(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】羽根および食品製造装置
(51)【国際特許分類】
A47J 43/046 20060101AFI20230619BHJP
A21C 1/02 20060101ALI20230619BHJP
B01F 27/808 20220101ALI20230619BHJP
B01F 35/00 20220101ALI20230619BHJP
B01F 35/90 20220101ALI20230619BHJP
A23L 7/10 20160101ALN20230619BHJP
【FI】
A47J43/046
A21C1/02 B
B01F27/808
B01F35/00
B01F35/90
A23L7/10 102
(21)【出願番号】P 2019140618
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】有井 真吾
(72)【発明者】
【氏名】久保田 郁哉
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/033407(WO,A1)
【文献】特開2004-254581(JP,A)
【文献】実公昭48-870(JP,Y1)
【文献】特表平9-512451(JP,A)
【文献】実開昭54-55691(JP,U)
【文献】特表2015-529109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 43/00~44/02
A21C 1/00~15/04
A23L 7/00~7/104
B01F 35/00~35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に回転可能に設けられる羽根であって、
回転軸部と、
前記回転軸部から軸方向に沿って回転半径方向の外側にかけて広がる羽根部と、を備え、
前記羽根部は、回転方向の正側に羽根面を有し、
前記羽根面は、回転方向の正側に対して、上側よりも下側が先行するよう傾斜し、
前記羽根面の上側は、回転方向の逆側に曲がって
おり、
前記回転軸部の上端部は、前記羽根部の上端部に連続して前記羽根部側が窪むように形成されている
ことを特徴とする羽根。
【請求項2】
容器に回転可能に設けられる羽根であって、
回転軸部と、
前記回転軸部から軸方向に沿って回転半径方向の外側にかけて広がる羽根部と、
前記回転軸部から回転半径方向の外側に突き出る突起部と、を備え、
前記羽根部は、回転方向の正側に羽根面を有し、
前記羽根面は、回転方向の正側に対して、上側よりも下側が先行するよう傾斜し、
前記羽根面の上側は、回転方向の逆側に曲がって
おり、
前記回転軸部において対称となる位置の上側および下側のそれぞれに前記突起部および前記羽根部が設けられており、
前記突起部は、回転方向の正側に突起面を有し、
前記突起面は、上側よりも下側が先行するよう傾斜し、かつ回転方向の正側に曲がっている
ことを特徴とする羽根。
【請求項3】
容器に回転可能に設けられる羽根であって、
回転軸部と、
前記回転軸部から軸方向に沿って回転半径方向の外側にかけて広がる羽根部と、
前記回転軸部から回転半径方向の外側に突き出る突起部と、を備え、
前記羽根部は、回転方向の正側に羽根面を有し、
前記羽根面は、回転方向の正側に対して、上側よりも下側が先行するよう傾斜し、
前記羽根面の上側は、回転方向の逆側に曲がって
おり、
前記回転軸部において対称となる位置の上側および下側のそれぞれに前記突起部および前記羽根部が設けられており、
前記突起部は、上側から下側に向かうにつれて回転半径方向の長さが長くなるように形成されている
ことを特徴とする羽根。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか一項に記載の羽根において、
前記羽根部の上端部は、弧状に窪んでいる
ことを特徴とする羽根。
【請求項5】
請求項1
~4のいずれか一項に記載の羽根において、
前記羽根部は、下側から上側に向かうにつれて回転半径方向の長さが長くなるように形成されている
ことを特徴とする羽根。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の羽根と、
底部に前記羽根が回転可能に設けられた容器と、
前記容器の外側の底部に設けられたヒータと、を備え、
前記容器は、該容器の外側の底部に設けられ、前記ヒータを囲む囲み部を有する
ことを特徴とする食品製造装置。
【請求項7】
請求項
6記載の食品製造装置において、
前記容器は、底面を円形状、開口を楕円状とし、前記開口から前記底面にかけて窄むように形成されている
ことを特徴とする食品製造装置。
【請求項8】
請求項
6または
7記載の食品製造装置において、
前記容器は、該容器の外側の底部に設けられ、前記囲み部で囲まれる軸部を備え、
前記ヒータは、リング状ヒータであり、前記軸部がリング内側を貫通して設けられる
ことを特徴とする食品製造装置。
【請求項9】
請求項
6~
8のいずれか一項に記載の食品製造装置において、
前記容器の外側の底部に前記ヒータを接するよう前記ヒータを付勢する弾性体を備える
ことを特徴とする食品製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(実開平7-30690号公報)には、餅製造装置に用いられ、平板状部と軸部とが一体の羽根が記載されている。この平板状部は、羽根の回転方向に対してほぼ垂直に近い所定の傾きをもつように設けられている(特許文献1の段落0019、
図3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような技術によれば、例えば、食材としての餅米粉末と水を羽根の回転により混練して餅(食品)を製造することができる。しかしながら、食材が固形化してくると、例えば食材内部にまで羽根を作用させることが難しくなってくる。
【0005】
本発明の一目的は、固形化した状態の食材に対しても羽根を作用させることのできる技術を提供することにある。なお、以下では、固形化している途中の状態も「固形化した状態」として説明する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一解決手段に係る羽根は、容器に回転可能に設けられる羽根であって、回転軸部と、前記回転軸部から軸方向に沿って回転半径方向の外側にかけて広がる羽根部と、を備えている。前記羽根部は、回転方向の正側に羽根面を有している。前記羽根面は、回転方向の正側に対して、上側よりも下側が先行するよう傾斜している。前記羽根面の上側は、回転方向の逆側に曲がっている。
【発明の効果】
【0007】
一解決手段によれば、固形化した食材に対しても羽根を作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る食品製造装置の側面視における内部の説明図である。
【
図2】
図1に示す食品製造装置の背面視における内部の説明図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る羽根の正面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る容器の上面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず、本発明の実施形態に係る羽根および食品製造装置について、
図1~
図12を参照して説明する。
図1および
図2はそれぞれ食品製造装置10を側面視および背面視した内部の断面図である。
図3~
図8はそれぞれ食品製造用の羽根11の正面図、背面図、上面図(平面図)、底面図、右側面図および左側面図である。
図9は食品製造用の容器12の上面図である。
図10は装置10の制御系を示すブロック図である。装置10によれば、容器12内に入れられた食材に対し回転する羽根11が作用することで、所望の食品を製造することができる。
【0010】
図1、
図2に示すように、装置10は、食品製造用の羽根11および容器12(釜)を備えている。羽根11は、容器12の内側の底部に回転可能に設けられる。羽根11は、回転軸部13と、羽根部14とを備えている。本実施形態では、回転軸部13の中心軸Aと平行な上下方向を「軸方向」といい、羽根11が設けられる容器12の底部側が「下側」、容器12の開口側が「上側」となる。また、回転軸部13の中心軸Aに直交する方向を「回転半径方向」といい、中心軸Aから遠ざかる側を「外側」(
図3等に矢印Bで示す)といい、中心軸A側を「内側」という。また、中心軸Aを中心として回転する方向を「回転方向」といい、時計回り側を「正側」(
図5等に矢印Cで示す)、その逆回り側を「逆側」という。
【0011】
羽根部14は、回転軸部13から軸方向に沿って回転半径方向の外側にかけて広がっている。具体的には、
図3に示すように、羽根部14は、軸方向の長さL1よりも回転半径方向の長さL2(回転の中心軸Aから外側までの最も長い箇所の長さとして示す)が長くなるように広がって形成されている。羽根部14は、回転方向の正側に羽根面15を有している(
図5)。羽根面15は、回転方向の正側に対して、上側16よりも下側17が先行するように傾斜している(
図7)。また、羽根面15の上側16は、回転方向の逆側に曲がっている(
図5の矢印Ca)。すなわち、正側に回転する羽根11の羽根面15は、下側17が上側16よりも先行(下側17より上側16が後行)し、かつ上側16においては外側16oが後行する。
【0012】
これにより、正側に回転する羽根11は、容器12内の固形化した食材に対して、押し潰し(搗き)ながら下側17から上側16へ食材を持ち上げ、その外側16oへ食材を伸ばすように作用することができる。また、羽根11は、回転により食材に繰り返し作用することができる。また、羽根面15は傾斜しているので、その上側16から食材が離れる際に、食材をひっくり返す(反転させる)ように羽根11を作用させることができる。また、羽根11は、
図3に示すように、羽根部14の上端部20が弧状に窪んでいる(羽根面15の上側16が弧状に窪んでいる)。このため、固形化した食材が正側に回転する羽根11の上端部20の窪んだ底からは乗り越え易くなるよう羽根11を作用させることができる。
【0013】
また、羽根部14は、下側から上側に向かうにつれて回転半径方向の長さが長くなるように形成されている。具体的には、
図3に示すように、回転の中心軸Aからの上側および下側の長さL2、L3では下側の長さL3が上側の長さL2よりも短くして、下側から上側に向かうにつれて回転半径方向の長さが長くなるように羽根部14の外端部21が形成されている。このため、羽根11は、羽根部14の外端部21の下側がカット(以下、アンダーカットという)された構造となり、羽根部14の外端部21と、容器12の底面22や内壁面23との間に空間が形成されることになる(
図1、
図2)。このように、カットされた部分では食材を逃がすように羽根11が作用するため、食材が容器12の底面22や内壁面23に無理に押し付けられることがなくなり、食材のはり付きを防止することができる。なお、長さL2、L3を中心軸Aからの長さとして示すが、回転軸部13からの長さであっても長短の関係は同じである。
【0014】
ここで、本実施形態では、容器12が楕円状の開口24を有する椀状に形成されている。具体的には、
図9に示すように、開口24を楕円状(長半径a、短半径b)、底面22を円形状(半径c)とし、開口24から底面22にかけて窄むように形成されている(a>b>c)。この容器12の底面22は、羽根11が回転することで形成される領域を含むように円形状に形成されている。このような容器12とすることで、回転する羽根11との間では、固形化された食材に対して伸縮する動きを与えることができる。また、複数の食材(例えば餅にヨモギなど)を効率よく混ぜ込むことができる。
【0015】
また、
図3に示すように、回転軸部13の上端部25は、羽根部14の上端部20に連続して羽根部14側が窪むように形成されている。本実施形態では、羽根部14の上端部20が弧状であるので、それに連続するように回転軸部13の上端部25も弧状に形成されている。羽根部14の上端部20と回転軸部13の上端部25とが一体の弧状に形成されている。これにより、羽根11が回転することで、容器12内の固形化した食材が回転軸部13側ではなく羽根部14側へ移動するようになり、食材に対して羽根部14を作用させることができる。
【0016】
また、羽根11は、回転軸部13から回転半径方向の外側に突き出る突起部26を備えている。この突起部26は、回転軸部13の上側に設けられている(
図4)。また、羽根部14は、回転軸部13の下側に設けられている(
図3)。そして、突起部26および羽根部14は、回転軸部13において対称となる位置に設けられている(
図5)。これにより、羽根部14によって下側から押し上げられた食材に対して、回転軸部13の上側の突起部26で引っ掛けることで食材のバランス状態を崩しながら食材を伸ばすよう羽根11を作用させることができる。
【0017】
また、突起部26は、回転方向の正側に突起面27を有している(
図5)。突起面27は、上側30よりも下側31が先行するよう傾斜し、かつ回転方向の正側に曲がっている(
図5の矢印Cb)。これにより、羽根部14によって押し上げられた食材に対して、突起面27の下側31から上側30へ食材を持ち上げつつ食い込むように突起部26を作用させることができる。
【0018】
また、突起部26は、上側から下側に向かうにつれて回転半径方向の長さが長くなるように形成され、下側が尖っている。具体的には、
図4に示すように、回転の中心軸Aからの上側および下側の長さL4、L5では上側の長さL4が下側の長さL5よりも短くして、上側から下側に向かうについて回転半径方向の長さが長くなるように突起部26の外端部32が形成されている。このように、尖った突起部26によれば、固形化した食材に対して、その内側を切断するように羽根11を作用させることができる。なお、長さL4、L5を中心軸Aからの長さとして示すが、回転軸部13からの長さであっても長短の関係は同じである。
【0019】
また、回転軸部13は、その下側にフランジ部33を有している。フランジ部33は、回転軸部13の周方向に沿って外側に広がるように突起している。回転軸部13の下端部であるフランジ部33は、下端面34にキャビティ35を有している。羽根11が回転することで容器内14の固形化した食材が回転軸部13の下面34と容器12の底面22との間に進入しようとするが、フランジ部33で止まらせるよう作用させることができる。また、食材が進入してしまったとしても、キャビティ35によって容器12の底面22との間の空間が十分に確保されているため、羽根11が回転しにくくなるのを防止することができる。
【0020】
また、装置10は、
図1に示すように、羽根11および容器12の他にも、モータ36と、ヒータ37とを備えている。モータ36は、羽根11を回転させる駆動源として用いられる。また、ヒータ37は、容器12(釜)を介して食材に熱を加える熱源として用いられる。これらは装置10が備える筐体40に取り付けられる。筐体40は、基台41と、支持部42(容器受け)とを備えている。筐体40の内部では、正面側の基台41にモータ36が設けられ、背面側の基台41に支持部42を介してヒータ37が設けられている。支持部42(メス部)は、カップ状であり、容器12の外側の底部から延びる筒状の囲み部43(雌部としての支持部42に対するオス部)がねじ込まれてるように構成されている。
【0021】
ここで、羽根11を回転させるために、装置10は、モータ36の他にも、大プーリ44と、小プーリ45と、ベルト46と、回転軸47、50と、カップリング51、52と、軸受け53、54とを備えている。モータ36の駆動軸55の下端には小プーリ45が取り付けられ、ベルト46(無端ベルト)を介して大プーリ44に連係されている。この大プーリ44は、回転軸50の下端に取り付けられている。
【0022】
回転軸50は、支持部42の底部中心で貫通しており、回転軸50の上端には上カップリング51と係合する下カップリング52が取り付けられ、回転軸50の下端には大プーリ44が取り付けられている。この回転軸50と支持部42の底部に形成された筒部56(スリーブ)との間には軸受け54が設けられている。筐体40の基台41に固定された支持部42に対して回転軸50を介して下カップリング52が回転する。
【0023】
回転軸47は、容器12の底部中心で貫通しており、回転軸47の上端には容器12内で羽根11が取り付けられ、回転軸47の下端には上カップリング51が取り付けられている。この回転軸47と容器12の底部に形成された筒部57(スリーブ)との間には軸受け53が設けられており、筐体40の支持部42に固定された容器12に対して回転軸47を介して羽根11が回転する。なお、回転軸47の上端は、D形状断面を有しており、羽根11の回転軸部13の軸孔48に挿入して固定される。
【0024】
このような構成により、モータ36の駆動軸55が回転することによって、小プーリ45、ベルト46、大プーリ44、回転軸50、下カップリング52、上カップリング51および回転軸47を介して、羽根11が回転する。
【0025】
また、容器12を加熱するために、装置10は、容器12の外側の底部に設けられたヒータ37を備えている。ヒータ37は、例えば、回転軸47などが貫通するようなリング状の鋳込みヒータ(鋳物にシーズヒーターがインサートされたもの)を用いることができる。容器12は、容器12の外側の底部に設けられ、ヒータ37を囲む囲み部43(筒部)を備えている。囲み部43は、容器12と一体成形(例えばアルミダイカスト)されることが好ましい。囲み部43によれば、ヒータ37からの熱を容器12に伝え易くすることができ、囲み部43の外側にある構成部品へ熱を伝わり難くすることができる。また、囲み部43は、開口側がカップ状の支持部42によって覆われている。このため、ヒータ37は、支持部42および囲み部43によって形成された空間(部屋)に収納されて、その空間の外側にある構成部品へ熱を伝わり難くすることができる。
【0026】
装置10は、容器12を囲む遮熱部58を備えている。遮熱部58は、容器12の外面との間に空間を形成するように容器12に倣った形状をしている。そして、遮熱部58は、その底部で容器12の囲み部43が貫通し、囲み部43の外側の支持部42に固定されている。ヒータ37によって加熱された容器12の回りに遮熱部58が設けられることで、遮熱部58の外側にある構成部品へ熱を伝わり難くすることができる。また、遮熱部58を容器12に倣った形状(椀状の容器12に倣って遮熱部58も椀状)とすることで、遮熱をするために余計な空間を筐体40に設けることがなくなるため、装置10を小型化することができる。
【0027】
また、装置10は、容器12の温度を測定する温度センサ59を備えている。温度センサ59は、容器12と遮熱部58との間に設けられている。すなわち、容器12の外面と遮熱部58の内面との間の空間の温度を測定するよう温度センサ59が設けられている。遮熱部58によって容器12の熱が拡散されずに保持されているので、温度センサ59による測定は容器12の温度を正確に測定することができる。
【0028】
また、容器12は、容器12の外側の底部に設けられ、囲み部43で囲まれる筒部57(スリーブ)を備えている。この筒部57は、容器12と一体成形されることが好ましい。ヒータ37がリング状であれば、筒部57がリング内側を貫通するように設けることができる。これによれば、リング状のヒータ37の外側にも容器12の一部(囲み部43)、ヒータ37の内側にも容器12の一部(筒部57)を設けることができ、囲み部43および筒部57で囲まれたヒータ37からの熱を容器12により伝え易くすることができる。
【0029】
また、ヒータ37は、容器12の外側の底部に接して設けられている。本実施形態では、ヒータ37は、装置10が備える弾性体60(例えば、シリコーン製などのパッキンやバネ)によって容器12の外側の底部に付勢されて接している。このリング状のヒータ37は、容器12側のリング面とは反対側の裏面に、周方向に等間隔に複数本(例えば3本)の脚部61を備えている。この脚部61は、装置10が備えるストッパ62によって支持部42に抜け止めされている。支持部42に容器12の囲み部43がねじ込まれ、弾性体60が押し潰されることで弾性体60がヒータ37を容器12の外側の底部に付勢することとなる。
【0030】
また、装置10は、背面側の上部に開閉自在な蓋部63を備えている。蓋部63は、筐体40内にある容器12の上方に位置し、例えば、筐体40の背面側に設けられたヒンジによって開閉自在であり、着脱自在に取り付けられている。蓋部63が開いた状態では、筐体40内部にある容器12内を観察することができる。
【0031】
また、装置10は、正面側の上部に操作部64を備えている。操作部64は、操作者からの入力の入力指示を受けたり、装置動作を表示したりする。装置10は、操作部64の下側に制御基板65を備えている。制御基板65は、モータ36、ヒータ37および操作部64と電気的に接続されており、操作部64からの指示を受け、モータ36およびヒータ37を制御することができる。
【0032】
ここで、装置10の制御系について
図10を参照して説明する。制御基板65は、マイコンボード66とパワーボード67とを備えている。マイコンボード66は、製造工程(調製コース)の実行プログラムが記憶されたメモリ70を内蔵する。このマイコンボード66は、操作部64およびパワーボード67とそれぞれ電気的に接続されている。パワーボード67は、操作者に報知するためのブザー71を備えている。このパワーボード67は、モータ36、ヒータ37および温度センサ59とそれぞれ電気的に接続されている。これにより、マイコンボード66では、操作部64で選択される調製コースに応じてメモリ30からプログラムを読み出し、このプログラムに応じてパワーボード67では温度センサ59で温度を観測しながらモータ36およびヒータ37を制御する。
【0033】
次に、装置10の動作方法の一例として、市販されている切り餅(あるいは硬くなった餅)を搗きたてのような軟らかい状態に戻す<再搗きコース>について説明する。再搗きコースでは、使用者は、蓋部63を開けて、切り餅と、切り餅の枚数(質量)に応じた量の水を容器12に入れて、蓋部63を閉じ、操作部64で「再搗き」を選択した後、開始キーを押す。これにより装置10の動作が開始する。
【0034】
ヒータ37によって容器12が加熱され、温度センサ59によって容器12の温度が測定される。また、モータ36によって羽根11が回転し、食材としての切り餅に作用する。再搗きに適した条件となるように、容器12の温度や、羽根11(モータ36)の回転数が調整される。容器12に入れられた切り餅は、容器12を介して加熱された水とともに羽根11によって撹拌されることで軟化していく。このとき、水跳ねが起こらないように羽根11は低速回転(モータ36は低速駆動)されることが好ましい。そして、切り餅は、徐々に固形化された塊の餅となっていく。
【0035】
固形化されて塊となってきた餅に対しては、羽根11を高速回転(モータ36を高速駆動)させて作用させることができる。これにより、前述したように、固形化された塊の餅に対しても羽根11を作用させ、餅を搗いた状態とすることができる。その後、ヒータ37およびモータ36を停止して、製造工程終了となる。なお、終了時には、ブザー71により使用者にそのことを報知することができる。
【0036】
なお、水の他に餅に混ぜ込むための食材も容器12に入れ、一緒に攪拌させることもできる(例えば、他の食材が液状材料であれば混ぜ込み易くなる)。他の食材が混ぜ込まれる場合、固形化された塊の餅にまとまるのに時間がかかったりする。このため、例えば混ぜ込みコース(アレンジコース)を操作部64で選択しておくことで、時間調整を行うこともできる。
【0037】
次に、装置10を用いて製造された餅の仕上がりについて説明する。実施例1として、羽根11を備えた装置10を用い、切り餅2枚(計100g)と水(25g)を容器12に入れ、一塊の餅を製造した。実施例1と対比する比較例1として、突起部26がない羽根を備えた装置(その他の構成は装置10と同じ)を用い、同様の食材を容器12に入れ、一塊の餅を製造した。「伸び」、「こし」、「ベタツキ」、「色」、「旨み」、「舌触り」、「匂い」、および「練り残り」の評価項目で餅の仕上がりを対比した。その結果、突起部26がない羽根を用いた比較例では、高速駆動の際にうまく羽根に餅が絡みつかず、「こし」のない餅であったのに対し、羽根11を用いた実施例1では、「こし」のある餅を製造することができた。
【0038】
また、実施例2として、羽根11を用いた装置10を用い、餅米(280g)と水(180g)を容器12に入れ、一塊の餅を製造した。実施例2と対比する比較例2として、アンダーカットされていない羽根(容器12の底面22や内壁面23との間の空間が狭くなる)を備えた装置(その他の構成は装置10と同じ)を用い、同様の食材を容器12に入れ、一塊の餅を製造した。「伸び」、「こし」、「ベタツキ」、「色」、「旨み」、「舌触り」、「匂い」、および「米残り」の評価項目で餅の仕上がりを対比した。その結果、アンダーカットされていない羽根を用いた比較例2では、低速駆動の際に容器14の内壁面23に餅米が多く付着し、それが高速駆動しても残った「米残り」がある餅であったのに対し、羽根11を用いた実施例2では、「米残り」がない餅を製造することができた。その他の評価項目においても、比較例2の餅に対して実施例2の餅が優れていた。
【0039】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前記実施形態では、食品として餅を製造する場合について説明した。その他の食品として例えば、パン、うどん等の生地作りをしたり、うるち米の炊飯を行ったりすることもできる。
【符号の説明】
【0040】
11 羽根、 13 回転軸部、 14 羽根部、 15 羽根面