両外側を上下方向に延びて形成された軟磁性体であり、永久磁石磁極210から発せられ、電機子磁極301に進入した磁束を、この電機子磁極301に可動子2を介して対向する別の電機子磁極301に導くことができる。これにより、コア300は、電機子磁極301と、この電機子磁極301に対向する永久磁石磁極210と、この永久磁石磁極210に前述の電機子磁極301が対向する側とは反対側の面で対向する電機子磁極301と、腕部302と、を含む磁路を形成できる。
【0018】
コア300の上下には、ブリッジ部310を配置するための溝部303を設けている。
【0019】
〔ブリッジ部310の構成〕
ブリッジ部310は、隣接するコア300を流れる磁束を通過させることができる。ブリッジ部310は、例えば、T型に打ち抜いた電磁鋼板を左右方向(第2方向)に積層し、T型形状の中央の突出部311をモータの内側に向けた配置にして構成できる。このため、2つのコア300の間にブリッジ部310を配した電機子3は、永久磁石磁極210の前後方向間隔等の設計に応じて、隣り合う2つのコア300及び永久磁石磁極210を含む磁路を形成できる。ブリッジ部310の電磁鋼板の積層方向は、コア300の積層方向と直交する方向としている。また、貫通ボルト6により端部部材4の間を締め付けることで、ブリッジ部310の中央の突出部311が前後に隣接するコア300からの軸力を受け、ブリッジ部310が固定される。
【0020】
隣接するコア300を流れる磁束はブリッジ部310を通過するが、ブリッジ部310は左右方向に積層されているため、磁束はブリッジ部310を構成する電磁鋼板の表面に形成された非磁性層を貫通することがなく、ブリッジ部310内の磁気抵抗の増加を抑制することができる。また、リニアモータ駆動時には、電磁鋼板の面内に発生する渦電流損の増加を抑制することができる。
【0021】
〔端部部材4の構成〕
端部部材4は、軟磁性体又は非磁性体で形成することができる。端部部材4は、前後方向に延在する貫通ボルト6等の固定部材により、コア300及びブリッジ部310とともに固定されている。また、端部部材4には図示しない軸受等の支持部材が配置され、可動子2を支持している。
【0022】
〔可動子2の構成〕
可動子2は、前後方向を長手方向としている。可動子2は、前後方向に複数の永久磁石を固定する非磁性体または軟磁性体からなる磁極フレーム200と、磁極フレーム200に設けられた永久磁石磁極210を有している。本実施例の可動子2は、永久磁石磁極210を3個固定した態様である。複数の永久磁石磁極210は、界磁子により構成される可動子2と電機子磁極301により構成される固定子1とが相対変位する方向に沿って配列される。永久磁石磁極210は、3個以上でも以下でも良い。永久磁石磁極210はそれぞれ上下方向に磁化され、隣り合う永久磁石磁極210の上面は、N極とS極とが、交互になるように配されている。
【0023】
また、可動子2は、上下方向において2つの電機子磁極301の間、かつ左右方向において2つの腕部302の間に形成された空間に配されている。なお、永久磁石磁極210は上下方向に垂直な平板形状に形成することができる。すなわち本実施例では、永久磁石磁極210は、上下方向の厚み寸法に対して左右方向の幅寸法及び前後方向の長さ寸法が大きい平板形状である。本実施例では、上下方向とは、電機子磁極301と永久磁石磁極210とが対向している方向である。
【0024】
なお、上述したように、本実施例では、可動子2は界磁子によって構成される。
【0025】
〔磁極フレーム200の構成〕
磁極フレーム200は、永久磁石磁極210を嵌装する空隙201を複数備えたはしご状に形成している。永久磁石磁極210は空隙201に嵌入されることで、左右方向及び前後方向に抜けることなく、磁極フレーム200に固定される。磁極フレーム200は、永久磁石磁極210を囲む、空隙201の縁部を有し、永久磁石磁極210を支持する。
【0026】
空隙201は磁極フレーム200を上下方向に貫通する貫通孔として形成されており、永久磁石磁極210が上下方向に嵌入される嵌入部を構成する。永久磁石磁極210は空隙(嵌入部)201を埋めるように空隙(嵌入部)201に配置されることで、左右方向及び前後方向への位置ずれが防止される。また、永久磁石磁極210と空隙(嵌入部)201との接触面に接着剤を塗布することなどにより、上下方向への位置ずれが抑制される。磁極フレーム200は、軟磁性体で形成しても良いし、非磁性体で形成しても良い。
【0027】
なお、空隙(嵌入部)201は、永久磁石磁極210を貼付できる窪み部で構成しても良い。この窪み部は上下方向における磁極フレーム200の一端面に窪んで形成される。この窪み部も永久磁石磁極210が嵌入される空隙(嵌入部)201の一種とみなすことができる。
【0028】
〔永久磁石磁極210の構成〕
永久磁石磁極210は、ネオジム磁石等の希土類磁石で構成してもよく、また、フェライト磁石等、他の素材による永久磁石を用いてもよい。
【0029】
〔従来型リニアモータ100’の構成〕
図4は、本発明との比較例である従来型リニアモータの斜視図である。図5は、図4に示す従来型リニアモータの左右方向に対して垂直な断面を示す斜視図である。図6は、図4に示す従来型リニアモータの前後方向に対して垂直な断面を示す斜視図である。
【0030】
従来型リニアモータ100’のコア300’の上下には溝部が設けられていない。また、ブリッジ部310’は2つのコア300’の上部まで伸長しておらず、2つのコア300’の間に前後方向を挟まれて配置されている。
【0031】
コア300’は、打ち抜いた電磁鋼板を前後方向に積層して構成されている。同様に、ブリッジ部310’は、打ち抜いた電磁鋼板を前後方向に積層して構成されている。すなわち、従来型リニアモータ100’においては、コア300’とブリッジ部310’とは、共に電磁鋼板が前後方向の積層されており、ブリッジ部内の前後方向に発生する磁束は、前後方向に積層された多数の非磁性層を貫通することとなる。
【0032】
〔リニアモータの推力特性〕
図7は、本実施例および比較例において、巻線5に直流電流を通電し、可動子2を前後方向に動かした時の可動子2に発生する推力(縦軸)と、可動子2の前後方向位置(横軸)との関係を示した図である。実線が本実施例のリニアモータ100の推力特性であり、破線が比較例である従来型リニアモータ100’の推力特性である。異なる電流値(電流0~電流3)の結果を重ねて示している。電流値によらず、本実施例の推力は、比較例の推力よりも平均で10%程度向上している。
【0033】
この理由を図8乃至図9を用いて説明する。図8は、比較例のブリッジ部の左右方向に垂直な断面の模式図である。ブリッジ部310’は、複数の電磁鋼板3101が前後方向に積層されている。各電磁鋼板3101は、母材3102と、その両表面にコーティングした絶縁被膜3103で構成されている。母材3102は磁性体であるが、絶縁被膜3103は非磁性体である。比較例では、ブリッジ部内の磁束は前後方向に発生するため、前後方向に積層された多数の非磁性層を貫通することとなる。その結果、ブリッジ部内の磁気抵抗が大きくなり、発生する磁束量が低下し、推力の低下を引き起こしている。
【0034】
これに対し本実施例は以下の通りである。図9は、本実施例のブリッジの上下方向に垂直な断面の模式図である。ブリッジ部310は、複数の電磁鋼板3101が左右方向に積層されている。各電磁鋼板3101は、母材3102と、その両表面にコーティングした絶縁被膜3103で構成されている。母材3102は磁性体であるが、絶縁被膜3103は非磁性体である。本実施例においても、ブリッジ部内の磁束は前後方向に発生するため、ブリッジ部内の磁束は、磁気抵抗の高い絶縁被膜3103の中ではなく、磁気抵抗の低い母材3102の中を貫通する。
したがって、比較例と比べて、本実施例ではブリッジ部内の発生磁束量が増大し、推力を向上することができる。
【0035】
〔ブリッジ内の渦電流特性〕
図10は、比較例のブリッジの模式図である。比較例では、ブリッジ部内の磁束は前後方向に積層された電磁鋼板の平面に対して垂直に貫通するため、磁束が交番する時に電磁鋼板の平面内に渦電流のループが発生する。電磁鋼板の平面内の電気抵抗は小さいため、電磁鋼板に大きな渦電流損を生じる。
【0036】
図11は、本実施例のブリッジ部の模式図である。本実施例では、電磁鋼板が左右方向に積層されており、ブリッジ部内の磁束は電磁鋼板の平面に平行である。積層された電磁鋼板は、絶縁被膜で互いに電気的に絶縁されているため、磁束が交番する時に生じる渦電流がごく小さく抑えられ、渦電流損を非常に小さくできる。渦電流損はリニアモータの推力特性を低下させる要因であるため、比較例と比べて本実施例では推力特性を向上することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施例によれば、推力を向上し、かつ渦電流損を低減させるブリッジ部を有するリニアモータを提供することができる。
【実施例2】
【0038】
図12乃至図13を参照して、本発明の実施例2に係るリニアモータについて説明する。図12は、本発明の実施例2に係るリニアモータの斜視図である。図13は、図12に示すリニアモータの左右方向に対して垂直な断面を示す斜視図である。
【0039】
実施例2の構成は、以下の点を除き実施例1と同様であり、以下の本実施例に係る構成を除いて実施例1で説明した構成を採用することができる。
【0040】
本実施例の電機子3aにおけるブリッジ部310aは、例えば、T型形状の両端に突起312を設け、中央の突出部311と突起312との間の溝に、コア300の溝部303を嵌め込むことで、コア300とブリッジ部310aとを固定することができる。
【0041】
本実施例によれば、固定の際、圧入や焼き嵌めなどをすることによって、コア300とブリッジ部310aをより強固に固定でき、貫通ボルトによる軸力が不要となる。なお、端部部材4aは、一部を切欠いて突起312と干渉しないような形状にしている。
【実施例3】
【0042】
図14乃至図16を参照して、本発明の実施例3に係るリニアモータについて、説明する。図14は、実施例3に係るリニアモータの斜視図である。図15は、実施例3に係るリニアモータの左右方向に対して垂直な断面を示す斜視図である。図16は、実施例3に係るリニアモータの前後方向に対して垂直な断面を示す斜視図である。
【0043】
実施例3の構成は、以下の点を除き実施例1と同様であり、以下の本実施例に係る構成を除いて実施例1で説明した構成を採用することができる。
【0044】
本実施例の電機子3bにおけるブリッジ部310bは、例えば、凸型に打ち抜いた電磁鋼板を左右方向に積層し、中央の突出部311をモータの外側に向けた配置にして構成する。また、コア300bの上下には、ブリッジ部310bの前後方向(第1方向)の突出部313を挿入するための穴部304を設けている。穴部304は、コア300bの前後方向を貫通するように形成しても良いし、端部部材4側まで貫通せず、端部部材4側の途中まで形成するようにしても良い。
【0045】
本実施例によれば、ブリッジ部310bの前後方向の突出部313とコア300bの穴部304とを、圧入または焼き嵌めなどをすることによって、コア300bとブリッジ部310bをより強固に固定でき、貫通ボルトによる軸力が不要となる。
【実施例4】
【0046】
図17乃至図19を参照して、本発明の実施例4に係るリニアモータについて、説明する。図17は、本発明の実施例4に係るリニアモータの斜視図である。図18は、図17に示すリニアモータの左右方向に対して垂直な断面を示す斜視図である。図19は、図17に示すリニアモータの前後方向に対して垂直な断面を示す斜視図である。
【0047】
実施例4の構成は、以下の点を除き実施例1と同様であり、以下の本実施例に係る構成を除いて実施例1で説明した構成を採用することができる。
【0048】
本実施例の電機子3cにおけるブリッジ部310cは、例えば、十字型に打ち抜いた電磁鋼板を左右方向に積層し、コア300cの上下にはブリッジ部310cの前後方向(第1方向)の突出部313cを挿入するための穴部304cを設けている。穴部304cは、コア300cの前後方向を貫通するように形成しても良いし、端部部材4側まで貫通せず、端部部材4側の途中まで形成するようにしても良い。
【0049】
本実施例によれば、ブリッジ部310cの前後方向の突出部313cとコア300cの穴部304cとを、圧入または焼き嵌めなどをすることによって、コア300cとブリッジ部310cを強固に固定でき、貫通ボルトによる軸力が不要となる。
【実施例5】
【0050】
図20乃至図22を参照して、本発明の実施例5に係るリニアモータについて、説明する。図20は、本発明の実施例5に係るリニアモータの斜視図である。図21は、図20に示すリニアモータの左右方向に対して垂直な断面を示す斜視図である。図22は、図20に示すリニアモータの前後方向に対して垂直な断面を示す斜視図である。
【0051】
実施例5の構成は、以下の点を除き実施例1と同様であり、以下の本実施例に係る構成を除いて実施例1で説明した構成を採用することができる。
【0052】
本実施例の電機子3dにおけるブリッジ部310dは、例えば、十字型に打ち抜いた電磁鋼板を上下方向(第3方向)に積層して構成できる。コア300dの上下には、ブリッジ部310dを配置するための溝部303dを設けている。このため、2つのコア300dの間にブリッジ部310dを配した電機子3dは、永久磁石磁極210の前後方向間隔等の設計に応じて、隣り合う2つのコア300d及び永久磁石磁極210を含む磁路を形成できる。また、貫通ボルト6により端部部材4の間を締め付けることで、ブリッジ部310dの左右の突起部314が前後に隣接するコア300dからの軸力を受け、ブリッジ部310dが固定される。
【0053】
実施例5では電磁鋼板の積層方向が実施例1と異なっている。電磁鋼板を上下方向に積層した場合では、電磁鋼板を左右方向に積層した場合と同様、ブリッジ内の磁束は電磁鋼板の平面に平行であるため、電磁鋼板の面内に発生する渦電流損を抑制することができる。
【実施例6】
【0054】
図23乃至図25を参照して、本発明の実施例6に係るリニアモータについて、説明する。図23は、本発明の実施例6に係るリニアモータの斜視図である。図24は、実施例6に係るリニアモータの左右方向に対して垂直な断面を示す斜視図である。図25は、実施例6に係るリニアモータの前後方向に対して垂直な断面を示す斜視図である。
【0055】
実施例6の構成は、以下の点を除き実施例1と同様であり、以下の本実施例に係る構成を除いて実施例1で説明した構成を採用することができる。
【0056】
本実施例の電機子3eにおけるブリッジ部310eは、例えば、直方体型に打ち抜いた電磁鋼板を左右方向または上下方向に積層して構成できる(図23乃至図25では電磁鋼板を左右方向に積層した例で示している。)。コア300eの上下には、ブリッジ部310eを配置するための溝部303eを設けている。このため、2つのコア300eの間にブリッジ部310eを配した電機子3eは、永久磁石磁極210の前後方向間隔等の設計に応じて、隣り合う2つのコア300e及び永久磁石磁極210を含む磁路を形成できる。
【0057】
ブリッジ部310eを上下方向から固定するため、保持部材320を被せている。保持部材320は、例えばアルミ等の非磁性材で構成され、貫通ボルト6で固定する。
【0058】
本実施例によれば、推力を向上し、かつ渦電流損を低減させるブリッジ部を有するリニアモータを提供することができる。
【実施例7】
【0059】
図26は、本発明の実施例7に係るリニアモータを用いた圧縮機を示す斜視図である。図27は、図26の圧縮機の要部を示す断面図である。
【0060】
本実施例の圧縮機1000は、空気や冷媒を圧縮する気体圧縮機として用いることができ、可動子2の往復動方向について電機子3の一方側に設けた共振ばね400及び電機子3の他方側に設けたピストン(シリンダ1200内に配置、図示せず)と、シリンダ1200と、電磁弁1400(1400A,1400B)と、排気弁1500と、ドライヤ1600と、及びインバータ1700と、を有する。
【0061】
本実施例の圧縮機1000では、ピストンの駆動モータがリニアモータで構成されており、可動子2が扁平な板状(平板状)を成している。また、可動子2は端部部材4の後側端部から更に後方に突き出している。リニアモータとしては、上述した各実施例のいずれかのリニアモータを用いる。
【0062】
シリンダ1200には、電機子3及び共振ばね400を収納するケーシング1800が取付けられている。本実施例では、ケーシング1800の前面として端部部材4を用いているが、端部部材4の前側にケーシング1800の前面を構成する部材を設けても良い。すなわち、端部部材4をケーシング1800の前面部材として兼用する代わりに、端部部材4とは別に前面部材を設けてもよい。
【0063】
ケーシング1800は、筒状の側面(側面部材)1810と後面(後面部材、底面部材)1820とが別体で構成されており、前後に延在する挿通部材1830によって、後面1820がシリンダ1200にベース板1900を介して固定されている。これにより、側面1810は後面1820及びシリンダ1200に挟持されている。
【0064】
ケーシング1800側から前方に向けて電極が突出し、電極の一端部に巻線5の引き出し端部が電気的に接続されている。電極の他端部はベース板1900に形成された貫通孔(図示せず)を貫通してインバータ1700の内部に挿入され、内部のインバータ回路と電気的に接続されている。
【0065】
ベース板1900にはガスの吸入吐出口1910が設けられている。また、ベース板1900には2つの電磁弁1400A,1400Bが取り付けられ、各電磁弁1400A,1400Bに対応してガスが流れる2つの貫通孔(ガス通路)1920a,1920bが設けられている。
【0066】
電磁弁1400A,1400Bは三方弁であり、ガスの吸入吐出弁を構成する。一方の電磁弁1400Aが吸入状態にある場合、他方の電磁弁1400bは吐出状態となる。一方の電磁弁1400Aは吸入状態において吸入吐出口1910から吸入したガスを、貫通孔1920aを通じてケーシング1800の内部に流す。このとき、他方の電磁弁1400Bは吐出状態になっており、貫通孔1920bを通じたガスの流れを遮断する。
【0067】
電磁弁1400Aを通じてケーシング1800の内部に流入したガスは、可動子2と端部部材4及びベース板1900との隙間を流れてシリンダ1200の内部に流れ、シリンダ1200を通じてドライヤ1600に流れる。更に、ガスはドライヤ1600からもう一方の電磁弁1400Bを通じて吐出される。電磁弁1400A及び電磁弁1400Bの吸入吐出の状態が入れ替わると、ガスの流れは上述した経路の逆を辿って流れる。シリンダ1200では必要に応じて流入したガスの圧縮を行う。ベース板1900の貫通孔1920bが設けられた側には、吸入吐出口1910に対応する位置に、図示しない吸入吐出口が設けられている。
【0068】
シリンダ1200のシリンダヘッド1200Aには、ドライヤ1600がシリンダ1200の内部と連通可能な状態で取り付けられている。
【0069】
本実施例によれば、推力を向上し、かつ渦電流損を低減させたリニアモータを用いるようにしているので、省エネルギー性に優れた圧縮機を提供することができる。
【実施例8】
【0070】
図28は、本発明の実施例8に係る冷蔵庫の構成図である。冷蔵庫2001は、冷蔵室2002の前面側に左右に分割された観音開きの冷蔵室扉2002aを備え、製氷室2003と、上段冷凍室2004と、下段冷凍室2005と、野菜室2006との前面側に、それぞれ引き出し式の製氷室扉2003a、上段冷凍室扉2004a、下段冷凍室扉2005a、野菜室扉2006aを備えている。
【0071】
野菜室2006の背面側には、機械室2020が設けられ、機械室2020に圧縮機2024が配置されている。また、製氷室2003、上段冷凍室2004、及び下段冷凍室2005の背面側には、蒸発器室2008が設けられ、蒸発器室2008に蒸発器2007が設けられている。
【0072】
冷蔵庫2001では、圧縮機2024及び蒸発器2007のほか、図示しない放熱器、減圧手段であるキャピラリチューブ及び三方弁等が冷媒配管で接続され、冷凍サイクル2030が形成されている。圧縮機2024が駆動することにより、冷凍サイクル2030が動作して、冷蔵庫の冷却が行われる。
【0073】
本実施例では、冷蔵庫2001の冷凍サイクル2030を構成する圧縮機2024に、上述した各実施例のいずれかのリニアモータ100を採用する。例えば、圧縮機2024として実施例7の圧縮機1000を採用するとよい。
【0074】
本実施例によれば、冷凍サイクル2030を構成する圧縮機2024の大形化を抑制することができる。そして、本実施例によれば、冷蔵室及び冷凍室のために大きなスペースを確保することが可能になり、外形寸法を大きくすることなく大容量の冷蔵庫を提供することができる。さらに、本実施例によれば、推力を向上し、かつ渦電流損を低減させた圧縮機を用いるようにしているので、省エネルギー性に優れた冷蔵庫を提供することができる。
【実施例9】
【0075】
図29は、実施例9に係る車両用エアサスペンションの構成図である。本実施例では、4輪自動車等の車両に、車両用エアサスペンションを搭載した場合を例に挙げて説明する。
【0076】
車体3002は、車両3001のボディを構成している。車体3002の下側には、左,右の前輪と左,右の後輪とからなる合計4個の車輪3003が備えられている。本実施例では走行中の衝撃を緩和する緩衝器として、空気を利用したエアサスペンション3004を備えている。エアサスペンション3004は、車体3002と各車輪3003との間にそれぞれ設けられた4個の空気ばね3005と、空気圧縮機3006と、バルブユニット3008と、コントローラ3011とを備える。そして、エアサスペンション3004は、各空気ばね3005に対して空気圧縮機3006から圧縮空気が給排されることにより、車高調整を行う。
【0077】
本実施例では、空気圧縮機3006の駆動モータとして、上述した各実施例のいずれかのリニアモータ100を採用する。例えば、空気圧縮機3006として実施例7の圧縮機1000を採用するとよい。空気圧縮機3006は、給排管路(配管)3007を通じてバルブユニット3008に接続されている。バルブユニット3008には、各車輪3003に対して備えられた、電磁弁からなる給排バルブ3008aが4個設けられている。バルブユニット3008と各車輪3003の空気ばね3005との間には、分岐管路(配管)3009が設けられている。空気ばね3005は、分岐管路3009、給排バルブ3008a、及び給排管路3007を介して、空気圧縮機3006に接続される。そして、バルブユニット3008は、コントローラ3011からの信号に応じて給排バルブ3008aを開,閉弁させることにより、各空気ばね3005に対して圧縮空気を給排し、車高調整を行う。
【0078】
本実施例では、エアサスペンション3004を構成する空気圧縮機3006の大形化を抑制することができる。そして、車両3001における空気圧縮機3006の搭載スペースを小さくすることができ、空気圧縮機3006の配置の自由度が高まる。さらに、本実施例によれば、推力を向上し、かつ渦電流損を低減させた空気圧縮機を用いるようにしているので、燃費の悪化を抑制した車両用エアサスペンションを提供することができる。
【0079】
[その他の態様]
各実施例では、電機子3を固定して界磁子(可動子2)が移動するムービングマグネット型を例示したが、界磁子を固定して電機子3を移動するムービングコイル型でもよい。
【0080】
また、可動子2の上下方向それぞれに電機子磁極301を設ける代わりに、可動子2の上下方向一方側に設ける構成でもよい。この場合、腕部302は、一端が軟磁性体の床面に接触してコア300を支持することができる。
【0081】
また、電機子磁極301や腕部302、ブリッジ部310はアモルファス金属を積層して構成してもよいし、圧粉磁心で構成してもよい。アモルファス金属を用いた場合は、電機子磁極301や腕部302、ブリッジ部310で発生する鉄損を低減する効果があり、圧粉磁心を用いた場合は、三次元的に任意な形状で構成することができる。
【0082】
本発明は、モータ(リニアモータ)のほか、固定子1及び可動子2を相対移動させる種々の機器に適用できる。例えば、発電機、圧縮機、電磁サスペンション、位置決め装置等に用いても同様の効果が得られる。
【0083】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…固定子、2…可動子(界磁子)、3…電機子、4…端部部材、5…巻線、6…貫通ボルト、100…リニアモータ、200…磁極フレーム、210…永久磁石磁極、300…コア、301…電機子磁極(磁極歯)、302…腕部、303…溝部、304…穴部、310…ブリッジ部、311…突出部、312…突起、313…突出部、320…保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17
図18
図19
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図28
図29