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特許7297615系統事故検出システム、系統事故検出方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】系統事故検出システム、系統事故検出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/36 20060101AFI20230619BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20230619BHJP
   G01R 31/08 20200101ALI20230619BHJP
【FI】
H02J3/36
H02J1/00 301D
G01R31/08
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019166991
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021045005
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河内 駿介
(72)【発明者】
【氏名】直井 伸也
(72)【発明者】
【氏名】川崎 圭
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 尚隆
(72)【発明者】
【氏名】中山 慶一
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-178148(JP,A)
【文献】特開昭53-057446(JP,A)
【文献】特許第6234647(JP,B1)
【文献】特開平10-304569(JP,A)
【文献】特開2018-046642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 1/00-1/16
G01R 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流と直流とを互いに変換する電力変換器の直流側に接続される直流母線に接続される複数の直流送電線のうち、事故を検出する対象とする対象直流送電線の端部に設けられ、前記対象直流送電線と大地との間に接続される並列キャパシタと、
前記並列キャパシタを流れる電流値を検出する電流検出器と、
前記電流検出器により検出された電流値に対する演算を行った結果に基づいて、前記対象直流送電線における事故の有無を判定する事故判定装置と、
前記直流母線と前記対象直流送電線との間に接続される抵抗と、
を備える系統事故検出システム。
【請求項2】
前記直流母線と前記対象直流送電線との間に接続されるリアクトルを更に備える、
請求項1に記載の系統事故検出システム。
【請求項3】
前記電流検出器は、繰り返し前記並列キャパシタを流れる電流値を検出し、
前記事故判定装置は、前記電流検出器により第1タイミングで検出された電流値と、前記第1タイミングとは異なる第2タイミングで検出された電流値との差分が、第1閾値よりも大きい場合に、前記対象直流送電線に事故が生じたと判定する、
請求項1または2に記載の系統事故検出システム。
【請求項4】
前記電流検出器は、繰り返し前記並列キャパシタを流れる電流値を検出し、
前記事故判定装置は、前記検出された電流の変化率が、第2閾値よりも大きい場合に、前記対象直流送電線に事故が生じたと判定する、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の系統事故検出システム。
【請求項5】
前記電流検出器は、繰り返し前記並列キャパシタを流れる電流値を検出し、
前記事故判定装置は、前記検出された電流の周波数を導出し、前記電流の周波数における第3閾値よりも大きい周波数成分のレベルが、第4閾値より大きい場合に、前記対象直流送電線に事故が生じたと判定する、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の系統事故検出システム。
【請求項6】
交流と正極直流と負極直流とを互いに変換する電力変換器の直流側に接続される直流母線に接続される複数の直流送電線のうち、事故を検出する対象の対象正極直流送電線の端部に設けられ、前記対象正極直流送電線と大地との間に接続される正極並列キャパシタと、
前記複数の直流送電線のうち、事故を検出する対象の対象負極直流送電線の端部に設けられ、前記対象負極直流送電線と大地との間に接続される負極並列キャパシタと、
前記対象正極直流送電線と、前記対象負極直流送電線との間に接続される極間並列キャパシタと、
前記正極並列キャパシタを流れる電流値を検出する正極電流検出器と、
前記負極並列キャパシタを流れる電流値を検出する負極電流検出器と、
前記極間並列キャパシタを流れる電流値を検出する極間電流検出器と、
前記正極電流検出器、前記負極電流検出器、及び前記極間電流検出器のそれぞれにより検出された電流値に対する演算を行った結果に基づいて、前記対象正極直流送電線、及び前記対象負極直流送電線における事故の有無を判定する事故判定装置と、
を備える系統事故検出システム。
【請求項7】
前記正極電流検出器、前記負極電流検出器、及び前記極間電流検出器のそれぞれは、繰り返し電流値を検出し、
前記事故判定装置は、前記正極電流検出器、前記負極電流検出器、及び前記極間電流検出器のそれぞれにより検出された電流の変化率のうち、前記正極電流検出器により検出された電流の変化率が最も大きく、且つ、第5閾値よりも大きい場合に、前記対象正極直流送電線に事故が生じたと判定する、
請求項に記載の系統事故検出システム。
【請求項8】
前記正極電流検出器、前記負極電流検出器、及び前記極間電流検出器のそれぞれは、繰り返し電流値を検出し、
前記事故判定装置は、前記正極電流検出器、前記負極電流検出器、及び前記極間電流検出器のそれぞれにより検出された電流の変化率のうち、前記負極電流検出器により検出された電流の変化率が最も大きく、且つ、第6閾値よりも大きい場合に、前記対象負極直流送電線に事故が生じたと判定する、
請求項、又は請求項に記載の系統事故検出システム。
【請求項9】
前記正極電流検出器、前記負極電流検出器、及び前記極間電流検出器のそれぞれは、繰り返し電流値を検出し、
前記事故判定装置は、前記正極電流検出器、前記負極電流検出器、及び前記極間電流検出器のそれぞれにより検出された電流の変化率のうち、前記極間電流検出器により検出された電流の変化率が最も大きく、且つ、第7閾値よりも大きい場合に、前記対象正極直流送電線、及び前記対象負極直流送電線の正負極間に事故が生じたと判定する、
請求項から請求項の何れか一項に記載の系統事故検出システム。
【請求項10】
コンピュータが、
交流と直流とを互いに変換する電力変換器の直流側に接続される直流母線に接続される複数の直流送電線のうち、事故を検出する対象とする対象直流送電線の端部に設けられ、前記対象直流送電線と大地との間に接続される並列キャパシタ及び前記直流母線と前記対象直流送電線との間に接続される抵抗を流れる電流値を検出し、
前記検出された電流値に対する演算を行った結果に基づいて、前記対象直流送電線における事故の有無を判定する、
系統事故検出方法。
【請求項11】
コンピュータに、
交流と直流とを互いに変換する電力変換器の直流側に接続される直流母線に接続される複数の直流送電線のうち、事故を検出する対象とする対象直流送電線の端部に設けられ、前記対象直流送電線と大地との間に接続される並列キャパシタ及び前記直流母線と前記対象直流送電線との間に接続される抵抗を流れる電流値を検出させ、
前記検出された電流値に対する演算を行った結果に基づいて、前記対象直流送電線における事故の有無を判定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、系統事故検出システム、系統事故検出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
多端子HVDC(High-Voltage Direct Current)システムにおいて、直流系統に事故が発生した場合において、事故が発生した区間(事故区間)を検出できる保護システムが求められている。これにより、HVDC系統において事故が発生した場合に、事故区間の線路のみを直流遮断器(DCCB(Direct Current Circuit Breaker))により解列することができ、残りの健全な系統で送電を続けることが可能となる。したがって、HVDCシステムの停止範囲を最小限に留め、HVDCシステムの接続先となる交流系統への影響を軽減できる。
【0003】
HVDCシステムにおいては、変換器に用いられている半導体素子の過電流保護の観点から、ごく短い時間で、HVDCシステムにおける事故区間の検出、及び解列(除去)を行うことが必要である。一般的に、HVDCシステムでは、事故発生から、5ms程度の時間での事故区間の除去が望ましいとされている。
【0004】
交流系統においては、通常、線路両端の差動電流を用いた事故区間の検出が用行われている。この差動電流を用いた手法は、通信に時間を要するため、HVDCシステムにおける事故区間の検出には不向きである。HVDCシステムにおいては、交流系統より高速に、事故区間を検出する手法が求められている。
【0005】
HVDC系統における、事故区間を検出する技術としては、直流送電線の両端に、線路と直列となるようにリアクトルを挿入する手法(直列リアクトル方式)が開示されている。直列リアクトル方式では、直列リアクトルの線路側における電圧の変化率を測定する。当該直流送電線の線路内で系統事故が発生した場合(内部事故の場合)、事故により発生したサージ電圧により電圧は急峻に変化する。一方、当該直流送電線の外、つまり他の直流送電線の線路内において事故が発生した場合(外部事故の場合)には、他の直流送電線に接続された直列リアクトルを通過した後のサージ電圧が検出されるため、電圧の変化は比較的緩やかとなる。このような電圧の変化率の違いにより、事故が当該直流送電線に発生したものか否かを判定することができる。この技術では、直流線路に挿入された直列リアクトルにより、サージ電圧が平滑化される作用を用いて事故検出を行う。
【0006】
しかし、サージ電圧を平滑化するような、インダクタンスが大きい直列リアクトルを直流線路に挿入すると、直流側の電圧、及び電流の制御に悪影響を及ぼす懸念がある。特に、長距離を送電する場合、送電線路自体のリアクタンスが大きい。この場合、送電線路自体のリアクタンスと、事故区間の検出用の直列リアクトルとの合成により、直流側の電流制御が遅れることから問題になりやすいと考えられる。一方、短距離を送電する場合、送電線路自体のリアクタンスが小さい。この場合、送電線路自体のリアクタンスでは区間外事故で発生したサージ電圧を平滑化させる効果が見込めないため、事故区間を検出する精度を維持する必要からインダクタンスが大きな直列リアクトルを挿入する必要がある。このため、制御の安定性に影響を及ぼす懸念があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】J. Sneath, A. D. Rajapakse “Fault Detection and Interruption in an Earthed HVDC Grid Using ROCOV and Hybrid DC Brakers”, IEEE TRANSACTIONS ON POWER DELIVERY, Vol. 31, No. 3, June 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、HVDCシステムにおいて、直列リアクトル方式を用いることなく、直流系統において事故が発生した区間を特定することができる系統事故検出システム、系統事故検出方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の系統事故検出システムは、並列キャパシタと、電流検出器と、事故判定装置を持つ。並列キャパシタは、交流と直流とを互いに変換する電力変換器の直流側に接続される直流母線に接続される複数の直流送電線のうち、事故を検出する対象とする対象直流送電線の端部に設けられ、前記対象直流送電線と大地との間に接続される。電流検出器は、前記並列キャパシタを流れる電流値を検出する。事故判定装置は、前記電流検出器により検出された電流値に対する演算を行った結果に基づいて、前記対象直流送電線における事故の有無を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態の系統事故検出システムが適用される電力システム1の構成の例を示すブロック図。
図2】第1の実施形態の直流系統100に系統事故が発生した場合の電流の流れを説明する図。
図3】第1の実施形態の電力システム1が行う処理の流れを示すフローチャート。
図4】従来の直列リアクトル方式の直流系統における直列リアクトルを流れる電流特性を示す図。
図5】従来の直流系統における微小なリアクトルのみが作用する場合におけるサージ電圧特性を示す図。
図6】第1の実施形態の直流系統100の並列キャパシタ36を流れる電流特性を示す図。
図7】第2の実施形態の電力システム1Aの構成の例を示すブロック図。
図8】第3の実施形態の電力システム1Bの構成の例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の系統事故検出システム、系統事故検出方法、及びプログラムを、図面を参照して説明する。以下では、実施形態の系統事故検出システムが適用される電力システム1が、三端子以上の端子を持つ多端子直流送電システムである場合を例示して説明する。しかしながら、これに限定されることはない。実施形態の系統事故検出システムは、二端子の直流送電システムにも、適用することができる。
【0012】
図1は、実施形態の系統事故検出システムが適用される電力システム1の構成の例を示すブロック図である。本実施形態の電力システム1において、直流系統は、単極構成である。すなわち、直流系統は、正極または負極のみで構成される。
【0013】
電力システム1は、例えば、交流系統10(交流系統10-1、10-2)と、電力変換器20(電力変換器20-1、20-2)と、直流系統100とを備える。ここで、直流系統100は、「系統事故検出システム」の一例である。
【0014】
電力システム1では、交流系統10及び直流系統100が、電力変換器20を介して接続する。交流系統10は、交流電源、及び交流送電線などにより構成された交流の電力系統である。電力変換器20は、交流電力と直流電力とを相互に変換する変換器であって、例えば自励式電力変換器である。
【0015】
直流系統100は、直流母線30(直流母線30-1、30-2)と、直流遮断器31(直流遮断器31-1~31-4)と、リアクトル32(リアクトル32-1~32-4)と、直流送電線33(直流送電線33-1~33-3)と、事故検出装置34(事故検出装置34-1~34-4)と、電流検出器35(電流検出器35-1~35-4)と、並列キャパシタ36(並列キャパシタ36-1~36-4)とを備える。ここで、直流送電線33のそれぞれは、「対象直流送電線」の一例である。また、事故検出装置34は、「事故判定装置」の一例である。
【0016】
直流母線30は、電力変換器20の直流側に接続される。直流母線30には、直流遮断器31及びリアクトル32を介して、複数の直流送電線33が接続される。
【0017】
具体的に、直流母線30-1には、直流遮断器31-1及びリアクトル32-1を介して、直流送電線33-1が接続される。また、直流母線30-1には、直流遮断器31-3及びリアクトル32-3を介して、直流送電線33-3が接続される。直流母線30-2には、直流遮断器31-2及びリアクトル32-2を介して、直流送電線33-1が接続される。また、直流母線30-2には、直流遮断器31-4及びリアクトル32-4を介して、直流送電線33-3が接続される。
【0018】
なお、直流送電線33-3の他端(直流母線30-1と接続する側とは異なる側の端部)は、例えば、別端子(図示しない直流母線)に接続される。また、直流送電線33-3の他端(直流母線30-2と接続する端部側とは異なる側の端部)は、例えば、別端子(図示しない直流母線)に接続される。
【0019】
直流遮断器31は、直流母線30と直流送電線33との間に接続される。直流遮断器31は、事故検出装置34による制御に応じて、直流母線30と直流送電線33との間を電気的に接続又は遮断する。
【0020】
リアクトル32は、直流母線30と直流送電線33との間に接続される。リアクトル32は、例えば、直流母線30と直流送電線33との間を流れる電流のリップル(脈動)分を平滑化する平滑化リアクトルである。
【0021】
本実施形態において、リアクトル32は、直流事故検出を目的としたものではない。すなわち、リアクトル32は、事故時に発生する、変化の激しい電圧及び電流(例えば、落雷時に発生するサージ電圧、及びサージ電流)を平滑化する目的に用いられるものではない。リアクトル32は、事故が発生していない平常時において、ほぼ一定の状態の電圧が維持されている状況下で生じるリップルを平滑化するものであればよく、直流事故検出に用いられる直列リアクトルと比較して、インダクタンスの小さなリアクトルである。
【0022】
直流送電線33は、直流電力を送電する。直流電力での送電は、交流電力での送電と比較して電力の損失を抑制できることから、特に大容量、且つ長距離の送電に適用される。
【0023】
事故検出装置34は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0024】
事故検出装置34は、直流送電線33において発生した事故を検出する。具体的に、事故検出装置34-1は、直流送電線33-1において発生した事故を検出する。事故検出装置34-2は、直流送電線33-1において発生した事故を検出する。事故検出装置34-3は、直流送電線33-3において発生した事故を検出する。事故検出装置34-4は、直流送電線33-4において発生した事故を検出する。
【0025】
ここで想定される事故は、直流送電線33を流れる電流が急激に変化する事故であって、例えば、落雷により発生する地絡事故である。事故検出装置34は、電流検出器35により検出された電流値を取得し、取得した電流値に基づいて、直流送電線33において事故が発生したか否かを判定する。事故検出装置34は、直流送電線33において事故が発生したと判定した場合、その事故が発生した直流送電線33の端部に設けられた直流遮断器31に動作指令を出力し、直流母線30と直流送電線33との間を電気的に遮断させる。これにより、電力システム1から事故区間のみを解列させると共に、残りの健全な系統で送電を継続させ、システムの停止範囲を最小限に留める。
【0026】
並列キャパシタ36は、直流送電線33の端部において、直流送電線33と大地との間に接続される。具体的に、並列キャパシタ36-1は、直流送電線33-1における直流母線30-1側の端部において、直流送電線33-1と大地との間に接続される。並列キャパシタ36-2は、直流送電線33-1における直流母線30-2側の端部において、直流送電線33-1と大地との間に接続される。並列キャパシタ36-3は、直流送電線33-3における直流母線30-1側の端部において、直流送電線33-3と大地との間に接続される。並列キャパシタ36-4は、直流送電線33-4における直流母線30-2側の端部において、直流送電線33-4と大地との間に接続される。
【0027】
電流検出器35は、並列キャパシタ36を流れる電流値を検出し、検出した電流値を事故検出装置34に出力する。具体的に、電流検出器35-1は、並列キャパシタ36-1を流れる電流値を検出し、検出した電流値を事故検出装置34-1に出力する。電流検出器35-2は、並列キャパシタ36-2を流れる電流値を検出し、検出した電流値を事故検出装置34-2に出力する。電流検出器35-3は、並列キャパシタ36-3を流れる電流値を検出し、検出した電流値を事故検出装置34-3に出力する。電流検出器35-4は、並列キャパシタ36-4を流れる電流値を検出し、検出した電流値を事故検出装置34-4に出力する。
【0028】
図2は、第1の実施形態の直流系統100に系統事故が発生した場合の電流の流れを説明する図である。図2に示すように、落雷などにより事故点Aに地絡事故(系統事故)が発生したとする。この例では、事故点Aは、直流系統100の直流送電線33-1の内部の地点である。
【0029】
地絡事故が発生すると、サージ現象が発生する。サージ現象は、落雷などにより瞬間的に高電圧の電流が流れることである。サージ現象は、例えば、数十[μs]から数十[ms]に及び、平常時と比較して高い周波数帯域の成分を有する現象として現れる。平常時においては、地絡事故は発生していない。このため、定格電圧の近傍のほぼ一定の電圧が維持されている。
【0030】
事故点Aにおいてサージ現象が発生すると、直流送電線33-1の端部、直流母線30-1、及び30-2の両方向に向かってサージ電流が流れる。サージ電流は、サージ現象に伴って瞬間的に発生する、高い周波数帯域の成分を有する電流である。
【0031】
本実施形態では、このような地絡事故に伴って直流送電線33-1の端部を流れるサージ電流の高周波成分を、リアクトル32ではなく、並列キャパシタ36側に流すようにする。
【0032】
具体的に、直流系統100において、サージ電流を並列キャパシタ36側に流すために、リアクトル32のインピーダンスZと比較して、並列キャパシタ36のインピーダンスZが十分小さくなるように設計する。すなわち、以下の(1)式を満たすようにする。
【0033】
≫Z …(1)
但し、Z=2πfL
=1/(2πfC)
【0034】
ここで、(1)式において、Zはリアクトル32のインピーダンス、Zは並列キャパシタ36のインピーダンス、Lはリアクトル32のインダクタンス、Cは並列キャパシタ36のキャパシタンス、fはサージ電流の周波数を示す。
【0035】
例えば、系統事故の検出を1[ms]以内に行おうとした場合、周波数f=1000[Hz]以上の領域で、Z≫Zとなる必要がある。(1)式において、インダクタンスL=1[mH]と仮定した場合において、Z>10×Zとなる条件を求めると、キャパシタンスC>25.3[μF]となる。
【0036】
このような条件を満たすインピーダンスZを持つ並列キャパシタ36を接続させることにより、直流送電線33-1において地絡事故が発生した場合、事故点Aから直流送電線33の両方の端部に向かって流れるサージ電流は、リアクトル32側よりも、並列キャパシタ36側に流れる。これにより、電流検出器35は、並列キャパシタ36に流れるサージ電流を検出する。
【0037】
事故検出装置34は、電流検出器35により検出された電流値に基づいて、系統事故が発生したか否か、すなわち、並列キャパシタ36にサージ電流が流れたか否かを判定する。具体的に、事故検出装置34は、電流検出器35により検出された電流値を所定の周期で取得し、取得した電流値に基づいて、並列キャパシタ36に流れる電流値に対する演算を行う。ここでの電流値に対する演算は、少なくとも電流の急激な変化を捉えられるものであればよく、例えば、電流の変化幅、変化率、周波数、移動平均などである。事故検出装置34は、電流値に対する演算を行った結果に基づいて、直流送電線33に事故が発生したか否かを判定する。
【0038】
事故検出装置34は、例えば、前回検出された電流値と、今回検出された電流値との差分(変化幅)を算出し、算出した差分と予め定められた所定の閾値と比較する。事故検出装置34は、算出した差分が閾値よりも大きい場合、並列キャパシタ36にサージ電流が流れており、直流送電線33-1において地絡事故が発生したと判定する。一方、事故検出装置34は、算出した差分が閾値よりも小さい場合、直流送電線33-1において地絡事故が発生していないと判定する。
【0039】
事故検出装置34は、例えば、前回検出された電流値と、今回検出された電流値と、これらの電流値を取得した時間間隔(サンプリング周期)に基づいて、電流の変化率を算出する。事故検出装置34は、算出した変化率と予め定められた所定の閾値と比較し、変化率が閾値よりも大きい場合、並列キャパシタ36にサージ電流が流れており、直流送電線33-1において地絡事故が発生したと判定する。一方、事故検出装置34は、算出した変化率が閾値よりも小さい場合、直流送電線33-1において地絡事故が発生していないと判定する。
【0040】
事故検出装置34は、例えば、検出された電流の時系列変化データの周波数成分を算出する。事故検出装置34は、時系列変化データに所定の周波数よりも大きい高周波成分が、所定の閾値よりも多く含まれている場合、直流送電線33-1において地絡事故が発生したと判定する。一方、事故検出装置34は、時系列変化データに含まれる高周波成分が、所定の閾値よりも少ない場合、直流送電線33-1において地絡事故が発生していないと判定する。事故検出装置34は、例えば、時系列変化データに、所定の周波数のみを通過させるフィルタ処理を施すことにより、時系列変化データの周波数成分を算出する。
【0041】
事故検出装置34は、系統事故の発生の有無を判定する演算の過程において、ノイズ除去を目的として移動平均等の平滑化処理(フィルタ処理)を用いてもよい。また、事故検出装置34は、算出した電流の変化幅と変化率など、複数の算出結果を組合せた結果に基づいて、系統事故の有無を判定してもよい。
【0042】
なお、平常時において、直流送電線33は、定格電圧近傍のほぼ一定状態の電圧で運転される。このため、運転を開始した直後に流れる電流(充電電流)を除いて、並列キャパシタ36には電流がほとんど流れない。
【0043】
図3は、第1の実施形態の直流系統100が行う処理の流れを示すフローチャートである。まず、事故検出装置34は、電流検出器35から並列キャパシタ36を流れる電流値を取得する(ステップS10)。次に、事故検出装置34は、取得した電流値に基づいて、電流値に対する演算を行い(ステップS11)、演算を行った結果に基づいて、系統事故の有無を判定する(ステップS12)。事故検出装置34は、例えば、電流の変化幅や変化率、高周波成分などを算出し、算出結果に基づいて、並列キャパシタ36にサージ電流が流れたと判定した場合に、系統事故が発生したと判定する。事故検出装置34は、系統事故が発生したと判定した場合、直流遮断器31に動作指令を出力する(ステップS13)。
【0044】
以上、説明したように、第1の実施形態の直流系統100は、並列キャパシタ36と、電流検出器35と、事故検出装置34とを備える。並列キャパシタ36は、直流送電線33の端部に、直流送電線33と大地との間に接続される。電流検出器35は、並列キャパシタ36を流れる電流を検出する。事故検出装置34は、電流検出器35により検出された電流値に対する演算を行った結果に基づいて、直流送電線33に系統事故が発生したか否かを判定する。これにより、第1の実施形態の直流系統100では、直列リアクトル方式を用いることなく、直流系統において事故が発生した区間を特定することができる。
【0045】
ここで、図4図6を用いて、第1の実施形態の効果を説明する。図4は、系統事故を検出する方法として直列リアクトル方式が適用された、従来の直流系統における直列リアクトルを流れる電流特性を示す図である。図4の横軸は時間、縦軸は直列リアクトルを流れる電流値を示す。図4に示すように、インダクタンスの大きな直列リアクトルを、直流送電線に直列に接続させた場合、平常時であれば、直流送電線には、電流値がほぼ一定の直流電流が流れるべきであるが、インダクタンスの大きな直列リアクトルを設けたことで、電流が振動的となり、安定的に運転できていないことが確認できる。すなわち、インダクタンスの大きな直列リアクトルを用いた直列リアクトル方式では、直流系統側の制御が不安定化する懸念がある。
【0046】
図5は、インダクタンスが微小な直列リアクトルのみが接続されている、従来の直流系統における直列リアクトルを流れるサージ電圧の特性を示す図である。図5の横軸は時間、縦軸は直列リアクトルに印加される電圧値を示す。図5では、外部事故(External Fault)が発生した場合と、内部事故(Internal Fault)が発生した場合とのそれぞれについて、サージ電圧の特性を示している。内部事故は、直列リアクトルが接続されている直流送電線の内部で発生した系統事故である。外部事故は、直列リアクトルが接続されている直流送電線とは異なる直流送電線で発生した系統事故である。図5に示すように、インダクタンスの小さい直列リアクトルのみが接続される場合、内部事故と外部事故とで、電圧波形に差異が生じず、内部事故と外部事故の判別が困難となる。なお、図5では、直流送電線33から並列キャパシタ36に向かう方向に印加される電圧を、正(プラス)とする。すなわち、電圧の印加に伴い図2に示すサージ電流の方向に電流が流れた場合、電圧値は減少する方向に変化する。
【0047】
図6は、第1の実施形態の並列キャパシタ36を流れるサージ電流の特性を示す図である。図6の横軸は時間、縦軸は並列キャパシタ36に流れる電流値を示す。図6では、外部事故(External Fault)が発生した場合と、内部事故(Internal Fault)が発生した場合とのそれぞれについて、サージ電流の特性を示している。図6では、直流送電線33から並列キャパシタ36に流れる電流を、正(プラス)とする。すなわち、図2に示すサージ電流の方向に電流が流れた場合、電流値は減少する。
【0048】
第1の実施形態においては、系統事故が発生した場合、事故区間の直流送電線33の両端に設置された並列キャパシタ36に急峻なサージ電流が流れる。その一方で、それ以外の箇所に設置された並列キャパシタ36では、サージ電流のその急峻な立ち上がりが抑制された、変化が急峻でない電流が検出される。
【0049】
図6に示すように、内部事故の場合、事故発生時点Pにおいて、並列キャパシタ36に流れる電流に、急峻な(傾きの絶対値が大きい)変化が検出される。一方、外部事故の場合、内部事故と比較して、急峻でない(傾きの絶対値が小さい)変化が検出される。事故検出装置34は、この内部事故と外部事故との電流変化の傾きの違いに基づいて、系統事故が発生した場合における、事故が発生した地点(内部事故か外部事故か)を判定することができる。さらに、この傾きの違いが、事故発生時点Pの直後に顕著であることから、より高速な判定が可能となる。また、第1の実施形態で用いるリアクトル32は、従来の直列リアクトル方式で用いられる事故検出用の直列リアクトル(例えば、図4で不安定となったケースで用いられているリアクトル)と比較して、大幅に小さいインダクタンスである。このため、リアクトル32のインダクタンスに起因して、電流の制御が不安定となる懸念は生じない。また、並列キャパシタ36を挿入することで、直流電圧の変動が抑制され、自励式の電圧源型の変換器を用いたシステムにおいて制御が安定化する。したがって、電圧変動などの外乱に対してロバストになる効果が得られる。
【0050】
また、第1の実施形態の直流系統100では、直流母線30と直流送電線33との間に接続されるリアクトル32を更に備えてもよい。これにより、直流母線30と直流送電線33との間を流れる電流のリップル(脈動)分を平滑化することが可能である。
【0051】
また、第1の実施形態の直流系統100では、電流検出器35は繰り返し並列キャパシタ36を流れる電流を検出し、事故検出装置34は、電流検出器35により前回(「第1タイミング」の一例)で検出された電流値と、今回(「前記第1タイミングとは異なる第2タイミング」の一例)で検出された電流値との差分が、予め定められた所定の閾値(「第1閾値」の一例)よりも大きい場合に、直流送電線33に事故が生じたと判定するようにしてもよい。
【0052】
また、第1の実施形態の直流系統100では、電流検出器35は繰り返し並列キャパシタ36を流れる電流を検出し、事故検出装置34は、検出された電流の変化率が、予め定められた所定の閾値(「第2閾値」の一例)よりも大きい場合に、直流送電線33に事故が生じたと判定するようにしてもよい。
【0053】
また、第1の実施形態の直流系統100では、電流検出器35は繰り返し並列キャパシタ36を流れる電流を検出し、事故検出装置34は、検出された電流の周波数を導出し、電流の周波数における予め定められた所定の閾値(「第3閾値」の一例)よりも大きい周波数成分のレベルが、予め定められた所定の閾値(「第4閾値」の一例)よりも大きい場合に、直流送電線33に事故が生じたと判定するようにしてもよい。
【0054】
これにより、直流系統100では、並列キャパシタ36を流れる電流の急峻な変化を捉えることができる。したがって、直流送電線33に事故が生じたことを検知することが可能である。
【0055】
なお、上述した第1の実施形態では、直流送電線33の端部にリアクトル32が接続されている場合を例示して説明したが、これに限定されることはない。リアクトル32の代替として、直流送電線33の末端にブロッキングコイルが挿入されている場合、当該ブロッキングコイルのインダクタンスを用いて、サージ電流が並列キャパシタ36に流れるように設計してもよい。
【0056】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、リアクトル32に代えて、直流遮断器31の内部抵抗を用いる点において、上述した第1の実施形態と相違する。以下の説明では、上述した第1の実施形態と相違する構成についてのみ説明し、上述した第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図7は、第2の実施形態の電力システム1Aの構成の例を示すブロック図である。図7に示すように、直流系統100Aは、直流遮断器31Aの内部に内部抵抗310を備える。
【0058】
直流系統100Aにおいて、並列キャパシタ36のインピーダンスZは、事故検出に関わる周波数より高周波の領域において、ZCB≫Zを満たすように設計される。ここで、ZCBは内部抵抗310のインピーダンスである。
【0059】
なお、上記では、直流遮断器31Aの内部抵抗310を用いる場合を例示して説明したが、これに限定されない。系統事故に伴うサージ電流が、直流母線30側ではなく、並列キャパシタ36側に流れればよく、直流送電線33の端部に、少なくとも何らかの抵抗が接続されていればよい。
【0060】
以上説明したとおり、第2の実施形態の直流系統100Aでは、直流送電線33の端部に接続される抵抗を備える。これにより、系統事故に伴うサージ電流を並列キャパシタ36に流すことができ、上述した効果と同様の効果を奏する。本実施形態では、リアクトル32を省略することができ、システムコストを低減することが可能である。
【0061】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態では、直流系統が双極構成である点において、上述した第1の実施形態と相違する。すなわち、本実施形態の直流系統100Bは、正極及び負極の二極で構成される。以下の説明では、上述した第1の実施形態と相違する構成についてのみ説明し、上述した第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して、必要がない限りその説明を省略する。
【0062】
図8は、第3の実施形態の電力システム1Bの構成の例を示すブロック図である。図8に示すように、電力システム1Bは、交流系統10と、電力変換器20Bと、直流系統100Bとを備える。電力変換器20Bは、交流系統10における交流電力を、正極の直流電力(以下、正極直流電力という)、及び負極の直流電力(以下、負極直流電力という)に変換する。
【0063】
直流系統100Bは、正極側直流系統50と、負極側直流系統60と、事故検出装置34-6と、電流検出器35-6と、並列キャパシタ36-6とを備える。事故検出装置34-6は、「事故判定装置」の一例である。電流検出器35-6は、「極間電流検出器」の一例である。並列キャパシタ36-6は、「極間並列キャパシタ」の一例である。
【0064】
正極側直流系統50は、直流母線30と、直流遮断器31-1と、リアクトル32-1と、直流送電線33-1と、電流検出器35-1と、並列キャパシタ36-1とを備える。直流母線30は、電力変換器20の直流側に接続される。直流遮断器31-1と、リアクトル32-1と、直流送電線33-1と、電流検出器35-1と、並列キャパシタ36-1の動作は、第1の実施形態と同様であるためその説明を省略する。ここで、直流送電線33-1は、「対象正極直流送電線」の一例である。電流検出器35-1は、「正極電流検出器」の一例である。並列キャパシタ36-1は「正極並列キャパシタ」の一例である。
【0065】
負極側直流系統60は、直流母線300と、直流遮断器31-5と、リアクトル32-5と、直流送電線33-5と、事故検出装置34-6と、電流検出器35-5と、並列キャパシタ36-5とを備える。ここで、直流送電線33-5は、「対象負極直流送電線」の一例である。電流検出器35-5は「負極電流検出器」の一例である。並列キャパシタ36-5は「負極並列キャパシタ」の一例である。
【0066】
直流母線300は、電力変換器20Bの負極の直流側に接続される。直流母線300には、直流遮断器31-5及びリアクトル32-5を介して、直流送電線33-5が接続される。直流送電線33-5の端部には、直流送電線33-5と大地との間に、並列キャパシタ36-5、及び電流検出器35-5が接続される。事故検出装置34-5は、電流検出器35-5、及び直流遮断器31-5と接続される。
【0067】
直流母線30と、直流母線300との間に、並列キャパシタ36-6、及び電流検出器35-6が接続される。事故検出装置34-6は、電流検出器35-1、35-5、及び35-6と接続される。また、事故検出装置34-6は、直流遮断器31-1、及び31-5と接続される。
【0068】
直流遮断器31-5と、リアクトル32-5と、直流送電線33-5と、電流検出器35-5、35-6と、並列キャパシタ36-5、36-6の動作は、第1の実施形態と同様であるためその説明を省略する。
【0069】
事故検出装置34-6は、直流送電線33-1及び33-5を監視対象とする。事故検出装置34-6は、電流検出器35-1、35-5、及び35-6により検出された電流値をそれぞれ取得する。
【0070】
正極側の直流送電線33-1に地絡等の事故が発生すると、主に、並列キャパシタ36-1にサージ電流が流れる。このため、事故検出装置34-6は、電流検出器35-1により検出された電流値に基づいて、第1の実施形態と同様に、直流送電線33-1に系統事故が発生したか否かを判定する。事故検出装置34-6は、直流送電線33-1に系統事故が発生したと判定した場合、正極側の直流遮断器31-1に動作指令を出力する。これにより、直流遮断器31-1が開放される。
【0071】
負極側の直流送電線33-5に地絡等の事故が発生すると、主に、並列キャパシタ36-5にサージ電流が流れる。このため、事故検出装置34-6は、電流検出器35-5により検出された電流値に基づいて、第1の実施形態と同様に、直流送電線33-5に系統事故が発生したか否かを判定する。事故検出装置34-6は、直流送電線33-5に系統事故が発生したと判定した場合、負極側の直流遮断器31-5に動作指令を出力する。これにより、直流遮断器31-5が開放される。
【0072】
ここで、正極側の直流送電線33-1に系統事故が発生すると、実際には他の並列キャパシタ36(並列キャパシタ36-5、36-6)にも若干量のサージ電流が流れる。また、負極側の直流送電線33-5に系統事故が発生すると、他の並列キャパシタ36(並列キャパシタ36-1、36-6)にも若干量のサージ電流が流れる。
【0073】
このため、事故検出装置34‐6は、電流検出器35-1、35-5、及び35-6のそれぞれにより検出された電流値に基づいて、正極側の直流送電線33-1、又は負極側の直流送電線33-5のいずれに系統事故が発生したか判定するようにしてもよい。
【0074】
事故検出装置34-6は、例えば、電流検出器35-1、35-5、及び35-6のそれぞれにより検出された電流変化率のうち、電流検出器35-1により検出された電流変化率が最も大きく、且つ所定の閾値(「第5閾値」の一例)より大きい場合、正極側の直流送電線33-1に系統事故が発生したと判定するようにしてもよい。
【0075】
同様な考え方に基づき、事故検出装置34-6は、電流検出器35-1、35-5、及び35-6のそれぞれにより検出された電流変化率のうち、電流検出器35-5により検出された電流変化率が最も大きく、且つ所定の閾値(「第6閾値」の一例)より大きい場合、負極側の直流送電線33-5に系統事故が発生したと判定するようにしてもよい。
【0076】
正負極間に短絡事故が発生した、つまり、正極側の直流送電線33-1と、負極側の直流送電線33-5とが短絡した場合、正負極間で短絡回路が形成され、大地を通る事故電流の回路は形成されない。このため、正負極間の系統事故が発生した場合、主に、並列キャパシタ36-6にサージ電流が流れる。
【0077】
このため、事故検出装置34-6は、電流検出器35-6により検出された電流値に基づいて、第1の実施形態と同様に、正負極間(つまり、直流送電線33-1と33-5)に系統事故が発生したか否かを判定する。事故検出装置34-6は、正負極間に系統事故が発生したと判定した場合、正極側の直流遮断器31-1、及び負極側の直流遮断器31-5の双方に動作指令を出力する。これにより、直流遮断器31-1、及び31-5の双方が開放される。
【0078】
ここで、正負極間に系統事故が発生すると、実際には他の並列キャパシタ36(並列キャパシタ36-1、36-5)にも若干量のサージ電流が流れる。このため、事故検出装置34-6は、電流検出器35-1、35-5、及び35-6のそれぞれにより検出された電流変化率のうち、電流検出器35-6により検出された電流変化率が最も大きく、且つ所定の閾値(「第7閾値」の一例)より大きい場合、正負極間に系統事故が発生したと判定するようにしてもよい。
【0079】
以上説明したように、第3の実施形態の直流系統100B(系統事故検出システム)は、双極構成であり、正極側と負極側との双方の直流送電線33の間に、並列キャパシタ36-6が接続される。事故検出装置34-6は、正極側と負極側との双方の直流送電線33を監視対象とする。事故検出装置34-6は、電流検出器35-1、35-5、及び35-6により検出された電流値に基づいて、正極側又は負極側の直流送電線33における系統事故の発生の有無を判定する。これにより、第3の実施形態の直流系統100Bでは、双極構成においても、上述した効果と同様の効果を奏する。
【0080】
また、第3の実施形態の直流系統100Bでは、事故検出装置34-6は、電流検出器35-1、35-5、及び35-6のそれぞれにより検出された電流変化率のうち、電流検出器35-1により検出された電流変化率が最も大きく、且つ所定の閾値(「第5閾値」の一例)より大きい場合、正極側の直流送電線33-1に系統事故が発生したと判定する。
また、第3の実施形態の直流系統100Bでは、事故検出装置34-6は、電流検出器35-1、35-5、及び35-6のそれぞれにより検出された電流変化率のうち、電流検出器35-5により検出された電流変化率が最も大きく、且つ所定の閾値(「第6閾値」の一例)より大きい場合、負極側の直流送電線33-5に系統事故が発生したと判定する。
また、第3の実施形態の直流系統100Bでは、事故検出装置34-6は、電流検出器35-1、35-5、及び35-6のそれぞれにより検出された電流変化率のうち、電流検出器35-6により検出された電流変化率が最も大きく、且つ所定の閾値(「第7閾値」の一例)より大きい場合、正負極間に系統事故が発生したと判定する。これにより、第3の実施形態の直流系統100Bでは、電流検出器35-1、35-5、及び35-6のそれぞれにより検出された電流に基づいて、双極構成の直流系統において、系統事故が発生した箇所を精度よく特定することが可能である。
【0081】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、直流系統100(系統事故検出システム)が、直流送電線33と大地との間に接続される並列キャパシタ36を備え、並列キャパシタ36を流れる電流値に基づいて、直流送電線33において系統事故が発生したか否かを判定する。これにより、直列リアクトル方式を用いることなく、直流系統において事故が発生した区間を特定することができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
1…電力システム、10…交流系統、20…電力変換器、30…直流母線、31…直流遮断器、32…リアクトル、34…事故検出装置、35…電流検出器、36…並列キャパシタ、100…直流系統(系統事故検出システム)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8