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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】ヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/38 20060101AFI20230619BHJP
   B60N 2/80 20180101ALI20230619BHJP
   B68G 7/05 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
A47C7/38
B60N2/80
B68G7/05 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019151134
(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公開番号】P2021029465
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅原 典恵
(72)【発明者】
【氏名】山際 祐毅
(72)【発明者】
【氏名】深津 雅一
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204161178(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0001811(US,A1)
【文献】特開2018-002058(JP,A)
【文献】特開2011-068186(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0008434(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/38
B60N 2/80
B68G 7/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状のインナカバーと、該インナカバーの前部に取り付けられて着座者の頭部を後方から弾性的に支持するパッドと、該パッドを前側から覆う表皮カバーと、を有するヘッドレストであって、
前記インナカバーが、前記パッドの後面に取り付けられる前側カバーと、該前側カバーに後方から取り付けられる後側カバーと、に前後に分割された構成とされ、
前記後側カバーが、前記前側カバーを外周側から隙間を隔てて囲う形に張り出す張出部を有し、
前記前側カバー及び前記後側カバーのうちの一方のカバーが、他方のカバーに対して内周側あるいは外周側から当てられる形に突出する第1突出部を有し、
前記表皮カバーの端末が、前記後側カバーの前記張出部によって外周側から囲われる前記前側カバーの端部に止着されるヘッドレスト。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドレストであって、
前記他方のカバーも、前記一方のカバーに対して内周側あるいは外周側から当てられる形に突出する第2突出部を有するヘッドレスト。
【請求項3】
請求項2に記載のヘッドレストであって、
前記第1突出部と前記第2突出部とが、前記インナカバーの一面において、互い違いに並ぶヘッドレスト。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のヘッドレストであって、
前記後側カバーの前記張出部が、前記表皮カバーに対して後側から突き当てられる構成とされるヘッドレスト。
【請求項5】
箱状のインナカバーと、該インナカバーの前部に取り付けられて着座者の頭部を後方から弾性的に支持するパッドと、を有するヘッドレストであって、
前記インナカバーが、前記パッドの後面に取り付けられる前側カバーと、該前側カバーに後方から取り付けられる後側カバーと、に前後に分割された構成とされ、
前記後側カバーが、前記前側カバーを外周側から隙間を隔てて囲う形に張り出す張出部を有し、
前記後側カバーが、前記張出部によって外周側から囲われる前記前側カバーの端部に対して内周側から当てられる形に突出する第1突出部を有するヘッドレスト。
【請求項6】
請求項5に記載のヘッドレストであって、
前記前側カバーの内周面には、筋状に張り出す前側リブが設けられ、
前記前側リブは、前記前側カバーの前記端部から外周側に向かって張り出して前記後側カバーに対して内周側から当てられる形に突出する第2突出部を有するヘッドレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレストに関する。詳しくは、箱状のインナカバーと、該インナカバーの前部に取り付けられて着座者の頭部を後方から弾性的に支持するパッドと、を有するヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートのヘッドレストにおいて、着座者の頭部を弾性的に受け止めるパッドが、樹脂製のインナカバーの前面部にセットされたヘッドレストが知られている。これにより、インナカバーは、パッドを背裏面から面状に支持することができる。特許文献1では、インナカバーは、前後に分割された構成とされており、この前側カバーと後側カバーとは、互いの周縁部同士が嵌合される形に組み付けられた構成とされる。これにより、前側カバーと後側カバーとの周縁部は、互いに支持し合うことで、強固に結合された構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5744508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、後側カバーが前側カバーを外周側から囲うように隙間を空けて組み付けられる構成とされる場合、後側カバーの周縁部が撓みやすくなる。その結果、ヘッドレストの内部構造が露出したり、ヘッドレストの意匠が崩れたりする恐れがある。そこで、本発明は、ヘッドレストの内部構造を露出させることなく、インナカバーの撓みを抑えることができるヘッドレストを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のヘッドレストは次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明のヘッドレストは、箱状のインナカバーと、該インナカバーの前部に取り付けられて着座者の頭部を後方から弾性的に支持するパッドと、を有するヘッドレストである。インナカバーが、パッドの後面に取り付けられる前側カバーと、該前側カバーに後方から取り付けられる後側カバーと、に前後に分割された構成とされる。後側カバーが、前側カバーを外周側から隙間を隔てて囲う形に張り出す張出部を有する。前側カバー及び後側カバーのうちの一方のカバーが、他方のカバーに対して内周側あるいは外周側から当てられる形に突出する第1突出部を有する。
【0007】
このように、後側カバーの張出部が、前側カバーを外周側から隙間を隔てて囲う構成であるため、ヘッドレストの内部構造の露出を防ぐことができる。また、一方のカバーから他方のカバーに対して内周側あるいは外周側から当てられる形に突出する第1突出部によって、一方のカバーに対して内周側あるいは外周側から外力が掛けられた際に、第1突出部によって他方のカバーが一方のカバーを支持することで、インナカバーの撓みを抑えることができる。
【0008】
また、本発明のヘッドレストは、更に次のように構成されていても良い。他方のカバーも、一方のカバーに対して内周側あるいは外周側から当てられる形に突出する第2突出部を有する。
【0009】
このため、第1突出部と第2突出部とによって、一方のカバーと他方のカバーとが互いに支持し合う構成とされて、インナカバーの撓みをより抑えることができる。
【0010】
また、本発明のヘッドレストは、更に次のように構成されていても良い。第1突出部と第2突出部とが、インナカバーの一面において、互い違いに並ぶ。
【0011】
上記構成により、第1突出部と第2突出部とが互いに干渉することなく、インナカバーの撓みをより効果的に抑えることができる。
【0012】
また、本発明のヘッドレストは、更に次のように構成されていても良い。ヘッドレストが、パッドを前側から覆う表皮カバーを備えている。該表皮カバーの端末が、後側カバーの張出部によって外周側から囲われる前側カバーの端部に止着される。
【0013】
上記構成により、表皮カバーによって、ヘッドレストの使用感を向上させることができる。また、表皮カバーがパッドに取り付けられる場合と比べて、より強固に表皮カバーを取り付けることができる。
【0014】
また、本発明のヘッドレストは、更に次のように構成されていても良い。後側カバーの張出部が、表皮カバーに対して後側から突き当てられる構成とされる。
【0015】
このように、表皮カバーと後側カバーの張出部とが連続的な外周面を形成することで、ヘッドレストの見栄えをより向上させることができる。
【0016】
また、本発明のヘッドレストは、更に次のように構成されていても良い。後側カバーの張出部に後側から突き当てられる表皮カバーの被突き当て部が、その突き当てに対する弾発力で張出部を外周側に押圧するように、張出部に対して斜めに張られた構成となっている。第1突出部が、後側カバーから前側カバーに対して内周側から当てられる形に突出する。
【0017】
上記構成により、第1突出部が前側カバーの内周面に当てられることで、後側カバーの張出部が外周側に撓むことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係るヘッドレストの斜視図である。
図2】ヘッドレストを後側から見た斜視図である。
図3】ヘッドレストの側面図である。
図4】ヘッドレストの分解図である。
図5図4を上下逆に見た図である。
図6図5を前後逆に見た図である。
図7図3のVII-VII線断面図である。
図8図3のVIII-VIII線断面図である。
図9図3のIX-IX線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
以下、本発明を実施するための形態を、図1-9を用いて説明する。以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。
【0020】
<ヘッドレスト1>
始めに、第1の実施形態に係るヘッドレスト1の基本構成について説明する(図1-3参照)。本実施形態のヘッドレスト1は、自動車用シートの頭凭れ部として構成されている。ヘッドレスト1は、箱状に形成された樹脂製のインナカバー10と、インナカバー10の前部に取り付けられる発泡ウレタン製のパッド20と、パッド20を前側から覆うファブリック製の表皮カバー30と、インナカバー10の下部から下方に延び出るヘッドレストステー40と、を有する。パッド20は、着座乗員の頭部を後方から受け止めるクッションを形成する。ヘッドレストステー40は、2本の支柱41を有する。各支柱41の下端部が、乗物用シートの図示しないシートバックの上端部に組み付けられる。この組み付けによって、ヘッドレスト1は、不図示のシートバックに一体的に取り付けられる。
【0021】
<インナカバー10>
インナカバー10は、前後に分割された構成とされており、前側カバー11と後側カバー12とを有する(図4-6参照)。前側カバー11と後側カバー12とは、それぞれインジェクション成形された樹脂部材から成る。この前側カバー11が、本発明の「他方のカバー」に相当する。また、後側カバー12が、本発明の「一方のカバー」に相当する。前側カバー11は、パッド20の後面に取り付けられてパッド20を支持する支持面部11aと、支持面部11aの上下左右の周縁から後方に向かってフランジ状に延び出る周縁部11bと、を有する。周縁部11bの上面部および左右面部は、周縁部11bの下面部よりも更に後方に向かって延び出す構成とされる(図6参照)。この周縁部11bの上面部および左右面部を、前側張出部11b1とする。この前側張出部11b1には、後述する表皮カバー30の周縁部がそれぞれ止着される。ここで、前側張出部11b1が、本発明の「端部」に相当する。
【0022】
後側カバー12は、インナカバー10の後面を形成するカバー面部12aと、カバー面部12aの上下左右の周縁から前方に向かってフランジ状に張り出す後側張出部12bと、を有する。この後側張出部12bが、本発明の「張出部」に相当する。前側カバー11と後側カバー12とは、ヘッドレストステー40に溶接された板状のブラケット50を介して、互いに一体的に組み付けられる。同組み付けにより、後側カバー12の後側張出部12bは、前側カバー11の前側張出部11b1を外周側から隙間を隔てて囲う形にセットされる。また、前側カバー11の周縁部11bの下面部および後側カバー12の後側張出部12bの下面部は、それぞれの延び出た先端同士が互いに前後方向に向かい合う形にセットされる(図3参照)。
【0023】
<パッド20>
パッド20は、その後面に部分的に凹んだ凹部21を有する(図6図7参照)。凹部21に対して、分割された前側カバー11が、支持面部11aと凹部21の凹んだ先の面とが当接するように嵌め込まれる。同嵌め込みにより、前側カバー11の前側張出部11b1が、パッド20の後面から後方に張り出す形にセットされる。
【0024】
<表皮カバー30>
表皮カバー30は、パッド20の形状に沿って前側から被せられる(図6参照)。表皮カバー30の上下左右の各周縁部は、パッド20の後面側へと回し込まれる。表皮カバー30の上側および左右側の各周縁部は、それらの端末が、パッド20の後面から張り出した前側カバー11の前側張出部11b1に接着されて止着される。これにより、表皮カバー30は、パッド20を前側カバー11に組み付けた状態に固定している。また、上記止着により、表皮カバー30は、上側および左右側の各周縁部に、パッド20の上側および左右側の各周縁部から前側カバー11の前側張出部11b1に向かって斜め後方向に張られる斜め張り部31を有する状態に張設される。
【0025】
<ヘッドレストステー40>
ヘッドレストステー40は、前出の各支柱41の各上端部間を繋ぐ繋ぎ部42を有する(図4-6参照)。繋ぎ部42によって、ヘッドレストステー40は略U字形状とされる。ヘッドレストステー40の各支柱41は、その上部領域が前側に張り出すように屈曲している。この前側に張り出した上部領域に、ブラケット50が溶接されている。
【0026】
<ブラケット50>
ブラケット50は、前側カバー11および後側カバー12がそれぞれ一体的に組み付けられる結合板51と、結合板51の左右縁部から前方へ張り出すアーム52と、を有する(図4-6参照)。結合板51は前後方向に面を向けており、その面上に第1の貫通孔51a、第2の貫通孔51b、第3の貫通孔51c、第4の貫通孔51dを有する。第1の貫通孔51aは、略矩形状であり、結合板51の上側中央部に1つ設けられている。第2の貫通孔51bは、略円形状であり、第1の貫通孔51aの左右両側および結合板51の下側中央部にそれぞれ位置するように3つ設けられている。第3の貫通孔51cは、略円形状であり、上記下側中央部に位置する第2の貫通孔51bの左右両側にそれぞれ位置するように2つ設けられている。第4の貫通孔51dは、略円形状であり、結合板51の略中心位置に1つ設けられている。
【0027】
アーム52は、結合板51の上縁部近傍の左右縁部から、それぞれ前方に向かって1本ずつ張り出している(図4-6参照)。各アーム52は、それぞれの前方に張り出した先端が、互いに遠ざかるように左右に向かって折れ曲がった形状とされる。各アーム52の折れ曲がった先端が、ヘッドレストステー40の各支柱41の上部領域に対して、前側から当てられる形で一体的に溶接されている。
【0028】
<後側カバー12>
後側カバー12は、カバー面部12aの前面から前方に向かって突出する差込部12dおよび締結部12eを備えている(図4参照)。差込部12dは、略柱状であって、カバー面部12aの中心部に1つ設けられている。差込部12dは、その突出した先端に結合板51の第4の貫通孔51dに後方から差し込まれる棒状の突起12d1を有する。締結部12eは、略円筒状であって、カバー面部12aの上部領域に左右方向に並ぶように2つおよびカバー面部12aの下側中央部に1つ設けられている。締結部12eは、その突出した先端にビス12f等の締結部材を取り付けられるようになっている。
【0029】
上記構成において、まず、後側カバー12を、差込部12dの突起12d1を結合板51の第4の貫通孔51dに差し込むように、ブラケット50に後方から当てる。これにより、各締結部12eの突出した先端が、結合板51の第2の貫通孔51bに対して後方からそれぞれ当てられる形にセットされる。次に、ビス12fを、ブラケット50の前方から結合板51の第2の貫通孔51bを通って、締結部12eの先端に締結する。これにより、後側カバー12とブラケット50とが、互いに一体的に組み付けられる。上記後側カバー12の後側張出部12bの下面部には、上下方向に貫通する貫通孔12gが左右方向に並ぶように2つ設けられている(図4図5参照)。各貫通孔12gは、後側カバー12をブラケット50に組み付ける際に、ブラケット50に溶接されたヘッドレストステー40の各支柱41を下方に通すための通し孔として機能する。
【0030】
後側カバー12の内周面には、筋状に張り出す複数の後側リブ12cが設けられている(図4図5参照)。後側リブ12cは、後側カバー12の内周面の複数箇所から張り出す第1後側リブ12c1と、後側カバー12の内周面の上部領域における1箇所から横長状に張り出す第2後側リブ12c2と、に分けられる。第1後側リブ12c1は、後側張出部12bの上下左右の各面部に、それぞれ2つずつ設けられている。後側張出部12bの上面部および左右面部に設けられた第1後側リブ12c1は、後側張出部12bの内周側に張り出してから、前方に向かってそれぞれ折れ曲がり状に張り出す略L字形状となっている。後側張出部12bの下面部に設けられた第1後側リブ12c1は、前後方向に延びる筋状であって、その前端部が後側張出部12bよりも前方に張り出している。第1後側リブ12c1は、前側カバー11と後側カバー12とが互いに一体的に組み付けられることにより、前側カバー11の周縁部11bの内周面に内周側から当てられる形にセットされる。第2後側リブ12c2は、後側カバー12の上部領域の内周面形状に沿って、後側張出部12bの左面部からカバー面部12aを跨って後側張出部12bの右面部まで延びる略U字状となっている。第2後側リブ12c2は、前側カバー11と後側カバー12とが互いに一体的に組み付けられることにより、前側カバー11の周縁部11bの外周面に外周側から当てられる形にセットされる。この後側リブ12cが、本発明の「第1突出部」に相当する。
【0031】
<前側カバー11>
前側カバー11は、支持面部11aの後面から後方に向かって突出する差込部11dとクリップ装着部11eとを備えている(図6参照)。差込部11dは、後方に向かって台座状に突出しており、支持面部11aの上側中央部に設けられている。差込部11dは、その突出した先端に、結合板51の第1の貫通孔51aに前方から差し込まれる板状の突起11d1を有する。クリップ装着部11eは、略柱状であって、支持面部11aの下部領域に左右方向に並ぶように2つ設けられている。各クリップ装着部11eは、その突出した先端に、クリップ11fの基端側のフランジ状に張り出す座の部分を下方から差し込むことで、スナップフィット嵌合により装着できるようになっている。同装着によって、各クリップ11fの後方に突出する矢尻状の部分が、各クリップ装着部11eの先端から後方に向かって突出する状態にセットされる。すなわち、差込部11dの突起11d1が、結合板51の第1の貫通孔51aに前方から差し込まれるとともに、各クリップ装着部11eに装着されるクリップ11fが、結合板51の第3の貫通孔51c内に前方から差し込んで装着される。このようにして、前側カバー11が、ブラケット50に一体的に組み付けられる。
【0032】
前側カバー11の内周面には、筋状に張り出した複数の前側リブ11cが設けられる(図6参照)。前側リブ11cは、突出部11c1と、補強部11c2と、に分けられる。突出部11c1は、周縁部11bの左右面部および下面部にそれぞれ2つずつ設けられている。左右面部に設けられた各突出部11c1は、周縁部11bの外周側に向かって張り出している。下面部に設けられた各突出部11c1は、周縁部11bよりも後方に張り出している。各突出部11c1は、前側カバー11および後側カバー12が互いに一体的に組み付けられることにより、後側カバー12の後側張出部12bの内周面に内周側から当てられる形にセットされる。この突出部11c1が、本発明の「第2突出部」に相当する。各補強部11c2は、支持面部11aから周縁部11bとの境界を跨って後方に延び出る略L字状であって、周縁部11bよりも後方に張り出していない。補強部11c2により、前側カバー11の支持面部11aの支持強度が高められる。
【0033】
<前側カバー11および後側カバー12の組み付け>
上述したように、分割された前側カバー11は、表皮カバー30によってパッド20に対して一体的に組み付けられる。また、分割された後側カバー12は、ヘッドレストステー40が溶接されたブラケット50と一体的に組み付けられる。そして、上記前側カバー11も、上述したように、ブラケット50に一体的に組み付けられる。このようにして、上記前側カバー11と上記後側カバー12とがブラケット50を介して互いに一体的に組み付けられることで、ヘッドレスト1が組み付けられた状態にセットされる。
【0034】
上記組み付けにより、上述したように、後側カバー12の後側張出部12bは、前側カバー11の前側張出部11b1を外周側から隙間を隔てて囲う形にセットされる。また、後側張出部12bの先端が、パッド20に被せられた表皮カバー30に後側から突き当てられる(図3参照)。上記突き当てによって、後側張出部12bは、表皮カバー30と連続的な外周面を形成する。これにより、後側張出部12bは、ヘッドレスト1の内部構造の露出を防ぐことができる。また、後側張出部12bの上面部および左右面部は、前出の表皮カバー30の斜め張り部31に対して後方から突き当てられる(図7図8参照)。この斜め張り部31が、本発明の「被突き当て部」に相当する。この突き当てられた斜め張り部31が元に戻る弾発力によって、後側張出部12bの上面部および左右面部には外周側に押し退けられる力を受ける。
【0035】
しかし、前出の後側カバー12の第1後側リブ12c1が、前側カバー11の前側張出部11b1の内周面に引っ掛けられる形に当てられている(図7参照)。それによって、後側張出部12bの上面部および左右面部の外周側への変形が抑えられる。一方、後側カバー12に対して、使用者から後側張出部12bを内周側へと押圧する力が掛けられた際には、前出の前側カバー11の突出部11c1が後側張出部12bを内周側から支持すると共に、前出の後側カバー12の第2後側リブ12c2が前側張出部11b1によって支持される(図8図9参照)。同支持によって、後側張出部12bの内周側への変形が抑えられる。
【0036】
図9に示すように、前側カバー11と後側カバー12とが互いに組み付けられた状態において、前側カバー11から突出する各突出部11c1と後側カバー12から突出する各後側リブ12cとは、インナカバー10の左右面部それぞれにおいて、互い違いに並んでいる。また、図示しないインナカバー10の下面部においても、後側カバー12から突出する各後側リブ12cが、前側カバー11から突出した各突出部11c1の間に挟まれるように並んでいる。上記配置により、上記組み付けの際に、各前側リブ11cと各後側リブ12cとが互いに干渉することを防ぐことができる。すなわち、互い違いの配置とされることで、前側カバー11の各突出部11c1間の幅および後側カバー12の各後側リブ12c間の幅が、互い違いの配置でない場合と比べてそれぞれより広く確保される。これにより、前側カバー11と後側カバー12とが互いに組み付けられる際に、前側カバー11の各突出部11c1または後側カバー12の各後側リブ12cに当てられる部分が撓みやすくなる。したがって、前側カバー11と後側カバー12とを強干渉させることなく、互いに組み付けることができる。また、前側カバー11の各突出部11c1と後側カバー12の各後側リブ12cとが、互いに前側カバー11または後側カバー12を支持し合うことで、インナカバー10の変形や撓みをより効果的に抑えることができる。
【0037】
<まとめ>
以上をまとめると、本実施形態のヘッドレスト1は次のような構成となっている。すなわち、箱状のインナカバー(10)と、該インナカバー(10)の前部に取り付けられて着座者の頭部を後方から弾性的に支持するパッド(20)と、を有するヘッドレスト(1)である。インナカバー(10)が、パッド(20)の後面に取り付けられる前側カバー(11)と、該前側カバー(11)に後方から取り付けられる後側カバー(12)と、に前後に分割された構成とされる。後側カバー(12)が、前側カバー(11)を外周側から隙間を隔てて囲う形に張り出す張出部(12b)を有する。前側カバー(11)および後側カバー(12)のうちの一方のカバー(12)が、他方のカバー(11)に対して内周側あるいは外周側から当てられる形に突出する第1突出部(12c)を有する。
【0038】
このように、後側カバー(12)の張出部(12b)が、前側カバー(11)を外周側から隙間を隔てて囲う構成であるため、ヘッドレスト(1)の内部構造の露出を防ぐことができる。また、一方のカバー(12)から他方のカバー(11)に対して内周側あるいは外周側から当てられる形に突出する第1突出部(12c)によって、一方のカバー(12)に対して内周側あるいは外周側から外力が掛けられた際に、第1突出部(12c)によって他方のカバー(11)が一方のカバー(12)を支持することで、インナカバー(10)の撓みを抑えることができる。
【0039】
また、他方のカバー(11)も、一方のカバー(12)に対して内周側あるいは外周側から当てられる形に突出する第2突出部(11c1)を有する。
【0040】
このため、第1突出部(12c)と第2突出部(11c1)とによって、一方のカバー(12)と他方のカバー(11)とが互いに支持し合う構成とされて、インナカバー(10)の撓みをより抑えることができる。
【0041】
また、第1突出部(12c)と第2突出部(11c1)とが、インナカバー(10)の一面において、互い違いに並ぶ。
【0042】
このような構成となっていることにより、第1突出部(12c)と第2突出部(11c1)とが互いに干渉することなく、インナカバー(10)の撓みをより効果的に抑えることができる。
【0043】
また、ヘッドレスト(1)が、パッド(20)を前側から覆う表皮カバー(30)を備えている。表皮カバー(30)の端末が、後側カバー(12)の張出部(12b)によって外周側から囲われる前側カバー(11)の端部(11b1)に止着される。
【0044】
このような構成となっていることにより、表皮カバー(30)によって、ヘッドレスト(1)の使用感を向上させることができる。また、表皮カバー(30)がパッド(20)に取り付けられる場合と比べて、より強固に表皮カバー(30)を取り付けることができる。
【0045】
また、後側カバー(12)の張出部(12b)が、表皮カバー(30)に対して後側から突き当てられる構成とされる。
【0046】
このように、表皮カバー(30)と後側カバー(12)の張出部(12b)とが連続的な外周面を形成することで、ヘッドレスト(1)の見栄えをより向上させることができる。
【0047】
また、後側カバー(12)の張出部(12b)に後側から突き当てられる表皮カバー(30)の被突き当て部(31)が、その突き当てに対する弾発力で張出部(12b)を外周側に押圧するように、張出部(12b)に対して斜めに張られた構成となっている。第1突出部(12c)が、後側カバー(12)から前側カバー(11)に対して内周側から当てられる形に突出する。
【0048】
このような構成となっていることにより、第1突出部(12c)が前側カバー(11)の内周面に当てられることで、後側カバー(12)の張出部(12b)が外周側に撓むことを防ぐことができる。
【0049】
<その他の実施形態>
以上、本発明を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、各種の形態で実施することができるものである。
【0050】
1.本発明のヘッドレストは、鉄道等の自動車以外の車両、航空機、船舶等の様々な乗物用に供されるシート、もしくは映画館等の公共施設や家庭などで使用される乗物用以外のシートにも広く適用することができるものである。
【0051】
2.上記実施形態では、後側カバー12が一方のカバーとされ、前側カバー11が他方のカバーとされたが、前側カバーが一方のカバーとされ、後側カバーが他方のカバーとされても構わない。そのような場合であっても、前側カバーに設けられる第1突出部が、後側カバーを支持することでインナカバーの撓みを抑えることができる。
【0052】
3.第1突出部は、他方のカバーの内周面に内周側からのみ当てられる構成であっても構わないし、他方のカバーの外周面に外周側からのみ当てられる構成であっても構わない。また、複数の第1突出部において、他方のカバーに内周側から当てられるものと外周側から当てられるものがそれぞれ存在していても構わない。
【0053】
4.第2突出部は、一方のカバーの外周面に外周側から当てられる構成であっても構わない。但し、その場合には、ヘッドレストの意匠性を悪化させない工夫が必要となる。また、複数の第2突出部において、一方のカバーに内周側から当てられるものと外周側から当てられるものがそれぞれ存在していても構わない。但し、そのような場合であっても、第1突出部と第2突出部とは、各面において互い違いに並ぶように構成されるものとする。
【0054】
5.表皮カバーの張設部は、パッドや前側カバーの形状に沿って張られる構成であっても構わない。また、表皮カバーの各周縁部は、パッドの後面に対して止着される構成であっても構わない。そのような場合であっても、表皮カバーと一方のカバーの張出部とが連続的な外周面を形成することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ヘッドレスト
10 インナカバー
11 前側カバー(他方のカバー)
11a 支持面部
11b 周縁部
11b1 前側張出部(端部)
11c 前側リブ
11c1 突出部(第2突出部)
11c2 補強部
11d 差込部
11d1 突起
11e クリップ装着部
11f クリップ
12 後側カバー(一方のカバー)
12a カバー面部
12b 後側張出部(張出部)
12c 後側リブ(第1突出部)
12c1 第1後側リブ
12c2 第2後側リブ
12d 差込部
12d1 突起
12e 締結部
12f ビス
12g 貫通孔
20 パッド
21 凹部
30 表皮カバー
31 斜め張り部(被突き当て部)
40 ヘッドレストステー
41 支柱
42 繋ぎ部
50 ブラケット
51 結合板
51a 第1の貫通孔
51b 第2の貫通孔
51c 第3の貫通孔
51d 第4の貫通孔
52 アーム


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9